説明

耐水性電極

【課題】従来よりも水の浸入に対して耐性が高い耐水性電極を提供しようとするもの。
【解決手段】電極端子の外周に、液体と外周面で接する筒状の導電性セラミックスが略同心円状に配設され、前記電極端子と導電性セラミックス相互間には弾性を有する金属体Mが付勢された状態で介在すると共に前記相互間に防水性樹脂が充填・固化された。前記防水性樹脂は昇温時の体積膨張を見越した空隙領域が端部近傍に存するように設定されたこととしてもよい。前記防水性樹脂は導電性を有することとしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プールや風呂槽などの循環利用水の浄化殺菌また各種産業用水の浄化などのための電解装置、さらには水位計その他に用いられる耐水性電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プールや風呂槽などの循環利用水の浄化殺菌のための電解装置が提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
この電解装置は、図5に示すように、陽極(2a)が複数の筒型の導電性セラミックス電極を長い筒と成る様に積み重ね、連結し一体化して長くなった導電性セラミック陽極(2a)の筒の中に1本の端子本体(6)を挿入し、端子本体(6)と積み重ねた陽極(2a)とは隙間無く密着するように構成された陽極(2a)であり、その外側にチタン、ステンレススチールなどの導電性材料からなる筒型の陰極(3)が一定の極間距離を置いて同心状に配置・構成されたものである。
そして、端子本体(6)と積み重ねた導電性セラミックス陽極(2a)の隙間に溶融した低融点金属又は水銀(2a)を注入して、導電性セラミックス陽極(2a)と端子本体(6)の間が低融点金属又は水銀(2a)で隙間無く構成された陽極(2a)であり、その外側にチタン、ステンレススチールなどの導電性材料からなる筒型の陰極(3)が一定の極間距離を置いて同心状に配置・構成されたものとすると、大電流の供給による発熱時にセラミックスとチタン等の熱膨張係数の違いによってセラミックス陽極が割れることを水銀のクッション作用により回避できるということである。
ところが、前記のように端子本体と積み重ねた導電性セラミックス陽極の隙間に水銀を注入した場合、封入された水銀が発熱時に体積膨張して行き場を失い、最も強度が弱い箇所を突き破って漏出するおそれがあった。これに対し、前記端子本体と積み重ねた導電性セラミックス陽極の間に水銀の代わりに弾性を有する金属板を挿入することによって、端子本体と導電性セラミックス陽極相互間を電気的に接続する方法が考えられる。
しかし、前記方法では端子本体と導電性セラミックス電極との間に使用中に水が浸入してしまう事態が生じた場合、端子本体が陽極として作用し導電性セラミックス電極が陰極として作用して陽極内部で電解が生じてしまうという問題があった。こうなるとチタン製の端子本体が陽極酸化されると共にセラミックス電極が陰極還元され、早晩ぼろぼろになって使用不能となってしまう。
【特許文献1】特開2003−251356号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこでこの発明は、従来よりも水の浸入に対して耐性が高い耐水性電極を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の耐水性電極は、電極端子の外周に、液体と外周面で接する筒状の導電性セラミックスが略同心円状に配設され、前記電極端子と導電性セラミックス相互間には弾性を有する金属体が付勢された状態で介在すると共に前記相互間に防水性樹脂が充填・固化されたことを特徴とする。
この耐水性電極は前記のような構成を有するので、電極端子と導電性セラミックス相互間に介在する付勢された弾性金属体によって電気的な接続状態にできると共に、相互間に充填・固化された防水性樹脂によって電極端子と導電性セラミックスとの間に水が浸入して内部電解が発生することを抑制することができる。すなわち、導電性セラミックスに衝撃により「ひび」が発生したり所謂「す」があったりした場合には水等が浸入してきて内部電解が生じ、この電気分解によって発生した水素ガスに電極でスパークした火花が引火する不都合が生じ得たが、このような不具合を解消することができる。
【0005】
また、導電性セラミックスについて経年変化により電極端子との距離の相対的な寸法変化が生じたり、使用(例えば電気分解)中に発熱して寸法変化が生じても、付勢された弾性金属体によって前記寸法変化を吸収して電気的導通を好適に担保することができる。前記寸法変化は大体微小なものであるが、それでも従来は電気的導通の断裂が断続的に発生して上記のようなスパークが生じ得たのである。これに対し前記付勢された弾性金属体によって上記のような不都合を抑制乃至防止することができる。
