説明

肝疾患の診断のための及び該疾患の治療用の分子のスクリーニングのための方法

本発明は、肝細胞もしくは組織における又は循環(血液、血漿、血清)中のアポリポタンパク質A4の発現を測定することよりなる肝疾患の診断方法に関する。化合物を哺乳動物と接触させることによる、該疾患を治療するための分子のスクリーニング方法、および哺乳動物の肝由来細胞における又は循環中のアポリポタンパク質A4の発現の測定方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は肝疾患の診断方法に関する。本発明はまた、該疾患の治療用の分子のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アポリポタンパク質A4(アポA4)は豊富な循環アポリポタンパク質である。このタンパク質の発現は、げっ歯類の視床下部、小腸および肝臓において実証されている。マウスの血漿中に見出されるアポA4のほとんどは小腸由来であると考えられている(Wuら,JBC 254,7316−7322 1979)。ヒトにおけるアポA4の合成は小腸に限定されることがElshourbagy(JBC 262 1987)により記載されている。アポA4は多数の機能を有する。それは、肝組織からのコレステロールの流れの活性化およびリポタンパク質リパーゼ活性の刺激のような種々のメカニズムにより脂質の輸送および代謝を調節する(Stanら,Biochim Biophys acta,1631 2003,177−187)。アポA4は満腹因子であることも公知である。
【0003】
肝疾患は重大な公衆衛生問題の1つである。したがって、特異的かつ高感度なアッセイ方法を用いて、すべての肝疾患を可能な限り早期に診断することが不可欠である。
【発明の開示】
【0004】
驚くべきことに、本出願人は、アポA4がヒトにおいて肝臓内で発現されること、およびアポA4をコードする遺伝子の肝発現のレベルが肝疾患において有意に上昇することを実証した。
【0005】
本発明の主題は、肝細胞もしくは組織またはこれらの細胞および組織の抽出物における或いは血液およびその誘導体におけるアポA4の発現の測定を含む、肝疾患の検出、診断またはその予後の提供方法である。
【0006】
したがって、本発明の主題は、肝細胞または組織においてだけでなく、肝臓由来のアポA4が存在する血液においても、アポA4の発現を測定することである。そのような方法は、
・肝細胞もしくは組織またはこれらの細胞および組織の抽出物あるいは血液またはその誘導体を単離し、
・アポA4の発現を測定する工程を含みうる。
【0007】
そのような抽出物は肝細胞および組織の溶解(lysis)により得られうる。「肝疾患」なる語は、慢性であるか病因性であるかにかかわらず肝組織および細胞に影響を及ぼす任意の疾患(アルコール性、ウイルス性、毒性、食物関連、環境性など)を意味すると意図される。
より詳しくは、本発明の主題は、脂肪肝炎、肝臓発癌、肝硬変、ウイルス性肝炎、肝細胞不全、胆汁うっ滞、門脈高血圧、脂肪症および脂肪肝炎、肝静脈および動脈疾患、線維症、肥満ならびにメタボリックシンドロームの検出、診断またはその予後の提供方法である。
「血液誘導体」なる語は、物理的処理(例えば、遠心分離)、生物学的処理(例えば、凝血)もしくは化学的処理またはそのような誘導体を得るための任意の他の処理により血液から誘導される任意の細胞性または無細胞性画分を意味すると意図される。
そのような誘導体は、好ましくは、血漿および血清である。
本発明の好ましい実施形態においては、該方法は、肝疾患を診断し又はその予後を提供することが望まれる個体の肝細胞または組織におけるアポA4をコードする遺伝子から転写されたメッセンジャーRNA(mRNA)の量の測定を含む。
該哺乳動物の肝細胞もしくは組織または血液中およびその誘導体中の細胞を取り出し、特にメッセンジャーRNAおよびタンパク質の分解を防ぐために当業者に公知の方法により処理し、ついで、アポA4をコードする遺伝子により転写されたメッセンジャーRNAの量を測定する。
特に有利には、転写されたメッセンジャーRNAの量を、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはQPCRとして公知の方法に従う増幅により測定する。
この技術により、全RNAを抽出し、精製し、該抽出物中に含有されるメッセンジャーRNAをまず、逆転写酵素を使用して相補的DNA(cDNA)に変換する。
本発明において好ましく使用されるポリメラーゼはTaqポリメラーゼであるが、それは、ポリメラーゼ活性を有しPCRの実施のための条件下で使用されうる任意の他の酵素でありうる。この酵素は、その特性により、各合成サイクルにおいて初期DNAの量を倍加することを可能にする。
