説明

肺癌におけるC−MET突然変異

本発明は、肺癌細胞におけるc-met中の突然変異を検出するために有用な組成物及び方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(出願について)
この出願は、米国特許法規則1.53(b)(1)に基づき出願した非仮出願であり、米国特許法119(e)に基づき、2005年3月25日に出願の仮出願第60/665,317号の優先権を主張し、出典明記によりここにその内容全体を援用するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、分子生物学及び増殖因子調節の分野に関する。より具体的には、本発明は、突然変異したc-metに伴うヒトの肺癌の診断と治療のために有用な方法及び組成物に関する。
【0003】
(発明の背景)
HGFは、多くの異なる種類の細胞に対して分裂促進活性、細胞運動促進活性及び形態形成活性を有する肝葉由来の多能性因子である。HGF作用は特定のチロシンキナーゼであるc-metに媒介されており、異常なHGF及びc-metの発現は様々な腫瘍において観察されることが多い。例としてMaulik ら, Cytokine & Growth Factor Reviews (2002), 13:41-59、 Danilkovitch-Miagkova & Zbar, J. Clin. Invest. (2002), 109(7): 863-867を参照。HGF/c-Metシグナル伝達経路の調節機能は腫瘍発達及び転移に関係する。例としてTrusolino & Comoglio, Nature Rev. (2002), 2:289-300を参照。
【0004】
HGFは、Metレセプターチロシンキナーゼ(RTK)の細胞外ドメインを結合して、多様な生物学的プロセス、例えば細胞分散、増殖及び生存を制御する。HGF-Metシグナル伝達は、正常な胚発生、特に筋肉始原細胞の移動と肝臓及び神経系の発達に必須である(Bladt 等, Nature (1995), 376, 768-771;Hamanoue 等, Faseb J (2000), 14, 399-406;Maina 等, Cell (1996), 87, 531-542;Schmidt 等, Nature (1995), 373, 699-702;Uehara 等, Nature (1995), 373, 702-705)。MetノックアウトマウスとHGFノックアウトマウスの発生上の表現型は非常に類似しており、HGFがMetレセプターの同種リガンドであることが示唆される(Schmidt 等, 1995, 上掲;Uehara 等, 1995, 上掲)。また、HGF-Metは、肝再生、血管新生及び創傷治癒の役割も担っている(Bussolino 等, J Cell Biol (1992), 119, 629-641;Matsumoto及びNakamura, Exs (1993), 65, 225-249;Nusrat 等, J Clin Invest (1994) 93, 2056-2065)。Metレセプター前駆体は、タンパク質分解的切断により、ジスルフィド結合により結合する細胞外αサブユニットと膜架橋βサブユニットとなる(Tempest 等, Br J Cancer (1988), 58, 3-7)。βサブユニットは細胞質キナーゼドメインを含有しており、アダプタータンパク質が結合してシグナル伝達を開始する多基質ドッキング部位をC末端に有している(Bardelli 等, Oncogene (1997), 15, 3103-3111;Nguyen 等, J Biol Chem (1997), 272, 20811-20819;Pelicci 等, Oncogene (1995), 10, 1631-1638;Ponzetto 等, Cell (1994), 77, 261-271;Weidner 等, Nature (1996), 384, 173-176)。HGFが結合すると、Gab1及びGab2/SosがPI3キナーゼ及びRas/MAPKそれぞれの活性化を媒介することによって、Metが活性化され、チロシンリン酸化及び下流へのシグナル伝達が起こり、細胞運動及び細胞増殖が促進される(Furge 等, Oncogene (2000), 19, 5582-5589;Hartmann 等, J Biol Chem (1994), 269, 21936-21939;Ponzetto 等, J Biol Chem (1996), 271, 14119-14123;Royal 及び Park, J Biol Chem (1995), 270, 27780-27787)。
【0005】
Metは、発癌物質処理した骨肉腫細胞株においてトランスフォーミングすることが示された(Cooper 等, Nature (1984), 311, 29-33;Park 等, Cell (1986), 45, 895-904)。Metの過剰発現又は遺伝子増幅は、様々なヒト癌において観察されている。例えば、Metタンパク質は、結腸直腸癌において少なくとも5倍過剰発現しており、肝転移巣における遺伝子増幅も報告されている(Di Renzo 等, Clin Cancer Res (1995), 1, 147-154;Liu 等, Oncogene (1992), 7, 181-185)。また、Metタンパク質は、経口扁平上皮細胞癌、肝細胞癌、腎臓細胞上皮癌、胸部上皮癌及び肺上皮癌において過剰発現することが報告されている(Jin 等, Cancer (1997), 79, 749-760;Morello 等, J Cell Physiol (2001), 189, 285-290;Natali 等, Int J Cancer (1996), 69, 212-217;Olivero 等, Br J Cancer (1996), 74, 1862-1868;Suzuki 等, Br J Cancer (1996), 74, 1862-1868)。加えて、mRNAの過剰発現は、肝細胞癌、胃上皮癌及び結腸直腸上皮癌において観察されている(Boix 等, Hepatology (1994), 19, 88-91;Kuniyasu 等, Int J Cancer (1993), 55, 72-75;Liu 等, Oncogene (1992), 7, 181-185)。
【0006】
Metのキナーゼドメインの多くの突然変異は、腎臓乳頭上皮癌において観察され、恒常的なレセプター活性化を引き起こしている(Olivero 等, Int J Cancer (1999), 82, 640-643;Schmidt 等, Nat Genet (1997), 16, 68-73;Schmidt 等, Oncogene (1999), 18, 2343-2350)。これらの活性化突然変異により恒常的なMetチロシンリン酸化が起こり、その結果MAPK活性化、フォーカス形成及び腫瘍形成が生じる(Jeffers 等, Proc Natl Acad Sci U S A (1997), 94, 11445-11450)。加えて、これらの突然変異は細胞運動及び浸潤を亢進する(Giordano 等, Faseb J (2000), 14, 399-406;Lorenzato 等, Cancer Res (2002), 62, 7025-7030)。形質転換細胞のHGF依存性Met活性化は、転移、拡散及び移動性の増加を媒介し、最終的に浸潤性腫瘍増殖及び転移を引き起こす(Jeffers 等, Mol Cell Biol (1996), 16, 1115-1125;Meiners 等, Oncogene (1998), 16, 9-20)。
【0007】
Metは、レセプター活性化、形質転換及び浸潤を作動する他のタンパク質と相互作用することが示されている。新生細胞において、Metは、ラミニンなどの細胞外基質(ECM)構成成分のレセプターであるα6β4インテグリンと相互作用して、HGF依存性浸潤性増殖を促進することが報告されている(Trusolino 等, Cell (2001), 107, 643-654)。加えて、Metの細胞外ドメインは、セマフォリンファミリーのメンバーであるプレキシンB1と相互作用して、浸潤性増殖を増やすことが示されている(Giordano 等, Nat Cell Biol (2002), 4, 720-724)。さらに、腫瘍形成及び転移に関係しているCD44v6は、Met及びHGFと複合体を形成して、Metレセプター活性化を引き起こすことも報告された(Orian-Rousseau 等, Genes Dev (2002), 16, 3074-3086)。
【0008】
Metは、Ron 及び Seaを含むレセプターチロシンキナーゼ(RTK)のサブファミリーのメンバーである(Maulik 等, Cytokine Growth Factor Rev (2002), 13, 41-59)。Metの細胞外ドメイン構造の予測から、セマフォリン及びプレキシンとの相同性の共有が示唆される。MetのN末端は、すべてのセマフォリン及びプレキシンにおいて保存されるおよそ500のアミノ酸のセマドメインを含有する。セマフォリン及びプレキシンは、神経発達における役割について最初に記載された、分泌型及び膜結合型のタンパク質の大きなファミリーに属する(Van Vactor and Lorenz, Curr Bio (1999),l 9, R201-204)。しかしながら、最近では、セマフォリン過剰発現は腫瘍浸潤及び転移と相関している。プレキシン、セマフォリン及びインテグリンにおいてみられるシステインリッチPSIドメイン(Met関連配列ドメインとも称される)は、プレキシン及び転写因子にみられるイムノグロブリン様領域である4つのIPTリピートが続くセマドメインに近接して存在する。最近の研究では、Metセマドメインが十分にHGF及びヘパリンに結合することが示唆される(Gherardi 等, Proc Natl Acad Sci U S A (2003), 100(21):12039-44)。
【0009】
上記したように、Metレセプターチロシンキナーゼはその同種リガンドであるHGFによって活性化され、レセプターリン酸化はMAPK、PI-3キナーゼ及びPLC-g(1、2)の下流の経路を活性化する。下流のシグナル伝達経路の活性化を媒介するために、キナーゼドメイン内のY1234/Y1235のリン酸化はMetキナーゼ活性化に重要であるのに対して、多基質ドッキング部位のY1349及びY1356はsrcホモロジー-2(SH2)、ホスホチロシン結合(PTB)及びMet結合ドメイン(MBD)タンパク質(3−5)の結合に重要である。更なる膜近傍リン酸化部位であるY1003は、Cbl E3-リガーゼのチロシンキナーゼ結合(TKB)ドメインに対するその結合にとても特徴があるとされている(6、7)。Cbl結合は、エンドフィリン媒介性レセプターエンドサイトーシスであるユビキチン化と、その後のレセプター分解を起こすことが報告される(8)。このレセプター下方制御のメカニズムは、類似のCbl結合部位も有するEGFRファミリーにおいて既に開示されている(9−11)。
【0010】
Met及びHGFの調節不全は様々な腫瘍において、報告されている。リガンド作動性Met活性化はいくつかの癌において観察されている。血清及び腫瘍内HGFの上昇は、肺癌、乳癌及び多発性骨髄腫において観察される(12−15)。Met及び/又はHGFの過剰発現、Met遺伝子増幅又は突然変異は、結腸直腸癌、肺癌、胃癌及び腎臓癌などの様々な癌において報告されており、リガンド非依存性レセプター活性化を起こすと考えられる(2、16)。加えて、肝臓マウスモデルにおけるMetの誘導性過剰発現が肝細胞癌を生じさせることから、レセプター過剰発現がリガンド非依存性の腫瘍形成を起こすことが示される(17)。癌におけるMetの関連を最も強く表す所見は家族性の散発性腎臓乳頭上皮癌(RPC)患者において報告される。レセプターの恒常的活性化を引き起こすMetのキナーゼドメインの突然変異は、RPCの生殖細胞系及び体細胞の突然変異として同定された(18)。トランスジェニックマウスモデルにおけるこれらの突然変異の導入により腫瘍形成及び転移が引き起こされる。(19)。
【0011】
Metキナーゼドメインの役割が詳細に調査されたにもかかわらず、キナーゼドメイン以外のMetのドメインは十分に特性が示されていない。実際、様々な腫瘍性の症状の病因に関係しているにもかかわらず、HGF/-c-met経路は治療的な標的とすることが難しい経路であった。この点に関する努力は、主に一つの腫瘍タイプが多数の遺伝子サブタイプにより構成されるという事実により妨げられており、HGF/Metの異常は、各腫瘍タイプの一部を構成するに過ぎないのかもしれない。治療の困難さや遺伝的及び組織学的に多様化した肺癌などの癌にとってこの課題は特に重大なものである。したがって、HGF/c-met経路の阻害に最も応答する可能性のある癌を同定するための適確な方法が必要とされていることは明らかである。本明細書において提供される発明は、この必要性を満たして他の利点を提供するものである。
特許出願及び刊行物を含む、本明細書中で引用したすべての文献は、出典明記によって、それらの全体を援用する。
【0012】
(発明の開示)
本発明は、肺腫瘍形成と密接に関係しているヒト肝細胞増殖因子(HGF)のレセプターであるc-metにおける複数の突然変異の現象の発見に基づく。異常なc-met活性が様々な癌と関係していることが以前から考えられていたにもかかわらず、特定の体細胞突然変異があった場合にc-metシグナル伝達経路の調節不全が生じることは知られていなかった。特に、キナーゼドメインの外に突然変異があった場合に肺腫瘍などのヒト腫瘍の発達と関係していることは明らかでなかった。本明細書では、ヒトの肺腫瘍においてしばしばみられるc-metの細胞外ドメイン及び膜近傍ドメインの様々な突然変異の現象を開示する。これらの突然変異は、ヒトの肺腫瘍形成の素因になる及び/又はヒトの肺腫瘍形成に直接寄与すると思われている。実際、本明細書において記述するように、いくつかの突然変異は直接安定性を亢進し、それによってヒトの肺腫瘍細胞のc-metタンパク質の量を増やす。
【0013】
本明細書中に開示するc-met突然変異は、様々な場面、例えば予後、前兆、診断及び治療の方法及び組成物において有用である。一態様では、本発明は、被検体の肺癌試料がヒトc-metをコードする核酸配列に突然変異を含有するか否かを決定することを含む予後判定方法であって、該突然変異により位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸変化が生じるものである方法を提供する。他の態様では、本発明は、被検体の肺癌試料がヒトc-metをコードする核酸配列に突然変異を含有するか否かを決定することを含む予後判定方法であって、該配列がエキソン14及び/又はそのフランキングイントロンにおいて変異し、該突然変異がエキソンスプライシングに作用するものである方法を提供する。
【0014】
他の態様では、本発明は、試料中の肺癌を検出する方法であって、試料がヒトc-metをコードする核酸配列に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該突然変異により位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸変化が生じるものである方法を提供する。更なる他の態様では、本発明は、試料中の肺癌を検出する方法であって、該試料がヒトc-metをコードする核酸配列に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該変異がエキソン14及び/又はそのフランキングイントロン中にあり、該突然変異がエキソンスプライシングに作用するものである方法を提供する。
【0015】
ある態様では、本発明は、非癌性肺組織と癌性肺組織とを区別する方法であって、肺組織を含有する試料がヒトc-metをコードする核酸配列に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該突然変異により位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸変化が生じるものであり、該試料中の変異の検出から癌性肺組織の存在が示される方法を提供する。ある態様では、本発明は、非癌性肺組織と癌性肺組織とを区別する方法であって、肺組織を含有する試料がヒトc-metをコードする核酸配列に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該変異がエキソン14及び/又はそのフランキングイントロン中にあり、該突然変異がエキソンスプライシングに作用するものであり、該試料中の変異の検出から癌性肺組織の存在が示される方法を提供する。
【0016】
ある態様では、本発明は、肺癌におけるc-metの突然変異を同定する方法及び/又は肺癌における変異したc-met遺伝子を検出する方法であって、肺癌試料をヒトc-metをコードする核酸配列中の突然変異を検出できる薬剤と接触させることを含み、該突然変異により位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸変化が生じるものである方法を提供する。ある態様では、本発明は、肺癌におけるc-metの突然変異を同定する方法及び/又は肺癌における変異したc-met遺伝子を検出する方法であって、肺癌試料をヒトc-metをコードする核酸配列中の突然変異を検出できる薬剤と接触させることを含み、該変異がエキソン14及び/又はそのフランキングイントロン中にあり、該突然変異がエキソンスプライシングに作用するものである方法を提供する。
【0017】
ある態様では、本発明は、c-metインヒビターによる治療に感受性がある肺癌を同定する方法、及び/又は肺癌がc-metインヒビターによる治療に感受性がある可能性を予測する方法、及び/又は肺癌と診断されたどの患者がc-metインヒビターによる治療に感受性があるかを予測/同定する方法であって、被検体の肺癌試料がヒトc-metをコードする核酸配列中に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該突然変異により位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸変化が生じるものである方法を提供する。ある態様では、本発明は、c-metインヒビターによる治療に感受性がある肺癌を同定する方法、及び/又は肺癌がc-metインヒビターによる治療に感受性がある可能性を予測する方法、及び/又は肺癌と診断されたどの患者がc-metインヒビターによる治療に感受性があるかを予測/同定する方法であって、被検体の肺癌試料がヒトc-metをコードする核酸配列中に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該配列がエキソン14及び/又はそのフランキングイントロンにおいて変異し、該突然変異がエキソンスプライシングに作用するものである方法を提供する。