ここで、前記電極端子の材質は例えばチタンやステンレススチール・銅・真鋳とすることができる。また前記導電性セラミックは例えば筒状であって長さが10〜1000mm、内径の直径が10〜100mm、厚みが2〜50mmに設定することができる。導電性セラミックは例えば約50mm長さとしたものを複数個(6個等)積み重ねて使用してもよい。この導電性セラミックは、公知の方法で導電性原料を焼結することにより製造することができる。
【0006】
前記弾性を有する金属体の形態として、例えば金属板や針金などを例示することができる。前記金属板は、例えば金属製の断面略C字状体(開筒された筒状形状)の一部が内方に向けて長手方向に湾曲乃至屈曲せしめられた形状とすることができる(図3及び図4参照)。この金属板は、電極端子と導電性セラミックス相互間で突っ張った状態となるように設定する。このように設定すると、外周側で導電性セラミックスの内面側に接すると共に湾曲乃至屈曲部の頂部が付勢された状態で電極端子の外面に圧接せしめられ、また断面略C字状であるため拡縮変形可能であり経年や発熱時等の寸法変化に対する追従性に優れるという利点がある。この形状は金属板に対してプレス加工により湾曲乃至屈曲部を形成した後、断面略C字状にまるめることにより形成することができる。また弾性を有する金属体として、金属製の筒状体の断面が波型や連続する略V字型(電極端子の外面と導電性セラミックスの内面の両方に当接する)などとすることもできる。この金属体の材質は、例えばチタンやステンレススチール・銅・真鋳とすることができる。
【0007】
前記防水性樹脂として、例えばエポキシ樹脂やシリコン樹脂を用いることができる。このうちシリコン樹脂は弾性を優れ、電極端子と導電性セラミックス相互間の寸法変化に追従できる点で好ましい。すなわち、弾性を有する防水性樹脂を用いることが好ましい。
この耐水性電極は、プールや風呂槽などの循環利用水の浄化殺菌また各種産業用水の浄化などのための電解装置の陽極電極(陰極電極と組み合わせる)として適用することができる。さらにプール等の水位を測る水位計の水位判定端子その他に適用することができる。
【0008】
(2)前記防水性樹脂は、昇温時の体積膨張を見越した空隙領域が端部近傍に存するように設定されたこととしてもよい。このようにすると、防水性樹脂が高温時に体積膨張する性質を有していてもこの変形を許容することができる。
【0009】
(3)前記防水性樹脂は導電性を有することとしてもよい。
このように構成すると、電極端子と導電性セラミックス相互間の電気的導通をより確実にすることができる。防水性樹脂に導電性を付与するために、例えば樹脂に銅粉やカーボンブラックなどを分散することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
電極端子と導電性セラミックスとの間に水が浸入して内部電解が発生することを抑制することができるので、従来よりも水の浸入に対して耐性が高い耐水性電極を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を説明する。
(実施形態1)
この実施形態の耐水性電極は、プールや風呂槽などの循環利用水の浄化殺菌、また各種産業用水の浄化などのための電解装置の陽極電極(陰極電極と組み合わせる)として適用するものである(電解装置の基本的構成については図5参照。陽極電極は2a、陰極電極は3である)。
この耐水性電極は、外部の電気分解の制御装置と電気的な導通状態とするための金属製の電極端子6の外周に、処理液体(プールや風呂槽などの循環利用水、各種産業用水など)と外周面で接する円筒状の導電性セラミックス(陽極電極2a)が同心円状に配設されている。前記電極端子6の材質は、チタンやステンレススチールとすることができる。前記導電性セラミック(2a)は長さが50mm、外径の直径が18mm、内径の直径が12mm、厚みが3mmに設定している。この導電性セラミック(2a)は、公知の方法で導電性原料を焼結することにより製造した。この導電性セラミックス(2a)は複数個(6個)用いて、約300mmの長さとし、陰極電極3と組み合わせて電気分解して浄化する。
【0012】
