耐火性コンクリート
【課題】爆裂による表層部分の損傷を抑制することが可能な耐火性コンクリートを提供する。
【解決手段】耐火性コンクリート1は、セメント9と、細骨材2と、粗骨材7と、水と、所定の温度(火災時等に耐火性コンクリート1が達すると想定される温度で、例えば、250℃〜500℃程度)で気化する有機繊維4と、材料分離抵抗性を良くするための混和材・混和剤5と、硬化後の耐火性コンクリート1の靭性を向上させるための鋼繊維6とを所定の割合で配合することにより製作される。この有機繊維4は、長さと太さの比であるアスペクト比が410以上700以下の範囲内のものを用いる。
【解決手段】耐火性コンクリート1は、セメント9と、細骨材2と、粗骨材7と、水と、所定の温度(火災時等に耐火性コンクリート1が達すると想定される温度で、例えば、250℃〜500℃程度)で気化する有機繊維4と、材料分離抵抗性を良くするための混和材・混和剤5と、硬化後の耐火性コンクリート1の靭性を向上させるための鋼繊維6とを所定の割合で配合することにより製作される。この有機繊維4は、長さと太さの比であるアスペクト比が410以上700以下の範囲内のものを用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造体に用いられる耐火性能を有するコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造体が火災等で加熱されて高温になると、その表層部が剥離して落下する爆裂現象が発生する。
【0003】
このコンクリート構造体の爆裂を抑制するため、例えば、特許文献1には、コンクリートに有機繊維を添加する方法が開示されている。この方法は、太さが10〜200μmで、長さが5〜20mmの有機繊維をコンクリートに添加することにより、コンクリート構造体が火災等で加熱されて高温になると有機繊維が気化して多数の空洞をつくるとともに、空洞間にひびが入り、空洞同士が連通して、該空洞と外部とを連通する通気路がコンクリート構造体に生じ、この通気路からコンクリート構造体内の水蒸気を外部に排出するので爆裂を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−220881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の内容で本発明者らが実験を行ったところ、太さが10〜200μmで、長さが5〜20mmの有機繊維を添加して構築されたコンクリート構造体では、加熱されて高温になると、通気路が不均一に生じるとともに、必要な量の通気路は生じなかった。したがって、十分に爆裂を抑制できず、表層部分に損傷箇所が多数生じるという問題点があった。
そこで、本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、爆裂による表層部分の損傷を抑制することが可能な耐火性コンクリートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コンクリート構造体に用いられる耐火性コンクリートであって、所定の温度で気化する性質を有するとともに、紐状で、長さと太さの比であるアスペクト比が410以上700以下の有機繊維と、結合材のうち50重量%以上60重量%以下の割合で含まれる高炉スラグと、靭性を向上させるための鋼繊維とを含むことを特徴とする。
【0007】
本発明による耐火性コンクリートによれば、アスペクト比が410以上700以下の有機繊維を含むので、コンクリートが火災等で加熱されて高温になると有機繊維が気化して微細な多数の空洞をつくるとともに、空洞間にひびが入り、空洞同士が連通して、該空洞と外部とを連通する通気路をコンクリートに容易に形成することができる。そして、この通気路からコンクリート内の水蒸気を外部に排出するので爆裂を防止することができる。
【0008】
また、有機繊維の分散性を高め、あるいは、セグメント型枠への充填性を高めるためにコンクリートを高流動状態にしても、コンクリートの材料分離抵抗性を高める混和材又は混和剤を含むので、コンクリート材料の分離を防ぐことができる。
【0009】
さらに、その混和材又は混和剤として、高炉スラグを結合材のうち50重量%以上60重量%以下の割合で含むことにより、コンクリートが高温になっても、爆裂をさらに抑制することができる。そして、高炉スラグは市販されているので、入手性が良い。
【0010】
また、鋼繊維を含むので、鋼繊維の剛性及び強度によりコンクリートの靭性を改善し、コンクリートの剥離、剥落を抑制することができる。
【0011】
また、本発明の耐火性コンクリートは、前記有機繊維のアスペクト比が500以上700以下であることとすれば、火災時等の爆裂を更に抑制することができ、表層部分に損傷が生じない。
【0012】
また、本発明の耐火性コンクリートは、前記有機繊維の配合割合を0.165体積%以上にすることにより、良好な施工性を得ることができるとともに、連通した通気路をつくるために必要な繊維の本数を確保することができる。
【0013】
また、本発明の耐火性コンクリートは、前記高炉スラグの比表面積を4000cm2/g以下にすることにより、コンクリートの爆裂をさらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の耐火性コンクリートを用いることにより、火災時等の爆裂をほとんど抑制することができ、表層部分に損傷が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る耐火性コンクリートを示す断面図である。
【図2】コンクリート試験体の形状を示す図である。
【図3】各コンクリート試験体を構成する材料及びそれらの配合条件を示す一覧図である。
【図4】試験に用いた有機繊維の各アスペクト比の太さ及び長さを示す一覧図である。
【図5】各コンクリート試験体の耐火試験方法を示す概略図である。
【図6】本耐火試験における加熱方法のRABT加熱曲線を示す図である。
【図7】耐火試験後のコンクリート試験体No.1の加熱面の状態を示す図である。
【図8】耐火試験後のコンクリート試験体No.2の加熱面の状態を示す図である。
【図9】耐火試験後のコンクリート試験体No.3の加熱面の状態を示す図である。
【図10】耐火試験後のコンクリート試験体No.4の加熱面の状態を示す図である。
【図11】耐火試験後のコンクリート試験体No.5の加熱面の状態を示す図である。
【図12】耐火試験後のコンクリート試験体No.6の加熱面の状態を示す図である。
【図13】耐火試験後のコンクリート試験体No.7の加熱面の状態を示す図である。
【図14】耐火試験後のコンクリート試験体No.8の加熱面の状態を示す図である。
【図15】耐火試験後のコンクリート試験体No.9の加熱面の状態を示す図である。
【図16】耐火試験後のコンクリート試験体No.10の加熱面の状態を示す図である。
【図17】耐火試験後のコンクリート試験体No.11の加熱面の状態を示す図である。
【図18】耐火試験後のコンクリート試験体No.12の加熱面の状態を示す図である。
【図19】耐火試験後のコンクリート試験体No.13の加熱面の状態を示す図である。
【図20】耐火試験後のコンクリート試験体No.14の加熱面の状態を示す図である。
【図21】耐火試験後のコンクリート試験体No.15の加熱面の状態を示す図である。
【図22】コンクリート試験体No.1の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図23】コンクリート試験体No.2の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図24】コンクリート試験体No.3の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図25】コンクリート試験体No.4の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図26】コンクリート試験体No.5の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図27】コンクリート試験体No.6の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図28】コンクリート試験体No.7の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図29】コンクリート試験体No.8の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図30】コンクリート試験体No.9の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図31】コンクリート試験体No.10の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図32】コンクリート試験体No.11の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図33】コンクリート試験体No.12の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図34】コンクリート試験体No.13の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図35】コンクリート試験体No.14の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図36】コンクリート試験体No.15の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図37】耐火試験後のコンクリート試験体No.16の加熱面の状態を示す図である。
【図38】耐火試験後のコンクリート試験体No.17の加熱面の状態を示す図である。
【図39】コンクリート試験体No.16の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図40】コンクリート試験体No.17の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図41】各コンクリート試験体を構成する材料及びそれらの配合条件を示す一覧図である。
【図42】耐火試験後のコンクリート試験体No.18の加熱面の状態を示す図である。
【図43】コンクリート試験体No.18の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図44】耐火試験後のコンクリート試験体No.19の加熱面の状態を示す図である。
【図45】耐火試験後のコンクリート試験体No.20の加熱面の状態を示す図である。
【図46】耐火試験後のコンクリート試験体No.21の加熱面の状態を示す図である。
