説明

耐火性複合材料を製造する方法

本発明は実質的に細孔を含まない耐火性複合材料を製造することに関し、それは増大した寸法安定性、耐摩耗性、高比物理機械的性質及び硬度を持つ複合物品の製造に、要素内の耐摩耗性挿入体の製造に及びなお摩耗技術目的のための材料に使用されることができる。耐火性複合材料を製造するための本発明の方法は多孔性炭化物加工物の金属による浸透により中間体の調製をもたらす段階を含み、それは別の金属の溶融体中で中間体の金属相の融点を越える温度で追加的に処理され、中間体内の金属の溶融体からの金属による置換をもたらす。本発明は複合材料の組成中に導入されることができる一連の金属を拡張し、従ってこの形式の複合材料の応用領域を拡張する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は実質的に細孔を含まない耐火性複合材料を製造することに関し、それは増大した寸法安定性、耐摩耗性、高い比物理機械的性質及び硬度を持つ複合物品の製造に、要素内の耐摩耗性挿入体の製造に及びなお摩耗技術目的のための材料に使用されることができる。
【背景技術】
【0002】
耐火性材料の製造方法は既知であり[1]、それは次の段階:微粉砕耐火性ホウ化物及び/または炭化物の炭素含有物質との混合;この混合物から予め決められた形状の物品の成形;炭素含有物質から炭素を抽出するための調製された加工物の加熱;Si,Cr,Fe,Ni,Tiを含む群から選ばれた少なくとも一つの金属の75−99容量%とAl,Cu,Feの群からの金属または金属混合物の1−25容量%と当初の耐火性材料中に含まれた金属の0−24容量%とを含む溶融金属混合物の加工物中への導入;からなる。この既知の方法は、成形物、混合物成分及び加工物の浸透のために用いられる溶融物の正確な添加のためにかつ高温度の保持のために複雑な装置が必要であるので、実現を極めて複雑にする。焼結時の顕著な収縮のために加工物中に独立細孔が形成され、従って続いての多孔性加工物中への金属浸透の低下をもたらす。
【0003】
予め決められた形状の耐火性炭化物系複合物品の製造のための別の方法がまた既知である[2]。この方法によれば、微粉砕炭化物形成金属から多孔度20−60容量%を持つ多孔性加工物が成形され、次いでそれは加工物質量の少なくとも3%の増加があるまでそれらの分解温度を越える温度でガス状炭化水素または炭化水素の混合物の媒質中で熱処理され、その後調製された中間体が次の金属群:Ag,Au,Cu,Ga,Ti,Ni,Fe,Coの金属の群からの金属の溶融体、またはこの群からの金属に基づく合金の溶融体により浸透される。
【0004】
炭化物形成金属として周期表のIV,VまたはVI族からの少なくとも一つの金属、例えばTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wが使用される一方、熱処理はアセチレン、メタン、エタン、プロパン、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン及びそれらの誘導体を含む群からの少なくとも一つの炭化水素の媒質内で実行される。熱処理のための炭化水素混合物として例えば温度750−950℃の天然ガスが使用される。
【0005】
既知の方法により調製された製品の性質の範囲はそれらを耐火性エンジニアリング材料、プラズマトロンのための耐浸蝕性電極、高電流耐浸蝕性電気接点、消弧素子、高温蓄熱器、融蝕熱保護材料、制動耐火性材料として適用可能とする。
【0006】
しかし、既知の方法は物理的性質のために複合体中に導入されることができる一群の金属に限定され、一連の場合においてそれらの組成物中に金属を持つ複合材料を調製して使用する必要があり、これらの性質が既知の方法を使用不可能とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は複合体の金属相として使用することができる金属の範囲の拡張を提供する高効率法を開発すること;高物理機械的特性、高硬度及び耐摩耗性並びに高温での加工性を持つ複合材料を調製し、上述の性質を複合材料及びその金属相の両者の組成物中の成分の比を変えることにより変更可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の本質は、多孔性炭化物加工物の金属による浸透段階、中間体の金属の融点を越える温度での別の金属の溶融体中での追加的加熱処理段階からなる方法である。
【0009】
特に、多孔性炭化物加工物として炭化物粉末(例えばTiC,BC等)の成形及びそれの続いての焼結により調製された加工物を使用することができる。別の変更例は炭化物形成元素またはそれらの炭化物粉末との混合物からの粉末から形成されそれの続いての炭化水素の媒質中でのそれらの分解温度を越える温度での処理及びそれに続く1200−1800℃の温度での処理により形成された多孔性加工物である。加工物の容積多孔度は均一、すなわち加工物の異なる部分の多孔度が等しいか、または不均一、すなわち加工物の異なる部分の多孔度が例えばもし一つまたは幾つかの方向に多孔度勾配があるなら等しくないかのいずれかであることができる。
