説明

耐油耐熱性粘着シート、貼着方法および耐油耐熱性貼着構造体

【課題】常温環境下における優れた粘着性、さらには、高温環境下における優れた粘着性、また、油が存在する高温環境下においても優れた粘着性を有する耐油耐熱性粘着シート、それを貼着する貼着方法、および、耐油耐熱性粘着シートが貼着されている耐油耐熱性貼着構造体を提供すること。
【解決手段】フッ素樹脂を含有する基材2と、基材2の少なくとも一方の表面に積層される粘着剤層3とを備え、基材2の一方の表面が、粗面化処理および/または下塗り処理され、粘着剤層3が、分散型重合体と、無機粒子とを含有する水分散型耐油性粘着剤組成物からなる耐油耐熱性粘着シート1を、油が存在する環境下に配置される被着体4に貼着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐油耐熱性粘着シート、貼着方法および耐油耐熱性貼着構造体、詳しくは、耐油耐熱性粘着シート、それを貼着する貼着方法、および、耐油耐熱性粘着シートが貼着されている耐油耐熱性貼着構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着シートは、基材と、その片面に積層される粘着剤層とを備え、各種工業製品に用いられており、例えば、自動車の配線および自動車の各種部品の結束または固定などに用いられている。
【0003】
上記した用途では、粘着シートに、各種オイルやガソリンなどの油が付着し、または、粘着シートが各種オイルのミストに暴露される。そして、そのような油が存在する状態で、粘着シートが高温雰囲気に暴露される。そのため、粘着シートには、上記した環境下においても、貼着力(粘着力)が低下しにくい耐油耐熱性が求められる。
【0004】
そのような耐油耐熱性を向上すべく、ガラス板と、その片面に積層され、アクリル系ブロック共重合体のアニオン性水分散体からなる粘着剤層とを備える粘着板が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−291130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、近年、上記した用途に用いられる粘着シートには、さらなる耐油耐熱性の向上が求められている。
【0007】
本発明の目的は、常温環境下における優れた粘着性、さらには、高温環境下における優れた粘着性(以下、耐熱性という。)、また、油が存在する高温環境下においても優れた粘着性(以下、耐油耐熱性という。)を有する耐油耐熱性粘着シート、それを貼着する貼着方法、および、耐油耐熱性粘着シートが貼着されている耐油耐熱性貼着構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の耐油耐熱性粘着シートは、フッ素樹脂を含有する基材と、前記基材の少なくとも一方の表面に積層される粘着剤層とを備え、前記基材の前記一方の表面が、粗面化処理および/または下塗り処理され、前記粘着剤層が、水分散型重合体と、無機粒子とを含有する水分散型耐油性粘着剤組成物からなることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の耐油耐熱性粘着シートでは、前記基材は、ポリテトラフルオロエチレンからなるフィルムから形成されていることが好適である。
【0010】
また、本発明の耐油耐熱性粘着シートでは、前記基材の少なくとも前記一方の表面は、スパッタエッチングおよび/またはウエットエッチングされていることが好適である。
【0011】
また、本発明の耐油耐熱性粘着シートでは、前記水分散型重合体の体積基準における平均粒子径の標準偏差が、0.001μm以上0.2μm以下であることが好適である。
【0012】
また、本発明の貼着方法は、油が存在する環境下に配置される被着体に、上記した耐油耐熱性粘着シートを貼着することを特徴としている。
【0013】
また、本発明の耐油耐熱性貼着構造体は、油が存在する環境下に配置される被着体に、上記した耐油耐熱性粘着シートが貼着されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の耐油耐熱性粘着シートにおいて、水分散型耐油性粘着剤組成物が、水分散型重合体と無機粒子とを含有するため、粘着剤層が、常温環境下における粘着性、耐熱性および耐油耐熱性に優れている。
【0015】
また、本発明の耐油耐熱性粘着シートにおいて、フッ素樹脂を含有する基材は、耐熱性に優れている。
【0016】
さらに、基材の少なくとも一方の表面が、粗面化処理および/または下塗り処理されているので、基材と粘着剤層との密着性を向上させることができる。
【0017】
そのため、上記した基材と粘着剤層とを備える耐油耐熱性粘着シートは、常温環境下における被着体に対する優れた粘着性を確保しつつ、油が存在する高温環境下に配置される被着体に貼着しても、被着体に対する粘着力の低下を有効に防止することができる。
【0018】
その結果、被着体に上記した耐油耐熱性粘着シートが貼着された本発明の耐油耐熱性貼着構造体を、各種工業製品に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の耐油耐熱性粘着シートの一実施形態(粘着剤層が基材の一方の表面に積層される態様)を被着体に貼着する、本発明の貼着方法の一実施形態を説明する断面図であり、(a)は、耐油耐熱性粘着シートを用意する工程、(b)は、耐油耐熱性粘着シートを被着体に貼着する工程を示す。
【図2】図2は、本発明の耐油耐熱性粘着シートの他の実施形態(粘着剤層が基材の一方の表面および他方の表面に積層される態様)を被着体に貼着する、本発明の貼着方法の他の実施形態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の耐油耐熱性粘着シートの一実施形態(粘着剤層が基材の一方の表面に積層される態様)を被着体に貼着する、本発明の貼着方法の一実施形態を説明する断面図である。
【0021】
図1(a)において、本発明の耐油耐熱性粘着シート1は、基材2と、基材2の厚み方向一方の表面(以下、単に一方の表面という。片面。)に積層される粘着剤層3とを備えている。
【0022】
基材2は、フッ素樹脂を含有する耐熱性基材からなり、そのような耐熱性基材としては、例えば、フッ素樹脂からなるフィルム、例えば、布に、フッ素樹脂を含浸させた布材などが挙げられる。
【0023】
フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体などが挙げられる。好ましくは、優れた耐熱性を得る観点から、PTFEが挙げられる。
【0024】
布は、例えば、ガラス繊維、アスベスト繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、窒化ホウ素繊維、シリコンカーバイト繊維、チタニア繊維などの無機繊維や、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維からなる耐熱性の織布または不織布などの耐熱性布類などが挙げられる。
【0025】
布材を得る方法としては、例えば、上記した布を上記したフッ素樹脂のディスパージョン中に浸漬して引き上げ、次いで、フッ素樹脂の融点以上の温度で加熱後、必要により、上記した浸漬および加熱を繰り返す方法、例えば、上記した布に上記したフッ素樹脂のディスパージョンを塗布し、次いで、フッ素樹脂の融点以上の温度で加熱し、必要により、塗布および加熱を繰り返す方法、例えば、上記した布と上記したフッ素樹脂フィルムとを重ね合わせ、フッ素樹脂の融点以上で加熱する方法などが挙げられる。なお、上記した方法によれば、布にフッ素樹脂が含浸されるとともに、布の表面(一方の表面および他方の表面の両面)にフッ素樹脂からなるフッ素樹脂薄層が形成される。
