説明

肘関節装具用支柱及びそれを備えた肘関節装具

【課題】肘の外側部の負担を著しく軽減させることができ関節運動を制限することなくストレスから肘関節を保護し、肘の障害が完治するまでの期間を短縮できるとともに、投球動作等の練習を行い関節の拘縮や筋力の低下を起こり難くしながら障害の治療ができ再発防止も可能な肘関節装具用支柱を提供することを目的とする。
【解決手段】第1支柱2と、第2支柱7と、前記第1支柱2の先端と前記第2支柱7の先端が重ねられた重ね部と、前記重ね部に配設され前記第1支柱2と前記第2支柱7を軸支する回動軸12と、を備えた肘関節装具用支柱1であって、前記第1支柱2又は前記第2支柱7のいずれか一方の前記重ね部の摺接面に配設固定又は形成された第1摺接部9を備え、前記第1摺接部9が、前記第1支柱2の前記重ね部の先端側が後端側に比べ肉厚に形成されている、又は、前記第2支柱7の前記重ね部の後端側が先端側に比べ肉厚に形成されている構成を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツの練習や外傷等によって起こる肘の障害による痛みを緩和するとともに治療に用いる肘関節装具用支柱及びそれを備えた肘関節装具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スポーツの練習や外傷等によって肘にストレスがかかると、障害が発生することがある。代表的なものとして、投球動作によって起こる野球肘と呼ばれる外反ストレス障害が知られている。投球動作の場合に、肘にどのようなストレスが生じ、障害が発生するのかを以下説明する。
投球動作は、ボールを持って肩を最大に外転・外旋させ(コッキング期)、腕を使ってボールを投げ始めてボールを手放し(加速期)、ボールが手から離れた後は腕の動きが急に減速され(リリース期)、投球動作が終わる(フォロースルー期)という一連の動作からなる。この動作の過程において、コッキング期では、肩を外転・外旋させることによって、肘の内側の筋、腱が引き伸ばされ肘の内側部に負担がかかる。加速期では肘が外反位をとるため、さらに肘の内側の筋、腱は引き伸ばされ、肘の内側部にかかる負担が大きくなる。一方、外側の骨、軟骨には圧迫力や回旋力が加わり、肘の外側部にも負担がかかる。加速期からリリース期の直前にかけては、肘の後部の筋、腱は完全に伸ばされた状態から一転して収縮される状態となり、肘の後側部にも負担がかかる。
このため、これらの連続動作によって、肘の内側部では牽引力や張力及び収縮力が繰り返し加わり、上腕骨内上顆骨端障害、内側側副靭帯障害、内上顆骨折等を発生させる。肘の外側部では、内側部の変化とは逆に、圧迫力や回旋力が繰り返し加わるため、橈骨頭と上腕骨小頭が衝突し、上腕骨小頭の軟骨に血行障害が起こり、上腕骨小頭骨障害、離断性骨軟骨炎等を発生させる。このような障害が発生すると、肘関節に痛みを感じるようになり、放置して運動を続けると悪化して肘の運動が困難になることもある。
【0003】
そこで、ある程度の自覚症状が出た時点で通院し、検査し治療することになるが、治療方法としては、患部にテーピングを施す方法、一定期間運動を中止して安静にし必要に応じてギプス等で固定したり外用剤等を用いたりする方法、手術的治療を施す方法、肘をサポーターで加圧して運動を続ける方法等が用いられている。
しかしながら、テーピングを施す方法は、医学的解剖学的な知識及び専門的な技術が必要であるため一般には取り扱いが難しく、またテーピングテープは繰り返し使用できないため交換のたびに過大な費用がかかるという問題があった。
また、一定期間運動を中止して安静にする方法は、治療に時間がかかり、またスポーツ選手にとって長期間運動を中止することは関節の拘縮や筋力の低下を伴い死活問題であるとともに、症状の再発や慢性化のおそれがあるという問題があった。
また、手術的治療を施す方法は、手術が成功するとは限らないため完治する保証はなく、また術後の回復とリハビリテーションに多くの時間を要し、関節の拘縮や筋力の低下を伴うためスポーツ選手にとっては死活問題であった。
このため、一般的には、肘をサポーターで加圧して運動を続ける方法が多く用いられている。
【0004】
この治療に用いるための従来の技術としては、(特許文献1)に「肘を包囲する中央部分と、前記中央部分に着脱可能に付着され肘を支持する支持体と、を備えた肘装具」が開示されている。
(特許文献2)には「回動可能に連結された2枚の支持板を備えた肘関節装具に用いられる関節付き支柱であって、2枚の支持板の回動面における伸展角度を調整できるもの」が開示されている。
(特許文献3)には、「上部支柱の下端部と下部支柱の上端部とを継手によって回動可能に結合された関節装具用支柱であって、前記継手は一方向には回動できるが逆方向には回動できない逆止機構と、前記逆止機構の機能を解除できるクラッチ機構と、を備えた関節装具用支柱」が開示されている。
【特許文献1】特開2000−37408号公報
【特許文献2】特開平9−117465号公報
【特許文献3】特開2003−93420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)に開示の技術は、肘を包囲する中央部分に支持体を有しているので、肘を圧迫して痛みを緩和することはできるが、この肘装具を装着して投球動作等を行なった場合には、肘の内側部に繰り返し加わる牽引力や張力、肘の外側部に繰り返し加わる圧迫力や回旋力を緩和することができず、障害の治療効果はほとんど期待できないという課題を有していた。
(2)(特許文献2)に開示の技術は、2枚の支持板の回動面における伸展角度を調整するものなので、この肘装具を装着して投球動作等を行なった場合には、伸展角度の調整具合によっては腕の振りの大きさに影響を与え、投球動作等の練習効果が期待できないという課題を有していた。
(3)2枚の支持板は回動面における伸展角度を調整するものなので、肘の内側部や外側部をなんら拘束するものではなく、肘に繰り返し加わる牽引力や張力、圧迫力や回旋力を緩和することができず、障害の治療効果はほとんど期待できないという課題を有していた。
(4)(特許文献3)に開示の技術は、一方向には回動できるが逆方向には回動できない逆止機構を備えているので、自由な肘の運動ができないため、この装具を用いて投球動作等の運動を行なうことができないという課題を有していた。