【0018】
ある態様では、本発明は、c-metインヒビターによる治療に対する被検体の肺癌の応答性を決定する方法、及び/又はc-metインヒビターによって被検体の治療をモニタリングする方法であって、c-metインヒビターにより治療されている被検体の肺癌試料がヒトc-metをコードする核酸配列中に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該突然変異により位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸変化が生じるものであり、変異した核酸配列の欠如から肺癌がc-metインヒビターによる治療に対して応答することが示される方法を提供する。ある態様では、本発明は、c-metインヒビターによる治療に対する被検体の肺癌の応答性を決定する方法、及び/又はc-metインヒビターによって被検体の治療をモニタリングする方法であって、c-metインヒビターにより治療されている被検体の肺癌試料がヒトc-metをコードする核酸配列中に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該配列がエキソン14及び/又はそのフランキングイントロンにおいて変異し、該突然変異がエキソンスプライシングに作用するものであり、変異した核酸配列の欠如から肺癌がc-metインヒビターによる治療に対して応答することが示される方法を提供する。
【0019】
ある態様では、本発明は、c-metインヒビターによる肺癌の治療を受けた被検体においてわずかな残留疾患をモニタリングするための方法であって、c-metインヒビターにより治療された被検体の試料がヒトc-metをコードする核酸配列中に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該突然変異により位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸変化が生じるものであり、該突然変異の検出からわずかな残留肺癌の存在が示される方法を提供する。ある態様では、本発明は、c-metインヒビターによる肺癌の治療を受けた被検体においてわずかな残留疾患をモニタリングするための方法であって、c-metインヒビターにより治療されている被検体の肺癌試料がヒトc-metをコードする核酸配列に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該配列がエキソン14及び/又はそのフランキングイントロンにおいて変異し、該突然変異がエキソンスプライシングに作用するものであり、該突然変異の検出からわずかな残留肺癌の存在が示される方法を提供する。
【0020】
他の態様では、本発明は、野生型のc-metと比較して位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸が変化する突然変異を含有してなるヒトc-metをコードする核酸を増幅するための方法であって、図7の表S4に挙げるプライマー/プローブの何れかの配列を含有してなる核酸により、核酸を含むと思われる又は核酸を含むことが既知である試料を増幅することを含む方法を提供する。他の態様では、本発明は、エキソン14及び/又はそのフランキングイントロンに変異突然を含有し、この突然変異がエキソンスプライシングに作用する核酸である、ヒトc-metをコードする核酸を増幅するための方法であって、図7の表S4に挙げるプライマー/プローブの何れかの配列を含有してなる核酸により、核酸を含むと思われる又は核酸を含むことが既知である試料を増幅することを含む方法を提供する。
【0021】
ある態様では、本発明は、野生型のc-metと比較して位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸が変化する突然変異である特定の突然変異を試料中のc-metにおいて同定するための方法であって、図7の表S4に挙げるプライマー/プローブの何れかの配列を含有してなる核酸と試料を接触することを含む方法を提供する。更なる他の態様では、本発明は、エキソン14及び/又はそのフランキングイントロン中にあり、エキソンスプライシングに作用する突然変異である特定の突然変異を試料中のc-metにおいて同定するための方法であって、図7の表S4に挙げるプライマー/プローブの何れかの配列を含有してなる核酸と試料を接触することを含む方法を提供する。
ある態様では、本発明は、肺癌において変異したc-metの存在を検出する方法であって、図7の表S4に挙げるプライマー/プローブの何れかの配列を含有してなる核酸と、変異したc-metを含むと思われる又は変異したc-metを含むことが既知である試料を接触させることを含む方法を提供する。ある実施態様では、核酸は、c-metをコードする核酸にハイブリダイズすることができる核酸プローブにハイブリダイズし、プローブのハイブリダイゼーションによりc-metをコードする核酸中に突然変異がないことが示される。ある実施態様では、プローブのハイブリダイゼーションによりc-metをコードする核酸配列中に突然変異があることが示される。
【0022】
ある態様では、本発明は、肺癌において変異したc-metの存在を検出する方法であって、本発明の抗原結合剤と、変異したc-metを含むと思われる又は変異したc-metを含むことが既知である試料を接触させることを含み、該薬剤の結合又は結合の欠如から位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168に突然変異を含有するc-metポリペプチドの有無が示される方法を提供する。ある態様では、本発明は、肺癌において変異したc-metの存在を検出する方法であって、本発明の抗原結合剤と、変異したc-metを含むと思われる又は変異したc-metを含むことが既知である試料を接触させることを含み、該薬剤の結合又は結合の欠如からエキソン14の少なくとも一部分が欠失しているc-metポリペプチドの有無が示される方法を提供する。
【0023】
ある態様では、本発明は、肺組織における癌性疾患状態を検出する方法であって、肺癌を有すると思われる被検体の試料がヒトc-metをコードする核酸配列中に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該突然変異により位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸変化が生じるものであり、該突然変異の検出から被検体の肺の癌性疾患状態の存在が示される方法を提供する。ある態様では、本発明は、肺組織における癌性疾患状態を検出する方法であって、肺癌を有すると思われる被検体の試料がヒトc-metをコードする核酸配列中に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該配列がエキソン14及び/又はそのフランキングイントロンにおいて変異し、該突然変異がエキソンスプライシングに作用するものであり、該突然変異の検出からわずかな残留肺癌の存在が示される方法を提供する。
【0024】
また、本発明は、本明細書中に示すc-met突然変異を含有する肺癌の検出及び/又は診断に有用な様々な組成物を提供する。したがって、ある態様では、本発明は、位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸変化が生じる突然変異を含有するc-metを含んでなる肺癌バイオマーカーを提供する。ある態様では、本発明は、エキソン14及び/又はそのフランキングイントロンに突然変異を含有するc-metを含んでなる肺癌バイオマーカーであって、該突然変異がエキソンスプライシングに作用するものである、肺癌バイオマーカーを提供する。本発明のバイオマーカーは、本発明の突然変異の有無に関する情報を提供する任意の形態でありうる。例えば、ある実施態様では、バイオマーカーは核酸分子である。他の実施態様では、バイオマーカーはポリペプチドである。ある実施態様では、ポリペプチドは、突然変異部位を含有する変異体c-met結合部位に結合する本発明の抗原結合剤によって検出可能となり、該突然変異部位が位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168のアミノ酸置換であるか又は、該突然変異部位がエキソン14の欠失した部位である。ある実施態様では、欠失した部位がエキソン14の欠失の実質的にすべてを含む。
【0025】
ある態様では、本発明は、突然変異を含有するc-metを特異的に結合し、タンパク質の位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168に突然変異を含有するc-metポリペプチドを結合するか又は、位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168のアミノ酸の変化に対応する核酸位置に突然変異を含有するc-metコード化核酸を結合する、肺癌造影剤を提供する。ある態様では、本発明は、エキソン14の少なくとも一部位の欠失を有するc-metポリペプチドを特異的に結合するか又は、エキソン14をコードする配列の少なくとも一部位を欠失するc-metコード化核酸を特異的に結合する、肺癌造影剤を提供する。
【0026】
また、本発明は、位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168のアミノ酸の変化に対応する核酸位置に突然変異を含有するc-metコード化核酸に特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドを提供する。他の例では、本発明は、エキソン14をコードする配列の少なくとも一部位を欠失するc-metコード化核酸に特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドを提供する。
ある態様では、本発明は、位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168に突然変異を含有するc-metポリペプチドに特異的に結合することができる抗原結合剤を提供する。他の態様では、本発明は、エキソン14の少なくとも一部位を欠失するc-metポリペプチドに特異的に結合することができる抗原結合剤を提供する。
【0027】
ある態様では、本発明は、ヒトc-metをコードする配列の少なくとも一部を含有してなる単離されて精製された核酸分子であり、この少なくとも一部はc-metアミノ酸位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168における変化に対応するヌクレオチド位置に突然変異を含有するものである核酸分子を提供する。他の態様では、本発明は、ヒトc-metをコードするゲノム配列の少なくとも一部を含有してなる単離されて精製された核酸分子であり、この少なくとも一部はエキソン14及び/又はそのフランキングイントロンをコードする配列に突然変異を含有し、該突然変異がエキソンスプライシングに作用するものである核酸分子を提供する。ある態様では、本発明は、本発明の核酸分子にコードされるポリペプチドを提供する。ある態様では、本発明は、本発明の核酸分子を含んでなる組み換えベクターを提供する。ある態様では、本発明は、本発明の組み換えベクターを含んでなる宿主細胞を提供する。ある態様では、本発明は、本発明のポリペプチドを産生する方法であって、本発明の組み換えベクターを含んでなる宿主細胞を培養して、組み換えベクターから発現されたポリペプチドを単離することを含む方法を提供する。
【0028】
ある態様では、本発明は、位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168のアミノ酸の変化に対応する核酸位置に突然変異を含有するc-metコード化核酸に特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドを含んでなるアレイ/遺伝子チップ/遺伝子セットを提供する。他の態様では、本発明は、エキソン14をコードする配列の少なくとも一部位を欠失するc-metコード化核酸に特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドを含んでなるアレイ/遺伝子チップ/遺伝子セットを提供する。
【0029】
ある態様では、本発明は、位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168に突然変異を含有するヒトc-metアミノ酸ポリペプチド配列及び/又は、位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168のアミノ酸の変化に対応する核酸位置に突然変異を含有するヒトc-metポリペプチドをコードする核酸配列を含んでなるコンピューター読み取り可能な媒体を提供する。他の態様では、本発明は、エキソン14の少なくとも一部位が欠失しているヒトc-metアミノ酸ポリペプチド配列及び/又は、エキソン14をコードする配列の少なくとも一部位を欠失するヒトc-metコード化核酸を含んでなるコンピューター読み取り可能な媒体を提供する。ある実施態様では、本発明のコンピューター読み取り可能な媒体は一又は複数の被検体の配列情報のための貯蔵培地を含む。ある実施態様では、情報は、肺癌を有することがわかっているか又は肺癌を有すると思われる被検体についての個別化したゲノムプロファイルであり、このときのゲノムプロファイルは本発明の突然変異を含有するc-metについての配列情報を含むものである。
【0030】
ある態様では、本発明は、本明細書中に示す本発明の組成物と、ヒトc-metの位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168の突然変異を検出するために該組成物を使用することに関する指示書とを具備するキット及び/又は製造品を提供する。ある態様では、本発明は、本発明の組成物と、エキソン14の欠失を有するヒトc-metを検出するために該組成物を使用することに関する指示書とを具備するキット及び/又は製造品を提供する。
【0031】
本明細書中に示すように、ヒトの肺癌細胞のサブセットは、体細胞突然変異によってヒトc-metのエキソン14の少なくとも一部位の欠失を表し、今までに知られていない発癌活性を有する機能的なヒトc-metスプライス変異体となる。したがって、一実施態様では、エキソンスプライシングに作用する本発明の突然変異は、変異しているが少なくとも一部のエキソン14を欠く機能的なc-metタンパク質の産生と関係しているものである。「機能的」とは、タンパク質が通常野生型ヒトc-metタンパク質に伴う細胞シグナル伝達活性のうちの少なくとも一部が可能であることを意味する。一実施態様では、エキソン14の一部の欠失により、Cbl結合に必要なY1003リン酸化部位の除去と活性化されたc-metレセプターの下方制御が起こる。一実施態様では、少なくとも一部のエキソン14を欠失している変異体c-metは、実質的に完全なエキソン13及びエキソン15を含んでなる。一実施態様では、少なくとも一部のエキソン14を欠失している変異体c-metは、野生型c-metの膜貫通ドメイン及び/又は細胞外ドメインを含んでなる。一実施態様では、少なくとも一部のエキソン14を欠失している変異体c-metは、細胞外リガンド結合ドメインを含んでなる。本明細書中に記載の様式でエキソンスプライシングに作用できる体細胞突然変異は、本明細書に示す実施例に基づいて当分野の技術者によって測定することができる。このような突然変異の例には、通常ヒトc-met RNAスプライシングに伴うスプライシング機構の変化と関係している任意の突然変異(一又は複数)が含まれる。例えば、このような突然変異は、図1A、図2及び図6の表S3に示すものなどの、5'又は3'スプライス部位、枝分かれ部位、ポリピリミジン域などにおける一又は複数の配列変異を含む。さらに、機能的なc-metスプライス変異体の存在ないし産生の確認は、当分野に公知の技術を用いて決定できる。そのいくつかの技術は下記の実施例に記載する。
【0032】
一実施態様では、位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168の突然変異により、それぞれN375S、I638L、V13L、V923L、I316M及びE168Dの置換が生じる。具体的な置換は図6の表S3にも示す。
本発明の突然変異は、限定するものではないが、(a) 対立遺伝子特異的制限エンドヌクレアーゼ切断に基づく制限酵素断片長多型検出法、(b) 固定したオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドアレイを含む、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーション、(c) 対立遺伝子特異的PCRである、ミスマッチ修復検出法(MRD)、(d) MutSタンパク質の結合、(e) 変性勾配ゲル電気泳動法(DGGE)、(f) 一本鎖-高次構造-多型検出法、(g) ミスマッチ塩基対でのRNAアーゼ切断、(h) ヘテロ二本鎖DNAの化学的又は酵素的切断、(i) 対立遺伝子特異的プライマー伸長に基づく方法、(j) 遺伝子のビット分析(GBA)、(k) オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)、(l) 対立遺伝子特異的ライゲーション連鎖反応(LCR)、(m) ギャップ-LCR、及び(n) 放射性、比色及び/又は蛍光DNA塩基配列決定法を含む当分野で公知の任意の好適な方法によって検出できる。
【0033】
(発明の実施の形態)
一般的な技術
本発明の実施は、特に明記しない限り、当業者の技術範囲内の分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来技術を使用して行う。このような技術は、例えば以下のような文献に完全に明記されている。「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」, 第2版(Sambrookら, 1989);「Oligonucleotide Synthesis」(M. J. Gait, 編, 1984);「Animal Cell Culture」(R. I. Freshney, 編, 1987);「Methods in Enzymology」(Academic Press, Inc.);「Current Protocols in Molecular Biology」(F. M. Ausubel等, 編., 1987, 及び定期的に更新されたもの);「PCR: The Polymerase Chain Reaction」, (Mullisら, 編, 1994)。
