説明

耐熱老化性ポリアミド

A)ポリアミド10〜99.999質量%、B)鉄ペンタカルボニルを熱分解することによって得られる、最大10μm(d50値)の粒度を有する鉄粉末0.001〜20質量%、C)他の添加剤0〜70質量%を含有する熱可塑性成形材料であって、この場合、成分A)〜C)の質量%の総和は、100%となる、上記の熱可塑性成形材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
A)ポリアミド10〜99.999質量%
B)鉄ペンタカルボニルを熱分解することによって得られる、最大10μm(d50値)の粒度を有する鉄粉末0.001〜20質量%、
C)他の添加剤0〜70質量%を含有する熱可塑性成形材料に関し、
この場合、成分A)〜C)の質量%の総和は、100%となる。
【0002】
更に、本発明は、全ての種類の繊維、シートおよび成形品を製造するための本発明による成形材料の使用ならびにその際に得られる成形品に関する。
【0003】
熱可塑性ポリアミド、例えばPA6およびPA66は、構造部材の寿命の間に高められた温度に晒される構造部材のための構成材料としてガラス繊維強化された成形材料の形で使用され、その際この高められた温度は、熱酸化損傷をまねく。この熱酸化損傷の発生は、公知の耐熱材の添加によって実際に遅延させることができるが、しかし、持続的に阻止することはできず、このことは、例えば機械的な特性値の減少で表される。ポリアミドの耐熱老化性(WAB)の改善は、極めて望まれている。それというのも、それによって熱負荷された構造部材に対してよりいっそう長い寿命を達成することができるか、または前記構造部材の損傷に対する危険性を低下させることができるからである。他の選択可能な方法によれば、改善されたWABは、よりいっそう高い温度での構造部材の使用をも可能にすることができる。
【0004】
ポリアミド中の元素状の鉄粉末の使用は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2602449号明細書、特開平09−221590号公報、特開2000−86889号公報(それぞれ充填剤として)、特開2000−256123号公報(装飾添加剤として)ならびにWO 2006/074912およびWO 2005/007727(安定剤)の記載から公知である。
【0005】
欧州特許出願公開第1846506号明細書の記載から、ポリアミドのためのCu含有安定剤と酸化鉄との組合せは、公知である。
【0006】
耐熱老化性は、公知の成形材料において、殊によりいっそう長い熱負荷時間に亘って依然として不十分である。
【0007】
成形品の表面は、改善を必要とする。それというのも、熱老化の際に多孔質の箇所が形成され、ならびに気泡形成が生じるからである。
【0008】
よりいっそう若い欧州特許出願番号:08171803.3において、WABの改善のために、ポリエチレンイミンと鉄粉末との組合せが提案されている。
【0009】
従って、本発明は、改善されたWABおよび熱老化後の良好な表面ならびにメカニズムを有する熱可塑性ポリアミド成形材料を提供するという課題に基づくものであった。溶接法による加工は、殊に振動溶接法およびレーザー溶接法のために改善されるべきである。
【0010】
それに応じて、冒頭に定義された成形材料が見出された。有利な実施態様は、引用形式請求項から確認することができる。
【0011】
成分A)として、本発明による形成材料は、少なくとも1つのポリアミドを10〜99.999質量%、特に20〜98質量%、殊に25〜94質量%含有する。
【0012】
本発明による成形材料のポリアミドは、一般にISO 307の記載により25℃で96質量%の硫酸中の0.5質量%の溶液中で測定された、90〜350ml/g、特に110〜240ml/gの粘度数を有する。
【0013】
例えば、米国特許第2071250号明細書、米国特許第2071251号明細書、米国特許第2130523号明細書、米国特許第2130948号明細書、米国特許第2241322号明細書、米国特許第2312966号明細書、米国特許第2512606号明細書および米国特許第3393210号明細書に記載されているような少なくとも5000の分子量(質量平均値)を有する半結晶性または非晶質の樹脂は、好ましい。
【0014】
このための例は、7〜13の環員を有するラクタムから誘導されるポリアミド、例えばポリカプロラクタム、ポリカプリルラクタムおよびポリラウリンラクタムならびにジカルボン酸とジアミンとの反応によって得られるポリアミドである。
【0015】
ジカルボン酸として、6〜12個、特に6〜10個の炭素原子を有するアルカンジカルボン酸、および芳香族ジカルボン酸が使用可能である。ここでは、単に、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸およびテレフタル酸および/またはイソフタル酸が酸として挙げられる。
【0016】
ジアミンとして、特に、6〜12個、特に6〜8個の炭素原子を有するアルカンジアミンならびにm−キシリレンジアミン(例えば、BASF SE社のUltramid(登録商標)X17、MXDAとアジピン酸とのモル比1:1)、ジ−(4−アミノフェニル)メタン、ジ−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ジ−(4−アミノフェニル)−プロパン、2,2−ジ−(4−アミノシクロヘキシル)プロパンまたは1,5−ジアミノ−2−メチル−ペンタンが適している。
【0017】
好ましいポリアミドは、ポリヘキサメチレンアジピン酸アミド、ポリヘキサメチレンセバシン酸アミドおよびポリカプロラクタムならびに殊にカプロラクタム単位5〜95質量%の割合を有するコポリアミド6/66(例えば、BASF SE社のUltramid(登録商標)C31)である。
【0018】
更に、適したポリアミドは、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10313681号明細書、欧州特許出願公開第1198491号明細書および欧州特許第922065号明細書の記載と同様に、ω−アミノアルキルニトリル、例えばアミノカプロニトリル(PA 6)およびヘキサメチレンジアミンを有するアジポジニトリル(PA 66)から、水の存在下でのいわゆる直接重合によって得られる。
【0019】
更に、なお例えば1,4−ジアミノブタンをアジピン酸と高められた温度で縮合させることによって得られるポリアミドが挙げられる(ポリアミド4,6)。前記構造のポリアミドの製造法は、例えば欧州特許出願公開第38094号明細書、欧州特許出願公開第38582号明細書および欧州特許出願公開第39524号明細書に記載されている。
【0020】
さらに、前記のモノマーの2つまたはそれ以上の共重合によって得ることができるポリアミド、または複数のポリアミドの混合物も適しており、その際に混合比は任意である。ポリアミド 66と別のポリアミド、殊にコポリアミド 6/66との混合物は、特に好ましい。
【0021】
更に、このような部分芳香族コポリアミド、例えばPA 6/6TおよびPA 66/6Tが特に有利であることが判明しており、それらのトリアミン含量は0.5質量%未満、特に0.3質量%未満である(欧州特許出願公開第299444号明細書参照)。更に、高耐熱性ポリアミドは、欧州特許出願公開第1994075号明細書の記載から公知である(PA 6T/6I/MXD6)。
【0022】
低いトリアミン含量を有する、有利に部分芳香族のコポリアミドの製造は、欧州特許出願公開第129195号明細書および欧州特許出願公開第129196号明細書に記載の方法により行なうことができる。
【0023】
次のリストは、総括的なものではないが、本発明の範囲内で記載されたポリアミドA)および他のポリアミドA)ならびに存在するモノマーを含む。
【0024】
ABポリマー:
PA4 ピロリドン、
PA6 ε−カプロラクタム、
PA7 エタノールラクタム、
PA8 カプリルラクタム、
PA9 9−アミノペラルゴン酸、
PA 11 11−アミノウンデカン酸、
