説明

耐染み性粒子

本発明は、コアとシェルとを有する粒子であって、前記コアは中空であるか、または有機ポリマー組成物を含み、前記シェルは無機オキシドを含む粒子に関する。シェルは2〜75nmの範囲の厚さを有し、かつ少なくとも1個かつ5個以下の拡大細孔を有し、拡大細孔はそれぞれ、5nm〜300nmの直径を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、コアとシェルとを含む耐染み性粒子、および前記粒子を含む多孔質コーティングに関する。本発明はさらに、安定な多孔質コーティングを生成するプロセス、およびこのようなコーティングの、特に反射防止コーティングとしての使用にも関する。
【0002】
光学諸特性をもたらすための多孔質コーティングの使用は公知である。このようなコーティングでは、様々な光学機能を実現することができる。例えば、基材の実効屈折率より低い実効屈折率を有する多孔質コーティングを形成することによって、反射防止コーティングを実現することができる(米国特許第2,432,484号明細書)。典型的には、これらの反射防止系は、バインダーおよびナノ粒子を含む。例えば、米国特許第6,921,578号明細書には、酸触媒を使用したナノ粒子の存在下でバインダー(例えば、テトラエチルオルトシリケートTEOS)が加水分解される反射防止コーティング系を製造する方法が記載されている。これらの手法によって、反射防止特性を有するコーティングを生じることができるが、これらのコーティングは、典型的には可視光スペクトルで残余反射率1〜2%を実現するのに必要な屈折率において、いくつかの欠点をもつ。典型的には、これらのコーティングは、水および汚れに影響されやすい多数の細孔を含む。さらに、このようなコーティングの表面は、粗度パラメータ(Ra、原子間力顕微鏡で決定)約100〜150nmで比較的粗く、高比表面積となる[H. R. Moulton、カナダ特許第449110号明細書、1948年]。高表面粗さと組み合わさった「開気孔構造(open pore structure)」によって、光学系汚れ、水染み発生、清浄困難、および耐摩耗性不良の程度が高くなる。
【0003】
Wuら、「Properties of sol−gel derived scratch resistant nano−porous silica films by a mixed atmospheric treatment」、Journal of Non−Crystalline Solids、275、(2000年)、169〜174頁には、シリカ皮膜を、400℃において水およびアンモニアで30分間処理し、その結果、表面の平滑化およびシリカ構造の緻密化が得られることが記載されている。これらのコーティングの清浄性は、表面平滑性の増大のため、改善され得るが、染み発生は依然として問題である。
【0004】
反射防止コーティングを含めて、多孔質コーティングは、一般に染みを発生しやすい。この多孔質網状物によって、有機材料および水がコーティングに浸透することが可能になり、染みまたは斑点を引き起こすと仮定される。このような汚点を除去するのが困難なこともあり、不完全である場合が多い。水染み発生は特に問題となるおそれがあり、反射防止コーティングの永久的な汚点発生さえ引き起こしかねず、このようなコーティングの有効性に明らかに影響を及ぼす。
【0005】
本発明の目的は、上記の問題の少なくとも一部に対処することである。
【0006】
本発明の一態様によれば、中空コアまたは有機ポリマー組成物を含むコアと無機オキシドを含むシェルとを有する粒子であって、シェルは:
a.2〜75nmの範囲の厚さ;および
b.少なくとも1個かつ5個以下の細孔
を有し、細孔はそれぞれ、コアとシェルの外面との間を連通し、原子間力顕微鏡を使用して測定して5nm〜300nmの直径を有し、前記細孔は粒子の最大細孔である粒子を提供する。
【0007】
好ましくは、細孔の直径はそれぞれ、粒子直径の10%〜60%の範囲にある。
【0008】
読みやすくするため、必要に応じて明細書全体にわたって、「拡大細孔」は、原子間力顕微鏡を使用して測定して5nm〜300nmの直径を有する細孔を表すのに使用され、前記細孔は、粒子の最大細孔である。
【0009】
拡大細孔は、細孔を含まない粒子の理論表面積の(例えば、球体の表面積に対して)好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下、さらにより好ましくは40%以下、さらにより好ましくは30%以下、最も好ましくは20%以下を表す。
【0010】
本発明の別の態様によれば、本発明の粒子を含むコーティング表面を有するコーティングであって、粒子が表面コーティングの少なくとも一部分を形成するコーティングを提供する。コーティング表面は、好ましくは複数の粒子を含み、それらはそれぞれ、バインダーを含む基材から突出する。この実施形態の範囲内では、表面コーティングは、大気に曝露される粒子のセグメントによって少なくとも部分的に画定される。各粒子の大気に曝露される表面積の割合は、好ましくは5〜70%、より好ましくは10〜60%、さらにより好ましくは20〜50%である。
【0011】
予想外に、得られたコーティングされた表面は、蒸気養生ステップを適用していないコーティング表面に比べて、しばしばより粗く、より多孔質であり、その耐染み性を向上させながら、その機械的特性、光学諸特性、および清浄性を少なくとも実質的に維持する。
【0012】
