説明

耐雷ホーン劣化診断用操作具及び耐雷ホーン劣化診断装置

【課題】耐雷ホーンを避雷碍子装置に装着した状態で耐雷ホーン劣化診断を行うことができる耐雷ホーン劣化診断用操作具及び耐雷ホーン劣化診断装置を提供する。
【解決手段】接地側端子24は、課電側測定端子16に対して離間方向Xまたは近接方向Yへ移動可能となっている。このため、課電側測定端子16及び接地側端子24により耐雷ホーン5の上部電極部7及び下部電極部6を挟み込むことができるので、耐雷ホーン劣化診断用操作具11を耐雷ホーン5に容易に装着することができる。また、耐雷ホーン5の劣化診断は、耐雷ホーン劣化診断用操作具11を耐雷ホーン5に装着して、課電側測定端子16及び接地側端子24から導出されたリード線19a,19bが接続された計測器31により診断可能となる。したがって、耐雷ホーン5を避雷碍子装置1から取り外す必要はなく、避雷碍子装置1に装着した状態で、耐雷ホーン5の劣化診断を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送配電線路に雷サージ電流が流れた場合に、それを大地へ速やかに放電すると共に、その後に生じる続流を抑制遮断する耐雷ホーンの劣化診断を行うための耐雷ホーン劣化診断用操作具及び耐雷ホーン劣化診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、雷撃により送配電線路に侵入した雷サージ電流を速やかに大地へ放電する避雷碍子装置が配設されている。この避雷碍子装置は、支持碍子及び耐雷ホーンを備えている。該耐雷ホーンは、取付け金具により支持碍子に固定されている。また、耐雷ホーンは、酸化亜鉛を主材とする限流素子から形成されており、該限流素子は、商用周波電圧程度ではほとんど電流が流れず、雷サージのような過大な電圧をうけた時、電流が急激に増える非直線性を有する。このため、雷撃により送配電線路に雷サージ電流が侵入した場合、その電流は電線から耐雷ホーンを介して大地に放電される。さらに、耐雷ホーンはその後に発生する続流(放電が継続する現象)を抑制遮断する(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このため、耐雷ホーンは常に一定の電気的性能を保持していなければならず、該耐雷ホーンの点検及び診断を必要としていた。耐雷ホーンの劣化診断は、前記耐雷ホーンを避雷碍子装置から取り外して行われる。即ち、従来、作業者は、高所作業車等により耐雷ホーンが備えられた場所まで行き、該耐雷ホーンを取り外して絶縁抵抗、バリスタ電圧、制限電圧、放電耐量、続流遮断等の電気的性能診断を行っていた。
【特許文献1】実公平1−29934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記従来の耐雷ホーンの劣化診断方法では、耐雷ホーンを避雷碍子装置から取り外さなければならず、さらには、この作業を行う際、安全のため停電をさせていたため、作業が非常に煩雑で作業効率が非常に悪いものであった。このため、前記耐雷ホーンを避雷碍子装置に装着したまま、当該耐雷ホーンの劣化診断を行うことが所望されていた。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、耐雷ホーンを避雷碍子装置に装着した状態で耐雷ホーン劣化診断を行うことができる耐雷ホーン劣化診断用操作具及び耐雷ホーン劣化診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、雷撃により送配電線路に侵入した雷サージ電流を大地へ放電する避雷碍子装置に備えられた耐雷ホーンの劣化を診断するために装着する耐雷ホーン劣化診断用操作具であって、操作棒と、該操作棒の先端に前記耐雷ホーンの上部電極部に装着可能に設けられた課電側測定端子と、同じく前記操作棒の先端に前記耐雷ホーンの下部電極部に装着可能に且つ、課電側測定端子に対して近接又は離間する方向へ移動可能に設けられた接地側測定端子と、前記課電側測定端子及び接地側測定端子のそれぞれから導出されて耐雷ホーンの電気的性能を測定する計測器に接続されるリード線とを備えたことを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の耐雷ホーン劣化診断用操作具において、前記接地側測定端子を常に課電側測定端子側へ付勢する付勢手段を備えたことを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の耐雷ホーン劣化診断用操作具において、前記操作棒には、当該接地側測定端子の移動可能範囲