説明

耐熱性含気チョコレート及びその製造方法

【課題】風味に優れ、口溶けのよい、軽い食感を有し、かつ80℃の高温条件下でも優れた保型性を有する耐熱性含気チョコレートを提供することにある。また、本発明は、前記耐熱性含気チョコレートをより簡便に製造する方法を提供すること。
【解決手段】二糖類以下の糖質を45〜70重量%、ハードバターを10〜30重量%含有し、水分含有量が3重量%以下であり、80℃の温度条件下で保型性を有し、比重が0.10〜0.30であることを特徴とする耐熱性含気チョコレート。該耐熱性含気チョコレートは、二糖類以下の糖質を含む水相成分と、ハードバターを含む油相成分を混合乳化し、二糖類以下の糖質及びハードバターを含有し、水分含有量が8〜13重量%の水中油型の含水チョコレートを作製する工程、前記含水チョコレートを減圧乾燥し、膨化させる工程を経て製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、80℃の温度条件でも保型性を有する耐熱性含気チョコレート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チョコレートのような油脂性菓子では、骨格となる連続相が体温付近の温度で融解するココアバター等の油脂結晶のため、前記温度条件下にさらされると溶けたり、型崩れを生じたりしてしまう。この問題を解消する目的で、これまで各種の耐熱性を有するチョコレートが提案されてきた。
【0003】
これまでの耐熱性を有するチョコレートの技術を大別すると、(1)油脂の融点を高くし溶け難くする方法、(2)砂糖等の衣でチョコレートを包む方法、(3)チョコレートの構造に高温でも溶けない糖類の骨格を形成する方法がある。
【0004】
(1)の方法は、ココアバター等より融点の高い油脂を配合することで最も簡便に実施できるものであるが、高融点の油脂は食べた時の口溶けを著しく損ない、風味及び食感の両方の面で好ましくなく、また基本骨格は油脂結晶であるため、体温付近を超える耐熱性は期待できない。
【0005】
(2)の方法は、回転釜等を利用し、通常のチョコレートをセンターとして、糖液をコーティングして作られる。この場合、確かに糖衣は熱で溶けないので型崩れが生じることはないが、センターのチョコレートは体温以上の温度では溶解してしまうため、再び固化したとしても、食べたときにチョコレート独特の口溶けの良い食感が失われる。
【0006】
(3)の方法は、チョコレートに水分を添加又は吸収させ、この水分で油脂中に微粒子で分散している砂糖や乳糖等を部分溶解すると同時に、糖粒子間の接合を促進させて糖の骨格を形成するものである。この方法で製造されたチョコレートには糖類の骨格が形成され、この骨格の中に油脂が保持されるので、温度が高くなって油脂結晶が融解しても油脂は流出せず、形状は保持される。しかも、糖類の骨格は唾液によって、容易に溶解するため、食した時の口解けも良好である。この方法によって耐熱性を付与したチョコレートとしては次のような例が挙げられる。
【0007】
例えば、乳化のタイプが油中水型(W/O)の耐熱性チョコレートとしては、油相と糖及び/又は糖アルコールを含む水相とを乳化剤を使用することにより混合乳化した油中水系エマルジョンと、チョコレート生地が分散混合されて形成される耐熱性チョコレートが提案されている(特許文献1)。また、デンプン糖を3.5〜11.0重量%含有させている耐熱性チョコレートがある(特許文献2)。これらのチョコレートでは、40℃付近という体温付近を超える耐熱性は実現されていない。また、これらのチョコレートは含気チョコレートではない。
【0008】
一方、水中油型(O/W)の耐熱性チョコレートとしては、カカオマスを15重量%以上含有し、乳化能を有するタンパク質を含有する物質、食用油及び水を分散乳化し、100℃以下の熱風で乾燥して得られるものある(特許文献3)。これはカカオマスを必須成分としており、カカオマスが含まれないホワイトチョコレートを単独で用いることができない。また、このチョコレートは含気チョコレートではない。
また、微結晶セルロースと親水性高分子からなるセルロース複合体を配合させる含水チョコレートがあるが(特許文献4)、その耐熱性は35℃である。また、このチョコレートは含気チョコレートではない。