孔径は300nm以下である。拡大細孔は、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下、さらにより好ましくは80nm以下、さらにより好ましくは50nm以下、より好ましくは40nm以下の直径を有する。拡大細孔は、少なくとも5nm、好ましくは少なくとも10nm、より好ましくは少なくとも15nm、さらにより好ましくは少なくとも20nmの直径を有する。細孔の直径が大きくなると、汚染を受けやすくなり、したがって清浄に保つことが難しくなる一方、細孔の有効直径が小さくなると、水分(または他の染みを発生する汚染)を保持し、したがってコーティングの耐染み性が低下する。
【0013】
コーティング表面の一部分を形成する粒子の、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは50%、さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%は、拡大細孔を含む(2μm×2μmの表面積にわたって、AFMを使用して決定)。コーティングの表面に曝露されている、拡大細孔を含む粒子の割合が高いほど、コーティングからなくすことができる水染みの割合が高くなる。
【0014】
好ましくは、コーティングの表面の一部分を形成する粒子はそれぞれ、平均して、0.3個超かつ2.0個以下の拡大細孔を含む(2μm×2μmの表面積にわたって、AFMを使用して決定)。
【0015】
拡大細孔の形成は粒子の幾何形状と関連していると考えられ、拡大細孔は、平坦な表面の蒸気養生によっては観察されない。
【0016】
本発明のこの態様の別の実施形態において、それぞれ中空コアとシェルとを有する粒子を含むコーティング組成物であって、
(a) 粒子の少なくとも一部分は、2〜75nmの範囲の平均シェル厚を有すること;および
(b) コーティング組成物は、次式:
は2.8R未満に等しく、かつRは2.0R未満に等しい
で定義され、式中、
は、コーティング組成物の550nmにおける鏡面反射であって、コーティング組成物は、基材に塗布されて、100〜120nmの平均厚さを有するコーティングを形成し、平衡状態において25℃および相対湿度40%で貯蔵され、コーティングされた基材Cを生じる、
は、コーティングされた基材Cの550nmにおける鏡面反射であって、コーティングされた基材Cは、25℃および相対湿度90%で400分間貯蔵され、コーティングされた基材Cを生じる;
は、平衡状態に到達するまで25℃および40%相対湿度で貯蔵された後のコーティングされた基材Cの550nmにおける鏡面反射である
ことを特徴とするコーティング組成物を提供する。
【0017】
本発明の別の態様において、本発明のコーティングを含む基材を生成する方法であって、
a.コアとシェルとを有する粒子を含むコーティング組成物を基材に塗布するステップであって、ここで、前記シェルは2〜75nmの範囲の厚さを有するステップと;
b.コーティング表面を水蒸気、または水蒸気と塩基との組合せで処理するステップと
を含み、
前記コアは有機ポリマー組成物を含むか、または中空であり、前記シェルは無機オキシドを含む、方法を提供する。
【0018】
驚くべきことに、本発明において上記に定義した蒸気処理ステップ(b)の適用によって、5nm〜300nmの有効直径を有する、少なくとも1個かつ5個以下の拡大細孔を有する粒子が生成され、より開いた表面となる。
【0019】
コーティングは、ステップ(b)の前または後に硬化されることが好ましい。
【0020】
硬化ステップは、少なくとも100℃の温度で少なくとも15分間行われることが好ましい。
【0021】
ステップ(b)における処理は、好ましくは20℃(セルシウス度)〜500℃、より好ましくは200℃〜450℃で行われる。
【0022】
硬化プロセスは、熱劣化によりポリマー組成物をコアから除去し、それによって中空シェルを生成するために使用され、有利であり得る。
【0023】
本発明のこの態様の別の実施形態において、コーティングされた基材を生成する方法であって、
(a) コアとシェルとを有する粒子を含むコーティング組成物を基材に塗布するステップであって、ここで、前記シェルは無機オキシドを含み、前記コアは中空であるステップと;
(b) コーティングを水蒸気、または水蒸気と塩基との組合せで処理して、それによって次式:
は2.8R未満に等しく、かつRは2.0R未満に等しい
で定義されたコーティングされた基材を生成するステップと
を含み、
式中、
は、コーティング基材の550nmにおける鏡面反射であって、コーティング基材は、基材に塗布されて、100〜120nmの平均厚さを有するコーティングを形成し、平衡状態において25℃および相対湿度40%で貯蔵され、コーティング基材Cを生じる、
は、コーティングされた基材Cの550nmにおける鏡面反射であって、コーティングされた基材Cは、25℃および相対湿度90%で400分間貯蔵され、コーティングされた基材Cを生じる;
は、平衡状態に到達するまで25℃および40%相対湿度で貯蔵された後のコーティングされた基材Cの550nmにおける鏡面反射である
方法を提供する。
【0024】
コーティングは、ステップ(b)の前または後に硬化されることが好ましい。
【0025】
本発明はさらに、中空コアまたは有機ポリマー組成物を含むコアと無機オキシドを含むシェルとを含む粒子を含む無機多孔質コーティングを処理するための水蒸気、または水蒸気と塩基との組合せの使用にも関する。
【0026】
粒子の表面エネルギーを最小限に抑制する方法に拡大細孔の数が関連するのであれば、蒸気養生プロセスはシリカを再被着させて、粒子の表面エネルギーを最小限に抑制すると考えられる。
【0027】
拡大細孔の位置および数は、本発明の蒸気養生プロセスへの粒子の曝露を制御することによっても影響を受け得ることを、当業者は理解するであろう。例えば、コーティングの表面層を形成する粒子の蒸気養生により実現されるように、球状粒子の一部分を蒸気養生プロセスに曝露することによって、単一の拡大細孔を生成することができる。非球状粒子(例えば、楕円状)全体を本発明の蒸気養生プロセスに曝露することによって、複数の細孔を生成することができる。