生物学的サンプル中に含有されるmRNAから誘導されたcDNAの分析は、リアルタイム定量的PCRにより行う。アポA4配列に特異的なプライマーおよびプローブを使用して、以下の工程:
・該サンプルから調製されたcDNAを加熱することによる、増幅すべき鎖の分離、
・該プローブの、およびセンスおよびアンチセンスプライマーのペアのハイブリダイゼーション、ならびに
・ポリメラーゼでの伸長によるDNA鎖のデノボ(de novo)合成
を含むサイクルの反復を実質的に含む方法により、該cDNAを分析する。
【0008】
有利には、センスおよびアンチセンスプライマーは少なくとも15個のヌクレオチドを含み、配列番号13(Genebank番号NM 000482)の配列に対応するヒトアポA4配列またはそれに相補的な配列に対して少なくとも80%、好ましくは90%、より好ましくは95%の同一性を示す。該増幅反応の経過中、配列番号13(Genebank番号NM 000482)の配列に対応するヒトアポA4配列またはそれに相補的な配列に対して少なくとも80%、好ましくは90%、より好ましくは95%の同一性を示し少なくとも15ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドよりなるプローブを使用して、反応産物または増幅産物を検出する。
【0009】
2つのプライマーはそれぞれ、DNA断片の増幅を可能にするよう、センスおよびアンチセンス鎖上で選択される。プローブのほうは、それらの2つのプライマーの位置により範囲が定められた増幅から生じたDNA断片にハイブリダイズするよう標的化される。有利には、該プローブは、該プライマーの理論Tm値より約10℃±0.5℃高い理論融点Tmを有する。該オリゴヌクレオチド(プライマーおよびプローブ)は、好ましくは、15〜25ヌクレオチドを含む。該方法は、測定可能な量の増幅産物(n=40)が得られるのを可能にするのに十分なサイクル数にわたって行われる。ヒトアポA4をコードする遺伝子を増幅するのに使用するプライマーは、好ましくは、配列:
配列番号1:gcagctggctccctatgct、
および
配列番号2:ggaaggtcaggccctcaag
を有する。該プローブは、好ましくは、配列番号3:cacgcaggagaagctcaaccaccaの配列を有する。
【0010】
本発明の好ましい実施形態においては、該プローブは可視化分子または分子系を含有する。該可視化系は、好ましくは、該プローブの5’末端および3’末端にそれぞれ結合しているレポーター着色剤および蛍光消光着色剤よりなる。有利な実施形態においては、該可視化系は、該プローブの5’位および3’位にそれぞれ結合している6−カルボキシフルオレセイン(FAM)および6−カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)により代表される「レポーター/消光剤」ペアよりなる。本発明において該PCRを行うためには、PCR技術の一般的総説ならびに試薬およびサーモサイクルの製造業者および流通業者からの説明、特に、Perkin Elmer Applied Biosystems(1999)により公開されている「Quantitation of DNA/RNA Using Real−Time PCR detection」なる題名の使用説明書、およびPCR Protocols (Academic Press New York 1989)が参照されうる。
【0011】
QPCRによる検出方法の利点の1つは、PCRサイクル中に得られた蛍光を読み取ることによりPCR産物の分析がPCRサイクルの終了時に直接行われることである。したがって、後続の分析で汚染される危険性を伴う該PCR産物の取り扱いの必要がない。
【0012】
また、該反応の開始時に使用される標的の数の定量は非常に信頼しうるものであり再現性有るものである。PCR産物は該PCRサイクル中に蛍光プローブにより検出される。後者は、PCR産物を検出するために必要であり、該検出は、指数的PCR段階の真ん中の時点で生じ、最終時点で生じるのではない。したがって、この検出原理は、より高感度であり、より特異的である。
【0013】
QPCRのもう1つの利点は、「ホットスタート(hot start)」原理により非特異的増幅が回避されることであり、該リアルタイムPCRは、最初の変性時に活性化される熱安定DNAポリメラーゼの存在下で行われる。
【0014】
本発明のもう1つの実施形態においては、本発明の方法は、肝細胞もしくは組織において又は血液およびその誘導体において発現されたアポA4タンパク質またはタンパク質断片の量の測定を含む。
【0015】
特に有利には、アポA4タンパク質またはタンパク質断片の量は、このタンパク質に特異的な少なくとも1つの抗体を使用して測定される。
これらの抗体は、精製ヒトアポA4タンパク質または約20アミノ酸のアポA4のペプチド配列エマルションを、場合によってはアジュバント、例えばフロイントアジュバントの存在下、動物(例えば、げっ歯類)に注射することよりなる方法により得られうる。該注射を繰返し、抗血清を集める。
