説明

胃酸分泌抑制ポリペプチド(GIP)抗原アッセイ及びその使用

本発明は、医学、公衆衛生学、免疫学、分子生物学及びウイルス学の分野に関連する。とりわけ本発明は、ウイルス様粒子(VLP)と少なくとも一の抗原を含有してなる組成物であって、該抗原がそれぞれVLPに結合されたGIPタンパク質ないしはGIP断片である組成物を提供する。また、本発明は、前述の組成物の産生方法を提供する。本発明の組成物は、特に肥満の治療及び/又は予防と特に有効な免疫応答、特に抗体応答を誘導することによる肥満の治療及び/又は予防のためのワクチンの産生に有用である。さらに、本発明の組成物は、示した範囲内の自己特異的な免疫応答を効率よく誘発するために特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の背景)
発明の分野
本発明は、医学、公衆衛生学、免疫学、分子生物学及びウイルス学の分野に関連する。とりわけ本発明は、ウイルス様粒子(VLP)と少なくとも一の抗原を含有してなる組成物であって、該抗原がそれぞれVLPに結合されたGIPタンパク質ないしはGIP断片である組成物を提供する。
また、本発明は、前述の組成物の産生方法を提供する。本発明の組成物は、特に肥満の治療及び/又は予防と特に有効な免疫応答、特に抗体応答を誘導することによる肥満の治療及び/又は予防のためのワクチンの産生に有用である。さらに、本発明の組成物は、示した範囲内の自己特異的な免疫応答を効率よく誘発するために特に有用である。
【0002】
関連技術
グルコース依存性インスリン分泌性ポリペプチド(GIP、別名胃酸分泌抑制ポリペプチド)は、胃壁に並ぶ内分泌性K細胞から食事の間に放出される胃腸ホルモンである。血液に放出されるGIPの量は、主に食事内容物に依存していて、主に摂取された脂肪、グルコース又はアミノ酸の吸収により誘導される(Elliott, R.M: 等, (1993), J. Endocrinol. 138, 159-166、Lardinois, C.K. 等, (1988), J Am Coll Nutr. 7(3), 241-7)。GIPは急速に膵臓β細胞に作用して、インスリンの放出を刺激し、それによって、組織へのグルコースのインスリン媒介性の取り込みが促される(Dupre J. 等, (1973) J. Clin. Endocrinol. Metab. 37, 826-828)。GIPは、β細胞上に発現される7膜貫通型Gタンパク質結合レセプターに結合することによって、この効果を達成する。GIPが一度結合すると、これらのレセプターはアデニリルシクラーゼおよび他のシグナル伝達経路を活性化し、最終的に細胞内Ca2+濃度およびインスリンエキソサイトーシスが亢進する(Lu, M. 等, (1993), Encocrinology 133, 2861-2870)。脂肪及びグルコース取り込みに加えて、炭水化物の取り込みもGIP放出を刺激する(Elliott, R.M: 等, (1993), J. Endocrinol. 138, 159-166)。
GIPは、エンテロインスラーアクシスのインクレチン因子の一つであると考えられる。抗GIP抗体はグルコース誘導性インスリン分泌に対するGIPの作用をブロックすることが示されている(Ebert 等, Endocrinology (1982) 111: 1601)。さらに、GIPはまた、脂肪細胞に直接作用するとみなされており、それはGIPレセプターを発現する(Yip 等, Endocrinology (1998) 139: 4004)。
【0003】
そのインスリン分泌性活性のために、2型糖尿病の潜在的な治療法としてホルモンを利用することは注目すべき関心事となっている(EP171465,、国際公開公報03/030946)。さらに、GIPレセプターノックアウトマウス(GIPR-/-)が、グルコース経口負荷の後に、より高い血中グルコースレベルを有し、初めのインスリン応答が障害されていることが最近示された。インスリン分泌が代償的に高くなるために、GIPR+/+マウスにおいて、摂取後の血中グルコースレベルは高脂肪食によって、増加しないが、GIPR-/-マウスでは、このような促進が起こらないために血中グルコースレベルは顕著に増加する。したがって、このエンテロインスラーアクシスの欠損により、糖尿病の病理が発症しうる(Miyawaki K. 等, (1999) PNAS 96:26, 14843-14847)。
同じ研究グループは後に、高脂肪食を与えられる野生型マウスがインスリン耐性を有する極端な内臓及び皮下脂肪の堆積とGIPの分泌過多を表すことを示した。対照的に、高脂肪食を与えられるGIPレセプターを欠いているマウス(GIPR-/-)は、インスリン耐性及び肥満の発達が起こらなかった(Miyawaki K. 等, (2002) Nature Medicine 8: 7, 738-742)。しかしながら、いくつかの研究グループは、GIP作用がGIPレセプターアンタゴニストによって、実際に破壊される場合、栄養摂取後に齧歯動物において、高血糖及び障害されたインスリン分泌が生じることを明らかにしている(Lewis, J.T. 等 (2000), Endocrinology 141, 3710-3716、Tseng, C.C. 等 (1996) J. Clin. Invest. 98, 2440-2445)。これにより、GIPレセプターアンタゴニストを用いた慢性的な治療によりグルコース不耐性、又はさらに糖尿病を生じうることが示唆される(Kieffer, T. J. (2003), Trends in Pharmacological Sciences Vol. 24 No.3, 110-112)。
【0004】
(発明の概要)
我々は、驚くべきことに、GIPタンパク質ないしはGIP断片を含有してなる本発明の組成物及びワクチンのそれぞれが、免疫応答、特に抗体応答を強力に誘導し、自己抗原GIPに対する抗体力価を高めることができることを発見した。さらに、我々は、驚くべきことに、GIPタンパク質ないしはGIP断片を含有してなる本発明の組成物及びワクチンのそれぞれが、予防及び治療のための高脂肪食肥育肥満マウスにおいて、強力な免疫応答、特に強力な抗体応答を誘導することができることを発見した。本発明の組成物及びワクチンのそれぞれを摂取した肥満マウスの体重増加は、本発明の組成物及びワクチンのそれぞれを摂取していないマウスと比較して顕著に低減した。このことから、免疫応答、特に本発明の組成物及びワクチンのそれぞれによって精製される抗体は、インビボでGIPを特異的に認識して、その機能を阻害することができることが示される。さらに、抗体は固形組織、特に脂肪組織に効率よく浸透しないくらい分子が大きいので、本発明の組成物及びワクチンが脂肪蓄積の増加を阻害するのに有効であることは非常に驚くべきことである。
【0005】
さらに我々は、驚くべきことに、本発明の組成物及びワクチンが、インビボでのGIP機能を阻害する、特にレシピエント動物に体重増加をさせない際に有効である一方で、血中グルコース、血漿トリグリセリド及びフルクトサミンレベルを阻害しないことから、本発明の組成物が糖尿病を引き起こさないことが示唆されることを発見した。したがって、本発明の組成物及びワクチンは、肥満を予防するか治療するための使用が安全であることが証明される。
したがって、第一の態様では、本発明は、(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するウイルス様粒子(VLP);と(b) 少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一のGIPタンパク質ないしは少なくとも一のGIP断片;を含んでなり、(a)と(b)が該第一付着部位と該第二付着部位を介して結合して、好ましくは規則的に反復した抗原アレイを形成する組成物を提供する。本発明の好適な実施態様では、本発明の使用に好適なウイルス様粒子は、ウイルス、好ましくはRNAバクテリオファージの組み換えタンパク質、好ましくは組み換えコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含有する。
【0006】
ある好適な実施態様では、本発明の組成物はGIP断片を含有する。強力で保護的な免疫応答、特に抗体応答が確保される一方で、本発明のGIP断片の使用により、自己特異的な細胞障害性T細胞応答が誘導される可能性が減少し、本発明の組成物及びワクチンそれぞれの産生コストが減少しうる。
他の態様では、本発明はワクチン組成物を提供する。さらに、本発明は、ヒト又は動物、好ましくは哺乳動物へのワクチン組成物の投与方法を提供する。本発明のワクチンは、任意のアジュバントなしで免疫応答、特に抗体応答を強く誘導することができる。したがって、ある好適な実施態様では、ワクチンは何れのアジュバントも欠いている。アジュバントの使用を避けることによって、望ましくない炎症性T細胞応答が生じる可能性が減少しうる。
更なる態様では、本発明は、本発明の組成物と受容可能な薬剤的担体を含有してなる薬剤組成物を提供する。
【0007】
より更なる態様では、本発明は、特に肥満を効果的に治療する、予防する、又は寛解する方法を提供する。
ある更なる態様では、本発明は、動物、好ましくは愛玩用ネコないしはイヌ、又はヒトの肥満の治療方法であって、該動物又はヒトに本発明のワクチンとVLP-グレリンのワクチンを投与することを含む方法を提供する。本発明のある好適な実施態様では、本発明のワクチンとVLP-グレリンのワクチンは、前記の動物又はヒトに同時に投与される。ある更なる態様では、本発明は、肥満を予防及び治療する、好ましくはヒトの肥満を予防するための方法であって、該ヒトに本発明のワクチンとVLP-ニコチンのワクチンを投与することを含む方法を提供する。好ましくは、これは、喫煙停止後の体重増加の埋め合わせをするためのものである。さらに好ましくは、これは喫煙停止中及び停止後の食物摂取の増加を埋め合わせるためのものである。前記動物又はヒトへの2つのワクチンの投与により、別々に投与される場合の各々のワクチンの有効性を付加的に、あるいは好ましくは相乗的に増加しうる。
【0008】
(発明の詳細な説明)
定義:
抗原:本明細書で使用するように、「抗原」という用語は、MHC分子によって提示される場合、抗体又はT細胞レセプター(TCR)に結合されうる分子を指す。「抗原」という用語は、本明細書で使用するように、T細胞エピトープも含む。さらに抗原は、免疫系に認識されることができ、及び/又は、B及び/又はTリンパ球の活性化がもたらされる体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答を誘導することができる。しかしながら、このことは、少なくともいくつかの場合において、抗原がTh細胞エピトープを含むかあるいはこれと連結し、アジュバント中に存在することが必要でありうる。抗原は、1つ又は複数のエピトープ(BおよびTエピトープ)を有しうる。上記の特異的な反応とは、抗原が、好ましくは典型的には非常に選択的な方式で、その対応する抗体又はTCRと反応し、他の抗原によって誘発される可能性がある多数の他の抗体又はTCRとは反応しないことを示すことを意図する。また、ここで用いた抗原はいくつかの別々の抗原の混合でもよい。
【0009】
抗原性部位:本明細書中において相互に交換可能に用いられる「抗原性部位」なる用語及び「抗原性エピトープ」なる用語は、MHC分子の環境におけるT細胞レセプター又は抗体によって免疫特異的に結合されるポリペプチドの連続的な又は非連続的な部位を意味する。免疫特異的な結合は、非特異的な結合が除外されるが必ずしも交差反応が除外されない。典型的に、抗原性部位は、抗原性部位に特有の空間的な立体構造内に5−10アミノ酸を含有する。
結合(会合) (associated):本明細書中で用いられる「結合(会合) (associated)」なる用語は、2つの分子がともに結合するすべての可能な方法、好ましくは化学的な相互作用を指す。化学的な相互作用には共有的相互作用及び非共有的相互作用が含まれる。非共有的相互作用の典型的な例は、イオン性相互作用、疎水性相互作用、又は水素結合であり、一方、共有的相互作用は、例として共有結合、例えばエステル、エーテル、リン酸エステル、アミド、ペプチド、炭素−リン結合、炭素−イオウ結合、例えばチオエーテル、又はイミド結合ベースである。
【0010】
第一付着部位:ここで用いる「第一付着部位」なる用語は、VLPに天然に生じる又はVLPに人工的に付加される成分であり、第二付着部位が結合する部位を指す。第一付着部位は、タンパク質、ポリペプチド、アミノ酸、ペプチド、糖、ポリヌクレオチド、天然又は合成ポリマー、二次的代謝産物又は化合物(ビオチン、フルオレセイン、レチノール、ジゴキシゲニン、金属イオン、フェニルメチルスルホニルフルオリド)、又は化学反応基、例えばアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、グアニジル基、ヒスチジル基、又はこれらの組合せであってよい。第一付着部位である化学反応基の好適な実施態様は、リジンなどのアミノ酸のアミノ基である。第一付着部位は、典型的にはVLPの表面上、好ましくはVLPの外表面上に位置する。多数の第一付着部位が、典型的には反復形状で、ウイルス様粒子の表面上、好ましくは外表面上に存在する。好適な実施態様では、第一付着部位は、少なくとも一の共有結合を介して、好ましくは少なくとも一のペプチド結合を介してVLPと会合(結合)する。
【0011】
