説明

耐亀裂性が改良されたナノコンポジット構造を備えた輝度向上フィルム

輝度向上フィルムのようなミクロ構造フィルム、有機成分と表面改質されたナノ粒子とを含む重合可能な樹脂組成物、及び表面改質されたナノ粒子が記載されている。ミクロ構造フィルムは、重合可能な樹脂組成物の反応生成物(例えば、少なくとも1.58の屈折率を有するもの)を含む重合された構造を有する。硬化されたナノコンポジット(例えば、構造)は、改良された耐亀裂性を示すことができる。いくつかの実施形態では、可撓性は円筒形マンドレル屈曲試験特性(例えば、6mm未満の破壊マンドレルサイズ又はTが、(例えば、予備形成されたベース層の)mm単位での厚さであるときに、式D=1000(T/0.025−T)による破壊マンドレルサイズ)として表される。別の実施形態では、可撓性は、引張及び伸び特性(例えば、少なくとも25MPaの破断点引張強さ及び少なくとも1.75%の破断点伸び)として表される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2007年2月27日出願の米国特許仮出願第60/891812号、2007年4月19日出願の同第60/912751号、2007年2月27日出願の同第60/891840号、及び2007年5月14日申請の同第60/917827号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,175,030号明細書及び同第5,183,597号明細書に記載されているような、特定のマイクロ複製された光学製品は、一般的に「輝度向上フィルム」と呼ばれる。輝度向上フィルムは、エレクトロルミネッセントパネル、ラップトップコンピュータディスプレイ、ワードプロセッサ、デスクトップモニタ、テレビ、ビデオカメラ、並びに自動車及び飛行機用ディスプレイに使用されるものなどを含む液晶ディスプレイ(LCD)のようなバックライト付きフラットパネルディスプレイの輝度を増大するため、多数の電子製品に利用される。
【0003】
輝度向上フィルムは、望ましくは、生じる輝度増加(すなわち、「ゲイン」)に関連する輝度向上フィルムの屈折率を包含する固有の光学的及び物理的特性を示す。輝度の向上は、ディスプレイを照明するのにより少ない出力を使用することによって電子製品がより効率的に作動することを可能にし、それによって電力消費を低減し、その構成要素により低い熱負荷が加わり、製品の寿命を延長する。
【0004】
輝度向上フィルムは、硬化又は重合された高屈折率モノマーから調製されてきた。
【0005】
輝度向上フィルムは、米国特許第6,844,950号明細書;及び米国特許出願公開第2005/0059766号、同第2005/0151119号、及び米国特許出願第2006/0204676号、同第2006/0204745号、同第2006/0210726号、及び同第2006/0204745号に開示されているように、ジルコニア、シリカ、及びチタニアのような無機粒子を含む、重合可能な樹脂組成物から調製されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に記載されているのは、輝度向上フィルムのようなミクロ構造フィルム、有機成分と表面改質されたナノ粒子とを含む重合可能な樹脂組成物、及び表面改質されたナノ粒子である。ミクロ構造フィルムは、重合可能な樹脂組成物の反応生成物(例えば、少なくとも1.58の屈折率を有するもの)を含む重合された構造を有する。硬化されたナノコンポジット(例えば、構造)は、改良された耐亀裂性を示すことができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、重合可能な樹脂組成物は、少なくとも10重量%の表面改質された無機ナノ粒子を含み、改良された可撓性を示す。いくつかの実施形態では、可撓性は円筒形マンドレル屈曲試験特性(例えば、6mm未満で破壊するマンドレルサイズ、又はTが(例えば、予備形成されたベース層の)mm単位での厚さであるときに、式D=1000(T/0.025−T)による破壊マンドレルサイズ)として表される。別の実施形態では、可撓性は、引張及び伸び特性(例えば、少なくとも25MPaの破断点引張強さ及び少なくとも1.75%の破断点伸び)として表される。
【0008】
1つの実施形態では、重合可能な樹脂組成物の有機成分は、少なくとも1種のジ(メタ)アクリレート芳香族モノマーを含む。別の実施形態では、表面改質された無機ナノ粒子は、吸着された非反応性揮発性酸を含む。1つの好ましい実施形態では、重合可能な樹脂組成物は、40重量%〜60重量%の表面改質された無機ナノ粒子を含み、ナノ粒子は少なくとも1.68の屈折率を有する。
【0009】
そのような可撓性を示すことができる、1つの好ましい、重合可能な樹脂(例えば、輝度向上フィルムの重合構造の)組成物は、1種以上のエチレン性不飽和モノマー又はオリゴマーを含む有機成分と、
非反応性相溶化基を有する少なくとも1種のモノカルボン酸を含む第1の表面処理剤と、
前記有機成分と反応する共重合可能な基を有する少なくとも1種の不揮発性モノカルボン酸を含む第2の表面処理剤と、を用いて表面改質された、少なくとも10重量%の無機ナノ粒子と、を含み、
ナノ粒子は、第1の表面処理剤を超える化学量論量で、第2の表面処理剤を含む。
【0010】
そのような可撓性を示すことができる別の好ましい重合可能な樹脂組成物は、合計で少なくとも10重量%の量の1種以上の単官能ビフェニルモノマーを含む有機成分と、
水溶性のテールを有する少なくとも1種のモノカルボン酸を含む第1の表面処理剤と、
脂肪族無水物とヒドロキシルアルキルアクリレートとの反応によって調製された少なくとも1種のアクリレート官能化された表面改質剤を含む第2の表面処理剤、で表面改質された少なくとも10重量%の無機ナノ粒子と、を含む。
【0011】
別の実施形態では、表面改質された無機ナノ粒子が記載される。ナノ粒子は、非反応性相溶化基を有する少なくとも1種のモノカルボン酸を含む第1の表面処理剤と、有機成分と反応する共重合可能な基を有する少なくとも1種の不揮発性モノカルボン酸を含む第2の表面処理剤と、を含む。ナノ粒子は、第1の表面処理剤を超える化学量論量で、第2の表面処理剤を含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
輝度向上フィルムは、一般に、照明装置の軸上の輝き(本明細書で「輝度」と呼ばれる)を増強する。輝度向上フィルムは、光伝達可能な、ミクロ構造フィルムであることができる。ミクロ構造のトポグラフィーは、フィルム表面上に複数のプリズムがあり、その結果フィルムを使用して反射及び屈折を通じて光を転送することができる。プリズムの高さは典型的には約1〜約75マイクロメートルである。ラップトップコンピュータ、時計等に見出されるような光学ディスプレイに使用されるとき、ミクロ構造の光学フィルムは、ディスプレイから放出が許容された光を光学ディスプレイを通る垂直軸から所望の角度で配置された一組の平面内に制限することによって、光学ディスプレイの輝度を増大することができる。結果として、許容可能な範囲の外側でディスプレイを出るであろう光は、反射されてディスプレイへ戻り、そこでその一部が「再利用」され、ディスプレイから放出できる角度でミクロ構造フィルムに戻されることができる。この再利用は、ディスプレイに所望の輝度を提供するために必要な電力消費量を低減することができることから、有用である。
【0013】
米国特許第5,183,597号明細書(ルー(Lu))及び同第5,175,030号明細書(ルー(Lu)ら)に記載されているように、ミクロ構造を有する物品(例えば、輝度向上フィルム)は、(a)重合可能な組成物を調製する工程と、(b)重合可能な組成物を、マスターの陰画ミクロ構造化された成形表面上に、マスター上のキャビティをかろうじて満たすのに十分な量で付着する工程と、(c)重合可能な組成物のビーズを、その少なくとも1つが可撓性である、予備形成されたベースとマスターとの間で動かすことによってキャビティを満たす工程と、(d)組成物を硬化する工程と、を包含する方法によって調製することができる。マスターは、ニッケル、ニッケルメッキ銅、若しくは、黄銅のような金属性であることができ、又は重合条件下で安定であり及びマスターから重合物質をきれいに取り出しうる表面エネルギーを好ましくは有する熱可塑性物質であることができる。ベースへの光学層の接着を促進するために、ベースフィルムの1つ以上の表面に、任意選択的に下地処理又は他の処理を施すことができる。
【0014】
本願に記載されているのは、輝度向上フィルム又はその他のミクロ構造物品のような光学(例えば、フィルム)物品の製造に使用するための重合可能な樹脂組成物である。光学フィルムは、有機成分中に分散された表面改質された無機ナノ粒子を含む重合可能な樹脂の反応生成物を含む重合構造を含む。
【0015】
本明細書で用いるとき、「重合可能な組成物」は、有機成分及び表面改質された無機ナノ粒子を包含する全組成物を指す。「有機成分」は、表面改質された無機ナノ粒子を除く組成物の成分すべてを指す。表面処理剤は一般に、無機ナノ粒子の表面に吸着されるかないしは別の方法で付着されることから、表面処理剤は有機成分の一部とみなされない。表面改質された無機ナノ粒子の重量%は、無機ナノ粒子のみの濃度よりも大きい。表面改質されたナノ粒子の重量%は、無機ナノ粒子の重量%よりも約20%大きいことが一般的である。例えば、40重量%の無機ナノ粒子を含む組成物は、約56重量%の表面改質された無機ナノ粒子を含む。
【0016】
重合構造は、光学素子又はベース層と光学層とで構成された光学製品であることができる。ベース層及び光学層は、同じ又は異なるポリマー材料から形成することができる。
【0017】
本願に記載されているのは、重合(例えば、プリズム状の)構造を含む輝度向上フィルムである。重合構造は、重合可能な樹脂組成物(すなわち、重合可能な)有機成分を有する重合可能な樹脂組成物と、少なくとも10重量%の表面改質された無機ナノ粒子との反応生成物を含む。
【0018】
フィルムの引張り強さ及び伸び特性は、フィルム材料の物理的特性である。薄いプラスチックシートの引張り特性とは、ASTM D 882−02に記載されている標準的な試験方法である。従来のフィルム材料は、試験用の試料(例えば、ダンベル形(dog bone-shaped))に切断できる。脂肪族ウレタンジアクリレート及びトリアクリレートのような特定の(メタ)アクリレートモノマーのUV硬化ホモポリマーの引張り強さ及び伸び特性は、それらの材料の供給業者によって報告されている。種々の単官能(メタ)アクリレートモノマー及び(メタ)アクリレート架橋剤のようなその他の種類のモノマーのホモポリマー物質では、引張り試験に適したフィルム材料が得られないことが多いが、このような材料を含有する重合可能な混合物から形成されたフィルムの引張り強さ及び伸びを測定することができる。
【0019】
本出願人は、重合可能な樹脂組成物の引張り強さ及び伸び特性が、輝度向上フィルムの耐亀裂性と相関することを見出した。本出願人は、特定の引張り強さ及び伸び特性を有する重合可能な樹脂組成物を選択することによって、輝度向上フィルムの耐亀裂性を改良できることを発見した。
【0020】
引張り強さ及び伸び試験の使用により、多数の重合可能な樹脂組成物を、重合可能な樹脂を輝度向上フィルムに実際に製造することなく、短時間で便利にふるい分けすることができる。引張り強さ及び伸びは、規定の試験試料調製及び実施例に示された試験パラメータを用いて、ASTM D 882−02に従って試験される。試験には少量の試験試料しか必要としないことから、重合可能な樹脂組成物をシリコーン金型内で硬化することによって、個々の試験試料を調製するのが便利である。シリコーン金型は、感圧性接着剤のような取扱いが困難な材料から試験試料を成形するためにも使用される。
【0021】
本明細書に記載の輝度向上フィルムの重合構造の作製に使用するのに好適な重合可能な樹脂は、少なくとも25MPa、30MPa、35MPa、40MPa、45MPa、又は50MPaの破断点引張り強さを有する。破断点引張り強さは、一般的に約200MPaを超えない。いくつかの実施形態で、引張り強さは少なくとも55MPa又は60MPaである。重合可能な樹脂組成物はまた、少なくとも1.75%又は2%の破断点伸びも有する。いくつかの実施形態では、伸びは少なくとも2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、又は8%である。伸びは、一般に20%未満であり、いくつかの実施形態では15%を超えない。
【0022】
「柔らか」すぎる重合可能な樹脂組成物は、記載された伸び特性を示すかもしれないが、記載された目標値を有意に下回る引張り値を有する。逆に、「硬」すぎる重合可能な樹脂組成物は、引張り強さ特性を示すかもしれないが、伸び特性が低いために容易に割れる。引張り強さ及び伸び基準の両方を示す重合可能な樹脂組成物は、フィルム硬さと可撓性との相乗的バランスを提供する。
【0023】
重合可能な樹脂組成物は、一般に、少なくとも35℃、40℃、又は45℃のガラス転移温度(Tg)を有する。表面改質されたナノ粒子を包含することで、重合可能な樹脂組成物のTgを上昇させることができる。それゆえ、有機成分は、(すなわち、ナノ粒子を含有する)重合可能な樹脂組成物よりも低いTgを有することができる。重合可能な樹脂組成物の動的引張り係数は、一般的に、約20℃において、少なくとも1×10である。
【0024】
上記の引張り強さ及び伸び特性を有する重合可能な樹脂組成物を使用することによって、得られる輝度向上フィルムは、円筒形マンドレル屈曲試験ISO 1519:2002(E)に従って測定したときに、改良された耐亀裂性を示す。破壊マンドレルサイズ(すなわち、輝度向上の重合構造の亀裂を生じるマンドレルサイズ)は、6mm、5mm、又は4mm未満である。いくつかの実施形態では、3mm又は2mmのマンドレルサイズで亀裂の証拠はない。輝度向上フィルムの熟成は、破壊マンドレルサイズのある程度の増大を引き起こす場合があるが、本明細書に記載の重合可能な樹脂組成物から調製されたプリズムを有する好ましい熟成された輝度向上フィルムは、6mmマンドレルで破壊しない。
【0025】
(例えば、輝度向上)ミクロ構造フィルムを、先に引用したルー(Lu)及びルー(Lu)らに記載されているプロセスを用いて調製するとき、ミクロ構造は、予備形成されたベース上に配置される。
【0026】
円筒形マンドレル屈曲試験ISO 1519:2002(E)屈曲試験において、プリズム表面(すなわち、ε表面)での歪みは、曲げの半径及び中軸までの距離に依存し、これはフィルムの厚さ及びフィルムを含む層の形状に依存する。一般的に、屈曲試験中のフィルムの表面での歪みは、次式を用いて近似できる:
ε表面=(T/2)/[(T/2)+(D/2)]
式中、Tは、予備形成されたベースフィルムの全厚であり、Dは屈曲試験マンドレル直径である。下の表は、種々の予備形成されたベースの厚さ及び種々の屈曲試験マンドレル直径で計算された歪みを示す。
【0027】
【表1】

