説明

肺流体状態の監視

測定されるインピーダンス指示信号の心臓インピーダンス指示成分に関する情報を使用して、被検者において肺浮腫の有無を監視するなどの、肺流体状態を監視するシステムおよび方法。種々の例では、心臓インピーダンス指示成分の複数の心周期にわたる振幅または寄与変化が使用されて、肺流体状態指標が計算され、提供される。種々の例では、心臓インピーダンス指示成分の振幅または寄与傾向の減少は、被検者の肺内の流体量の増加を意味する。それは、心臓を横切る、直前に注入された胸部インピーダンス測定電流の大部分が、肺内への流体蓄積によって生じる抵抗経路の減少によって肺を通して再経路指定されるからである。別の例では、インピーダンス指示信号、そのため、心臓インピーダンス指示成分の測定は、深吸気または深呼気の一方または組合せにおいて行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医療システムおよび方法に関する。制限としてではないが、より詳細には、本特許文献は、測定される胸部インピーダンス指示信号の心臓成分に関する情報を使用して肺流体状態を監視するよう構成される医療システムおよび方法に関する。
【0002】
優先権の利益は、2007年7月2日に出願された米国特許出願第11/772,352号に対して請求され、その出願は、参照により本明細書に組込まれる。
【背景技術】
【0003】
過剰な胸部流体貯留は、種々の形態をとり、異なる原因を有しうる。例として、胸部流体蓄積は、被検者の肺内へのまたは被検者の肺の周りへの血管外流体の蓄積を伴う肺浮腫から生じる可能性がある。
【0004】
肺浮腫の1つの原因は、単に「心不全」と呼ばれることがあるうっ血性心不全(CHF)である。CHFは、弱化した心筋の増大として概念化されうる。損傷した心筋は、血液の心拍出量の低下をもたらす。その結果、血液は、肺の血管内に貯留する傾向があり、正常な酸素交換に影響を及ぼす。こうした理由で、肺浮腫は、CHFのインジケータでありうる。
【0005】
肺浮腫は、早急な介護を必要とする医療上の緊急事態を呈しうる。しかし、早期に検出され、即座に処置される場合、肺浮腫患者についての予後は良好になりうる。検出されないままにされ、その結果、処置されない場合、肺浮腫は、死をもたらしうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第11/772,352号
【特許文献2】米国特許出願第11/419,120号
【特許文献3】米国特許出願第10/921,503号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者等はとりわけ、心不全によって提示される1つの問題が、その適時の検出および処置であることを認識した。発明者等はさらに、被検者の肺などの被検者の胸部領域内への過剰の流体蓄積についての、強化されただけでなく単純な監視についての満たされていない必要性が存在することを認識した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本特許文書は、とりわけ、測定されるインピーダンス指示信号の心臓インピーダンス指示成分に関する情報を使用して、肺浮腫の有無を監視するなどの、肺流体状態を監視するシステムおよび方法を述べる。種々の例では、心臓インピーダンス指示成分の複数の心周期にわたる振幅または寄与変化が使用されて、肺流体状態指標が計算され、提供される。種々の例では、心臓インピーダンス指示成分の振幅または寄与傾向の減少は、被検者の肺内の流体量の増加を意味する。それは、心臓を横切る、直前に注入された胸部インピーダンス測定電流の大部分が、肺内への流体蓄積によって生じる抵抗経路の減少によって肺を通して再経路指定されるからである。別の例では、インピーダンス指示信号、そのため、心臓インピーダンス指示成分の測定は、深吸気または深呼気の一方または組合せにおいて行われる。
【0009】
例1では、システムは、2つ以上の電極間に電気エネルギーを注入し、被検者の胸部領域においてそれにより生成される電位差を、同じかまたは異なる2つ以上の電極間で測定するよう構成される電気インピーダンス測定回路を含む埋め込み型医療デバイスと、注入された電気エネルギーおよび測定された電位差に関する情報を受信する入力を含む埋め込み型のまたは外部のプロセッサ回路とを備え、プロセッサ回路は、電気エネルギーおよび電位差に関する情報を使用して、インピーダンス指示信号を計算するよう構成され、プロセッサ回路は、さらに、肺流体状態指標を提供するために、インピーダンス指示信号の心臓インピーダンス指示成分の所定時間にわたる変化を確定するよう構成される。
【0010】
例2では、例1のシステムは、任意選択で、第1の心臓インピーダンス指示成分の振幅を第2の心臓インピーダンス指示成分の振幅と比較するよう構成される比較器回路を備え、プロセッサ回路は、肺流体状態指標を提供するために、比較に関する情報を使用するよう構成される。
【0011】
例3では、例1〜2のシステムは、任意選択で、心臓インピーダンス指示成分の所定時間にわたる振幅変化を1つまたは複数の肺流体状態基準と比較するよう構成される比較器回路を備え、プロセッサ回路は、肺流体状態指標を提供するために、比較に関する情報を使用するよう構成される。
【0012】
例4では、例1〜3のシステムは、任意選択で、インピーダンス指示信号に対して心臓インピーダンス指示成分の寄与係数を計算するよう構成される寄与回路を備え、プロセッサ回路は、肺流体状態指標を提供するために、寄与係数の変化に関する情報を使用するよう構成される。
【0013】
例5では、例1〜4のシステムは、任意選択で、心臓インピーダンス指示成分の所定時間にわたる変化に関する情報を格納するよう構成されるメモリ回路を備え、変化に関連する所定時間は、呼吸サイクル長の時間を越える。
【0014】
例6では、例1〜5のシステムは、任意選択で、心臓インピーダンス指示成分の所定時間にわたる変化または肺流体状態指標の少なくとも一方に関する情報を少なくとも部分的に使用して、被検者に供給されるレジメンを始動するかまたは調整するよう構成されるレジメン制御回路を備える。
【0015】
例7では、例1〜6のシステムは、任意選択で、埋め込み型医療デバイスに通信可能に結合し、かつ、心臓インピーダンス指示成分の所定時間にわたる変化または肺流体状態指標の少なくとも一方のユーザ検出可能表示を含む外部ユーザインタフェースデバイスを備える。
【0016】
例8では、例7のシステムは、任意選択で、ユーザからプログラミング情報を受信し、プログラミング情報を埋め込み型医療デバイスへ通信するよう構成されるユーザ入力デバイスを、外部ユーザインタフェースデバイスが含むように構成される。
【0017】
例9では、例1〜8のシステムは、任意選択で、深吸気または深呼気の一方または組合せの瞬間を指示する呼吸信号を生成するよう構成される呼吸センサを備え、電気インピーダンス測定回路は、呼吸信号のときにインピーダンス指示信号を測定するよう構成される。
【0018】
例10では、例1〜9のシステムは、任意選択で、被検者の姿勢を指示する姿勢信号を生成するよう構成される姿勢センサを備え、電気インピーダンス測定回路は、指定された
姿勢信号のときにインピーダンス指示信号を測定するよう構成される。
【0019】
例11では、方法は、少なくとも2つの電極間で、被検者の胸部領域のインピーダンスを指示するインピーダンス指示信号を測定すること、インピーダンス指示信号から、心臓インピーダンス指示成分に関する振幅寄与情報を抽出すること、および、心臓インピーダンス指示成分に関する抽出された振幅寄与情報を少なくとも部分的に使用して肺流体状態指標を計算することを含む。
【0020】
例12では、例11の方法は、任意選択で、インピーダンス指示信号を測定することが、被検者の胸部領域に埋め込まれた第1電極と第2電極との間に電気エネルギーを注入すること、および、被検者の胸部領域に埋め込まれた第3電極と第4電極との間で電位差を測定することを含むように構成され、電位差は、第1電極と第2電極との間に注入された電気エネルギーから生じる。
【0021】
例13では、例12の方法は、任意選択で、心臓インピーダンス指示成分に関する抽出された振幅寄与情報を使用して被検者の心臓を横切る注入された電気エネルギーの量を確定することを含み、肺流体状態指標を計算することは、心臓を横切る注入された電気エネルギーの量を使用することを含む。
【0022】
例14では、例12の方法は、任意選択で、心臓インピーダンス指示成分に関する抽出された振幅寄与情報を使用して被検者の肺を横切る注入された電気エネルギーの適切な量を確定することを含み、肺流体状態指標を計算することは、肺を横切る注入された電気エネルギーの量を使用することを含む。
【0023】
例15では、例12の方法は、任意選択で、電気エネルギーを注入することが、左心室リード線上に配設される電極と、埋め込み型医療デバイスのハウジング電極またはヘッダ電極の一方との間に電流を注入することを含み、電位差を測定することが、左心室リード線上に配設される電極と、ハウジング電極またはヘッダ電極の一方との間で電位を検出することを含むように構成される。
