説明

耐熱性の高屈折率樹脂組成物

【課題】無機酸化物微粒子や重原子を使用しなくとも屈折率の良好な樹脂を与え得る重合性単量体、これを用いて得られる耐熱性の高屈折率樹脂組成物を提供する。
【解決手段】式(1)で表されることを特徴とする1,3,5−トリアジン環を有する重合性単量体。


[式(1)中、A〜Aの1つ又は2つは基−N(R)CH−CH=CH又は基−O−CH−CH=CHであり、その残りは、基−N(R)(R)又は特定の窒素含有複素環式基である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,3,5−トリアジン環を有する重合性単量体およびこれを用いて得られる耐熱性に優れた高屈折率樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル系樹脂や、透明エポキシ樹脂、透明シリコーン樹脂などの透明性樹脂は、ガラスに比較して軽量で、かつ、加工性に優れ、航空機等の風防樹脂、透明容器、透明コーティング剤等に広く用いられるようになってきた。
また、近年では、眼鏡等の光学部品の分野でも透明樹脂レンズ等の樹脂製品が多用されつつある。
さらに、電子材料の分野でも、液晶ディスプレイの反射防止コーティング剤、太陽電池用透明コーティング剤、発光ダイオード、CCDやCMOSセンサーの受光部等の光学電子材料の用途に上述の透明性樹脂が多用されつつある。このような光学電子材料の用途では、透明性ばかりでなく、光取り出し効率の向上や集光性の向上のために高い屈折率も要求される場合が多い。
【0003】
しかし、従来の透明樹脂では、架橋等の手法によって、機械的物性を制御することはある程度可能であるものの、光学特性、特に屈折率に関しては、それを高めるために特殊な技術を必要としていた。
例えば、特許文献1および2では、臭素や硫黄等の重原子を有機樹脂に多量に結合させてその屈折率を向上させる手法が提案されている。
また、特許文献3および4では、高屈折率の無機酸化物微粒子を有機樹脂に分散してその屈折率を向上させる手法が提案されている。
【0004】
上記特許文献1および2の手法では、一般に、得られた有機樹脂が熱や光に対して不安定であるため、長期使用時に変色等の劣化を起こし易いという問題があるうえに、当該樹脂を電子材料部品用途に使用する場合は、電極の腐食等が懸念される。
一方、特許文献3および4の手法でも、得られた微粒子分散樹脂の長期保存安定性などに問題があり、また、無機酸化物微粒子の樹脂中での分散安定性を改善するために多量の分散安定剤を必要とするため、屈折率と分散安定性のバランスをとるのが困難になるなどの課題があった。
なお、高屈折率ではないが、重合性トリアジン系を用いた樹脂組成物も知られている(特許文献5,6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−164901号公報
【特許文献2】特開2005−350531号公報
【特許文献3】特開2007−270099号公報
【特許文献4】特開2007−308631号公報
【特許文献5】特開平07−157474号公報
【特許文献6】特開平07−206832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、無機酸化物微粒子や重原子を使用しなくとも屈折率の良好な樹脂を与え得る重合性単量体およびこれを用いて得られる耐熱性の高屈折率樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、所定の1,3,5−トリアジン環を有する重合性単量体が、高耐熱性かつ高屈折率の樹脂を与え得ることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
1. 式(1)で表されることを特徴とする1,3,5−トリアジン環を有する重合性単量体、
【化1】

〔式(1)中、A1、A2およびA3のうちの1つまたは2つは、式(2)または式(3)
【化2】

(式(2)中、R1は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数2〜10のアルケニル基を表す。)で表される基であり、A1、A2およびA3のうちの残りは、式(4)または式(5)
【化3】

(式(4)中、R2およびR3は、それぞれ独立してフェニル基またはナフチル基を表す。)で表される基である。〕
2. 1の重合性単量体70〜100質量部と、これと重合可能な他の単量体0〜30質量部とを重合して得られることを特徴とする高屈折率樹脂組成物、
3. 前記他の単量体が、ビニル系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体、アリル系単量体、およびマレイン酸系単量体から選ばれる少なくとも1種である2の高屈折率樹脂組成物
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の重合性単量体を用いることで、炭素、水素、窒素、酸素の有機樹脂の基本4元素にて構成され、測定波長656nmにおける屈折率が1.60以上という高屈折率、および空気中での5%重量減少温度が290℃以上という高耐熱性を同時に発現し、かつ、架橋高分子を生成し易いため良好な耐溶剤性を発揮する樹脂組成物が得られる。
この樹脂組成物は、高い屈折率と良好な耐熱性、耐溶剤性等の優れた特性を備えた状態で、薄膜、フィルムまたはシート化することができ、光学材料および電子材料の分野、特に反射防止膜およびフィルム、太陽電池の集光コーティング剤、レンチキュラーレンズなどの導光材や導波路等のコーティング剤、発熱し易い発光ダイオードの封止剤、CCDやCMOSセンサーあるいはフォトカプラー等の受光素子の光取り出し向上剤および集光剤などとして極めて有用である。
また、これらの光学電子材料分野ばかりでなく、ガラスの高屈折率薄膜形成材料やプラスチックレンズ等の工業材料分野にも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】製造例1〜8および比較製造例1で使用した重合装置を示す概略断面図である。
【図2】製造例9で使用した成形型を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る1,3,5−トリアジン環を有する重合性単量体は、下記式(1)で表されるものである。
【0012】
【化4】