【0028】
この近似を用いて、フィルム表面での歪みが0.025以上のときに、フィルムが屈曲試験に不合格となると計算できる。この近似を用いて、ε表面が0.025であるときにDについて式を解くことによって、異なる厚さの予備形成ベースフィルムを有するミクロ構造フィルムに相当する破壊マンドレルを決定することができる。ゆえに、D=1000(T/0.025−T)。
【0029】
この式を用いて、150マイクロメートル厚フィルムの屈曲試験で6mmマンドレルに合格することは、200マイクロメートル厚フィルムで8mmマンドレルに合格することにほぼ等しく、これは、275マイクロメートル厚フィルムで12mmマンドレルに合格すること及び525マイクロメートル厚フィルムで25mmマンドレルに合格することにほぼ等しいことが計算できる。
【0030】
有機成分並びに重合可能な組成物は、好ましくは、実質的に溶媒を含まない。「実質的に溶媒を含まない」とは、5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、1重量%、及び0.5重量%未満の(例えば、有機)溶媒を有する重合可能な組成物を指す。溶媒の濃度は、ガスクロマトグラフィーのような既知の方法により決定することができる。0.5重量%未満の溶媒濃度が好ましい。
【0031】
有機成分の成分は、好ましくは、有機成分が低粘度を有するように選択される。一般的には、有機成分の粘度は、過去に採用された組成物の有機成分よりも実質的に低い。有機成分の粘度は1Pa・s(1000cps)未満であり、一般的には0.9Pa・s(900cps)未満である。有機成分の粘度は、コーティング温度において0.8Pa・s(800cps)未満、0.7Pa・s(700cps)未満、0.6Pa・s(600cps)未満、又は0.5Pa・s(500cps)未満であってよい。本明細書で使用するとき、粘度は(1000sec−1までの剪断速度で)、動的応力レオメーター(Dynamic Stress Rheometer)を使用して、25mm平行プレートで測定される。更に、有機成分の粘度は、一般的に、コーティング温度において、少なくとも0.01Pa・s(10cps)、より代表的には少なくとも0.05Pa・s(50cps)、更により代表的に少なくとも0.1Pa・s(100cps)、最も代表的には少なくとも0.2Pa・s(200cps)である。
【0032】
コーティング温度は、一般的に、周囲温度(すなわち、25℃)〜82℃(180°F)の範囲である。コーティング温度は、77℃(170°F)未満、71℃(160°F)未満、66℃(150°F)未満、60℃(140°F)未満、54℃(130°F)未満、又は49℃(120°F)未満であってよい。有機成分は、重合可能な組成物の融点がコーティング温度よりも低いという条件で、固体であること又は固体成分を含むことができる。有機成分は、室温で液体であることができる。
【0033】
有機成分並びに重合可能な組成物は、ほとんどの製品用途に関して、少なくとも1.47の屈折率を有し、これに対して回転フィルムの重合可能な樹脂組成物は1.44という低い屈折率を有してよい。有機成分又は重合可能な組成物の屈折率は、少なくとも1.48、1.49、1.50、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、又は1.60であってよい。ナノ粒子を包含する重合可能な組成物は、1.70という高い屈折率を有することができる。(例えば、少なくとも1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、又は1.69)可視光線スペクトルにおける高い透過性も一般的に好ましい。
【0034】
重合可能な組成物は、(例えば、75マイクロメートル厚の輝度向上フィルムの場合)好ましくは5分未満のタイムスケールでエネルギー硬化できる。重合可能な組成物は、好ましくは一般的に45℃を超えるガラス転移温度を提供するように十分に架橋される。ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)、変調DSC、又は動的機械測定等の当該技術分野で既知の方法によって測定することができる。重合可能な組成物は、従来のフリーラジカル重合法によって重合することができる。
【0035】
重合可能な樹脂は一般的に、エチレン性不飽和モノマーの混合物を含む。混合物は、一般的に、少なくとも1種の二官能芳香族(メタ)アクリレートモノマー及び450g/モル未満の分子量を有し、屈折率が少なくとも1.50、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57又は1.58である、多量の(例えば、芳香族)単官能(メタ)アクリレートモノマーを包含する。
【0036】
いくつかの実施形態では、有機成分は好ましくは1種以上の(例えば、単官能)ビフェニルモノマーと2種以上の(メタ)アクリレート基を有する少なくとも1種の芳香族(メタ)アクリレートモノマーとの組み合わせを含む。
【0037】
多官能ビフェニルモノマーは、末端ビフェニル基(ここで、2つのフェニル基は融合しておらず、結合によって繋がっている)又は連結基(例えばQ)で繋がれた2つの芳香族基を含む末端基を含む。例えば、連結基がメタンであるとき、末端基はビフェニルメタン基である。あるいは、連結器は−(C(CH−であり、末端基は4−クミルフェニルである。単官能ビフェニルモノマーは、好ましくは(例えば紫外線)放射への暴露によって重合可能である1つのエチレン性不飽和基も含む。単官能ビフェニルモノマーは、好ましくは1つの(メタ)アクリレート基又は1つのチオ(メタ)アクリレート基を含む。アクリレート官能性が一般的に好ましい。いくつかの態様において、ビフェニル基は、エチレン性不飽和(例えば、(メタ)アクリレート)基に直接結合する。この種類の例示的なモノマーは、2−フェニル−フェニルアクリレートである。ビフェニルモノ(メタ)アクリレート又はビフェニルチオ(メタ)アクリレートモノマーは、任意選択的に1つ以上のヒドロキシル基で置換された(例えば1〜5個の炭素の)アルキル基を更に含んでよい。この種類の代表的な種は、2−フェニル−2−フェノキシエチルアクリレートである。
【0038】
有機成分は、1つのビフェニル(メタ)アクリレートモノマー又は2つ以上のビフェニル(メタ)アクリレートモノマーの組み合わせを包含してよい。このようなビフェニルモノマーの総量は、一般的に有機成分の少なくとも10重量%、15重量%、20重量%又は25重量%である。単官能ビフェニルモノマーの総量は、90重量%以下、より一般的には約75重量%以下(例えば、70重量%、65重量%、60重量%未満)である。いくつかの実施形態では、ビフェニルモノマーの総量は、有機成分の30重量%〜50重量%の範囲である。
【0039】
1つの実施形態では、次の一般式を有する単官能ビフェニル(メタ)アクリレートモノマーが用いられる:
【0040】
【化1】

【0041】
式中、R1は、H又はCHであり、
Xは、O又はSであり、
nは、0〜10の範囲(例えば、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10)であり、
Lは、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基(すなわち、メチル、エチル、プロピル、ブチル、又はペンチル)であり、任意選択的にヒドロキシで置換されている。
【0042】
別の実施形態では、単官能ビフェニル(メタ)アクリレートモノマーは次の一般式を有し:
【0043】
【化2】

