説明

胃ガンの検出用マーカー

腫瘍の早期検出は胃の腫瘍などの腫瘍を患った患者の生存を主に決定付ける。GTM遺伝子ファミリーのメンバーは、胃の腫瘍組織において異なって発現され得、それにより、胃及び他のタイプのガンの検出のためのマーカーとして使用することができる。本発明は、胃の腫瘍などの腫瘍の検出のための新規GTM、特にヒトチモーゲン顆粒タンパク質16(ZG16)を提供する。GTMを単独で又は他の公知のGTMと一緒に使用することにより、胃の腫瘍などの腫瘍の検出に使用される新規サインを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ガンの検出に関する。特には、本発明はガン検出用の遺伝子及び/又はタンパク質マーカーの使用に関し、そしてより特には、胃ガン検出用の遺伝子及び/又はタンパク質のマーカーの使用に関する。
【0002】
背景
ガン患者の生存は、ガンが早期に検出されそして処置されれば大きく高まる。胃ガンの場合は、早期のステージの疾病であると診断された患者は、進行した疾病であると診断された患者が約10%の5年生存率であるのに比較して、90%の5年生存率を有する。しかし、胃ガン患者の大多数が、現在進行した疾病にある。従って、胃ガンの早期診断に至る開発により、患者にとっては予後が改善され得る。
【0003】
体液、例えば血液、尿、腹腔洗浄液及び大便抽出物を含む生物試料中の、特異的なガン関連マーカーの同定により、早期治療及び予後の改善に至る、早期ガン診断に有効なアプローチを提供することができる。特異的なガンマーカーはまた、疾病の進行をモニターする手段も提供し、外科的、放射線療法及び化学療法での治療の有効性を追跡するのを可能とする。しかし、多数の主要なガンにとって、入手可能なマーカーは感受性及び特異性が不充分である。例えば、最も頻繁に用いられる胃ガン用マーカー、ca19−9、ca72−4及びガン胎児性抗原(CEA)は、全てのステージの胃腫瘍の約15〜50%を検出するのみであり、早期のステージの疾病については約2〜11%に低下する。このように、患者及び保険の開業医に疾病はないと信じさせることとなる偽陰性の検査が非常に高頻度にあり、実際、患者が即時の注意を必要とする重篤なガンを有していることもある。さらに、これらのマーカーは、良性の胃の疾病が影響する個体の1/3にまで、偽陽性シグナルを与えることもある。
【0004】
発明の要約
本発明の局面は、早期ステージのガンの検出を提供し、そして偽陽性及び偽陰性の検査結果の頻度を減少できる方法、組成物及び装置を提供する。
【0005】
ある態様では、分子分析を用いて、胃の腫瘍組織で高度に発現されているが、非悪性の胃組織に比較して必ずしも過剰発現されているわけではない遺伝子を同定することができる。このような分析には、マイクロアレイ及び定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)法が挙げられる。これらの遺伝子によってコードされるガン遺伝子、RNA及びタンパク質を、本明細書においては胃の腫瘍マーカー(GTM)と呼ぶ。用語GTMは、マーカーが胃の腫瘍のみに特異的であることを要するものではないと解されるであろう。むしろ、GTMの発現は、悪性又は非悪性の腫瘍、例えば特に胃、膀胱、結腸直腸、膵臓、卵巣、皮膚(例えばメラノーマ)、肝臓、食道、子宮体及び脳のガンといった、他の腫瘍タイプにおいても増大し得る。しかし、用語GTMは、従来技術のマーカー、例えばCA19−9、CA72−4、ペプシノーゲン及びCEA、又は胃の腫瘍の指標であるとして以前に同定された任意の他のマーカーを含まないものと解するべきである。いくつかのGTMは、高度な信頼性で胃ガンを診断するのに足るレベルで腫瘍から分泌又は漏出され、そして他の場合には、2つ以上のGTMの測定により、胃ガンの信頼できる診断を提供することができる。
【0006】
細胞によって分泌又は細胞から排除されたタンパク質は、単独でもしくは互いに組み合わせてのいずれかで、胃ガンの診断のための血清もしくは体液のマーカーとして、又は確立された疾病の進行をモニターするためのマーカーとしての有用性を有する。タンパク質マーカーの検出を、当技術分野において公知の方法を用いて実施することができ、そしてこれはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗血清などの使用を含む。
【0007】
具体的には、本発明は、
(i)生物試料を提供すること;及び
(ii)該試料中のヒトチモーゲン顆粒タンパク質16(「ZG16」)のレベルを検出すること
を含む、胃ガンの検出方法を提供する。
【0008】
1つの局面において、患者におけるZG16の過剰発現は、胃ガンを有する患者を示す。
【0009】
本発明によるさらなるGTMファミリーメンバーは、ムチン5AC(「MUC5AC」又はムチン17(「MUC17」)からなる群より選択され得る。前記方法は、ZG16及びMUC5AC、ZG16及びMUC17、又はZG16及びMUC5AC及びMUC17の検出を含み得る。
【0010】
さらなるGTMファミリーメンバーはまた、1つ以上のさらなるGTMファミリーメンバー、例えば、MUC5AC、MUC17、ZG16、カルボキシペプチダーゼN、ポリペプチド2,83kDa鎖(CPN2)、マトリックスメタロプロテイナーゼ12(MMP12)、インヒビン(「INHBA」)、インシュリン様成長因子7(「IGFBP7」)、ガンマ−グルタミル加水分解酵素(「GGH」)、ロイシンプロリンに富んだプロテオグリカン(「LEPRE1」)、シスタチンS(「CST4」)、分泌フリズルド関連タンパク質4(「SFRP4」)、アスポリン(「ASPN」)、EFハンドドメイン1を有する細胞成長制御因子(「CGREF1」)、カリクレイン10(KLK10)、メタロプロテイナーゼ1の組織阻害剤(「TIMP1」)、酸性のシステインリッチな分泌タンパク質(「SPARC」)、β−誘導型形質転換成長因子(「TGFBI」)、EGF含有フィブリン様細胞外マトリックスタンパク質2(「EFEMP2」)、ルミカン(「LUM」)、スタニン(「SNN」)、分泌ホスホタンパク質1(「SPP1」)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン2(「CSPG2」)、N−アシルスフィンゴシンアミド加水分解酵素(「ASAH1」)、セリンプロテアーゼ11(「PRSS11」)、分泌フリズルド関連タンパク質2(「SFRP2」)、ホスホリパーゼA2、グループXIIB(「PLA2G12B」)、スポンディン2、細胞外マトリックスタンパク質(「SPON2」)、オルファクトメディン1(「OLFM1」)、トロンボスポンディン反復含有1(「TSRC1」)、トロンボスポンディン2(「THBS2」)、アドリカン、シスタチンSA(「CST2」)、シスタチンSN(「CST1」)、リシルオキシダーゼ様酵素2(「LOXL2」)、サイログロブリン(「TG」)、形質転換成長因子ベータ1(「TGFB1」)、セリン又はシステインプロテイナーゼ阻害剤クレードH、メンバー1(「SERPINH1」)、セリン又はシステインプロテイナーゼ阻害剤クレードB、メンバー5(「SERPINB5」)、マトリックスメタロプロテイナーゼ2(「MMP2」)、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケクシンタイプ5(「PCSK5」)、ヒアルロナン糖タンパク質連結タンパク質4(「HAPLN4」)、CA19−9、CA72−4、ペプシノーゲン、CEA、MUC5AC及びMUC17のいずれか1つを含み得る。
【0011】
本発明による組合せGTMマーカーの1例は、MUC5AC、MUC17、ZG16、シスタチンSN、セルピンH1及びセルピンB5である。
【0012】
GTMのレベルを検出するための任意の適切な方法を使用することができ、そして前記GTM cDNAの少なくとも部分に相補的なオリゴヌクレオチドを用いて、フォワードプライマー及びリバースプライマーを用いてqRT−PCR法を用いて、GTM mRNA、GTM cDNAのレベルを検出すること、例えば前記GTMに対する抗体を用いて、GTMタンパク質のレベルを検出すること、GTMペプチドのレベルを検出することを含み得る。任意の適切な抗体を使用することができ、そしてこれはモノクローナル抗体又はポリクローナル抗血清であり得る。前記方法を、サンドウィッチタイプのイムノアッセイ法を用いて、又は抗体チップを用いて実施し得る。
【0013】
本発明はまた、
その上にGTM捕獲試薬を有する基材、及び
該基材に関連する検出器(該検出器は、該捕獲試薬と関連するGTMを検出することができる)
を含む、GTMを検出する装置を提供する。
【0014】
GTM捕獲試薬は、GTMオリゴヌクレオチド、GTMタンパク質又はGTMペプチドのいずれかに特異的なオリゴヌクレオチド又は抗体であり得る。
【0015】
本発明のさらなる局面は、
その上にGTM捕獲試薬を有する基材;
前記GTM捕獲作用剤とGTMとの複合体を可視化する手段;
試薬;及び
使用のための説明書
(前記GTMは、ヒトチモーゲン顆粒タンパク質16(「ZG16」)を含む)
を含む、ガン検出キットである。
【0016】
GTM捕獲試薬は、GTM特異的オリゴヌクレオチド、又はGTMオリゴヌクレオチド、GTMタンパク質もしくはGTMペプチドに選択的であるGTM特異的抗体である。
【0017】
本発明はまた、
胃ガンを有するリスクのある患者から検査試料を提供すること;
該検査試料中のGTMタンパク質の存在を測定すること;及び
該検査試料中のGTM存在量を、胃ガンを有さない被験者からの対照の試料から得た値と比較すること(前記GTMは、ヒトチモーゲン顆粒タンパク質16(「ZG16」)を含む)
の工程を含む、胃ガンの検出方法を提供する。
【0018】
またさらなる局面において、本発明は、
検査の被験者からの検査試料を提供すること;
前記検査試料中のGTMの存在を測定すること;及び
前記検査試料中のGTM存在量を、胃ガンを有さない被験者からの対照の試料から得た値と比較すること(前記GTMはヒトチモーゲン顆粒タンパク質16(「ZG16」)を含む)
の工程を含む、胃ガンのスクリーニング方法を提供する。
【0019】
GTMは、GTMタンパク質又はペプチド、あるいはGTMに特異的なオリゴヌクレオチドであり得る。オリゴヌクレオチドはDNA又はRNAであり得る。
【0020】
本発明によると、測定工程はELISAアッセイを使用し得る。
【0021】
検査試料を、血漿、組織、尿、胃液、血清及び大便から得ることができる。
【0022】
本発明は、その特定の態様を参照して、及び図面を参照して記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、腫瘍組織において比較的高い発現を有する遺伝子を示すマイクロアレイ分析の表を示す。腫瘍組織及び非悪性組織の両方における各遺伝子についてのシグナル強度をランクづけた。表は、既存の胃ガンマーカーCEA(遺伝子CEACAM5によってコードされる)よりも高いランキングを有するGTMを示す。
【図2】図2は、抗体アレイ分析において使用される血清試料の特徴を示した表を示す。
【図3】図3は、(a)ZG16及び(b)MUC17のその発現レベルによる、腫瘍及び非悪性試料の分布を示したヒストグラムを示す。2つの遺伝子の発現レベルはRT−qPCRを用いて得られた。
【図4】図4は、抗体アレイ及びRCA検出を用いた胃ガン患者及び対照の血清中における(a)MUC17及び(b)ZG16の検出を示した箱ひげ図を示す。
【0024】
詳細な説明
定義
本発明の態様を詳細に記載する前に、本明細書において使用する用語のいくつかの定義を提供することは有用であろう。
【0025】
用語「GTM」又は「胃腫瘍マーカー」又は「GTMファミリーメンバー」は、胃ガンに関連する、遺伝子、遺伝子フラグメント、RNA、RNAフラグメント、タンパク質もしくはタンパク質フラグメント、又は他の同定分子を意味する。本発明の一部として開示されるGTMは、従来技術で胃ガンと関連することが知られている分子、例えばCA19−、CA72−4、ペプシノーゲン及びCEAを含まない。しかし、本発明のマーカーを、以前に開示されているGTMと新規な及び発明的な組合せで使用することができる。
【0026】
用語「マーカー」とは、定量的又は定性的に生物現象の存在に関連する分子を指す。「マーカー」の例としては、ポリヌクレオチド、例えば遺伝子もしくは遺伝子フラグメント、RNAもしくはRNAフラグメント;又は、遺伝子産物(ポリペプチド、例えばペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、もしくはタンパク質フラグメントを含む);又は任意の関連する代謝物、副産物、又は任意の他の同定分子、例えば抗体もしくは抗体フラグメント(現象の基礎をなす機序に直接的に又は間接的に関連していようと)が挙げられる。本発明のマーカーは、本明細書において開示したヌクレオチド配列(例えばGenBank配列)、特に完全長配列、任意のコード配列、任意のフラグメント、又は任意のその相補体、及び上記に定義したような任意のその測定可能なマーカーを含む。
【0027】
本明細書において使用する「抗体」及び類似の用語は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原と特異的に結合(免疫反応)する抗原結合部位を含む分子を指す。これらは、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、Fc、Fab、Fab’、及びFabフラグメント、及びFab発現ライブラリーを含むがそれらに限定されない。抗体分子は、分子中に存在する重鎖の性質が互いに異なる、IgG、IgM、IgA、IgE及びIgDクラスのいずれかに関する。これらは、IgG1、IgG2及びその他などの同様にサブクラスも含む。軽鎖はκ鎖又はλ鎖であり得る。本明細書における抗体への言及は、全てのクラス、サブクラス及びタイプへの言及を含む。また、キメラ抗体、例えば、1を超える起源(例えばマウス又はヒト配列)に特異的であるモノクローナル抗体又はそのフラグメントも含まれる。さらに、ラクダ抗体、サメ抗体又はナノボディも含まれる。