【0013】
ここで、A1、A2およびA3のうちの1つまたは2つは、下記式(2)または式(3)で表される基である。
【0014】
【化5】

【0015】
上記R1は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数2〜10のアルケニル基を表す。これらアルキル基およびアルケニル基は、鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
炭素数1〜10のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、1−メチル−シクロプロピル、2−メチル−シクロプロピル、n−ペンチル、1−メチル−n−ブチル、2−メチル−n−ブチル、3−メチル−n−ブチル、1,1−ジメチル−n−プロピル、1,2−ジメチル−n−プロピル、2,2−ジメチル−n−プロピル、1−エチル−n−プロピル、シクロペンチル、1−メチル−シクロブチル、2−メチル−シクロブチル、3−メチル−シクロブチル、1,2−ジメチル−シクロプロピル、2,3−ジメチル−シクロプロピル、1−エチル−シクロプロピル、2−エチル−シクロプロピル、n−ヘキシル、1−メチル−n−ペンチル、2−メチル−n−ペンチル、3−メチル−n−ペンチル、4−メチル−n−ペンチル、1,1−ジメチル−n−ブチル、1,2−ジメチル−n−ブチル、1,3−ジメチル−n−ブチル、2,2−ジメチル−n−ブチル、2,3−ジメチル−n−ブチル、3,3−ジメチル−n−ブチル、1−エチル−n−ブチル、2−エチル−n−ブチル、1,1,2−トリメチル−n−プロピル、1,2,2−トリメチル−n−プロピル、1−エチル−1−メチル−n−プロピル、1−エチル−2−メチル−n−プロピル、シクロヘキシル、1−メチル−シクロペンチル、2−メチル−シクロペンチル、3−メチル−シクロペンチル、1−エチル−シクロブチル、2−エチル−シクロブチル、3−エチル−シクロブチル、1,2−ジメチル−シクロブチル、1,3−ジメチル−シクロブチル、2,2−ジメチル−シクロブチル、2,3−ジメチル−シクロブチル、2,4−ジメチル−シクロブチル、3,3−ジメチル−シクロブチル、1−n−プロピル−シクロプロピル、2−n−プロピル−シクロプロピル、1−i−プロピル−シクロプロピル、2−i−プロピル−シクロプロピル、1,2,2−トリメチル−シクロプロピル、1,2,3−トリメチル−シクロプロピル、2,2,3−トリメチル−シクロプロピル、1−エチル−2−メチル−シクロプロピル、2−エチル−1−メチル−シクロプロピル、2−エチル−2−メチル−シクロプロピル、2−エチル−3−メチル−シクロプロピル基等が挙げられる。
【0016】
炭素数2〜10のアルケニル基の具体例としては、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−メチル−1−エテニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、1−エチルエテニル、1−メチル−1−プロペニル、1−メチル−2−プロペニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−n−プロピルエテニル、1−メチル−1−ブテニル、1−メチル−2−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、2−エチル−2−プロペニル、2−メチル−1−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、2−メチル−3−ブテニル、3−メチル−1−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、3−メチル−3−ブテニル、1,1−ジメチル−2−プロペニル、1−i−プロピルエテニル、1,2−ジメチル−1−プロペニル、1,2−ジメチル−2−プロペニル、1−シクロペンテニル、2−シクロペンテニル、3−シクロペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル、1−メチル−1−ペンテニル、1−メチル−2−ペンテニル、1−メチル−3−ペンテニル、1−メチル−4−ペンテニル、1−n−ブチルエテニル、2−メチル−1−ペンテニル、2−メチル−2−ペンテニル、2−メチル−3−ペンテニル、2−メチル−4−ペンテニル、2−n−プロピル−2−プロペニル、3−メチル−1−ペンテニル、3−メチル−2−ペンテニル、3−メチル−3−ペンテニル、3−メチル−4−ペンテニル、3−エチル−3−ブテニル、4−メチル−1−ペンテニル、4−メチル−2−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、4−メチル−4−ペンテニル、1,1−ジメチル−2−ブテニル、1,1−ジメチル−3−ブテニル、1,2−ジメチル−1−ブテニル、1,2−ジメチル−2−ブテニル、1,2−ジメチル−3−ブテニル、1−メチル−2−エチル−2−プロペニル、1−s−ブチルエテニル、1,3−ジメチル−1−ブテニル、1,3−ジメチル−2−ブテニル、1,3−ジメチル−3−ブテニル、1−i−ブチルエテニル、2,2−ジメチル−3−ブテニル、2,3−ジメチル−1−ブテニル、2,3−ジメチル−2−ブテニル、2,3−ジメチル−3−ブテニル、2−i−プロピル−2−プロペニル、3,3−ジメチル−1−ブテニル、1−エチル−1−ブテニル、1−エチル−2−ブテニル、1−エチル−3−ブテニル、1−n−プロピル−1−プロペニル、1−n−プロピル−2−プロペニル、2−エチル−1−ブテニル、2−エチル−2−ブテニル、2−エチル−3−ブテニル、1,1,2−トリメチル−2−プロペニル、1−t−ブチルエテニル、1−メチル−1−エチル−2−プロペニル、1−エチル−2−メチル−1−プロペニル、1−エチル−2−メチル−2−プロペニル、1−i−プロピル−1−プロペニル、1−i−プロピル−2−プロペニル、1−メチル−2−シクロペンテニル、1−メチル−3−シクロペンテニル、2−メチル−1−シクロペンテニル、2−メチル−2−シクロペンテニル、2−メチル−3−シクロペンテニル、2−メチル−4−シクロペンテニル、2−メチル−5−シクロペンテニル、2−メチレン−シクロペンチル、3−メチル−1−シクロペンテニル、3−メチル−2−シクロペンテニル、3−メチル−3−シクロペンテニル、3−メチル−4−シクロペンテニル、3−メチル−5−シクロペンテニル、3−メチレン−シクロペンチル、1−シクロヘキセニル、2−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0017】
また、A1、A2およびA3のうちの残りは、下記式(4)または式(5)で表される基である。
【化6】