【0010】
この方法の前駆体として述べた形式の多孔性炭化物加工物が使用されることができるのみならず、他の方法により調製された加工物もまた使用されることができる。多孔性炭化物加工物のための条件はその多孔度が30−60容量%の範囲内にあることである。この場合、細孔の主要部は連続細孔であるべきである。この範囲を越えた多孔度の加工物の使用は得策ではない。なぜなら(高多孔度で)複合材料の性質の低下をもたらしまたは(低多孔度で)中間体の製造工程を複雑化するからである。
【0011】
多孔性加工物は金属またはその合金の溶融体により浸透され中間体の調製をもたらす。浸透は不活性媒質中で加工物の溶融体中での浸漬によりまたは加工物の表面上での金属または合金の計量された試料の溶融により実行される。
【0012】
更に、調製された中間体は別の金属の溶融体中で追加処理され、その温度は中間体の金属相の融点より高い。かかる金属の使用は、それらが材料の炭化物相と強く(化学的に)相互作用せず(従って、炭化物骨格は製造工程中保たれ、従って調製された材料の強度が保たれ)、また溶融体中の中間体の金属と共通液相を形成することができるので、好ましい。
【0013】
一連の場合の工程の加速のために、溶融体中での処理前に、中間体は中間体の金属相の融点を越える温度まで加熱される。
【0014】
クレームされた方法により調製された複合材料は耐火性炭化物相の連続三次元骨格と金属相により充填された細孔により形成された二相系を示す。この場合、金属相は金属の混合物、すなわち当初のそれと溶融体からの金属の混合物である。溶融体の処理条件(溶融体の温度、処理時間、溶融体の流動性等)に依存して、溶融体からの金属は複合材料の容積全体にわたって均一にまたは不均一にのいずれかで分布される。
【0015】
本発明の本質は炭化物骨格と金属を含む中間体が別の金属の溶融体中で中間体の金属の融点を越える温度で処理されることにある。この場合、炭化物骨格の細孔中の金属は液体状態にある。別の金属の溶融体との相互反応時に中間体からの金属の溶融体中への及び逆方向−溶融体から中間体中への相互拡散工程が起こる。これは中間体の組成物中の金属の溶融体からの金属による置換をもたらし、新しい金属による置換度は複合材料の金属相の80容量%以上に達するかもしれない。本発明において溶融体の処理温度で溶融体からの金属が炭化物骨格に浸透するかどうかは決定的な重要事項ではないことは注目されるべきである。中間体が浸透された金属は既製の材料の炭化物と金属相の界面での信頼性ある粘着結合を提供する。
【0016】
複合材料容積中の溶融体からの金属の不均一分布の場合、例えばもし表面上に置換金属があり、かつ複合材料の内側に存在しないなら、これは組成による勾配を持つ物品の製造の可能性を提供する。後者は独特の性質を複合した物品、例えば全体として複合体の高強度と剛性及び別の金属により富化された近表面領域による耐摩擦性を持つ物品を提供する。
【0017】
耐火性複合材料を製造するための条件は各場合で異なり、次の選択に依存する:
− 当初の多孔性加工物、
− 多孔性加工物の浸透のため及び中間体の製造のための金属または合金、
− 中間体の処理のための溶融体の金属、
− 物品の応用。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の本質は以下の実施例に開示されている。
【0019】
実施例1
当初の多孔性加工物は寸法φ20×5mmの円盤として形状付与されている。加工物の調製方法は以下のとおりである。一時的結合剤(フェノールホルムアルデヒド樹脂SF10−A−2重量%)の添加を有する非晶質ホウ素(69重量%)と炭化ホウ素(29重量%)の粉末の混合物が成形され、寸法φ20×5mmの円盤を形成する。更にそれらは熱分解炭素合成のため等温反応器内に置かれ、質量が19%増加するまで天然ガスの媒質内で870℃の温度で加熱処理される。処理された円盤は減圧炉内に置かれ、1620℃の温度まで加熱され、この温度でそこに20分間保持される。調製された加工物は50容量%の多孔度を持ち、それは容積全体にわたって均等に分布されている。加工物は減圧炉内で1200−1250℃の温度で加工物の表面上で技術純度マークA7(Al≧99.7%)のアルミニウムの計量された試料の溶融により浸透される。更に中間体BC/Alは700℃まで加熱され、750℃まで加熱されたZn溶融体内に浸漬され、2時間の間そこに保持される。結果として、50容量%の炭化ホウ素と50容量%の合金(Al−Zn)を含む試料が製造される。金属相は54容量%のアルミニウムと46容量%の亜鉛を含む。この材料は次の性質:密度−3.57g/cm;硬度−HRA57;を持つ。