【0028】
用語「ガン」及び「ガン性」は、異常な又は未制御な細胞増殖によって典型的には特徴付けられる哺乳動物における生理的容態を指すか又は記載する。ガン及びガン病理は、例えば転移、隣接細胞の正常な機能への干渉、異常なレベルでのサイトカイン又は他の分泌産物の放出、炎症応答又は免疫応答の抑制又は悪化、周辺又は遠位の組織又は臓器(例えばリンパ節など)への前悪性、悪性の新生物の浸潤に関連し得る。特にメラノーマが含まれる。
【0029】
用語「腫瘍」は、悪性又は良性であれ、全ての新生物の細胞成長及び増殖、並びに全ての前ガン性及びガン性細胞及び組織を指す。
【0030】
用語「胃ガン」は、胃を起源とする腫瘍を指す。これらの腫瘍は任意の臓器に転移することができる。
【0031】
用語「異なって発現されている」、「異なった発現」及び同様なフレーズは、対照の被験者(例えばリファレンス試料)におけるその発現と比較して、メラノーマなどの特にガンの容態を有する被験者(例えば検査試料)においてより高い又はより低いレベルにまでその発現が活性化された遺伝子マーカーを指す。この用語はまた、同じ容態の異なるステージ;良好又は不良な予後を有する疾病;又はより高いもしくはより低いレベルの増殖を有する細胞において、その発現がより高い又はより低いレベルまで活性化されているマーカーを含む。異なって発現されるマーカーは、ポリヌクレオチドレベル又はポリペプチドレベルで活性化又は阻害されるのいずれかであり得るか、あるいは、異なるポリペプチド産物を与える選択的スプライシングにかけられ得る。このような差異は、例えば、mRNAレベル、表面発現、ポリペプチドの分泌又は他の分配の変化によって証明され得る。
【0032】
異なる発現は、2つ以上のマーカー(例えば遺伝子又はその遺伝子産物)の間の発現の比較;あるいは、2つ以上のマーカー(例えば遺伝子又はその遺伝子産物)の間の発現比の比較;あるいは、正常な被験者と疾病を有する被験者との間;又は、同じ疾病の種々のステージ間;又は、良好もしくは不良な予後を有する疾病間;又は、より高い及びより低い増殖レベルを有する細胞間;又は、正常な組織と疾病を有する組織、特にガンもしくはメラノーマとの間で異なる、同じマーカーの2つの異なって処理される産物(例えば転写物又はポリペプチド)の比較を含む。異なる発現は、例えば、正常な細胞と疾病を有する細胞との間、又は異なる疾病事象もしくは疾病ステージを経た細胞間、又は異なる増殖レベルを有する細胞間の、遺伝子又はその発現産物における時間的発現パターン又は細胞発現パターンにおける定量的並びに定性的な差異の両方を含む。
【0033】
用語「発現」は、遺伝子又は遺伝子の一部からのポリヌクレオチド及びポリペプチドの産生、特にRNA(例えばmRNA)の産生を含み、そしてRNA又は遺伝子又は遺伝子の一部によってコードされるポリペプチドの産生、及び発現に関連する検出可能な材料の出現を含む。例えば、複合体の形成、例えばポリペプチド−ポリペプチド相互作用、ポリペプチド−ヌクレオチド相互作用、又は類似物からの複合体の形成は、用語「発現」の範囲内に含まれる。別の例は、遺伝子又は他のポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド、ポリペプチド又はタンパク質フラグメントへの、ハイブリダイゼーションプローブ又は抗体などの結合リガンドの結合、及び結合リガンドの可視化である。従って、マイクロアレイ上、ノザンブロットなどのハイブリダイゼーションブロット、又はウェスタンブロットなどのイムノブロット上、又はビーズアレイ上、又はPCR分析によるスポットの強度は、基礎をなす生物分子の用語「発現」に含まれる。
【0034】
用語「発現閾値」及び「規定の発現閾値」は同義語として使用され、そして、そのレベルの外側でポリヌクレオチド又はポリペプチドが、患者の生存についての予測マーカーとして作用する、当該マーカーのレベルを指す。閾値は、以下の実施例に記載されたものなどの臨床試験から実験的に誘導された確立された予測モデルに依存する。使用する予測モデルに依存して、発現閾値は、最大感受性、又は最大特異性、又は最小誤差(最大分類率)を達成するように設定され得る。例えば、最小誤差を達成するためにより高い閾値が設定され得るが、これにより感受性が低くなり得る。それ故、任意の所与の予測モデルについて、臨床試験を使用して、最小誤差率を有しつつ最も高い感受性を一般的に達成する発現閾値を設定する。任意の状況についての発現閾値の決定は、当業者の知識の充分に範囲内である。
【0035】
用語「感受性」は、(モデルによって)陽性と検査された疾病を有する個体の比率を意味する。従って、増加した感受性は、より少ない偽陰性検査結果を意味する。
【0036】
用語「特異性」は、(モデルによって)陰性と検査された疾病を有さない個体の比率を意味する。従って、増加した特異性は、より少ない偽陽性検査結果を意味する。
【0037】
用語「マイクロアレイ」は、基材上における、捕獲作用剤、好ましくはポリヌクレオチド(例えばプローブ)又はポリペプチドの秩序立った又は秩序立っていない配置を指す。例えば、Microarray Analysis, M. Schena, John Wiley & Sons, 2002; Microarray Biochip Technology, M. Schena, ed., Eaton Publishing, 2000; Guide to Analysis of DNA Microarray Data, S. Knudsen, John Wiley & Sons, 2004;及びProtein Microarray Technology, D. Kambhampati, ed., John Wiley & Sons, 2004を参照されたい。
【0038】
用語「オリゴヌクレオチド」は、ポリヌクレオチド、典型的にはプローブ又はプライマー(一本鎖デオキシリボヌクレオチド、一本鎖又は二本鎖リボヌクレオチド、RNA:DNAハイブリッド、及び二本鎖DNAを含むがそれらに限定されない)を指す。オリゴヌクレオチド、例えば一本鎖DNAプローブオリゴヌクレオチドは、しばしば、化学的方法によって、例えば市販されている自動化オリゴヌクレオチド合成機を使用して、又は多種多様な他の方法(in vitroにおける発現系、組換え技術、並びに細胞及び生物における発現を含む)によって合成される。
【0039】
用語「過剰発現」又は「過剰発現された」は、正常組織において見られるよりも上である患者における遺伝子又はマーカーの発現レベルを指す。発現は、正常組織における発現の1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2又は2を超える場合に過剰発現されていると考えられ得る。
【0040】
単数形又は複数形で使用される場合の用語「ポリヌクレオチド」は、一般的に、修飾されていないRNAもしくはDNA、又は修飾されたRNAもしくはDNAであり得る、任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを指す。これは、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖領域を含むDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、並びに一本鎖及び二本鎖領域を含むRNA、一本鎖もしくはより典型的には二本鎖であり得るか、又は一本鎖及び二本鎖領域を含むDNA及びRNAを含むハイブリッド分子を含むがそれらに限定されない。RNAもしくはDNA、又はRNA及びDNAの両方を含む、三本鎖領域も含まれる。特に、mRNA、cDNA、及びゲノムDNA、並びにその任意のフラグメントが含まれる。この用語は、1つ以上の修飾された塩基、例えばトリチウム標識された塩基、又は異常な塩基、例えばイノシンを含む、DNA及びRNAを含む。本発明のポリヌクレオチドは、コードもしくは非コード配列、又はセンスもしくはアンチセンス配列を包含することができる。「ポリヌクレオチド」又は類似の用語についての各々の言及は、本明細書において、完全長配列並びにその任意のフラグメント、誘導体又は変異体を含む。
【0041】
本明細書において使用する「ポリペプチド」は、オリゴペプチド、ペプチド、又はタンパク質配列、又はそのフラグメント、並びに天然に存在する、組換えの、合成の、又は半合成の分子を指す。「ポリペプチド」を本明細書において引用して天然に存在するタンパク質分子のアミノ酸配列を指す場合、「ポリペプチド」及び類似の用語は、アミノ酸配列を、完全長分子についての完全でネイティブなアミノ酸配列に限定することを意味しない。「ポリペプチド」又は類似の用語についての各々の言及は、本明細書において、完全長配列、並びに、その任意のフラグメント、誘導体、又は変異体を含むと解される。
【0042】
用語「qPCR」又は「QPCR」は、例えばPCR Technique: Quantitative PCR, J.W. Larrick, ed., Eaton Publishing, 1997、及びA-Z of Quantitative PCR, S. Bustin, ed., IUL Press, 2004に記載のような定量的なポリメラーゼ連鎖反応を指す。
【0043】
用語RCAは、ローリングサークル増幅の略称である。RCAは、シグナルを線形に増幅する環状鋳型の反復コピーを含む技術である。
【0044】
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に決定されることができ、そして一般的に、プローブの長さ、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な計算である。一般的に、より長いプローブは適切なアニーリングのためにより高い温度を必要とし、より短いプローブはより低い温度を必要とする。ハイブリダイゼーションは、一般的に、相補鎖がその融解温度よりも低い環境中に存在する場合、変性DNAが再びアニーリングする能力に依存する。プローブとハイブリダイゼーション可能な配列との間の所望の相同度が高ければ高いほど、使用することができる相対的な温度はより高くなる。結果として、より高い相対温度は反応条件をよりストリンジェントにし、一方、より低い温度はよりストリンジェントにしないことになる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーのさらなる詳細及び説明は、例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers, (1995)に見出される。
【0045】
本明細書において定義する「ストリンジェントな条件」又は「高いストリンジェンシー条件」は、典型的には、(1)洗浄のために低いイオン強度及び高い温度、例えば0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを50℃で使用するか;(2)ハイブリダイゼーション中に変性剤、例えばホルムアミド、例えば42℃の0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Fico11/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム、750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを有するpH6.5の緩衝液を含む、50%(v/v)ホルムアミドを使用するか;又は(3)42℃の、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%硫酸デキストランを使用し、42℃の0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)及び55℃の50%ホルムアミド中で洗浄し、その後、55℃のEDTAを含む0.1×SSCを含む高ストリンジェンシー洗浄を行なう。
【0046】
「中程度にストリンジェントな条件」は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, New York: Cold Spring Harbor Press, 1989に記載のように同定され得、そして前記のよりもストリンジェントの低い洗浄溶液及びハイブリダイゼーション条件(例えば温度、イオン強度、及びSDS%)の使用を含む。中程度にストリンジェントな条件の一例は、20%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、及び20mg/ml変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中における37℃での一晩のインキュベーション、その後、約37〜50℃の1×SSC中でのフィルターの洗浄である。当業者は、プローブの長さなどの因子を適応させるために必要に応じて温度、イオン強度などを調整する方法を認識している。
【0047】
用語「MUC5AC」は、ムチン5AC(配列番号1及び4)を意味し、そしてマーカーMUC5AC(ポリヌクレオチド、例えば遺伝子もしくは遺伝子フラグメント、RNAもしくはRNAフラグメント;又は、遺伝子産物(ポリペプチド、例えばペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、又はタンパク質フラグメントを含む);又は、任意の関連する代謝物、副産物、もしくは任意の他の同定分子、例えば抗体もしくは抗体フラグメントを含む)を含む。
【0048】