更に、油脂性菓子生地にゼラチン溶液を混合乳化させることによって得られる耐熱油脂性菓子がある(特許文献5)。この耐熱油脂性菓子は耐熱保型性が60℃以上であるが、耐熱性を実現するための成分としてゼラチンを要するため、風味があまり好ましくないという問題がある。また、前記特許文献5では、耐熱性を有するのに加えて、比重が0.2〜0.7という軽い食感を実現させているが、その製造方法は連続式加圧型ガス分散装置を要するため非常にコストがかかる。
また、乳化剤を1〜20重量%含有し、水相中に油脂が分散したO/Wエマルジョンをチョコレート中に分散混合させた耐熱性チョコレートがあるが(特許文献6)、含気しておらず、また耐熱性は50℃であり、また、このチョコレートは含気チョコレートではない。
【0009】
一方、食感を軽くすることを目的とした含気チョコレートもこれまでに数多く提案されている。含気チョコレートの製造方法としては、従来、溶融状態のチョコレートを攪拌して微小な気泡を取り込ませた後、これを減圧することにより微小な気泡を粗い気泡とした状態下で固化することにより製造する方法や、連続式発泡機で空気を加圧注入しつつ溶融状態のチョコレートを強力に攪拌することにより含気させた後、これを固化することにより製造する方法が用いられている。前者の方法では、固化するまでの工程は含気工程と減圧工程の2つの工程からなる。含気工程では、取り込まれた気泡が減圧工程で大きくなった時にいわゆる含気チョコレートとしての組織を生じるのに必要な量の空気を抱き込ませる必要がある。そのため、攪拌するには大変な労力が必要であり、実用的ではない。また後者では、目的とする比重によっては、減圧工程は特に必要ないが、含気工程では前者以上の強力な攪拌が必要であるばかりか、空気を加圧しなければならず、専用の装置が必要であり非常にコストがかかる。
【0010】
また、ジグリセリン脂肪酸エステルを0.2〜1.5重量%、及びBOBシード剤を1〜3重量%または結晶状粉末BOBを0.5〜1.5重量%含有した含気チョコレート生地を減圧条件下で膨化させた、比重0.14〜0.30の膨化チョコレートがある(特許文献7)が、高い耐熱性は有していない。その他にも食用油脂とベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドの混合油を添加した含気チョコレート(特許文献8)、油脂成分がラウリン系油脂を含む油脂からなる気泡入りチョコレート(特許文献9)等様々な方法によって比重を小さくする提案がされてきているが、いずれも特許文献7の比重と同等の軽さを有する含気チョコレートは開発されていない。
【0011】
また、減圧工程のみで含気チョコレートを製造する方法が提案されているが(特許文献10)、チョコレートにビスケットやケーキ等内部組織中に空気を含む食品を混合した後、これを減圧下で冷却固化しており、加熱する減圧乾燥とは相違した処理を施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第2514711号公報
【特許文献2】特公平03−078974号公報
【特許文献3】特開昭61−139338号公報
【特許文献4】特開2003−009770号公報
【特許文献5】特開平05−227887号公報
【特許文献6】特許第2776939号公報
【特許文献7】国際公開第02/000032号パンフレット
【特許文献8】特開2003−265109号公報
【特許文献9】特開平02−057146号公報
【特許文献10】特開平11−318336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、風味に優れ、口溶けのよい、軽い食感を有し、かつ80℃の高温条件下でも優れた保型性を有する耐熱性含気チョコレートを提供することにある。また、本発明は、前記耐熱性含気チョコレートをより簡便に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、二糖類以下の糖質及びハードバターの量に着目し、更に水分含有量が8〜13重量%の水中油型含水チョコレートを作製し、この含水チョコレートを減圧乾燥することによって、簡便に、風味、食感及び耐熱保型性に優れ、且つ比重が軽い耐熱性含気チョコレートを完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、二糖類以下の糖質を45〜70重量%、ハードバターを10〜30重量%含有し、水分含有量が3重量%以下であり、80℃の温度条件下で保型性を有し、比重が0.10〜0.30であることを特徴とする耐熱性含気チョコレートに関する。