(5)これらの装具を装着して運動を制限し保存的療法を用いた場合でも、肘の内側部の障害は比較的短期間で治ることが多いが、離断性骨軟骨炎等の肘の外側部に障害を認めるものでは、治療期間が長いものでは1年以上を要することもあり、慢性化や再発することも多く、中には手術的治療が必要になることもあるという課題を有していた。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、肘の外側の骨、軟骨に加わる圧迫力や回旋力を緩和し肘の外側部の負担を著しく軽減させることができ、関節運動を制限することなくストレスから肘関節を保護し、肘の障害が完治するまでの期間を短縮できるとともに、装着したまま投球動作等の運動が可能なので、投球動作等の練習を行い関節の拘縮や筋力の低下を起こり難くしながら障害の治療ができ、治療が困難な離断性骨軟骨炎等の肘の外側部の障害の治療期間の短縮化と再発防止が可能な肘関節装具用支柱を提供することを目的とする。
また、本発明は、着脱が容易で使用性に優れるとともに、肘関節装具用支柱を腕の外側に沿わせて確実に装着することができ治療効果を高めることができため、関節運動を制限することなくストレスから肘関節を保護し、肘の障害が完治するまでの期間を短縮できるとともに、装着したまま投球動作等の運動が可能なので、治療期間の短縮化と再発防止が可能な肘関節装具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題を解決するために本発明の肘関節装具用支柱及びそれを備えた肘関節装具は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の肘関節装具用支柱は、第1支柱と、第2支柱と、前記第1支柱の先端と前記第2支柱の先端が重ねられた重ね部と、前記重ね部に配設され前記第1支柱と前記第2支柱を軸支する回動軸と、を備えた肘関節装具用支柱であって、前記第1支柱又は前記第2支柱のいずれか一方の前記重ね部の摺接面に配設固定又は形成された第1摺接部を備え、前記第1摺接部が、前記第1支柱の前記重ね部の先端側が後端側に比べ肉厚に形成されている、又は、前記第2支柱の前記重ね部の後端側が先端側に比べ肉厚に形成されている構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)第1支柱の重ね部の先端側の第1摺接部が重ね部の後端側に比べ肉厚に形成されているか、又は、第2支柱の重ね部の後端側の第1摺接部が重ね部の先端側に比べ肉厚に形成されているので、第2支柱と第1支柱を回動させて略180°に伸展させると、先端側と後端側の第1摺接部の肉厚差の分だけ第1支柱に対して第2支柱が傾斜した状態になる。一方、第1支柱と第2支柱を回動させて略90°に屈曲させると、第1摺接部の肉厚差の効果がなくなるため、第1支柱に対して第2支柱をほとんど傾斜していない状態にすることができる。このため、腕の外側に肘関節装具用支柱をテーピングやベルト等によって固定すると、肘が略90°屈曲した状態では肘に対する矯正力がほとんど働かないが、肘が伸展した状態では、肘関節装具用支柱の第1支柱と第2支柱の開角度が180°より小さくなることによって、上腕と前腕の外側が押されて肘に矯正力が働くことになる。
(2)このため、投球動作を行なう場合、コッキング期や加速期において肘を略90°に屈曲させる動作は、肘関節装具用支柱によって必要以上に拘束されないが、加速期において肘を伸展させた際には肘関節装具用支柱によって腕の外側から圧迫されるので、肘の外側の骨、軟骨に加わる圧迫力や回旋力を緩和し肘の外側部の負担を著しく軽減させることができる。
【0008】
ここで、第1支柱、第2支柱としては、金属製、合成樹脂製、木製、竹製、硬質ゴム製等で形成された硬質や弾性を有する板状体、棒状体、管状体等を用いることができる。
第1支柱や第2支柱に板状体を用いた場合、回動軸を中心にして第1支柱、第2支柱を伸展・屈曲させると、伸展・屈曲のいずれかで第1支柱や第2支柱に捻じれが生じることがあるため、捻じれを緩和するために、第1支柱や第2支柱の先端側を回転可能や弾性変形可能なように形成することができる。
【0009】
重ね部は、第1支柱、第2支柱の先端同士が重ねられた部分であり、第1支柱、第2支柱として棒状体や管状体を用いる場合には、プレス加工等によって先端を平らにしたり、第1支柱等の先端に溶接,溶着,嵌着,螺子止め,リベット止め等によって平板を接続したりして、重ね部を形成するのが好ましい。
【0010】
回動軸としては、リベット、ピン、螺子、ボルト等を用いることができる。第1支柱、第2支柱が対向する重ね部に軸受を配設し、回動軸を軸受に貫設させてもよい。
【0011】
第1摺接部としては、重ね部の摺接面に第1支柱又は第2支柱のいずれか一方に配設され、溶接,接着,螺子止め,リベット止め,嵌着等の手段で固定された傾斜板,突起,突条等が用いられる。
第1摺接部は、重ね部の全面に配設固定させることができるが、全面に配設したり形成するのではなく、第1支柱の重ね部の先端側のみ又は第2支柱の重ね部の後端側のみに配設固定することもできる。この場合も、第1支柱と第2支柱を回動させて略180°に伸展させると、先端側と後端側の第1摺接部の肉厚差の分だけ第1支柱に対して第2支柱を傾斜した状態にできるからである。第1摺接部を重ね部の全面に配設固定した場合は、第1摺接部には回動軸が挿通される貫通孔が形成される。
また、第1摺接部は、重ね部の側端間において肉厚差を設けることができる。これにより、第1支柱と第2支柱を回動させて略90°に屈曲させたとき、側端間の第1摺接部の肉厚差によって第1支柱に対して第2支柱を傾斜させることができ、患者の症状に応じて、肘の外側に対する矯正力の大きさを調整することができる。
【0012】
第1摺接部は、金属製、合成樹脂製、木製、竹製、硬質ゴム製等で形成することができる。硬質ゴム製等の弾性体で形成することにより、第1支柱や第2支柱の捻じれや傾斜角度を緩衝することができる。
なお、第1摺接部は、摺接面に配設固定する代わりに、第1支柱又は第2支柱の一部として一体形成することもできる。
【0013】
第1摺接部の先端側と後端側の肉厚差は、第1支柱と第2支柱を回動させて伸展させたときに、第1支柱と第2支柱とのなす角θが150〜175°になるような肉厚差に形成されるのが好ましい。肉厚差が小さくなり第1支柱と第2支柱とのなす角θが175°より大きくなるにつれ、肘関節装具用支柱を腕の外側に装着し肘を伸展したときに肘の外側が受ける圧迫力が小さくなり、肘の外側部の負担を軽減させる効果が乏しくなる傾向がみられ、肉厚差が大きくなり、なす角θが150°より小さくなるにつれ、肘関節装具用支柱を腕の外側に装着し肘を伸展したときに肘の外側が受ける圧迫力が大きくなり、肘関節装具用支柱によって肘の外側部に負荷が加わり痛みを感じ易くなる傾向がみられるため、いずれも好ましくない。
この第1摺接部の肉厚差によって、回動軸は、第1支柱又は第2支柱の長さ方向の長軸に垂設された垂直軸に対して、第1支柱又は第2支柱の後端側に5〜30°傾倒して配設される。
