説明

耐候性多層フィルム

【課題】改良された耐候性高分子フィルムを提供する。
【解決手段】第1のポリマー層が第1の紫外線吸収剤を含み、第2のポリマー層が第1のポリマー層を覆っていて且つ第2の紫外線吸収剤を含み、第1の紫外線吸収剤は300nm未満のピーク吸収波長を有しそして第2の紫外線吸収剤は300nmより大きいピーク吸収波長を有する、第1および第2のポリマー層を含む多層高分子層。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して耐候性多層高分子フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
メーカーは、ますます化学および環境ダメージに耐性がある表面を与えるポリマーを求めている。例えば、フッ素化ポリマーは薬品、例えばメチルエチルケトン(MEK)と接触に起因するダメージへの耐性、染料への耐性、および環境条件への暴露に起因するダメージへの耐性を有している。そのようなポリマーは、用途、例えば、飛行機および列車の貨物の貨物室ライナー、ビニル製品の羽目板表面処理剤、および光電池の保護カバーに用いられてきた。
【0003】
屋外用途として、メーカーは耐候性フィルムおよび、特に紫外線照射のダメージから下に位置する表面を保護するフィルムを提供しようとしている。加えて、いくつかのフィルムは望ましいことにそれ自体紫外線照射に起因するダメージに対して耐性がある。アクリルポリマーを用いる高分子フィルムは紫外線照射に起因するダメージを特に受け易い。特定のアクリルポリマーは、フィルムから浸出し、紫外線を照射されるときにフリーラジカルダメージ、又は架橋を受け得て、高分子フィルムの物理的特性の変化に至る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
結果として、メーカーは高分子フィルムの層に紫外線(UV)吸収剤を添加する。しかしながら、紫外線吸収剤の濃度が高いと典型的には高分子フィルムの機械的性能の低下と高分子フィルム内のヘイズ不良をもたらす。加えて、過去の著者らは、時間とともに性能の低下に至る高分子フィルムからのUV吸収剤の浸出に言及してきた。結果として、高分子フィルムの寿命は制限され得てそして下に位置する基材又は成分は、保護フィルムが劣化すると損なわれ得る。それ故、改良された耐候性高分子フィルムが望まれる。
従って、本発明は、改良された耐候性高分子フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明において、多層高分子フィルムは第1および第2のポリマー層を含む。第1のポリマー層は第1の紫外線吸収剤を含む。第2のポリマー層は第1のポリマー層を覆っていて且つ第2の紫外線吸収剤を含む。第1の紫外線吸収剤は300nm未満のピーク吸収波長を有しそして第2の紫外線吸収剤は300nmより大きいピーク吸収波長を有する。
本発明は、 多層高分子フィルムであって、
フルオロポリマーを含んでいて紫外線吸収剤を含まない第1のポリマー層、
第1のポリマー層に接して30〜80質量%のフルオロポリマー、20〜70質量%のアクリルポリマーおよび0.1〜2.0質量%の第1の紫外線吸収剤を含む第2のポリマー層、および
第2のポリマー層に接してアクリルポリマーおよび0.1〜2.0質量%の第2の紫外線吸収剤を含む第3のポリマー層を含み、
波長200〜350nmの電磁放射線に対して少なくとも3.5の吸光度を有する、前記多層高分子フィルムに関する。
【0006】
他の典型的な実施態様において、多層高分子フィルムは第1および第2のポリマー層を含む。第1のポリマー層はフルオロポリマーを含む。第2のポリマー層は第1のポリマー層を覆っていて且つフルオロポリマー、アクリルポリマー、および少なくとも2種類の紫外線吸収剤を含む。
【0007】
さらなる典型的な実施態様において、多層高分子フィルムは第1および第2のポリマー層を含む。第1のポリマー層はフルオロポリマーを含む。第2のポリマー層はアクリルポリマーおよび少なくとも2種類の紫外線吸収剤を含む。多層高分子フィルムは約250nmの波長を有する電磁放射線に対して少なくとも約4.0の吸光度を有しそして約315nmの波長を有する電磁放射線に対して少なくとも約4.0の吸光度を有する。
【0008】
追加の実施態様において、多層高分子フィルムはポリフッ化ビニリデンを含む第1のポリマー層を含む。多層高分子フィルムは7.0%以下のヘイズを有し且つ200nm〜350nmの波長を有する電磁放射線に対して少なくとも約3.5の吸光度を有する。
【0009】
さらなる典型的な実施態様において、多層高分子フィルムは第1および第2のポリマー層を含む。第1のポリマー層は第1の紫外線吸収剤を含み且つ265nmの波長を有する電磁波放射線に対して少なくとも約3.0の吸光度を有する。第2のポリマー層は第1のポリマー層を覆っている。第2のポリマー層は315nmの波長を有する電磁放射線に対して少なくとも約3.0の吸光度を有する。多層高分子フィルムは400nm〜700nmの波長を有する放射線に対して少なくとも約80.0%の透過率を有する。
【0010】
他の典型的な実施態様において、多層高分子フィルムは第1および第2のポリマー層を含む。第1のポリマー層は第1の紫外線吸収剤を含む。第2のポリマー層は第1のポリマー層を覆っている。第2のポリマー層は第2の紫外線吸収剤を含む。第1の紫外線吸収剤は第2の紫外線吸収剤とは異なる。
【0011】
さらなる典型的な実施態様において、多層高分子フィルムはフルオロポリマーとアクリル樹脂との混合物から形成された層を含む。多層高分子フィルムは400nm〜700nmの波長を有する放射線に対して少なくとも約80.0%の透過率を有し且つASTM 2244による800時間の紫外線暴露後の赤色方形に対して20.0以下のデルタEを示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、典型的な多層高分子フィルムの説明図である。
【図2】図2は、典型的な紫外線吸収剤の吸収性の説明図である。