【図47】コンクリート試験体No.19の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図48】コンクリート試験体No.20の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図49】コンクリート試験体No.21の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図50】耐火試験後のコンクリート試験体No.22の加熱面の状態を示す図である。
【図51】コンクリート試験体No.22の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る耐火性コンクリートの好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る耐火性コンクリート1を示す断面図である。図1に示すように、耐火性コンクリート1は、セメント9と、細骨材2と、粗骨材7と、水と、所定の温度(火災時等に耐火性コンクリート1が達すると想定される温度で、例えば、250℃〜500℃程度)で気化する有機繊維4と、材料分離抵抗性を高めるとともに、爆裂を防止するための混和材又は混和剤(以下、混和材・混和剤という)5と、硬化した後の耐火性コンクリート1の靭性を向上させるための鋼繊維6とを所定の割合で配合することにより製作される。
【0018】
耐火性コンクリート1を、水結合材比が28.8%以上36.0%以下になるように、また、コンクリートの流動状態が高流動性のものは、スランプフロー値が550mm±50mmの範囲内に含まれるように作製し、中流動性のものは、スランプ値が18cmになるように作製する。
【0019】
有機繊維4は、本実施形態においては、紐状のポリプロピレン繊維を用いた。有機繊維4は、火災時の熱で気化して耐火性コンクリート1内に微細な多数の空洞をつくる。そして、有機繊維4の気体が膨張することにより有機繊維4の長手方向に沿って、耐火性コンクリート1内の空洞間にひびが入り、空洞同士が連通して、耐火性コンクリート1内に空洞と外部とを連通する通気路が生じる。この通気路は、耐火性コンクリート1内の水蒸気を外部に排出するとともに、耐火性コンクリート1の表層部の熱応力を緩和する役割を果たし、その表層部の爆裂を防止する。
【0020】
なお、本実施形態においては、有機繊維4としてポリプロピレン繊維を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、所定の温度、例えば、250℃〜500℃程度で気化する有機繊維であれば良い。
【0021】
この有機繊維4は、長さと太さの比であるアスペクト比が410以上700以下の範囲内で、好ましくは、太さが17.5μm以下のものを用いる。さらに、有機繊維4の配合割合を0.165体積%以上に調整する。これらの要件を満たすように有機繊維4を用いることで、互いに連通した通気路をつくるために必要な有機繊維4の本数を確保できるとともに、良好な施工性を得ることができる。
【0022】
混和材・混和剤5は、粉末状の高炉スラグを用いる。結合材中における高炉スラグの配合割合を50重量%以上60重量%以下に調整する。また、その高炉スラグの比表面積は、4000cm2/g以下とする。ここで結合材とは、水と反応し耐火性コンクリート1の強度発現に寄与する物質、例えば、セメント9、混和材・混和剤5等を含むものをいう。
【0023】
鋼繊維6は、本実施形態においては、市販の紐状の普通鋼材を用いる。本実施形態においては、鋼繊維6の配合割合を0.6体積%に調整する。なお、鋼繊維6の形状、太さ、長さ及び混入率は、設計等により適宜決定される。
【0024】
次に、有機繊維4を含む耐火性コンクリート1の耐火性能について検討した結果を説明する。有機繊維4を含む複数のコンクリート試験体を製作し、これらのコンクリート試験体を所定の加熱条件にしたがって加熱する耐火試験を実施し、加熱後のコンクリート試験体の爆裂状態を確認した。まず、各コンクリート試験体を構成する材料の配合割合について説明し、次に、各コンクリート試験体の試験結果について説明する。
【0025】
図2は、コンクリート試験体の形状を示す図である。図2に示すように、コンクリート試験体は、セメント9と、細骨材2と、粗骨材7と、水と、有機繊維4であるポリプロピレン繊維と、混和材・混和剤5と、鋼繊維6とを所定の割合で配合して製作されている。
コンクリート試験体は板状で、横×高さ×奥行の長さがそれぞれ500mm×200mm×1000mmである。
有機繊維4のアスペクト比及び上記各材料の配合割合の異なる複数のコンクリート試験体を製作した。
【0026】
図3は、各コンクリート試験体を構成する材料及びそれらの配合条件を示す一覧図であり、図4は、試験に用いた有機繊維4の各アスペクト比の太さ及び長さを示す一覧図である。
図3及び図4に示すように、アスペクト比の異なる有機繊維4と、普通ポルトランドセメントと、細骨材2と、粗骨材7と、水と、混和材・混和剤5と、鋼繊維6とをそれぞれ所定の割合で配合して、15種類のコンクリート試験体No.1〜No.15を製作した。すべてのコンクリート試験体No.1〜No.15において、有機繊維4、鋼繊維6の混入率は同一になるように調整した。
【0027】
<アスペクト比114の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.1〜No.3について>
図3及び図4に示すように、アスペクト比が114で、太さ及び長さが17.5μm×2mmの有機繊維4を含む3種類のコンクリート試験体No.1、No.2及びNo.3を製作した。
【0028】
具体的には、コンクリート試験体No.1は、アスペクト比114の有機繊維4と、普通ポルトランドセメントと、鋼繊維6と、細骨材2と、粗骨材7と、水とを混合した中流動性のコンクリート試験体である。また、コンクリート試験体No.2は、コンクリート試験体No.1の材料に混和材・混和剤5である増粘剤を添加し、この増粘剤により高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。そして、コンクリート試験体No.3は、コンクリート試験体No.1の材料に混和材・混和剤5である石灰石微粉末を添加し、この石灰石微粉末により高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。
【0029】
<アスペクト比281の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.4〜No.6について>
図3及び図4に示すように、アスペクト比が281で、太さ及び長さが42.7μm×12mmの有機繊維4を含む3種類のコンクリート試験体No.4、No.5及びNo.6を製作した。
具体的には、コンクリート試験体No.4は、アスペクト比281の有機繊維4と、普通ポルトランドセメントと、鋼繊維6と、細骨材2と、粗骨材7と、水とを混合した中流動性のコンクリート試験体である。また、コンクリート試験体No.5は、コンクリート試験体No.4の材料に混和材・混和剤5である増粘剤を添加し、この増粘剤により高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。そして、コンクリート試験体No.6は、コンクリート試験体No.4の材料に混和材・混和剤5である石灰石微粉末を添加し、この石灰石微粉末により高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。
【0030】
<アスペクト比410の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.7〜No.10について>
図3及び図4に示すように、アスペクト比が410で、太さ及び長さが48.8μm×20mmの有機繊維4を含む4種類のコンクリート試験体No.7、No.8、No.9及びNo.10を製作した。
具体的には、コンクリート試験体No.7は、アスペクト比410の有機繊維4と、普通ポルトランドセメントと、鋼繊維6と、細骨材2と、粗骨材7と、水とを混合した中流動性のコンクリート試験体である。また、コンクリート試験体No.8は、コンクリート試験体No.7の材料に混和材・混和剤5である増粘剤を添加し、この増粘剤により高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。そして、コンクリート試験体No.9は、コンクリート試験体No.7の材料に混和材・混和剤5である石灰石微粉末を添加し、この石灰石微粉末により高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。また、コンクリート試験体No.10は、コンクリート試験体No.7の材料に混和材・混和剤5であるフライアッシュを添加し、このフライアッシュにより高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。
【0031】
<アスペクト比570の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.11〜No.14について>
図3及び図4に示すように、アスペクト比が570で、太さ及び長さが17.5μm×10mmの有機繊維4を含む4種類のコンクリート試験体No.11、No.12、No.13及びNo.14を製作した。
具体的には、コンクリート試験体No.11は、アスペクト比570の有機繊維4と、普通ポルトランドセメントと、鋼繊維6と、細骨材2と、粗骨材7と、水とを混合した中流動性のコンクリート試験体である。また、コンクリート試験体No.12は、コンクリート試験体No.11の材料に混和材・混和剤5である増粘剤を添加し、この増粘剤により高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。そして、コンクリート試験体No.13は、コンクリート試験体No.11の材料に混和材・混和剤5である石灰石微粉末を添加し、この石灰石微粉末により高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。また、コンクリート試験体No.14は、コンクリート試験体No.11の材料に混和材・混和剤5であるフライアッシュを添加し、このフライアッシュにより高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。
【0032】
<アスペクト比857の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.15について>
図3及び図4に示すように、アスペクト比が857で、太さ及び長さが17.5μm×15mmの有機繊維4を含むコンクリート試験体No.15を製作した。
具体的には、コンクリート試験体No.15は、アスペクト比857の有機繊維4と、普通ポルトランドセメントと、混和材・混和剤5であるフライアッシュと、鋼繊維6と、細骨材2と、粗骨材7と、水とを混合したものであり、このフライアッシュにより高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。
