説明

肩関節固定装具

【課題】本願発明は、肩関節の外転角度を迅速、かつ確実に、しかも容易に調節せしめ、常に適正に装着して使用に供することが出来る、肩関節固定装具を提供するものである。
【解決手段】腋下に挟み込み自在とされた横断面略三角形状の装具本体2と、肩関節の外転角度を所要の角度に調節せしめるべく該装具本体2上に重着自在な所要数の横断面略三角形状の角度調節部材9・10と、腕を固定せしめるべく該角度調節部材9・10に係着自在とされた腕ベルト17・18とよりなり、上記装具本体2には体幹21に装着せしめるべく胴ベルト5と肩ベルト6とが各々付設されいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肩腱板損傷、上腕骨及び肩周辺の亜脱臼、脱臼、骨折等のさいに肩関節の外
転保持を行なうための肩関節固定装具に関する。
【背景技術】
【0002】
肩関節は、人体の全ての関節の中で最も脱臼が起こりやすく、労働災害としてもスポ−
ツ時においてもその障害は頻繁にみられるものである。
ところで、肩関節とは、肩甲骨と上腕骨との間にある典型的な球関節であり、その運動
は多軸性で人体中最も可動性の大な関節であって、脱臼しやすいものとなっている。そし
て、かかる脱臼の治療は、症候や障害部位などによって種々存在するが、概ね保存的療法
と手術による療法とに大別され、特に保存的療法においては個々の症例に応じた安静肢位
を保持すべく肩関節固定装具を装着使用するものとされている。
【0003】
ところで、上記肩関節固定装具の一例として、特開平3−155856号公報には、腋
下に挟み込み自在とされた横断面略直角三角形状のクッション袋と、該クッション袋を体
幹に固定する胴ベルト及び肩ベルトと、腕をクッション袋に固定する腕ベルトより構成さ
れたものが開示されている。
そして、上述の如く構成された肩関節固定装具は、クッション袋を腋下に挟み込んで所
定の外転角度に保持せしめつつ、胴ベルトと肩ベルトにより体幹に固定せしめると共に、
クッション袋上に腕ベルトを介して腕を固定せしめて使用に供するものとされている。
【0004】
また、実用新案登録第3035558号公報には、腋下に挟み込み自在とされた略台形
状の腋下パッドと、該腋下パッドを体幹に固定する胴ベルト及び肩ベルトと、腕を腋下パ
ッドと胴ベルトに各々固定する腕ベルトとより構成された肩関節固定装具が開示されてい
る。
そして、上述の如く構成された肩関節固定装具は、腋下に腋下パッドを挟み込こんで所
定の外転角度に保持せしめつつ、胴ベルトと肩ベルトにより体幹に固定せしめると共に、
腕を腋下パッドと胴ベルトに固定せしめて使用に供するものとされている。
【0005】
ところで、上記特開平3−155856号公報記載の肩関節固定装具は、腕を所定の外
転角度でもってクッション袋上に載置せしめつつ、腕ベルトでもって固定せしめるもので
あるから、皮膚や腕神経への圧迫感が少なく、装着感が非常に良好である反面、単に腕を
クッション袋上に載置して固定するにすぎないものであるから、肩関節の外転角度を自由
に調節することが出来ないものである。このため、例えば、肩関節回旋筋腱板断裂の修復
手術後等において必要とされる肩関節の外転角度調節には対処することが出来ないもので
ある。
また、実用新案登録第3035558号公報記載の肩関節固定装具は、腋下に腋下パッ
ドを挟み込みつつ容易に肩関節を所要の外転角度に固定せしめることが出来る反面、上記
従来例と同様に肩関節の外転角度を自由に調節することが出来ないものである。
【0006】
かかる従来の肩関節固定装具の問題点を解決するものとして、特開2009−1067
16号公報には、エアバッグを充填せしめたバッグ状の装具本体と、該装具本体を体幹に
固定せしめる胴ベルト及び肩ベルトと、腕を装具本体に固定せしめる上腕ベルト及び前腕
ベルトとより構成されたものが開示されている。
【0007】
そして、上述の如く構成された肩関節固定装具は、エア充填量を調節して所要の外転角
度に調整せしめたエアバッグを装具本体内に充填し、胴ベルト及び肩ベルトにより体幹に
固定せしめると共に、腕を上腕・前腕ベルトにより装具本体に固定せしめて使用に供する
ものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3−155856号公報
【特許文献2】実用新案登録第3035558号公報