本発明で用いるプライマー、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドは、当分野で公知の標準的な技術を用いて生成することができる。
特に定義しない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。Singleton 等, Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed., J. Wiley & Sons (New York, N.Y. 1994), and March, Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure 4th ed., John Wiley & Sons (New York, N.Y. 1992)により当分野の技術者は本出願に使用した多くの用語の一般的な理解が得られる。
【0034】
定義
本明細書で用いる「アレイ」又は「マイクロアレイ」なる用語は、基質上でのハイブリダイズ可能なアレイ成分、好ましくはポリヌクレオチドプローブ(例えばオリゴヌクレオチド)の規則正しい整列を指す。基質は、ガラススライドなどの固体基質、又はニトロセルロースメンブレンなどの半固体基質であってもよい。ヌクレオチド配列は、DNA、RNA又は何れかのその並べ換えでありうる。
本明細書で用いる「標的配列」、「標的核酸」又は「標的タンパク質」は、本発明の突然変異が存在すると思われる又は存在することがわかっており、その検出が望まれる、対象とするポリヌクレオチド配列である。通常、本明細書中で用いる「鋳型」は標的ヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドである。場合によっては、「標的配列」、「鋳型DNA」、「鋳型ポリヌクレオチド」、「標的核酸」、「標的ポリヌクレオチド」及びその変異体が交換可能に用いられる。
本明細書中で用いる「増幅」は通常、所望の配列の複数のコピーを生産する方法を指す。「複数のコピー」は少なくとも2のコピーを意味する。「コピー」が、鋳型配列に対して相補的な又は同一な完全な配列を必ずしも意味するものではない。例えば、コピーは、ヌクレオチド類似体、例えばデオキシイノシン、意図的配列変化(鋳型に相補的ではないがハイブリダイズすることができる配列を含んでなるプライマーにより導入された配列変化など)及び/又は増幅中に起こる配列エラーを含みうる。
【0035】
ここで交換可能に用いる「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを意味し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド又は塩基、及び/又はそれらの類似体(アナログ)、又はDNAもしくはRNAポリメラーゼによりポリマー中に取り込み可能な任意の基質とすることができる。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。存在するならば、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの集合化(「アセンブリ」とも言う)の前又は後になされ得る。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断されてもよい。ポリヌクレオチドは合成後に、例えば標識成分との結合によりさらに修飾されてもよい。他のタイプの修飾には、例えば「キャップ(caps)」、類似体との自然に生じたヌクレオチドの一又は複数の置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電連結(例えばホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミダート、カルバマート等)及び荷電連結(ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート等)を有するもの、ペンダント部分、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply-L-リジン等)を含むもの、インターカレータ(intercalators)を有するもの(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤を含むもの(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属等)、アルキル化剤を含むもの、修飾された連結を含むもの(例えばアルファアノマー核酸等)、並びにポリヌクレオチド(一又は複数)の未修飾形態が含まれる。さらに、糖類中に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えばホスホナート基、ホスファート基で置き換えられてもよく、標準的な保護基で保護されてもよく、又は付加的なヌクレオチドへのさらなる連結を調製するように活性化されてもよく、もしくは固体支持体に結合していてもよい。5'及び3'末端のOHはホスホリル化可能であり、又は1〜20の炭素原子を有するアミン又は有機キャップ基部分で置換することもできる。また他のヒドロキシルは標準的な保護基に誘導体化されてもよい。さらにポリヌクレオチドは当該分野で一般的に知られているリボース又はデオキシリボース糖類の類似形態のものをさらに含み、これらには例えば2'-O-メチル-、2'-O-アリル、2'-フルオロ又は2'-アジド-リボース、炭素環式糖の類似体、アルファ-アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロース類又はリキソース類、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及び非塩基性ヌクレオシド類似体、例えばメチルリボシドが含まれる。一又は複数のホスホジエステル連結は代替の連結基で置き換えてもよい。これらの代替の連結基には、限定されるものではないが、ホスファートがP(O)S(「チオアート」)、P(S)S(「ジチオアート」)、「(O)NR(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR'、CO又はCH(「ホルムアセタール」)と置き換えられた実施態様のものが含まれ、ここでそれぞれのR及びR'は独立して、H又は、エーテル(-O-)結合を含んでいてもよい置換もしくは未置換のアルキル(1-20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はアラルジル(araldyl)である。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。先の記述は、RNA及びDNAを含むここで引用される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0036】
本明細書中で用いる「オリゴヌクレオチド」とは、短く、一般的に単鎖であり、また必ずしもそうではないが、一般的に約200未満のヌクレオチド長の、一般的に合成のポリヌクレオチドを意味する。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」なる用語は、相互に排他的なものではない。ポリヌクレオチドについての上述した記載はオリゴヌクレオチドと等しく、十分に適用可能である。
「プライマー」は、一般に、標的配列とハイブリダイズすることによって、対象の試料中に存在しうる標的に結合して、その後、標的に相補的なポリヌクレオチドの重合を促進する、一般に遊離した3'-OH基を有する短い単鎖のポリヌクレオチドである。
「遺伝子増幅」なる語句は、遺伝子又は遺伝子断片の複数のコピーが特定の細胞又は細胞系統において形成されるプロセスを意味する。複製された領域(増幅されたDNAのストレッチ)は、しばしば「アンプリコン」と称される。通常は、生成されるメッセンジャーRNA(mRNA)の量、即ち遺伝子発現レベルも、発現された特定遺伝子の作成されたコピー数に比例して増加する。
【0037】
本明細書中で用いる「突然変異」なる用語は、野生型タンパク質又は核酸と比べて、それぞれ特定のタンパク質又は核酸(遺伝子、RNA)のアミノ酸配列又は核酸配列の差異を意味する。変異したタンパク質又は核酸は、遺伝子の1の対立遺伝子(ヘテロ接合体)又は両方の対立遺伝子(ホモ接合体)から発現されうるか、遺伝子の1の対立遺伝子(ヘテロ接合体)又は両方の対立遺伝子(ホモ接合体)にみられ、体細胞又は生殖細胞系でありうる。本発明において、通常突然変異は体細胞である。具体的な実施態様では、前記突然変異は、例えば細胞外ドメイン又は膜近傍ドメインなどのc-metのキナーゼドメイン領域(KDR)の外でみられる。他の実施態様では、突然変異は、図6の表S3、図1A、図2に示すアミノ酸置換、欠失又は挿入である。突然変異には、配列再編成、例えば挿入、欠失及び点突然変異(単一のヌクレオチド/アミノ酸多型を含む)が含まれる。
「阻害する」ことは、参照物質と比較して、活性、機能及び/又は量を減らす又は低くすることである。
【0038】
一般的に「3'」なる用語は、同じポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの他の領域又は位置からポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド3'(下流)の領域又は位置を指す。したがって、例えば、エキソンに関して3'スプライス部位はそのエキソンの5'末端から下流域に位置する。同様に、イントロンに関して3'スプライス部位はそのイントロンの5'末端から下流域に位置する。
一般的に「5'」なる用語は、同じポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの他の領域又は位置からポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド5'(上流)の領域又は位置を指す。したがって、例えば、エキソンに関して5'スプライス部位はそのエキソンの3'末端から上流域に位置する。同様に、イントロンに関して5'スプライス部位はそのイントロンの3'末端から上流域に位置する。
【0039】
「検出」は、直接的及び間接的な検出を含む検出する任意の手段を含む。
本明細書中で用いる「診断」なる用語は、分子の又は病理学的状態の同定、疾患又は症状、例えば肺癌の同定を指す。本明細書中で用いる「予後」なる用語は、肺癌起因性の死の可能性の予測、又は肺癌などの腫瘍性疾患の再発、腫瘍拡散及び薬剤耐性を含む進行の可能性の予測を意味する。本明細書中で用いる「予測」なる用語は、患者が薬剤又は一連の薬剤に対して有利又は不利に応答する可能性を意味する。一実施態様では、予測はその応答の程度に関する。一実施態様では、予測は、例えば特定の治療的薬剤及び/又は原発性腫瘍の外科的除去による治療、及び/又は癌再発のない一定期間中の化学療法などの治療の後に患者が生存しているかどうか、及び/又は生存の可能性に関する。本発明の予測方法を用いて任意の特定の患者のために最も好適な治療様式を選択することによって、治療決定を臨床的に行うことができる。本発明の予測方法は、患者が、治療投薬計画、例えば特定の治療剤や組み合わせの投与、外科的介入、化学療法剤などを含む特定の治療投薬計画に有利に応答するかどうか、又は治療投薬計画の後に患者が長期に生存しているかどうかを予測する際の有用なツールである。
【0040】
本明細書中で用いる「長期の」生存なる用語は、治療的治療の後、少なくとも1年、5年、8年又は10年の生存を指す。
本発明に従って用いられる場合、特定の治療薬又は治療選択に対する「耐性の増加」なる用語は、薬剤の標準的な用量又は標準的な治療手順に対する応答の減少を意味する。
本発明に従って用いられる場合、特定の治療薬又は治療選択に対する「感受性の減少」なる用語は、薬剤の標準的な用量又は標準的な治療手順に対する応答の減少を意味し、この応答の減少は薬剤の用量や治療の強度を増やすことによって、(少なくとも部分的に)補われうるものである。
【0041】
「患者応答」は、限定するものではないが以下のものを含む患者に利益を示す任意のエンドポイントを使用して評価できる。(1) 緩徐化及び完全な増殖停止を含む、ある程度の腫瘍増殖の阻害、(2) 腫瘍細胞の数の減少、(3) 腫瘍サイズの減少、(4) 近接する末梢器官及び/又は組織への腫瘍細胞浸潤の阻害(すなわち減少、緩徐化又は完全な停止)、(5) 転移の阻害(すなわち減少、緩徐化又は完全な停止)、(6) 必ずではないが腫瘍の退縮又は拒絶が生じうる抗腫瘍免疫応答の亢進、(7) 腫瘍と関係する一又は複数の症状の、ある程度の軽減、(8) 治療後の生存期間の増加、及び/又は(9) 治療後の特定の時点での死亡率の減少。
癌の「病理」には、患者の福利を損なうすべての現象が含まれる。これには、異常又は制御不能な細胞増殖、転移、隣接細胞の正常な機能の干渉、サイトカイン又は他の分泌産物の異常なレベルの放出、炎症性応答又は免疫学的応答の抑制又は悪化、異常増殖、前悪性腫瘍、悪性腫瘍、リンパ節などの周囲又は離れた組織又は器官の浸潤が含まれるがこれに限定するものではない。
【0042】
本明細書中で用いる「c-metインヒビター」及び「c-metアンタゴニスト」は、野生型又は変異したc-metの生物学的機能を阻害する能力を有する分子を指す。したがって、「インヒビター」なる用語はc-metの生物学的役割との関係で定義される。一実施態様では、本明細書中で称されるc-metインヒビターはHGF/c-met経路による細胞シグナル伝達を特異的に阻害する。例えば、c-metインヒビターは、c-met又は通常c-metに結合する分子と相互作用しうる(例えば、結合しうる)。一実施態様では、c-metインヒビターはc-metの細胞外ドメインに結合する。一実施態様では、c-metインヒビターはc-metの細胞内ドメインに結合する。一実施態様では、c-metインヒビターにより阻害されるc-met生物活性は、腫瘍の発達、増殖又は拡散と関係している。HGF/c-met活性を阻害することが可能な限り、c-metインヒビターは何れの形態であってもよい。インヒビターには、抗体(例えば、本明細書中に定義されるモノクローナル抗体)、小有機/無機分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマー、阻害性ペプチド/ポリペプチド、阻害性RNA(例えば小干渉RNA)、その組合せなどが含まれる。
【0043】
「抗体」(Ab)と「免疫グロブリン」(Ig)は同じ構造的特徴を有する糖タンパク質である。抗体は特定の抗原に対して結合特異性を示すものであるが、免疫グロブリンには、抗体と一般的に抗原特異性を欠く他の抗体様分子の両方が含まれる。後者の種類のポリペプチドは、例えばリンパ系により低レベルで、骨髄腫により増加したレベルで産生される。
「抗体」及び「イムノグロブリン」なる用語は互換性をもって広義な意味で使われ、モノクローナル抗体(例えば完全長又は完全なモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、単価抗体、多価抗体、多特異性抗体(例えば所望の生物学的活性を示す限りの二重特異性抗体)及び(本明細書で詳細に記載される)特定の抗体断片が含まれる。抗体はキメラ、ヒト、ヒト化及び/又は親和性成熟したものであり得る。
【0044】
「抗体断片」は完全な抗体の一部のみを含んでなるものであり、その一部は、完全な抗体に存在する場合のその一部に通常関連する機能の少なくとも一、好ましくはその機能のほとんどないしはすべてを保持することが好ましい。一実施態様では、抗体断片は完全な抗体の抗原結合部位を含んでなるために、抗原結合能を有する。他の実施態様では、抗体断片は、例えばFc領域を含んでなるものは、完全な抗体に存在する場合のFc領域に通常関連する生物学的な機能、例えばFcRn結合、抗体半減期の調節、ADCC機能及び補体結合の少なくとも一を保持する。一実施態様では、抗体断片は、完全な抗体と実質的に類似したインビボ半減期を有する一価性抗体である。例えば、このような抗体断片は、インビボ安定性を断片に与えることができるFc配列に結合した抗原結合アームを含んでもよい。
【0045】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、微量に存在しうる天然に生じる変異体を除いて同一である抗体を指す。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、単一の抗原に対するものである。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含むポリクローナル調製物と比べて、モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。
本明細書中のモノクローナル抗体には、具体的に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種由来の抗体あるいは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同であり、鎖の残りの部分が他の種由来の抗体あるいは他の抗体クラスあるいはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同である「キメラ」抗体、並びにそれが所望の生物的活性を有する限りそれら抗体の断片が含まれる(米国特許第4,816,567号;及び、Morrison 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。
【0046】
本願明細書において、用いられる「高頻度可変領域」、「HVR」又は「HV」なる用語は、配列中の高頻度に可変しているおよび/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。「HVR」又は「HV」なる用語の前にある「HC」及び「LC」なる文字はそれぞれ重鎖及び軽鎖のHVR又はHVを指す。通常、抗体は、VH(H1、H2、H3)の3つと、VL(L1、L2、L3)の3つの計6つの高頻度可変領域を含んでなる。多くの高頻度可変領域が描写されており、本願明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列多様性に基づいており、最も一般的に用いられるものである(Kabat 等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。Chothiaは、代わりに構造的ループの位置を指す(Chothia 及びLesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。AbM高頻度可変領域は、KabatCDRとChothia構造ループとが組み合わさったものであり、Oxford Molecular's AbM抗体モデリングソフトウェアにより使用されている。「接触」高頻度可変領域は、利用できる複雑な結晶構造の分析に基づくものである。それぞれの高頻度可変領域の残基を以下に示す。