【0033】
次に、耐火試験方法について説明する。
図5は、各コンクリート試験体の耐火試験方法を示す概略図であり、図6は、本耐火試験における加熱方法のRABT加熱曲線を示す図である。
図5に示すように、各コンクリート試験体を耐火炉8にそれぞれ設置し、各コンクリート試験体の加熱面を加熱した。
加熱方法は、トンネル火災を想定して、図6に示すように、加熱開始後5分間で1200℃まで昇温するRABT曲線にしたがって加熱した。
【0034】
次に、各コンクリート試験体の耐火試験結果について説明する。
図7〜図21は、耐火試験後の各コンクリート試験体の加熱面の状態を示す図であり、図22〜図36は、各コンクリート試験体の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【0035】
<アスペクト比114の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.1〜No.3の場合>
図7〜図9、図22〜図24に示すように、コンクリート試験体No.1、No.2、No.3は、加熱面を含む表層部で爆裂が生じ、損傷が加熱面に広い範囲で見られた。具体的には、コンクリート試験体No.1、No.2、No.3の爆裂面積率がそれぞれ21.2%、56.7%、35.9%、平均爆裂深さがそれぞれ1.0mm、5.7mm、3.4mm、最大爆裂深さがそれぞれ12.0mm、28.0mm、17.0mmであった。すべてのコンクリート試験体No.1、No.2、No.3で、最大爆裂深さが10mm以上となった。
【0036】
<アスペクト比281の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.4〜No.6の場合>
図10〜図12、図25〜図27に示すように、コンクリート試験体No.4、No.5、No.6は、表層部で爆裂が生じ、損傷が加熱面に広い範囲で見られた。具体的には、コンクリート試験体No.4、No.5、No.6の爆裂面積率がそれぞれ43.7%、71.4%、69.3%、平均爆裂深さがそれぞれ2.3mm、8.9mm、5.8mm、最大爆裂深さがそれぞれ20.0mm、35.0mm、21.0mmであった。すべてのコンクリート試験体No.4、No.5、No.6で、最大爆裂深さが10mm以上となった。
【0037】
<アスペクト比410の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.7〜No.10の場合>
図13〜図16、図28〜図31に示すように、コンクリート試験体No.7、No.8、No.9、No.10は、表層部でわずかに爆裂が生じ、損傷が加熱面に部分的に見られた。具体的には、コンクリート試験体No.7、No.8、No.9、No.10の爆裂面積率がそれぞれ8.7%、12.6%、6.1%、14.3%、平均爆裂深さがそれぞれ0.1mm、0.4mm、0.1mm、0.4mm、最大爆裂深さがそれぞれ3.0mm、7.0mm、4.0mm、8.0mmであった。すべてのコンクリート試験体No.7、No.8、No.9、No.10で、最大爆裂深さが10mm未満となり、良好な結果が得られた。
【0038】
<アスペクト比570の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.11〜No.14の場合>
図17〜図20及び図32〜図35に示すように、わずかに爆裂が生じた結果と全く爆裂が生じなかった結果が得られた。
わずかな爆裂は、図17、図19、図32、図34に示すように、コンクリート試験体No.11、No.13に見られた。これらのコンクリート試験体No.11、No.13では、表層部でわずかに爆裂が生じ、損傷が加熱面に局部的に見られた。具体的には、コンクリート試験体No.11、No.13の爆裂面積率がそれぞれ5.2%、9.5%、平均爆裂深さがそれぞれ0.1mm、0.3mm、最大爆裂深さがそれぞれ3.0mm、8.0mmであった。
【0039】
一方、図18、図20、図33、図35に示すように、コンクリート試験体No.12、No.14では、ほとんど爆裂は生じず、加熱面への損傷も全くなかった。具体的には、コンクリート試験体No.12、No.14の爆裂面積率がそれぞれ0%、3.5%、平均爆裂深さは共に0mm、最大爆裂深さがそれぞれ0mm、2.0mmであった。すべてのコンクリート試験体No.11、No.12、No.13、No.14で、最大爆裂深さが10mm未満となり、良好な結果が得られた。
【0040】
アスペクト比570のコンクリート試験体No.11〜No.14のうち、コンクリート試験体No.12及びNo.14は、爆裂が全く発生していないので、増粘剤又はフライアッシュを含むことにより、爆裂を抑制できることがわかる。
【0041】
<アスペクト比857の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.15の場合>
図21、図36に示すように、コンクリート試験体No.15は、表層部でわずかに爆裂が生じ、損傷が加熱面に部分的に見られた。具体的には、爆裂面積率が17.3%、平均爆裂深さが0.7mm、最大爆裂深さが14.0mmであった。すなわち、コンクリート試験体No.15で、最大爆裂深さが10mm以上となった。
上述したすべての耐火試験結果より、アスペクト比570の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.11〜No.14の爆裂面積率、平均爆裂深さ及び最大爆裂深さが最も小さく、ほぼ爆裂が抑制されていることがわかる。
【0042】
また、アスペクト比410の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.7〜No.10の爆裂面積率、平均爆裂深さ及び最大爆裂深さが、アスペクト比570に次いで小さく、概ね爆裂が抑制されていることがわかる。
また、アスペクト比を114から570まで増加させると、コンクリート試験体の爆裂面積率、平均爆裂深さ及び最大爆裂深さは、徐々に小さくなる。したがって、アスペクト比が114から570まで増加すると、爆裂を抑制する効果は高くなることがわかる。
【0043】
さらに、アスペクト比を570よりも大きい857にすると、コンクリート試験体の爆裂面積率、平均爆裂深さ及び最大爆裂深さは、大きくなる。したがって、アスペクト比が857まで増加すると、爆裂を抑制する効果はアスペクト比570の場合よりも低くなることがわかる。
【0044】
すなわち、コンクリート試験体は、アスペクト比570付近の有機繊維4を含むことにより、爆裂を効果的に抑制できることがわかる。そこで、耐火性コンクリート1に用いる有機繊維4のアスペクト比の下限をアスペクト比410とし、また、上限をアスペクト比570と857のほぼ中間値の700として、アスペクト比410以上700以下の有機繊維4を用いることにより、爆裂を効果的に抑制することができると考えられる。
【0045】
次に、コンクリート試験体の損傷が最も抑制されるアスペクト比が570で、かつ、混和材・混和剤5であるフライアッシュを含む場合において、有機繊維4の混入率の違いによる耐火性能について2種類の耐火試験(以下、それぞれを第1の試験、第2の試験という)を行って検討した結果を示す。
【0046】
まず、第1の試験において、具体的には、有機繊維4の混入率がそれぞれ0.1体積%、0.2体積%のコンクリート試験体No.16、No.17を作製して耐火試験を行った。コンクリート試験体No.16、No.17を構成する材料及びそれらの配合条件を図3の下部に示している。コンクリート試験体No.16、No.17は、上記コンクリート試験体No.1〜No.15と同一の鋼繊維6の混入率とし、また、スランプフロー値も同程度となるように作製した。
【0047】
なお、有機繊維4の混入率を0.3体積%以上にすると流動性が低下してコンクリート試験体の作製が困難になるので、有機繊維4の混入率をそれぞれ0.1体積%、0.2体積%とした。
【0048】
図3に示すように、コンクリート試験体No.16、No.17は、アスペクト比570の有機繊維4と、普通ポルトランドセメントと、鋼繊維6と、細骨材2と、粗骨材7と、水と、混和材・混和剤5の、例えば、フライアッシュとを所定の割合で混合したものであり、高流動性のコンクリート試験体である。
【0049】
なお、コンクリート試験体No.17の各材料の配合割合は、コンクリート試験体No.14とほぼ同一とした。これはコンクリート試験体No.14の耐火試験の結果から得られた爆裂を抑制する効果の再現性を確認するために、再度、同一の配合割合で耐火試験を行った。
【0050】
図37及び図38は、耐火試験後の各コンクリート試験体の加熱面の状態を示す図であり、図39及び図40は、各コンクリート試験体の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
図37、図39に示すように、コンクリート試験体No.16は、表層部でわずかに爆裂が生じ、損傷が加熱面に局部的に見られた。具体的には、爆裂面積率が11.7%、平均爆裂深さが0.7mm、最大爆裂深さが7.0mmであった。
【0051】
一方、図38、図40に示すように、コンクリート試験体No.17は、爆裂はほとんど生じなかったが、加熱面への損傷がわずかに見られた。具体的には、爆裂面積率が2.2%、平均爆裂深さが0.0mm、最大爆裂深さが2.0mmであった。
【0052】
これらの結果より、コンクリート試験体No.17の爆裂面積率、平均爆裂深さ及び最大爆裂深さは、コンクリート試験体No.16のそれよりも小さい。したがって、有機繊維4を0.2体積%配合した方が爆裂を抑制できることがわかる。
【0053】
また、コンクリート試験体No.17の爆裂面積率、平均爆裂深さ及び最大爆裂深さは、コンクリート試験体No.14の爆裂面積率、平均爆裂深さ及び最大爆裂深さとほぼ同程度であり、爆裂を抑制する効果を再現することができた。
【0054】
次に、第2の試験では、コンクリート試験体の両側面に圧縮応力を導入して、耐火試験を行った。
具体的には、有機繊維4の混入率が0.165体積%のコンクリート試験体No.18を作製して耐火試験を行った。コンクリート試験体No.18を構成する材料及びそれらの配合条件を図41の上部に示している。コンクリート試験体No.18は、上記コンクリート試験体No.1〜No.17と同一の鋼繊維6の混入率とし、また、スランプフロー値も同程度(No.1、No.4、No.7及びNo.11を除く)となるように作製した。
【0055】
なお、詳細は後述するが、本試験ではコンクリート試験体の大きさ及び圧縮応力の作用の有無についての試験条件が上述したコンクリート試験体No.1〜No.17と異なるため、本試験の試験条件、配合条件等の一覧を新たに図41に示している。
