説明

耐熱ICタグ

【課題】耐薬品性と耐熱性を共に良好に有する耐熱ICタグを、ICタグの性能を損なわずに実現する。
【解決手段】耐熱ICタグ1は、最外層の保護層4を薬液などの透過性がなくかつ耐熱性を有する石英ガラス、ホウ珪酸ガラスなどのガラス材料で構成し、さらにICチップ2とアンテナ3を備えた非接触型のICタグと最外層の保護層4との間の空隙を、真空とするかまたは少なくともその一部を連続気泡を有する断熱材5で充填した構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性を有するICタグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耐熱性能の高いICタグとして、たとえば非接触型のICタグを耐火層で覆い、さらにその耐火層を保護層で覆った構造からなるICタグであって、耐火層が、熱伝導率の低い断熱材と発泡剤による気泡、中空球体またはそれらの複合物からなる空気層で構成されているものが「耐火ICタグ」などとして知られている。
【0003】
しかしながら、従来知られた耐火ICタグには、以下のような問題が生じることがありうる。たとえば保護層が合成樹脂で形成されている場合には、ICタグが取り付けられる対象物の製造工程に酸やアルカリを用いる洗浄などの薬液処理工程がある場合には、ICタグを構成する保護層の耐久性が不十分とされることがある。
【0004】
また、セメントやヒートレスガラスのような耐熱性の高い固体に独立気泡が多く含まれる発泡体や中空球体を耐火層として用いる場合には、気泡内の気体が高温で膨張して破損の原因となることがある。
【0005】
さらにまた、耐火層の断熱材を、たとえば連続気泡を有するガラス繊維からなる不織布単独、およびその断熱材に発泡剤による気泡や中空球体を組み合わせてなる空気層で構成される場合、それらは基体や液体の透過性を有することから、薬液槽へのディッピングを伴う工程において、薬液がICタグと接触することがあり、耐久性に乏しい場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−230503号公報
【特許文献2】特開2002−135232号公報
【特許文献3】特開2003−017514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明によって解決しようとする課題は、ICタグを取り付ける製品の製造工程において、ICタグに高い耐薬品性と高い耐熱性が求められる場合にも、そのような用途に適用可能な耐熱ICタグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の耐熱ICタグは、最外層の保護層を薬液などの透過性がなくかつ耐熱性を有するガラス材料で構成し、さらに非接触ICタグと最外層の保護層との間の空隙を、真空とするかまたは少なくともその一部を連続気泡を有する断熱材で充填した構造を有することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の耐熱ICタグは、透過性の無いガラス材料で最外層を構成しているので、ICタグを取り付ける製品の製造プロセスにおいて薬品洗浄槽やメッキ槽などの液槽に製品を浸漬する際に、ICタグ内部への液体の侵入を防止できる。さらにICタグと最外層である保護層との間の空隙を、真空とするかまたは少なくともその一部を連続気泡を有する断熱材で充填することにより、内部の気体の膨張によるICタグの破損を防止できる。
【0010】
さらに、少なくとも非接触タグの近傍に連続気泡を有する断熱材を充填した後に、ガラス材料からなる保護層の内部を排気して、耐熱ICタグの内部を真空状態にすることによって、より耐熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の耐熱ICタグの一つの構造例を示した説明図である。
【図2】図2は本発明の耐熱ICタグの他の構造例を示した説明図である。
【図3】図3は本発明の耐熱ICタグの他の構造例を示した説明図である。
【図4】図4は実施例に記載の孔あきフランジつきパイプを示した説明図である。
【図5】図5は孔あきフランジのフランジ孔部に本発明の耐熱ICタグを取り付けた状態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
非接触型のICタグに耐薬品性、耐熱性を同時に付与するという目的を、最外層の透過性の無いガラス材料からなる保護層と、ICタグと最外層である保護層との間の空隙を真空とするかまたは少なくともその一部を連続気泡を有する断熱材で充填する構成を有することにより、ICタグの性能を損なわずに実現した。
【0013】
さらに、少なくとも非接触タグの近傍に連続気泡を有する断熱材を充填した後に、ガラス材料からなる保護層の内部を排気して、耐熱ICタグの内部を真空状態にすることによって、より耐熱性を向上させることができる。
【0014】
本発明の耐熱ICタグを構成する前記最外層は、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、アルミノホウ珪酸ガラス等の耐熱性ガラスからなる容器として構成できる。前記容器の形状は特に限定されるものではないが、強度と取扱いの容易さから円筒状、角柱状等の形状が好ましく用いられる。
【0015】
本発明の耐熱ICタグを構成する前記断熱材は、真空または前記容器の内部に充填されたセラミックウール、ガラスウール、ロックウールなどの無機繊維体や、レンガ、セラミックス形成体などの耐火断熱材であって、独立気泡を含まず液体や気体を透過する性質を有する断熱材であるものが好ましく用いられる。
【0016】
本発明にかかるICタグは非接触型のICタグであり、ICチップとアンテナからなるインレットが覆われた構成物が装填されたものである。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の一実施例の概略図であって、ICチップ2とアンテナ3を備えた日接触型のICタグをホウ珪酸ガラスからなる容器(最外層)4に収め、その後にセラミックウールからなる断熱材5を容器4内部に充填して作成した耐熱ICタグを示す。
またICタグのアンテナと円筒形容器の方位関係を変更した構造の例を図2に示す。
【0018】
実施例1の耐熱ICタグは、以下のように作成した。外径24mm、内径22mmのホウ珪酸ガラス管の片端を封じ切りした後に切断した。その中に非接触型ICタグを納め、さらにガラス管と前記ICタグの間の空隙にロックウールを1.3g(見かけ体積8.2ml)充填した。次に開放端側から前記ホウ珪酸ガラス管の内部を真空排気し、真空度0.5Pa以下まで減圧した後に開放端側を加熱し、容器部分が高さ26mmになるように封じ切りして密封した。
【0019】
実施例1の耐熱ICタグの耐熱性を評価するために、延期耐熱タグを表1に示す温度、時間の条件で電気炉中に保持した後に取り出した。大気中に放置して常温まで冷却した後に、リーダを用いて使用可能か否かを評価した。結果は表1に記載のとおりであり、○印は動作したことを示し、×印は動作しなかったことを意味する。450℃で30分間の高温保持を行った後でもICタグとして使用可能であることが確認された。
【0020】
【表1】