における離間する方向の端部に、前記接地側測定端子を係止する係止手段が設けられていることを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の耐雷ホーン劣化診断用操作具において、前記係止手段は、前記操作棒において、前記近接又は離間する方向と直交するように設けられた係止溝と、該係止溝内を移動すると共に前記接地側測定端子と一体に移動する電極支持棒に取り付けられた操作ハンドルとを備えたことを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の耐雷ホーン劣化診断用操作具において、前記操作棒の先端には課電側測定端子を支持する課電側測定端子支持部を突設し、該課電側測定端子支持部には耐雷ホーンの外周面に支持案内するガイド部を設けたことを要旨とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の耐雷ホーン劣化診断用操作具において、前記課電側測定端子において、前記耐雷ホーンの上部電極部と接触する接触部が露出するように該課電側測定端子の外周面を絶縁体により覆うようにしたことを要旨とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載の耐雷ホーン劣化診断用操作具と、該耐雷ホーン劣化診断用操作具に接続される計測器とを備えたことを要旨とする。
【0013】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、接地側測定端子は、課電側測定端子に対して近接又は離間する方向へ移動可能となっている。このため、課電側測定端子及び接地側測定端子により耐雷ホーンの上部電極部及び下部電極部を挟み込むだけで、耐雷ホーン劣化診断用操作具を耐雷ホーンに容易に装着することができる。耐雷ホーンの劣化診断は、耐雷ホーン劣化診断用操作具を耐雷ホーンに装着して、課電側測定端子及び接地側測定端子から導出されたリード線を計測器に接続することにより診断可能となる。したがって、耐雷ホーンを避雷碍子装置から取り外す必要はなく、避雷碍子装置に装着した状態で、耐雷ホーンの劣化診断を行うことができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、付勢手段によって接地側測定端子は常に課電側測定端子側に付勢されている。このため、課電側測定端子及び接地側測定端子によって耐雷ホーンの上部電極部及び下部電極部を確実に挟みこむことが可能となる。また、耐雷ホーン劣化診断用操作具を耐雷ホーンに装着した状態において、上部電極部と課電側測定端子との接触圧、及び下部電極部と接地側測定端子との接触圧がそれぞれ確保され、耐雷ホーンの劣化診断精度が向上する。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の作用に加えて、当該接地側測定端子の移動可能範囲における課電側測定端子に対する離間側の端部に接地側測定端子を係止することができる。このため、耐雷ホーン劣化診断用操作具を耐雷ホーンに装着する際、課電側測定端子と接地側測定端子とが耐雷ホーンの全長よりも大きく離間するように、前記接地側測定端子を係止手段によって係止する。そして、課電側測定端子を上部電極部に当接させた状態で係止手段の係止を外す。すると、接地側測定端子は付勢手段の付勢力により課電側測定端子に近接する方向へ移動して、接地側測定端子は下部電極部に当接する(近接位置)。したがって、課電側測定端子及び接地側測定端子の耐雷ホーンへの取付け作業、ひいては耐雷ホーンの劣化診断作業をスムーズに行うことができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の作用に加えて、接地側測定端子及び電極支持棒は操作ハンドルの移動方向に一体的に移動する。このため、耐雷ホーン診断用操作具の耐雷ホーンへの着脱は操作ハンドルを操作することにより、容易に行われる。例えば耐雷ホーン劣化診断用操作具を耐雷ホーンへ装着させる場合、前記操作ハンドルを操作することにより課電側測定端子と接地側測定端子との間隔を耐雷ホーンの全長よりも大きく離間させる(離間位置)。また、該操作ハンドルを係止溝に係止することができる。このため、操作ハンドルを係止溝に係止させることで、前記接地側測定端子を離間位置に保持させることができる。そして、操作ハンドルを係止溝から外すことにより、接地側測定端子は近接方向へと移動する。よって、耐雷ホーン劣化診断用操作具を容易に耐雷ホーンへ装着することができる。