(式(4)中、R2およびR3は、それぞれ独立してフェニル基またはナフチル基を表す。)
【0018】
上記式(1)で示される重合性単量体において、式(4)または式(5)で表される置換基ではなく、例えばアルコキシ基で置換した単量体では、重合性は発現するが、得られる樹脂の屈折率は高くならない。
また、アントラセンアミノ基やアントラセンオキシ基のような大きな共役系官能基で置換した重合体では、得られる樹脂自体の光透過性が極端に低下してしまう。
さらに、式(4)において、R2およびR3の少なくとも一方が水素原子であると、その理由は必ずしも明らかではないが、得られた樹脂が酸素や熱などの影響で着色し易くなる傾向がある。
以上の理由から、A1、A2およびA3のうちの残りは、上記の式(4)のジフェニルアミノ基、フェニルナフチルアミノ基、ジナフチルアミノ基、および式(5)のカルバゾリル基が好適である。
【0019】
なお、式(1)において、A1、A2およびA3の全てを式(2)または式(3)の重合性官能基にしてしまうと屈折率を改善できない。
このような重合性官能基を有するが、芳香環を全く含まない例として、上述した特許文献5,6記載の重合体が挙げられる。これら各文献では、塩化シアヌルと水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを反応させ、トリアジンに3個の(メタ)アクリル酸エステルを直結させた単量体を用いているが、この単量体は芳香環含有置換基を全く有していないため、得られる樹脂は本発明の目的とする高い屈折率を示さない。
【0020】
上述した本発明の重合性単量体は、公知の有機合成反応を用いて製造することができ、例えば、塩化シアヌル等のハロゲン化シアヌルと、A1〜A3に対応するアミンやアルコールとを適当な有機溶媒の存在下で反応させて得ることができる。
また、反応に用いる原料は、市販品として入手することが可能である。
【0021】
本発明の高屈折率樹脂組成物は、上述した式(1)の重合性単量体の単独重合体でも、これと重合可能な他の重合性単量体との共重合体でもよい。
上記他の重合性単量体としては、式(1)の単量体が有する炭素−炭素二重結合と反応して共重合体を与え得る官能基を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ビニル系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体、アリル系単量体、マレイン酸系単量体などが挙げられる。
【0022】
ビニル系単量体の具体例としては、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジビニルナフタレン等の芳香族系ビニル化合物;酢酸ビニル、バーサチック酸ビニル、アジピン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン等のビニルケトン類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類;末端にビニル基を有するポリジメチルシロキサン、末端にビニル基を有するポリジフェニルシロキサン、末端にビニル基を有するポリジメチルシロキサン−ポリジフェニルシロキサン共重合体、側鎖にビニル基を有するポリジメチルシロキサン、側鎖にビニル基を有するポリジフェニルシロキサン、側鎖にビニル基を有するポリジメチルシロキサン−ポリジフェニルシロキサン共重合体等のビニル基含有シリコーン類などが挙げられる。
【0023】
アクリル系単量体の具体例としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ステアリル等のアクリル酸およびそのエステル類;ビスフェノール系エポキシ樹脂にアクリル酸を結合させたビスフェノールエポキシアクリレート、フェノールノボラックエポキシ樹脂にアクリル酸を結合させたフェノールノボラックエポキシアクリレート、クレゾールノボラックエポキシ樹脂にアクリル酸を反応させたクレゾールノボラックエポキシアクリレート等のエポキシアクリレート類;ポリエチレンフタレートやポリブチレンフタレート等のポリエステルにアクリル酸を結合させたポリエステルアクリレート類;イソホロンジイソシアネート系ポリウレタンやヘキサメチレンジイソシアネート系ポリウレタンにアクリル酸を結合させたウレタンアクリレート類などが挙げられる。
【0024】
メタクリル系単量体の具体例としては、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ステアリル等のメタクリル酸およびそのエステル類;ビスフェノール系エポキシ樹脂にメタクリル酸を結合させたビスフェノールエポキシメタクリレート、フェノールノボラックエポキシ樹脂にメタクリル酸を結合させたフェノールノボラックエポキシメタクリレート、クレゾールノボラックエポキシ樹脂にメタクリル酸を反応させたクレゾールノボラックエポキシメタクリレート等のエポキシメタクリレート類;ポリエチレンフタレートやポリブチレンフタレート等のポリエステルにメタクリル酸を結合させたポリエステルメタクリレート類;イソホロンジイソシアネート系ポリウレタンやヘキサメチレンジイソシアネート系ポリウレタンにメタクリル酸を結合させたウレタンメタクリレート類などが挙げられる。
【0025】
アリル系単量体の具体例としては、ジアリルフタレート等の芳香族アリルエステル類;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のヘテロ環含有アリル化合物などが挙げられる。
マレイン酸系単量体の具体例としては、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸およびそのエステル類;無水マレイン酸とエチレングリコールやネオペンチルグリコール等のポリオール類とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類;無水マレイン酸とモノアミンとを反応させてできるフェニルマレイミド、シクロへキシルマレイミド等のモノマレイミド類;無水マレイン酸とジアミンとを反応させてできるジフェニルエーテルビスマレイミド等のビスマレイミド類などが挙げられる。
以上で例示した重合性単量体は、それぞれ単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよく、また、異なる系統の単量体を組み合わせて用いることもできる。
【0026】
本発明において、式(1)の重合性単量体と、他の重合性単量体とを共重合させる場合、本発明の目的とする耐熱性と高い屈折率とを同時に発現させることを考慮すると、その共重合割合は、式(1)の重合性単量体70〜100質量部に対して、他の重合性単量体30質量部以下が好ましく、式(1)の重合性単量体80〜100質量部に対して、他の重合性単量体20質量部以下がより好ましい。また、その下限は0質量部を超える量であれば、特に限定されるものではない。
【0027】
また、本発明の高屈折率樹脂組成物を製造する際における重合反応の活性種としては、特に限定されるものではないが、ラジカル重合性の重合開始剤が最適である。
このような重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤、クメンハイドロパーオキサイド/ナフテン酸コバルト等のレドックス系開始剤などの、一般的に使用されるラジカル重合開始剤であればいかなるものでもよい。
重合開始剤の使用量は、重合性単量体100質量部に対して0.1〜20質量部程度とすることができるが、0.5〜5質量部が好ましい。
【0028】
具体的な重合反応法としては、溶融した重合性単量体と重合開始剤とを混合して、型に流し込んで無溶剤重合する塊状重合法にて、フィルム、シートまたは板状の樹脂組成物を製造する方法や、適切な有機溶剤に溶解して行う溶液重合法にて、溶剤を蒸発させながら重合し、コーティング薄膜、フィルムまたはシート状の樹脂組成物を形成する方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明の樹脂組成物を製造できるものであれば、有機溶剤の種類は特に制約を受けない。
【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、各物性の測定方法および装置は以下のとおりである。
1H−NMR]
NMR装置として、BRUKER社製AC400Pを用いて測定した。測定方法としては、化合物を重水素化クロロホルムに溶解し、テトラメチルシランを内部標準物質として測定を実施した。
[赤外吸収スペクトル]
赤外吸収スペクトル(以下、IRと記す)は日本分光社製フーリエ変換型赤外分光光度計JASCO FT/IR4200を用い、臭化カリウム錠剤法にて測定した。
[熱分析]
セイコー電子工業社製の示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA320型)、およびセイコー電子工業社製の示差走査熱量計(DSC220型)を用いて測定した。
[屈折率の測定]
20mm×7mmに切断した試験片を用い、アタゴ社製の多波長アッベ屈折計(DR−4M)にて、波長589nmおよび656nmにおける屈折率を測定した。
【0030】
〈重合性単量体の合成〉
[実施例1]重合性単量体(M1)の合成
(1)中間体化合物(L1)の合成
【化7】