PA12 ラウリンラクタム、
AA/BBポリマー:
PA46 テトラメチレンジアミン、アジピン酸、
PA66 ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸、
PA69 ヘキサメチレンジアミン、アゼライン酸、
PA610 ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸、
PA612 ヘキサメチレンジアミン、デカンジカルボン酸、
PA613 ヘキサメチレンジアミン、ウンデカンジカルボン酸、
PA 1212 1,12−デカンジアミン、デカンジカルボン酸、
PA 1313 1,13−ジアミノトリデカン、ウンデカンジカルボン酸、
PA6T ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸、
PA 9T 1,9−ノナンジアミン、テレフタル酸、
PAMXD6 m−キシリレンジアミン、アジピン酸、
AA/BBポリマー:
PA 61 ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸、
PA 6−3−T トリメチルヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸、
PA 6/6T (PA 6およびPA 6T参照)、
PA 6/66 (PA 6およびPA 66参照)
PA 6/12 (PA 6およびPA 12参照)、
PA 66/6/610 (PA 66、PA 6およびPA 610参照)、
PA 6I/6T (PA 6IおよびPA 6T参照)、
PA PACM 12 ジアミノジシクロヘキシルメタン、ラウリンラクタム、
PA 6I/6T/PACM 例えば、PA 6I/6T+ジアミノジシクロヘキシルメタン、
PA 12/MACMI ラウリンラクタム、ジメチル−ジアミノジシクロヘキシルメタン、
PA 12/MACMT ラウリンラクタム、ジメチル−ジアミノジシクロヘキシルメタン、テレフタル酸、
PA PDA−T フェニレンジアミン、テレフタル酸。
【0025】
成分B)として、本発明による成形材料は、鉄ペンタカルボニルの熱分解によって得られる、最大10μm(d50値)の粒度(粒径とも呼称される)を有する鉄粉末を0.001〜20質量%、特に0.05〜10質量%、殊に0.1〜5質量%含有する。
【0026】
鉄は、多数の同素体変化で存在する:
1.α−Fe(フェライト)は、体心立方格子を形成し、磁化可能であり、殆ど炭素を溶解せず、928℃まで純粋な鉄の形で存在する。このα−Fe(フェライト)は、770℃(キュリー温度)で強磁性の性質を失い、常磁性になり;770〜928℃の温度範囲内の鉄は、β−Feとも呼称される。普通の温度および少なくとも13000MPaの圧力でα−Feは、約0.20cm3/molの体積減少下でε−Feに移行し、この場合密度は、(20000MPaで)7.85から9.1へ上昇する。
2.γ−Fe(オーステナイト)は、面心立方格子を形成し、非磁性であり、大量の炭素を溶解し、そして928〜1398℃の温度範囲内でのみ観察することができる。
3.δ−Feは、体心立方格子を形成し、そして1398℃と融点1539℃との間で存在する。
【0027】
金属鉄は、一般に銀白色であり、密度7.874(重金属)、融点1539℃、沸点2880℃、比熱(18〜100℃で)約0.5g-1-1、引張強度220〜280N/mm2を有する。前記値は、化学的に純粋な鉄に当てはまる。
【0028】
鉄は、大工業的には鉄鉱石、鉄スラッグ、焙焼された硫化鉄鉱、炉頂粉塵の精錬によって、およびスクラップおよび合金の再溶融によって製造される。
【0029】
本発明による鉄粉末は、特に150℃〜350℃の温度で鉄ペンタカルボニルを熱分解することによって製造される。この場合得られた粒子は、特に球面形、即ち球状を有するかまたは殆ど球状の形(球顆状とも呼称される)を有する。
【0030】
好ましい鉄粉末は、次に記載したような粒度分布(粒径分布)を有し、この場合粒度分布は、レーザー回折により、高度に希釈された水性懸濁液中で(例えば、Beckmann LS13320機器を用いて)測定される。場合によっては、以下記載される粒度(および分布)は、微粉砕および/または篩別によって調節されることができる。
【0031】
この場合、dxx=粒子の全体積XX%は、前記値より小さいことを意味する。
【0032】
50値:最大10μm、特に1.6〜8μm、殊に2.9〜7.5μm、特に有利に3.4〜5.2μm。
【0033】
10値:特に1〜5μm、殊に1〜3μm、特に有利に1.4〜2.7μm。
【0034】
90値:特に3〜36μm、殊に3〜12μm、特に有利に6.4〜9.2μm。
【0035】
好ましくは、成分B)は、97〜99.8g/100g、特に97.5〜99.6g/100gの鉄含量を有する。さらなる金属の含量は、特に1000ppm未満、殊に100ppm未満、特に有利に10ppm未満である。
【0036】
Fe含量は、通常、赤外分光分析法によって測定される。C含量は、特に0.01〜1.2g/100g、有利に0.05〜1.1g/100g、殊に0.4〜1.1g/100gである。このC含量は、好ましい鉄粉末の際に、熱分解に引き続いて水素で還元されないようなものに相当する。C含量は、通常、ASTM E 1019に準拠して酸素流中の試料量を燃焼させ、引続き生じたCO2ガスをIR検出する(Juwe社のLeco CS230またはCS−mat 6250を用いて)ことによって測定される。
【0037】
窒素含量は、特に最大1.5g/100g、有利に0.01〜1.2g/100gである。酸素含量は、特に最大1.3g/100g、有利に0.3〜0.65g/100gである。NおよびOの測定は、試料をグラファイト炉中で約2100℃に加熱することによって行なわれる。この場合、試料中で得られた酸素は、COに変換され、IR検出器により測定される。N含有化合物から反応条件下で遊離されるNは、キャリヤーガスと一緒に搬出され、WLD(熱伝導率検出器/TC)を用いて検出され、そして把握される(ASTM E1019に準拠した2つの方法)。
【0038】
タップ密度は、特に2.5g/cm3、殊に2.7〜4.4g/cm3である。このタップ密度は、一般的に、コンパクト化を達成させるために、粉末を例えば容器中に充填し、そして振盪させた場合の密度である。
【0039】
DIN ISO 9277によるBET表面積は、特に0.1〜10m2/g、殊に0.1〜5m2/g、有利に0.2〜1m2/g、殊に0.4〜1m2/gである。
【0040】
鉄粒子の特に良好な分布を達成させるために、ポリマーを用いるバッチ法を使用することができる。このために、ポリマー、例えばポリオレフィン、ポリエステルまたはポリアミドが適しており、この場合には、特にバッチポリマーは、成分A)と同一である。ポリマー中の鉄の質量割合は、一般的に15〜80質量%、特に20〜40質量%である。
【0041】
成分C)として、本発明による成形材料は、他の添加剤を70質量%まで、特に50質量%まで含有することができる。
【0042】
繊維状または粒子状の充填剤C1)として、炭素繊維、ガラス繊維、ガラス球、アモルファスシリカ、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、白亜、粉末状石英、雲母、硫酸バリウムおよび長石が挙げられ、これらは、1〜50質量%、殊に5〜40質量%、特に有利に10〜40質量%の量で使用される。
【0043】
有利な繊維状充填剤として、炭素繊維、アラミド繊維およびチタン酸カリウム繊維が挙げられ、この場合E−ガラスであるガラス繊維は、特に有利である。このガラス繊維は、ロービングまたは切断ガラス(Schnittglas)として市販の形で使用されてよい。
【0044】
繊維状充填剤は、熱可塑性樹脂とのよりいっそう良好な相容性のためにシラン化合物で表面前処理されていてよい。
【0045】
適したシラン化合物は、次の一般式
(X−(CH2nk−Si−(O−Cm2m+14-k
〔式中、置換基は、次の意味を有する:
Xは、
【化1】