【0024】
例16では、例11〜15の方法は、任意選択で、心臓インピーダンス指示成分の呼吸サイクル長の時間を越える期間にわたって振幅変化を確定することを含む、第1の心臓インピーダンス指示成分の振幅を第2の心臓インピーダンス指示成分の振幅と比較することを含む。
【0025】
例17では、例16の方法は、任意選択で、1つまたは複数の肺流体状態基準を導出し、心臓インピーダンス指示成分の振幅変化を1つまたは複数の肺流体状態基準と比較することを含む。
【0026】
例18では、例11〜17の方法は、任意選択で、被検者の心臓と肺との界面の近くに2つ以上の電極の少なくとも1つの電極を配置することを含む。
例19では、例11〜18の方法は、任意選択で、インピーダンス指示信号または心臓インピーダンス指示成分の少なくとも一方から、姿勢作用、血液抵抗作用、身体活動状態作用、または心臓作用のうちの1つまたは組合せを減衰させることを含む。
【0027】
例20では、例11〜19の方法は、任意選択で、計算される肺流体状態指標を防止するか、または、最小にすることを含む。
例21では、例11〜20の方法は、任意選択で、第1の注入電気エネルギー周波数でインピーダンス指示信号を測定し、第1の注入電気エネルギー周波数と異なる第2の注入電気エネルギー周波数でインピーダンス指示信号を測定すること、および、第1および第
2の注入周波数で測定されるインピーダンス指示信号から抽出される心臓インピーダンス指示成分情報を使用して、計算された肺流体状態指標の信頼度レベルを確定することを含む。
【0028】
例22では、例11〜21の方法は、任意選択で、心臓インピーダンス指示成分に関する抽出された振幅寄与情報を少なくとも部分的に使用して、肺1回換気量状態指標を計算することを含む。
【0029】
例23では、例11〜22の方法は、任意選択で、インピーダンス指示信号を測定することが、深吸気または深呼気の一方または組合せにおいてインピーダンスを測定することを含むように構成される。
【0030】
例24では、例11〜23の方法は、任意選択で、振幅寄与情報を抽出することが、心臓インピーダンス指示成分とインピーダンス指示信号の比を計算することを含むように構成される。
【0031】
例25では、例11〜24の方法は、任意選択で、肺流体状態指標を計算することは、心臓インピーダンス指示成分の振幅寄与の減少を所定時間にわたって検出することを含むように構成される。
【0032】
例26では、例11〜25の方法は、任意選択で、肺流体状態指標を計算することは、肺浮腫の有無を検出することを含むように構成される。
有利には、本流体監視システムおよび方法は、既存のデバイスのファームウェアまたはプログラミング変更などによって、既存の埋め込み型医療デバイスに関して使用するように設計されうり、それにより、コスト節約をもたらす。さらに、本システムおよび方法は、被検者の胸部領域内の過剰の流体蓄積の強化された監視を実現し、そのため、現在利用可能であるのに比べて、胸部流体蓄積についてのより適時のまたは正確な検出を提供する可能性がある。こうした検出は、とりわけ、測定された胸部インピーダンス指示信号を生成し、この信号から、複数の心周期にわたる心臓の振幅傾向または(測定された総合胸部インピーダンスに対する)寄与傾向などの、心臓インピーダンス指示成分に関する情報を抽出することによって可能にされる。抽出され、任意選択で、傾向付けされると、この心臓インピーダンス指示成分情報が使用されて、肺流体蓄積の存在または切迫の指標などの肺流体状態が確定されうる。
【0033】
過去の流体監視システムおよび方法と違って、本システムおよび方法を使用して肺流体蓄積の存在または切迫の指標を確定することは、胸部インピーダンス指示信号のハイパスフィルタリングされた低周波直流(DC)またはほぼDC成分に依存しない。むしろ、肺流体蓄積の存在または切迫の指標は、少なくとも一部の例では、高周波交流(AC)成分を含む胸部インピーダンス指示信号の使用によって見出されうり、それにより、より単純な監視が可能になり、実施するのにコストがかからない可能性がある。
【0034】
本肺流体監視システムおよび方法の、これらのまた他の例、利点、および特徴は、以下の詳細な説明においてある程度述べられるであろう。したがって、この概要は、本特許文書の主題の概要を提供することを意図される。本発明の排他的なまたは網羅的な説明を提供することは意図されない。詳細な説明は、本特許文書に関するさらなる情報を提供するために含まれる。
【0035】
図面では、同一の参照符号は、いくつかの図を通して類似のコンポーネントを述べる。異なる添え字を有する同一の参照符号は、類似のコンポーネントの異なる例を示す。図面は、一般に、本特許文書で説明される種々の実施形態を、制限としてではなく例として示
す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】被検者の肺浮腫の種々の原因および指標を示すブロック図。
【図2】被検者の心臓および肺ならびに被検者の心臓と肺との間の相対的な配置の略図。
【図3A】測定される胸部インピーダンス指示信号の心臓インピーダンス指示成分に関する振幅または寄与情報の一方または両方を使用して、被検者の肺内の過剰な流体蓄積を監視するよう構成されるシステムの種々の概念的な実施例、および、システムが使用されうる環境を示す略図。
【図3B】測定される胸部インピーダンス指示信号の心臓インピーダンス指示成分に関する振幅または寄与情報の一方または両方を使用して、被検者の肺内の過剰な流体蓄積を監視するよう構成されるシステムの種々の概念的な実施例、および、システムが使用されうる環境を示す略図。
【図4A】胸部インピーダンス測定で使用される、注入される電流または他の電気エネルギーであって、指定されたマグニチュード、周波数、および継続時間を有する、注入される電流または他の電気エネルギーの1つの概念的な実施例を示すタイミング図。
【図4B】測定される胸部インピーダンス指示信号の心臓インピーダンス指示成分の所定時間にわたりほぼ減少する脈動振幅を表す信号曲線の1つの概念的な実施例を示すプロット(心臓インピーダンス指示成分信号の振幅の減少は肺流体蓄積の考えられる指標を提供する)。
【図5】測定される胸部インピーダンス指示信号の心臓インピーダンス指示成分に関する情報を使用して、被検者の肺内の過剰な流体蓄積を監視するよう構成されるシステムの1つの概念的な実施例を示すブロック図。
【図6】本流体監視システムおよび方法で使用するためのレジメン制御回路の1つの概念的な実施例を示すブロック図。
【図7】測定される胸部インピーダンス指示信号の心臓インピーダンス指示成分に関する振幅または寄与情報の一方または両方を使用して、被検者の肺内の過剰な流体蓄積を監視する1つの概念的な方法を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
一般に、通常、単に「浮腫」と呼ばれる被検者のある領域内の過剰な流体蓄積は、被検者の身体内での1つまたは複数のホメオスタシスプロセスの機能不全または代償不全として概念化されうる。身体は、通常、適切な圧力ならびに塩およびタンパク質の濃度を維持することによって、また、過剰な流体を積極的に除去することによって、身体内の流体の蓄積を防止する。疾病が、これらの正常な身体メカニズムに影響を及ぼす場合、または、正常な身体メカニズムが、流体蓄積についていくことができない場合、結果として、肺浮腫などの浮腫が生じうる。
【0038】
肺浮腫をもたらすか、または、肺浮腫に影響を及ぼしうるいくつかの状態または疾病が存在する。図1に示すように、これは、とりわけ、心不全102、左側心筋梗塞104、高血圧106、高山病108、肺気腫110、リンパ系に影響を及ぼすガン112、タンパク質濃度を乱す疾病114、肺胞の充満をもたらす、有毒化学物質の吸入によって引き起こされるような上皮病態116を含む。肺浮腫100は、多くの状態または疾病の徴候でありうるが、肺浮腫100が、心臓循環の不全102の徴候でありうるという見通しは、その性質が深刻であるため、介護者(たとえば、医療専門家にとって第1の関心事であることが多い。
【0039】
残念ながら、肺浮腫100の発生についての、担当介護者が通常入手する最初の指標は、疾病プロセスの非常に後期のものであり、たとえば、そのときには、最初の指標は、腫
脹118、顕著な体重増加120、頚静脈膨満122、被検者が気付くほどに抗しがたい呼吸困難124によって身体的に現れ、被検者は、その後、自分の介護者によって検査されることになる。心不全患者の場合、こうした身体的に明らかな時期における入院がおそらく必要とされることになる。
【0040】