第二付着部位:ここで用いる「第二付着部位」なる用語は、本発明のGIPに天然に生じる又は本発明のGIPに人工的に付加される成分であり、第一付着部位が結合する部位を指す。本発明のGIPの第二付着部位は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、糖、ポリヌクレオチド、天然又は合成ポリマー、二次的代謝産物又は化合物(ビオチン、フルオレセイン、レチノール、ジゴキシゲニン、金属イオン、フェニルメチルスルホニルフルオリド)、又は化学反応基、例えばアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、グアニジル基、ヒスチジル基、又はこれらの組合せであってよい。第二付着部位である化学反応基の好適な実施態様は、好ましくはシステインなどのアミノ酸のスルフヒドリル基である。したがって、「少なくとも一の第二付着部位を有するGIPタンパク質」、「少なくとも一の第二付着部位を有するGIP断片」又は「少なくとも一の第二付着部位を有する本発明のGIP」なる用語は、本発明のGIPと少なくとも一の第二付着部位を含むコンストラクトを指す。しかしながら、特に、GIPタンパク質ないしはGIP断片に天然に生じない第二付着部位の場合、典型的かつ好ましくは、そのようなコンストラクトはさらに「リンカー」を含む。他の好適な実施態様では、第二付着部位は、少なくとも一の共有結合を介して、好ましくは少なくとも一のペプチド結合を介して本発明のGIPと会合(結合)する。さらに他の好適な実施態様では、第二付着部位は、タンパク質融合により好ましくはシステインを含むアミノ酸リンカーを介して本発明のGIPに人工的に付加される。
【0012】
結合(bound):本明細書中で用いられる「結合(bound)」なる用語は、共有、たとえば化学的カップリング、又は非共有、たとえばイオン性相互作用、疎水性相互作用、水素結合などによるものである結合を指す。共有結合は、たとえばエステル、エーテル、リン酸エステル、アミド、ペプチド、イミド、炭素−イオウ結合、炭素−リン結合などであってよい。また、この用語には物質の封入または部分的な封入も含まれる。「結合(bound)」なる用語はより広義であり、「カップル(coupled)」、「融合(fused)」、「封入(enclosed)」、「パッケージ化(packaged)」及び「付着(attached)」などの用語も含む。例えば、ポリグルタミン酸などのポリ陰イオン性高分子は、典型的かつ好ましくは、実際には共有結合しないで、典型的かつ好ましくは、VLPに封入されるかパッケージ化される。
コートタンパク質:本出願において、「コートタンパク質」なる用語と交換可能に用いられる「キャプシドタンパク質」なる用語は、ウイルスキャプシド又はVLP内に内包されうるウイルスタンパク質を指す。典型的かつ好ましくは、「コートタンパク質」なる用語は、ウイルス、好ましくはRNAバクテリオファージのゲノム、又はウイルス、好ましくはRNAバクテリオファージの変異体のゲノムによってコードされるコートタンパク質を指す。より好ましくは、例として、「AP205のコートタンパク質」なる用語は、配列番号14又は、第一メチオニンが配列番号14から切断されているアミノ酸配列を指す。より好ましくは、例として、「Qβのコートタンパク質」はN末端のメチオニンの有無にかかわらず、配列番号1(「Qβ CP」)と配列番号2(A1)を指す。バクテリオファージQβのキャプシドは主にQβ CPと少量のA1タンパク質からなる。
【0013】
本発明のGIP:本明細書中で用いる「本発明のGIP」なる用語は、本明細書中で定義する少なくとも一のGIPタンパク質ないしは少なくとも一のGIP断片を指す。
GIPタンパク質:本明細書中で用いる「GIPタンパク質」なる用語は、配列番号:22のヒトGIP、配列番号:23のマウスGIP、配列番号:24のラットGIP、配列番号:25のウシGIP、配列番号:26のブタGIP、配列番号:63のネコないしイヌのGIP、又は任意の他の動物由来の任意のオルソログの対応するGIP配列を含む、あるいは好ましくはそれからなるポリペプチドを包含する。「オルソログ」なる用語は、異なる種由来のポリペプチドの機能的な相対物であるある種から得られるポリペプチドを意味する。オルソログの中での配列の相違は種分化の結果である。さらにまた、本明細書中で用いる「GIPタンパク質」なる用語は、配列番号:22のヒトGIP、配列番号:23のマウスGIP、配列番号:24のラットGIP、配列番号:25のウシGIP、配列番号:26のブタGIP、配列番号:63のネコないしイヌのGIP、又は任意の他の動物由来の対応するオルソログと、70%以上、好ましくは80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上および最も好ましくは97%以上のアミノ酸配列相同性を有する任意の遺伝的に操作した変異体又は天然の変異体を含むか、ないしは好ましくはそれからなる任意のポリペプチドを包含する。本明細書中で用いる「GIPタンパク質」なる用語は、限定するものではないが、上記に定義するGIPタンパク質のリン酸化、アセチル化、グリコシル化を含む翻訳後修飾をさらに包含する。好ましくは、本明細書中で定義するGIPタンパク質は、最大200アミノ酸長、さらにより好ましくは最大100アミノ酸、さらにより好ましくは最大50アミノ酸長からなる。典型的かつ好ましくは、VLPに結合するGIPタンパク質は、例えばELISAにより検査されるような、GIPに特異的に結合できる抗体のインビボでの産生を誘導できる。
【0014】
GIP断片:本明細書中で用いる「GIP断片」なる用語は、本明細書中で定義するようなGIPタンパク質の少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11又は12の連続するアミノ酸を含有するか、あるいは好ましくはこれらからなる任意のポリペプチド、並びにそれに対して65%以上、好ましくは80%以上、好ましくは85%以上、好ましくは90%以上およびさらにより好ましくは95%以上のアミノ酸配列相同性を有する任意のポリペプチドを包含する。好ましくは、本明細書中で用いる「GIP断片」なる用語は、本明細書中で定義するようなGIPタンパク質の少なくとも6の連続するアミノ酸を含有するか、あるいは好ましくはこれらからなる任意のポリペプチド、並びにそれに対して80%以上、好ましくは85%以上、好ましくは90%以上およびさらにより好ましくは95%以上のアミノ酸配列同一性を有する任意のポリペプチドを包含する。GIP断片の好適な実施態様は、GIPタンパク質の内部欠損型又は切断型である。典型的かつ好ましくは、VLPに結合したGIP断片は、GIPに特異的に結合できる抗体のインビボでの産生を誘導できる。
【0015】
ポリペプチドのアミノ酸相同性は、ベストフィット(Bestfit)などの公知のコンピュータプログラムを用いて慣習的に測定することができる。ベストフィットないしは任意の他の配列アラインメントプログラムを用いて、好ましくはベストフィットを用いて、特定の配列が例えば参照するアミノ酸配列に対して95%の相同性があるかどうかを決定するために、参照アミノ酸配列の完全長に対する相同性の割合が算出され、参照配列中のアミノ酸残基の合計数の5%以下の相同性にギャップが挿入されるようにパラメータを設定する。ポリペプチド間の相同性の割合を測定する前述の方法は、本発明に開示するすべてのタンパク質、ポリペプチドないしはその断片に適するものである。
結合(linked):ここで用いられる場合、「結合(連結)」なる用語は、可能であれば、好ましくは少なくとも第一付着部位と少なくとも一の第二付着部位がともに連結する化学的な相互作用を意味する。化学的な相互作用には共有的相互作用や非共有的相互作用が含まれる。非共有的相互作用の典型的な例は、イオン性相互作用、疎水性相互作用又は水素結合であるのに対して、共有的相互作用は、共有結合、例えばエステル、エーテル、リン酸エステル、アミド、ペプチド、炭素-リン結合、炭素-イオウ結合、例えばチオエーテル又はイミド結合ベースのものである。ある好適な実施態様では、第一付着部位と第二付着部位は、少なくとも一の共有結合、好ましくは少なくとも一の非ペプチド結合、よりさらに好ましくは、非ペプチド結合のみを介して結合される。しかしながら、ここで用いられる「結合」なる用語は、少なくとも一の第一付着部位と少なくとも一の第二付着部位の直接結合を包含するだけでなく、選択的に好ましくは、中間分子、及びこれによって典型的かつ好ましくは、少なくとも一の、好ましくは一のヘテロ二官能性架橋剤を介して、少なくとも一の第一付着部位と少なくとも一の第二付着部位との間接的な結合も包含する。
【0016】
リンカー:本明細書で使用する「リンカー」は、第二付着部位と本発明のGIPを結合させるか、第二付着部位を既に含むか、基本的に第二付着部位からなるか第二付着部位からなる。好ましくは、本明細書中で用いる「リンカー」は第二付着部位を、典型的かつ好ましくは、限定するものではないが、一アミノ酸残基として、好ましくはシステイン残基として既に含む。また、本明細書中で用いる「リンカー」は、特に本発明のリンカーが少なくとも一のアミノ酸残基を含有する場合、「アミノ酸リンカー」と称する。したがって、「リンカー」と「アミノ酸リンカー」なる用語は、本明細書中において相互に交換可能に用いられる。しかしながら、この用語は、アミノ酸残基からなるアミノ酸リンカーが本発明の好ましい実施態様である場合でも、このようなアミノ酸リンカーがアミノ酸残基のみからなることを示すことを意味するものではない。リンカーのアミノ酸残基は、当分野で知られている天然に存在するアミノ酸又は非天然アミノ酸、すべてのL型又はすべてのD型、あるいはこれらの混合物から構成されることが好ましい。したがって、スルフヒドリル基又はシステイン残基を含有する分子は本発明のリンカーの好適な実施態様であり、このような分子も本発明内に含まれる。さらに、本発明に有用なリンカーは、C1〜C6アルキル−、シクロアルキル、例えばシクロペンチル又はシクロヘキシル、シクロアルケニル、アリール又はヘテロアリール分子を含有する分子である。さらに好ましくは、C1〜C6アルキル−、シクロアルキル(C5、C6)、アリール、又はヘテロアリール部分と付加的なアミノ酸を含んでなるリンカーも本発明のためのリンカーとして使用可能であり、本発明の範囲内である。本発明のGIPとリンカーの間の会合(結合)は、少なくとも1つの共有結合によるものであることが好ましく、少なくとも1つのペプチド結合によるものであることがより好ましい。
【0017】
規則的で反復性の抗原アレイ:本明細書で用いる「規則的で反復性の抗原アレイ」なる用語は、一般的に、それぞれウイルス様粒子との関係で抗原中に、典型的に好ましくは非常に規則的に均一に空間的に配置していることに特徴がある、抗原の反復パターンを指す。本発明の一実施態様では、反復パターンは幾何学的パターンである。RNAファージのVLPなどの本発明の特定の実施態様では、好ましくは1から30ナノメーターの間隔、好ましくは2から15ナノメーターの間隔、より好ましくは2から10ナノメーターの間隔、さらにより好ましくは2から8ナノメーターの間隔、さらにより好ましくは1.6から7ナノメーターの間隔を有する、抗原の準結晶性の、厳密に反復的な順序配列を持つ、好適に規則的で反復性の抗原の典型的かつ好ましい例である。
パッケージ化(packaged):本明細書で使用するように、「パッケージ化」という用語は、VLPとの関係でのポリ陰イオン性高分子の状態を指す。本明細書中で用いる「パッケージ化」という用語は、共有、たとえば化学的カップリング、又は非共有、たとえばイオン性相互作用、疎水性相互作用、水素結合などでありうる結合を含む。また、この用語にはポリ陰イオン性高分子の封入ないしは部分的な封入が含まれる。したがって、ポリ陰イオン性高分子を、実際に結合、特に共有結合しなくても、VLPによって封入することができる。好適な実施態様では、少なくとも一のポリ陰イオン性高分子はVLP内に、最も好ましくは非共有的様式にてパッケージ化される。
【0018】
ポリペプチド:本願明細書中で用いられる「ポリペプチド」なる用語は、アミド結合(ペプチド結合ともいう)によって、線形に連結される単量体(アミノ酸)から成る分子を指す。これはアミノ酸の分子鎖を示し、特定の長さの産物を指すわけではない。ゆえに、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質は、ポリペプチドの定義の中に含まれる。たとえば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化など、ポリペプチドの翻訳後修飾も包含する。
ウイルス粒子:本明細書中で用いられる「ウイルス粒子」なる用語は、ウイルスの形態学的形状を意味する。いくつかのウイルス型には、タンパク質キャプシドに囲まれるゲノムを含む;他のものは付加的な構造(例えばエンベロープ、テイルなど)を有する。
【0019】
ここで用いられるウイルス様粒子(VLP)は、非複製性又は非感染性、好ましくは非複製性かつ非感染性のウイルス粒子を指し、又はウイルス粒子、好ましくはウイルスのキャプシドに類似する非複製性又は非感染性、好ましくは非複製性かつ非感染性の構造を指す。本明細書中で用いる「非複製性」なる用語は、VLPに含まれるゲノムを複製することができないことを意味する。本明細書中で用いる「非感染性」なる用語は、宿主細胞に侵入できないことを意味する。好ましくは、本発明のウイルス様粒子は、ウイルスゲノムないしはウイルスゲノム機能の全て又は一部を欠いているため、非複製性及び/又は非感染性である。一実施態様では、ウイルス様粒子はウイルス粒子であり、このウイルスゲノムは物理的又は科学的に不活性化されている。典型的かつより好ましくは、ウイルス様粒子はウイルスゲノムの複製性及び感染性の相等物のすべて又は一部を欠いている。本発明のウイルス様粒子は、それらのゲノムと異なる核酸を含みうる。本発明のウイルス様粒子の典型的かつ好ましい実施態様では、対応するウイルス、バクテリオファージ、好ましくはRNAファージのウイルスキャプシド等の、ウイルスキャプシドである。「ウイルスキャプシド」又は「キャプシド」なる用語は、ウイルスタンパク質のサブユニットから構成される巨大分子の集合体を指す。典型的には、60、120、180、240、300、360及び360以上のウイルスタンパク質サブユニットである。典型的かつ好ましくは、これらのサブユニットの相互作用により、固有の反復して組織化される、ウイルスキャプシド又はウイルスキャプシド様構造が形成される。前記構造は典型的には球状又は管状である。
【0020】
