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肌のキメ改善剤、及び皮膚バリア機能改善剤
説明

肌のキメ改善剤、及び皮膚バリア機能改善剤

【課題】β-1,3-1,6-グルカンの新たな用途を提供する。
【解決手段】β-1,3-1,6-グルカンを含む肌のキメ改善剤、及び皮膚バリア機能改善剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌のキメ改善剤、及び皮膚バリア機能改善剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
β-グルカンには増粘多糖としての性質があり、化粧品の増粘剤として利用されている(特許文献1)。また、硫酸化されたβ-グルカンには、紫外線やストレスによる肌のしわ、しみの発生、皮膚弾性の低下などの皮膚トラブルの改善作用、及び抗酸化作用があることが報告されている(特許文献2)。
【0003】
黒酵母由来のβ-グルカンは、一般に経口投与により免疫賦活作用を奏すること、及び外用により抗アレルギー作用や、アトピー性皮膚炎改善作用、日焼けによる炎症の改善作用、保湿作用を奏することが知られている(特許文献3)。さらに、黒酵母由来のβ-グルカンとポリフェノール及び馬油との併用でアトピー性皮膚炎の改善効果が得られたこと(特許文献4)、黒酵母由来のβ-グルカンと乳酸菌との併用によりアトピー性皮膚炎の改善効果や保湿効果が得られたこと(特許文献5)、黒酵母由来のβ-グルカンとメバロノラクトンとの併用により皮膚の潤い効果が持続するなどの効果が得られたこと(特許文献6)が報告されている。
【0004】
ここで、近年は、成分の複合によるアレルギーを避けるため、化学成分無添加の化粧品や医薬外用剤が好まれている。従って、非修飾かつ天然のβ-グルカン素材の新たな用途の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−59717号
【特許文献2】特開平11−116604号
【特許文献3】特開2003−113907号
【特許文献4】特開2002−335926号
【特許文献5】特開2004−269408号
【特許文献6】特開2011−102281号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、β-1,3-1,6-グルカンの新たな用途の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ね、β-1,3-1,6-グルカンを皮膚に塗布することにより、肌のキメが改善し、皮膚バリア機能が改善することを見出した。
本発明はこれらの知見に基づき完成されたものであり、以下の肌のキメ改善剤、及び皮膚バリア機能改善剤を提供する。
項1. β-1,3-1,6-グルカンを含有する肌のキメ改善剤。
項2. β-1,3-1,6-グルカンが、β-1,3結合に対するβ-1,6結合の分岐度が50〜100%であるβ-1,3-1,6-グルカンである項1に記載の肌のキメ改善剤。
項3. β-1,3-1,6-グルカンの濃度0.5w/v%、pH5.0、30℃の水溶液での粘度が5〜200cPである項1又は2に記載の肌のキメ改善剤。
項4. β-1,3-1,6-グルカンが、オーレオバシジウム属の微生物が産生するβ-1,3-1,6-グルカンである項1〜3の何れかに記載の肌のキメ改善剤。
項5. オーレオバシジウム属の微生物が、オーレオバシジウム・プルランスGM-NH-1A1株(FERM P-19285)、又はGM-NH-1A2株(FERM P-19286)である項4に記載の肌のキメ改善剤。
項6. 肌のキメ改善剤が化粧品組成物、医薬外用組成物、又は医薬部外品外用組成物である項1〜5の何れかに記載の肌のキメ改善剤。
項7. β-1,3-1,6-グルカンを含有する皮膚バリア機能改善剤。
項8. β-1,3-1,6-グルカンが、β-1,3結合に対するβ-1,6結合の分岐度が50〜100%であるβ-1,3-1,6-グルカンである項7に記載の皮膚バリア機能改善剤。
項9. β-1,3-1,6-グルカンの濃度0.5w/v%、pH5.0、30℃の水溶液での粘度が5〜200cPである項7又は8に記載の皮膚バリア機能改善剤。
項10. β-1,3-1,6-グルカンが、オーレオバシジウム属の微生物が産生するβ-1,3-1,6-グルカンである項7〜9の何れかに記載の皮膚バリア機能改善剤。
項11. オーレオバシジウム属の微生物が、オーレオバシジウム・プルランスGM-NH-1A1株(FERM P-19285)、又はGM-NH-1A2株(FERM P-19286)である項10に記載の皮膚バリア機能改善剤。
項12. 皮膚バリア機能改善剤が化粧品組成物、医薬外用組成物、又は医薬部外品外用組成物である項7〜11の何れかに記載の皮膚バリア機能改善剤。
【発明の効果】
【0008】
健常な皮膚では、表皮の最も外側の角質層において、角質細胞が整然と並び、その間に、天然保湿成分や、セラミドのような細胞間脂質が満たされている。正常な角質層は、このようなキメの整った状態であることにより、細菌やウイルスなどの異物が体内に侵入するのを防ぎ、皮膚に加わる外部刺激を和らげ、皮膚の水分や天然保湿成分の喪失を防いでいる。即ち、皮膚のバリア機能を果たしている。
β-1,3-1,6-グルカンは、健常な肌のキメを改善するだけでなく、乾燥や炎症などにより乱れたキメも改善できる。また同様に、皮膚バリア機能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】オーレオバシジウム・プルランス由来のβ-グルカンのH NMRスペクトルである。
【図2】超音波照射により測定された、オーレオバシジウム・プルランス由来のβ-グルカンの培養液の粒度分布を示す図である。