【0016】
また、本発明は、ゼラチンを実質的に含有しない前記耐熱性含気チョコレートに関する。
【0017】
また、本発明は、二糖類以下の糖質を含む水相成分と、ハードバターを含む油相成分を混合乳化し、二糖類以下の糖質及びハードバターを含有し、水分含有量が8〜13重量%の水中油型の含水チョコレートを作製する工程、前記含水チョコレートを減圧乾燥し、膨化させる工程を有することを特徴とする前記耐熱性含気チョコレートの製造方法に関する。
【0018】
また、本発明は、前記含水チョコレートを32℃以下で減圧乾燥して膨化させ、次いで温度を上昇してさらに減圧乾燥する耐熱性含気チョコレートの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、風味に優れ、口溶けがよく、極めて軽い食感を有し、80℃の温度条件下でも耐熱保型性のある含気チョコレートを提供することができる。
また、本発明の製造方法により、前記のような特性を有する含気チョコレートを効率よく得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の耐熱性含気チョコレートは、二糖類以下の糖質を45〜70重量%、ハードバターを10〜30重量%含有し、水分含有量が3重量%以下であり、80℃の温度条件下で保型性を有し、比重が0.10〜0.30であることを特徴とする。
【0021】
本発明に使用できる二糖類以下の糖質としては、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース等の二糖類、これらの二糖類以下の糖類を主成分として含有する砂糖、水飴類、異性化糖等、前記以外の二糖類以下のオリゴ糖類、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン等の糖アルコール等が挙げられる。本発明の耐熱性含気チョコレートでは、前記二糖類以下の糖質の含有量が45〜70重量%である。二糖類以下の糖質の含有量が45重量%未満では、得られる耐熱性含気チョコレートの口溶けが悪く、食感的に好ましくない。一方、二糖類以下の糖質の含有量が70重量%を越えると、耐熱性含気チョコレートが非常に甘くなり風味として好ましくない。二糖類以下の糖質の含有量の好ましい範囲は、50〜65重量%である。
【0022】
更に、本発明の耐熱性含気チョコレートには、前記二糖類以下の糖質に加えて、食品に添加できる三糖類、四糖類、五糖類以上のオリゴ糖、多糖類等の糖類も含有することができる。これらの食品に添加できる糖類の含有量としては、耐熱性含気チョコレートの食感に悪影響を与えなければ特に限定はないが、10重量%以下であることが好ましい。
【0023】
また、本発明におけるハードバターとは、ココアバターとココアバター代用脂の総称を示す。ハードバターとしては、ココアバターを用いるのが好ましい。ココアバター代用脂とは、チョコレートの物性改良や製造コストの節約を目的として、ココアバターの一部または全部に代えて用いられるもので、主にCBEと称される1、3位飽和、2位不飽和のトリグリセリド型油脂に富むものと、CBRと称されるラウリン系もしくは高エライジン酸タイプのものがある。ココアバター代用脂の油脂原料としては、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サンフラワー油、オリーブ油、カポック油、ゴマ油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂及び乳脂、牛脂、ラード、魚油、鯨油等の動物性油脂を例示することができ、上記油脂類若しくは2種以上の混合した油、又はそれらの硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂を用いることができる。
前記ハードバターの含有量は耐熱性含気チョコレート中において10〜30重量%である。ハードバターの含有量が10重量%未満では、耐熱性含気チョコレートの保型性が弱くなり、また減圧乾燥時に含水チョコレートが膨化しない可能性が高くなる。一方、ハードバターの含有量が30重量%を超えると、減圧乾燥時に含水チョコレートから油が染み出してくる可能性が高くなり、風味が悪くなる。前記ハードバターの含有量は13〜22重量%の範囲が好ましい。