また、耐雷ホーン劣化診断用操作具を耐雷ホーンから取り外す場合、前記装着させる場合と同様に、前記操作ハンドルを操作することにより課電側測定端子と接地側測定端子との間隔を耐雷ホーンの全長よりも大きく離間させる。このようにして、耐雷ホーン劣化診断用操作具を容易に耐雷ホーンから取り外すことができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、耐雷ホーン劣化診断用操作具を耐雷ホーンに装着する際、ガイド部により耐雷ホーンの外周面に支持案内されることにより、耐雷ホーン劣化診断用操作具の耐雷ホーンに対する装着作業が簡単になる。このため、耐雷ホーンの劣化診断作業の準備をスムーズに行うことができる。また、前記ガイド部により耐雷ホーン劣化診断用操作具が安定する。このため、作業効率がいっそう向上する。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、耐雷ホーン劣化診断用操作具を耐雷ホーンに装着する際、課電側測定端子の上部電極部以外のものとの絶縁が確保される。課電側測定端子において絶縁体によって覆われている部位が、例えば送配電線に触れても耐雷ホーン劣化診断用操作具に電流が流れることがない。また、耐雷ホーン劣化診断用操作具を耐雷ホーンに装着する際、送配電線や他の配電機器への接触を過度に気にする必要がないので、耐雷ホーン劣化診断用操作具の耐雷ホーンへの装着作業効率も向上する。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、耐雷ホーン劣化診断装置には、請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載の耐雷ホーン劣化診断用操作具と計測器とが備えられている。該計測器は、例えば耐雷ホーン劣化診断のための各種機能及びデータを備えている。このため、該計測器は、耐雷ホーン劣化診断に最適な仕様となっている。したがって、このような計測器を耐雷ホーン劣化診断用操作具とセットで供給することにより、耐雷ホーンの劣化診断作業をスムーズに行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、耐雷ホーンを避雷碍子装置に装着した状態で耐雷ホーン劣化診断を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を例えば耐雷ホーン劣化診断用操作具及び耐雷ホーン劣化診断装置に具体化した一実施形態を図1〜図3に従って説明する。
(避雷碍子装置)
図1に示すように、送配電線3には雷撃により該送配電線3に侵入した雷サージ電流を速やかに大地へ放電する避雷碍子装置1が設けられている。即ち、電柱(図示略)には支持碍子2が固定されており、該支持碍子2の上部には送配電線3が支持されている。また、支持碍子2の底面にはブラケット4の一端が固定されており、該ブラケット4の他端は耐雷ホーン5の下部電極部6に固定されている。耐雷ホーン5の上部には上部電極部7が形成されている。該上部電極部7にはホーン8(金具)の一端がねじにより固定されており、該ホーン8の他端は前記支持碍子2の外周面を囲むように設けられている。雷撃により送配電線3に雷サージ電流が侵入した場合、その電流は送配電線3からホーン8を介して耐雷ホーン5を流れて大地に放電される。また、耐雷ホーン5はその後に発生する続流(放電が継続する現象)を抑制遮断する。
【0022】
(耐雷ホーン劣化診断用操作具)
図1に示すように、耐雷ホーン5は耐雷ホーン劣化診断装置10により劣化診断が行われる。該耐雷ホーン劣化診断装置10は、耐雷ホーン劣化診断用操作具11及び計測器31を備えている。該耐雷ホーン劣化診断用操作具11は、円筒形状の操作棒12、該操作棒12の上部に突設された課電側測定端子支持部としての支持部13、及び該操作棒12に挿通された可動部14を備えている。支持部13及び可動部14は絶縁体により形成されている。
【0023】
支持部13は操作棒12の上面に突設された支持棒15aと、該支持棒15aに対して直交するよう(断面逆L字状)に設けられた課電側測定端子固定部15bとから形成されている。課電側測定端子固定部15bには板状の課電側測定端子16が固定されている。該課電側測定端子16は課電側測定端子固定部15b及び支持棒15aにより覆われており、該課電側測定端子16において前記耐雷ホーン5の上部電極部7と接触する部位である上部接触部17のみ外部に露出されている。課電側測定端子16の上部接触部17は操作棒12の上面に対して平行となっている。
【0024】