肺浮腫などの浮腫の切迫を適時にかつ正確に検出し、関連する入院を回避しようとして、本携帯式流体監視システムおよび方法は、測定される胸部インピーダンス指示信号の心臓インピーダンス指示成分を使用する。心臓インピーダンス指示成分の振幅傾向または(測定される総合胸部インピーダンスに対する)寄与傾向の一方または両方を調べることによって、肺流体蓄積の存在または切迫の指標が、計算され、提供されうる。
【0041】
本流体監視システムおよび方法は、本発明者等によって行われたいくつかの認識に基づく。一実施例として、肺内の流体が多いかまたは空気が少ないときなど、肺が、導電性が高いとき、胸部インピーダンス測定を始動するのに使用される、注入される電流または他の電気エネルギーは、流体蓄積によって生じる抵抗経路の減少によって肺を通過し、注入されたエネルギーの少量が、心臓および静脈系を通過することになることを、本発明者等は見出した。心臓および静脈系を通過する注入エネルギーが少量である結果として、胸部インピーダンス指示信号の心臓指示成分は、振幅または総合胸部インピーダンス測定振幅に対する寄与の一方または両方が小さくなることになる。逆に、肺が、流体が少なく、したがって、導電性が低い場合、注入されたエネルギーの大部分が、心臓および静脈系を通過することになり、大きな心臓指示成分振幅および/または寄与がもたらされる。相応して、心臓インピーダンス指示成分の振幅または寄与レベルの一方または両方の変化を監視し、そのため、注入される電流またはエネルギーによって横切られる経路を間接的に監視することによって、肺流体状態指標が計算され、提供される可能性があると思われる。
【0042】
図2は、右肺204と左肺206との間に配置された心臓202の正面図である。上大静脈208は、被検者の上肢および胸部から脱酸素化血液を受取り、「右心房(right atrium)」と一般に呼ばれる右心房腔210に血液を移す。左心房腔は、肺204、206から酸素化血液を受取る。心房(すなわち、右心房210および左心房)は、その後収縮し、それぞれ、「右心室」と一般に呼ばれる右心室腔212、および、左肺206によって覆われる「左心室」と一般に呼ばれる左心室腔に強制的に血液を入れる。この心房収縮後、心周期は拡張期の終わりに達し、心室は、拡張し、血液で満たされる。右心室212および左心室は、心臓202から血液を圧送する血液ポンプの役をする。右心室212は、脱酸素化血液を、肺動脈214を通して肺204、206に圧送する。肺204、206内で、血液は、再酸素化され、その後、先に説明したように、左心房に移される。左心房を通して肺204、206から酸素化血液を受取った左心室は、大動脈216、左心室を出る大きな動脈を通して、酸素化血液を身体に圧送する。
【0043】
図2では、大動脈弓として知られる大動脈216のセクションが示される。実質的に垂直に延びるものとして示される心室間静脈218は、右心室212と左心室との間の分割を示す。図2に示すように、肺204、206は、心臓202に非常に接近しており、最も接近する部分は、左心室および心房210である。右心室は、対照的に、前側で、ほぼ右肺204と左肺206との間で、肺204、206から離れて位置する。
【0044】
図3A〜3Bは、(切り取り部分303によって)被検者301の心臓202および肺204、206、ならびに、測定される胸部インピーダンス指示信号の心臓インピーダンス指示成分に関する振幅または寄与情報の一方または両方を使用して、左肺206などの肺内の過剰な流体蓄積を監視するよう構成されるシステム300を示す。図3A〜3Bでは、システム300は、CRMデバイスなどの胸埋め込み式IMD302を含み、胸埋め込み式IMD302は、1つまたは複数の電極保持心臓リード線304、306によって
、被検者301の心臓202に結合する。システム300はまた、テレメトリ312または別の通信技法などを使用することによって、IMD302に関して無線通信を提供する1つまたは複数のプログラマまたは他の外部ユーザインタフェースデバイス308(近傍)、310(遠方)を含む。図示するように、外部ユーザインタフェースデバイス308、310は、とりわけ、測定される胸部インピーダンス指示信号、インピーダンス指示信号の心臓インピーダンス指示成分、または、計算された肺流体状態指標の少なくとも1つに関する情報を、被検者301またはその介護者に、テキストでまたはグラフィックで中継するための、LCDまたはLEDディスプレイなどのユーザ検出可能表示314を含みうる。外部ユーザインタフェースデバイス308、310は、ユーザからプログラミング情報を受信し、プログラミング情報をIMD302に通信するよう構成されるユーザ入力デバイス316を含みうる。
【0045】
図3Aでは、IMD302は、胸部インピーダンス指示信号を測定するよう構成される電気インピーダンス測定回路を収容するハウジング318を含む。IMD302は、電極保持左心室リード線304の近位端を受取るための左心室ポートをIMD302のヘッダ320内に含みうる。左心室リード線304の遠位端は、静脈系210内に導入され、上大静脈208(図2)を下がり、右心房210に入り、オリフィス322を通って冠静脈洞に入り、その後さらに、左心室324を覆って心外膜に延びる冠静脈に入る。
【0046】
図示する実施例では、左心室リード線304は、リード線304を通して延びる各導体に電気接続される2つの電極326、328を含む。左心室リード線304が、左心室リード線ポートによって受取られると、導体が、IMD302内の導電性ワイヤに接続し、それにより、電気インピーダンス測定回路と電極326、328との間の電気接続が確立される。この実施例では、左心室リード線304上での相対位置のために、電極326は左心室近位電極と呼ばれ、一方、電極328は左心室遠位電極と呼ばれうる。図3Aに示す左心室リード線304は、本質的に2極性であるが、リード線304は、任意選択で、さらなるまたは少数の電極を含み、さらに、心臓202を通過する、図示し述べる経路と異なる経路に追従しうる。
【0047】
IMDハウジング318の外部表面上のハウジング電極330は、電気インピーダンス測定回路に電気接続されて、3極電極構成を完成しうり、3極電極構成において、左心室遠位電極328などのリード線電極と、ハウジング電極330との間に電気エネルギー(たとえば、電流)が注入され、注入されたエネルギーによって生成される電位差(すなわち、電圧)が、他のリード線電極(この実施例では、左心室近位電極326)とハウジング電極330との間で測定されうる。IMD302は、任意選択で、4極電極構成を容易にするために、第2ハウジングまたはヘッダ電極332を含みうり、それにより、電気エネルギーが、たとえば、左心室遠位電極328とハウジング電極330との間に注入され、エネルギーによって生成される応答性電位差が、左心室近位電極326とヘッダ電極332との間で測定される。
【0048】
図3Bでは、IMD302は、左心室リード線304の近位端を受取るための左心室ポートをIMD302のヘッダ320内に含むだけでなく、電極保持右心房リード線306の近位端を受取る右心房ポートもまた含む。右心房リード線306の遠位端は、この実施例では、静脈系に導入され、上大静脈208(図2)を下に進み、右心房210に入るものとして示される。図示する実施例では、右心房リード線306は、リード線306を通して延びる導体に電気接続される2つの電極334、336を含む。右心室リード線306が、右心室リード線ポートによって受取られると、導体が、IMD302内の導電性ワイヤに接続し、それにより、電気インピーダンス測定回路と電極334、336との間の電気接続が確立される。この実施例では、右心房リード線306上での相対位置のために、電極334は右心房近位電極と呼ばれ、一方、電極336は右心室遠位電極と呼ばれう
る。図3Bに示す右心房リード線306は、本質的に2極性であるが、リード線306は、任意選択で、さらなるまたは少数の電極を含み、さらに、心臓202を通過する、図示し述べる経路と異なる経路に追従しうる。
【0049】
図3Bにおける右心房リード線306の付加は、胸部インピーダンス指示信号を測定する4極電極構成を可能にし、それにより、たとえば、ハウジング電極330と心室遠位電極328との間に電気エネルギーが注入され、エネルギーによって生成される電位差が、左心室近位電極と、右心房近位電極334または右心房遠位電極336の一方の電極との間で測定される。この実施例では、左心室リード線304が利用可能でない場合、胸部インピーダンス指示信号は、ハウジング電極330と右心房遠位電極336との間に電気エネルギーを注入することによって測定され、エネルギーによって生成される応答性電位差が、ハウジング電極330またはヘッダ電極332と、右心房近位電極334との間で測定されうる。
【0050】
人の身体はいくつかの胸部器官、組織、および流体を含むため、胸部インピーダンスの測定は、種々の器官、組織、および流体のそれぞれからの寄与を含みうる。たとえば、心筋、肺、胸筋、胸脂肪、肝臓、腎臓、膵臓、胃、骨格筋、骨、軟骨、血液、ならびに他の組織および流体の抵抗はそれぞれ、胸部インピーダンスの測定に寄与しうる。したがって、測定される胸部インピーダンスの変化は、これらのまた他の器官または組織の抵抗の変化によって生じうる。