nは、2〜10、有利に3〜4の整数であり、
mは、1〜5、有利に1〜2の整数であり、
kは、1〜3、有利に1の整数である〕で示されるかかるシラン化合物である。
【0046】
有利なシラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシランならびに置換基Xとしてグリシジル基を含有する相応するシランである。
【0047】
シラン化合物は、一般的に0.01〜2質量%、特に0.025〜1.0質量%、殊に0.05〜0.5質量%(Cに対して)の量で表面被覆のために使用される。
【0048】
ロービングとして使用されることができる、成分C1)としてのガラス長繊維も適している。本発明によりロービングとして使用されるガラス繊維は、6〜20μm、有利に10〜18μmの直径を有し、この場合このガラス繊維の横断面は、円形、卵形または角形である。殊に、本発明によれば、Eガラス繊維が使用される。しかし、全ての別のガラス繊維種、例えばAガラス繊維、Cガラス繊維、Dガラス繊維、Mガラス繊維、Sガラス繊維、Rガラス繊維またはこれらの任意の混合物、またはEガラスとの混合物が使用されてもよい。
【0049】
好ましくは、L/D(長さ/直径)比は、100〜4000、殊に350〜2000、殊に有利に350〜700である。
【0050】
針状の鉱物質の充填剤も適当である。
【0051】
針状の鉱物質の充填剤は、本発明の範囲内で著しく顕著な針状特性を有する鉱物質の充填剤である。例として、針状の珪灰石が挙げられる。特に、この鉱物は、8:1〜35:1、特に8:1〜11:1のL/D(長さ直径)比を有する。鉱物質の充填剤は、場合によっては前記のシラン化合物で前処理されていてよいが;しかし前処理は、必ずしも必要ではない。
【0052】
他の充填剤として、カオリン、焼成カオリン、珪灰石、タルクおよび白亜が挙げられ、ならびに付加的に小板状または針状のナノ充填剤は、有利に0.1〜10%の量で使用される。このために、好ましくは、ベーム石、ベントナイト、モンモリロン石、バーミキュライト、ヘクトライトおよびラポナイトが使用される。有機結合剤との小板状のナノ充填剤の良好な相容性を得るために、小板状のナノ充填剤は、公知技術水準により有機的に変性される。本発明によるナノ複合材への小板状または針状のナノ充填剤の添加は、機械的強度のさらなる上昇を生じる。
【0053】
本発明による成形材料は、成分C2)として滑剤を0.05〜3質量%、特に0.1〜1.5質量%、殊に0.1〜1質量%含有することができる。
【0054】
好ましいのは、10〜44個のC原子%、特に12〜44個のC原子を有する脂肪酸のAl塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、またはエステルまたはアミドである。
【0055】
金属イオンは、特にアルカリ土類金属およびAlであり、この場合CaまたはMgは、特に有利である。
【0056】
好ましい金属塩は、Caステアリン酸塩およびCaモンタン酸塩ならびにAlステアリン酸塩である。
【0057】
種々の塩の混合物が使用されてもよく、この場合、混合比は、任意である。
【0058】
カルボン酸は、1価または2価であってもよい。例としては、ペラルゴン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、マルガリン酸、ドデカン二酸、ベヘン酸、特に有利にステアリン酸、カプリン酸ならびにモンタン酸(30〜40個のC原子を有する脂肪酸の混合物)が挙げられる。
【0059】
脂肪族アルコールは、1〜4価であってよい。アルコールの例は、n−ブタノール、n−オクタノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリットであり、この場合には、グリセリンおよびペンタエリトリットが有利である。
【0060】
脂肪族アミンは、1〜3価であってよい。このための例は、ステアリルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジ(6−アミノヘキシル)アミンであり、この場合、エチレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミンが特に有利である。好ましいエステルまたはアミドは、相応するグリセリンジステアラート、グリセリントリステアラート、エチレンジアミンジステアラート、グリセリンモノパルミテート、グリセリントリラウラート、グリセリンモノベヘネートおよびペンタエリトリットテトラステアラートである。
【0061】
種々のエステルまたはアミドの混合物、またはエステルとアミドとの組合せが使用されてよく、この場合混合比は、任意である。
【0062】
本発明による成形材料は、成分C3)として、Cu安定剤、特にCu(I)ハロゲン化物0.1〜1.5質量%、殊に0.1〜1質量%をアルカリ金属ハロゲン化物、特にKJとの殊に比1:4での混合物で含有することができるか、または立体障害フェノールまたはその混合物を含有することができる。
【0063】
1価銅の塩として、特に酢酸銅(I)、塩化銅(I)、臭化銅(I)およびヨウ化銅(I)がこれに該当する。前記の1価銅の塩は、ポリアミドに対して銅を5〜500ppm、特に10〜250ppm含有している。
【0064】
好ましい性質は、殊に、銅が分子状の分布でポリアミド中に存在する場合に得られる。これは、成形材料に、ポリアミド、1価銅の塩およびアルカリ金属ハロゲン化物を均一な固溶体の形で含有する濃厚物が添加される場合に達成される。典型的な濃厚物は、例えばポリアミド79〜95質量%と、ヨウ化銅または臭化銅とヨウ化カリウムとの混合物21〜5質量%とからなる。均一な固溶体中の銅の濃度は、有利に固溶体の全質量に対して0.3〜3質量%、殊に0.5〜2質量%であり、ヨウ化銅(I)とヨウ化カリウムとのモル比は、1〜11.5、特に1〜5である。
【0065】
前記濃厚物に適したポリアミドは、ホモポリアミドおよびコポリアミド、殊にポリアミド6およびポリアミド6.6である。
【0066】
立体障害フェノールC3)として、原理的にフェノール構造を有しかつフェノール環に少なくとも1個の粗大な基を有する、全ての化合物が適している。
【0067】
特に、例えば式
【化2】

