説明

耐油性乾燥剤及び耐油性乾燥剤の製造方法

【課題】油分の多い環境下でも吸湿性能が低下せず、しかも、油分の染み込みや変色を確実に防止することができる耐油性乾燥剤及び耐油性乾燥剤の製造方法を提供する。
【解決手段】シート状の板紙1に塩化カルシウムを含浸した乾燥剤において、該板紙1に耐油剤を配合する。耐油剤としてパーフルオロアルキルリン酸塩を使用する。板紙1は、パルプ100重量%に対して0.5〜4重量%のパーフルオロアルキルリン酸塩が添加されたパルプにて形成される。板紙1は、パルプ100重量%に対して10〜45重量%の塩化カルシウムを配合してボーメ度13〜25度に調整されたパルプにて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油成分の多い環境において使用できる耐油性乾燥剤に係り、油成分を吸収せずに水分のみを吸収することが可能な耐油性乾燥剤及び耐油性乾燥剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化カルシウムを繊維質に含浸させた乾燥剤として、古くは特許文献1に記載された防湿材がある。この防湿材は、厚紙に塩化カルシウムを湿潤させて乾燥剤を設け、この乾燥剤をポリエチレンフィルム等の袋に通気自在に収納したものである。
【0003】
また、吸取紙状の紙質に塩化カルシウムを含浸させてシート状の乾燥剤に形成したものが特許文献2に記載されている。このシート状乾燥剤は、塩化カルシウムを含浸させた紙材の両面に、穿孔を有するフィルム材を被覆したものである。
【0004】
その後、シート状の乾燥剤に改良が加えられ、より高い乾燥効果や、乾燥シート材から吸湿された水分が滲み出たり、滴下する現象を防止できるようにしたシート状乾燥剤の製造方法が特許文献3に開示されている。この製造方法によると、吸取紙状且つクッション性の紙質にボーメ13〜25゜として調整された塩化カルシウム液を含浸させ、固形塩化カルシウムが15〜25重量%の範囲で含有させた乾燥剤の両面に、通気作用を有するフィルムを被覆したものである。
【特許文献1】実公昭32−8870号公報
【特許文献2】実開昭55−25176号公報
【特許文献3】特許第2668071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の各特許文献に記載された乾燥剤は、いずれも吸取紙状の紙材に、塩化カルシウムを含浸させ、耐水性のフィルムで被覆し、あるいは耐水性の袋に収納した乾燥剤である。その為、過剰な水分はこの耐水性のフィルムや袋にて遮断し、適度な吸湿性を維持することができるようにしている。ところが、油分の多い環境でこの種の乾燥剤を使用すると、油分が耐水性のフィルムや袋を通過し、この吸取紙状の紙材に付着する不都合があった。すなわち、この種の乾燥剤に油分が付着すると、塩化カルシウムのき吸湿作用を妨げることから、吸湿力が激減し、塩化カルシウムの吸湿能力を残したままで乾燥剤として使用不能になる虞があった。
【0006】
例えば、クッキーやパイ菓子、サブレー等油分の多い菓子類や、コロッケなどの揚げ物などを収納する際に、乾燥剤を同封して、食品のサクサク感を持続させようとしても、これらの食品から乾燥剤に油分が染み込むと、乾燥剤の乾燥作用を妨げることになる。
【0007】
しかも、塩化カルシウムを含浸させた紙材に油分が染み込むと、染み込んだ部分が変色する不都合もある。すなわち、食品と共に収納している乾燥剤に、このような変色が生じると、消費者に悪い印象を与えてしまい、商品価値を著しく損ねる虞もあった。また、油分の染み込みや変色は、例え僅かであっても印象を損ねる虞があるので、それほど乾燥効果が劣化していない場合でも、染み込み跡や変色によるイメージダウンは、極めて重大な課題となっていた。
【0008】
このように、従来のこの種の乾燥剤によると、油分の多い環境下で使用する際に、吸湿性能が低下し、使用時の印象を損ねる虞があるなどといった課題が残されていた。
【0009】
そこで、本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、油分の多い環境下でも吸湿性能が低下せず、しかも、油分の染み込みや変色を確実に防止することができる耐油性乾燥剤及び耐油性乾燥剤の製造方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため、本発明の第1の手段は、シート状の板紙1に塩化カルシウムを含浸した乾燥剤において、該紙材1に耐油剤を配合したことにある。
【0011】
第2の手段は、前記耐油剤としてパーフルオロアルキルリン酸塩を使用する。
【0012】
第3の手段において、前記板紙1は、パルプ100重量%に対して0.5〜4重量%のパーフルオロアルキルリン酸塩が添加されたパルプにて形成されている。
【0013】
第4の手段における前記板紙1は、パルプ100重量%に対して10〜45重量%の塩化カルシウムを配合してボーメ度13〜25度に調整されたパルプにて紙材1が形成されたものである。
【0014】
第5の手段は、吸取紙状の板紙1に、固形塩化カルシウムを15〜25重量%の範囲で含浸させた耐油性乾燥剤の製造方法において、パルプ100重量%に対し、0.5〜4重量%のパーフルオロアルキルリン酸塩と、10〜45重量%の塩化カルシウムとを配合して塩化カルシウムの比重をボーメ度13〜25度に調整し、該パルプを製紙工程にてシート状に形成することを課題解消の為の手段とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明耐油性乾燥剤及び油性乾燥剤の製造方法によると、塩化カルシウムを含浸した紙材1にパーフルオロアルキルリン酸塩等の耐油剤を配合したことにより、油分の多い環境下でも乾燥剤として使用可能であり、しかも、油分の染み込みや変色を確実に防止することができる。この結果、クッキー等油分の多い菓子類や、コロッケなどの揚げ物などを収納する際に、本発明乾燥剤を同封すると、食品のサクサク感を持続させることができる。しかも、油分が板紙1に染み込むのを確実に防止できるので、乾燥剤の変色等により商品価値を著しく損ねる虞も解消された。
【0016】