【図3】オーレオバシジウム・プルランス由来のβ-グルカンが腕の皮膚における経皮水分蒸散量を低下させたことを示す図である。
【図4】オーレオバシジウム・プルランス由来のβ-グルカンが顔の皮膚における経皮水分蒸散量を低下させたことを示す図である。
【図5】オーレオバシジウム・プルランス由来のβ-グルカンが肌のキメを整えたことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の肌のキメ改善剤、及び皮膚バリア機能改善剤は、β-1,3-1,6-グルカンを有効成分として含む。
<β-1,3-1,6-グルカン>
【0011】
β-1,3-1,6-グルカンは、酵母、担子菌(キノコ)類、かび類、乳酸菌、その他微生物等の細胞壁に大量に含まれている。また、β-1,3-1,6-グルカンを菌体外へ分泌する菌体も知られている。中でも、オーレオバシジウム属微生物はβ-1,3-1,6-グルカンを主に生産するので、オーレオバシジウム属微生物由来のβ-1,3-1,6-グルカンが好ましい。
【0012】
本発明に用いるβ-1,3-1,6-グルカンにおいて、主鎖のβ-1,3結合数に対する側鎖のβ-1,6結合数の比率である分岐度は、通常約50〜100%、好ましくは約75〜100%、より好ましくは約85〜100%であればよい。
β-1,3-1,6-グルカンが上記分岐度を有することは、β-1,3-1,6-グルカンをエキソ型のβ-1,3-グルカナーゼ(キタラーゼ M、ケイアイ化成製)で加水分解処理した場合に分解生成物としてグルコースとゲンチオビオースが遊離すること、及びNMRの積算比から確認できる(今中忠行 監修、微生物利用の大展開、1012-1015、エヌ・ティー・エス(2002))。
【0013】
β-1,3-1,6-グルカンの溶解度は、pH及び温度に依存する。β-1,3-1,6-グルカンは、pH3.5、温度25℃の条件で2mg/ml水溶液を調製しようとすると、その一部が一次粒子径0.05〜2μmの微粒子を形成し、残部は水に溶解する。本発明において粒子径は、レーザー回折散乱法により測定した値である。
【0014】
本発明に用いるβ-1,3-1,6-グルカンは、水溶液の30℃、pH5.0、濃度0.5(w/v%)における粘度が、通常は2000cP(mPa・s)以下、好ましくは200cP(mPa・s)以下、より好ましくは100cP(mPa・s)以下、さらに好ましくは50cP(mPa・s)以下であればよい。上記粘度の下限値は、通常10cP(mPa・s)程度であり得る。
本発明において、粘度は、BM型回転粘度計を用いて、温度30℃、回転数12rpmで測定した値である。
【0015】
β-1,3-1,6-グルカンは、それを含む系中の金属イオン濃度によっては、溶解時にゲル化、凝集、沈殿することがある。そのため、金属イオン濃度が、β-1,3-1,6-グルカンの固形分1g当たり0.4g以下であることが好ましく、0.2g以下であることがより好ましく、0.1g以下であることがさらにより好ましい。β-1,3-1,6-グルカンが水溶液状態のものである場合は、金属イオン濃度は、水溶液の100ml当たり120mg以下であることが好ましく、50mg以下であることがより好ましく、20mg以下であることがさらにより好ましい。
ここでいう金属イオンには、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、第3〜第5族金属イオン、遷移金属イオンなどが含まれるが、混入する可能性のある金属イオンとしては、代表的には、低粘度β-1,3-1,6-グルカンの製造において使用されるアルカリ由来のカリウムイオン、ナトリウムイオンなどが挙げられる。金属イオン濃度は、限外ろ過や透析により調整できる。
金属イオン濃度が上記範囲であれば、水溶液状態で保存する場合や、水溶液状態で加熱滅菌する際に、β-1,3-1,6-グルカンのゲル化、凝集、沈殿が生じ難い。また、固形で使用する場合は、再溶解させる場合に凝集などが生じ難い。
【0016】
(a)オーレオバシジウム属微生物が生産するβ-1,3-1,6-グルカン
オーレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物由来のβ-1,3-1,6-グルカンは、1N水酸化ナトリウム重水溶液を溶媒とする溶液のH NMRスペクトルが約4.7ppm及び約4.5ppmの2つのシグナルを有する。NMRの測定値は条件の微妙な変化によって変化し、また誤差を伴うことは周知のことであることから、「約4.7ppm」「約4.5ppm」は、通常予測される範囲の測定値の変動幅(例えば±0.2)を含む数値を意味する。
オーレオバシジウム属の微生物が産生するβ-1,3-1,6-グルカンは、菌体外に分泌されるため、キノコ類やパン酵母の細胞壁に含まれるβ-グルカンと比べて、回収が容易であり、また水溶性である点で好ましいものである。オーレオバシジウム属の微生物は、分子量が100万以上の高分子量のβ-グルカンから分子量が数万程度の低分子のβ-グルカンまでを培養条件に応じて産生することができる。
【0017】
中でも、培養液が比較的低粘度である点、β-1,3-1,6-グルカンを高生産する点、及び得られるβ-1,3-1,6-グルカンが、水への溶解性が良く、高分岐で、低分子量である点で、オーレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)が生産するものが好ましい。
中でも、オーレオバシジウム・プルランスGM-NH-1A1株、又はGM-NH-1A2株(独立行政法人産業技術研究所特許生物寄託センターにそれぞれFERM P-19285及びFERM P-19286として寄託済み)が産生するものがより好ましい。GM-NH-1A1株及びGM-NH-1A2株は、オーレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)K-1株の変異株である。オーレオバシジウム属K-1株は、見かけ上の分子量が200万以上と100万程度の2種類のβ-1,3-1,6-グルカンを産生することが知られている。
