説明

耐火不燃性断熱板材

【課題】 耐火不燃性で軽量且優れた断熱性と屈撓性を保持し、而も安価で施工性の良い耐火不燃性断熱板材を提供する。
【解決手段】 繊維径が20μm以下の無機繊維を所要の幅と厚さ及び空隙率が70%以上に絡合させ若しくは折合積層させたウエッブに、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液にポリビニルアルコール若しくはゴムラテックスが適宜割合で配合された発泡塗材を、ウエッブの重量に対して5乃至25重量%割合で塗着のうえ、180乃至350℃の温度で加熱しその発泡倍率が2乃至15倍で連続気泡構造の酸化珪素態の発泡体と一体的に発泡形成させた構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐火不燃性と軽量性に加え優れた断熱性と屈撓性を保持し、建築用断熱材としては極めて好適な耐火不燃性断熱板材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物は極めて広範囲に亘る使用目的に使用されるもので、且その建物空間は使用目的に適合するよう保温や保冷が施されるものであるが、かかる建物空間の保温や保冷には膨大な熱エネルギーが要請されるとともに、該熱エネルギーは建物の天井面や壁面若しくは床面或いは通路等より多量に放出逸散されるため、その熱エネルギーの補充も膨大量に昇る結果となっている。
これがため建築物においては可能な限りその熱エネルギーの放出逸散防止を図るうえから、建物内装材の裏面には内断熱材が、更に外壁材の裏面には外断熱材が使用されている。
【0003】
ところで現行建築基準法においては、外断熱材においては耐火不燃性が要求されるものの内断熱材には特段の制約がない。これがため外断熱材としては発泡コンクリート板を初めセメント板からなるサイジングボード或いはガルバニウム鋼板等が主に使用されている反面、内断熱材としてはポリスチレン樹脂やポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、若しくはポリフェノール樹脂素材からなる合成樹脂発泡板材が専ら使用されている。
然るにかかる外断熱材は、耐火不燃性に優れるものの極めて多重なうえ柔軟性や屈撓性を保持せぬため、施工に際して建設機械の使用や組立若しくは張設に際して切削や切断等が度々必要となる等施工性に劣り、而も断熱性能も十分なものとは言えない。
【0004】
他方、内断熱材は柔軟性や屈撓性はもとより軽量且安価で而も断熱性にも極めて優れることから多量に使用されてきているが、近年の建築物は耐火不燃構造に加えて密閉性も著しく高まっていることから、一旦火災が発生すると該内断熱材より猛烈な火炎ばかりか有害ガスも多量に発生し、火災の発生毎に多数の人命が失われ且今日の高齢化社会を背景として高齢者の死亡事故が頻発している状況にもある。
【0005】
かかる如き問題に鑑み研究を重ねた結果、既に発明者等はシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を加熱発泡させることにより、連続気泡構造と酸化珪素態の耐火不燃性で軽量且優れた断熱性を保持する発泡板材が形成しえることを確認している。そこで発明者等は更にシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液の加熱発泡による耐火不燃性と軽量且優れた断熱性を活用し、且無機繊維を用いて空隙率の大きな所謂嵩高なウエッブを用いたうえ、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液にポリビニルアルコール若しくはゴムラテックスを適宜量配合させて加熱発泡させることにより、屈撓性に優れ且無機発泡体の脆弱さも解決しえることを究明し本発明に至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は耐火不燃性で軽量且優れた断熱性と屈撓性を保持し、而も安価で施工性の良い耐火不燃性断熱板材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために本発明が用いた技術的手段は、その繊維径が20μm以下の無機繊維素材で且所要の長さの該無機繊維を所要の幅と厚さ及びその空隙率が70%以上の極めて軽量嵩高に絡合させてウエッブとなし、若しくは長繊維状の無機繊維を所要の幅と厚さ及びその空隙率が70%以上の極めて軽量嵩高に折合積層させてなるウエッブを用いたうえ、該ウエッブの重量に対して5乃至25重量%割合で連続気泡構造の酸化珪素態からなる無機発泡体を形成するシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液に対して、形成される無機発泡体に粘弾性を付与せしめて十分な屈撓性を創出させるうえからポリビニルアルコール若しくはゴムラテックスが配合された発泡塗材を塗着させ、而して180乃至350℃の温度で加熱しウエッブと一体的に融着結合させ且その発泡倍率が2乃至15倍に連続気泡構造の酸化珪素態の発泡体と一体的に発泡形成させてなる耐火不燃性断熱板材に存するものである。