【0024】
更に、本発明の耐熱性含気チョコレートでは必要により、乳製品、乳化剤、卵、安定剤、呈味成分、洋酒、保存料、塩、酸味料、着色料、フレーバー、酸化防止剤等を加えることができる。
【0025】
乳製品としては、生クリーム、牛乳、濃縮乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、調整粉乳、練乳、チーズクリーム、ホイップ用クリーム及びコーヒー用クリーム等が挙げられる。脱脂粉乳、全脂粉乳、あるいは調整粉乳を用いる場合はこれらの粉乳をメイラード処理したものであっても良い。なお、乳製品の無脂乳固形分中に含有される乳糖は二糖類であるが、非常に微量しか含まれないため前記二糖類以下の糖質の含有量として特にカウントしない。
【0026】
乳化剤としては、モノグリセリド、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等を必要により用いることができる。乳化剤は耐熱性膨化チョコレート中に0.01重量%以上で風味に影響を与えない範囲内で使用するのが好ましい。また、卵としては、全卵、卵黄、卵白、酵素処理卵等を用いることができる。
【0027】
呈味成分としては、果汁、果肉、ジャム、果汁パウダー、カカオパウダー、コーヒーパウダー、アーモンドペースト、ピーナッツペースト等を必要により用いる。呈味成分を使用する場合は耐熱性含気チョコレート中に、呈味成分を好ましくは0.1〜25重量%、さらに好ましくは1〜20重量%添加する。但し、前記呈味成分に二糖類以下の糖質が含有される場合には、前記二糖類以下の糖質の含有量としてカウントするため、最終的な含有量が規定範囲内になるように、二糖類以下の糖質及び呈味成分の量を調整する必要がある。
【0028】
洋酒としては、ラム酒、ブランデー等が挙げられる。洋酒を使用する場合は、耐熱性含気チョコレート中に0.1〜5重量%添加するのが好ましい。
【0029】
塩、酸味料としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等が挙げられる。風味の調整のために塩、酸味料を添加する場合、本発明の耐熱性含気チョコレート中に1重量%以下が好ましい。
【0030】
また、安定剤、保存料、着色料、フレーバー、酸化防止剤等は、市販のチョコレートに使用されるものであれば、必要に応じて適宜選択して本発明の耐熱性含気チョコレートに含有させることができる。
【0031】
本発明の耐熱性含気チョコレートの水分含有量は、3重量%以下である。水分含有量が3重量%を超えると歯付きがする可能性が高くなり、食感として好ましくない。なお、水分含有量は、耐熱性含気チョコレートを減圧乾燥法により水分を除去し、乾燥前後の重量を測定することで換算することができる。
【0032】
また、本発明の耐熱性含気チョコレートは、従来、保型性を具備するために使用されていたゼラチンを実質的に含有しないことで、ゼラチンによるチョコレートの風味の劣化を抑えることができる。前記耐熱性含気チョコレート中のゼラチン含有量は、0.1重量%未満である。
【0033】
本発明の耐熱性含気チョコレートは、80℃の温度条件下で保型性を有する。本発明において、保型性とは、チョコレートを80℃の温度条件下に5〜30分間さらした場合に、型崩れや比重の減少が生じないことをいう。
【0034】
また、本発明の耐熱性含気チョコレートの比重は、0.10〜0.30の範囲である。この範囲の比重とすることで、食感を軽くすることができ、且つ非常に口溶けのよい食感が得られる。
【0035】
次に、本発明の耐熱性含気チョコレートの製造方法であるが、先ず、二糖類以下の糖質を含む水相成分と、ハードバターを含む油相成分とを混合乳化し、二糖類以下の糖質及びハードバターを含有し、水分含有量が8〜13重量%の水中油型の含水チョコレートを作製する。
【0036】
前記含水チョコレートの水分含有量が8重量%未満の場合、水中油型に乳化するのが困難であり、また、水分含有量が13重量%を超えると、保型性が弱くなり、膨化しない可能性が高くなる。水分含有量のより好ましい範囲は10〜12.5重量%である。