なお、第1摺接部や第1支柱、第2支柱を硬質ゴム等の弾性体で形成した場合は、5〜30°の傾斜角度を大きくしたり、なす角θを小さくしたりすることができる。第1支柱、第2支柱等が変形して肘や腕にかかる負荷を小さくできるからである。
【0014】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の肘関節装具用支柱であって、前記第1摺接部が配設固定又は形成された前記第1支柱又は前記第2支柱の他方の前記第2支柱又は前記第1支柱の前記重ね部の摺接面に配設固定又は形成された第2摺接部を備え、前記第2摺接部が、前記重ね部の一方の側端側が他方の側端側に比べ肉厚に形成されている構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)第1摺接部が配設固定等された支柱とは別の支柱の重ね部の摺接面に配設固定等された第2摺接部を備え、重ね部の一方の側端側の第2摺接部が、他方の側端側に比べ肉厚に形成されているので、第1摺接部の肉厚の部分と第2摺接部の肉の薄い部分とが重なるように支柱を回動させて略90°に屈曲させると、第2摺接部の肉厚差によって第1摺接部の肉厚差が相殺され、第1支柱に対して第2支柱がほとんど傾斜していない状態になるため、腕の外側に肘関節装具用支柱を装着した際、肘が略90°屈曲した状態では、腕に対する圧迫力をほぼゼロにすることができ、屈曲時の肘に対する負荷を小さくできるので、肘の血行障害等を起こし難くすることができる。
【0015】
ここで、第2摺接部としては、第1摺接部が配設固定等された重ね部の他方の摺接面に配設され、溶接,接着,螺子止め,リベット止め,嵌着等の手段で固定された傾斜板,突起,突条等が用いられる。第2摺接部の材質としては、第1摺接部と同様のものが用いられるので説明を省略する。
第2摺接部は、重ね部の全面に配設固定させることができるが、第1支柱又は第2支柱の重ね部の一方の後端側のみに配設固定することもできる。この場合も、第1支柱と第2支柱を回動させて略90°に屈曲させると、第1摺接部の肉厚差を相殺して第1支柱に対する第2支柱の傾斜角度を小さくできるからである。第2摺接部を重ね部の全面に配設固定した場合は、第2摺接部には回動軸が挿通される貫通孔が形成される。
なお、第2摺接部は、摺接面に配設固定する代わりに、第1支柱又は第2支柱の一部として一体形成することもできる。
【0016】
本発明の請求項3に記載の発明は、第1支柱と、第2支柱と、前記第1支柱の先端と前記第2支柱の先端が重ねられた重ね部と、前記重ね部に配設され前記第1支柱と前記第2支柱を軸支する回動軸と、を備えた肘関節装具用支柱であって、前記第1支柱及び/又は前記第2支柱が、前記回動軸より後端側で回動面から所定の角度で折り曲げられた折曲部を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)第1支柱及び/又は第2支柱が、回動軸より後端側で回動面から所定の角度で折り曲げられた折曲部を備えているので、第2支柱と第1支柱を回動させて略180°に伸展させると、折曲部の角度の分だけ第1支柱に対して第2支柱が傾斜した状態になる。このため、腕の外側に肘関節装具用支柱をテーピングやバンド等によって固定すると、肘が伸展した状態では、肘関節装具用支柱の第1支柱と第2支柱が肘の外側に向かって傾斜することによって、上腕と前腕の外側が押されることになる。
(2)このため、投球動作を行なう場合、加速期において肘を伸展させた際に肘関節装具用支柱によって腕の外側から圧迫されるので、肘の外側の骨、軟骨に加わる圧迫力や回旋力を緩和し肘の外側部の負担を著しく軽減させることができる。この結果、関節運動を制限することなくストレスから肘関節を保護し、完治するまでの期間を短縮できるとともに、装着したまま投球動作等の運動が可能なので、投球動作等の練習を行いながら障害の治療ができ、関節の拘縮や筋力の低下を起こり難くすることができる。
(3)患者の症状に応じ、折曲部の角度を調整して腕に対する圧迫力を調整できるため自在性に優れる。
【0017】
ここで、第1支柱、第2支柱、重ね部、回動軸としては、請求項1で説明したものと同様なので、説明を省略する。
【0018】
折曲部としては、第1支柱や第2支柱を型曲げ加工、折曲げ加工等のプレス加工等によって形成したり、第1支柱や第2支柱が合成樹脂製の場合には、射出成型等によって一体に形成したりすることができる。捻じりを加えることもできる。
折曲部は、重ね部のすぐ隣の第1支柱や第2支柱の後端側に形成するのが好ましい。第1支柱と第2支柱の回動の妨げにならないようにするとともに、第1支柱や第2支柱を上腕や前腕に長く沿わせられるようにできるからである。
【0019】
回動面に対する折曲部の角度としては、第1支柱と第2支柱を回動させて伸展させたときに、第1支柱と第2支柱とのなす角θが150〜175°になるように形成されるのが好ましい。なす角θが175°より大きくなるにつれ、肘関節装具用支柱を腕の外側に装着し肘を伸展したときに腕が受ける圧迫力が小さくなり、肘の外側部の負担を軽減させる効果が乏しくなる傾向がみられ、150°より小さくなるにつれ、肘関節装具用支柱を腕の外側に装着し肘を伸展したときに腕が受ける圧迫力が大きくなり、肘関節装具用支柱によって肘の外側部に負荷が加わり痛みを感じ易くなる傾向がみられるため、いずれも好ましくない。
この折曲部の回動面に対する角度によって、回動軸は、第1支柱又は第2支柱の長さ方向の長軸に垂設された垂直軸に対して、第1支柱又は第2支柱の後端側に5〜30°傾倒して配設される。
【0020】
本発明の請求項4に記載の肘関節装具は、請求項1乃至3の内いずれか1に記載の肘関節装具用支柱と、前腕を包囲する前腕包囲部と、上腕を包囲する上腕包囲部と、前記前腕包囲部と前記上腕包囲部との間で肘を包囲する肘包囲部と、前記上腕包囲部の内側又は外側に配設され前記肘関節装具用支柱の第1支柱又は第2支柱を支持する上腕側支柱支持部と、前記前腕包囲部の内側又は外側に配設され前記肘関節装具用支柱の第2支柱又は第1支柱を支持する前腕側支柱支持部と、前記肘包囲部の内側又は外側に配設され前記第2支柱の先端側及び/又は前記第1支柱の先端側を支持する中央支持部と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)前腕包囲部、上腕包囲部、肘包囲部を、前腕、上腕、肘に装着するだけなので、着脱が容易で使用性に優れるとともに、肘関節装具用支柱を腕の外側に沿わせて確実に装着することができ治療効果を高めることができる。この結果、関節運動を制限することなくストレスから肘関節を保護し、完治するまでの期間を短縮できるとともに、装着したまま投球動作等の運動が可能なので、投球動作等の練習を行いながら障害の治療ができ、関節の拘縮や筋力の低下を起こり難くすることができる。