図1及び図2に示すように、前記支持棒15aには一方が略U字状に開口したガイド部18が固定されている。該ガイド部18は、前記耐雷ホーン5の外周面に支持案内可能となるように、その開口幅が設定されている。該ガイド部18の開口側の両端縁はそれぞれ耐雷ホーン5を挿入し易いように若干外方へ開くように形成されている。
【0025】
課電側測定端子16における上部接触部17の端部には、リード線19aが装着されている。該リード線19aは、支持棒15a内を通って操作棒12の上壁を貫通すると共に該操作棒12の下部へと配線され、当該操作棒12の下部側壁を貫通して外部に導出されている。
【0026】
可動部14は、操作棒12の上壁を貫通して該操作棒12に挿通支持された電極支持棒23aと、該電極支持棒23aの外端(上端)において該電極支持棒23aに対して直交するよう(断面逆L字状)に設けられた接地側端子固定部23bとから形成されている。接地側端子固定部23bには板状の接地側端子24が固定されている。該接地側端子24において前記耐雷ホーン5の下部電極部6と接触する部位である下部接触部25のみ外部に露出されている。該下部接触部25の上面は操作棒12の上面に対して平行となっている。また、該下部接触部25は前記課電側測定端子16の上部接触部17に対向すると共に、互いに平行となっている。該接地側端子24の端部には、リード線19bが装着されている。該リード線19bは、前記電極支持棒23a内を通って、操作棒12の下部へと配線され、当該操作棒12の下部側壁を貫通して外部に導出されている。
【0027】
操作棒12内において、電極支持棒23aには鍔状のストッパ26が設けられている。当該ストッパ26と、前記操作棒12の内面に設けられたばね受け部22との間には、電極支持棒23aに挿通された付勢手段としてのばね27が配置されている。ばね27の弾性力により、電極支持棒23a、即ち接地側端子24はそれぞれ課電側測定端子16方向(近接方向Y)へ常時付勢されている。付勢手段としてのばね27は、コイルばねである。
【0028】
操作棒12の下部側壁には、スライド溝20が支持棒15aと平行に(即ち、操作棒12の長手方向に伸びるように)形成されている。該スライド溝20の下端部には、当該スライド溝20に対して直交するように形成された係止手段としての係止溝21が形成されている。
【0029】
前記電極支持棒23aの下端部には、係止操作ハンドル28が一体に形成されている。該係止操作ハンドル28は操作棒12のスライド溝20を介して外部に露出しており、該スライド溝20の間(近接方向Y、離間方向Xの方向)を移動可能となっている。この係止操作ハンドル28がスライド溝20の下端に係合する位置(図3に示す「離間位置」)に到達したとき、前記課電側測定端子16と接地側端子24との間隔は最大となり、耐雷ホーン5の上部電極部7と下部電極部6とを結んだ全長よりも大きく離間する。
【0030】
また、該係止操作ハンドル28は、スライド溝20の下端に係合する位置(図3に示す「離間位置」)において前記操作棒12の周方向に移動させることにより前記係止溝21内に移動可能となっている。係止操作ハンドル28が係止溝21に係止されることにより、ばね27の弾性力による該係止操作ハンドル28の上方への移動が規制される。即ち、電極支持棒23a及び接地側端子固定部23bの上方への移動が規制される。図3に示すように、係止操作ハンドル28が係止溝21にて係止された状態にあるとき、接地側端子24は離間位置に保持される。
【0031】
また、図1に示すように、課電側測定端子16及び接地側端子24からそれぞれ配線されたリード線19a,19bは、操作棒12の外部にて、計測器31にそれぞれ接続されている。この計測器31はバリスタ電圧及び絶縁抵抗等の耐雷ホーン5の電気的性能の診断が可能となっている。計測器31は、試験スイッチ32、入力部33、マイクロコンピュータ(以下「マイコン34」という)、表示部35及びスピーカ36を備えている。試験スイッチ32、入力部33、表示部35及びスピーカ36はそれぞれマイコン34に入出力インターフェイス(図示略)を介して接続されている。試験スイッチ32は、試験の開始及び終了するスイッチ操作を行うと共に耐雷ホーン5の劣化診断項目(試験項目)の選択操作を行う。入力部33は数値を入力するためのキーボードである。マイコン34はメモリ34aを備えており、このメモリ34aにはバリスタ電圧の適正範囲値及び規格絶縁抵抗値等の劣化診断のための各種データが予め格納されている。マイコン34は試験スイッチ32の操作により選択された試験の結果(バリスタ電圧の管理値と計測値との比較結果、絶縁抵抗の計測値)及び試験の合否を表示部35に表示させると共に、スピーカ36を介して音により報知する。