【実施例2】
【0021】
実施例2においては、セラミックウールからなる断熱材5の充填量を0.7g(見かけ体積4.4ml)とし、ICチップ2がセラミックウールからなる断熱材5のほぼ中央に位置するようにした他は、実施例1と同様にして耐熱ICタグを作成した。実施例2の耐熱タグの構造の概略を図3に示す。
【0022】
実施例2の耐熱ICタグの耐熱性について、実施例1と同様に評価したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
【実施例3】
【0023】
フランジつきパイプの溶融亜鉛メッキ工程における耐熱ICタグの使用可能性を評価するために、以下のように溶融亜鉛メッキ工程を模した評価を行った。図4の孔あきフランジを有するパイプ6のフランジ孔部7に、実施例1の耐熱ICタグ1を図5のように取り付けた。450℃に加熱した溶融状態の亜鉛浴に前記パイプ6のフランジ部分を浸漬して、10分経過した後に取り出した。亜鉛浴に浸漬した金属部分には亜鉛メッキが良好に形成されたが、耐熱ICタグのガラス容器部分には亜鉛メッキは形成されなかった。冷却した後、実施例1と同様にリーダをもちいて耐熱ICタグが使用可能か否かを評価したところ、問題なく動作することを確認できた。また同じ条件で20分間の浸漬を試みたところ、やはり問題なく動作することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の耐熱ICタグにより、薬品や高温の環境を含む製造工程においても、ICタグによる物品管理が良好に実現できる。
【符号の説明】
【0025】
1 耐熱ICタグ
2 ICチップ
3 アンテナ
4 保護層(ガラス容器)
5 断熱材(ロックウール等)
6 フランジつきパイプ
7 フランジ孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触型のICタグと、透過性の無いガラス材料からなる保護層と、前記ICタグと前記保護層との空隙の少なくとも一部に充填された連続気泡からなる断熱材からなる耐熱ICタグ。
【請求項2】
非接触型のICタグと、透過性の無いガラス材料からなる保護層からなり、前記ICタグと前記保護層との空隙が真空状態にされてなる耐熱ICタグ。
【請求項3】
非接触型のICタグと、透過性の無いガラス材料からなる保護層と、前記ICタグと前記保護層との空隙の少なくとも一部に充填された連続気泡からなる断熱材からなり、前記空隙が真空状態にされてなる耐熱ICタグ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−123866(P2011−123866A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153548(P2010−153548)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】