説明

育毛剤組成物

【課題】調製後の液外観に優れ、かつ優れた育毛効果を発現でき、特に男性型脱毛症に対して有効な育毛剤組成物の提供。
【解決手段】(A)ラクトフェリン分解物、(B)L−カルニチン化合物、(C)6−ベンジルアミノプリン、及び(D)炭素数2〜4の低級アルコール55質量%〜80質量%を含有し、前記(A)ラクトフェリン分解物と前記(B)L−カルニチン化合物との質量比〔(A)/(B)〕が0.1〜5である育毛剤組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた育毛効果を発現でき、液外観に優れた育毛剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ラクトフェリンの細胞増殖因子としての働きについては、線維芽細胞(特許文献1参照)や正常口腔上皮細胞などで知られている。また、ラクトフェリンがガン化した口腔上皮細胞に対して細胞増殖を抑制する機能を有することが報告されている(非特許文献1参照)。このようにラクトフェリンの細胞に対する機能は多様である。また、ラクトフェリンは、発毛促進剤として用いられていることから、角化細胞に対する効果を有することが推察される(特許文献2参照)。
しかし、前記ラクトフェリンの分子量は約80,000(NCBI Reference Sequence:NP_851341.1)であり、経皮吸収により、皮膚内の毛母細胞などにラクトフェリンが作用することは不可能である。一方、ラクトフェリンのタンパク質分解酵素による分解物(ラクトフェリン分解物)は、加水分解により適度な分子量分布となって経皮吸収が可能となるので、生理活性の発現が期待されている。
また、前記特許文献1には、上皮細胞増殖因子との併用によるラクトフェリンの養毛剤としての使用が記載されているが、その効果は十分なものではなく、更なる既存の育毛有効成分との併用による育毛効果の向上が望まれている。しかしながら、既存の育毛有効成分の多くは水に難溶性であるため、前記既存の育毛有効成分と前記ラクトフェリン分解物を併用しても、十分な育毛効果を得ることは困難であるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−196529号公報
【特許文献2】特開2007−31418号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Oral Oncol. 2006 Aug;42(7):685-690
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、調製後の液外観に優れ、かつ優れた育毛効果を発現でき、特に男性型脱毛症に対して有効な育毛剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため本発明者が鋭意検討を行った結果、アミノ酸の一種であり、ベタイン構造を持つ(B)L−カルニチン化合物が(A)ラクトフェリン分解物のエタノール可溶化能を有し、その結果、油溶性育毛有効成分である(C)6−ベンジルアミノプリンとの併用が可能となり、これらの相乗効果により、液外観に優れ、育毛効果が飛躍的に向上した育毛剤組成物を提供できることを知見した。
【0007】
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> (A)ラクトフェリン分解物、(B)L−カルニチン化合物、(C)6−ベンジルアミノプリン、及び(D)炭素数2〜4の低級アルコール55質量%〜80質量%を含有し、
前記(A)ラクトフェリン分解物と前記(B)L−カルニチン化合物との質量比〔(A)/(B)〕が、0.1〜5であることを特徴とする育毛剤組成物である。
<2> (A)ラクトフェリン分解物及び(B)L−カルニチン化合物に対する(C)6−ベンジルアミノプリンの質量比〔(C)/((A)+(B))〕が、0.1〜0.5である前記<1>に記載の育毛剤組成物である。
<3> (B)L−カルニチン化合物が、L−塩化カルニチンである前記<1>から<2>のいずれかに記載の育毛剤組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、調製後の液外観に優れ、かつ優れた育毛効果を発現でき、特に男性型脱毛症に対して有効な育毛剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の育毛剤組成物は、(A)ラクトフェリン分解物、(B)L−カルニチン化合物、(C)6−ベンジルアミノプリン、及び(D)炭素数2〜4の低級アルコールを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0010】