【0047】
ループ Kabat AbM Chothia 接触
L1 L24-L34 L24-L34 L26-L32 L30-L36
L2 L50-L56 L50-L56 L50-L52 L46-L55
L3 L89-L97 L89-L97 L91-L96 L89-L96
H1 H31-H35B H26-H35B H26-H32 H30-H35B
(Kabat番号付け)
H1 H31-H35 H26-H35 H26-H32 H30-H35
(Chothia番号付け)
H2 H50-H65 H50-H58 H53-H55 H47-H58
H3 H95-H102 H95-H102 H96-H101 H93-H101
【0048】
「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書中で定義されるように、高頻度可変領域残基以外のそれらの可変ドメイン残基である。
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。これらのドメインは、通常、抗体の最も可変的な部位であって、抗原結合部位を含有する。
【0049】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形とは、非ヒト免疫グロブリンから得られた最小配列を含むキメラ抗体である。多くの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、全て又はほとんど全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものと一致し、全て又はほとんど全てのFRがヒト免疫グロブリン配列である、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、状況に応じて免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。さらなる詳細は、Jones等, Nature 321, 522-525(1986);Riechmann等, Nature 332, 323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596(1992)を参照のこと。また、以下の概説文献及びここに挙げる引用文献も参照のこと:Vaswani及びHamilton, Ann. Allergy, Asthma &Immunol. 1:105-115 (1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995);Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994)。
【0050】
「ヒト抗体」は、ヒトにより産生される抗体のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を有するもの、及び/又は本明細書中に開示したヒト抗体をつくるためのいずれかの技術を使用してつくられたものである。この定義におけるヒト抗体は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特別に除く。
「親和性成熟」抗体は、その一又は複数のCDR/HVRに一又は複数の変更を有する抗体であって、そのような変更を有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性を向上させたものである。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対して、ナノモル単位の、さらにはピコモル単位の親和性を有する。親和成熟抗体は、当技術分野において既知の方法により生産できる。Marks等は、Bio/Technology, 10:779-783(1992年)において、VHドメインとVLドメインのシャフリングによる親和成熟を開示している。CDR/HVRおよび/またはフレームワーク残基のランダムな突然変異誘発が、Barbas他、Proc Nat. Acad. Sci, USA 91:3809-3813(1994);Schier他、Gene, 169:147-155 (1995);Yelton他、J. Immunol., 155:1994-2004 (1995);Jackson他, J. Immunol., 154(7):3310-9 (1995);およびHawkins他, J. Mol. Biol., 226:889-896 (1992)に開示されている。
【0051】
「Fc領域」という用語は、完全な抗体のパパイン消化で生じ得る免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。Fc領域は、天然配列Fc領域又は変異体Fc領域である。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化するかも知れないが、ヒトIgG重鎖のFc領域は、通常、Cys226の位置のアミノ酸残基、又は約位置Pro230からFc領域のカルボキシル末端まで伸長すると定義される。免疫グロブリンのFc領域は、一般的に、2つの定常ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、場合によってはCH4ドメインを含む。ここで「Fc領域鎖」とは、Fc領域の2つのポリペプチド鎖のうちの一つを意味する。
ここで用いられる「細胞障害剤」という用語は、細胞の機能を阻害し又は妨害し、及び/又は細胞の破壊を引き起こす物質を称する。この用語は放射性アイソトープ(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位元素)、化学療法剤、及び細菌性、真菌性、植物性又は動物性起源の小分子毒素又は酵素的に活性な毒素等の毒素又はその断片を含むことが意図されている。
【0052】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミドのようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ−9−テトラヒドロカナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標);βラパチョーネ;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成アナログトポテカン(HYCAMTIN(登録商標)、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)及び9−アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;ドゥオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エロイテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンギスタチン;クロランブシル、クロロナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロスレアス(nitrosureas);抗生物質、例えばエネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンωI1(例えばAgnew Chem Intl. Ed. Engl. 33:183-186(1994)参照);ダイネマイシン(dynemicin)Aを含むダイネマイシン;エスペラマイシン;並びにネオカルチノスタチン発色団及び関連する色素タンパクエネジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorbicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHCIリポソーム注射剤(DOXIL(登録商標))及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCのようなマイトマイシン、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート、ゲムシタビン(gemcitabine) (GEMZAR(登録商標))、テガフル(tegafur) (UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(capecitabine) (XELODA(登録商標))、エポチロン(epothilone)、及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate);プリンアナログ、例えばフルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine);アンドロゲン類、例えばカルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone);抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸リプレニッシャー(replenisher)、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシノイド(maytansinoid)類、例えばメイタンシン(maytansine)及びアンサミトシン(ansamitocine);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特にT-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジン(roridine)A及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカーバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド類、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのクレモフォー無添加アルブミン操作ナノ粒子製剤(ABRAXANETM)、及びドキセタキセル(TAXOTERE(登録商標));クロランブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;プラチナアナログ、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボビン(leucovovin);ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン(novantrone);エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロナート(ibandronate);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸のようなレチノイド;上述したもののいずれかの薬学的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体:並びに上記のうち2以上の組み合わせ、例えば、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニソロン併用療法の略称であるCHOP、及び5-FU及びロイコボビン(leucovovin)とオキサリプラチン(ELOXATINTM)を組み合わせた治療法の略称であるFOLFOXが含まれる。
【0053】
またこの定義に含まれるものには、癌の増殖を助けるホルモンの作用を調節、低減、遮断又は阻害するように働き、多くの場合全身処置の形態で使用される抗ホルモン剤がある。それらはそれ自体がホルモンであってもよい。それらは例えば抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)を含み、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(raloxifene)(EVISTA(登録商標))、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びトレミフェン(FARESTON(登録商標));抗プロゲステロン;エストロゲンレセプター下方調節剤(ERD);エストロゲンレセプターアンタゴニスト、例えばフルベストラント(fulvestrant) (FASLODEX(登録商標));卵巣を抑止又は停止させる機能がある作用剤、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、例えば酢酸リュープロリド(LUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標))、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリン及びトリプテレリン(tripterelin);その他抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド;並びに副腎のエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール(MEGASE(登録商標))、エキセメスタン(AROMASIN(登録商標))、フォルメスタニー(formestanie)、ファドロゾール、ボロゾール(RIVISOR(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))、及びアナストロゾール(ARIMIDEX(登録商標))である。加えて、このような化学療法剤の定義には、クロドロネート(例えばBONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、エチドロン酸(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロン酸(AREDIA(登録商標))、チルドロン酸(SKELID(登録商標))、又はリセドロン酸(ACTONEL(登録商標))、並びにトロキサシタビン(troxacitabine)(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に接着細胞の増殖に結びつくシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えばPKC-α、Raf、及びH-Ras、及び上皮増殖因子レセプター(EGF-R);THERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子治療ワクチン等のワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えばLURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えばABARELIX(登録商標));ラパチニブ(lapatinib ditosylate)(GW572016としても知られるErbB-2及びEGFR二重チロシンキナーゼ小分子阻害剤);セレコシブ(celecoxib)などのCOX-2阻害剤(CELEBREX(登録商標);4-(5-(4-メチルフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾル-1-イル)ベンゼンスルホンアミド;及び上記のもののいずれかの製薬的に許容される塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0054】
「ブロッキング(以下「ブロック」とも言う)抗体」又は「アンタゴニスト」抗体は、結合する抗原の生物学的活性を阻害するか、減弱するものである。このようなブロッキングはレセプターへのリガンド結合などのタンパク質-タンパク質相互作用を阻害することによるなどの任意の方法によって行うことができる。一実施態様では、ブロッキング抗体又はアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的にないしは完全に阻害する。
「癌」及び「癌性」なる用語は、一般的に制御不能な細胞成長/増殖に特徴がある哺乳動物の生理学的症状を指す又は記述する。癌の例には、限定するものではないが、上皮癌、リンパ腫(例えばホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫及び白血病が含まれる。このような癌のより具体的な例は、扁平細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌、膵癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝腫瘍、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌又は子宮上皮癌、唾液腺上皮癌、腎癌、肝癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝上皮癌及び様々なタイプの頭頸部癌を含む。本発明の方法及び組成物は、腺癌、大細胞、扁平上皮、小細胞、肺胞細胞上皮癌、腺扁平上皮癌などの組織学的な特性を示すヒトの肺癌、例えば非小細胞肺癌及び小細胞肺癌に特に有用であり、一般的にはそれらに対するものである。
【0055】
本明細書中で用いる、「腫瘍」なる用語は、悪性又は良性にかかわらず、すべての腫瘍性細胞成長及び増殖と、すべての前癌性及び癌性の細胞及び組織を指す。
本明細書中で用いる「試料」なる用語は、例えば理学的、生化学的、化学的及び/又は生理学的特徴に基づいて特性を示す又は同定される、細胞分子及び/又は他の分子構成要素を含有する対象とする被検体から得られる組成物を指す。例えば、「肺癌試料」又は「肺腫瘍試料」なる語句は、特性を示す細胞分子及び/又は他の分子構成要素を含有すると思われる又は含有することがわかっている対象の被検体から入手される任意の試料を指す。
ここで使用されるところの「治療」は、治療されている個体又は細胞の天然の過程を改変するための臨床的介入を意味し、予防のため又は臨床的病理の過程中に実施することができる。治療の望ましい効果には、疾病の発生又は再発の防止、症状の寛解、疾病の任意の直接的又は間接的病理的結果の低減、転移の防止、疾病の進行速度の低減、疾病状態の回復又は緩和、及び寛解又は改善された予後が含まれる。ある実施態様では、本発明の方法及び組成物は疾患又は疾病の進行を遅らせるために用いられる。
【0056】
