説明

耐食性被覆がなされたアクティブ磁気ベアリング

【課題】石油及びガス環境下で、耐食性で使用可能な磁気ベアリングの提供。
【解決手段】回転マシン用の被覆されたアクティブ磁気ベアリングで、プロセスガスと接触するロータに取着された薄層磁気材料のベアリングアーマチュア31と薄層磁気材料のヨーク43に巻き付けられた電磁石巻線42のベアリングステータ41を有し、ベアリングステータは、第1の耐漏ハウジング40を形成するために第1のハウジング部分と協働する磁気耐食材料のフェライト系ステンレス鋼の第1のジャケット34で保護され、第1のハウジング部分は、フェライト系ステンレス鋼ででき、かつ電磁石巻線及びベアリングステータのヨークが適所に置かれる前に、溶接部36A、36B;37A、37Bで磁気耐食材料のハウジング端壁部分44に接続された挿入部38A;38Bを有して、ベアリングアーマチュア及び検出器アーマチュアの薄層磁気材料をフェライト系ステンレス鋼とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスガスと接触するロータを有する回転マシン用の被覆されたアクティブ磁気ベアリングであって、前記ロータに取着された薄層磁気材料のベアリングアーマチュアと、前記ベアリングアーマチュアから短い距離のところに配置されているが前記ベアリングアーマチュアと接触することのない端磁極片(end pole piece)を示す薄層磁気材料でできたヨークに巻き付けられた電磁石巻線でできたベアリングステータと、前記ロータに装着された薄層磁気材料の検出器アーマチュア及び薄層磁気材料のヨークに巻き付けられた電磁石巻線を有する検出器ステータとを有する少なくとも1つの位置検出器と、前記ベアリング電磁石巻線及び前記検出器電磁石巻線に接続された電子制御回路とを具備する、被覆されたアクティブ磁気ベアリングに関する。
【背景技術】
【0002】
回転マシンへの磁気ベアリングの適用は、シーリングなしで、問題のマシンのプロセスガスに直接作用することができるこれらによって得られる主な効果のために、近年、かなり広範囲にわたってきている。従って、限定的ではないが、磁気ベアリングは、ターボエキスパンダ、冷却コンプレッサ、コンプレッサを駆動させるための電気モータなどで見られることができる。
【0003】
普通に使用するアプリケーションでは、全ての磁気回路は、シリコン鉄に基づいている。従って、このような回路の薄層磁気材料を形成している磁気薄層は、明確でありこれらの供給者により保証された磁気特性、特に、その保磁力及びその残留磁束密度によって特徴付けられる制限されたヒステリシスサイクル、及び高透磁率及び高飽和を示す効果を有する。
【0004】
しかし、より特定のアプリケーションに関して、特に、天然ガスの処理に関して、及び、酸、粒子輸送、又は湿った硫化水素(HS)又は湿った二酸化炭素(CO)のような腐食性の環境中のアプリケーションに関して、これらがこのような環境と互換性がないので、このような磁気薄層を使用することは不可能である。これらが周囲環境からシールされないので、同じことが、ベアリングの、及びこのようなアクティブ磁気ベアリング中の検出器のステータコイルに当てはまる。
【0005】
このため、特許文献1では、その出願人は、アクティブ磁気ベアリングを提案している。ベアリングのステータは、析出硬化マルテンサイト系ステンレス鋼のジャケットで保護されており、検出器のステータは、オーステナイト鋼のジャケットで保護されている。ロータの薄層磁気材料もまた、析出硬化マルテンサイト系ステンレス鋼でできている。
【0006】
図1は、上述の特許に記載されるようなコンプレッサのラジアルアクティブ磁気ベアリングの一例を示している。プロセスガスと接触するように設計された回転マシンのロータ2が見られることができ、プロセスガスは、酸性であり、腐食性であり、あるいは、粒子状物質のキャリアであることができる。
【0007】
薄層磁気材料のベアリングアーマチュア3が、ロータ2に適用される。このアーマチュア3は、17−4PH析出硬化マルテンサイト系ステンレス鋼でできている。
【0008】
検出器アーマチュア4は、17−4PH析出硬化マルテンサイト系ステンレス鋼と同様に、ベアリングアーマチュア3に隣接して、ロータ2に取り付けられている。
【0009】