−(A)ラクトフェリン分解物−
ラクトフェリンは、哺乳動物の乳から調製する。前記乳の供給源である哺乳動物としては、例えばウシ、水牛、ヒト、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマなどが挙げられる。これらの中でも、ウシが特に好ましい。
前記ラクトフェリンは、公知の物質であって、公知の方法、例えばスルホン化担体を用いてラクトフェリンを精製する方法(特開平3−109400号公報)などにより、工業的に製造され、市販されている。また、本発明においては、遺伝子工学的手法により生産されたラクトフェリンも使用し得る。
【0011】
前記ラクトフェリンの細胞増殖因子としての働きについては、線維芽細胞(特開平7−196529号公報参照)や正常口腔上皮細胞などで知られている。一方、ガン化した口腔上皮細胞に対して細胞増殖を抑制する機能を有することが報告されている(Oral Oncol. 2006 Aug;42(7):685-690参照)。また、ラクトフェリンは、発毛促進剤として用いられていることから、角化細胞に対する効果が推察される(特開2007−31418号公報参照)。しかし、前記ラクトフェリンの分子量は約80,000であり、経皮吸収により、皮膚内の毛母細胞などにラクトフェリンが作用することは不可能である。ラクトフェリン分解物では、インタクト(ネイティブ)なラクトフェリンが5%未満であり、95%以上は分子量14,000以下のペプチドで、分子量6,000以下のペプチドが75%以上含まれるものとなっており、経皮吸収が可能となることから、生理活性の発現が期待されている。
また、前記特開平7−196529号公報には、上皮細胞増殖因子との併用で養毛剤としての使用が述べられている。ラクトフェリン分解物は、角化細胞の細胞増殖因子として作用し、細胞の増殖シグナルや細胞周期を活性化しているものと考えられる。より育毛効果を高めるためには、ラクトフェリン分解物と既存の育毛有効成分を併用することが必要不可欠である。
【0012】
前記ラクトフェリン分解物は、前記ラクトフェリンをタンパク質分解酵素で限定分解したペプチド混合物であり、インタクト(ネイティブ)なラクトフェリンが5%未満であり、95%以上は分子量14,000以下のペプチドで、分子量6,000以下のペプチドが75%以上含まれるものである。
前記タンパク質分解酵素としては、例えばペプシン、キモトリプシン、トリプシン、パンクレアチンなどが挙げられる。これらの中でも、ラクトフェリンを限定分解しやすく、経皮吸収性に優れたラクトフェリン分解物が得られ、優れた育毛効果を発揮できる点からペプシンが特に好ましい。
本発明においては、タンパク質分解酵素としてキモトリプシン、トリプシン、パンクレアチンを用いたラクトフェリン分解物も用いることができるが、キモトリプシン、トリプシン、パンクレアチンは、ペプシンに比べて、ラクトフェリンに対する反応性が悪く、限定分解が十分に進まないため、キモトリプシン、トリプシン、パンクレアチンによるラクトフェリン分解物の経皮吸収性は、ペプシンによるラクトフェリン分解物に比べて低くなる傾向がある。その結果、キモトリプシン、トリプシン、パンクレアチンによるラクトフェリン分解物を用いると、ペプシンによるラクトフェリン分解物に比べて、育毛効果が若干劣ることが推定される。
【0013】
以下にラクトフェリン分解物の調製方法の一例を示すが、該調製方法に限られるものではない。
まず、5質量%ラクトフェリン(LF)(DMV社製、ウシ由来)水溶液(5g/100mL−DW)を調製し、1Nあるいは5Nの塩酸を使用してpHを2.5に調整した。10units/mgのペプシンをラクトフェリン(LF)に対して3質量%添加し、7時間反応させた。反応終了後、「J. Dairy Sci. 1991 Dec;74(12):4137-4142.」に従い、1N又は5NのNaOHでpHを7.0に調整し、80℃で15分間加熱して酵素を失活させ、氷冷後、50mLの遠沈管2本に分けて、3,000rpmで30分間遠心分離した。上清を回収して凍結乾燥を2日間行い、粉末をラクトフェリン分解物とした。
【0014】
前記(A)成分のラクトフェリン分解物の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、育毛剤組成物全量に対し0.1質量%〜5質量%が好ましく、液外観及び育毛効果の点から0.5質量%〜2質量%がより好ましい。前記含有量が、0.1質量%未満であると、顕著な育毛効果が得られないことがあり、5質量%を超えると、液外観が悪くなることがある。