肝アポA4を定量することが望まれる個体の肝細胞もしくは組織において又は血液およびその誘導体において発現されたアポA4とこれらの抗体との結合の測定は任意の適当な手段により行われうる。好ましくは、それはELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイの略)技術により、より一層好ましくは、「サンドイッチ」法により行われうる。「サンドイッチ」法は2つの抗体を使用するものであり、第1の捕捉抗体はマイクロプレートのような固相に結合しており、第2の検出抗体は、該タンパク質を定量することを可能にする。この技術においては、該検出抗体はペルオキシダーゼに結合されている。アポA4タンパク質に結合した抗体を未結合抗体から単離し、ペルオキシダーゼの基質、好ましくはO−フェニレンジアミン二塩酸塩と接触させる。該比色反応は、結合した抗体の数を定量することを可能にし、その結果、結合したタンパク質の量を定量することを可能にする。この比色反応は、適当な装置を使用して、例えば光学濃度を測定することにより測定される。
該反応の増幅は、少なくとも2つの抗体、すなわち、第1に、ペルオキシダーゼに結合していない抗アポA4抗体、そして第2に、第1抗体を認識するペルオキシダーゼ結合抗体を使用して行われうる。
また、該抗体−アポA4複合体を支持体に結合させて該複合体の単離および未結合抗体からの分離を促進するために、もう1つの抗アポA4抗体が使用されうる。
【0016】
これらの抗体とアポA4との結合は、放射性同位体で標識された抗体を使用することによっても測定されうる。この実施形態においては、アポA4タンパク質に結合した抗体を単離し、該抗体−アポA4複合体の放射能を、使用した同位体に適した測定装置を使用して測定する。
【0017】
アポA4タンパク質をアッセイするためには、ELISAおよび放射性同位体技術以外の技術、例えばネフェロメトリーおよびタービジメトリーも用いられうる。該抗体の製造ならびにELISAおよび放射性同位体技術の使用のためには、特に、マニュアル“Antibodies,A Laboratory Manual”(Cold Spring Harbor Press(1988)が参照されうる。
【0018】
本発明の主題はまた、肝疾患の予防または治療において使用するための化合物をスクリーニングする方法であって、
・該化合物を哺乳動物と接触させ、
・該哺乳動物の肝由来の細胞において又は血液において又は血液および血液細胞誘導体においてアポA4の発現を測定する工程を含む方法である。
【0019】
アポA4の発現の測定が行われうる細胞または血液を有する哺乳動物は、アポA4が肝臓内で発現される任意の哺乳動物である。それは、有利には、げっ歯類であり、好ましくは、マウスである。有利には、天然の肥満傾向にある動物系統を使用する。
例えば、Balbc ByJ、DIO Balbc ByJ、DIO Balbc AnNまたはDIO C57Bl/6J系統が好ましく使用される。
アポA4の発現の測定は、該哺乳動物の肝細胞もしくは組織において又は血液およびその誘導体において発現されたアポA4の量を測定することにより、あるいは前記のとおり該哺乳動物の肝細胞もしくは組織において発現されるアポA4をコードする遺伝子により転写されたメッセンジャーRNAの量を測定することにより行われうる。
【0020】
本発明は以下の実施例により例示されるが、これらは本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0021】
転写されたメッセンジャーRNAおよび血漿アポA4タンパク質の定量による正常マウス(C57 Bl6)または肥満マウス(C57 Bl6/obob)におけるアポA4の発現の測定
1.材料および方法
実験プロトコール
血液を正常マウス(C57 Bl6)または肥満マウス(C57 Bl6/obob)から採取し、10 000rpmで10分間遠心分離し、血漿を取り出した。
【0022】
一片の肝臓(75〜130mg)を摘出し、1.5mlのRNA Later(Ambiom)を含有する2mlチューブ内に配置した。
【0023】
アポA4 mRNAおよびタンパク質をアッセイするために、該肝臓および該血漿を−20℃で保存した。
【0024】
マウスアポA4の発現のリアルタイムQPCR分析
この主に2工程の技術は以下を含む。
1.全RNAの抽出および精製、ならびにそれに続く、該サンプル中に含有されるmRNAの、相補的DNA(cDNA)への変換、
2.リアルタイム定量PCRにより行う該cDNAの分析。該遺伝子の相対発現は、変動しない内部参照遺伝子、例えばベータ2−ミクログロブリンまたは18SリボソームRNAに対する%として示される。