【0020】
実施例2
当初の多孔性加工物は寸法φ20×5mmの円盤として形状付与されている。加工物の調製方法は次のとおりである。一時的結合剤(フェノールホルムアルデヒド樹脂SF10−A−2重量%)の添加を有するチタン(49重量%)と炭化チタン(49重量%)の粉末の混合物が成形され、寸法φ20×5mmの円盤を形成する。更にそれらは熱分解炭素合成のため等温反応器内に置かれ、質量が12.5%増加するまで天然ガスの媒質内で870℃の温度で加熱処理される。処理された円盤は減圧炉内に置かれ、1700℃の温度まで加熱され、この温度でそこに20分間保持される。調製された加工物は40容量%の多孔度を持ち、それは容積全体にわたって均等に分布されている。加工物は減圧炉内で1150−1200℃の温度で加工物の表面上で技術純度マークA7(Al≧99.7%)のアルミニウムの計量された試料の溶融により浸透される。更に中間体TiC/Alは700℃まで加熱され、750℃まで加熱されたMg溶融体内に浸漬され、4時間の間そこに保持される。結果として、60容量%の炭化チタンと40容量%の合金(Mg−Al)を含む試料が製造される。金属相は78容量%のマグネシウムと22容量%のアルミニウムを含む。この材料は次の性質:密度−3.63g/cm;曲げ強さ−425MPa;を持つ。
【0021】
材料の性質は以下に掲げる方法を用いて決定された。
1.密度は静水圧法により決定された。
2.硬度はロックウェル法により決定された。
3.曲げ強さは三点曲げ法により決定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性炭化物加工物の金属による浸透により中間体の調製をもたらす段階を含む耐火性複合材料を製造する方法において、中間体が別の金属の溶融体中で中間体の金属相の融点を越える温度で追加的に処理されることを特徴とする方法。
【請求項2】
中間体が溶融体中で溶融体からの金属が耐火性複合材料内に均一に分布されるように処理されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
中間体が溶融体中で溶融体からの金属が耐火性複合材料内に不均一に分布されるように処理されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記多孔性炭化物加工物として炭化物粉末からプレスしかつ焼結することにより調製された加工物が使用されることを特徴とする請求項1−3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
多孔性炭化物加工物が炭化物形成元素またはそれらの混合物の粉末のプレスにより、更に続いての炭化水素の媒質中でのそれらの分解温度を越える温度での処理及び1200−1800℃の温度での熱処理により製造されることを特徴とする請求項1−3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
多孔性加工物が30−60容量%の多孔度を持って使用されることを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
多孔性加工物が容積中に均一に分布された多孔度を持って使用されることを特徴とする請求項1−6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
多孔性炭化物加工物が容積中に不均一に分布された多孔度を持って使用されることを特徴とする請求項1−6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記多孔性炭化物加工物が金属の溶融体中に浸漬することによりまたはその表面上での金属の計量された試料の溶融により浸透されることを特徴とする請求項1−8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
処理前に中間体が中間体の金属相の融点を越える温度まで加熱されることを特徴とする請求項1−9のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2006−508009(P2006−508009A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554258(P2004−554258)
【出願日】平成14年11月27日(2002.11.27)
【国際出願番号】PCT/EP2002/013364
【国際公開番号】WO2004/048294
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(505187231)エフオーシー ホールディング エスタブリッシュメント (1)
【Fターム(参考)】