また、前記板紙1は、パルプ100重量%に対して0.5〜4重量%のパーフルオロアルキルリン酸塩が添加された紙材1で形成されることで、乾燥作用と耐油作用とを共存させることかできる。すなわち、パーフルオロアルキルリン酸塩が0.5重量%以下になると、耐油性質が得られず、また、パーフルオロアルキルリン酸塩が4重量%を超えると、有効な乾燥効果が得られる量の塩化カルシウムを含浸できなくなる。
【0017】
更に、前記板紙1は、パルプ100重量%に対して10〜45重量%の塩化カルシウムを配合してボーメ度13〜25度に調整されたパルプで形成されることで、有効な吸湿効果が得られるものになる。
【0018】
このように、本発明によると、油分の多い環境下でも吸湿性能が低下せず、しかも、油分の染み込みや変色を確実に防止することができといった、この種の乾燥剤として新規な効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明耐油性乾燥剤の最良の形態は、シート状の板紙1に塩化カルシウムを含浸した乾燥剤において、前記板紙1は、パルプ100重量%に対して0.5〜4重量%のパーフルオロアルキルリン酸塩が添加された紙材1で形成され、パルプ100重量%に対して10〜45重量%の塩化カルシウムを配合してボーメ度13〜25度として調整されることにより、当初の目的を達成する。
【実施例】
【0020】
次に、図面に基づいて本発明の実施例を詳細に説明する。本発明乾燥剤は、塩化カルシウムを含浸したシート状の板紙1に耐油剤を配合したものである。この耐油剤としてパーフルオロアルキルリン酸塩を配合する。また、他の耐油剤への変更も可能である。この板紙1が含有する塩化カルシウムの量は、15〜25重量%が好ましい。塩化カルシウムの量が15重量%以下になると十分な保水力が得られず、また、塩化カルシウムの量が25重量%を超えると吸湿した水分が板紙1から染み出てくる虞がある。
【0021】
更に板紙1は、パルプ100重量%に対して10〜45重量%の塩化カルシウムを配合してボーメ度13〜25度として調整されたパルプで形成されている。そして、この板紙1は、パルプ100重量%に対し、耐油剤として0.5〜4重量%のパーフルオロアルキルリン酸塩が添加されたパルプで形成されている。パーフルオロアルキルリン酸塩の添加量が0.5重量%以下になると、耐油性質が全く得られず、また、4重量%を超えても耐油性質に変化は生じない。
【0022】
耐油剤としてパーフルオロアルキルリン酸塩を使用する場合、特に、フッ化カルシウムを基に精製したものを使用し、本発明では、14%のパーフルオロアルキルリン酸塩に86%の水を混合したものを耐油剤として使用することで、塩化カルシウムの吸湿効果を妨げずに防湿効果を得ることができる。また、このパーフルオロアルキルリン酸塩の定着材としてカチオン変性アクリル系共重合体を配合することで、前記の如く調整されたパルプから板紙1を形成する際に、耐油剤を板紙1に十分含浸させることが可能になり、本発明の製造過程を容易にする。
【0023】
本発明の製造方法は次の通りである。まず、パルプ100重量%に対し、0.5〜4重量%のパーフルオロアルキルリン酸塩と、10〜45重量%の塩化カルシウムとを配合して塩化カルシウムの比重をボーメ度13〜25度に調整する。次に、該パルプを製紙工程にてシート状に形成するものである。製紙工程は、調整されたパルプから紙を形成する工程で、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーハート、コーター、キャレンダー、ワインダー、カッターの通常の製紙工程による。
【0024】
製紙工程後、所定のサイズ、形状に形成された板紙1は、そのままで乾燥剤として使用することが可能であるが、図示するように吸湿作用を制御するフィルム2を接着すると、板紙1が食品等に直接触れないように使用することが可能になる。このフィルム2は、耐水性のフィルムに吸湿用の透過孔を設けて板紙1全体を包んだり、水分が透過する材質を使用することも可能である。また、板紙1の両面に耐水性のフィルムを接着して被覆していない板紙1の端部から吸湿するタイプに設けることもできる。
【0025】
尚、本発明は前記実施例に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内における設計変更等は自由に行えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 板紙
2 フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の板紙に塩化カルシウムを含浸した乾燥剤において、該板紙に、耐油剤を配合したことを特徴とする耐油性乾燥剤。
【請求項2】
前記耐油剤としてパーフルオロアルキルリン酸塩を使用する請求項1記載の耐油性乾燥剤。
【請求項3】
前記板紙は、パルプ100重量%に対して0.5〜4重量%のパーフルオロアルキルリン酸塩が添加されたパルプにて形成された請求項1又は2記載の耐油性乾燥剤。
【請求項4】
前記板紙は、パルプ100重量%に対して10〜45重量%の塩化カルシウムを配合してボーメ度13〜25度に調整されたパルプにて形成された請求項1乃至3いずれか記載の耐油性乾燥剤。
【請求項5】
吸取紙状の板紙に、固形塩化カルシウムを15〜25重量%の範囲で含浸させた耐油性乾燥剤の製造方法において、パルプ100重量%に対し、0.5〜4重量%のパーフルオロアルキルリン酸塩と、10〜45重量%の塩化カルシウムとを配合して塩化カルシウムの比重をボーメ度13〜25度に調整し、該パルプを製紙工程にてシート状に形成することを特徴とする耐油性乾燥剤の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2006−15192(P2006−15192A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193311(P2004−193311)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(595016288)株式会社アイディ (1)
【Fターム(参考)】