例えば、0.3ミリメートル(mm)〜0.5mmの範囲にある厚さを示すエアギャップ5は、第1に、ベアリングアーマチュア3と係合されたロータ2の周縁部分と検出器アーマチュア4との間に設けられ、第2に、ベアリングジャケットを構成する第1のジャケット6と、検出器ジャケットを構成する第2のジャケット7との間に設けられている。
【0010】
第1のジャケット6は、磁気ベアリング11のステータを構成する要素、即ち、シリコン鉄の薄層磁気材料でできたヨーク13に巻き付けられた電磁石巻線12を含む耐漏性(leaktight)ハウジング10を構成するように、漏れに耐えるようにして前記第1のジャケットと協働する(co-operating)部分8、9に溶接される。第1のジャケット6は、17−4PH析出硬化マルテンサイト系ステンレス鋼でできている。
【0011】
埋込用樹脂14は、ベアリング電磁石巻線12のまわりのその空の空間を完全に満たし、かつその機械的強度を改良するために、耐漏性ハウジングの内部に取り込まれる。
【0012】
電磁石タイプの位置検出器15は、第1のハウジング10とは異なる第2のハウジング16に配置され、漏れに耐えるようにして第2のハウジングの部分17、18に溶接された第2のジャケット7によって閉じられたステータを有する。位置検出器のステータは、シリコン鉄の薄層磁気材料でできたヨーク20に巻き付けられた電磁石巻線19を有する。
【0013】
第2のジャケット7は、米国鉄鋼研究所(AISI)の304、304L、316又は316Lタイプのオーステナイト鋼でできている。
【0014】
ベアリングステータに関してと同じようにして、埋込用樹脂21が、その空の空間を満たし、かつその機械的強度を改良するために、検出器ハウジング16の内部に取り込まれる。
【0015】
好ましくは、ベアリングステータを含む第1の耐漏性ハウジング10と、検出器ステータを含む第2の耐漏性ハウジング16とが、第1及び第2のジャケット6、7から離れたゾーンでの漏れに耐えるようにして互いに接続されている。
【0016】
ベアリングの、及び検出器の電磁石巻線12、19は、図示されるように、ベアリングのハウジングの外部に置かれることができる電子制御回路22に接続されている。
【0017】
このようにして適所に置かれたジャケットは、気体環境からステータの磁気回路を分離し、これにより、前記回路用のシリコン鉄に基づいた通常の磁気薄層を使用することを可能にする。ロータでは、析出硬化マルテンサイト系ステンレス鋼でできた薄層の使用は、他のいかなる保護もなく、気体環境に対するこの耐性を直接得る。
【0018】
しかし、析出硬化マルテンサイト系ステンレス鋼の磁気特性は、理想からは程遠く、磁気ベアリングの性能を低減させる。飽和でのその低磁束密度は、制限された磁束密度によりベアリングの静的及び動的負荷容量に制限を課し、同じ負荷容量のために増加されるベアリングの長さを必要とし、その幅広いヒステリシスサイクルは、シリコン鉄の磁気薄層が装備された通常のロータで引き起こされる鉄損よりも約10倍の大きな鉄損を引き起こし、かなり加熱された磁気ベアリングをもたらし、前記ベアリングがかなり冷却されることを必要とする。
【0019】
さらに、「石油及びガス」の環境中では、ANSI/NACE MR0175/ISO15156基準の「石油及び天然ガス産業−石油及びガス生産の環境を含むHS中での使用のための材料」と適合するために必要とされるアプリケーションに関して、析出硬化マルテンサイト系ステンレス鋼の使用は、代表的には(H1150D又はH1150Mタイプの)500℃〜800℃の範囲で果される高温アニーリングにより加熱処理された溶接を必要とし、このような加熱処理は、通常、250℃よりも高い温度に耐えることができないベアリングステータ12の巻線の材料と互換性がない。
【0020】
このような互換性を達成するために、特許文献2は、非磁気挿入部が固定される両側で、析出硬化マルテンサイト系ステンレス鋼でできた磁気中心部分でできた2つの材料のベアリングジャケットを使用することを提案している。従って、非磁気挿入部をハウジングに装備することによって、これら挿入部がジャケットとハウジングとの両方にいったん溶接されると、及び、全てのこれら溶接部が高温アニーリングをいったん受けると、ハウジングの耐漏性を与えるために、特定の加熱処理を適用することなく、巻線の材料と互換性のある温度で、ハウジングに巻線を置いて、非磁気挿入部を一緒に溶接することが可能である。
【0021】