図41に示すように、コンクリート試験体No.18は、アスペクト比570の有機繊維4と、普通ポルトランドセメントと、鋼繊維6と、細骨材2と、粗骨材7と、水と、混和材・混和剤5の、例えば、高炉スラグとを所定の割合で混合したものであり、高流動性のコンクリート試験体である。
【0056】
また、コンクリート試験体No.18は、横×高さ×奥行の長さがそれぞれ1700mm×500mm×1900mmの板状の試験体とした。
耐火試験は、コンクリート試験体No.18に、奥行方向の両側面に14.4N/mm2の圧縮応力を作用させた状態で行った。
【0057】
図42は、耐火試験後のコンクリート試験体No.18の加熱面の状態を示す図であり、図43は、コンクリート試験体No.18の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
図42、図43に示すように、コンクリート試験体No.18は、表層部でわずかに爆裂が生じ、損傷が加熱面に部分的に見られた。具体的には、爆裂面積率が33.7%、平均爆裂深さが1.1mm、最大爆裂深さが16.0mmであった。
【0058】
この結果より、コンクリート試験体No.18の爆裂面積率、平均爆裂深さ及び最大爆裂深さは、コンクリート試験体No.16、No.17のそれよりも大きいものの、第2の試験は、圧縮応力導入下で試験を行った事を考慮すると、爆裂を抑制できていることがわかる。
【0059】
上述した第1及び第2の試験結果より、コンクリート試験体は、有機繊維4を0.1体積%〜0.2体積%含むことにより、爆裂を効果的に抑制できることがわかる。しかし、耐火性コンクリート1は、例えば、トンネル内のセグメントとして圧縮応力が作用するような現場で利用されるため、第2の試験結果より、安全を考慮して有機繊維を0.1体積%よりも多く含むことが望ましい。そこで、耐火性コンクリート1に用いる有機繊維4の混合率の下限を0.165体積%とすることにより、爆裂を効果的に抑制することができると考えられる。
【0060】
なお、上述した2種類の耐火試験とは別に、有機繊維4の混入率が0.4体積%のコンクリート試験体を作製して耐火試験を行った結果、第2の試験結果と同様に良好な結果が得られた。したがって、耐火性コンクリート1に用いる有機繊維4の混合率を0.165体積%以上とすることにより、爆裂を効果的に抑制できることが更に確認できた。
【0061】
次に、コンクリート試験体の損傷が最も抑制される有機繊維4のアスペクト比が570で、かつ、その配合割合が0.2体積%の場合において、混和材・混和剤5の種類の違いによる耐火性能について検討した結果を示す。
具体的には、混和材・混和剤5としてそれぞれフライアッシュ、増粘剤、高炉スラグを含むコンクリート試験体No.19、No.20、No.21を作製して耐火試験を行った。なお、上述したコンクリート試験体No.13の耐火試験の結果(図19及び図34参照)より、本耐火性能試験から混和材・混和剤5である石灰石微粉末を除外した。
【0062】
コンクリート試験体No.19、No.20、No.21を構成する材料及びそれらの配合条件を図41に示している。
図41に示すように、コンクリート試験体No.19〜No.21及びコンクリート試験体No.22(後述する)は、コンクリート試験体No.18と同様に、横×高さ×奥行の長さがそれぞれ1700mm×500mm×1900mmの板状の試験体とした。
【0063】
また、耐火試験も、コンクリート試験体No.18と同様に、各コンクリート試験体No.19〜No.22に、奥行方向の両側面に14.4N/mm2の圧縮応力を作用させた状態で行った。
【0064】
また、コンクリート試験体No.19、No.20、No.21は、上記コンクリート試験体No.1〜No.17と同一の鋼繊維6の混入率とし、また、スランプフロー値も同程度(No.1、No.4、No.7及びNo.11を除く)となるように作製した。
【0065】
具体的には、コンクリート試験体No.19は、混和材・混和剤5のフライアッシュと、有機繊維4と、普通ポルトランドセメントと、鋼繊維6と、細骨材2と、粗骨材7と、水とを混合したコンクリート試験体である。また、コンクリート試験体No.20は、混和材・混和剤5の増粘剤と、有機繊維4と、普通ポルトランドセメントと、鋼繊維6と、細骨材2と、粗骨材7と、水とを混合したコンクリート試験体である。そして、コンクリート試験体No.21は、混和材・混和剤5の高炉スラグを含む高炉セメント(この高炉セメントの比表面積は3400cm2/gである。また、高炉セメントに含まれる高炉スラグは、結合材中に58重量%の割合で含まれている。)と、有機繊維4と、鋼繊維6と、細骨材2と、粗骨材7と、水とを混合したコンクリート試験体である。
【0066】
図44〜図46は、耐火試験後の各コンクリート試験体の加熱面の状態を示す図であり、図47〜図49は、各コンクリート試験体の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【0067】
図44、図47に示すように、コンクリート試験体No.19は、表層部で爆裂が生じ、損傷が加熱面に広い範囲で見られた。具体的には、爆裂面積率が47.4%、平均爆裂深さが1.8mm、最大爆裂深さが14.0mmであった。
【0068】
図45、図48に示すように、コンクリート試験体No.20は、表層部で爆裂が生じ、損傷が加熱面に部分的に見られた。具体的には、爆裂面積率が32.9%、平均爆裂深さが0.8mm、最大爆裂深さが8.0mmであった。
【0069】
一方、図46、図49に示すように、コンクリート試験体No.21は、ほとんど爆裂は生じず、加熱面への損傷も全くなかった。具体的には、爆裂面積率が6.4%、平均爆裂深さが0.1mm、最大爆裂深さが3.0mmであった。
【0070】
これらの結果より、コンクリート試験体No.21の爆裂面積率、平均爆裂深さ及び最大爆裂深さは、コンクリート試験体No.19及びNo.20のそれよりも小さい。したがって、混和材・混和剤5としてフライアッシュや増粘剤よりも高炉スラグを添加した方が爆裂を抑制できることがわかる。
【0071】
次に、コンクリート試験体No.21の耐火試験の結果得られた爆裂を抑制する高炉スラグの効果を確認するために、高炉スラグの置換割合を変えて耐火試験を行った。その結果を以下に示す。
具体的には、比表面積が3400cm2/gの高炉スラグを結合材中に50重量%の割合で配合したコンクリート試験体No.22を作製して耐火試験を行った。コンクリート試験体No.22を構成する材料及びそれらの配合割合を図41の下部に示している。
【0072】
図50は、耐火試験後のコンクリート試験体No.22の加熱面の状態を示す図であり、図51は、コンクリート試験体No.22の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
図50及び図51に示すように、コンクリート試験体No.22は、ほとんど爆裂は生じず、加熱面への損傷も小さかった。具体的には、爆裂面積率が20.9%、平均爆裂深さが0.3mm、最大爆裂深さが5.0mmであった。
【0073】
この結果より、コンクリート試験体No.22の爆裂面積率、平均爆裂深さ及び最大爆裂深さは、コンクリート試験体No.21のそれらほぼ同程度であり、爆裂を抑制する効果を確認することができた。
【0074】
上述したように、本耐火試験により、アスペクト比が410以上700以下の有機繊維4を用いた場合に爆裂が生じにくく、表層部の損傷が少なくなることがわかる。また、有機繊維4を0.165体積%以上の割合で配合した場合は、より効果的に爆裂を抑制することができることがわかる。さらに、混和材・混和剤5として結合材のうち高炉スラグを50重量%以上60重量%以下の割合で置換し、その高炉スラグの比表面積が4000cm2/g以下の場合は、爆裂の抑制効果が高くなる。
【0075】
以上説明した本実施形態における耐火性コンクリート1によれば、所定の温度で気化するとともに、アスペクト比が410以上700以下の有機繊維4であるポリプロピレン繊維を含むので、耐火性コンクリート1が火災等で加熱されて高温になると有機繊維4が気化して微細な多数の空洞をつくるとともに、有機繊維4の気体が膨張することにより空洞間にひびが入り、空洞同士が連通して、耐火性コンクリート1内に空洞と外部とを連通する通気路が生じる。この通気路は、耐火性コンクリート1内の水蒸気を外部に排出するとともに、耐火性コンクリート1の表層部の熱膨張力を緩和する役割を果たし、その表層部の剥離を防止する。
【0076】
また、有機繊維4の配合量を0.165体積%以上にすることで、耐火性コンクリート1打設の良好な施工性を得ることができるとともに、連通した通気路をつくるために必要な繊維の本数を確保することができる。
【0077】
さらに、高炉スラグを50重量%以上60重量%以下含むこと及びその高炉スラグの比表面積を4000cm2/g以下にすることで、耐火性コンクリート1の表層部の爆裂を抑制し、剥離を抑制することができる。
【0078】
また、コンクリートを高流動状態にしても、有機繊維4を均一に配合することができる。また、有機繊維4を均一に配合した状態で、耐火性コンクリート1の流動性を高めることができるので、ワーカビリィティが良好になり、充填作業を効率的に実施することができる。
【0079】
有機繊維4、高炉スラグは市販されているので、入手性が良い。また、これらは安価なので耐火性コンクリート1を経済的に製作することができる。
【0080】
さらに、鋼繊維6を0.6体積%含むことにより、耐火性コンクリート1の靭性を大きくすることができる。
【0081】
なお、本実施形態においては、加熱方法として、一般的に行われているRABT曲線に基づく加熱方法を採用したが、これに限定されるものではなく、現場条件等に応じて他の加熱方法を採用しても良い。
【符号の説明】
【0082】
1 耐火性コンクリート
2 細骨材
4 有機繊維
5 混和材・混和剤
6 鋼繊維
7 粗骨材
8 耐火炉
9 セメント
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造体に用いられる耐火性能を有するコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造体が火災等で加熱されて高温になると、その表層部が剥離して落下する爆裂現象が発生する。
【0003】
このコンクリート構造体の爆裂を抑制するため、例えば、特許文献1には、コンクリートに有機繊維を添加する方法が開示されている。この方法は、太さが10〜200μmで、長さが5〜20mmの有機繊維をコンクリートに添加することにより、コンクリート構造体が火災等で加熱されて高温になると有機繊維が気化して多数の空洞をつくるとともに、空洞間にひびが入り、空洞同士が連通して、該空洞と外部とを連通する通気路がコンクリート構造体に生じ、この通気路からコンクリート構造体内の水蒸気を外部に排出するので爆裂を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−220881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の内容で本発明者らが実験を行ったところ、太さが10〜200μmで、長さが5〜20mmの有機繊維を添加して構築されたコンクリート構造体では、加熱されて高温になると、通気路が不均一に生じるとともに、必要な量の通気路は生じなかった。したがって、十分に爆裂を抑制できず、表層部分に損傷箇所が多数生じるという問題点があった。
