説明

耐腐食性、及び意匠性に優れたハーフ調金属光沢転写フイルム、並びにそれを使用して得る成形品

【課題】耐腐食性や絶縁性にも優れ、透過光の色と、高屈折率薄膜層が形成されている側から見た反射光の色が異色であり、しかも透過光の色と反射光の色が鮮やかで、さらには密着性も良好な成形品、及びそれを得るために使用するハーフ調金属光沢転写フイルムを提供するものである。
【解決手段】本発明は、プラスチックフイルムの片面に、少なくとも、離型層、保護層、装飾層、及び接着層が順次形成されている転写フイルムにおいて、装飾層が、高屈折率薄膜層と厚さが5〜100nmの金属薄膜層とが積層形成されたものであることを特徴とする耐腐食性、及び意匠性に優れたハーフ調金属光沢転写フイルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表裏で反射光の色が異色であるとともに、また透過光の色と反射光の色も異色であり、さらには耐腐食性や絶縁性にも優れ、オーディオ製品や携帯電話などに使用すれば特に好適な成形品、及びそれを得るために使用する転写フイルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラスチックフイルムの片面に、離型層、保護層、厚さが数nm〜1000nm程度である金属薄膜層、接着層が順次形成されたハーフ調金属光沢転写フイルムが知られている。
このハーフ調金属光沢転写フイルムを透明なプラスチック基材上に転写したものは、プラスチック基材上に、接着層、厚さが数nm〜1000nm程度である金属薄膜層、保護層、離型層が順次形成された成形品となる。
そして、該成形品を透かして見た場合の色(透過光の色)は、金属薄膜層の色すなわち金属薄膜層に使用する金属特有の色調となり、該色調は、使用する金属が同じであっても金属薄膜層の厚さによっても変化する。
また、該成形品を反射により見た場合の色(反射光の色)は、金属薄膜層側(プラスチック基材側)から見たときの色と、保護層側(離型層側)から見たときの色は、ともにハーフ調の金属光沢を呈する。
上記金属光沢もまた、金属薄膜層に使用する金属特有の金属光沢となり、該金属光沢は、使用する金属が同じであっても金属薄膜層の厚さによって変化する。
【0003】
さらに、上記保護層に染料や顔料等の着色剤を添加することで保護層を着色して着色層としたハーフ調金属光沢転写フイルム、また、金属薄膜層と接着層間に別途樹脂に着色剤を添加した着色層を形成したハーフ調金属光沢転写フイルム、あるいは、接着層に着色剤を添加して着色した接着層を形成したハーフ調金属光沢転写フイルムも知られている。
これらのハーフ調金属光沢転写フイルムを透明なプラスチック基材上に転写したものは、プラスチック基材上に、接着層、厚さが数nm〜1000nm程度である金属薄膜層、着色層、離型層が順次形成された成形品、また、プラスチック基材上に、接着層、着色層、厚さが数nm〜1000nm程度である金属薄膜層、保護層、離型層が順次形成された成形品、あるいは、プラスチック基材上に、着色した接着層、厚さが数nm〜1000nm程度である金属薄膜層、保護層、離型層が順次形成された成形品となる。
そして、上記成形品の透過光の色は、何れも着色層の色と金属薄膜層の色が相俟った色調となる。
また、反射光の色は、該成形品を着色層又は着色した接着層が形成されていない側から、すなわち金属薄膜層が形成されている側から見たときにはハーフ調の金属光沢を呈し、着色層又は着色した接着層が形成されている側から見たときには着色層の色とハーフ調の金属光沢が相俟った色調を呈する。
そして、透過光の色と、着色層又は着色した接着層が形成されている側から見た反射光の色とは、通常同色あるいは近似の色調(例えば、着色層又は着色した接着層が青色の場合、透過光の色が青色と金属薄膜層の色が相俟った色調を呈し、着色層又は着色した接着層が形成されている側から見た反射光の色が、青色とハーフ調の金属光沢が相俟った色調)を呈する。
このように、金属薄膜層の何れか一方の面に、着色層又は着色した接着層を形成することにより、成形品の反射光の色を、表裏で適宜入れ替えることができるものであった。
【0004】