【0015】
−(B)L−カルニチン化合物−
前記(B)成分のL−カルニチン化合物としては、L−カルニチン及びL−カルニチンの塩の少なくともいずれかが用いられる。
前記L−カルニチン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばL−カルニチン、L−塩化カルニチン、L−カルニチンL−酒石酸塩などが挙げられる。これらの中でも、液外観及び育毛効果の点からL−塩化カルニチンが特に好ましい。
前記L−カルニチン化合物としては、適宜調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。L−塩化カルニチンの市販品としては、例えば金剛化学株式会社製の塩化レボカルニチンなどが挙げられる。L−カルニチンL−酒石酸塩の市販品としては、例えばロンザ社製のL−カルニチンL−酒石酸塩などが挙げられる。
【0016】
前記(B)成分のL−カルニチン化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、育毛剤組成物全量に対し0.1質量%〜10質量%が好ましく、液外観及び育毛効果の点から、0.5質量%〜2質量%がより好ましい。前記含有量が、0.1質量%未満であると、顕著な育毛効果が得られず、10質量%を超えると、液外観が悪くなることがある。
前記(A)成分のラクトフェリン分解物と前記(B)成分のL−カルニチン化合物との質量比〔(A)/(B)〕は0.1〜5が好ましく、液外観及び育毛効果の点から、0.3〜3がより好ましい。前記質量比〔(A)/(B)〕が、0.1未満であると、液外観が悪くなることがあり、5を超えると、液外観及び育毛効果が得られない。
【0017】
−(C)6−ベンジルアミノプリン−
前記(C)成分の6−ベンジルアミノプリンは、下記構造式で示される分子量225.26の白色結晶性の粉末であり、別名6−ベンジルアデニンとも呼ばれる。
【化1】

【0018】
前記6−ベンジルアミノプリンは、皮膚の老化防止効果及び頭皮に外用することによる細胞の賦活化を目的として育毛剤(特開平5−320028号公報及び特開平7−233037号公報参照)、皮膚化粧料(皮膚 第40巻 第4号、P407−413、1998年8月、三嶋豊ら参照)などに用いられている。
前記6−ベンジルアミノプリンとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば特開2005−35903号公報に従って合成する方法、又は天然物から精製する方法などが挙げられる。
前記市販品としては、例えば6−ベンジルアミノプリン(三省製薬株式会社製、分子量=225.26)、などが挙げられる。
【0019】
−−6−ベンジルアミノプリンによる育毛のメカニズム−−
本願出願人は、既に、細胞培養実験において6−ベンジルアミノプリンが「BMP−2」と呼ばれるタンパク質の産生を促進することを報告している(第26回日本基礎老化学会、2004年、翠川辰行ら参照)。また、本願出願人は、「BMP−2」は脱毛症の人の頭皮の細胞内において産生が低下しているタンパク質であり、「BMP−2」の産生を促進することで優れた育毛効果が発揮されることを報告している(Journal of Dermatological Science(2004)36,25−32)。
【0020】
前記(C)成分の6−ベンジルアミノプリンの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、育毛剤組成物全量に対し0.1質量%〜5質量%が好ましく、液外観及び育毛効果の観点から、0.2質量%〜1質量%がより好ましい。
前記(A)成分のラクトフェリン分解物及び前記(B)成分のL−カルニチン化合物に対する前記(C)成分の6−ベンジルアミノプリンの質量比〔(C)/((A)+(B))〕は、0.1〜0.5が好ましく、液外観及び育毛効果の点から、0.13〜0.5がより好ましい。前記質量比〔(C)/((A)+(B))〕が、0.1未満であると、液外観及び育毛効果が悪くなることがあり、0.5を超えると、液外観が悪くなることがある。
【0021】
−(D)炭素数2〜4の低級アルコール−
前記(D)成分の炭素数2〜4の低級アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、液外観及びニオイの点などから、エタノールが特に好ましい。