不運にも、これらの溶接動作は、長く、複雑で、従って、高価である。これらはまた、非常に薄い厚さであり、挿入部に溶接されることが特に困難であるので、特に、2つの材料のベアリングスリーブで、漏れ又は製造の欠陥の主な原因である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】欧州特許第1830081号公報
【特許文献2】米国特許第7847454号公報
【発明の概要】
【0023】
本発明の目的は、上述の欠点を改善すること、特に、石油及びガス環境中で可能な動作を与え、一方、被覆されたベアリングの原理の効果を保つことである。
【0024】
これらの目的は、プロセスガスと接触するロータを有する回転マシン用の被覆されたアクティブ磁気ベアリングであって、前記磁気ベアリングは、前記ロータに取着された薄層磁気材料のベアリングアーマチュアと、前記ベアリングアーマチュアから短い距離のところに配置されている前記ベアリングアーマチュアと接触することのない端磁極片を示す薄層磁気材料でできたヨークに巻き付けられた電磁石巻線でできたベアリングステータと、前記ロータに装着された薄層磁気材料の検出器アーマチュアと、薄層磁気材料でできたヨークに巻き付けられた電磁石巻線を有する検出器ステータとを有する少なくとも1つの位置検出器と、前記ベアリング電磁石巻線及び前記検出電磁石巻線に接続された電子制御回路とを具備し、前記ベアリングステータは、前記ベアリングステータを囲んでいる第1の耐漏性ハウジングを形成するために、第1のハウジング部分と協働する磁気耐食材料でできた第1のジャケットによって保護され、前記検出器ステータは、前記検出器ステータを囲んでいる第2の耐漏性ハウジングを形成するために、第2のハウジング部と協働する非磁気耐食材料でできた第2のジャケットによって保護されている、アクティブ磁気ベアリングにおいて、被覆されたアクティブ磁気ベアリングは、前記第1のジャケットが、フェライト系ステンレス鋼でできており、前記第1のハウジング部分は、フェライト系ステンレス鋼ででき、かつ前記第1のジャケットに第1の溶接部によって接続された挿入部を有し、前記挿入部は、前記電磁石巻線及び前記ベアリングステータのヨークが所定の位置に置かれる前に、第2の溶接部によって、磁気耐食材料でできたハウジング端壁部分に接続され、前記ベアリングアーマチュア及び前記検出器アーマチュアを形成している前記薄層磁気材料は、フェライト系ステンレス鋼であることを特徴とする。
【0025】
従って、フェライト系ステンレス鋼でできたステータジャケットを使用することによって、通常のエアギャップ及びベアリングの寸法を維持することが可能となり、また、溶接動作の間、ベアリングステータの巻線を破壊するリスクなく、簡単かつ安価であるようにして、「石油及びガス」の環境中でアクティブ磁気ベアリングを用いることが可能となる。フェライト系ステンレス鋼の使用は、さらに、このようなアプリケーションに通常使用される析出硬化マルテンサイト系ステンレス鋼を使用することに関する数多くの好ましくない側面を補うことを可能にする(ロータ中の鉄損を減少させ、従って、ロータの加熱を減少させ、ベアリングの負荷容量を最適化し、システムをよりコンパクトにする)。
【0026】
代わりの実施の形態では、前記アーマチュア又は前記ヨークを形成している前記薄層磁気材料は、完全に、又はほぼ完全に連続した(uninterrupted)磁気材料と取り替えられる。
【0027】
好ましくは、前記フェライト系ステンレス鋼は、米国鉄鋼研究所(AISI)の436、441、444又は445タイプである。
【0028】
効果的には、前記第1のジャケットを前記挿入部に接続する前記溶接部は、電子衝撃溶接、レーザ溶接又はタングステン不活性ガス(TIG)溶接によって、高温アニーリングなしで形成されている。
【0029】
フェライト系ステンレス鋼又は析出硬化マルテンサイト系ステンレス鋼で前記ハウジング端壁部分が作られているかどうかに応じて、前記挿入部は、電子衝撃溶接、レーザ溶接又はTIG溶接によって、高温アニーリングなしで前記ハウジング端壁部分に溶接されている。あるいは、これらは、H1150D及びH1150Mタイプの高温アニーリングに晒された溶接部によって前記ハウジング端壁部分に固定されている。
【0030】
本発明は、ラジアルベアリングとアキシャルベアリングとの両方に適用可能か、あるいは、円錐形タイプのベアリングのような、ラジアルベアリング及びアキシャルベアリングを組み合わせたベアリングに適用可能である。