RNAファージのウイルス様粒子:本明細書中で用いる「RNAファージのウイルス様粒子」なる用語は、RNAファージのコートタンパク質、その変異体ないしは断片を含んでなる、好ましくは基本的にこれからなる、あるいはこれからなるウイルス様粒子を指す。さらに、RNAファージの構造に類似するRNAファージのウイルス様粒子は非複製性及び/又は非感染性であり、RNAファージの複製機構をコードする少なくとも一の遺伝子、好ましくは複数の遺伝子を欠損しており、及び典型的には、宿主にウイルスが接着するか侵入するためのタンパク質又はそれに関与するタンパク質をコードする一又は複数の遺伝子を欠損する。しかしながらまた、この定義には、前述の遺伝子又は遺伝子群が存在するが不活性であるため、RNAファージのウイルス様粒子が非複製性及び/又は非感染性となる、RNAファージのウイルス様粒子が包含される。本開示の範囲内で、「サブユニット」及び「単量体」なる用語は、この文脈において、相互に交換可能に、同等に用いられる。本出願では、「RNAファージ」なる用語及び「RNA-バクテリオファージ」なる用語は、相互に交換可能に使われる。
【0021】
One、a、又はan:用語「one」、「a」、又は「an」を本開示中で使用するとき、それらは、特に示さない限りは、「少なくとも一」、又は「一又は複数」を意味する。
この出願において、抗体は、10−1又はそれ以上、好ましくは10−1又はそれ以上、より好ましくは10−1又はそれ以上、最も好ましくは10−1又はそれ以上の結合親和性(Ka)で、抗原と結合するならば、特異的に結合するものと定義される。抗体の親和性は、(例えばスキャッチャード分析により)通常の当業者によって容易に測定され得る。
【0022】
この発明は、動物又はヒトにおいてGIPに対する免疫応答を亢進するための組成物及び方法を提供する。本発明の組成物は、(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するウイルス様粒子(VLP);と(b) 少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の抗原を含んでなり、該少なくとも一の抗原がGIPタンパク質ないしはGIP断片であり、(a)と(b)が該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して結合しているものである。好ましくは、GIPタンパク質ないしはGIP断片はVLPに結合しており、規則的で反復性の抗原-VLPアレイを形成する。本発明の好適な実施態様では、本発明の少なくとも30、より好ましくは少なくとも60、さらにより好ましくは少なくとも120及びさらにより好ましくは少なくとも180の本発明のGIPがVLPに結合する。
規則的で反復性の構造を有する当分野で公知の任意のウイルスは、本発明のVLPとして選択してもよい。VLPの調整のために使用されうる具体的なDNAないしRNAウイルスのコート又はキャプシドタンパク質は、国際公開公報2004/009124の25頁の10−21行目、26頁の11−28行目及び28頁の4行目から31頁の4行目に開示されている。これらの開示内容は出典明記により本明細書中に組み込まれる。
【0023】
ウイルスないしウイルス様粒子は産生され、ウイルス感染細胞培養物から精製することができる。ワクチンのためには、結果として生じるウイルスないしウイルス様粒子は病原性を欠失させる必要がある。病原性のウイルスないしウイルス様粒子は、UV照射、ホルムアルデヒド処理等の物理的又は化学的な不活性化によって生成してもよい。あるいは、ウイルスが複製できなくなるように、ウイルスのゲノムを変異ないしは欠損によって遺伝的に操作してもよい。
好適な一実施態様では、VLPは組み換えVLPである。本明細書中で開示する組み換えVLPは、少なくとも一のDNA組み換え技術の工程を含む方法によって調整されるVLPを指す。ほとんどすべての一般的に公知のウイルスは配列決定されており、容易に入手可能である。コートタンパク質をコードする遺伝子は当業者に容易に同定されうる。典型的には、コートタンパク質遺伝子は、標準的な方法によって発現ベクターにクローニングされ、ベクターに好適な宿主内で発現させることができる。発現されたコートタンパク質の自己集合化(アセンブリ、構築)の結果生じるVLPは回収され、さらに当分野で一般的な方法によって精製されうる。例えば、国際公開公報02/056905に開示されており、出典明記によって本明細書中に組み込まれる。ウイルス様粒子産生のための好適な宿主細胞については29頁37行目から30頁12行目、宿主細胞内へのポリヌクレオチドベクターの導入方法については30頁13−27行目、ウイルス様粒子の産生のための組み換え宿主細胞としての哺乳動物細胞については30頁28−35行目。
【0024】
好適な一実施態様では、ウイルス様粒子は、a) RNAファージ;b) バクテリオファージ;c) B型肝炎ウイルス、好ましくはそのキャプシドタンパク質(Ulrich, 等, Virus Res. 50: 141-182 (1998))又はその表面タンパク質(国際公開公報92/11291);d) はしかウイルス(Warnes, 等, Gene 160:173-178 (1995));e) シンドビスウイルス;f) ロタウイルス(米国特許第5,071,651号及び米国特許第5,374,426号);g) 口蹄疫ウイルス(Twomey, 等, Vaccine 13:1603 1610, (1995));h) ノーウォークウイルス(Jiang, X., 等, Science 250:1580 1583 (1990);Matsui, S.M., 等, J. Clin. Invest. 87:1456 1461 (1991));i) アルファウイルス属;j) レトロウイルス、好ましくはそのGAGタンパク質(国際公開公報96/30523);k) レトロトランスポゾンTy、好ましくはタンパク質p1;l) ヒトパピローマウイルス(国際公開公報98/15631);m) ポリオーマウイルス;n) タバコモザイク病ウイルス;及びo) Flockハウスウイルスからなる群から選択されるウイルスの組み換えタンパク質、その変異体ないしはその断片を含むか、あるいはこれからなる。
好適な一実施態様では、VLPは、その組み換えタンパク質、その変異体ないしはその断片の一以上のアミノ酸配列、好ましくは2つのアミノ酸配列を含むか、これらからなる。一以上のアミノ酸配列を含むかそれらからなるVLPを、本出願ではモザイクVLPと称する。
【0025】
ここで使用される「組み換えタンパク質の断片」なる用語又は「コートタンパク質の断片」なる用語は、野生型組み換えタンパク質又はコートタンパク質それぞれの長さの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%であり、好ましくはVLPを形成する能力を保持するポリペプチドとして定義される。好ましくは、該断片は、少なくとも一の内部欠失、少なくとも一の切断、又はそれらの少なくとも一の組合せから得られる。「組み換えタンパク質の断片」又は「コートタンパク質の断片」なる用語は、上で定義した「組み換えタンパク質の断片」又は「コートタンパク質の断片」のそれぞれと、少なくとも80%、好ましくは90%、さらにより好ましくは95%のアミノ酸配列同一性を有し、好ましくはウイルス様粒子内に集合化することができるポリペプチドをさらに包含する。
本発明で交換可能に使用される「変異体組み換えタンパク質」なる用語又は「組み換えタンパク質の変異体」なる用語、本発明で交換可能に使用される「変異体コートタンパク質」なる用語又は「コートタンパク質の変異体」なる用語は、野生型組み換えタンパク質又はコートタンパク質それぞれに由来するアミノ酸配列を有するポリペプチドを指し、該アミノ酸配列は野生型配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、90%、95%、97%又は99%の同一性であり、好ましくは集合してVLPを形成する能力を保持している。
【0026】
VLP内へのコートタンパク質又は組み換えタンパク質の変異体又は断片の集合化(アセンブリ)は、当業者には理解されるように、大腸菌中でタンパク質を発現させ、場合によっては細胞可溶化物をゲル濾過することによりキャプシドを精製し、免疫拡散アッセイ(オークタロニーテスト)又は電子顕微鏡法(EM)(Kozlovska, T. M.ら, Gene 137:133-37(1993))によりキャプシド形成を分析することにより、試験してもよい。免疫拡散アッセイ及びEMは、細胞可溶化物で直接実施してもよい。
好適な一実施態様では、本発明のウイルス様粒子はB型肝炎ウイルスである。B型肝炎ウイルス様粒子の調整は、特に国際公開公報00/32227、同01/85208及び同01/056905に開示されている。これら3つすべての文書は出典明記によって本明細書中に特別に組み込まれる。本発明の実施における使用に好適なHBcAgの他の変異体は国際公開公報01/056905の34−39頁に開示されている。
【0027】
本発明の更なる好適な一実施態様では、リジン残基はHBcAgポリペプチドに導入され、本発明のGIPのHBcAgのVLPへの結合を媒介する。好適な実施態様では、本発明の組成物及びVLPは、配列番号20のアミノ酸1−144又は1−149、1−185を含むか、あるいはこれからなるHBcAgを用いて調整される。このアミノ酸は修飾されており、79番目と80番目のアミノ酸がGly-Gly-Lys-Gly-Glyのアミノ酸配列を有するペプチドに置き換わっている。この修飾により配列番号20から配列番号21に変化する。更なる好適な実施態様では、配列番号21の48番目と110番目のシステイン残基、又はその対応する断片、好ましくは1−144又は1−149がセリンに変異される。さらに、本発明は、上記の対応するアミノ酸変異を有するB型肝炎コアタンパク質変異を含有する組成物を包含する。さらに、本発明は、配列番号21に少なくとも80%、85%、90%、95%、97%又は99%の同一性であるアミノ酸配列を含むか、あるいはこれからなるHBcAgポリペプチドを含有する組成物及びワクチンのそれぞれを包含する。
本発明の他の実施態様では、ウイルス様粒子は、組み換えアルファウイルス、より具体的には組み換えシンドビスウイルスである。アルファウイルスは、DNA中間生成物のない感染細胞の細胞質で完全にゲノムRNAを複製する陽性の鎖RNAウイルスである(Strauss, J.及びStrauss, E., Microbiol. Rev. 58: 491-562 (1994))。アルファウイルスファミリのメンバーである、シンドビス(Schlesinger, S., Trends Biotechnol. 11:18-22 (1993))、セムリキ森林ウイルス(SFV) (Liljestrom, P. & Garoff, H., Bio/Technology 9:1356-1361 (1991))およびその他(Davis, N.L. 等, Virology 171:189-204 (1989))は、ワクチン開発の候補として、及び様々な異なるタンパク質のウイルスベースの発現ベクター(Lundstrom, K., Curr. Opin. Biotechnol. 8:578-582 (1997))としての使用についてかなり注目されている。
【0028】
本発明の好適な実施態様では、本発明のウイルス様粒子は、RNA-ファージの組み換えコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。好ましくは、RNA-ファージは、a)バクテリオファージQβ;b)バクテリオファージR17;c)バクテリオファージfr;d)バクテリオファージGA;e)バクテリオファージSP;f)バクテリオファージMS2;g)バクテリオファージM11;h)バクテリオファージMX1;i)バクテリオファージNL95;k)バクテリオファージf2;l)バクテリオファージPP7、及びm)バクテリオファージAP205からなる群から選択される。
本発明の好適な一実施態様では、組成物は、RNAファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含有し、該コートタンパク質は、(a) 配列番号:1(Qβ CPを指す);(b) 配列番号:1と配列番号:2の混合物(Qβ A1タンパク質を指す);(c) 配列番号:3;(d) 配列番号:4;(e) 配列番号:5;(f) 配列番号:6、(g) 配列番号:6と配列番号:7の混合物;(h) 配列番号:8;(i) 配列番号:9;(j) 配列番号:10;(k) 配列番号:11;(l) 配列番号:12;(m) 配列番号:13;及び(n) 配列番号:14からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。一般的に、上記のコートタンパク質はN末端のメチオニンの有無にかかわらずVLP内に集合化することができる。
【0029】
本発明の好適な一実施態様では、VLPは、RNAファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片の一以上のアミノ酸配列、好ましくは2つのアミノ酸配列を含むか、あるいはそれらからなるモザイクVLPである。
とても好適な一実施態様では、VLPはRNAファージの2つの異なるコートタンパク質を含むか、あるいはそれらからなるものであり、該2つのコートタンパク質は配列番号1と配列番号2、又は配列番号6と配列番号7のアミノ酸配列を有する。
本発明の好適な実施態様では、本発明のウイルス様粒子は、RNA-バクテリオファージQβ、fr、AP205又はGAの組み換えコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。