「有効量」とは所望の治療又は予防結果を達成するために必要な用量及び時間での効果的な量を意味する。治療剤の「治療的有効量」は、例えば個体の疾病ステージ、年齢、性別、及び体重、並びに個体に所望の応答を誘発する抗体の能力などの因子に従って変わりうる。また、治療的有効量は治療剤の任意の毒性又は有害な効果よりも治療的に恩恵のある効果が上回るものである。「予防的有効量」とは所望の予防結果を達成するために必要な用量及び時間での効果的な量を意味する。典型的には必ずではないが、予防的用量は疾患の初期ステージ又はその前の患者に用いるので、予防的有効量は治療的有効量よりも少ないであろう。
【0057】
本願明細書において用いられるように、「肝細胞増殖因子」又は「HGF」なる用語は、特別に又は文脈上別途示されない限り、HGF/c-metシグナル伝達過程を起こす条件下においてこの経路を活性化しうる任意の(天然に生じるもの又は合成のもののいずれにせよ)天然の又は変異形のHGFポリペプチドを指す。「野生型HGF」なる用語は、一般に、天然に生じるHGFタンパク質のアミノ酸配列を含有してなるポリペプチドを指す。「野生型HGF配列」なる用語は、一般に、天然に生じるHGFにおいてみられるアミノ酸配列を指す。c-metは、そのレセプターによってHGF細胞内シグナル伝達が生物学的に達成されるHGFの公知のレセプターである。RefSeq NM_000245に基づく野生型ヒトc-metタンパク質配列を図9に示す。
【0058】
「ハウスキーピング遺伝子」なる用語は、細胞機能の維持に必須である活性を有するタンパク質をコードする一群の遺伝子を指す。これらの遺伝子は、典型的にすべての細胞型において、同じように発現される。ハウスキーピング遺伝子には、グリセリンアルデヒド-3-リン酸塩脱水素酵素(GAPDH)、Cypl、アルブミン、アクチン、例えばβ-アクチン、チューブリン、シクロフィリン、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HRPT)、L32. 28S及び18Sが挙げられるが、これに限定されるものではない。
本明細書中で用いる「スプライス部位」、「スプライス接合部位」、「枝分かれ部位」、「ポリピリミジン域」なる用語は、哺乳類、特にヒトのRNAスプライシングとの関係において、当分野で公知の意味を指す。例として、Pagani 及び Baralle, Nature Reviews: Genetics (2004), 5:389-396及びその中の引例を参照のこと。参考として、c-met RNAスプライシング成分のための配列の一実施態様を図8に例として記載する。
【0059】
一般的な例示的技術
核酸突然変異の検出のための方法は当分野で公知である。しばしば、必ずしもそうではないが、突然変異が存在するかどうかの決定のために望ましい量の材料を得るために、試料中の標的核酸を増幅する。増幅技術は公知技術である。例えば、増幅された産物は、突然変異が予測される特定のアミノ酸配列位置/核酸配列位置を含む限り、対象とするタンパク質をコードするすべての核酸配列を包含してもよいし、しなくてもよい。
【0060】
一例では、変異の存在は、試料からの核酸を、突然変異した核酸をコードする核酸に特異的にハイブリダイズすることができる核酸プローブと接触させ、該ハイブリダイゼーションを検出することによって決定することができる。一実施態様では、プローブは例えば放射性同位元素(H、32P、33P等)、蛍光剤(ローダミン、フルオレセン等)又は発色剤で検出可能に標識される。いくつかの実施態様では、プローブはアンチセンスオリゴマー、例えばPNA、モルホリノ-ホスホロアミデート類、LNA又は2'-アルコキシアルコキシである。プローブは約8ヌクレオチドから約100ヌクレオチド、又は約10から約75、あるいは約15から約50、又は約20から約30でありうる。他の態様では、本発明の核酸プローブは試料中においてc-met突然変異を同定するためのキットとして提供され、該キットはc-metをコードする核酸中の突然変異の部位に隣接して又は特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含む。該キットはキットを使用してハイブリダイゼーション試験の結果に基づいてc-met阻害剤でc-met突然変異を含む腫瘍を有する患者を治療するための指示書を更に含みうる。
【0061】
また、突然変異は、野生型c-metをコードする対応する核酸の電気泳動移動度と増幅された核酸の電気泳動移動度とを比較することによって検出することができる。移動度の相違は、増幅された核酸配列での突然変異の存在を示すものである。電気泳動移動度は、例えばポリアクリルアミドゲル上での、任意の適切な分子分離技術により測定されうる。
【0062】
また、核酸を、酵素突然変異検出法(Enzymatic Mutation Detection (EMD))(Del Tito等, Clinical Chemistry 44:731-739, 1998)を使用して突然変異の検出について分析することができる。EMDはバクテリオファージリゾルベースTエンドヌクレアーゼVIIを使用し、これは、点突然変異、挿入及び欠失などの核酸変異から生じる塩基対ミスマッチによって引き起こされる構造的歪みを検出し切断するまで二本鎖DNAに沿ってスキャンする。例えばゲル電気泳動によってリゾルベース切断により形成された2つの短い断片の検出は突然変異の存在を示している。EMD法の利点は、増幅反応から直接アッセイされた点突然変異、欠失及び挿入を同定する単一のプロトコールであり、試料を精製する必要がなく、ハイブリダイゼーション時間を短縮し、信号対雑音比を増大させることである。20倍までの過剰な正常核酸及び4kbのサイズまでの断片を含む混合試料をアッセイすることができる。しかしながら、EMDスキャンは突然変異陽性試料中に生じる特定の塩基変化を同定せず、必要ならば特異的な突然変異を同定するために更なる配列決定手順を必要とする。CELI酵素は米国特許第5869245号に実証されているようにリゾルベースTエンドヌクレアーゼVIIと同様にして使用することができる。
【0063】
本発明の突然変異を検出するための他の簡便なキットは、ヘモクロマトーシスを引き起こすHFE、TFR2及びFPN1遺伝子における多重突然変異の検出のためのヘマクロマトーシスストリップアッセイ(Haemochromatosis StripAssayTM)(Viennalabs http://www.bamburghmarrsh.com/pdf/4220.pdf)に類似したリバースハイブリダイゼーションテストストリップである。そのようなアッセイは、PCRによる増幅に続く配列特異的ハイブリダイゼーションに基づいている。単一突然変異アッセイに対しては、マイクロプレートベースの検出系を適用することができる一方、多重突然変異アッセイに対しては、ストリップは「マクロ-アレイ」として使用することができる。キットは試料調製、増幅及び突然変異検出のための直ぐに使用できる試薬を含みうる。多重増幅プロトコルは利便性を提供し、非常に限られた体積の試料の試験を可能にする。直接的なストリップアッセイ(StripAssay)態様を使用して、20及びそれ以上の突然変異の試験を、高価な装置を用いないで5時間未満で完了させることができる。DNAが試料から単離され、標的核酸がインビトロで増幅され(例えばPCR)、一般的には単一(「多重(multiplex)」)増幅反応においてビオチン標識される。増幅産物は、プローブが平行線又はバンドとして固定されているストリップのような固体担体上に固定されたオリゴヌクレオチドプローブ(野生型及び変異型特異的)に選択的にハイブリダイズされたものである。結合したビオチン標識単位複製配列はストレプトアビジン-アルカリホスファターゼ及び有色基質を使用して検出される。そのようなアッセイは本発明の突然変異の全て又は任意のサブセットを検出することができる。特定の突然変異プローブバンドに対しては3種のシグナル伝達パターンの一つが可能である:(i) 正常な核酸配列を示す野生型プローブに対してのみのバンド、(ii) ヘテロ接合遺伝子型を示す野生型及び突然変異双方のプローブに対するバンド、及び(iii) ホモ接合突然変異遺伝子型を示す突然変異プローブだけに対するバンド。従って、ある態様では、本発明は、本発明の突然変異を検出する方法であって、増幅産物がリガンドを含むように、試料から標的のc-met核酸配列を単離及び/又は増幅し、増幅産物を、リガンドに対する検出可能な結合対を含むプローブであって本発明の突然変異体に特異的にハイブリダイズ可能なプローブに接触させ、ついで上記増幅産物に対する上記プローブのハイブリダイゼーションを検出する方法が更に提供される。一実施態様では、リガンドはビオチンであり、結合対はアビジン又はストレプトアビジンを含む。一実施態様では、結合対は、有色基質で検出可能なストレプトアビジン-アルカリ性である。一実施態様では、プローブは例えばストリップ上に固定されており、そこで、異なった突然変異に相補的であるプローブが互いに分離される。あるいは、増幅された核酸は、放射性同位元素で標識され、その場合、プローブは検出可能な標識を含む必要はない。
【0064】
本発明の方法によれば、野生型c-met遺伝子の改変が検出される。本発明による野生型遺伝子の改変は、例えば挿入、逆位、欠失、及び/または点突然変異のような全ての形態の突然変異を包含する。一実施態様では、突然変異は体細胞性のものである。体細胞突然変異はある種の組織、例えば腫瘍組織でのみ生じるものであり、生殖細胞系列で遺伝するものではない。生殖系列突然変異は体組織の任意のものにおいてみられうる。単一の対立遺伝子のみが体細胞的に突然変異する場合、初期の腫瘍状態が示される。しかしながら、双方の対立遺伝子が突然変異すると、ついで後期腫瘍状態が示される。よって、c-met突然変異の発見は、ここに記載されるように診断及び予後の指標である。
【0065】
腫瘍組織にみられるようなc-met突然変異により、突然変異を含有する腫瘍形成の素因細胞、又は変異した細胞が相互作用する他の細胞が生じうる。場合によって、本発明の突然変異が野生型c-metと比べてシグナル伝達活性を増加して癌性状態を引き起こすことと関係していると思われる。実際、エキソン14が欠失する本発明の突然変異は、c-metタンパク質を安定化して、c-met経路のシグナル伝達を増やし、突然変異を含有する肺細胞の腫瘍形成能を亢進する。
標的核酸を含有する試料は、当分野で周知な、腫瘍の特定の種類や位置に適した方法によって入手できる。組織生検は、腫瘍組織の代表的な部分を得るために用いることが多い。これに対して、腫瘍細胞は、対象とする腫瘍細胞を含むことがわかっている又は含むと思われる組織/体液の形態で間接的に入手できる。例えば、肺癌病変の試料は、切除術、気管支鏡検査法、細針吸引、気管支のブラッシングによって、又は、痰、肋膜体液又は血液から入手してもよい。突然変異遺伝子又は遺伝子産物は、腫瘍から、又は、他の体試料、例えば尿、痰又は血清から検出できる。腫瘍試料中の突然変異標的遺伝子ないし遺伝子産物の検出のための上記に記載の同じ技術を他の体試料に応用できる。癌細胞は腫瘍からはがれて、このような体試料中に出現する。このような体試料のスクリーニングによって、癌などの疾患の診断を簡単かつ迅速に行うことができる。加えて、治療の経過は、突然変異標的遺伝子ないし遺伝子産物についてこのような体試料を試験することによって、より容易にモニタリングすることができる。
【0066】
本発明の方法は、c-metが腫瘍形成に関与する任意の腫瘍に適用できる。本発明の診断方法は、臨床医が適切な治療方法を決定するために有用である。例えば、標的遺伝子とその対立遺伝子の両方に変異を示す腫瘍は、1つの対立遺伝子だけの変異を示す腫瘍よりもより積極的な治療的投薬計画が必要であることを示唆する。本発明の方法は、薬剤開発の過程における患者選択の補助、特定の治療投薬による個々の患者の治療の成功の可能性の予測、疾患進行の評価、治療有効性のモニタリング、個々の患者の予後診断、特定の癌(例えば肺癌)を発達させる個体の素因の評価、腫瘍の種類及び/又は腫瘍のステージの分類などといった様々な状況において、有用でありうる。
腫瘍細胞の組織調製物を濃縮する方法は公知技術である。例えば、組織は、パラフィン切片又はクリオスタット切片から単離してもよい。また、癌細胞は、フローサイトメトリ又はレーザー捕獲顕微解剖によって正常細胞から切り離してもよい。正常細胞から腫瘍を分離するためのこれら並びに他の技術は公知技術である。腫瘍組織が正常細胞と非常に混濁している場合、突然変異の検出はより難しいが、混入及び/又は偽陽性/陰性の結果を最小化する技術が公知である。そのいくつかを以下に記述する。例えば、試料は、対象とする腫瘍細胞と結合するが対応する正常細胞とは結合しない、又はその逆も可であることがわかっているバイオマーカー(突然変異を含む)の存在について評価してもよい。
【0067】
標的核酸中の点突然変異の検出は、当該分野でよく知られている技術を使用して標的核酸を分子クローニングし、核酸を配列決定することによって達成することができうる。あるいは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、腫瘍組織からのゲノムDNA調製物から直接的に標的核酸配列を増幅させることができる。ついで、増幅された配列の核酸配列を決定し、それから突然変異を同定することができる。増幅技術は当該分野でよく知られており、Saiki等, Science 239:487, 1988;米国特許第4683203号;及び米国特許第4683195号に記載されている。
本発明の標的核酸の増幅に用いることができる特異的なプライマー対には図7の表S4に挙げるものが含まれる。しかしながら、好適なプライマーの設定と選択は当分野で十分に確立された技術であり、したがって本発明の方法及び組成物は図7の表S4のプライマー及び/又は標的核酸配列に基づいて設定した任意の核酸プローブ/プライマーの使用を含むことは理解されるであろう。
【0068】
また、当該分野で知られているリガーゼ連鎖反応を、標的核酸配列を増幅させるために使用することができる。例としてWu等, Genomics, Vol. 4, pp.560-569 (1989)を参照。さらに、対立遺伝子特異的PCRとして知られている技術を使用することができる。例としてRuano及びKidd, Nucleic Acids Research, Vol. 17, p. 8392, 1989を参照。この技術によれば、特定の標的核酸突然変異にその3'末端でハイブリダイズするプライマーが使用される。特定の突然変異が存在していない場合は、増幅産物は観察されない。欧州特許出願公開第0332435号及び Newton等, Nucleic Acids Research, Vol. 17, p.7, 1989に開示されたAmplification Refractory Mutation System (ARMS) もまた使用することができる。遺伝子の挿入及び欠失もまたクローニング、配列決定及び増幅によって検出することができる。また、遺伝子又は周りのマーカー遺伝子に対する制限酵素断片長多型(RFLP)プローブを、多型断片における対立遺伝子の改変又は挿入をスコア付けするために使用することができる。一本鎖DNA高次構造多型(SSCP)解析もまた対立遺伝子の塩基変化変異体を検出するために使用することができる。例としてOrita等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA Vol. 86, pp. 2766-2770, 1989,及びGenomics, Vol. 5, pp. 874-879, 1989を参照。また、当該分野で知られているような挿入及び欠失を検出する他の方法を使用することができる。
【0069】
野生型遺伝子の改変は野生型遺伝子発現産物の改変に基づいて検出することもできる。そのような発現産物にはmRNA並びにタンパク質産物の双方が含まれる。点突然変異は、mRNAから作製されたcDNAの分子クローニングによって又はmRNAを増幅し配列決定することによって、検出することができる。クローン化cDNAの配列は当該分野でよく知られたDNA配列決定法を使用して決定することができる。cDNAはまたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって配列決定することもできる。
【0070】
本発明によれば、ミスマッチは、100%相補的ではないハイブリダイズした核酸二本鎖である。完全な相補性の欠如は欠失、挿入、逆位、又は置換又はフレームシフト突然変異によりうる。ミスマッチの検出は標的の核酸中における点突然変異を検出するために使用することができる。これらの技術は配列決定よりも感受性が低いが、より簡便に多数の腫瘍試料に対して実施することができる。ミスマッチ切断技術の一例はリボヌクレアーゼ保護法であり、これは、Winter等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 82, p.7575, 1985及びMeyers等, Science, Vol. 230, p.1242, 1985に詳細に記載されている。例えば、本発明の方法は、ヒトの野生型標的核酸に相補的である標識されたリボプローブの使用を伴いうる。リボプローブと腫瘍試料由来の標的核酸は一緒にアニール(ハイブリダイズ)され、続いて二本鎖RNA構造中の幾らかのミスマッチを検出することができる酵素リボヌクレアーゼAで消化される。ミスマッチがリボヌクレアーゼAによって検出される場合、それはミスマッチ部位で切断される。よって、アニールされたRNA調製物が電気泳動ゲルマトリックスで分離されると、ミスマッチがリボヌクレアーゼAによって検出され切断された場合、リボプローブとmRNA又はDNAに対する完全長二本鎖RNAよりも小さいRNA産物が見られる。リボプローブは標的核酸mRNA又は遺伝子の完全長である必要はないが、標的核酸の一部であり、変異していると思われる部位を含むものである。リボプローブが標的核酸mRNA又は遺伝子のセグメントのみを含む場合、多くのこれらプローブを使用してミスマッチに対する全標的核酸配列をスクリーニングすることが望ましい。
【0071】
同様な形で、DNAプローブを用いて、酵素的又は化学的切断などを介して、ミスマッチを検出することができる。例としてCotton等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 85, 4397, 1988;及びShenk等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 72, p. 989, 1975を参照のこと。あるいは、ミスマッチは、マッチした二本鎖に対するミスマッチの二本鎖の電気泳動移動度における変化によって検出することができる。例としてCariello, Human Genetics, Vol. 42, p.726, 1988を参照のこと。リボプローブかDNAプローブの何れかを用いて、突然変異を含みうる標的核酸mRNA又はDNAはハイブリダイゼーション前に増幅させることができる。標的核酸のDNAの変化は、例えば欠失及び挿入のように特に変化が全体的な再配列である場合は、サザンハイブリダイゼーションを使用して検出することもできる。