【0018】
また、オーレオバシジウム属微生物が産生するβ-1,3-1,6-グルカンは、通常、硫黄含有基を有するところ、K-1株の産生するβ-グルカンはスルホ酢酸基を有することが知られている(Arg.Biol.Chem.,47,1167-1172(1983)),科学と工業,64,131-135(1990))。GM-NH-1A1株、及びGM-NH-1A2株が生産するβ-1,3-1,6-グルカンもスルホ酢酸基を有すると考えられる。オーレオバシジウム属微生物の中には、リン酸基のようなリン含有基、リンゴ酸基などを含むβ-1,3-1,6-グルカンを産生する菌種、菌株も存在する。
【0019】
GM-NH-1A1株及びGM-NH-1A2株は、後に実施例において示すようにメインピークが見かけ上50〜250万の高分子量のβ-グルカン(微粒子グルカン)とメインピークが見かけ上2〜30万の低分子量のβ-グルカンの両方を産生する菌株である。この微粒子状グルカンは、一次粒子径が0.05〜2μm程度である。
この高分子量のβ-グルカンは、グルカンの凝集により微粒子状になっているため、見かけ上の分子量が50〜250万であるが、水に溶解した状態では、見かけ上の分子量は2〜30万であると考えられる。従って、本発明のβ-1,3-1,6-グルカンとしては、水に溶解した状態での分子量が2〜30万程度のものが好ましく、分子量が2〜15万程度のものがより好ましい。
本発明において、β-1,3-1,6-グルカンの分子量は、東ソー社製のトーヨーパールHW65(カラムサイズ75cm×φ1cm、排除分子量250万(デキストラン))を用いて、0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を溶離液としてゲルろ過クロマトグラフィーで測定した値である。
【0020】
オーレオバシジウム属微生物が産生するβ-1,3-1,6-グルカンとしては、水溶液にしたときの粘度が、オーレオバシジウム属微生物が産生する天然型β-1,3-1,6-グルカンより低いものが好ましい。この低粘度β-1,3-1,6-グルカンは、水溶液の30℃、pH5.0、濃度0.5(w/v%)における粘度が、通常200cP(mPa・s)以下であり、より好ましくは100cP(mPa・s)以下であり、さらに好ましくは50cP(mPa・s)以下であり、さらにより好ましくは10cP以下であればよい。上記粘度の下限値は、通常5cP(mPa・s)程度であり得る。
【0021】
この低粘度グルカンは、オーレオバシジウム属微生物が産生する天然型β-1,3-1,6-グルカンと同様の一次構造を有し得る。具体的には、1N水酸化ナトリウム重水溶液を溶媒とする溶液のHNMRスペクトルが約4.7ppm及び約4.5ppmの2つのシグナルを有するものである。NMRの測定値は条件の微妙な変化によって変化し、また誤差を伴うことは周知のことであることから、「約4.7ppm」「約4.5ppm」は、通常予測される範囲の測定値の変動幅(例えば±0.2)を含む数値を意味する。
【0022】
(b)オーレオバシジウム属微生物によるβ-1,3-1,6-グルカンの生産方法
β-1,3-1,6-グルカンは、例えば、これを産生する微生物の培養上清に有機溶媒を添加することにより沈殿物として得ることができる。
オーレオバシジウム属の微生物を培養して、β-1,3-1,6-グルカンを産生させる方法は種々報告されている。培養培地に使用できる炭素源としては、シュークロース、グルコース、フラクトースなどの炭水化物、ペプトンや酵母エキスなどの有機栄養源等を挙げることができる。窒素源としては、硫酸アンモニウムや硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなどの無機窒素源等を挙げることができる。場合によってはβ-グルカンの産生量を上昇させるために適宜、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの無機塩、更には鉄、銅、マンガンなどの微量金属塩やビタミン類等を添加するのも有効な方法である。
オーレオバシジウム属微生物を、炭素源としてシュークロースを含むツアペック培地にアスコルビン酸を添加した培地で培養した場合、高濃度のβ-1,3-1,6-グルカンを産生することが報告されている(Arg.Biol.Chem., 47, 1167-1172 (1983));科学と工業,64,131-135(1990);特開平7−51082号公報)。しかし、培地は、微生物が生育し、β-1,3-1,6-グルカンを生産するものであればよく、特に限定されない。必要に応じて酵母エキスやペプトンなどの有機栄養源を添加してもよい。
【0023】
オーレオバシジウム属の微生物を上記培地で好気培養するための条件としては、10〜45℃程度、好ましくは20〜35℃程度、さらに好ましくは25〜30℃程度の温度条件、3〜7程度、好ましくは3.5〜5程度のpH条件等が挙げられる。
効果的に培養pHを制御するためにアルカリ、あるいは酸で培養液のpHを制御することも可能である。更に培養液の消泡のために適宜、消泡剤を添加してもよい。培養時間は通常1〜10日間程度、好ましくは1〜4日間程度であり、これによりβ-グルカンを産生することが可能である。なお、β-グルカンの産生量を測定しながら培養時間を決めてもよい。