〔式中、
1およびR2は、アルキル基、置換アルキル基または置換トリアゾールを表わし、この場合基R1およびR2は、同一でも異なっていてもよく、およびR3は、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基または置換アミノ基を表わす〕で示される化合物がこれに該当する。
【0068】
記載された種類の酸化防止剤は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第2702661号明細書(米国特許第4360617号明細書)中に記載されている。
【0069】
好ましい立体障害フェノールのさらなる群は、置換ベンゼンカルボン酸、殊に置換ベンゼンプロピオン酸に由来する。
【0070】
前記種類からの特に好ましい化合物は、式
【化3】

〔式中、R4、R5、R7およびR8は、互いに無関係に、それらの側で置換されていてよいC1〜C8アルキルであり(その中の少なくとも1個は、粗大な基である)、R6は、主鎖中にC−O−基を有していてもよい、1〜10個のC原子を有する2価脂肪族基である〕で示される化合物である。
【0071】
前記式に相当する好ましい化合物は、
【化4】

である。
【0072】
例示的に全体的に立体障害フェノールとして次のものが挙げられる:
2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシ−フェノール)−プロピオネート]、ジステアリル−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ−[2.2.2]オクト−4−イル−メチル−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル−3,5−ジステアリル−チオトリアジルアミン、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,6−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン、4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジ−第三ブチルフェノール)、3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル−ジメチルアミン。
【0073】
2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−第三ブチルフェニル)、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート(Irganox(登録商標)259)、ペンタエリトリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]ならびにN,N’−ヘキサメチレン−ビス−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド(Irganox(登録商標)1098)および特に好適であるCiba Geigy社の前記Irganox(登録商標)245は、特に有効であることが証明された。
【0074】
単独で、または混合物として使用されてよい酸化防止剤C)は、成形材料A)〜C)の全質量に対して0.05〜3質量%、特に0.1〜1.5質量%、殊に0.1〜1質量%の量で含有されている。
【0075】
多くの場合に、フェノール系ヒドロキシ基に対してオルト位で立体障害基1個以下を有する立体障害フェノールは、殊に長時間に亘っての拡散光中での貯蔵の際に色安定性を評価した場合、特に好ましいことが証明された。
【0076】
本発明による成形材料は、成分C4)としてニグロシン0.1〜2質量%、殊に0.25〜1.5質量%を含有することができる。
【0077】
ニグロシンは、一般的にウールの染色およびウールの捺染、シルクの黒色染色、皮革、靴クリーム、ワニス、プラスチック、焼付ラッカー、インキおよび類似物の着色におけるインジュリンに関連した、種々の実施態様(水溶性、油可溶性、スピリット可溶性)の黒色または灰色のフェナジン染料の群であり、ならびに鏡検法における染料として使用される。
【0078】
ニグロシンは、技術的にニトロベンゼン、アニリンおよび塩酸アニリンを金属鉄およびFeCと一緒に加熱することによって取得される(ラテン語ニゲル=黒の名称)。
【0079】
成分C4は、遊離塩基として使用されることができるか、または塩(例えば、塩酸塩)として使用されることもできる。
【0080】
ニグロシンについてのさらなる詳細は、例えば電子工学事典のRoempp Online,Version 2.8,Thieme−Verlag,2006,見出し語"Nigrosin"から確認することができる。
【0081】
更に、通常の添加剤C)は、例えば25質量%まで、特に20質量%までの量でのゴム弾性ポリマーである(しばしば、耐衝撃変性剤、エラストマーまたはゴムとも呼称される)。
【0082】
この場合には、これは特に一般的に、有利には次のモノマー少なくとも2つから形成されているコポリマーである:エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブテン、イソプレン、クロロプレン、ビニルアセテート、スチレン、アクリルニトリルおよびアルコール成分中に1〜18個のC原子を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル。
【0083】
この種のポリマーは、例えばHouben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,第14/1巻(Georg−Thieme−Verlag,Stuttgart,1961),第392〜406頁およびC.B.Bucknall,"Toughened Plastics"(Applied Science Publisher,London,1977)に記載されている。
【0084】
以下、このようなエラストマーの若干の好ましい種類を記載する。
【0085】
このようなエラストマーの有利な種類は、いわゆるエチレン−プロピレン(EPM)またはエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ゴムである。
【0086】
EPMゴムは一般的に、事実上二重結合をもはや有しないのに対して、EPDMゴムは二重結合1〜20個/C原子100個を有していてよい。
【0087】
EPDMゴムのためのジエン−モノマーとして、例えば共役結合されたジエン、例えばイソプレンおよびブタジエン、5〜25個のC原子を有する共役結合されていないジエン、例えばペンタ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,5−ジエン、2,5−ジメチルヘキサ−1,5−ジエンおよびオクタ−1,4−ジエン、環式ジエン、例えばシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエンおよびジシクロペンタジエンならびにアルケニルノルボルネン、例えば5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、2−イソプロペニル−5−ノルボルネンおよびトリシクロジエン、例えば3−メチル−トリシクロ(5.2.1.0.2.6)−3,8−デカジエンまたはその混合物が挙げられる。ヘキサ−1,5−ジエン、5−エチリデンノルボルネンおよびジシクロペンタジエンが好ましい。EPDMゴムのジエン含量は、ゴムの全質量に対して、特に0.5〜50質量%、殊に1〜8質量%である。
【0088】
EPMゴムまたはEPDMゴムは、特に反応性カルボン酸または該カルボン酸の誘導体でグラフトされていてもよい。この場合には、例えばアクリル酸、メタクリル酸およびこれらの誘導体、例えばグリシジル(メタ)アクリラート、ならびに無水マレイン酸が挙げられる。
【0089】
好ましいゴムのもう1つの群は、エチレンと、アクリル酸および/またはメタクリル酸および/またはこれらの酸のエステルとのコポリマーである。付加的に、ゴムは、まだなおジカルボン酸、例えばマレイン酸およびフマル酸またはこれらの酸の誘導体、例えばエステルおよび無水物、および/またはエポキシ基含有モノマーを含有していてよい。前記のジカルボン酸誘導体またはエポキシ基含有モノマーは、特に一般式IまたはIIまたはIIIまたはIV
【化5】