【0072】
また、増幅された標的核酸のDNA配列を、対立遺伝子特異的プローブを使用してスクリーニングすることもできる。これらのプローブは核酸オリゴマーであり、その各々が既知の突然変異を有する標的核酸遺伝子の領域を含む。例えば、一つのオリゴマーは、標的遺伝子配列の一部に対応する、約30ヌクレオチド長でありうる。そのような一連の対立遺伝子特異的プローブの使用によって、標的核酸増幅産物をスクリーニングし、標的遺伝子中における過去に同定された突然変異の存在を同定することができる。増幅された標的核酸配列との対立遺伝子特異的プローブのハイブリダイゼーションは例えばナイロンフィルターで実施することができる。ストリンジェントなハイブリダイズ条件下での特定のプローブのハイブリダイゼーションは、対立遺伝子特異的プローブにおけるものと同じ突然変異が腫瘍組織に存在していることを示している。
【0073】
野生型標的遺伝子の改変はまた対応する野生型タンパク質の改変についてスクリーニングすることによっても検出することができる。例えば、標的遺伝子産物と免疫反応性であるモノクローナル抗体、その例として遺伝子産物(タンパク質)の特定の変異した位置に結合することがわかっている抗体を用いて組織をスクリーニングすることができる。例えば、用いる抗体が、欠失したエキソン(例えば、エキソン14)に結合する抗体又は、標的タンパク質の欠失した部位を含んでなる立体配位的なエピトープに結合する抗体でありうる。同種抗原の欠如が突然変異を示すであろう。また、突然変異対立遺伝子の産物に特異的な抗体を突然変異遺伝子産物の検出に使用することができる。抗体はファージディスプレイライブラリーから同定することができる。そのような免疫学的アッセイは当該分野で知られている任意の簡便な形態で行うことができる。これらには、ウェスタンブロット、免疫組織化学的アッセイ及びELISAアッセイが含まれる。改変されたタンパク質を検出するための任意の手段を、野生型標的遺伝子の改変を検出するために使用することができる。
【0074】
本発明のプライマー対はポリメラーゼ連鎖反応などの核酸増幅技術を用いて標的核酸のヌクレオチド配列の決定のために有用である。一本鎖DNAプライマーの対は標的配列を刺激増幅するために標的核酸配列内又は該標的核酸配列を囲む配列にアニーリングすることができる。対立遺伝子特異的プライマーもまた使用することができる。このようなプライマーは特定の突然変異標的配列にのみアニールし、よって鋳型としての突然変異標的配列の存在下でのみ産物を増幅する。引き続いての増幅された配列のクローニングを容易にするために、プライマーはその末端に付属した制限酵素部位配列を有しうる。そのような酵素及び部位は当該分野でよく知られている。そのプライマー自体は、当該分野でよく知られている技術を使用して合成することができる。一般に、プライマーは、商業的に入手できるオリゴヌクレオチド合成機を使用して作製することができる。特定のプライマーの設定は十分に当業者の技量の範囲内である。
【0075】
本発明によって提供される核酸プローブは多くの目的のために有用である。それらはゲノムDNAへのサザンハイブリダイゼーションにおいて、また上で既に検討した点突然変異を検出するためのリボヌクレアーゼ保護法において使用することができる。プローブは標的核酸増幅産物を検出するために使用することができる。それらはまた他の技術を使用して野生型遺伝子又はmRNAとのミスマッチを検出するために使用することもできる。ミスマッチは酵素(例えばS1ヌクレアーゼ)か、化学物質(例えばヒドロキシルアミン又は四酸化オスミウム及びピペリジン)か、又は完全にマッチしたハイブリッドと比較した場合のミスマッチハイブリッドの電気泳動移動度の変化の何れかを使用して検出することができる。これらの技術は当該分野で知られている。Novack等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.83, p.586, 1986を参照。一般に、プローブはキナーゼドメイン外の配列に相補的である。一連の核酸プローブを用いて、標的核酸中の突然変異を検出するためのキットを構成することができる。そのキットにより、対象とする標的配列の広い領域へのハイブリダイゼーションが可能になる。プローブは互いにオーバーラップしていてもよいし又は近接していてもよい。
【0076】
リボプローブをmRNAとのミスマッチを検出するために使用する場合、それは標的遺伝子のmRNAに相補的である。よって、リボプローブは、センス鎖に相補的であるため、対応する遺伝子産物をコードしていない点でアンチセンスプローブである。リボプローブは一般に放射性、比色性、又は蛍光定量物質で標識され、これは当該分野で知られている任意の手段によって達成することができる。リボプローブがDNAとのミスマッチを検出するために使用される場合、それは何れの極性でも、センス又はアンチセンスでもありうる。同様に、DNAプローブを、ミスマッチを検出するために使用することもまたできる。
【0077】
また、本発明は、本発明の方法を実行する際の使用に適切な様々な組成物を提供する。例えば、本発明は、このような方法で用いられうるアレイを提供する。一実施態様では、本発明のアレイは、本発明の突然変異を検出するために有用な個々の核酸分子又は集合体の核酸分子を含んでなる。例えば、本発明のアレイは、標的核酸を含む試料にハイブリダイズすることができ、そのハイブリダイゼーションから本発明の突然変異の有無が示される、一組の核酸オリゴヌクレオチド混合物又は一連の別々に配置された個々の核酸オリゴヌクレオチドを含みうる。
【0078】
ガラススライド等の固体支持体に核酸を付着させるためのいくつかの技術は、当該分野でよく知られている。一方法では、アミン基、アミン基又は正電荷を有する他の基の誘導体等、固体状基質に付着可能な部分を含む修飾塩基又は類似体が、合成された核酸分子中に導入される。ついで、増幅された産物にある反応基と共有結合を形成するであろうアルデヒド又は他の反応基で被覆された、ガラススライド等の固体状基質と合成した産物とを接触させ、ガラススライドに共有的に付着させる。アミノプロピルシリカン表面化学を使用する等の他の方法も、http://www.cmt.corning.com.及びhttp://cmgm.Stanford.ecu/pbrown1.に開示されているように、当該分野でよく知られている。
【0079】
反応基に後に変換しうるオリゴヌクレオチドへの基の接着も、当分野で公知の方法を使用して可能である。オリゴヌクレオチドのヌクレオチドへの任意の接着はオリゴヌクレオチドの一部となり、次いでマイクロアレイの固体表面に接着しうる。
増幅された核酸は、例えば断片への切断又は、検出可能な標識の接着によって、固体基質への接着の前又は後に、必要に応じて及び/又は使用する技術によって、可能であれば、更に修飾できる。
本発明のいくつかの方法では、本発明の突然変異を含有するc-metに特異的に結合するが野生型のc-metには結合しない抗原結合剤が用いられる。このような薬剤は、抗体、結合ポリペプチド及びアプタマーなどの任意の適切な結合剤である。このような結合剤の生成は当分野で公知であり、例えば米国特許出願公開番号2005/0042216において記述される。
【0080】
c-metインヒビター抗体の例
c-metインヒビター抗体の例には、c-metに対するHGFなどのリガンドの結合を阻害するc-metインヒビターが含まれる。例えば、c-metインヒビターはc-metへのHGFの結合が阻害されるようにc-metに結合してもよい。一実施態様では、アンタゴニスト抗体は、キメラ抗体、例えば異種性の非ヒト配列、ヒト配列又はヒト化配列(例えばフレームワーク及び/又は定常ドメイン配列)に移植した非ヒトドナーの抗原結合配列を含有する抗体である。一実施態様では、非ヒトドナーはマウスである。一実施態様では、抗原結合配列は、例えば突然変異誘発(例えばファージディスプレイスクリーニングなど)によって得られるような合成のものである。一実施態様では、本発明のキメラ抗体は、マウスのV領域及びヒトC領域を有する。一実施態様では、マウスの軽鎖V領域は、ヒトカッパ軽鎖に融合される。一実施態様では、マウスの重鎖V領域は、ヒトIgG1 C領域に融合される。一実施態様では、抗原結合配列は、軽鎖及び/又は重鎖の少なくとも1つか、少なくとも2つか、あるいは3つすべてのCDRを含有する。一実施態様では、抗原結合配列は重鎖CDR3を含有する。一実施態様では、抗原結合配列は、アメリカ培養細胞系統保存機関寄託番号ATCC HB-11894(ハイブリドーマ1A3.3.13)又はHB-11895(ハイブリドーマ5D5.11.6)の下に寄託されるハイブリドーマ細胞系統によって産生されるモノクローナル抗体の可変ドメイン配列及び/又はCDRの一部又はすべてを含有する。一実施態様では、抗原結合配列は、少なくともハイブリドーマ細胞系統1A3.3.13又は5D5.11.6によって産生されるモノクローナル抗体の重鎖のCDR3を含有する。本発明のヒト化抗体には、FR内にアミノ酸置換を有するものと移植されたCDR内に変異を有する親和性成熟変異形が含まれる。CDR又はFR内の置換されたアミノ酸は、ドナー又はレシピエントの抗体に存在するものに限定されない。他の実施態様では、本発明の抗体は更に、亢進したCDC及び/又はADCC機能及びB細胞殺傷を含む改良されたエフェクター機能を引き起こすFc領域内のアミノ酸残基の変異を有する。本発明の他の抗体には、安定性を改善する特定の変異を有するものが含まれる。また、本発明の抗体は、生体内でADCC機能を改善したフコース欠陥変異形が含まれる。
【0081】
一実施態様では、本発明の抗体断片は、SYWLH(配列番号:1)、MIDPSNSDTRFNPNFKD(配列番号:2)及びYGSYVSPLDY(配列番号:3)からなる群から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つないしは3つすべてのCDR配列を含有する重鎖を具備する抗原結合アームを含有してなる。一実施態様では、抗原結合アームは、アミノ酸配列SYWLHを有する重鎖CDR-H1を含んでなる。一実施態様では、抗原結合アームは、アミノ酸配列MIDPSNSDTRFNPNFKDを有する重鎖CDR-H2を含んでなる。一実施態様では、抗原結合アームは、アミノ酸配列YGSYVSPLDYを有する重鎖CDR-H3を含んでなる。一実施態様では、本発明の抗体断片は、KSSQSLLYTSSQKNYLA(配列番号:4)、WASTRES(配列番号:5)及びQQYYAYPWT(配列番号:6)からなる群から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は3つすべてのCDR配列を含有する軽鎖を具備する抗原結合アームを含んでなる。一実施態様では、抗原結合アームは、アミノ酸配列KSSQSLLYTSSQKNYLAを有する重鎖CDR-L1を含んでなる。一実施態様では、抗原結合アームは、アミノ酸配列WASTRESを有する重鎖CDR-L2を含んでなる。一実施態様では、抗原結合アームは、アミノ酸配列QQYYAYPWTを有する重鎖CDR-L3を含んでなる。一実施態様では、本発明の抗体断片は、SYWLH(配列番号:1)、MIDPSNSDTRFNPNFKD(配列番号:2)及びYGSYVSPLDY(配列番号:3)からなる群から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は3つすべてのCDR配列を含有する重鎖と、KSSQSLLYTSSQKNYLA(配列番号:4)、WASTRES(配列番号:5)及びQQYYAYPWT(配列番号:6)からなる群から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は3つすべてのCDR配列を含有する軽鎖を具備する抗原結合アームを含んでなる。
【0082】
本発明は、ヒトc-met又はその抗原結合断片を結合するヒト化アンタゴニスト抗体を提供するものであり、抗体は生体内HGF/c-met活性の阻害効果を有し、該抗体は、H鎖可変領域(V)内に、アメリカ培養細胞系統保存機関寄託番号ATCC HB-11894(ハイブリドーマ1A3.3.13)又はHB-11895(ハイブリドーマ5D5.11.6)の下に寄託されるハイブリドーマ細胞系統によって産生されるモノクローナル抗体の少なくともCDR3配列と、実質的なヒトのコンセンサス配列(例えば、ヒト重鎖サブグループIII(VIII)の実質的なヒトコンセンサスフレームワーク(FR)残基)を含んでなる。一実施態様では、抗体は更に、アメリカ培養細胞系統保存機関寄託番号ATCC HB-11894(ハイブリドーマ1A3.3.13)又はHB-11895(ハイブリドーマ5D5.11.6)の下に寄託されるハイブリドーマ細胞系統株によって産生されるモノクローナル抗体のH鎖CDR1配列及び/又はCDR2配列を含んでなる。他の実施態様では、前記抗体は、アメリカ培養細胞系統保存機関寄託番号ATCC HB-11894(ハイブリドーマ1A3.3.13)又はHB-11895(ハイブリドーマ5D5.11.6)の下に寄託されるハイブリドーマ細胞系統株によって産生されるモノクローナル抗体のL鎖CDR1配列、CDR2配列及び/又はCDR3配列を、ヒト軽鎖κサブグループI(VκI)の実質的なヒトコンセンサスフレームワーク(FR)残基と共に含んでなる。
【0083】
一実施態様では、本発明の抗体断片は、以下の配列を有する重鎖可変ドメインを含有してなる抗原結合アームを含んでなる:
QVQLQQSGPELVRPGASVKMSCRASGYTFTSYWLHWVKQRPGQGLEWIGMIDPSNSDTRFNPNFKDKATLNVDRSSNTAYMLLSSLTSADSAVYYCATYGSYVSPLDYWGQGTSVTVSS (配列番号:7)
一実施態様では、本発明の抗体断片は、以下の配列を有する軽鎖可変ドメインを含有してなる抗原結合アームを含んでなる:
DIMMSQSPSSLTVSVGEKVTVSCKSSQSLLYTSSQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTITSVKADDLAVYYCQQYYAYPWTFGGGTKLEIK (配列番号:8)
【0084】
いくつかの例では、c-metへのリガンド(例えばHGF)の結合に干渉しないc-metアンタゴニストを有することが有利であり得る。したがって、いくつかの実施態様では、本発明のアンタゴニストは、c-metのリガンド(例えばHGF)結合部位に結合しない。他の実施態様では、本発明のアンタゴニストは、c-metへのリガンド(例えばHGF)結合を実質的に阻害しない。一実施態様では、本発明のアンタゴニストは、c-metへの結合について、リガンド(例えばHGF)と実質的に競合しない。一例では、本発明のアンタゴニストは、一又は複数の他のアンタゴニストとの結合に使用可能で、ここでアンタゴニストはHGF/c-met軸内における種々のプロセス及び/又は機能を標的にする。よって、一実施態様では、本発明のc-metアンタゴニストは、他のc-metアンタゴニスト、例えばアメリカ培養細胞系統保存機関寄託番号ATCC HB-11894(ハイブリドーマ 1A3.3.13)又はHB-11895(ハイブリドーマ 5D5.11.6)で寄託されているハイブリドーマ細胞系統により産生されるモノクローナル抗体のFab断片が結合するエピトープとは異なる、c-met上のエピトープに結合する。他の実施態様では、本発明のc-metアンタゴニストは、アメリカ培養細胞系統保存機関寄託番号ATCC HB-11894(ハイブリドーマ 1A3.3.13)又はHB-11895(ハイブリドーマ 5D5.11.6)で寄託されているハイブリドーマ細胞系統により産生されるモノクローナル抗体のFab断片とは異なる(すなわちそれではない)。一実施態様では、本発明のc-metアンタゴニストは、アメリカ培養細胞系統保存機関寄託番号ATCC HB-11894(ハイブリドーマ 1A3.3.13)又はHB-11895(ハイブリドーマ 5D5.11.6)で寄託されているハイブリドーマ細胞系統により産生される抗体のc-met結合配列を含まない。一実施態様では、本発明のアンタゴニストはc-met活性を阻害するが、c-metの野生型膜近傍ドメインには結合しない。
【0085】
本発明のc-metアンタゴニスト抗体はc-met活性を阻害することができる任意の抗体でありうる。いくつかの具体的な例として、
(a) 以下の配列からなる群から選択される少なくとも1、2、3、4又は5の高頻度可変領域(HVR)配列
(i) KSSQSLLYTSSQKNYLA (配列番号1)である配列A1-A17を含有してなるHVR-L1
(ii) WASTRES (配列番号2)である配列B1-B7を含有してなるHVR-L2
(iii) QQYYAYPWT (配列番号3)である配列C1-C9を含有してなるHVR-L3
(iv) GYTFTSYWLH (配列番号4)である配列D1-D10を含有してなるHVR-H1
(v) GMIDPSNSDTRFNPNFKD (配列番号5)である配列E1-E18を含有してなるHVR-H2
(vi) XYGSYVSPLDY (配列番号6) であり、XがRでない配列F1-F11を含有してなるHVR-H3;
(b) 変異体HVRが配列番号1、2、3、4、5又は6に示す配列の少なくとも一の残基の修飾を含有する、少なくとも一の変異体HVR
を含んでなる抗c-met抗体などがある。一実施態様では、本発明の抗体のHVR-L1は、配列番号1の配列を含んでなる。一実施態様では、本発明の抗体のHVR-L2は、配列番号2の配列を含んでなる。一実施態様では、本発明の抗体のHVR-L3は、配列番号3の配列を含んでなる。一実施態様では、本発明の抗体のHVR-H1は、配列番号4の配列を含んでなる。一実施態様では、本発明の抗体のHVR-H2は、配列番号5の配列を含んでなる。一実施態様では、本発明の抗体のHVR-H3は、配列番号6の配列を含んでなる。一実施態様では、HVR-H3は、TYGSYVSPLDY(配列番号7)を含んでなる。一実施態様では、HVR-H3は、SYGSYVSPLDY(配列番号8)を含んでなる。一実施態様では、これらの配列を含有する本発明の抗体は、ヒト化又はヒトである(共に本願明細書において記述される)。
【0086】