【0044】
式中、R1は、H又はCHであり、
Xは、O又はSであり、
Qは、−(C(CH−、−CH、−C(O)−、−S(O)−、及び−S(O)−から選択され、
nは、0〜10の範囲(例えば、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10)であり、
Lは、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基(すなわち、メチル、エチル、ブチル、又はペンチル)であり、任意選択的にヒドロキシで置換されている。
【0045】
日本の東亜合成株式会社(Toagosei Co. Ltd.)より市販されているいくつかの特定のモノマーとして、例えば商品名「TO−2344」で入手可能な2−フェニル−フェニルアクリレート、商品名「TO−2345」で入手可能な4−(−2−フェニル−2−プロピル)フェニルアクリレート、及び商品名「TO−1463」で入手可能な2−フェニル−2−フェノキシエチルアクリレートが挙げられる。
【0046】
単官能ビフェニル(例えば、(メタ)アクリレート)モノマーを包含することで、有機成分の屈折率を上昇させること及び粘度の低下によって重合可能な組成物の加工性を改良することが同時にできる。これらのモノマーは、比較的高い(すなわち、25重量%を超える)濃度の(例えばより低屈折率の)二官能(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーを用いたときに、特に有利である。
【0047】
有機成分は、好ましくは少なくとも5重量%、一般的には約80重量%を超える二官能(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーを含む。
【0048】
好適なウレタン(メタ)アクリレートは、サートマー(Sartomer)より商品名「CN965」、「CN968」、「CN981」、「CN983」、「CN984」、「CN972」、及び「CN978」;コグニス(Cognis)より商品名「フォトマー(Photomer)6210」、「フォトマー(Photomer)6217」、「フォトマー(Photomer)6230」、「フォトマー(Photomer)6623」、「フォトマー(Photomer)6891」、及び「フォトマー(Photomer)6892」;並びにUCBより商品名「エベクリル(Ebecryl)1290」、「エベクリル(Ebecryl)2001」、及び「エベクリル(Ebecryl)4842」で市販されている。
【0049】
好適なポリエステル(メタ)アクリレートは、サートマー(Sartomer)より商品名「CN292」;コグニス(Cognis)より商品名「フォトマー(Photomer)5010」、「フォトマー(Photomer)5429」、「フォトマー(Photomer)5430」、「フォトマー(Photomer)5432」、「フォトマー(Photomer)5662」、「フォトマー(Photomer)5806」、及び「フォトマー(Photomer)5920」;並びにUCBより商品名「エベクリル(Ebecryl)80」、「エベクリル(Ebecryl)81」、「エベクリル(Ebecryl)83」、「エベクリル(Ebecryl)450」、「エベクリル(Ebecryl)524」、「エベクリル(Ebecryl)525」、「エベクリル(Ebecryl)585」、「エベクリル(Ebecryl)588」、「エベクリル(Ebecryl)810」、及び「エベクリル(Ebecryl)2047」で市販されている。
【0050】
好適な(メタ)アクリル化アクリル酸オリゴマーも、市販されており、又は当該技術分野で既知の方法によって調製できる。
【0051】
重合可能な組成物は、次の一般構造を有する主要部分を含む芳香族二官能(メタ)アクリレートモノマーを含んでよい:
【0052】
【化3】