用語「MUC17」は、細胞表面会合型のヒトムチン17(配列番号2及び5)を意味し、そしてマーカーMUC17(ポリヌクレオチド、例えば遺伝子もしくは遺伝子フラグメント、RNAもしくはRNAフラグメント;又は、遺伝子産物(ポリペプチド、例えばペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、又はタンパク質フラグメントを含む);又は、任意の関連する代謝物、副産物、もしくは任意の他の同定分子、例えば抗体もしくは抗体フラグメントを含む)を含む。
【0049】
用語「ZG16」は、ヒトチモーゲン顆粒タンパク質16(配列番号3及び6)を意味し、そしてマーカーZG16(ポリヌクレオチド、例えば遺伝子もしくは遺伝子フラグメント、RNAもしくはRNAフラグメント;又は、遺伝子産物(ポリペプチド、例えばペプチド、オリゴペプチド、タンパク質又はタンパク質フラグメントを含む);又は、任意の関連する代謝物、副産物、もしくは任意の他の同定分子、例えば抗体もしくは抗体フラグメントを含む)を含む。
【0050】
本発明の実施は、特記しない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、及び生物工学の従来の技術を使用し、これらは当業者の技術の範囲内である。このような技術は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition, Sambrook et al., 1989; Oligonucleotide Synthesis, MJ Gait, ed., 1984; Animal Cell Culture, R.I. Freshney, ed., 1987; Methods in Enzymology, Academic Press, Inc.; Handbook of Experimental Immunology, 4th edition, D .M. Weir & CC. Blackwell, eds., Blackwell Science Inc., 1987; Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells, J.M. Miller & M.P. Calos, eds., 1987; Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel et al., eds., 1987;及びPCR: The Polymerase Chain Reaction, Mullis et al., eds., 1994などの文献に完全に説明されている。
【0051】
前記の用語は、タンパク質、DNA配列及び/又はRNA配列を指し得ると解されるであろう。また、前記の用語はまた、本明細書において示したような相同配列を有する、非ヒトタンパク質、DNA及び/又はRNAも指すと解されるであろう。
【0052】
発明の態様の説明
典型的には、腫瘍マーカーは、腫瘍組織と対応する非悪性組織とに間では異なって発現される。これは、ガンを有する患者とガンを有さない患者とを識別する手段を提供する。しかし、これらのマーカーが腫瘍組織において過剰発現されていない場合でさえも、腫瘍組織の解剖学的構造及び生理学的特徴が、血清及び他の生物学的液体中におけるマーカーの蓄積の差異をもたらす可能性がある。特に、腫瘍細胞の異常な極性、腫瘍組織の漏出性の血管構造及び高い間質内圧が、非悪性組織と比べて腫瘍組織からの特異的マーカーの流出を支持すると予測される。結果として、胃腫瘍組織においては非常に高いレベルで発現されるが、非悪性胃組織と比較して必ずしも過剰発現されているわけではない分泌タンパク質は、有用な胃ガンマーカーを構成すると予測される。
【0053】
マイクロアレイ分析及び定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)の組合せを使用して、胃ガンの検出のための新規なマーカーが同定された。この新規な胃腫瘍マーカー(GTM)は、胃ガンの早期検出におけるさらなるツールを提供する。特に、本発明は、新規なGTM:MUC5AC(配列番号1及び4)、MUC17(配列番号2及び5)、及びZG16(配列番号3及び6)を含む。
【0054】
新規GTMを単独で使用することができるか、又はそれらをサインとして一緒に組み合わせることもできる(2つ以上のGTMを含む)。本発明によるサインは、MUC5AC、MUC17、及びZG16の少なくとも1つ、並びに少なくとも1つのさらなるGTM(これは本発明によるGTMであり得るか、又は公知のGTMを含む任意の他のGTMのいずれかであり得る)を含む。
【0055】
現在開示されているGTMと組み合わせて使用するために適している公知のGTMは、カルボキシぺプチダーゼN、ポリペプチド2、83kDa鎖(CPN2)、マトリックスメタロプロテイナーゼ12(MMP12)、インヒビン(「INHBA」)、インシュリン様成長因子7(「IGFBP7」)、ガンマ−グルタミル加水分解酵素(「GGH」)、ロイシンプロリンに富んだプロテオグリカン(「LEPRE1」)、シスタチンS(「CST4」)、分泌フリズルド関連タンパク質4(「SFRP4」)、アスポリン(「ASPN」)、EFハンドドメイン1を有する細胞成長制御因子(「CGREF1」)、カリクレイン10(KLK10)、メタロプロテイナーゼ1の組織阻害剤(「TIMP1」)、酸性のシステインリッチな分泌タンパク質(「SPARC」)、β−誘導型形質転換成長因子(「TGFBI」)、EGF含有フィブリン様細胞外マトリックスタンパク質2(「EFEMP2」)、ルミカン(「LUM」)、スタニン(「SNN」)、分泌ホスホタンパク質1(「SPP1」)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン2(「CSPG2」)、N−アシルスフィンゴシンアミド加水分解酵素(「ASAH1」)、セリンプロテアーゼ11(「PRSS11」)、分泌フリズルド関連タンパク質2(「SFRP2」)、ホスホリパーゼA2、グループXIIB(「PLA2G12B」)、スポンディン2、細胞外マトリックスタンパク質(「SPON2」)、オルファクトメディン1(「OLFM1」)、トロンボスポンディン反復含有1(「TSRC1」)、トロンボスポンディン2(「THBS2」)、アドリカン、シスタチンSA(「CST2」)、シスタチンSN(「CST1」)、リシルオキシダーゼ様酵素2(「LOXL2」)、サイログロブリン(「TG」)、形質転換成長因子ベータ1(「TGFB1」)、セリン又はシステインプロテイナーゼ阻害剤クレードH、メンバー1(「SERPINH1」)、セリン又はシステインプロテイナーゼ阻害剤クレードB、メンバー5(「SERPINB5」)、マトリックスメタロプロテイナーゼ2(「MMP2」)、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケクシンタイプ5(「PCSK5」)、ヒアルロナン糖タンパク質連結タンパク質4(「HAPLN4」)、CA19−9、CA72−4、ペプシノーゲン及びCEA、又は、胃腫瘍を示すとして以前に同定された任意の他のマーカーを含む。
【0056】
用語「信頼性」によって、本発明者らは、偽陽性及び/又は偽陰性の低い発生率を含む。従って、マーカーのより高い信頼性では、より少ない偽陽性及び/又は偽陰性が、そのマーカーを使用して行なわれた診断に伴う。それ故、特定の態様において、従来のマーカーの約50%という信頼性よりも高い信頼性で胃ガンの検出を可能とするマーカーが提供される。他の態様において、約70%を超える;他の態様において、約73%を超える、さらに他の態様において約80%を超える、またさらなる態様において約90%を超える、さらに他には、約95%を超える、またさらなる態様において約98%を超える、及び特定の態様において約100%の信頼性を有するマーカーが提供される。
【0057】
ガン検出への一般的なアプローチ
発現レベルを決定するための一般的な方法について以下に概略を示すが、発現レベルを決定するための任意の方法が適切であろうことが解されるだろう。
【0058】
定量PCR(qPCR)
定量PCR(qPCR)を、GTM特異的プライマー及びプローブを使用して、血清及び血漿の腫瘍試料に実施することができる。制御された反応においては、PCR反応において形成された産物の量は(Sambrook, J., E Fritsch, E. and T Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3rd. Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor (2001))、出発鋳型の量と相関する。PCR産物の定量を、それがlog期にある場合、試薬が限界に来る前に、PCR反応を停止することによって行なうことができる。その後、PCR産物をアガロース又はポリアクリルアミドゲル中で電気泳動し、臭化エチジウム又は比較可能なDNA染色で染色し、そして濃度計によって染色強度を測定する。あるいは、PCR反応の進行を、リアルタイムで産物の蓄積を測定するApplied Biosystems' Prism 7000又はRoche LightCyclerなどのPCR機器を使用して測定することができる。リアルタイムPCRは、合成されたPCR産物中にDNAインターカレートする染料、例えばSybr Greenなどの蛍光、又はクエンチャー分子から切断された場合にリポーター分子によって放出される蛍光のいずれかを測定し;リポーター分子及びクエンチャー分子は、オリゴヌクレオチドプローブに取り込まれ、これはプライマーオリゴヌクレオチドからのDNA鎖伸長後に標的DNA分子にハイブリダイゼーションする。オリゴヌクレオチドプローブは、次のPCRサイクルでTaqポリメラーゼの酵素反応によって置換及び分解され、クエンチャー分子からリポーター分子を放出する。Scorpion(登録商標)として知られる1つの変法において、プローブはプライマーに共有結合的に連結されている。
【0059】
逆転写PCR(RT−PCR)
RT−PCRを使用して、薬物処理してもしくは薬物処理しない、正常な組織及び腫瘍組織においての異なる試料個体群においてRNAレベルを比較し、発現パターンを特徴付け、密接に関連したRNA間で識別し、そしてRNA構造を分析することができる。
【0060】
RT−PCRでは、最初の工程は、標的試料からのRNAの単離である。出発材料は、典型的には、それぞれ、ヒト腫瘍又は腫瘍細胞系、及び対応する正常組織又は細胞系から単離した全RNAである。RNAは、種々の試料から、例えば、胸、肺、結腸(例えば大腸又は小腸)、結腸直腸、胃、食道、肛門、直腸、前立腺、脳、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、胸腺、精巣、卵巣、子宮、膀胱などの組織からの腫瘍試料から、原発性腫瘍又は腫瘍細胞系から、及び健康なドナーからのプールされた試料から単離され得る。RNA源が腫瘍である場合、RNAは、例えば、凍結された又は保管された(archived)パラフィン包埋されそして固定された(例えばホルマリン固定された)組織試料から抽出され得る。
【0061】
RT−PCRによる遺伝子発現プロファイリングにおける第一工程は、RNA鋳型のcDNAへの逆転写、次いでPCR反応でのその幾何級数的な増幅である。2つの最も一般的に使用される逆転写酵素は、ニワトリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV−RT)及びモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV−RT)である。逆転写工程は、典型的には、発現プロファイリングの状況及び目標に依存して、特異的プライマー、ランダムヘキサマー、又はオリゴ−dTプライマーを使用してプライミングされる。例えば、抽出されたRNAを、GeneAmp RNA PCRキット(Perkin Elmer, CA, USA)を使用して製造業者の指示に従って逆転写させることができる。次いで、誘導されたcDNAを、次のPCR反応における鋳型として使用することができる。
【0062】
PCR工程は、多種多様な熱安定性DNA依存性DNAポリメラーゼを使用することができるけれども、典型的には、5’−3’ヌクレアーゼ活性を有するが3’−5’プルーフリーディングエンドヌクレアーゼ活性を欠くTaqDNAポリメラーゼが使用される。従って、TaqMan qPCRは、典型的には、Taq又はTthポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性を使用して、その標的アンプリコンに結合したハイブリダイゼーションプローブを加水分解するが、同等な5’ヌクレアーゼ活性を有する任意の酵素を使用することができる。
【0063】
2つのオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、PCR反応に典型的なアンプリコンを発生させる。第3のオリゴヌクレオチド又はプローブが、2つのPCRプライマー間に位置するヌクレオチド配列を検出するように設計される。このプローブは、Taq DNAポリメラーゼ酵素によって伸長可能ではなく、そしてリポーター蛍光染料及びクエンチャー蛍光染料で標識される。リポーター染料からの任意のレーザー誘導発光は、2つの染料がプローブ上にあるままで2つの染料が相互に近接して位置するとき、クエンチング染料によってクエンチングされる。増幅反応中、Taq DNAポリメラーゼ酵素は、鋳型依存的にプローブを開裂する。得られるプローブフラグメントは溶液中で解離し、そして放出されたリポーター染料からのシグナルは、第2フルオロフォアのクエンチング効果から免れる。リポーター染料の1つの分子が、合成された各々の新しい分子に対して遊離され、そしてクエンチングされないリポーター染料の検出は、データーの定量的解明のための基礎を与える。