上記条件下オーレオバシジウム属の微生物を4〜6日間程度通気攪拌培養すると、培養液にはβ-1,3-1,6-グルカンを主成分とするβ-グルカン多糖が0.1%(w/v)〜数%(w/v)含有されており、その培養液の粘度はBM型回転粘度計(東機産業社製)により30℃では数百cP(mPa・s)から数千cP(mPa・s)という非常に高い粘度を有する。この培養を遠心分離して得られる上清に例えば有機溶媒を添加することにより、β-1,3-1,6-グルカンを沈殿物として得ることができる。
【0024】
<低粘度β-1,3-1,6-グルカンの製造方法>
上記の高粘度のβ-1,3-1,6-グルカンを含む培養液を、常温で攪拌しながら、これにアルカリを添加すると、急激に粘度が低下する。
アルカリは、水溶性で、かつ医薬品や食品添加物として用いることができるものであればよく、特に限定されない。例えば、炭酸カルシウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液などの炭酸アルカリ水溶液;水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液などの水酸化アルカリ水溶液;あるいはアンモニア水溶液などを使用できる。アルカリは、培養液のpHが12以上、好ましくは13以上になるように添加してもよい。例えば、水酸化ナトリウムを使用して培養液のpHを上げる場合は、水酸化ナトリウムの最終濃度が好ましくは0.5%(w/v)以上、より好ましくは1.25%(w/v)以上になるように添加すればよい。水酸化ナトリウムの最終濃度の上限は通常5%(w/v)程度とすればよい。培養液にアルカリを添加し、良く攪拌すると、瞬時に培養液の粘度が低下する。
【0025】
次いで、アルカリ処理後の培養液から菌体などの不溶性物質を分離する。培養液の粘度が低いため、菌体を自然沈降させて上澄みを回収する方法(デカント法)、遠心分離、ろ紙あるいはろ布を利用した全量ろ過、フィルタープレス、更に膜ろ過(MF膜などの限外ろ過)などの方法で、容易に不溶性物質とグルカンとを分離できる。ろ紙あるいはろ布による全量ろ過の場合は、セライトなどろ過助剤を利用するのも一つの手段である。工業的にはフィルタープレスによる菌体除去が好ましい。また、不溶性物質除去前のβ-グルカン液は必要に応じて水で希釈しても良い。濃度が高すぎると不溶性物質除去が困難であり、低すぎても効率的でない。β-グルカン濃度は、例えば0.1mg/ml〜20mg/ml程度、好ましくは0.5mg/ml〜10mg/ml程度、さらに好ましくは1mg/ml〜5mg/ml程度が良い。
【0026】
次いで、β-グルカンを含む溶液に酸を添加して中和する。中和は、不溶物の除去前に行ってもよい。酸は、医薬や食品添加物として使用できるものであればよく、特に限定されない。例えば、塩酸、燐酸、硫酸、クエン酸、リンゴ酸などを使用できる。酸の使用量は、溶液又は培養液の液性が中性(pH5〜8程度)になるような量とすればよい。即ち、中和はpH7に合わせることを必ずしも要さない。
pH12以上のアルカリ処理後、中和して得られるβ-1,3-1,6-グルカンは、30℃、pH5.0、濃度0.5(w/v%)における粘度が通常200cP以下、場合によっては、100cP以下、50cP以下、又は10cP以下である。この粘度の下限値は、通常5cP(mPa・s)程度であり得る。粘度は製造方法ないしは精製方法によって変動する。
アルカリ処理された低粘度のβ-1,3-1,6-グルカンは、中和しても粘度が高くなることがない。さらに、常温(15〜35℃)では、液性をpHが4を下回るような酸性にしても、粘度が高くなることがない。
また、培養上清をアルカリ処理、及び中和した後に、菌体などを除去するのに代えて、培養上清から菌体などを除去した後に、アルカリ処理、及び中和を行うこともできる。
【0027】
得られるβ-グルカン水溶液からβ-グルカンより低分子量の可溶性夾雑物(例えば塩類など)を除去する場合は、例えば限外ろ過を行えばよい。
また、アルカリ処理、除菌した後、中和せずに、アルカリ性条件下で限外ろ過することもでき、これにより透明性、熱安定性、長期保存性に一層優れる精製β-1,3-1,6-グルカンが得られる。アルカリ性条件は、pH10以上、好ましくは12以上であり、pHの上限は通常13.5程度である。
このようにして得られる水溶液に含まれるβ-1,3-1,6-グルカンは、乾燥させて固形製剤にする場合も、また水溶液のまま製剤として使用する場合も、一旦、水溶液から析出させることができる。β-1,3-1,6-グルカンの析出方法は、特に限定されないが、例えば、限外ろ過などにより濃縮してグルカン濃度を1w/w%以上にした水溶液に、エタノールのようなアルコールを、水溶液に対して容積比で等倍以上、好ましくは2倍以上添加することにより、β-1,3-1,6-グルカンを析出させることができる。この場合にpHをクエン酸などの有機酸によりpHを酸性、好ましくはpH4未満、さらに好ましくはpH3−3.7に調製して、エタノールを添加すると高純度のβ-1,3-1,6-グルカンの粉末を得ることができる。
【0028】
β-1,3-1,6-グルカンを低粘度化することにより、限外ろ過などによる濃縮を容易に行えることから、アルコール沈殿に使用するアルコール量を少なくすることができる。
固形物として得る場合は、低粘度β-1,3-1,6-グルカン水溶液を直接乾燥させてもよく、析出させたβ-1,3-1,6-グルカンを乾燥させてもよい。乾燥は、噴霧乾燥法、凍結乾燥法等公知の方法で行うことができる。
【0029】
製剤
本発明の剤は、β-1,3-1,6-グルカンに、医薬外用剤、医薬部外品外用剤、又は化粧品に一般に使用されている基剤及び添加剤を配合して、医薬外用組成物、医薬部外品外用組成物、又は化粧品組成物にすることができる。
【0030】
<医薬外用組成物>