【0031】
本発明はまた、このようなアクティブ磁気ベアリングが装備されたターボエキスパンダ又はコンプレッサを提供する。
【0032】
本発明の他の特徴並びに効果が、添付図面を参照して例によって与えられる本発明の特定の実施の形態の以下の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、従来技術のラジアルアクティブ磁気ベアリングの一例の軸方向の半断面図である。
【図2】図2は、本発明に従うラジアルアクティブ磁気ベアリングの第1の例の軸方向の半断面図である。
【図2A】図2Aは、本発明に従うラジアルアクティブ磁気ベアリングの第2の例の軸方向の半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図2を参照すると、プロセスガスと接触するように設計された回転マシンのロータ30が見られることができる。プロセスガスは、酸性であり、腐食性であり、あるいは、粒子状物質のキャリアであることができる。
【0035】
例えば、回転マシンは、天然ガスを処理するためのターボエキスパンダ、又は冷却コンプレッサであることができる。
【0036】
薄層磁気材料でできたベアリングアーマチュア31が、ロータ30に適用されている。このアーマチュア31は、AISI 436、441、444又は445タイプのフェライト系ステンレス鋼のような磁気耐食材料でできており、代表的には、50マイクロメートル(μm)〜3mmの範囲で、特に、0.2mmの厚さを示す、薄い厚さの薄層で入手可能(利用可能)である。
【0037】
検出器アーマチュア32は、薄層磁気材料と同様に、ベアリングアーマチュア31に隣接して、ロータ30に取り付けられている。アーマチュア31のように、このアーマチュア32は、AISI 436、441、444又は445タイプのフェライト系ステンレス鋼のような磁気耐食材料でできている。
【0038】
例えば、0.3mm〜1mmの範囲にある厚さを示すエアギャップ33が、第1に、ベアリングアーマチュア31と係合されるロータ30の周縁部分と検出器アーマチュア32との間に設けられ、第2に、ベアリングステータジャケットを構成する第1のジャケット34と、検出器ステータジャケットを構成する第2のジャケット35との間に設けられている。
【0039】
ベアリングステータジャケット34は、AISI 436、441、444又は445タイプのフェライト系ステンレス鋼のような磁気耐食材料でできており、効果的には0.1mm〜0.8mmの範囲にある厚さを示す。これは、磁気ベアリング41のステータを構成する構成要素、即ち、薄層磁気材料でできたヨーク43に巻き付けられた電磁石巻線42を含む耐漏性ハウジング40を構成するようにして、(ジャケットの材料と互換例を有する材料でできた、あるいはジャケットの材料と全く同一の)挿入部38A、39に、溶接部36A、36Bによって漏れに耐えるようにして溶接されている。
【0040】
ベアリングステータジャケットの溶接部は、高温アニーリングなしで、通常、電子衝撃溶接によって、レーザ溶接によって、又はTIG溶接によって、250HVのビッカース硬さ限界内で、温度又はプロセスガスの塩化物の濃度にかかわらず、10キロパスカル(kPa)のHSの圧力まで、果される。
【0041】
ヨーク43及びその巻線42を所定の位置(適所)に置く前に、ハウジング部分44に挿入部38A、38Bを溶接することが注意される。これは、耐漏性ハウジング40の端壁を形成するように機能し、通常、析出硬化マルテンサイト系ステンレス鋼でできている。前述の溶接部とは異なり、ANSI/NACE MR0175/ISO15156基準に従って、これら溶接部37A、37Bは、これらが晒される残留応力を緩和するための高温アニーリングを含む、H1150D又はH1150Mタイプの加熱処理を受ける。当然ながら、このハウジング端壁部分が、それ自体AISI 436、441、444又は445タイプのフェライト系ステンレス鋼でできているとき、前記アニーリングは必要でなく、また、溶接は、巻線の材料と互換性を有する温度で果されることができる。
【0042】
