説明

耐震構造体および耐震家屋

【課題】既設の家屋に対して比較的容易に耐震構造を組み込むことができ、しかも耐震性に優れたものにする。
【解決手段】軸組構法により既に完成した家屋の壁を補強する耐震構造体であって、立設した隣り合う2つの柱4、5と下側水平梁6と上側水平梁7とで構成され、内側が空スペースCとなった矩形枠と、前記矩形枠の内部に、下側水平梁6の上に載せるとともに前記2つの柱4、5で挟まれた状態に嵌め込まれた矩形状のものであって、下側水平梁6に沿って複数の角材13が並設されるとともに角材13の隣り合うもの同士が締結手段(コーチボルト14)により連結された補強壁20と、補強壁20を前記矩形枠に固定する固定手段(コーチボルト14)と、角材13の隣り合うもの同士の間に設けられ、隣り合う角材13の間に角材13の長手方向へ沿って発生する剪断力を低減させる剪断力低減手段(金具16及び嵌合ピン17)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば軸組構法により既に完成した家屋の耐震性を向上させるために壁を補強する耐震構造体および耐震家屋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から耐震性を考慮して、図23に示すように柱100と柱100との間に筋交い101や間柱102が設けられたり、或いは水平な梁103とその下側に平行に設けられる横架材104との間に間柱105が設けられたりしている。
【0003】
ところで、近年においては、より耐震性能に優れる家屋が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。この提案は、家屋と基礎部分とを非固定状態にして基礎部分により家屋をスライド可能に支持する構法であり、新規に家を建築する際にそのような構造を容易に組み込むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−218677号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記提案による場合には、家屋と下側の基礎部分との間に対して処理を行う必要があるため、耐震構造を既設の家屋に対して組み込むことは不可能ではないものの、容易なことではない。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、既設の家屋に対して比較的容易に耐震構造を組み込むことができ、しかも耐震性に優れた耐震構造体および耐震家屋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の耐震構造体は、軸組構法により既に完成した家屋の耐震性を向上させるために壁を補強する耐震構造体であって、立設した隣り合う2つの柱と下側水平梁と上側水平梁とで構成され、内側が空スペースとなった矩形枠と、前記矩形枠の内部に、前記下側水平梁の上に載せるとともに前記2つの柱で挟まれた状態に嵌め込まれた矩形状のものであって、前記下側水平梁に沿って複数の角材が並設されるとともに前記角材の隣り合うもの同士が締結手段により連結された補強壁と、前記補強壁を前記2つの柱のそれぞれに固定する固定手段と、前記補強壁の下端部が入る凹溝を有し、両端が前記2つの柱にそれぞれ固定される金属製の下側補強部材と、前記補強壁の上端部が入る凹溝を有し、両端が前記2つの柱にそれぞれ固定される金属製の上側補強部材と、を具備することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に係る耐震構造体は、請求項1に記載の耐震構造体において、前記下側補強部材が前記下側水平梁に固定されることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に係る耐震構造体は、請求項1または2に記載の耐震構造体において、前記上側補強部材が、前記上側水平梁またはその下側であって前記隣り合う2つの柱の間に別途設けた水平梁に固定されることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に係る耐震構造体は、請求項1乃至3のいずれかに記載の耐震構造体において、前記下側補強部材に対し前記補強壁を構成する複数の角材のそれぞれの下端部が固定され、かつ、前記上側補強部材に対し前記補強壁を構成する複数の角材のそれぞれの上端部が固定されることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5に係る耐震構造体は、請求項1乃至4のいずれかに記載の耐震構造体において、前記下側補強部材の片方の側面及び上側補強部材の片方の側面のそれぞれに、前記角材の端部を挿通させる開口が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項6に係る耐震構造体は、請求項1乃至5のいずれかに記載の耐震構造体において、前記角材の隣り合うもの同士の間に設けられ、隣り合う角材の間に角材の長手方向へ沿って発生する剪断力を低減させる剪断力低減手段を、更に具備することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項7に係る耐震構造体は、請求項6に記載の耐震構造体において、前記剪断力低減手段は、隣り合う角材の両方にそれぞれ食い込ませる食込部を互いに反対側に有する