前記電極端子6と導電性セラミックス(2a)相互間には、弾性を有する金属板M(図1及び図2参照)が付勢された状態で介在する。前記金属板Mは、金属製の断面略C字状体(開筒部X(図2参照)を有する筒状形状)の一部(5列)が内方に向けて長手方向に浅い円弧状に湾曲せしめられた形状としている。この金属板Mは、電極端子6と導電性セラミックス(2a)相互間で突っ張った状態となるように設定する。よって、外周側で導電性セラミックス(2a)の内面側に接すると共に湾曲部Wの頂部Tが付勢された状態で電極端子6の外面に圧接せしめられ、また断面略C字状であるため拡縮変形可能であり経年や発熱時等の寸法変化に対する追従性に優れるという利点がある。
【0013】
この形状は金属板Mに対してプレス加工により湾曲部Wを形成した後、断面略C字状にまるめることにより加工形成した。この金属体Mの材質は、チタンやステンレススチール・銅・真鋳とすることができる。
さらに、前記電極端子6と導電性セラミックス(2a)相互間(金属板Mが付勢された状態で介在する)に防水性樹脂(図示せず)が充填・固化されたこととしている。前記防水性樹脂としてエポキシ樹脂を用いており、電極端子6と導電性セラミックス(2a)相互間に弾性を有する金属板を介在させた後に流し込んで固化させた。この防水性樹脂は、昇温時(電解時に昇温することがある)の体積膨張を見越した空隙領域が両端部近傍に存するように設定している。
【0014】
次に、この実施形態の耐水性電極の使用状態を説明する。
この耐水性電極は前記のような構成を有するので、電極端子6と導電性セラミックス(2a)相互間に介在する付勢された弾性金属板Mによって電気的な接続状態にできると共に、相互間に充填・固化された防水性樹脂(エポキシ樹脂)によって電極端子6と導電性セラミックス(2a)との間に水が浸入して内部電解が発生することを抑制乃至防止することができ、従来よりも水の浸入に対して耐性が高く、電解装置の寿命を長くすることができるという利点がある。
【0015】
また、導電性セラミックス(2a)に衝撃により「ひび」が発生したり所謂「す」があったりした場合には水等が浸入してきて内部電解が生じ、この電気分解によって発生した水素ガスに電極でスパークした火花が引火する不都合が生じ得たが、このような不具合を解消することができる。
更に、導電性セラミックス(2a)について経年変化により電極端子6との距離の相対的な寸法変化が生じたり、使用(例えば電気分解)中に発熱して寸法変化が生じても、付勢された弾性金属体Mによって前記寸法変化を吸収して電気的導通を好適に担保することができる。前記寸法変化は大体微小なものであるが、それでも従来は電気的導通の断裂が断続的に発生して上記のようなスパークが生じ得たのである。これに対し前記付勢された弾性金属体Mによって上記のような不都合を抑制乃至防止することができる。
【0016】
そのうえ前記防水性樹脂(エポキシ樹脂)は、昇温時の体積膨張を見越した空隙領域が両端部近傍に存するように設定しており、該樹脂が高温時に体積膨張する性質を有していてもこの変形を許容することができるという利点がある。
【0017】
(実施形態2)
この実施形態の耐水性電極は、プールや風呂槽の水位を検知する水位計(液面センサー)の水位判定端子に適用している(図1乃至図4参照)。具体的には、この水位計の出力信号にしたがい、補給水の開始や停止が制御される。この液面センサーはセンサーヘッド1と、センサーヘッドの主極2、8(一対の耐水性電極から成る)とを有する。
【0018】
この耐水性電極は、外部の水位計制御部と電気的な導通状態とするための金属製の電極端子(中央)の外周に、水位の判定対象水(プールや風呂槽など)と外周面で接する円筒状の導電性セラミックスが同心円状に配設されている。具体的には、導電性セラミックス3と9で上限位置を検知するセンサー、導電性セラミックス4と10で中域位置1を検知するセンサー、導電性セラミックス5と11で中域位置2を検知するセンサー、導電性セラミックス6と12で中域位置3を検知するセンサー、導電性セラミックス7と13で下限位置を検知するセンサーを形成する。前記電極端子(中央)の材質は、チタンやステンレススチールとすることができる。前記導電性セラミックは長さが5mm、外径の直径が18mm、内径の直径が12mm、厚みが3mmに設定している。この導電性セラミックは、公知の方法で導電性原料を焼結することにより製造した。上下5段階の水位を検知するセンサー相互間には非導電体16(合成樹脂製リング体)を配設している。なお14と15は、液面の水位の例を示す。
【0019】
そして、前記電極端子と導電性セラミックス相互間には、対応する弾性を有する金属板M(図1及び図2参照)が付勢された状態で介在する。すなわち、上限位置、中域位置1、中域位置2、中域位置3、下限位置のそれぞれの水位に対応し、各水位に導電性セラミックスと金属板と電極端子のセットをセンサーとして設置している。上下間のセンサー相互間は、電気的に絶縁している。
