説明

肝細胞癌の罹患リスク判定方法

【課題】肝細胞癌に関連する遺伝子多型を利用した肝細胞癌の罹患リスクや予後を判定するための方法、および肝細胞癌関連遺伝子の発現を制御することによる肝細胞癌を処置するための医薬を提供する。
【解決手段】MutYH関連指標を検出する工程を含む、肝細胞癌の罹患リスクまたは予後を判定する方法、MutYH遺伝子に関連する多型を検出する物質を含む、肝細胞癌の罹患リスクまたは予後を判定するための試薬、同試薬を含む肝細胞癌の罹患リスクまたは予後を判定するためのキット、MutYHタンパク質の産生または機能を制御する剤を含む、肝細胞癌を処置するための組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝細胞癌に関連する遺伝子やその多型を利用した、肝細胞癌の罹患リスクおよび/または予後を判定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肝細胞癌は、肝細胞の癌化により発生する悪性腫瘍であり、原発性肝癌の90%以上を占める。肝細胞癌は、その殆どがウイルス感染に起因する慢性肝炎や慢性肝炎からさらに線維化が進行した肝硬変を背景として発症することが知られており、肝細胞癌患者の中で、C型肝炎ウイルス(HCV)に陽性である人の割合は約70%、B型肝炎ウイルス(HBV)に陽性である人の割合は約20%にのぼる。これらの肝炎ウイルスが肝細胞癌を引き起こす詳細なメカニズムは未だ明らかにされていないが、ウイルスの持続感染が慢性肝炎や肝硬変等を引き起こす過程で、肝細胞癌が発生すると考えられている。
【0003】
肝細胞癌の予後は一般的に不良であり、現在のところ有効な治療法は存在しない。腫瘍が小さく限局していれば、外科的な摘除により術後の長期生存もある程度期待できるが、肝細胞癌は確定診断が難しく、このような早期の段階で発見されることはまれであるため、かなり進行した段階で見つかることが多い。肝細胞癌の早期発見には定期的な検査が不可欠であるが、ウイルス性肝硬変から肝細胞癌が発生する可能性が年率5〜7%程度であることを考えると、ウイルス性肝硬変患者全員に高頻度の検査を要求することは、時間的にも経済的にも難しい。そこで、肝細胞癌の発症の予防や早期発見を効率的に行うために、肝硬変患者、特にウイルス性肝硬変患者の中で、肝細胞癌の罹患リスクが特に高い集団を囲い込もうとする試みがなされている。
【0004】
このような試みの中で特に注目を集めているのが、肝細胞癌に関連する遺伝子の多型である。遺伝子は紫外線、放射線、化学物質等の影響で変異を生じることがあるが、その変異が死や不妊をもたらすものでなければ、ある個体における変異がその子孫に受け継がれることになる。このようにして固定された遺伝子上の変異のうち、その生物種における頻度が1%以上であるものを遺伝学的に多型というが、その変異が遺伝子に何らかの影響をもたらすものである場合には、その遺伝子が関与する疾患の発症率に影響を与える可能性がある。したがって、肝細胞癌と関連性の高い多型を見出すことができれば、ハイリスク集団を囲い込むことができるばかりでなく、関連する遺伝子を突き止め、肝細胞癌の治療薬の開発につなげることが可能となる。また、遺伝子多型の検査は、対象の血液や唾液等の入手が比較的容易な検体で行うことができ、方法も確立されているため、簡便に行うことができるという利点もある。
【0005】
これまでに報告されている肝細胞癌に関連する遺伝子多型としては、例えば、TGFβ1(非特許文献1参照)、IL10(非特許文献2参照)、UGT1A7(非特許文献3参照)、IL1β(非特許文献4参照)等の遺伝子に関するものが挙げられる。しかしながら、肝細胞癌易罹患性に関するマーカーとして満足のいく多型は未だ見つかっておらず、また、肝細胞癌の予防または治療に有効に活用できる遺伝子も同定されていないため、さらなる研究が望まれていた。
【特許文献1】特開平10−57076号公報
【非特許文献1】Kim Y. J. et al., Exp Mol Med. 2003, 35, 196-202
【非特許文献2】Shin H. D. et al., Hum Mol Genet. 2003, 12, 901-6
【非特許文献3】Wang Y. et al., Clin Cancer Res. 2004, 10, 2441-6
【非特許文献4】Hirankarn N. et al., World J Gastroenterol. 2006, 12, 776-9
【非特許文献5】Parker A. R. et al., Carcinogenesis. 2005, 26: 2010-8
【非特許文献6】Kim C. J. et al., Oncogene. 2004, 23: 6820-2
【非特許文献7】Al-Tassan N. et al., Hum Genet. 2004, 114: 207-10
【非特許文献8】Zhang Y. et al., Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2006, 15: 353-8
【非特許文献9】Wang J. et al., Hepatobiliary Pancreat Dis Int. 2005, 4: 398-402
【非特許文献10】Baudhuin L. M. et al., J Cancer Res Clin Oncol. 2006, 132: 159-62
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、肝細胞癌に関連する遺伝子多型を見出し、その多型を利用した肝細胞癌の罹患リスクや予後を判定するための方法、さらには、肝細胞癌関連遺伝子の発現を制御することによる肝細胞癌を処置するための医薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行う中で、C型肝炎に罹患している肝細胞癌罹患者および肝細胞癌非罹患者について遺伝子多型のスクリーニングを行ったところ、MutYH遺伝子における一塩基多型(SNP)が、肝細胞癌非罹患者と比較して肝細胞癌罹患者において有意に高頻度で認められることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、MutYH遺伝子に関連する多型、MutYH遺伝子の発現の異常、MutYHタンパク質の存在量の異常、およびMutYHタンパク質の機能の異常からなる群から選択されるMutYH関連指標を検出する工程を含む、肝細胞癌の罹患リスクまたは予後を判定する方法に関する。
また、本発明は、MutYH関連指標が、MutYH遺伝子に関連する多型である前記方法に関する。
さらに、本発明は、多型が、MutYH遺伝子において、配列番号1で表される塩基配列の8314位に存在する多型、および/またはこれを含むハプロタイプブロックに含まれる多型である前記方法に関する。
【0008】
さらにまた、本発明は、MutYH遺伝子において、配列番号1で表される塩基配列の8314位に存在する塩基種がAである場合に、肝細胞癌の罹患リスクが高いと判定される前記方法に関する。
本発明はまた、MutYH遺伝子において、配列番号1で表される塩基配列の8314位に存在する塩基種がGである場合に、肝細胞癌の罹患リスクが低いと判定される前記方法に関する。
本発明はさらに、肝細胞癌が、C型肝炎ウイルスに起因する肝細胞癌である前記方法に関する。
本発明はさらにまた、MutYH遺伝子に関連する多型を含む15〜1000塩基の連続した塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む、肝細胞癌の罹患リスクを判定するためのマーカーに関する。
また、本発明は、MutYH遺伝子に関連する多型部位にアレル特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド、または、該多型の1塩基上流(5’側)にある塩基を含む該多型の上流配列に配列特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、その一端が前記1塩基上流(5’側)にある塩基にハイブリダイズするもの、または、該多型の1塩基下流(3’側)にある塩基を含む該多型の下流配列に配列特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、その一端が前記1塩基下流(3’側)にある塩基にハイブリダイズするものを含む、肝細胞癌の罹患リスクおよび/または予後を判定するための試薬に関する。
【0009】
さらに、本発明は、a)配列番号2で表される塩基配列を有する核酸または該塩基配列の8314位を含む前記核酸の部分にハイブリダイズし、かつ、配列番号1で表される塩基配列を有する核酸または該塩基配列の8314位を含む前記核酸の部分にハイブリダイズしないポリヌクレオチド、b)配列番号1で表される塩基配列を有する核酸または該塩基配列の8314位を含む前記核酸の部分にハイブリダイズし、かつ、配列番号2で表される塩基配列を有する核酸または該塩基配列の8314位を含む前記核酸の部分にハイブリダイズしないポリヌクレオチド、c)配列番号1で表される塩基配列を有する核酸における、該塩基配列の8313位を含むが8314位を含まない連続部分にハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、その一端が8313位の塩基にハイブリダイズするもの、および、d)配列番号1で表される塩基配列を有する核酸における、該塩基配列の8315位を含むが8314位を含まない連続部分にハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、その一端が8315位の塩基にハイブリダイズするもの、からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含む上記試薬に関する。
さらにまた、本発明は、上記試薬を含む、前記方法を行うためのキットに関する。
本発明はまた、MutYHタンパク質の存在量および/または機能を制御する剤を含む、肝細胞癌を処置するための組成物に関する。
【0010】