また、上記金属薄膜層を、スズなどの金属を島状構造として絶縁性をもたせた薄膜層とした絶縁性のハーフ調金属光沢転写フイルムが知られている。
例えば、特許文献1には、プラスチックフイルム等の基材の片面に、離型層、保護層、島状構造として絶縁性をもたせた金属蒸着層(金属薄膜層)、及び接着層を順次積層した絶縁性転写材料が記載されている。
さらに、上記島状構造の金属蒸着層は島のサイズ200Å〜1μm(20nm〜1μm)で島の間隔100Å〜5000Å(10nm〜500nm)の金属蒸着層であり、また該金属蒸着層を島状構造として絶縁性をもたせるためには、金属蒸着層の光線透過率を10%〜15%の範囲とすることが最適である旨の記載もある。
そして、前記ハーフ調金属光沢転写フイルムを透明なプラスチック基材上に転写して得た成形品同様、特許文献1記載の絶縁性転写材料を透明なプラスチック基材上に転写して得た成形品も、該成形品を透かして見た場合の色(透過光の色)は、金属蒸着層の色すなわち金属蒸着層に使用する金属特有の色調となり、該成形品を反射により見た場合の色(反射光の色)は、金属蒸着層側(プラスチック基材側)から見たときの色と、保護層側(離型層側)から見たときの色は、ともにハーフ調の金属光沢を呈するものとなる。
また、前記ハーフ調金属光沢転写フイルムと同様に、絶縁性転写材料の保護層を着色して着色層としたり、金属蒸着層と接着層間に別途着色層を形成したり、着色した接着層を形成したりすることも通常行われている。
これら着色層又は着色した接着層が形成された絶縁性転写材料を、透明なプラスチック基材上に転写して得た成形品も、前記ハーフ調金属光沢転写フイルムを透明なプラスチック基材上に転写して得た成形品同様、やはり透過光の色は、何れも着色層の色と金属蒸着層の色が相俟った色調となり、また、反射光の色は、該成形品を着色層又は着色した接着層が形成されていない側から、すなわち金属蒸着層が形成されている側から見たときにはハーフ調の金属光沢を呈し、着色層又は着色した接着層が形成されている側から見たときには着色層の色とハーフ調の金属光沢が相俟った色調を呈するものとなる。
そして、やはり透過光の色と、着色層又は着色した接着層が形成されている側から見た反射光の色とは、通常同色あるいは近似の色調を呈するものであった。
尚、上記ハーフ調金属光沢転写フイルムや特許文献1に記載の絶縁性転写材料の全光線透過率、及び該ハーフ調金属光沢転写フイルム、又は該絶縁性転写材料を透明なプラスチック基材上に転写して得た成形品の全光線透過率はともに、該成形品の透過光の色を金属薄膜層の色とし、反射光の色をハーフ調の金属光沢を呈するようにするために、3〜60%程度の範囲であった。
もちろん、着色層又は着色した接着層が形成された場合には、これらの層が光を吸収するため、上記全光線透過率の値は、やや低下するものであった。
【特許文献1】特公平3−25353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記ハーフ調金属光沢転写フイルム、あるいは特許文献1に記載の絶縁性転写材料に代表される絶縁性のハーフ調金属光沢転写フイルムに着色層を形成した場合や接着層を着色した場合には、以下に示す欠点があった。
【0006】
(1)上記転写フイルム(又は転写材料)をプラスチック基材上に転写して得た成形品は、経時で金属薄膜層(又は金属蒸着層)が容易に腐食してしまい、耐腐食性に劣っていた。特に、携帯電話やオーディオ製品の耐腐食性についての評価基準である高温高湿試験(温度60℃、湿度95%の条件下で96時間放置する試験)で、金属薄膜層(又は金属蒸着層)が完全に消失して成形品の全光線透過率が60%を超えてしまう場合があり、耐腐食性を強く要求される携帯電話やオーディオ製品等には全く使用できないものであった。
(2)上記転写フイルム(又は転写材料)をプラスチック基材上に転写して得た成形品は、透過光の色と、着色層又は着色した接着層が形成されている側から見た反射光の色の色調が近似しているため、該透過光の色と反射光の色を全く異なった色とすることができず、意匠性に欠けるという問題があった。
(3)また、透過光、及び反射光の色が鮮やかではなかった。