【0008】
更に使用されるウエッブの形成に先立ち所要の長さの無機繊維を絡合させ若しくは長繊維の無機繊維を折合積層のうえ発泡塗材を、該ウエッブを形成する無機繊維の重量に対し5乃至25重量%割合で予め塗着させてウエッブの形成がなされる構成、及びウエッブの形成に際して塗着される発泡塗材に粘着性を付与せしめてウエッブを安定且能率的に形成させるうえから、発泡塗材のシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液の水分率を30乃至55重量%割合まで脱水させたシロキサン及びシラノール塩多分子量ゲル状物を用いる構成に存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述の如き構成からなるもので、その繊維径が20μm以下の極細な無機繊維が用いられ、且所要の長さの無機繊維を所要の幅と厚さ及びその空隙率が70%以上に絡合形成させ、若しくは長繊維の無機繊維を所要の幅と厚さ及びその空隙率が70%以上の極めて空隙率が大きく嵩高に形成されるため柔軟で且耐火不燃性を保持するとともに、該ウエッブの重量に対して5乃至25重量%割合でシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液にポリビニルアルコール若しくはゴムラテックスが配合されてなる発泡塗材が塗着されたうえ、180乃至350℃の温度で加熱され2乃至15倍に加熱発泡されるため、ウエッブの空隙を形成する無機繊維外表面に塗着された発泡塗材が、加熱融着性を創出し且シロキサン結合が促進されて無機繊維と強固に融着結合されるとともに、連続気泡構造と酸化珪素態に発泡された発泡体を一体的に形成し、且ウエッブの空隙の閉塞化に伴い空気断熱層が多量に形成されて断熱性が著しく高まる。
【0010】
加えて発泡形成される連続気泡構造の酸化珪素態の発泡体にはポリビニルアルコール若しくはゴムラテックスが配合されてなるため粘弾性が創出され、且ウエッブの柔軟性とも相俟って優れた屈撓性も発揮されるとともに見掛比重も極めて小さな軽量の耐火不燃性断熱板材となる。
更には絡合によるウエッブ若しくは折合積層によるウエッブ形成に際して粘着性の高いシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液ゲル状物の使用により、ウエッブの保形性が著しく高まりウエッブが能率良く形成しえるため、極めて安価に耐火不燃性断熱板材が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
無機繊維のロックウールを用いて所要の幅と厚さ及びその空隙率を70%に形成したウエッブに、シロキサン及びシラノール塩にポリビニルアルコールが配合された発泡塗材を、ウエッブ重量に対して5乃至25重量%割合で塗着のうえ180乃至350℃の温度で2乃至15倍の発泡倍率に且連続気泡構造と酸化珪素態の発泡体をウエッブと一体的に発泡形成させる。
【実施例1】
【0012】
以下に本発明実施例を図とともに詳細に説明すれば、図1は本発明耐火不燃性断熱板材1の見取図であって、本発明は耐火不燃性で軽量且優れた断熱性と屈撓性を保持させる必要上から、その繊維径が太くても20μm以下好ましくは1乃至10μmの極細な無機繊維2Aを用いたウエッブ2が芯材として用いられる。
この無機繊維2Aとしては人工的に製造されるガラス繊維や炭素繊維、アルミナ繊維、岩石繊維、スラグ繊維等が挙げられるが、価格的に安価で且ウエッブ2の形成にはロックウールやスチールウール等も好適である。
【0013】
そしてウエッブ2の具体的作成においては乾式不織布の原理が利用できるもので、図2に示す如く所要の長さに切断されてなる短繊維状の無機繊維20Aを用いる場合には、該無機繊維20Aを解繊のうえカーディングして絡合させながらウエッブ2の形成を図ることにより、図2のAに示すウエッブ2が形成されるもので、かかる場合に形成されるウエッブ2の強力は使用する無機繊維20Aの繊度(D)と繊維長(L)とにおいては繊維長

は略25乃至100mm程で十分である。
【0014】
当然に建築用断熱板材としての使用においては、通常その幅が90cm、長さが180cmが基準とされており、幅は90cmに形成され且その厚さは内断熱板材においては4cm、5cm及び6cmが基準とされているものであるから、該ウエッブ2の厚さは発泡塗材3の塗着重量割合と加熱6による発泡倍率とを勘案して決定されることとなる。