そこで、本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、爆裂による表層部分の損傷を抑制することが可能な耐火性コンクリートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コンクリート構造体に用いられる耐火性コンクリートであって、所定の温度で気化する性質を有するとともに、紐状で、長さと太さの比であるアスペクト比が410以上700以下の有機繊維と、結合材のうち50重量%以上60重量%以下の割合で含まれる高炉スラグと、靭性を向上させるための鋼繊維とを含むことを特徴とする。
【0007】
本発明による耐火性コンクリートによれば、アスペクト比が410以上700以下の有機繊維を含むので、コンクリートが火災等で加熱されて高温になると有機繊維が気化して微細な多数の空洞をつくるとともに、空洞間にひびが入り、空洞同士が連通して、該空洞と外部とを連通する通気路をコンクリートに容易に形成することができる。そして、この通気路からコンクリート内の水蒸気を外部に排出するので爆裂を防止することができる。
【0008】
また、有機繊維の分散性を高め、あるいは、セグメント型枠への充填性を高めるためにコンクリートを高流動状態にしても、コンクリートの材料分離抵抗性を高める混和材又は混和剤を含むので、コンクリート材料の分離を防ぐことができる。
【0009】
さらに、その混和材又は混和剤として、高炉スラグを結合材のうち50重量%以上60重量%以下の割合で含むことにより、コンクリートが高温になっても、爆裂をさらに抑制することができる。そして、高炉スラグは市販されているので、入手性が良い。
【0010】
また、鋼繊維を含むので、鋼繊維の剛性及び強度によりコンクリートの靭性を改善し、コンクリートの剥離、剥落を抑制することができる。
【0011】
また、本発明の耐火性コンクリートは、前記有機繊維のアスペクト比が500以上700以下であることとすれば、火災時等の爆裂を更に抑制することができ、表層部分に損傷が生じない。
【0012】
また、本発明の耐火性コンクリートは、前記有機繊維の配合割合を0.165体積%以上にすることにより、良好な施工性を得ることができるとともに、連通した通気路をつくるために必要な繊維の本数を確保することができる。
【0013】
また、本発明の耐火性コンクリートは、前記高炉スラグの比表面積を4000cm2/g以下にすることにより、コンクリートの爆裂をさらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の耐火性コンクリートを用いることにより、火災時等の爆裂をほとんど抑制することができ、表層部分に損傷が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る耐火性コンクリートを示す断面図である。
【図2】コンクリート試験体の形状を示す図である。
【図3】各コンクリート試験体を構成する材料及びそれらの配合条件を示す一覧図である。
【図4】試験に用いた有機繊維の各アスペクト比の太さ及び長さを示す一覧図である。
【図5】各コンクリート試験体の耐火試験方法を示す概略図である。
【図6】本耐火試験における加熱方法のRABT加熱曲線を示す図である。
【図7】耐火試験後のコンクリート試験体No.1の加熱面の状態を示す図である。
【図8】耐火試験後のコンクリート試験体No.2の加熱面の状態を示す図である。
【図9】耐火試験後のコンクリート試験体No.3の加熱面の状態を示す図である。
【図10】耐火試験後のコンクリート試験体No.4の加熱面の状態を示す図である。
【図11】耐火試験後のコンクリート試験体No.5の加熱面の状態を示す図である。
【図12】耐火試験後のコンクリート試験体No.6の加熱面の状態を示す図である。
【図13】耐火試験後のコンクリート試験体No.7の加熱面の状態を示す図である。
【図14】耐火試験後のコンクリート試験体No.8の加熱面の状態を示す図である。
【図15】耐火試験後のコンクリート試験体No.9の加熱面の状態を示す図である。
【図16】耐火試験後のコンクリート試験体No.10の加熱面の状態を示す図である。
【図17】耐火試験後のコンクリート試験体No.11の加熱面の状態を示す図である。
【図18】耐火試験後のコンクリート試験体No.12の加熱面の状態を示す図である。
【図19】耐火試験後のコンクリート試験体No.13の加熱面の状態を示す図である。
【図20】耐火試験後のコンクリート試験体No.14の加熱面の状態を示す図である。
【図21】耐火試験後のコンクリート試験体No.15の加熱面の状態を示す図である。
【図22】コンクリート試験体No.1の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図23】コンクリート試験体No.2の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図24】コンクリート試験体No.3の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図25】コンクリート試験体No.4の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図26】コンクリート試験体No.5の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図27】コンクリート試験体No.6の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図28】コンクリート試験体No.7の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図29】コンクリート試験体No.8の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図30】コンクリート試験体No.9の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図31】コンクリート試験体No.10の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図32】コンクリート試験体No.11の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図33】コンクリート試験体No.12の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図34】コンクリート試験体No.13の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図35】コンクリート試験体No.14の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図36】コンクリート試験体No.15の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図37】耐火試験後のコンクリート試験体No.16の加熱面の状態を示す図である。
【図38】耐火試験後のコンクリート試験体No.17の加熱面の状態を示す図である。
【図39】コンクリート試験体No.16の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図40】コンクリート試験体No.17の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図41】各コンクリート試験体を構成する材料及びそれらの配合条件を示す一覧図である。
【図42】耐火試験後のコンクリート試験体No.18の加熱面の状態を示す図である。
【図43】コンクリート試験体No.18の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図44】耐火試験後のコンクリート試験体No.19の加熱面の状態を示す図である。
【図45】耐火試験後のコンクリート試験体No.20の加熱面の状態を示す図である。
【図46】耐火試験後のコンクリート試験体No.21の加熱面の状態を示す図である。
【図47】コンクリート試験体No.19の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図48】コンクリート試験体No.20の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図49】コンクリート試験体No.21の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【図50】耐火試験後のコンクリート試験体No.22の加熱面の状態を示す図である。
【図51】コンクリート試験体No.22の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る耐火性コンクリートの好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る耐火性コンクリート1を示す断面図である。図1に示すように、耐火性コンクリート1は、セメント9と、細骨材2と、粗骨材7と、水と、所定の温度(火災時等に耐火性コンクリート1が達すると想定される温度で、例えば、250℃〜500℃程度)で気化する有機繊維4と、材料分離抵抗性を高めるとともに、爆裂を防止するための混和材又は混和剤(以下、混和材・混和剤という)5と、硬化した後の耐火性コンクリート1の靭性を向上させるための鋼繊維6とを所定の割合で配合することにより製作される。
【0018】
耐火性コンクリート1を、水結合材比が28.8%以上36.0%以下になるように、また、コンクリートの流動状態が高流動性のものは、スランプフロー値が550mm±50mmの範囲内に含まれるように作製し、中流動性のものは、スランプ値が18cmになるように作製する。
【0019】
有機繊維4は、本実施形態においては、紐状のポリプロピレン繊維を用いた。有機繊維4は、火災時の熱で気化して耐火性コンクリート1内に微細な多数の空洞をつくる。そして、有機繊維4の気体が膨張することにより有機繊維4の長手方向に沿って、耐火性コンクリート1内の空洞間にひびが入り、空洞同士が連通して、耐火性コンクリート1内に空洞と外部とを連通する通気路が生じる。この通気路は、耐火性コンクリート1内の水蒸気を外部に排出するとともに、耐火性コンクリート1の表層部の熱応力を緩和する役割を果たし、その表層部の爆裂を防止する。