【0031】
撹拌機付きの三口フラスコに、塩化シアヌル55.36gおよびテトラヒドロフラン250mLを入れ、窒素雰囲気下、氷浴上で内温を0〜5℃に冷却しながら完全に溶解させた。次いでジフェニルアミン50.85gおよびトリエチルアミン30.59gをテトラヒドロフラン100mLに溶解させた溶液を側管付き滴下ロートに充填し、内容物を撹拌しつつ、反応温度を0〜5℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、0〜5℃に保ちながら2時間反応し、その後、室温にて17時間反応させた。終了後、内容物をエバポレータで濃縮し、トルエン250mLおよび純水250mLを加えて撹拌した。これを分液ロートに移して、純水500mLを加えて水洗する操作を3回繰り返し、有機層を取り出して、無水硫酸ナトリウムを加えて10分間撹拌し、乾燥した。固形物をろ別し、ろ液をエバポレータで濃縮して淡黄色の粗結晶を得た。この粗結晶をトルエンとヘキサンの混合溶媒で2回再結晶し、吸引ろ過にて回収後、80℃で12時間真空乾燥して白色結晶を得た(収率35.8%)。
この白色固体のNMRおよびIR測定結果を以下に示す。これらの結果から、得られた白色固体が、式(L1)で表される中間体化合物であることが確認された。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.40(t,4H,Ar−H),7.31(t,2H,Ar−H),7.26(d,4H,Ar−H).
IR(KBr,cm-1):ν=3055(aromatic C−H),1600(aromatic C=C),1548(triazine C=N),1496(aromatic C=C).
【0032】
(2)重合性単量体(M1)の合成
【化8】