一体状の金具であることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項8に係る耐震構造体は、請求項7に記載の耐震構造体において、前記金具は、互いに反対側に有する一対の食込部が、連結片の両端にそれぞれ設けられた概略I字状の金具であることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項9に係る耐震構造体は、請求項6乃至8のいずれかに記載の耐震構造体において、前記剪断力低減手段は、隣り合う角材の両方に対向する状態で設けた凹溝と、上記対向する凹溝の内側に設けられた嵌合ピンとを有することを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項10に係る耐震構造体は、請求項9に記載の耐震構造体において、前記凹溝が半円状の溝で、前記嵌合ピンが円柱状のピンであることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項11に係る耐震家屋は、請求項1乃至10のいずれかに記載の耐震構造体が組み込まれたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の耐震構造体による場合には、立設した隣り合う2つの柱と上側水平梁と下側水平梁とで構成される矩形枠の内側に設けられた補強壁が、下側水平梁に沿って複数の角材が並設されるとともに角材の隣り合うもの同士が締結手段により連結された構成となっていて、その補強壁が下側水平梁の上に載せるとともに2つの柱で挟まれた状態に嵌め込まれて固定されるので、矩形枠の少なくとも3辺を矩形状の補強壁の3辺が支持する状態となる。よって、矩形枠の変形を抑制する耐震構造にすることができ、既設の家屋に対して比較的容易に耐震構造を組み込むことができる。加えて、補強壁の下端部が金属製の下側補強部材により保持されるとともに、補強壁の上端部が金属製の上側補強部材により保持されるので、補強壁の残り1辺も矩形枠に支持されて、つまり補強壁の4辺が矩形枠に支持されて、耐震性に優れたものにできる。
【0019】
請求項2に係る発明による場合には、補強壁の下端部を保持する下側補強部材が矩形枠を構成する下側水平梁に固定されるので、より耐震性を向上させ得る。
【0020】
請求項3に係る発明による場合には、補強壁の上端部を保持する上側補強部材が矩形枠を構成する上側水平梁またはその下側に別途設けた水平梁に固定されるので、更に耐震性を向上させ得る。
【0021】
請求項4に係る発明による場合には、補強壁を構成する角材のそれぞれの下端部が下側補強部材に固定され、補強壁を構成する角材のそれぞれの上端部が上側補強部材に固定されるので、更に耐震性を向上させ得る。
【0022】
請求項5に係る発明による場合には、下側補強部材の片方の側面と上側補強部材の片方の側面にそれぞれ開口が設けられているので、その開口から角材を矩形枠の内側に入れることができる。また、その開口が側面の片方にのみ設けているので、両補強部材自体の強度の低下を抑制することができる。
【0023】
請求項6に係る発明による場合には、地震により隣り合う角材の間において角材の長手方向に沿って剪断力が発生する虞があっても、角材の隣り合うもの同士の間に設けた剪断力低減手段が前記剪断力を低減させるので、耐震性を更に向上させ得る。
【0024】
請求項7に係る発明による場合には、剪断力低減手段を構成する一体状の金具の一方側にある食込部を隣り合う角材の片方に食い込ませ、他方側の食込部をもう片方の角材に食い込ませることで、隣り合う角材の間において発生する剪断力を低減させることになる。
【0025】
請求項8に係る発明による場合には、概略I字状の金具の連結片を挟んで一方側の食込部を隣り合う角材の片方に位置合わせし、その金具の連結片を他方側から打ち込み、もう片方の角材を前記金具の連結片を挟んで他方側の食込部に食い込ませることで、隣り合う角材の間に概略I字状の金具を簡単に配設することができる。
【0026】
請求項9に係る発明による場合には、隣り合う角材の両方に対向する状態で設けた凹溝の内側に嵌合ピンが嵌合するので、隣り合う角材の片方の凹溝に支持された嵌合ピンが、もう片方の角材の凹溝に嵌合し、これにより嵌合ピンが隣り合う角材に跨るように設けられ、隣り合う角材をつなぎ合わせるため、隣り合う角材の間において発生する剪断力を低減させることになる。
【0027】
請求項10に係る発明による場合には、隣り合う角材が前記締結手段により連結された後に、隣り合う角材の間にドリル等により円形の孔を開け、その孔に円柱状のピンを嵌合させることで、剪断力低減手段を簡単に設けることができる。
【0028】
本発明の耐震家屋による場合には、上述した耐震構造体と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係る耐震構造体を示す正面図である。
【図2】図1の耐震構造体を組み込む前の状態の家屋を示す斜視図である。
【図3】家屋の一部(図2のA部)に設けた耐震構造体を示す正面図である。
【図4】本発明において用いる剪断力低減手段の一つである概略I字状の金具を示す外観斜視図である。
【図5】図4に示す金具の取付け説明図である。
【図6】本発明において用いる剪断力低減手段の他の例である嵌合ピンを示す外観斜視図である。
【図7】図6の嵌合ピンを挿着する貫通する孔の説明図である。