前記(D)成分の炭素数2〜4の低級アルコールの含有量は、育毛剤組成物全量に対し55質量%〜80質量%が好ましく、液外観及び育毛効果の点から、60質量%〜75質量%がより好ましい。前記含有量が、55質量%未満であると、液外観が悪くなることがあり、80質量%を超えると、液外観及び育毛効果が悪くなることがある。
【0022】
既存の育毛有効成分の多くが油溶性であり、エタノール製剤であることが求められるが、ラクトフェリン分解物は、エタノール、特に55質量%〜80質量%のエタノール製剤への溶解性は著しく悪いことが知られている。そこで、本願出願人が、エタノール製剤へのラクトフェリン分解物の溶解について検討を行った結果、L−カルニチン化合物がラクトフェリン分解物のエタノール可溶化能を有することを知見した。この可溶化のメカニズムとしては、L−カルニチン化合物がベタイン構造を有することから、ラクトフェリン分解物と複合体を形成し、疎水化され、エタノールに可溶化するものと推察される。
【0023】
本発明の育毛剤組成物には、該育毛剤組成物の有効成分を皮膚に浸透しやすくする成分として、多価アルコール類を含有させることが好ましい。
前記多価アルコールとしては、例えばグリセリン、キシリトール、ソルビトール、1、3−プチレングリコール、プロビレングリコール、ポリエチレングリコール、などが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレングリコールが好ましく、分子量が300〜400のポリエチレングリコールが特に好ましい。
本発明の育毛剤組成物は、前記分子量が300〜400のポリエチレングリコールを併用することにより、前記育毛剤組成物の有効成分が皮膚に浸透しやすくなり、強い育毛効果を発揮できるものである。
【0024】
−その他の成分−
本発明の育毛剤組成物には、相乗効果を更に高めるため、必要に応じて又は使用目的に応じて、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、及び前記(D)成分以外のその他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
前記その他の成分としては、例えば、水(精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水、海洋深層水等)、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤、セルロース類、エステル油、植物油、角質溶解剤、高分子樹脂、紫外線吸収剤、ビタミン類、血管拡張剤、細胞賦活剤、アミノ酸類、抗炎症剤、皮膚機能亢進剤、色剤、香料、などが挙げられる。
【0025】
前記非イオン性界面活性剤としては、例えばソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油モノ又はイソステアレート、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル(モノミリスチン酸デカグリセリン、モノミリスチン酸ペンタグリセリン)、などが挙げられる。
前記セルロース類としては、例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、などが挙げられる。
前記エステル類としては、例えばトリ−2エチルヘキサン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン酸等の多価アルコール脂肪酸エステル、などが挙げられる。
前記植物油としては、例えばユーカリ油、サフラワー油、月見草油、ホホバ油、などが挙げられる。
前記角質溶解剤としては、例えばサリチル酸、レゾルシン、などが挙げられる。
前記高分子樹脂としては、例えば両性ポリマー、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー、などが挙げられる。
前記紫外線吸収剤としては、例えばメトキシケイ皮酸オクチル(ネオヘリオパンAV)、オキシベンゾン、ウロカニン酸、などが挙げられる。
前記ビタミン類としては、例えばビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、酢酸トコフェロール、などが挙げられる。
前記血管拡張剤としては、例えば塩化カルプロニウム、ミノキシジル、セファランチン、などが挙げられる。
前記細胞賦活剤としては、例えばペンタデカングリセリド、コレウスエキス、ジンセンエキス、アデノシン、などが挙げられる。