(4)さらに、着色層や着色した接着層は通常、塗料をコーティングして形成するので、着色層や接着層の厚薄の差による色ムラ(例えば、グラビアコート法を採用した場合のメッシュ目による色ムラ)が生じるという問題があった。
(5)着色層や着色した接着層を形成した場合には、着色剤の添加量が多くなると、密着性が悪くなるという問題があった。
従って、密着性を考慮すると、着色剤の添加量を制限せざるを得ず、透過光、及び反射光の色を所望の色にできない場合があった。
【0007】
本発明は、上記全ての欠点を除去したものであり、耐腐食性や絶縁性にも優れ、透過光の色と、高屈折率薄膜層が形成されている側から見た反射光の色が異色であり、しかも透過光の色と反射光の色が鮮やかで、さらには密着性も良好な成形品、及びそれを得るために使用するハーフ調金属光沢転写フイルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明は、プラスチックフイルムの片面に、少なくとも、離型層、保護層、装飾層、及び接着層が順次形成されている転写フイルムにおいて、装飾層が、高屈折率薄膜層と厚さが5〜100nmの金属薄膜層とが積層形成されたものであることを特徴とする耐腐食性、及び意匠性に優れたハーフ調金属光沢転写フイルムである。
[2]本発明は、高屈折率薄膜層が、硫化亜鉛薄膜層である上記[1]に記載のハーフ調金属光沢転写フイルムである。
[3]本発明は、金属薄膜層が、島のサイズ1nm〜2μm、島の間隔2nm〜500nmである島状構造をなすものである上記[1]、又は[2]に記載のハーフ調金属光沢転写フイルムである。
[4]本発明は、金属薄膜層が、スズ薄膜層、又はインジウム薄膜層である上記[1]〜[3]何れか1項に記載のハーフ調金属光沢転写フイルムである。
[5]本発明は、上記[1]〜[4]何れかに記載のハーフ調金属光沢転写フイルムを、プラスチック基材上に転写して、プラスチック基材上に、接着層、装飾層、保護層、及び離型層が順次形成された成形品において、装飾層が、高屈折率薄膜層と厚さが5〜100nmの金属薄膜層とが積層形成されたものであることを特徴とする耐腐食性、及び意匠性に優れたハーフ調金属光沢成形品である。
【発明の効果】
【0009】
1.本発明のハーフ調金属光沢転写フイルムをプラスチック基材上に転写して得た本発明のハーフ調金属光沢成形品は、経時で金属薄膜層が容易に腐食することがなく、耐腐食性に優れている。
特に、携帯電話やオーディオ製品の耐腐食性についての評価基準である高温高湿試験(温度60℃、湿度95%の条件下で96時間放置する試験)で、全光線透過率が60%を越えず、腐食により金属薄膜層が消失することがないので、耐腐食性を強く要求される携帯電話やオーディオ製品等をはじめ、非常に広範な用途に使用可能となった。
2.本発明のハーフ調金属光沢転写フイルムをプラスチック基材上に転写して得た本発明のハーフ調金属光沢成形品は、高屈折率薄膜層と金属薄膜層との積層効果により、あたかも着色層と金属薄膜層とが積層形成されているがごとく、透過光の色は、上記積層効果による着色の色と金属薄膜層の色が相俟った色調となり、反射光の色は、金属薄膜層が形成されている側から見たときにはハーフ調の金属光沢を呈し、また高屈折率薄膜層が形成されている側から見たときには高屈折率薄膜層と金属薄膜層の積層効果による着色の色とハーフ調の金属光沢の色が相俟った色調を呈するものとなる。
そして、高屈折率薄膜層と金属薄膜層の積層効果による着色の色は、高屈折率薄膜層の屈折率や厚さ、及び金属薄膜層に使用する金属の種類や厚さを調整することにより、容易に所望の色を現出することができる。
従って、着色するために、着色層や着色した接着層を形成する必要がない。
また、本発明のハーフ調金属光沢成形品は、透過光の色と高屈折率薄膜層側から見た反射光の色が全く異なった色となり、意匠性に優れている。
尚、本発明でいう透過光の色と反射光の色は上記の通りであり、該色は、決して見る角度によって変化するものではなく、いわゆる虹彩色を呈するものではない。
3.上記透過光、及び反射光の色が非常に鮮やかである。