好適な一実施態様では、本発明のVLPはRNAファージQβである。Qβのキャプシド又はウイルス様粒子は、直径25nmで、T=3の疑似対称体の、正二十面体ファージ様キャプシド構造を示す。キャプシドは、ジスルフィド架橋により共有結合性の五量体及び六量体で結合して(Golmohammadi, Rら, Structure 4:543-5554(1996))、際だって安定したQβキャプシドとなる、コートタンパク質の180のコピーを含む。しかしながら、組換えQβコートタンパク質から作製されるキャプシド又はVLPは、キャプシド内の他のサブユニットへ、ジスルフィド結合を介して結合していないか、又は不完全に結合するサブユニットを含んでいてもよい。Qβのキャプシド又はVLPは、有機溶媒及び変性剤に対し、普通ではない耐性を示す。驚くべきことに、我々は、1Mの高さの濃度のグアニジウム、30%の高さの濃度のアセトニトリル及びDMSOがキャプシドの安定性に影響しないことを発見した。Qβのキャプシド又はVLPの高い安定性は、本発明の哺乳動物及びヒトの免疫化及びワクチン接種における使用に特に有用な性質である。
【0030】
さらに好適な本発明のRNAファージ、特にQβ及びfrのウイルス様粒子は国際公開公報02/056905に開示されており、この開示内容は出典明記により本明細書中に組み込まれる。特に、国際公開公報02/056905の実施例18にQβのVLP粒子の調整について詳しく記載されている。
他の好適な実施態様では、本発明のVLPは、RNAファージAP205のVLPである。また、アミノ酸5のプロリンがスレオニンに置換しているAP205コートタンパク質を含む、AP205 VLPの集合体コンピテント変異体型を本発明の実施に使用してもよく、本発明の他の好適な実施態様となる。国際公開公報2004/007538の特に実施例1及び実施例2には、AP205コートタンパク質を含有するVLPの入手方法、とりわけその発現と精製について記載されている。国際公開公報2004/007538は出典明記によって本明細書中に組み込まれる。AP205 VLPは高い免疫原性があり、本発明のGIPと結合して、典型的かつ好ましくは、反復様式で配位する本発明のGIPを表出するワクチンコンストラクトを生成することができる。表出された本発明のGIPに対して高い抗体力価が誘発されることから、結合した本発明のGIPが抗体分子との相互作用のためにアクセス可能であり、免疫原性であることが示される。
【0031】
好適な一実施態様では、本発明のVLPは、ウイルス、好ましくはRNAファージの変異体コートタンパク質を含むかあるいはこれからなるものであり、該変異体コートタンパク質は置換及び/又は欠失によって少なくとも一のリジン残基が除去されて修飾されている。他の好適な実施態様では、本発明のVLPは、ウイルス、好ましくはRNAファージの変異体コートタンパク質を含むかあるいはこれからなるものであり、該変異体コートタンパク質は置換及び/又は挿入によって少なくとも一のリジン残基が付加されて修飾されている。あるとても好適な実施態様では、変異体コートタンパク質はRNAファージQβであり、少なくとも1、あるいは少なくとも2のリジン残基が置換又は欠失によって除去されている。またとても好適な実施態様では、変異体コートタンパク質はRNAファージQβのものであり、少なくとも1、あるいは少なくとも2のリジン残基が置換又は挿入によって付加されている。更なる好適な一実施態様では、RNAファージQβの変異体コートタンパク質は、配列番号15−19の何れか一から選択されるアミノ酸配列を有する。特にワクチンの必要性に合わせて調整するために、少なくとも一のリジン残基の欠失、置換又は付加によって、カップリングの程度、すなわち、ウイルス、好ましくはRNAファージのVLPのサブユニット当たりの本発明のGIPの量を変えることができる。
【0032】
好適な一実施態様では、本発明の組成物及びワクチンは、0.5〜4.0の抗原密度を有する。ここで使用される「抗原密度」なる用語は、サブユニット当たり、好ましくはVLPのコートタンパク質当たり、好ましくはRNAファージのVLPのコートタンパク質当たりに結合する本発明のGIPの平均数を意味するものである。よって、この値は、本発明の組成物又はワクチン中での、VLP、好ましくはRNAファージのVLPのモノマー又はサブユニット全体の平均として算出される。
本発明の他の好適な実施態様では、ウイルス様粒子は、Qβの変異体コートタンパク質、又はその変異体ないしはその断片、及び対応するA1タンパク質を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。更なる好適な実施態様では、ウイルス様粒子は、アミノ酸配列 配列番号15、16、17、18又は19を有する変異体コートタンパク質及び対応するA1タンパク質を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。
本発明の更なる他の好適な実施態様では、ウイルス様粒子は、RNAファージQβ、AP205、fr又はGAの組み換えコートタンパク質ないしはその断片と、RNAファージQβ、AP205、fr又はGAの組み換え変異体コートタンパク質ないしはその断片の混合物を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。
【0033】
また、アミノ酸5のプロリンがスレオニンに、アミノ酸14のアスパラギンがアスパラギン酸に置換しているAP205コートタンパク質を含む、AP205 VLPの集合体化コンピテント変異体型を本発明の実施に用いてもよく、本発明の他の好適な実施態様となる。AP205Pro-5-ThrのクローニングとVLPの精製は国際公開公報2004/007538の特に実施例1及び実施例2に開示されており、出典明記によって本明細書中に組み込まれる。
さらにまた、RNAファージコートタンパク質は、細菌宿主内で発現すると自己集合体化することが示されている(Kastelein, RA. 等, Gene 23:245-254 (1983)、Kozlovskaya, TM. 等, Dokl. Akad. Nauk SSSR 287:452-455 (1986)、Adhin, MR. 等, Virology 170:238-242 (1989)、Priano, C. 等, J. Mol. Biol. 249:283-297 (1995))。特に、GA (Ni, CZ., 等, Protein Sci. 5: 2485-2493 (1996)、Tars, K 等, J. Mol.Biol. 271:759-773(1997))及び、fr (Pushko P. 等, Prot. Eng. 6: 883-891 (1993)、Liljas, L 等 J Mol. Biol. 244:279-290, (1994))の生物学的及び生化学的性質は開示されている。いくつかのRNAバクテリオファージの結晶構造が決定されている(Golmohammadi, R. 等, Structure 4:543-554 (1996))。そのような情報を用いて、表面に曝された残基を同定して、RNAファージコートタンパク質を修飾して、一又は複数の反応性のアミノ酸残基を挿入又は置換によって挿入することができる。RNAファージ由来のVLPの他の利点は、安価で大量の物質を産生することが可能となる細菌での発現回収率が高いことである。
【0034】
好適な一実施態様では、本発明の組成物は少なくとも一の抗原を含有するものであり、該少なくとも一の抗原はGIPタンパク質ないしはGIP断片である。好適な一実施態様では、GIPタンパク質ないしはGIP断片は、(a) ヒトGIPタンパク質ないしはGIP断片;(b) ウシGIPタンパク質ないしはGIP断片;(c) ヒツジGIPタンパク質ないしはGIP断片;(d) イヌGIPタンパク質ないしはGIP断片;(e) ネコGIPタンパク質ないしはGIP断片;(f) マウスGIPタンパク質ないしはGIP断片;(g) ブタGIPタンパク質ないしはGIP断片;(h) ニワトリGIPタンパク質ないしはGIP断片;(i) ウマGIPタンパク質ないしはGIP断片;及び(g) ラットGIPタンパク質ないしはGIP断片からなる群から選択される。
好適な一実施態様では、少なくとも一の抗原はGIPタンパク質である。更なる好適な実施態様では、GIPタンパク質は、(a) 配列番号22;(b) 配列番号23;(c) 配列番号24;(d) 配列番号25;(e) 配列番号26;(f) 配列番号63;(g) 任意の他の動物のGIP対応オルソログ;及び(h) 配列番号22−26及び配列番号63の何れかと少なくとも80%、又は好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、又は最も好ましくは少なくとも95%の相同性であるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。
【0035】
好適な一実施態様では、GIPタンパク質は、アミノ酸配列を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなるものであり、最大7、好ましくは6、5、4、より好ましくは最大3、2又は1のアミノ酸が、(a) 配列番号22;(b) 配列番号23;(c) 配列番号24;(d) 配列番号25;(e) 配列番号26の群から選択されるアミノ酸配列と比較して、好ましくは保存的置換によって置換、挿入又は欠失されるものである。
好適な一実施態様では、少なくとも一の抗原がGIP断片であり、該GIP断片が少なくとも一の抗原性部位を含むか、あるいはそれらからなるものである。
タンパク質の抗原性部位を決定する方法は当分野の技術者に公知である。PCT/EP2005/004980の26頁の第1段落から27頁の第4段落に、これらのうちのいくつかの方法について詳述されている。この具体的な開示内容は出典明記によって本明細書中に組み込まれる。一般的に、これらの方法は他のポリペプチド抗原に応用できるものであり、PCT/EP2005/004980に開示されるIL-23 p19に限定するものではないことを注記する。
本発明の好適な実施態様では、GIP断片は、本明細書中で定義されるGIPタンパク質の少なくとも5から12の連続したアミノ酸を含むか、あるいは好ましくはそれらからなる。更なる好適な実施態様では、GIP断片はGIPのアミノ部分から選択される。本明細書中で用いられるGIPのアミノ部分は、配列番号22のGIPの初めの18、好ましくは15アミノ酸配列、又は任意の他の動物の対応するオルソログを指す。
【0036】
好適な一実施態様では、GIP断片は、配列番号 22のアミノ酸配列7-10 (配列番号64)、好ましくは4-10 (配列番号67)、好ましくは4-13 (配列番号32)、好ましくは1-10 (配列番号29)、好ましくは4-11 (配列番号45)、好ましくは7-15 (配列番号65)、より好ましくは4-15 (配列番号66)、さらにより好ましくは1-15 (配列番号27)、又は任意の他の動物のGIP対応オルソログを含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。
好適な一実施態様では、GIP断片は、配列番号 22のアミノ酸配列7-10 (配列番号64)、好ましくは4-10 (配列番号67)、好ましくは4-13 (配列番号32)、好ましくは1-10 (配列番号29)、好ましくは4-11 (配列番号45)、好ましくは7-15 (配列番号65)、より好ましくは4-15 (配列番号66)、さらにより好ましくは1-15 (配列番号27)、又は任意の他の動物のGIP対応オルソログを含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなるものであり、7-10配列の1アミノ酸、又は4-10、4-13、1-10、4-11、4-15、7-15及び1-15アミノ酸配列の3、好ましくは2、さらにより好ましくは1アミノ酸が、好ましくは欠失、挿入及び/又は置換によって、より好ましくは保存的置換によって変異されている。当分野の技術者に理解される、保存的置換には、アイソステリックな置換、アミノ酸の荷電、極性、芳香族、脂肪族又は疎水性の性質が維持される置換が含まれる。典型的な保存的置換は、以下の一グループ内のアミノ酸間の置換である;Gly, Ala;Val, Ile, Leu;Asp, Glu;Asn, Gln;Ser, Thr, Cys;Lys, Arg;及びPhe, Tyr。
【0037】
更なる好適な一実施態様では、GIP断片は、(a) 配列番号27;(b) 配列番号29;(c) 配列番号32;(d) 配列番号45;及び(e) 配列番号27、29、32又は45と少なくとも80%、又は好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、又は最も好ましくは少なくとも95%の相同性であるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。
好適な一実施態様では、GIP断片は、配列番号22-26又は配列番号63のアミノ酸20-23、好ましくは19-25、より好ましくは16-30、又は任意の動物の対応するオルソログのGIP配列を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。更なる好適な実施態様では、GIP断片は、(a) 配列番号31;(b) 配列番号43;及び(e) 配列番号31又は43と少なくとも80%、又は好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、又は最も好ましくは少なくとも95%の相同性であるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。更なる好適な一実施態様では、GIP断片は、配列番号22-26又は配列番号63のアミノ酸20-23、好ましくは19-25、より好ましくは16-30、又は任意の他の動物の対応するオルソログのGIP配列を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなるものであり、20-23アミノ酸配列の1アミノ酸、又は19-25、好ましくは16-30アミノ酸配列の3、好ましくは2、さらにより好ましくは1アミノ酸が、好ましくは欠失、挿入及び/又は置換によって、より好ましくは保存的置換によって変異されている。
【0038】