【0033】
撹拌機付きの二口フラスコに、上記で得られた中間体化合物(L1)15.65g、およびジオキサン300mLを加えて溶解させた。ここに、アリルアミン9.72gとトリエチルアミン17.51gとをジオキサン100mLに溶解した溶液を室温でゆっくり滴下した。滴下終了後、室温で2時間反応させ、さらに80℃で2時間反応させた後、還流温度まで昇温して20時間反応させた。その後、反応生成物をエバポレータで濃縮後、クロロホルム500mLに溶解して、分液ロートに移し、純水500mLで洗浄した。その後、純水100mLで3回洗浄を繰り返し、有機層を採取して無水硫酸マグネシウムで10分間乾燥後、有機層を濃縮して粗生成物を得た。これをトルエンとヘキサンの混合溶媒にて2回再結晶し、12時間減圧乾燥して白色粉末を得た(収率44.2%)。この白色固体のNMRおよびIR測定結果を以下に示す。これらの結果から、得られた白色固体が、式(M1)で表される重合性単量体であることが確認された。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.32−7.13(m,10H、Ar−H),5.77−5.87(m,2H,−CH=),5.14−5.04(m,4H,=CH2),4.93(s,2H,N−H),3.85(d,4H,CH2
IR(KBr,cm-1):ν=3250(N−H),3098(allyl =C−H),2945(alkyl C−H),1604(aromatic C=C),1533(triazine C=N),911(allyl =C−H).
【0034】
[実施例2]重合性単量体(M2)の合成
【化9】

【0035】
撹拌機および窒素導入管を装着した三口フラスコに、水素化ナトリウム(60%)4.27gおよび適量のヘキサンを入れて数分撹拌後、静置した。注射器で上澄み液を除いた後、フラスコ内を減圧し、窒素を充填した。この窒素置換操作を3回繰り返した後、窒素雰囲気下で、実施例1で得られた重合性単量体(M1)7.18gとジメチルアセトアミド20mLとの混合物をゆっくり適下し、室温で1時間撹拌した。ここにヨウ化メチル7.10gをゆっくり適下し、室温で12時間撹拌した。その後、内容物を純水1Lに滴下し、6時間撹拌洗浄した。得られた淡黄色固体の粗生成物をトルエンとヘキサンとの混合溶媒にて2回再結晶し、一晩減圧乾燥して白色粉末を得た(収率20.6%)。この白色固体のNMRおよびIR測定結果を以下に示す。これらの結果から、得られた白色固体が、式(M2)で表される重合性単量体であることが確認された。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.29−7.09(m,10H、Ar−H),5.79−5.69(m,2H,−CH=),5.12−5.02(m,4H,=CH2),4.02(d,4H,CH2),3.01(s,3H,CH3),2.83(s,3H,CH3).
IR(KBr,cm-1):ν=3061(allyl =C−H),2914(alkyl C−H),1584(aromatic C=C),1529(triazine C=N),930(allyl =C−H).
【0036】
[実施例3]重合性単量体(M3)の合成
【化10】

【0037】
撹拌機および窒素導入管を装着した三口フラスコに、実施例1の中間体化合物(L1)22.21gおよびジオキサン100mLを計量し、撹拌して溶解させた。ここにジアリルアミン21.38gとトリエチルアミン22.28gとをジオキサン50mLに溶解させた溶液をゆっくり滴下した後、室温で2時間反応させた。続いて、80℃で2時間反応させ、さらに還流温度まで昇温し、20時間還流させた。その後、反応生成物をエバポレータで濃縮後、トルエン300mLに溶解して、分液ロートに移し、純水300mLで洗浄した。さらに、純水500mLで3回洗浄を繰り返し、有機層を採取して無水硫酸ナトリウムで10分間乾燥後、有機層を濃縮して粗生成物を得た。これをトルエンとヘキサンとの混合溶媒にて2回再結晶し、12時間減圧乾燥して白色粉末を得た(収率41.3%)。この白色固体のNMRおよびIR測定結果を以下に示す。これらの結果から、得られた白色固体が、式(M3)で表される重合性単量体であることが確認された。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.29−7.09(m,10H、Ar−H),5.80−5.68(m,4H,−CH=),5.12−4.90(m,8H,=CH2),3.99(d,8H,CH2).
IR(KBr,cm-1):ν=3078(allyl =C−H),2919(alkyl C−H),1524(triazine C=N),923(allyl =C−H).
【0038】
[実施例4]重合性単量体(M4)の合成
【化11】