4.高屈折率薄膜層の形成方法は、後で述べるように、コーティング法ではなく、金属薄膜層の形成方法と同様に真空蒸着法等を使用するため、従来例えばグラビアコーティング法により着色層を形成した場合に生じるいわゆるメッシュ目による厚薄の差が生じることがなく、また、高屈折率薄膜層の厚さは、金属薄膜層の厚さと同様に非常に薄いので、高屈折率薄膜層の厚薄の差はもちろん、高屈折率薄膜層と金属薄膜層からなる装飾層全体の厚薄の差も非常に小さいので、これらの厚薄の差が原因の色むらの発生がほとんどない。
5.金属薄膜層の片面に形成される高屈折率薄膜層は、金属薄膜層の保護層側、あるいは接着層側の何れの側に形成されても、保護層又は接着層との密着性は悪くなることはないので、金属薄膜層の保護層側、あるいは接着層側の何れの側にも形成可能なため、成形品の反射光の色を表裏で容易に入れ替えることができる。
6.金属薄膜層を、島のサイズ1nm〜2μm、島の間隔2nm〜500nmである島状構造としておけば、本発明のハーフ調金属光沢転写フイルムをプラスチック基材上に転写して得た本発明のハーフ調金属光沢成形品が、絶縁性に優れたものとなる。
さらに、金属薄膜層を島状構造であるスズ薄膜層、又はインジウム薄膜層としておけば、絶縁性の点からは万全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のハーフ調金属光沢転写フイルムに使用するプラスチックフイルムは、従来から転写フイルムに使用されるプラスチックフイルムであれば使用可能であり、ポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリエチレンナフタレートフイルム、アクリルフイルム、ポリイミドフイルム、ポリアミドイミドフイルム、フッ素フイルム、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルム等の各種プラスチックフイルムが使用できる。
また、意匠性の向上を目的に、プラスチックフイルムの離型層側に、ヘアライン加工、エンボス加工、マット加工等の凹凸加工を施してもよく、こうすることで、本発明の転写フイルムをプラスチック基材に転写した後に得られる成形品の転写部分表面が凹凸形状となり、できあがった成形品をより意匠性に優れたものとすることができる。
【0011】
本発明のハーフ調金属光沢転写フイルムに形成される離型層は、本発明のハーフ調金属光沢転写フイルムをプラスチック基材に転写してプラスチックフイルムを剥離した後は、得られた成形品の転写部分の最表層に形成されるものである。
そして、後で述べる保護層とともに装飾層を傷等から保護して耐腐食性を向上する役割を果たす。
【0012】
離型層に使用される樹脂は、プラスチックフイルムとの界面で剥離する離型性を有するものであれば特に制限はなく、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、シリコン系樹脂、ワックス等が使用できるが、離型性の点からアクリル系樹脂がより好ましい。
【0013】
離型層は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等の従来公知の方法で形成できる。
【0014】
本発明のハーフ調金属光沢転写フイルムに形成される保護層は、離型層と、装飾層間に形成され、本発明のハーフ調金属光沢転写フイルムをプラスチック基材に転写してプラスチックフイルムを剥離した後は、離型層とともに、装飾層を傷等から保護して耐腐食性を向上させ、さらには絶縁性をも向上させる役割も果たす。
【0015】
保護層に使用する樹脂は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、ウレタン系樹脂、硝化綿等の単独又は2種以上の混合樹脂が使用できる。
更に、ハードコート性を要求される用途には、保護層を紫外線硬化型アクリル樹脂等のいわゆるハードコート性を有する樹脂で形成しておくことが好ましい。
【0016】
保護層は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等の従来公知の方法で形成できる。
【0017】
本発明のハーフ調金属光沢転写フイルムに形成される装飾層は、高屈折率薄膜層と厚さが5〜100nmの金属薄膜層とが積層形成されたものである。