【図8】図3に示す耐震構造体の製造工程の説明図である。
【図9】図3に示す耐震構造体の製造工程の説明図である。
【図10】図3に示す耐震構造体の製造工程の説明図である。
【図11】図3に示す耐震構造体の製造工程の説明図である。
【図12】図3に示す耐震構造体の製造工程の説明図である。
【図13】図3に示す耐震構造体の製造工程の説明図である。
【図14】剪断力の発生メカニズムの説明図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係る耐震構造体を示す正面図である。
【図16】図15の耐震構造体の高さ方向中間部を省略して示す正面図である。
【図17】下側補強部材(または上側補強部材)を示す外観斜視図である。
【図18】下側補強部材(または上側補強部材)を示す図で、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図、(d)は底面図、(e)は背面図である。
【図19】下側補強部材及び上側補強部材に対する角材の取付け説明図である。
【図20】(a)及び(b)は共に本発明に適用される金具の他の例を示す図である。
【図21】補強壁の他の構成例を示す図である。
【図22】本発明の更に他の実施形態に係る耐震構造体を示す正面図である。
【図23】従来の耐震構造体を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の実施形態を具体的に説明する。
【0031】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る耐震構造体を示す正面図であり、図2はその耐震構造体を組み込む前の状態の家屋を示す斜視図であり、図3、図8〜図13はその家屋の壁(図2のA部)に耐震構造体を設ける際の工程の説明図である。
【0032】
この耐震構造体1は、部屋2の四隅における直交する2つの壁部3、3に設けられており、部屋2の四隅に配設された柱4と、その柱4の隣(図3では右隣)の柱5と、これら柱4、5に両端が連結された下側水平梁6と、柱4、4に両端が連結された上側水平梁7とで構成される矩形枠10の内側に設けられている。下側水平梁6は、例えば一般にコンクリートにより作製された基礎8の上に水平に配された土台9の上に根太(図示せず)を介して取り付けられた床面11よりも下側水平梁6の上面を上側にして、水平に設けられている。上側水平梁7は、その全体を天井12よりも上側にして水平に配されている。なお、下側水平梁6はその上面を床面11よりも下側に配してもよく、また上側水平梁7はその下面を天井12よりも下側に配してもよい。
【0033】
矩形枠10の内側の空スペースCに、その矩形枠10よりも高さ寸法が短い矩形状の補強壁20が嵌め込まれかつ固定されることにより、本実施形態に係る耐震構造体1が構成されている。なお、上記耐震構造体1が設けられた壁部3は屋内と屋外とに面していて、矩形枠10は屋内側の壁部材を、或いは土壁の場合にはその土壁自体を取り外すことにより得られていて、その矩形枠10に対して屋内側から補強壁20を嵌め込みかつ固定している。なお、補強壁20は、矩形枠10の天井12よりも低い箇所に設けると取り付け性に優れるが、補強壁20の上部が天井12よりも高くなるように取り付けてもよい。また、図2においては屋外の壁部材を省略して表している。
【0034】
上記補強壁20は、図3に示すように、柱4、5の間に柱4,5と平行に設けられた複数本、図示例では9本の角材13と、多数のコーチボルト14と、3本の挟持用の通しボルト15と、剪断力低減手段としての多数の金具16及び多数の嵌合ピン17とを有して構成されていて、両端の角材13はそれぞれ柱4、5に固定されている。上記通しボルト15の本数は、3本に限らず、1〜2本または4本以上としてもよい。
【0035】
図4は、前記金具16を示す外観斜視図である。この金具16は、互いに反対側に位置する一対の食込部16a、16aが連結片16bの両端部にそれぞれ設けられた、概略I字状のものである。各食込部16aの先端側は先端に近づく程に尖った形状、この例では厚みが薄く幅が狭くなるように形成されていて、食込み易くする構成となっている。なお、食込部16aが突出する方向と直交する方向である厚み寸法は、食込部16aの先端部を除き全体的に概略一定となっている。なお、金具16は、特開2008−202277号公報「高剛性面体の施工方法、及び、高剛性面体の施工に用いられる連結部材」の図3に開示されている連結部材等が利用できるので、図ではそれを利用した場合を例として示すが、同様の機能を有する金物等であればよい。
【0036】
この金具16の取付けは、一例として、図5に示すように連結片16bを挟んで片側(例えば図4の左側)の2つの食込部16a(16c)を角材13または柱4(または5)に、ハンマー等による打ち込みにより食込ませ、その後、前記角材13または柱4(または5)に隣り合うように配設される角材13を矢符方向へ叩いて、もう片側(例えば図4の右側)の2つの食込部16a(16d)を、叩いている角材13に食い込ませることにより行われる。
【0037】
図6は、上記嵌合ピンを示す外観斜視図である。この嵌合ピン17は、剪断力低減手段を構成するもう一つのものであり、図示例では中実の円柱状に形成されている。なお、中空の円筒状であってもよい。嵌合ピン17の材質は、例えば木材、樹脂、金属などが用いられる。
【0038】