【0064】
TaqMan RT−PCRを、例えば、ABI PRISM 7700配列検出システム(Perkin-Elmer-Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)又はLightcycler(Roche Molecular Biochemicals, Mannheim, Germany)などの市販されている装置を使用して実施することができる。好ましい態様において、5’ヌクレアーゼ手順は、ABI PRISM 7700配列検出システムなどのリアルタイム定量PCR装置で行なわれる。該システムは、サーモサイクラー、レーザー、電荷結合素子(CCD)、カメラ及びコンピューターからなる。該システムは、サーモサイクラー上の96ウェルフォーマット中の試料を増幅する。増幅中、レーザーで誘導された蛍光シグナルを、リアルタイムで全ての96ウェルについて光ファイバーケーブルを通して回収し、そしてCCDで検出する。該システムは、機器を作動するための及びデータを分析するためのソフトウェアを含む。
【0065】
5’ヌクレアーゼアッセイデータは、最初にCt又は閾値サイクルとして表現される。前記に考察したように、蛍光値は、全てのサイクル中に記録され、そして増幅反応においてその点まで増幅された産物の量を示す。蛍光シグナルが統計学的に有意として最初に記録された時の点は閾値サイクルである。
【0066】
リアルタイム定量PCR(qRT−PCR)
RT−PCR技術のより最近の変化は、リアルタイム定量PCRであり、これは、二重標識された蛍光発生プローブ(すなわちTaqManプローブ)によってPCR産物の蓄積を測定する。リアルタイムPCRは、定量的競合PCR及び定量的比較PCRの両方と適合性である。前者は、正規化のために各ターゲット配列のための内部競合体を使用し、後者は、試料内に含まれる正規化遺伝子、又はRT−PCRのためのハウスキーピング遺伝子を使用する。さらなる詳細は、例えば、Held et al., Genome Research 6: 986-994 (1996)によって提供される。
【0067】
発現レベルを、RNA源として、固定されパラフィン包埋された組織を使用して決定することができる。本発明の1つの局面によると、PCRプライマーは、増幅しようとする遺伝子中に存在するイントロン配列にフランキングするように設計される。この態様において、プライマー/プローブ設計における第1工程は、遺伝子内のイントロン配列の描写である。これを、Kent, W. J., Genome Res. 12 (4): 656-64 (2002)によって開発されたDNA BLATソフトウェア、又はそのバリエーションを含むBLASTソフトウェアなどの公共的に入手可能なソフトウェアによって行なうことができる。その後の工程は、PCRプライマー及びプローブ設計の十分に確立された方法に従う。
【0068】
非特異的シグナルを回避するために、プライマー及びプローブを設計する場合に、イントロン内の反復配列をマスクすることは有用である。これは、反復エレメントのライブラリーに対してDNA配列をスクリーニングし、そして反復エレメントがマスクされている問い合わせ配列を返答する、ベイラー医学カレッジを通してオンラインで入手することのできるRepeat Maskerプログラムを使用することによって容易に達成することができる。その後、マスクされた配列を、任意の市販の又はそうでなければ公に入手可能なプライマー/プローブ設計パッケージ、例えばPrimer Express (Applied Biosystems); MGB assay-by-design (Applied Biosystems); Primer3 (Steve Rozen and Helen J. Skaletsky (2000) Primer3 on the VIMNV for general users and for biologist programmers in: Krawetz S, Misener S (eds) Bioinformatics Methods and Protocols: Methods in Molecular Biology. Humana Press, Totowa, NJ, pp 365-386)を使用してプライマー及びプローブ配列を設計するのに使用することができる。
【0069】
PCRプライマー設計において考慮される最も重要な因子としては、プライマー長、融解温度(Tm)、及びG/C含量、特異性、相補的プライマー配列及び3’末端配列が挙げられる。一般に、最適なPCRプライマーは、一般的に長さが1730塩基であり、そして約20〜80%のG+C塩基、例えば約50〜60%のG+C塩基を含有する。50〜80℃、例えば約50〜70℃の融解温度が典型的には好ましい。PCRプライマー及びプローブ設計についてのさらなるガイドラインについては、例えば、Dieffenbach, C. W. et al., General Concepts for PCR Primer Design in: PCR Primer, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1995, pp.133-155; Innis and Gelfand, Optimization of PCRs in: PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications, CRC Press, London, 1994, pp. 5-11; and Plasterer, T. N. Primerselect: Primer and probe design. Methods Mol. Biol. 70: 520-527 (1997)を参照されたい。その全体の開示は参照により明白に組み込まれる。
【0070】
マイクロアレイ分析
異なる発現を、マイクロアレイ技術を使用して同定又は確認することもできる。従って、GTMの発現プロファイルを、マイクロアレイ技術を使用して新しい腫瘍組織又はパラフィン包埋された腫瘍組織のいずれかにおいて測定することができる。この方法では、関心のあるポリヌクレオチド配列(cDNA及びオリゴヌクレオチドを含む)をマイクロチップ基材上にプレート又はアレイする。次いでアレイされた配列(すなわち捕獲プローブ)を関心のある細胞又は組織からの特異的ポリヌクレオチド(すなわち標的)とハイブリダイゼーションさせる。RT−PCR法と同様に、RNA源は、典型的には、ヒト腫瘍もしくは腫瘍細胞系及び対応する正常な組織もしくは細胞系から単離された全RNAである。従って、RNAを、種々の原発性腫瘍又は腫瘍細胞系から単離することができる。RNA源が原発性腫瘍であるならば、RNAを、例えば、毎日の臨床実施において慣用的に調製されそして保存されている、凍結され又は保管された、ホルマリン固定されパラフィン包埋された(FFPE)組織試料及び固定された(例えばホルマリン固定された)組織試料から抽出することができる。
【0071】
マイクロアレイ技術の特定の態様では、cDNAクローンのPCR増幅された挿入断片を基材に適用する。基材は、1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は75までのヌクレオチド配列を含み得る。他の局面では、基材は、少なくとも10,000のヌクレオチド配列を含むことができる。マイクロチップ上に固定されたマイクロアレイされた配列は、ストリンジェントな条件下のハイブリダイゼーションのために適当である。他の態様として、マイクロアレイのための標的は、長さが少なくとも50、100、200、400、500、1000、もしくは2000塩基、又は長さが50〜100、100〜200、100〜500、100〜1000、100〜2000、もしくは500〜5000塩基であることができる。さらなる態様として、マイクロアレイのための捕獲プローブは、長さが少なくとも10、15、20、25、50、75、80、もしくは100塩基;又は長さが10〜15、10〜20、10〜25、10〜50、10〜75、10〜80、もしくは20〜80塩基であることができる。
【0072】
蛍光的に標識されたcDNAプローブは、関心のある組織から抽出されたRNAの逆転写による蛍光性ヌクレオチドの組み込みにより発生させることができる。チップに適用された標識されたcDNAプローブは、アレイ上のDNAの各スポットに特異性をもってハイブリダイゼーションする。非特異的に結合したプローブを除去するためのストリンジェントな洗浄後に、チップを、共焦点レーザー顕微鏡により又はCCDカメラなどの他の検出法によりスキャンする。各アレイされたエレメントのハイブリダイゼーションの定量は、対応するmRNA量の評価を可能とする。二色蛍光により、2つのRNA源から発生させた別々に標識されたcDNAプローブをペアー方式でアレイにハイブリダイゼーションさせる。各特定された遺伝子に対応する2つの起源からの転写物の相対的量をこのように同時に決定する。
【0073】
ハイブリダイゼーションのミニチュア化されたスケールは、多数の遺伝子の発現パターンの便利で迅速な評価を与える。このような方法は、細胞当たり少数のコピーで発現される希少転写物を検出するのに必要な感受性、及び発現レベルにおいて少なくとも約2倍の差を再現可能に検出するのに必要な感受性を有することが示された(Schena et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93 (2): 106-149 (1996))。マイクロアレイ分析を、市販の装置、例えばAffymetrix GenChip技術、イルミナマイクロアレイ技術又はIncyteのマイクロアレイ技術を使用することにより、製造業者のプロトコールに従って、行なうことができる。遺伝子発現の大規模分析のためのマイクロアレイ法の開発は、種々の腫瘍タイプにおけるガン分類及びアウトカム予測の分子マーカーを系統的に研究することを可能とする。
【0074】
RNA単離、精製及び増幅
mRNA抽出のための一般的方法は、当技術分野において周知であり、そしてAusubel et al., Current Protocols of Molecular Biology, John Wiley and Sons (1997)を含む分子生物学の標準的な教科書に開示されている。パラフィン包埋組織からのRNA抽出のための方法は、例えば、Rupp and Locker, Lab Invest. 56: A67 (1987)、及びDe Sandres et al., BioTechniques 18: 42044 (1995)に開示されている。特に、RNA単離は、Qiagenなどの商業的製造者からの精製キット、緩衝液セット、及びプロテアーゼを使用して、製造業者の指示に従って行なうことができる。例えば、培養液中の細胞からの全RNAは、Qiagen RNeasyミニカラムを使用して単離され得る。他の市販のRNA単離キットは、MasterPure Complete DNA and RNA Purification Kit (EPICENTRE (D, Madison, WI)及びParaffin Block RNA Isolation Kit (Ambion, Inc.)を含む。組織試料からの全RNAは、RNA Stat-60 (Tel-Test)を使用して単離され得る。腫瘍から調製されたRNAは、例えば塩化セシウム密度勾配遠心分離により単離され得る。
【0075】
mRNA単離、精製、プライマー伸長及び増幅を含む、RNA源として、固定されパラフィン包埋された組織を使用して遺伝子発現をプロファイリングするための代表的なプロトコールの工程は、種々の公表された雑誌文献(例えば、T. E. Godfrey et al. J. Molec. Diagnostics 2: 84-91 (2000); K. Specht et al., Am. J. Pathol. 158: 419-29 (2001))に記載されている。簡単にいえば、代表的工程は、パラフィン包埋された腫瘍組織試料の約10μm厚さの切片を切断することで出発する。次いでRNAを抽出し、そしてタンパク質及びDNAを除去する。RNA濃度の分析の後に、RNA修復及び/又は増幅工程を必要に応じて含めることができ、そしてRNAを遺伝子特異的プロモーターを使用して逆転写し、次いでRT−PCRを行なう。最後に、データを分析して、検査された腫瘍試料において同定された特徴的遺伝子発現パターンに基づいて患者に利用可能な最善の処置選択(1つ又は複数)を同定する。
【0076】
免疫組織化学及びプロテオミクス
免疫組織化学法は、本発明の増殖マーカーの発現レベルを検出するのにも適当である。従って、各マーカーに対して特異的な抗体もしくは抗血清、好ましくはポリクローナル抗血清、最も好ましくはモノクローナル抗体が発現を検出するのに使用される。抗体は、例えば、放射性標識、蛍光標識、ハプテン標識、例えばビオチン、又は酵素、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼによる、抗体自体の直接標識化により検出され得る。あるいは、標識されていない一次抗体を、一次抗体に対して特異的な、抗血清、ポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体を含む標識された二次抗体と共に使用する。免疫組織化学プロトコール及びキットは、当技術分野において周知であり、そして市販されている。
【0077】