そして、高屈折率薄膜層は、厚さが5〜100nmの金属薄膜層の保護層側、あるいは接着層側の何れの側に形成されていてもよい。
本発明のハーフ調金属光沢転写フイルムをプラスチック基材上に転写して得た本発明のハーフ調金属光沢成形品は、高屈折率薄膜層と金属薄膜層との積層効果により、あたかも着色層と金属薄膜層とが積層形成されているがごとく、透過光の色は、上記積層効果による着色の色と金属薄膜層の色が相俟った色調となり、反射光の色は、金属薄膜層が形成されている側から見たときにはハーフ調の金属光沢を呈し、また高屈折率薄膜層が形成されている側から見たときには高屈折率薄膜層と金属薄膜層の積層効果による着色の色とハーフ調の金属光沢の色が相俟った色調を呈するものとなる。
そして、透過光の色と高屈折率薄膜層側から見た反射光の色が全く異なった色となり、意匠性に優れている。
尚、本発明でいう透過率の色と反射光の色は上記の通りであり、該色は、決して見る角度によって変化するものではない。
従って、いわゆる虹彩色を呈するものではないのである。
さらに、透過光、及び反射光の色が非常に鮮やかであるという効果もある。
【0018】
厚さが5〜100nmの金属薄膜層に使用する金属としては、アルミニウム、銀、金、スズ、インジウム、鉛、亜鉛、ビスマス、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、ケイ素、ゲルマニューム、又はこれらの合金からなる群から選ばれるものが使用できる。
金属薄膜層は、上記金属を真空蒸着法、スパッタリング蒸着法、EB蒸着法等の公知の蒸着法により形成できる。
上記の通り、金属薄膜層の厚さは5〜100nmの範囲であるが、これは金属薄膜層の厚さをこの範囲とすることにより本発明のハーフ調金属光沢転写フイルム、及びハーフ調金属光沢成形品が優れた耐腐食性、意匠性等の前記効果を有するものとするためであり、これら効果の点から、厚さを7〜80nmとしておけば、より好ましい。
金属薄膜層の厚さは、使用する金属の種類や意匠性等により、上記範囲内で適宜決定すればよい。
【0019】
また、金属薄膜層は、島のサイズ1nm〜2μm、島の間隔2nm〜500nmである島状構造をなすものとしてもよい。
もちろん、このような島状構造である金属薄膜層の厚さ、すなわち島の厚さも5〜100nmの範囲内である。
こうすることで、本発明のハーフ調金属光沢転写フイルムをプラスチック基材上に転写して得た本発明のハーフ調金属光沢成形品が、絶縁性に優れたものとなる。
金属薄膜層を島状構造とするには、使用する金属をスズ、インジウム、鉛、亜鉛、ビスマス、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、ケイ素、ゲルマニューム、又はこれらの合金からなる群から選ばれるものとしておくことが好ましい。
金属薄膜層を島状構造とするには、これらの金属を使用して、例えば、プラスチックフイルムの片面に、離型層、保護層、金属薄膜層からなる積層体の全光線透過率を3〜60%、好ましくは5〜40%の範囲としておけばよい。
島のサイズや間隔は、使用する金属の種類、意匠性、絶縁性の程度等により、上記範囲内で適宜決定すればよい。
さらに、金属薄膜層に使用する金属をスズ、又はインジウムとし、島状構造であるスズ薄膜層、又はインジウム薄膜層としておけば、絶縁性の点からは万全である。
【0020】
高屈折率薄膜層は、金属薄膜層に接して、真空蒸着法により形成される。
高屈折率薄膜層の屈折率の値は、1.8〜2.5が好ましい。
【0021】
高屈折率薄膜層は、上記屈折率を満足するものであれば特に制限はなく、硫化亜鉛薄膜層、酸化ケイ素薄膜層、酸化チタン薄膜層、酸化ジルコニウム薄膜層、酸化セリウム薄膜層等が使用できるが、耐腐食性や意匠性の点から硫化亜鉛薄膜層がより好ましい。
【0022】
高屈折率薄膜層の厚さは、5〜500nmが好ましく、より好ましくは10〜300nmである。
厚さが、5nmより薄いと、金属薄膜層の厚さを調整しても装飾層としての目的を達成できないので好ましくない。