【0051】
そのため、胸部インピーダンスなどのインピーダンスを測定するとき、肺浮腫などの1つまたは複数の病態または状態を検出するかまたは評価するために、1つまたは複数の特定の関心領域に対して感度が高い電極構成を使用してインピーダンス指示信号を測定することが望ましい。1つまたは複数の関心領域に対して感度が高い電極構成は、関心器官(複数可)または関心組織(複数可)の抵抗変化についての高感度の向上した検出を可能にする可能性がある。それは、関心器官(複数可)または関心組織(複数可)の抵抗変化が、測定されるインピーダンスに相応して大きな影響を及ぼすことになるからである。図3A〜3Bの実施例では、心臓202の左心室324および右心房210の近くへ、それぞれ、左心室リード線304および右心房リード線306を配置することは、心臓および肺204、206の近接性によって、胸部インピーダンス、より具体的には、心臓および肺インピーダンスを測定するための適切なロケーションの実施例を提供する。図示しないが、右心室電極を有する右心室リード線または左心室心外膜電極を有する左心室リード線はまた、1つまたは複数の胸部インピーダンス測定構成で使用されうる。
【0052】
種々の実施例では、IMD302内の電気インピーダンス測定回路は、リード線、ヘッダ、またはハウジング電極と共に、少なくとも2つの埋め込み式電極間に比較的小さな振幅の電気エネルギー(たとえば、電流)を注入し、先に説明したように、(同じかまたは異なる)少なくとも2つの埋め込み式電極間で応答性誘導電位差を同時に測定することによって、胸部インピーダンス指示信号を測定する。注入される電気エネルギーのマグニチュードが通常指定されるため、応答性電位差の測定は、胸部インピーダンス指示信号測定が、オームの法則(すなわち、インピーダンス指示信号=電位差/注入電流)から確定されることを可能にする。
【0053】
胸部および他の流体蓄積評価のために構成されるいくつかのシステムおよび方法は、高周波AC信号成分の複雑なフィルタリング除去などによって、低周波DCまたはほぼDC成分に的を絞る。従来型のハイパスフィルタリング式システムおよび方法と違って、本流体監視および方法は、インピーダンス指示信号がフィルタリングされてそのDC成分またはほぼDC成分になることを最初に必要とすることなく、流体蓄積評価が行われることを可能にする。注目すべきことは、本システムおよび方法は、本明細書で説明した方法と同
じ方法でDCまたはほぼDC成分を使用して、流体蓄積を監視することである。
【0054】
先に述べたように、たとえば肺204、206が、肺内の流体が多いかまたは空気が少ないときなど、導電性が高いとき、胸部インピーダンス測定で使用される注入された電気エネルギーの大部分は、肺204、206を通過し、エネルギーの少量が、心臓202領域によって影響を受け、心臓202領域を通過することになることを本発明者等は見出した。心臓202領域を通過する注入エネルギーが少量である結果として、胸部インピーダンス指示信号の心臓指示成分は、振幅または(総合)胸部インピーダンス測定値に対する寄与の一方または両方において小さくなることになる。逆に、肺204、206が、流体が少なく、したがって、導電性が低い場合、注入されるエネルギーの大部分が心臓202領域を通過することになり、より大きな心臓指示成分の振幅および/または寄与がもたらされる。
【0055】
相応して、エネルギーの注入中のインピーダンス指示信号の心臓インピーダンス指示成分の、振幅または総合胸部インピーダンス測定値に対する寄与などのいくつかの特性を監視することによって、システム300は、注入されるエネルギーによって横切られる胸部経路を確定し、そうするときに、肺204、206内の流体量に関する情報を取得しうる。一実施例では、左肺206内の流体レベルが低レベル340から高レベル342へ増加するにつれて、心臓インピーダンス指示成分の振幅の減少が、システム300によって検出され、格納され、通信され、それにより、肺流体蓄積の存在または切迫の指標が提供され、おそらく、肺浮腫の指標が提供される。たとえば、図4Bを参照されたい。同様に、別の実施例では、左肺206内の流体レベルが低レベル340から高レベル342へ増加するにつれて、心臓インピーダンス指示成分の総合測定胸部インピーダンスに対する寄与の減少が、システム300によって認識され、格納され、通信され、肺流体蓄積の存在または切迫の指標が提供される。
【0056】
こうした心臓インピーダンス指示成分情報は、単独で、または、胸部インピーダンス信号の低周波(DCまたはほぼDC)成分情報などの、流体蓄積に関する他の情報と共に使用されうる。別の実施例では、(流体蓄積に加えて)空気含有量が上述した電流分岐をもたらすため、肺1回換気量が、本明細書で説明される心臓インピーダンス指示成分技法を使用して監視されうる。こうした1回換気量情報は、胸部インピーダンス信号の心臓インピーダンス指示成分情報または低周波(DCまたはほぼDC)成分に加えて使用されて、肺流体状態の指標が提供される。
【0057】
図4Aは、2つの埋め込み式電極間に注入され、かつ、2つの埋め込み式電極間に電位差(電圧)を誘発させるのに使用される、刺激以下の電流または他の電気エネルギーパルス列の1つの概念的な実施例を示すタイミング図である。オームの法則に関連する、注入されるエネルギーおよび応答性電位差に関する情報を使用して、胸部インピーダンス指示信号などのインピーダンス指示信号が確定されうる。一実施例では、注入される電流または他のエネルギーパルス列は、電極における好ましくない分極および電解劣化作用を回避するために、交流(AC)である。さらに、注入される電流は、心臓刺激を引き起こさないマグニチュード、周波数、および継続時間を有する。1つのこうした実施例では、注入される電流は、約50KHz〜100KHzの周波数を含む。
【0058】
任意選択で、心筋および胸部インピーダンス指示信号が、異なる注入エネルギー周波数で異なるシグネチャを有することに基づいて、測定されるインピーダンス指示信号の感度(たとえば、ユーザが検出するかまたは処置したいと思うものを効率的に検出する検出スキームの能力)または特異性(たとえば、ユーザが検出するかまたは処置したいと思うものについての誤ったまたは「偽りの(false)」検出を回避する検出スキームの能力)を高
めるなどのために、2つ以上の注入周波数が、本流体監視システム300によって使用さ
れうる。そのため、異なる注入エネルギー周波数で測定される胸部インピーダンス指示信号の、たとえば心臓インピーダンス指示成分の振幅が、所定時間にわたって同様の変化を示す場合、変化が、流体蓄積によるものであり、心筋の内因的特性などの1つまたは複数の他の因子によるものではないという、信頼性の高い判断が行われうる。
【0059】
図4Bは、測定される胸部インピーダンス指示信号の心臓インピーダンス指示成分の所定時間にわたりほぼ減少する振幅を表す信号曲線404の概念的な実施例を示すプロット402である。この実施例では、心臓インピーダンス指示成分信号は、第1の時間においてAの振幅を、第2の時間においてBの減少した振幅を有する。いろいろな実施例では、第2の時間は、第1の時間より、何時間、何日、または何週も時間的に遅れる。先に説明したように、心臓インピーダンス指示成分信号のこの減少する脈動振幅は、肺浮腫などの過剰な肺204,206(図3A)流体蓄積を示しうる。
【0060】
図5は、測定される胸部インピーダンス指示信号の心臓インピーダンス指示成分に関する情報を使用することなどによって、被検者の肺204、206内の過剰な流体蓄積を監視するよう構成されるシステムの概念的な実施例を、制限としてではなく例として一般的に示すブロック図である。この実施例では、システム300は、電極326、328を有する左心室リード線304および電極334、336を有する右心房リード線306などの1つまたは複数の電極保持血管内リード線によって、被検者の心臓202に結合される密封式IMD302、ならびに、1つまたは複数のプログラマまたは他の外部ユーザインタフェースデバイス308(近傍)、310(遠方)を含む。図示する実施例では、IMD302は、肺流体蓄積を評価するために指定された時間に胸部インピーダンスを測定する回路要素および外部コンポーネントとインタフェースする通信回路502を含む。
【0061】