【0026】
上記した耐熱性基材のうち、好ましくは、フッ素樹脂からなるフィルムが挙げられる。
【0027】
また、基材2の表面(一方の表面および他方の表面)の表面粗さRz(JIS B 0601−1994に準拠する十点平均粗さ。以下同様。)は、例えば、0.01〜1μmである。
【0028】
そして、基材2の一方の表面には、粗面化処理、下塗処理などの表面処理を施す。
【0029】
粗面化処理は、基材2が、摩擦係数が低いフッ素樹脂が一方の表面に存在する場合に、基材2の一方の表面を粗面化して、基材2に対する粘着剤層3のアンカー効果を生じさせることにより、それらの密着性を向上させる。
【0030】
粗面化処理としては、例えば、ドライ処理またはウエット処理などが挙げられる。
【0031】
ドライ処理としては、例えば、スパッタエッチング、プラズマエッチング、反応性イオンエッチングなどのドライエッチング、例えば、サンドブラストなどのブラストなどが挙げられる。
【0032】
ウエット処理としては、例えば、エッチング液を用いるウエットエッチングなどが挙げられる。
【0033】
粗面化処理として、好ましくは、スパッタエッチング、ウエットエッチングが挙げられる。
【0034】
スパッタエッチングは、ガスに由来するエネルギー粒子を基材2の一方の表面に衝突させて、基材2の一方の表面に存在する分子または原子を放出させる方法である。具体的には、まず、基材2をチャンバ内に、基材2の他方の表面が保護されるように配置し、次いで、チャンバ内に不活性ガスを封入しながら、チャンバ内を減圧状態とし、続いて、チャンバ内に高周波電圧を印加することによって、基材2の一方の表面をエッチングする。
【0035】
不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンなどの希ガス、例えば、窒素などが挙げられる。
【0036】
高周波電圧の周波数は、例えば、1〜100MHz、好ましくは、5〜50MHzである。
【0037】
また、チャンバ内の圧力は、例えば、0.05〜200Pa、好ましくは、1〜100Paであり、スパッタエッチングのエネルギー(処理時間と電力との積)は、例えば、1〜1000J/cm、好ましくは、2〜200J/cmである。
【0038】
粗面化処理が施された基材2の一方の表面の表面粗さRzは、例えば、1〜20μm、好ましくは、2〜10μmである。
【0039】
ウエットエッチングは、基材2の一方の表面に存在するフッ素原子を引き抜いて、基材2の一方の表面を電子不足の状態にする方法である。ウエットエッチング後に、基材2を乾燥させることにより、水酸基、カルボキニル基、カルボキシル基などの官能基が、基材2の一方の表面に露出し、これによって、基材2と粘着剤層3との密着性を向上させる。
【0040】
下塗り処理は、下塗り層(図示せず)を基材2の一方の表面に形成して、かかる下塗り層が、基材2と粘着剤層3との間に介在することによって、それらの密着性を向上させる。
【0041】
下塗り層を形成するための下塗り剤としては、例えば、アクリル系下塗り剤、エポキシ系下塗り剤などの公知の下塗り剤が挙げられる。
【0042】
下塗り処理では、上記した下塗り剤を基材2の一方の表面に塗布し、必要により、加熱により乾燥して、下塗り層を形成する。下塗り層の厚みは、例えば、0.1〜10μmである。
【0043】
上記した表面処理は、単独で実施することができ、あるいは、併用して実施することもできる。好ましくは、コストを低減する観点から、粗面化処理を単独で実施する。
【0044】
基材2としては、市販品を用いることができ、例えば、ニトフロンフィルムNo.901W−UL(一方の表面/スパッタエッチング処理、日東電工社製)、ニトフロンフィルムNo.901UL(一方の表面/ウエットエッチング処理、日東電工社製)などが用いられる。
【0045】
基材2の厚みは、用途および目的に応じて適宜選択でき、例えば、10〜500μm、好ましくは、20〜200μmである。なお、基材2の一方の表面が下塗り処理されている場合には、基材2の厚みは、下塗り層の厚みを含む。
【0046】
粘着剤層3は、水分散型重合体と、無機粒子とを含有する水分散型耐油性粘着剤組成物から形成される。
【0047】
水分散型重合体としては、例えば、アクリル系ポリマー、例えば、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ポリウレタンゴム、天然ゴムなどのゴムなど挙げられる。好ましくは、粘着性(貼着性)の観点から、アクリル系ポリマーが挙げられる。
【0048】
アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分として含有するモノマー成分を重合することにより得ることができる。
【0049】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、メタクリル酸アルキルエステルおよび/またはアクリル酸アルキルエステルであって、例えば、下記一般式(1)で表される。
【0050】
CH=C(R)COOR (1)
(一般式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を、Rは、炭素数2〜14のアルキル基を示す。)
で示されるアルキル基としては、例えば、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2−エチルへキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基などの直鎖または分岐の炭素数2〜14のアルキル基が挙げられる。
【0051】
で示されるアルキル基の炭素数は、好ましくは、3〜6である。
【0052】
具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシルなどの、アルキル部分が炭素数2〜14の直鎖または分岐アルキルである(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。
【0053】
これら(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0054】
好ましくは、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシルが挙げられ、さらに好ましくは、(メタ)アクリル酸ブチルが挙げられる。
【0055】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの配合割合は、モノマー成分の総量に対して、例えば、80質量%以上(具体的には、80〜99.8質量%)、好ましくは、85質量%以上(具体的には、85〜99.5質量%)、さらに好ましくは、90質量%以上(具体的には、90〜99質量%)である。
【0056】
また、モノマー成分には、反応性官能基含有ビニルモノマーを含有させることもできる。
【0057】
反応性官能基含有ビニルモノマーは、無機粒子と熱架橋するための架橋点を導入するための熱架橋性官能基含有ビニルモノマーである。反応性官能基含有ビニルモノマーをモノマー成分に含有させることにより、被着体に対する貼着力(粘着力)を向上させることができる。
【0058】