プロテオミクスを使用して、ある時点での試料(例えば、組織、器官、又は細胞培養物)中に存在するポリペプチドを分析することができる。特に、プロテオミクス技術を使用して、試料中のポリペプチド発現の全体的変化を評価することができる(発現プロテオミクスとも呼ばれる)。プロテオミクス分析は、典型的には、(1)二次元ゲル電気泳動(2−D PAGE)による試料中の個々のポリペプチドの分離;(2)例えば、質量分析法又はN末端シークエンスによる、ゲルから回収された個々のポリペプチドの同定、及び(3)バイオインフォマティクスを使用するデータの分析を含む。プロテオミクス法は、遺伝子発現プロファイリングの他の方法に対する価値ある捕獲であり、そして単独で又は他の方法と組み合わせて、本発明の増殖マーカーの産物を検出するのに使用することができる。
【0078】
マーカーに選択的な核酸プローブを使用するハイブリダイゼーション法
これらの方法は、支持体に核酸プローブを結合させること、及び検査試料から得られたRNA又はcDNAと適切な条件下でハイブリダイゼーションさせることを含む(Sambrook, J., E Fritsch, E. and T Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3rd. Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor (2001))。これらの方法を、腫瘍組織又は液体試料から得られたGTMに適用することができる。RNA又はcDNA調製物を典型的には蛍光性又は放射性分子で標識して、検出及び定量を可能とする。いくつかの適用では、ハイブリダイゼーションするDNAを、分岐の蛍光標識された構造を用いてタグ化し、シグナル強度を増強させることができる(Nolte, F.S., Branched DNA signal amplification for direct quantitation of nucleic acid sequences in clinical specimens. Adv. Clin. Chem. 33, 201-35 (1998))。ハイブリダイゼーションしていない標識を、0.1×SSC、0.5%SDSなどの低塩溶液中での十分な洗浄によって除去し、その後、ゲル画像の蛍光検出又は濃度測定によってハイブリダイゼーションの量を定量する。支持体は、ナイロン又はニトロセルロースメンブレンなどの固体であっても、あるいは、液体懸濁液中にある場合にハイブリダイゼーションするミクロスフィア又はビーズからなっていてもよい。洗浄及び精製を可能とするために、ビーズは、フローサイトメトリーが可能となるように、磁気性(Haukanes, B-1 and Kvam, C., Application of magnetic beads in bioassays. Bio/Technology 11, 60-63 (1993))又は蛍光標識され得る(例えば、Spiro, A., Lowe, M. and Brown, D., A Bead-Based Method for Multiplexed Identification and Quantitation of DNA Sequences Using Flow Cytometry. Appl. Env. Micro. 66, 4258-4265 (2000)参照)。
【0079】
ハイブリダイゼーション技術の変法は、蛍光ビーズ支持体を分岐DNAシグナル増幅と組み合わせる、QuantiGene Plexeアッセイ(Genospectra, Fremont)である。ハイブリダイゼーション技術のさらに別の変法は、Quantikine(登録商標)mRNAアッセイ(R&D Systems, Minneapolis)である。方法は、製造業者の説明書に記載されている通りである。簡単にいうと、アッセイは、ジゴキシゲニンにコンジュゲートしたオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブを使用する。ハイブリダイゼーションは、比色アッセイにおいてアルカリホスファターゼに結合した抗ジゴキシゲニン抗体を使用して検出される。
【0080】
追加の方法は当技術分野において周知であり、そして本明細書においてさらに記載する必要はない。
【0081】
酵素結合免疫アッセイ(ELISA)
簡単にいうと、サンドウィッチELISAアッセイにおいて、GTMに対するポリクローナル又はモノクローナル抗体を固体支持体(Crowther, J.R. The ELISA guidebook. Humana Press: New Jersey (2000); Harlow, E. and Lane, D., Using antibodies: a laboratory manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor (1999))又は懸濁ビーズに結合させる。他の方法は当技術分野において公知であり、そして本明細書においてさらに記載する必要はない。モノクローナル抗体はハイブリドーマに由来し得るか、又はファージ抗体ライブラリーから選択され得る(Hust M. and Dubel S., Phage display vectors for the in vitro generation of human antibody fragments. Methods Mol Biol. 295:71-96 (2005))。非特異的結合部位を、標的ではないタンパク質調製物及び洗浄剤を用いて遮断する。その後、捕獲抗体を、GTM抗原を含む患者からの試料又は組織の調製物と共にインキュベーションする。混合物を洗浄し、その後、抗体/抗原複合体を、標的GTMを検出する二次抗体と共にインキュベーションする。二次抗体は典型的には、酵素反応で又はリポーターにコンジュゲートした第3抗体を用いてのいずれかで検出され得る、蛍光分子又は他のリポーター分子にコンジュゲートされている(Crowther、同上)。あるいは、直接的なELISAにおいて、GTMを含む調製物を支持体又はビーズに結合させ得、そして標的抗原を、抗体−リポーターコンジュゲートを用いて直接的に検出することができる(Crowther、同上)。
【0082】
モノクローナル抗体及びポリクローナル抗血清を産生するための方法は当技術分野において周知であり、そして本明細書においてさらに記載する必要はない。
【0083】
免疫検出
また、この方法を、腫瘍を除去するための手術前及び手術後に採取した胃ガン患者からの血清又は血漿中のマーカーファミリーメンバーの免疫検出、結腸直腸、膵臓、卵巣、メラノーマ、肝臓、食道、胃、子宮内膜、及び脳を含むがそれらに限定されない他のガンを有する患者におけるマーカーファミリーメンバーの免疫検出、並びに、胃ガン患者からの尿及び大便中のマーカーファミリーメンバーの免疫検出のために使用することもできる。
【0084】
また、組織又は試料中のGTMを、イムノブロット又は免疫沈降などの他の標準的な免疫検出技術を使用して検出することもできる(Harlow, E. and Lane, D., Using antibodies: a laboratory manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor (1999))。イムノブロットでは、GTMを含む組織又は液体からのタンパク質調製物を、変性又は非変性条件下においてポリアクリルアミドゲルを通して電気泳動する。その後、タンパク質を、ナイロンなどのメンブレン支持体に転写する。その後、GTMを、免疫組織化学について記載されたようなモノクローナル又はポリクローナル抗体と直接的に又は間接的に反応させる。あるいは、いくつかの調製物では、タンパク質を、事前に電気泳動で分離することなく、メンブレン上へと直接的にスポットしてもよい。シグナルを濃度測定によって定量することができる。
【0085】
免疫沈降では、GTMを含む可溶性調製物を、GTMに対するモノクローナル又はポリクローナル抗体と共にインキュベーションする。その後、反応を、共有結合的に付着したプロテインA又はプロテインGを有するアガロース又はポリアクリルアミドからなる不活性ビーズと共にインキュベーションする。プロテインA又はGビーズは特異的に抗体と相互作用し、ビーズに結合した抗体−GTM−抗原の固定された複合体を形成する。洗浄後、結合したGTMを、イムノブロット又はELISAによって検出及び定量することができる。
【0086】
閾値決定
GTMを使用する検査のために、試料を胃ガンに関して陽性又は陰性のいずれかであると呼ぶことのできる閾値を得る。これらの閾値は、胃ガンの存在について調査している患者のコホートの分析によって決定される。閾値は、種々の検査適用毎に変動し得;例えば、個体群スクリーニングの検査に使用するための閾値は、主に泌尿器症状がない患者のコホートを使用して決定され、そしてこれらの閾値は、胃ガン再発について調査監視下にある患者のための検査に使用される閾値とは異なり得る。閾値は、必要とされる臨床設定において実際的な検査特異性レベル;すなわち、過剰な数の患者が偽陽性結果を受けることのない妥当な感受性を可能とする特異性を提供するように選択することができる。この特異性は、80〜90%の範囲内であり得る。検査閾値を得るための代替的な方法は、種々の検査閾値について特異性に対して感受性をプロットし(ROC曲線)、その後、曲線の屈曲点を選択することである。
【0087】
単一の閾値に対する代替物として、検査は、疾病の存在の異なる確率度を与え、そしてそれらに関連した異なる臨床結果を有する、検査区間を使用し得る。例えば、検査は3つの区間を有し得;1つは胃ガンの存在の高い(例えば90%)リスクに関連し、2番目は、胃ガンの低いリスクに関連し、3番目は疾病が疑われると捉えられる。「疑わしい」区間は、規定の期間において反復検査が推奨されることに関連し得る。
【0088】
胃ガンマーカーに対する抗体
追加の局面において、本発明は、GTMに対する抗体の製造を含む。本明細書において記載した方法を使用して、新規GTMを、マイクロアレイ及び/又はqRT−PCR法を使用して同定することができる。一旦、推定マーカーが同定されれば、免疫応答を誘起するのに適切である十分な量でそれを生産することができる。いくつかの場合においては、完全長GTMを使用することができ、そして他の場合においては、GTMのペプチドフラグメントが免疫原として十分であり得る。免疫原を適切な宿主(例えばマウス、ウサギなど)に注入し得、そして所望であれば、フロイント完全アジュバント又はフロイント不完全アジュバントなどのアジュバントを注入して免疫応答を高めることができる。抗体の作製は免疫学的分野において慣用的であり、そして本明細書においてさらに記載する必要はないことが解され得る。結果として、本明細書において記載した方法を使用して同定されたGTMに対する抗体(モノクローナル又はファージディスプレイ抗体を含む)を産生することができる。
【0089】
またさらなる態様において、本明細書において同定した腫瘍マーカーのタンパク質又はタンパク質コアに対する、あるいは、GTMに独特なオリゴヌクレオチド配列に対する抗体を作製することができる。特定のタンパク質はグリコシル化されていてもよいが、特定の環境においては、グリコシル化パターンの変化は、通常のグリコシル化パターンを欠く形態のGTMの誤検出につながり得る。従って、本発明の特定の局面において、GTM免疫原は、脱グリコシル化GTM又は脱グリコシル化GTMフラグメントを含み得る。脱グリコシル化を、当技術分野において公知の1つ以上のグリコシダーゼを使用して達成することができる。あるいは、GTM cDNAを、E.coliなどを含む原核細胞株などの、グリコシル化欠損細胞株において発現させることができる。
【0090】
ベクター中にGTMをコードするオリゴヌクレオチドを有するベクターを作製することができる。多くのこのようなベクターは、当技術分野において公知の標準的なベクターに基づき得る。ベクターを使用して多種多様な細胞株をトランスフェクションし、GTM産生細胞株を産生することができ、これを使用してGTMの検出のための特異的な抗体又は他の試薬の開発のための、あるいはGTMのために開発されたアッセイを標準化するための、所望の量のGTMを産生することができる。
【0091】
キット
本発明の発見に基づき、検査キットのいくつかのタイプを心に描きそして作ってもよい。まずは、検出分子(又は「捕獲試薬」)のプレロードされた検出装置を有するようにキットを作製するとよい。GTM mRNAを検出するための態様では、このような装置は、検出するmRNAとハイブリダイゼーションする捕獲試薬としてのオリゴヌクレオチドが結合している基材(例えばガラス、シリコン、石英、金属など)を含むとよい。いくつかの態様では、mRNAの直接検出を、基材上のオリゴヌクレオチドへmRNA(cy3、cy5、放射性標識又は他の標識で標識されている)をハイブリダイゼーションさせることにより成すとよい。他の態様では、mRNAの検出は、所望のmRNAに対する相補的DNA(cDNA)をまず作製することによって成すとよい。その後、標識したcDNAを、基材上のオリゴヌクレオチドにハイブリダイゼーションさせ、そして検出するとよい。
【0092】
抗体を、捕獲試薬としてキットに使用することもできる。いくつかの態様では、基材(例えばマルチウェルプレート)は、そこに付着した特異的なGTM捕獲試薬を有するとよい。いくつかの態様では、キットは、遮断試薬を含んで有していてもよい。遮断試薬は、非特異的結合を低減するために用いるとよい。例えば、非特異的なオリゴヌクレオチド結合は、サケ精子DNAなどの、GTMオリゴヌクレオチドを含まない好都合ないずれかの供給源からの過剰なDNAを使用して低減することができる。非特異的な抗体結合を、血清アルブミンなどの過剰な遮断タンパク質を使用して低減してもよい。オリゴヌクレオチド及びタンパク質を検出するための多数の方法が当技術分野において公知であり、そして特異的にGTM関連分子を検出することのできるいかなるストラテジーを用いてもよく、本発明の範囲内であることが解されるであろう。
【0093】
例えば抗体チップを使用して固体支持体に結合させた場合に、1つのチップで複数のマーカーの検出を可能とする抗体も使用することができる。