【0028】
好ましくは、粒子は、1〜2個の範囲で拡大細孔を有する。例示的実施形態において、粒子は、1個以下の拡大細孔を有する。
【0029】
粒子は、以前に記載のようにコーティングの硬化時に形成することができ、または粒子は、例えば流動床反応器など、反応器中で、離散粒子を蒸気養生に曝露することにより形成することができる。
【0030】
本発明の別の態様は、粒子の少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%が、1〜5個の拡大細孔を有する(2μm×2μmの表面積にわたって、AFMを使用して決定)上記の粒子を含む、コアシェル粒子の組成物に関する。
【0031】
本発明の別の態様において、多孔質コーティングを生成する方法であって、
(a) 無機オキシドを含むコーティング組成物を基材に塗布するステップと、
(b) コーティングを硬化するステップと、
(c) 硬化させたコーティングを水蒸気、または水蒸気と塩基との組合せで処理するステップと
を含み、コーティング組成物は中空粒子(またはナノ粒子)を含む
方法を提供する。
【0032】
この方法で得られたコーティングは、中空粒子を含む通常のコーティングに比べて耐染み性が改善されている。
【0033】
本発明では、拡大細孔とは、シェル中に他の細孔がある場合、その中央細孔直径(2μm×2μmの表面積にわたって、AFMを使用して決定)に比べて拡大している5nm〜300nmの細孔(すなわち、最大細孔)を意味する。すべての拡大細孔のサイズが好ましくは非拡大細孔の母集団分布の範囲外にあり、すなわち、蒸気養生が施される前のシェル中の細孔より大きい細孔が、1〜5個存在する。拡大細孔は、好ましくは中央細孔直径の少なくとも2倍、より好ましくは中央細孔直径の少なくとも5倍、さらにより好ましくは中央細孔直径の少なくとも10倍、最も好ましくは中央細孔直径の少なくとも30倍である。
【0034】
別段の記述のない限り、本明細書の参考文献はすべて、参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」および「含む(contain)」という単語、ならびにその単語の変形、例えば「含んでいる(comprising)」および「含む(comprises)」は、「〜を含むが、これらに限定されるものではない」ということを意味し、他の部分、添加剤、成分、整数、またはステップを排除するものではない(かつ排除しない)。
【0036】
別段の記述のない限り、粒子パラメータは少なくとも20個の粒子の分析に基づいた平均値である。
【0037】
シェル厚は、(透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して)、例えば拡大細孔と関連があり得るシェルの不連続部分を無視して、横断面からシェルの平均厚さを算出することによって決まる。
【0038】
コアシェル粒子とはコアとシェルとを有する粒子を意味する。
【0039】
細孔直径は、好ましくはAFMに関連するソフトウェアで算出される。
【0040】
反射は、別段の記述のない限り、表面と85°の角度で測定された550nmにおける鏡面反射を意味する。
【0041】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、単数には、文脈上からそうでないことが必要でない限り、複数が含まれる。特に、不定冠詞が使用される場合、本明細書は、文脈上からそうでないことが必要でない限り、複数および単数が考慮されていると理解されたい。
【0042】
本発明の特定の態様、実施形態、または実施例に関連して記載する特徴、整数、特性、化合物、化学部分または基は、本明細書に記載される他のいかなる態様、実施形態、または実施例と不適合でない限り、それらに適用可能であると理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】平衡状態において25℃および相対湿度40%で貯蔵されたコーティングの550nmにおける鏡面反射(R(0))に対する試験2に記載の条件下で貯蔵された本発明のコーティングの550nmにおける鏡面反射(R)の比を示すグラフである。
【図2】蒸気処理前のコーティング表面のAFM像を示す。
【図3】本発明のコーティングのコーティング表面について二次元のAFM像を示す。
【図4】図3のコーティングのコーティング表面について三次元のAFM像を示す。
【0044】
[コーティング組成物]
本発明は、コアシェル粒子を含むコーティング組成物を基材に塗布するステップであって、シェルは無機オキシドを含み、コアは中空であるか、または有機ポリマー組成物を含むステップを含む。
【0045】
本明細書におけるコーティング組成物は、典型的にはバインダーを含む。バインダーの主要な機能は、コーティングの完全性を元のままに維持することである。好適な任意のバインダーを使用してもよいが、バインダーは、好ましくは硬化時にそれ自体と共有結合を形成し、かつ/またはコーティングおよび/もしくは基材中の他の成分と共有結合を形成する。バインダーは、アルキル基またはアルコキシ基を有する無機化合物を硬化前に含むことが好ましい。さらに、バインダーは、好ましくはそれ自体と重合して、実質的に連続的なポリマー網状物を形成する。バインダーは、シェルと構造的にかつ/または化学的に異なることが好ましい。
【0046】