【0039】
撹拌機付きの三口フラスコに、実施例1の中間体化合物(L1)1.57gおよびジオキサン15mLを計量し、撹拌して溶解させた。ここにアリルアルコール30mLを滴下し、さらに炭酸カリウム2.08gを滴下した後、室温で2時間反応させた。続いて、80℃で2時間反応させ、さらに還流温度まで昇温し、20時間還流させた。その後、反応生成物をエバポレータで濃縮後、クロロホルム50mLに溶解して、分液ロートに移し、純水80mLで洗浄した。さらに、純水100mLで3回洗浄を繰り返し、有機層を採取して無水硫酸ナトリウムで10分間乾燥後、有機層を濃縮して粗生成物を得た。これをトルエンとヘキサンとの混合溶媒にて2回再結晶し、12時間減圧乾燥して白色粉末を得た(収率32.0%)。この白色固体のNMRおよびIR測定結果を以下に示す。これらの結果から、得られた白色固体が、式(M4)で表される重合性単量体であることが確認された。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.37−7.14(m,10H、Ar−H),5.98−5.88(m,2H,−CH=),5.26−5.17(m,4H,=CH2),4.67(d,4H,CH2).
IR(KBr,cm-1):ν=3063(allyl =C−H),2935(alkyl C−H),1539(triazine C=N),929(allyl =C−H).
【0040】
[実施例5]重合性単量体(M5)の合成
(1)中間体化合物(L2)の合成
【化12】

【0041】
撹拌機付きの三口フラスコに、塩化シアヌル55.2gおよびテトラヒドロフラン250mLを入れ、窒素雰囲気下、氷浴上で内温を−5℃に冷却しながら完全に溶解した。次いで、ジアリルアミン31.9gおよびトリエチルアミン32.0gをテトラヒドロフラン50mLに溶解させた溶液を側管付き滴下ロートに充填し、内容物を撹拌しつつ、反応温度を−5℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、−5℃に保ちながら4時間反応し、さらに、室温にて1時間反応させた。反応終了後、内容物を純水5L中に投入し、撹拌しながら一晩洗浄した。析出した固体をろ別し、トルエン100mLに溶解後、分液ロートに移して、純水100mLにて洗浄し、さらに純水200mLにて3回水洗した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて10分間撹拌し、乾燥した。固形物をろ別し、ろ液をエバポレータで濃縮して淡黄色の粗結晶を得た。この粗結晶をトルエンとヘキサンとの混合溶媒で2回再結晶し、吸引ろ過にて回収後、12時間真空乾燥して白色結晶を得た(収率50.1%)。この白色固体のNMRおよびIR測定結果を以下に示す。これらの結果から、得られた白色固体が、式(L2)で表される中間体化合物であることが確認された。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ5.83−5.76(m,2H,=CH−),5.26−5.18(m,4H,=CH2),4.22(d,4H,CH2).
IR(KBr,cm-1):ν=3089(allyl =C−H),2939(alkyl C−H),1552(triazine C=N),938(allyl =C−H).
【0042】
(2)重合性単量体(M5)の合成
【化13】

【0043】
撹拌機および窒素導入管を装着した三口フラスコに、水素化ナトリウム(60%)1.26gおよび適量のヘキサンを入れて数分撹拌後、静置した。注射器で上澄み液を除いた後、フラスコ内を減圧し、窒素を充填した。この窒素置換操作を3回繰り返した後、窒素雰囲気下で、ジフェニルアミン1.69gをジメチルアセトアミド5mLに溶解させた溶液をゆっくり適下し、室温で1時間撹拌した。続いて、上記で得られた中間体化合物(L2)1.23gをジメチルアセトアミド5mLに溶解させた溶液をゆっくり適下し、室温で12時間撹拌した。その後、内容物を純水100mLにゆっくり滴下し、析出した淡黄色の固形物をろ別した。これをトルエンとヘキサンとの混合溶媒にて2回再結晶し、12時間減圧乾燥して白色粉末を得た(収率32.0%)。この白色固体のNMRおよびIR測定結果を以下に示す。これらの結果から、得られた白色固体が、式(M5)で表される重合性単量体であることが確認された。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.21−7.05(m,20H,Ar−H),5.65−5.61(m,2H,−CH=),5.01(d,2H,=CH2),4.90(d,2H,=CH2),3.85(d,4H,CH2).
IR(KBr,cm-1):ν=3061(allyl =C−H),2917(alkyl C−H),1587(aromatic C=C),1530(triazine C=N),924(allyl =C−H).
【0044】
[実施例6]重合性単量体(M6)の合成
【化14】

【0045】
撹拌機および窒素導入管を装着した三口フラスコに、水素化ナトリウム(60%)1.45gおよび適量のヘキサンを入れて数分撹拌後、静置した。注射器で上澄み液を除いた後、フラスコ内を減圧し、窒素を充填した。この窒素置換操作を3回繰り返した後、窒素雰囲気下で、カルバゾール1.67gをジメチルアセトアミド10mLに溶解させた溶液をゆっくり適下し、室温で1時間撹拌した。その後、実施例5の中間体化合物(L2)1.23gをジメチルアセトアミド5mLに溶解させた溶液をゆっくり適下し、室温で12時間撹拌した。その後、内容物を純水200mLにゆっくり滴下し、析出した淡黄色の固形物をろ別した。これをトルエンとヘキサンとの混合溶媒にて2回再結晶し、12時間減圧乾燥して白色粉末を得た(収率64.3%)。この白色固体のNMRおよびIR測定結果を以下に示す。これらの結果から、得られた白色固体が、式(M6)で表される重合性単量体であることが確認された。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ8.89(d,4H、Ar−H),8.05(d,4H、Ar−H),7.43(t,4H、Ar−H),7.35(t,4H、Ar−H),6.11−6.01(m,2H,=CH−),5.36−5.30(m,4H,=CH2),4.47(d,4H,CH2).
IR(KBr,cm-1):ν=3058(allyl =C−H),2929(alkyl C−H),1593(aromatic C=C),1527(triazine C=N),934(allyl =C−H).
【0046】
[実施例7]重合性単量体(M7)の合成
【化15】