【図3】図3は、多層高分子フィルムの典型的な吸光度パターンの説明図である。
【図4】図4は、多層高分子フィルムの典型的な吸光度パターンの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、添付の図面を参照することにより、より良好に理解することができ、また、その多くの特徴や利点が当業者に明らかとなるであろう。
【0014】
特定の実施態様において、多層高分子フィルムは第1の紫外線(UV)吸収剤成分を有する第1のポリマー層と第2のUV吸収剤成分を有する第2のポリマー層を含む。第1および第2のUV吸収剤は、例えば、波長に対して異なるUV吸光度分布を有して、互いに異なっている。1つの典型的な実施態様において、第1のポリマー層は少なくとも2種類の紫外線吸収剤を含みそして第2のポリマー層は少なくとも2種類の紫外線吸収剤を含む。一般に、紫外線(UV)吸収剤は有機の放射線吸収剤でありそして非有機又はセラミックの物質を含まない。1つの例において、多層高分子フィルムは紫外線に対して不透明又は半透明である一方、可視光に対して透明である。一般に、多層高分子フィルムは少なくとも2つの層を含む。例えば、多層高分子フィルムは2、3、4、5又はさらに多くの層を含み得る。
【0015】
他の典型的な実施態様において、多層高分子フィルムはフルオロポリマーを含む第1のポリマー層およびフルオロポリマー、アクリルポリマーおよび少なくとも2種類のUV線吸収剤の混合物を含む第2のポリマー層を含む。多層高分子フィルムはアクリルポリマーおよび少なくとも2種類のUV線吸収剤を含む第3のポリマー層を含み得る。特定の態様において、多層フィルムは最外層、少なく1つの中間層、および最内部層を含む。一般に、最外層は薄い防護壁を形成し、1つ以上の中間層は機械的特性を与えそして最内部層は追加的な防護壁を形成するか又は基材との接着、結合又は接触のための接着剤層を形成する。
【0016】
例えば、図1は3つの層102、104および106を有する多層フィルム100からなる典型的な実施態様を説明する。多層フィルム100は通常、外表面112と内表面114を含む。1つの実施態様において、外表面112は環境条件に暴露され、そして内表面114は基材と結合するよう構成されている。
【0017】
特定の実施態様において、多層フィルム100は最外表面112を形成している最外層102を含む。最外層102は中間層104の第1の主要表面108に直接的に結合している。最内部層106は、最内部表面114を形成しそして中間層104の第2の主要表面110に直接的に結合している。例えば、層102、104および106は多層フィルムを形成するために共押出しされてよい。
【0018】
保護フィルムを形成するとき、最外ポリマー層102は典型的には耐候性のポリマー、例えばハロゲン化ポリマー、例えばフルオロポリマーを含む。典型的なフルオロポリマーはフッ素置換オレフィンから形成されたポリマー又はフッ化ビニリデン、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、およびこれらフッ素化モノマーの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含むポリマーを含む。典型的なフルオロポリマーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)又はPVDFコポリマー、例えばフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーを含む。典型的なフルオロポリマーは、上記モノマー、例えば、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロプロピルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル(MFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、又は4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン−フッ化ビニリデン(THV)の1種又はそれ以上を含むポリマー、ポリマーブレンド又はコポリマーを含み得る。さらなる典型的実施態様において、フルオロポリマーはアルケンモノマーとフッ素化モノマーのコポリマー、例えばダイキン(Daikin)アメリカ社のダイキン(登録商標)EFEPとであり得る。
【0019】
多くのフルオロポリマーが種々のグレードで複数の供給業者から市販されている。例えば、供給業者らは異なる性質、例えば特定の粘度特性を与えるための異なる分子量ではあるが名目上は同じ組成を有する多数の樹脂を供給し得る。典型的なPVDFポリマーにはソルベイソレッキス(Solvay Solexis)社によるPVDF1010又はPVDF21510が含まれる。他の例にはアトフィナ(Atofina)社によるカイナール(Kynar)720、カイナール(Kynar)740、又はカイナール(Kynar)760が含まれる。さらなる例で、PVDFホモポリマーのアロイおよびPVDFコポリマーはフィルムに弾性率の向上および光沢の減少をもたらし得る。
【0020】
典型的な実施態様において、最外層のポリマー層102は約80質量%〜100質量%のフルオロポリマーで形成されている。例えば、最外層のポリマー層102は、100質量%のフルオロポリマー、例えばPVDFで形成され得て、そして、特定の態様においては、実質的にフルオロポリマーからなる。特定の実施態様において、最外層のポリマー層102はUV吸収剤を含まない。
【0021】
1つ以上の中間層104は典型的にポリマーとUV吸収剤との混合物を含む。1つの典型的な実施態様において、中間層104はフルオロポリマーと混合可能であるポリマー、例えばアクリルポリマーを含む。他の典型的な実施態様において、中間層104はフルオロポリマーとアクリルポリマーとの混合物を含む。フルオロポリマーは上記のように複数のフルオロポリマーから選択されるポリマー又はコポリマーであり得る。