【0053】
式中、それぞれのR1は、独立して、水素又はメチルである。それぞれのR2は、独立して、水素又は臭素である。それぞれのZは、独立して、−C(CH−、−CH−、−C(O)−、−S−、−S(O)−、又は−S(O)−であり、それぞれのQは、独立して、O又はSである。いくつかの実施形態では、Zは、好ましくは−C(CH−であり、Qは、好ましくはOである。一般的に、R1基は、同一である。一般的に、R2基も互いに同一である。Lは、連結基である。Lは、独立して、分枝鎖又は直鎖C〜C12アルキル基(すなわち、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、又はC12)を含んでよい。アルキル基の炭素鎖は、任意選択的に1つ以上の酸素基で置換されてよい。更に、アルキル基の炭素原子は、任意選択的に1つ以上のヒドロキシル基で置換されてよい。例えば、Lは、−CHCH(OH)CH−であってよい。一般的に、連結基は、同一である。1つの実施形態では、アルキル基は、C10である。別の実施形態では、アルキル基は、8個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、又は4個以下の炭素原子を含む。
【0054】
ジ(メタ)アクリレートモノマーは、合成されても購入されてもよい。本明細書で使用するとき、主要部分とは、モノマーの60〜70重量%が上記の特定の構造を含有することを指す。他の反応生成物もこのようなモノマーの合成の副生成物として典型的に存在することは、一般的に認識される。
【0055】
ジ(メタ)アクリレートモノマーは、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとアクリル酸との反応生成物でありうる。第1のモノマーは、ジョージア州スマーナ(Smyrna)のUCBコーポレーション(UCB Corporation)より商品名「RDX−51027」で入手できる。この物質は、2−プロペン酸、(1−メチルエチリデン)ビス[(2,6−ジブロモ−4,1−フェニレン)オキシ(2−ヒドロキシ−3,1−プロパンジイル)]エステルの主要部分を含む。
【0056】
種々の(メタ)アクリル化芳香族エポキシオリゴマーが市販されている。例えば、(メタ)アクリル化芳香族エポキシ、(改質エポキシアクリレートとして記載される)、はペンシルバニア州エクストン(Exton)のサートマー(Sartomer)より、商品名「CN118」、「CN115」、及び「CN112C60」で入手できる。(メタ)アクリル化芳香族エポキシオリゴマー、(エポキシアクリレートオリゴマーとして記載される)、はサートマー(Sartomer)より商品名「CN2204」で入手できる。更に、(メタ)アクリル化芳香族エポキシオリゴマー、(40%トリメチロールプロパントリアクリレートとブレンドされたエポキシノボラックアクリレートとして記載される)、はサートマー(Sartomer)より、商品名「CN112C60」で入手できる。
【0057】
いくつかの実施形態では、芳香族エポキシアクリレートは、前記の構造のもののように、ビスフェノールAから誘導される。その他の実施形態では、芳香族エポキシアクリレートは、ビスフェノールAと異なるモノマーから誘導される。
【0058】
1つの代表的なビスフェノール−Aエトキシル化ジアクリレートモノマーは、サートマー(Sartomer)から商品名「SR602」(20℃において0.61Pa・s(610cps)の粘度及び2℃のTgを有すると報告されている)のもとに市販されている。別の代表的なビスフェノール−Aエトキシル化ジアクリレートモノマーは、サートマー(Sartomer)から商品名「SR601」(20℃において1.08Pa・s(1080cps)の粘度及び60℃のTgを有すると報告されている)のもとに市販されている。
【0059】
有機成分は任意選択的に約50重量%までの(例えば、0〜50の範囲のいずれかの量)の反応性希釈剤(すなわち、単官能ビフェニルモノマー)以外のものを含む。反応性希釈剤は、(メタ)アクリレートのようなモノエチレン性不飽和モノマー又はモノマーのN−置換若しくはN,N−二置換(メタ)アクリルアミド、特にアクリルアミドである。これらには、N−アルキルアクリルアミド及びN,N−ジアルキルアクリルアミド、特にC1〜4アルキル基を含有するものが挙げられる。例には、N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、及びN−ビニルカプロラクタムがある。
【0060】
希釈剤は、1.50を超える(例えば、1.55を超える)屈折率を有することができる。このような反応性希釈剤は、ハロゲン化又は非ハロゲン化(例えば、非臭素化)されることができる。代表的な高屈折率(high index)の任意選択的なモノマーは、第一工業製薬株式会社(Daiichi Kogyo Seiyaku Co. Ltd)(日本、京都)から商品名「BR−31」で市販されている2,4,6−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0061】
好適な反応性希釈剤としては、例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート;フェノキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート;フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート;フェニルチオエチルアクリレート;2−ナフチルチオエチルアクリレート;1−ナフチルチオエチルアクリレート;2,4,6−トリブロモフェノキシエチルアクリレート;2,4−ジブロモフェノキシエチルアクリレート;2−ブロモフェノキシエチルアクリレート;1−ナフチルオキシエチルアクリレート;2−ナフチルオキシエチルアクリレート;フェノキシ2−メチルエチルアクリレート;フェノキシエトキシエチルアクリレート;3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート;2,4−ジブロモ−6−sec−ブチルフェニルアクリレート;2,4−ジブロモ−6−イソプロピルフェニルアクリレート;ベンジルアクリレート;フェニルアクリレート;2,4,6−トリブロモフェニルアクリレートが挙げられる。ペンタブロモベンジルアクリレート及びペンタブロモフェニルアクリレートのようなその他の高屈折率モノマーも用いることができる。
【0062】
ビフェニル(メタ)アクリレートモノマーは、一般的に、ビフェニルモノマーよりも低い屈折率を有する単官能の反応性希釈剤と組み合わせて用いられる。
【0063】
好ましい希釈剤は、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、特にフェノキシエチルアクリレート(PEA)である。フェノキシエチルアクリレートは、サートマー(Sartomer)より商品名「SR339」、エターナル・ケミカル社(Eternal Chemical Co. Ltd)より商品名「エターマー(Etermer)210」、及び東亜合成株式会社(Toagosei Co. Ltd)より商品名「TO−1166」などの1つを超える供給元より市販されている。ベンジルアクリレートは、マサチューセッツ州ウォードヒル(Ward Hil)のアルファエイサー社(AlfaAeser Corp)より市販されている。
【0064】
有機成分は、少なくとも3つの(メタ)アクリレート基を含む架橋剤を任意選択的に含んでよい。いくつかの実施形態では、架橋剤は、少なくとも約2重量%の量で重合可能な組成物中に存在してよい。典型的には、架橋剤の量は、約25重量%以下である。架橋剤は、約5重量%〜約15重量%の範囲のいかなる量でも存在してよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、有機成分は5重量%未満の架橋剤を含むか又は架橋剤を実質的に含まない。
【0066】
いくつかの実施形態では、重合可能な樹脂組成物は、臭素を実質的に含まない(すなわち、1重量%未満含有する)。その他の実施形態では、臭素と塩素とを組み合わせた総量は1重量%未満である。いくつかの態様では、重合可能な樹脂組成物は、実質的に非ハロゲン化(すなわち、臭素、塩素、フッ素、及びヨウ素を合計で1重量%未満含有する)されている。
【0067】
UV硬化性の重合可能な組成物は、少なくとも1種の光反応開始剤を含む。1つの光反応開始剤又は光反応開始剤のブレンドを、本発明の輝度向上フィルムに用いてよい。一般的には、光反応開始剤は、重合された後、少なくとも部分的に可溶性(例えば樹脂の加工温度で)であり、実質的に無色である。UV光源に暴露された後で光反応開始剤が実質的に無色になるのであれば、光反応開始剤は、着色(例えば黄色)されていてよい。
【0068】
好適な光反応開始剤としては、モノアシルホスフィンオキシド及びビスアシルホスフィンオキシドが挙げられる。市販のモノ又はビスアシルホスフィンオキシド光反応開始剤としては、「ルシリン(Lucirin)TPO」という商品名でBASF(ノースカロライナ州シャルロット(Charlotte))から市販されている2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、「ルシリン(Lucirin)TPO−L」という商品名でBASFから市販されているエチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、及び「イルガキュア(Irgacure)819」という商品名でチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から市販されているビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドが挙げられる。他の好適な光反応開始剤としては、ダロキュア(Darocur)1173」という商品名でチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から市販されている2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、並びに「ダロキュア(Darocur)4265」、「イルガキュア(Irgacure)651」、「イルガキュア(Irgacure)1800」、「イルガキュア(Irgacure)369」、「イルガキュア(Irgacure)1700」、及び「イルガキュア(Irgacure)907」という商品名でチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から市販されている他の光反応開始剤が挙げられる。
【0069】
光反応開始剤は、約0.1重量%〜約10重量%の濃度で使用できる。より好ましくは、光反応開始剤は約0.5〜約5重量%の濃度で使用される。5重量%を超える量は、輝度向上フィルムの黄変を引き起こす傾向の観点から一般的に不利である。その他の光反応開始剤類及び光反応開始剤も、当業者によって決定されるように、好適に用いられてもよい。
【0070】
フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤のような界面活性剤は、表面張力を低減するため、濡れを改良するため、より平滑なコーティングを可能にするため、及びコーティングの欠陥を減少させるため等の目的で、重合可能な組成物に任意選択的に包含されることができる。
【0071】
表面改質された(例えば、コロイド状)ナノ粒子は、物品又は光学素子の耐久性及び/又は屈折率を向上するのに有効な量で重合構造中に存在する。表面改質された無機ナノ粒子の総量は、重合可能な樹脂又は光学物品中に、少なくとも10重量%、20重量%、30重量%又は40重量%の量で存在できる。重合可能な樹脂組成物がミクロ構造フィルムの流延及び硬化プロセスで使用するのに好適な粘度を有するため、その濃度は、典型的には70重量%未満であり、より典型的には60重量%未満である。
【0072】
このような粒子の寸法は、有意な可視光線の散乱を避けるように選択される。光学又は材料特性を最適化するため及び全組成物コストを低下させるために、複数の種類の無機酸化物粒子の混合物を用いることが望ましい場合がある。表面改質されたコロイド状ナノ粒子は、(例えば、非会合の)一次粒径又は会合粒径が1nm、5nm又は10nmより大きい酸化物粒子であることができる。一次又は会合粒径は、一般的に100nm、75nm、又は50nm未満である。典型的には、一次又は会合粒径は40nm、30nm、又は20nm未満である。ナノ粒子は非会合性であることが好ましい。それらの測定値は、透過電子顕微鏡(TEM)に基づくことができる。ナノ粒子としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、チタニア、これらの混合物、又はこれらの混合酸化物のような金属酸化物が挙げられる。表面改質されたコロイド状ナノ粒子は、実質的に完全凝縮可能である。
【0073】
完全凝縮ナノ粒子(シリカを例外として)の結晶化度(単離金属酸化物粒子として測定した場合)は、典型的には55%を超え、好ましくは60%を超え、より好ましくは70%を超える。例えば、結晶化度は、約86%まで又はそれ以上の範囲であることができる。結晶化度は、X線回折法によって決定することができる。凝縮結晶性の(例えばジルコニア)ナノ粒子は、屈折率が高いが、非晶質ナノ粒子は典型的には屈折率がより低い。
【0074】
ジルコニア及びチタニアナノ粒子は、5〜50nm、又は5〜15nm、又は8nm〜12nmの粒径を有することができる。ジルコニアナノ粒子は、耐久性物品又は光学素子中に10〜70重量%、又は30〜60重量%の量で存在できる。本発明の組成物及び物品に使用されるジルコニアは、ナルコケミカル社(Nalco Chemical Co.)から「ナルコ(Nalco)OOSSOO8」という商品名で、及びスイスのウッツビル(Uzwil)のビューラー社(Buhler AG)から「ビューラー(Buhler)ジルコニアZ−WOゾル」という商品名で入手可能である。
【0075】
ジルコニア粒子は、米国特許出願第2006/0148950号に記載されているような熱水技術を用いて調製できる。より具体的には、ジルコニウム塩を含有する第1の供給原料は、最初の熱水処理が施されてジルコニウム含有中間体及び副生成物を生成する。第2の供給原料は、第1の熱水処理で生成した副生成物の少なくとも一部を除去することによって調製される。第2の供給原料は、その後、第2の熱水処理を施されて、ジルコニア粒子を含有するジルコニアゾルを生成する。
【0076】
第1の供給原料は、ジルコニウム塩を含有する水性前駆体溶液を形成することにより調製される。ジルコニウム塩のアニオンは、ジルコニアゾルを調製するプロセスのその後の工程時に、ジルコニウム塩のアニオンが除去できるように通常選択される。更に、アニオンは、多くの場合、非浸食性であるように選択され、水熱反応器などの処理装置に選択された材料の種類のより大きい柔軟性を可能にする。
【0077】
前駆体溶液中のアニオンを少なくとも部分除去する1つの方法では、前駆体溶液は加熱され、アニオンの酸性形態を蒸発させることができる。例えば、4個以下の炭素原子を有するカルボン酸アニオンは、対応するカルボン酸として除去することができる。より詳細には、酢酸アニオンは、酢酸として除去することができる。遊離の酢酸を除去することはできるが、酢酸の少なくとも一部は典型的には(例えばジルコニア)ナノ粒子表面上に吸着される。それゆえ、ナノ粒子は一般的に吸着された揮発性の酸を含む。
【0078】
「揮発性の酸」は、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸、及びこれらの混合物のような、6個以下の炭素原子を有するモノカルボン酸を指す。これらのうち、酢酸は有機成分と非反応性であり、これに対してアクリル酸及びメタクリル酸は、これらの酸の(メタ)アクリレート基が有機成分の(メタ)アクリレート基と共重合できることから、反応性揮発性樹脂である。
【0079】
表面改質されたとは、表面改質剤を無機酸化物(例えばジルコニア)粒子に付着させて表面特性を改質することを伴う。無機粒子の表面改質の全体的な目的は、樹脂に均質成分及び好ましくは(例えば流延及び硬化プロセスを用いて)高輝度のフィルムに調製できる低粘度を提供することである。
【0080】
ナノ粒子は、しばしば、有機マトリックス材料との相溶性を改良するために表面改質される。表面改質されたナノ粒子は、しばしば、有機マトリックス材料中で非会合、非粒塊、又はこれらの組み合わせである。得られるこれらの表面改質されたナノ粒子を含有する光管理フィルム(light management films)は高い光学的透明性及び低いくもりを有する傾向がある。ジルコニアのような、高屈折率表面改質されたナノ粒子の添加は、輝度向上フィルムのゲインを、重合された有機材料のみを含有するフィルムと比べて増大することができる。
【0081】
ナノ粒子の表面に吸着された非反応性の揮発性酸(例えば酢酸)は、これらの種々の(例えば不揮発性の)カルボン酸によって置換されたと推測される。表面処理剤の使用に加え、(例えば輝度向上フィルムに)、非反応性の揮発性酸含有量を低減するための追加処理工程(例えば熱処理)も施してもよい。検出可能な量(0.01重量%〜0.1重量%)で存在してもよいが、輝度向上フィルムの非反応性の揮発性酸含有量は、一般的に5重量%未満である。不揮発性酸と反応性揮発性酸含有量(例えば有機成分と重合可能な基を有する酸)との組み合わせの総量は、実質的により高く、約20重量%までの範囲であってよい。例えば、表面改質された粒子、重合樹脂、又は重合構造の不揮発性酸含有量は、合計で1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、又は20重量%であってよい。同様に、表面改質された粒子、重合樹脂、又は重合構造の反応性揮発性酸含有量は、合計で1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、又は20重量%であってよい。
【0082】
モノカルボン酸表面処理剤は、好ましくは相溶化基を含む。モノカルボン酸は、式A−Bによって表されてよく、式中、A基は、(例えばジルコニア又はチタニア)ナノ粒子の表面に付着できる(例えばモノカルボン酸)基であり、Bは、種々の異なる官能性を含む相溶化基である。カルボン酸基は、吸着及び/又はイオン結合の形成によって表面に付着できる。相溶化基Bは、一般に、それが(例えば輝度向上)光学物品の重合可能な樹脂と相溶するように選択される。相溶化基Bは、反応性又は非反応性であることができ、極性又は非極性であることができる。
【0083】
ジルコニア粒子に非極性の性質を付与することができる相溶化基Bとしては、例えば、直鎖又は分枝鎖の芳香族又は脂肪族炭化水素が挙げられる。カルボン酸官能性を有する非極性改質剤の代表的な例には、オクタン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0084】
相溶化基Bは、それが(例えば輝度向上)光学物品の有機マトリックスと共重合できるように、任意選択的に反応性であってよい。例えば、(メタ)アクリレート相溶化基のようなフリーラジカル重合可能基は、(メタ)アクリレート官能有機モノマーと共重合して、良好な均質の輝度向上物品を生成できる。
【0085】
本明細書に記載されている(例えばジルコニア)無機ナノ粒子は、好ましくは2つの異なる表面処理剤で表面改質される。
【0086】
いくつかの実施形態で、無機ナノ粒子は、非反応性相溶化基を有する少なくとも1種のモノカルボン酸を含む第1の表面処理剤を含む。「非反応性」とは、相溶化基が有機成分と反応しないことを意味する。第2の表面処理剤は、有機成分と反応する共重合可能な基を有する少なくとも1種のモノカルボン酸を含む。表面処理剤の組み合わせは、ナノ粒子が有機成分と反応する多量の表面処理剤を含むような量で用いられる。したがって、第2の表面処理剤の化学量論量は、第1の表面処理剤を超える。
【0087】
例えばii)対i)の比は、1.1:1又は1.5:1又は2:1又は3:1又は4:1又は5:1であってよい。
【0088】
第1の表面処理剤は、非反応性相溶化基を有する少なくとも1種のモノカルボン酸(すなわち、1分子につき1つのカルボン酸基を含有する)を含む。このような相溶化基は、典型的には、(例えばポリエーテル基)水溶性のテールのような極性基を含む。このような表面処理剤は、ジルコニア又はチタニア粒子に極性の性質を付与できる。
【0089】
ポリエーテルテールは、一般式−O−R−を有する繰返し二官能アルコキシラジカルを含む。好ましいR基は、一般式−C2n−を有し、例えば、メチレン、エチレン、及びプロピレン(n−プロピレン及びi−プロピレンを包含する)又はこれらの組み合わせが挙げられる。R基の組み合わせは、例えば、ランダム、又はブロック型コポリマーとして提供されてよい。
【0090】
ポリエーテルテールを有する好ましい部類のモノカルボン酸は、一般的に次式によって表されてよい:
CH−[O−(CH−X−COOH
式中、
Xは、二価の有機連結基であり、
xは、約1〜10の範囲であり、
yは、約1〜4の範囲である。
【0091】
Xの代表例としては、−X−(CH−が挙げられ、式中、Xは、−O−S−、−C(O)O−、−C(O)NH−であり、nは、約1〜3の範囲である。
【0092】
好ましいポリエーテルカルボン酸の例としては、化学構造CH O(CHCHO)CHCOOHを有する2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(以後MEEAA)及び化学構造CHOCHCHOCHCOOHを有する2−(2−メトキシエトキシ酢酸(以後MEAA)が挙げられる。MEAA及びMEEAAは、ウイスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)のアルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical Co.,)より、それぞれカタログ番号40,701−1及び40,700−3として市販されている。
【0093】
ポリエーテル相溶化テールを有するその他の表面改質剤としては、一般的に脂肪族無水物とポリアルキレンオキシドモノエーテルとの反応によって調製されたものが挙げられる。この種類の表面改質剤としては、コハク酸モノ[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチル]エステル、マレイン酸モノ−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチル]エステル、及びグルタル酸モノ−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチル]エステルが挙げられる。これらの分子は次のように示される:
【0094】
【化4】