反応性官能基含有ビニルモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有ビニルモノマーまたはその酸無水物、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチルなどの水酸基含有ビニルモノマー、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有ビニルモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有ビニルモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのグリシジル基含有ビニルモノマー、例えば、(メタ)アクリロニトリル、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピロリドン、ダイアセトンアクリルアミドなどの窒素原子含有ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0059】
これら反応性官能基含有ビニルモノマーは、単独使用または併用することができる。好ましくは、カルボキシル基含有ビニルモノマーまたはその酸無水物が挙げられる。
【0060】
反応性官能基含有ビニルモノマーの配合割合は、モノマー成分の総量に対して、例えば、0.2〜20質量%、好ましくは、0.5〜15質量%、さらに好ましくは、1〜10質量%である。
【0061】
上記したモノマー成分を重合するには、例えば、乳化重合などの公知の重合方法が用いられる。
【0062】
乳化重合では、例えば、上記したモノマー成分とともに、乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤などを、水中において適宜配合して重合する。より具体的には、例えば、一括仕込み法(一括重合法)、モノマー滴下法、モノマーエマルション滴下法またはこれらを併用するなど、公知の乳化重合法を採用することができる。なお、モノマー滴下法やモノマーエマルション滴下法では、連続滴下または分割滴下が適宜選択される。反応条件などは、重合開始剤の種類などに応じて適宜選択され、重合温度は、例えば、20〜100℃である。
【0063】
乳化剤としては、特に制限されず、乳化重合に通常使用される公知の乳化剤が挙げられる。例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸ナトリウム(具体的には、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウムなど)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などが挙げられる。
【0064】
これら乳化剤は、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、アニオン系乳化剤が挙げられる。
【0065】
乳化剤の配合割合は、モノマー成分100質量部に対して、例えば、0.2〜10質量部、好ましくは、0.5〜5質量部である。
【0066】
重合開始剤としては、特に制限されず、乳化重合に通常使用される重合開始剤が挙げられる。例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩などのアゾ系開始剤、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系開始剤、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤、例えば、フェニル置換エタンなどの置換エタン系開始剤、例えば、芳香族カルボニル化合物などのカルボニル系開始剤、例えば、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組合せ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組合せなどのレドックス系開始剤(過酸化物と還元剤との組合せ)などが挙げられる。
【0067】
重合開始剤は、水溶性および油溶性のどちらであってもよく、これら重合開始剤は、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、アゾ系開始剤が挙げられる。
【0068】
重合開始剤の配合割合は、モノマー成分100質量部に対して、例えば、0.005〜1質量部である。
【0069】
なお、上記したモノマー成分に、重合開始剤を配合する前、または配合しながら、窒素置換によって、モノマー成分中の溶存酸素濃度を低減することもできる。
【0070】
連鎖移動剤は、アクリル系ポリマーの分子量を調節するものであり、必要により配合され、乳化重合に通常使用される連鎖移動剤が挙げられる。例えば、1−ドデカンチオール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸2−エチルへキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノールなどのメルカプタンなどが挙げられる。
【0071】
これら連鎖移動剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0072】
連鎖移動剤の配合割合は、モノマー成分100質量部に対して、例えば、0.001〜0.5質量部である。
【0073】
このような乳化重合によって、水分散型重合体は、水分散液、具体的には、アクリル系ポリマー(水分散粒子)が水に分散(乳濁)されている水分散液(エマルション)として調製される。
【0074】
なお、水分散型重合体は、例えば、上記したモノマー成分を、乳化重合以外の有機溶剤を使用しない方法(例えば、懸濁重合など)によって重合した後に、必要に応じて上記した乳化剤により、水分散液として調製することもできる。
【0075】
水分散型重合体の水分散粒子の体積基準における平均粒子径は、例えば、0.05〜10μm、好ましくは、0.05〜1μm、さらに好ましくは、0.05〜0.25μmである。また、水分散型重合体の水分散粒子の体積基準における平均粒子径は、例えば、0.2μm以下、好ましくは、0.15μm以下、さらに好ましくは、0.13μm以下であり、また、例えば、0.06μm以上、好ましくは、0.07μm以上、さらに好ましくは、0.08μm以上でもある。
【0076】
また、水分散型重合体の水分散粒子の体積基準における平均粒子径の標準偏差は、例えば、0.001μm以上0.2μm以下、好ましくは、0.005μm以上0.15μm以下、さらに好ましくは、0.005μm以上0.1μm以下である。
【0077】
体積基準における平均粒子径の標準偏差が上記上限以内であれば、高湿雰囲気および/または高温高湿雰囲気下における貼着においても、粘着力の低下を有効に抑制することができる。その理由は、水分散型耐油性粘着剤組成物の乾燥時に、粘着剤層において水分散粒子が無機粒子間に充填される(その位置に留まる)際に、大きな欠陥の発生が抑制され、そのため、皮膜(粘着剤層)がより均一となるためであると推測される。
【0078】
水分散型重合体の水分散粒子の体積基準における平均粒子径およびその標準偏差は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布計およびそれに備えられる計算ソフトによって、それぞれ、算術平均粒子径および算術標準偏差として測定される。
【0079】
水分散型重合体の水分散液の固形分濃度は、例えば、10〜80質量%、好ましくは、20〜65質量%である。
【0080】