本発明の一実施形態において、バインダーは無機材料を含む。好ましくは、バインダーは無機材料から実質的になる。バインダーは、好ましくは1種または複数の無機オキシドに由来する化合物を含む。好ましくは、バインダーは、無機アルコキシド、無機ハロゲニド、無機ニトレート、無機アセテート、またはそれらの組合せなどの加水分解性材料を含む。無機アルコキシドが好ましい。好ましくは、バインダーは、アルコキシシラン、アルコキシジルコネート、アルコキシアルミネート、アルコキシチタネート、アルキルシリケート、硝酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウム、またはそれらの組合せを含む。好ましいのは、アルコキシシラン、好ましくはトリ−およびテトラ−アルコキシシランである。好ましくは、ケイ酸エチル、アルミネート、ジルコネート、および/またはチタネートのバインダーが使用される。テトラアルコキシシランが最も好ましい。
【0047】
コーティング組成物中のバインダーの量は、固体画分の好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上である。バインダーの量は、固体画分の好ましくは40重量%以下、より好ましくは25重量%以下になる。百分率は、バインダー中の無機オキシドの量として、コーティングの残部中の無機オキシドの量に比べて算出される。
【0048】
粒子は、様々なタイプ、サイズ、および形状の粒子の混合物を含んでもよい。しかし、粒子は実質的に同じサイズおよび形状であることが好ましい。粒径分布は、動的光散乱(DLS)を使用してその多分散指数により測定して、好ましくは0.5未満、好ましくは0.3未満、最も好ましくは0.1未満である。
【0049】
一実施形態において、本明細書で使用される粒子は、好ましくはロッド様または蠕虫様粒子などの非球状である。別の好ましい実施形態において、粒子は実質的に球状である。
【0050】
粒子は、好ましくは約500nm以下、より好ましくは300nm以下、さらにより好ましくは150nm以下の平均比径g(ここで、g=1/2×(長さ+幅))を有する。長さは最大可能長さであり、幅は長さを画定する直線と直角をなして測定された最大幅である。
【0051】
好ましくは、粒子は1nm以上の平均径を有する。粒子は、より好ましくは約10nm以上、さらにより好ましくは50nm以上の平均径を有する。粒径はTEMで測定される。
【0052】
中空コアまたは空隙が存在するときその平均比直径は、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、さらにより好ましくは20nm以上である。空隙の平均比直径は、好ましくは500nm以下、より好ましくは100nm以下、さらにより好ましくは80nm以下、さらにより好ましくは70nm以下である。シェルの厚さは、好ましくは少なくとも1nm、より好ましくは少なくとも2nm、より好ましくは少なくとも5nm、さらにより好ましくは少なくとも10nmである。シェルの厚さは、75nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは25nm以下、さらにより好ましくは20nm以下である。シェル厚が薄くなると、粒子は機械的諸特性を損ない、シェル厚が厚くなると、粒子における拡大細孔の形成が困難になる。
【0053】
好ましい実施形態において、粒子の全体積(すなわち、コアとシェル)に対する空隙率は、好ましくは約5%〜約90%、より好ましくは約10%〜約70%、さらにより好ましくは約25%〜約50%である。空隙率(x)は、次式:
x=(4ΤΤr/3)+(4ΤΤr/3)×100
に従って算出することができ、式中、rはコアの半径であり、rは外部シェルの半径である。
【0054】
コアシェル粒子のシェルは無機オキシドを含む。好ましくは、シェルは、実質的に無機オキシドからなる。好ましくは、金属は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ボリウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム(tallium)、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、ビスマス、ランタノイド、アクチノイド、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、およびそれらの組合せから選択される。好ましくは、金属酸化物は、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、アンチモンドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、およびそれらの組合せから選択される。シェルは、好ましくはシリカを含み、より好ましくは少なくとも90重量%のシリカを含む。特殊な実施形態において、粒子はシリカからなる。拡大細孔を含まない好適なシェルについては、国際公開第2008/028640号パンフレットおよび国際公開第2008/028641号パンフレットに記載されている。
【0055】
コアの有機ポリマー組成物は、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、およびそれらの組合せを含む。
【0056】
好ましくは、コアは、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン;ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレートなどのビニルポリマー、およびそれらの組合せから選択されるポリマーを含む。
【0057】
参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2008/028640号パンフレットの5頁31行〜7頁5行には、他の好適なポリマーが記載されている。
【0058】