【0047】
撹拌機および窒素導入管を装着した三口フラスコに、水素化ナトリウム(60%)2.58gおよび適量のヘキサンを入れて数分撹拌後、静置した。注射器で上澄み液を除いた後、フラスコ内を減圧し、窒素を充填した。この窒素置換操作を3回繰り返した後、窒素雰囲気下で、N−フェニル−2−ナフチルアミン4.42gをジメチルアセトアミド10mLに溶解させた溶液をゆっくり適下し、室温で1時間撹拌した。その後、実施例5の中間体化合物(L2)2.47gをジメチルアセトアミド10mLに溶解させた溶液をゆっくり適下し、室温で12時間撹拌した。その後、内容物を純水200mLにゆっくり滴下し、析出した灰色の固形物をろ別した。これをトルエンとヘキサンとの混合溶媒にて3回再結晶し、12時間減圧乾燥して白色粉末を得た(収率50.9%)。この白色固体のNMRおよびIR測定結果を以下に示す。これらの結果から、得られた白色固体が、式(M7)で表される重合性単量体であることが確認された。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.72−7.02(m,24H、Ar−H),5.71−5.62(m,2H,−CH=),5.00(d,2H,=CH),4.88(d,2H,=CH),3.87(d,4H,CH2).
IR(KBr,cm-1):ν=3056(allyl =C−H),2919(alkyl C−H),1596(aromatic C=C),1530(triazine C=N),925(allyl =C−H).
【0048】
[実施例8]重合性単量体(M8)の合成
【化16】

【0049】
撹拌機および窒素導入管を装着した三口フラスコに、水素化ナトリウム(60%)0.61gおよび適量のヘキサンを入れて数分撹拌後、静置した。注射器で上澄み液を除いた後、フラスコ内を減圧し、窒素を充填した。この窒素置換操作を3回繰り返した後、窒素雰囲気下で、2,2−ジナフチルアミン1.00gをジメチルアセトアミド5mLに溶解させた溶液をゆっくり適下し、室温で1時間撹拌した。その後、実施例5の中間体化合物(L2)0.49gをジメチルアセトアミド10mLに溶解させた溶液をゆっくり適下し、室温で12時間撹拌した。その後、内容物を純水200mLにゆっくり滴下し、析出した灰色の固形物をろ別した。これをトルエンとヘキサンの混合溶媒にて再結晶し、12時間減圧乾燥して白色粉末を得た(収率69.6%)。この白色固体のNMRおよびIR測定結果を以下に示す。これらの結果から、得られた白色固体が、式(M8)で表される重合性単量体であることが確認された。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.67−7.31(m,28H、Ar−H),5.71−5.64(m,2H,−CH=),5.01(d,2H,=CH),4.89(d,2H,=CH),3.89(d,4H,CH2).
IR(KBr,cm-1):ν=3056(allyl =C−H),2919(alkyl C−H),1596(aromatic C=C),1530(triazine C=N),924(allyl =C−H).
【0050】
[比較例1]重合性単量体(N1)の合成
【化17】