【0095】
2種以上のポリエーテルカルボン酸の混合物も用いることができる。
【0096】
その他の態様において、比較的高屈折率の(例えばRIが少なくとも1.50である)相溶化剤が、輝度向上フィルムのような光学物品の調製に有利となることができる。フタレート基のような芳香族基を1つ以上含有する相溶化剤は、有利に高屈折率を有し、それゆえ、その包含は、重合可能な組成物全体の屈折率を上昇させることができる。屈折率を上昇させるその他の方法としては、表面改質剤分子にイオウ又は臭素を包含することが挙げられる。
【0097】
種々のフタレート系材料は、次の反応スキームによって製造できる。
【0098】
【化5】

【0099】
第2の表面処理剤は、有機成分と共重合できる反応性基を有する少なくとも1種の(例えば不揮発性の)モノカルボン酸を含む。1つの実施形態では、第2の表面処理剤は好ましくは、脂肪族又は芳香族無水物とヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートとの反応によって調製された(メタ)アクリレート官能化表面処理剤である。
【0100】
この種の表面改質剤の例は、コハク酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル、マレイン酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル、及びグルタル酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル、マレイン酸モノ−(4−アクリロイルオキシ−ブチル)エステル、コハク酸モノ−(4−アクリロイルオキシ−ブチル)エステル、グルタル酸モノ−(4−アクリロイルオキシ−ブチル)エステルである。これらの種は次のように示される:
【0101】
【化6】

【0102】
その他のこの種の脂肪族表面改質剤としては、モノ(メタ)アクリルオキシポリエチレングリコーススクシネート、又はマレイン酸若しくはグルタル酸無水物から製造された類似材料が挙げられる。
【0103】
この種のその他の表面改質剤は、芳香族無水物から調製できる。このような分子の例は、フタル酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル及びフタル酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−ブチル)エステルであり、これは無水フタル酸から調製できる。これらは、次の反応スキームによって製造できる:
【0104】
【化7】