MutYHは、損傷した遺伝子の修復に関与することから癌との関連性が検討されていたが(特許文献1参照)、大腸癌(非特許文献5参照)や胃癌(非特許文献6参照)といった一部の癌との関連性を示唆する報告は存在するものの、肺癌(非特許文献7参照)、乳癌(非特許文献8参照)、前立腺癌等との関連性は否定されており、実際の状況は当初の予想とはかけ離れたものであった。肝細胞癌については、肝細胞癌患者の一部でMutYH遺伝子のコード領域に変異が見出されたとの報告(非特許文献9参照)があるものの、同報告では、対照との比較がなされておらず、肝細胞癌との関連性については特に言及されていないうえ、別の報告では、MutYHタンパク質のアミノ酸変異と肝細胞癌との間の関連性は否定されている(非特許文献10参照)。このように、MutYH遺伝子の多型が肝細胞癌と高い関連性を有することは、当業者が予測し得ないものであった。
【発明の効果】
【0011】
本発明の判定方法によって、対象の肝細胞癌の罹患リスクを簡便かつ正確に判定することが可能となる。これにより、肝細胞癌の罹患リスクが高いと判定された対象に対しては、予防策を講じるとともに、管理検診の徹底等により、肝細胞癌を発症した場合でも早期発見を行うことが可能となる。
また、対象が、HCV感染者である場合、また特に、C型肝炎に罹患している場合には、HCVに感染していない場合およびC型肝炎に罹患していない場合と比較して肝細胞癌を発症し得るリスクが高いことから、本発明の判定方法を用いてより正確な判定を行うことが可能である。
さらに、本発明の組成物は、MutYHの産生や機能を制御するという全く新しいアプローチにより、肝細胞癌を処置するものであるため、従来の医薬では達成し得なかった高い予防・治療成績が見込まれるのみならず、従来の医薬との併用による相乗効果も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、MutYH遺伝子に関連する多型、MutYH遺伝子の発現の異常、MutYHタンパク質の存在量の異常、およびMutYHタンパク質の機能の異常からなる群から選択される指標を検出する工程を含む、肝細胞癌の罹患リスクまたは予後を判定する方法に関する。
【0013】
本発明において、MutYH遺伝子とは、DNA修復酵素の1つであるMutYH(MutYホモログ)をコードする遺伝子であり、典型的には、ヒト第1染色体1p34.3〜32.1に存在する、配列番号1で表される塩基配列を有するヒトMutYHを指す。MutYHは、大腸菌で発見されたDNA修復酵素MutYのホモログであり、マウス、ネズミ等の齧歯類や、チンパンジー、アカゲザル等の霊長類、ウシ等を始めとする多くの生物種で保存されていることが確認されている。これらの生物種におけるMutYH遺伝子の位置や配列は、NCBI等の公共データベースで検索することができる。例えば、ヒト、マウス、ラット、チンパンジー、アカゲザルおよびウシのNCBIデータベースにおけるGeneIDは、それぞれ4595、70603、170841、456539、705651および513051である。しかしながら、本発明におけるMutYH遺伝子の配列は、配列番号1で表される配列や、上記のようなデータベースに登録された配列と厳密に一致する必要はなく、染色体上で同様の位置を占めていれば、1個または2個以上の塩基の不一致を含んでいてもよい。上記MutYH遺伝子は、MutYHタンパク質をコードするコード領域(エクソン)の他、5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、イントロン等を含む。
【0014】
本発明における多型には、遺伝学的な意味の多型、すなわち、遺伝子上の集団中1%以上の頻度で存在する特定の塩基の変化のみならず、これ以外の任意の塩基の変化も含まれる。本発明における多型の種類としては、例えば、VNTR多型、STRP多型、一塩基多型(以下、「SNP」とも称する)や、1〜数十塩基(時には数千塩基)が欠失、置換もしくは付加している多型等も含まれる。さらに、検出の対象となる多型の数も、1個に限定されず、2個以上であってもよい。
また、本発明における多型は、MutYHタンパク質のアミノ酸変異を生じさせる変異、MutYH遺伝子の発現量を変化させる変異、MutYH遺伝子のmRNAの安定性等の性質を変化させる変異、MutYH遺伝子によってコードされるタンパク質の有する活性を変化させるような変異等、種々の性質の変異を含む。本発明における多型の具体的態様としては、例えば、塩基の付加、欠失、置換、挿入等を挙げることができる。
【0015】
本発明における多型は、MutYH遺伝子のエクソン領域ばかりでなく、5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、イントロン領域を含む任意の領域に存在していてもよい。かかる多型の例としては、公共のSNPデータベースに登録されているMutYH遺伝子上の多型、例えば、配列番号1で表される塩基配列の、437位、555位、669位、816位、860位、989位、1032位、1053位、1303位、1456位、1699位、1808位、1823位、1825位、2436位、2445位、2446位、2453位、2540位、2780位、2819位、2922位、2923位、3329位、3456位、3752位、4199位、4547位、4684位、4726位、4888位、4939位、5494位、5612位、5646位、5671位、6596位、6713位、6836位、6957位、7743位、8314位、8394位、8613位、8739位、9128位、9339位、9364位、9468位、9614位、9641位、10021位、10243位、10515位、10600位、10671位、10754位、10945位、11161位、11324位、11799位、11826位、11842位および12443位に存在する多型(それぞれ登録番号rs3219463、rs3219464、rs3219465、rs3219466、rs28372898、rs2275602、rs17838009、rs3219467、rs3219468、rs3219469、rs3219470、rs1140199、rs6696152、rs1140200、rs10548651、rs35518179、rs10638672、rs11403361、rs34686049、rs3219471、rs3219472、rs35804643、rs3219473、rs7522089、rs3219474、rs3219475、rs3219476、rs3219477、rs3219478、rs3219479、rs3219480、rs28871870、rs7550250、rs3219481、rs3219482、rs3219483、rs35203418、rs3219484、rs3219485、rs3219486、rs1140507、rs3219487、rs34612342、rs11545695、rs34126013、rs11211096、rs3219488、rs3219489、rs35352891、rs3219490、rs36053993、rs4660848、rs3219491、rs3219492、rs3219493、rs3219494、rs3219495、rs34168747、rs10527342、rs10890325、rs34961970、rs3219496、rs3219497およびrs3216024の多型に相当)が含まれる。
【0016】
本発明の判定方法の一態様において、多型はイントロンに存在する。かかる多型の例としては、rs2275602、rs3219467〜83、rs3219485〜8、rs3219490〜3およびrs3219495等が挙げられる。本発明における好ましい多型は、MutYH遺伝子において、配列番号1で表される塩基配列の8314位に存在する多型(rs3219487)である。
また、本発明の判定方法の一態様において、多型は、マイナーアレル頻度が1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上または12%以上のものである。マイナーアレル頻度は、NCBIなどの公共のデータベースに掲載されている。
遺伝子の多型は、生物個体が特定の形質、例えば、易罹患性を有するか否かを追跡するのに用いる遺伝子の目印ということができるが、ある多型の組み合わせ(ハプロタイプ)が、他の組み合わせよりも高頻度で生じることがある。これを連鎖不平衡といい、この連鎖不平衡が見られる染色体上の範囲をハプロタイプブロックと呼ぶ。このことは、例えば、ある疾患と関連づけられた多型と同じハプロタイプブロックに含まれる多型も、その疾患と関連性を有する可能性が高いことを意味する。したがって、本発明の判定方法においては、MutYH遺伝子上の多型のみならず、これらの多型と同じハプロタイプブロックに含まれる任意の多型も、肝細胞癌への易罹患性等を判定する指標として用いることができる。
【0017】
ハプロタイプブロックは、多様性ベースの(diversity based)アルゴリズム、LD(連鎖不平衡)ベースのアルゴリズム、情報理論アルゴリズム等を含む種々のアルゴリズムにより決定することができ(Indap A.R. et al., BMC Bioinformatics. 2005,6:303参照)、これらに基づいたハプロタイプブロック解析用のソフトウェアも複数存在する。かかるソフトウェアの例としては、限定されることなく、SNPbrowser(登録商標)、HapBlock、MDBlocks、Haploview、HaploBlockFinder、LDMAP、HaploBlockなどが挙げられ、その多くは無料で利用できる。また、ハプロタイプブロックの解析には、患者対照研究などで収集した遺伝子多型データはもちろんのこと、既存の遺伝子多型データベース、例えば、HapMap(www.hapmap.org参照)や、Applied Biosystems LD Map database等を利用することができる。
【0018】