前記アミノ酸類としては、例えばグルタミン酸、メチオニン、セリン、グリシン、シスチン、スレオニン、などが挙げられる。
前記抗炎症剤としては、例えばβ−グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、ローズマリーエキス、シソエキス、などが挙げられる。
前記皮膚機能亢進剤としては、例えばD−パンテノール、パントテニルエチルエーテル、などが挙げられる。
【0026】
本発明の育毛剤組成物のpHは、精製水で10倍に薄めた前記育毛剤組成物において3〜5であることが、液外観の点から好ましい。
前記pHは、精製水で10倍に薄めた前記育毛剤組成物をpHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製、HM−30G)を用いて測定することができる。
前記育毛剤組成物のpHは、例えば、所望のpH調整剤を用いて調整することができる。前記pH調整剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、モノエタノールアミンなどが好適である。
【0027】
−剤型−
前記育毛剤組成物の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジェル、ローション、ミスト、エアゾール、スプレー等の各種剤型で用いることができる。前記各種剤型の育毛剤組成物は、従来公知の手法に従い、製造することができる。
前記エアゾール形態をとる場合には、上記の成分以外に、n−プロピルアルコール又はイソプロピルアルコール等の低級アルコール;ブタン、プロパン、イソブタン、液化石油ガス、ジメチルエーテル等の可燃性ガス;窒素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素ガス等の圧縮ガスを含有することができる。
【0028】
−用途−
本発明の育毛剤組成物は、例えばヘアトニック、ヘアクリーム、ヘアリキッド、シャンプー、ポマード、リンス、などに好適に用いられる。また、育毛効果を有する外用剤として使用することができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0030】
(調製例1)
−ラクトフェリン分解物の調製−
5質量%ラクトフェリン(LF)(DMV社製、ウシ由来)水溶液(5g/100mL−DW)を調製し、1Nあるいは5Nの塩酸を使用してpHを2.5に調整した。10units/mgのペプシンをラクトフェリン(LF)に対して3質量%添加し、7時間反応させた。反応終了後、「J. Dairy Sci. 1991 Dec;74(12):4137-4142.」に従い、1N又は5NのNaOHでpHを7.0に調整し、80℃で15分間加熱して酵素を失活させ、氷冷後、50mLの遠沈管2本に分けて、3,000rpmで30分間遠心分離した。上清を回収して凍結乾燥を2日間行い、粉末をラクトフェリン分解物とした。得られたラクトフェリン分解物をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法にて分画し、泳動像を画像解析ソフト(MultiGauge、富士フイルム株式会社製)で定量を行ったところ、インタクトなラクトフェリンが5%未満であり、95%以上は分子量14,000以下のペプチドで、分子量6,000以下のペプチドが75%以上含まれるものであった。
【0031】
(実施例1〜26及び比較例1〜8)
下記表1及び表2に示す配合組成(質量%)により、各育毛剤組成物を常法により調製した。得られた各育毛剤組成物は、精製水で10倍に薄め25℃で測定したpHが4.0になるようにクエン酸ナトリウムで調整をした。pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製、HM−30G)を用いた。
【0032】
<液外観>
得られた各育毛剤組成物について、調製直後の目視による液外観を下記の評価基準により評価した。結果を表1に示す。
〔評価基準〕
◎:外観が透明である
○:外観がわずかに濁っているが、沈殿物は認められない
△:外観が濁っていて、小さな沈殿物が認められる
×:外観が濁り、沈殿物が多く存在する
【0033】
<育毛効果>
男性型脱毛症に対する育毛効果について、以下のようにしてマウスにおける育毛試験を行い、下記の判定基準により評価した。結果を表1に示す。
−マウスにおける育毛試験−