【0032】
(実施形態の作用)
次に、上記実施形態のように構成された耐雷ホーン劣化診断用操作具11を使用した耐雷ホーン5の劣化診断方法について説明する。耐雷ホーン劣化診断用操作具11の非使用時には係止操作ハンドル28は係止溝21に係止された状態(即ち、図3に示す「離間位置」)に保たれている。
【0033】
図3に示すように、耐雷ホーン劣化診断用操作具11を耐雷ホーン5に装着する場合、作業者は例えば高所作業車等により耐雷ホーン5の近傍まで寄って行く。この状態で、作業者は操作棒12を把持して耐雷ホーン劣化診断用操作具11を、診断対象の耐雷ホーン5に近づける。そのとき、ガイド部18の開口側から耐雷ホーン5を側方から該ガイド部18内に挿入する。そして、耐雷ホーン劣化診断用操作具11を下方に移動させることにより耐雷ホーン5の上部電極部7を課電側測定端子16に接触させる。この際、図2に示すように、ガイド部18は、耐雷ホーン5の外周面に案内されることにより、側方への移動が阻止される。このため、耐雷ホーン劣化診断用操作具11を下方への移動、ひいては課電側測定端子16と耐雷ホーン5の上部電極部7とを接触させる作業が円滑に行われる。
【0034】
次に、上記のように課電側測定端子16を上部電極部7に接触させた状態において、係止操作ハンドル28に指を掛け、該係止操作ハンドル28を操作棒12の周方向に移動させる。係止操作ハンドル28が係止溝21からスライド溝20の下端まで移動したときに指を放すと、係止操作ハンドル28及び電極支持棒23aは、それぞればね27の弾性力により課電側測定端子16に近接する方向(近接方向Y)へ一体的に移動する。係止操作ハンドル28及び電極支持棒23aの上方への移動は接地側端子24が耐雷ホーン5の下部電極部6に当接することにより規制される。したがって、係止操作ハンドル28に指を引っ掛けて、該係止操作ハンドル28を課電側測定端子16に近接する方向へ移動操作する必要はない。
【0035】
ばね27の弾性力により、耐雷ホーン5の上部電極部7と耐雷ホーン劣化診断用操作具11の課電側測定端子16、及び耐雷ホーン5の下部電極部6と耐雷ホーン劣化診断用操作具11の接地側端子24とは、それぞれ互いに接触状態に保たれる(図1に示す「近接位置」)。また、ばね27の弾性力により、耐雷ホーン5の上部電極部7と耐雷ホーン劣化診断用操作具11の課電側測定端子16との接触圧、及び耐雷ホーン5の下部電極部6と耐雷ホーン劣化診断用操作具11の接地側端子24との接触圧がそれぞれ確保される。
【0036】
その状態において、耐雷ホーン劣化診断用操作具11から導出されたリード線19a,19bを接続した計測器31を操作することにより耐雷ホーン5の劣化診断、即ち、耐雷ホーン5のバリスタ電圧及び絶縁抵抗等の電気的性能試験を行う。
【0037】
具体的に説明すると、バリスタ電圧の測定については、該計測器31の試験スイッチ32の操作により、診断対象の耐雷ホーン5の上部電極部7と下部電極部6との間にリード線19a,19b、課電側測定端子16及び接地側端子24を介して試験電圧を加圧(印加)する。このとき、試験電圧値(計測値)がメモリ34aに予め格納された管理値範囲内であれば、マイコン34はこの耐雷ホーン5は正常であると判断する。この計測値が該管理値範囲内であれば、表示部35にその旨の表示(計測値及び試験の合否表示)がなされる。また、スピーカ36からその旨の音が出力される。
【0038】
また、前記絶縁抵抗測定についても、前述のバリスタ電圧試験と同様に、前記計測器31の試験スイッチ32を操作することにより行われる。即ち、該試験スイッチ32を操作することにより、試験電圧が診断対象の耐雷ホーン5に印加(加圧)される。マイコン34は試験電圧を印加(加圧)したときの絶縁抵抗値が予めメモリ34aに格納された所定値(例えば1000MΩ)以上であるか否かを判断する。該絶縁抵抗値が1000MΩ以上であれば、マイコン34はその耐雷ホーン5は正常であると判断する。そして、その旨の表示(計測値及び試験の合否表示)が表示部35に表示される。また、スピーカ36からその旨の音が出力される。
【0039】
耐雷ホーン5の劣化診断作業の終了後、耐雷ホーン劣化診断用操作具11を耐雷ホーン5から取り外す。この場合、まず前記係止操作ハンドル28を下方(離間方向X)へ操作することにより課電側測定端子16と接地側端子24との間隔を耐雷ホーン5の全長よりも大きく離間させる。そして、耐雷ホーン劣化診断用操作具11を耐雷ホーン5から取り外す。尚、そのとき、係止操作ハンドル28を係止溝21に係止させて、耐雷ホーン劣化診断用操作具11を耐雷ホーン5から取り外すこともできる。
【0040】