医薬外用組成物の剤型としては、エアゾール剤、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、ゲル剤、リニメント剤、又はパップ剤等が挙げられる。中でも、塗布し易い点で、液剤、乳剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤が好ましい。
基剤としては、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、カラギーナン、マンナン、アガロース、デキストリン、カルボキシメチルデンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、メトキシエチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン等のポリマー類;白色ワセリン、黄色ワセリン、パラフィン、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;ゲル化炭化水素(例えば、商品名プラスチベース、ブリストルマイヤーズスクイブ社製);ステアリン酸等の高級脂肪酸;セタノール、オクチルドデカノール、ステアリルアルコール等の高級アルコール;ポリエチレングリコール(例えば、マクロゴール4000等);プロピレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、濃グリセリン等の多価アルコール;モノオレイン酸エステル、ステアリン酸グリセリド等の脂肪酸エステル類;リン酸緩衝液などが挙げられる。剤型に応じて、基剤を適宜選択できる。
また、添加剤としては、溶解補助剤、無機充填剤、pH調節剤、保湿剤、防腐剤、粘稠剤、酸化防止剤、清涼化剤などが挙げられる。
【0031】
医薬外用組成物中のβ-1,3-1,6-グルカンの含有量は、乾燥重量に換算して、製剤全体に対して、約0.001〜5w/w%が好ましく、約0.01〜1w/w%がより好ましく、約0.1〜0.5w/w%がさらにより好ましい。上記範囲であれば、使用し易い量の組成物中に、肌のキメ改善効果、及び皮膚バリア機能改善が十分に得られるだけのβ-1,3-1,6-グルカンが含まれる。
【0032】
<化粧品組成物>
化粧品組成物の剤型としても、医薬外用組成物と同様の剤型、例えば、エアゾール剤、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、ゲル剤、リニメント剤、又はパップ剤等が挙げられる。中でも、塗布し易い点で、液剤、乳剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤が好ましい。
また、化粧水、化粧用乳液、化粧用クリーム、化粧用ゲル、美容液、パック剤、リップクリーム、リップグロス、洗顔剤、ボディソープ、ハンドクリーム等のスキンケア用品や、ファウンデーション、口紅等のメイクアップ用品等の組成物が挙げられる。
化粧品組成物は、通常化粧品に用いられる成分、例えば、精製水、アルコール類(低級アルコール、多価アルコールなど)、油脂類、ロウ類、炭化水素類のような基剤と、必要に応じて、界面活性剤、増粘剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、安定剤、防腐剤、着色剤、香料のような添加剤とを配合して調製することができる。
化粧品組成物中のβ-1,3-1,6-グルカンの含有量は、乾燥重量に換算して、製剤全体に対して、約0.001〜5w/w%が好ましく、約0.01〜1w/w%がより好ましく、約0.1〜0.5w/w%がさらにより好ましい。上記範囲であれば、使用し易い量の組成物中に、肌のキメ改善効果、及び皮膚バリア機能改善が十分に得られるだけのβ-1,3-1,6-グルカンが含まれる。
【0033】
<医薬部外品外用組成物>
医薬部外品外用組成物は、その種類に応じて、医薬外用組成物、又は化粧品組成物について説明した基剤、添加剤を配合して調製できる。
医薬部外品外用組成物中のβ-1,3-1,6-グルカンの含有量は、乾燥重量に換算して、製剤全体に対して、約0.001〜5w/w%が好ましく、約0.01〜1w/w%がより好ましく、約0.1〜0.5w/w%がさらにより好ましい。上記範囲であれば、使用し易い量の組成物中に、肌のキメ改善効果、及び皮膚バリア機能改善が十分に得られるだけのβ-1,3-1,6-グルカンが含まれる。
【0034】
使用方法
本発明の剤は、使用対象の皮膚の状態、年齢、性別などによって異なるが、例えば以下の方法で使用できる。
即ち、1日に、例えば約1〜5回、好ましくは約1〜3回、1回当たり例えば、約0.1〜5gを皮膚に塗布すればよい。また、β-1,3-1,6-グルカンの1日使用量が、好ましくは約0.1〜50mg、より好ましくは約0.5〜25mgとなるように組成物を塗布すればよい。塗布期間は、約1〜14日間とすればよい。
本発明の剤は、乾燥、炎症、日焼け、皮脂欠乏症(乾皮症)などによる肌のキメの乱れ、及びバリア機能の低下の予防、治療、又は改善のために好適に使用できる。従って、健常人の他、これらの皮膚症状を有する人が好適な使用対象となる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(A)精製β-1,3-1,6-グルカンの製造
(1)低粘度β-1,3-1,6-グルカンの調製
(1-1)β-グルカンの培養産生
【表1】

【0036】
上記表1に示す組成を有する液体培地100mlを500ml容量の肩付きフラスコに入れ、121℃で、15分間、加圧蒸気滅菌を行った後、オーレオバシジウム プルランス(Aureobasidium pullulans)GM-NH-1A1株(FERM P-19285)を同培地組成のスラントより無菌的に1白金耳植菌し、130rpmの速度で通気攪拌しつつ、30℃で24時間培養することにより種培養液を調製した。
