説明

胃内バルーンの遠隔収縮

ヒト又は動物の患者の減量を促進するための胃内バルーンシステムは、患者の消化管への配置適し且つ流体を用いて膨張可能な柔軟なシェルを有する。前記システムは、前記シェルに連結されたバルブ機構と、前記シェルから流体を除去するように前記バルブ機構を開くためのアクチュエータと、外科的な介入を伴わずに体内で前記シェルを収縮させるために患者の体外から前記アクチュエータに信号を送信可能な遠隔制御装置と、を更に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥満の治療に使用される胃内バルーンを遠隔で収縮できるようにする装置と方法、特に、装置自体が胃の中にあるときに、移植された胃内バルーンを遠隔でしぼませることができる装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
胃内バルーンは、肥満治療の手段として技術的に公知である。その一例の膨張可能な胃内バルーンが、米国特許第5084061号に記載されており、the BioEnterics Intragastric Balloon System(「BIB(登録商標)」の商標で販売)として市販されている。これらの装置は、手術の準備で、又は食餌プログラム若しくは行動修正プログラムの一部として体重を落とす必要がある肥満の人のための治療を提供するように設計されている。
【0003】
前記BIBシステムは、例えば、胃に挿入され、例えば食塩水又は空気等の流体で満たされたシリコンエラストマーの胃内バルーンを有する。胃内バルーンは、胃を満たし食欲の抑制を促進することにより機能する。胃内バルーンの配置は、外科的でなく、通常は20〜30分しか要しない。作業は、外来で、典型的には局部的な麻酔および鎮静を使用して胃を見ながら行われる。配置は一時的であり、胃内バルーンは典型的には6ヶ月後に取り除かれる。
【0004】
この目的で利用されるほとんどの胃内バルーンは、空の状態または空気が抜かれた状態で胃に配置され、その後、適当な流体が(完全に又は部分的に)充填される。バルーンは、胃の中の空間を塞ぎ、これにより、食べ物に使用され得る場所が少なくなり、患者に満腹感が与えられる。これらの装置の臨床結果では、多くの患者にとって、食欲を抑制したり減量を成し遂げたりするのに胃内バルーンが大いに役立つことが示される。
【0005】
胃内バルーンは、典型的には一定時間移植され、通常は約6か月継続される。この時間は、患者の治療を変更して6か月より前にバルーンを除去したい担当医師によって短縮されるようにしてもよい。いずれにしても、胃の中にバルーンが外科的に配置された後のある時点で、胃からバルーンを取り除くことが望ましい。バルーンを除去する方法の一つは、バルーンを破裂させて、バルーンの内容物を吸引するか又は患者の胃の中へ流体が入ることを許容することである。バルーンから生理食塩水を除去するこの方法は、胃カメラを用いた外科的処置を必要とする。この方法によりバルーンが収縮すると、胃カメラを用いてバルーン自体が外科的に除去され得る。
【0006】
もう一つの方法として、バルーンが設計寿命を超えて留置されると、患者の胃の中に存在する酸が、バルーンが自ら収縮するくらいまでバルーンを浸食させることがある。こうなると、収縮したバルーンは、患者の消化器系を自然に通過して、腸を通って排出される。
【0007】
バルーンを収縮させるためにバルーンを元の位置で操作することが困難であることは、熟練した技術者であれば容易に理解するであろう。これは、バルーンが滑りやすく位置的に不安定であるためである。通常は球形または楕円形の胃内バルーンは、胃の中ですぐに回転しやすいため、執刀医が収縮バルブを見つけたり、手術器具を用いて安全にバルーンを破裂させたりするためにバルーンを操作することが困難である。
【0008】
そのため、特に体内からバルーンが取り除かれるときは、外科的介入を伴わずにバルーンを収縮させることが望ましくなりつつある。
【0009】
そこで、本発明は、従来のシステムの問題を解消することを目的とする。本発明のこれらの目的及びその他の目的を明らかにすべく以下の詳細な説明においてさらに開示する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、ヒト又は動物の患者の減量を促進するための低侵襲的または非侵襲的なシステム及び方法を提供することにより、上述の問題に対処する。本発明は、医師が、リモコン装置により供給される単純な作動信号を用いることにより、胃などの患者の消化管に移植すなわち配置された胃内バルーンを遠隔で収縮できるようにした遠隔収縮可能な胃内バルーンシステムを提供する。
【0011】
本発明の広い形態において、システムは、減量を促進するために提供されるものであり、患者の胃の中に配置される膨張可能な胃内バルーンと、患者の体内からバルーンを取り出したいときにバルーンを収縮させるための遠隔作動可能なバルブ機構と、を有する。
【0012】
前記バルブ機構は、加熱されたときにバルブが有効に開くように変形または溶解する、溶解可能なろう栓等の熱変形要素を有してもよい。医師により体外の遠隔制御部から送られた作動信号を受信すると、バルブアッセンブリ内に収容された電子機器は、前記バルブ機構内に収容された加熱要素の温度により、前記ろう栓を溶解させる。該ろう栓が溶解し、これによりバルーンのバルブが開くと、胃の通常の動作により、バルーン内に収容された流体がバルーンから排出され、これによりバルーンが収縮する。その後、患者の体からバルーンが排出される。
【0013】
別の実施形態において、本発明の装置は、所定位置に栓を保持する形状記憶要素ばねを有する遠隔収縮バルブを有し、これにより、胃内バルーンのバルブが塞がれる。前記形状記憶要素ばねは、遠隔で誘導により加熱されるようにしてもよく、あるいは、前記収縮機構は、前記ばねを加熱する電子機器を有してもよい。前記ばねが加熱により変形すると、該ばねは前記栓を除去し、これにより、バルーンのシールが解除される。その後、バルーン内に収容された流体は、バルーンの外へ自由に流れることができ、これにより、バルーンが収縮する。その後、収縮したバルーンが患者の体から安全に排出される。