この嵌合ピン17は、以下のように取付けられる。すなわち、隣り合う角材13どうしが連結された後に、図7に示すように隣り合う2つの角材13のそれぞれに跨るように例えばドリル等により円形の孔18(二点鎖線で示す)をあけ、その孔18に嵌合ピン17を嵌着させる。つまり、この嵌合ピン17は、例えば木材をつなぎ合わせるためのダボのように用いられる。
【0039】
次に、上記補強壁20の嵌め込み及び固定の仕方につき、図3、図8〜図13に基づき説明する。ここで、9本の角材13に関して位置を特定する場合に、図3に示す左側の柱4側から順に、第1角材13−1、第2角材13−2、第3角材13−3、第4角材13−4、第5角材13−5、第6角材13−6、第7角材13−7、第8角材13−8、第9角材13−9と言う。そして、3つの第4角材13−4、第5角材13−5及び第6角材13−6は、通しボルト15により挟持される中央部の角材を構成する。
【0040】
ここで、上記コーチボルト14は、柱4(5)と角材13とを連結する場合は固定手段として用いられ、角材13同士を連結する場合は締結手段として用いられる。
【0041】
まず、下側水平梁6、上側水平梁7、9本の角材13、コーチボルト14、通しボルト15、金具16及び嵌合ピン17を用意する。
【0042】
そして、図8に示すように、下側水平梁6の上面となる面に、凹状の係合部6aを形成する。また、各角材13の下端になる面に、前記係合部6aに係合する凸状の被係合部13aを形成するとともに、補強壁20の中央部に配される3本の第4角材13−4、第5角材13−5、第6角材13−6の一面に、通しボルト15を回避するための凹溝13bを各3個ずつ形成する(図8には凹溝13bを1つ表している)。更に、全ての角材13における前記凹溝13bに対応する面に、上枠21を取り付けるための段部13eを形成する。そして、図9に示すように、左から3番目と右から3番目に配する第3角材13−3、第7角材13−7に、凹部13cとボルト挿通孔13dを形成し、これら左右3番目の両角材13−3、13−7に対し、角材13−7に設けた通し孔13fを介して通しボルト15を取り付ける。なお、凹部13c内部には、通しボルト15の六角形状の頭部15aと、ナット15bとが配されている。
【0043】
かる準備が完了すると、図10に示すように、床面11よりも上側に下側水平梁6を設ける。この下側水平梁6は、長手方向両端が柱4、5に固定される。
【0044】
次に、柱4と柱5とに対し、互いに対向する面であって高さが異なる所定の複数箇所(図示例では8箇所)に、金具16の片側の食込部16cを打ち込み、その後、左から1番目と右から1番目の第1角材13−1、第9角材13−9を上下方向に立てて下側水平梁6の上に載せ、第1角材13−1を柱4側へ向けて叩いて金具16のもう片側の食込部16dを、叩いている第1角材13−1に食い込ませ、また、第9角材13−9を柱5側へ向けて叩いて金具16の食込部16dを、叩いている第9角材13−9に食い込ませる。その後、角材13−1、13−9を対応する柱4、5に、それぞれ複数本(図示例では4本)のコーチボルト14を用いて固定する。このとき、第1角材13−1、第9角材13−9と下側水平梁6は、係合部6aを被係合部13aに係合させておく。なお、食込部16dを角材13に食い込ませることと、コーチボルト14を用いた固定とは、第1角材13−1に対して連続的に行い、これと前後して、第9角材13−9に対して連続的に行うようにしてもよい。
【0045】
続いて、第1角材13−1における柱4と反対側の面であって、高さが異なる所定の複数箇所(図示例では8箇所)に、前同様に金具16の食込部16cを食い込ませて金具16を取付ける。これと前後して、第9角材13−9における柱5と反対側の面であって、高さが異なる所定の複数箇所(図示例では8箇所)に、前同様に金具16の食込部16cを食い込ませて金具16を取付ける。
【0046】
次に、図11に示すように、左から2番目と右から2番目の第2角材13−2、第8角材13−8を上下方向に立てて下側水平梁6の上に載せ、第2角材13−2を第1角材13−1側へ向けて叩いて金具16の食込部16dを、叩いている角材13−2に食い込ませ、また、第8角材13−8を第9角材13−9側へ向けて叩いて金具16の食込部16dを、叩いている第8角材13−8に食い込ませる。その後、角材13−2、13−8を対応する第1角材13−1、第9角材13−9に、それぞれ複数本(図示例では4本)のコーチボルト14を用いて固定する。このとき、第2角材13−2、第8角材13−8と下側水平梁6は、係合部6aを被係合部13aに係合させておく。なお、食込部16dを角材13に食い込ませることと、コーチボルト14を用いた固定とは、前同様に、第2角材13−2に対して連続的に行い、これと前後して、第8角材13−8に対して連続的に行うようにしてもよい。
【0047】
続いて、角材13−2における角材13−1と反対側の面であって、高さが異なる所定の複数箇所(図示例では8箇所)に、前同様に金具16の食込部16cを食い込ませて金具16を取付ける。これと前後して、角材13−8における角材13−9と反対側の面であって、高さが異なる所定の複数箇所(図示例では8箇所)に、前同様に金具16の食込部16cを食い込ませて金具16を取付ける。
【0048】