毛周期の休止期にあるC3Hマウス(7週齢)を用い、小川らの方法(フレグランスジャーナル、Vol.17,No.5,P.20−29,1989)に準拠して実験を行った。1試料につきマウス8匹を用いた。マウスの背部体毛を電気バリカン及び電気シェーバーにて背部全体を除毛した。翌日より1日1回100μLずつ週5回、16日間サンプル塗布を行った。各マウスについて除毛後16日目の除毛面積に対する毛再生面積の割合(%)を求め、下記の判定基準に基づき、「著効」、「有効」、及び「無効」を判断し、結果をマウスの匹数で示した。
〔判定基準〕
「著効」:毛再生面積の割合が70%超
「有効」:毛再生面積の割合が50%〜70%
「無効」:毛再生面積の割合が50%未満
〔評価基準〕
◎:著効例が6匹以上で無効例がないもの
○:著効例が2匹以上5匹以下で無効例がないもの
△:著効例が1匹以上5匹未満で無効例があるもの
×:著効例がないもの
【0034】
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【0035】
【表2−1】

【表2−2】

【0036】
表1及び表2中、(*1)〜(*6)の具体的な内容は、以下の通りである。
(*1)ラクトフェリン分解物:調製例1のラクトフェリン分解物、インタクト(ネイティブ)なラクトフェリンが5%未満であり、95%以上は分子量14,000以下のペプチドで、分子量6,000以下のペプチドが75%以上含まれるもの
(*1’)ラクトフェリン:5質量%ラクトフェリン(LF)(DMV社製、ウシ由来)水溶液(5g/100mL−DW)、分子量=約80,000
(*2)L−カルニチン:伊藤ライフサイエンス株式会社製
(*3)L−塩化カルニチン:金剛化学株式会社製の塩化レボカルニチン
(*4)L−カルニチンL−酒石酸塩:L−カルニチンL−酒石酸塩、ロンザ社製
(*5)6−ベンジルアミノプリン:三省製薬株式会社製、分子量=225.26
(*6)ポリエチレングリコール300:ライオンケミカル株式会社製
【0037】
表1及び表2の結果から、比較例5〜7では、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分が併用されていないので、育毛効果は十分ではないことが分かった。
また、比較例1及び2では、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を併用しても、質量比〔(A)/(B)〕が0.1〜5で配合されていない場合には、液外観及び育毛効果の点で、十分な効果が得られないことが分かった。
また、比較例3及び4では、(D)成分のエタノールの含有量が55質量%未満あるいは80質量%を超える場合には、液外観、即ちラクトフェリン分解物あるいは6−ベンジルアミノプリンの溶解性が悪く、十分な育毛効果を得ることができないことが分かった。
また、比較例8に示すように、酵素分解を受けていないインタクト(ネイティブ)ラクトフェリンでは経皮吸収性が悪いため、十分な育毛効果が得られないことが分かった。
これに対し、実施例1〜26では、(D)成分の含有量が55質量%〜80質量%であり、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を併用させた場合、(A)成分と(B)成分の質量比〔(A)/(B)〕が0.1〜5で、液外観に優れ、育毛効果が得られ、液外観及び育毛効果の点から、質量比〔(A)/(B)〕が0.3〜3がより好ましいことが分かった。また、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の質量比〔(C)/((A)+(B))〕が0.1〜0.5であると、液外観に優れ、優れた育毛効果があり、0.13〜0.5がより好ましいことが分かった。
したがって、本発明によれば、(A)ラクトフェリン分解物、(B)L−カルニチン化合物、(C)6−ベンジルアミノプリン、及び(D)炭素数2〜4の低級アルコール55質量%〜80質量%を組合わせることで、優れた育毛効果を発現できる育毛剤組成物を提供できることが分かった。
【0038】
下記に優れた育毛効果を示す本発明の育毛剤組成物を実際の製品に適用した具体的な実施例を示す。なお、下記の実施例の育毛剤組成物は、それぞれの組成に従って各剤型の常法に準じて調製をした。なお、(*1)、(*3)、(*5)、及び(*6)は、上記と同じ意味を表す。
下記実施例27〜33について、上記実施例1〜26及び比較例1〜8と同様に評価したところ、いずれも優れた効果を示した。
【0039】
(実施例27)
−育毛剤−
<配合成分>
・ラクトフェリン分解物((A)成分)(*1) 1.0(質量%、以下同様)