【0014】
本発明の更に別の実施形態によれば、前記胃内バルーンは、形状記憶要素アクチュエータと、ばね環状部と、該ばね環状部を所定位置に保持する障害物と、スリットバルブとを備えた遠隔収縮機構を有する。先に開示した他の実施形態と同様、形状記憶要素は、遠隔で誘導により加熱されるようにしてもよく、あるいは、前記収縮機構内に収容された電子機器および加熱要素を有するようにしてもよい。前記収縮機構が作動すると、前記アクチュエータが前記障害物を前記バルブの外へ押し出し、これにより、前記ばね環状を収縮させることができる。前記ばね環状部が収縮すると、前記スリットバルブが開き、バルーン内に収容された流体がバルーンの外へ流れ出ることができ、排出可能となる。その後、患者の体から収縮したバルーンが排出される。
【0015】
本発明の別の好ましい実施形態では、前記遠隔収縮機構に、形状記憶要素「切断ワイヤ」が用いられる。本実施形態では、遠隔収縮バルブ内に収容された形状記憶合金ワイヤが加熱されると、該ワイヤが変形し、これにより該ワイヤが前記バルブを塞ぐろう(又は、樹脂もしくはポリマー等の他の適切な材料)からなる栓を切断する。該ろう栓が前記バルブから切除されると、前記バルブを通って流体が自由に流れることができ、これにより、バルーンが空になり体外へ排出される。
【0016】
本発明の更に別の好ましい実施形態では、胃内バルーンの前記遠隔収縮機構は、前記バルブを囲むワイヤを有する。該ワイヤは、前記バルブと前記バルーンとの接合を破断するために使用される。バルーンとバルブとの接合が破断されると、バルブはバルーンから分離し、流体がバルーンの外へ自由に流れる。この好ましい実施形態は、機器が2つの部分に分離するため、バルーンとバルブアッセンブリとが分離して体内を通過するという追加的な効果を有し、これにより、通過が更に容易になる。本発明のこれらの実施形態および他の種々の実施形態、並びにその利点については、以下において更に詳細に説明する。
【0017】
別の実施形態において、前記バルブは、シールを形成するための前記シェルの環状開口部等の、シェルの開口部内にフィットする略円筒形または他の形状(例えば大きな錠剤形状)のカプセル等のカプセルに収容しても良い。該開口部は、環状部の大きさ及び/又は形状をほぼ維持するばね又は他の同様の機構などの弾性要素を有してもよい。前記バルブ機構が作動すると、弾性要素が解放され、これにより、環状部が開き、バルーンからカプセルが取り出され、これにより2つの要素に分離されて、患者の胃腸を容易に通過できる。あるいは、環状開口部は加熱要素を有してもよく、該加熱要素は、前記遠隔収縮機構が作動するときにカプセルと環状部との接合を破断させ、これにより、前記シェルからカプセルが取り出される。あるいはまた、前記カプセルは、例えばねじりばね等、ばね等の弾性要素を収容してもよく、該ばねは、前記シェルの前記開口部内の所定位置に前記カプセルを保持することで、前記カプセルの形状および/または大きさを維持する。前記遠隔収縮機構が作動すると、前記ねじりばねはつぶれたり他の態様で変形したりして、前記接合が破断し、前記カプセルが前記シェルから取り出される。
【0018】
本明細書に記載した特徴、および複数の特徴の組み合わせは、それらの組み合わせに含まれる特徴が互いに矛盾しなければ、本発明の範囲内に含まれる。
【0019】
これらの及び他の本発明の特徴、実施形態及び効果は、特に、後述の請求項、詳細な説明、および、同様の部分を同様の参照符号で示す図面と併せて考慮することで、以下において明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の胃内バルーンを示す側面図である。
【図2a】本発明の一実施形態に係る遠隔収縮バルブを示す断面図であり、該バルブが「閉じた」位置にある状態を示す図である。
【図2b】図2aの遠隔収縮バルブが「開いた」位置にある状態を示す断面図である。
【図3a】本発明の別の実施形態に係る遠隔収縮バルブを示す断面図であり、該バルブが「閉じた」位置にある状態を示す図である。
【図3b】図3aの遠隔収縮バルブが「開いた」位置にある状態を示す断面図である。
【図4a】本発明の更に別の実施形態に係る遠隔収縮バルブを示す断面図であり、該バルブが「閉じた」位置にある状態を示す図である。
【図4b】図4aの遠隔収縮バルブが「開いた」位置にある状態を示す断面図である。
【図5a】図4aの遠隔収縮バルブが「閉じた」位置にある状態を示す側面図である。
【図5b】図4bの遠隔収縮バルブが「開いた」位置にある状態を示す側面図である。
【図6a】本発明の更に別の実施形態に係る遠隔収縮バルブを示す断面図であり、該バルブが「閉じた」位置にある状態を示す図である。
【図6b】図6aの遠隔収縮バルブが「開いた」位置にある状態を示す断面図である。
【図7a】図6a及び図6bの遠隔収縮バルブのワイヤ切断機構の一実施形態を示す平面図である。
【図7b】図6a及び図6bの遠隔収縮バルブのワイヤ切断機構の一実施形態を示す平面図である。
【図7c】図6a及び図6bの遠隔収縮バルブのワイヤ切断機構の別の実施形態を示す平面図である。
【図7d】図6a及び図6bの遠隔収縮バルブのワイヤ切断機構の別の実施形態を示す平面図である。
【図8a】バルブの周囲に収縮機構を備えた本発明の胃内バルーンを示す側面図であり、収縮機構が作動する前の状態を示す図である。
【図8b】収縮機構が作動した後の図8aの胃内バルーンを示す側面図である。
【図9】本発明に係る遠隔収縮バルブを作動させるためのリモコン装置を示す正面図である。
【図10a】本発明の更に別の実施形態に係る遠隔収縮胃内バルーンを示す断面図であり、該バルーンが「閉じた」位置にある状態を示す図である。
【図10b】図10aの遠隔収縮胃内バルーンが「開いた」位置にある状態を示す断面図である。