〔式中、R1〜R9は、水素または1〜6個のC原子を有するアルキル基を表わし、mは、0〜20の整数であり、gは、0〜10の整数であり、pは、0〜5の整数である〕で示されるジカルボン酸基含有モノマーまたはエポキシ基含有モノマーをモノマー混合物に添加することによってゴム中に組み入れられる。
【0090】
好ましくは、基R1〜R9は水素を表わし、この場合mは0または1を表わし、およびgは1を表わす。相応する化合物は、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、アリルグリシジルエーテルおよびビニルグリシジルエーテルである。
【0091】
式I、IIおよびIVの有利な化合物は、マレイン酸、無水マレイン酸およびアクリル酸および/またはメタクリル酸のエポキシ基含有エステル、例えばグリシジルアクリラート、グリシジルメタクリラートおよび第三級アルコールとのエステル、例えば第三級ブチルアクリラートである。後者は確かに遊離カルボキシル基を有しないが、しかしそれらの挙動において遊離酸に近く、したがって潜在性カルボキシル基を有するモノマーと呼ばれる。
【0092】
好ましくは、コポリマーは、エチレン50〜98質量%、エポキシ基を有するモノマーおよび/またはメタクリル酸および/または酸無水物基を有するモノマー0.1〜20質量%ならびに(メタ)アクリル酸エステルの残りの量からなる。
【0093】
特に好ましいのは、
エチレン50〜98質量%、殊に55〜95質量%、
グリシジルアクリラートおよび/またはグリシジルメタクリラート、(メタ)アクリル酸および/または無水マレイン酸0.1〜40質量%、殊に0.3〜20質量%、および
n−ブチルアクリラートおよび/または2−エチルヘキシルアクリラート1〜45質量%、殊に5〜40質量%からなるコポリマーである。
【0094】
アクリル酸および/またはメタクリル酸の好ましい別のエステルは、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルおよびイソブチルエステルもしくは第三ブチルエステルである。
【0095】
それと共に、ビニルエステルおよびビニルエーテルもコモノマーとして使用されてよい。
【0096】
前記のエチレンコポリマーは、それ自体として知られた方法によって、好ましくは高圧および高められた温度下でのランダム共重合によって、製造されることができる。相応する方法は、一般に公知である。
【0097】
また、好ましいエラストマーは、乳化重合体であり、この乳化重合体の製造は、例えばBlackleyの論文"Emulsion Polymerization"中に記載されている。使用可能な乳化剤および触媒は、自体公知である。
【0098】
原則的に、均質に形成されたエラストマーが使用されてもよいし、シェル構造を有するエラストマーが使用されてもよい。シェル状構造は、個々のモノマーの添加順序によって決定され;ポリマーの形態も、この添加順序によって影響を及ぼされる。
【0099】
この場合、エラストマーのゴム部分を製造するためのモノマーとしての代替物として、アクリラート、例えばn−ブチルアクリラートおよび2−エチルヘキシルアクリラート、相応するメタクリラート、ブタジエンおよびイソプレンならびにこれらの混合物が挙げられる。前記モノマーは、さらなるモノマー、例えばスチレン、アクリルニトリル、ビニルエーテルおよびさらなるアクリラートまたはメタクリラート、例えばメチルメタクリラート、メチルアクリラート、エチルアクリラートおよびプロピルアクリラートと共重合されてよい。
【0100】
エラストマーの軟質相またはゴム相(0℃未満のガラス転移温度を有する)は、コア、外側の鞘または中央のシェル(二重シェル構造よりも多く有するエラストマーの場合)を表わしてよく;多重シェルのエラストマーの場合、複数のシェルは、1つのゴム相からなっていてもよい。
【0101】
ゴム相と共に、まだなお1つ以上の硬質成分(20℃を上廻るガラス転移温度を有する)がエラストマーの構造に関与する場合には、このエラストマーは、一般的に、主要モノマーとしてのスチレン、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、例えばメチルアクリラート、エチルアクリラートおよびメチルメタクリラートを重合させることによって製造される。それと共に、この場合には、より少ない含量の他のコモノマーが使用されてもよい。
【0102】
幾つかの場合に、表面上に反応性基を有するエマルションポリマーを使用することは、好ましいことが判明した。この種の基は、例えばエポキシ基、カルボキシル基、潜在性カルボキシル基、アミノ基またはアミド基ならびに一般式
【化6】

[式中、置換基は、次の意味を有してよい:
10は、水素またはC1〜C4−アルキル基を表わし、
11は、水素、C1〜C8アルキル基またはアリール基、殊にフェニルを表わし、
12は、水素、C1〜C10アルキル基、C6〜C10にアリール基または−OR13を表わし、
13は、場合によりO含有基またはN含有基で置換されていてよいC1〜C8アルキル基またはC6〜C10にアリール基を表わし、
Xは、1つの化学結合、C1〜C10アルキレン基またはC6〜C10にアリーレン基、または
【化7】