・L−塩化カルニチン((B)成分)(*3) 1.0
・6−ベンジルアミノプリン((C)成分)(*5) 0.5
・ポリエチレングリコール300(*6) 3.0
・グリチルリチン酸ジカリウム 0.02
・ポリオキシエチレンオレイルエーテル(10EO) 2.0
・ショ糖ミリスチン酸エステル 0.5
・コレウスエキス 0.5
・クエン酸ナトリウム 適量
・L−メントール 0.3
・香料 0.05
・メチルパラベン 0.1
・エタノール((D)成分) 60.0
・精製水 残部
合計 100.0
質量比〔(A)/(B)〕=1
質量比(C)/〔(A)+(B)〕=0.25
pH4.0
<評価結果>
育毛効果:◎(著効:6匹、有効:2匹)
液外観 :◎
【0040】
(実施例28)
−育毛ローション−
<配合成分>
・ラクトフェリン分解物((A)成分)(*1) 2.0(質量%、以下同様)
・L−塩化カルニチン((B)成分)(*3) 1.0
・6−ベンジルアミノプリン((C)成分)(*5) 1.0
・ポリエチレングリコール300(*6) 3.0
・グリチルリチン酸ジカリウム 0.02
・ニコチン酸アミド 0.1
・L−メントール 0.5
・ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
・メチルパラベン 0.1
・クエン酸ナトリウム 適量
・香料 0.5
・エタノール((D)成分) 60.0
・精製水 残部
合計 100.0
質量比〔(A)/(B)〕=2
質量比(C)/〔(A)+(B)〕=0.33
pH4.0
<評価結果>
育毛効果:◎(著効:7匹 有効:1匹)
液外観 :◎
【0041】
(実施例29)
−育毛ジェル−
<配合成分>
・ラクトフェリン分解物((A)成分)(*1) 1.0(質量%、以下同様)
・L−塩化カルニチン((B)成分)(*3) 1.0
・6−ベンジルアミノプリン((C)成分)(*5) 0.5
・ポリエチレングリコール300(*6) 3.0
・グリチルリチン酸ジカリウム 0.02
・ニコチン酸アミド 0.1
・L−メントール 0.5
・キトサン液 1.0
・アモジメチコン 2.0
・POE(30)フィトステロール 0.5
・塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 2.5
・ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油 3.0
・モノイソステアリン酸テトラグリセリル 5.0
・テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(40) 0.5
ソルビット
・ジヒドロキシベンゾフェノン 0.1
・ヒドロキシエチルセルロース 0.5
・パラオキシ安息香酸メチル 0.1
・無水ピロリン酸ナトリウム 0.2
・クエン酸ナトリウム 適量
・香料 0.5
・エタノール((D)成分) 60.0
・精製水 残部
合計 100.0
質量比〔(A)/(B)〕=1
質量比(C)/〔(A)+(B)〕=0.25
pH4.0
<評価結果>
育毛効果:◎(著効:8匹 有効:0匹)
液外観 :◎
【0042】
(実施例30)
−育毛トニック−
<配合成分>
・ラクトフェリン分解物((A)成分)(*1) 1.5(質量%、以下同様)
・L−塩化カルニチン((B)成分)(*3) 1.0
・6−ベンジルアミノプリン((C)成分)(*5) 0.5
・ポリエチレングリコール300(*6) 3.0
・ピロクトンオラミン 0.1
・ポリエチレングリコール300 0.1
・POP(24)POE(24)グリセリルエーテル 10.0
・ステアロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル 2.0
・ポリオキシエチレンステアリルエーテル(20EO) 2.0
・POP(70)グリセリルエーテル 5.0
・ミリスチン酸イソプロピル 3.0
・L−メントール 0.2
・クエン酸ナトリウム 適量
・ブチルヒドロキシトルエン 0.01
・香料 0.05
・エタノール((D)成分) 60.0
・精製水 残部
合計 100.0
質量比〔(A)/(B)〕=1.5
質量比(C)/〔(A)+(B)〕=0.2
pH4.0
<評価結果>
育毛効果:◎(著効:6匹 有効:2匹)
液外観 :◎
【0043】
(実施例31)
−育毛スプレー−
<配合成分>
〔原液〕
・ラクトフェリン分解物((A)成分)(*1) 1.0(質量%、以下同様)
・L−塩化カルニチン((B)成分)(*3) 0.5