したがって、本発明の判定方法におけるハプロタイプブロックは、上記の任意の手法によって同定されたハプロタイプブロックのうち、MutYH遺伝子上の任意の多型を含むものであることができる。典型例としては、例えば、rs3219487を含む、rs3219489〜rs1007860にわたるものが挙げられるが、これは、SNPbrowser(登録商標)をデフォルト条件で用いてHapMapデータベースの日本人(JPT)のデータを解析して得られたものである。したがって、上記ハプロタイプブロックに含まれる任意の多型、例えば、rs3219485、rs3219484、rs3219476、rs3219474、rs3219472、rs3219463、rs3811432、 rs9429157、rs9429072、rs2298018、rs2153608、rs2153609、rs2185549、rs4660849、rs11586695、rs9429158、rs7519633、rs9429160、rs9326141、rs12138495、rs2050884、rs4520450、rs6700975、rs7543428、rs6659464、rs884962、rs11211101、rs11800673、rs12025302、rs1417578、rs6670763、rs4660854、rs2487442、rs2487443、rs12567250、rs7532762、rs781226、rs781228、rs6657284、rs11808204、rs781229、rs1826691、rs1771551、rs13375430、rs7536005、rs3790582、rs12061890、rs12139364、rs7531253、rs12046816、rs12080394、rs1771549、rs1691219、rs1691217、rs11579411、rs10493120、rs11211110、rs6661693、rs1006215、rs1006216、rs1007860等を、本発明の判定方法におけるMutYH遺伝子に関連する多型として用いることができる。
【0019】
検体に含まれる遺伝子は、減数分裂を経た生殖細胞等一部の例外を除き、通常は両親から受け継いだ2種類の型を含むため、多型にも、同一の2つのアレルからなる遺伝子型(ホモ型)や、異なる2種類のアレルからなる遺伝子型(ヘテロ型)が存在する。したがって、多型は、遺伝子上の位置だけでなく、それがホモ型なのかヘテロ型なのかという観点から区別することもでき、それによって、肝細胞癌との関連性も変化し得る。ホモ型の多型は、タンパク質の表現型の変化を伴う場合が多いため、一般的に疾患との関連性が高いとされているが、ヘテロ型の多型も疾患関連SNPとして有用であるケースもある。配列番号1で表される塩基配列の8314位に存在する上記多型は、ヘテロ型であっても肝細胞癌の罹患リスクと高い関連性を有する。
【0020】
上記のとおり、検体に含まれるMutYH遺伝子の塩基配列は、データベースに登録されたものと相違することもあり得るため、前記多型の実際の位置は上記のものと異なる可能性があるが、上記多型の前後配列に基づく相同性検索等により、その検体における対応する位置を適宜見出すことができる。例えば、配列番号1で表される塩基配列の8314位に存在する多型は、その上流(5’側)および下流(3’側)の連続する塩基、例えば、15〜20個またはこれより多い数の連続した塩基に挟まれる塩基として同定することもできる。
また、ゲノムDNAは、通常、互いに相補的な二本鎖構造を有しているため、本明細書においては、便宜的に一方の鎖におけるDNA配列を示した場合であっても、当然のことながら、当該配列に相補的な配列も開示したものと解釈される。したがって、一方のDNA配列が記載されていれば、その配列に相補的な配列は自明である。
【0021】
本発明の判定方法において、MutYH遺伝子の発現の異常とは、MutYH遺伝子の転写、翻訳、翻訳後修飾等の遺伝子発現に関わる諸過程の少なくとも1つが、正常なMutYH遺伝子を有する個体に比べて抑制、または増強されていることをいい、MutYHタンパク質の存在量の異常とは、対象におけるMutYHタンパク質の存在量が、正常対象、すなわち肝細胞癌の罹患リスクの低いおよび/または予後が良好な対象と比べて有意に異なることをいう。また、MutYHタンパク質の機能の異常とは、対象におけるMutYHタンパク質の活性等が、正常対象、すなわち肝細胞癌の罹患リスクの低いおよび/または予後が良好な対象と比べて有意に異なることをいう。
本発明において、肝細胞癌とは、肝細胞の癌化による任意の癌を指し、限定されることなく、C型肝炎ウイルスに起因する肝細胞癌、B型肝炎ウイルスに起因する肝細胞癌、もしくはC型肝炎ウイルスおよびB型肝炎ウイルスの両者に起因する肝細胞癌、あるいはアルコール性肝硬変に起因する肝細胞癌等を含む。本発明の一態様において、肝細胞癌はC型肝炎ウイルスに起因する肝細胞癌である。
【0022】
本発明の判定方法において、判定される対象は任意の生物個体であってもよいが、好ましくは動物、さらに好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトの個体である。本発明において、対象は健常であっても、何らかの疾患に罹患していてもよいものとする。本発明の判定方法の一態様において、対象はC型肝炎ウイルスに感染しており、また別の態様において、対象はC型肝炎に罹患している。対象がヒトの個体である場合、人種は特に限定されず、白人(コーカソイド)、黄色人(モンゴロイド)、黒人(ネグロイド)、南人(オーストラロイド)等のいずれであってもよい。本発明の一態様において、対象の人種はモンゴロイドであり、典型的には日本人である。
【0023】
本発明の判定方法に用いる検体は、多型や遺伝子発現異常の検出については、対象のDNAおよび/またはRNA、好ましくはDNAを含むものであれば特に限定されないが、例えば、血液、唾液、口腔粘膜、毛髪、体毛、皮膚片、糞便、尿、爪、手術やバイオプシー等により採取した種々の細胞、体液、臓器等を含む。検体は、そのまま多型の検出に供してもよいが、事前にDNAおよび/またはRNAを抽出・精製することが好ましい。DNAやRNAの抽出法は当該技術分野で周知であるが、DNAの抽出であれば、例えば、プロテイナーゼK/フェノール抽出法、プロテイナーゼK/フェノール/クロロホルム抽出法、アルカリ溶解法、ボイリング法等の手法を、RNAの抽出であれば、例えば、グアニジン・酸性フェノール(AGPC)法、SDS−フェノール法等の手法をそれぞれ用いることができる。DNAおよび/またはRNAを、多型に検出に先立ち増幅してもよい。増幅には、PCR法を始めとする任意の既知の方法を用いることができ、典型的には、上記多型を含む核酸分子の部分を、適切なプライマーを用いて特異的に増幅する。DNAやRNAを増幅しておくことにより、検出操作が容易になる。
【0024】
MutYHタンパク質の存在量の異常やMutYHタンパク質の機能の異常を検出するための検体は、対象のMutYHタンパク質、特に対象の生細胞を含むものであれば特に限定されないが、例えば、血液、粘膜擦過物、手術やバイオプシー等により採取した種々の細胞、臓器等を含む。検体は、そのまま検出操作に供してもよいが、例えば細胞を超音波処理等により破砕し、その遠心上清から細胞抽出液を調製するなどしてMutYHタンパク質を分離しておくと、検出操作が容易になる。また、MutYHタンパク質は、通常の条件下では数分で酵素活性を失うため、検体は、−70℃以下の低温に保管するとともに、希釈の際には、REC(登録商標)バッファー(10mM HEPES−KOH、pH7.4、100mM KCl、10mM EDTA、10%グリセロール)等の媒体を用いることが好ましい。
【0025】
本発明の判定方法では、検出された指標に基づいて肝細胞癌の罹患リスクおよび/または予後を判定する。すなわち、肝細胞癌の罹患および/または不良な予後と関連性の高い指標が検出された場合に易罹患性および/または予後不良と判定され、肝細胞癌の非罹患および/または良好な予後と関連性の高い指標が検出された場合に難罹患性および/または予後良好と判定される。ここで、肝細胞癌の罹患および/もしくは不良な予後または肝細胞癌の非罹患および/もしくは良好な予後と関連性の高い指標とは、例えば、患者対照研究において、これらの事象と統計学的に有意な関連性、および/または統計学的に有意なオッズ比が認められた指標を含む。統計学的に有意な関連性を有するとは、例えば、カイ2乗(χ)検定において危険率が10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは3%未満、さらに好ましくは1%未満であること、すなわち、p値が0.1未満、好ましくは0.05未満、より好ましくは0.03未満、さらに好ましくは0.01未満であることをいい、統計学的に有意なオッズ比とは、90%、好ましくは95%、より好ましくは97%、さらに好ましくは99%信頼区間が1を含まない場合において、この信頼区間に含まれるオッズ比のことをいう。
【0026】
具体的には、例えば、配列番号1で表される塩基配列の8314位に存在する塩基種がAである場合に、肝細胞癌に易罹患性である、すなわち罹患リスクが高いと判定され、Gである場合に、肝細胞癌に難罹患性である、すなわち罹患リスクが低いと判定される。また、例えば、配列番号1で表される塩基配列の8314位に存在する塩基の遺伝子型が、A/Aのホモ型またはA/Gのヘテロ型である場合に、肝細胞癌の罹患リスクが高いと判定され、G/Gのホモ型である場合に、肝細胞癌の罹患リスクが低いと判定される。上記以外の多型のアレルおよび/または遺伝子型と、肝細胞癌の罹患リスクおよび/または予後との対応関係は、例えば、肝細胞癌罹患者と非罹患者、および/または予後良好な肝細胞癌患者と予後不良な肝細胞癌患者とを比較する患者対照研究等において、上記の統計学的関連性を検討することにより、容易に調査することができ、かかる調査により得られた結果を利用して、肝細胞癌の罹患リスクおよび/または予後を判定することも、本発明の判定方法に含まれる。
【0027】
本発明の判定方法によれば、例えば、C型肝炎ウイルスに感染していない対象が肝細胞癌に罹患するリスクを判定することも可能であるが、C型肝炎ウイルスに感染していない対象がC型肝炎ウイルスに感染した場合に肝細胞癌に罹患するリスクが高いか低いかを判定することもできる。また、対象が既にC型肝炎ウイルスに感染しているか、またはC型肝炎に罹患している場合には、同対象がその後肝細胞癌を発症する可能性が高いか低いかを判定することができ、治療方針の決定等に利用することができる。
