説明

耐火二層管継手

【課題】 本発明は、受け口部の管径が大きくならず、しかも耐火性、水密性、耐震性に優れた耐火二層管継手を提供する。
【解決手段】 本発明の耐火二層管継手1は、受け口3を有する内管2と、受け口3の面上に配置された止水リング4と、この止水リング4の上面から外周面、さらには受け口3の内管外周面を覆うキャップ5と、このキャップ5の外周面とこれに続く内管2の外周面を覆う外管6とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火性、水密性、耐震性に優れた耐火二層管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、アパート、マンション等の集合住宅やオフィスビル等の配管設備に多用されている合成樹脂製管継手は、防火対策上、耐火性のあるものが求められている。
このような耐火性の管継手として、図4に示すような、合成樹脂製管継手を内管22とし、その外周面に不燃材をモルタルで固めて成形した外管26を配置した二層管継手が知られている。
この従来の二層管継手は、内管22の受け口の内周面に設けられた周凹溝20に止水リング24が装着された構成である。しかし、前記周凹溝20は、対応する内管22の受け口の外周面を環状に膨出させ、その分、受け口部の管径を大きくするという難点がある。
【0003】
耐火二層管の適用対象となる集合住宅等の配管設備では、上下階を結ぶために鉄筋コンクリート製床に設ける配管用の貫通孔は、前記床中に張巡らされた鉄筋により配設位置が制約されること、また施工後の埋め戻しの手間がかかることを考慮し、さらには床面の強度性や遮音性を保持するためにも出来るだけ小径であることが望まれ、これに伴い二層管継手も受け口部がより小径のものが求められている。
【0004】
そこで、前記従来の二層管継手よりも受け口部の管径を小さくできる耐火二層管が提案されている。(特許文献1参照)
この二層管継手は、受け口部の開口周縁部にシール材を装着し、このシール材の周縁部から外管の先端外周面までを、ステンレス板等で成形した耐火カバーで覆い、この耐火カバーの円筒部を受け口部の外管にネジ材により固定した構成である。
【特許文献1】特開2004−150621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記耐火カバーは、シール材の周縁部から外管の先端外周面までを覆うため、外熱が耐火カバーを伝わって直接内管やシール材に達し易く、さらに、耐熱カバーはネジ材により外管に固定した構成であるため、水密性に欠けるという難点がある。
【0006】
本発明の課題は、内管の受け口の外周面を環状に膨出させることなく、耐火性、水密性、耐震性に優れた耐火二層管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の耐火二層管継手は、受け口を有する内管と、該受け口面に配置された止水リングと、該止水リングの上面から外周面さらには前記受け口の内管外周面を覆うキャップと、該キャップの外周面とこれに続く内管の外周面を覆う外管とで構成されている。
止水リングは、その外周面の周方向に、環状の突出部を形成するとよい。
前記キャップは、その内周面に内管の受け口面に係着できる段部を設けてもよく、また、その内周面にテーパーを設けるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の耐火二層管継手によれば、従来の二層管継手に比べて、受け口部の管径を小さくできるため施工性が良く、また耐火性、水密性、耐震性に優れた耐火二層管継手を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の耐火二層管継手は、止水リングを内管の受け口面に配置し、上記止水リングを覆うキャップを内管の外周面に接合一体化して、受け口部の管径を、従来の二層管継手よりも小さくしたこと、また、止水リングと内管およびキャップをモルタル等からなる不燃耐熱性の外管で覆うことによって、外熱からの遮断性を高め、管継手全体としての耐熱性を向上させたことに特徴がある。
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の耐火二層管継手の一例を示す部分断面図であり、図2は、図1に示す本発明の耐火二層管継手の部分拡大断面図である。図3は、本発明の耐火二層管継手の構成をなすキャップと止水リングの他の例を示す部分拡大断面図である。
【0011】
図1において、本発明の耐火二層管継手1は、内管2とこの内管2の受け口3の面上に配置された止水リング4と、この止水リング4を覆うキャップ5と、外管6とで構成されている。
キャップ5は、止水リング4の上面から外周面、さらには内管2の受け口3の外周面を覆うように形成されており、外管6は、キャップ5の外周面とこれに続く内管2の外周面を覆うように形成されている。
【0012】
内管2は、従来の二層管継手のものと異なり、内管の受け口3の内周面に止水リング4を収納するための周凹溝が形成されていないため、受け口3の外周面に膨出部は存在しない。
本発明の内管は、従来の合成樹脂管と同様、硬質ポリ塩化ビニル、アクリル、ABS等の合成樹脂で形成される。
【0013】
止水リング4は、図2に示すように、その基部7の下面が、内管2の受け口面8上に配置され、基部7の上面及び外周面がキャップ5によって覆われている。また、基部7の受け口3側には、突出先端部9が形成され、受け口3に嵌入される他管(接続管)の外周面に弾性を有して密接し、継手部分の水密性が保持できるようになっている。