好ましい実施形態において、コア材料はカチオン性ポリマーを含む。カチオン基はポリマーに組み込むことができ、または例えばカチオン性界面活性剤の添加によるなど、他の何らかの形で添加することもできる。好ましくは、カチオン基はポリマーに少なくとも部分的に結合している。好ましくは、カチオン基は、重合時にポリマーに組み込まれる。
【0059】
ポリマーは、DSM NeoResins B.Vから入手可能なNeoCryl(商標)XK−30など、ラテックスを含むことが好ましい。本明細書では、「ラテックス」という用語は、安定化されたポリマー粒子懸濁液を指す。好ましくは、懸濁液はエマルジョンである。
【0060】
好ましくは、ラテックスはポリマーおよびカチオン性界面活性剤を含む。好ましくは、界面活性剤はアンモニウム界面活性剤を含む。
【0061】
好適な任意のポリマー、例えばホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、およびそれらの組合せなどを使用することができる。
【0062】
ラテックスは、好ましくは水性カチオン性ビニルポリマーを含む。
【0063】
最も好ましくは、ラテックスは、少なくともスチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー、カチオン性官能化モノマー、および潜在的にカチオン性のモノマー、またはそれらの組合せから選択されるモノマーから得ることができるビニルポリマーを含む。
【0064】
本明細書における組成物は溶媒を含んでもよい。好ましい溶媒としては、水、有機溶媒、およびそれらの組合せが含まれる。しかし、バインダーの化学的性質にもよるが、多くの溶媒が有用である。好適な溶媒としては、水、非プロトン性有機溶媒、アルコール、およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されるものではない。好適な溶媒の例としては、イソプロパノール、エタノール、アセトン、エチルセロソルブ、メタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチル−エチル−エーテル、メチル−ブチル−エーテル、トルエン、メチル−エチルケトン、およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
一般に、コーティング組成物には、粒子およびバインダーの粘度を、基材に薄層を塗布することができるような値に調整する量の非反応性溶媒が含まれる。好ましくは、粘度は、約2.0mPa.s以上、好ましくは2.2mPa.s以上、さらにより好ましくは約2.4mPa.s以上になる。好ましくは、粘度は、約20mPa.s以下、好ましくは約10mPa.s以下、より好ましくは約6mPa.s以下、さらにより好ましくは約3mPa.s以下である。粘度は、ウベローデ(Ubbelohde) PSL ASTM IP no 1(タイプ27042)を用いて測定することができる。
【0066】
本明細書におけるコーティング組成物中の固形物の量は、硬化前に、好ましくは約5重量%以下、より好ましくは約4重量%以下、はるかにより好ましくは約3重量%以下である。固形物の量は、好ましくは約0.5重量%以上、より好ましくは約1重量%以上、より好ましくは約1.5重量%以上である。
【0067】
本組成物は、光学コーティングを形成するのに適している。本明細書では、「光学コーティング」という用語は、主要な機能として光学機能を有するコーティングを示す。光学コーティングの例としては、反射防止、惑光防止、幻惑防止、静電防止、EM調整(例えば、UV調整、日照調整、IR調整、RF調整など)機能向けに設計されたものが含まれる。
【0068】
好ましくは、本コーティングは反射防止性である。より好ましくは、本コーティングは、反射防止性が、コーティングされた一側面について波長425〜675nm(可視光領域)において測定したとき、最小反射率が約2%以下、好ましくは約1.5%以下、より好ましくは約1%以下であるような程度である。一側面の平均反射率は、425〜675nmの領域にわたって、好ましくは約2.5%以下、より好ましくは約2%以下、さらにより好ましくは約1.5%以下、さらにより好ましくは約1%以下になる。一般に、反射率は、波長425〜650nm、好ましくは450nm以上、より好ましくは500nm以上の波長において最小値になる。600nm以下の波長において、最小であることが好ましい。ヒトの目に最適な波長は、最小反射率の約550nmである。というのは、これは、ヒトの目の感度が最も高くなる波長(色)であるからである。
【0069】
コーティング組成物の屈折率は、好ましくは1.20〜1.40、より好ましくは1.25〜1.35である。
【0070】
コーティング組成物は、基材に塗布することができる。好適な任意の基材を使用することができる。光学コーティングから利益を得ることができる基材、特に反射防止コーティングから利益を得るはずのものが好ましい。基材は、透明度が高いことが好ましい。透明度は、厚さ2mmおよび波長425〜675nmで、好ましくは約94%以上、より好ましくは約96%以上、さらにより好ましくは約97%以上、さらにより好ましくは約98%以上である。
【0071】
本明細書において、基材は有機のものとすることができる。例えば、基材は、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネートもしくはポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエステル、または同様の光学諸特性を有するポリマー材料などの有機ポリマー材料とすることができる。この実施形態において、有機基材材料が実質的にその形状のままであり、熱劣化によって実質的に損なわれないように十分低い温度で硬化することができるコーティングを使用することが好ましい。1つの好ましい方法は、欧州特許出願公開第1591804号明細書(A)に記載される触媒を使用することである。国際公開第2005/049757号パンフレットには、別の好ましい硬化方法が記載されている。