【0021】
ここで、前腕包囲部、上腕包囲部、肘包囲部としては、ナイロン製,ポリプロピレン製等の伸縮性を有する布製等で筒型に形成されたものを用いることができる。また、帯状に形成されたものを前腕等に巻回し、面ファスナーやベルト等で係着したり紐等で繋着したりして前腕等を包囲するものも用いることができる。
前腕包囲部、上腕包囲部、肘包囲部に伸縮性をもたせることにより、肘の伸展・屈曲の際に生じた肘関節装具用支柱の捻じれや変形等を吸収させることができ、腕に対して過剰な負荷がかからないようにすることができる。また、伸縮量を調整することにより、腕に対する圧迫力を調整することもできる。
【0022】
上腕側支柱支持部、前腕側支柱支持部、中央支持部としては、第1支柱、第2支柱、重ね部等を挿通して支持できるように布製等で袋状、トンネル状等に形成されたものを用いることができる。また、前腕包囲部等に沿わせて支持するベルト等を用いることもできる。これらにより、肘関節装具用支柱を着脱可能にでき、肘関節装具が汗等で汚れたときに容易に洗濯することができる。
また、前腕包囲部、上腕包囲部、肘包囲部に、第1支柱、第2支柱の両端部等をリベット、螺子等で固定したり糸で縫合したりすることもできる。また、第1支柱や第2支柱の後端等に別に製造した板状体等を固定したり、板状体等で支柱を挟持し、該板状体等を前腕包囲部、上腕包囲部、肘包囲部に取付けて支柱を保持させることもできる。
なお、第1支柱、第2支柱と、上腕側支柱支持部、前腕側支柱支持部、中央支持部との間にわずかに隙間をもたせることにより、肘の伸展・屈曲の際に生じた肘関節装具用支柱の捻じれや変形等を吸収させることができ、腕に対して過剰な負荷がかからないようにすることができる。
【0023】
前腕包囲部、上腕包囲部、肘包囲部には、患者の症状にもよるが、肘の制動を行なうためにX型、Y型、H型等の形状の伸縮性又は非伸縮性のベルトを配置することもできる。また、使用性を高めるため、肘包囲部の肘頭部や屈曲部に開口部を形成することもできる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明の肘関節装具用支柱及びそれを備えた肘関節装具によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)腕の外側に肘関節装具用支柱を装着して投球動作を行なう場合、コッキング期や加速期において肘を略90°に屈曲させる動作は、肘関節装具用支柱によって必要以上に拘束されないが、加速期において肘を伸展させた際には肘関節装具用支柱によって腕の外側から圧迫されるので、肘の外側の骨、軟骨に加わる圧迫力や回旋力を緩和し肘の外側部の負担を著しく軽減させることができる。この結果、関節運動を制限することなくストレスから肘関節を保護し、障害が完治するまでの期間を短縮できるとともに、装着したまま投球動作等の運動が可能なので、投球動作等の練習を行い関節の拘縮や筋力の低下を起こり難くしながら障害の治療ができ、治療が困難な離断性骨軟骨炎等の肘の外側部の障害の治療期間の短縮化と再発防止が可能な肘関節装具用支柱を提供することができる。
【0025】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)腕の外側に肘関節装具用支柱を装着した際、肘が略90°屈曲した状態では、腕に対する圧迫力をほぼゼロにすることができ、屈曲時の肘に対する負荷を小さくできるので、肘の血行障害等を起こし難い肘関節装具用支柱を提供することができる。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、
(1)患者の症状に応じ、折曲部の角度を調整して腕に対する圧迫力を調整できるため自在性に優れた肘関節装具用支柱を提供することができる。
【0027】
請求項4に記載の発明によれば、
(1)前腕、上腕、肘に装着するだけなので、着脱が容易で使用性に優れるとともに、肘関節装具用支柱を腕の外側に沿わせて確実に装着することができ治療効果を高めることができため、関節運動を制限することなくストレスから肘関節を保護し、障害が完治するまでの期間を短縮できるとともに、装着したまま投球動作等の運動が可能なので、投球動作等の練習を行い関節の拘縮や筋力の低下を起こり難くしながら障害の治療ができ、治療が困難な離断性骨軟骨炎等の肘の外側部の障害の治療期間の短縮化と再発防止が可能な肘関節装具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1(a)は本発明の実施の形態1における肘関節装具用支柱の第1支柱の左側面図であり、図1(b)は第1支柱の平面図であり、図1(c)は図1(b)のA−A線における断面図であり、図1(d)は第1支柱の正面図であり、図2(a)は肘関節装具用支柱の第2支柱の左側面図であり、図2(b)は第2支柱の平面図であり、図2(c)は第2支柱の正面図であり、図2(d)は図2(b)のB−B線における断面図であり、図3(a)は伸展させた肘関節装具用支柱の平面図であり、図3(b)は伸展させた肘関節装具用支柱の正面図であり、図3(c)は伸展させた肘関節装具用支柱の重ね部を拡大した正面図であり、図3(d)は伸展させた肘関節装具用支柱の重ね部を拡大した左側面図であり、図4(a)は屈曲させた肘関節装具用支柱の平面図であり、図4(b)は屈曲させた肘関節装具用支柱の正面図であり、図4(c)は屈曲させた肘関節装具用支柱の重ね部をD矢視方向から見た図である。
図中、1は実施の形態1における肘関節装具用支柱、2は金属製,合成樹脂製,木製等で細長い板状に形成された第1支柱、3は後述する第2支柱7の先端が重ねられる第1支柱2の重ね部、4は第1支柱2の重ね部3の後述する第2支柱7と摺接する摺接面の略全面に一体に形成された第2摺接部、5は第2摺接部4に貫設され後述する回動軸11が挿通される孔部、6は第2摺接部4が形成された第1支柱2の反対面に孔部5と連通して形成された凹部である。第2摺接部4は、平面視して略円形の板状に形成され、重ね部3における第1支柱2の一方の側端側4aが、重ね部3における第1支柱2の他方の側端側4bに比べて肉厚となった傾斜面4cが形成されている。本実施の形態においては、回動軸12が挿通される孔部5の中心軸5aは、第1支柱2の幅方向の短軸2aに垂設された垂直軸2bに対して角度αだけ側端側4bに傾倒されており、α=5〜30°に形成されている。また、第2摺接部の傾斜面4cの傾斜角度も5〜30°(=α)に形成されている。