次に、図12に示すように、通しボルト15が取り付けられた左から3番目と右から3番目の第3角材13−3、第7角材13−7を上下方向に立てて、下側水平梁6の上に載せ、第3角材13−3を第2角材13−2側へ向けて叩いて金具16の食込部16dを、叩いている角材13−3に食い込ませ、また、第7角材13−7を第8角材13−8側へ向けて叩いて金具16の食込部16dを、叩いている角材13−7に食い込ませる。その後、角材13−3、13−7を対応する第2角材13−2、第8角材13−8に、それぞれ複数本(図示例では4本)のコーチボルト14を用いて固定する。このとき、第3角材13−3、第7角材13−7と下側水平梁6は、係合部6aを被係合部13aに係合させておく。なお、食込部16dを角材13に食い込ませることと、コーチボルト14を用いた固定とは、前同様に行うことが可能である。
【0049】
続いて、角材13−3における角材13−2と反対側の面であって、高さが異なる所定の複数箇所(図示例では8箇所)に、前同様に金具16の食込部16cを食い込ませて金具16を取付ける。これと前後して、角材13−7における角材13−8と反対側の面であって、高さが異なる所定の複数箇所(図示例では8箇所)に、前同様に金具16の食込部16cを食い込ませて金具16を取付ける。
【0050】
次に、図13に示すように、左から4番目と右から4番目の第4角材13−4、第6角材13−6を上下方向に立てて下側水平梁6の上に載せ、第4角材13−4を第3角材13−3側へ向けて叩いて金具16の食込部16dを、叩いている角材13−4に食い込ませ、また、第6角材13−6を第7角材13−7側へ向けて叩いて金具16の食込部16dを、叩いている角材13−6に食い込ませる。その後、角材13−4、13−6を対応する第3角材13−3、第7角材13−7に、それぞれ複数本(図示例では4本)のコーチボルト14を用いて固定する。このとき、第4角材13−4、第6角材13−6における凹溝13bの内側に通しボルト15を位置させ、また、第4角材13−4、第6角材13−6と下側水平梁6は、係合部6aを被係合部13aに係合させておく。なお、食込部16dを角材13に食い込ませることと、コーチボルト14を用いた固定とは、前同様に行うことが可能である。
【0051】
続いて、図3に示すように、第4角材13−4、第6角材13−6の間の間隔を測定し、中央位置の左から5番目の第5角材13−5の幅寸法が前記測定間隔にほぼ一致するように調整する。そして、調整後の第5角材13−5を、第4角材13−4、第6角材13−6の間に上下方向に立てて入れる。このとき、第5角材13−5における凹溝13bの内側に通しボルト15を位置させ、また、第5角材13−5と下側水平梁6は、係合部6aを被係合部13aに係合させておく。
【0052】
次に、通しボルト15を締め付けて、第3角材13−3、第7角材13−7を互いに接近させ、これら第3角材13−3、第7角材13−7により第5角材13−5を両側から挟持する。なお、通しボルト15の頭部15aを第3角材13−3に、ナット15bを第7角材13−7に設けるようにしているが、これに限らず他の2つの角材に設けるようにしてもよい。例えば、頭部15aを第2角材13−2に、ナット15bを第8角材13−8に設けたり、或いは、頭部15aを第2角材13−2に、ナット15bを第7角材13−7に設けたり、或いは、頭部15aを第3角材13−3に、ナット15bを第8角材13−8に設けたりする等してもよい。
【0053】
次に、以上のようにして9つの角材13が連結された補強壁20における第4角材13−4と第5角材13−5とに跨って円形の貫通する孔18を、例えばドリル等により形成する。孔18は、複数(図示例では6つ)の異なる高さ位置に水平方向に形成される。これと前後して、第5角材13−5と第6角材13−6とに跨って円形の貫通する孔18を同様に形成する。
【0054】
続いて、形成された孔18のそれぞれに、図6に示す嵌合ピン17を挿着する。これにより補強壁20が完成する。
【0055】
最後に、全角材13の上端に設けた段部13eに、上枠21を取り付ける(図8参照)とともに、上枠21の両端を柱4、5に連結する。
【0056】
以上のようにして、矩形枠10の内側に補強壁20が嵌め込まれかつ固定される。なお、前記孔18の形成と、嵌合ピン17の挿着は、上枠21の両端を柱4、5に連結した後に行うようにしてもよい。
【0057】
したがって、第1実施形態による場合には、立設した隣り合う2つの柱4、5と上側水平梁7と下側水平梁6とで構成される矩形枠10を得、その矩形枠10の内側に補強壁20を、下側水平梁6の上に載せるとともに2つの柱4、5で挟まれた状態に嵌め込んで固定するので、矩形枠10の少なくとも3辺(下辺と両側辺)を矩形状の補強壁20の3辺(下辺と両側辺)が支持する状態となって矩形枠10の変形を抑制する耐震構造にすることができる。よって、既設の家屋に対しても、比較的容易に耐震構造を組み込むことができる。
【0058】
また、第1実施形態にあっては、角材13の隣り合うもの同士の間に剪断力低減手段としての金具16と嵌合ピン17とが設けられているので、図14に示すように地震により隣り合う2つの角材13A、13Bが同じように撓むことで、一方の角材13Aにおける他方の角材13B側の面が縮み、他方の角材13Bにおける一方の角材13A側の面が伸びることにより、両角材13A、13Bの間において、角材13A、13Bの長手方向に沿って剪断力が発生する虞があっても、上記金具16と嵌合ピン17とが上記剪断力を低減させる。また、柱4(5)とこれに連結される角材13との間に設けた金具16も、これらの間に生じる剪断力を低減させるので、耐震性に優れる。例えば、壁倍率(耐震性)が筋交いを用いたときの値に対し4.6倍に向上する。