【特許文献3】特開2009−106716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述の如く構成された特開2009−106716号公報記載の肩関節固定
装具は、症状に応じて肩関節の外転角度を適宜自由に調節することが出来るものである。
しかしながら、外転角度の調節は、エアバッグのエア充填量を調節して行なうものとさ
れているから、外転角度の調節が非常に面倒で適正角度に調節せしめずらいのみならず、
外転角度を小に調節せしめるべくエアバッグのエア充填量を少くした場合には、エアバッ
グのみならず装具本体が縮んで不定形状に変形し、上腕や前腕を適正に固定せしめずらい
ものである。
【0010】
本発明は従来の課題を解決し、肩関節の外転角度を迅速、かつ確実に、しかも容易に調
節せしめ、常に適正に装着して使用に供することが出来る、肩関節固定装具を提供しよう
とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1記載の発明は、腋下に挟み込み自在とさ
れた横断面略三角形状の装具本体と、肩関節の外転角度を所要の角度に調節せしめるべく
該装具本体上に重着自在な所要数の横断面略三角形状の角度調節部材と、腕を固定せしめ
るべく該角度調節部材に係着自在とされた腕ベルトとよりなり、上記装具本体には体幹に
装着せしめるべく胴ベルトと肩ベルトとが各々付設されてなることを特徴とする、肩関節
固定装具を要旨とするものである。
【0012】
本発明の請求項2記載の発明は、上記腕ベルトは上腕と前腕とを各々固定せしめるべく
上腕ベルトと前腕ベルトとより構成されてなることを特徴とする、請求項1記載の肩関節
固定装具を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1記載の発明は、上述のように構成されているから、装具本体上に所要
数の角度調節部材を重着して所要の外転角度に調節せしめたのち、胴ベルトと肩ベルトに
より体幹に固定せしめると共に、腕を腕ベルトでもって固定せしめて使用に供することが
出来るものであって、常に装着本体上に所要数の角度調節部材を重着せしめるという極め
て簡単な操作でもって肩関節の外転角度を迅速、かつ、確実に角度調節せしめることが出
来るものである。
【0014】
本発明の請求項2記載の発明は、上述のように構成されているから、肩関節の外転角度
調節に応じて上腕・前腕ベルトを最上段の角度調節部材上の所要位置に自由に係着せしめ
ることが出来るものであって、ひいては、上腕及び前腕を各々最上段の角度調節部材上に
無理なく自然な姿勢でもって固定せしめることができ、極めて装着感がよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例を示す分解斜視図である。
【図2】実施例の装具本体2と第1・第2角度調節部材9・10を示す横断面図である。
【図3】本発明の使用状態を示す正面図である。
【図4】本発明の他の使用状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態を図面に示す一実施例に基づいて詳細に説明する

【0017】
図1及び図2は本発明の一実施例にかかる肩関節固定装具1を示すもので、2は該肩関
節固定装具1を構成する装具本体で、該装具本体2は腋下に挾み込み自在とされた横断面
略隅丸二等辺三角形状の合成樹脂製芯材3に雌面ファスナ−4を被覆せしめることにより
形成されている。5・6は上記装具本体2に雄面ファスナ−7・8を介して係脱自在に取
付けられた長さ調節具付き胴ベルトと肩ベルトである。9・10は肩関節の外転角度を調
節せしめるべく上記装具本体2上に順次重着自在とされた第1角度調節部材と第2角度調
節部材で、該第1・第2角度調節部材9・10は各々横断面略隅丸二等辺三角形状の合成
樹脂製芯材11・12に雌面ファスナ−13・14を被覆せしめることにより形成される
と共に、対応する装具本体2や第1・第2角度調節部材9・10の雌面ファスナ−4・1
3・14に重着状に係着せしめるべく雄面ファスナ−15・16が各々取着されている。
17・18は第1・第2角度調節部材9・10の雌面ファスナ−13・14に雄面ファス
ナ−19・20を介して係着自在とされた上腕ベルトと前腕ベルトで、該上腕ベルト17