次いで、同じ組成の培地200Lを300L容量の培養装置(丸菱バイオエンジ製)に入れ、121℃で、15分間、加圧蒸気滅菌し、上記のようにして得られた種培養液2Lを無菌的に植菌し、200rpm、27℃、40L/minの通気攪拌培養を行った。なお、培地のpHは水酸化ナトリウム及び塩酸を用いてpH4.2〜4.5の範囲内に制御した。96時間後の菌体濁度はOD660nmで23OD、多糖濃度は0.5%(w/v)で、硫黄含量から計算される置換スルホ酢酸含量は0.09%であった。
【0037】
<多糖濃度測定>
多糖濃度は、培養液を数mlサンプリングし、菌体を遠心分離除去した後、その上清に最終濃度が66%(v/v)となるようにエタノールを加えて多糖を沈殿させて回収した後、イオン交換水に溶解し、フェノール硫酸法で定量した。
【0038】
<置換スルホ含量測定>
同様にして菌体を除去した培養上清にエタノールを最終濃度が66%となるように添加し、β-グルカンを沈殿回収した。その後、再度イオン交換水に溶解し、再度遠心分離後、その上清に最終濃度が0.9%になるように食塩を加えた後、再度66%エタノールでβ-グルカンを回収した。このβ-グルカン回収精製操作を更に2回繰り返し、得られたβ-グルカン水溶液をイオン交換水で透析後、凍結乾燥によりβ-グルカン粉末を得た。
このβ-グルカン粉末を燃焼管式燃焼吸収後、イオンクロマト法で組成分析した結果、S含量は239mg/kgであり、この値から計算される置換スルホ酢酸含量は0.09%であった。
【0039】
(1−2)アルカリ処理
上記のようにして得られた培養液の粘度をBM型回転粘度計(東京計器製)を用いて、30℃、12rpmで測定したところ、1500cP(mPa・s)であった。測定に用いるロータは粘度に合わせて適当なものを選択した。
この培養液に水酸化ナトリウムの最終濃度が2.4%(w/v)となるように、25%(w/w)水酸化ナトリウムを添加し攪拌したところ(pH13.6)、瞬時に粘度が低下した。引き続いて50%(w/v)クエン酸水溶液でpH5.0となるように中和してから、β-グルカン濃度0.5(w/v%)における粘度を測定したところ、そのときの上記測定方法による粘度は、20cP(mPa・s)であった。
次いで、この培養液にろ過助剤としてKCフロック(日本製紙社製)を1wt%添加し、薮田式ろ過圧搾機(薮田機械製)を用いて菌体を除去し、最終的に培養ろ液(約230L)を得た。その多糖濃度は0.5%(w/v)で、ほぼ100%の回収率であった。
【0040】
(1−3)β-グルカン水溶液の脱塩
上記のβ-グルカン水溶液(培養ろ液)を0.3%に希釈後、限外ろ過(UF)膜(分子量カット5万、日東電工社製)を用いて脱塩を行い、最終的にナトリウムイオン濃度を20mg/100mlに落とした後、50%(w/v)クエン酸水溶液によりpHを3.5に調整した。
引き続いて、ホット充填用加熱ユニット(日阪製作所製)を用いて95℃で、3分間保持することにより殺菌処理を行い、最終製品のβ-グルカン水溶液を得た。この時のβ-グルカンの濃度をフェノール硫酸法により測定したところ0.22%(w/v)であった。また、培養液からのトータル収率は約73%であった。
【0041】
<硫黄含有量の測定>
また、得られたβ-グルカン水溶液をイオン交換水で透析後、凍結乾燥によりβ-グルカン粉末を得た。本β-グルカンの組成分析結果からS含量は330mg/kgであり、これから計算される置換スルホ酢酸含量は0.12%であった。
【0042】
<結合状態の確認>
また、脱塩を行った上記培養ろ液について、コンゴーレッド法によって、480nmから525nm付近への波長シフトを確認することができたのでβ-1,3結合を含むグルカンを含有していることが証明された(K. Ogawa, Carbohydrate Research, 67, 527-535 (1978)、今中忠行 監修, 微生物利用の大展開, 1012-1015, エヌ・ティー・エス(2002))。そのときの極大値へのシフト差分はΔ0.48/500μg多糖であった。
上記培養ろ液15mlを取り出し、30mlのエタノールを添加し、4℃、1000rpm、10minで遠心して、沈殿する多糖を回収した。66%エタノールで洗浄し、4℃、1000rpm、10分間遠心して、沈殿する多糖に2mlのイオン交換水と、1mlの1N水酸化ナトリウム水溶液を添加撹拌後、60℃、1時間保温して沈殿を溶解させた。次に-80℃にて凍結後、一晩、真空凍結乾燥を行い、乾燥後の粉末を1mlの1N水酸化ナトリウム重水溶液に溶解させ、2次元NMRに供した。
2次元NMR(13C−H COSY NMR)106ppmと相関関係を有するH NMRスペクトルを図1に示す。このスペクトルにおいて4.7ppmと4.5ppm付近との2つのシグナルが得られた。
この結果、本β-グルカンがβ-1,3-1,6-グルカンであることが証明された(今中忠行 監修、微生物利用の大展開、1012-1015、エヌ・ティー・エス(2002))。それぞれのH NMRシグナルの積分比から、β-1,3結合/β-1,6結合の比は1.15であることが判明した。従って、主鎖のβ-1,3結合に対する側鎖のβ-1,6結合の分岐度は、約87%である。
【0043】
<粒度測定>
次に、レ−ザ回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA製LA−920)を用いて培養液の粒度を測定したところ、粒子としては0.3μmと100μm程度の大きさのところにピ−クが見られた。続いて、超音波を照射しながら、粒度測定を行うと、100μmのピ−クはみるみるうちに消失し、0.3μmのピ−クが増え、最終的に0.3μmのみとなった。超音波照射したときの培養液の粒度分布を図2に示す。