【0072】
本明細書において、基材は無機のものでもよい。好ましい無機基材としては、セラミック、サーメット、ガラス、石英、またはそれらの組合せが含まれる。フロートガラスが好ましい。透明度98%以上の低鉄ガラス、いわゆる白板ガラスが最も好ましい。
【0073】
コーティング組成物は、得られたドライコーティングの厚さが約50nm以上、好ましくは約70nm以上、より好ましくは約90nm以上であるように物品に塗布されることが好ましい。ドライコーティングの厚さは、好ましくは約300nm以下、より好ましくは約200nm以下、さらにより好ましくは約160nm以下、さらにより好ましくは約140nm以下である。
【0074】
基材は、コーティングを塗布する前に清浄されることが好ましい。粉塵、グリース、および他の有機化合物などの少量の汚染物質によって、コーティングは欠陥を示す。
【0075】
いくつかの方法が、コーティングを基材に塗布するのに利用可能である。必要とされた厚さを得るのに適した液状コーティング組成物を塗布する方法であれば、いずれでも許容できる。好ましい方法としては、メニスカス(キス)コーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、スピンコーティング、およびディップコーティングが含まれる。ディップコーティングは、浸漬される基材のすべての側面にコーティングを形成し、再現可能で一定の厚さをもたらすので好ましい。幅または長さが20cm以下のガラス板など、より小さいガラス板を使用する場合、スピンコーティングを容易に使用することができる。連続プロセスには、メニスカス、ロール、およびスプレーコーティングが有用である。
【0076】
基材に塗布すると、コーティングは硬化を必要とすることがある。硬化は好適な任意の手段で実施することができるが、その手段は、使用されるバインダー材料のタイプで決まることが多い。硬化手段の例としては、加熱、IR処理、紫外線への曝露、触媒硬化、およびそれらの組合せが含まれる。
【0077】
触媒を使用する場合、好ましくは酸触媒である。緩衝能を有する酸が好ましいが、好適な触媒としては、酢酸、ギ酸、硝酸、クエン酸、酒石酸のような有機酸、リン酸、塩酸、硫酸のような無機酸、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
好ましい実施形態において、硬化は加熱によって実現される。硬化は、一般に約150℃以上、好ましくは約200℃以上で実施されるが、室温(例えば、20℃)という低い温度で行うことができる。温度は、好ましくは約700℃以下、より好ましくは約500℃以下であろう。硬化は、一般に30秒以上で行われる。一般に、硬化は10時間以下、好ましくは4時間以下で行われる。
【0079】
一実施形態において、コーティング組成物は熱硬化性であり、ガラス板の焼鈍しステップの前に前記ガラス板に塗布される。焼鈍しステップは、通常600℃までの温度で実施される。したがって、この場合、硬化および焼鈍しプロセスは1ステップで実施される。
【0080】
一実施形態において、硬化後に、コーティングは、水蒸気、または水蒸気と塩基との組合せで処理される。代替実施形態において、硬化前に、コーティングは水蒸気、または水蒸気と塩基との組合せで処理される。
【0081】
水蒸気(蒸気)は、好適な任意の手段でコーティングに適用することができる。水蒸気を、好ましくは少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも150℃、さらにより好ましくは少なくとも200℃、さらにより好ましくは少なくとも300℃、最も好ましくは少なくとも400℃の温度で加える。蒸気処理温度は、好ましくは600℃以下、より好ましくは500℃以下である。好都合なことには、オプションの硬化ステップ後、オーブンがまだ熱い間に水蒸気を加えることができる。
【0082】
水蒸気処理を好ましくは少なくとも1分間、より好ましくは少なくとも15分間、さらにより好ましくは少なくとも45分間継続する。処理期間を制御して、所望の拡大孔径を実現することは好ましい。
【0083】
塩基は、好適な任意の手段でコーティングに適用することができる。好ましい実施形態において、塩基はガス状の形態で添加される。第2の好ましい実施形態において、より高い温度で塩基を遊離させることができるpH中性化合物がコーティングに埋め込まれている。好適な任意の塩基を使用することができる。好ましい塩基としては、アンモニア、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、金属水酸化物、ピリジン、金属アミド、第一級ホスフィン、第二級ホスフィン、第三級ホスフィン、第一級アルサン、第二級アルサン、第三級アルサン、またはそれらの組合せが含まれる。塩基は、例えば、より高い温度にかけたとき塩基を遊離させることができる好適な任意のpH中性化合物に由来するものであってもよい。好ましくは、本発明において使用することができるpH中性化合物は、不安定な保護基(P)、および共有結合している塩基(B)を含む。
【0084】
好ましくは、不安定な保護基(P)は、カルボベンジルオキシ(Cbz)、tert−ブチルオキシカルボニル(BOC)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、ベンジル(Bn)、p−メトキシフェニル(PMP)、(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルオキシ)カルボニル(Ddz)、α,α−ジメチル−ベンジルオキシ)カルボニル、フェニルオキシカルボニル、p−ニトロフェニルオキシカルボニル、アルキルボラン、アルキルアリールボラン、アリールボラン、または他の何らかの好適な保護基から選択される。