【0037】
前記水相成分は、二糖類以下の糖質、必要に応じてその他の糖質、乳製品、卵、安定剤、呈味成分、洋酒、保存料、塩、酸味料、着色料、フレーバー及び酸化防止剤等を混合し、これらの固形分を所望の範囲の含有量に調整するように、水を加えて調製すればよい。
【0038】
また、前記二糖類以下の糖質として、ショ糖のみを用いる場合、含有量が多いと結晶化が生じ、食感が悪くなるので、ショ糖を焦がし、カラメル化するか、結晶抑制剤等を添加するのが好ましい。
【0039】
本発明において、前記油相成分として、二糖類以下の糖質及びハードバターを含有するチョコレート生地と、ハードバターとを用いることができる。
【0040】
前記チョコレート生地は、スイートチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート、カカオマス、ココアと砂糖等の糖質、粉乳、油脂等を使用し、これらを常法通りロール掛けし、所望によりコンチングしたチョコレート生地であればよく、例えばカカオマス若しくはカカオパウダーを使用した通常のダークチョコレート類、あるいは乳固形分(粉乳)や糖質(粉糖)を主成分として使用したホワイトチョコレート等が例示できる。また、前記油相成分にチョコレート生地を含む場合、水相成分にも含まれる二糖類以下の糖質との合計量が、規定の範囲の含有量になるように調整すればよい。
【0041】
前記水相成分と、油相成分とを常法に準じて混合乳化することで、油中水型の含水チョコレートを作製することができる。また、油中水型にし易くするために、乳化剤を用いてもよい。乳化剤は、前記チョコレート生地に予め添加しておけばよい。なお、混合乳化時の温度は、前記含水チョコレートが流動性を示すような温度であればよく、特に限定はない。
【0042】
次いで、前記含水チョコレートを減圧乾燥し、膨化させる。
【0043】
前記含水チョコレートは、減圧乾燥前にモールドに充填したり、冷却してある程度固化した後に所望の形に切断等して成型する。モールドとしては、チョコレートの製造に使用されているものであればよく、特に限定はない。また、冷却温度としては、含水チョコレートが完全に固化しない温度範囲であればよい。
【0044】
減圧乾燥は、32℃以下の温度条件下で行うのが好ましい。32℃を超えると、含水チョコレートの保型性が失われ、目的の形状とする含気チョコレートが得られない。また、より好ましい温度条件は28℃以下である。但し、前記含水チョコレートをモールドに充填した場合は乳化が壊れない温度条件下であればよい。なお、減圧乾燥には、装置内に配置した含水チョコレートの周囲の温度調整が可能な減圧乾燥装置を用いればよい。
【0045】
前記温度条件下で徐々に減圧を行い、減圧乾燥装置内を真空状態にする。真空状態になると、前記含水チョコレート中の水分が蒸発する力により膨化していく。膨化した後はチョコレートの保型性が強くなる。なお、本発明において真空状態とは、標準大気圧より圧力が低い状態を指し、その圧力は100Torr以下が好ましい。
【0046】
本発明では、前記のようにある程度膨化させたチョコレートを同じ温度で減圧乾燥してもよいが、次いで温度を上昇してさらに減圧乾燥をすることで、型崩れ等を生じさせずに、比重が0.10〜0.30となるまで効率よく乾燥させることができる。好ましい乾燥温度は40〜60℃の範囲である。また、食感の面から、膨化させた後に行う乾燥時間は2時間以上が好ましい。
【0047】
このような減圧乾燥により、80℃の温度条件下でも保型性があり、且つ比重が0.10〜0.30の耐熱性含気チョコレートを得ることができる。なお、比重に関しては、含水チョコレートの水分含有量によって調整できる。
【0048】
前記製造方法によって得た耐熱性含気チョコレートは、冷却後、別のチョコレートでエンローブしたり、焼き菓子生地等で被覆したりと様々な菓子と組み合わせることも可能である。
【実施例】
【0049】
次に実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、実施例中の「部」は重量部、「%」は重量%を意味する。また、減圧乾燥には島津製作所社製の「VACUUM OVEN SVO−300」(商品名)を用いた。
【0050】
(チョコレート生地1〜3の作製)