従って本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)接地側端子24は、課電側測定端子16に対して離間方向Xまたは近接方向Yへ移動可能となっている。このため、課電側測定端子16及び接地側端子24により耐雷ホーン5の上部電極部7及び下部電極部6を挟み込むことができる。したがって、耐雷ホーン劣化診断用操作具11を耐雷ホーン5に容易に装着することができる。耐雷ホーン5の劣化診断は、耐雷ホーン劣化診断用操作具11を耐雷ホーン5に装着して、課電側測定端子16及び接地側端子24から導出されたリード線19a,19bを計測器31に接続することにより診断可能となる。このため、耐雷ホーン5を避雷碍子装置1から取り外す必要はなく、避雷碍子装置1に装着した状態で耐雷ホーン5の劣化診断を行うことができる。
【0041】
(2)ばね27によって接地側端子24は常に課電側測定端子16側(近接方向Y)に付勢されている。このため、課電側測定端子16及び接地側端子24によって耐雷ホーン5の上部電極部7及び下部電極部6を容易かつ確実に挟みこむことが可能となる。また、耐雷ホーン劣化診断用操作具11を耐雷ホーン5に装着した状態において、上部電極部7と課電側測定端子16との接触圧、及び下部電極部6と接地側端子24との接触圧がそれぞれ確保され、耐雷ホーン5の劣化診断精度が向上する。
【0042】
(3)操作棒12の下部には、操作棒12の長手方向に延びるスライド溝20及び該スライド溝20の下端において該スライド溝20に直交する係止溝21が形成されている。このため、接地側端子24を当該接地側端子24に設けられた係止操作ハンドル28をスライド溝20を介して係止溝21に係止することができる。したがって、耐雷ホーン劣化診断用操作具11を耐雷ホーン5に装着する際、課電側測定端子16と接地側端子24とが耐雷ホーン5の全長よりも大きく離間するように、前記接地側端子24を係止溝21によって係止させる。そして、課電側測定端子16を上部電極部7に当接させた状態で係止溝21から係止を外す。すると、接地側端子24はばね27の弾性力により近接方向Yへ移動して、接地側端子24は下部電極部6に当接する(図1に示す「近接位置」)。したがって、課電側測定端子16及び接地側端子24の耐雷ホーン5への取付け作業、ひいては耐雷ホーン5の劣化診断作業をスムーズに行うことができる。
【0043】
(4)また、耐雷ホーン劣化診断用操作具11を耐雷ホーン5から取り外す場合、係止操作ハンドル28を操作することにより課電側測定端子16と接地側端子24との間隔を耐雷ホーン5の全長よりも大きく離間させることができる。このとき、図3に示すように、接地側端子24の離間位置にて、係止操作ハンドル28を係止溝21に係止させることができる。したがって、係止操作ハンドル28を接地側端子24の離間位置に指で保持しながら該係止操作ハンドル28を取り外すようにした場合に比べて、耐雷ホーン劣化診断用操作具11を容易に耐雷ホーン5から取り外すことができる。
【0044】
(5)支持棒15aには一方が略U字状に開口したガイド部18が、当該支持棒15aにおいて、操作棒12と課電側測定端子16との間に配置されている。耐雷ホーン劣化診断用操作具11を耐雷ホーン5に装着する際、ガイド部18により耐雷ホーン5の外周面に支持案内されることにより、耐雷ホーン劣化診断用操作具11の耐雷ホーン5に対する装着作業が簡単になる。このため、耐雷ホーン5の劣化診断作業の準備をスムーズに行うことができる。また、前記ガイド部18により耐雷ホーン5の外周面に支持案内されるため、耐雷ホーン劣化診断用操作具11が安定する。このため、作業効率がいっそう向上する。
【0045】
(6)支持棒15aは、絶縁体にて形成されている。また、課電側測定端子16は該支持棒15aにおいて、上部接触部17のみ露出するように覆われている。このため、耐雷ホーン劣化診断用操作具11を耐雷ホーン5に装着する際、課電側測定端子16の上部電極部7以外のものとの絶縁が確保される。課電側測定端子16において絶縁体で覆われている部位が例えば送配電線3に触れても耐雷ホーン劣化診断用操作具11に電流が流れることがない。また、耐雷ホーン劣化診断用操作具11を耐雷ホーン5に装着する際、送配電線3や配電機器等への接触を過度に気にする必要がないので、耐雷ホーン劣化診断用操作具11の耐雷ホーン5への装着作業効率も向上する。
【0046】
尚、前記実施形態は、次のように変更して実施してもよい。