肝細胞癌に罹患するリスクは、現在は肝細胞癌に罹患していないが、対象の現在の健康状態が将来にわたって維持された場合に、該対象が肝細胞癌に罹患するリスクが、より良好な健康状態にある場合と比べて統計学的に高いかあるいは低いかということに基づいて判断することもでき、したがって、C型肝炎ウイルスもしくはB型肝炎ウイルスに感染している対象は、これらに感染していない対象より肝細胞癌に罹患するリスクが高く、C型肝炎もしくはB型肝炎に罹患している対象は、これらに罹患していない対象よりも肝細胞癌に罹患するリスクは高くなることを考慮して、本発明の判定方法によりMutYH遺伝子に関連する多型の有無を検出した検査の結果と合わせて肝細胞癌に罹患するリスクを判定することが可能である。
【0028】
本発明の判定方法において、多型の検出は、限定されずに、ダイレクトシークエンス法、TaqMan(登録商標)PCR法、インベーダー法、制限酵素断片長多型(RFLP)法、PCR−SSCP法、アレル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)法、ARMS法、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)法、RNase、S1ヌクレアーゼ、MutY、MutS等の酵素による検出法、ピペリジン等の化学物質によるミスマッチの切断を利用するCCM(chemical cleavage of mismach)法、DOL法、MALDI−TOF/MS法、TDI法、パドロックプローブ法、分子ビーコン法、DASH(dynamic allele specific hybridization)法、UCAN法、DNAチップ/DNAマイクロアレイ法、ECA法、PINPOINT法、PROBE(primer oligo base extension)法、VSET(very short extension)法、Survivor assay、Sniper assay、Luminex assay、GOOD法、LCx法、SNaPshot法、Mass ARRAY法、パイロシークエンス法、SNP−IT法、融解曲線分析法等の種々の方法で行うことができる。かかる方法はいずれも当業者に既知であり、具体的な手順や試薬等についても多くの文献に記載されているため、当業者であれば、本明細書中に詳細な記載がなくとも、本発明の多型の位置や前後の塩基配列に基づいて適宜これらの方法を用いて多型を検出することが可能である。また、本発明の多型は、所定の多型を検出し得る上記以外の任意の方法で検出してもよく、かかる方法には既知のものはもちろん、現在は存在しないが、今後開発されるものも含まれる。以下に、上記の方法のうち、本発明の判定方法において好ましいものをいくつか概説する。
【0029】
ダイレクトシークエンス法は、検体遺伝子の塩基配列を決定することにより、多型を検出する方法である。塩基配列の決定には、限定されることなく、ジデオキシ法、ダイターミネーター法、ダイプライマー法、サイクルシークエンス法、マクサム・ギルバート法等の任意の方法を用いることができる。検体遺伝子は、配列決定の前にPCR法等の任意の方法で増幅しておいてもよく、また、必要に応じて2本鎖DNAを1本鎖にしておいてもよい。ダイレクトシークエンス法は、任意の既存のシークエンサーを用いて自動的に行うことができるため、非常に簡便である。
TaqMan(登録商標)PCR法は、検体核酸にハイブリダイズさせた、消光物質(クエンチャー)と蛍光色素(レポーター)とで修飾された検出部位に特異的なプローブ(TaqMan(登録商標)プローブ)が、PCR反応における、核酸ポリメラーゼによる伸長反応に伴い分解される過程で蛍光を生じる反応を利用した方法である。プローブと検出部位との間にミスマッチがない場合には、上記の蛍光が検出されるが、ミスマッチがある場合には、伸長反応が進行せず、蛍光は検出されない。したがって、検出したいアレルに特異的なプローブを用いることにより、当該アレルを有する核酸が存在する時に蛍光が検出される。
【0030】
この方法は、異なるラベルを有する複数のプローブを用いることにより多重化(マルチプレックス化)が可能な点で特に有利である。例えば、メジャーアレルとマイナーアレルをそれぞれ別々のラベルで標識することにより、検体の多型がホモ型なのか、またはヘテロ型なのかを同時に判定することが可能となる。すなわち、メジャーアレルまたはマイナーアレルのラベルのみが検出された場合はメジャーアレルまたはマイナーアレルのホモ、そして、メジャーアレルとマイナーアレルの両方が検出された場合はメジャーアレルとマイナーアレルのヘテロということになる。使用できる蛍光色素は、測定機器で検出できるものであれば特に限定されないが、例えば、FAM、TET、JOE、VIC、Cy3、Cy5等の既知の任意のものを用いることができる。また、消光剤としては、TAMRA、DABCYL、BHQ−1、BHQ−2、BHQ−3等の既知の任意のものを用いることができる。TaqMan(登録商標)PCR法に用いる試薬やプロトコル集はRoche Molecular Systems, Inc.等から入手可能であり、プローブの設計や合成を行うサービスも存在する(例えば、Custom TaqMan(登録商標)Genomic Assays サービス、アプライドバイオシステムズ)。
【0031】
本発明の判定方法において、MutYH遺伝子の発現の異常は、例えば、ノーザンブロッティング法、サザンブロッティング法、RNaseプロテクションアッセイ、RT−PCR、リアルタイムPCR等のPCR法、in situハイブリダイゼーション法、in vitro転写法等の任意の公知の遺伝子発現解析法を用いて検出することができる。また、MutYHタンパク質の存在量の異常は、免疫沈降法、ウェスタンブロッティング法、EIA、ELISA、RIA、免役組織化学法、免疫細胞化学法等の任意の公知のタンパク質検出法を用いて検出することができる。さらに、MutYHタンパク質の機能の異常は、例えば、アデニンDNAグリコシラーゼ活性を評価すること等により検出することができる。具体的には、例えば、A/Gミスマッチを有するオリゴヌクレオチド(例えば、A/GO Mismatch Mesophilic Oligonucleotide Set、R&D社、Cat # 3800-100-A)に被験タンパク質を作用させ、アデニンDNAグリコシラーゼ活性を、正常なMutYHタンパク質と比較することにより、かかる異常を検出する。
【0032】
肝細胞癌の発症や進行には複数の要因が関与していると考えられることから、本発明の判定方法においては、上記のMutYH関連指標と、肝細胞癌の発症や進行に関連する他の指標とを組み合わせて、肝細胞癌の罹患リスクや予後を判定することができる。こうすることにより、判定の精度をさらに高めることが可能となる。肝細胞癌の発症や進行に関連する他の指標としては、当該技術分野において知られている任意の公知のものを利用することができ、例えば、限定されることなく、AFP、PIVKA−II等の肝細胞癌マーカーや、TGFβ1、IL10、UGT1A7、IL1β等の遺伝子における多型等が挙げられる。
【0033】
本発明はまた、MutYH遺伝子に関連する多型を含む、MutYH遺伝子上の15〜1000塩基、好ましくは18〜500塩基、より好ましくは20〜300塩基の連続した塩基配列からなるポリヌクレオチドまたはその相補鎖を含む、肝細胞癌の罹患リスクを判定するためのマーカーに関する。該多型は、MutYH遺伝子に関連する任意の多型を含むが、好ましくは配列番号1で表される塩基配列の8314番目に存在する多型もしくはこれと同じハプロタイプブロックに含まれる多型、またはMutYH遺伝子における任意の多型、より好ましくは配列番号1の8314番目に存在する多型である。上記マーカーは肝細胞癌の罹患と高い関連性を有するため、これを、対象の体内において、または対象から採取した検体において検出することにより、対象の肝細胞癌への罹患リスクを判定することができる。当該マーカーの検出には、多型を検出するための上記の任意の方法を用いることができる。
【0034】
本発明はまた、MutYH遺伝子に関連する多型部位にアレル特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド、または、該多型の1塩基下流(3’側)にある塩基を含む該多型の下流配列に配列特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、その一端が前記1塩基下流(3’側)にある塩基にハイブリダイズするもの、または、該多型の1塩基上流(5’側)にある塩基を含む該多型の上流配列に配列特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、その一端が前記1塩基上流(5’側)にある塩基にハイブリダイズするものを含む、肝細胞癌の罹患リスクおよび/または予後を判定するための試薬に関する。
ここで、MutYH遺伝子に関連する多型部位とは、対象となる多型を有するMutYH遺伝子全体、または、該多型を含む任意の長さのMutYH遺伝子の部分を指す。前記部分は、特異的なハイブリダイゼーションを生じさせ得るものが好ましく、例えば、15〜1000塩基長、好ましくは18〜500塩基長、より好ましくは20〜300塩基長を有する。
【0035】
アレル特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドとは、対象となる多型の特定のアレルを有するMutYH遺伝子またはその部分にはハイブリダイズするが、それ以外のアレルを有するMutYH遺伝子またはその部分にはハイブリダイズしないポリヌクレオチドをいう。具体的には、例えば、多型が配列番号1で表される塩基配列の8314位に存在する多型である場合、8314位の塩基種がAであるMutYH遺伝子またはその部分にはハイブリダイズするが、8314位の塩基種がA以外、特にGであるMutYH遺伝子またはその部分にはハイブリダイズしないポリヌクレオチドを意味する。かかるポリヌクレオチドは、例えば、TaqMan(登録商標)PCR法、インベーダー法、アレル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)法等のアレル特異的プローブを利用した検出法に、アレル特異的プローブとして使用することができる。
【0036】