ヨーク43及びその巻線42を装着させるために、2つの挿入部の少なくとも一方が、高温アニーリングなしで、溶接によって一緒に溶接された2つの部分38B、39でできており、第2の部分39はチークプレートを形成していることが言及されるべきである。図2Aでは、両方の挿入部が、2つの部分38Aと39A及び38Bと39Bでできており、各挿入部の2つの部分が、高温アニーリングなしで一緒に溶接される。
【0043】
検出器ステータジャケット35は、通常、AISI 304、304L、316又は316Lタイプのオーステナイト鋼でできている。これは、通常、薄層磁気材料でできたヨーク50に巻き付けられた電磁石巻線49を有する位置検出器のステータ48を囲んでいる第2の耐漏性ハウジング47を形成するようにして、漏れに耐えるようにして部分45、46に溶接されている。
【0044】
ヨーク43、50は、これらのそれぞれのステータジャケット34、35と接触する端磁極片を有し、従って、これらは、これらと接触することのなく、アーマチュア31、32から短い距離にある。
【0045】
埋込用樹脂51、52は、ベアリング及び検出器ステータ電磁石巻線42、49のまわりのこれらの空の空間を満たし、かつ、これらの機械的強度を改良するために、第1及び第2の耐漏性ハウジング40、47の内部に取り込まれる。空の空間を満たす埋込用樹脂は、通常、全体の完全な充填を保証するように、真空圧力タイプの方法を使用して取り込まれることができる。
【0046】
ベアリングステータ電磁石巻線42及び検出器ステータ電磁石巻線49は、耐漏性エンクロージャ40、47の外部に配置されることができる電子制御回路53に接続されている。これは、これら自身、プロセスガスと接触するロータ30を囲んでいる耐漏性エンクロージャを構成するケーシングの残りの部分に、漏れに耐えるようにして接続されることができる。
【0047】
従って、本発明によれば、同じ材料でできており、フェライト系ステンレス鋼でできたステータジャケットと、同じ材料ででき、かつステータハウジングに予め溶接された挿入部とを使用することによって、簡単で、それ故、安価であるようにして、「石油及びガス」の環境中でアクティブ磁気ベアリングを用いることが可能になる。さらに、フェライト系ステンレス鋼が、いかなる特定の保護も必要とすることなく、腐食性の環境と互換性があるので、互いに電気絶縁された薄層のスタックの形態の位置検出器ロータの磁気回路で、及び互いに電気絶縁された薄層のスタックの形態のベアリングロータの磁気回路で使用されることができる。
【0048】
フェライト系ステンレス鋼の機械特性及び磁気特性は、従来技術の析出硬化マルテンサイト系ステンレス鋼よりもかなりよい。なぜならば、以下の理由による。
【0049】
これらの磁気ヒステリシスサイクルは、狭く、ベアリングのロータ部分の損失を制限することを可能にし、また、マシンの効率が改良されること及びマシンの冷却がそれほど重要でないことを可能にする。特に、マシンが析出硬化マルテンサイト系ステンレス鋼の薄層でできており、ロータの損失をなくすために加圧された周囲環境を必要とするときと異なり、周囲圧力でマシンをテストすることが可能となる。従って、磁束密度が1.1テスラ(T)まで調節されたとき、AISI 444タイプのフェライト系ステンレス鋼の薄層の保磁力が、1メートル当たり1500amp(A/m)未満で測定され、その一方、17−4PHのような析出硬化マルテンサイト系ステンレス鋼は、5000A/mよりも高い、高い保磁力を有する。
【0050】
飽和での高磁束密度及び高透磁率は、従来の磁気ベアリングのコンパクトさ(compactness)に匹敵するコンパクトさで、通常のシリコン鉄のベアリングの静的及び動的負荷容量に近い静的及び動的負荷容量を維持することを可能にする。従って、上述のタイプのフェライト系ステンレス鋼薄層の飽和は、1.4Tよりも高いところで測定され、その一方、析出硬化マルテンサイト系ステンレス鋼は、約1.1Tのより低い飽和を有する。1.1Tでの磁気励起は、シリコン鉄に関して約1000A/mで測定され、AISI 444フェライト系ステンレス鋼に関して5000A/mで測定され、17−4PHタイプの析出硬化ステンレス鋼に関して20,000A/mで測定される。
【0051】
高い電気抵抗率もまた、鉄損を制限し、かくして、マシンの加熱を制限し、マシンの温度を制御するのを容易にする。析出硬化マルテンサイト系ステンレス鋼の抵抗率よりも10倍高い抵抗率がフェライト系ステンレス鋼の特徴である(AISI 444フェライト系ステンレス鋼に関して1メートル当たり約0.8オーム平方ミリメートル(Ωmm/m)、析出硬化マルテンサイト系ステンレス鋼に関して約0.07Ωmm/m、及びにシリコン鉄に関して約0.04Ωmm/m)。