【0085】
pH中性化合物で使用することができる塩基(B)は、好適には第一級、第二級もしくは第三級のアリールもしくはアルキルアミノ化合物、アリールもしくはアルキルホスフィノ化合物、アルキルもしくはアリールアルシノ化合物、または他の何らかの好適な他の化合物から選択することができる。
【0086】
蒸気処理時に、コーティングの環境中の水の濃度は、好ましくは1立方メートル当たり1グラム超、より好ましくは1立方メートル当たり5グラム超、最も好ましくは1立方メートル当たり10グラム超である。蒸気処理時に、水の濃度は、好ましくは1立方メートル当たり1000グラム未満、より好ましくは1立方メートル当たり750グラム未満、最も好ましくは1立方メートル当たり500グラム未満である。
【0087】
水蒸気と塩基との組合せを用いた蒸気処理時に、塩基の濃度は、好ましくは1立方メートル当たり0.00001グラム超、より好ましくは1立方メートル当たり0.0001グラム超、最も好ましくは1立方メートル当たり0.001グラム超である。水蒸気と塩基との組合せを用いた蒸気処理時に、塩基の濃度は、好ましくは1立方メートル当たり1グラム未満、より好ましくは1立方メートル当たり0.1グラム未満、最も好ましくは1立方メートル当たり0.01グラム未満である。
【0088】
水蒸気、および水蒸気と塩基との組合せの処理によってコーティングの特性が改善されるメカニズムは、完全には理解されていない。しかし、塩基は硬化触媒として作用しているようには見えず、その効果は、コーティングがすでに硬化されてから最も明らかである。特定の理論に拘泥するものではないが、蒸気処理がコーティングの表面再配列を引き起こし、少数の拡大細孔が生じ、それによって、固形物汚染に対する障壁を依然として維持しながら、水をより容易に放出することができると考えられる。これは、染み発生の低減をもたらし、清浄性の助けとなる。
【0089】
本発明によるコーティングは、良好な光学諸特性および清浄性を示すことが明らかになった。
【0090】
試験1に記載するように水に浸漬させた後、本発明のコーティングされた基材は、コーティングを室温で脱イオン水中に15分間浸漬した後、周囲条件(すなわち、25℃、相対湿度40%)で45分間乾燥した後に好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、さらにより好ましくは20%以下の反射率の増大を示す。
【0091】
次に、開示内容の範囲を限定するものではないが、以下の実施例を参照して、本発明をさらに説明することにする。
【0092】
[実施例]
[実施例1]−調合物の組成(重量%):
【0093】
【表1】



【0094】
ラテックス(NeoCryl XK−30、DSM NeoResins BVから入手可能)およびテトラメトキシシランを使用して、国際公開第2009/030703号パンフレット、特に6頁8行〜29行に開示される方法に従って、コアシェル粒子を生成した。得られたシリカシェルでラテックスコアの粒子は、以下の特性を有する。
エタノールで希釈した後のpH:5.7
水中におけるラテックスの粒径(DLSで決定):63nm
水中におけるコア−シェル粒子の粒径(DLSで決定):79nm
エタノール中におけるコア−シェル粒子の粒径(DLSで決定):108nm
多分散性:<0.1
等電点:4〜5
乾燥後のコア−シェル粒径(TEMで決定):55nm
乾燥後のシェル厚(TEMで決定):10nm
【0095】
次いで、硝酸を、pH 3.6になるまで添加した。粒径は、84nmで少なくとも2週間安定であった。
【0096】
[コーティングプロセス]
ディップコーティングにより、10×10cmのガラス板(厚さ2mm、Guardian Extra Clear Plus)にコーティングを塗布した。上述されたコーティング調合物を用いて、適切なディップ速さとして1秒当たり10mmを選択した。コーティング厚さ120nmを実現した。
【0097】
[硬化プロセス]
コーティングされたガラス基板を450℃に加熱し(加熱速度1時間当たり900℃)、次いで450℃で15分間維持した。次いで、オーブンを室温に冷却し、硬化プロセスを完了した(冷却速度1時間当たり300℃)。
【0098】
[蒸気処理]
(a) 水蒸気を使用:上述された手順に従って硬化したコーティングされた物品を、水蒸気で450℃において60分間処理した。水の添加速度1分当たり4グラムで、オーブン(V=0.018 m)を経由して水蒸気をポンプで送り込んだ。
(b) 水蒸気とアンモニアとの組合せの使用:上述された手順に従って硬化したコーティングされた物品を、水蒸気およびアンモニアで450℃において30分間処理した。添加速度1分当たり4グラムで、オーブン(V=0.018m)を経由して水蒸気をポンプで送り込んだ。添加速度1分当たり0.020グラムで、オーブンを経由してアンモニアをポンプで送り込んだ。
【0099】
[試験1]:室温で水中に浸漬
コーティングされた基材を、室温で脱イオン水中に浸漬した。550nmにおける鏡面反射を、浸漬前ならびに浸漬時間1分後および15分後に測定した。15分間浸漬した後、コーティングされた基材を周囲条件下で45分間乾燥させた。この乾燥時間の後、コーティングされた基材の反射率を再度決定した。次いで、基材を100℃に5分間加熱した。加熱ステップ後に、反射率を決定した。結果を表1に示す。
【0100】
【表2】



【0101】
表1に示したように、水の取り込みによって、コーティングの屈折率が増大し、したがって反射率が増大する。結果から、水蒸気、または水蒸気と塩基との組合せによる蒸気処理時にコーティングの550nmにおける鏡面反射が低減することが明確にわかる。
【0102】