【0059】
更に、第1実施形態にあっては、2本の柱4、5の間に複数の角材13を順に取り付けていくことによって、矩形枠10の内側に矩形枠10の変形を抑制する補強壁20を組み込むことができるので、経年変化により歪みが発生した柱間にも容易に対応することができる。更に、係合部6aと被係合部13aとを係合させる構成としているので、下側水平梁6の上に載せた補強壁20が地震等による振動を受けても外れ難くなる。
【0060】
(第2実施形態)
上述した第1実施形態では下側水平梁6に設けた係合部6aと、補強壁20を構成する角材13の下面に設けた被係合部13aとを係合させる構成としているが、この第2実施形態では、補強壁20の下端部を下側補強部材で保持し、補強壁20の上端部を上側補強部材で保持することにより、更に耐震性に優れた構造を提供する。
【0061】
図15は第2実施形態に係る耐震構造体を示す正面図であり、図16はその耐震構造体の高さ方向中間部を省略して示す正面図、図17は下側補強部材(または上側補強部材)を示す外観斜視図である。また、図18は下側補強部材(または上側補強部材)を示す図で、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図、(d)は底面図、(e)は背面図であり、図19は下側補強部材及び上側補強部材に対する角材の取付け説明図である。
【0062】
この耐震構造体1Aは、下側補強部材50が下側水平梁6に固定され、この下側補強部材50に補強壁20の下端部20aが保持されている。また、上側補強部材51が、上側水平梁7の下側に両柱4、5に掛け渡した別の水平梁52に固定されていて、この上側補強部材51に補強壁20の上端部20bが保持された構成となっている。なお、他の構成部分については、第1実施形態と同様に構成されていて、説明を省略する。
【0063】
下側補強部材50と上側補強部材51は、金属製(たとえは鋼製)のものであり、上下逆にして使用される同一構成のものである。下側補強部材50及び上側補強部材51の構成につき、下側補強部材50を代表して説明する。
【0064】
矩形状の底面50aと、底面50aの短辺に繋がる左側面50b及び右側面50cと、底面50aの長辺に繋がる正面50d及び背面50eとを有し、天井が開口したものであり、これらにより凹溝50gが形成される。また、正面50dの中央部には開口50fが形成されている。この開口50fは角材13の端部(下端部と上端部)を挿通させるためのものであり、補強壁20の後面側に見えないように配される。
【0065】
また、底面50a、左側面50b、右側面50c、正面50d及び背面50eには、それぞれ取付孔50a1、50b1、50c1、50d1及び50e1が形成されている。
【0066】
上記下側補強部材50と上側補強部材51は、角材13を矩形枠10に配置させる前に取付けられる。下側補強部材50の取付けは、開口50fを部屋の外側に向け、かつ底面50aを下側に配した状態にし、左側面50b及び右側面50cを柱4、5の該当する側に向け、取付孔50a1、50b1、50c1を介してコーチボルト53により固定することで行われる。一方、上側補強部材51の取付けは、開口50fを部屋の外側に向け、かつ底面50aを上側に配した状態にし、左側面50b及び右側面50cを柱4、5の該当する側に向け、取付孔50a1、50b1、50c1を介してコーチボルト53により固定することで行われる。図19は、その取付け状態を、部屋の外側から見た図である。
【0067】
次に、角材13の下端部13aをA方向に移動して下側補強部材50の開口50fに挿通させるとともに、角材13の上端部13bをA方向に移動して上側補強部材51の開口50fに挿通させ、続いて角材13を凹溝50gに沿って左側面50b側または右側面50c側へスライドさせる。このことを、中央位置の角材13−5を除く角材に対して行い、最後に、中央位置の角材13−5の下端部13aを下側補強部材50の開口50fに入れるとともに、中央位置の角材13−5の上端部13bを上側補強部材51の開口50fに入れ、かつ、各角材13をコーチボルト14、通しボルト15、金具16、嵌合ピン17を介して連結する。これにより柱4、5に保持された補強壁20が形成される。なお、各角材13のスライド方向に関しては、角材13−1、13−2、13−3、13−4はC方向へスライドさせ、角材13−9、13−8、13−7、13−6はB方向へスライドさせる。
【0068】
続いて、補強壁20を構成する各角材13の一つずつを、下側補強部材50及び上側補強部材51に対し、取付孔50d1及び50e1を介してコーチボルト53により固定する。このとき、角材13の下端部13aは下側補強部材50に固定され、角材13の上端部13bは上側補強部材51に固定される。なお、この固定は、補強壁20が形成される前に、各角材13を、隣接する柱4、5や角材13に連結する都度、逐次行うようにしてもよい。以上のようにすることで、図15に示す耐震構造体1Aが得られる。
【0069】