【図11】本発明の更に別の実施形態に係る遠隔収縮胃内バルーンを示す断面図であり、該バルーンが「閉じた」位置にある状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、遠隔で収縮可能な胃内バルーンと、例えば、遠隔で且つ外科的介入を伴わずに胃内バルーンを収縮させる方法とに関する。
【0022】
図1を参照すると、本発明に係る胃内バルーンは、符号10で全体的に示されている。胃内バルーン10は、概して、シェル12と、該シェル12に連結された遠隔作動可能なバルブ機構16とを有する。一時的に図9も参照すると、典型的な実施形態において、胃内バルーン10は、本発明に係る遠隔で収縮可能な胃内バルーンシステムの構成要素であり、該システムは、概して、胃内バルーン10と、リモコン装置100とを有する。以下にさらに説明するように、リモコン装置100とバルブ機構16とは、シェル12の遠隔収縮をもたらしたり、少なくとも開始したり促進したりするのに使われ、バルーン10は、患者の胃または消化管の別の部分に配置される。
【0023】
バルーン10は、例えばヒト又は動物の患者の胃の中等、患者の消化経路に配置されるのに適した大きさ、形状および他の構成を有する。シェル12は、例えば液体や気体等の流体で膨らむことが可能であり、これにより、バルーン10は胃の中のスペースを支障なく塞ぐことができる。シェル12は、例えば、ヒト又は動物の消化管に配置されるのに適した柔軟または拡張可能な生体適合性材料等、任意の適切な材料で構成することができる。
【0024】
移植中において、膨らんでいない状態のバルーン10は、所望の位置において胃の中に配置される。バルーン10が位置合わせされると、例えばバルブ16又は別の充填バルブ14を用いてバルーン10が膨らまされる。本明細書で参照することで援用される、同一出願人による「2方向スリットバルブ」と題された国際出願番号 PCT US03/19414の明細書に開示されているように、バルーン10を膨らませるためのいくつかの異なる方法があることは当業者に理解される。
【0025】
患者の体からバルーン10を取り出すことが望ましくなると、バルーン10は、通常は収縮される必要があり、例えば、シェル12から流体を出して空にするか又は少なくとも流体の一部をシェル12から出す必要がある。好ましくは、収縮した胃内バルーン10を除去するのに医師の介入を必要とせず、胃内バルーン10が消化器系を通過して患者の体から排出されるように本発明は考案されている。あるいは、胃の中を見るための低侵襲的手段を用いて収縮されたバルーン10を取り除くようにしてもよい。
【0026】
図2a及び図2bは、本発明の一実施形態に係る遠隔作動可能なバルブ機構16を示している。バルブ機構16は、チャンネル部20を有するハウジング18と、例えばろう状物質又は他の好適な材料からなる熱変形可能な栓30等の、チャンネル部20内でシールされた変形可能要素とを有する。図示された実施形態において、チャンネル部20は、栓30が配置されるネック部21と、前記シェル(図2a及び図2bにおいて不図示)の内部に流体連絡する毛管35とを有する。栓30は、好ましくはパラフィン等の好適な医療グレードのろう状物質で形成され、あるいは、低温溶融ポリマーで形成されるようにしてもよい。
【0027】
バルブ16は、栓30に接触するか、又は少なくとも栓30との間で熱伝導可能な1または複数の加熱要素31を備えたアクチュエータ28を有する。
【0028】
典型的な実施形態において、アクチュエータ28は更に、制御部/受信機、例えばマイクロ電子信号受信機32と電源33を備えている。受信機32は、リモコン装置(図9)から送信される信号を受信可能であり且つ加熱要素31を活性化させるアンテナ及び/又は別の適切な電子機器を有する。リモコン装置100とアクチュエータ28とは、リモコン装置から患者の組織を経由して、移植されたバルーン10へ支障なく送ることができる電波、音波または他の電磁信号送受信手段によって作動するように構成してもよい。電源33は、バッテリ、コンデンサ、誘導コイル、コンデンサに蓄えられた体動による運動エネルギーの創造物、燃料電池、体の化学的性質により電力供給された電源、又は、温度変化により電力供給された電源で構成することができる。いくつかの実施形態において、アクチュエータ28は、離れた電源、例えば、外部電源から、体内にあるか又は移植された導電コイルへの電磁結合などにより電力供給されるように構成される。
【0029】
使用中において、医師が、移植されたバルーン10を収縮させたいとき、患者は外来診療の診療所に連れて行かれるようにしてもよい。バルブ16を始動させ、シェル12から流体を出し始めるために、医師は、受信機32へ起動信号を送るためのリモコン装置100(図9)を使用する。例えば、医師は、患者の胃すなわち腹部の近くにリモコン装置100を持つ。リモコン装置100のボタン101を押すと、アクチュエータ28が、栓30を融解または別の態様で変形させることにより栓30とチャンネル部20との間のシールを解放または破断させる加熱要素31を活性化させることにより、シェル12が収縮する。前記シールが破断すると、シェル12内の流体は、バルブ機構16のチャンネル部20を通してバルーン10から排出され始める。シェル12から流体が除去されると、加熱要素31は冷却される。例えば胃壁の収縮などの通常の体の動きを通して、開封されたバルーン10から流体の大部分または全部が抜かれ、シェル12は、患者の消化管を通過可能な大きさまで縮小する。電子機器、加熱要素、及び電源(電源が設けられる場合)は、これらの構成要素も患者に危険を及ぼすことなく容易に通過するようなバルブ機構の構造により安全に収容されている。
【0030】
この実施形態において、栓30の変形または融解は、栓30のシール面の温度上昇によって生じる。栓30は、胃の中の通常の温度を僅かに超える温度の熱にさらされているときに融解または変形し始める材料からなる。例えば、前記バルブを意図的に作動されるまで塞がれたまま、すなわち閉じられたままにするために、栓30は、胃の中の通常の体温よりも1度以上高い融点を有するパラフィンろうで構成することができる。
【0031】