好適な一実施態様では、GIP断片は、配列番号22-26又は配列番号63のアミノ酸31-34、好ましくは30-34、より好ましくは28-34、より好ましくは30-37、より好ましくは28-37、より好ましくは31-42、より好ましくは28-42又は任意の動物の対応するオルソログのGIP配列を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。更なる好適な実施態様では、GIP断片は、(a) 配列番号28;(b) 配列番号44;(c) 配列番号68;及び(d) 配列番号28、44又は68と少なくとも80%、又は好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、又は最も好ましくは少なくとも95%の相同性であるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。好適な一実施態様では、GIP断片は、配列番号22-26又は配列番号63のアミノ酸31-34、好ましくは30-34、より好ましくは28-34、より好ましくは26-34、より好ましくは30-37、より好ましくは28-37、より好ましくは26-37、より好ましくは31-42、より好ましくは28-42、より好ましくは26-42又は任意の他の動物の対応するオルソログのGIP配列を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなるものであり、31-34又は30-34配列の1アミノ酸、又は28-34、30-37、28-37、31-42又は28-42配列の3、好ましくは2、さらにより好ましくは1アミノ酸が、好ましくは欠失、挿入及び/又は置換によって、より好ましくは保存的置換によって変異されている。
【0039】
好適な一実施態様では、GIP断片ないしはGIPタンパク質は、上記のGIPタンパク質ないしはGIP断片に融合したひと続きの親水性のアミノ酸をさらに含有する。本明細書中で用いるひと続きの親水性のアミノ酸は、その配列の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%のアミノ酸が親水性アミノ酸である、ひと続きのアミノ酸を指す。好適な実施態様では、ひと続きのアミノ酸は、最大7、好ましくは6、5、4、より好ましくは3、より好ましくは2又は1のアミノ酸からなる。親水性アミノ酸の付加により、GIP断片ないしはGIPタンパク質の溶解性が増す。更なる好適な一実施態様では、親水性アミノ酸はグリシン、セリン、スレオニン及び荷電性アミノ酸である。更なる好適な一実施態様では、荷電性アミノ酸は、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸である。好適な一実施態様では、ひと続きのアミノ酸は、アミノ酸配列DD、KK、RR、DE、ED;EE、KR、RKを含むか、ないしはこれらからなる。
好適な一実施態様では、GIP断片は、(a) C末端にDD又はKKが付加された配列番号22のアミノ酸1-12;(b) C末端にDD又はKKが付加された配列番号22のアミノ酸1-13;(c) C末端にDD又はKKが付加された配列番号22のアミノ酸1-14(配列番号69 及び70);(d) C末端にDD又はKKが付加された配列番号22のアミノ酸1-15(配列番号71及び72)及び(e) C末端にDD又はKKが付加された配列番号22のアミノ酸1-11からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。
【0040】
一実施態様では、本発明の少なくとも一の抗原は、少なくとも2つのGIP断片、好ましくは2つのGIP断片を含有する。好適な実施態様では、2つのGIP断片は2つの異なるGIP断片である。好適な一実施態様では、2つのGIP断片は一ポリペプチド内に融合される。一実施態様では、2つのGIP断片は直接融合する。他の実施態様では、2つのGIP断片はスペーサー配列を介して融合する。
本発明の好適な一実施態様では、少なくとも一の第一付着部位を有するVLPは、少なくとも一のペプチド結合を介して少なくとも一の第二付着部位を有する本発明のGIPに結合する。本発明のGIP、好ましくはGIP断片、より好ましくは50アミノ酸以下、さらにより好ましくは30アミノ酸よりも少ない断片をコードする遺伝子が、VLPのコートタンパク質をコードする遺伝子の内部に又は好ましくはNないしC末端の何れかにインフレーム結合する。ウイルス、好ましくはRNAファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片へ本発明の抗原を融合する実施態様は、国際公開公報2004/009124の62頁20行目から68頁17行目に開示されており、出典明記によって本明細書中に組み込まれる。好ましくは、融合タンパク質は発現の際にVLP内に集合体化する能力を保持しており、その集合体化は電子顕微鏡で調べることができる。
隣接するアミノ酸残基を付加して、コートタンパク質と外来性のエピトープの間の間隙を増やしてもよい。隣接配列に用いるためにはグリシン残基及びセリン残基が特に好ましい。このような隣接配列によってフレキシビリティが付加される。このフレキシビリティの付加により、VLPサブユニットの配列内へ外来性の配列を融合する際に生じうる不安定性作用が軽減され、外来性のエピトープの存在による集合体化の阻害が軽減される。
【0041】
他の好適な実施態様では、本発明のGIP、好ましくはGIP断片、さらにより好ましくはアミノ酸配列 配列番号27-32、配列番号43-45、配列番号66又は68を有するGIP断片を、RNAファージAP205のコートタンパク質、その変異体ないしはその断片のN末端又はC末端に融合する。更なる好適な一実施態様では、融合タンパク質は、スペーサーをさらに含有するものであり、該スペーサーはAP205のコートタンパク質、その断片ないしはその変異体と本発明のGIPの間に位置する。
本発明の好適な一実施態様では、組成物は、少なくとも一の共有結合を介して少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の本発明のGIPに結合した少なくとも一の第一付着部位を有するウイルス様粒子を含有するか、あるいは本質的にこれらからなるものであり、該共有結合は非ペプチド結合である。本発明の好適な実施態様では、第一付着部位は、アミノ基、好ましくはリジン残基のアミノ基を含むか、好ましくはそのものである。本発明の他の好適な実施態様では、第二付着部位は、スルフヒドリル基、好ましくはシステインのスルフヒドリル基を含むか、好ましくはそのものである。本発明の他の好適な実施態様では、第二付着部位は、少なくとも一の抗原と結合する、好ましくは共有結合的に結合するマレイミド基を含むか、好ましくはそのものである。
【0042】
本発明のとても好ましい実施態様では、少なくとも一の第一付着部位は、アミノ基、好ましくはリジン残基のアミノ基を含むか、好ましくはそのものであり、少なくとも一の第二付着部位は、スルフヒドリル基、好ましくはシステインのスルフヒドリル基を含むか、好ましくはそのものである。
本発明の好ましい一実施態様では、本発明のGIPは、典型的にかつ好ましくはヘテロ二官能性架橋剤を使用して、化学的架橋によりVLPに結合している。好ましい実施態様では、ヘテロ二官能性架橋剤は、好ましくはアミノ基、より好ましくはVLPのリジン残基(一又は複数)のアミノ基を有する好ましい第一付着部位と反応可能な官能基と、好ましい第二付着部位、すなわち本発明のGIPに元もとある、ないしは人工的に付加され、場合によっては還元による反応に利用される、好ましくはシステイン(一又は複数)残基のスルフヒドリル基と反応可能なさらなる官能基を含む。いくつかのヘテロ二官能性架橋剤が当該分野で知られている。これらには、好ましい架橋剤であるSMPH(Pierce)、スルホ-MBS、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMPB、スルホ-SMCC、SVSB、SIA、及び例えばPierce Chemical Companyから入手可能な他の架橋剤が含まれ、アミノ基に対して反応可能な一官能基とスルフヒドリル基に対して反応可能な一官能基を有する。上述した全ての架橋剤により、アミノ基との反応後にアミド結合が、またスルフヒドリル基とチオエーテル結合が形成される。本発明の実施に適した他のクラスの架橋剤は、カップリング時に本発明のGIPとVLPとの間にジスルフィド結合を導入することにより特徴付けられる。このクラスに属する好ましい架橋剤には、例えばSPDP及びスルホ-LC-SPDP(Pierce)が含まれる。
【0043】
好ましい実施態様では、本発明の組成物はリンカーをさらに含有している。本発明のGIPにおける第二の付着部位の操作は、この発明の開示に従い、好ましくは第二の付着部位として適切な少なくとも一のアミノ酸を含むリンカーとの結合により達成される。よって、本発明の好ましい実施態様では、リンカーは少なくとも一の共有結合、好ましくは典型的には少なくとも一のペプチド結合により、本発明のGIPに結合している。好ましくは、リンカーは、第二の付着部位を含む又はそれからなる。さらに好ましい実施態様では、リンカーは好ましくはシステイン残基のスルフヒドリル基を含む。他の好ましい実施態様では、リンカーはシステイン残基である。
リンカーの選択は、本発明のGIPの性質、その生化学的特性、例えばpI、電荷分布、及びグリコシル化に依存するであろう。一般的に、フレキシブルなアミノ酸リンカーが好まれる。本発明のさらに好ましい実施態様では、リンカーはアミノ酸からなり、さらに好ましくは、リンカーは最大で25、好ましくは最大で20、より好ましくは最大で15のアミノ酸からなる。リンカーの好ましい実施態様は:(a) CGG又はCG/GC;(b)N-末端ガンマ1-リンカー(例えばCGDKTHTSPP、配列番号48);(c)N-末端ガンマ3-リンカー(例えばCGGPKPSTPPGSSGGAP、配列番号59);(d)Igヒンジ領域;(e)N-末端グリシンリンカー(例えばGCGGGG、配列番号49);(f)n=0-12、k=0-5である(G)kC(G)n;(g)N-末端グリシン-セリンリンカー(さらに一つのシステインを有するn=1-3の(GGGGS)n(例えば配列番号50、n=1の実施態様に相当));(h)n=0-3、k=0-5、m=0-10、l=0-2である(G)kC(G)m(S)l(GGGGS)n(例えば配列番号51、n=1、k=1、l=1及びm=1の実施態様に相当);(i)GGC;(k)GGC-NH2;(l)C-末端ガンマ1-リンカー(例えばDKTHTSPPCG、配列番号52);(m)C-末端ガンマ3-リンカー(例えばPKPSTPPGSSGGAPGGCG、配列番号53);(n)C-末端グリシンリンカー(GGGGCG、配列番号54);(o)n=0-12及びk=0-5である(G)nC(G)k;(p)C-末端グリシン-セリンリンカー(さらに一つのシステインを有するn=1-3の(SGGGG)n(例えば配列番号55、n=1の実施態様に相当));(q)n=0-3、k=0-5、m=0-10、l=0-2及びo=0-8である(G)m(S)l(GGGGS)n(G)oC(G)k(例えば配列番号56、n=1、k=1、l=1、o=1及びm=1の実施態様に相当)からなる群から選択される。さらに好ましい実施態様では、リンカーは本発明のGIPのN-末端に融合している。本発明の他の好ましい実施態様では、リンカーは本発明のGIPのC-末端に融合している。
【0044】
この発明に係る好ましいリンカーは、第2付着部位としてシステイン残基をさらに含むグリシンリンカー(G)n、例えばN-末端グリシンリンカー(GCGGGG)及びC-末端グリシンリンカー(GGGGCG)である。さらに好ましい実施態様は、C-末端グリシン-リジンリンカー(GGKKGC、配列番号57)及びN-末端グリシン-リジンリンカー(CGKKGG、配列番号58)、ペプチドのC-末端のGGCG、GGC又はGGC-NH2(「NH2」はアミド化を表す)リンカー、又はそのN-末端のCGGのリンカーである。一般的に、グリシン残基は、第2付着部位として使用されるシステインと大きなアミノ酸との間に挿入されて、カップリング反応中での、より大きなアミノ酸の潜在的な立体障害が回避される。
好適な一実施態様では、リンカー配列はGCであり、好ましくはGCはGIPタンパク質ないしはGIP断片のC末端、好ましくは配列番号22-27、29、31-32、43又は45に結合する。他の好適な実施態様では、リンカー配列はCGであり、好ましくはCGはGIPタンパク質ないしはGIP断片のN末端、好ましくは配列番号28、44又は68に融合される。
本発明のGIPに本来備わっているかないしは付加された、第二付着部位として働くシステイン残基は還元状態にあって、活性化担体上のヘテロ二官能性架橋剤、と反応するものである。すなわち、遊離スルフヒドリル基を有する遊離システインないしはシステイン残基は有用であるといえる。
【0045】
上記の好適な方法によるヘテロ二官能性架橋剤を用いることによるVLPへの本発明のGIPの結合により、正方向の様式でVLPに本発明のGIPをカップリングさせることができる。VLPに本発明のGIPを連結させるための他の方法には、カルボジイミドEDC、及びNHSを使用し、本発明のGIPをVLPに架橋させる方法が含まれる。本発明のGIPは、例えばSATA、SATP又はイミノチオランを用いた反応を介して、まずチオラート化されてもよい。次いで、必要であれば脱保護化した後に本発明のGIPを以下のようにVLPにカップリングしてもよい。過剰なチオラート化剤を分離した後、本発明のGIPを、システイン反応基を含有し、システイン残基に対して反応可能な少なくとも一又はいくつかの官能基を表出するヘテロ二官能性架橋剤にて予め活性化させた、VLPと反応させる。このとき本発明のチオラート化GIPは上記に記載のように反応することができる。場合によっては、少量の還元剤が反応混合物中に含まれる。さらなる方法では、ホモ二官能性架橋剤、例えばグルタルアルデヒド、DSG、BM[PEO]4、BS3、(Pierce)、又はVLPのアミノ基又はカルボキシル基に対して反応する官能基を有する他の既知のホモ二官能性架橋剤を使用して、本発明のGIPをVLPに結合させる。