・本実施形態では、係止手段として係止操作ハンドル28を用いたが、ローレットねじのようなつまみを用いてもよい。このような構成にした場合、電極支持棒23aに雌ネジを設け、該雌ねじに前記ローレットねじをスライド溝20を介して外部から螺入する。また、外部に露出される該ローレットねじの頭部は、スライド溝の幅よりも大径となるものを用いる。こうすることにより、当該ローレットねじを締め付け方向に回転させると、前記ローレットねじの頭部の内側面は操作棒12の外周面を押し付ける。よって、スライド溝20の範囲内において、電極支持棒23aを任意の位置に係止(固定保持)させることができる。また、このような構成にした場合、係止溝21は不要となり、操作棒12の設計及び製造が容易となる。
【0047】
(付記)
・前記付勢手段はコイルばねである請求項2に記載の耐雷ホーン劣化診断用操作具。このようにすれば、耐雷ホーン劣化診断用操作具の構成の簡素化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施形態の耐雷ホーン劣化診断装置を示す部分断面図。
【図2】図1におけるA−A線断面図。
【図3】本実施形態の耐雷ホーン劣化診断用操作具を脱着するときの耐雷ホーン劣化診断装置を示す部分断面図。
【符号の説明】
【0049】
1…避雷碍子装置、3…送配電線、5…耐雷ホーン、6…下部電極部、7…上部電極部、11…耐雷ホーン劣化診断用操作具、12…操作棒、13…支持部、15a…課電側測定端子支持部及び絶縁体としての支持棒、15b…絶縁体としての課電側測定端子固定部、16…課電側測定端子、17…上部接触部、18…ガイド部、19a,19b…リード線、20…スライド溝、21…係止手段としての係止溝、23a…絶縁体としての電極支持棒、23b…絶縁体としての接地側測定端子固定部、24…接地側測定端子、25…下部接触部、27…付勢手段としてのばね、28…係止手段としての係止操作ハンドル、31…計測器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雷撃により送配電線路に侵入した雷サージ電流を大地へ放電する避雷碍子装置に備えられた耐雷ホーンの劣化を診断するために装着する耐雷ホーン劣化診断用操作具であって、
操作棒と、
該操作棒の先端に前記耐雷ホーンの上部電極部に装着可能に設けられた課電側測定端子と、
同じく前記操作棒の先端に前記耐雷ホーンの下部電極部に装着可能に且つ、課電側測定端子に対して近接又は離間する方向へ移動可能に設けられた接地側測定端子と、
前記課電側測定端子及び接地側測定端子のそれぞれから導出されて耐雷ホーンの電気的性能を測定する計測器に接続されるリード線と
を備えた耐雷ホーン劣化診断用操作具。
【請求項2】
前記接地側測定端子を常に課電側測定端子側へ付勢する付勢手段を備えた請求項1に記載の耐雷ホーン劣化診断用操作具。
【請求項3】
前記操作棒には、当該接地側測定端子の移動可能範囲における離間する方向の端部に、前記接地側測定端子を係止する係止手段が設けられている請求項2に記載の耐雷ホーン劣化診断用操作具。
【請求項4】
前記係止手段は、前記操作棒において、前記近接又は離間する方向と直交するように設けられた係止溝と、
該係止溝内を移動すると共に前記接地側測定端子と一体に移動する電極支持棒に取り付けられた操作ハンドルと
を備えた請求項3に記載の耐雷ホーン劣化診断用操作具。
【請求項5】
前記操作棒の先端には課電側測定端子を支持する課電側測定端子支持部を突設し、該課電側測定端子支持部には耐雷ホーンの外周面に支持案内するガイド部を設けた請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の耐雷ホーン劣化診断用操作具。
【請求項6】
前記課電側測定端子において、前記耐雷ホーンの上部電極部と接触する接触部が露出するように該課電側測定端子の外周面を絶縁体により覆うようにした請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の耐雷ホーン劣化診断用操作具。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載の耐雷ホーン劣化診断用操作具と、
該耐雷ホーン劣化診断用操作具に接続される計測器と
を備えた耐雷ホーン劣化診断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−84352(P2006−84352A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270297(P2004−270297)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】