栓30とチャンネル部20との間のシールが破断されると、栓30は胃へ放出される。いくつかの実施形態において、バルブ機構30はさらに、融解した栓の材料を集めるのに効果的な機構または構造を有してもよい。例えば、バルブ機構16は、例えばチャンネル部20内に配置された1又は複数の芯材の表面34で構成することができる。芯材の表面34は、栓の材料を集めるのに適した材料で構成し、且つ/又は、単に曲線状の収集容器であってもよい。芯材の表面34上で栓の材料を収集することにより、融解した材料がチャンネル部20を塞ぐことを回避しやすくなる。
【0032】
本発明の任意の形態では、加熱要素31を作動させる機能の実行に加えて、バルブ機構16は、バルブ機構16が作動したこと又はバルーン10の収縮が開始されたことを確認するための、例えば確認信号等の信号をリモコン装置100に送ることができる電子機器を有してもよい。確認信号を受信すると、医師および/または患者は、バルーン10の通過の位置又は進行を探知することができる。
【0033】
図3a及び図3bは、本発明の別の形態に係る遠隔作動バルブ機構116を示す。より具体的に、図3aは、閉じた、すなわち塞がれた位置のバルブを示し、図3bは、開かれた、すなわち塞がれていない位置のバルブを示す。遠隔作動バルブ機構116は、本明細書の別の場所で記載された遠隔作動バルブ機構16と実質的に同じ目的を有するが、いくらか異なって作用する。
【0034】
バルブ機構116は、概して、例えば、ばね41、及びばね41に連結された栓42などの熱変形要素を備えている。バルブ機構116が閉じた状態において、栓42の拡大部がチャンネル部46の領域45(図3bにおいてより明確に示される領域45)に位置し、流体の流れに対して毛管43をシールする、すなわち塞ぐように、ばね41は、図3aに示す閉じた位置に栓42を維持する。
【0035】
ばね41は、例えば、ニチノール又は他の適切な材料等の形状記憶合金等の、形状記憶材料からなる。例えば、リモコン装置100(図9)及び加熱要素(図3a及び図3bにおいて不図示)を用いて本明細書の別の場所で記載されている態様により、ばね41に熱を加えると、ばね41は、収縮等の変形をし、塞がれた位置(図3a)から、例えば図3bに示される、開かれた、塞がれていない位置へ栓42を移動させ、解放する。栓42が塞がれていない位置にあるとき、栓42の拡大部は、チャンネル部46の保持領域44に保持され、チャンネル部46の領域45が開いて、バルーン10内の流体が毛管43を通ってバルブ機構116の外へ流れ出ることができる。
【0036】
栓に形状記憶ばねを恒久的に固定することに代えて、ろう又は他の同様の生分解性材料からなる栓にばねを取り外し可能に固定してもよい。この方法において、ばねが加熱されて変形すると、生分解性の栓を胃の中へ追い出すのに役立ち、これにより、バルーンを空にすることができる。その後、収縮された胃内バルーンを体の外へ出すことができる。
【0037】
図4a、図4b、図5a及び図5bは、本発明の別の実施形態に係る遠隔作動バルブ機構216を示す。遠隔作動バルブ機構216は、本明細書の別の場所に記載した遠隔作動バルブ機構16と実質的に同じ目的を有するが、いくらか異なって作用する。より具体的には、バルブ機構がスリットバルブで構成されている。例えば、バルブ機構216は、本明細書により援用される、2005年1月27日に公開された国際公開公報WO2005/007231に開示された装置の多くの特徴を有してもよい。
【0038】
図4a及び図4bは、閉じた位置と開いた位置のそれぞれにおけるバルブ機構216の断面図を示し、図5a及び図5bは、閉じた位置と開いた位置のそれぞれにおける別の側方から見た同じバルブ機構の側面図を示す。バルブ機構216は、概して、ディビジョンすなわちスリット63と、例えば、形状記憶要素が変形すなわち収縮したときにスリットを開く、すなわち拡大させるように構成または配置された形状記憶要素等のアクチュエータと、を有するエラストマーバルブ体60で構成されている。より具体的に、形状記憶要素は、環状であり、例えば、バルブ体60の周囲に少なくとも部分的に配置された環状ばね64である。いくつかの実施形態において、バルブ機構216は、末端開口部61に位置し、且つ、閉じた位置にあるときにバルブ機構216の強固な閉塞を提供する障害物62を、随意的に有してもよい。
【0039】
本明細書の別の場所に記載したように加熱すると、環状ばね64は収縮して、エラストマーバルブ体60を圧縮し、これにより、チャンネル部65と末端開口部61との間で流体連絡するようにスリットが拡大、すなわち開く。末端開口部を塞ぐ障害物62を有する実施形態では、環状ばね64が収縮すると、障害物62は排出されるか、又は別の態様で開口部61から外れる。
【0040】
本実施形態の別の構成は、スリットの軸上または該軸に沿ってハウジング上の2箇所でスリットバルブを収縮させるように配置および形成された環状部材または他の圧縮要素を有する。これにより、圧縮要素は、バルーンからの流体の排出を許容する流体通路をスリットが開いて作り出し難くすることができる。圧縮要素は、収縮したときにバルブを圧縮して、例えば楕円の短軸に沿って開き難くするように作動する楕円形の環状部材または他の構成であってもよい。
【0041】
バルブ機構216が開いた位置(図4b)にあるとき、バルーン(図示せず)内の流体は、チャンネル部65を通ってバルブ機構216の開口部66(図4b)から外へ流れ出て、これによりバルーンが収縮する。収縮した胃内バルーンは、その後、体外へ排出される。
【0042】
図6a及び図6bは、本発明の別の実施形態に係る遠隔作動バルブ316の内部断面図を示す。遠隔作動バルブ機構316は、本明細書の別の場所に記載した遠隔作動バルブ機構16と実質的に同じ目的を有するが、いくらか異なって作用する。
【0043】
バルブ機構316は、概して、切断機構81と、切断可能なシール栓82と、シール栓82を部分的に通って延びる毛管83とを有する。切断機構81は、シール栓82を切断可能なワイヤ84を有する。ワイヤ84は、本明細書の別の場所で記載したような形状記憶合金で構成することができる。