MutYH遺伝子に関連する多型の1塩基下流(3’側)にある塩基を含む該多型の下流配列に配列特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、その一端が前記1塩基下流(3’側)にある塩基にハイブリダイズするものとは、多型が配列番号1で表される塩基配列の8314位に存在する多型である場合には、該塩基配列の8315位を含むが8314位を含まない連続部分にハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、その一端が8315位の塩基にハイブリダイズするもの、例えば、3’末端がtatctccの塩基配列を有するポリヌクレオチドである。また、MutYH遺伝子に関連する多型の1塩基上流(5’側)にある塩基を含む該多型の上流配列に配列特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、その一端が前記1塩基上流(5’側)にある塩基にハイブリダイズするものとは、多型が配列番号1で表される塩基配列の8314位に存在する多型である場合には、該塩基配列の8313位を含むが8314位を含まない連続部分にハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、その一端が8313位の塩基にハイブリダイズするもの、例えば、5’末端がtatccttgの塩基配列を有するポリヌクレオチドである。なお、配列番号1で表される塩基配列は、MutYH遺伝子のセンス鎖であるため、その相補鎖に対しては、例えば、3’末端がataggaacであるもの、または、5’末端がatagaggであるものが挙げられる。かかるポリヌクレオチドは、例えば、PINPOINT法、PROBE法、VSET法、Survivor assay等のプライマー伸長法を利用する検出法のプライマーとして使用することができる。
【0037】
本発明の試薬の一態様は、a)配列番号2で表される塩基配列を有する核酸または該塩基配列の8314位を含む前記核酸の部分にハイブリダイズし、かつ、配列番号1で表される塩基配列を有する核酸または該塩基配列の8314位を含む前記核酸の部分にハイブリダイズしないポリヌクレオチド、b)配列番号1で表される塩基配列を有する核酸または該塩基配列の8314位を含む前記核酸の部分にハイブリダイズし、かつ、配列番号2で表される塩基配列を有する核酸または該塩基配列の8314位を含む前記核酸の部分にハイブリダイズしないポリヌクレオチド、c)配列番号1で表される塩基配列を有する核酸における、該塩基配列の8313位を含むが8314位を含まない連続部分にハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、その一端が8313位の塩基にハイブリダイズするもの、および、d)配列番号1で表される塩基配列を有する核酸における、該塩基配列の8315位を含むが8314位を含まない連続部分にハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、その一端が8315位の塩基にハイブリダイズするもの、からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含む。
ここで、「核酸の部分」とは、特異的なハイブリダイゼーションを生じさせ得る任意の塩基長を有する部分を指し、例えば、15〜1000塩基長、好ましくは18〜500塩基長、より好ましくは20〜300塩基長を有する部分である。
【0038】
上記ポリヌクレオチドの種類や長さは、配列番号1の8314番目に存在する多型またはこれと同じハプロタイプブロックに含まれる多型と特異的にハイブリダイズできるものであれば特に限定されず、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、PNA等の種々の高分子を含み、15〜1000塩基長、好ましくは18〜500塩基長、より好ましくは20〜300塩基長であってもよい。ハイブリダイゼーションの条件も、ポリヌクレオチドが上記多型に特異的にハイブリダイズするものであれば特に限定されない。多型がSNPである場合、アレル間の配列の差異が小さいため、ハイブリダイゼーション温度はTm(融解温度)付近に設定すると多型を検出しやすい。このような特性を有するポリヌクレオチドの設計は当業者に周知であり、また、種々の受託サービスを利用することもできる。かかるポリヌクレオチドは、検出方法に応じて、多型を検出するためのプローブや、多型を含むもしくは含まない配列を特異的に増幅するためのプライマーの形態を取ることができる。
【0039】
上記ポリヌクレオチドには、検出を容易にするために種々の標識を付すことができる。標識は、当業者に公知な任意のもの、例えば、任意の放射性同位体、標識化物質に結合する物質(例えば、抗体、ビオチン等)、蛍光物質、フルオロフォア、化学発光物質、および酵素等から選択することができる。また、標識は、これを隠蔽する物質、例えば蛍光物質を遮蔽する消光剤(クエンチャー)と組み合わせて設けることもできる。上記ポリヌクレオチドは、塩基配列さえ決定されれば、定法により化学的に合成することができる。
【0040】
本発明の試薬は、上記ポリヌクレオチド自体のほか、上記ポリヌクレオチドに適した種々のバッファーや培地等の媒体を含んでいてもよく、この場合、ポリヌクレオチドは該媒体中に存在していてもよい。また、本試薬は、チューブ、アンプル、バイアル、ボトルといった種々の容器に充填した状態で保存、運搬してもよい。試薬が蛍光物質等、光感受性を有する物質を含む場合は、遮光された容器を使用するのが好ましい。また、本発明の試薬は、ガラス板、ナイロン膜、マイクロビーズ、シリコンチップ、キャピラリー等の固相に固定されていてもよい。このような固相化試薬は、DNAチップ法等の検出方法に用いることができる。
このほか、本発明の試薬には、MutYH遺伝子の特定の多型を検出するためにカスタマイズされた、上記以外の任意の物質も含まれる。
【0041】
本発明はまた、上記試薬を含む、肝細胞癌の罹患リスクおよび/または予後を判定するためのキットに関する。本キットは、上記試薬のほか、所望の多型を含むDNAおよび/またはRNAの部分を増幅するためのプライマー、種々のバッファー、希釈液、発色剤、標準物質、対照物質等、多型を検出するために必要な任意の物質を含むことができる。また、本キットは、本発明の判定方法を行うための手順を記載した説明書を含んでいてもよい。
【0042】
本発明はまた、MutYHタンパク質の存在量および/または機能を制御する剤を含む、肝細胞癌を処置するための組成物に関する。
ここで、MutYHタンパク質の存在量を制御する剤とは、MutYHタンパク質の存在量、好ましくは肝臓における存在量、より好ましくは肝細胞における存在量を増加、減少もしくは安定化させる任意の剤を指し、限定されずに、例えば、MutYHタンパク質自体もしくはこれを体内で放出する剤、細胞によるMutYHタンパク質産生を促進もしくは抑制する剤、MutYHタンパク質の分解を抑制もしくは促進する剤等を含む。本発明においては、これらのうち、外因性のMutYHタンパク質、細胞によるMutYHタンパク質産生を促進する剤、および/またはMutYHタンパク質の分解を抑制する剤等、MutYHタンパク質の存在量を増加させる剤が好ましい。
【0043】
MutYHタンパク質自体とは、例えば、GenBankアクセッション番号AAM78555、AAH03178、CAI21720、CAI21718、CAI21714、CAI21713、CAI21719、CAI21717、CAI21716、Q9UIF7(ヒト)、AAI28729、NP_579850、Q8R5G2(ラット)、AAH57942 、CAM13543 、NP_573513、Q99P21(マウス)、AAI05491、NP_001039600(ウシ)として登録されているもののほか、これらと同等の機能、すなわち、アデニンDNAグリコシラーゼ活性を有する機能的同等物をさす。かかる機能的同等物としては、前記登録されたMutYHタンパク質に対し1個または2個以上、好ましくは1個または数個のアミノ酸の相違を含むタンパク質が挙げられる。同等の機能を有するか否かは、例えば、A/Gミスマッチを有するオリゴヌクレオチド(例えば、A/GO Mismatch Mesophilic Oligonucleotide Set、R&D社、Cat # 3800-100-A)に被験タンパク質を作用させて、当該オリゴヌクレオチドが切断されたかどうかを検出すること等により容易に確認できる。MutYHタンパク質は、典型的には、同タンパク質をコードする遺伝子を、定法に従い大腸菌等の細菌において発現させ、培養物から該タンパク質を精製することにより得ることができる。MutYHタンパク質をコードする核酸配列は、例えば、GenBankアクセッション番号AF527839、BC003178(ヒト)、BC128728、NM_133316(ラット)、BC057942 、NM_133250(マウス)、BC105490、NM_001046135(ウシ)として登録されている。
【0044】
MutYHタンパク質を体内で放出する剤とは、上記のMutYHタンパク質もしくはその機能的同等物を対象の体内で放出することができる任意の剤を指し、例えば、MutYHタンパク質を持続的に、かつ/もしくは制御された様式で放出する製剤や、MutYHタンパク質を産生・分泌する細胞、化学反応によりMutYHタンパク質へ変換される物質等が含まれる。MutYHタンパク質を産生・分泌する細胞としては、細菌細胞からヒト細胞に至るあらゆる細胞がかかる能力を有するため、これらの任意の細胞を用いてもよいが、好ましくは、MutYHタンパク質産生能の高い細胞、例えば、MutYHタンパク質産生能の高い細菌株の細胞、MutYHタンパク質産生能が高まるように改変された細胞等が挙げられる。ある細胞を、特定のタンパク質の産生が増大するように改変する手法は周知であり、例えば、細胞に、発現を増強するプロモーターと作動可能に連結したMutYHタンパク質遺伝子を導入すること等が挙げられる。また、拒絶反応等の生体への悪影響の少ない自己由来の細胞が好ましく、肝機能を同時に補える自己肝細胞が特に好ましい。好ましい細胞の別の例としては、増殖や生死が制御可能な細胞が挙げられる。特定の化学物質に対する感受性を付与する遺伝子を導入すること等により細胞の増殖や生死を制御する方法は当該技術分野において周知である。したがって、MutYHタンパク質を体内で放出する剤としてとりわけ好ましい細胞は、MutYHタンパク質産生能の高い、増殖や生死が制御可能な自己肝細胞である。
【0045】