【0022】
アクリルポリマーは、例えば、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、グリシジル基又は1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル基を有するモノマーから生成されたアクリルポリマーであり得る。代表的なアクリルポリマーにはポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリグリシジルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリグリシジルアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート又はそれらの混合物が含まれる。
【0023】
アクリルポリマーは、例えば、衝撃グレード又は衝撃変性アクリル樹脂であり得る。衝撃変性アクリルポリマーには一般に望ましい弾性率および耐衝撃性を実現するためアクリルモノマーと効果的な量の適したコモノマー又はグラフト部分とのコポリマーが含まれる。時には、アクリレートゴム、ポリアクリレートゴム、ポリアクリルエラストマー又は“ACM”と言及されそしてポリアクリレートとポリメタクリレートとの、ポリアクリレートとエチレンメタクリレートコポリマー(“EMAC”)(例えば、シェブロンケミカルズ(Chvron Chemicals)社のEMAC2260)との、又はポリアクリレートとエチレンブチルアクリレート(“EBAC”)との混合物に基づいた組成物であるアクリルエラストマーが用いられ得る。あるいは、熱可塑性プラスチック衝撃変性アクリルポリマーは、透明なガラス状アクリルポリマー、例えばエチレンとアクリル酸、メタクリル酸およびそれらの混合物から選択されるカルボン酸化合物とのコポリマーと、例えばエラストマー成分との混合物であり得る。
【0024】
他の実施態様において、衝撃変性アクリルポリマーにはエラストマー微粒子が均一分散したプラスチックコポリマーが含まれる。衝撃グレードのアクリル樹脂には、10〜99質量%のブロックコポリマー、0.1〜1質量%の0.1〜1μmの粒径を有する微粒子ゴム、および残部の透明なガラス状ポリマーの混合によって製造された透明強化熱可塑性プラスチック混合物が含まれる。衝撃変性アクリルポリマーを製造するために他の適した技術はいわゆる“コア/シェル”生成物使用を採用する。これらは一般に他のポリマーシェルによって包囲されている1種のポリマーの中心の核を有するポリマー粒子である。核はプラスチック又はエラストマーのいずれかであり得てそしてシェルは反対、すなわち、エラストマー又はプラスチック成分である。
【0025】
特定の実施態様において、アクリル樹脂は線状衝撃変性アクリル樹脂である。さらなる典型的な実施態様において、アクリル樹脂は分岐した衝撃変性アクリル樹脂である。一般に、望ましい延伸倍率領域での融解ひずみ硬化挙動を示すアクリル樹脂は特に適している。他の典型的な実施態様において、望ましい延伸倍率領域での溶融相の高張力を示すアクリル樹脂は特に適している。
【0026】
典型的な実施態様において、1つの中間層又は複数の中間層104にはポリマーマトリックスとUV吸収剤とが含まれる。特定の例において、ポリマーマトリックスは複数のポリマー、例えばフルオロポリマーおよびフルオロポリマーと混合可能なポリマーとの混合物から生成され得る。例えば、ポリマーマトリクスはフルオロポリマー、例えばPVDF、およびアクリルポリマーの混合物から形成され得る。典型的な実施態様において、1つの中間層又は複数の中間層104には約30質量%〜約80質量%のフルオロポリマーと約20質量%〜約70質量%のアクリルポリマーが含まれる。例えば、1つの中間層又は複数の中間層104には約40質量%〜約70質量%、例えば約50質量%〜約65質量%のフルオロポリマーが含まれる。他の典型的な実施態様において、1つの中間層又は複数の中間層104には約20質量%〜約50質量%、例えば約20質量%〜約40質量%のアクリルポリマーが含まれる。
【0027】
中間層104にはUV吸収剤が含まれる。例えば、中間層104には低波長UV吸収剤が含まれ得る。中間層104には約5.0質量%以下のUV吸収剤、例えば約0.1質量%〜約5.0質量%のUV吸収剤が含まれ得る。特定の実施態様において、中間層104には少なくともUV吸収剤2種類が含まれる。この実施態様において、中間層104には各々0.1質量%〜2.0質量%のUV吸収剤種が含まれ得る。そのようにして、中間層104には全累積約0.1質量%〜約5.0質量%のUV吸収剤が含まれる。
【0028】
UV吸収剤は400ナノメートル(nm)未満の波長を有する電磁放射線を吸収する。典型的には、UV吸収剤は200nm〜400nmの波長を有する電磁放射線、例えば200nm〜350nmの波長を有する電磁放射線を吸収する。多くの場合、特定の種類のUV吸収剤が特定の波長でピーク吸光度を示し、ピーク吸収波長と呼ばれる。
【0029】
1つの典型的な実施態様において、UV吸収剤は有機UV吸収剤の類、例えばベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)類およびオキサニリド類から選択される。例えば、UV吸収剤はベンゾトリアゾール類吸収剤、例えば2,4−ジtert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール又は2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾールであり得る。他の例において、UV吸収剤はトリアジン類、例えば2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシロキシ−フェノールからなる。さらなる典型的な実施態様において、UV吸収剤はHALS UV吸収剤、例えばビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバシン酸エステルである。他の典型的なUV吸収剤はチバスペシャリティーケミカルズ社(CIBA Speciality Chemicals、Inc.)から市販されている商品名が登録商標チヌビン(Tinuvin)又は登録商標ケミソルブ(Chmisorb)である。一般に、UV吸収剤は非有機の類、例えばセラミックの類を含まない。例えば、UV吸収剤には二酸化チタン又は酸化亜鉛は含まれない。