を表わし、
Yは、O−ZまたはNH−Zを表わし、および
Zは、C1〜C10−アルキレン基またはC6〜C12−アリーレン基を表わす]で示されるモノマーを共用することによって導入されてよい官能基である。
【0103】
また、欧州特許出願公開第208187号明細書中に記載されているグラフトモノマーは、表面上への反応性基の導入に適している。
【0104】
他の例としては、さらにアクリルアミド、メタクリルアミドおよびアクリル酸またはメタクリル酸の置換されたエステル、例えば(N−第三ブチルアミノ)−エチルメタクリラート、(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリラート、(N,N−ジメチルアミノ)−メチルアクリラートおよび(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリラートが挙げられる。
【0105】
さらに、ゴム相の粒子は、架橋されていてもよい。架橋剤として作用するモノマーは、例えばブタ−1,3−ジエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタラートおよびジヒドロジシクロペンタジエニルアクリラートならびに欧州特許出願公開第50265号明細書中に記載の化合物である。
【0106】
更に、いわゆるグラフト架橋性モノマー(graft−linking monomers)、即ち重合の際に異なる速度で反応する、2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーが使用されてもよい。有利には、少なくとも1個の反応基が残りのモノマーとほぼ同じ速度で重合し、一方で、別の反応基(または複数の反応性基)が例えば明らかによりいっそう緩徐に重合する化合物が使用される。異なる重合速度は、ゴム中に一定の割合の不飽和二重結合を必然的に伴う。引続き、このようなゴム上に更なる相がグラフトされる場合には、ゴム中に存在する二重結合は、少なくとも部分的にグラフトモノマーと、化学結合の形成下に反応し、即ちグラフトされた相は、少なくとも部分的に化学結合を介してグラフト主鎖と結合している。
【0107】
このようなグラフト架橋性モノマーの例は、アルキル基含有モノマー、特にエチレン系不飽和カルボン酸のアリルエステル、例えばアリルアクリラート、アリルメタクリラート、ジアリルマレアート、ジアリルフマラート、ジアリルイタコナートまたは前記ジカルボン酸の相応するモノアリル化合物である。これと共に、多数のさらなる適したグラフト架橋性モノマーが存在し;この場合、詳細については、例えば米国特許第4148846号明細書が指摘されてよい。
【0108】
一般的に、耐衝撃性改良性ポリマー中のこれらの架橋性モノマーの割合は、耐衝撃性改良性ポリマーに対して、5質量%まで、好ましくは3質量%以下である。
【0109】
以下に、好ましい幾つかのエマルションポリマーを挙げることができる。この場合には、最初に1つのコアおよび少なくとも1つの外側シェルを有するグラフトポリマーを挙げることができ、このグラフトポリマーは、次の構造を有する:
【表1】

【0110】
多シェル状構造を有するグラフトポリマーの代わりに、ブタ−1,3−ジエン、イソプレンおよびn−ブチルアクリラートまたはこれらのコポリマーからなる均質な、即ち1つのシェルを有するエラストマーが使用されてもよい。これらの生成物も、架橋性モノマーまたは反応性基を有するモノマーを併用することによって製造されることができる。
【0111】
好ましいエマルションポリマーの例は、n−ブチルアクリラート/(メタ)アクリル酸−コポリマー、n−ブチルアクリラート/グリシジルアクリラート−コポリマーまたはn−ブチルアクリラート/グリシジルメタクリラート−コポリマー、n−ブチルアクリラートからなる内側のコアを有するかまたはブタジエンベースでかつ前記のコポリマーからなる外側の鞘を有するグラフトポリマーおよびエチレンと反応性基を供給するコモノマーとのコポリマーである。
【0112】
記載されたエラストマーは、別の常用の方法により、例えば懸濁重合によって製造されてもよい。
【0113】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第3725576号明細書、欧州特許出願公開第235690号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3800603号明細書および欧州特許出願公開第319290号明細書中に記載されているようなシリコーンゴムは、同様に有利である。
【0114】
勿論、前記のゴム種の混合物が使用されてもよい。
【0115】
成分C)として、本発明による熱可塑性成形材料は、常用の加工助剤、例えば安定剤、酸化遅延剤、熱分解に抗する薬剤、紫外線による分解に抗する薬剤、滑剤および離型剤、着色剤、例えば染料および顔料、核形成剤、可塑剤等を含有することができる。
【0116】
酸化遅延剤および熱安定剤のための例として、熱可塑性成形材料の質量に対して1質量%までの濃度での立体障害フェノールおよび/またはホスフィットおよびアミン(例えば、TAD)、ヒドロキノン、芳香族第二級アミン、例えばジフェニルアミン、前記群の種々の置換された代表例およびこれらの混合物が挙げられる。
【0117】
一般に成形材料に対して2質量%までの量で使用されるUV安定剤としては、種々の置換されたレゾルシン、サリチレート、ベンゾトリアゾールおよびベンゾフェノンが挙げられる。
【0118】
無機顔料、例えば二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、酸化鉄およびカーボンブラック、さらに有機顔料、例えばフタロシアニン、キナクリドン、ペリレンならびに染料、例えばアントラキノンは、着色剤として添加されてよい。
【0119】
核形成剤としては、ナトリウムフェニルホスフィナート、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素ならびに有利にタルクが使用されてよい。
【0120】
本発明による熱可塑性成形材料は、自体公知の方法により製造されてよく、前記方法においては、出発成分は通常の混合装置中、例えばスクリュー押出機、ブラベンダーミルまたはバンバリーミル中で混合され、引続き押出される。この押出後、この押出物は冷却され、かつ破砕されてよい。また、個々の成分は前混合されてもよく、次に残りの出発材料は、個々におよび/または同様に混合されて添加されてよい。混合温度は、一般的に230〜320℃である。
【0121】
更に、好ましい作業形式により、成分B)ならびに場合によってはC)は、プレポリマーと混合されてよく、調製されてよく、および造粒されてよい。得られた顆粒は、引き続き、固相で不活性ガス下で連続的または非連続的に成分A)の融点未満の温度で所望の粘度になるまで縮合される。
【0122】
本発明による長ガラス繊維強化されたポリアミド成形材料は、長形繊維強化されたペレットを製造するための公知方法によって、殊に引抜成形法によって製造されてよく、この場合連続的な繊維ストランド(ロービング)は、ポリマー溶融液で完全に飽和され、引続き冷却され、および細断される。こうして得られた長形繊維強化されたペレットは、有利に3〜25mm、殊に5〜14mmのペレット長さを有し、通常の加工方法(例えば、射出成形、加圧成形)で成形品に後加工されることができる。
【0123】
このペレットの好ましいL/D比は、引抜成形後に2〜8、殊に3〜4.5である。
【0124】
この成形品における特に好ましい性質は、注意深い加工方法で達成することができる。これに関連して、注意深くとは、特に過剰の繊維破壊およびそれに付随する繊維長の著しい減少が実質的に回避されることである。射出成形において、これは、大きな直径および低い圧縮比、殊に2より小さい圧縮比および大きく寸法決定されたノズルチャンネルおよび供給路が使用されることを意味する。これを補足する要件は、高いシリンダ温度が長形ペレットの急速な溶融(接触加熱)に使用され、および繊維が過剰の剪断応力によって強く微粉砕されすぎないようにすることにある。この手段を考慮しながら、短繊維強化された成形材料から製造された比較可能な成形品よりも長い平均繊維長を有する本発明による成形品が得られる。これによって、殊に引張弾性率、極限引張強さおよびノッチ付き衝撃抵抗における、性質の付加的な改善が達成される。
【0125】
例えば、射出成形による成形品の加工後に、繊維長は、通常、0.5〜10mm、殊に1〜3mmである。
【0126】
本発明による熱可塑性成形材料は、殊に溶接法、例えば振動溶接法またはレーザー溶接法による良好な加工可能性、同時に良好な機械的性質、ならびに明らかに改善された結合継目および表面ならびに熱安定性を示す。
【0127】
前記材料は、任意の種類の繊維、箔および成形品の製造に適している。以下、若干の例が記載されている:シリンダヘッドカバー、オートバイ用カバー、吸気マニホールド、チャージエアクーラーキャップ、プラグコネクター、ギヤーホイール、冷却ファンホイールおよび冷却水用タンク。
【0128】
電気分野および電子分野において、流動性が改善されたポリアミドは、プラグ、プラグ部品、プラグコネクタ、メンブランスイッチ、プリント回路板モジュール、マイクロエレクトロニックコンポーネント、コイル、I/0 プラグコネクタ、プリント回路板(PCBs)用プラグ、フレキシブルプリント回路(FPCs)用プラグ、フレキシブル集積回路(FFCs)用プラグ、高速プラグコネクタ、端子板、コネクタプラグ、デバイスコネクタ、ケーブルハーネスコンポーネント、回路マウント、回路マウントコンポーネント、三次元射出成形回路マウント、電気的コネクタおよびメカトロニクスコンポーネントを製造するために使用することができる。
【0129】
自動車用室内では、ダッシュボード、ステアリングコラムスイッチ、シートコンポーネント、ヘッドレスト、センタコンソール、ギヤコンポーネントおよびドアモジュールのために使用することができ、自動車室外では、ドアグリップ、外装ミラーコンポーネント、ウインドシールドワイパーコンポーネント、ウインドシールドワイパー保護ハウジング、グリル、ルーフレール、サンルーフフレーム、エンジンカバー、シリンガヘッドカバー、吸込み管(殊に、吸込みマニホルド)、ウィンドシールドワイパーならびにボディ外側部のために使用することができる。
【0130】
台所範囲および家庭範囲のために、前記の流動性が改善されたポリアミドは、台所用品のコンポーネント、例えばフライ揚げ器、アイロン、ボタンの製造のため、ならびに園芸−余暇範囲では、例えば灌漑システムのためのコンポーネントまたは園芸用品およびドアグリップへの用途のために使用することができる。
【実施例】
【0131】