【0052】
従って、このタイプの材料の使用は、特に、ANSI/NACE MR0175/ISO 15156標準に従って、湿ったHS及び湿ったCOの存在で、腐食性の周囲環境で使用されるのに適したベアリングのシステムを用いることを可能にし、一方、シリコン鉄の磁気薄層を使用した従来技術で、及び従来のシリコン鉄のベアリングの寸法と同一の寸法で得られた性能に非常に近い性能を維持する。さらに、より簡単な結晶構造によって得られる磁気特性の同質性は、ロータで発生され、かつ、その位置の検出の質、従ってそのサーボ制御の質を低下させる変化をかなり減少させることを可能にする。
【0053】
上の説明は、ラジアルタイプの磁気ベアリングを参照してなされる。しかし、当然ながら、同様にして、アキシャルタイプの磁気ベアリング、又はラジアルベアリングの機能とアキシャルベアリングの機能とを組み合わせた円錐形のタイプの磁気ベアリングに適用されることができる。
【0054】
同じようにして、アーマチュア31、32及びヨーク43、50を形成するために薄層磁気材料を使用することが参照されるが、前記アーマチュア又は選択的な前記ヨークもまた、完全に、又はほぼ完全に連続した形態で、構成要素の磁気薄層の間の電気絶縁なしで、AISI 436、441、444又は445タイプのフェライト系ステンレス鋼でできていることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスガスと接触するロータ(30)を有する回転マシン用の被覆されたアクティブ磁気ベアリングであって、
前記ロータに取着された薄層磁気材料のベアリングアーマチュア(31)と、
前記ベアリングアーマチュア(31)から短い距離のところに配置されているが前記ベアリングアーマチュアと接触することのない端磁極片を示す薄層磁気材料でできたヨーク(43)に巻き付けられた電磁石巻線(42)でできたベアリングステータ(41)と、
前記ロータ(30)に装着された薄層磁気材料の検出器アーマチュア(32)と、薄層磁気材料でできたヨークに巻き付けられた電磁石巻線を有する検出器ステータ(48)とを有する少なくとも1つの位置検出器と、
前記ベアリング電磁石巻線(42)及び前記検出電磁石巻線(49)に接続された電子制御回路(53)とを具備し、
前記ベアリングステータは、前記ベアリングステータを囲んでいる第1の耐漏性ハウジング(40)を形成するために、第1のハウジング部分(38A、38B、39、39A、39B、44)と協働する磁気耐食材料でできた第1のジャケット(34)によって保護され、
前記検出器ステータは、前記検出器ステータを囲んでいる第2の耐漏性ハウジング(47)を形成するために、第2のハウジング部分(45、46)と協働する非磁気耐食材料でできた第2のジャケット(35)によって保護されている、アクティブ磁気ベアリングにおいて、
被覆されたアクティブ磁気ベアリングは、
前記第1のジャケットが、フェライト系ステンレス鋼でできており、
前記第1のハウジング部分は、フェライト系ステンレス鋼ででき、かつ前記第1のジャケットに第1の溶接部(36A、36B)によって接続された挿入部(38A、38B、39、39A、39B)を有し、
前記挿入部は、前記電磁石巻線及び前記ベアリングステータのヨークが所定の位置に置かれる前に、第2の溶接部(37A、37B)によって、磁気耐食材料でできたハウジング端壁部分(44)に接続され、
前記ベアリングアーマチュア及び前記検出器アーマチュアを形成している前記薄層磁気材料は、フェライト系ステンレス鋼であることを特徴とするアクティブ磁気ベアリング。
【請求項2】
プロセスガスと接触するロータ(30)を有する回転マシン用の被覆されたアクティブ磁気ベアリングであって、
前記ロータに取着された、完全に、又はほぼ完全に連続した磁気材料のベアリングアーマチュア(31)と、
前記ベアリングアーマチュア(31)から短い距離のところに配置されているが前記ベアリングアーマチュアと接触することのない端磁極片を示す、完全に、又はほぼ完全に連続した磁気材料でできたヨーク(43)に巻き付けられた電磁石巻線(42)でできたベアリングステータ(41)と、