厚さが、500nmより厚いと、装飾層としての目的を達成できないばかりでなく、高屈折率薄膜層にクラックが発生したり、蒸着時の熱によるプラスチックフイルムの変形で蒸着ムラが発生したりするので好ましくない。
高屈折率薄膜層の厚さは、装飾層の目的の達成やクラック等の点で5〜500nmが好ましく、10〜300nmであればより万全である。
【0023】
そして、前記した通り、高屈折率薄膜層と金属薄膜層の積層効果による着色の色は、上記の高屈折率薄膜層の屈折率や厚さ、及び金属薄膜層に使用する金属の種類や厚さを調整することにより、容易に所望の色を現出することができる。
【0024】
本発明のハーフ調金属光沢転写フイルムに形成される接着層は、装飾層上に形成され、転写後に、プラスチック基材と転写層(離型層、保護層、装飾層、及び接着層)を接着するものである。
接着層に使用する樹脂は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂等が使用できる。
【0025】
接着層は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等の従来公知の方法で形成できる。
【0026】
本発明のハーフ調金属光沢転写フイルムを使用して熱ロール転写やインモールド成形により、本発明のハーフ調金属光沢成形品を得ることができるが、本発明のハーフ調金属光沢成形品をインモールド成形により得る場合、プラスチックフイルムと離型層との離型性を向上し、転写時にプラスチックフイルムの剥離不良や破れの発生を防止する目的で、プラスチックフイルムと離型層との間に、下塗層を形成するのが好ましく、該下塗層の形成により、複雑な形状の成形品を安定して得ることが可能となる。下塗層に使用する樹脂は、メラミン系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等の熱硬化性樹脂やワックス等が使用できるが、特にメラミン系樹脂やアクリルメラミン系樹脂が好ましい。
【0027】
本発明のハーフ調金属光沢転写フイルムを使用して熱ロール転写やインモールド成形により、プラスチック基材上に転写すれば、プラスチック基材上に、接着層、装飾層、保護層、及び離型層が順次形成され、かつ装飾層が、高屈折率薄膜層と厚さが5〜100nmの金属薄膜層とが積層形成されたものである本発明のハーフ調金属光沢成形品を得ることができる。
本発明のハーフ調金属光沢成形品は、前記の通り携帯電話やオーディオ製品の耐腐食性についての評価基準である高温高湿試験(温度60℃、湿度95%の条件下で96時間放置する試験)で、全光線透過率が60%を越えず、腐食により金属薄膜層が消失することがないので、耐腐食性を強く要求される携帯電話やオーディオ製品等をはじめ、非常に広範な用途に使用可能となる。
また、上記本発明のハーフ調金属光沢転写フイルムの金属薄膜層を島のサイズ1nm〜2μm、島の間隔2nm〜500nmである島状構造としておけば、本発明のハーフ調金属光沢成形品が絶縁性にも優れたものとなり、さらに、金属薄膜層に使用する金属をスズ、又はインジウムとし、島状構造であるスズ薄膜層、又はインジウム薄膜層としておけば、絶縁性の点からは万全である。
【実施例】
【0028】
[実施例1]
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフイルム上に、アクリル系樹脂よりなる厚さ1μmの離型層/アクリル系樹脂、及びイソシアネートよりなる厚さ1μmの保護層/島状構造で絶縁性を備えた厚さ13nmのスズ薄膜層(ポリエチレンテレフタレートフイルム/離型層/保護層/スズ薄膜層からなる積層体の全光線透過率:50%)/厚さ60nmの硫化亜鉛薄膜層/アクリル系樹脂よりなる厚さ1μmの接着層を順次形成し、本発明のハーフ調金属光沢転写フイルム(転写フイルムの全光線透過率:25%)を得た。
上記本発明のハーフ調金属光沢転写フイルムを使用して、厚さ2mmの透明アクリル板(全光線透過率:93%)に熱ロール転写して、透明アクリル板上に、接着層/硫化亜鉛薄膜層/スズ薄膜層/保護層/離型層が順次形成された本発明のハーフ調金属光沢成形品を得た。