[試験2]:高相対湿度への曝露
コーティングされた基材を、25℃および相対湿度40%で気候チャンバーに配置した。次いで、湿度レベルを90%に上昇させた。コーティングを、これらの条件下で約400分間平衡状態にさせておいた。この平衡期間中、反射率を測定した。平衡後、湿度を40%に低下させた。コーティングされた基材を、この雰囲気中で約600分間平衡状態にさせておいた。この平衡期間の終わりに、反射率を測定した。実験の終わりに、コーティングされた物品を100℃に5分間加熱した。加熱ステップ後に、反射率を決定した。すべての反射率の値を、40%湿度および25℃での開始時の反射率で標準化する。
【0103】
図1に示す結果から、処理されたコーティングの550nmにおける鏡面反射が低減し、これは、コーティングでは水の取り込みが低減し、水の放出が増大していることを示すことが明確にわかる。
【0104】
目視観察によって、本発明の粒子を含むコーティングには水染みがないことが確認された。一方、拡大細孔のない粒子を含むコーティングには、より水染みを示す傾向があった。
【0105】
図3−4は、実施例1のコーティングの表面を示す。直径約40〜100nmの粒子はそれぞれ、直径約20〜50nmの拡大細孔1個を含む。蒸気処理に先立って(図2)、原子間力顕微鏡(AFM)像には、目に見える細孔が認められず、これは、非拡大細孔が1nm未満であることを示すものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子であって、それぞれ、中空コアまたは有機ポリマー組成物を含むコアと無機オキシドを含むシェルとを有し、前記シェルは
a.2〜75nmの範囲の厚さ;および
b.少なくとも1個かつ5個以下の細孔
を有し、細孔はそれぞれ、前記コアと前記シェルの外面との間を連通し、原子間力顕微鏡を使用して測定して5nm〜300nmの直径を有し、前記細孔は前記粒子の最大細孔である粒子。
【請求項2】
前記細孔の直径が少なくとも15nmである、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記粒子が、500nm以下の最大直径を有する、請求項1または2に記載の粒子。
【請求項4】
前記無機オキシドがシリカを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の粒子を含むコーティングであって、前記粒子の一部分は、コーティング表面の少なくとも一部分を形成するコーティング。
【請求項6】
前記コーティング表面の一部分を形成する前記粒子の少なくとも30%が前記細孔を含む、請求項5に記載のコーティング。
【請求項7】
前記コーティング表面の少なくとも一部分を形成する前記粒子が、2μm×2μmの表面積にわたって原子間力顕微鏡を使用して決定された、平均して0.3個超で2.0個以下の拡大細孔を含む、請求項5または6に記載のコーティング。
【請求項8】
前記コーティングが反射防止コーティングである、請求項5〜7のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項9】
前記コアが中空であり、前記コーティングが、次式で定義される反射防止コーティング:
は2.8R未満に等しく、かつRは2.0R未満に等しい
であり、式中、
は、前記コーティング組成物の550nmにおける鏡面反射であって、前記コーティング組成物は、基材に塗布されて、100〜120nmの平均厚さを有するコーティングを形成し、平衡状態において25℃および相対湿度40%で貯蔵され、コーティングされた基材Cを生じる、
は、前記コーティングされた基材Cの550nmにおける鏡面反射であって、前記コーティングされた基材Cは、25℃および相対湿度90%で400分間貯蔵され、コーティングされた基材Cを生じる、
は、平衡状態に到達するまで25℃および40%相対湿度で貯蔵された後のコーティングされた基材Cの550nmにおける鏡面反射である、
請求項1または2に記載のコーティング。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれか一項に記載のコーティングを含む物品。
【請求項11】
請求項5〜9のいずれか一項に記載のコーティングを含むコーティングされた基材を生成する方法であって、
a.コアとシェルとを有する粒子を含むコーティング組成物を基材に塗布するステップであって、ここで、前記シェルは2〜75nmの範囲の厚さを有するステップと;
b.前記コーティング表面を水蒸気、または水蒸気と塩基との組合せで処理するステップと
を含み、前記コアは有機ポリマー組成物を含むか、または中空であり、前記シェルは無機オキシドを含む、方法。
【請求項12】
前記コーティング組成物をステップ(b)の前または後に硬化する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記硬化ステップを、少なくとも100℃の温度で少なくとも15分間行う、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の粒子の製造における、水蒸気、または水蒸気と塩基との組合せの使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2012−505304(P2012−505304A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531478(P2011−531478)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063419
【国際公開番号】WO2010/043653
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】