【0020】
なお、本実施形態においては、有機繊維4としてポリプロピレン繊維を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、所定の温度、例えば、250℃〜500℃程度で気化する有機繊維であれば良い。
【0021】
この有機繊維4は、長さと太さの比であるアスペクト比が410以上700以下の範囲内で、好ましくは、太さが17.5μm以下のものを用いる。さらに、有機繊維4の配合割合を0.165体積%以上に調整する。これらの要件を満たすように有機繊維4を用いることで、互いに連通した通気路をつくるために必要な有機繊維4の本数を確保できるとともに、良好な施工性を得ることができる。
【0022】
混和材・混和剤5は、粉末状の高炉スラグを用いる。結合材中における高炉スラグの配合割合を50重量%以上60重量%以下に調整する。また、その高炉スラグの比表面積は、4000cm2/g以下とする。ここで結合材とは、水と反応し耐火性コンクリート1の強度発現に寄与する物質、例えば、セメント9、混和材・混和剤5等を含むものをいう。
【0023】
鋼繊維6は、本実施形態においては、市販の紐状の普通鋼材を用いる。本実施形態においては、鋼繊維6の配合割合を0.6体積%に調整する。なお、鋼繊維6の形状、太さ、長さ及び混入率は、設計等により適宜決定される。
【0024】
次に、有機繊維4を含む耐火性コンクリート1の耐火性能について検討した結果を説明する。有機繊維4を含む複数のコンクリート試験体を製作し、これらのコンクリート試験体を所定の加熱条件にしたがって加熱する耐火試験を実施し、加熱後のコンクリート試験体の爆裂状態を確認した。まず、各コンクリート試験体を構成する材料の配合割合について説明し、次に、各コンクリート試験体の試験結果について説明する。
【0025】
図2は、コンクリート試験体の形状を示す図である。図2に示すように、コンクリート試験体は、セメント9と、細骨材2と、粗骨材7と、水と、有機繊維4であるポリプロピレン繊維と、混和材・混和剤5と、鋼繊維6とを所定の割合で配合して製作されている。
コンクリート試験体は板状で、横×高さ×奥行の長さがそれぞれ500mm×200mm×1000mmである。
有機繊維4のアスペクト比及び上記各材料の配合割合の異なる複数のコンクリート試験体を製作した。
【0026】
図3は、各コンクリート試験体を構成する材料及びそれらの配合条件を示す一覧図であり、図4は、試験に用いた有機繊維4の各アスペクト比の太さ及び長さを示す一覧図である。
図3及び図4に示すように、アスペクト比の異なる有機繊維4と、普通ポルトランドセメントと、細骨材2と、粗骨材7と、水と、混和材・混和剤5と、鋼繊維6とをそれぞれ所定の割合で配合して、15種類のコンクリート試験体No.1〜No.15を製作した。すべてのコンクリート試験体No.1〜No.15において、有機繊維4、鋼繊維6の混入率は同一になるように調整した。
【0027】
<アスペクト比114の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.1〜No.3について>
図3及び図4に示すように、アスペクト比が114で、太さ及び長さが17.5μm×2mmの有機繊維4を含む3種類のコンクリート試験体No.1、No.2及びNo.3を製作した。
【0028】
具体的には、コンクリート試験体No.1は、アスペクト比114の有機繊維4と、普通ポルトランドセメントと、鋼繊維6と、細骨材2と、粗骨材7と、水とを混合した中流動性のコンクリート試験体である。また、コンクリート試験体No.2は、コンクリート試験体No.1の材料に混和材・混和剤5である増粘剤を添加し、この増粘剤により高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。そして、コンクリート試験体No.3は、コンクリート試験体No.1の材料に混和材・混和剤5である石灰石微粉末を添加し、この石灰石微粉末により高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。
【0029】
<アスペクト比281の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.4〜No.6について>
図3及び図4に示すように、アスペクト比が281で、太さ及び長さが42.7μm×12mmの有機繊維4を含む3種類のコンクリート試験体No.4、No.5及びNo.6を製作した。
具体的には、コンクリート試験体No.4は、アスペクト比281の有機繊維4と、普通ポルトランドセメントと、鋼繊維6と、細骨材2と、粗骨材7と、水とを混合した中流動性のコンクリート試験体である。また、コンクリート試験体No.5は、コンクリート試験体No.4の材料に混和材・混和剤5である増粘剤を添加し、この増粘剤により高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。そして、コンクリート試験体No.6は、コンクリート試験体No.4の材料に混和材・混和剤5である石灰石微粉末を添加し、この石灰石微粉末により高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。
【0030】
<アスペクト比410の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.7〜No.10について>
図3及び図4に示すように、アスペクト比が410で、太さ及び長さが48.8μm×20mmの有機繊維4を含む4種類のコンクリート試験体No.7、No.8、No.9及びNo.10を製作した。
具体的には、コンクリート試験体No.7は、アスペクト比410の有機繊維4と、普通ポルトランドセメントと、鋼繊維6と、細骨材2と、粗骨材7と、水とを混合した中流動性のコンクリート試験体である。また、コンクリート試験体No.8は、コンクリート試験体No.7の材料に混和材・混和剤5である増粘剤を添加し、この増粘剤により高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。そして、コンクリート試験体No.9は、コンクリート試験体No.7の材料に混和材・混和剤5である石灰石微粉末を添加し、この石灰石微粉末により高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。また、コンクリート試験体No.10は、コンクリート試験体No.7の材料に混和材・混和剤5であるフライアッシュを添加し、このフライアッシュにより高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。
【0031】
<アスペクト比570の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.11〜No.14について>
図3及び図4に示すように、アスペクト比が570で、太さ及び長さが17.5μm×10mmの有機繊維4を含む4種類のコンクリート試験体No.11、No.12、No.13及びNo.14を製作した。
具体的には、コンクリート試験体No.11は、アスペクト比570の有機繊維4と、普通ポルトランドセメントと、鋼繊維6と、細骨材2と、粗骨材7と、水とを混合した中流動性のコンクリート試験体である。また、コンクリート試験体No.12は、コンクリート試験体No.11の材料に混和材・混和剤5である増粘剤を添加し、この増粘剤により高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。そして、コンクリート試験体No.13は、コンクリート試験体No.11の材料に混和材・混和剤5である石灰石微粉末を添加し、この石灰石微粉末により高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。また、コンクリート試験体No.14は、コンクリート試験体No.11の材料に混和材・混和剤5であるフライアッシュを添加し、このフライアッシュにより高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。
【0032】
<アスペクト比857の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.15について>
図3及び図4に示すように、アスペクト比が857で、太さ及び長さが17.5μm×15mmの有機繊維4を含むコンクリート試験体No.15を製作した。
具体的には、コンクリート試験体No.15は、アスペクト比857の有機繊維4と、普通ポルトランドセメントと、混和材・混和剤5であるフライアッシュと、鋼繊維6と、細骨材2と、粗骨材7と、水とを混合したものであり、このフライアッシュにより高い材料分離抵抗性を有する高流動性のコンクリート試験体である。
【0033】
次に、耐火試験方法について説明する。
図5は、各コンクリート試験体の耐火試験方法を示す概略図であり、図6は、本耐火試験における加熱方法のRABT加熱曲線を示す図である。
図5に示すように、各コンクリート試験体を耐火炉8にそれぞれ設置し、各コンクリート試験体の加熱面を加熱した。
加熱方法は、トンネル火災を想定して、図6に示すように、加熱開始後5分間で1200℃まで昇温するRABT曲線にしたがって加熱した。
【0034】
次に、各コンクリート試験体の耐火試験結果について説明する。
図7〜図21は、耐火試験後の各コンクリート試験体の加熱面の状態を示す図であり、図22〜図36は、各コンクリート試験体の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【0035】
<アスペクト比114の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.1〜No.3の場合>
図7〜図9、図22〜図24に示すように、コンクリート試験体No.1、No.2、No.3は、加熱面を含む表層部で爆裂が生じ、損傷が加熱面に広い範囲で見られた。具体的には、コンクリート試験体No.1、No.2、No.3の爆裂面積率がそれぞれ21.2%、56.7%、35.9%、平均爆裂深さがそれぞれ1.0mm、5.7mm、3.4mm、最大爆裂深さがそれぞれ12.0mm、28.0mm、17.0mmであった。すべてのコンクリート試験体No.1、No.2、No.3で、最大爆裂深さが10mm以上となった。
【0036】
<アスペクト比281の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.4〜No.6の場合>
図10〜図12、図25〜図27に示すように、コンクリート試験体No.4、No.5、No.6は、表層部で爆裂が生じ、損傷が加熱面に広い範囲で見られた。具体的には、コンクリート試験体No.4、No.5、No.6の爆裂面積率がそれぞれ43.7%、71.4%、69.3%、平均爆裂深さがそれぞれ2.3mm、8.9mm、5.8mm、最大爆裂深さがそれぞれ20.0mm、35.0mm、21.0mmであった。すべてのコンクリート試験体No.4、No.5、No.6で、最大爆裂深さが10mm以上となった。