得られた成形品は、透過光の色が、スズ薄膜層と硫化亜鉛薄膜層の積層効果により、黄色とスズ薄膜層の色が相俟った色調となり、反射光の色は、スズ薄膜層が形成されている側(離型層側)から見たときにはハーフ調の金属光沢を呈し、また硫化亜鉛薄膜層が形成されている側(透明アクリル板側)から見たときにはスズ薄膜層と硫化亜鉛薄膜層との積層効果により、紫色とスズ薄膜層によるハーフ調の金属光沢の色が相俟った色調を呈するものであった。
また、上記透過光、及び硫化亜鉛薄膜層が形成されている側から見た反射光の色は非常に鮮やかであった。
このように、上記本発明のハーフ調金属光沢成形品は、透過光の色と硫化亜鉛薄膜層が形成されている側から見た反射光の色が全く異なった色となり、意匠性に非常に優れたものであった。
また、成形品の全光線透過率は25%、絶縁破壊電圧12000Vで絶縁性は良好であった。さらに、高温高湿試験(温度60℃、湿度95%の条件下で96時間放置する試験)による外観の変化もなく、該試験後にも美麗な金属光沢を保持する(全光線透過率29%)実用性あるものであった。
【0029】
[実施例2]
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフイルム上に、アクリル系樹脂よりなる厚さ1μmの離型層/アクリル系樹脂、及びイソシアネートよりなる厚さ1μmの保護層/厚さ8nmのアルミニウム薄膜層(ポリエチレンテレフタレートフイルム/離型層/保護層/アルミニウム薄膜層からなる積層体の全光線透過率:40%)/厚さ60nmの硫化亜鉛薄膜層/アクリル系樹脂よりなる厚さ1μmの接着層を順次形成し、本発明のハーフ調金属光沢転写フイルム(転写フイルムの全光線透過率:45%)を得た。
上記本発明の絶縁性転写フイルムを使用して、厚さ2mmの透明アクリル板(全光線透過率:93%)に熱ロール転写して、透明アクリル板上に、接着層/硫化亜鉛薄膜層/アルミニウム薄膜層/保護層/離型層が順次形成された本発明のハーフ調金属光沢成形品を得た。
得られた成形品は、透過光の色が、アルミニウム薄膜層と硫化亜鉛薄膜層の積層効果により、黄色とアルミニウム薄膜層の色が相俟った色調となり、反射光の色は、アルミニウム薄膜層が形成されている側(離型層側)から見たときにはハーフ調の金属光沢を呈し、また硫化亜鉛薄膜層が形成されている側(透明アクリル板側)から見たときにはアルミニウム薄膜層と硫化亜鉛薄膜層との積層効果により、青色とアルミニウム薄膜層によるハーフ調の金属光沢の色が相俟った色調を呈するものであった。
また、上記透過光、及び硫化亜鉛薄膜層が形成されている側から見た反射光の色は非常に鮮やかであった。
このように、上記本発明のハーフ調金属光沢成形品は、透過光の色と硫化亜鉛薄膜層が形成されている側から見た反射光の色が全く異なった色となり、意匠性に非常に優れたものであった。
また、成形品の全光線透過率は45%であった。さらに、絶縁性は有していないものの、高温高湿試験(温度60℃、湿度95%の条件下で96時間放置する試験)による外観の変化もなく、該試験後にも美麗な金属光沢を保持する(全光線透過率47%)実用性あるものであった。
【比較例】
【0030】
[比較例1]
実施例1の保護層に替えて、アクリル系樹脂に青色染料を添加した、厚さ1μmの着色層を形成したこと、及び硫化亜鉛薄膜層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、ハーフ調金属光沢転写フイルム(転写フイルムの全光線透過率:20%)を得た。
上記のハーフ調金属光沢転写フイルムを使用して、厚さ2mmの透明アクリル板(全光線透過率:93%)に熱ロール転写して、透明アクリル板上に、接着層/スズ薄膜層/着色層/離型層が順次形成された成形品を得た。
得られた成形品は、透過光の色が、着色層の青色とスズ薄膜層の色が相俟った色調となり、反射光の色は、スズ薄膜層が形成されている側(透明アクリル板側)から見たときにはハーフ調の金属光沢を呈し、また着色層が形成されている側(離型層側)から見たときには、着色層の青色とスズ薄膜層によるハーフ調の金属光沢の色が相俟った色調を呈するものであった。
また、上記透過光、及び着色層が形成されている側から見た反射光の色は鮮やかではなかった。