【0044】
例えば、本明細書の別の場所で記載したような加熱要素85により、ワイヤ84に熱が加えられると、ワイヤ84は変形し、これにより、ワイヤ84がシール栓82を切断し、流体の流れに対して毛管83を開く。
【0045】
例えば、図7aは、加熱前の切断機構81を示し、このとき、ワイヤ84は、切断可能なシール栓82の近傍に屈曲部が位置するようにL字状に屈曲している。
【0046】
本実施形態において、切断機構81はリモコン装置100(図9)から受信する信号により作動し、これにより、ワイヤ84の温度が上昇する。温度が上昇すると、ワイヤ84は、図7bに示すように、シール栓82を切るように変形する。
【0047】
あるいは、形状記憶ワイヤ84は、図7cに示すように切断可能なシール栓82を取り巻くループ形状に配置されるようにしてもよい。該ワイヤ84が加熱されると、該ワイヤは、より小径のループを有する図7dに示す形状となるように変形し、これにより、切断可能なシール栓82を切断する。
【0048】
図8a及び図8bは、本発明の別の好ましい実施形態に係る遠隔作動バルブ機構を含む胃内バルーンを示す。胃内バルーン90は、概して、シェル97と、バルブ91と、バルブとバルーンの接合部92と、加熱要素93と、ワイヤ94と、マイクロ電子制御部95と、電源96とを有する。
【0049】
図8a及び図8bに示す本発明の実施形態は、バルブ91をバルーン90の残りの部分から分離するために遠隔作動を利用する。
【0050】
より具体的に、バルーン90を収縮させるために、医師は、例えばリモコン装置100(図9)を用いて、マイクロ電子制御部95へ作動信号を送る。
【0051】
マイクロ電子制御部95は、リモコン装置100からの作動信号を受信するための受信機またはアンテナ(図示せず)を有する。作動信号を受信すると、マイクロ電子制御部は、加熱要素93の温度を上昇させ始めるために電源96からの電力を使用する。加熱要素を有する上述の実施形態と同様、加熱要素93には、ニクロム、ステンレス鋼、銅、金または同様の別の材料などといった材料を利用する金属フィルム加熱要素を利用することができる。加熱要素93の温度が上昇し始めると、ワイヤ94の温度も上昇する。該ワイヤの温度が上昇すると、バルブとバルーンの接合部92の接合力が弱まり、その結果、バルブ91がシェル97から分離する。
【0052】
バルブとバルーンの接合部92の接合が破断し、バルブがシェルから分離すると、バルーン内に収容された流体は、前記2つの部分の分離により形成される開口部98(図8b)を通って流れる。胃壁の通常の動作と収縮を通して、バルーンは内部の流体を排出し、ヒトの体を通過可能な大きさまで縮小する。電子機器、加熱要素および電源は、患者に如何なる危険も及ぼさないようなバルブ構造の内部に安全に収容されている。胃内バルーンは2つの要素、すなわち、空のシェルと内蔵型のバルブアッセンブリとに分離するため、バルーンとバルブの通過が容易となる。
【0053】
前述の実施形態と同様に、加熱要素の制御機能の実行に加えて、マイクロ電子制御部95は、収縮機構が作動したことを確認するためにリモコン装置100と通信するようにしてもよい。確認信号を受信すると、医師と患者は、機器の通過の進行を探知することができる。
【0054】
図10a及び図10bは、本発明の別の好ましい実施形態に係る遠隔収縮機構を備えた胃内バルーンを示す。胃内バルーン109は、シェル110とバルブカプセル111とを備えている。バルブカプセル111は、バルブ112と、記憶形状ねじりばね113と、一体化されたマイクロ電子制御部および電源115とを備えている。図10aはまた、胃内バルーン109の容積を調整するための調整ツール121を示している。
【0055】
図10a及び図10に示す本発明の実施形態は、胃内バルーンのバルブを開く遠隔収縮機構を利用するのではなく、バルブカプセル全体をバルーンの残りの部分から分離する収縮機構を利用する。膨らんでいるとき、バルブカプセル111は、形状記憶ねじりばね113により与えられた圧力によりバルーン環状部114内にしっかりと保持され、これにより、バルブカプセルとバルーン環状部との間がシールされる。
【0056】
上述の種々の方法と同様に、医師がバルーンを収縮させたいとき、患者は外来診療の診療所に連れて行かれるようにしてもよい。胃内バルーン109を収縮させるために、医師は、リモコン装置100(図9)を用いて遠隔かつ体の外側からバルブ開放機構を作動させる。医師は、患者の胃の近くでリモコン装置100を持ち、ボタンを押すと、リモコン装置100は、一体化されたマイクロ電子制御部および電源115に作動信号を送信する。
【0057】
一体化されたマイクロ電子制御部および電源115は、リモコン装置100からの作動信号を受信するためのアンテナ(図示せず)を有する。作動信号を受信すると、一体化されたマイクロ電子制御部および電源は、ねじりばね113に連結された加熱要素(図示せず)の温度を上昇させ始めるために電力を利用する。加熱要素を用いる上述の実施形態と同様、加熱要素には、ニクロム、ステンレス鋼、銅、金、又は別の同様の材料などといった材料を利用した金属フィルム加熱要素を利用することができる。加熱要素の温度が上昇し始めると、形状記憶ねじりばね113の温度も上昇し始め、これにより、ばねが変形して径が小さくなる。その径が小さくなると、バルブカプセル111とバルーン環状部114との間のシールが破断する。
【0058】
バルーン環状部114とバルブカプセル111との間のシールが破断してバルブカプセルがシェルから分離すると、バルーン内に収容された流体は、前記2つの部分の分離により形成される開口部116(図10b)を通って自由に流れる。胃壁の通常の動作と収縮を通して、バルーンは内部に収容された流体を排出し、ヒトの体を通過可能な大きさまで縮小する。一体化されたマイクロ電子制御部および電源115と、加熱要素とは、患者に危険を及ぼさないようにバルブカプセル内に安全に収容されている。胃内バルーン全体は2つの要素、すなわち、空のシェルと内蔵型のバルブカプセルとに分離されるため、バルーンとバルブの通過が容易となる。