【0037】
<アスペクト比410の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.7〜No.10の場合>
図13〜図16、図28〜図31に示すように、コンクリート試験体No.7、No.8、No.9、No.10は、表層部でわずかに爆裂が生じ、損傷が加熱面に部分的に見られた。具体的には、コンクリート試験体No.7、No.8、No.9、No.10の爆裂面積率がそれぞれ8.7%、12.6%、6.1%、14.3%、平均爆裂深さがそれぞれ0.1mm、0.4mm、0.1mm、0.4mm、最大爆裂深さがそれぞれ3.0mm、7.0mm、4.0mm、8.0mmであった。すべてのコンクリート試験体No.7、No.8、No.9、No.10で、最大爆裂深さが10mm未満となり、良好な結果が得られた。
【0038】
<アスペクト比570の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.11〜No.14の場合>
図17〜図20及び図32〜図35に示すように、わずかに爆裂が生じた結果と全く爆裂が生じなかった結果が得られた。
わずかな爆裂は、図17、図19、図32、図34に示すように、コンクリート試験体No.11、No.13に見られた。これらのコンクリート試験体No.11、No.13では、表層部でわずかに爆裂が生じ、損傷が加熱面に局部的に見られた。具体的には、コンクリート試験体No.11、No.13の爆裂面積率がそれぞれ5.2%、9.5%、平均爆裂深さがそれぞれ0.1mm、0.3mm、最大爆裂深さがそれぞれ3.0mm、8.0mmであった。
【0039】
一方、図18、図20、図33、図35に示すように、コンクリート試験体No.12、No.14では、ほとんど爆裂は生じず、加熱面への損傷も全くなかった。具体的には、コンクリート試験体No.12、No.14の爆裂面積率がそれぞれ0%、3.5%、平均爆裂深さは共に0mm、最大爆裂深さがそれぞれ0mm、2.0mmであった。すべてのコンクリート試験体No.11、No.12、No.13、No.14で、最大爆裂深さが10mm未満となり、良好な結果が得られた。
【0040】
アスペクト比570のコンクリート試験体No.11〜No.14のうち、コンクリート試験体No.12及びNo.14は、爆裂が全く発生していないので、増粘剤又はフライアッシュを含むことにより、爆裂を抑制できることがわかる。
【0041】
<アスペクト比857の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.15の場合>
図21、図36に示すように、コンクリート試験体No.15は、表層部でわずかに爆裂が生じ、損傷が加熱面に部分的に見られた。具体的には、爆裂面積率が17.3%、平均爆裂深さが0.7mm、最大爆裂深さが14.0mmであった。すなわち、コンクリート試験体No.15で、最大爆裂深さが10mm以上となった。
上述したすべての耐火試験結果より、アスペクト比570の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.11〜No.14の爆裂面積率、平均爆裂深さ及び最大爆裂深さが最も小さく、ほぼ爆裂が抑制されていることがわかる。
【0042】
また、アスペクト比410の有機繊維4を含むコンクリート試験体No.7〜No.10の爆裂面積率、平均爆裂深さ及び最大爆裂深さが、アスペクト比570に次いで小さく、概ね爆裂が抑制されていることがわかる。
また、アスペクト比を114から570まで増加させると、コンクリート試験体の爆裂面積率、平均爆裂深さ及び最大爆裂深さは、徐々に小さくなる。したがって、アスペクト比が114から570まで増加すると、爆裂を抑制する効果は高くなることがわかる。
【0043】
さらに、アスペクト比を570よりも大きい857にすると、コンクリート試験体の爆裂面積率、平均爆裂深さ及び最大爆裂深さは、大きくなる。したがって、アスペクト比が857まで増加すると、爆裂を抑制する効果はアスペクト比570の場合よりも低くなることがわかる。
【0044】
すなわち、コンクリート試験体は、アスペクト比570付近の有機繊維4を含むことにより、爆裂を効果的に抑制できることがわかる。そこで、耐火性コンクリート1に用いる有機繊維4のアスペクト比の下限をアスペクト比410とし、また、上限をアスペクト比570と857のほぼ中間値の700として、アスペクト比410以上700以下の有機繊維4を用いることにより、爆裂を効果的に抑制することができると考えられる。
【0045】
次に、コンクリート試験体の損傷が最も抑制されるアスペクト比が570で、かつ、混和材・混和剤5であるフライアッシュを含む場合において、有機繊維4の混入率の違いによる耐火性能について2種類の耐火試験(以下、それぞれを第1の試験、第2の試験という)を行って検討した結果を示す。
【0046】
まず、第1の試験において、具体的には、有機繊維4の混入率がそれぞれ0.1体積%、0.2体積%のコンクリート試験体No.16、No.17を作製して耐火試験を行った。コンクリート試験体No.16、No.17を構成する材料及びそれらの配合条件を図3の下部に示している。コンクリート試験体No.16、No.17は、上記コンクリート試験体No.1〜No.15と同一の鋼繊維6の混入率とし、また、スランプフロー値も同程度となるように作製した。
【0047】
なお、有機繊維4の混入率を0.3体積%以上にすると流動性が低下してコンクリート試験体の作製が困難になるので、有機繊維4の混入率をそれぞれ0.1体積%、0.2体積%とした。
【0048】
図3に示すように、コンクリート試験体No.16、No.17は、アスペクト比570の有機繊維4と、普通ポルトランドセメントと、鋼繊維6と、細骨材2と、粗骨材7と、水と、混和材・混和剤5の、例えば、フライアッシュとを所定の割合で混合したものであり、高流動性のコンクリート試験体である。
【0049】
なお、コンクリート試験体No.17の各材料の配合割合は、コンクリート試験体No.14とほぼ同一とした。これはコンクリート試験体No.14の耐火試験の結果から得られた爆裂を抑制する効果の再現性を確認するために、再度、同一の配合割合で耐火試験を行った。
【0050】
図37及び図38は、耐火試験後の各コンクリート試験体の加熱面の状態を示す図であり、図39及び図40は、各コンクリート試験体の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
図37、図39に示すように、コンクリート試験体No.16は、表層部でわずかに爆裂が生じ、損傷が加熱面に局部的に見られた。具体的には、爆裂面積率が11.7%、平均爆裂深さが0.7mm、最大爆裂深さが7.0mmであった。
【0051】
一方、図38、図40に示すように、コンクリート試験体No.17は、爆裂はほとんど生じなかったが、加熱面への損傷がわずかに見られた。具体的には、爆裂面積率が2.2%、平均爆裂深さが0.0mm、最大爆裂深さが2.0mmであった。
【0052】
これらの結果より、コンクリート試験体No.17の爆裂面積率、平均爆裂深さ及び最大爆裂深さは、コンクリート試験体No.16のそれよりも小さい。したがって、有機繊維4を0.2体積%配合した方が爆裂を抑制できることがわかる。
【0053】
また、コンクリート試験体No.17の爆裂面積率、平均爆裂深さ及び最大爆裂深さは、コンクリート試験体No.14の爆裂面積率、平均爆裂深さ及び最大爆裂深さとほぼ同程度であり、爆裂を抑制する効果を再現することができた。
【0054】
次に、第2の試験では、コンクリート試験体の両側面に圧縮応力を導入して、耐火試験を行った。
具体的には、有機繊維4の混入率が0.165体積%のコンクリート試験体No.18を作製して耐火試験を行った。コンクリート試験体No.18を構成する材料及びそれらの配合条件を図41の上部に示している。コンクリート試験体No.18は、上記コンクリート試験体No.1〜No.17と同一の鋼繊維6の混入率とし、また、スランプフロー値も同程度(No.1、No.4、No.7及びNo.11を除く)となるように作製した。
【0055】
なお、詳細は後述するが、本試験ではコンクリート試験体の大きさ及び圧縮応力の作用の有無についての試験条件が上述したコンクリート試験体No.1〜No.17と異なるため、本試験の試験条件、配合条件等の一覧を新たに図41に示している。
図41に示すように、コンクリート試験体No.18は、アスペクト比570の有機繊維4と、普通ポルトランドセメントと、鋼繊維6と、細骨材2と、粗骨材7と、水と、混和材・混和剤5の、例えば、高炉スラグとを所定の割合で混合したものであり、高流動性のコンクリート試験体である。
【0056】
また、コンクリート試験体No.18は、横×高さ×奥行の長さがそれぞれ1700mm×500mm×1900mmの板状の試験体とした。
耐火試験は、コンクリート試験体No.18に、奥行方向の両側面に14.4N/mm2の圧縮応力を作用させた状態で行った。
【0057】
図42は、耐火試験後のコンクリート試験体No.18の加熱面の状態を示す図であり、図43は、コンクリート試験体No.18の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
図42、図43に示すように、コンクリート試験体No.18は、表層部でわずかに爆裂が生じ、損傷が加熱面に部分的に見られた。具体的には、爆裂面積率が33.7%、平均爆裂深さが1.1mm、最大爆裂深さが16.0mmであった。
【0058】
この結果より、コンクリート試験体No.18の爆裂面積率、平均爆裂深さ及び最大爆裂深さは、コンクリート試験体No.16、No.17のそれよりも大きいものの、第2の試験は、圧縮応力導入下で試験を行った事を考慮すると、爆裂を抑制できていることがわかる。
【0059】
上述した第1及び第2の試験結果より、コンクリート試験体は、有機繊維4を0.1体積%〜0.2体積%含むことにより、爆裂を効果的に抑制できることがわかる。しかし、耐火性コンクリート1は、例えば、トンネル内のセグメントとして圧縮応力が作用するような現場で利用されるため、第2の試験結果より、安全を考慮して有機繊維を0.1体積%よりも多く含むことが望ましい。そこで、耐火性コンクリート1に用いる有機繊維4の混合率の下限を0.165体積%とすることにより、爆裂を効果的に抑制することができると考えられる。
【0060】
なお、上述した2種類の耐火試験とは別に、有機繊維4の混入率が0.4体積%のコンクリート試験体を作製して耐火試験を行った結果、第2の試験結果と同様に良好な結果が得られた。したがって、耐火性コンクリート1に用いる有機繊維4の混合率を0.165体積%以上とすることにより、爆裂を効果的に抑制できることが更に確認できた。
【0061】