【0046】
好ましい一実施態様では、第一の付着部位は、スルフヒドリル基、さらに好ましくは、VLPを構成するか又はそれにより本質的になるコートタンパク質に天然に又は人工的に付加されるスルフヒドリル基を含むか又は好ましくは該基である。第二の付着部位は、抗原に化学的に結合し、好ましくは抗原に共有的に結合し、より好ましくは抗原のアミノ基に共有的に結合し、さらに好ましくは抗原のN-末端アミノ酸のアミノ基と、リンカーのNHS-エステル基により共有的に結合する、SMPH(スクシンイミジル-6-[β-マレイミドプロピオンアミド]ヘキサノアート)又はMBS(m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)等の、リンカーのマレイミド基である。好ましい一実施態様では、少なくとも一の抗原、好ましくは50以下、さらにより好ましくは30以下のアミノ酸、さらにより好ましくは配列番号22-27、29、31-32、43又は45のGIPタンパク質ないしはGIP断片は、好ましくは化学的に合成され、マレイミド基は、好ましくはN-末端アミノ酸のアミノ基に結合している。第一の付着部位及び第二の付着部位は、チオ-エーテル結合を介して結合している。
選択的な好ましい一実施態様では、第一の付着部位は、アミノ基、好ましくはVLPに含まれるまたは本質的になるコートタンパク質に天然に生じるないしは人工的に付加されたリジンのアミノ基を含むか、又は好ましくは該基である。第二の付着部位は、上の段落で詳述されたようなリンカーのマレイミド基である。VLPのアミノ基は、ヘテロ二官能性架橋剤、例えばN-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセタート(SATA)又は2-イミノチオランにより、スルフヒドリル基に誘導体化され、これがついでリンカーのマレイミド基と反応する。
【0047】
少なくとも一のマレイミド基を有する好ましいリンカーは、例えばSMPH、スルホ-MBSである。さらに好ましいリンカーは、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMPB、スルホ-SMCC、SVSB、SIA、及び例えばPierce Chemical Companyから入手可能な他の架橋剤で、スルフヒドリル基と反応性のある一の官能基と、アミノ基と反応性のある一の官能基を有するものである。
本発明の他の実施態様では、組成物は、化学的な相互作用を介して本発明のGIPに結合したウイルス様粒子を含むか、ないしは本質的にそれからなるものであり、この相互作用の少なくとも一は共有結合ではない。例えば、VLPをビオチン化してストレプトアビジン-融合タンパク質として本発明のGIPを発現することによって本発明のGIPへのVLPの結合が起こる。また、他の結合対、例えばリガンド-レセプター、抗原-抗体も、ビオチン-アビジンと同様の形で、カップリング試薬として使用することができる。
米国特許第5698424号には、キャプシドを形成可能なバクテリオファージMS-2の修飾コートタンパク質が記載されており、ここでコートタンパク質はN-末端ヘアピン領域にシステイン残基を挿入し、非システインアミノ酸残基により、N-末端ヘアピン領域の外側に位置する各システイン残基を置換することにより修飾される。ついで、挿入されたシステイン残基は、所望される分子種に直接結合し、エピトープ又は抗原性タンパク質等として提示される。
【0048】
しかしながら、キャプシドに露出した遊離のシステイン残基が存在すると、ジスルフィド架橋の形成により、キャプシドのオリゴマー化に至りうることを我々は記す。さらに、ジスルフィド結合によるキャプシドと抗原性タンパク質との結合は、特にスルフヒドリル-部分含有分子に対して不安定であり、さらに、チオエーテル付着よりも血清中で安定性が低下する(Martin FJ. 及び Papahadjopoulos D.(1982) Irreversible Coupling of Immunoglobulin Fragments to Preformed Vesicles. J. Biol. Chem. 257:286-288)。
よって、さらに非常に好ましい実施態様では、VLPと少なくとも一の抗原との結合は、ジスルフィド結合を含まない。さらに好ましくは、少なくとも一の第二の付着は、スルフヒドリル基を含むか、又は該基である。さらにまた本発明の非常に好ましい実施態様では、VLPと少なくとも一の抗原との結合は、硫黄-硫黄結合を含まない。さらに非常に好ましい実施態様では、前記少なくとも一の第一の付着部位は、システインのスルフヒドリル基でないか、又は該基を含まない。またさらに非常に好ましい実施態様では、前記少なくとも一の第一の付着部位は、スルフヒドリル基ではないか、又は該基を含まない。
本発明の好適な一実施態様では、VLPは宿主内で組み換えて産生されるものであり、該VLPは宿主RNA、好ましくは宿主核酸を本質的に含まないか、該VLPは宿主DNA、好ましくは宿主核酸を本質的に含まない。好適な一実施態様では、RNAファージのVLPは宿主内で組み換えて産生されるものであり、該RNAファージのVLPは宿主RNA、好ましくは宿主核酸を本質的に含まない。
【0049】
更なる好適な一実施態様では、組成物は、VLPに結合した、好ましくはVLP内にパッケージ化ないしは封入された少なくとも一のポリ陰イオン性高分子を含有する。更なる好適な実施態様では、ポリ陰イオン性高分子はポリグルタミン酸及び/又はポリアスパラギン酸である。好適な一実施態様では、VLPはRNAファージのものである。宿主RNA、好ましくは宿主核酸の量を少なくするないしは排除することにより、GIPに特異的な強力な抗体応答を維持しながら、望ましくないT細胞応答、例えば炎症性T細胞応答や障害性T細胞応答、及び他の望ましくない発熱などの副作用が最小限化ないしは低減される。
本質的に宿主RNA、好ましくは宿主の核酸を欠く:本明細書中で用いられる「本質的に宿主RNA(又はDNA)、好ましくは宿主の核酸を欠く」なる用語は、VLPに含有される宿主RNA(又はDNA)、好ましくは宿主の核酸の量を意味し、その量は典型的に好ましくは、VLPmg当たり30μgより少ない、好ましくは20μgより少ない、より好ましくは10μgより少ない、さらにより好ましくは8μgより少ない、さらにより好ましくは6μgより少ない、さらにより好ましくは4μgより少ない、最も好ましくは2μgより少ない。上記の範囲内で用いられる宿主は、VLPが組み換えて産生される宿主を意味する。RNA(又はDNA)、好ましくは核酸の量を測定する従来の方法は当業者に周知である。本発明によって、RNA、好ましくは核酸の量を測定する典型的で好適な方法は、同じ指定代理人により2005年10月5日に出願したPCT/EP2005/055009の実施例17に記載される。典型的に好ましくは、Qβ以外のVLPを含んでなる本発明の組成物についてRNA(又はDNA)、好ましくは核酸の量を測定するためには、同一、同種又は類似の条件を用いる。最終的に必要とされる条件の変更は当業者の知識の範囲内である。
【0050】
本明細書中で用いる「ポリ陰イオン性高分子」なる用語は、陰性荷電の反復基を含有する相対的に高分子量の分子を指し、その構造は、実際ないしは概念的には、相対的に低分子量の分子に由来するユニットの複合的な反復物を本質的に含有する。
一態様では、本発明は、本発明の組成物を含有するワクチン組成物を提供する。好適な一実施態様では、ワクチン組成物内のVLPに結合した本発明のGIPは、動物、好ましくは哺乳動物ないしはヒト起源のものである。更なる好適な実施態様では、本発明のGIPはヒト、ウシ、ニワトリ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ブタ又はウマ起源である。
好適な一実施態様では、ワクチン組成物はさらに少なくとも一のアジュバントを含有する。少なくとも一のアジュバントの投与は、本発明の組成物の投与の前、あるいはそれと同時、あるいはその後であってもよい。本明細書中で用いられる「アジュバント」なる用語は、本発明のワクチンおよび薬剤組成物のそれぞれと組み合わせると、より亢進した免疫応答を供給しうる、宿主内の貯蔵所となる物質ないしは免疫応答の非特異的刺激因子を意味する。様々なアジュバントが用いられうる。例として、完全および不完全なフロイントアジュバント、アルミニウム水酸化物および修飾ムラミルジペプチドなどがある。更なるアジュバントは、ミネラルゲル、例えば酸化アルミニウム三水和物、界面活性物質、例えばリゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールおよび潜在的に有用なヒトアジュバント、例えばBCG (ウシ型弱毒結核菌ワクチン)およびコリネバクテリウムパルバムである。このようなアジュバントも当分野で公知である。本発明の組成物とともに投与されうる更なるアジュバントには、モノホスホリル脂質免疫修飾物質、AdjuVax 100a、QS-21、QS-18、CRL1005、アルミニウム塩類(ミョウバン)、MF-59、OM-174、OM-197、OM-294およびVirosomalアジュバント技術が含まれるが、これらに限定するものではない。また、アジュバントは、これらの物質の混合物を含んでもよい。
【0051】
他の好ましい実施態様では、本発明のワクチン組成物はアジュバントを欠く。本発明の有利な特性は、アジュバントを含まない場合でさえ、組成物の免疫原性が高いことである。さらにアジュバントを含んでいないので、自己抗原に対するワクチン接種上の安全上の問題を呈する所望されない炎症性T細胞反応の発生が最小となる。よって、本発明のワクチンの患者への投与は、好ましくはワクチンの投与前、投与と同時、又は投与後に同じ患者に少なくとも一のアジュバントを投与することなく、なされるであろう。
更なる態様では、本発明は、ヒトのGIP関連疾患、特に肥満の治療のための医薬の製造における、(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するウイルス様粒子;と(b) 少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の非ヒト、好ましくは非ヒト脊椎動物の本発明のGIP;を含んでなる組成物であって、(a)と(b)が該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して結合している、組成物の使用を提供する。少なくとも一の非ヒトの本発明のGIP、例えばネコ、イヌ、ウシ、ラット又はマウスの本発明のGIPを含有する好適な実施態様は、ヒトGIPを認識する交差抗体応答を誘導することができる。
【0052】
さらに、本発明は、本発明のワクチンが動物又はヒトに投与されることを含む免疫化方法を開示する。動物は、好ましくはネコ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシ、イヌ、ラット、マウスなどの哺乳動物、特にイヌ又はネコ、好ましくは愛玩用ネコである。ワクチンは、当分野で公知の様々な方法によって動物又はヒトに投与されてもよいが、通常、注射、注入、吸入、経口投与又は他の適切な理学的方法によって投与されうる。コンジュゲートは、選択的に、筋肉内、静脈内、粘膜経由、経皮、鼻腔内、腹膜内又は皮下投与されてもよい。投与のためのコンジュゲート成分は、滅菌水(例えば、生理食塩液)又は非水溶溶及び懸濁液などである。非水溶性溶媒の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、及び注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルなどがある。担体又は密封包帯を、皮膚透過性を増やして、抗原吸収を上げるために用いてもよい。
投与される個体に投与が合っていれば、本発明のワクチンは「製薬的に受容可能」であるといえる。さらに、本発明のワクチンは、「治療的に有効な量」(すなわち、所望の生理学的効果を示す量)で投与されうる。免疫応答の性質又は種類は本発明で開示される因子に限定するものではない。以下のメカニズムの説明によって本発明が限定されるものではなく、本発明のワクチンは、GIPに結合する抗体であり、その濃度を抑え、及び/又は生理学的及び病理学的な働きを阻害する抗体を誘導しうる。
【0053】
他の態様では、本発明は、本発明で述べられる組成物と受容可能な製薬的担体を含有する薬剤組成物を提供する。本発明のワクチンが個体に投与される場合、コンジュゲートの有効性を改善するために望ましい他の物質、アジュバント、バッファー又は塩類を含有する形態でありうる。薬剤組成物の調整における使用に好適な材料の例は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES (Osol, A, ed., Mack Publishing Co., (1990))を含む多くの情報源に示される。
更なる一態様では、本発明は、本発明の組成物、又は本発明のワクチン組成物、又は本発明の薬剤組成物の産生方法であって、(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するVLPを供給し;(b) 少なくとも一の第二付着部位を有するGIPタンパク質ないしはGIP断片である、少なくとも一の抗原を供給し;そして(c) 該VLPを該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して少なくとも一の抗原に結合して該組成物を産生させる、ことを含む産生方法を提供する。
【0054】