通信回路502は、近傍の外部ユーザインタフェースデバイス308の通信回路と無線通信するよう構成されうる。いくつかの実施例では、通信回路502は、近傍の外部通信リピータ504を使用することなどによって、遠方の外部ユーザインタフェース310の通信回路と無線通信するよう構成される。1つのこうした実施例では、外部通信リピータ504は、インターネットまたは電話接続506を介して遠方の外部ユーザインタフェース316に結合される。インターネットまたは電話接続506は、いくつかの実施例では、外部通信リピータ504が、電子医療データ記憶装置508と通信することを可能にする。さらなる実施例では、IMD302の通信回路502は、外部体重計510または他の外部センサの通信回路に通信可能に結合する。適した外部体重計510の一実施例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、注入されたエネルギーによって生成される電位を測定するのに使用される外部体重計の説明を含む米国特許出願第11/419,120号に記載される。ある実施例では、外部体重計510は、第1内部電極と第2内部電極との間に電気信号が注入されることに応答して、第1外部電極と第2外部電極との間で電気信号を測定するよう構成されうる。
【0062】
本システム300は、胸部インピーダンス測定値の心臓インピーダンス指示成分の振幅または寄与を監視し、そうするときに、胸部インピーダンス測定で使用される注入される電気エネルギーによる胸部経路移動を間接的に監視して、肺内の流体状態の指標を提供する。そのため、IMD302は、リード線電極326、328、334、336およびハウジングまたはヘッダ電極330、332にそれぞれ、電気接続される電気インピーダンス測定回路512を含む。電気インピーダンス測定回路512は、注入される電気エネルギー発生器回路514、電圧測定回路516、アナログ−デジタル(A/D)変換器(図示せず)、および信号プロセッサ(示されず、また、プロセッサ回路524などによって他の所で実施されうる)を含む。電気エネルギー発生器回路514は、励起電極などの少なくとも2つの電極間において電流または他の電気エネルギーを生成するかまたは注入するよう構成される。電圧測定回路516は、ピックアップ電極などの、同じかまたは異な
る少なくとも2つの電極間で、注入されたエネルギーによって生成される電位差を測定するよう構成される。電圧測定回路516は、任意選択で、復調器を含む可能性がある。種々の実施例では、エネルギーを注入するか、または、結果得られる電位差を測定するのに使用される電極は、電極構成スイッチ回路518によって選択される。A/D変換器は、電気エネルギー発生器回路514および電圧測定回路516によって採取されるアナログ情報を比例デジタル数値に変換するのに使用される。こうしてデジタル化されると、(オームの法則によって指定されるように)電位差を、注入される電流で割ることによって胸部インピーダンス値を計算するために、これらの値が、信号プロセッサへの入力として印加されうる。
【0063】
正規化された安定した測定結果または再現性のために、胸部インピーダンス測定、そのため、心臓インピーダンス指示成分測定は、指定された姿勢で、指定された活動レベルで、または、被検者の心周期または呼吸サイクルの一方または両方における同じ瞬間に行われてもよい。そのため、この実施例では、IMD302は、IMD302内の、または、IMD302の近くに埋め込まれかつ通信可能に結合された姿勢センサ回路520、呼吸センサ回路522、心臓センサ回路580、または身体活動センサ回路582を含みうる。さらに、回路からの情報が使用されて、測定される胸部インピーダンス測定値(複数可)と浮腫の程度との関係を(たとえば、プロセッサ回路524に関連する状態補正回路によって)調整するか、または、いくつかのインピーダンスサンプリングパラメータが満たされることを保証する。
【0064】
たとえば、姿勢センサ回路520は、被検者の姿勢を指示する姿勢信号を生成するよう構成されうる。姿勢信号は、システム300によって使用されて、1つまたは複数の指定された姿勢位置で、または、安定した姿勢が検出されたときに胸部インピーダンス指示信号を測定するように、電気インピーダンス測定回路512をトリガーしうる。さらに、姿勢信号は、被検者向き情報を状態補正回路に供給しうる。これは、姿勢補償が浮腫の評価に含まれることを可能にする。胸部および肺内の器官および過剰の流体が、重力による姿勢変化によってシフトしうるため、被検者301(図3)が異なる位置をとるとき、測定されるインピーダンスが変わる可能性がある。水銀スイッチ、傾斜スイッチ、単一軸加速度計、多軸加速度計、あるいは圧電デバイスまたは他のデバイスの1つまたは任意の組合せを含む、いくつかのタイプの姿勢センサの1つまたは複数が使用されうるであろう。
【0065】
分時換気量(minute ventilation)(MV)センサ、モーションセンサ、横隔膜上の歪ゲージ、または、他の活動センサなどの呼吸センサ回路522は、深吸気または深呼気の瞬間を指示しうる呼吸信号を生成するよう構成されうる。呼吸信号は、システム300によって使用されて、感度または再現性のために、深吸気または深呼気の一方または組合せなどの、指定された呼吸の瞬間に、電気インピーダンス測定回路512が、胸部インピーダンス指示信号、そのため、関連する心臓インピーダンス指示成分を測定するようトリガーしうる。心臓インピーダンス指示成分は、深呼気において、再現性が最も高くはないが、変化に対する感度が最も高く、そのとき、被検者の肺204、206内に空気がほとんど存在しないため、安定した姿勢で安定した1回換気量が存在すると思われる。深吸気において心臓インピーダンス指示成分を測定することは、最も安定しかつ再現性があるが、被検者の肺204、206内により多くの空気が存在するため、感度が最も高いわけではないとさらに思われる。
【0066】
IMD302は、さらに、インピーダンスサンプリングを、被検者の心周期または活動状態の指定された部分に同期させるために、心臓センサ回路580または身体活動センサ回路582などのタイミング回路530または他の回路を含みうる。こうして、IMD302は、胸部インピーダンス測定、そのため、心臓インピーダンス指示成分測定を一定のトリガー式期間に制限することによって電力を節約しうる。センサ520、522、58
0、または582の任意にセンサは、任意選択で、IMD302から排除されうる。介入間隔中に、こうした回路要素は、連続する胸部インピーダンス測定を実施するのではなく、パワーダウンされるか、または、より散発的な測定に切換えられうる。
【0067】
埋め込み型のまたは外部のプロセッサ回路524は、測定される胸部インピーダンス指示信号、姿勢信号、呼吸信号に関する情報、および、外部デバイスまたはセンサによって採取されるかまたは受信される任意の他の情報を受信する1つまたは複数の入力526を含みうる。種々の実施例では、プロセッサ回路524は、心臓インピーダンス指示成分の振幅または(測定される総合胸部インピーダンスに対する)寄与係数の一方または両方を確定するよう構成される定量化/寄与回路527を含みうる。振幅または寄与係数のマグニチュードが高ければ高いほど、心臓インピーダンス指示成分が、測定される総合胸部インピーダンスに対して大きく寄与する。
【0068】
この実施例では、オンボードメモリ528は、胸部インピーダンス指示信号、心臓インピーダンス指示成分、またはプロセッサ回路524によって提供される肺流体状態指標に関する情報を、こうした信号または指標に関連するタイムスタンプと共に格納する。さらに、種々の実施例では、オンボードメモリ528は、システム300の必要な論理動作を実施するときに、プロセッサ回路524によって使用されるIMD302のプログラミングを受信し、格納しうる。一実施例では、タイムスタンプは、メモリ528につながるタイミング回路530によって生成される。
【0069】
種々の実施例では、プロセッサ回路524はさらに、心臓インピーダンス指示成分に関する情報(たとえば、振幅または総合胸部インピーダンス測定に対する寄与)を複数の心周期または呼吸サイクルにわたって傾向付けするよう構成される、傾向付け回路532などの少なくとも1つの評価回路を含む。一実施例では、心臓インピーダンス指示成分の未処理の振幅または寄与情報、あるいは、心臓インピーダンス指示成分に関する傾向付けされた情報は、比較器534への入力でありうり、比較器534は、そのデータを、同様に比較器534への入力である指定された閾値と比較する。注入されるエネルギーの大部分が、心臓202ではなく、肺(複数可)204、206を通過することによって、心臓インピーダンス指示成分の振幅が減少しているか、または、その他の点で重要であるという指標などの、肺流体蓄積の存在または切迫の特性を、入力データが示すことが見出される場合、得られる比較は、流体蓄積判定回路536に転送されうり、流体蓄積判定回路536は、肺流体蓄積の存在または切迫の指標などの、肺流体状態指標を提供するために、こうした情報を使用するよう構成される。任意選択で、1回換気量判定回路538によって提供される複数の呼吸サイクルにわたる被検者の1回換気量の指標は、肺流体蓄積の存在または切迫を判定するときに使用するなどのために、流体蓄積判定回路536に転送されうる。
【0070】