【0030】
特定のUV吸収剤は低いピーク吸収波長を有している。例えば、低波長のUV吸収剤は約300nm以下、例えば約285nm以下又は約270nm以下のピーク吸収波長を有し得る。図2は典型的な紫外線吸収剤の吸収性の説明図を含む。1つの典型的な低波長のUV吸収剤は約275nmにピーク吸収波長を有する登録商標チヌビン(Tinuvin)1577である。
【0031】
対照的に、他のUV吸収剤は高いピーク吸収波長を有し得る。例えば、高波長のUV吸収剤は少なくとも約300nm、例えば少なくとも約325nm又は少なくとも約350nmのピーク吸収波長を有し得る。特定の高波長のUV吸収剤にはチヌビン(Tinuvin)327、チヌビン(Tinuvin)P、およびCGL777が含まれる。各特定のUV吸収剤は特定の波長にピーク吸光度を有し得る一方で、UV吸収剤は低い程度で他の波長の放射線を吸収し得る。
【0032】
特定の実施態様において、多層フィルムの1つの層は第1のUV吸収剤を含みそして多層フィルムの第2の層は第2のUV吸収剤を含む。例えば、多層フィルムは、各々の層が少なくとも1種のUV吸収剤を含んで、少なくとも2つの中間層104を含み得る。他の例において、多層フィルムは第1のUV吸収剤を有する中間層104と第2のUV吸収剤を含む最内部層106とを含み得る。第1のUV吸収剤と第2のUV吸収剤とは異なる種類でありそして、例えば、異なるピーク吸収波長を有する。1つの実施態様において、第1のUV吸収剤は低波長UV吸収剤でありそして第2のUV吸収剤は高波長UV吸収剤である。例えば、第1のUV吸収剤は300nm以下のピーク吸収波長を有する低波長UV吸収剤であり得る。第2のUV吸収剤は少なくとも約300nmのピーク吸収波長を有する高波長UV吸収剤であり得る。
【0033】
さらなる例において、第1および第2のUV吸収剤種は異なるピーク吸収波長を有する。例えば、第1のUV吸収剤のピーク吸収波長と第2のUV吸収剤のピーク吸収波長との違いは少なくとも約40nm、例えば少なくとも約60nm又は少なくとも約80nmであり得る。
【0034】
他の典型的な実施態様において、少なくとも2種類のUV吸収剤が多層フィルムの単一層内に含まれ得る。例えば、この層は少なくとも2種類の低波長UV吸収剤を含み得る。他の例において、この層は少なくとも2種類の高波長UV吸収剤を含み得る。さらなる例において、この層は低波長UV吸収剤と高波長UV吸収剤を含み得る。加えて、この層は第3又は第4のUV吸収剤を含み得る。
【0035】
特定の実施態様において、多層フィルムの1つの層は少なくとも2種類のUV吸収剤からなる第1の一組を含みそして多層フィルムの他の層は少なくとも2種類のUV吸収剤からなる第2の一組を含む。さらなる例において、UV吸収剤の第1の一組は低ピーク吸収波長UV吸収剤を含みそしてUV吸収剤の第2の一組は高ピーク吸収波長UV吸収剤を含む。
【0036】
第2の保護層として用いられるとき、最内部層106は層102に関して上記と同様の組成を有し得る。例えば、最内部層106は、80質量%〜100質量%のフルオロポリマーで形成され得て、そして、特定の態様においては、実質的にフルオロポリマーからなり得る。
【0037】
しかし、相溶性層又は接着剤層として用いられるとき、最内部層106は中間層104および最内部層106が接着される基材と相溶性のポリマーを含み得る。典型的な実施態様において、最内部層106はポリマーマトリックスとUV吸収剤とを含む。ポリマーマトリックスは単一のポリマー又はポリマー混合物から形成され得る。例えば、ポリマーマトリックスは単一のアクリルポリマーから形成され得る。他の典型的な実施態様において、ポリマーマトリックスはポリマーブレンド、例えばフルオロポリマーとアクリルポリマーとを含むポリマーブレンドから形成される。特定の例において、最内部ポリマー層106は約30質量%〜約40質量%のフルオロポリマーと約55質量%〜約100質量%のアクリルポリマーを含む。
【0038】
相溶性層又は接着剤層として用いられるとき、最内部ポリマー層106はUV吸収剤を含み得る。1つの典型的な実施態様において、UV吸収剤は高波長UV吸収剤である。他の典型的な実施態様において、最内部層106は少なくとも2種類のUV吸収剤を含む。1つの例において、少なくとも2種類のUV吸収剤種は高波長UV吸収剤である。最内部層106は各々のUV吸収剤種を約0.1質量%〜約2.0質量%含み得る。他の典型的な実施態様において、最内部層106は全累積で約5.0質量%以下、例えば約0.1質量%〜約5.0質量%のUV吸収剤を含む。
【0039】
加えて、多層フィルムおよびその複数の層は顔料、充填剤、着色剤、酸化防止剤、および可塑剤を含み得る。特定の実施態様において、多層フィルム100は可視光に対して透明である。例えば、多層フィルム100は、1ミルのフィルムに対して可視スペクトル範囲内の放射線の波長、例えば400〜700nmの波長に対して少なくとも約75.0%の透過率を有し得る。特に、1ミルの多層フィルム100の1実施態様は少なくとも約80.0%、400nm〜700nmの波長の少なくとも約80.0%、例えば少なくとも約83.0%の透過率を有し得る。特定の実施態様において、多層フィルム100は、1ミルのフィルムに対して400〜700nmの波長を有する電磁放射線の少なくとも約75.0%、例えば少なくとも約80.0%又は少なくとも約83.0%の透過率を有し得る。さらなる実施態様において、2ミルのフィルムは少なくとも約75.0%の透過率を有し得る。
【0040】
多層フィルムおよびその複数の層は可視光に対して低い透過率ヘイズを示す。例えば、多層フィルムは1ミルのフィルムに対して約10%以下、例えば約7%以下の透過率ヘイズを有し得る。他の例において、多層フィルムは2ミルのフィルムに対して約25%以下のヘイズを有し得る。