【0025】
7900HT Fast Real−Time PCR System配列分析装置および増幅用試薬はApplied Biosystemsにより提供される。
【0026】
方法:
組織ライセートの調製
80mgのマウス肝臓を切り出し、いずれかの操作の前にRNAを可能な限り完全に維持するために、それを直ちに2mlのRNAlaterに漬ける。肝臓片をエッペンドルフチューブ内に乾燥転移し、それに2mlの溶解バッファー(全RNA抽出キット;QIAGENにより販売されているRNeasy Midi Kit)および2個の鋼製球(直径3mm)を加える。Tissuelyser(QIAGENにより販売されている)を使用して、30Hzで5分間の攪拌により組織溶解を行う。この段階で、該ライセートを−20℃で保存することが可能である。
【0027】
全RNAの抽出
該ライセートを14 000×gで3分間遠心分離し、QIAshredder(QIAGENにより販売されている)(3×0.7ml)上で濾過する。RNeasy Midiキットのプロトコールに従い、DNアーゼ工程で抽出を行う。最終工程は150μlの水中での全RNAの溶出である。
RNA濃度を、260nmの光学濃度(OD)を測定することにより得る。
【0028】
相補的DNA(cDNA)の合成
Superscript III逆転写キット(INVITROGENにより販売されている)を使用して、5μgの全RNAからcDNAを合成する。得られたcDNAを20μlの最終容量中に回収する。
【0029】
7900HT上でのPCRによる遺伝子発現の分析
バッファー、PCR反応に必要なポリメラーゼならびに定量すべき遺伝子に特異的なプライマーおよびプローブを特に含有する15μlの反応混合物にcDNAの5μlの希釈液を加える。後者はTaqman Gene Expression Assaysの形態で該供給業者から入手可能である。ベータ2−ミクログロブリン(B2−m)遺伝子または18SリボソームRNAを内部参照体として使用する。ヒトおよびマウスアポA4およびベータ2−mをコードする遺伝子を増幅するために使用するプライマーおよびプローブの配列を表VIIに示す(配列番号1〜配列番号12)。
遺伝子増幅反応は96ウェルまたは384ウェルマイクロプレート内で、温度サイクル(95℃/15秒の変性、ついでハイブリダイゼーション、および60℃/1分の合成)を用いて行う。該分析を90分間続ける。
増幅速度論(サイクル数の関数としての増幅シグナル)を指数段階の線形表示で分析する(ソフトウェア:SDS Enterprise Database)。
一定の増幅シグナルで測定されるサイクル数であるCtがこの段階で定められ、Ctは、起源サンプル内に存在するメッセンジャーRNAの量に反比例する。標的遺伝子(アポA4)と内部参照体(B2−m)との間のCtにおける差(ΔCt)は、関係式Q=(2)−ΔCt(値は参照遺伝子に対する%として与えられる)から、相対存在量を与える。
【0030】
ELISAサンドイッチ法を用いるマウスにおける血漿中のアポA4の量の測定
抗体
捕捉抗体は、Santa Cruz Biotechnology,Inc.(2145 Delaware Avenue Santa Cruz,California 95060 U.S.A.)により販売されているヤギ抗アポA4抗体である。マウスA4に対する抗血清を、マウスアポA4のC末端配列(アミノ酸361−380)に対応するペプチドで免疫化されたウサギから得る。
完全フロイントアジュバント中の担体タンパク質(KLH)に結合しているペプチドのエマルションを該動物に皮下注射する。不完全フロイントアジュバント中の結合ペプチドのエマルションの後続の注射を行う。3回目の追加免疫の10日後に抗血清を集め、クロマトグラフィーゲルに結合したペプチド上のアフィニティークロマトグラフィーにより該抗体を精製する。
【0031】
ELISAサンドイッチ法の実施
PBS中の4μg/mlのヤギ抗アポA4抗体100μlを96ウェルプレートのウェル内で20℃で4時間インキュベートする。0.1%のtween 20を含有するPBSで洗浄した後、非特異的結合部位を、0.5%のウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBSバッファーで室温で60分間ブロッキングする。
100μlの血漿サンプル(1/3000〜1/20 000の、0.1% BSAを含有するPBS中の希釈液)を加え、4℃で一晩インキュベートする。
洗浄後、0.1μg/mlの100μlのウサギポリクローナル抗マウスアポA4抗体を加え、室温で1時間インキュベートする。洗浄後、100μlの抗ウサギIgG−ペルオキシダーゼ結合体(PIERCE;0.1% BSAを含有するPBS中、1/200)を加え、室温で1時間インキュベートする。洗浄後、O−フェニレンジアミンおよび過酸化水素(これはペルオキシダーゼの基質(Sigma)である)を含有する150μlの溶液を加える。20分後、反応を停止させるために50μlの3M HSOを加え、492nmの光学濃度を測定する。