更なる好適な実施態様では、少なくとも一の第一付着部位を有するVLPを提供する工程は、(a) 該ウイルス様粒子を該ウイルス、好ましくは該RNAバクテリオファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片に分解して;(b) 該コートタンパク質、その変異体ないしはその断片を精製して;(c) 該精製された該ウイルス、好ましくは該RNAバクテリオファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片をウイルス様粒子に再集合体化させる工程をさらに含むものであり、このときの該ウイルス様粒子は宿主RNA(又はDNA)、好ましくは宿主核酸を本質的に欠いているものである。より更なる好適な実施態様では、前記の精製したコートタンパク質の再集合体化は、少なくとも一のポリ陰イオン性高分子、好ましくはポリグルタミン酸及び/又はポリアスパラギン酸の存在下にてなされる。
さらに一態様では、本発明は、GIPが重要な病理学的作用を及ぼす疾患又は症状、特に肥満を予防する、治療する及び/又は軽減するために用いられうる組成物を提供する。
【0055】
更なる態様では、本発明は、少なくとも一の第一組成物と少なくとも一の第二組成物を具備してなるキットであって、該第一組成物が、(a) 少なくとも一の第一付着部位を有する第一ウイルス様粒子(VLP);(b) 少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の第一抗原;を含んでなり、該少なくとも一の第一抗原がGIPタンパク質ないしはGIP断片であり、(a)と(b)が該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して結合しているものであり;該第二組成物が、(c) 少なくとも一の第一付着部位を有する第二ウイルス様粒子(VLP);(d) 少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の第二抗原;を含んでなり、該少なくとも一の第二抗原が、(i) グレリンないしはグレリンペプチド;(ii) ニコチン、コチニンないしはノルニコチン;及び(iii) 第二GIPタンパク質ないしは第二GIP断片からなる群から選択される分子であるかその分子を含み、該第二GIPタンパク質ないしは第二GIP断片が第一組成物に含有される第一GIPタンパク質ないしはGIP断片と異なり;(c)と(d)が該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して結合しているものである、キットを提供する。
好適な実施態様では、第一組成物は本発明の組成物であり、第一ウイルス様粒子は本発明のウイルス様粒子であり、第一抗原は本発明のGIPである。同様に、第二ウイルス様粒子は本発明のウイルス様粒子である。したがって、この特徴、好適な実施態様、第一組成物の準備と使用、第一ウイルス様粒子及び第一抗原はすべて記載されており、本発明において定義される。
好適な一実施態様では、第一VLPと第二VLPは異なる。好適な一実施態様では、第一VLPと第二VLPは同じである。本発明の好適な一実施態様では、第一及び/又は第二ウイルス様粒子はRNAファージのものであり、好ましくは該RNAファージはRNAファージQβ、fr、GA又はAP205である。好適な一実施態様では、第一ウイルス様粒子及び/又は第二ウイルス様粒子は、RNAファージの組み換えタンパク質、その変異体又はその断片を含むか、それらからなる。更なる好適な一実施態様では、第一及び第二のVLPは何れもRNAファージ、好ましくはRNAファージQβのものである。好適な一実施態様では、ウイルス、好ましくはRNAファージの第一及び/又は第二のVLPは、宿主内で組み換えて産生されるものであり、該第一及び/又は該第二のVLPは本質的に宿主RNAを含まない、好ましくは宿主の核酸を含まない。
【0056】
好適な一実施態様では、グレリンないしグレリンペプチドは、(a) ヒトグレリンないしグレリンペプチド;(b) イヌグレリンないしグレリンペプチド;(c) ネコグレリンないしグレリンペプチド;(d) ウシグレリンないしグレリンペプチド;(e) ブタグレリンないしグレリンペプチド;(f) ヒツジグレリンないしグレリンペプチド;及び(g) マウスグレリンないしグレリンペプチドからなる群から選択される。更なる好適な実施態様では、グレリンないしグレリンペプチドは、(a) 配列番号33;(b) 配列番号35;(c) 配列番号40;(d) 配列番号36;(e) 配列番号37;(f) 配列番号38;(g) 配列番号46 (GSSFLSPEHQKLQ);及び(h) 配列番号47 (GSSFLSPEHQKVQ)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。
少なくとも一の第二抗原がグレリンないしグレリンペプチドである、第二組成物の好適な実施態様の調整及び使用は、特許出願国際公開公報2004/009124及び国際公開公報2005/068639に開示されており、この2つは出典明記により本明細書中に組み込まれる。本発明の第二組成物の更なる好適な実施態様は、国際公開公報2004/009124の特に請求項1ないし31、並びに国際公開公報2005/068639の特に請求項1ないし29にはっきりと定義されており、出典明記により本明細書中に組み込まれる。
少なくとも一の第二抗原がニコチン、コチニンないしノルニコチンである、第二組成物の好適な実施態様の調整及び使用は、同じ指定代理人により出願された特許出願国際公開公報2004/009116に開示されている。この開示内容は出典明記により本明細書中に組み込まれる。本発明の第二組成物の更なる好適な実施態様は、国際公開公報2004/009116の特に請求項1ないし50にはっきりと定義されており、出典明記により本明細書中に組み込まれる。
【0057】
好適な一実施態様では、少なくとも一の第二抗原は、(a) 6-(カルボキシメチルウレイド)-(±)-ニコチン (CMUNic);(b) トランス-3’-アミノメチルニコチン コハク酸;(c) O-スクシニル-3'-ヒドロキシメチル-ニコチン;(d)トランス-4’-カルボキシコチニン;(e) N-[1-オキソ-6-[(2S)-2-(3-ピリジル)-1-ピロリジニル] ヘキシル]-β-アラニン;(f) 4-オキソ-4-[[6-[(5S)-2-オキソ-5-(3-ピリジニル)-1-ピロリジニル]]ヘキシル] アミノ]-ブタン酸;(g) (2S)-2-(3-ピリジニル)-1-ピロリジンブタン酸 フェニルメチル エステル;(h) (2R)-2-(3-ピリジニル)-1-ピロリジンブタン酸 フェニルメチル エステル;(i) コチニン 4'-カルボン酸, N-スクシニル-6-アミノ-(±)-ニコチン;(j) 6-(.シグマ.-アミノカプラミド)-( ±)-ニコチン;(k) 6-(.シグマ.-アミノカプラミド)-(±)-ニコチン;(l) 3’ アミノメチルニコチン;(m) 4’アミノメチルニコチン;(n) 5’ アミノメチルニコチン;(o) 5 アミノニコチン;(p) 6 アミノニコチン;(q) S-1-(b-アミノエチル) ニコチニウムクロライド;(r) S-1-(b-アミノエチル) コチニウムクロライド;及び(s) N-スクシニル-6-アミノ-(±)-ニコチン、からなる群から選択される物質から形成される。
更なる好適な一実施態様では、第二組成物は、O-スクシニル-3'-ヒドロキシメチル-ニコチンを含有する。更なる好適な一実施態様では、第二組成物はO-スクシニル-トランス-3'-ヒドロキシメチル-ニコチンを含有する。更なる好適な一実施態様では、第二組成物は、RNAファージのウイルス様粒子、好ましくはQβウイルス様粒子、さらに好ましくはRNAファージQβのコートタンパク質を含むか好ましくはこれからなるQβウイルス様粒子にコンジュゲートしたO-スクシニル-3'-ヒドロキシメチル-ニコチンを含有する。
【0058】
好適な一実施態様では、少なくとも一の第二抗原は、O-スクシニル-3'-ヒドロキシメチル-ニコチンを含有する。更なる好適な一実施態様では、第二抗原はO-スクシニル-トランス-3'-ヒドロキシメチル-ニコチンを含有するか、好ましくはそのものである。好適な一実施態様では、第二抗原はトランス-3'-ヒドロキシメチル-ニコチンを含有するか、好ましくはそのものである。
好適な一実施態様では、第二組成物に含有される第二付着部位は、(a) アミン;(b) アミド;(c) カルボキシ;(d) カルボニル;(e) スルフヒドリル;(f) ヒドロキシル;(g) アルデヒド;(h) ジアゾニウム;(i) アルシルハロゲニド(Alcylhalogenid);(j) ヒドラジン;(k) ビニル;(l) マレイミド;(m) スクシンイミド;及び(n) ヒドラジンからなる群から選択された反応基を含有するか、好ましくはそのものである。好適な一実施態様では、少なくとも一、好ましくは一の共有結合を介する第一付着部位と第二付着部位との結合は、第一付着部位を有する前記のO-スクシニル-3'-ヒドロキシメチル-ニコチンのO-スクシニル部分の反応によって形成される。更なる好適な一実施態様では、少なくとも一、好ましくは一の共有結合を介する第一付着部位と第二付着部位との前記の結合は、アミド結合によって形成される。更なる好適な一実施態様では、第一付着部位は、アミノ基、好ましくはリジンのアミノ基である。更なる好適な一実施態様では、第二付着部位はカルボキシル基を含むか、好ましくはそのものである。更なる好適な一実施態様では、少なくとも一、好ましくは一の共有結合を介する第一付着部位と第二付着部位との結合は、第一付着部位であるリジン残基のアミノ基を有する、O-スクシニル-3'-ヒドロキシメチル-ニコチンのO-スクシニル部分の反応によって形成される。
【0059】
好ましくは、第二組成物は、RNAファージのアミン基、好ましくはRNAファージのリジンのアミン基を有するコハク酸のカルボキシル基を反応させることによって、コハク酸モノ-(1-メチル-2-ピリジン-3-イル-ピロリジン-3-イルメチル)エステルから形成される。
反応を行うための好適な方法は、カルボジイミド、好ましくはECD、さらにより好ましくはDCCによってカルボキシル基を活性化させることである。活性化させたカルボキシル基はRNAファージに直接共有結合させるか、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルの付加によるN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルに変換させる。NHSエステルは、活性化したカルボキシル基による反応後に直接用いるか、単離した後にRNAファージと反応させる。
活性なカルボキシル基への選択的な試薬は、ウロニウム塩(uronium salts) 、例えばHATU(2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロリン酸)又はHBTU(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロリン酸)である。コハク酸モノ-(1-メチル-2-ピリジン-3-イル-ピロリジン-3-イルメチル)エステルは、HATUないしHBTAによって活性化され、対応する活性化カルボキシル基がアミンと直接反応する。
【0060】
好適な一実施態様では、少なくとも一の第二抗原はGIPタンパク質ないしはGIP断片であり、該第二のGIPタンパク質ないしはGIP断片は、第一組成物に含有される第一のGIPタンパク質ないしはGIP断片と異なる。好適な一実施態様では、第二のGIPタンパク質ないしはGIP断片は、第一のGIPタンパク質ないしはGIP断片に含有されるか又はそれらからなる同じアミノ酸配列と比べて、異なる化学的修飾を含有するアミノ酸配列を含有するか、これらからなる。好適な一実施態様では、第二のGIPタンパク質ないしはGIP断片は、第一のGIPタンパク質ないしはGIP断片に含有されるか又はそれらからなる同じアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を含有するか、これらからなる。好適な一実施態様では、第二のGIPタンパク質ないしはGIP断片は、第一のGIPタンパク質ないしはGIP断片に含有されるか又はそれらからなる抗原性部位と比べて、少なくとも一の異なる抗原性部位を含有するか、これらからなる。好適な一実施態様では、第二のGIPタンパク質ないしはGIP断片は、第一のGIPタンパク質ないしはGIP断片に含有されるか又はそれらからなる抗原性部位と比べて、異なる抗原性部位を含有するか、これらからなる。さらに好適な一実施態様では、第一のGIP断片はGIPのアミノ部分の少なくとも一の抗原性部位を含有するか、これらからなり、第二のGIP断片はGIPのカルボキシル部分の少なくとも一の抗原性部位を含有するか、これらからなる。GIP断片のカルボキシル部分は、配列番号22-26及び配列番号63の何れか一の少なくとも18、好ましくは15アミノ酸を指す。好適な一実施態様では、第一のGIP断片は、配列番号27のアミノ酸配列を含有するか、これらからなり、第二のGIP断片は配列番号28のアミノ酸配列を含有するか、これらからなる。この特徴、好適な実施態様、異なるGIPタンパク質ないしはGIP断片の準備と使用はすべて記載されており、本発明において定義される。
【0061】
好適な一実施態様では、第二のGIP断片は、(a) 配列番号27;(b) 配列番号29;(c) 配列番号32;(d) 配列番号45;(e) 配列番号28;(f) 配列番号31;(g) 配列番号44;(h) 配列番号68;及び(i) 配列番号27-29、31、32、44、68又は45と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、又は最も好ましくは少なくとも95%の相同性であるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
第一組成物及び第二組成物に含有する抗原の違いを除いて、この特徴、好適な実施態様、第二組成物の準備と使用は、本発明において第一組成物について記載され、定義されるものと実質的に同じである。
【0062】