加えて空隙率はウエッブ2の単位容積における空隙2Bの形成に使用される無機繊維2Aの総容積との割合で決定されるものであるから、使用される無機繊維2Aの繊維径が細く且空隙2Bが大きくなる程空隙率が大きくなり軽量で嵩高柔軟なウエッブ2となる。
反面長繊維状の無機繊維21Aを用いる場合では、図2のBに示すように多数線条の無機繊維21Aを、その幅に合せて且空隙率が70%以上となるよう折合積層させることにより形成される。
【0015】
かくして形成されたウエッブ2には、加熱6により連続気泡構造で酸化珪素態に発泡形成させるための発泡塗材3が、ウエッブ2の重量に対して5乃至25重量%割合で塗着される。この発泡塗材3は、加熱によりその発泡倍率が2乃至15倍で連続気泡構造且酸化珪素態の発泡体4を、ウエッブ2と一体的に強固に融着結合のうえ形成させるものであり、且この形成される発泡体4に十分に粘弾性を付与せしめて形成される本発明耐火不燃性断熱板材7に屈撓性を保持させるため、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液にポリビニルアルコール若しくは天然ゴムラテックス或いは合成ゴムラテックスが適宜割合で配合されてなるものであるが、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を加熱6により2乃至15倍に発泡させ、連続気泡構造で酸化珪素態の発泡体4を形成するためには含有水分の完全な加熱放散が必要とされ、これがためには少なくとも180℃望ましくは250乃至350℃の高温度による加熱発泡が要請される。
【0016】
そしてかかる高温度による加熱発泡が長時間に亘ってなされると、ポリビニルアルコール若しくは天然ゴムラテックス或いは合成ゴムラテックスの熱劣化が招来されるばかりか、該ポリビニルアルコールや天然ゴムラテックス若しくは合成ゴムラテックスが多量に配合されると耐火不燃性が滅失される結果ともなる危険がある。これがため具体的配合割合はウエッブ2に塗着される塗着重量割合及び発泡倍率を勘案して決定されるが、概ね1.5乃至10.0%重量割合が目処となる。かかる場合に加熱6が高温度でなされる場合の具体的なポリビニルアルコールとしては、重合度が略240乃至600で分解点が285乃至305℃程度のものが好適であり、低温度による加熱6では天然ゴムラテックスが配合分散性のうえから望ましい。
加えて発泡塗材3を形成するシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液は、珪酸ソーダ即ち水ガラスのシラノール基を縮合作用させてその分子量を4,000程度に多分子量化させたもので、その性状はシロキサン及びシラノール塩からなる固形分が略25乃至35重量%に水分が略65乃至75重量%割合からなる水溶液状のものである。
【0017】
図3は発泡塗材3の塗着状態の説明図であって、ウエッブ2への発泡塗材3の塗着5手段としては所要の塗着重量割合で塗着5されるものであれば特段に制約はないが、本発明に用いるウエッブ2では使用される無機繊維2Aもその繊維径が極細なうえ空隙率も70%以上に形成されるため噴霧塗着が好適であって、この他の塗着手段としては浸漬手段やロールコーティング手段等も採用できる。
【0018】
かかる如くしてウエッブ2に所要の塗着重量割合で発泡塗材3が塗着されたうえは加熱6を施すことにより、図4に示すように塗着された発泡塗材3の水分蒸散と加熱融着性の創出並びにシロキサン結合の促進を図り、ウエッブ2を形成する無機繊維2Aと強固に融着結合させつつ、その発泡倍率が2乃至15倍の連続気泡構造で酸化珪素態の発泡体4が発泡形成されて、本発明耐火不燃性断熱板材1が作成される。
かかる場合にウエッブ2の空隙2Bを形成する無機繊維2に強固に融着結合のうえ2乃至15倍の発泡倍率で連続気泡構造且酸化珪素態の発泡体4の形成で空隙2Bが該発泡体4により包被化され、空気断熱層4Aが多量に形成されることとなる。
加熱6の手段にも特段の制約はなく、発泡塗着材3が塗着されたウエッブ2全体を所要温度及び時間で均等に加熱6できるものであれば使用できるが、本発明では発泡倍率を2乃至15倍に制限させるうえから一対組の加熱ロール間に挟持させ、若しくは一対組の加熱ベルト間に挟持させて発泡倍率を制限させつつ加熱させることが望ましい。
【0019】
更に本発明においては、芯材として使用されるウエッブ2がその繊維径において20μm以下と極細なものが用いられ、且その空隙率も70%以上の多量で大きな空隙2Bで形成されるため、極めて軟弱で保形性に劣り取扱いに細心の注意も要請される。
反面該ウエッブ2に塗着される発泡塗材3を構成するシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液は、その多分子量化に伴い粘着性を保持する。