一態様では、本発明は、1、2、3、4、5又は6つのHVRを含有してなる抗体を提供するものであり、各々のHVRは配列番号1、2、3、4、5、6、7及び8からなる群から選択される配列を含むか、それらからなるか、それらから基本的になるものであり、配列番号1はHVR-L1に相当し、配列番号2はHVR-L2に相当し、配列番号3はHVR-L3に相当し、配列番号4はHVR-H1に相当し、配列番号5はHVR-H2に相当し、そして、配列番号6、7又は8はHVR-H3に相当するものである。一実施態様では、本発明の抗体は、HVR-L1、HVR-L2、HVR-L3、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3を含有してなるものであり、各々、順に、配列番号1、2、3、4、5及び7を含有する。一実施態様では、本発明の抗体は、HVR-L1、HVR-L2、HVR-L3、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3を含有してなるものであり、各々、順に、配列番号1、2、3、4、5及び8を含有する。
【0087】
本発明の抗体の変異体HVRは、HVR内に一又は複数の残基の修飾を含有しうる。一実施態様では、HVR-L2変異体が、以下の位置:B1(M又はL)、B2(P、T、G又はS)、B3(N、G、R又はT)、B4(I、N又はF)、B5(P、I、L又はG)、B6(A、D、T又はV)及びB7(R、I、M又はG)の何れかの組合せにおいて1ないし5(1、2、3、4又は5)の置換を含有する。一実施態様では、HVR-H1変異体が、以下の位置:D3(N、P、L、S、A、I)、D5(I、S又はY)、D6(G、D、T、K、R)、D7(F、H、R、S、T又はV)及びD9(M又はV)の何れかの組合せにおいて1ないし5(1、2、3、4又は5)の置換を含有する。一実施態様では、HVR-H2変異体が、以下の位置:E7(Y)、E9(I)、E10(I)、E14(T又はQ)、E15(D、K、S、T又はV)、E16( L)、E17(E、H、N又はD)およびE18(Y、E又はH)の何れかの組合せにおいて1ないし4(1、2、3又は4)の置換を含有する。一実施態様では、HVR-H3変異体が、以下の位置:F1(T、S)、F3(R、S、H、T、A、K)、F4(G)、F6(R、F、M、T、E、K、A、L、W)、F7(L、I、T、R、K、V)、F8(S、A)、F10(Y、N)及びF11(Q、S、H、F)の何れかの組合せにおいて1ないし5(1、2、3、4又は5)の置換を含有する。それぞれの位置の後の括弧内の文字は例示的置換(すなわち置き換え)のアミノ酸を示すものであり、当分野の技術者に明らかなように、本明細書中の置換アミノ酸としての他のアミノ酸の適合性は、当分野で公知の技術及び/又は本明細書中に記載の技術を用いて慣例的に評価することができる。一実施態様では、HVR-L1は配列番号1の配列を含有する。一実施態様では、変異体HVR-H3のF1はTである。一実施態様では、変異体HVR-H3のF1はSである。一実施態様では、変異体HVR-H3のF3はRである。一実施態様では、変異体HVR-H3のF3はSである。一実施態様では、変異体HVR-H3のF7はTである。一実施態様では、本発明の抗体は変異体HVR-H3を含有してなり、F1がT又はSであり、F3がR又はSであり、そしてF7はTである。
【0088】
一実施態様では、本発明の抗体は、F1がTであり、F3がRであり、F7がTである変異体HVR-H3を含んでなる。一実施態様では、本発明の抗体は、F1がSである変異体HVR-H3を含んでなる。一実施態様では、本発明の抗体は、F1がTであり、F3がRである変異体HVR-H3を含んでなる。一実施態様では、本発明の抗体は、F1がSであり、F3がRであり、F7がTである変異体HVR-H3を含んでなる。一実施態様では、本発明の抗体は、F1がTであり、F3がSであり、F7がTであり、F8がSである変異体HVR-H3を含んでなる。一実施態様では、本発明の抗体は、F1がTであり、F3がSであり、F7がTであり、F8がAである変異体HVR-H3を含んでなる。いくつかの実施態様では、前記変異体HVR-H3抗体が、HVR-L1、HVR-L2、HVR-L3、HVR-H1及びHVR-H2をさらに含んでなり、各々は順に配列番号:1、2、3、4及び5を含有する。いくつかの実施態様では、これらの抗体は、ヒトサブグループIII重鎖フレームワークコンセンサス配列を更に含む。これらの抗体の一実施態様では、フレームワークコンセンサス配列は、位置71、73及び/又は78に置換を含む。これらの抗体のいくつかの実施態様では、位置71はAであり、73はTであり、及び/又は78はAである。これらの抗体の一実施態様では、これらの抗体は、ヒトκI軽鎖フレームワークコンセンサス配列を更に含む。
【0089】
一実施態様では、本発明の抗体は、B6がVである変異体HVR-L2を含んでなる。いくつかの実施態様では、前記変異体HVR-L2抗体はHVR-L1、HVR-L3、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3を更に含んでなり、各々、順に、配列番号:1、3、4、5及び6に示す配列を含んでなる。いくつかの実施態様では、前記変異体HVR-L2抗体はHVR-L1、HVR-L3、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3を更に含んでなり、各々、順に、配列番号:1、3、4、5及び7に示す配列を含んでなる。いくつかの実施態様では、前記変異体HVR-L2抗体はHVR-L1、HVR-L3、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3を更に含んでなり、各々、順に、配列番号:1、3、4、5及び8に示す配列を含んでなる。いくつかの実施態様では、これらの抗体は、ヒトサブグループIII重鎖フレームワークコンセンサス配列を更に含む。これらの抗体の一実施態様では、フレームワークコンセンサス配列は、位置71、73及び/又は78に置換を含む。これらの抗体のいくつかの実施態様では、位置71がAであり、73がTであり、及び/又は78がAである。これらの抗体の一実施態様では、これらの抗体は、ヒトκI軽鎖フレームワークコンセンサス配列を更に含む。
【0090】
一実施態様では、本発明の抗体は、E14がTであり、E15がKであり、E17がEである変異体HVR-H2を含んでなる。一実施態様では、本発明の抗体は、E17がEである変異体HVR-H2を含んでなる。いくつかの実施態様では、前記変異体HVR-H3抗体はHVR-L1、HVR-L2、HVR-L3、HVR-H1及びHVR-H3を更に含んでなり、各々、順に、配列番号:1、2、3、4及び6に示す配列を含んでなる。いくつかの実施態様では、前記変異体HVR-H2抗体はHVR-L1、HVR-L2、HVR-L3、HVR-H1及びHVR-H3を更に含んでなり、各々、順に、配列番号:1、2、3、4及び7に示す配列を含んでなる。いくつかの実施態様では、前記変異体HVR-H2抗体はHVR-L1、HVR-L2、HVR-L3、HVR-H1及びHVR-H3を更に含んでなり、各々、順に、配列番号:1、2、3、4及び8に示す配列を含んでなる。いくつかの実施態様では、これらの抗体は、ヒトサブグループIII重鎖フレームワークコンセンサス配列を更に含む。これらの抗体の一実施態様では、フレームワークコンセンサス配列は、位置71、73及び/又は78に置換を含む。これらの抗体のいくつかの実施態様では、位置71がAであり、73がTであり、及び/又は78がAである。これらの抗体の一実施態様では、これらの抗体は、ヒトκI軽鎖フレームワークコンセンサス配列を更に含む。
【0091】
以下は、本発明の方法及び組成物の例である。上記に示す一般的な説明を考慮して、様々な他の実施態様が実施されうることを理解するであろう。
【実施例】
【0092】
材料及び方法
配列分析
凍結原発性腫瘍組織試料は、診断を確認して、腫瘍含量を評価するために、ヘマトキシリン‐エオジン(H&E)で染色した。50%より多い腫瘍含量を示す試料をDNA抽出のために選択した。ゲノムDNAのPCR増幅はネストしたプライマー(表S4)を用いて行い、生産物はExoSAP-ITキット(USB)を用いて精製した。その後、PCR産物はセンス方向及びアンチセンス方向において、配列決定した。ヌクレオチド欠失の確認のために、PCR産物をTOPOクローン化して、3〜5の別々のクローンを配列決定した。cDNA産物の配列決定のために、QiagenのワンステップRT-PCRキットを用いてRNAを増幅した。
【0093】
定量的PCR
総Met転写産物発現レベルは、標準的なTaqman技術を用いて定量的RT-PCRによって評価した。Met転写産物レベルはハウスキーピング遺伝子であるβ-グルクロニダーゼ(GUS)に対して標準化して、結果を標準化した発現値(=2−ΔCt)として表す。GUSのプライマー/プローブ組は、フォワード、5'-TGGTTGGAGAGCTCATTTGGA-3'、リバース、5'-GCACTCTCGTCGGTGACTGTT-3'、及び、プローブ、5'(VIC)-TTTGCCGATTTCATGACT-(MGBNFQ)-3'とした。Metのプライマー/プローブ組は、フォワード、5'-CATTAAAGGAGACCTCACCATAGCTAAT-3'、リバース、5'-CCTGATCGAGAAACCACAACCT-3'、及びプローブ、5-(FAM)-CATGAAGCGACCCTCTGATGTCCCA-(BHQ-1)-3'とした。Metアンプリコンは、野生型及び選択的にスプライスされたMet転写産物間の保存された領域を表す。
【0094】
細胞培養
細胞株は、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)、癌治療及び診断のNCI部(NCI Division of Cancer Treatment and Diagnosis)腫瘍保存機関又はヒューマンサイエンス振興財団から入手した。すべての細胞株は、10%FBS(Sigma)、ペニシリン/ストレプトマイシン(GIBCO)及び2mM L-グルタミンを補充したRPMI1640で維持した。
【0095】
ウエスタンブロット分析
凍結組織試料においてタンパク質発現を分析するために、組織(〜100mg)を、プロテアーゼインヒビターカクテル(Sigma)、ホスファターゼ阻害剤カクテルI及びII(Sigma)、50mM フッ化ナトリウム及び2mM バナジン酸ナトリウムを含有する200μlの細胞溶解バッファ(Cell Signaling)中で、Polytron(登録商標)ホモジナイザー(Kinematica)を用いてホモジナイズした。4℃で1時間ゆっくり振とうすることによって試料を更に溶解して、プロテインAセファロースFast Flow(Amersham)とプロテインGセファロース4Fast Flow(Amersham)の混合物にて排除した。タンパク質濃度はブラッドフォード試薬(BioRad)を用いて測定した。その後、SDS-PAGEによって、タンパク質(20μg)を分離して、ニトロセルロースメンブレンへ移し、Met(DL-21, Upstate)又はβ-アクチン(I-19, Santa Cruz)抗体にてイムノブロットした。タンパク質は、反応させた化学発光(ECL Plus, Amersham)によって視覚化した。
【0096】
結果及び考察
腫瘍のMet突然変異を十分に調べるために、原発性腫瘍、腫瘍細胞株及び原発性腫瘍異種移植片モデルを示す肺癌と大腸癌の試料のパネルから、Metのエクソンをコードする全ての配列を決定した(図4の表S1)。配列決定の際に、エキソン14に隣接するイントロン領域に、原発性肺腫瘍試料の体細胞性ヘテロ接合突然変異を同定した(図1A、図2)。突然変異は、5'スプライス部位の上流のイントロン領域にのみ配位し、又は3'スプライス接合部位と3'末端の周辺イントロンに含まれていた(図1A)。これらの欠失は腫瘍特異性であり、同一個体からの非腫瘍性肺組織には同定されなかった(図3)。非小細胞肺癌(NSCLC)細胞株であるH596では、3pスプライスドナー部位にホモ接合の点突然変異を同定した(図1A)。ジヌクレオチドスプライス部位コンセンサス及びエキソン14の上流のポリピリミジン域内の突然変異の存在と、エキソン13とエキソン15が同相のままであったという所見から、エキソン14を欠失していると思われるMet転写産物が依然として機能的なMetタンパク質を産生することが示唆される。このことを調べるために、本発明者等は、まず、変異体腫瘍及び細胞株からMet RNAのRT-PCR増幅を行った。3つすべてのイントロンの突然変異により、野生型と比べて短い長さの転写物が生じ、これはエキソン14の欠失と一致していた(図1B)。また、本発明者等は、RT-PCR産物を配列決定することによって、エキソン14の欠如を確認したところ、Metのアミノ酸L964からD1010を除去するインフレーム欠失が示された。興味深いことに、腫瘍試料がエキソン14の欠失についてヘテロ接合体であるにもかかわらず、レセプターの変異した形態が、主に発現されていたことから(図1B)、変異体の転写産物が優先的に発現されていることが示唆される。これは、ウェスタンブロッティングによって、切断型Metタンパク質の優先的な発現を示すことが更に確認された(図1C)。これらのイントロンの突然変異を有する試料は、配列決定した関連するエキソンにおいて、K-ras、B-raf、EGFR及びHER2については野生型であった。まとめると、これらの結果は、これらのMetイントロンの突然変異が優性形質であることを示す。興味深いことに、腫瘍形成に関して機能的な因果関係は不明であるけれども、エキソン14を欠失しているMetのスプライス変異体は正常なマウス組織において既に報告されている(20、21)。しかしながら、本発明者等は、調べた任意の正常なヒトの肺試料において、このスプライス変異体の発現が検出されなかった(データは示さない)。以前に述べられているように(21)、正常なヒト組織におけるこのスプライス変異体の欠失はさらに立証されている。エキソン14を欠失しているスプライス変異体を含むcDNAは、原発性のヒトのNSCLC試料において報告されている、しかしながら、スプライシング欠損を媒介する際の体細胞性突然変異の役割は評価されなかったし、ある場合でも、発現されうる任意の変異体c-metの機能上の結果でもなかった(22)。スプライス変異体を含む核酸は癌細胞においてまれでないので、報告されたスプライス変異体の機能的な関連は知られていなかった。
【0097】
Metの全体にわたる遺伝子変化は、原発性肺癌及び大腸癌の試料のそれぞれ13%及び18%にみられ、変異等は細胞外セマフォリン(Sema)ドメイン及び細胞内膜近傍及びキナーゼドメインにマッピングされた(図1C、図5の表S2、図6の表S3)。これらの変異は代表的な細胞株及び異種移植片モデルに集約しており、更なる細胞外ドメイン変異は肺癌細胞株において同定された。膜近傍ドメインにマッピングされている遺伝子変異は、肺癌試料(6.5%)に特有であり、大腸癌ではみられなかった。加えて、膜近傍変異は、K-ras突然変異と互いに相容れないものであった(図5の表S2)。同一の患者の正常な隣接組織からの配列決定したDNAにより、これらの原発性腫瘍試料の多くのMet変異がまれな多型を表すことが明らかとなった(図1C、図6の表S3)。このような多型には、Metのアミノ酸位置R970C及びT992Iの膜近傍ドメインにおいて既に報告されている置換などがある(22、23)。同定された更なる体細胞性突然変異だけは、異所性発現によって評価すると、キナーゼ不活性化レセプターとなるキナーゼドメインの位置1108でのアミノ酸置換を伴った(データは示さない)。
【0098】
Metの膜近傍ドメイン内のエキソン14の47のアミノ酸欠失(L964-D1010)により、Cbl結合に必要なY1003リン酸化部位と活性化されたレセプターの下方制御が失われる。Metシグナル伝達を媒介する際のこのネガティブな調節部位の欠如を調べるために、本発明者等は、変異体レセプター活性化のメカニズムを評価した。本発明者等は、スプライス変異体タンパク質が下流のHGF/c-met結合性細胞性シグナル伝達に機能的に作用し、発癌性能が増加した(データは示さない)ことを発見し、このことから、腫瘍形成と関係しているc-metスプライス変異体の機能的な因果関係を始めて示した。
【0099】
本発明者等の分析では、活性化キナーゼドメインMet突然変異はRPCでは同定されず、以前より記述されている(23)。しかしながら、キナーゼドメイン突然変異は、癌と関係するいくつかのレセプターチロシンキナーゼにおいて発見されている。EGFRインヒビターで治療される患者の肺腫瘍におけるEGFRの近年の性質決定によりキナーゼドメイン突然変異を有する肺腫瘍のサブセットが同定され、肺癌にけるEGFRの重要な役割が示唆された(27−30)。腫瘍特異的な膜近傍Met欠失に関する本発明者等の同定と性質決定から、遅発性レセプターの下方制御及び下流のシグナル伝達の延長によって、Met活性化に関して全く異なるメカニズムが強調される。さらにこれらの所見から、Metが肺癌において重要な役割を果たすことが強く示唆される。これらのデータは、レセプター下方制御における類似の突然変異により他の癌遺伝子の活性化が引き起こされうることを示しており、キナーゼドメインに限定しない更なる配列の分析に値する。さらに、本明細書中に記載の複数の非キナーゼドメイン位置の突然変異の所見から、このような突然変異も、特定の患者の肺癌を発達及び/又は進行させやすくすることによるなどして、ヒト肺腫瘍形成に関係しうることが示唆される。
【0100】
腫瘍細胞において異常なスプライシングが本質的に備わっているにもかかわらず、スプライシング欠陥を起こすcis活性調節因子における体細胞性突然変異の併発はまれである。スプライシング欠陥となる生殖細胞系突然変異がいくつかの遺伝子において発見されているにもかかわらず、様々な突然変異による神経線維腫症1型(NF1)腫瘍抑制因子タンパク質の失活は癌における体細胞性突然変異誘発により起こるスプライシング欠陥の唯一つの公知の例である(31)。本発明者等のデータは、体細胞突然変異誘発によって生じるスプライシングも肺癌に一役かっており、癌遺伝子産物を活性化するという考えを強く支持するものである。スプライセオソームの集合化(アセンブリ)に差次的に作用するが、選択的にエキソン14を除外する複数の種類のイントロンの突然変異を同定することにより、特にヒトの肺癌との関係においてのMetのこのような変異誘発現象の関連が浮き彫りとなる。
【0101】
引用文献の一部
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【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1A】エキソン14のスプライシングを引き起こす、Metにおける腫瘍特異的なイントロン突然変異の同定。(A) スプライス接合部位に関して、3つの同定された核酸欠失及び/又は点突然変異(実線及び/又は矢頭)の位置を示す、Metエキソン14の概略図(RefSeq, NM_000245に基づく)。H596、細胞株、pat.14/pat.16、患者の腫瘍試料。
【図1B】(B) イントロン突然変異又は野生型Metを有する試料のエキソン14を包含するRNA転写物のRT-PCR増幅。WT、野生型;U、スプライシングされていないもの;S、スプライシングされたもの。