【0059】
前述の実施形態と同様、加熱要素の制御機能の実行に加えて、一体化されたマイクロ電子制御部および電源115は、収縮機構が作動したことを確認するためにリモコン装置100と通信するようにしてもよい。確認信号を受信すると、医師と患者は、機器の通過の進行を探知できる。
【0060】
図11は、本発明の別の好ましい実施形態に係る遠隔収縮機構を備えた胃内バルーンを示す。胃内バルーン129は、シェル130と、バルブカプセル131とを備える。バルブカプセル131は、バルブ132と、一体化されたマイクロ電子制御部および電源135とを備える。シェル130は、環状部136と、加熱要素137と、形状記憶切断要素138とを備える。図11はまた、胃内バルーン129の容積を調整するための調整ツール141を示す。
【0061】
前述の他のいくつかの実施形態と同様、胃内バルーンのバルブを開く遠隔収縮機構を利用するのではなく、図11に示す本発明の実施形態は、バルブカプセル全体をバルーンの残りの部分から分離する収縮機構を利用する。膨らんでいるとき、バルブカプセル131は、形状記憶要素138により与えられる圧力によりバルーン環状部にしっかりと保持され、これにより、バルブカプセルとバルーン環状部との間にシールが形成される。
【0062】
前述の種々の方法と同様、医師がバルーンを収縮させたいとき、患者は外来診療の診療所に連れて行かれるようにしてもよい。胃内バルーン129を収縮させるために、医師は、リモコン装置100(図9)を用いて遠隔で且つ体の外側からバルブ開放機構を作動する。医師は、患者の胃の近くでリモコン装置100を持ち、ボタンを押すと、リモコン装置100は、一体化されたマイクロ電子制御部および電源135に作動信号を送信する。
【0063】
一体化されたマイクロ電子制御部および電源135は、リモコン装置100からの作動信号を受信するためのアンテナ(図示せず)を有する。作動信号を受信すると、一体化されたマイクロ電子制御部および電源は、形状記憶切断要素138に連結された加熱要素137の温度を上昇させ始めるために電力を利用する。加熱要素を用いる上述の実施形態と同様、加熱要素には、ニクロム、ステンレス鋼、銅、金、又は別の同様の材料などといった材料を利用する金属フィルム加熱要素を用いることができる。加熱要素の温度が上昇し始めると、形状記憶切断要素138の温度も上昇し始め、これにより、切断要素がバルーン環状部136を切断する。バルーン環状部136が完全に切断されると、バルブカプセル131とバルーン環状部136との間のシールが破断される。
【0064】
バルーン環状部136とバルブカプセル131との間のシールが破断して、バルブカプセルがシェルから分離すると、バルーン内に収容された流体が、前記2つの部分の分離により形成された開口部を通って自由に流れる。胃壁の通常の動作と収縮を通して、バルーンは、内部に収容した流体を排出し、ヒトの体を通過可能な大きさまで縮小する。一体化されたマイクロ電子制御部および電源と、加熱要素とは、患者に危険を及ぼさないようにバルブカプセル内に安全に収容されている。胃内バルーン全体は、2つの要素、すなわち、空のシェルと内蔵型のバルブカプセルとに分離されるため、バルーン及びバルブの通過が容易となっている。本明細書に記載した切断機構に代えて、遠隔収縮機構は、バルーン収縮機構が始動するまで所定位置にバルブカプセルを保持する環状部の内部に収容された(ねじりばね等の)機械的システムを備えてもよい。
【0065】
前述の実施形態と同様、加熱要素の制御機能の実行に加えて、一体化されたマイクロ電子制御部および電源135は、収縮機構が作動したことを確認するためにリモコン装置100と通信するようにしてもよい。確認信号を受信すると、医師と患者は、機器の通過の進行を探知できる。
【0066】
本発明の機器が容易に通過することを確実にするために、本発明の胃内バルーンは、薄くて耐酸性に優れたシェル材料で構成してもよい。さらに、胃内バルーンは、円滑に腸を通過するために弾丸型につぶれるような形状を有してもよい。この形状は、膨らんでいるときに略球状または楕円体形状に膨らみ、且つ、遠隔収縮機構が始動するときに小さくつぶれた形状に収縮するように、シェルを予め折り畳んでおくことにより形成できる。
【0067】
遠隔制御部は、液晶ディスプレイ、及び/又は、同様のタイプのディスプレイ、及び、機器を操作するための例えばキーボード又はタッチパネル等のコントロールパネルを特徴づける手持ち式のコントロールユニットであってもよい。遠隔制御部は、例えば胃内バルーンの大きさ、患者の名前、移植する医師、及び、移植された日付等の重要な情報を電子機器に記憶させるように操作者がプログラム(すなわち読み込みと決定)できるようにする一式のメニューを特徴づけるようにしてもよい。遠隔制御部は、電波を通した遠隔測定によりセンサと通信するようにしてもよい。いくつかの実施形態では、FDA(食品医薬品局)の通信の周波数帯および世界的に認識された通信の周波数帯(WMTS 402〜405MHz)が使用され、前記遠隔制御ではなく別の制御機構によって前記機器に偶然アクセスできたり制御できたりしないようにするために、認証のプロセス(例えば、デジタルハンドシェイク信号、PIN認証、又は他の同様の認証プロセス)を使用してもよい。遠隔制御信号は、患者から1フィート、又は可能であれば更に遠くから送られるようにしてもよく、典型的には、センサを確認したり、センサのパラメータを変更したりするために患者の脱衣を要求しない。遠隔制御部は、好ましくは、胃内バルーン内に収容された電子機器に対して情報の読み書きを行うことができる。遠隔制御部は、また、権限のない物が前記機器に問い合わせを行うことを防止するためにパスワードが制御されるようにしてもよい。映像と音声の出力を有する遠隔制御部のディスプレイは、典型的には、遠隔収縮バルブの状態について検知されたパラメータ、又は、「開」、「閉」、若しくは遠隔制御部がモニタするように調整された他の何らかのパラメータのいずれであるかの物理的パラメータを表示又は出力する。