・6−ベンジルアミノプリン((C)成分)(*5) 0.5
・イソプロピルメチルフェノール 0.2
・フォルスコリン 0.1
・ラウリン酸ソルビタン 0.5
・ピログルタミン酸イソステアリン酸POE(40) 1.5
硬化ヒマシ油
・POP(24)グリセリルエーテル 12.0
・オレイン酸エチル 0.1
・クエン酸ナトリウム 適量
・ショ糖ラウリン酸エステル 0.5
・香料 0.1
・L−メントール 0.1
・エタノール((D)成分) 60.0
原液合計 100.0
質量比(A)/(B)=2
質量比(C)/〔(A)+(B)〕=0.33
pH4.0
<評価結果>
育毛効果:◎(著効:6匹 有効:2匹)
液外観 :◎
〔スプレー配合〕
・上記原液 80質量%
・LPG 20質量%
合計 100質量%
【0044】
(実施例32)
−育毛トニックスプレー−
<配合成分>
〔原液〕
・ラクトフェリン分解物((A)成分)(*1) 1.0(質量%、以下同様)
・L−塩化カルニチン((B)成分)(*3) 1.0
・6−ベンジルアミノプリン((C)成分)(*5) 0.5
・β−グリチルレチン酸 0.05
・スウェルチアマリン 0.1
・ユカフォーマR205S*A 10.0
・ジグルコシル没食子酸 0.5
・塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.1
・POP(67)グリセリルエーテル 20.0
・ポリエチレングリコール300 0.5
・ピログルタミン酸オレイン酸グリセリル 1.5
・L−メントール 0.5
・クエン酸ナトリウム 適量
・香料 適量
・エタノール((D)成分) 60.0
・精製水 残部
原液合計 100.0
*A:N−メタクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体
質量比〔(A)/(B)〕=1
質量比(C)/〔(A)+(B)〕=0.25
pH4.0
<評価結果>
育毛効果:◎(著効:6匹 有効:2匹)
液外観 :◎
〔スプレー配合〕
・上記原液 84.5質量%
・DME 15.0質量%
・窒素 0.5質量%
合計 100.0質量%
【0045】
(実施例33)
−育毛トニックスプレー−
<配合成分>
〔原液〕
・ラクトフェリン分解物((A)成分)(*1) 2.0(質量%、以下同様)
・L−塩化カルニチン((B)成分)(*3) 1.0
・6−ベンジルアミノプリン((C)成分)(*5) 1.0
・ピロクトンオラミン 0.05
・ミノキシジル 0.5
・プロピレングリコール 0.5
・ラウロイルグルタミン酸ジヘキシルデシル 1.0
・POP(70)グリセリルエーテル 17.0
・L−メントール 0.2
・クエン酸ナトリウム 適量
・エタノール((D)成分) 60.0
・精製水 残部
原液合計 100.0
質量比〔(A)/(B)〕=2
質量比(C)/〔(A)+(B)〕=0.33
pH4.0
<評価結果>
育毛効果:◎(著効:6匹 有効:2匹)
液外観 :◎
〔スプレー配合〕
・上記原液 84.5質量%
・LPG 15.0質量%
・窒素 0.5質量%
合計 100.0質量%
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の育毛剤組成物は、例えば、育毛効果を有するヘアトニック、ヘアクリーム、ヘアリキッド、シャンプー、ポマード、リンス、外用剤などに幅広く用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ラクトフェリン分解物、(B)L−カルニチン化合物、(C)6−ベンジルアミノプリン、及び(D)炭素数2〜4の低級アルコール55質量%〜80質量%を含有し、
前記(A)ラクトフェリン分解物と前記(B)L−カルニチン化合物との質量比〔(A)/(B)〕が、0.1〜5であることを特徴とする育毛剤組成物。
【請求項2】
(A)ラクトフェリン分解物及び(B)L−カルニチン化合物に対する(C)6−ベンジルアミノプリンの質量比〔(C)/((A)+(B))〕が、0.1〜0.5である請求項1に記載の育毛剤組成物。
【請求項3】
(B)L−カルニチン化合物が、L−塩化カルニチンである請求項1から2のいずれかに記載の育毛剤組成物。

【公開番号】特開2011−46690(P2011−46690A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165994(P2010−165994)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】