表1に示す配合に従い、ロール掛け及びコンチングを行いチョコレート生地1〜3を得た。
【0051】
【表1】

【0052】
(含水チョコレート1〜10の作製)
次に表2〜4に示す配合に従い、水相成分と油相成分を混合乳化し、水中油型の含水チョコレート1〜4を得た。
【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
(実施例1〜4、比較例1〜6の作製)
最後に前記含水チョコレート1〜10を単重1.5gの球体に成型し、減圧乾燥を行った。乾燥条件としては、先ず装置内を25℃にし、含水チョコレートを入れた。次に減圧を行い、装置内の圧力を100Torr以下の真空状態とした。真空状態になり、含水チョコレートが膨化したところで、温度を40℃まで上昇させ3時間減圧乾燥を行い、実施例1〜4及び比較例1〜4で含気チョコレートを得た。いずれの含気チョコレートも水分含有量は、1%未満のものであった。
乾燥後、サンプルであるチョコレートを取り出し冷却した後、風味、食感、比重及び耐熱保型性の判定を行った。
比重の測定方法は、100mlのすり切りカップを用意し、先ず溶解したチョコレート生地2のみを入れ、チョコレート生地2の重量を測定することによって、チョコレート生地2の比重を算出した。次に空にした前記カップに予め重量を測定したサンプルである含気チョコレートを入れ、カップ内の残りの隙間部分に溶解したチョコレート生地2を入れ、含気チョコレートとチョコレート生地2の合計重量を測定することにより、含気チョコレートの比重(g/ml)を算出した。
耐熱保型性(耐熱性)の測定方法は、80℃に設定した恒温装置内にチョコレートを入れ、30分間静置し、変形の有無及び比重の増加等の変化が見られないか確認した。表では変化が見られないものを「80℃」と示す。
各実施例及び比較例の二糖類以下の糖質とハードバターの含有量、風味、食感、比重及び耐熱保型性の結果を表5〜7に示した。
なお、風味と食感に関しては、「◎」は非常に良い、「○」は良い、「×」は悪い、を意味する。風味については、チョコレートとして適度な甘みがあり、油脂等の異味が感じられないものを良いと判断した。
また、食感に関しては、口溶けと軽さの両方がそろっているものを良いと判断した。
【0057】
【表5】

【0058】
【表6】

【0059】
【表7】

【0060】
表5〜7に示す結果より、実施例1〜4はいずれも風味、食感共に良く、比重も非常に小さく、また80℃の温度条件下でも耐熱保型性も有していた。
比較例1は二糖類以下の糖質の含有量を減らし、代わりに三糖類以上の糖質を増加させたが、食感が固く、口溶けが悪いものとなった。また、ハードバターの含有量が少ない比較例2では、十分に膨化せず目的の比重が得られず、そのため食感が悪いものとなった。二糖類以下の糖質の含有量が多い比較例3は甘味が強く、ハードバターの含有量が多い比較例4は油臭さを感じ、共に風味として好ましくなかった。
【0061】
なお、水分含有量が多い含水チョコレート9を用いた比較例5は、含水チョコレートに保型性がなく、球体に成型ができず潰れてしまったため、真空条件下でも膨化しなかった。比較例5とは逆に水分含有量が少ない含水チョコレート10を用いた比較例6は、水分が少ないため水中油型に乳化できなかった。したがって、比較例5および6では、共に耐熱性含気チョコレートとはならなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二糖類以下の糖質を45〜70重量%、ハードバターを10〜30重量%含有し、水分含有量が3重量%以下であり、80℃の温度条件下で保型性を有し、比重が0.10〜0.30であることを特徴とする耐熱性含気チョコレート。
【請求項2】
ゼラチンを実質的に含有しない請求項1記載の耐熱性含気チョコレート。
【請求項3】
二糖類以下の糖質を含む水相成分と、ハードバターを含む油相成分を混合乳化し、二糖類以下の糖質及びハードバターを含有し、水分含有量が8〜13重量%の水中油型の含水チョコレートを作製する工程、前記含水チョコレートを減圧乾燥し、膨化させる工程を有することを特徴とする請求項1又は2記載の耐熱性含気チョコレートの製造方法。
【請求項4】
前記含水チョコレートを32℃以下で減圧乾燥して膨化させ、次いで温度を上昇してさらに減圧乾燥する請求項3記載の製造方法。