次に、コンクリート試験体の損傷が最も抑制される有機繊維4のアスペクト比が570で、かつ、その配合割合が0.2体積%の場合において、混和材・混和剤5の種類の違いによる耐火性能について検討した結果を示す。
具体的には、混和材・混和剤5としてそれぞれフライアッシュ、増粘剤、高炉スラグを含むコンクリート試験体No.19、No.20、No.21を作製して耐火試験を行った。なお、上述したコンクリート試験体No.13の耐火試験の結果(図19及び図34参照)より、本耐火性能試験から混和材・混和剤5である石灰石微粉末を除外した。
【0062】
コンクリート試験体No.19、No.20、No.21を構成する材料及びそれらの配合条件を図41に示している。
図41に示すように、コンクリート試験体No.19〜No.21及びコンクリート試験体No.22(後述する)は、コンクリート試験体No.18と同様に、横×高さ×奥行の長さがそれぞれ1700mm×500mm×1900mmの板状の試験体とした。
【0063】
また、耐火試験も、コンクリート試験体No.18と同様に、各コンクリート試験体No.19〜No.22に、奥行方向の両側面に14.4N/mm2の圧縮応力を作用させた状態で行った。
【0064】
また、コンクリート試験体No.19、No.20、No.21は、上記コンクリート試験体No.1〜No.17と同一の鋼繊維6の混入率とし、また、スランプフロー値も同程度(No.1、No.4、No.7及びNo.11を除く)となるように作製した。
【0065】
具体的には、コンクリート試験体No.19は、混和材・混和剤5のフライアッシュと、有機繊維4と、普通ポルトランドセメントと、鋼繊維6と、細骨材2と、粗骨材7と、水とを混合したコンクリート試験体である。また、コンクリート試験体No.20は、混和材・混和剤5の増粘剤と、有機繊維4と、普通ポルトランドセメントと、鋼繊維6と、細骨材2と、粗骨材7と、水とを混合したコンクリート試験体である。そして、コンクリート試験体No.21は、混和材・混和剤5の高炉スラグを含む高炉セメント(この高炉セメントの比表面積は3400cm2/gである。また、高炉セメントに含まれる高炉スラグは、結合材中に58重量%の割合で含まれている。)と、有機繊維4と、鋼繊維6と、細骨材2と、粗骨材7と、水とを混合したコンクリート試験体である。
【0066】
図44〜図46は、耐火試験後の各コンクリート試験体の加熱面の状態を示す図であり、図47〜図49は、各コンクリート試験体の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
【0067】
図44、図47に示すように、コンクリート試験体No.19は、表層部で爆裂が生じ、損傷が加熱面に広い範囲で見られた。具体的には、爆裂面積率が47.4%、平均爆裂深さが1.8mm、最大爆裂深さが14.0mmであった。
【0068】
図45、図48に示すように、コンクリート試験体No.20は、表層部で爆裂が生じ、損傷が加熱面に部分的に見られた。具体的には、爆裂面積率が32.9%、平均爆裂深さが0.8mm、最大爆裂深さが8.0mmであった。
【0069】
一方、図46、図49に示すように、コンクリート試験体No.21は、ほとんど爆裂は生じず、加熱面への損傷も全くなかった。具体的には、爆裂面積率が6.4%、平均爆裂深さが0.1mm、最大爆裂深さが3.0mmであった。
【0070】
これらの結果より、コンクリート試験体No.21の爆裂面積率、平均爆裂深さ及び最大爆裂深さは、コンクリート試験体No.19及びNo.20のそれよりも小さい。したがって、混和材・混和剤5としてフライアッシュや増粘剤よりも高炉スラグを添加した方が爆裂を抑制できることがわかる。
【0071】
次に、コンクリート試験体No.21の耐火試験の結果得られた爆裂を抑制する高炉スラグの効果を確認するために、高炉スラグの置換割合を変えて耐火試験を行った。その結果を以下に示す。
具体的には、比表面積が3400cm2/gの高炉スラグを結合材中に50重量%の割合で配合したコンクリート試験体No.22を作製して耐火試験を行った。コンクリート試験体No.22を構成する材料及びそれらの配合割合を図41の下部に示している。
【0072】
図50は、耐火試験後のコンクリート試験体No.22の加熱面の状態を示す図であり、図51は、コンクリート試験体No.22の加熱面における損傷の分布状態を示すコンター図である。
図50及び図51に示すように、コンクリート試験体No.22は、ほとんど爆裂は生じず、加熱面への損傷も小さかった。具体的には、爆裂面積率が20.9%、平均爆裂深さが0.3mm、最大爆裂深さが5.0mmであった。
【0073】
この結果より、コンクリート試験体No.22の爆裂面積率、平均爆裂深さ及び最大爆裂深さは、コンクリート試験体No.21のそれらほぼ同程度であり、爆裂を抑制する効果を確認することができた。
【0074】
上述したように、本耐火試験により、アスペクト比が410以上700以下の有機繊維4を用いた場合に爆裂が生じにくく、表層部の損傷が少なくなることがわかる。また、有機繊維4を0.165体積%以上の割合で配合した場合は、より効果的に爆裂を抑制することができることがわかる。さらに、混和材・混和剤5として結合材のうち高炉スラグを50重量%以上60重量%以下の割合で置換し、その高炉スラグの比表面積が4000cm2/g以下の場合は、爆裂の抑制効果が高くなる。
【0075】
以上説明した本実施形態における耐火性コンクリート1によれば、所定の温度で気化するとともに、アスペクト比が410以上700以下の有機繊維4であるポリプロピレン繊維を含むので、耐火性コンクリート1が火災等で加熱されて高温になると有機繊維4が気化して微細な多数の空洞をつくるとともに、有機繊維4の気体が膨張することにより空洞間にひびが入り、空洞同士が連通して、耐火性コンクリート1内に空洞と外部とを連通する通気路が生じる。この通気路は、耐火性コンクリート1内の水蒸気を外部に排出するとともに、耐火性コンクリート1の表層部の熱膨張力を緩和する役割を果たし、その表層部の剥離を防止する。
【0076】
また、有機繊維4の配合量を0.165体積%以上にすることで、耐火性コンクリート1打設の良好な施工性を得ることができるとともに、連通した通気路をつくるために必要な繊維の本数を確保することができる。
【0077】
さらに、高炉スラグを50重量%以上60重量%以下含むこと及びその高炉スラグの比表面積を4000cm2/g以下にすることで、耐火性コンクリート1の表層部の爆裂を抑制し、剥離を抑制することができる。
【0078】
また、コンクリートを高流動状態にしても、有機繊維4を均一に配合することができる。また、有機繊維4を均一に配合した状態で、耐火性コンクリート1の流動性を高めることができるので、ワーカビリィティが良好になり、充填作業を効率的に実施することができる。
【0079】
有機繊維4、高炉スラグは市販されているので、入手性が良い。また、これらは安価なので耐火性コンクリート1を経済的に製作することができる。
【0080】
さらに、鋼繊維6を0.6体積%含むことにより、耐火性コンクリート1の靭性を大きくすることができる。
【0081】
なお、本実施形態においては、加熱方法として、一般的に行われているRABT曲線に基づく加熱方法を採用したが、これに限定されるものではなく、現場条件等に応じて他の加熱方法を採用しても良い。
【符号の説明】
【0082】
1 耐火性コンクリート
2 細骨材
4 有機繊維
5 混和材・混和剤
6 鋼繊維
7 粗骨材
8 耐火炉
9 セメント
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造体に用いられる耐火性コンクリートであって、
所定の温度で気化する性質を有するとともに、紐状で、長さと太さの比であるアスペクト比が410以上700以下の有機繊維と、
結合材のうち50重量%以上60重量%以下の割合で含まれる高炉スラグと、
靭性を向上させるための鋼繊維とを含むことを特徴とする耐火性コンクリート。
【請求項2】
前記有機繊維のアスペクト比は、500以上700以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐火性コンクリート。
【請求項3】
前記有機繊維の配合割合は、0.165体積%以上であることを特徴とする請求項1に記載の耐火性コンクリート。
【請求項4】
前記高炉スラグの比表面積は、4000cm2/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐火性コンクリート。
【請求項1】
コンクリート構造体に用いられる耐火性コンクリートであって、
所定の温度で気化する性質を有するとともに、紐状で、長さと太さの比であるアスペクト比が410以上700以下の有機繊維と、
結合材のうち50重量%以上60重量%以下の割合で含まれる高炉スラグと、
靭性を向上させるための鋼繊維とを含むことを特徴とする耐火性コンクリート。
【請求項2】
前記有機繊維のアスペクト比は、500以上700以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐火性コンクリート。
【請求項3】
前記有機繊維の配合割合は、0.165体積%以上であることを特徴とする請求項1に記載の耐火性コンクリート。
【請求項4】
前記高炉スラグの比表面積は、4000cm2/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐火性コンクリート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図41】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図41】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
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【図37】
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【図39】
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【図42】
【図43】
【図44】
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【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【公開番号】特開2010−120839(P2010−120839A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178278(P2009−178278)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【Fターム(参考)】
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