細胞によるMutYHタンパク質産生を促進する剤としては、限定されずに、例えば、MutYH遺伝子自体、該遺伝子を含むベクター、細胞によるMutYHタンパク質の産生を刺激する剤、細胞中のMutYHタンパク質のプロモーターを活性化する剤等が挙げられる。
MutYH遺伝子は、染色体上の全長MutYH遺伝子のほか、MutYHタンパク質のコード領域を含む任意の核酸を包含し、限定されずに、例えば、(1)配列番号1で表される塩基配列、またはGenBankアクセッション番号AF527839、BC003178、BC128728、NM_133316、BC057942 、NM_133250、BC105490もしくはNM_001046135として登録されている配列を含む核酸、(2)遺伝子コードの縮重により前記(1)の核酸と同一のポリペプチドをコードする核酸、(3)前記(1)または(2)の核酸の配列に1個または2個以上、好ましくは1個または数個の変異を有するが、なお該核酸がコードするポリペプチドと同等の機能を有するポリペプチドをコードする核酸、および、(4)前記(1)〜(3)のいずれかの核酸の相補鎖、またはその断片にストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、該核酸がコードするポリペプチドと同等の機能を有するポリペプチドをコードする核酸等を含む。かかるMutYH遺伝子は、裸の核酸として宿主細胞のゲノムに組み込まれ、細胞によるMutYHタンパク質産生を促進し得る。
【0046】
本明細書で用いる「ストリンジェントな条件」という用語は、当該技術分野において周知のパラメータであり、標準的なプロトコル集、例えばSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Press (2001)や、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates (1992)等に記載されている。
本発明におけるストリンジェントな条件は、例えば、65℃での、3.5×SSC(0.15M塩化ナトリウム/0.15Mクエン酸ナトリウム、pH7)、フィコール0.02%、ポリビニルピロリドン0.02%、ウシ血清アルブミン0.02%、NaHPO25mM(pH7)、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)0.05%、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)2mMからなるハイブリダイゼーションバッファーによるハイブリダイゼーションを指す。ハイブリダイゼーション後、DNAが移された膜は、2×SSCにて室温において、次いで0.1〜0.5×SSC/0.1×SDSにて68℃までの温度において洗浄する。あるいは、ストリンジェントなハイブリダイゼーションは、ExpressHyb(登録商標)Hybridization Solution(Clontech社製)等の市販のハイブリダイゼーションバッファーを用いて、製造者によって記載されたハイブリダイゼーションおよび洗浄条件で行ってもよい。
同程度のストリンジェンシーを生じる結果となる使用可能な他の条件、試薬等が存在するが、当業者はかかる条件に通じていると思われるため、これらについては、本明細書中に特段記載はしていない。しかしながら、MutYHの変異体をコードしている核酸の相同体または対立遺伝子の明確な同定ができるよう、条件を操作することが可能である。
【0047】
MutYH遺伝子を含むベクターとしては、プラスミドベクター、ファージベクター、ファージミドベクター、コスミドベクター、ウイルスベクター等の公知の任意のものを利用することができる。ベクターは、MutYH遺伝子の発現を増強するプロモーターを少なくとも含んでいることが好ましく、この場合、MutYH遺伝子は、かかるプロモーターと作動可能に連結されていることが好ましい。遺伝子がプロモーターに作動可能に連結されているとは、プロモーターの作用により、該遺伝子のコードするタンパク質が適切に産生されるように、該遺伝子とプロモーターとが配置されていることを意味する。ベクターは、宿主細胞内で複製可能であってもなくてもよく、また、遺伝子の転写は宿主細胞の核外で行われても、核内で行われてもよい。後者の場合、MutYH遺伝子は宿主細胞のゲノムに組み込まれてもよい。
【0048】
ベクターは、所望の臓器や細胞への到達を効率化するために、これらに対して標的化されていてもよい。したがって、本発明の組成物において好ましいベクターは、肝臓および/または肝臓に存在する細胞、好ましくは肝細胞に対して標的化されたものである。標的化には、任意の既知の手法を用いることができ、例えば、ベクターを、WO2006/068232に記載の担体に担持させることにより、肝臓に特異的に送達させることができる。
MutYHタンパク質の機能を制御する剤としては、例えば、異常なMutYHタンパク質を発現する個体または細胞に、正常なMutYH遺伝子を導入し得る剤、基質親和性や反応速度の高い改変型のMutYH遺伝子を導入し得る剤、MutYH遺伝子に突然変異を導入し得る剤、MutYH遺伝子の発現を低下させるsiRNA等が挙げられる。
【0049】
本発明の組成物に用いるMutYH遺伝子としては、配列番号1で表される塩基配列の第8314位の塩基種がGである、肝細胞癌難罹患性のMutYH遺伝子が好ましい。宿主細胞ゲノムへのかかる肝細胞癌難罹患性MutYH遺伝子の導入は、肝細胞癌易罹患性のMutYH遺伝子、すなわち、配列番号1で表される塩基配列の第8314位の塩基種がAであるMutYH遺伝子または配列番号2で表されるMutYH遺伝子を有する対象においては特に好ましい。難罹患性MutYH遺伝子の導入は、MutYH遺伝子自体や、リポソームまたはベクターに担持されたMutYH遺伝子によって達成することができる。リポソームは細胞の膜と親和性があり、遺伝子導入に好適に用いることができる。導入効率等の点でカチオン性リポソームが特に有用であり、種々の市販の製品を利用することができる。
【0050】
本発明の組成物は、上述のようなMutYHタンパク質の存在量または機能を制御する剤のほか、肝細胞癌の処置に有用な剤をさらに含んでもよい。
本明細書において、用語「処置」は、疾患の治癒、一時的寛解または予防等を目的とする医学的に許容される全てのタイプの予防的および/または治療的介入を包含するものとする。例えば、疾患が肝細胞癌の場合、「処置」の用語は、肝細胞癌の進行の遅延または停止、病変の退縮または消失、肝細胞癌発症の予防または再発の防止等を含む、種々の目的の医学的に許容される介入を包含する。
したがって、上記の剤には、限定されずに、例えば、種々の抗腫瘍剤のみならず、肝細胞癌の原因となり得る慢性肝炎、肝線維症、肝硬変等を処置するための剤が包含される。
【0051】
抗腫瘍剤としては、例えば、イホスファミド、塩酸ニムスチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、メルファラン、ラニムスチン等のアルキル化剤、塩酸ゲムシタビン、エノシタビン、シタラビン・オクホスファート、シタラビン製剤、テガフール・ウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、ドキシフルリジン、ヒドロキシカルバミド、フルオロウラシル、メトトレキサート、メルカプトプリン等の代謝拮抗剤、塩酸イダルビシン、塩酸エピルビシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、塩酸ミトキサントロン、マイトマイシンC等の抗腫瘍性抗生物質、エトポシド、塩酸イリノテカン、酒石酸ビノレルビン、ドセタキセル水和物、パクリタキセル、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、硫酸ビンブラスチン等のアルカロイド、アナストロゾール、クエン酸タモキシフェン、クエン酸トレミフェン、ビカルタミド、フルタミド、リン酸エストラムスチン等のホルモン療法剤、カルボプラチン、シスプラチン、ネダプラチン等の白金錯体、サリドマイド、ネオバスタット、ベバシズマブ等の血管新生阻害剤、L−アスパラギナーゼ等を挙げることができる。
【0052】
慢性肝炎、肝線維症、肝硬変等を処置するための剤としては、限定されずに、例えば、インターフェロン製剤、リバビリン等のウイルス性肝炎治療剤、切断型TGFβII型受容体、可溶性TGFβII型受容体等のTGFβ活性阻害剤、HGF等の成長因子製剤、MMP遺伝子含有アデノウイルスベクター等のMMP産生促進剤、PPARγリガンド、アンギオテンシンIIのI型受容体アンタゴニスト、PDGFチロシンキナーゼ阻害剤、およびアミロライド等のナトリウムチャンネル阻害剤を含む肝星細胞活性化/増殖抑制剤、compound 861やgliotoxin等のアポトーシス誘導剤、コラーゲン、プロテオグリカン、テナスチン、フィブロネクチン、トロンボスポンジン、オステオポンチン、オステオネクチン、エラスチン等の細胞外マトリクス成分の産生を抑制するための、これらの成分を標的としたsiRNA、リボザイム、アンチセンス核酸(RNA、DNA、PNA、またはこれらの複合物を含む)等の標的分子の発現を抑制する効果を有する物質、もしくはドミナントネガティブ変異体等のドミナントネガティブ効果を有する物質、またはこれらを発現するベクター、さらには、コルチコステロイド、ペニシラミン、コルヒチン、インターフェロンγ、プロスタグランジン誘導体等のコラーゲン生成を抑制する薬物等が挙げられる。
【0053】
本発明の組成物は、経口および非経口の両方を包含する種々の経路、例えば、限定することなく、経口、静脈内、筋肉内、皮下、局所、直腸、動脈内、門脈内、心室内、経粘膜、経皮、鼻内、腹腔内、肺内および子宮内等の経路で投与してもよく、各投与経路に適した剤形に製剤してもよい。かかる剤形および製剤方法は任意の公知のものを適宜採用することができる(例えば、標準薬剤学、渡辺喜照ら編、南江堂、2003年等を参照)。
例えば、経口投与に適した剤形としては、限定することなく、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、ゲル剤、シロップ剤等が挙げられ、また非経口投与に適した剤形としては、溶液性注射剤、懸濁性注射剤、乳濁性注射剤、用時調製型注射剤等の注射剤が挙げられる。非経口投与用製剤は、水性または非水性の等張性無菌溶液または懸濁液の形態であることができる。具体的には、例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、賦形剤、ビヒクル、防腐剤、結合剤等と適宜組み合わせて、適切な単位投与形態に製剤化することができる。これら製剤における有効成分量は、処置に有効な用量を想定された投与回数で対象に供給できるように適宜設定することができる。