I.異なる鉄粉末の試験
次の成分を使用した:
成分A/1
ISO 307により25℃で96質量%の硫酸中の0.5質量%の溶液として測定した、148ml/gの粘度数VZを有するポリアミド 66。(BASF SE社のUltramid(登録商標)A27を使用した。)
成分A/2
VZ=65ml/gを有する、m−キシリレンジアミンとアジピン酸とから構成されたポリアミド(モル比1:1)。(BASF SE社のUltramid(登録商標)X17)
成分A/3
176ml/gのVZを有するPA 6/66(80:20)(Ultramid(登録商標)C31−01)
成分A/4
ISO 307による148ml/gのVZを有するPA 6(Ultramid(登録商標)B27)
【0132】
成分B/1
全ての鉄粉末は、CAS No.7439−89−6を有する。Fe、C、NおよびO含量の測定のために、明細書5〜6頁参照のこと。
【表2】

粒度分布:(Beckmann LS13320を用いてのレーザー回折)
10 1.4〜2.7μm
50 2.9〜4.2μm
90 6.4〜9.2μm
BET表面積 0.44m2/g(DIN ISO 9277)
【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

成分B/6
ポリエチレン中のB/1 25%から構成されたマスターバッチ
成分B/7
ポリエチレン中のB/1 75%から構成されたマスターバッチ
成分B/1V
Ciba Spezialtaetenchemie GmbH社のShelfplus 02 2400(ポリエチレン中の20%のFe粉末マスターバッチ、d50=30μm)
DIN ISO 9277によるBET表面積:20m2/g
C含量:0.012g/100g
【0133】
成分C/1:
ガラス繊維
成分C/2a
ステアリン酸カルシウム
成分C/3
比1:4でのCuI/KI(PA6中の濃度20%のマスターバッチ)
成分C/4
ニグロシンを有する濃度40%のPA6マスターバッチ
成分C/5
Naピロリン酸塩
成分C/6
NaCl
成分C/1V
Fe23、DIN 66131による比表面積(BET)6.8〜9.2m2/g
(Lanxess社のBayoxid E8708)
成分C/2V
Fe34、BET 0.23m2/g(Minelco GmbH社のMinelco Magni F50)
【表7】

Lupasol(登録商標)=BASF SE社の登録商標
第一級/第二級/第三級アミンの比を13C−NMR分光分析法により測定した。
【0134】
成形材料をZSK 30上で10kg/hの通過量および約260℃の平面温度プロファイルで製造した。
【0135】
次の測定を実施した:
ISO 527による引張試験、空気循環路内で220℃での熱貯蔵前および後の力学的特性値
VZ:c=96%の硫酸中で5g/l、ISO 307による
充填圧力をISO 527による引張棒の射出成形の際に切り換え点での圧力として測定した。
【0136】
成形材料の組成および測定の結果は、表から確認することができる。
【0137】
【表8】