このように、上記の成形品は、透過光の色と着色層が形成されている側から見た反射光の色が、近似しているため、該透過光の色と反射光の色は全く異なった色とはならず、意匠性に欠けるものであった。
また、成形品の全光線透過率は20%、絶縁破壊電圧12000Vで絶縁性は良好であった。しかし、高温高湿試験(温度60℃、湿度95%の条件下で96時間放置する試験)で、金属光沢が消失し(全光線透過率65%)、実用性に乏しいものであった。
【0031】
[比較例2]
実施例2の保護層に替えて、アクリル系樹脂に青色染料を添加した、厚さ1μmの着色層を形成したこと、及び硫化亜鉛薄膜層を形成しなかったこと以外は、実施例2と同様にして、ハーフ調金属光沢転写フイルム(転写フイルムの全光線透過率:50%)を得た。
上記のハーフ調金属光沢転写フイルムを使用して、厚さ2mmの透明アクリル板(全光線透過率:93%)に熱ロール転写して、透明アクリル板上に、接着層/アルミニウム薄膜層/着色層/離型層が順次形成された成形品を得た。
得られた成形品は、透過光の色が、着色層の青色とアルミニウム薄膜層の色が相俟った色調となり、反射光の色は、アルミニウム薄膜層が形成されている側(透明アクリル板側)から見たときにはハーフ調の金属光沢を呈し、また着色層が形成されている側(離型層側)から見たときには、着色層の青色とアルミニウム薄膜層によるハーフ調の金属光沢の色が相俟った色調を呈するものであった。
また、上記透過光、及び着色層が形成されている側から見た反射光の色は鮮やかではなかった。
このように、上記の成形品は、透過光の色と着色層が形成されている側から見た反射光の色が、近似しているため、該透過光の色と反射光の色は全く異なった色とはならず、意匠性に欠けるものであった。
また、成形品の全光線透過率は50%であった。しかし、絶縁性を有さず、また高温高湿試験(温度60℃、湿度95%の条件下で96時間放置する試験)で、金属光沢が消失し(全光線透過率61%)、実用性に乏しいものであった。
【0032】
尚、上記実施例1、2のそれぞれおいて、積層体と、ハーフ調金属光沢転写フイルム、又は成形品との全光線透過率の値が異なるのは、離型層、保護層、接着層等の厚さや透明性、スズ薄膜層又はアルミニウム薄膜層と硫化亜鉛薄膜層との積層効果などの影響によるものである。
【0033】
実施例1、2の本発明のハーフ調金属光沢成形品、及び比較例1、2の成形品の高温高湿試験の試験結果を比較して表1に示す。
【0034】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフイルムの片面に、少なくとも、離型層、保護層、装飾層、及び接着層が順次形成されている転写フイルムにおいて、装飾層が、高屈折率薄膜層と厚さが5〜100nmの金属薄膜層とが積層形成されたものであることを特徴とする耐腐食性、及び意匠性に優れたハーフ調金属光沢転写フイルム。
【請求項2】
高屈折率薄膜層が、硫化亜鉛薄膜層である請求項1に記載のハーフ調金属光沢転写フイルム。
【請求項3】
金属薄膜層が、島のサイズ1nm〜2μm、島の間隔2nm〜500nmである島状構造をなすものである請求項1、又は2に記載のハーフ調金属光沢転写フイルム。
【請求項4】
金属薄膜層が、スズ薄膜層、又はインジウム薄膜層である請求項1〜3何れか1項に記載のハーフ調金属光沢転写フイルム。
【請求項5】
請求項1〜4何れかに記載のハーフ調金属光沢転写フイルムを、プラスチック基材上に転写して、プラスチック基材上に、接着層、装飾層、保護層、及び離型層が順次形成された成形品において、装飾層が、高屈折率薄膜層と厚さが5〜100nmの金属薄膜層とが積層形成されたものであることを特徴とする耐腐食性、及び意匠性に優れたハーフ調金属光沢成形品。

【公開番号】特開2008−207337(P2008−207337A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43213(P2007−43213)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000156042)株式会社麗光 (33)
【Fターム(参考)】