【実施例】
【0068】
以下の実施例では、本発明の方法および装置を用いた種々の手段について記述する。
【0069】
[実施例1]シール栓を有する胃内バルーンの遠隔収縮
本実施例において、患者は、以前に胃の中に胃内バルーンが挿入された肥満男性である。胃内バルーンは、6か月間の治療の全期間にわたって移植された状態であり、外科医はバルーンを取り出す準備ができている。
【0070】
バルーンの除去は、外来診療の診療所で行われる。本実施例で使用される遠隔収縮バルブについては図2a及び図2bが参照される。
【0071】
収縮バルブ16を開くために、医師は、例えば図9に示されるリモコン装置を用いて体の外側から遠隔収縮機構を作動させる。医師は、患者の胃の近くでリモコン装置100を持ち、ボタンを押すと、リモコン装置100は、患者の組織を通してマイクロ電子制御部32へ作動信号を送る。
【0072】
作動信号を受信すると、マイクロ電子制御部32は、加熱要素31の温度を上昇させ始めるためにバッテリ33からの電力を使用する。加熱要素31の温度が上昇し始めると、ろう栓30は融解し始める。
【0073】
ろうは、融解し始めると、芯材の表面34に集まる。芯材の表面34にろうが集まると、ろうが毛管35を塞ぐことを防止でき、胃内バルーン10に収容された流体がバルーンの外へ流れ出ることができる。ろうが融解し芯材の表面34に集まると、毛管35は、胃内バルーンに収容された流体がバルブ開口部36を通して自由に流れることを許容する。さらに、ろうが融解すると、マイクロ電子制御部32は、リモコン装置100に確認信号を送り、収縮機器が作動したことを医師および患者に知らせる。
【0074】
胃壁の通常の動作および収縮を通して、バルーンは、内部に収容された生理食塩水を排出し、ヒトの体を通過可能な大きさまで縮小する。電子機器、加熱要素、及びバッテリは、患者にいかなる危険も及ばないようにバルブ機構の内部に安全に収容されている。
【0075】
確認信号を受信すると、患者は診療所を出て帰宅することができる。患者は胃内バルーンの通過を探知し、胃内バルーンが通過したとき医師に知らせる。
【0076】
[実施例2]分離可能なバルブを有する胃内バルーンの遠隔収縮
本実施例において、患者は、以前に胃内バルーンが移植された肥満女性である。移植後において、患者は、吐き気、嘔吐、及び全般的な腹部不快感を含む、移植による好ましくない副作用を経験した。そのため、患者は、遠隔収縮機構を作動させてバルーンが排出されることを望んでいる。
【0077】
第1実施例と同様、バルーンの除去は、外来診療の診療所で行われる。本実施例に利用される遠隔収縮機構としては図8a及び図8bが参照される。
【0078】
胃内バルーンを収縮させるために、医師は、例えば図9に示すリモコン装置100を使って遠隔収縮機構を作動させる。医師は、患者の胃の近くにリモコン装置100を配置し、ボタンを押すと、リモコン装置100は、腹腔の組織を通してマイクロ電子制御部95へ作動信号を送る。
【0079】
マイクロ電子制御部95は、リモコン装置100からの作動信号を受信するためのアンテナを有する。作動信号を受信すると、マイクロ電子制御部は、加熱要素93の温度を上昇させ始めるためにバッテリ96からの電力を使用する。加熱要素93の温度が上昇し始めると、切断ワイヤ94の温度も上昇し始める。切断ワイヤの温度が上昇すると、バルブとバルーンの接合部92の接合力が低下し、結果的に、シェル97からバルブ91が分離する。
【0080】
バルブとバルーンの接合部92が破断してシェルから分離すると、胃の通常の動作により、バルーン内に収容された流体が開口部98を通って自由に流れる。胃壁の通常の動作と収縮により、胃内バルーンは、内部に収容された流体を排出し、ヒトの体を通過可能な大きさまで縮小する。電子機器、加熱要素およびバッテリは、患者にいかなる危険も及ぼさないようにバルブ機構内に安全に収容されている。胃内バルーン全体は、2つの分離した要素からなるため、バルーンとバルブの通過が容易となる。
【0081】
バルブとバルーンの接合部が破断すると、マイクロ電子制御部95は、収縮機構が作動したことを確認するためにリモコン装置100に確認信号を送る。リモコン装置により確認信号が受信されると、処置は完了し、患者は帰宅することができ、シェルとバルブアッセンブリが本システムにより排出されるまで待てばよい。患者は胃内バルーンの通過を探知し、バルーンが排出されたとき医師に知らせる。
【0082】
本発明は、ある程度の特殊性をもって記載および説明されているが、本明細書の開示は、ほんの一例によりなされたものであり、後に主張するように、本発明の精神および範囲から逸脱しない当業者により部品の組み合わせ及び配置に多くの変更がなされ得ることは言うまでもない。
【0083】
[実施例3]バルブカプセルを収容した胃内バルーンの遠隔収縮
本実施例において、患者は、以前に胃の中に胃内バルーンが挿入された肥満の男性である。胃内バルーンは、6か月間の治療の全期間にわたって移植された状態であり、外科医はバルーンを取り出す準備ができている。
【0084】
バルーンの除去は、外来診療の診療所で行われる。本実施例で使用される遠隔収縮バルブについては図10a及び図10bが参照される。
【0085】
バルーン109を収縮させるために、医師は、例えば図9に示されるリモコン装置を用いて体の外側から遠隔収縮機構を作動させる。医師は、患者の胃の近くでリモコン装置100を持ち、ボタンを押すと、リモコン装置100は、患者の組織を通して一体化されたマイクロ電子制御部および電源115へ作動信号を送る。
【0086】
作動信号を受信すると、一体化されたマイクロ電子制御部および電源115は、ねじりばね113に連結された加熱要素(図示せず)の温度を上昇させ始めるために電力を使用する。加熱要素の温度が上昇し始めると、形状記憶ねじりばね113の温度も上昇し始め、これにより、ばねが変形して径が小さくなる。径が小さくなると、バルブカプセル111とバルーン環状部114との間のシールが破断する。バルブカプセルがシェルから分離されると、バルーン内に収容された流体が、2つの部分の分離により形成された開口部(図10b)を通して自由に流れる。