【0105】
別の反応性表面改質剤は、β−カルボキシルエチルアクリレートである。
【0106】
第1及び第2の表面処理剤に加えて、表面処理剤はモノ又はジカルボン酸を追加的に含んでよい。代表例としては、アクリル酸メタクリル酸、並びに種々のジカルボン酸が挙げられる。ジカルボン酸は、好ましくは分子量が比較的低い。ジカルボン酸は直鎖又は分枝鎖であってよい。カルボン酸基の間に6個までの炭素原子を有するジカルボン酸が好ましい。これらには、例えばマレイン酸、コハク酸、スベリン酸、フタル酸、及びイタコン酸が挙げられる。
【0107】
コロイド状分散中の粒子の表面改質は、種々の方法で実現できる。そのプロセスは一般に、無機粒子分散液と表面改質剤との混合物を必要とする。任意選択的に、例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、N,N−ジメチルアセトアミド、及び1−メチル−2−ピロリジノンのような共溶媒をこの時点で添加できる。共溶媒は、表面改質剤並びに表面改質された粒子の溶解度を向上できる。無機ゾル及び表面改質剤を含む混合物は、その後、室温又は高温で、混合あり又はなしで、反応される。
【0108】
表面改質された粒子は、続いて、種々の方法で硬化性(すなわち重合可能な)樹脂組成物に組み込むことができる。好ましい態様においては、溶媒交換手順が利用され、樹脂を表面改質されたゾルに添加してから水及び共溶媒(使用する場合)を蒸発により除去することにより、粒子を重合可能な樹脂中に分散された状態にする。蒸発工程は、例えば、蒸留、回転蒸発、又はオーブン乾燥により達成可能である。別の態様では、表面改質された粒子を水不混和性溶媒中に抽出した後、それが望ましい場合には溶媒交換を行うことができる。あるいは、表面改質されたナノ粒子を重合可能な樹脂に組み込む別の方法は、改質粒子を乾燥して粉末にした後、その中に粒子が分散された樹脂材料を添加することを伴う。この方法における乾燥工程は、例えば、オーブン乾燥又は噴霧乾燥のような、その系に適した従来の方法によって達成することができる。
【0109】
光学層は、ベース層に直接接触するか又はベース層に光学的に整列することができ、光学層が光の流れを方向付け又は集中させることができる寸法、形状、及び厚さであることができる。光学層は、米国特許第7,074,463号明細書に記載及び呈示されているような多数の有用なパターンのいずれかを有することができる構造化又はミクロ構造化された表面を有することができる。ミクロ構造化された表面は、フィルムの長さ又は幅に沿って伸長する複数の平行な長手方向の隆起部であることができる。これらの隆起部は、複数個のプリズム頂点から形成できる。これらの頂点は鋭角、円形又は扁平又は切頭であることができる。例えば、隆起部は4〜7〜15マイクロメートルの範囲の半径に丸めることができる。
【0110】
これは、環状プリズムパターン、キューブ−コーナーパターン、又はいずれかのレンズ状ミクロ構造であることができる定形又は不定形のプリズムパターンを包含する。有用なミクロ構造は、輝度向上フィルムとして使用するための完全内部反射フィルムとして作用できる定形プリズムパターンである。別の有用なミクロ構造は、反射フイルムとして使用するための再帰反射フィルム又は素子として作用できるコーナーキューブプリズムパターンである。別の有用なミクロ構造は、光学ディスプレイに使用するための光学素子として作用できるプリズムパターンである。別の有用なミクロ構造は、光学ディスプレイに使用するための光学回転フィルム又は素子として作用できるプリズムパターンである。
【0111】
ベース層は、光学製品、すなわち光の流れを制御するよう設計された製品への使用に好適な性質及び組成物であることができる。ほぼいかなる材料も、その材料が十分に光学的に透明であり、特定の光学製品に組立てられるか又は製品内で使用されるのに十分に構造的に強い限り、ベース材料として使用できる。ベース材料は、光学製品の性能が時間とともに損なわれないように十分な耐温度性及び耐老化性が備わっているものを選択できる。
【0112】
いずれかの光学製品のためのベース材料の特定の化学的組成物及び厚さは、構築されている特定の光学製品の要件に依存し得る。すなわち、強度、透明性、耐温度性、表面エネルギー、光学層への接着性に対するニーズのバランスである。
【0113】
有用なベース材料としては、例えば、スチレン−アクリロニトリル、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルローストリアセテート、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート、ナフタレンジカルボン酸系コポリマー又はブレンド、ポリシクロオレフィン、ポリイミド、及びガラスが挙げられる。所望により、ベース材料は、これらの材料の混合物又は組み合わせを含有できる。実施形態では、ベースは多層であってもよいし、又は連続相の中に懸濁又は分散した分散成分を含有してよい。
【0114】
ミクロ構造を有する製品のようないくつかの光学製品、例えば、輝度向上フィルムの場合、好ましいベース材料の例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリカーボネートが挙げられる。有用なPETフィルムの例には、フォトグレード(photograde)ポリエチレンテレフタレート及びデラウエア州ウィルミントン(Wilmington)のデュポン・フィルムズ(DuPont Films)から入手可能なメリネックス(MELINEX)(商標)PETが挙げられる。
【0115】
いくつかのベース材料は、光学的に活性であることができ、及び偏光板として作用することができる。多くのベースはまた、本明細書においてフィルム又は基材とも呼ばれ、光学製品分野において偏光板として有用であることが既知である。フィルムを通る光の偏光は、例えば、通過光を選択的に吸収する、フィルム材料内二色偏光子の包含により実現され得る。光の偏光はまた、配列雲母チップのような無機材料を組み込むことによって、又は連続フィルム中に分散している光変調液晶の液滴といった連続フィルム中に分散している不連続相によって実現させることができる。代替手段として、異なる材料のマイクロファイン層からフィルムを作製することができる。フィルム内の偏光材料は、例えば、フィルムの延伸、電場又は磁場の印加、及びコーティング技術のような方法を利用することによって、偏光配向に揃えることができる。
【0116】
偏光フィルムの例としては、米国特許第5,825,543号明細書及び同第5,783,120号明細書に記載のものが挙げられる。輝度向上フィルムとの組み合わせによるこれらの偏光フィルムの使用は、米国特許第6,111,696号明細書に記載されている。
【0117】
ベースとして使用できる偏光フィルムの第2の実施例は、米国特許第5,882,774号明細書に記載されたフィルムである。市販のフィルムは、3Mから商品名DBEF(二重輝度向上フィルム(Dual Brightness Enhancement Film))のもとに販売されている多層フィルムである。輝度向上フィルムにおけるこうした多層偏光光学フィルムの使用は、米国特許第5,828,488号明細書に記載されている。
【0118】
次に定義する用語については、特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所にて別の定義が与えられない限り、これらの定義が適用されるものとする。
【0119】
「ミクロ構造」は、本明細書において、米国特許第4,576,850号明細書に定義及び説明されている通りに用いられる。それゆえ、それは、ミクロ構造を有する物品の予め定められた所望の利用目的又は機能を叙述する又は特徴づける表面の構成を意味する。その物品の表面における突出部及びくぼみのような不連続は、中心線の上の表面輪郭により包囲された面積の合計が線の下の面積の合計と等しくなるように、ミクロ構造を通って引かれた平均中心線から輪郭が偏差すると考えられ、その線は物品の呼称面(nominal surface)(ミクロ構造を有する)に本質的に平行である。その偏位の高さは、例えば、1〜30cmの表面の代表的な特徴的な長さを通って、光学又は電子顕微鏡により測定したとき、一般に、約+/−0.005〜+/−750マイクロメートルである。前記平均中心線は、平面(piano)、凹面、凸面、非球面又はそれらの組み合わせであることができる。その偏位が低いオーダー、例えば、+/−0.005〜+/−0.1マイクロメートル又は、好ましくは、+/−0.05マイクロメートルであり、その偏位がまれにしか又はほとんど発生しない物品、すなわち、表面にいかなる有意な不連続もない物品は、ミクロ構造を有する表面が本質的に「平坦」又は「平滑な」表面であるものであり、そのような物品は、眼用レンズのような、例えば、精密光学素子又は精密光学インタフェースを有する素子として有用である。その偏位が低いオーダーであり頻繁に発生する物品としては、反射防止ミクロ構造を有するものが挙げられる。その偏位が高いオーダー、例えば、+/−0.1〜+/−750マイクロメートルであり、同じ又は異なる複数個の実用的な不連続を含むミクロ構造を特性とし、ランダム又は整然とした形で離れるか又は隣接している物品は、再帰反射プリズム状シート、ミクロ構造金型(例えばバリアリブ調製のためのペースト成形用)、直鎖フレネルレンズ、ビデオディスク、光視準プライバシーフィルム、及び輝度向上フィルムのような物品である。ミクロ構造を有する表面は、その低いオーダー及び高いオーダーの両方の実用的不連続を含有できる。ミクロ構造を有する表面は、その量又は種類がその物品の予め定められた所望の利用を有意に妨害するか又は悪影響を及ぼすものでない限り、外来の又は非実用的な不連続を含有してよい。
【0120】
「屈折率(index of refraction、又はrefractive index)」は、自由空間での電磁放射線の速度のその材料中での放射速度に対する比として理解される材料(例えば、モノマー)の絶対的な屈折率を指す。屈折率は、既知の方法を使用して測定でき、一般にボシュロム(Bausch and Lomb)屈折計(カタログ番号33.46.10)を使用して測定される。測定された屈折率は、計器に依存してある程度変動しうることは一般的に認識されている。
【0121】
「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート及びメタクリレート両方の化合物を指す。
【0122】
用語「ナノ粒子」は、本明細書において、約100nm未満の直径を有する粒子(一次粒子又は会合一次粒子)を意味するように定義される。
【0123】
「表面改質されたコロイド状ナノ粒子」とは、ナノ粒子が安定な分散を提供するようにそれぞれ改質表面を有するナノ粒子を表す。
【0124】
本明細書で「安定な分散」は、例えば、室温(約20〜22℃)、大気圧、及び過剰な電磁力がないという周囲条件下で、ある時間、例えば約24時間放置された後に、コロイド状ナノ粒子が疑集しない分散として定義される。
【0125】
「凝集」とは、互いに化学的に結合してよい一次粒子間の強力な会合を指す。凝集体のより小さい粒子への分解は、達成が困難である。
【0126】
「アグロメレーション」とは、電荷又は極性により保持一体化されていてよく、より小さい構成要素に分解可能である、一次粒子間の弱い会合を表す。
【0127】
「一次粒径」は、単一の(非凝集、非粒塊)粒子の平均直径を指す。
【0128】
端点による数の範囲の列挙には、その範囲内に包括される全ての数が包含される(例えば1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を包含する)。
【0129】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば「化合物」を含有する組成物の言及は、2つ以上の化合物の混合物を含む。本明細書及び添付特許請求の範囲内にて使用された場合、用語「又は」は、別段の明確な指示がない限り、一般的に「及び/又は」を含む意味で用いられる。
【0130】
特に指示がない限り、明細書及び添付特許請求の範囲に使用された成分の量、性質の測定等を表す全ての数は、全ての例において、「約」という用語により修正されることを理解されたい。
【0131】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施例に限定されるとみなされるべきではなく、むしろ添付の特許請求の範囲において明確に記載されるように、本発明の全ての態様を網羅するものと理解されるべきである。本明細書を再考することにより、本発明が対象とする様々な修正、等価の方法、並びに本発明を適用でき得る多数の構造が、当業者には容易に明らかとなるであろう。
【実施例】
【0132】
1.ゲイン試験法
カリフォルニア州チャッツワース(Chatsworth)のフォトリサーチ社(Photo Research, Inc)から入手可能なMS−75レンズ付きスペクトラスキャン(SpectraScan)(商標)PR−650スペクトラカラリメーター(SpectraColorimeter)を用いて、フィルムの光学的性能を測定した。拡散透過性中空ライトボックス上にフィルムを配置した。ライトボックスの拡散透過及び拡散反射は、ランベルト型として説明できる。ライトボックスは、厚み〜6mmの拡散PTFEプレートから作製された約12.5cm×12.5cm×11.5cm(L×W×H)の大きさの六面中空キューブであった。ボックスの1つの面は、サンプル表面として選択されている。中空ライトボックスの拡散反射率は、サンプル表面で測定したとき、〜0.83であった(例えば、以下に記載の測定法により400〜700nmの波長範囲全体にわたり平均した場合、〜83%)。ゲイン試験中、ボックスの底面内の〜1cmの円孔を介して内部からボックスを照光した(光が内部から試料面に向けて方向づけされたサンプル面の反対側)。この照光は、光を方向付けるために用いられる光ファイバーバンドルに取り付けられている安定化広帯域白熱光源(マサチューセッツ州マールボロ(Marlborough)ニューヨーク州オーバーン(Auburn)のショットフォステック社(Schott−Fostec LLC)製の直径〜1cmのファイバーバンドル延長部付きフォステック(Fostec)DCR−II)を用いて提供する。標準的な線吸収偏光子(例えばメレスグリオ(Melles Griot)03 FPG 007)をサンプルボックスとカメラの間に配置する。カメラは、〜34cmの距離でライトボックスのサンプル表面に焦点を合わせ、吸収偏光子は、カメラレンズから〜2.5cm離して配置する。照射したライトボックスの輝度は、所定の位置に偏光子を配置するとともにサンプルフィルムのない状態で測定したところ、>150cd/mであった。サンプルフィルムをボックスに概ね接触した状態にしてサンプルフィルムをボックスのサンプル面に平行に配置したときに、ボックスのサンプル面の平面に対して法線入射方向で、サンプル輝度をPR−650によって測定する。ライトボックス単独で同じように測定した輝度と、このサンプル輝度を比較することによって、相対ゲインを計算する。迷光源を排除するために、全測定を黒色包囲体中で行った。
【0133】
ライトボックスの拡散反射率は、直径15.25cm(6インチ)のスペクトラロン(Spectralon)被覆積分球と、安定化広帯域ハロゲン光源と、光源用の電源を用いて測定した。これらはすべて、ニューハンプシャー州サットン(Sutton)のラブスフェア(Labsphere)から供給されている。積分球は、3つの開口ポートを有していた。1つのポート(直径2.5cm)は、入力光用であり、90度で第2の軸に沿った1つのポート(直径2.5cm)は、検出ポートとして用いられ、90度で第3の軸に沿った(すなわち最初の2つの軸に直交する)第3のポート(直径5cm)は、サンプルポートとして用いられた。PR−650スペクトラカラリメーター(Spectracolorimeter)(上記と同一のもの)は、〜38cmの距離で検出器用ポートに焦点を合わせた。拡散反射率が〜99%であるラボスフェア(Labspher)製の較正反射標準(SRT−99−050)を用いて、積分球の反射効率を計算した。標準は、ラボスフェア(Labspher)により較正されたものであり、NIST標準(SRS−99−020−REFL−51)が基になっている。積分球の反射効率を次のように計算した。
【0134】
球輝度比=1/(1−R球×R標準)
この場合の球輝度比は、参照サンプルでサンプルポートを覆って検出器ポートで測定した輝度を、サンプルでサンプルポートを覆わずに検出ポートで測定した輝度で除すことによって得られる比である。この輝度比及び較正標準の反射率(R標準)がわかれば、積分球の反射効率(R球)を計算することができる。この値は次いで再度試料の反射率を測定するために類似の式において使用される、この場合ではPTFEライトボックス:
球体輝度比=1/(1−R球体×R試料)
この場合には、球体輝度比は、試料を試料ポートに置いたときの検出器における輝度を、試料を用いずに測定した輝度で除すことによって得られる比として求める。R球は以上からわかるので、Rサンプルを計算することができる。これらの反射率を4nmの波長間隔で計算し、400〜700nmの波長範囲にわたる平均として報告した。
【0135】
1枚のシートのゲインを、垂直(又はE.T.テスター(Tester)で使用されるディフューザーボックスの前面を基準にして垂直方向)で試験する。水平、又は交差したシート配置においては、フィルム積み重ね体のボトムシートが垂直方向にあり、トップシートがディフューザーボックスの前面に水平又は平行である。
【0136】
2.引張特性
重合可能な樹脂組成物は、樹脂を金型に注ぐことによって引張特性試験に適した試験試料に成形した。重合可能な樹脂と接触する金型のベースは厚さ0.64cm(0.25インチ)の石英ガラスプレートからなった。
【0137】
石英ガラスプレート上に配置されるのは、中央に方形の開口部(幅=1.27cm(0.5インチ)、長さ=17.8cm(7インチ)、及び厚さ=〜0.08cm(〜0.031インチ))を有する方形のシリコーン層(幅=12.7cm(5インチ)、長さ=22.9cm(9インチ)、厚さ=〜0.08cm(〜0.031インチ))である。このシリコーン層は、金型の側壁を形成する。有用であることが見出されたシリコーン金型の1つは、マックマスター・カー(McMaster-Carr)よりカタログ番号86045K321で入手できる。
【0138】
金型の方形の陥凹を、重合可能な樹脂で充満した。樹脂及び金型の露出面を、続いて、0.13mm(5ミル)の下地処理されていないPETで被覆した。充満された金型を、続いて、メリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg)のフュージョンUVシステムズ社(Fusion UV Systems, Inc.)より入手可能な、236.2W/cm(600W/in)可変電源を使用する「D−バルブ(D−bulb)」からの紫外線に、ラインスピード0.25m/s(毎分50フィート)で、片面当たり2回、合計4回暴露した。成形したサンプルは、厚さが0.09cm(0.038インチ)〜0.11cm(0.043インチ)の範囲であった。
【0139】
サンプルは、引張試験の前にまず排気対流式オーブン内で65℃で16時間コンディショニングした。そのサンプルを、続いて19〜22℃(67〜72°F)及び相対湿度5〜30で試験用にコンディショニングした。
【0140】
重合樹脂の硬化フィルムの引張特性を、ASTM D 882−02薄いプラスチックシートの引張り特性の標準試験方法(Tensile Properties of Thin Plastic Sheeting)に記載されているように測定した。クロスヘッド速度(グリップ分離速度)は、初期グリップ分離(10.2cm(4インチ))に初期ひずみ速度(0.02cm/cmmin(0.025インチ/インチmin))を乗じたものに等しかった。試料の厚さは、ASTM D 882−02の10.2節に従って測定した。
【0141】
3.ISO 1519に記載の屈曲試験(円筒形マンドレル)を用いて、輝度向上フィルムの耐亀裂性を測定し、破壊マンドレルサイズを報告した。
【0142】
屈曲試験は、マンドレル軸に垂直なプリズム軸線及びマンドレルから見て外方向を向いたプリズムで実施した。試験したサンプルは、65℃で16時間コンディショニングした。
【0143】
ZrOゾル
実施例で使用したZrOゾルは、(米国特許出願第11/079832号及び同第11/078468号に記載の光相関分光法(PCS)、X線回折及び熱重量分析法に従って測定したときに)次の特性を有した。
【0144】
【表2】