【0041】
1つの典型的な実施態様において、多層フィルムは流れ方向(マシン方向)に少なくとも約90%の破断点伸びを有する。例えば、多層フィルムは少なくとも約100%、例えば少なくとも約125%又は少なくとも約150%の破断点伸びを有し得る。他の例において、多層フィルムは横方向に少なくとも約250%、例えば少なくとも約300%又は少なくとも約450%の破断点伸びを有する。
【0042】
UVスペクトル領域内の電磁放射線の波長に対して、例えば200nm〜350nmの電磁放射線の波長に対して、多層フィルムは少なくとも約3.0の吸光度を有し得る。例えば、多層フィルムは200nm〜350nmの電磁放射線の特定の波長に対して少なくとも約3.5、例えば少なくとも約4.0又は少なくとも約5.0の吸光度を有し得る。加えて、多層フィルムは200nm〜350nmの電磁放射線の特定の波長に対して累積で少なくとも約3.5、例えば少なくとも約4.0の吸光度を有し得る。典型的な実施態様において、多層フィルムの個々の複数の層は約300nmの波長を有する電磁放射線に対して少なくとも約3.0、例えば少なくとも約3.5又は少なくとも約4.0の吸光度を有し得る。1つの典型的な実施態様において、多層フィルムの個々の層は多層フィルムは約265nmの波長を有する電磁放射線に対して少なくとも約3.0、例えば少なくとも約3.5又は少なくとも約4.0の吸光度を有し得る。他の典型的な実施態様において、多層フィルムの個々の層は約300nmの波長を有する電磁放射線に対して少なくとも約3.0、例えば少なくとも約3.5又は少なくとも約4.0の吸光度を有し得る。特定の実施態様において、約265nmの波長を有する電磁放射線に対して少なくとも約3.0、例えば少なくとも約3.5又は少なくとも約4.0の吸光度を有する1つの層を含みそして約300nmの波長を有する電磁放射線に対して少なくとも約3.0、例えば少なくとも約3.5又は少なくとも約4.0の吸光度を有する1つの層を含む。
【0043】
多層フィルムは少なくとも約25μm(1ミル)の厚さを有し得る。例えば、多層フィルムは約25μm(1ミル)〜約105μm(5ミル)、例えば約25μm〜約55μmの厚さを有し得る。多層フィルムの特定の層は多層フィルムの約5容量%を形成してよい。典型的には、保護層および接着剤層、例えば最外層102又は最内部層106はフィルムの約5%〜約15%を形成してよい。中間層104は多層フィルムの約50容量%〜約80容量%、例えば約65容量%〜約75容量%を形成し得る。
【0044】
1つの典型的な実施態様において、多層フィルムは最外層の保護層および最内部層の接着剤層を含む。例えば、多層フィルムは、各文字(A、B、C、およびD)が1つの層を形成する組成を示しているとして、AC−B−ACの構成又はAC−B−CDの構成を有し得る。典型的な実施態様において、多層フィルムは各標識組成A、B、C又はDに専用の独特の押出機を用いて共押出しされる。例えば、各文字(A、B、C、およびD)は組み合わされた複数の層を規定された構成を有するフィルムに共押出すダイに、特定の押出機から押出される組成を示し得る。
【0045】
特定の実施態様において、組成Aは100%のフルオロポリマー、例えば約100%のPVDFで形成されている。例えば、組成AはPVDF、例えばカイナール(Kynar)740から形成され得る。累積的に、組成Aを含む複数の層は多層フィルムの約5〜10容量%を形成する。一般に、組成AはUV吸収剤を含まない。
【0046】
例えば、組成Bはポリマー混合物、例えばフルオロポリマー/アクリル樹脂の混合物から形成され得る。典型的な実施態様において、組成Bは約30質量%〜約80質量%のPVDFと残部のアクリル樹脂との混合物から形成される。例えば、混合物は約60質量%のPVDFと約40質量%のアクリル樹脂を含み得る。典型的には、組成Bを含む層は多層フィルムの約80容量%〜約90容量%を形成する。
【0047】
多層フィルムがAC−B−ACの構成を形成するとき、組成Cは約55質量%〜約100質量%のアクリル樹脂を含むフルオロポリマー/アクリル樹脂の混合物から形成され得る。例えば、組成Cは約60質量%〜約70質量%のアクリル樹脂と約30質量%〜約40質量%のPVDFとを含み得る。累積的に、組成Cを含む複数の層は多層フィルムの約5〜10容量%を形成する。
【0048】
あるいは、組成Dを含む層が、例えばAC−B−CDの構成で用いられるとき、組成Dは約80質量%〜約100質量%のアクリル樹脂と約0質量%〜約20質量%のPVDFから形成され得る。そのような構成において、組成Dは一般に約55質量%〜約100質量%のアクリル樹脂、例えば約60質量%〜約70質量%のアクリル樹脂と約30質量%〜約40質量%のPVDFとを含むPVDF/アクリル樹脂の混合物から形成される。
【0049】
これらの構成において、フィルム保護用UV吸収剤はアクリル樹脂を安定化するためにBおよびCの組成に組み入れられる。そのようなUV吸収剤は典型的には低波長のUV吸収剤を含む。基材保護剤のUV吸収剤は基材を損ない得る光放射線を遮るか又は吸収するために組成B、Cおよび任意的にDに用いられ得る。一般に、そのような基材保護用のUV吸収剤は高波長のUV吸収剤又は広域スペクトルのUV吸収剤である。
【0050】
特定の実施態様において、複数のUV吸収剤の組合せが組成B、Cおよび任意的にDに含まれる。例えば、組成Cは1種以上のフィルムを保護するUV吸収剤、例えば少なくとも2種類のUV吸収剤を含み得る。前記層はUV吸収剤種の各々の0.5〜約2.0質量%、例えば1.0質量%〜約5.0質量%の全UV吸収剤を含み得る。特定の典型的な組合せは登録商標チヌビン(Tinuvin)Pと登録商標チヌビン(Tinuvin)770とを含む。他の典型的な組合せは登録商標チヌビン(Tinuvin)1577と登録商標チヌビン(Tinuvin)770とを含む。3番目の典型的な組合せは登録商標チヌビン(Tinuvin)400と登録商標チヌビン(Tinuvin)292とを含む。登録商標チヌビン(Tinuvin)UV吸収剤はチバスペシャルティーケミカルズ社(CIBA Specialty Chemicals,Inc.)から購入可能である。