【0032】
2.結果
表IAはマウスにおけるアポA4の組織分布を示す。アポA4は平滑筋、小腸、肝臓、結腸、胎盤、胃、卵巣、直腸、脂肪組織などにおいて発現される。小腸において強い発現が認められる。
【0033】
表IBは、小腸における強い発現および種々の領域(十二指腸、空腸、回腸)におけるアポA4の位置を証明している。
【0034】
表IIは肝臓および血漿におけるアポA4の発現を示し、正常マウスと肥満マウスとを比較した場合に、この発現が肝臓および血漿において上昇することを示している。
【実施例2】
【0035】
転写されたメッセンジャーRNAの定量によるヒトにおけるアポA4の発現の測定
マウス肝臓からの調製に関する前記実施例に記載されているとおりに、ヒト肝臓からcDNAを調製し、測定を行う。
【0036】
ヒトアポA4発現のリアルタイムQPCR分析の結果
表IIIはヒトにおけるアポA4の組織分布、すなわち、子宮底、食道、網膜、胎盤、精巣上体および脂肪組織における存在を示す。文献からのデータに一致して、小腸において強い発現が認められる。
全肝臓においては発現はほとんど認められないが、該発現は肝門系領域に集中しているらしい。
【0037】
表IV−Aは、小腸の領域(空腸、回腸、十二指腸)におけるアポA4の位置の結果を証明している。
肝臓におけるアポA4の局所発現は、ある病態生理学的状態(肝門系)に、より関連していることも示されている(表IV−B)。
【0038】
この結果は表V−AおよびVIにおいて証明されており、これらの表は一緒になって、病的な肝臓および正常な肝臓の種々のサンプルに関するアポA4の分析を示している。
高い値は以下の病態に相関している:肝硬変、ループスおよび梗塞。
【0039】
これらの状態に関する潜在的マーカーとしてのアポA4の特異性は、アポA4とその他のクラスのアポリポタンパク質(アポA1、アポA2およびアポA5)とを比較した分析により示されている(表IVおよびV−B)。
【実施例3】
【0040】
ELISAサンドイッチ法によるヒトの血漿におけるアポA4タンパク質の量の測定
抗体
捕捉抗体は、Santa Cruz Biotechnology,Inc.(2145 Delaware Avenue Santa Cruz,California 95060 U.S.A.)により販売されているヤギ抗アポA4抗体である。
【0041】
Weinberg RB,Hopkins RA,Jones JB.(Methods Enzymol.1996;263:282−96.Purification,isoform characterization,and quantitation of human apolipoprotein A4)により記載されているとおりに、精製ヒトアポA4をヒト血清から得る。
【0042】
ヒトアポA4に対する抗血清をウサギから得る。完全フロイントアジュバント中の精製h−アポA4のエマルションを該動物に皮下注射する。不完全フロイントアジュバント中の精製アポA4のエマルションの後続の注射を行う。
3回目の追加免疫の10日後に抗血清を集める。
【0043】
ELISAサンドイッチ法の実施
96ウェルプレートのウェルをPBS中の4μg/mlのヤギ抗アポA4抗体100μlと共に20℃で4時間インキュベートする。
0.1%のtween 20を含有するPBSで洗浄した後、非特異的結合部位を、0.5%のウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBSバッファーで室温で60分間ブロッキングする。
100μlの血漿サンプル(1/3000〜1/20 000の、0.1% BSAを含有するPBS中の希釈液)を加え、4℃で一晩インキュベートする。洗浄後、100μlのウサギ抗ヒトアポA4ポリクローナル血清抗体(PBS−BSA中で1/5000希釈されたもの)を加え、室温で1時間インキュベートする。洗浄後、100μlの抗ウサギIgG−ペルオキシダーゼ結合体(PIERCE;0.1% BSAを含有するPBS中、1/200)を加え、室温で1時間インキュベートする。洗浄後、O−フェニレンジアミンおよび過酸化水素(これはペルオキシダーゼの基質(Sigma)である)を含有する150μlの溶液を加える。
20分後、反応を停止させるために50μlの3M HSOを加え、492nmの光学濃度を測定する。
【実施例4】
【0044】
肥満およびヒト肝アポA4
過体重患者の肝臓におけるアポA4の発現を分析することにより、肥満に焦点を合わせた研究を行った。この病理はボディ・マス指数(BMI=kg単位の体重/(メートル単位の身長))に相関している。正常な体重負荷はBMI<25に対応する。