0.3μmのピークはβ-1,3-1,6-グルカンの一次粒子によるピークであり、100〜200μmのピークはβ-1,3-1,6-グルカンの一次粒子が凝集した二次粒子によるピークであると考えられる。
また、二次粒子はマグネチックスターラ−による攪拌、軽い振とうでも同じように消失し、容易に砕けて一次粒子になることが確認された。よって、二次粒子は非常に緩い凝集(緩凝集状態)と考えられる。
【0044】
<分子量測定>
また、東ソー社製のトーヨーパールHW65(カラムサイズ75cm×φ1cm、排除分子量250万(デキストラン))を用いて、0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を溶離液としてゲルろ過クロマトグラフィーを行い、溶解β-1,3-1,6-グルカンとβ-1,3-1,6-グルカンの1次粒子とを含む溶液の分子量を測定したところ、溶解β-1,3-1,6-グルカンに由来する2〜30万のピークの低分子画分と、1次粒子に由来する見かけ上50〜250万の高分子画分との二種類が検出された。分子量のマーカーとしてShodex社製のプルランを用いた。
水溶性β-1,3-1,6-グルカンと微粒子とを分離するため、上記の微粒子画分と可溶性画分とを含むβ-1,3-1,6-グルカン溶液をアドバンテック社製のフィルター(0.2μm)でろ過を行ったところ、50〜250万の高分子画分が消失した。このことから、高分子画分はβ-1,3-1,6-グルカンの一次粒子や一次粒子が凝集した二次粒子に相当することが判明した。よって、水溶性β-1,3-1,6-グルカンの分子量は2〜30万と考えられる。
【0045】
(2)粉末化β-グルカンの調製
(1−2)において、アルカリ処理および菌体除去処理により調製された微粒子β-1,3-1,6-グルカンを含むβ-1,3-1,6-グルカン水溶液に、最終濃度が66%(v/v)となるようにエタノールを添加して、多糖グルカンを沈殿させ、遠心分離法により回収した。次いで凍結乾燥法によりエタノールと水分を除去し、乾燥β-1,3-1,6-グルカンを得た。そのときの収率はエタノール沈殿前の全糖濃度と比較して95%以上であった。
次いで、得られた乾燥β-1,3-1,6-グルカンを最終濃度が0.3%(w/v)となるように水に溶解分散後、前述したと同様にして東ソー社製のトーヨーパールHW65(カラムサイズ 75cm×φ1cm、排除分子量250万(デキストラン))により0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を溶離液としてゲルクロマトグラフィーを行い、分子量を測定したところ、得られた多糖の分子量は2〜30万のピークの低分子画分と見かけ上50〜250万の高分子画分の二種類からなることが判明した。ここで、分子量のマーカーとしてShodex社製のプルランを用いた。
一方、水溶性β-1,3-1,6-グルカンと微粒子を分離するため、本法で調製したβ-1,3-1,6-グルカン水溶液(微粒子と可溶化グルカンを含むもの)をアドバンテック社製のフィルター(0.2μm)でろ過を行ったところ、50〜250万の高分子画分が消失した。よって、本法により得られたβ-1,3-1,6-グルカンを乾燥させても、再溶解させれば乾燥前のβ-1,3-1,6-グルカンと同様の物理的挙動を再現することが実証された。
【0046】
(3)高純度β-1,3-1,6-グルカン粉末の製造
(1)においてアルカリ処理を行い低粘度化した培養液(多糖濃度0.5%(5mg/ml))90Lを50%クエン酸水溶液9kgで中和後、濾過助剤(日本製紙ケミカル製粉末セルロ−スKCフロック)を1.8kgプレコートした薮田式濾過圧搾機40D-4を通して、菌体を取り除いた。ろ液を限外濾過スパイラルエレメント(日東電工製NTU3150−S4)で9Lまで濃縮した。本濃縮液を攪拌しながら、pHを3.0-3.5にクエン酸により調整して、エタノール18Lを加え、β-グルカン/エタノール/水スラリーを得た。スラリーの粘度はBM型粘度計で22mPa・s(30℃)であった。室温で3時間静置し、上澄み液(エタノール/水)約17Lを取り除いた。残ったスラリーの粘度は45mPa・s(30℃)であった。本濃縮スラリー10Lを坂本技研型の噴霧乾燥装置R-3を用いて噴霧乾燥し、360gのβ-1,3-1,6-グルカン粉末を得た(回収率80%)。得られたβ-1,3-1,6-グルカンの純度はNMRスペクトルの解析の結果、90%以上であった。
なお、得られたβ-1,3-1,6-グルカン粉末を1N水酸化ナトリウム重水溶液に溶解させ、NMRスペクトルを測定したところ、1H NMRスペクトルが約4.7ppm及び約4.5ppmの2つのシグナルを得た。また、得られたβ-1,3-1,6-グルカン粉末の濃度0.5(w/v%)の水溶液の粘度は200cP以下であった(pH5.0、30℃)。
上記記載の方法によって得られた精製β-グルカンを下記の試験に供した。
【0047】
実施例1 炎症を有する腕の皮膚におけるバリア機能の改善効果
10%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を被験者(1群女性3名(20〜30代))の腕の9cmに15分間パッチ処理し、完全に洗い流した後、後掲の表2に示す組成の被験組成物1(0.3%β-1,3-1,6-グルカン配合ゲル)、及び被験組成物1においてβ-1,3-1,6-グルカンを精製水に変えた以外は同じ組成のコントロール組成物1を、それぞれ0.25g塗布した。上記操作を1日に2回、連続して2日間行った。3日目以降からは、1日1回入浴以後にパッチ部分へ配合ゲル0.5gの塗布を連続して5日間行ない、合計1週間塗布を継続して行った。また、ラウリル硫酸ナトリウム水溶液のパッチ処理だけ行い、その後に何も塗布しない未処置群も設けた。
【0048】
【表2】

【0049】
塗布完了後に、経皮水分蒸散量を測定した。