【0051】
他の層はUV保護のためにUV吸収剤の組合せを含み得る。そのようなUV吸収剤は広スペクトル域のUV吸収を与えるために高UV吸収剤と低UV吸収剤との混合物であり得る。特定の例にはチヌビン(Tinuvin)1577とチヌビン(Tinuvin)327との組合せ、チヌビン(Tinuvin)P、チヌビン(Tinuvin)1577およびチヌビン(Tinuvin)327を含む組合せ又はチヌビン(Tinuvin)1577、CGLおよびチヌビン(Tinuvin)Pを含む組合せが含まれる。
【0052】
他の典型的な実施態様において、フィルムは、各文字が独特の押出機からの異なる組成を示す場合に、構造AC−B−CAを形成し得る。この典型的な実施態様において、組成Aはフルオロポリマー、例えば100%のフルオロポリマーを含みそして組成Aを含む複数の層は多層フィルムの約5〜約10容量%を形成する。組成Bはフルオロポリマーとアクリル樹脂とを含むポリマー混合物を含む。特定の実施態様において、組成Bは約30質量%〜約80質量%のPVDFとアクリル樹脂を含む混合物からなる残部とを含む。組成Bを含む層は多層フィルムの約80容量%〜約90容量%を形成する。組成Cは約70質量%〜約100質量%のアクリル樹脂を含むフルオロポリマー/アクリル樹脂の混合物を含む。組成Cを含む複数の層は多層フィルムの約5%〜約10%を形成する。特定の実施態様において、組成Cはフィルムを保護する複数のUV吸収剤の混合物を含みそして組成Bは基材保護の複数のUV吸収剤の混合物を含む。
【0053】
さらなる典型的な実施態様において、多層高分子フィルムはA/C/B/C/Aの構成を有し得る。組成Aは第1のフルオロポリマー、例えばゾレフ(Solef)1010のPVDF100質量%から形成され得て、そして組成Aを含む複数の層は多層フィルムの約5容量%〜約15容量%を形成し得る。組成Cは第2のフルオロポリマー、例えばキナール(Kynar)740の100質量%から形成され得て、そして組成Cを含む複数の層は多層フィルムの約2.5容量%〜約7.5容量%を形成し得る。組成Bは約30質量%〜約35質量%の第1のフルオロポリマー、約30質量%〜約35質量%の第2のフルオロポリマー、約30質量%〜約35質量%の衝撃変性アクリル樹脂、例えばアトフィナ(Atofina)DR101、および約2.0質量%〜約5.0質量%のUV吸収剤から形成され得る。例えば、組成Bは約1.0質量%〜約2.5質量%の第1のUV吸収剤、例えばチヌビン(Tinuvin)1577、および約1.0質量%〜約2.5質量%の第2のUV吸収剤、例えばチヌビン(Tinuvin)360を含み得る。前記の組成Bを含む層は多層高分子フィルムの約65容量%〜約75容量%を形成し得る。
【0054】
上記の複数の多層フィルムの特定の実施態様は、有利には可視のスペクトル領域において低ヘイズ値と高透過率を示す。驚くことに、単一層内の少なくとも2種類のUV吸収剤種が同じ全付加容量での単一のUV吸収剤の使用よりも曇り度又はヘイズを生じることなくその特定の層でUV吸収剤のより高い全負荷容量を可能にするということが見出された。結果として、少なくとも2種類のUV吸収剤を含むフィルムによってUVダメージの付加的保護がもたらされ得る。さらに、少なくとも2種類のUV吸収剤を含む複数のフィルム層の典型的な実施態様は、全体量が同じ単一のUV吸収剤を用いて形成された複数のフィルム層よりも機械的特性、例えば破断点伸び、引き裂き抵抗、およびフィルム表面へのUV吸収剤の移行(マイグレーション)が改善する。
【0055】
加えて、驚くことに、異なる複数の層での異なる複数のUV吸収剤の使用が可視スペクトル域での高い透過率および低いヘイズを保ちながら、広いスペクトル域のUV吸収をもたらすということが知られた。例えば、上記の複数のフィルムの特定の実施態様は約7.0%以下の透過率ヘイズ値を有する。そのような複数のフィルムはまた少なくとも約80.0%の可視光スペクトル域での透過率を示し得る。
【0056】
上記の多層フィルムの特定の実施態様は、同一の試験条件下で一般に入手可能な製品と比べて下に位置する基材の退色を低下させて有利である。例えば、多層フィルムの実施態様は、800時間の紫外線照射後に製品、例えば登録商標テドラー(Tedlar)名で販売される製品と比較したときに少なくとも約25%、例えば少なくとも約50%退色を減少させ得る。実際に、多層フィルムの実施態様は、同一の試験条件下で登録商標テドラー(Tedlar)フィルムよりも低いデルタEを示す。デルタEは、例えばASTM D2244−93に記載された方法を用いて測定され得る。例えば、そのような実施態様のデルタEは、800時間の紫外線照射後に登録商標テドラー(Tedlar)のデルタEの約75%以下、例えば約50%以下であり得る。多層フィルムの実施態様により保護されるとき、下に位置する青色の基材のデルタEは、同一の試験条件下で、800時間の照射後に5.0以下であり得て、一方登録商標テドラー(Tedlar)フィルムにより保護されるときには、800時間の紫外線照射後に下に位置する青色の基材のデルタEは少なくとも約8.0であり得る。他の実施例において、同一の試験条件下で、多層フィルムの実施態様により保護されるとき800時間の照射後に下に位置する赤色の基材のデルタEは20.0以下であり得て、しかし一方登録商標テドラー(Tedlar)フィルムにより保護されるときには、800時間の紫外線照射後に下にある赤色の基材のデルタEは少なくとも約27.0であり得て、そして35.0より大であり得る。
【0057】
他の典型的な実施態様において、少なくとも2種類のUV吸収種を有する単一層を含む多層フィルムは、機械的特性を維持しながら単一のUV吸収種を含む1層に対して相当な吸光度を与え得る。例えば、少なくとも2種類のUV吸収剤を含む多層高分子フィルムは、少なくとも2種類のUV吸収剤の全量と等しい量の単一のUV吸収剤を含む類似の組成の多層フィルムよりも少なくとも約5%改良された伸び、例えば少なくとも約10%改良された伸びを示し得る。