無機粒子としては、例えば、シリカ(酸化ケイ素)粒子、酸化チタン粒子、酸化スズ粒子(アンチモンドープ酸化スズ(ATO)粒子を含む。)、アルミナ(酸化アルミニウム)粒子、酸化亜鉛粒子などの酸化物粒子、例えば、窒化ケイ素粒子などの窒化物粒子、例えば、炭酸カルシウム粒子などの炭酸塩粒子、例えば、水酸化マグネシウム粒子などの水酸化物粒子、例えば、チタン酸バリウム粒子など複合酸化物粒子(上記した酸化物粒子を除く)、例えば、金粒子、銀粒子、銅粒子などの金属粒子などが挙げられる。
【0081】
無機粒子は、粉末タイプまたは水分散タイプのいずれを用いることもできる。好ましくは、水分散タイプが用いられる。水分散タイプの無機粒子は、親水性を有するので、これを水分散型重合体と配合することにより、水分散型耐油性粘着剤組成物の親水性が向上する。そのため、水分散型耐油性粘着剤組成物は、油を吸収しにくくなり、さらには、水分散型耐油性粘着剤組成物の強度が高まることから、油の吸収に基づく水分散型耐油性粘着剤組成物の膨潤を抑制することができると推測される。
【0082】
また、無機粒子としては、市販品が用いられ、シリカ粒子として、例えば、スノーテックスシリーズ(例えば、スノーテックス−XL、スノーテックス−YL、スノーテックス−ZL、スノーテックスPST−2、スノーテックス20、スノーテックス30、スノーテックスC、スノーテックスO、スノーテックス50。以上水分散タイプ、日産化学工業社製)、アデライトシリーズ(例えば、アデライトAT−40、アデライトAT−50。以上水分散タイプ、ADEKA社製)、アエロジル(AEROSIL)シリーズ(例えば、アエロジルR7200、粉末タイプ、日本アエロジル社製)などが用いられる。また、ATO粒子として、例えば、SN−100シリーズ(例えば、SN−100S(粉末タイプ)、SN−100P(粉末タイプ)、SN−100D(水分散タイプ)、以上石原産業社製)などが用いられ、酸化チタン粒子として、例えば、TTOシリーズ(粉末タイプ、石原産業社製)などが用いられ、酸化亜鉛粒子として、例えば、SnOシリーズ(例えば、SnO−310、SnO−350、SnO−410、以上粉末タイプ、住友大阪セメント社製)などが用いられる。
【0083】
また、無機粒子の形状は、特に限定されず、例えば、球状、針状および板状のいずれの形状であってもよい。また、無機粒子は、粒子同士が互いに凝集せず、均一に分散する1次粒子、あるいは、粒子同士が互いに凝集(2次凝集)する2次粒子のいずれも含んでいる。
【0084】
なお、無機粒子に、公知の表面処理を施すこともできる。
【0085】
上記した無機粒子のうち、好ましくは、酸化物粒子、さらに好ましくは、シリカ粒子が挙げられる。シリカ粒子であれば、シリカ粒子の表面のシラノール基(Si−OH)が、反応性官能基含有モノマーの官能基(具体的には、カルボキシル基)や、必要により配合される外部架橋剤(のカルボキシル基)(後述)などと反応することにより、水分散型耐油性粘着剤組成物の耐油耐熱性を向上させることができる。
【0086】
水分散タイプのシリカ粒子は、例えば、ゾル−ゲル法で調製することができ、具体的には、特開昭53−112732号公報、特公昭57−9051号公報、特公昭57−51653号公報などの記載に準拠して調製することができる。
【0087】
このようにして調製される水分散タイプのシリカ粒子は、水分散液、具体的には、無水ケイ酸の微粒子コロイド溶液として調製されている。
【0088】
詳しくは、上記した水分散タイプのシリカ粒子は、主成分として二酸化ケイ素を含有し、副成分として、アルミナ、アルミン酸ナトリウムなどのアルミニウム化合物を適宜の割合で含有している。
【0089】
また、上記したシリカ粒子の水分散液には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアなどの無機塩基や、テトラメチルアンモニウムなどの有機塩基などの安定剤などを適宜の割合で含有させることもできる。
【0090】
無機粒子の平均粒子径(最大長さの平均)は、例えば、1〜1000nmである。無機粒子の平均粒子径が上記した範囲内にあれば、水分散型耐油性粘着剤組成物の耐油耐熱性をより一層向上させることができる。
【0091】
また、無機粒子が、粉末タイプであれば、その平均粒子径は、好ましくは、1〜500nm、さらに好ましくは、1〜200nmである。また、無機粒子が、水分散タイプであれば、その平均粒子径は、好ましくは、1〜200nmである。
【0092】
平均粒子径は、動的光散乱式粒度分布測定装置(例えば、サブミクロンアナライザー N5、ベックマンコールター社製)で測定される体積平均粒子径である。
【0093】
そして、水分散型耐油性粘着剤組成物を調製するには、上記した水分散型重合体の水分散液と無機粒子とを配合する。
【0094】
詳しくは、水分散型重合体の水分散液に無機粒子を配合して、攪拌混合する。
【0095】
無機粒子の配合割合は、水分散型重合体(つまり、水分散液の固形分)100質量部に対して、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下、さらに好ましくは、70質量部以下であり、また、例えば、3質量部以上、好ましくは、5質量部以上である。
【0096】
無機粒子の配合割合が上記した上限を超えると、水分散型耐油性粘着剤組成物が過度に硬くなり、粘着性(貼着性)を発現することができない場合がある。一方、無機粒子の配合割合が上記した下限に満たないと、高温環境下における粘着力の低下および油が存在する高温環境下における粘着力の低下を防止することができない場合がある。
【0097】
これにより、水分散型耐油性粘着剤組成物を得る。
【0098】
また、好ましくは、水分散型耐油性粘着剤組成物には、さらに、外部架橋剤が配合されている。外部架橋剤の配合により、水分散型重合体と無機粒子とが架橋(外部架橋、あるいは、後架橋)されるなどの理由によって、水分散型耐油性粘着剤組成物の耐油耐熱性をより一層向上させることができると推測される。
【0099】
外部架橋剤としては、特に制限されず、外部架橋に通常用いられる油溶性または水溶性の外部架橋剤が挙げられる。
【0100】
外部架橋剤は、モノマー成分が反応性官能基含有ビニルモノマーを含有する場合に、好適に配合され、反応性官能基(具体的には、カルボキシル基(−COOH))と反応できる架橋剤であって、例えば、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられる。
【0101】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(別名:イソシアヌル酸トリグリシジル)などのイソシアヌレート骨格含有複素環式エポキシ樹脂(具体的には、TEPIC−G、TEPIC−P、TEPIC−S、TEPIC−SPなどのTEPICシリーズ(日産化学社製)など)、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどの窒素原子含有複素環式エポキシ樹脂(具体的には、TETRADシリーズ(三菱ガス化学社製)など)、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなどのモノオールまたはポリオールのポリグリシジルエーテル(具体的には、デナコールシリーズ(ナガセケムテックス社製)など)が挙げられる。
【0102】
オキサゾリン系架橋剤は、例えば、アクリル骨格またはスチレン骨格からなる主鎖を含み、その主鎖の側鎖にオキサゾリン基を含有するオキサゾリン基含有ポリマーであって、好ましくは、アクリル骨格からなる主鎖を含み、その主鎖の側鎖にオキサゾリン基を含有するオキサゾリン基含有アクリル系ポリマーが挙げられる。
【0103】