【0054】
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助剤を含む等張液、例えばD−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウム等が挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80、HCO−50等と併用してもよい。
油性液としてはゴマ油、大豆油等が挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等と併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば、塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤等と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプル、バイアル、チューブ、ボトル、パック等の容器に充填する。
【0055】
対象の体内への投与は上記いずれの経路によってもよいが、好ましくは非経口投与、より好ましくは局所投与または静脈内投与、特に好ましくは門脈内投与である。投与回数は1回が好ましいが、状況に応じて複数回投与することもできる。また、投与時間は短時間でも長時間持続投与でもよい。本発明の組成物は、より具体的には、注射によりまたは経皮的に投与することができる。注射による投与の例としては、例えば、静脈内注射、動脈内注射、選択的動脈内注入、門脈内注入、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射等によるものが挙げられるが、これらに限られない。静脈内注射の場合、通常の輸血の要領での投与が可能となり、対象を手術する必要がなく、さらに局所麻酔も必要ないため、対象および術者双方の負担を軽減することができる。また手術室以外での投与操作が可能である点で有利である。
【0056】
さらに本発明は、対象へ本発明の組成物の有効量を投与することを含む、肝細胞癌の処置方法に関する。本発明の処置方法において、本発明の組成物の対象への投与は、例えば、上述の投与方法に従って好適に実施することができる。また、医師または獣医師においては、上記投与方法を適宜改変して、本発明の剤を対象へ投与することが可能である。ここで、有効量とは、肝細胞癌の発症を低減し、症状を軽減し、または進行を防止する量であり、好ましくは、肝細胞癌の発症を予防し、または肝細胞癌を治癒する量である。また、投与による利益を超える悪影響が生じない量が好ましい。かかる量は、培養細胞等を用いたin vitro試験や、マウス、ラット、イヌまたはブタ等のモデル動物における試験により適宜決定することができ、このような試験法は当業者によく知られている。肝細胞癌のモデルとしては、例えば、N,N−ジエチルニトロソアミン(DEN)、ジメチルニトロソアミン(DMN)、メチオニン−コリン欠乏食(MCDD)、コリン欠乏アミノ酸(CDAA)食等の投与による肝発癌等が挙げられる。
【0057】
本発明の処置方法において投与する医薬の具体的な用量は、処置を要する対象に関する種々の条件、例えば、症状の重篤度、対象の一般健康状態、年齢、体重、対象の性別、食事、投与の時期および頻度、併用している医薬、治療への反応性、および治療に対するコンプライアンス等を考慮して決定され得るため、一般的な有効量と異なることもあるが、かかる場合であっても、これらの方法はなお本発明の範囲に含まれる。
投与経路としては、経口および非経口の両方を包含する種々の経路、例えば、経口、静脈内、筋肉内、皮下、局所、直腸、動脈内、門脈内、心室内、経粘膜、経皮、鼻内、腹腔内、肺内および子宮内等の経路が含まれる。
投与頻度は、用いる医薬の性状や、上記のような対象の条件によって異なるが、例えば、1日多数回(すなわち1日2、3、4回または5回以上)、1日1回、数日毎(すなわち2、3、4、5、6、7日毎等)、1週間毎、数週間毎(すなわち2、3、4週間毎等)であってもよい。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
実施例1 ゲノムDNAの抽出
肝細胞癌患者13名を含む、日本人C型肝炎患者31名の末梢血単核球から、ゲノムDNAを以下のようにして抽出した。
i)単核球の分離
ヘパリン1mlを事前に添加したEDTA採血管中に、末梢血5mlを採取した。混入赤血球を除去するため、採取した末梢血の全量を15mlのコニカルチューブに移し、5mlのヒドロキシエチルスターチ(6−HES、ルセル森下株式会社)を加え、5回転倒混和した後、室温で30分間静置して、赤血球を沈殿させた。単核球を含む上清を、別の新しいチューブに移し、300×g、4℃で、5分間遠心し、単核球分画をペレットにした。得られたペレットに、500μlのRBC lysis solution(Gentra社)を加え、室温で15分間静置して、混入しているRBCを溶血した。300×g、4℃で、5分間遠心した後に上清を廃棄し、細胞ペレットを得た。
【0059】
ii)ゲノムDNAの分離
細胞ペレットにCell Lysis solution(Gentra社)を加えて室温で細胞を溶解した後、20mg/mlのRNAaseを1μl加え、室温で15分間処理してRNAを分解し、さらにProtein precipitation solution(Gentra社)300μlを加えて転倒混和し、タンパク質を沈殿させた。10,000×g、4℃で、15分間遠心した後に、タンパク質を沈殿除去した。上清を新しいチューブに移し、900μlの2−プロパノールを添加し、転倒混和した。ゲノムDNAの沈殿を視認した後、2000×g、4℃で、2分間遠心してゲノムDNAを沈殿させた。上清を除去した後、75%エタノールを900μl加え、2000×g、4℃で、2分間遠心して上清を除去した後、ゲノムDNAペレットを室温で10分間風乾させた。その後、1×TE(pH8.0)を100μl加え、室温で一晩、ゲノムDNAを溶解させた。
【0060】
実施例2 Taqman(登録商標)PCRを用いたSNP解析
ゲノムDNAのSNP解析は、Applied Biosystems社が提供するCustom TaqMan(登録商標)Genomic Assays サービスを利用した。具体的には、MUTYHおよびGAPDHのプローブ(5’末端をFAMで標識)/プライマーセット(それぞれAssay ID C____110818_10およびHs99999905_m1)を用い、TaqMan PRISM(登録商標)7700 Sequence Detection System(PE Applied Biosystems社)でリアルタイムPCRを行った。結果を図1および表1に示す。なお、図1中のCt値は、蛍光強度(ΔRn)が閾値に達したときのPCRサイクル数を意味する。したがって、Ct値が小さい程、対応する核酸が検体中に多く存在していることになる。
【表1】

【0061】
図1および表1から明らかなように、MutYH遺伝子の多型と肝細胞癌との間に有意な関連が認められた(p=0.0093、χ検定)。肝細胞癌非罹患群においては94.4%の対象がメジャーアレルについてホモ型であり、マイナーアレルのホモ型は0%、ヘテロ型は5.6%であったのに対し、肝細胞癌罹患群においては、15.3%がマイナーアレルのホモ型、38.5%がヘテロ型であり、肝細胞癌罹患群において、マイナーアレルの頻度が有意に高く、肝細胞癌非罹患群において、メジャーアレルのホモ型の頻度が有意に高いことが見出された。
【0062】
実施例3 ダイレクトシークエンス法を用いたSNPの確認
i)ゲノムPCR
ゲノムDNA 100ngをテンプレートとし、プライマー対は、センス:5’−TGGTCAGTACATCTCCTGA−3’(配列番号3)、アンチセンス:5’−CTTGAGTCTTGCACTCCAATCA−3’(配列番号4)とし、Advantage(登録商標)GC 2 Kit(Takara-Clontech社)を用いてDNAを増幅した。PCR反応は、変性:95℃、30秒間、アニーリング:60℃、30秒間、伸長:72℃、2分間で、37サイクル行った。PCR産物を、2%アガロースゲルにて電気泳動した後、エチジウム・ブロマイドで検出した。
【0063】
ii)シークエンシング反応
PCR産物を2%アガロースにて電気泳導した後、バンドを切り出し、GENECLEAN(登録商標)で精製した。100ngのPCR産物に、Big Dye(Applied Biosystem社)8μl、上記PCRで用いたプライマー10pmol/μlを1μl添加した後、ミリQ水(蒸留水)を加えて全量で20μlとした。PCRはBio-Rad社のサーマルサイクラーを用い、96℃、10秒間、50℃、5秒間、60℃、4分間のサイクルを35サイクル行った。余分なBig-Dyeを除去する目的で、Edge Gel Filtration Cartridgeスピンカラム(Edge BioSystems社)に、シークエンシング反応で得たPCR産物の全量を適用し、3,000×gで2分間遠心した。カラムを通過してチューブ内に抽出された溶液が、目的の産物である。これを遠心減圧乾燥した後、HD(脱イオンホルムアミド)を20μl加え、十分に混合し、スピンダウンした。95℃で2分間ヒートショックを与え、すばやく氷上に上げて5分間以上冷却した後に、シークエンシング反応用の専用カラムに移し、ABI PRISM(登録商標)3100 Genetic Analyzerにより塩基配列解析を行った。結果は、実施例2に記載したTaqman(登録商標)PCRの結果を裏付けるものであった。
【0064】
実施例4 肝細胞癌罹患対象におけるMutYHタンパク質の活性の評価
肝細胞癌罹患対象と非罹患対象との間のMutYHタンパク質の活性の違いを、以下のようにして評価する。
i)細胞抽出液の調製