【0138】
WO 2005/7727およびWO 2006/74912と比較のための実施例5−欧州特許第1846506号明細書と比較のための実施例12および13
【0139】
【表9】

【0140】
II. マトリックスとしてのPA 46
成分は、項目Iに相応するが、しかし、成分A 5としてVZ:151ml/gを有するPA 46(DSM社のStanyl(登録商標))を使用し、成分C/2bとしてエチレン−ビスステアリルアミドを使用した。
【0141】
【表10】

【0142】
【表11】

【0143】
【表12】

【0144】
III. 長ガラス繊維強化された組成物
成分は、I.に相当するが、しかし、成分C/8としてφ 17μmを有するガラス繊維ロービングを使用した。
【0145】
成形材料を次のように製造した:
1)引抜成形条件
押出機の温度調節285℃
浸室290℃
ロービングの予熱180℃
引抜速度9〜12m/分
ペレット長さ12mm
ペレットのL/D 4。
2)射出成形後のガラス繊維L/D 120。
【0146】
性質の測定に使用された試験体を射出成形(噴入温度280℃、溶融温度80℃)により得た。
【0147】
【表13】

【0148】
【表14】

【0149】
【表15】

【0150】
IV. 振動溶接
項目Iと同じ成分を使用した。
【0151】
【表16】

【0152】
【表17】

【0153】
試験報告:工業用プラスチックの振動溶接
試験体
溶接プロセスおよび継目品質に対する材料の影響を試験するために、シート状の試験体を使用する。射出成形品の全幅に亘ってフィルムゲートを使用することにより、均一な溶融液配向を達成し、不均一性を回避する。射出成形シートは、4mmの厚さを有し、スプルー領域は、シートの寸法が110mm×110mmであるように鋸引きすることによって除去される。引続き、丸鋸を使用し、シートを射出方向に半分にし、約55mm×110mmの最終寸法を得る。次の溶接プロセスにおいて、外側(鋸引きされていない)面を溶接する。440mm2の継目面積を生じる。標準シートは、幾何学的に簡単な試験体として、継目品質に対する材料および/またはパラメーターの影響を分析するために使用される。シートの簡単な形状は、溶接工具内での確実な固定を可能にし、それというのも、全長が工具内で両側に支持されているからである。
【0154】
溶接機
溶接試験をBranson社のM−102H超音波振動溶接機を溶接試験を実施するために使用する。
【0155】
溶接プロセス
シートを溶接するための使用される振動の形は、"長手方向で線形"である。振動溶接試験のために使用されるモードは、"一定の圧力レベルを有する、変位制御される溶接"である。試験は、0.9mmの一定の振幅および1.6MPaの一定の溶接圧力で行なわれる。振動周波数として、約220Hzである共振周波数を使用する。2つの溶接試験をそれぞれパラメーター/材料設定について実施する。
【0156】
機械的試験
引張試験および曲げ試験に必要とされる平らな試験体を丸鋸で溶接された面に対して垂直方向に25mmの幅に切断する。それぞれパラメーター/材料設定について、溶接されたシートからの3つの試験体を試験する。この場合、溶接ビードは、取り除かない。
【0157】
V:部分芳香族ポリアミド(6T/6I/MXD.T/I)
【表18】

【0158】
A/6
6.T単位64質量%、6.I 29質量%およびMXD.T/MXD.I単位7質量%を有する6.T/6.I/MXD.T/Iをベースとする部分芳香族ポリアミド。基礎ポリマーに対して測定されたIV:90ml/g(25℃で96%の硫酸中0.5質量%、ISO 307)。
T=テレフタル酸 I=イソフタル酸 MXD=m−キシリレンジアミン。
A/4(項目I.参照)
148ml/gのVZを有するポリアミド6(ISO 307;Ultramid(登録商標)B27)。
B/1
ポリアミド66中のB/1 25質量%(項目I.参照)から形成されたマスターバッチ。
C/1
平均直径10μmを有するガラス繊維
C/2
タルク
C/3
部分酸化されたポリエチレンワックス(酸価数15〜19mg KOH/g;120℃での溶融粘度:350〜470mm2/秒((DGF M−III 8);Luwax(登録商標) OA5))
C/4
種々の添加剤からの混合物(質量部):
N,N’−ヘキサン−1,6−ジヒルビス(3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド))(Irganox(登録商標)1098)1部
次の構造式を有する高分子量の障害アミン(Chimassorb(登録商標)2020)1部
【化8】

ビス(6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(Tinuvin(登録商標)360)1部
カーボンブラックマスターバッチ(LDPE中30質量%)4部
C/5
無水マレイン酸で官能化されたエチレンブチルアクリレートゴム(Fusabond(登録商標)NM 598D)
C/6
4,3’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(Naugard(登録商標)445)
C/7
w〜25000g/molおよび第一級アミン:第二級アミン:第三級アミンの1:1.20:0.76の比を有するポリエチレンイミン(Lupasol(登録商標)WF)
C/8
1:4の比のCuI/KI
C/9
モンタン酸カルシウム
【0159】
【表19】

【0160】
【表20】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)ポリアミド10〜99.999質量%、
B)鉄ペンタカルボニルを熱分解することによって得られる、最大10μm(d50値)の粒度を有する鉄粉末0.001〜20質量%、
C)他の添加剤0〜70質量%を含有する熱可塑性成形材料であって、この場合、成分A)〜C)の質量%の総和は、100%となる、上記の熱可塑性成形材料。
【請求項2】
鉄粉末B)がDIN ISO 9277による、0.1〜5m2/gのBET比表面積を有する、請求項1記載の熱可塑性成形材料。
【請求項3】
成分B)が1〜5μmのd10値を有する、請求項1または2記載の熱可塑性成形材料。
【請求項4】
成分B)が3〜35μmのd90値を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項5】
成分B)が0.05〜1.2g/100gのC含量を有する(ASTM E 1019)による、請求項1から4までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項6】
成分B)が2.5〜5g/cm3のタップ密度を有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項7】
成分B)がリン酸鉄、リン化鉄またはSiO2で粒子の表面上で被覆されている、請求項1から6までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項8】
繊維、箔および成形品を製造するための請求項1から7までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料の使用。
【請求項9】
振動溶接法またはレーザー溶接法によって成形品を製造するための、請求項1から7までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料の使用。
【請求項10】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料から得られた、繊維、箔および成形品。

【公表番号】特表2013−508523(P2013−508523A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535738(P2012−535738)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065582
【国際公開番号】WO2011/051123
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】