オキサゾリン基としては、例えば、2−オキサゾリン基、3−オキサゾリン基、4−オキサゾリン基などが挙げられ、好ましくは、2−オキサゾリン基が挙げられる。
【0104】
2−オキサゾリン基は、下記一般式(2)で表される。
【0105】
【化1】

(一般式(2)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、フェニル基または置換フェニル基を示す。)
また、オキサゾリン系架橋剤のオキサゾリン価は、例えば、1500g solid/eq.以下、好ましくは、1200g solid/eq.以下である。
【0106】
オキサゾリン系架橋剤としては、市販品が用いられ、具体的には、例えば、エポクロスWS−500、エポクロスWS−700などのエポクロスWSシリーズ(水溶液タイプ)、例えば、エポクロスK−1000、エポクロスK−2000などのエポクロスKシリーズ(水分散タイプ)などのエポクロスシリーズ(日本触媒社製)などが用いられる。
【0107】
カルボジイミド系架橋剤は、カルボジイミド基を有する化合物である。カルボジイミド基は、カルボジイミド(HN=C=NH)から水素原子が1つ引き抜かれた官能基(−N=C=NH)、または、水素原子が2つ引き抜かれた官能基(−N=C=N−)である。このカルボジイミド基は、カルボキシル基と反応することができる。
【0108】
より具体的には、カルボジイミド系架橋剤としては、例えば、カルボジイミド基を2個以上有する低分子化合物または高分子化合物が挙げられる。
【0109】
カルボジイミド基を有する低分子化合物は、例えば、下記一般式(3)で表される。
【0110】
−N=C=N−R−N=C=N−R (3)
(一般式(3)中、R、RおよびRは、相異なって、炭化水素基を示す。)
カルボジイミド基を有する高分子化合物は、ポリカルボジイミドであって、好ましくは、水との親和性に優れた部位、具体的には、エチレンオキサイド(−CH−CH−O−)部位を有する高分子化合物が挙げられる。
【0111】
カルボジイミド基を有する高分子化合物としては、市販品が用いられ、具体的には、例えば、カルボジライトV−02、カルボジライトV−02−L2、カルボジライトV−04などのカルボジライトVシリーズ(水溶液タイプ)、例えば、カルボジライトE−01、カルボジライトE−02、カルボジライトE−04などのカルボジライトEシリーズ(水分散タイプ)などのカルボジライトシリーズ(日清紡社製)などが挙げられる。
【0112】
ヒドラジン系架橋剤は、ヒドラジノ基(HN−NH−)を含有するヒドラジノ基含有化合物であり、具体的には、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジドなどのポリカルボン酸ポリヒドラジド、例えば、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントインなどのヒダントインなどが挙げられる。
【0113】
ヒドラジン系架橋剤としては、市販品が用いられ、具体的には、例えば、アミキュアVDH(7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド)、アミキュアUDH(1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン)などのアミキュアシリーズ(味の素ファインテクノ社製)などが用いられる。
【0114】
アジリジン系架橋剤は、アジリジン環を含有するアジリジン環含有化合物であって、例えば、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジジジニル)プロピオネート]、4,4’−ビス(エチレンジアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0115】
アジリジン系架橋剤として、市販品が用いられ、例えば、ケミタイトPZ−33、ケミタイトDZ−22Eなどのケミタイトシリーズ(日本触媒社製)などが用いられる。
【0116】
イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート基を含有するイソシアネート基含有架橋剤であって、例えば、ブロックイソシアネート(具体的には、エラストロンBNシリーズ(第一工業製薬))などが挙げられる。
【0117】
金属キレート系架橋剤としては、例えば、ジルコニウムキレート、チタンキレート、アルミニウムキレートなどのキレート化合物(具体的には、オルガチックスシリーズ(松本製薬工業))などが挙げられる。
【0118】
これら外部架橋剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0119】
外部架橋剤として、好ましくは、エポキシ系架橋剤が挙げられる。
【0120】
外部架橋剤の配合割合は、水分散型重合体100質量部に対して、例えば、0.001〜10質量部、好ましくは、0.01〜5質量部、さらに好ましくは、0.01〜2質量部である。外部架橋剤の配合割合が上記した範囲に満たないと、架橋度が低下して、耐油耐熱性を十分に向上させることができない場合がある。
【0121】
外部架橋剤は、水分散型重合体の水分散液に、例えば、室温で配合され、その配合によって、または、その後の加熱乾燥(後述)によって、架橋反応する。
【0122】
なお、外部架橋剤は、無機粒子と同時または無機粒子の配合後に、水分散型重合体に配合することもできる。
【0123】
なお、水分散型耐油性粘着剤組成物には、必要に応じて、pH調整剤、さらには、粘着付与剤、剥離調整剤、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、界面活性剤などの添加剤を、適宜の割合で添加することができる。添加剤は、水分散型重合体および無機粒子の調製後、または、それらの配合後に添加する。
【0124】
pH調整剤としては、例えば、アンモニア水などの塩基、例えば、酸などが挙げられる。好ましくは、塩基が挙げられる。pH調整剤は、水分散型重合体の水分散液に添加することにより、pHを、例えば、7〜9、好ましくは、7〜8に調整する。
【0125】
次に、耐油耐熱性粘着シートを製造する方法の一例について、図1を参照して説明する。
【0126】
この方法では、図1(a)が参照されるように、上記した基材2を用意する。基材2の一方の表面には、必要により、表面処理が施されている。
【0127】
次いで、基材2の一方の表面に、上記した水分散型耐油性粘着剤組成物を塗布する。
【0128】
水分散型耐油性粘着剤組成物を基材2の一方の表面に塗布するには、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなどのコーターが用いられる。
【0129】
その後、水分散型耐油性粘着剤組成物を、加熱乾燥する。加熱温度は、例えば、40〜150℃、好ましくは、60〜125℃であり、加熱時間は、例えば、1〜10分間、好ましくは、2〜5分間である。
【0130】
これにより、水分散型耐油性粘着剤組成物からなる粘着剤層3が、基材2の一方の表面に積層される。なお、基材2の一方の表面に下塗り処理が施されている場合には、基材2の一方の表面に積層される下塗り層(図示せず)の一方の表面(下塗り層における基材2との対向面(他方の表面)の反対側面)に、粘着剤層3が積層される。
【0131】
粘着剤層3の厚みは、例えば、1〜1000μm、好ましくは、5〜500μmである。
【0132】
これにより、基材2と、その一方の表面に積層される粘着剤層3とを備える耐油耐熱性粘着シート1を得ることができる。
【0133】