【実施例】
【0058】
実施例1
文字A、B、およびCの各々が組成を示していて、A/C/B/C/Aの構成を有する多層フィルムが調製される。組成Aは100質量%のPVDFゾレフ(Solef)1010から形成され、そして組成Cは100質量%のPVDFカイナール(Kynar)740から形成されている。組成Bは32質量%のPVDFカイナール(Kynar)740、32質量%のPVDFゾレフ(Solef)1010、32質量%のアクリル樹脂DR101、2質量%のUV吸収剤のチヌビン(Tinuvin)1577、および2質量%のUV吸収剤のチヌビン(Tinuvin)360から形成されている。組成Aを含む各層はフィルムの約10容量%を形成し、組成Cを含む各層はフィルムの約5容量%を形成し、そして組成Bを含む層はフィルムの約70容量%を形成している。
【0059】
多層フィルムは共押出しによって形成されている。組成A、B、およびCの各々は180℃〜230℃の温度プロフィールを有する共押出機から押出されている。ダイ温度は220℃でありそして流延用ドラム温度は80℃である。線速度は30フィート/分である。
【0060】
図3は、上記のように形成された50.8μm(2ミル)のフィルムに対する紫外スペクトル域での電磁放射線の吸光度の説明図を含む。典型的なフィルムが登録商標デュポン(Dupont)の登録商標テドラー(Tedlar)フィルムと対比される。多層フィルムは200nm〜350nmの波長に対して、4.0より大きい累積吸光度を有する。紫外スペクトル域内の波長に対して、吸光度は3.0より大きくそして6.0までである。例えば、吸光度は250nmの波長を有する電磁放射線に対して5.0より大きく、265nmの電磁放射線に対して少なくとも約4.5であり、そして315nmの電磁放射線に対して少なくとも約4.0である。
【0061】
図4は、29.2μm(1.15ミル)のフィルムに対する紫外スペクトル域での電磁放射線の吸光度の説明図を含む。登録商標デュポン(Dupont)の登録商標テドラー(Tedlar)フィルムと対比して、この発明の特定の典型的な実施態様は紫外スペクトル域の下端で高吸光度を示しそして同様に紫外スペクトル域の高端で高吸光度を示す。多層フィルムは200nm〜350nmの波長に対して、4.0より大きい累積吸光度を有する。紫外スペクトル域内の波長に対して、吸光度は3.0より大きくそして6.0までである。例えば、吸光度は250nmの波長を有する電磁放射線に対して3.5より大きく、265nmの電磁放射線に対して少なくとも約4.0であり、そして315nmの電磁放射線に対して少なくとも約3.5である。加えて、フィルムの吸光度は215nmおよび275nmの電磁放射線に対して少なくとも約5.0である。
【0062】
実施例2
UV吸収剤を含まないフィルム又は3種類のUV吸収剤(2%のチヌビン(Tinuvin)1577、2%のチヌビン(Tinuvin)360、および1%のチヌビン(Tinuvin)770)の組合せを用いるフィルムが調製される。実施例のフィルムは100%のPVDFを有する第1の層、凡そ40%又は70%のPVDF(カイナール(Kynar)740)を含む第2の層、および75%のアクリル樹脂(DR101)を含む第3の層を含む。複数のUV吸収剤を含むフィルムに対して、UV吸収剤の混合物が第2の層に含まれる。第2の層の残部はアクリル樹脂(DR101)である。表1は縦方向および横断方向の両方におけるフィルムの破断点伸び特性を示している。説明されるように、UV吸収剤(UVA)を含むフィルムは、いくつかの実施例においてUV吸収剤(UVA)を含まないフィルムよりも伸びの増加を示している。
【0063】
【表1】

【0064】
実施例3
複数のUV吸収剤を含む3層のフィルムが市販の登録商標テドラー(Tedlar)フィルムと比較して評価される。実施例の複数のフィルムは100%のPVDFを有する第1の層、凡そ40%又は70%のPVDFを含む第2の層、および75%のアクリル樹脂(DR101)を含む第3の層を含む。第2の層はアクリル樹脂(DR101)および実施例2に記載したように複数のUV吸収剤の混合物を含む。
【0065】
フィルムの評価がASTM D2244−93「機器で測定された色座標からの色差の算出のための標準試験法」により行われる。6色角形(白色、黒色、赤色、緑色および青色)を持つ色ブロックが試料フィルムでラミネートされそしてキセノンアーク室を用いて耐候試験に供される。各試料の色特性(L、aおよびbのパラメーターに関して)が色ガイド45/0BYKガードナー単位を用いて400時間の照射ごとに測定される。色の変化(デルタE)はASTM D2244を使って算出される。表2は試料フィルムに対する色の変化を示している。典型的な各フィルム(70%PVDFおよび40%PVDF)は登録商標テドラー(Tedlar)よりも低いデルタEによって示されるように、特に長時間の照射に対して少ない色の変化を示す。
【0066】
【表2】

【0067】
組成はパーセンテージ、例えば質量%および容量%で表現されるが、特定の成分のパーセンテージの仕様は組成内の他の成分のパーセンテージに影響を与えそして全成分の累積パーセンテージは100パーセントより大きくないということが理解される。
【0068】
本発明は特定の実施態様の文脈で説明されそして記載されたが、本発明の範囲から多少なりとも逸脱することなく種々の修正および置き換えがなされ得るので、示された細部に限定される意図はない。例えば、追加的又は同等の代替品が提供され得てそして追加的又は同等の製造工程が用いられ得る。そのようなものとして、本明細書に開示された本発明のさらなる修正および同等のものはルーティン以下の実験を用いて当業者に思い浮かび得て、そしてそのような修正および同等のものはすべて特許請求の範囲の請求項に規定される本発明の範囲内であると信じられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層高分子フィルムであって、