各対象から採取した末梢血から、Ficoll−Hypaque(比重1.077)を用いた比重遠心法により、有核単核球を分離し、PBS(−)で3回洗浄する。得られた末梢血単核球5×10個を、250μlの1×バッファー(50mM HEPES−KOH、pH7.4、200mM NaCl、2mM β−メルカプトエタノール、0.1mM EDTA、10%グリセロール)に懸濁し、超音波処理により破砕する。10,000×g、4℃で10分間遠心した後、上清を細胞抽出液として−80℃で凍結保存する。MutYHは、通常の条件下では数分で失活するため、細胞抽出液は、1×REC(登録商標)バッファー(10mM HEPES−KOH、pH7.4、100mM KCl、10mM EDTA、10%グリセロール)で希釈する。
【0065】
ii)アデニンDNAグリコシラーゼ活性の検出
FAMでラベルされたミスマッチオリゴを含むA/GO Mismatch Mesophilic Oligonucleotide Set(R&D社、アニーリング済)のオリゴ4pmolと、系列希釈した組換えMutYHタンパク質(R&D社)または上記細胞抽出液とを混合し、総量20μlとする。37℃で1時間インキュベートすることにより、MutYHタンパク質に、FAMラベルされたオリゴDNA鎖を切断させる。その後、3×Alkali Loading Buffer(0.3M NaOH、97%ホルムアミド、0.2%ブロモフェノールブルー)10μlを添加し、95℃で10分間加熱してから、反応物を急速に4℃まで冷却し、二本鎖DNAを一本鎖に解離させる。得られた試料を10μl/レーンで20%ポリアクリルアミドゲルに負荷して電気泳動を行い、切断されたオリゴと未切断のオリゴを分離する。デンシトメトリー解析により、切断されたオリゴと未切断オリゴとの比を算出し、試料中のMutYHタンパク質のアデニンDNAグリコシラーゼ活性を評価する。切断されたオリゴの割合が高い程、MutYHタンパク質の活性は高いと判断される。
【0066】
実施例5 肝細胞癌罹患対象におけるMutYHの発現の評価
肝細胞癌罹患対象と非罹患対象との間のMutYHの発現の違いを、以下のようにして評価する。各対象から採取した末梢血から、Ficoll−Hypaque(比重1.077)を用いた比重遠心法により、有核単核球を分離する。これをPBS(−)で3回洗浄後、1×10個ずつに分け、NP−40溶解バッファー(20mM Tris−HCl、pH7.6、150mM NaCl、0.5%NP−40、1mM EDTA、protease inhibitors cocktail(Roche社))を用いて溶解する。各試料を、試料バッファー(250mM Tris−HCl、pH6.8、8.4%SDS、10%グリセロール、0.006%ブロモフェノールブルー)を加えて5分間煮沸後、4/20%ポリアクリルアミドグラジエントゲル(マルチゲル(登録商標)、第一化学薬品株式会社)にて40mAで60分間泳動する(SDS−PAGE)。セミドライブロッティング装置を用いて、200mAの定電流で45分間ナイロン膜(Immobilon(登録商標)、Millipore社)に転写し、10%スキムミルクを用いて、4℃で一晩ブロッキングする。1μg/mlの抗ヒトMutYHポリクローナル抗体(Calbiochem社)を添加して、室温で1時間反応後、0.05%Tween−20含有PBS(−)で3回洗浄する。ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(Dako社)を二次抗体として、ECL(登録商標)plus(Amersham Biosciences社)で反応させ、フィルム(Eastman Kodak社)に露光する。露光の程度を解析することにより、肝細胞癌罹患対象と非罹患対象との間のMutYHタンパク質の相対的な存在量の違いを検出する。
【0067】
実施例6 MutYHの発現増強による肝細胞癌の抑制
MutYHのcDNAをRT−PCRによりサブクローニングしたのち、アデノ随伴ウイルスベクタープラスミド(Strategene社)にクローニングし、MutYH遺伝子担持プラスミド(AAV−MutYH)を得る。10cmディッシュ(1%ゼラチンコートディッシュ)にて70%コンフルエントにしたAAV293細胞を、0.2%EDTA PBSで継代し、300×g、4℃で3分間遠心してペレットとしたものウイルス産生細胞として用いる。リン酸カルシウム法キット(Invitrogen社)により、AAV−MutYHプラスミド、ヘルパープラスミドおよびRCプラスミドを、AAV293細胞にコトランスフェクトした後、37℃で一晩、加湿したCOインキュベーター内でインキュベートし、翌日培地を交換する。4日後に上清および細胞をすべて回収し、ドライアイスエタノールで3回凍結解凍を繰り返した後、10,000×gで15分間遠心した上清を容器に分注し、AAV−MutYHウイルスストックとして−80℃で保管する。
肝細胞癌モデル動物の肝臓へのMutYH遺伝子導入は、凍結保存したAAV−MutYHウイルスを解凍し、門脈から門脈注射または末梢静脈から静注することによって行う。MutYH遺伝子導入による肝細胞癌抑制効果は、腫瘍重量、AFPやPIVKA−IIなどの肝細胞癌マーカー、および/または生存率などを指標として、対照動物と比較して評価する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】肝細胞癌罹患対象および肝細胞癌非罹患対象におけるMutYH遺伝子の多型の遺伝子型頻度をTaqman(登録商標)PCR法により解析した結果を示す図である。図中、○は肝細胞癌罹患対象を、■は肝細胞癌非罹患対象を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MutYH遺伝子に関連する多型、MutYH遺伝子の発現の異常、MutYHタンパク質の存在量の異常、およびMutYHタンパク質の機能の異常からなる群から選択されるMutYH関連指標を検出する工程を含む、肝細胞癌の罹患リスクまたは予後を判定する方法。
【請求項2】
MutYH関連指標が、MutYH遺伝子に関連する多型である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
多型が、MutYH遺伝子において、配列番号1で表される塩基配列の8314位に存在する多型、および/またはこれを含むハプロタイプブロックに含まれる多型である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
MutYH遺伝子において、配列番号1で表される塩基配列の8314位に存在する塩基種がAである場合に、肝細胞癌の罹患リスクが高いと判定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
MutYH遺伝子において、配列番号1で表される塩基配列の8314位に存在する塩基種がGである場合に、肝細胞癌の罹患リスクが低いと判定される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
肝細胞癌が、C型肝炎ウイルスに起因する肝細胞癌である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
MutYH遺伝子に関連する多型を含む15〜1000塩基の連続した塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む、肝細胞癌の罹患リスクを判定するためのマーカー。
【請求項8】
MutYH遺伝子に関連する多型部位にアレル特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド、または、該多型の1塩基上流(5’側)にある塩基を含む該多型の上流配列に配列特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、その一端が前記1塩基上流(5’側)にある塩基にハイブリダイズするもの、または、該多型の1塩基下流(3’側)にある塩基を含む該多型の下流配列に配列特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、その一端が前記1塩基下流(3’側)にある塩基にハイブリダイズするものを含む、肝細胞癌の罹患リスクおよび/または予後を判定するための試薬。
【請求項9】
a)配列番号2で表される塩基配列を有する核酸または該塩基配列の8314位を含む前記核酸の部分にハイブリダイズし、かつ、配列番号1で表される塩基配列を有する核酸または該塩基配列の8314位を含む前記核酸の部分にハイブリダイズしないポリヌクレオチド、b)配列番号1で表される塩基配列を有する核酸または該塩基配列の8314位を含む前記核酸の部分にハイブリダイズし、かつ、配列番号2で表される塩基配列を有する核酸または該塩基配列の8314位を含む前記核酸の部分にハイブリダイズしないポリヌクレオチド、c)配列番号1で表される塩基配列を有する核酸における、該塩基配列の8313位を含むが8314位を含まない連続部分にハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、その一端が8313位の塩基にハイブリダイズするもの、および、d)配列番号1で表される塩基配列を有する核酸における、該塩基配列の8315位を含むが8314位を含まない連続部分にハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、その一端が8315位の塩基にハイブリダイズするもの、からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含む、請求項8に記載の試薬。
【請求項10】
請求項8または9に記載の試薬を含む、請求項1〜6に記載の方法を行うためのキット。
【請求項11】
MutYHタンパク質の存在量および/または機能を制御する剤を含む、肝細胞癌を処置するための組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−278764(P2008−278764A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123523(P2007−123523)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(507106135)
【Fターム(参考)】