【0145】
【表3】

【0146】
%C/T=一次粒径
ZrOゾルの調製は、米国特許出願第11/079832号(2005年3月14日出願)及び同第11/078468号(2005年3月11日申請)に記載されている。
【0147】
フタル酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステルの調製
112.1gの無水フタル酸、87.9gの2−ヒドロキシエチルアクリレート及び0.44gのトリエチルアミンを、丸底フラスコ内で混合する。少量の乾燥空気をその液体中にバブリングする。反応物を混合し、75℃に加熱する。反応物を、その温度で6時間保持する。室温へ冷却する。生成物を分析し、NMRによってフタル酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステルと判定した。その生成物は、時間の経過とともに部分的に結晶化する。
【0148】
対照
ZrOゾル(103.17g)、MEEAA(6.08g)、水(77.00g)、1−メトキシ−2−プロパノール(150.0g)、マレイン酸の20.76%1−メトキシ−2−プロパノール溶液(6.31g)、TMPTA/PEA/BR31の2/3/5混合物(26.82g)、及びプロスタブ(Prostab)5198の5%水溶液(0.20g)を、1L丸底フラスコに投入した。水及び1−メトキシ−2−プロパノールを回転蒸発により除去し、屈折率1.540の濃縮ZrOゾルを得た。1−メトキシ−2−プロパノール(70.0g)及び水(50.0g)を、ZrOゾルに添加した。水及び1−メトキシ−2−プロパノールを回転蒸発により除去し、屈折率1.554の濃縮ZrOゾルを得た。フタル酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル(3.28g)、1−メトキシ−2−プロパノール(10.0g)及び水(6.0g)を濃縮ZrOゾルに添加した。水及びアルコールを回転蒸発により除去し、屈折率1.645のZrOのアクリル樹脂分散液を得た。1−メトキシ−2−プロパノール(2.0g)及び水(0.2g)を、ZrO分散液に添加した。残りのアルコール及び水を回転蒸発により除去した。得られたZrOのアクリル樹脂分散液は、ZrOが約52.4%であり、屈折率が1.6495であった。
【0149】
重合可能な樹脂組成物1
ZrOゾル(40.87重量%で1400gの固形分)、コハク酸モノ−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチル]エステル(1−メトキシ−2−プロパノール中50重量%で120.84gの固形分)、1−メトキシ−2−プロパノール(966g)、コハク酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル(1−メトキシ−2−プロパノール中50重量%で167.2gの固形分)、2−フェニル−フェニルアクリレート/SR601/PEAの50/25/25混合物(357.3g)及びプロスタブ(ProStab)5198(.22g)を、3つ口1L丸底フラスコに添加した。水及びアルコールを真空蒸留により除去し、得られた分散液は、アクリレート樹脂中に約53.3%のZrOであった。0.467重量%のダロキュア(Darocure)1173を、蒸留後のコンポジット樹脂に添加した。最終混合物の屈折率は、ボシュロム(Bausch and Lomb)屈折計(カタログ番号33.46.10)を使用して1.649と測定された。粘度は、スピンドル18及び小型サンプル用アダプタを備えたブルックフィールド(Brookfield)DV II+粘度計を用いて、60℃で0.35Pa・s(346cP)と報告された。
【0150】
重合可能な樹脂組成物2
ZrOゾル(40.86重量%ZrO)、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、コハク酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル、2−フェニル−フェニルアクリレート/PEA/SR601の50/30/20重量%混合物、及びプロスタブ(ProStab)5198を、実施例1bと同様の方法で組み合わせた。この混合物に、26.8重量%の1−メトキシ−2−プロパノールを添加した。水及びアルコールを真空蒸留によって除去し、得られた分散液はおおよそ次のものであった:
3.00部2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸
0.005部プロスタブ(Prostab)5198
10.94部コハク酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル
9.312部PEA
6.21部SR601
15.52部2−フェニル−フェニルアクリレート
55.00部ZrO
最終混合物の屈折率は、ボシュロム(Bausch and Lomb)屈折計(カタログ番号33.46.10)を使用して1.6475と測定された。粘度は、スピンドル18及び小型サンプル用アダプタを備えたブルックフィールド(Brookfield)DV II+粘度計を用いて、60℃で0.34Pa・s(340cP)と報告された。0.470重量%のダロキュア(Darocure)1173を、蒸留後のコンポジット樹脂に添加した。
【0151】
重合可能な樹脂組成物3
ZrOゾル(40.86重量%ZrO)、コハク酸モノ−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチル]エステル、コハク酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル、2−フェニル−フェニルアクリレート/PEA/SR601の50/30/20重量%混合物、及びプロスタブ(ProStab)5198を、重合可能な樹脂組成物1と同様の方法で組み合わせた。このブレンドに、13.9重量%の1−メトキシ−2−プロパノールを添加した。水及びアルコールを真空蒸留によって除去し、得られた分散液はおおよそ次のものであった:
5.6部コハク酸モノ−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチル]エステル
0.005部プロスタブ(Prostab)5198
8.3部コハク酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル
9.8部PEA
6.6部SR601
16.4部2−フェニル−フェニルアクリレート
53.3部ZrO
最終混合物の屈折率は、ボシュロム(Bausch and Lomb)屈折計(カタログ番号33.46.10)を使用して1.6479と測定された。粘度は、TAインストルメンツ(TA Instruments)(デラウエア州ニューキャッスル(New Castle)より入手可能な、0°の40mm平行プレートを備え、ギャップ500マイクロメートル及びせん断速度1000s−1のAR 2000レオメーターを用いて、60℃で0.32Pa・s(315cP)と報告された。0.470重量%のダロキュア(Darocure)1173を、蒸留後のコンポジット樹脂に添加した。
【0152】
フィルム調製
ヴィクイティ(Vikuiti)BEF II(ミネソタ州セントポール(St. Paul)の3M社(3M Co.)より市販)に見出されたプリズム形状パターンに類似した、公称ピッチ間隔50マイクロメートルの90度プリズムの直鎖の列からなる20.3cm×27.9cm(8インチ×11インチ)の金属マスターを、ホットプレート上に置き、60℃(140°F)に加熱した。実施例1〜3の重合可能な樹脂の各4mLのビーズを、使い捨てピペットを用いて、マスターツール上に別々に適用した。次に、デュポン帝人フィルム(Dupont Teijin Films)よりメリネックス(MELINEX)623として入手可能な500ゲージPETを、樹脂ビーズ及びマスターツールの上に定置した。
【0153】
PETフィルムは、直鎖プリズムがフィルムの高ゲイン軸線にほぼ垂直(90°+/−20°)に配向されるように配向した。マスターツール、樹脂及びPETを、続いて、マスターツールを完全に充満するのに十分な力を樹脂に加え、同時にいかなる連行空気も排除しながら、71℃(160°F)にて加熱したニップロールに通した。充満されたマスターツールを、続いて、メリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg)のフュージョンUVシステムズ社(Fusion UV Systems, Inc.)より入手可能な、236.2W/cm(600W/in)可変電源を使用する「D−バルブ(D−bulb)」からの紫外線放射に、ラインスピード0.25m/s(50fpm)で、2回暴露した。続いて、PETフィルムをマスターツールから手で取り外した。PETフィルム上に形成されたプリズム状コーティングは、約25マイクロメートルのコーティング厚さを与えた。
【0154】
【表4】

【0155】
引張り、伸び、及び屈曲試験を実施した輝度向上フィルムのサンプルは、上記のフィルム調製に類似した連続プロセスを用いて調製した。
【0156】
【表5】