種々の実施例では、システム300は、少なくとも部分的に心臓インピーダンス指示成分または肺流体状態指標の少なくとも一方に関する情報を使用することによって、被検者301(図3)に対してレジメン(たとえば、治療)を始動するかまたは調整するよう構成されるレジメン制御回路540を含む。一実施例では、こうしたレジメンは、レジメンパルス発生器回路542によって生成され、かつ、電極構成スイッチ回路518によって選択される1つまたは複数の電極を介して送出される、心臓ペーシング、再同期、カーディオバージョン、またはデフィブリレーション刺激などの電気刺激を含む。1つまたは複数の電極は、任意の単極、2極、または多極構成においてアノードまたはカソードの役をするために、個々にまたは組合せて選択される。
【0071】
別の実施例では、こうしたレジメンは、別のところに供給され(たとえば、近傍の外部ユーザインタフェース308に通信されるか、または、埋め込み型薬物ポンプ544によ
って送出され)、たとえば、薬物用量、ダイエットレジメン、または流体摂取レジメンを含む。一実施例では、薬物用量は、外部ユーザインタフェース308、より具体的には、ユーザ検出可能表示314に通信され、表示される1つまたは複数の薬物レジメン指導のセットを含みうる。いくつかの実施例では、薬物レジメン指導のセットは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、ベータ遮断薬、ジギタリス、利尿薬、血管拡張薬、または同様なものなど、1つまたは複数の薬物の提案された毎日の摂取計画を含む。薬物用量は、埋め込み型薬物ポンプ544、あるいは、IMD302内に設けられるか、または、IMD302の近くに埋め込まれかつIMD302に結合される、別の薬物分配デバイスによって、提案された毎日の摂取計画について自動的に送出されうる。
【0072】
同様に、ダイエットレジメンおよび流体摂取レジメンは、外部ユーザインタフェース308のユーザ検出可能表示314によって被検者301に伝達されうる。一実施例では、ダイエットレジメンは、1日につき2グラム以下へのナトリウムの制限および1日につきせいぜい1杯のアルコールドリンクの制限などの、被検者301が従うべき1つまたは複数のダイエット指導のセットを含みうる。別の実施例では、流体摂取レジメンは、過剰量の流体を消費することを回避するなどのために、被検者301が従うべき1つまたは複数の流体摂取指導のセットを含みうる。図5は、ハードウェアで、あるいは、マイクロプロセッサまたは他のコントローラ上で実行されるステップの1つまたは複数のシーケンスとして実施される、システム300の種々の回路、デバイス、およびインタフェースの1つだけの概念を示す。こうした回路、デバイス、およびインタフェースは、概念的に明確にするために、別々に示される。しかし、図5の種々の回路、デバイス、およびインタフェースは、別々に具現化される必要はないが、組合されるか、または、その他の方法で実施されうることが理解される。
【0073】
図6は、測定される胸部インピーダンス信号の心臓成分信号または流体蓄積の存在または切迫の指標の少なくとも一方に関する情報に応答して、被検者301(図3)に対して1つまたは複数のレジメン(例えば、治療)をトリガーするのに使用されうる、レジメン制御回路540の1つの概念的な実施例を示すブロック図である。レジメン制御回路540は、流体蓄積判定回路536から出力される肺流体蓄積の存在または切迫の指標を受信する入力を含みうる。ある実施例では、スケジューラ602は、肺流体蓄積の存在または切迫の指標をスケジューリングする。レジメン決定回路604は、ある形態のレジメンが許可されるかどうかを決定する。レジメンが、許可されると考えられる場合、レジメン選択回路606は、1つまたは複数の適切なレジメンを選択する。制御回路608は、選択されたレジメンを、たとえば、レジメンパルス発生器回路542、近傍の外部ユーザインタフェース308、または薬物ポンプ544の1つまたは複数に対して出力を介して調整する。
【0074】
レジメン制御回路540は、レジメンリスト610を含みうり、リスト610のレジメンを、肺流体蓄積の存在または切迫の指標に対する最も大きな寄与者に関連付けうる。一実施例では、レジメンリスト610は、全ての考えられる疾病状態予防的レジメン、または、本システム300(図5)が、被検者301(図3A)に送出するかまたは伝達しうる2番目に関連するレジメンを含む。治療リスト610は、ハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアでIMD302にプログラム入力され、メモリ528(図5)に格納されうる。別の実施例では、レジメンリスト610は、即座の、短期の、中期の、または長期の流体蓄積予防的レジメンを含む。即座の流体蓄積予防的レジメンは、例として、埋め込み型薬物ポンプ544によって被検者に投与される薬物用量、または、レジメンパルス発生器回路542によって被検者に投与される電気刺激を始動させるかまたは変更することを含みうる。短期流体蓄積予防的レジメンは、例として、被検者301に連続気道陽圧(「CPAP」)用量を投与すること、または、被検者の薬物用量処置プログラムを始動させるかまたは変更するよう介護者に通知することを含みうる。中期流体蓄積予防
的レジメンは、例として、被検者301のダイエットまたは流体摂取レジメンなどの被検者301の生活様式を調整することを含みうる。最後に、長期流体蓄積予防的レジメンは、例として、被検者に影響を及ぼすのに長くかかる薬物(たとえば、ベータ遮断薬、ACE阻害薬)を変えるように被検者301または介護者に通知すること、または、被検者301にCRTを投与することを含みうる。
【0075】
レジメンリスト610の各メンバーは、対応するアクション時間に関連しうり、アクション時間は、レジメンが有効になる時間、または、それを過ぎるとレジメンがもはや有効でなくなる時間の1つまたは複数に関する情報を含みうる。一実施例では、レジメンリスト610の1つのメンバーだけが、任意特定の時間に呼び出される。別の実施例では、異なるレジメンの組合せが、実質的に同時に提供される。レジメン制御回路540内の種々のサブ回路は、概念的な目的のためにこうして示される。しかし、これらのサブ回路は、あるいは、汎用コントローラまたは他の回路によって実施されるプログラム式命令のセットとして実施されるように、流体蓄積判定回路536または別の所に組込まれうる。
【0076】
図7は、被検者の肺内の過剰な流体蓄積を監視する方法700を示すブロック図である。702にて、被検者の胸部領域のインピーダンスを指示するインピーダンス指示信号が、少なくとも2つの電極間で測定される。一実施例では、左心室リード線上に配設される遠位電極と、埋め込み型医療デバイスのハウジングまたはヘッダ電極の一方との間に、電流などの刺激以下の電気エネルギーを注入し、注入されたエネルギーから生じる電位差を、左心室リード線上に配設される近位電極と、ハウジングまたはヘッダ電極の一方との間で測定することによってインピーダンス指示信号が測定される。別の実施例では、インピーダンス指示信号は、呼吸センサ回路によって検出される深吸気または深呼気の一方または組合せにおいて測定される。
【0077】
704にて、インピーダンス指示信号の1つまたは複数の姿勢作用が弱められる。被検者の胸部領内の器官および過剰な流体は、重力による姿勢の変化によってシフトするため、測定されるインピーダンスは、被検者が異なる位置をとるときに変わりうる。たとえば、被検者が、自分の右横腹を下に横になるとき、左肺内の流体および組織は、左心室冠静脈内に配設される電極の近くの縦隔に向かって下がる可能性がある。そのため、姿勢センサ情報に基づいて、測定されるインピーダンスと浮腫の程度との関係が、姿勢作用を補償するために調整されてもよい。水銀スイッチ、DC加速度計、または他の圧電デバイスを含むいくつかのタイプの姿勢センサが使用されうる。
【0078】
706にて、インピーダンス指示信号の1つまたは複数の血液抵抗作用が弱められる。血液抵抗は、血液内のヘマトクリットの関数として変化する。ヘマトクリット(Ht)または血中血球容積(packed cell volume)(PCV)は、赤血球が占める血液の割合である。ヘマトクリットは、通常、0.35と0.52との間であり、平均して、女性に比べて男性において少し高い。たとえば、被検者が脱水すると、被検者の血液中の流体が少なくなることになる。したがって、被検者のヘマトクリットレベルは増加することになる。すなわち、被検者の血液は、高いパーセンテージの他の成分、たとえば、絶縁性の赤血球を含むことになる。これは、血液抵抗を増加させることになり、そのことが、次に、測定される胸部インピーダンスがたとえ肺浮腫の血管外流体蓄積に必ずしも関連していなくても、測定される胸部インピーダンスに影響を及ぼす可能性がある。相応して、血液インピーダンス測定情報に基づいて、測定されるインピーダンスと浮腫の程度との関係は、参照によりその全体が本明細書に組込まれ、血液抵抗補償済みインピーダンス指示信号を表す式を含む、同一譲受人に譲渡された、Stahmann他の米国特許出願第10/921,503号に記載されるように、血液抵抗作用を補償するために調整されてもよい。ある実施例では、血液抵抗作用は、心腔または血管内で検出され、心周期および呼吸サイクルと実質的に無関係である。