【0020】
前記金属板Mは、金属製の断面略C字状体(開筒部X(図2参照)を有する筒状形状)の一部(5列)が内方に向けて長手方向に浅い円弧状に湾曲せしめられた形状としている。この金属板Mは、電極端子と導電性セラミックス相互間で突っ張った状態となるように設定する。よって、外周側で導電性セラミックスの内面側に接すると共に湾曲部Wの頂部Tが付勢された状態で電極端子の外面に圧接せしめられ、また断面略C字状であるため拡縮変形可能であり経年や発熱時等の寸法変化に対する追従性に優れるという利点がある。
【0021】
この形状は金属板Mに対してプレス加工により湾曲部Wを形成した後、断面略C字状にまるめることにより加工形成した。この金属体Mの材質は、チタンやステンレススチール・銅・真鋳とすることができる。
さらに、前記相互間に防水性樹脂(図示省略)が充填・固化されたこととしている。前記防水性樹脂としてエポキシ樹脂を用いており、電極端子と導電性セラミックス相互間に弾性を有する金属板を介在させた後に流し込んで固化させた。この防水性樹脂は、昇温時(風呂では四十数度に昇温する)の体積膨張(ほんの僅かであるが)を見越した空隙領域が両端部近傍に存するように設定している。
【0022】
次に、この実施形態の耐水性電極の使用状態を説明する。
この耐水性電極は2本対として水位の上限位置と下限位置とを含む5段階の水位を検知できるように回路を組み、プール等に平行に配設して前記相互間の電気的導通状態を感知することにより水位を判定する。
【0023】
この耐水性電極は前記のような構成を有するので、電極端子と導電性セラミックス(3、4、5、6、7、9、10、11、12、13)相互間に介在する付勢された弾性金属板によって電気的な接続状態にできると共に、相互間に充填・固化された防水性樹脂(エポキシ樹脂)によって電極端子と導電性セラミックスとの間に水が浸入して腐食が発生することを抑制乃至防止することができ、従来よりも水の浸入に対して耐性が高く、水位計としての寿命を長くすることができるという利点がある。
【0024】
すなわち、プール等には殺菌性付与のために次亜塩素酸を注入するので腐食され易い環境にあるが、この耐水性電極は防水性樹脂(エポキシ樹脂)によって耐腐食性にも優れる。
また前記防水性樹脂(エポキシ樹脂)は、昇温時の体積膨張を見越した空隙領域が両端部近傍に存するように設定しており、該樹脂が高温時に体積膨張する性質を有していてもこの変形を許容することができるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この耐水性電極は、プールや風呂槽などの循環利用水の浄化殺菌また各種産業用水の浄化などのための電解装置の陽極電極(陰極電極と組み合わせる)として適用することができる。さらにプール等の水位を測る水位計の水位判定端子その他に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態の弾性を有する金属体を説明する側面図。
【図2】実施形態の弾性を有する金属体を説明する断面図。
【図3】実施形態2の耐水性電極(水位計)を説明する概略断面図。
【図4】実施形態2の耐水性電極を説明する一部透視概略斜視図。
【図5】電解装置の基本的構成を説明する斜視図。
【符号の説明】
【0027】
3、4、5、6、7 導電性セラミックス
9、10、11、12、13 導電性セラミックス
M 弾性を有する金属体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極端子の外周に、液体と外周面で接する筒状の導電性セラミックスが略同心円状に配設され、前記電極端子と導電性セラミックス相互間には弾性を有する金属体Mが付勢された状態で介在すると共に前記相互間に防水性樹脂が充填・固化されたことを特徴とする耐水性電極。
【請求項2】
前記防水性樹脂は昇温時の体積膨張を見越した空隙領域が端部近傍に存するように設定された請求項1記載の耐水性電極。
【請求項3】
前記防水性樹脂は導電性を有する請求項1又は2記載の耐水性電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−309775(P2007−309775A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138828(P2006−138828)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(399049981)株式会社オメガ (70)
【Fターム(参考)】