フルオロポリマーを含んでいて紫外線吸収剤を含まない第1のポリマー層、
第1のポリマー層に接して30〜80質量%のフルオロポリマー、20〜70質量%のアクリルポリマーおよび0.1〜2.0質量%の第1の紫外線吸収剤を含む第2のポリマー層、および
第2のポリマー層に接してアクリルポリマーおよび0.1〜2.0質量%の第2の紫外線吸収剤を含む第3のポリマー層を含み、
波長200〜350nmの電磁放射線に対して少なくとも3.5の吸光度を有する、前記多層高分子フィルム。
【請求項2】
前記多層高分子フィルムが、400〜700nmの波長を有する放射線に対して少なくとも75.0%の累積透過率を有する請求項1に記載の多層高分子フィルム。
【請求項3】
前記第1の紫外線吸収剤のピーク吸収波長が、前記第2の紫外線吸収剤のピーク吸収波長よりも少なくとも40nm小さい請求項1に記載の多層高分子フィルム。
【請求項4】
前記第1の紫外線吸収剤が、有機の紫外線吸収剤を含む請求項1に記載の多層高分子フィルム。
【請求項5】
前記第2のポリマー層が、非有機の紫外線吸収剤を含まない請求項4に記載の多層高分子フィルム。
【請求項6】
前記第1の紫外線吸収剤が、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)を含む請求項1に記載の多層高分子フィルム。
【請求項7】
前記第2のポリマー層が、第3の紫外線吸収剤を含む請求項1に記載の多層高分子フィルム。
【請求項8】
前記第1の紫外線吸収剤が300nm未満のピーク吸収波長を有しそして前記第2の紫外線吸収剤が300nmより大きいピーク吸収波長を有する請求項1に記載の多層高分子フィルム。
【請求項9】
前記多層高分子フィルムが、7.0%以下のヘイズを有する請求項1に記載の多層高分子フィルム。
【請求項10】
前記多層高分子フィルムが、25〜105μmの厚さを有する請求項1に記載の多層高分子フィルム。
【請求項11】
前記多層高分子フィルムが、マシン方向に少なくとも約90%の破断点伸びを有する請求項1に記載の多層高分子フィルム。
【請求項12】
前記第1の紫外線吸収剤がベンゾトリアゾール、トリアジン、ヒンダードアミン光安定剤およびオキサニリドからなる群から選択され、そして前記第2の紫外線吸収剤がベンゾトリアゾール、トリアジン、ヒンダードアミン光安定剤およびオキサニリドからなる群から選択される請求項1に記載の多層高分子フィルム。
【請求項13】
多層高分子フィルムであって、
フルオロポリマーを含んでいて紫外線吸収剤を含まない第1のポリマー層、
第1のポリマー層に接して30〜80質量%のフルオロポリマー、20〜70質量%のアクリルポリマーおよび0.1〜2.0質量%の第1の紫外線吸収剤を含む第2のポリマー層、および
第2のポリマー層に接してアクリルポリマーおよび0.1〜2.0質量%の第2の紫外線吸収剤を含む第3のポリマー層を含み、
波長200〜350nmの電磁放射線に対して少なくとも3.5の吸光度を有し、
前記第1の紫外線吸収剤のピーク吸収波長が、前記第2の紫外線吸収剤のピーク吸収波長よりも少なくとも40nm小さく、
前記第1の紫外線吸収剤が300nm未満のピーク吸収波長を有しそして前記第2の紫外線吸収剤が300nmより大きいピーク吸収波長を有する、前記多層高分子フィルム。
【請求項14】
前記多層高分子フィルムが、400〜700nmの波長を有する放射線に対して少なくとも75.0%の累積透過率を有する請求項13に記載の多層高分子フィルム。
【請求項15】
前記第1の紫外線吸収剤が、有機の紫外線吸収剤を含む請求項13に記載の多層高分子フィルム。
【請求項16】
前記第2層が、非有機の紫外線吸収剤を含まない請求項15に記載の多層高分子フィルム。
【請求項17】
前記第1の紫外線吸収剤が、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)を含む請求項13に記載の多層高分子フィルム。
【請求項18】
前記第2のポリマー層が、第3の紫外線吸収剤を含む請求項13に記載の多層高分子フィルム。
【請求項19】
多層高分子フィルムであって、
フルオロポリマーを含んでいて紫外線吸収剤を含まない第1のポリマー層、
第1のポリマー層に接して30〜80質量%のフルオロポリマー、20〜70質量%のアクリルポリマーおよび0.1〜2.0質量%の第1の紫外線吸収剤を含む第2のポリマー層、および
第2のポリマー層に接してアクリルポリマーおよび0.1〜2.0質量%の第2の紫外線吸収剤を含む第3のポリマー層を含み、
波長200〜350nmの電磁放射線に対して少なくとも3.5の吸光度を有し、
前記第1の紫外線吸収剤がベンゾトリアゾール、トリアジン、ヒンダードアミン光安定剤およびオキサニリドからなる群から選択され、そして前記第2の紫外線吸収剤がベンゾトリアゾール、トリアジン、ヒンダードアミン光安定剤およびオキサニリドからなる群から選択され、
前記多層高分子フィルムが25〜105μmの厚さを有する、前記多層高分子フィルム。
【請求項20】
前記多層高分子フィルムが、400〜700nmの波長を有する放射線に対して少なくとも75.0%の累積透過率を有する請求項19記載の多層高分子フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−206514(P2012−206514A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−122829(P2012−122829)
【出願日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【分割の表示】特願2008−550322(P2008−550322)の分割
【原出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(500149223)サン−ゴバン パフォーマンス プラスティックス コーポレイション (64)
【Fターム(参考)】