実験的に、Asterand,Inc.(TechOne Bldg,Suite 501,440 Burroughs,Detroit MI 48202,US)により提供されるヒト肝臓RNAの集合体を使用して、前記のQPCR技術により、アポリポタンパク質の発現を分析した。
【0045】
結果を表VIIIに示す。アポA4の発現率(%)とボディ・マス指数との間に直接的な正の関係が認められる。
【0046】
これらの結果は、肥満の診断または予後および治療追跡におけるマーカーとしてのアポA4の使用の妥当性を示している。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】


【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
【表7】

【0054】
【表8】

【0055】
【表9】

【0056】
【表10】

【0057】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝細胞もしくは組織または血液およびその誘導体におけるアポA4の発現の測定を含んでなる、肝疾患の診断またはその予後の提供方法。
【請求項2】
・肝細胞もしくは組織またはこれらの細胞および組織の抽出物あるいは血液またはその誘導体を単離し、および
・アポA4の発現を測定する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
肝細胞または組織において発現される、アポA4をコードする遺伝子により転写されたメッセンジャーRNAの量の測定を含むことを特徴とする、請求項1および2のいずれか1項記載の方法。
【請求項4】
転写されたメッセンジャーRNAの量をPCR法により測定することを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
転写されたメッセンジャーRNAの量を定量的PCR法の手段により測定することを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
肝細胞もしくは組織または血液およびその誘導体において発現されたアポA4タンパク質の量の測定を含むことを特徴とする、請求項1および2のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
アポA4の量を、このタンパク質に特異的な少なくとも1つの抗体を使用して測定することを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
特異的抗体がペルオキシダーゼに結合されているか、または放射性同位体で標識されていることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
タンパク質への抗体の結合をELISA技術により測定することを特徴とする、請求項7および8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
肝疾患の予防または治療において使用するための化合物をスクリーニングまたは検出する方法であって、
・該化合物を哺乳動物と接触させ、および
・該哺乳動物の肝由来の細胞において又は血液および血液細胞誘導体においてアポA4の発現を測定する工程を含んでなる方法。
【請求項11】
該哺乳動物の肝細胞もしくは組織または血液およびその誘導体において発現されたアポA4の量の測定を含むことを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
該哺乳動物の肝細胞もしくは組織または血液および血液誘導体において発現されたアポA4をコードする遺伝子により転写されたメッセンジャーRNAの量の測定を含むことを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項13】
該哺乳動物がBalbc ByJ、DIO Balbc ByJ、DIO Balbc AnNまたはDIO C57Bl/6J系統のマウスであることを特徴とする、請求項10から12のいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2009−515514(P2009−515514A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539472(P2008−539472)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002503
【国際公開番号】WO2007/057548
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(504456798)サノフイ−アベンテイス (433)
【Fターム(参考)】