【0051】
撹拌機付きの三口フラスコに、塩化シアヌル9.15gおよびジオキサン90mLを入れ、撹拌しながら溶解させた。次いでジアリルアミン15.10gとトリエチルアミン15.75gをジオキサン20mLに溶解させた溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、室温で2時間反応させた。続いて、80℃で2時間反応させた後、還流温度まで昇温して20時間反応させた。その後、反応生成物をエバポレータで濃縮し、クロロホルム50mLに溶解して分液ロートに移し、純水50mLで洗浄した。さらに、純水100mLで3回洗浄を繰り返し、有機層を採取して無水硫酸マグネシウムで10分間乾燥し、固形物をろ別後、有機層を濃縮して茶褐色油状の粗生成物を得た。減圧蒸留を行い、無色透明の液状生成物を得た(真空度0.1Torrにて沸点130℃,収率64.2%)。液状生成物のNMRおよびIR測定結果を以下に示す。これらの結果から、得られた無色液体が、式(N1)で表される重合性単量体であることが確認された。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ5.87−5.80(m,6H,=CH−),5.13−5.08(m,12H,=CH2),4.12(d,12H,CH2).
IR(KBr,cm-1):ν=3076(allyl =C−H),2921(alkyl C−H),1638(allyl C=C),1536(triazine C=N),919(allyl =C−H).
【0052】
〈樹脂組成物の製造〉
[実施例9]
まず、和光純薬工業社製の過酸化ベンゾイルをクロロホルム/メタノールで再結晶して乾燥したもの1.0gと、東京化成工業社製のα,α′−ジ(t−ブチルペルオキシ)−ジイソプロピルベンゼン1.0gとを混合して重合開始剤混合物を調製した。
次に、重合性単量体(M1)0.105gを120℃で溶融し、ここに上記重合開始剤混合物3.01mgを混合して重合性単量体組成物を調製し、これをただちにポリテトラフルオロエチレン板(300mm×300mm×5mm)上に広げ、もう一枚のポリテトラフルオロエチレン板で挟みこんだ。これを図1に示す装置に装着し、窒素雰囲気下で100℃にて2時間重合した後、140℃にて10時間重合し、その後、200℃まで昇温して1時間重合した。室温まで冷却して、ポリテトラフルオロエチレン板より剥がし、フィルム状の高屈折率樹脂組成物P1を得た。
【0053】
[実施例10〜12、および比較例2]
実施例2〜4および比較例1で得られた各種の重合性単量体を用い、実施例9と同様の方法で、下表1に示す組成にて図1の装置を使用して重合を実施し、高屈折率樹脂組成物P2、P3、P4、および比較樹脂組成物Q1を製造した。
【0054】
[実施例13]
重合性単量体(M5)0.121gにジメチルアセトアミド0.2gを加えて80℃で溶解させ、ここに実施例9と同一の重合開始剤混合物2.46mgを混合して重合性単量体組成物を調製し、これをただちにテフロン(登録商標)板(300mm×300mm×5mm)上に広げ、もう一枚のテフロン(登録商標)板で挟みこんだ。これを図1に示す装置に装着し、窒素雰囲気下で100℃にて2時間重合した後、140℃にて10時間重合し、その後200℃まで昇温して1時間重合した。室温まで冷却してテフロン(登録商標)板より剥がし、フィルム状の高屈折率樹脂組成物P5を得た。
【0055】
[実施例14〜16]
実施例6〜8で得られた各種重合性単量体を用い、実施例13と同様の方法で、下表1に示す組成にて図1の装置を使用して重合を実施し、高屈折率樹脂組成物P6、P7、P8を製造した。
【0056】
[実施例17]
ガラス板(80mm×80mm×3mm)を2枚用意し、それぞれの片面に、東レダウコーニング社製離型剤SR−2410を約1g垂らし、これを直径8mmのガラス丸棒で伸ばして薄く塗布した。1時間空気中で風乾した後、150℃の乾燥機で1時間硬化させ、離型剤の皮膜を形成した。このガラス板2枚を用い、離型処理面を内側にしてコの字型の厚さ3mmのシリコーンゴムスペーサを挟み込み、これを止め具で固定し、図2に示される樹脂の成形型を作製した。
日油社製の有機過酸化物パーヘキサHCとパーブチルCをそれぞれ1.0gずつ計量し、室温で均一混合して重合開始剤混合物を調製した。
続いて、実施例3で得られた重合性単量体(M3)9.0gと他の単量体であるアクリル酸ブチル(以下、BUAと略す)1.0gを80℃にて溶解させ、さらに上記重合開始剤混合物0.1gを混合して重合性単量体組成物を調製した。これを先に作製した成形型に手早く流し込み、ただちに110℃のオーブンに入れて1時間重合した後、120℃にて2時間重合し、その後150℃まで昇温して2時間重合した。一晩かけて室温まで放冷した後、ガラス板より剥がし、厚さ3mmの板状の高屈折率樹脂組成物P9を得た。
【0057】
【表1】

【0058】
上記実施例9〜17および比較例2で作製した高屈折率樹脂組成物P1〜P9および比較樹脂組成物Q1について、屈折率および5%熱重量減少温度を測定した。結果を表2に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
表2に示されるように、実施例9〜17で得られた樹脂組成物は、構成元素が炭素、水素、酸素、窒素の4元素以外は一切使用していないにも拘らず、いずれも1.60以上の高い屈折率と、5%重量減少温度290℃以上という高い耐熱性を示すことがわかる。
これに対し、比較例2で得られた樹脂組成物は、屈折率が1.60未満であり、各実施例の樹脂組成物のそれよりも低いことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されることを特徴とする1,3,5−トリアジン環を有する重合性単量体。
【化1】

〔式(1)中、A1、A2およびA3のうちの1つまたは2つは、式(2)または式(3)
【化2】

(式(2)中、R1は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数2〜10のアルケニル基を表す。)
で表される基であり、
1、A2およびA3のうちの残りは、式(4)または式(5)
【化3】

(式(4)中、R2およびR3は、それぞれ独立してフェニル基またはナフチル基を表す。)
で表される基である。〕
【請求項2】
請求項1記載の重合性単量体70〜100質量部と、これと重合可能な他の単量体0〜30質量部とを重合して得られることを特徴とする高屈折率樹脂組成物。
【請求項3】
前記他の単量体が、ビニル系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体、アリル系単量体、およびマレイン酸系単量体から選ばれる少なくとも1種である請求項2記載の高屈折率樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−38015(P2011−38015A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187691(P2009−187691)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(504165591)国立大学法人岩手大学 (222)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】