なお、粘着剤層3の一方の表面(粘着剤層3における基材2との対向面(他方の表面)の反対側面)には、必要により、公知の離型シート5を積層することができる。
【0134】
なお、水分散型耐油性粘着剤組成物を離型シート5の一方の表面に塗布および乾燥することにより粘着剤層3を形成し、その後、粘着剤層3を基材2の一方の表面に転写することによって、耐油耐熱性粘着シート1を得ることもできる。
【0135】
そして、上記した耐油耐熱性粘着シート1において、粘着剤層3を形成する水分散型耐油性粘着剤組成物が、水分散型重合体と無機粒子とを含有するため、粘着剤層3が、常温環境下における粘着性、耐熱性および耐油耐熱性に優れている。
【0136】
また、上記した耐油耐熱性粘着シート1において、フッ素樹脂を含有する基材2は、耐熱性に優れている。
【0137】
さらに、基材2の一方の表面が、粗面化処理および/または下塗り処理されているので、基材2と粘着剤層3との密着性を向上させることができる。
【0138】
そのため、上記した基材2と粘着剤層3とを備える耐油耐熱性粘着シート1は、常温環境下における被着体4に対する優れた粘着性を確保しつつ、油が存在する高温環境下に配置される被着体4に貼着しても、被着体4に対する粘着力の低下を有効に防止することができる。
【0139】
耐油耐熱性粘着シート1を被着体4に貼着するには、図1(a)の仮想線で示すように、まず、離型シート5を粘着剤層3から引き剥がし、続いて、図1(b)に示すように、粘着剤層3を被着体4に貼着する。その後、必要により、耐油耐熱性粘着シート1を被着体4に向けて圧着する。
【0140】
高温環境下は、例えば、60℃以上(具体的には、60〜200℃)、さらには、100℃以上(具体的には、100〜200℃)の雰囲気下をいう。
【0141】
また、油が存在する高温環境下は、例えば、上記した温度雰囲気下において、オイルに常に浸漬している状態、または、間欠的にオイルがかかる状態、あるいは、オイルが一旦付着しても除去されない状態をいう。さらに、開放された空間で、加温などによりオイルミストが充満する状態、または、密閉された空間で、加温などにより加圧された状態でオイルミストが充満する状態などもいう。
【0142】
具体的には、上記した高温(より具体的には、130℃程度)の雰囲気下でオイルに完全に浸漬している状態、または、オイルミストが充満する場合などをいう。
【0143】
上記した環境下に配置される被着体4としては、例えば、食用油などが飛散または付着する可能性のある調理場(台所など)およびその周辺の建物(内壁、外壁など)、また、その建物内またはその周辺で用いられる物品(各種装置または各種部品、その他各種備品など)、例えば、潤滑用、冷却用または油圧用などのオイルが飛散する場所(自動車またはその部品などの製造工場または修理場など)の建物(内壁、外壁など)、また、かかる建物内またはその周辺で用いられる物品(各種装置または各種部品、その他各種備品など)、例えば、オイルが常時存在し、潤滑、冷却および油圧を目的にオイルが使用されるエンジンなどの発動機、また、トランスミッションなどの変速機または駆動伝達装置、さらに、油圧ブレーキなど油圧により動力を伝達する油圧装置、さらにまた、ワイヤーなどにより動力を伝える装置、また、コンプレッサーまたは減圧ポンプなどのポンプ装置などが挙げられる。
【0144】
そして、上記した被着体4に耐油耐熱性粘着シート1が貼着された耐油耐熱性貼着構造体は、各種工業製品に適用することができる。そのような耐油耐熱性貼着構造体としては、具体的には、例えば、内部に耐油耐熱性粘着シート1が貼着された装置、例えば、耐油耐熱性粘着シート1によって上記した装置またはその周辺の部材が固定または結束された固定構造物または結束構造物などが挙げられる。
【0145】
なお、図示しないが、この耐油耐熱性粘着シート1を被着体4の拘束に用いることができる。
【0146】
さらに、上記した耐油性粘着シート1の粘着剤層3を、高湿雰囲気および/または高温高湿雰囲気下に配置される被着体4に貼着して、被着体4に貼着しても、被着体4に対する粘着力を維持することもできる。
【0147】
具体的には、粘着剤層3の高温高湿保存後の粘着力(後の実施例にて詳述)は、例えば、14N/20mm以上、好ましくは、16N/20mm以上であり、例えば、50N/20mm以下でもある。
【0148】
また、粘着剤層3の高温高湿保存後の粘着力の、常温常湿粘着力に対する比(後の実施例にて詳述)は、例えば、80%以上、好ましくは、90%以上、さらに好ましくは、130%以上、とりわけ好ましくは、150%以上であり、例えば、300%以下でもある。
【0149】
従って、上記した耐油性粘着シート1を、耐油耐湿性粘着シート1および/または耐油耐熱耐湿性粘着シート1とすることができ、また、耐油性貼着構造体を耐油耐湿性貼着構造体および/または耐油耐熱耐湿性貼着構造体とすることもできる。
【0150】
さらに、図1(b)の仮想線で示すように、上記した被着体4に、例えば、継ぎ目または穴などの開口部6が形成される場合には、耐油耐熱性粘着シート1を、開口部6を被覆する(閉塞)ように、被着体4に貼着する。これにより、耐油耐熱性粘着シート1を、開口部6を通過するオイルミストの流れを遮蔽する耐油耐熱性遮蔽(閉塞)シートとして用いることができる。
【0151】
また、上記した耐油耐熱性粘着シート1は、上記で例示した被着体4以外に、油が存在する高温環境下に配置される被着体4の固定または結束などにも用いられる。
【0152】
図2は、本発明の耐油耐熱性粘着シートの他の実施形態(粘着剤層が基材の一方の表面および他方の表面に積層される態様)を被着体に貼着する、本発明の貼着方法の他の実施形態を説明する断面図である。なお、図2において、図1の各部に対応する部材については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0153】
上記した図1の説明では、粘着剤層3を、基材2の一方の表面に積層しているが、例えば、図2に示すように、基材2の一方の表面および他方の表面の両面に積層することもできる。
【0154】
その場合には、基材2の一方の表面および他方の表面の両面に、上記した表面処理を施す。
【0155】
そして、耐油耐熱性粘着シート1を、2つの被着体4に貼着(連結)することができる。つまり、一方側および他方側の粘着剤層3を、各被着体4にそれぞれ貼着する。
【0156】
この耐油耐熱性粘着シート1を2つの被着体4に貼着するには、例えば、一方側の粘着剤層3を一方の被着体4に貼着し、次いで、他方側の粘着剤層3を他方の被着体4に貼着する。
【0157】
なお、本発明の耐油耐熱性粘着シートは、例えば、耐油耐熱性粘着フィルム、耐油耐熱性粘着テープなどとしても用いることもできる。
【実施例】
【0158】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例および比較例に何ら制限されるものではない。
【0159】
なお、「部」および「%」は、特に言及しない限り、質量基準である。
【0160】
実施例1
アクリル酸ブチル95部、アクリル酸5部および1−ドデカンチオール0.05部を、ポリオキシエチレンアルキル硫酸アンモニウム(「ハイテノールLA−16」、第一工業製薬社製)1部と水89部とが配合された乳化剤水溶液に加えて乳化することにより、モノマー乳化液を調製した。
【0161】