【0094】
基材に加えて、検査キットは、捕獲試薬(例えばプローブ)、洗浄溶液(例えばSSC、他の塩、緩衝液、洗浄剤など)並びに検出部分(例えばcy3、cy5、放射標識など)を含むことができる。キットはまた、使用説明書及びパッケージを含むことができる。
【0095】
試料中のガンマーカーを、任意の適切な技術を使用して検出することができ、そしてこれにはオリゴヌクレオチドプローブ、qPCR又はガンマーカーに対して生じた抗体を含むがそれらに限定されない。
【0096】
検査しようとする試料は、腫瘍であることが疑われる組織の試料に限定されないことが解される。マーカーは、血清又は他の体液中に分泌され得る。それ故、試料は、任意の生体試料を含み得、そして生検、血液、血清、腹腔洗浄液、脳脊髄液、尿、及び大便試料を含む。
【0097】
本発明は、ヒトにおけるガンの検出に限定されないが、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、シカ、ブタ及びガンになることが知られる任意の他の動物を含むがそれらに限定されない、任意の動物におけるガンの検出に適している。
【0098】
体液中の胃ガンマーカーについての検査
いくつかの態様において、GTMについてのアッセイを、望ましくは、血液、血漿、血清、例えば腹腔洗浄を使用して得られた腹腔液、又は他の体液、例えば尿、リンパ、脳脊髄液、胃液もしくは大便試料から得られた試料に行なうことができる。
【0099】
一般的に、これらの液体中のオリゴヌクレオチド、タンパク質及びペプチドをアッセイするための方法は当技術分野において公知である。オリゴヌクレオチドの検出は、ノザンブロット、サザンブロットもしくはマイクロアレイ法などのハイブリダイゼーション法、又はqPCRを使用して実施することができる。タンパク質を検出するための方法は、例えば酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、抗体を有するタンパク質チップ、懸濁ビーズラジオイムノアッセイ(RIA)、ウェスタンブロット及びレクチン結合を含む。しかし、説明のために、液体中GTMレベルを、サンドウィッチタイプの酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)を使用して定量することができる。血漿アッセイのために、5μLのアリコートの適切に希釈した試料又は連続希釈した標準的なGTM、及び75μLのペルオキシダーゼコンジュゲート抗ヒトGTM抗体を、マイクロタイタープレートのウェルに加える。30℃で30分間のインキュベーション期間後、ウェルを、リン酸緩衝食塩水(PBS)中0.05%Tween20で洗浄して、非結合抗体を除去する。その後、GTMと抗GTM抗体の結合した複合体を、Hを含むo−フェニレンジアミンと共に30℃で15分間インキュベーションする。1M HSOを加えることによって反応を停止し、そして492nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーを用いて測定する。
【0100】
抗GTM抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗血清であり得ることが解され得る。また、任意の他の体液も適切に研究し得ることが理解され得る。
【0101】
生理学的な意味で有用であるために、マーカーが分泌される必要はない。むしろ、マーカータンパク質又は遺伝子が血清に入る任意の機序が、マーカーの検出可能で定量可能なレベルの産生において有効であり得る。従って、細胞からの可溶性タンパク質の正常な分泌、血漿膜からの膜タンパク質の脱落、選択的にスプライシングされたmRNA型又はそれから発現したタンパク質の分泌、細胞死(アポトーシスであっても)は、有用であるに十分なマーカーレベルを産生し得る。
【0102】
種々のガンタイプについて診断及び/又はその治療の有効性を評価するツールとして、血清マーカーを使用する裏付けは増えている。
【0103】
Yoshikawa et al., (Cancer Letters, 151: 81-86 (2000)は、胃ガンを有する患者の血漿中のマトリックスメタロプロテイナーゼ−1の組織阻害剤を記載している。
【0104】
Rudland et al., (Cancer Research 62: 3417-3427 (2002)は、ヒトの乳ガンにおける転移関連タンパク質としてオステオポンチンを記載している。
【0105】
Buckhaults et al., (Cancer Research 61:6996-7001 (2002)は、結腸直腸の腫瘍で発現した特定の分泌のそして細胞表面の遺伝子を記載している。
【0106】
Kim et al., (JAMA 287(13):1671-1679 (2002)は、卵巣ガンに可能性のある診断のバイオマーカーとして、オステオポンチンを記載している。
【0107】
Hotte et al., (AJ. American Cancer Society 95(3):507-512 (2002)は、ヒトの体液中に検出可能であり、そしてある悪性腫瘍に関連するタンパク質として、血漿オステオポンチンを記載している。
【0108】
Martin et al., (Prostate Cancer Prostatic Dis. 2004年3月9日(PMID: 15007379)(要約)は、前立腺ガンの検出用マーカーとして、ヒトカリクレイン2、前立腺特異的抗原(PSA)及び遊離のPSAの使用を記載した。
【0109】
Hall et al (Laryngoscope 113(1):77-81 (2003) (PMID: 12679418)(要約)は、甲状腺ガンにおける血清サイログロブリンの予測値を記載した。
【0110】
Mazzaferri et al., (J. Clin. Endocrinol. Metab. 88(4):1433-1441 (2003)(要約)は、甲状腺ガンを有する患者のための、可能なモニター法としてサイログロブリンを記載している。
【0111】
Whitley et al, (Dim Lab. Med. 24(1):29-47 (2004)(要約)は、甲状腺ガン腫のための血清マーカーとしてサイログロブリンを記載している。
【0112】
Kuo et al (Clin. Chim. Acta. 294(1-2):157-168 (2000)(要約)は、HCF及びHBV感染した患者における、血清マトリックスメタロプロテイナーゼ2及び9を記載している。
【0113】
Koopman et al., (Cancer Epidemiol. Biomarkers Prey13(3):487-491 (2004)(要約)は、膵臓腺ガン用のバイオマーカーとして、オステオポンチンを記載している。
【0114】
Pellegrini et al., (Cancer Immunol. Immunother. 49(7):388-394 (2000)(要約)は、前浸潤性の結腸直腸ガン用マーカーとして可溶性ガン胎児性抗原及びTIMP1の測定を記載している。
【0115】
Melle et al., (Clin. Chem. 53(4), 629-635 (2007)(要約)は、膵臓腺ガンのための血清マーカーとしてのHSP27を記載している。
【0116】
Leman et al., (Urology, 69(4) 714-20 (2007)(要約)は、前立腺ガンのための血清マーカーとしてのEPCA−2を記載している。
【0117】
Tsigkou et al., (I Clin Endocrinol Metab, 92(7) 2526-31 (2007)(要約)は、卵巣ガンのための可能性ある血清マーカーとしての完全インヒビンを記載している。
【0118】
Marchi et al., (Cancer 112, 1313-1324 (2008)(要約)は、肺ガン患者における脳転移の血清マーカーとしてのプロアポリポプロテインAIを記載している。
【0119】
方法
以下の一般的方法を用いて、胃の腫瘍に関連するマーカーの分子同定への種々のアプローチの適合性を評価した。
【0120】
腫瘍収集
胃の腫瘍試料及び非悪性の胃組織を、ソウル国立大学病院で切除した外科標本から収集した。胃ガンの診断は、症状、身体所見及び組織の組織学的検査に基づいてなされた。
【0121】
RNA抽出
いくつかの態様では、胃の腫瘍に関連する遺伝子の発現を、腫瘍から採取した試料中のRNAのレベルを決定することにより分析した。凍結した外科標本を、OCT培地中に包埋した。60μmの切片をミクロトームを用いて組織塊からスライスし、TriReagent:水(3:1)混合物中でホモジナイズし、次にクロロホルムで抽出した。次に全RNAを、RNeasy(登録商標)手順(Qiagen)を用いて水相から精製した。全体として、58個の胃腫瘍及び58個の非悪性(「正常」)胃組織試料からのRNAを抽出し、そして以下に記載したマイクロアレイ分析に使用した。RNAを、16個のガン細胞株からも抽出し、そしてリファレンスRNAとして用いるために集めた。
【0122】
マイクロアレイスライド調製
エポキシ被覆したガラススライドをMWG Biotech AG, Ebersberg, Germanyから得て、そして約30,000個の50merオリゴヌクレオチドを、Gene Machinesマイクロアレイロボットを用いて、製造業者のプロトコールに従って、プリントした。
【0123】
RNA標識及びハイブリダイゼーション
cDNAを、10μgの全RNAからSuperscript II逆転写酵素(Invitrogen)を用いて、5−(3−アミノアリル)−2’デオキシウリジン−5’−トリリン酸塩を含有する反応で転写させた。次に反応をMicroconカラム内で脱イオン化して、その後、Cy3又はCy5と共に重炭酸緩衝液中、1時間室温でインキュベーションした。取り込まれなかった染料をQiaquickカラム(Qiagen)を用いて除去し、そして試料をSpeedVac内で15μlに濃縮した。次にCy3及びCy5で標識したcDNAを、Ambion ULTRAhyb緩衝液と混合し、100℃で2分間変性し、そしてマイクロアレイスライドへ、42℃のハイブリダイゼーションチャンバー内で16時間かけてハイブリダイゼーションさせた。次にスライドを洗浄し、そしてAxon 4000Aスキャナーにおいて2つのパワー設定で2回スキャンし、遺伝子発現についての一次蛍光データを得た。
【0124】
正規化手順
腫瘍及び非ガン性組織におけるガン遺伝子の発現を測定するために、Genepix(登録商標)ソフトウェアにより検出した中央値の蛍光強度を、局所的バックグラウンドの蛍光強度を引き算して補正した。バックグラウンド補正したゼロ未満の強度を有するスポットは、排除した。正規化を容易にするため、強度比率及び全体的なスポット強度を、log変換した。log変換した強度比率を色素及び空間的バイアスについて、LOCFIT(登録商標)パッケージで実施した局所回帰を用いて補正した。log変換した強度比率を、全体のスポット強度及び位置に関して同時に回帰させた。局所回帰の残りは、補正したlog倍変化を提供した。質的なコントロールのため、それぞれ正規化したマイクロアレイの比率をスポット強度及び局在に関してプロットした。続いてプロットを、残存の可能性がある人工物について可視的に点検した。さらに、分散分析(ANOVA)モデルをピンチップバイアスの検出に適用した。正規化の全結果及びパラメータを、統計分析のためのPostgresデータベースに挿入した。
【0125】
マーカー選択
29,718個の遺伝子のそれぞれについてのマイクロアレイ遺伝子発現データを、腫瘍組織及び非悪性組織の両方における各々の遺伝子についての相対シグナル強度に従ってランクづけた。さらなる分析を、(i)分泌タンパク質をコードする遺伝子、(ii)既存の腫瘍マーカーCEAをコードする遺伝子(CEACAM5)について観察されるよりも高い強度ランクを腫瘍組織中において有する遺伝子、及び(iii)Unigeneデータベース(Wheeler DL et al 2003)におけるESTカウント数によって決定したところ、血液又は血管組織中において有意な発現を有さない遺伝子に限定した。分泌タンパク質は、N末端シグナルペプチドを含むことが予期される転写物を同定することによって予測された。最初の20のN末端アミノ酸中に存在しない予測された膜貫通へリックスを有するタンパク質[Krogh A. et al 2001]を廃棄した。さらなる細胞下局在を、TARGETP [Emanuelsson 0 et al 2000]を使用して予測した。
【0126】
分泌GTMの関連オリゴヌクレオチドについてのリファレンス番号(MWGオリゴ番号)、並びにNCBI mRNA及びタンパク質リファレンス配列を図1に示す。図1はまた、腫瘍組織及び非悪性組織の両方における選択されたGTMのランク強度を示す。本発明のGTMの完全DNA配列を本明細書において以下に示す。
【0127】
定量リアルタイムPCR
他の態様において、リアルタイム又は定量のPCR(qPCR)を、PCR鋳型コピー数の絶対又は相対の定量に用いることができる。MUC17のためのプライマーセット(Fwd: GAGGTGGTCAGCAGCATTGAC; Rev: CCTGGGAAGAGTGGTTTTTTAGC)を、Primer Express V 2.0TM (Applied Biosystems)を用いて設計し、そしてSYBR green標識を用いて増幅産物を検出した。ZG16は、Assay-on-Demand(登録商標)発現アッセイ Hs.00380609_ml (Applied Biosystems)によって表された。増幅を、ABI Prism(登録商標)7000配列検出システムで、標準的なサイクル条件下で実施した。
【0128】