<経皮水分蒸散量の測定方法>
TEWAMETER TM300(Courage + Khazaka社製)を用いて、3日後および1週間後に各被験者の腕を測定した。なお、測定は恒温恒湿室(温度25℃,湿度40% (実測値/温度25.0±1.0℃,湿度40±3%))内にて30分馴化後に行った。
【0050】
結果を図3に示す。図3中、「0.3%ゲル」は被験組成物1を示し、「Control」はコントロール組成物1を示し、「Non-treatment」は未処置を示す。
図3から明らかなように、β-1,3-1,6-グルカンを配合することにより、経皮水分蒸散量が大きく低下した。一方、β-1,3-1,6-グルカン未配合のコントロール組成物1は、経皮水分蒸散量を全く低下させなかった。
水分蒸散量が多いことは、皮膚のバリア機能が低下していることを示す。なお、皮膚バリア機能と水分保持能とは別の機能であり、従って、水分蒸散量と皮膚の水分保持量とは必ずしも相関しない。
【0051】
実施例2 健常な顔の皮膚におけるバリア機能の改善効果
被験者(1群女性3名(20〜30代))の顔の左右半分ずつに、1日2回(朝晩)、上記被験組成物1、及びコントロール組成物1を、それぞれ、0.5g塗布した。これを連続2週間行い、経皮水分蒸散量を測定した。なお、測定は恒温恒湿室(温度25℃,湿度40% (実測値/温度25.0±1.0℃,湿度40±3%))内にて30分馴化後に行った。結果を図4に示す。図4中、「0.3%ゲル」は被験組成物1を示し、「Control」はコントロール組成物1を示す。
図4から明らかなように、β-1,3-1,6-グルカンを配合することにより、経皮水分蒸散量が大きく低下した。一方、β-1,3-1,6-グルカン未配合のコントロール組成物1は、経皮水分蒸散量を全く低下させなかった。
【0052】
実施例3 皮膚へのキメ改善効果
被験者(女性3名(20〜30代))の顔の左右半分ずつに、1日2回(朝晩)、下記表3に組成を示す被験組成物2、及び被験組成物2においてβ-1,3-1,6-グルカンを精製水に替えた以外は同じ組成のコントロール組成物2を、それぞれ0.5g塗布した。これを連続2日間行い、皮膚表面を(VISCOSCAN VC98 (Courage + Khazaka社製))で撮影した。
【表3】

【0053】
皮膚表面画像を図5に示す。図5中、「アクアβ0.3%配合製剤」は被験組成物2を示し、「アクアβ未配合製剤」はコントロール組成物2を示す。
図5から明らかなように、β-1,3-1,6-グルカンを含む被験組成物2を塗布することにより、コントロールと比べて肌の溝の幅(皮溝)の形成が促進改善され、さらに肌の膨らみ(皮丘;皮溝で囲まれたひし形の膨らんだ部分)が増し、即ちキメが改善したことが分かる。一方、β-1,3-1,6-グルカン未配合のコントロール組成物2を塗布しても、肌のキメの改善は確認されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の肌のキメ改善剤及び皮膚バリア機能改善剤は、医薬又は医薬部外品外用組成物、及び化粧品組成物などとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
β-1,3-1,6-グルカンを含有する肌のキメ改善剤。
【請求項2】
β-1,3-1,6-グルカンが、β-1,3結合に対するβ-1,6結合の分岐度が50〜100%であるβ-1,3-1,6-グルカンである請求項1に記載の肌のキメ改善剤。
【請求項3】
β-1,3-1,6-グルカンの濃度0.5w/v%、pH5.0、30℃の水溶液での粘度が5〜200cPである請求項1又は2に記載の肌のキメ改善剤。
【請求項4】
β-1,3-1,6-グルカンが、オーレオバシジウム属の微生物が産生するβ-1,3-1,6-グルカンである請求項1〜3の何れかに記載の肌のキメ改善剤。
【請求項5】
オーレオバシジウム属の微生物が、オーレオバシジウム・プルランスGM-NH-1A1株(FERM P-19285)、又はGM-NH-1A2株(FERM P-19286)である請求項4に記載の肌のキメ改善剤。
【請求項6】
肌のキメ改善剤が化粧品組成物、医薬外用組成物、又は医薬部外品外用組成物である請求項1〜5の何れかに記載の肌のキメ改善剤。
【請求項7】
β-1,3-1,6-グルカンを含有する皮膚バリア機能改善剤。
【請求項8】
β-1,3-1,6-グルカンが、β-1,3結合に対するβ-1,6結合の分岐度が50〜100%であるβ-1,3-1,6-グルカンである請求項7に記載の皮膚バリア機能改善剤。
【請求項9】
β-1,3-1,6-グルカンの濃度0.5w/v%、pH5.0、30℃の水溶液での粘度が5〜200cPである請求項7又は8に記載の皮膚バリア機能改善剤。
【請求項10】
β-1,3-1,6-グルカンが、オーレオバシジウム属の微生物が産生するβ-1,3-1,6-グルカンである請求項7〜9の何れかに記載の皮膚バリア機能改善剤。
【請求項11】
オーレオバシジウム属の微生物が、オーレオバシジウム・プルランスGM-NH-1A1株(FERM P-19285)、又はGM-NH-1A2株(FERM P-19286)である請求項10に記載の皮膚バリア機能改善剤。
【請求項12】
皮膚バリア機能改善剤が化粧品組成物、医薬外用組成物、又は医薬部外品外用組成物である請求項7〜11の何れかに記載の皮膚バリア機能改善剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−53094(P2013−53094A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191834(P2011−191834)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】