・前腕ベルト18は肩関節の外転角度調節に応じて第1・第2角度調節部材9・10の所
要位置に自由に係着せしめるべく構成されている。
その他、21は人体の体幹、22は上腕、23は前腕を各々示す。
【0018】
そして、上述の如く構成された実施例は、装具本体2上に雌面ファスナ−4・13と雄
面ファスナ−15・16を介して所要数の第1・第2角度調節部材9・10を重着せしめ
つつ、所要の外転角度に調節せしめたのち、胴ベルト5・肩ベルト6により体幹21に固
定せしめると共に、上腕22と前腕23を各々上腕・前腕ベルト17・18でもって固定
せしめる。
即ち、例えば、肩関節の外転角度を大にして装着せしめる場合には、図3に図示するよ
うに、装具本体2上に雌面ファスナ−4・13と雄面ファスナ−・15・16を介して第
1・第2角度調節部材9・10を各々重着せしめ、外転角度を大に調節せしめたのち、胴
ベルト5・肩ベルト6でもって体幹21に固定せしめる。しかるのち、最上段の第2角度
調節部材10上に腕を所定の外転角度でもって載置せしめると共に、該腕に上腕ベルト1
7と前腕ベルト18を各々当てがいつつ、第2角度調節部材10に雌面ファスナ−14と
雄面ファスナ−・19・20でもって係着せしめ、腕の上腕22と前腕23を外転角度が
大な状態に固定せしめる。
このさい、肩関節の外転角度に対応して上腕ベルト17及び前腕ベルト18を第2角度
調節部材10上の所要位置に自由に係着せしめるものであるから、上腕22及び前腕23
を各々最上段の第2角度調節部材10上に無理なく自然な姿勢でもって固定せしめること
ができ、極めて装着感が良いものである。
【0019】
そして、例えば、肩関節回旋筋腱板断裂の修復手術後等において肩関節の外転角度を小
さく調節する場合には、図4に図示するように、装具本体2上に第1角度調節部材9を重
着して外転角度を小さく調節せしめたのち、胴ベルト5・肩ベルト6でもって体幹21に
固定する。しかるのち、第1角度調節部材9に腕を載置せしめ、該腕に上腕ベルト17と
前腕ベルト18を当てがいつつ、雌面ファスナ−4・雄ファスナ−15を介して第1角度
調節部材9上に係着せしめ、腕の上腕22と前腕23を外転角度が小さな状態に固定せし
める。このように、本願発明にかかる肩関節固定装具1は、図3及び図4に図示するよう
に、装具本体2上に所要数の第1・第2角度調節部材9・10を適宜重着せしめ、肩関節
の外転角度を容易に、しかも、迅速、かつ、確実に調節せしめることが出来るものである

【0020】
なお、上記実施例において、角度調節部材として第1・第2角度調節部材9・10が示
されているが、これに限定されるものではなく、必要に応じてその個数を増減せしめてもよいものである。また、第1・第2角度調節部材9・10は同一の厚みに形成されているが、第1角度調節部材9に対して第2角度調節部材10の厚みを薄く形成せしめ、外転角度の調節幅を漸次小さく設定せしめるべく形成せしめてもよいものである。
【符号の説明】
【0021】
1 肩関節固定装具
2 装具本体
5 胴ベルト
6 肩ベルト
9 第1角度調節部材
10 第2角度調節部材
17 上腕ベルト
18 前腕ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腋下に挟み込み自在とされた横断面略三角形状の装具本体と、肩関節の外転角度を所要
の角度に調節せしめるべく該装具本体上に重着自在な所要数の横断面略三角形状の角度調
節部材と、腕を固定せしめるべく該角度調節部材に係着自在とされた腕ベルトとよりなり
、上記装具本体には体幹に装着せしめるべく胴ベルトと肩ベルトとが各々付設されてなる
ことを特徴とする、肩関節固定装具。
【請求項2】
上記腕ベルトは上腕と前腕とを各々固定せしめるべく上腕ベルトと前腕ベルトとより構成されてなることを特徴とする、請求項1記載の肩関節固定装具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−90920(P2012−90920A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243026(P2010−243026)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(598095167)有限会社永野義肢 (4)
【Fターム(参考)】