図2において、7は金属製,合成樹脂製,木製等で細長い板状に形成された第2支柱、8は第1支柱2の先端と第2支柱7の先端が重ねられる第2支柱7の重ね部、9は重ね部8の摺接面の略全面に一体に形成された第1摺接部、10は第1摺接部9に貫設され後述する回動軸11が挿通される孔部、11は第1摺接部9が形成された第2支柱7の反対面に孔部10と連通して形成された凹部である。第1摺接部9は、平面視して略円形の板状に形成され、第2支柱7の孔部10より後端側9aが、第2支柱7の孔部10より先端側9bに比べて肉厚となった傾斜面9cが形成されている。本実施の形態においては、回動軸12が挿通される孔部10の中心軸10aは、第2支柱7の長さ方向の長軸7aに垂設された垂直軸7bに対して角度βだけ先端側9bに傾倒されており、β=5〜30°に形成されている。また、第1摺接部9の傾斜面9cの傾斜角度も5〜30°(=β)に形成されている。
図3において、12は第1支柱2と第2支柱7の各々の重ね部3,8に貫設された孔部5,10に挿通され第1支柱2と第2支柱7を軸支するリベット,ボルト等の回動軸、13は超高密度ポリエチレン等の合成樹脂製や金属製等で形成され第1摺接部9と第2摺接部4の間に挟持されたワッシャーである。
【0029】
以上のように構成された本発明の実施の形態1における肘関節装具用支柱について、以下その動作を説明する。
第1支柱2と第2支柱7をワッシャ−13を挟んで第1摺接部9,第2摺接部4を対向させ、回動軸12で連結することによって、肘関節装具用支柱1を組み立てることができる。これにより、図3(b),図3(c)に示すように、回動軸12は、第2支柱7の長さ方向の長軸7aに垂設された垂直軸7bに対して、第2支柱7の後端側に角度βだけ傾倒した状態になる。
図3に示すように、肘関節装具用支柱1の第1支柱2と第2支柱7を伸展させると、第2支柱7に形成された第1摺接部9に、先端側9bから後端側9aに向かって上り勾配の傾斜面9cが形成されているので、先端側9bと後端側9aの第1摺接部9の肉厚差の分、即ち傾斜面9cの傾斜角度(β)だけ、第1支柱2に対して第2支柱7が傾斜した状態になり、第1支柱2と第2支柱7とのなす角θが150〜175°になる。なお、伸展させた際には図3(d)に示すように、第1支柱2からみて第2支柱7は、第2摺接部4の側端側4a,4b間の肉厚差によって、わずかに捻じれたような状態になる。この捻じれを緩和するため、第1支柱2や第2支柱7の先端側を回転可能や弾性変形可能なように形成する場合もある。
次に、図4に示すように、第1支柱2と第2支柱7を回動させて略90°に屈曲させ、第2摺接部4の一方の肉の薄い側端側4bが、第1摺接部9の肉の厚い後端側9aと重なるようにすると、図4(c)のように、第2摺接部4の側端側4a,4b間の肉厚差によって第1摺接部9の先端側9bと後端側9aの肉厚差が相殺され、第1支柱2に対して第2支柱7がほとんど傾斜していない状態になる。
【0030】
以上のように、本発明の実施の形態1における肘関節装具用支柱は構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)第2支柱7の第1摺接部9の後端側9aが先端側9bに比べ肉厚に形成されているので、第2支柱7と第1支柱2を回動させて略180°に伸展させると、先端側9bと後端側9aの第1摺接部9の肉厚差の分、即ち回動軸12が傾倒した角度βだけ第1支柱2に対して第2支柱7が傾斜した状態になる。一方、第1摺接部9の肉厚の部分と第2摺接部4の肉の薄い部分とが重なるように第1支柱2と第2支柱7を回動させて略90°に屈曲させると、第2摺接部4の肉厚差、即ち角度βとαの差によって第1摺接部9の肉厚差が相殺され、第1支柱2に対して第2支柱7がほとんど傾斜していない状態になる。
(2)このため、腕の外側に肘関節装具用支柱1をテーピングやベルト等によって固定すると、肘が略90°屈曲した状態では腕に対する力がほとんど働かないが、肘が伸展した状態では、肘関節装具用支柱1の第1支柱2と第2支柱7が腕に向かって傾斜し、第1支柱2と第2支柱7のなす角θが150〜175°になることによって、上腕と前腕の外側を圧迫し、投球動作等によって肘の外側に加わる力を抑制することができる。
(3)第1支柱2と第2支柱7の各々に凹部6,11が形成されているので、リベット等の回動軸12の端部を凹部6,11内に収納して第1支柱2や第2支柱7から突出するのを防止することができ、患者の皮膚やサポーター等を傷付けるのを防止できる。
(4)第1摺接部9と第2摺接部4の間に超高密度ポリエチレン等の硬質の合成樹脂等で形成されたワッシャー13が挟持されているので、第1摺接部9と第2摺接部4の摺動がスムーズに行なわれ、伸展と屈曲を容易に行なうことができ耐久性にも優れる。
【0031】
なお、本実施の形態においては、第1摺接部9と第2摺接部4が、各々第1支柱2と第2支柱7に一体形成されている場合について説明したが、第1摺接部9と第2摺接部4を各々別個に形成し、第1支柱2と第2支柱7の重ね部3,8に配設して、溶接,接着,螺子止め,リベット止め,嵌着等の手段で固定する場合もある。この場合も同様の作用が得られる。
また、第1摺接部9を傾斜面9cが形成された傾斜板で形成し、重ね部8の略全面に一体に形成した場合について説明したが、第1摺接部9を突起や突条等で形成し、重ね部8の後端側9aのみに一体形成する場合もある。この場合も、第1支柱2と第2支柱7を回動させて略180°に伸展させると、後端側9aに固定された突起や突条(第1摺接部)の肉厚の分だけ第1支柱2に対して第2支柱7を傾斜した状態にできるという作用が得られる。第2摺接部4についても同様に、突起や突条等で形成していずれか一方の側端側に配設固定する場合もある。
また、第1摺接部9と第2摺接部4との間にワッシャー13が挟持された場合について説明したが、ワッシャー13はなくてもよい。
【0032】
(実施の形態2)
次に、実施の形態1で説明した肘関節装具用支柱1を備えた肘関節装具について説明する。
図5は肘関節装具用支柱1を備えた実施の形態2における肘関節装具を右腕に装着した状態を示す斜視図であり、図6(a)は腕を伸展させた状態を示す模式図であり、図6(b)(c)は腕を略90°屈曲させた状態を示す模式図である。なお、実施の形態1で説明したものと同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、20は実施の形態2における肘関節装具、21はナイロン製,ポリプロピレン製等の伸縮性を有する布製で筒型に形成された筒体、22は筒体21の上腕を包囲する上腕包囲部、23は筒体21の前腕を包囲する前腕包囲部、24は筒体21の上腕包囲部22と前腕包囲部23との間で肘を包囲する肘包囲部、25は肘包囲部24の屈曲部に形成された開口部、26は筒体21の上腕包囲部22,前腕包囲部23,肘包囲部24の側部の外側に縫着され肘関節装具用支柱1が包容されて支持される細長い袋状の肘関節装具用支柱支持部、27は肘関節装具用支柱1の第1支柱2又は第2支柱7を支持する肘関節装具用支柱支持部26の上腕側支柱支持部、28は肘関節装具用支柱1の第2支柱7又は第1支柱2を支持する肘関節装具用支柱支持部26の前腕側支柱支持部、29は第2支柱7の先端側及び第1支柱2の先端側を支持する肘関節装具用支柱支持部26の中央支持部である。