次いで、冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、水44部およびポリオキシエチレンアルキル硫酸アンモニウム(ハイテノールLA−16、第一工業製薬社製)2部を添加して乳化剤水溶液を調製し、調製した乳化剤水溶液に、上記したモノマー乳化液の1/4質量を加えて、1時間窒素置換を実施した後、60℃に昇温して、2、2´−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物(商品名:VA−057、和光純薬工業社製)0.1部を加えて1時間重合した。その後、上記したモノマー乳化液の残りの3/4質量を3時間かけて反応容器内に滴下し、3時間熟成することにより、水分散型重合体(アクリル系ポリマー)のエマルション(固形分濃度43.7%)を得た。
【0162】
その後、得られた水分散型重合体のエマルションに、10%アンモニウム水を添加してpH8に調整した。次いで、このエマルションに、水分散型重合体100部に対して、外部架橋剤としてエポキシ系架橋剤(TEPIC−G、イソシアヌレート骨格含有複素環式エポキシ樹脂、日産化学工業社製)0.05部と、水分散タイプのシリカ粒子(平均粒子径約40nm、アデライトAT−50、固形分濃度50%、ADEKA社製)20部(固形分で10部)とを、室温で加えることにより、水分散型耐油性粘着剤組成物を得た。
【0163】
別途、一方の表面が粗面化処理されたPTFEフィルム(ニトフロンフィルムNo.901W−UL、一方の表面の表面粗さRz3μm、日東電工社製)からなる厚み100μmの基材を用意した。
【0164】
詳しくは、基材の一方の表面を次のように粗面化処理した。すなわち、PTFEフィルムを、他方の表面が保護されるようにチャンバ内に配置し、次いで、チャンバ内にアルゴンガスを封入しながら、チャンバ内を、3Paの減圧下にし、続いて、チャンバ内に高周波電圧(周波数13.56MHz)を印加して、PTFEフィルムの一方の表面を、エネルギー2J/cmで、スパッタエッチングした。
【0165】
次いで、基材の一方の表面に、上記により得られた水分散型耐油性粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布し、120℃で3分間乾燥して、粘着剤層を形成した。これにより、基材と、その一方の表面に積層された粘着剤層とを備える耐油耐熱性粘着テープを得た。
【0166】
実施例2
アクリル酸ブチル95部、アクリル酸5部および1−ドデカンチオール0.05部を、ポリオキシエチレンアルキル硫酸アンモニウム(「ハイテノールLA−16」、第一工業製薬社製)1部と水89部とが配合された乳化剤水溶液に加えて乳化することにより、モノマー乳化液を調製した。
【0167】
次いで、冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、水44部およびポリオキシエチレンアルキル硫酸アンモニウム(ハイテノールLA−16、第一工業製薬社製)2部を添加して乳化剤水溶液を調製し、調製した乳化剤水溶液に、上記したモノマー乳化液の1/4質量を加えて、1時間窒素置換を実施した後、60℃に昇温して、2、2´−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物(商品名:VA−057、和光純薬工業社製)0.1部を加えて1時間重合した。その後、上記したモノマー乳化液の残りの3/4質量を3時間かけて反応容器内に滴下し、3時間熟成することにより、水分散型重合体(アクリル系ポリマー)のエマルション(固形分濃度43.7%)を得た。
【0168】
その後、得られた水分散型重合体のエマルションに、10%アンモニウム水を添加してpH8に調整した。次いで、このエマルションに、水分散型重合体100部に対して、外部架橋剤としてエポキシ系架橋剤(TEPIC−G、イソシアヌレート骨格含有複素環式エポキシ樹脂、日産化学工業社製)0.05部と、水分散タイプのシリカ粒子(平均粒子径約40nm、アデライトAT−50、固形分濃度50%、ADEKA社製)20部(固形分で10部)とを、室温で加えることにより、水分散型耐油性粘着剤組成物を得た。
【0169】
別途、一方の表面が粗面化処理されたPTFEフィルム(ニトフロンフィルムNo.901UL、日東電工社製)からなる厚み100μmの基材を用意した。
【0170】
詳しくは、基材の一方の表面を次のように粗面化処理した。すなわち、PTFEフィルムの一方面にエッチング液(テトラエッチ、潤工社製)を塗布し、5秒間放置することにより、ウエットエッチングした。その後、基材を洗浄することにより、エッチング液を除去し、続いて、基材を乾燥させた。
【0171】
次いで、基材の処理面に、粘着剤層を形成した以外は実施例1と同様に処理することにより、基材と、その一方の表面に積層される下塗り層と、その一方の表面に積層される粘着剤層とを備える耐油耐熱性粘着テープを得た。
【0172】
比較例1
一方の表面を粗面化処理していないPTFEからなる厚み100μmの基材を用意した以外は、実施例1と同様に処理して、粘着剤層を形成し、その後、耐油耐熱性粘着テープを得た。
【0173】
比較例2
実施例1において、シリカ粒子を加えなかった以外は実施例1と同様に処理して、水分散型耐熱性粘着剤組成物を得、続いて、耐熱性粘着テープを得た。
【0174】
比較例3
実施例2において、シリカ粒子を加えなかった以外は実施例2と同様に処理して、水分散型耐熱性粘着剤組成物を得、続いて、耐熱性粘着テープを得た。
【0175】
比較例4
水分散型耐熱性粘着剤組成物の調製に代えて、溶剤溶液型耐熱性粘着剤組成物を調製した以外は、実施例1と同様に処理して、厚み50μmの粘着剤層を形成し、その後、耐熱性粘着テープを得た。
【0176】
すなわち、溶剤溶液型耐熱性粘着剤組成物を調製するには、まず、冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル95部、アクリル酸5部、トルエン150部および2、2´−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を投入し、60℃にて8時間重合(溶液重合)させて、溶剤溶液型アクリル系ポリマー溶液を得た。
【0177】
次いで、得られた溶剤溶液型アクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対し、外部架橋剤として油溶性イソシアネート系架橋剤溶液(コロネートL、固形分濃度75%、日本ポリウレタン工業社製)2.67部(固形分で2部)を加えることにより、溶剤溶液型耐熱性粘着剤組成物を得た。
【0178】
比較例5
水分散型耐熱性粘着剤組成物の調製に代えて、溶剤溶液型耐熱性粘着剤組成物を調製した以外は、実施例2と同様に処理して、厚み50μmの粘着剤層を形成し、その後、耐熱性粘着テープを得た。
【0179】
すなわち、溶剤溶液型耐熱性粘着剤組成物を調製するには、まず、冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル95部、アクリル酸5部、トルエン150部および2、2´−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を投入し、60℃にて8時間重合(溶液重合)させて、溶剤溶液型アクリル系ポリマー溶液を得た。
【0180】
次いで、得られた溶剤溶液型アクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対し、外部架橋剤として油溶性イソシアネート系架橋剤溶液(コロネートL、固形分濃度75%、日本ポリウレタン工業社製)2.67部(固形分で2部)を加えることにより、溶剤溶液型耐熱性粘着剤組成物を得た。
【0181】
各実施例および各比較例の粘着剤層および基材の詳細を表1に示す。
【0182】
【表1】

(評価)