これがためウエッブ2の形成に先立ち、該ウエッブ2を形成する無機繊維2の重量に対して5乃至25重量%割合で発泡塗材3を塗着し、而して所要の長さに切断された短繊維状の無機繊維20Aを相互に絡合させて所要の幅と厚さ及び空隙率が70%以上のウエッブ2となし、若しくは長繊維状の無機繊維21Aを所要の幅と厚さ及びその空隙率が70%以上に折合積層させてウエッブ2を形成することが、ウエッブ2の保形性が高まり取扱いも著しく向上することとなる。
【0020】
加えて該発泡塗材3を構成するシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液は、その水分率が略65乃至75重量%割合の比較的低粘度のものであって、該水分率を30乃至55重量%までに脱水せしめて比較的高粘度のシロキサン及びシラノール塩多分子量ゲル状物として使用することによりその粘着力が一段と向上するため、ウエッブ2の形成が格段に能率的になされることも考慮すべきである。
【0021】
以下に本発明耐火不燃性断熱板材についての性能試験結果を述べれば、試験に用いた試料は無機繊維素材としてその繊維径が2μmのロックウールを用いて幅100cm厚さ1cmで空隙率を95%に折合積層させてウエッブを形成のうえ、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液にポリビニルアルコールが3.0重量%割合配合された発泡塗材を、ウエッブ重量に対して20重量%割合で噴霧塗着のうえ、190℃45分間の加熱を施し6.5倍の発泡倍率で連続気泡構造と酸化珪素態に発泡形成させたものを用いたもので、性能は表1の通りである。
【0022】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0023】
幅が90cm、長さ180cmで適宜の厚さに形成することにより、建築内断熱板材はもとより建築外断熱板材に即時使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】 本発明耐火不燃性断熱板材の説明図である。
【図2】 ウエッブの説明図である。
【図3】 発泡塗材の塗着状態の説明図である。
【図4】 加熱発泡状態の説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 耐火不燃性断熱板材
2 ウエッブ
2A 無機繊維
2B 空隙
20A 短繊維状の無機繊維
21A 長繊維状の無機繊維
3 発泡塗材
4 発泡体
4A 空気断熱層
5 塗着
6 加熱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その繊維径が20μm以下で且所要の長さの無機繊維を、所要の幅と厚さ及びその空隙率が70%以上に絡合させたウエッブに、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液とポリビニルアルコール、若しくはゴムラテックスが配合された発泡塗材をウェッブ重量に対し5乃至25重量%割合で塗着させたうえ180乃至350℃の温度で加熱し、その発泡倍率が2乃至15倍で連続気泡構造の酸化珪素態からなる発泡体と一体的に加熱発泡形成されてなることを特徴とする耐火不燃性断熱板材。
【請求項2】
ウエッブが、繊維径20μm以下の無機繊維からなる長繊維を所要の幅と厚さ及びその空隙率が70%以上に折合積層させて形成された請求項1記載の耐火不燃性断熱板材。
【請求項3】
所要の長さの無機繊維を所要の幅と厚さ及びその空隙率が70%以上に絡合させてウエッブを形成し、若しくは長繊維の無機繊維を所要の幅と厚さ及びその空隙率が70%以上に折合積層させたウエッブの形成において、所長の長さ若しくは長繊維状の無機繊維に予め発泡塗材を塗着させてウエッブを形成する、請求項1若しくは請求項2記載の耐火不燃性断熱材。
【請求項4】
発泡塗材に使用されるシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液が、その水分率を30乃至55重量%割合まで脱水させたシロキサン及びシラノール塩多分子量ゲル状物である、請求項1乃至請求項3記載の耐火不燃断熱板材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−131507(P2007−131507A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351210(P2005−351210)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(505336208)株式会社躍進 (4)
【Fターム(参考)】