【0033】
以上のように構成された実施の形態2における肘関節装具の使用方法について、以下説明する。
肘関節装具20は、肘関節装具用支柱支持部26に装着された肘関節装具用支柱1が腕の外側(肘関節の側部の外側)に位置するように投球動作等を行なう利き腕に装着する。
腕を伸展すると、図6(a)に示すように、肘関節装具用支柱1の第1支柱2に対して第2支柱7が傾斜した状態になるので、肘関節を中心にして前腕と上腕の外側から内側に圧迫することができる。腕を略90°に屈曲させると、図6(b)に示すように、第1支柱2に対して第2支柱7がほとんど傾斜していない状態(直線状態)になるので、前腕と上腕の外側から内側に対して負荷がほとんどかからなくなる。
【0034】
以上のように実施の形態2における肘関節装具は構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)上腕包囲部22、前腕包囲部23、肘包囲部24を、利き腕に装着するだけなので、着脱が容易で使用性に優れるとともに、肘関節装具用支柱1を腕の外側に沿わせて確実に装着することができ治療効果を高めることができる。この結果、関節運動を制限することなくストレスから肘関節を保護し、完治するまでの期間を短縮できるとともに、装着したまま投球動作等の運動が可能なので、投球動作等の練習を行いながら障害の治療ができ、関節の拘縮や筋力の低下を起こり難くすることができる。
【0035】
なお、本実施の形態においては、縫着された肘関節装具用支柱支持部26に肘関節装具用支柱1の全体を包容した場合について説明したが、肘関節装具用支柱1の第1支柱2と第2支柱7の先端と後端を、ベルトやリベット等で上腕包囲部22,前腕包囲部23,肘包囲部24に固定させる場合もある。この場合も同様の作用が得られる。
また、上腕包囲部22,前腕包囲部23,肘包囲部24が筒体21で連続して形成された場合について説明したが、上腕包囲部22,前腕包囲部23,肘包囲部24の各々を帯状や筒状等で形成し、上腕包囲部22,前腕包囲部23,肘包囲部24の各々の側部に形成された上腕側支柱支持部27、前腕側支柱支持部28、中央支持部29に肘関節装具用支柱1を配設する場合もある。この場合も同様の作用が得られる。
【0036】
(実施の形態3)
図7は本発明の実施の形態3における肘関節装具用支柱の第2支柱の平面図であり、図8(a)は肘関節装具用支柱の第1支柱の平面図であり、図8(b)は第1支柱の正面図であり、図8(c)は図8(a)のC−C線における第1支柱の断面図であり、図9(a)は伸展させた肘関節装具用支柱の平面図であり、図9(b)は伸展させた肘関節装具用支柱の正面図であり、図9(c)は屈曲させた肘関節装具用支柱の平面図であり、図9(d)は屈曲させた肘関節装具用支柱の斜視図である。
図中、30は実施の形態3における肘関節装具用支柱、31は金属製,合成樹脂製,木製等で均一な肉厚を有する細長い板状に形成された第2支柱、31aは後述する第1支柱33の先端が重ねられる第2支柱31の重ね部、32は重ね部31aに貫設され後述する回動軸37が挿通される孔部、33は金属製,合成樹脂製,木製等で細長い板状に形成された第1支柱、33aは第2支柱31の先端が重ねられる第1支柱33の重ね部、34は重ね部33aの端部が厚くなるように配設固定された第1摺接部、35は第1摺接部34と第1支柱33に貫設され後述する回動軸37が挿通される孔部である。第1摺接部34は、平面視して略円形の板状に形成され、孔部35から先端側が、孔部35から後端側に比べて肉厚となった傾斜面が形成されている。本実施の形態においては、回動軸37が挿通される孔部35の中心軸35aは、第1支柱33の長さ方向の長軸33bに垂設された垂直軸33cに対して角度βだけ後端側に傾倒されており、β=5〜30°に形成されている。また、第1摺接部34の傾斜面の傾斜角度も5〜30°(=β)に形成されている。
36は超高密度ポリエチレン等の合成樹脂製や金属製等で形成され第1摺接部34と第2支柱31の重ね部31aの間に挟持されたワッシャー、37は貫設された孔部32,35に挿通され第1支柱33と第2支柱31を軸支するリベット,ボルト等の回動軸である。
【0037】
以上のように、実施の形態3における肘関節装具用支柱は構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)第1支柱33の重ね部33aの先端側の第1摺接部34が重ね部33aの後端側に比べ肉厚に形成されているので、第2支柱31と第1支柱33を回動させて略180°に伸展させると、第1摺接部34の肉厚差の分、即ち第1支柱33の長軸33bの垂直軸33cに対して回動軸37が傾倒した角度βだけ第1支柱33に対して第2支柱31が傾斜した状態になる。一方、第1支柱33と第2支柱31を回動させて略90°に屈曲させると、第1摺接部34の肉厚差の効果がなくなるため、第1支柱33に対して第2支柱31がほとんど傾斜していない状態にすることができる。このため、腕の外側に肘関節装具用支柱30をテーピングやベルト等によって固定すると、肘が略90°屈曲した状態では腕に対する力がほとんど働かないが、肘が伸展した状態では、肘関節装具用支柱30の第1支柱33と第2支柱31が腕に向かって傾斜することによって、上腕と前腕の外側が押されることになる。
【0038】
(実施の形態4)
図10(a)は本発明の実施の形態4における肘関節装具用支柱の伸展させた状態を示す平面図であり、図10(b)は伸展させた肘関節装具用支柱の正面図であり、図10(c)は屈曲させた肘関節装具用支柱の平面図であり、図10(d)は屈曲させた肘関節装具用支柱の斜視図である。
図中、40は実施の形態4における肘関節装具用支柱、41は金属製,合成樹脂製,木製等で細長い板状に形成された第1支柱、42は金属製,合成樹脂製,木製等で細長い板状に形成された第2支柱、42aは第1支柱41の先端と第2支柱42の先端が重ねられ回動面を形成する重ね部、43は貫設された図示しない孔部に挿通され第1支柱41と第2支柱42を軸支するリベット,ボルト等の回動軸、44は回動軸43より第2支柱42の後端側で回動面から所定の角度(β)で折り曲げられた折曲部、45は超高密度ポリエチレン等の硬質の合成樹脂製等で形成され第1支柱41と第2支柱42の間に挟持されたワッシャーである。