したがって、この第2実施形態の耐震構造体1Aにあっては、補強壁20の下端部20aが金属製の下側補強部材50により保持されるとともに、補強壁20の上端部20bが金属製の上側補強部材51により保持されるので、補強壁20の4辺が矩形枠に支持されることとなり、第1実施形態による場合よりも耐震性に優れたものにできる。また、下側補強部材50が下側水平梁6に固定され、一方の上側補強部材51が水平梁52に固定されているので、下側補強部材50及び上側補強部材51の左側面50b及び右側面50cを柱4、5の該当する側に固定した場合よりも耐震性に優れる。更に、補強壁20を構成する全ての角材13の両端部が下側補強部材50及び上側補強部材51にコーチボルト53により固定されているので、補強壁20を構成する角材13の一部の両端部を下側補強部材50及び上側補強部材51に固定する場合よりも更に耐震性に優れる。
【0070】
但し、本発明は、下側補強部材50及び上側補強部材51の一方のみを用いること、また、下側補強部材50または上側補強部材51を、下側水平梁6または水平梁52に対して非固定とすること、更に、補強壁20を構成する全ての角材13ではなく一部の角材の両端部を下側補強部材50及び上側補強部材51に固定することを含むものである。
【0071】
なお、この第2実施形態においては上側補強部材51を、上側水平梁7の下側に設けた水平梁52に固定する例を示しているが、本発明はこれに限らず、上側水平梁7に上側補強部材51を固定する場合も含む。
【0072】
また、上述した第1、第2実施形態では柱4(5)と角材13との間または角材13同士の間に、金具16を8個設けているが、本発明はこれに限らない。例えば、1〜7本または9本以上設けるようにしてもよい。
【0073】
更に、上述した第1、第2実施形態では角材13を連結するコーチボルト14を、各角材13に対して4本ずつ設けているが、本発明はこれに限らず、1〜3本または5本以上設けてもよい。但し、コーチボルト14の大きさにもよるが、本数は多い程好ましい。
【0074】
更にまた、上述した第1、第2実施形態では嵌合ピン17は、隣り合う角材13の間に6個ずつ設けているが、本発明はこれに限らず、1〜5個または7個以上設けてもよい。但し、嵌合ピン17の材質や大きさにもよるが、本数は多い程好ましい。
【0075】
更にまた、上述した第1、第2実施形態では金具16及び嵌合ピン17の両方を用いているが、本発明はこれに限らず、いずれか一方のみを用いてもよい。但し、金具16は、第5角材のように最後に嵌め込むものには適用が困難であるが、嵌合ピン17は適用箇所に制限がなく使い勝手に優れる。また、第2実施形態にあっては、つまり補強壁20の上下両端部を下側補強部材50及び上側補強部材51に固定する場合にあっては、金具16及び嵌合ピン17の両方を省略しかつ隣合う角材13同士を締結手段(コーチボルト14)および通しボルト15により連結する構成の補強壁にも適用できる。
【0076】
更にまた、上述した第1、第2実施形態では金具16は一方の食込部16cを角材や柱に食込ませた後に、隣の角材を叩いて他方の食込部16dを、叩いている角材に食い込ませているが、本発明はこれに限らない。たとえば、2つの角材(または柱と角材)の間に金具16を配しておき、両角材を接近させることで、両角材の間に金具16を取付けるようにしてもよい。
【0077】
上記金具としては、図20(a)に示すように鍔16eを挟んで両側に食込部16fが設けられた、つまり食込部16fが一対のも設けられた金具16Aを用いてもよい。或いは、図20(b)に示すように、連結片16gを挟んで片側に複数、図示例では3つの食込部16hを有し、もう片側にも同数の食込部16iを有する金具16Bを用いてもよい。なお、食込部16hと食込部16iの数は異なっていてもよい。また、食込部の形状としては、ハンマーの先端や釘の先端の形状が好ましいものの、他の形状であってもよい。例えば波形(角材の面に同じ波形が形成される)でもよい。
【0078】
更にまた、上述した第1、第2実施形態では嵌合ピンを挿着させる孔を隣り合う角材が連結された後に形成しているが、本発明はこれに限らない。隣り合うように配設される2つの角材のそれぞれに半円形の凹溝を別々に形成し、これら2つの凹溝を繋ぎ合わせると円形孔になるようにしてもよい。つまり、2つの角材を連結する前に凹溝を形成するようにしても構わない。また、凹溝の形状も、半円形に限らず、三角形や四角形などにしてもよく、嵌合ピンの形状はこれらの形状に対応させたものとすればよい。例えば、断面矩形状の嵌合ピンなどを用いることができる。
【0079】
更にまた、上述した第1、第2実施形態では2本の柱4、5の間に複数の角材13を順に取り付けていくことによって、矩形枠10の内側に矩形枠10の変形を抑制する補強壁20を組み込むようにしているが、本発明はこれに限らない。例えば、図21に示すように前記9つの角材13を連結し、両端の角材13−1、13−9を柱4、5に固定しない補強壁20を矩形枠10の内側に嵌め込み、その後で柱4、5にコーチボルト等により固定してもよい。上記補強壁20の角材13の本数は、9本に限らず、任意の本数としてもよい。
【0080】
更にまた、本発明は、図22に示すように、上下に平行に配設された上側の梁30と下側の横架材31とで、柱5、5の間において矩形枠33を構成する2つの水平梁が構成されていて、その矩形枠33の内側に固定される、複数の角材が連結されてなる補強壁34にも同様に適用される。また、図22に示すようにまぐさ部35の上側の壁部36や、その壁部36の両隣の壁部37、38、或いはまぐさ部35の下側の壁部41にも適用することができる。上記壁部41にあっては、図22中の43が上側水平梁、同6−Aが下側水平梁として用いられる。