1.水分散型重合体の水分散粒子の平均粒子径および標準偏差
実施例1、2および比較例1〜3の水分散型重合体の水分散粒子の水分散粒子について、レーザー回折散乱式粒度分布計(LS13 320、レーザー光源:レーザーダイオードおよびタングステンランプ、波長450〜900nm、ベックマンコールター社製)を用いて、体積基準における平均粒子径およびその標準偏差を測定した。
【0183】
それらの結果を表1に示す。
【0184】
(粘着性試験)
2.粘着性試験
(1)常温粘着力(常温雰囲気下における粘着性)(常温常湿粘着力)
各実施例の耐油耐熱性粘着テープおよび各比較例の耐熱性粘着テープを幅20mm、長さ40mmの大きさに切断してサンプルを調製し、サンプルの粘着剤層をアルミニウム板の表面に貼着し、次いで、2kgのゴムローラを1往復させることにより、サンプルをアルミニウム板に圧着し、次いで、23℃で30分放置した。その後、23℃、湿度30%RHの雰囲気下で剥離試験(180度ピール、剥離速度300mm/分)を実施し、測定された剥離力を常温粘着力(常温常湿粘着力)として、常温雰囲気下における粘着性を評価した。
【0185】
それらの結果を、表1に示す。
(2)耐熱粘着力(耐熱性:高温雰囲気下における粘着性)
上記によりサンプルが圧着され、23℃で30分放置されたアルミニウム板を、200℃の雰囲気下で7日間保存した。その後、アルミニウム板を上記した雰囲気下から出して、23℃の雰囲気下で剥離試験(180度ピール、剥離速度300mm/分)を実施し、測定された剥離力を耐熱粘着力として、サンプルの高温雰囲気下における粘着性(耐熱性)を評価した。また、耐熱粘着力の、常温粘着力に対する比(=(耐熱粘着力/常温粘着力)×100(%))を算出した。
【0186】
なお、比較例1については、上記した雰囲気下からサンプルを出したときに、基材と粘着剤層とが接合していなかったため、評価できなかった。
【0187】
それらの結果を、表1に示す。
(3)耐油耐熱粘着力(耐油耐熱性:油が存在する高温雰囲気下における粘着性)
上記によりサンプルが圧着され、23℃で30分放置されたアルミニウム板を、オイル(商品名:シェル ビトリヤ オイル 32、昭和シェル石油社製)に浸漬させ、130℃雰囲気下にて7日間保存した。その後、アルミニウム板をオイルから引き上げ、23℃の雰囲気下で剥離試験(180度ピール、剥離速度300mm/分)を実施し、測定された剥離力を耐油耐熱粘着力として、サンプルの、油が存在する高温雰囲気下における粘着性(耐油耐熱性)を評価した。また、耐油耐熱粘着力の、常温粘着力に対する比(=(耐油耐熱粘着力/常温粘着力)×100(%))を算出した。
【0188】
なお、比較例1については、上記した雰囲気下からサンプルを出したときに、基材と粘着剤層とが接合していなかったため、評価できなかった。
【0189】
それらの結果を、表1に示す。
【0190】
表1から明らかように、粘着剤層がシリカ粒子を含有しない比較例1および2の耐油性粘着テープの常温粘着力は、粘着剤層がシリカ粒子を含有する実施例1および2に比べて、それぞれ低く、耐油耐熱性評価では、凝集破壊しており、高温の油によって、粘着剤層が劣化していた。
【0191】
また、粘着剤層が、シリカ粒子を含有せず、溶剤溶液型重合体からなる比較例4および5の耐油性粘着テープの常温粘着力は、粘着剤層がシリカ粒子を含有し、水分散型重合体からなる実施例1および2に比べ、それぞれ低かった。また、比較例4の耐油耐熱性粘着力は、常温粘着力より低下し、耐油耐熱性が不十分であった。また、比較例5の耐油性粘着テープは、実施例2に比べて、耐油耐熱性粘着力の常温粘着力に対する比が小さく、耐油耐熱性が不十分であった。
【0192】
一方、PTFEフィルムからなる基材と、その一方の表面に積層され、シリカ粒子および水分散型重合体を含有する水分散型粘着剤組成物からなる粘着剤層とを備える実施例1および2の耐油耐熱性粘着テープは、常温粘着力が高く、かつ、耐熱性および耐油耐熱性の両方の低下を有効に防止していた。
【0193】
また、PTFEフィルムの一方の表面が表面処理(実施例1:スパッタエッチングによる粗面化処理、実施例2:ウェットエッチングによる粗面化処理)された実施例1および2は、PTFEフィルムが表面処理されていない比較例1に比べて、基材と粘着剤層との間の密着力が向上してした。
(4)高温高湿保存後の粘着力
実施例1、2の耐油性粘着シートおよび比較例2〜5の粘着シートを幅20mm、長さ40mmの大きさに切断してサンプルを調製し、サンプルの粘着剤層をアルミニウム板の表面に貼着し、次いで、2kgのゴムローラを1往復させることにより、サンプルをアルミニウム板に圧着した。
【0194】
その後、85℃/90%RHの高温高湿器に投入し、1000時間後、サンプルを取り出した。
【0195】
その後、取り出したサンプルについて、23℃の雰囲気中で剥離試験(180度ピール、剥離速度300mm/分)を実施し、測定された剥離力を高温高湿保存後の粘着力とした。
【0196】
そして、高温高湿保存後の粘着力の、常温常湿粘着力に対する比(高温高湿保存後の粘着力/常温常湿粘着力)を百分率として算出した。
【0197】
それらの結果を表1に示す。
【0198】
なお、比較例1については、サンプルをアルミニウム板に圧着しても、それらが十分に接着しなかったため、高温高湿保存後の粘着力およびその比を測定することができなかった。
【符号の説明】
【0199】
1 耐油耐熱性粘着シート(耐油耐熱性粘着フィルム、耐油耐熱性粘着テープ)
2 基材
3 粘着剤層
4 被着体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂を含有する基材と、
前記基材の少なくとも一方の表面に積層される粘着剤層と
を備え、
前記基材の前記一方の表面が、粗面化処理および/または下塗り処理され、
前記粘着剤層が、水分散型重合体と、無機粒子とを含有する水分散型耐油性粘着剤組成物からなることを特徴とする、耐油耐熱性粘着シート。
【請求項2】
前記基材は、ポリテトラフルオロエチレンからなるフィルムから形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の耐油耐熱性粘着シート。
【請求項3】
前記基材の少なくとも前記一方の表面は、スパッタエッチングおよび/またはウエットエッチングされていることを特徴とする、請求項1または2に耐油耐熱性粘着シート。
【請求項4】
前記水分散型重合体の体積基準における平均粒子径の標準偏差が、0.001μm以上0.2μm以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水分散型耐油性粘着剤組成物。
【請求項5】
油が存在する環境下に配置される被着体に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の耐油耐熱性粘着シートを貼着することを特徴とする、貼着方法。
【請求項6】
油が存在する環境下に配置される被着体に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の耐油耐熱性粘着シートが貼着されていることを特徴とする、耐油耐熱性貼着構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−117054(P2012−117054A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243243(P2011−243243)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】