アッセイを、単一のcDNAにより表される各RNA試料を有する2つの96ウェルプレートについて実施した。胃腫瘍及び非悪性胃組織の両方からの45個までのRNA試料を分析した。各プレートは、リファレンスcDNA標準曲線を、625倍濃度範囲を超えて、二つ組で含んだ。分析は、ΔCT(標的遺伝子CT−平均リファレンスcDNA CT)を計算することからなった。ΔCTは、陰性log2倍変化に対して直接比例する。次に、中央値の非悪性log2倍変化に相対するlog2倍変化を計算した(log2倍変化−中央値の正常なlog2倍変化)。次にこれらの倍変化を、頻度クラスに集めて、そしてグラフにした。
【0129】
タンパク質の発現及び抗体の作製
タンパク質レベルでZG16を検証するために、組換えタンパク質に対する新規抗体を作製することが必要であった。ZG16のコード領域17〜167を、フォワードプライマーCACCAATGCCATTCAGGCCAGGT及びリバースプライマーTCAGCATCTGCTGCAGCTAを使用してヒト細胞株cDNAからPCR増幅した。PCR産物をゲル精製し、そしてInvitrogenの「Gateway」エントリーベクター「pENTR/dTOPO」にクローニングし、その後、シークエンスして正しい挿入断片を確認した。その後、「Gateway」システムを使用して、ZG16を、pENTR/dTOPOから、N末端6×HISタグを含むInvitrogen発現ベクターpDEST17にクローニングした。ZG16の発現を、BL21-AI E.coli細胞(Invitrogen)中で行ない、細胞を、対数期の中間部(OD600=0.5)となるまで(細胞は0.2%の最終濃度のアラビノースで誘導される)振とう器で37℃で増殖させ、そして振とう器で37℃でさらに3時間増殖させた。細胞を6000×gで15分間の遠心分離にかけることによって収集し、そして上清を廃棄した。細胞をPBS(pH7.0)に再懸濁し、そしてSonics Vibra cellを60%のパワーで使用する超音波処理によって溶解した。溶解した細胞を、12000×gで10分間遠心分離にかけることによって清澄化し、そして上清を廃棄した。細胞ペレットを、0.5%Triton X-100を含むPBS(pH7.0)緩衝液中で3回洗浄し、その後、PBS(pH7.0)を用いて1回洗浄した。その後、ペレットを、PBS(p7.0)中8M尿素を使用して1回さらに洗浄した。各洗浄工程を、12000×gで遠心分離にかけることによって清澄化し、そして上清を廃棄した。その後、ペレットを、10mM TRIS(pH8.0)、8M尿素、100mM NaClを含む可溶化緩衝液中に一晩かけて室温で可溶化した。可溶化緩衝液を12000×gでさらに遠心分離にかけ、0.45nmのメンブレンを通してろ過し、そしてPBS(pH7.0)、8M尿素及び20mMイミダゾールを含む洗浄緩衝液を用いて予め洗浄したNiセファロースカラムにロードした。ロードした後、カラムを、10カラム容量の洗浄緩衝液で洗浄し、そして可溶化タンパク質を、500mMイミダゾールの補充された洗浄緩衝液で溶出した。溶出されたタンパク質を、PBS(pH7.0)及び8M尿素緩衝液中で脱塩し、そしてその後、50mM酢酸ナトリウム(pH4.5)、0.1M NDSB−201、10%グリセロール、1mM/0.1mM GSH/GSSHを含むリフォールディング緩衝液中への滴下しながらの希釈によってリフォールディングさせた。リフォールディング緩衝液を12000×gでの遠心分離によって清澄化し、そしてリフォールディングされたタンパク質を、名目上10KDa(Millipore)の分子カットオフを有するセントリプレップフィルターを使用して濃縮した。リフォールディングされたタンパク質を、G25脱塩カラムを使用して10%グリセロールの補充された100mM酢酸ナトリウム(pH5.0)を含む緩衝液中へと緩衝液交換し、そしてアリコートを−80℃で保存した。クーマシー染色された10%SDS PAGEゲル及びウェスタンブロット分析は共同で、95%までの純度の18KDaのHisタグのついたタンパク質の存在を示した。18KDaのクーマシー染色されたバンドを切り出し、そしてMALDI-TOF/TOF MS/MSによってZG16を含むことが同定された。
【0130】
ZG16に対する抗体は、精製されたZG16タンパク質を用いてファージディスプレイ抗体ライブラリーをパンニングすることによって得られた(Antibodies by Design; a division of Morphosys AG, Germany. www.morphosys.com)。
【0131】
抗体アレイ
抗体アレイを使用して、候補マーカーを検証した。血清試料を、胃ガン、結腸直腸ガン(手術前及び手術後)を有する患者から、及び非悪性疾病を有する手術患者から得た。試料は、ニュージーランドのダニーデン市立病院、及びChristchurch Cancer Society tissue bank(クライストチャーチ、ニュージーランド)によって入手できた。業者から、又はファージライブラリー(Morphosys)から選択されるのいずれかから得られた、ZG16及びMUC17に対する抗体を、GeneMachines OmniGrid 100アレイロボットを使用してスライドガラス(Schott NexterionスライドH)上にプリントした。各アレイを疎水性ペンで取り囲んだ。その後、スライドを、3×PBS−0.5%Tween20(3×PBS−T)中で洗浄し、その後、50mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)中の50mMエタノールアミン、その後、カゼイネート遮断緩衝液(3×PBS−T、1%カゼインナトリウム)を用いて遮断した。その後、ビオチン標識された血清試料をスライドに加え、その後、4℃で一晩かけてインキュベーションした。その後、スライドを3×PBS−T中で洗浄し、その後、風乾させた。その後、結合した抗体を、主に以前に記載されているように(Haab BB, Lizardi PM. RCA-enhanced protein detection arrays. Methods Mol Biol. 2006;328:15-29)、ローリングサークル増幅(RCA)を使用して検出した。簡単にいうと、スライドを、オリゴヌクレオチドプライマー(5' - CCT GGT GCT CAA ATT TCA GTT CTG C - 3')とコンジュゲートさせたおいた抗ビオチン抗体と共にインキュベーションした。その後、環状DNA鋳型を、加湿し封をしたチャンバー中で37℃で30分間かけてスライドにハイブリダイゼーションさせ、その後、スライドを、漸減する濃度のPBS−T(3×PBS−0.05%Tween20、1×PBS−0.05%Tween20及び0.1×PBS−0.05%Tween20)中で洗浄し、そして乾燥させた。その後、鋳型を30℃で3時間かけてphi29を使用して伸長し、その後、スライドを洗浄し、そして遠心分離によって乾燥させた。その後、増幅させた鋳型を、均一に蛍光標識されたプローブを使用して検出した。スライドをAxon 4000Aスキャナーを用いてスキャンし、そしてシグナルをGenePix Pro 6.1.0.4ソフトウェアを用いて測定した。
【0132】
Cy5蛍光強度を、limma(Smith, 2005)のRパッケージ(統計計算のためのRパッケージ)(R Development Core)からのnormalizeBetweenArrays関数を使用して、クォンタイル正規化を使用して調整した。クォンタイル正規化は、異なるブロックに由来する強度のクォンタイルを同じ値に設定することによって、強度の分布を各ブロックについて同じにするように(各ブロックは別々の試料に対応する)、強度の値を調整する。各強度値のランクはこの手順中に変化せず、強度の相対的な大きさだけが変化する。抗原の濃度範囲を記載する基礎をなす確率分布関数は全ての試料について同じであるという仮定である。この手順は、全ての試料についてのブロック間のシグナルの平均的な相関関係を向上させ、そしてまたリファレンスのみのブロックを考慮した場合においても向上させた(これはデータの品質の向上を示す)。Genepixでフラグをつけたスポットを取り出し、その後、リプリケート間の中央値を得て、各抗体についての正規化された強度を得た。
【0133】
従って、本発明者らは、胃ガンを検出及び評価するための試薬、装置及びキットを開発するために有用である、3つの遺伝子及び/又はタンパク質を同定した。1つ以上の胃ガンマーカーを、単独で又は組み合わせて使用して、胃ガンのための信頼性のある分子的検査を提供することができる。
【0134】
実施例
本明細書に記載する実施例は、本発明の態様を説明する目的にある。他の態様、分析方法及びタイプは、分子診断技術分野の通常の技術者の理解の範囲内にあり、そして本明細書に詳細に説明する必要はない。当技術分野の範囲内にある他の態様は、本発明の一部であると見なされる。
【0135】
実施例1:胃の悪性腫瘍のためのマーカーの同定
胃腫瘍試料及び非悪性試料から得られた遺伝子発現データを使用して、マーカーを選択した。マーカー選択のために以下の基準を使用した:(i)分泌タンパク質に特徴的なシグナル配列の存在、(ii)腫瘍組織におけるマイクロアレイシグナル強度ランキング、及び(iii)血液又は血管組織における対応するESTのレベル。これらの基準の使用は、腫瘍組織において豊富に発現されているが、血清、血液又は血漿中においては低いバックグラウンドを有する可能性がある、分泌マーカーの同定を可能とした。図1は、上記の基準を使用して選択した胃の悪性腫瘍についての3つのマーカー、MUC5AC、MUC17及びZG16を示す表を示す。図1は、遺伝子の記号(「記号」)、MWGオリゴ番号、NCBI mRNAリファレンス配列番号、タンパク質リファレンス配列番号、腫瘍組織を使用して得られたアレイ上の遺伝子のランク強度、及び非悪性組織を使用して得られたアレイ上の遺伝子のランク強度を含む。3つの全てのGTMが、CEACAM5(既存の胃ガンマーカーCEAをコードする遺伝子)よりも高い発現(強度)ランクを有していた。可能な最も低い発現ランクは29,718であった。また、ランキングの調査は、腫瘍組織におけるこれらのGTMの発現が非悪性組織と同等であることを示し、このことは、該遺伝子が、ガン発生中に強くダウンレギュレーションされなかったことを示す。血液及び血管組織における3つのGTMについてのUnigeneESTカウント数(Wheeler et al, 2003)は全てゼロであった。
【0136】
実施例2:qRT−PCR分析
腫瘍組織におけるGTMのZG16及びMUC17の量及び同一性を、より感受性が高くそして正確な遺伝子発現定量技術であるqPCRを使用して確認した。45個までの胃腫瘍試料及び同じ患者からの等数の非悪性胃組織試料を、方法の章で記載したプライマー及びプローブを使用してRT−qPCRによって分析した。これらの遺伝子の発現を、産物増幅の閾値レベル(Ct)に達するのに必要とされるPCRサイクル数を使用して定量した。
【0137】
qPCR分析はアレイデータを確認した:両方のマーカーが腫瘍組織においてqPCRによって容易に検出され、そして非悪性組織と比較した、腫瘍組織における発現の有意な減少の証拠はなかった。非悪性組織と比較した、腫瘍組織におけるこれらのRNAの量は、図2a〜bのヒストグラムによって示される。
【0138】
実施例3:血清中での胃腫瘍マーカータンパク質の検出
ある態様において、GTMタンパク質の検出は、完全タンパク質、該タンパク質(ペプチド)のフラグメント又はタンパク質コアのいずれかに対して作られる抗体を使用して達成され得る。タンパク質及びペプチドの発現を検出及び定量するための方法は当技術分野において公知であり、そしてタンパク質又はペプチドに対して生じる特異的抗体に依拠する方法を含み得る。モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を当技術分野において周知である方法を使用して作製することができ、そしてこれは本明細書においてさらに記載する必要はない。
【0139】
血清中のGTMを検出するために、GTMに対する抗体を、Gene Machine OmniGrid(登録商標)ロボットを使用してスライドガラスにプリントした。各抗体は、アレイ上に8回繰り返された。その後、33人の胃ガン患者及び41人の対照からの血清試料をビオチンで標識し、その後、抗体スライドと共にインキュベーションした。結合したタンパク質を抗ビオチン抗体を用いて検出し、そしてローリングサークル増幅(RCA)及び蛍光標識を使用してシグナルを増幅した。結合したタンパク質の量を、Axon 4000aスキャナー及びGenepix 6.1.0.4ソフトウェアを使用して定量した。患者の特徴を図2に示す。
【0140】
アレイ上の各抗体に由来する蛍光シグナルを正規化し、そして8個のリプリケートについてのシグナルの中央値を任意の蛍光単位で表現した。データの広がりを示す箱ひげ図を、図3に示す。MUC17についてのシグナルの中央値は、胃ガン患者については18,836AUであり、対照群については16,130であった。これらの中央値は有意差があった(p=0.007)。MorphoSysから得られた2つのファージディスプレイZG16抗体(5902及び5905)について中央値間の有意差が観察された。胃ガン患者試料におけるZG16_5902についてのシグナルの中央値は2139AUであり、これに対して対照では1837AUであり;患者におけるZG16_5905シグナルの中央値は3063AUであり、これに対して対照では1675AUであった。ZG16_5902及びZG16_5905の両方についての患者と対照との間のシグナルの中央値は有意差があった(それぞれp=0.05及びp=0.005)。
【0141】
このデータは、MUC17及びZG16が、対照よりも胃ガン患者の血清中において有意により高いレベルで存在することを実証する。患者と対照群との間のさらなる差異が、免疫学的検査手順の精密化、標的抗原に対してより高い特異性を有する抗体の同定、及びマーカーの組合せの使用によって達成されるだろう。