【図1C】(C) 同一の患者の正常な肺組織と野生型ないし変異体のMet転写産物を発現する試料の原発性腫瘍組織の溶解物におけるMetタンパク質発現。アクチンイムノブロットはタンパク質負荷コントロールとする。総Met転写産物レベルは定量的PCRによって評価し、相対的な発現量を示した(2−ΔCt)。略号:N、正常な肺組織;T、原発性肺腫瘍。
【図1D】(D) 原発性肺腫瘍試料(図の上方)又は肺細胞株及び異種移植片モデル(図の下方)から同定されたアミノ酸変異の分布を示すMetタンパク質の概略図。アミノ酸欠失を棒で置換を矢頭で示す。同一の患者の非腫瘍性肺組織のゲノムDNA配列決定に基づき、遺伝子変異を、体細胞突然変異(黒色棒/矢頭)、多型(白い矢頭)又は決定されなかったもの(灰色棒/矢頭)として確認した。
【図2A】Metのエキソン14に隣接するイントロン突然変異を表す。イントロン/エキソン構造に関して、対応する核酸(NM_000245)欠失及び/又は点突然変異(薄い灰色文字)を示すMetエキソン14の概略図。(A) H596、肺癌細胞株。参考として、腫瘍H596には、(A)において+1とマークした位置でGからTへの点突然変異がある。センス方向及びアンチセンス方向の代表的な配列決定クロマトグラムも示す。
【図2B】Metのエキソン14に隣接するイントロン突然変異を表す。イントロン/エキソン構造に関して、対応する核酸(NM_000245)欠失及び/又は点突然変異(薄い灰色文字)を示すMetエキソン14の概略図。(B) pat.14、患者14の肺腫瘍試料。参考として、腫瘍患者14には、(B)において−27から−6とマークした位置の配列の欠失がある。センス方向及びアンチセンス方向の代表的な配列決定クロマトグラムも示す。
【図2C】Metのエキソン14に隣接するイントロン突然変異を表す。イントロン/エキソン構造に関して、対応する核酸(NM_000245)欠失及び/又は点突然変異(薄い灰色文字)を示すMetエキソン14の概略図。(C) pat.16、患者16の患者の肺腫瘍試料。参考として、腫瘍患者16には、(C)において3195から+7とマークした位置の配列の欠失がある。センス方向及びアンチセンス方向の代表的な配列決定クロマトグラムも示す。
【図3】イントロン突然変異は、患者14及び患者16の非腫瘍性肺組織には存在しない。患者14(A)及び患者16(B)の対応する欠失(黒色の大括弧)の位置を強調して示す、センス(F)方向及びアンチセンス(R)方向の配列決定クロマトグラム。黒色の矢印は、エキソン14に隣接する5'又は3'のスプライス接合部位の位置を示す。
【図4】配列決定した肺及び大腸の癌試料の概要を示す表S1。
【図5】肺及び大腸の癌試料におけるMet及びK-rasの遺伝子変異の概要を示す表S2。
【図6A】Met遺伝子変異を有する試料の詳細な概要を示す表S3。
【図6B】Met遺伝子変異を有する試料の詳細な概要を示す表S3。
【図6C】Met遺伝子変異を有する試料の詳細な概要を示す表S3。
【図6D】Met遺伝子変異を有する試料の詳細な概要を示す表S3。
【図7A】配列決定のために使用したPCRプライマーを示す表S4。
【図7B】配列決定のために使用したPCRプライマーを示す表S4。
【図7C】配列決定のために使用したPCRプライマーを示す表S4。
【図7D】配列決定のために使用したPCRプライマーを示す表S4。
【図8】ヒトc-metエキソン14のスプライシングを制御すると思われるシス活性スプライシング成分を表す。これらの成分内の一又は複数の位置での突然変異がエキソン14の野生型のスプライシングにネガティブな影響を及ぼすと考えられる。
【図9】RefSeq. NM_000245に基づく野生型ヒトc-metタンパク質配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の肺癌試料がヒトc-metをコードする核酸配列に突然変異を含有するか否かを決定することを含む予後判定方法であって、該突然変異により位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸変化が生じるものである方法。
【請求項2】
被検体の肺癌試料がヒトc-metをコードする核酸配列に突然変異を含有するか否かを決定することを含む予後判定方法であって、該配列がエキソン14及び/又はそのフランキングイントロンにおいて変異し、該突然変異がエキソンスプライシングに作用するものである方法。
【請求項3】
試料中の肺癌を検出する方法であって、試料がヒトc-metをコードする核酸配列に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該突然変異により位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸変化が生じるものである方法。
【請求項4】
試料中の肺癌を検出する方法であって、該試料がヒトc-metをコードする核酸配列に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該突然変異がエキソン14及び/又はそのフランキングイントロン中にあり、該突然変異がエキソンスプライシングに作用するものである方法。
【請求項5】
非癌性肺組織と癌性肺組織とを区別する方法であって、肺組織を含有する試料がヒトc-metをコードする核酸配列に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該突然変異により位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸変化が生じるものであり、該試料中の変異の検出から癌性肺組織の存在が示される方法。
【請求項6】
非癌性肺組織と癌性肺組織とを区別する方法であって、肺組織を含有する試料がヒトc-metをコードする核酸配列に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該突然変異がエキソン14及び/又はそのフランキングイントロン中にあり、該突然変異がエキソンスプライシングに作用するものであり、該試料中の変異の検出から癌性肺組織の存在が示される方法。
【請求項7】
肺癌におけるc-metの突然変異を同定する方法であって、肺癌試料をヒトc-metをコードする核酸配列中の突然変異を検出することができる薬剤と接触させることを含み、該突然変異により位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸変化が生じるものである方法。
【請求項8】
肺癌におけるc-metの突然変異を同定する方法であって、肺癌試料をヒトc-metをコードする核酸配列中の突然変異を検出することができる薬剤と接触させることを含み、該変異がエキソン14及び/又はそのフランキングイントロン中にあり、該突然変異がエキソンスプライシングに作用するものである方法。
【請求項9】
c-metインヒビターによる治療に感受性がある肺癌を同定する方法であって、被検体の肺癌試料がヒトc-metをコードする核酸配列中に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該突然変異により位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸変化が生じるものである方法。
【請求項10】
c-metインヒビターによる治療に感受性がある肺癌を同定する方法であって、被検体の肺癌試料がヒトc-metをコードする核酸配列中に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該配列がエキソン14及び/又はそのフランキングイントロンにおいて変異し、該突然変異がエキソンスプライシングに作用するものである方法。
【請求項11】
c-metインヒビターによる治療に対する被検体の肺癌の応答性を決定する方法であって、c-metインヒビターにより治療されている被検体の肺癌試料がヒトc-metをコードする核酸配列中に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該突然変異により位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸変化が生じるものであり、変異した核酸配列の欠如から肺癌がc-metインヒビターによる治療に対して応答することが示される方法。
【請求項12】
c-metインヒビターによる治療に対する被検体の肺癌の応答性を決定する方法であって、c-metインヒビターにより治療されている被検体の肺癌試料がヒトc-metをコードする核酸配列中に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該配列がエキソン14及び/又はそのフランキングイントロンにおいて変異し、該突然変異がエキソンスプライシングに作用するものであり、変異した核酸配列の欠如から肺癌がc-metインヒビターによる治療に対して応答することが示される方法。
【請求項13】
c-metインヒビターによる肺癌の治療を受けた被検体においてわずかな残留疾患をモニタリングするための方法であって、c-metインヒビターにより治療された被検体の試料がヒトc-metをコードする核酸配列中に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該突然変異により位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸変化が生じるものであり、該突然変異の検出からわずかな残留肺癌の存在が示される方法。
【請求項14】
c-metインヒビターによる肺癌の治療を受けた被検体においてわずかな残留疾患をモニタリングするための方法であって、c-metインヒビターにより治療されている被検体の肺癌試料がヒトc-metをコードする核酸配列に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該配列がエキソン14及び/又はそのフランキングイントロンにおいて変異し、該突然変異がエキソンスプライシングに作用するものであり、該突然変異の検出からわずかな残留肺癌の存在が示される方法。
【請求項15】
野生型のc-metと比較して位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸が変化する突然変異を含有してなるヒトc-metをコードする核酸を増幅するための方法であって、図7の表S4に挙げるプライマー/プローブの何れかの配列を含有してなる核酸により、核酸を含むと思われる又は核酸を含むことが既知である試料を増幅することを含む方法。
【請求項16】
エキソン14及び/又はそのフランキングイントロンに変異突然を含有し、この突然変異がエキソンスプライシングに作用する核酸である、ヒトc-metをコードする核酸を増幅するための方法であって、図7の表S4に挙げるプライマー/プローブの何れかの配列を含有してなる核酸により、核酸を含むと思われる又は核酸を含むことが既知である試料を増幅することを含む方法。
【請求項17】
野生型のc-metと比較して位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸が変化する突然変異である特定の突然変異を試料中のc-metにおいて同定するための方法であって、図7の表S4に挙げるプライマー/プローブの何れかの配列を含有してなる核酸と試料を接触することを含む方法。
【請求項18】
エキソン14及び/又はそのフランキングイントロン中にあり、エキソンスプライシングに作用する突然変異である特定の突然変異を試料中のc-metにおいて同定するための方法であって、図7の表S4に挙げるプライマー/プローブの何れかの配列を含有してなる核酸と試料を接触することを含む方法。
【請求項19】
肺癌において変異したc-metの存在を検出する方法であって、図7の表S4に挙げるプライマー/プローブの何れかの配列を含有してなる核酸と、変異したc-metを含むと思われる又は変異したc-metを含むことが既知である試料を接触させることを含む方法。
【請求項20】
肺癌において変異したc-metの存在を検出する方法であって、抗原結合剤と、変異したc-metを含むと思われる又は変異したc-metを含むことが既知である試料を接触させることを含み、該薬剤の結合又は結合の欠如からエキソン14の少なくとも一部位の欠失を含んでなるc-metの有無が示される方法。
【請求項21】
肺組織における癌性疾患状態を検出する方法であって、肺癌を有すると思われる被検体の試料がヒトc-metをコードする核酸配列中に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該突然変異により位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸変化が生じるものであり、該突然変異の検出から被検体の肺の癌性疾患状態の存在が示される方法。
【請求項22】
肺組織における癌性疾患状態を検出する方法であって、肺癌を有すると思われる被検体の試料がヒトc-metをコードする核酸配列中に突然変異を含有するか否かを決定することを含み、該配列がエキソン14及び/又はそのフランキングイントロンにおいて変異し、該突然変異がエキソンスプライシングに作用するものであり、該突然変異の検出からわずかな残留肺癌の存在が示される方法。
【請求項23】
突然変異がエキソンスプライシングに作用するものであり、該突然変異がエキソンスプライシングに作用してエキソン14の少なくとも一部位を欠失するc-metタンパク質が産生されるものである、請求項1ないし22の何れか一に記載の方法。
【請求項24】
突然変異がエキソンスプライシングに作用するものであり、該突然変異が図6(表S3)に示す突然変異を含有するものである、請求項1ないし23の何れか一に記載の方法。
【請求項25】
位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168でアミノ酸変化が生じる突然変異を含有するc-metを含んでなる肺癌バイオマーカー。
【請求項26】
エキソン14及び/又はそのフランキングイントロンに突然変異を含有するc-metを含んでなる肺癌バイオマーカーであって、該突然変異がエキソンスプライシングに作用するものである、肺癌バイオマーカー。
【請求項27】
バイオマーカーが核酸分子である、請求項25又は26に記載のバイオマーカー。
【請求項28】
バイオマーカーがポリペプチドである、請求項25又は26に記載のバイオマーカー。
【請求項29】
突然変異を含有するc-metを特異的に結合し、タンパク質の位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168に突然変異を含有するc-metポリペプチドを結合するか又は、位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168のアミノ酸の変化に対応する核酸位置に突然変異を含有するc-metコード化核酸を結合する、肺癌造影剤。
【請求項30】
エキソン14の少なくとも一部位の欠失を有するc-metポリペプチドを特異的に結合するか又は、エキソン14をコードする配列の少なくとも一部位を欠失するc-metコード化核酸を特異的に結合する、肺癌造影剤。
【請求項31】
位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168のアミノ酸の変化に対応する核酸位置に突然変異を含有するc-metコード化核酸に特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド。
【請求項32】
エキソン14をコードする配列の少なくとも一部位を欠失するc-metコード化核酸に特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド。
【請求項33】
位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168に突然変異を含有するc-metポリペプチドに特異的に結合することができる抗原結合剤。
【請求項34】
エキソン14の少なくとも一部位を欠失するc-metポリペプチドに特異的に結合することができる抗原結合剤。
【請求項35】
位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168のアミノ酸の変化に対応する核酸位置に突然変異を含有するc-metコード化核酸に特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドを含んでなるアレイ/遺伝子チップ/遺伝子セット。
【請求項36】
エキソン14をコードする配列の少なくとも一部位を欠失するc-metコード化核酸に特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドを含んでなるアレイ/遺伝子チップ/遺伝子セット。
【請求項37】
位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168に突然変異を含有するヒトc-metアミノ酸ポリペプチド配列及び/又は、位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168のアミノ酸の変化に対応する核酸位置に突然変異を含有するヒトc-metポリペプチドをコードする核酸配列を含んでなるコンピューター読み取り媒体。
【請求項38】
エキソン14の少なくとも一部位が欠失しているヒトc-metアミノ酸ポリペプチド配列及び/又は、エキソン14をコードする配列の少なくとも一部位を欠失するヒトc-metコード化核酸を含んでなるコンピューター読み取り媒体。
【請求項39】
本発明の組成物と、ヒトc-metの位置N375、I638、V13、V923、I316及び/又はE168の突然変異を検出するために該組成物を使用することに関する指示書とを具備するキット。
【請求項40】
本発明の組成物と、エキソン14の欠失を有するヒトc-metを検出するために該組成物を使用することに関する指示書とを具備するキット。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−533991(P2008−533991A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503237(P2008−503237)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/010851
【国際公開番号】WO2006/104912
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(507202770)ジェネンテック・インコーポレーテッド (24)
【Fターム(参考)】