なお、本実施の形態においては、回動軸43は、折曲部44が形成された第2支柱42の長さ方向の長軸44aに垂設された垂直軸44bに対して、第2支柱42の後端側に5〜30°(=β)傾倒して配設されている。また、折曲部44は第2支柱42を回動面に対し5〜30°(=β)の角度で傾斜させている。
【0039】
以上のように、実施の形態4における肘関節装具用支柱は構成されているので、実施の形態3に記載の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)患者の症状に応じ、折曲部44の角度を調整して腕に対する圧迫力を調整できるため自在性に優れる。
【0040】
なお、本実施の形態においては、折曲部44が第2支柱42を上方に折り曲げたように形成された場合を説明したが、患者の症状等によっては、捻りを加えて折曲部を形成する場合もある。折曲部44は、第2支柱42を型曲げ加工、折曲げ加工等のプレス加工によって形成する場合や、射出成型等によって一体に形成する場合がある。直辺状に形成するだけでなく適度の丸みを付ける場合もある。
【0041】
(実施の形態5)
図11(a)は本発明の実施の形態5における肘関節装具用支柱の伸展させた状態を示す平面図であり、図11(b)は伸展させた肘関節装具用支柱の正面図であり、図11(c)は屈曲させた肘関節装具用支柱の平面図であり、図11(d)は屈曲させた肘関節装具用支柱の斜視図である。なお、実施の形態4で説明したものと同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、40aは実施の形態5における肘関節装具用支柱、41aは金属製,合成樹脂製,木製等で細長い板状に形成された第1支柱、41bは回動軸43より第1支柱41aの後端側で回動面から所定の角度(β)で第2支柱42と同じ側に折り曲げられた折曲部である。
なお、本実施の形態においては、折曲部41b,44が形成された第1支柱41a,第2支柱42は回動面に対し各々3〜15°(β)の角度で傾斜させて、第1支柱41aと第2支柱42とのなす角θが150〜175°になるように形成されている。
以上のように、実施の形態5における肘関節装具用支柱は構成されているので、実施の形態4に記載の作用と同様の作用が得られる。
【0042】
なお、本実施の形態においては、第1支柱41aが回動面に対して第2支柱42と同じ側(図11(b)の上側)に折り曲げられた場合について説明したが、第1支柱41aを回動面に対して第2支柱42と反対側(図11(b)の下側)に折り曲げる場合もある。この場合も第1支柱41aと第2支柱42とのなす角θが150〜175°になるように形成されていれば、同様の作用が得られる。
【0043】
(実施の形態6)
図12(a)は本発明の実施の形態6における肘関節装具用支柱の伸展させた状態を示す平面図であり、図12(b)は伸展させた肘関節装具用支柱の断面図である。
図中、50は実施の形態6における肘関節装具用支柱、51は金属製,合成樹脂製等で細長い棒状に形成された第1支柱、52は金属製,合成樹脂製等で細長い棒状に形成された第2支柱、53は第1支柱51の先端と第2支柱52の先端の各々が平たく形成されて重ねられ回動面を形成する重ね部、54は重ね部53の第1支柱51に配設された軸受、55は軸受54に貫設され第1支柱51と第2支柱52を軸支する回動軸、56は回動軸55より第2支柱52の後端側で回動面から所定の角度(β)で折り曲げられた折曲部である。
なお、本実施の形態においては、回動軸55は、折曲部56が形成された第2支柱52の長さ方向の長軸56aに垂設された垂直軸56bに対して、第2支柱52の後端側に5〜30°(=β)傾倒して配設されている。また、折曲部56が形成された第2支柱52は回動面に対し5〜30°(=β)の角度で傾斜させている。
【0044】
以上のように、実施の形態6における肘関節装具用支柱は構成されているので、実施の形態4の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)回動軸55が軸受54に貫設されているので、第1支柱51,第2支柱52の伸展・屈曲をスムーズに行うことができるとともに耐久性に優れる。
(2)第1支柱51と第2支柱52が棒状で形成されており幅が狭いため、回動軸を中心にして第1支柱、第2支柱を伸展・屈曲させた際の長さ方向の捻じれを生じ難くすることができ、腕に対して捻じれによる過剰な負荷がかからないようにすることができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
少年野球の投手である10歳男子は、投球中、右肘内側に急激な痛みを自覚し、以後投球が不可能となった。内側側副靭帯起始部の剥離骨折と診断された。受傷後1週間のシーネ固定の後、実施の形態2で説明した肘関節装具を装着したところ、全てのADL(日常生活活動性)を許可された。受傷後3週にて肘関節装具の装着下での軽いキャッチボールを再開、2ヶ月で試合にて全力投球が可能になった。
【0046】
(実施例2)
社会人野球の投手である21歳男性は、コッキング期の肘関節痛を自覚し通院した。投球は禁止することなく、実施の形態2で説明した肘関節装具を装着して練習を継続した。装着後は少しずつ痛みが軽減し、装着2ヶ月にて公式戦登板が可能となった。症状が消失してからも練習時には肘関節装具を着用している。
【0047】
(実施例3)
27歳男性は、スキーにて転倒し右上腕内上顆を骨折した。1週間のシーネ固定の後、実施の形態2で説明した肘関節装具を装着したところ、全てのADL(日常生活活動性)を許可された。継続して着用したところ、肘関節の可動域制限や運動時の痛みを全く認めることなく治癒した。
【0048】
これらの実施例以外にも、肘の外側部の障害である上腕骨小頭離断性骨軟骨炎と診断された者に、実施の形態2で説明した肘関節装具を装着したところ、痛みを認めることなく治癒した。
以上の実施例によれば、関節運動を制限することなくストレスから肘関節を保護し、完治するまでの期間を短縮できるとともに、装着したまま投球動作等の運動が可能なので、治療期間の短縮化と再発防止を可能にすることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