【0142】
実施例8:GTM含有ベクターを用いてトランスフェクションされた細胞
またさらなる態様において、GTM、GTMフラグメント又はペプチドマーカーを発現することのできる細胞を提供する。原核細胞及び真核細胞の両方をそのように使用することができる。例えば、成熟したグリコシル化を欠いた(特定のGTMが通常ではグリコシル化されている場合)大量のGTMを産生するために、E.coli(原核細胞)を使用することができる。COS細胞、293細胞及び多種多様な他の真核細胞を使用して、グリコシル化されているか、又は適切なフォールディングを有し、それ故、天然形のGTMタンパク質の3次元構造を有する、GTMを産生することができる。このような細胞をトランスフェクションするための方法は当技術分野において公知であり、そして本明細書においてさらに記載する必要はない。
【0143】
実施例9:キット
本発明の発見に基づき、検査キットのいくつかのタイプを作ってもよい。まずは、検出分子(又は「捕獲試薬」)のプレロードされた検出装置を有するようにキットを作製するとよい。GTM mRNAを検出するための態様では、このような装置は、検出するmRNAとハイブリダイゼーションする捕獲試薬としてのオリゴヌクレオチドを有する基材(例えばガラス、シリコン、石英、金属など)を含むとよい。いくつかの態様では、mRNAの直接検出を、基材上のオリゴヌクレオチドへmRNA(cy3、cy5、放射性標識又は他の標識で標識されている)をハイブリダイゼーションさせることにより成すとよい。他の態様では、mRNAの検出は、所望のmRNAに対する相補的DNA(cDNA)をまず作製することによって成すとよい。その後、標識したcDNAを、基材上のオリゴヌクレオチドにハイブリダイゼーションさせ、そして検出するとよい。
【0144】
使用する検出方法に関わらず、検査するGTM発現と、標準的な発現基準との比較が望ましい。例えば、RNA発現を、全細胞DNA、構成的に発現するRNA(例えばリボソームRNA)の発現に、又は他の相対的な一定のマーカーに標準化するとよい。
【0145】
抗体を捕獲試薬としてキットに使用することもできる。いくつかの態様では、基材(例えばマルチウェルプレート)は、そこへ付着した特異的なGTM捕獲試薬を有するとよい。いくつかの態様では、キットが、遮断試薬を含んで有していてもよい。遮断試薬を、非特異的な結合を低減するために用いるとよい。例えば、非特異的なオリゴヌクレオチドの結合は、サケ精子DNAなどの、GTMオリゴヌクレオチドを含まない、好都合ないずれかの供給源からの過剰なDNAを使用して低減することができる。非特異的な抗体結合は、血清アルブミンなどの過剰な遮断タンパク質を使用して低減してもよい。オリゴヌクレオチド及びタンパク質を検出するための多数の方法が、当技術分野では公知であり、そして特異的にGTM関連分子を検出することのできるいかなるストラテジーを用いてもよく、本発明の範囲内にあることが解されるであろう。
【0146】
抗体検出の際に頼る態様では、GTMタンパク質又はペプチドを、細胞ごとを基礎に、又は、全細胞、組織もしくは液体のタンパク質、液体容量、組織塊(重量)を基礎に発現させるとよい。さらに、血清中のGTMは、アルブミンなどの相対的に高く豊富な血清タンパク質を基礎に発現させるとよい。
【0147】
基材に加えて、検査キットは、捕獲試薬(プローブなど)、洗浄溶液(例えば、SSC、他の塩、緩衝液、界面活性剤など)だけでなく、検出部分(例えば、cy3、cy5、放射標識など)を含んでよい。キットは、使用のための説明書及びパッケージを含んでもよい。
【0148】
本発明をその特異的な態様を参照して記載したとはいえ、開示したマーカーの使用に関する他の態様を、本発明の範囲から逸脱することなく用いることができると、解されるであろう。
【0149】
工業的な適用可能性
GTMファミリーメンバーを検出する方法としては、マイクロアレイ及び/又はリアルタイムPCR法を用いた核酸検出、並びにタンパク質及びペプチドの検出が挙げられる。本発明の組成物及び方法は、診断装置及びキットの製造、疾病の診断、療法の効力の評価、並びに、生物試料中のGTMファミリーのメンバーの発現を測定するのに適切な試薬を製造するために有用である。
【0150】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)生物試料を提供すること;及び
(ii)該試料中のヒトチモーゲン顆粒タンパク質16(「ZG16」)のレベルを検出すること
を含む、胃ガンの検出方法。
【請求項2】
生物試料中のZG16の過剰発現が、ガンの指標である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1つ以上のさらなるGTMファミリーメンバーのレベルを検出することを含む、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
該方法がさらに、ムチン5AC(「MUC5AC」)及びムチン17(「MUC17」)からなる群より選択されるさらなるGTMファミリーメンバーのレベルを検出することを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
1つ以上のさらなるGTMファミリーメンバーが、MUC5AC、MUC17、ZG16、カルボキシペプチダーゼN、ポリペプチド2,83kDa鎖(「CPN2」)、マトリックスメタロプロテイナーゼ12(「MMP12」)、インヒビン(「INHBA」)、インシュリン様成長因子7(「IGFBP7」)、ガンマ−グルタミル加水分解酵素(「GGH」)、ロイシンプロリンに富んだプロテオグリカン(「LEPRE1」)、シスタチンS(「CST4」)、分泌フリズルド関連タンパク質4(「SFRP4」)、アスポリン(「ASPN」)、EFハンドドメイン1を有する細胞成長制御因子(「CGREF1」)、カリクレイン10(KLK10)、メタロプロテイナーゼ1の組織阻害剤(「TIMP1」)、酸性のシステインリッチな分泌タンパク質(「SPARC」)、13−誘導型形質転換成長因子(「TGFBI」)、EGF含有フィブリン様細胞外マトリックスタンパク質2(「EFEMP2」)、ルミカン(「LUM」)、スタニン(「SNN」)、分泌ホスホタンパク質1(「SPP1」)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン2(「CSPG2」)、N−アシルスフィンゴシンアミド加水分解酵素(「ASAH1」)、セリンプロテアーゼ11(「PRSS11」)、分泌フリズルド関連タンパク質2(「SFRP2」)、ホスホリパーゼA2、グループXIIB(「PLA2G12B」)、スポンディン2、細胞外マトリックスタンパク質(「SPON2」)、オルファクトメディン1(「OLFM1」)、トロンボスポンディン反復含有1(「TSRC1」)、トロンボスポンディン2(「THBS2」)、アドリカン、シスタチンSA(「CST2」)、シスタチンSN(「CST1」)、リシルオキシダーゼ様酵素2(「LOXL2」)、サイログロブリン(「TG」)、形質転換成長因子ベータ1(「TGFB1」)、セリン又はシステインプロテイナーゼ阻害剤クレードH、メンバー1(「SERPINH1」)、セリン又はシステインプロテイナーゼ阻害剤クレードB、メンバー5(「SERPINB5」)、マトリックスメタロプロテイナーゼ2(「MMP2」)、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケクシンタイプ5(「PCSK5」)、ヒアルロナン糖タンパク質連結タンパク質4(「HAPLN4」)、CA19−9、CA72−4、ペプシノーゲン及びCEAから選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
検査するGTMマーカーが、MUC5AC、MUC17、ZG16、シスタチンSN、セルピンH1及びセルピンB5を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記検出工程を、GTM mRNAのレベルを検出することにより実施する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記検出工程を、GTM cDNAのレベルを検出することにより実施する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記検出工程を、前記GMT cDNAの少なくとも部分に相補的なオリゴヌクレオチドを用いて実施する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記検出工程を、フォワードプライマー及びリバースプライマーを用いたqRT−PCR法を用いて実施する、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記検出工程を、GTMタンパク質のレベルを検出することにより実施する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記検出工程を、GTMペプチドのレベルを検出することにより実施する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記検出工程を、前記GTMに対する抗体を用いて実施する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記検出工程を、サンドウィッチタイプのイムノアッセイ法を用いて、又は抗体チップを用いて実施する、請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記抗体がポリクローナル抗血清である、請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
その上にGTM捕獲試薬を有する基材、及び
該基材に結合する検出器、ここで、該検出器は、該捕獲試薬と関連するGTMを検出することができる
を含む、GTMを検出するための装置、ここで、該GTMは、ヒトチモーゲン顆粒タンパク質16(「ZG16」)を含む。
【請求項18】
前記GTM捕獲試薬が、オリゴヌクレオチドである、請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記GTM捕獲試薬が、GTMオリゴヌクレオチド、GTMタンパク質又はGTMペプチドのいずれかに特異的な抗体である、請求項17記載の装置。
【請求項20】
その上にGTM捕獲試薬を有する基材;
前記GTM捕獲作用剤とGTMとの複合体を可視化する手段;
試薬;及び
使用のための説明書
を含む、ガン検出キット、ここで、前記GTMはヒトチモーゲン顆粒タンパク質16(「ZG16」)を含む。
【請求項21】
前記GTM捕獲試薬が、GTM特異的オリゴヌクレオチドである、請求項20記載のキット。
【請求項22】
前記GTM捕獲試薬が、GTMオリゴヌクレオチド、GTMタンパク質又はGTMペプチドに選択的なGTM特異的抗体である、請求項20記載のキット。
【請求項23】
胃ガンを有するリスクのある患者から検査試料を提供すること;
該検査試料中のGTMタンパク質の存在を測定すること;及び
該検査試料中のGTM存在量を、胃ガンを有さない被験者からの対照の試料から得た値と比較すること、ここで、前記GTMは、ヒトチモーゲン顆粒タンパク質16(「ZG16」)を含む
の工程を含む、胃ガンの検出方法。
【請求項24】
検査の被験者からの検査試料を提供すること;
前記検査試料中のGTMの存在を測定すること;及び
前記検査試料中のGTM存在量を、胃ガンを有さない被験者からの対照の試料から得た値と比較すること、ここで、前記GTMは、ヒトチモーゲン顆粒タンパク質16(「ZG16」)を含む
の工程を含む、胃ガンのスクリーニング方法。
【請求項25】
前記GTMが、GTMタンパク質又はペプチドである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記GTMが、GTMに特異的なオリゴヌクレオチドである、請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記オリゴヌクレオチドがDNAである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記オリゴヌクレオチドがRNAである、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記測定工程が、ELISAアッセイを用いる、請求項24〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記検査試料を血漿から得る、請求項24〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記検査試料を、組織、尿、胃液、血清及び大便から得る、請求項24〜30のいずれかに記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2012−526550(P2012−526550A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510771(P2012−510771)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【国際出願番号】PCT/NZ2010/000089
【国際公開番号】WO2010/131984
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(504350120)パシフィック エッジ バイオテクノロジー リミティド (9)
【Fターム(参考)】