【0087】
胃壁の通常の動作および収縮を通して、バルーンは、内部に収容された生理食塩水を排出し、ヒトの体を通過可能な大きさまで縮小する。一体化されたマイクロ電子制御部および電源と加熱要素とは、患者にいかなる危険も及ばないようにバルブカプセル内に安全に収容されている。
【0088】
確認信号を受信すると、患者は診療所を出て帰宅することができる。患者は胃内バルーンの通過を探知し、胃内バルーンが通過したとき医師に知らせる。
【0089】
本明細書に記載された全ての特徴、及びそのような特徴の組み合わせは、そのような組み合わせに係る特徴が相互に矛盾しなければ、本発明の範囲内に含まれる。
【0090】
本発明は、種々の実施例および実施形態について説明されているが、本発明はそれらに限定されるものでなく、後述の請求項の範囲内で様々に実施され得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0091】
10:バルーン、12:シェル、16:バルブ機構、20:チャンネル部、30:栓、31:加熱要素、41:ばね、42:栓、46:チャンネル部、63:スリットバルブ、64:ばね環状部、81:切断機構、82:栓、84:ワイヤ、90:胃内バルーン、91:バルブ、93:加熱要素、94:ワイヤ、97:シェル、100:リモコン装置、109:胃内バルーン、110:シェル、111:バルブカプセル、112:バルブ、114:バルーン環状部、116:バルブ機構、129:胃内バルーン、130:シェル、131:バルブカプセル、132:バルブ、136:環状部、216:バルブ機構、316:バルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト又は動物の患者の減量を促進するためのシステムであって、
患者の消化管における配置に好適であり、流体を用いて膨張可能なシェルと、
前記シェルに連結されたバルブ機構と、
前記シェルから流体を除去するために前記バルブ機構を開くためのアクチュエータと、
体内で前記シェルを収縮させるために前記患者の体外から前記アクチュエータへ信号を送信可能な遠隔制御機器と、を備えたシステム。
【請求項2】
前記バルブ機構は熱変形要素を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記バルブ機構は熱変形可能な栓を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記熱変形可能な栓は、溶解可能なろうからなる請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記バルブ機構は、溶解したろうを集めるのに効果的な芯材を更に有する請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記アクチュエータは、前記熱変形要素の温度を上昇させるのに効果的であり遠隔作動可能な加熱要素を備えている請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記アクチュエータは、形状記憶要素を備えている請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記形状記憶要素はニチノールからなる請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記バルブ機構は、前記形状記憶要素の変形により前記バルブ機構が開くような態様で前記形状記憶要素に連結されている請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記バルブ機構は、前記形状記憶要素の熱変形により前記バルブ機構が開くような態様で前記形状記憶要素に連結されている請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記バルブ機構を開くために、移植可能なバッテリを必要としない請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記アクチュエータは、外部電源からの電磁結合により作動するように構成されている請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記バルブ機構は、スリットバルブと、収縮したときに前記スリットバルブを開くように配置された形状記憶要素と、を備えた請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記バルブ機構は、該バルブ機構が前記シェルから分離したときに、該シェルから流体を解放するように該シェルを開くように構成されたカプセルである請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
大量の流体を収容した胃内バルーンを、遠隔により体内で収縮させ、ほ乳類の体内から除去する方法であって、
ヒト又は動物の患者の消化管に、流体が充填されたシェルを供給するステップと、
前記シェルに開口部を形成するために収縮機構を遠隔作動させるステップと、
通常の胃の動作により、前記シェルからの前記流体の除去と、前記体からの前記シェルの排出とを促進するステップと、を備えた方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−523280(P2010−523280A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503182(P2010−503182)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/059766
【国際公開番号】WO2008/127941
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】