【0079】
707にて、インピーダンス指示信号の、呼吸作用、身体活動作用、または心臓作用などの1つまたは複数の他の状態補正因子が、弱められるか、または、強調される。たとえば、呼吸作用、身体活動作用、または心臓作用に関する情報は、測定されるインピーダンス指示信号と浮腫の程度との関係を調整するために弱められうる。あるいは、呼吸などの1つまたは複数の状態補正因子に関する情報が使用されて、深吸気または深呼気の一方または組合せと同期するように、測定されるインピーダンスをトリガーするのに使用されうる。
【0080】
708にて、心臓インピーダンス指示成分に関する情報が、測定されたインピーダンス指示信号から抽出される。種々の実施例では、心臓インピーダンス指示成分に関する情報は、心臓成分の振幅または(測定される総合胸部インピーダンスに対する)寄与の一方または両方を含む。710にて、第1心臓インピーダンス指示成分の振幅が、第2心臓インピーダンス指示成分の振幅と比較されて、心臓インピーダンス指示成分の所定時間にわたる(たとえば、複数の心周期または呼吸サイクルにわたる)変化が提供され、その変化が、714にて肺流体様態指標を計算するのに使用されうる。
【0081】
712にて、被検者の1回換気量が、心臓インピーダンス指示成分に関する抽出された情報を少なくとも部分的に使用して確定される。呼吸1回換気量の監視は、空気含有量が先に説明した電流分岐を引き起こすため、心臓インピーダンス指示成分に関する情報を使用して可能となる。有利には、こうした1回換気量の監視を実施するために、長い時定数は必要とされない。
【0082】
714にて、肺流体蓄積のレベルを指示する肺流体状態指標が、心臓インピーダンス指示成分情報または肺1回換気量状態指標の少なくとも一方を使用して確定される。一実施例では、肺流体状態指標は、肺浮腫の存在または非存在の指標を提供する。被検者によって認識可能な、音響信号放出、振動、または低レベルパルス(複数可)などの報知またはアラーム機能が、発せられて、過剰の肺流体蓄積の陽性指標によるレジメン介入についての必要性が指示されうる。こうした報知またはアラーム機能はまた、被検者の介護者によって検討されるために、IMDから遠隔のプログラマまたは他の外部ユーザインタフェースへ、テレメトリによって送られうる。716にて、過剰の肺流体蓄積の陽性指標に応答して、レジメンが始動されるかまたは調整される。
結論
心不全などの慢性疾病は、入院、罹患率、および死亡率を低減するための、きめ細かい医療管理によって利益を受けうる。こうした疾病状態は、時間と共に進展するため、頻繁な医師フォローアップ検査が必要であることが多い。定期的な本人によるフォローアップの手法は、医師のフォローアップの検査と検査の間に生命にかかわる急性の悪化が発生しうる心不全のような疾病については不十分である。肺浮腫は、過剰量の流体が被検者の肺内または肺の周りに蓄積する重篤な医療状態である。この状態は、心不全でありうり、また、実際に心不全から生じる。心不全は、時として致命的であることを立証しうるが、早期に検出し迅速に処置することによって、肺浮腫を有する被検者についての予後は良好になりうる。
【0083】
有利には、本システムおよび方法は、被検者の胸部領域内の過剰の流体蓄積の強化された監視を実現し、そのため、現在利用可能であるのに比べて、胸部流体蓄積の適時でかつ正確な検出を提供しうる。こうした検出は、とりわけ、測定された胸部インピーダンス指示信号を生成し、この信号から、複数の心周期にわたる成分の振幅傾向または(測定される総合の胸部インピーダンスに対する)寄与傾向などの、心臓インピーダンス指示成分に関する情報を抽出することによって可能にされる。抽出されると、この心臓インピーダンス指示成分情報が使用されて、肺流体蓄積の存在または切迫の指標が確定されうる。
【0084】
過去の流体監視システムおよび方法と違って、本システムおよび方法を使用して肺流体蓄積の存在または切迫の指標を確定することは、胸部インピーダンス指示信号のハイパスフィルタリングされた低周波直流(DC)またはほぼDC成分に依存しない。むしろ、肺流体蓄積の存在または切迫の指標は、少なくとも一部の例では、高周波交流(AC)成分を含む胸部インピーダンス指示信号の使用によって見出されうり、それにより、より単純な監視が可能になり、実施するのにコストがかからない可能性がある。
【0085】
最終メモ
上述した説明は、詳細な説明の一部を形成する添付図面に対する参照を含む。図面は、例証として、本発明が実施されうる特定の実施形態を示す。これらの実施形態はまた、本明細書で「実施例(example)」とも呼ばれる。本文書で参照される全ての出版物、特許お
よび特許文書は、参照により個々に組込まれるかのように、参照によりその全体が本明細書に組込まれる。本文書と、参照により組込まれるこれらの文書との間に矛盾する使用法がある場合、組込まれる参照(複数可)における使用法は、本文書の使用法を補助するものと考えられるべきである。すなわち、両立しない矛盾については、本文書における使用法が規制する。
【0086】
本文書において、用語「ある(a)」または「ある(an)」は、特許文書で一般的であるよ
うに、「少なくとも1つ(at least one)」または「1つまたは複数の(one or more)」の
任意の他のインスタンスまたは使用と独立に、1つまたは2つ以上を含むために使用される。本文書では、用語「または(or)」は、非排他的であることを指すのに使用される。したがって、特に指示されない限り、「AまたはB」は「AであるがBではない」、「BであるがAではない」および「AおよびB」を含む。本文書では、用語「埋め込み型医療デバイス(implantable medical device)」または単に「IMD」は、限定はしないが、ペースメーカ、カーディオバータ/デフィブリレータ、ペースメーカ/デフィブリレータ、心臓再同期治療(CRT)デバイスなどの2心室または他の多部位再同期または協調デバイスなどの、埋め込み型心臓調律管理(CRM)システム、被検者監視システム、神経調節システムおよび薬物送達システムを含むために使用される。
添付特許請求の範囲では、用語「含む(including)」および「そこで(in which)」は、そ
れぞれの用語「備える(comprising)」および「そこで(wherein)」の平易な英語の等価物
として使用される。同様に、添付特許請求の範囲では、用語「含む(including)」および
「備える(comprising)」は、無制限である、すなわち、特許請求項の範囲においてこうした用語の後に挙げられる要素に加えて、要素を含むシステム、デバイス、製品またはプロセスは、依然として特許請求項の範囲内に入ると考えられる。さらに、添付特許請求の範囲では、用語「第1の(first)」、「第2の(second)」および「第3の(third)」などは、単にラベルとして使用され、その物体に対して数値要件を課すことを意図されない。
【0087】
本明細書で述べる方法実施例は、少なくとも部分的に、機械実施式であるかまたはコンピュータ実施式でありうる。一部の実施例は、上記実施例で述べた方法を実施するよう電子デバイスを構成するように働く命令を符号化されるコンピュータ読取り可能媒体または機械読取り可能媒体を含みうる。こうした方法の実施態様は、マイクロコード、アセンブリ言語コード、高レベル言語コード、または同様なものなどのコードを含みうる。こうしたコードは、種々の方法を実施するためのコンピュータ読取り可能命令を含みうる。コードは、コンピュータプログラム製品の所定部分を形成してもよい。さらに、コードは、実行中、または、他の時点で、1つまたは複数の揮発性または不揮発性コンピュータ読取り可能媒体上に触知可能に格納されうる。これらのコンピュータ読取り可能媒体は、ハードディスク、取外し可能磁気ディスク、取外し可能光ディスク(たとえば、コンパクトディスクおよびデジタルビデオディスク)、磁気カセット、メモリカードまたはスティック、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、ならびに同様なもの
を含んでもよいが、それに限定されなくてもよい。
【0088】
先の説明は、例証的であり、制限的でないことを意図される。たとえば、上述した実施形態(またはその1つまたは複数の特徴)は、互いに組合せて使用されてもよい。先の説明を検討することによって、他の実施形態が当業者などによって使用されうる。同様に、上記詳細な説明では、種々の特徴は、開示を簡素化するために一緒にグループ化されてもよい。このことは、未請求の開示特徴が、任意の特許請求項に必須であることを意図するものとして解釈されるべきでない。むしろ、本発明の主題は、特定の開示される実施形態の全ての特徴より少ない特徴に存在する可能性がある。さらに、本特許文書の大部分は、被検者の胸部領域内の流体の監視を説明するが、本システムおよび方法は、被検者の身体の他の領域における流体蓄積を監視するために、本明細書で説明した方法と同じ方法で使用されうる。そのため、添付特許請求項は、詳細な説明に組込まれ、各請求項は、別個の実施形態として自分自身を主張する。本発明の範囲は、添付特許請求の範囲を参照して、添付特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の全範囲と共に確定されるべきである。