スポーツの練習中や外傷等によって起こる肘の障害による痛みを緩和するとともに治療に用いる肘関節装具用支柱及びそれを備えた肘関節装具に関し、肘の外側の骨、軟骨に加わる圧迫力や回旋力を緩和し肘の外側部の負担を著しく軽減させることができ、関節運動を制限することなくストレスから肘関節を保護し、完治するまでの期間を短縮できるとともに、装着したまま投球動作等の運動が可能なので、投球動作等の練習を行い関節の拘縮や筋力の低下を起こり難くしながら障害の治療ができ、治療が困難な離断性骨軟骨炎等の肘の外側部の障害の治療期間の短縮化と再発防止が可能な肘関節装具用支柱を提供することができ、また、着脱が容易で使用性に優れるとともに、肘関節装具用支柱を腕の外側に沿わせて確実に装着することができ治療効果を高めることができため、関節運動を制限することなくストレスから肘関節を保護し、完治するまでの期間を短縮できるとともに、装着したまま投球動作等の運動が可能なので、治療期間の短縮化と再発防止が可能な肘関節装具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(a)実施の形態1における肘関節装具用支柱の第1支柱の左側面図 (b)第1支柱の平面図 (c)図1(b)のA−A線における断面図 (d)第1支柱の正面図
【図2】(a)肘関節装具用支柱の第2支柱の左側面図 (b)第2支柱の平面図 (c)第2支柱の正面図 (d)図2(b)のB−B線における断面図
【図3】(a)伸展させた肘関節装具用支柱の平面図 (b)伸展させた肘関節装具用支柱の正面図 (c)伸展させた肘関節装具用支柱の重ね部を拡大した正面図 (d)伸展させた肘関節装具用支柱の重ね部を拡大した左側面図
【図4】(a)屈曲させた肘関節装具用支柱の平面図 (b)屈曲させた肘関節装具用支柱の正面図 (c)屈曲させた肘関節装具用支柱の重ね部をD矢視方向から見た図
【図5】実施の形態2における肘関節装具を右腕に装着した状態を示す斜視図
【図6】(a)腕を伸展させた状態を示す模式図 (b)(c)腕を略90°屈曲させた状態を示す模式図
【図7】実施の形態3における肘関節装具用支柱の第2支柱の平面図
【図8】(a)肘関節装具用支柱の第1支柱の平面図 (b)第1支柱の正面図 (c)図8(a)のC−C線における第1支柱の断面図
【図9】(a)伸展させた肘関節装具用支柱の平面図 (b)伸展させた肘関節装具用支柱の正面図 (c)屈曲させた肘関節装具用支柱の平面図 (d)屈曲させた肘関節装具用支柱の斜視図
【図10】(a)実施の形態4における肘関節装具用支柱の伸展させた状態を示す平面図(b)伸展させた肘関節装具用支柱の正面図 (c)屈曲させた肘関節装具用支柱の平面図 (d)屈曲させた肘関節装具用支柱の斜視図
【図11】(a)実施の形態5における肘関節装具用支柱の伸展させた状態を示す平面図(b)伸展させた肘関節装具用支柱の正面図 (c)屈曲させた肘関節装具用支柱の平面図 (d)屈曲させた肘関節装具用支柱の斜視図
【図12】(a)実施の形態6における肘関節装具用支柱の伸展させた状態を示す平面図(b)伸展させた肘関節装具用支柱の断面図
【符号の説明】
【0051】
1 肘関節装具用支柱
2 第1支柱
2a 短軸
2b 垂直軸
3 重ね部
4 第2摺接部
4a,4b 側端側
4c 傾斜面
5 孔部
5a 中心軸
6 凹部
7 第2支柱
7a 長軸
7b 垂直軸
8 重ね部
9 第1摺接部
9a,9b 側端側
9c 傾斜面
10 孔部
10a 中心軸
11 凹部
12 回動軸
13 ワッシャー
20 肘関節装具
21 筒体
22 上腕包囲部
23 前腕包囲部
24 肘包囲部
25 開口部
26 肘関節装具用支柱支持部
27 上腕側支柱支持部
28 前腕側支柱支持部
29 中央支持部
30 肘関節装具用支柱
31 第2支柱
31a 重ね部
32 孔部
33 第1支柱
33a 重ね部
33b 長軸
33c 垂直軸
34 第1摺接部
35 孔部
35a 中心軸
36 ワッシャー
37 回動軸
40,40a 肘関節装具用支柱
41,41a 第1支柱
42 第2支柱
42a 重ね部
43 回動軸
44,41b 折曲部
44a 長軸
44b 垂直軸
45 ワッシャー
50 肘関節装具用支柱
51 第1支柱
52 第2支柱
53 重ね部
54 軸受
55 回動軸
56 折曲部
56a 長軸
56b 垂直軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1支柱と、第2支柱と、前記第1支柱の先端と前記第2支柱の先端が重ねられた重ね部と、前記重ね部に配設され前記第1支柱と前記第2支柱を軸支する回動軸と、を備えた肘関節装具用支柱であって、
前記第1支柱又は前記第2支柱のいずれか一方の前記重ね部の摺接面に配設固定又は形成された第1摺接部を備え、前記第1摺接部が、前記第1支柱の前記重ね部の先端側が後端側に比べ肉厚に形成されている、又は、前記第2支柱の前記重ね部の後端側が先端側に比べ肉厚に形成されていることを特徴とする肘関節装具用支柱。
【請求項2】
前記第1摺接部が配設固定又は形成された前記第1支柱又は前記第2支柱の他方の前記第2支柱又は前記第1支柱の前記重ね部の摺接面に配設固定又は形成された第2摺接部を備え、前記第2摺接部が、前記重ね部の一方の側端側が他方の側端側に比べ肉厚に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の肘関節装具用支柱。
【請求項3】
第1支柱と、第2支柱と、前記第1支柱の先端と前記第2支柱の先端が重ねられた重ね部と、前記重ね部に配設され前記第1支柱と前記第2支柱を軸支する回動軸と、を備えた肘関節装具用支柱であって、
前記第1支柱及び/又は前記第2支柱が、前記回動軸より後端側で回動面から所定の角度で折り曲げられた折曲部を備えていることを特徴とする肘関節装具用支柱。
【請求項4】
請求項1乃至3の内いずれか1に記載の肘関節装具用支柱と、前腕を包囲する前腕包囲部と、上腕を包囲する上腕包囲部と、前記前腕包囲部と前記上腕包囲部との間で肘を包囲する肘包囲部と、前記上腕包囲部の内側又は外側に配設され前記肘関節装具用支柱の第1支柱又は第2支柱を支持する上腕側支柱支持部と、前記前腕包囲部の内側又は外側に配設され前記肘関節装具用支柱の第2支柱又は第1支柱を支持する前腕側支柱支持部と、前記肘包囲部の内側又は外側に配設され前記第2支柱の先端側及び/又は前記第1支柱の先端側を支持する中央支持部と、を備えていることを特徴とする肘関節装具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−333989(P2006−333989A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160225(P2005−160225)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000155687)株式会社有薗製作所 (5)
【Fターム(参考)】