前記ロータ(30)に装着された、完全に、又はほぼ完全に連続した磁気材料の検出器アーマチュア(32)と、完全に、又はほぼ完全に連続した磁気材料でできたヨークに巻き付けられた電磁石巻線を有する検出器ステータ(48)とを有する少なくとも1つの位置検出器と、
前記ベアリング電磁石巻線(42)及び前記検出電磁石巻線(49)に接続された電子制御回路(53)とを具備し、
前記ベアリングステータは、前記ベアリングステータを囲んでいる第1の耐漏性ハウジング(40)を形成するために、第1のハウジング部分(38A、38B、39、39A、39B、44)と協働する磁気耐食材料でできた第1のジャケット(34)によって保護され、
前記検出器ステータは、前記検出器ステータを囲んでいる第2の耐漏性ハウジング(47)を形成するために、第2のハウジング部分(45、46)と協働する非磁気耐食材料でできた第2のジャケット(35)によって保護されている、アクティブ磁気ベアリングにおいて、
被覆されたアクティブ磁気ベアリングは、
前記第1のジャケットが、フェライト系ステンレス鋼でできており、
前記第1のハウジング部分は、フェライト系ステンレス鋼ででき、かつ前記第1のジャケットに第1の溶接部(36A、36B)によって接続された挿入部(38A、38B、39、39A、39B)を有し、
前記挿入部は、前記磁気石巻線及び前記ベアリングステータのヨークが所定の位置に置かれる前に、第2の溶接部(37A、37B)によって、磁気耐食材料でできたハウジング端壁部分(44)に接続され、
前記ベアリングアーマチュア及び前記検出器アーマチュアを形成している、前記完全に、又はほぼ完全に連続した磁気材料は、フェライト系ステンレス鋼であることを特徴とするアクティブ磁気ベアリング。
【請求項3】
前記フェライト系ステンレス鋼は、AISI 436、441、444又は445タイプであることを特徴とする請求項1又は2のアクティブ磁気ベアリング。
【請求項4】
前記第1のジャケットを前記挿入部に接続している前記第1の溶接部は、電子衝撃溶接、レーザ溶接又はTIG溶接によって、高温アニーリングなしで形成されていることを特徴とする請求項3のアクティブ磁気ベアリング。
【請求項5】
前記ハウジング端壁部分は、フェライト系ステンレス鋼でできており、
前記挿入部が、電子衝撃溶接、レーザ溶接又はTIG溶接によって、高温アニーリングなしで前記ハウジング端壁部分に溶接されていることを特徴とする請求項4のアクティブ磁気ベアリング。
【請求項6】
前記ハウジング端壁部分は、析出硬化マルテンサイト系ステンレス鋼でできており、
前記挿入部が、H1150D及びH1150Mタイプの高温アニーリングに晒される前記第2の溶接部によって、前記ハウジング端壁部分に固定されていることを特徴とする請求項4のアクティブ磁気ベアリング。
【請求項7】
前記挿入部の少なくとも1つが、電子衝撃溶接、レーザ溶接又はTIG溶接によって、高温アニーリングなしで、一緒に溶接された2つの部分でできていることを特徴とする請求項4又は6のアクティブ磁気ベアリング。
【請求項8】
ラジアルベアリングを構成することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1のアクティブ磁気ベアリング。
【請求項9】
アキシャルベアリングを構成することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1のアクティブ磁気ベアリング。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1の少なくとも1つのアクティブ磁気ベアリングを含む、天然ガスを処理するためのターボエキスパンダ。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか1の少なくとも1つのアクティブ磁気ベアリングを含む冷却コンプレッサ。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【公開番号】特開2013−7484(P2013−7484A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−91734(P2012−91734)
【出願日】平成24年4月13日(2012.4.13)
【出願人】(503180188)ソシエテ・ドゥ・メカニーク・マグネティーク (13)
【Fターム(参考)】