【0089】
要約は、読者が技術的開示の特質を迅速に確認することを可能にするために、37C.F.R.§1.72(b)に対応するように提供される。要約は、特許請求項の範囲または意味を解釈するかまたは制限するために使用されることがないという理解によって提出される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の電極間に電気エネルギーを注入し、被検者の胸部領域においてそれにより生成される電位差を、前記同じかまたは異なる2つ以上の電極間で測定するよう構成される電気インピーダンス測定回路を含む埋め込み型医療デバイスと、
前記注入された電気エネルギーおよび前記測定された電位差に関する情報を受信する入力を含む埋め込み型のまたは外部のプロセッサ回路とを備え、前記プロセッサ回路は、前記電気エネルギーおよび前記電位差に関する前記情報を使用して、インピーダンス指示信号を計算し、前記プロセッサ回路は、さらに、肺流体状態指標を提供するために、前記インピーダンス指示信号の心臓インピーダンス指示成分の所定時間にわたる変化を確定する、システム。
【請求項2】
第1の心臓インピーダンス指示成分の振幅を第2の心臓インピーダンス指示成分の振幅と比較するよう構成される比較器回路を備え、
前記プロセッサ回路は、前記肺流体状態指標を提供するために、前記比較に関する情報を使用する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記心臓インピーダンス指示成分の所定時間にわたる振幅変化を1つまたは複数の肺流体状態基準と比較するための比較器回路を備え、
前記プロセッサ回路は、前記肺流体状態指標を提供するために、前記比較に関する情報を使用する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記インピーダンス指示信号に対して前記心臓インピーダンス指示成分の寄与係数を計算するよう構成される寄与回路を備え、
前記プロセッサ回路は、前記肺流体状態指標を提供するために、前記寄与係数の変化に関する情報を使用する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記心臓インピーダンス指示成分の所定時間にわたる前記変化に関する情報を格納するよう構成されるメモリ回路を備え、前記変化に関連する所定時間は、呼吸サイクル長の時間を越える請求項1〜4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記心臓インピーダンス指示成分の所定時間にわたる前記変化または前記肺流体状態指標の少なくとも一方に関する情報を少なくとも部分的に使用して、前記被検者に供給されるレジメンを始動するかまたは調整するよう構成されるレジメン制御回路を備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記埋め込み型医療デバイスに通信可能に結合し、かつ、前記心臓インピーダンス指示成分の所定時間にわたる前記変化または前記肺流体状態指標の少なくとも一方のユーザ検出可能表示を含む外部ユーザインタフェースデバイスを備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
深吸気または深呼気の一方または組合せの瞬間を指示する呼吸信号を生成するよう構成される呼吸センサを備え、
前記電気インピーダンス測定回路は、前記呼吸信号のときに前記インピーダンス指示信号を測定する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
被検者の姿勢を指示する姿勢信号を生成するよう構成される姿勢センサを備え、
前記電気インピーダンス測定回路は、指定された姿勢信号のときに前記インピーダンス指示信号を測定する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
少なくとも2つの電極間で、被検者の胸部領域のインピーダンスを指示するインピーダンス指示信号を測定するステップと、
前記インピーダンス指示信号から、心臓インピーダンス指示成分に関する振幅寄与情報を抽出するステップと、
前記心臓インピーダンス指示成分に関する前記抽出された振幅寄与情報を少なくとも部分的に使用して肺流体状態指標を計算するステップとを備える、方法。
【請求項11】
前記インピーダンス指示信号を測定するステップは、
前記被検者の前記胸部領域に埋め込まれた第1電極と第2電極との間に電気エネルギーを注入するステップと、
前記被検者の前記胸部領域に埋め込まれた第3電極と第4電極との間で電位差を測定するステップとを備え、前記電位差は、前記第1電極と前記第2電極との間に注入された前記電気エネルギーから生じる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記心臓インピーダンス指示成分に関する前記抽出された振幅寄与情報を使用して前記被検者の心臓を横切る前記注入された電気エネルギーの量を確定するステップをさらに備え、
前記肺流体状態指標を計算するステップでは、前記心臓を横切る前記注入された電気エネルギーの量を使用する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記心臓インピーダンス指示成分に関する前記抽出された振幅寄与情報を使用して前記被検者の肺を横切る前記注入された電気エネルギーのおよその量を確定するステップをさらに備え、
前記肺流体状態指標を計算するステップでは、前記肺を横切る前記注入された電気エネルギーの量を使用する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記心臓インピーダンス指示成分の呼吸サイクル長の時間を越える期間にわたって振幅変化を確定することを含む、第1の心臓インピーダンス指示成分の振幅を第2の心臓インピーダンス指示成分の振幅と比較するステップをさらに備える、請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
1つまたは複数の肺流体状態基準を導出し、前記心臓インピーダンス指示成分の前記振幅変化を前記1つまたは複数の肺流体状態基準と比較するステップをさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記計算される肺流体状態指標を防止するか、または、最小にするステップをさらに備える、請求項10〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
第1の注入電気エネルギー周波数で前記インピーダンス指示信号を測定し、前記第1の注入電気エネルギー周波数と異なる第2の注入電気エネルギー周波数で前記インピーダンス指示信号を測定するステップと、
前記第1および第2の注入周波数で測定される前記インピーダンス指示信号から抽出される心臓インピーダンス指示成分情報を使用して、前記計算された肺流体状態指標の信頼度レベルを確定するステップを備える、請求項10〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記心臓インピーダンス指示成分に関する前記抽出された振幅寄与情報を少なくとも部分的に使用して、肺1回換気量状態指標を計算する、請求項10〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記振幅寄与情報を抽出するステップでは、前記心臓インピーダンス指示成分と前記イ
ンピーダンス指示信号の比を計算する、請求項10〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記肺流体状態指標を計算するステップでは、所定時間にわたって前記心臓インピーダンス指示成分の前記振幅寄与の減少を検出する、請求項10〜19のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−532208(P2010−532208A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514749(P2010−514749)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/004914
【国際公開番号】WO2009/005559
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】