【0014】
止水リング4は、図3に示すように、基部7の外周面に環状の突出部10を設けるようにしても良く、これにより止水リング4の内管の径方向の弾力性が増大し、受け口3に嵌入された他管(接続管)との間で水密性、耐震性が一層向上する。
本発明に係る止水リングは、NBR、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、シリコーンゴム等のゴム系材料及び塩化ビニル樹脂、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)等の弾性を有する合成樹脂等の可撓性材料で形成されている。
【0015】
キャップ5は、端断面が略L字状の筒状体であって、上部開口周縁端から中心に向けて鍔状の張出辺11を有し、この張出辺11と内管2の受け口面8との間に、止水リング4の基部7が嵌入できる間隙をあけ、キャップ5の内周面を内管2の外周面に接合して、内管2に取り付けられる。
【0016】
このキャップは、図3に示すように、キャップの内周面に内管2の受け口面8に係着できる段部12を設け、張出辺11と受け口面8との間に、止水リング4の基部7を嵌入し得るに最適な間隙を保持できるようにしてもよい。
また、キャップの内周面にテーパーを設けて接着剤が入り易いようにし、キャップ5と内管2の接着強度を上げるようにしてもよい。
キャップ5は、内管と同様、硬質ポリ塩化ビニル、アクリル、ABS等の合成樹脂で形成される。
【0017】
なお、図3では、止水リング4に突出部10を設けたもの、キャップ5に段部12を設けたもの、を組み合わせた例を示したが、この組み合わせに限定されるものではなく、突出部10を設けた止水リングと段部を設けないカバー材との組合せ、また突出部を設けない止水リングと段部を設けたカバー材との組合せ、等として本発明の耐火二層管継手に使用してもよい。
【0018】
外管6は、合成樹脂製管の表面に無機質系モルタル等で形成され不燃層が設けられた管体である。外管6の上端は、カバー材の張出辺11の外側面と面一にすることを原則とする。
本発明の耐火二層管継手は、図1に示すように、キャップ5の内周面を内管2の外周面に接着固定し、キャップ5と内管2の受け口面8との間隙に止水リング4を配置した状態で、外管6aを、キャップ5とこれに続く受け口3に対応する内管2に被せて、接着剤を用いて接合一体化して形成する。
ここで用いられる接着剤として、塩化ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系などが挙げられる。
【0019】
配管施工現場では、本発明の耐火二層管継手は、外管6aを固定した後、所望の長さで切断した内管2の端部から、外管6bを受け口部に向けて徐々に被せるようにして取付ける。
【0020】
本発明の耐火二層管継手は、内管の受け口の面上に止水リングが、配置されているため、従来の二層管継手よりも受け口部の管径を小さくすることができる。
また、止水リングを覆うキャップは、内管と同様の合成樹脂製であるため内管に接合一体化させた際の接合強度が大きく、管継手の水密性が高い。
さらに、止水リングとこれを覆うキャップ、さらにはこのキャップと接合一体化される内管は、いずれも不燃耐熱性の外管で覆われているため、外熱からの遮断性が高く、管継手自体の耐熱性が高い。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の耐火二層管継手は、排水管等の配管設備に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の耐火二層管継手の一例を示す部分断面図である。
【図2】図1に示す本発明の耐火二層管継手の部分拡大断面図である。
【図3】本発明の耐火二層管継手の構成をなすキャップと止水リングの他の例を示す部分拡大断面図である。
【図4】従来の二層管継手の例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 本発明の耐火二層管継手
2、22 内管
3 受け口
4、24 止水リング
5 キャップ
6、6a、6b、26 外管
7 止水リングの基部
8 内管の受け口面
9 止水リングの突出先端部
10 環状の突出部
11 キャップの張出辺
12 キャップの段部
20 周凹溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管継手であって、受け口を有する内管と、該受け口面に配置された止水リングと、該止水リングの上面から外周面、さらには前記受け口の内管外周面を覆うキャップと、該キャップの外周面とこれに続く内管の外周面を覆う外管とからなることを特徴とする耐火二層管継手。
【請求項2】
止水リングの外周面の周方向に、環状の突出部が形成されてなる請求項1に記載の耐火二層管継手。
【請求項3】
キャップの内周面に、内管の受け口面に係着できる段部を設けてなる請求項1または2に記載の耐火二層管継手。
【請求項4】
キャップの内周面にテーパーを設けてなる請求項1ないし請求項3に記載の耐火二層管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−329329(P2006−329329A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154024(P2005−154024)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】