【0157】
重合可能な樹脂組成物4
目標とする引張り、伸び、及びマンドレルサイズを示すと推測される輝度向上フィルムのプリズム構造に好適な別の重合可能な樹脂は、次の通りである:
ZrOゾル(40.86重量%ZrO)、コハク酸モノ−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチル]エステル、コハク酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル、2,4,6−トリブロモフェノキシエチルアクリレート/PEA/SR601の50/30/20重量%混合物、及びプロスタブ(ProStab)5198を、重合可能な樹脂組成物1と同様の方法で組み合わせることができた。このブレンドに、13.9重量%の1−メトキシ−2−プロパノールを添加できた。水及びアルコールは真空蒸留で除去することができ、得られた分散液はおおよそ次のものであった:
5.6部コハク酸モノ−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチル]エステル
0.005部プロスタブ(Prostab)5198
8.3部コハク酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル
9.8部PEA
6.6部SR601
16.4部2,4,6トリブロモフェノキシエチルアクリレート
53.3部ZrO
0.470重量%のダロキュア(Darocure)1173を、蒸留後のコンポジット樹脂に添加できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のジ(メタ)アクリレート芳香族モノマーを有する有機成分と、少なくとも10重量%の表面改質された無機ナノ粒子とを含む、少なくとも1.58の屈折率を有する重合可能な樹脂組成物の反応生成物を含む重合構造を有する、輝度向上フィルム、
前記輝度向上フィルムは、6mm未満で破壊するマンドレルサイズを有する。
【請求項2】
ベース層及び前記ベース層上に配置された重合構造を有する、輝度向上フィルム、
前記重合構造は、少なくとも1種のジ(メタ)アクリレート芳香族モノマーを有する有機成分と、少なくとも10重量%の表面改質された無機ナノ粒子とを含む、少なくとも1.58の屈折率を有する重合可能な樹脂組成物の反応生成物を含み、前記輝度向上フィルムが、式D=1000(T/0.025−T)(式中、Tは、ベース層の厚さである。)による破壊マンドレルサイズを有する。
【請求項3】
有機成分と少なくとも10重量%の表面改質された無機ナノ粒子とを含む、少なくとも1.58の屈折率を有する重合可能な樹脂組成物の反応生成物を含む重合構造を有する、輝度向上フィルム、
前記重合可能な樹脂組成物の硬化フィルムは、少なくとも25MPaの破断点引張り強さ、及び少なくとも1.75%の破断点伸びを有する。
【請求項4】
1種以上のエチレン性不飽和モノマー又はオリゴマーを含む有機成分と、
非反応性相溶化基を有する少なくとも1種のモノカルボン酸を含む第1の表面処理剤 と、
前記有機成分と反応する共重合可能な基を有する少なくとも1種の不揮発性モノカル ボン酸を含む第2の表面処理剤と、
を用いて表面改質された、少なくとも10重量%の無機ナノ粒子と、
を含む重合可能な樹脂組成物の反応生成物を含む重合構造を有する、輝度向上フィルム、
前記ナノ粒子は、前記第1の表面処理剤を超える化学量論量で、前記第2の表面処理剤を含む。
【請求項5】
合計で少なくとも10重量%の量の1種以上の単官能ビフェニルモノマーを含む有機成分と、
水溶性のテールを有する少なくとも1種のモノカルボン酸を含む第1の表面処理剤と 、
脂肪族無水物とヒドロキシアルキルアクリレートとの反応によって調製された少なく とも1種のアクリレート官能化表面改質剤を含む第2の表面処理剤と
を用いて表面改質された、少なくとも10重量%の無機ナノ粒子と、
を含む重合可能な樹脂組成物の反応生成物を含む重合構造を有する、輝度向上フィルム。
【請求項6】
前記輝度向上フィルムが、6mm未満で破壊するマンドレルサイズを有する、請求項3〜5のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項7】
前記重合可能な樹脂組成物が、少なくとも1.61の屈折率を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項8】
前記重合可能な樹脂組成物が、少なくとも1.645の屈折率を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項9】
前記有機成分が、少なくとも1種のビフェニルモノマーを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項10】
前記ビフェニルモノマーが、450g/モル未満のMnを有する、請求項5又は9に記載の輝度向上フィルム。
【請求項11】
前記ビフェニルモノマーが、60℃で0.5Pa・s(500cps)未満の粘度を有する、請求項5又は9に記載の輝度向上フィルム。
【請求項12】
前記1種以上のビフェニルモノマーが、有機成分の25重量%〜75重量%の範囲の量で存在する、請求項5又は9に記載の輝度向上フィルム。
【請求項13】
前記1種以上のビフェニルモノマーが、有機成分の30重量%〜50重量%の範囲の量で存在する、請求項12に記載の輝度向上フィルム。
【請求項14】
前記ビフェニルモノマーが、非置換の芳香族環を有する、請求項5又は9〜13のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項15】
前記ビフェニルモノマーが、(メタ)アクリレート基を有する、請求項5又は9〜13のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項16】
前記ビフェニルモノマーが、次の一般式を有する、請求項15に記載の輝度向上フィルム、
【化1】

式中、R1は、H又はCHであり、
Xは、O又はSであり、
nは、0〜10の範囲であり、
Lは、1〜5個の炭素原子を有し、任意選択的にヒドロキシで置換された、アルキル基である。
【請求項17】
前記ビフェニルモノマーが、次の一般式を有する請求項15に記載の輝度向上フィルム。
【化2】

式中、R1は、H又はCHであり、
Xは、O又はSであり、
Qは、−(C(CH−、−CH、−C(O)−、−S(O)−、及び−S(O)−から選択され、
nは、0〜10の範囲であり、
Lは、1〜5個の炭素原子を有する、任意選択的にヒドロキシで置換された、アルキル基である。
【請求項18】
前記ビフェニルモノマーが、アクリレート基を含む、請求項15〜17のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項19】
前記ビフェニルモノマーが、2−フェニル−フェニルアクリレート、4−(−2−フェニル−2−プロピル)フェニルアクリレート、2−フェニル−2−フェノキシエチルアクリレート、及びこれらの混合物からなる群から選択された、請求項18に記載の輝度向上フィルム。
【請求項20】
前記有機成分が、少なくとも1種の二官能エチレン性不飽和モノマーを更に含む、請求項3〜5のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項21】
前記二官能エチレン性不飽和モノマーの量が、前記有機成分の5重量%〜80重量%の範囲である、請求項1〜2又は20のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項22】
前記二官能エチレン性不飽和モノマーが、芳香族(メタ)アクリレートモノマーである、請求項1、2又は20のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項23】
前記二官能エチレン性不飽和モノマーが、次の構造を有する主要部分を含む、請求項22に記載の輝度向上フィルム。
【化3】

式中、R1は、独立して、水素又はメチルであり、
R2は、独立して、H又はBrであり、
Zは、独立して、−C(CH−、−CH−、−C(O)−、−S−、−S(O)−、又は−S(O)−であり、
Lは、直鎖又は分枝鎖のC〜C12アルキル基から独立して選択された連結基であって、前記炭素鎖が1つ以上の酸素基で任意選択的に置換されており、そして/又は前記炭素原子が1つ以上のヒドロキシル基で任意選択的に置換されている。
【請求項24】
前記有機成分が、前記ビフェニルモノマーよりも低い屈折率を有する1種以上の単官能(メタ)アクリレートモノマーを25重量%まで更に含む、請求項5又は8〜19のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項25】
前記重合可能な樹脂が、少なくとも3つのエチレン性不飽和基を有する架橋剤を5重量%未満含む、請求項1〜24のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項26】
前記無機ナノ粒子が、吸着された非反応性揮発性酸を含み、そして前記輝度向上フィルムの酸含有量が、5重量%未満である、請求項1〜25のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項27】
前記重合可能な樹脂組成物が、シラン表面処理剤を含まない、請求項1〜26のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項28】
前記無機ナノ粒子が、次の一般式の第1の表面処理剤を含み、
CH−[O−(CH−X−(CH−COOH
式中、Xは、−O−、−S−、−C(O)O−及び−C(O)NHからなる群から選択され、nは、約1〜3の範囲であり、xは、約1〜10の範囲であり、yは、約1〜4の範囲である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項29】
前記第1の表面処理剤が、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸、コハク酸モノ−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチル]エステル、マレイン酸モノ−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチル]エステル、及びグルタル酸モノ−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチル]エステル、コハク酸モノ−2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチルエステル、及びこれらの混合物からなる群から選択された、請求項28に記載の輝度向上フィルム。
【請求項30】
前記無機ナノ粒子が、コハク酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル、マレイン酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル、及びグルタル酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル、マレイン酸モノ−(4−アクリロイルオキシ−ブチル)エステル、コハク酸モノ−(4−アクリロイルオキシ−ブチル)エステル、グルタル酸モノ−(4−アクリロイルオキシ−ブチル)エステルからなる群から選択された第2の表面処理剤を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項31】
前記無機ナノ粒子の量が、40重量%〜60重量%の範囲である、請求項1〜30のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項32】
前記無機ナノ粒子が、少なくとも1.68の屈折率を有する、請求項1〜31のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項33】
前記無機ナノ粒子が、ジルコニア、チタニア、及びこれらの混合物からなる群から選択された、請求項32に記載の輝度向上フィルム。
【請求項34】
前記無機ナノ粒子が、ジルコニアからなる、請求項33に記載の輝度向上フィルム。
【請求項35】
有機成分と、少なくとも10重量%の表面改質された無機ナノ粒子とを含む、少なくとも1.58の屈折率を有する、重合可能な樹脂組成物、
前記重合可能な樹脂組成物の硬化フィルムは、少なくとも25MPaの破断点引張り強さ、及び少なくとも2%の破断点伸びを有する。
【請求項36】
有機成分と、吸着された非反応性揮発性酸を含む少なくとも10重量%の表面改質された無機ナノ粒子とを含む、重合可能な樹脂組成物、
前記重合可能な樹脂組成物の硬化フィルムは、少なくとも25MPaの破断点引張り強さ、及び少なくとも2%の破断点伸びを有する。
【請求項37】
1種以上のエチレン性不飽和モノマー又はオリゴマーを含む有機成分と、
非反応性相溶化基を有する少なくとも1種のモノカルボン酸を含む第1の表面処理剤 と、
前記有機成分と反応する共重合可能な基を有する少なくとも1種の不揮発性モノカル ボン酸を含む第2の表面処理剤と、
を用いて表面改質された、少なくとも10重量%の無機ナノ粒子と、
を含む、重合可能な樹脂組成物、
前記ナノ粒子は、前記第1の表面処理剤を超える化学量論量で、前記第2の表面処理剤を含む。
【請求項38】
合計で少なくとも10重量%の量の1種以上の単官能ビフェニルモノマーを含む有機成分と、
i)水溶性のテールを有する少なくとも1種のモノカルボン酸と
ii)脂肪族無水物とヒドロキシルアルキルアクリレートとの反応によって調製され た少なくとも1種のアクリレート官能化された表面改質剤と、
を用いて表面改質された、少なくとも10重量%の無機ナノ粒子と、
を含む、重合可能な樹脂組成物。
【請求項39】
前記無機ナノ粒子の量が、40重量%〜60重量%の範囲である、請求項35〜38のいずれか一項に記載の重合可能な樹脂組成物。
【請求項40】
前記無機ナノ粒子が、少なくとも1.68の屈折率を有する、請求項35〜38のいずれか一項に記載の重合可能な樹脂組成物。
【請求項41】
前記重合可能な樹脂組成物が、40重量%〜60重量%の表面改質された無機ナノ粒子を含み、前記ナノ粒子が、少なくとも1.68の屈折率を有する、請求項35〜38のいずれか一項に記載の重合可能な樹脂組成物。
【請求項42】
前記無機ナノ粒子が、ジルコニア、チタニア、及びこれらの混合物からなる群から選択された、請求項40に記載の重合可能な樹脂組成物。
【請求項43】
前記表面改質された無機ナノ粒子が、吸着された非反応性揮発性酸を含み、そして前記輝度向上フィルムの酸含有量が、5重量%未満である、請求項35〜42のいずれか一項に記載の重合可能な樹脂組成物。
【請求項44】
前記重合可能な樹脂組成物が、シラン表面処理剤を含まない、請求項35〜42のいずれか一項に記載の重合可能な樹脂組成物。
【請求項45】
請求項35〜42に記載の重合可能な組成物の反応生成物を含む、光学物品。
【請求項46】
ミクロ構造化表面が、請求項45に記載の重合可能な組成物の反応生成物を含む、ミクロ構造化された表面を有する、光学フィルム。
【請求項47】
非反応性相溶化基を有する少なくとも1種のモノカルボン酸を含む第1の表面処理剤と
有機成分と反応する共重合可能な基を有する少なくとも1種の不揮発性モノカルボン酸を含む、第2の表面処理剤と、
を用いて表面改質された、無機ナノ粒子、
前記無機ナノ粒子は、前記第1の表面処理剤を超える化学量論量で、前記第2の表面処理剤を含む。

【公表番号】特表2010−519599(P2010−519599A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551812(P2009−551812)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/055058
【国際公開番号】WO2008/121465
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】