【0081】
更にまた、上述した第1、第2実施形態では明言していないが、基礎の上に土台が配設される1階部分だけでなく、2階部分や3階部分の壁部分にも本発明は適用可能である。
【0082】
更にまた、上述した第1、第2実施形態ではコーチボルトを用いた締結により補強壁を矩形枠に固定する例を挙げているが、本発明はこれに限らず、ネジや釘などの締結部材を固定手段として用いてもよい。
【0083】
更にまた、上述した第1、第2実施形態では明言していないが、本発明は、柱4、5と下側水平梁6との連結部、柱4、5と上側水平梁7との連結部、または柱4、5と水平梁52との連結部に、図示しない補強金具を用いて補強することが好ましい。その補強金具としては、連結部の形態に応じた形状の補強金具、例えばI形、L形、またはT形などの補強金具が用いられる。
【符号の説明】
【0084】
1、1A 耐震構造体
3 壁部
4、5 柱
6、6−A 下側水平梁
7、43 上側水平梁
10 矩形枠
13 角材
14 コーチボルト(固定手段または締結手段)
16 金具
17 嵌合ピン
18 孔
20 補強壁
30 梁(水平梁)
31 横架材(水平梁)
50 下側補強部材
51 上側補強部材
52 別の水平梁
C 空スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸組構法により既に完成した家屋の耐震性を向上させるために壁を補強する耐震構造体であって、
立設した隣り合う2つの柱と下側水平梁と上側水平梁とで構成され、内側が空スペースとなった矩形枠と、
前記矩形枠の内部に、前記下側水平梁の上に載せるとともに前記2つの柱で挟まれた状態に嵌め込まれた矩形状のものであって、前記下側水平梁に沿って複数の角材が並設されるとともに前記角材の隣り合うもの同士が締結手段により連結された補強壁と、
前記補強壁を前記2つの柱のそれぞれに固定する固定手段と、
前記補強壁の下端部が入る凹溝を有し、両端が前記2つの柱にそれぞれ固定される金属製の下側補強部材と、
前記補強壁の上端部が入る凹溝を有し、両端が前記2つの柱にそれぞれ固定される金属製の上側補強部材と、を具備することを特徴とする耐震構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の耐震構造体において、
前記下側補強部材が前記下側水平梁に固定されることを特徴とする耐震構造体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の耐震構造体において、
前記上側補強部材が、前記上側水平梁またはその下側であって前記隣り合う2つの柱の間に別途設けた水平梁に固定されることを特徴とする耐震構造体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の耐震構造体において、
前記下側補強部材に対し前記補強壁を構成する複数の角材のそれぞれの下端部が固定され、かつ、前記上側補強部材に対し前記補強壁を構成する複数の角材のそれぞれの上端部が固定されることを特徴とする耐震構造体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の耐震構造体において、
前記下側補強部材の片方の側面及び上側補強部材の片方の側面のそれぞれに、前記角材の端部を挿通させる開口が設けられていることを特徴とする耐震構造体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の耐震構造体において、
前記角材の隣り合うもの同士の間に設けられ、隣り合う角材の間に角材の長手方向へ沿って発生する剪断力を低減させる剪断力低減手段を、更に具備することを特徴とする耐震構造体。
【請求項7】
請求項6に記載の耐震構造体において、
前記剪断力低減手段は、隣り合う角材の両方にそれぞれ食い込ませる食込部を互いに反対側に有する一体状の金具であることを特徴とする耐震構造体。
【請求項8】
請求項7に記載の耐震構造体において、
前記金具は、互いに反対側に有する一対の食込部が、連結片の両端にそれぞれ設けられた概略I字状の金具であることを特徴とする耐震構造体。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれかに記載の耐震構造体において、
前記剪断力低減手段は、隣り合う角材の両方に対向する状態で設けた凹溝と、上記対向する凹溝の内側に設けられた嵌合ピンとを有することを特徴とする耐震構造体。
【請求項10】
請求項9に記載の耐震構造体において、
前記凹溝が半円状の溝で、前記嵌合ピンが円柱状のピンであることを特徴とする耐震構造体。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の耐震構造体が組み込まれた耐震家屋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−185033(P2011−185033A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4205(P2011−4205)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(508346527)社団法人大阪府木材連合会 (3)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】