更なる他の態様では、本発明は、動物、好ましくは愛玩用ネコないしはイヌ、又はヒトに、キットの少なくとも一の第一組成物と少なくとも一の第二組成物が投与されることを含む、動物又はヒトの肥満の治療及び/又は予防の方法を提供する。好ましくは、動物又はヒトへの第二組成物の投与は、第一組成物の同動物又はヒトへの投与の前、あるいはそれと同時、あるいはその後に行う。好適な一実施態様では、2つの組成物は、2週間未満空けて、好ましくは1週間未満空けて、より好ましくは3日空けて、さらにより好ましくは24時間空けて同じ患者に投与されるのが好ましい。更なる好適な一実施態様では、2つの組成物は同じ動物又はヒトに同時に投与される。本明細書中で用いる「同時」とは、2つの組成物がある動物又はヒトへ注入される前に混合される、又は2つの組成物が同じ動物又はヒトに連続して投与されることを意味する。本明細書中で用いる「連続して」とは、2つの組成物が同じ動物又はヒトに別々に投与されるが、4時間以下、好ましくは2時間以下、さらにより好ましくは1時間以下、さらにより好ましくは30分以下、より好ましくは10分以下の間隔であることを意味する。
さらに好適な実施態様では、前記の第一組成物と前記の第二組成物は同じ方法で投与され、好ましくはその方法は皮下投与である。好適な一実施態様では、第一組成物と第二組成物は同時に投与される。
【0063】
他の態様では、本発明は、動物又はヒトの肥満を予防する及び/又は治療する方法であって、同動物又はヒトに本発明のワクチンとVLP-グレリンのワクチン、VLP-ニコチンのワクチン、又はVLP-第二GIPタンパク質ないしは第二GIP断片のワクチンが投与されることを含む方法を提供する。「VLP-グレリンのワクチン」は本発明の第二組成物を含有し、この少なくとも一の抗原はグレリンないしグレリンペプチドである。好適な一実施態様では、「VLP-グレリンのワクチン」はさらに少なくとも一のアジュバントを含有する。さらに、「VLP-ニコチンのワクチン」は本発明の第二組成物を含有し、この少なくとも一の抗原はニコチン、コチニンないしノルニコチンを含有する。好適な一実施態様では、「VLP-第二GIPタンパク質ないしは第二GIP断片のワクチン」は本発明の第二組成物を含有し、この少なくとも一の抗原は第二のGIPタンパク質ないしはGIP断片を含むか、そのものであり、第二のGIPタンパク質ないしはGIP断片は第一のGIPタンパク質ないしはGIP断片と異なる。
便宜上、本発明のワクチンとVLP-グレリン又はVLP-ニコチン又はVLP-第二GIPタンパク質ないしは第二GIP断片のワクチンを、以降「2つのワクチン」と称する。
【0064】
VLP-グレリンのワクチン、VLP-ニコチンのワクチン、又はVLP-異なるGIPタンパク質ないしはGIP断片のワクチンの投与は、本発明のワクチンの同動物又はヒトへの投与の前、あるいはそれと同時、あるいはその後に行うのが好ましい。同動物又はヒトへの2つのワクチンの投与は、一つのワクチンのみを投与する場合と比べて、付加的又は好ましくは相乗的に効果が増す。
好適な一実施態様では、少なくとも一の第一組成物と少なくとも一の第二組成物はキットの中で別々に収容される。
【0065】
他の実施態様では、少なくとも一の第一組成物と少なくとも一の第二組成物は混合されて、キットの中で混合物として収容される。したがって、更なる態様では、本発明は、(a) 少なくとも一の第一付着部位をそれぞれ有する少なくとも一の第一ウイルス様粒子(VLP)と少なくとも一の第二ウイルス様粒子(VLP);及び(b) 少なくとも一の第二付着部位をそれぞれ有する少なくとも一の第一抗原と少なくとも一の第二抗原;を含んでなる組成物であって、該少なくとも一の第一抗原がGIPタンパク質ないしはGIP断片であり、該少なくとも一の第二抗原が、(i) グレリンないしはグレリンペプチド;(ii) ニコチン、コチニンないしはノルニコチン;及び(iii) 第二GIPタンパク質ないしは第二GIP断片からなる群から選択される分子であるかその分子を含み、該第二のGIPタンパク質ないしはGIP断片が第一のGIPタンパク質ないしはGIP断片と異なり;該少なくとも一の第一ウイルス様粒子(VLP)と該少なくとも一の第一抗原が該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して結合しており、該少なくとも一の第二ウイルス様粒子(VLP)と該少なくとも一の第二抗原が該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して結合している組成物を提供する。したがって、本発明は、前記組成物を含んでなるワクチン組成物を提供する。さらに、ワクチン組成物は少なくとも一のアジュバントを含有する。好ましくは、ワクチン組成物は任意のアジュバントを欠いている。さらに、本発明は、動物、好ましくはイヌないしネコ、好ましくは愛玩用ネコ、又はヒトに前記のワクチン組成物が投与されることを含む免疫化方法を提供する。さらに、本発明は、動物、好ましくは愛玩用ネコないしイヌ、又はヒトにワクチン組成物が投与されることを含む、肥満の治療及び/又は予防の方法を提供する。さらに、本発明は、前記の組成物と受容可能な薬剤的担体を含有してなる薬剤組成物を提供する。
【実施例】
【0066】
実施例の項目で用いる「従来のVLP」なる用語並びにより具体的な用語である「従来のQβ VLP」、「従来のAP205 VLP」などは、国際公開公報02/056905、国際公開公報04/007538に記載のように、大腸菌から組み換えて発現させ、その後精製して得たVLPを指す。
【0067】
実施例1 GIP断片1-15、1-10、4-13、16-30、28-42、31-42及びGIPタンパク質1-42の化学的な合成
GIP断片のN末端又はC末端に融合したGC又はCGリンカー配列を含有するマウスGIP断片1-15、1-10、4-13、16-30及び31-42(配列番号27、29、32、43、44)を標準的な手法によって化学的に合成した。
C末端に融合したGCリンカー配列を含有するGIPタンパク質1-42(配列番号30)及びN末端に融合したCGリンカー配列を含有するGIP断片28-42を標準的な手法によって化学的に合成した。
従来のQβ VLPにカップリングしたN末端GIP断片の可溶性を改善するために、特定のGIP断片内の疎水性アミノ酸残基を置換した。リジン(lys)およびアスパラギン酸(asp)などの極性の、親水性荷電アミノ酸を付加するか用いて、天然のGIP残基を置換した。
GIP断片のC末端に融合したKKCリンカー配列を含有するGIP断片1-14又はDDCリンカー配列を含有するGIP断片1-14を標準的な手法によって化学的に合成した。
【0068】
実施例2 GIP 1-15-GC、GIP 1-10-GC、GIP 4-13-GC及びCG-GIP-31-42の従来のQβ、fr又はHBcAg VLPへのカップリング
20mM Hepes、150mM NaCl pH7.2に2.0mg/mlの従来のQβ VLPを含有する2mlの溶液を、114.4μlのSMPH(Pierce)溶液(DMSOに溶解した50mMの貯蔵溶液)と25℃で30分間反応させた。その後、反応溶液を2Lの20mM Hepes、150mM NaCl pH7.2にて4℃で2時間、2回透析した。
その後、透析して誘導体化したQβ VLPをマウスGIP 1-15-GC (配列番号60)、GIP 1-10-GC (配列番号61)、GIP 4-13-GC (配列番号62)又はマウスCG-GIP 31-42ペプチドの何れかにカップリングするために用いた。簡潔に言えば、1mlの誘導体化されたQβ VLP(2mg/mlの濃度)を、286μlの10mM ペプチド溶液と、20mM Hepes、150mM NaCl pH7.2中で、20℃で2時間反応させた。次いで、カップリング反応物を13000rpmで5分間遠心し、上清を回収して、2Lの20mM Hepes、150mM NaCl pH7.2にて4℃で2時間で1回透析した後、終夜透析した。
Qβ VLPに対するGIPペプチド1-15および31-42の共有結合性カップリングを、12%Nu-PAGEゲル(Invitrogen)を用いたSDS-PAGEにて評価した。カップリング反応液のゲルをクーマシーブルー染色すると、Qβに共有結合したGIPペプチドについて予測されるものに対応する分子量のバンドが示された(図1)。サブユニット当たりのカップリングされた1、2、3又は4のペプチドに対応するカップリングバンドを矢印で示す。誘導体化されたQβ VLP単独と比較して、これらの付加的なバンドの出現から、GIP CG-1-15およびGIP 31-42-GCはQβ VLPに共有的にカップリングしたことが示された。カップリング効率[すなわちモルQβ-GIP/モルQβ単量体(総量)]をクーマシーブルー染色したSDS-PAGEによる濃度測定によって推定すると、Qβ単量体当たり1.8−2.3のGIP断片であった。同様なカップリング効率はGIP CG-1-10についてみられ、GIP 4-13-GCはQβ VLPに共有結合的にカップリングした(データは示さない)。
【0069】
GIP断片のfr VLPへのカップリング
1mlの誘導体化されたfr VLP(2mg/mlの濃度)を、286μlの10mM GIP 1-15-GC、GIP 1-10-GC、GIP 4-13-GC又はCG-GIP-31-42と、20mM Hepes、150mM NaCl pH7.2中で、20℃で2時間反応させた。次いで、カップリング反応物を13000rpmで5分間遠心し、上清を回収して、2Lの20mM Hepes、150mM NaCl pH7.2にて4℃で2時間で1回透析した後、終夜透析した。
GIP断片のHBcAg1-185-Lysへのカップリング
HBcAg1-185-Lysの構築、発現及び精製については国際公開公報03/040164の実施例2−5に実質的に記載されている。1mlの誘導体化されたHBcAg1-185-Lys VLP(2mg/mlの濃度)を、286μlの10mM GIP 1-15-GC、GIP 1-10-GC、GIP 4-13-GC又はCG-GIP-31-42と、20mM Hepes、150mM NaCl pH7.2中で、20℃で2時間反応させた。次いで、カップリング反応物を13000rpmで5分間遠心し、上清を回収して、2Lの20mM Hepes、150mM NaCl pH7.2にて4℃で2時間で1回透析した後、終夜透析した。
【0070】
実施例3 GIP 16-30-GC、CG-GIP 28-42、GIP 1-14-KKC、GIP 1-14-DDC及びGIP 1-42-GCの従来のQβ VLPへのカップリング
20mM Hepes、150mM NaCl pH7.2に2.0mg/mlのQβ VLPを含有する2mlの溶液を、114.4μlのSMPH(Pierce)溶液(DMSOに溶解した50mMの貯蔵溶液)と25℃で30分間反応させた。その後、反応溶液を2Lの20mM Hepes、150mM NaCl pH7.2にて4℃で2時間、2回透析した。
その後、透析して誘導体化したQβ VLPをマウスGIPタンパク質(配列番号30)、マウスCG-GIP 28-42、マウスGIP 16-30-GC、GIP 1-14-KKC又はGIP 1-14-DDCの何れかにカップリングするために用いた。簡潔に言えば、1mlの誘導体化されたQβ VLP(2mg/mlの濃度)を、286μlの10mM ペプチド溶液と、20mM Hepes、150mM NaCl pH7.2中で、20℃で2時間反応させた。次いで、カップリング反応物を13000rpmで5分間遠心し、上清を回収して、2Lの20mM Hepes、150mM NaCl pH7.2にて4℃で2時間で1回透析した後、終夜透析した。
次いで、カップリング産生物を12%Nu-PAGE(Invitrogen)ゲルを用いたSDS-PAGEにて分析した。次いで、カップリング産生物はゲルをクーマシーブリリアントブルー染色することによって可視化した。
【0071】
実施例4 従来のQβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GC、GIP 1-10-GC、GIP 4-13-GC又はCG-GIP 31-42を用いたマウスの免疫化
成体雄C57BL/6マウス(1グループにつき5匹)を、従来のQβ VLPにカップリングしたマウスGIP 1-15-GC、マウスGIP 1-10-GC、マウスGIP 4-13-GC又はマウスCG-GIP 31-42(実施例2で得たもの)の何れかにてワクチン接種した。各試料から透析したワクチン100μgをPBSにて200μl容量まで希釈し、第0、14、28及び42日目に皮下注射した(腹部の2箇所に100μlずつ)。ワクチンはアジュバントなしで投与した。コントロールとして、1グループのマウスに、PBS又はVLP Qβを投与した。第0、15、28、43、56、71、91および105日目にマウスの後眼窩から採血し、実施例5に記載のようにELISAにてその血清を分析した。表1は、GIP 1-15-特異的抗体、GIP 1-10-特異的抗体又はCG-GIP 31-42-特異的抗体の平均力価を示す。示された結果はグループ当たりの10匹のマウスの平均である。ELISA力価は、ELISAアッセイにおいて、最大半量のODを引き起こす血清希釈物として表される。GIP 1-15-GC-Qβ、GIP 1-10-GC-Qβ又はCG-GIP 31-42にて免疫化したマウスでは、第56日目までにそれぞれおよそ1:300000、1:330000及び1:82000の平均力価に達した(表1)。GIP 4-13-GC-Qβにて免疫化したマウスのGIP-特異的力価は、GIP 1-15-特異的力価のおよそ10分の1であった(データは示さない)。免疫化前の血清又はPBSないしQβ VLPを接種したマウスの血清は何れのGIPペプチドに対しても反応を示さなかった。最大半量OD力価は100よりも小さく、アッセイのカットオフ以下であると考えられた。これより、GIP-VLPコンジュゲートは、自己タンパク質ではあるが、GIP断片に対して高い抗体力価を誘導することができることが明確に示された。RNアーゼにカップリングしたGIP断片に対して測定した抗体力価は、GIPタンパク質に対して測定された抗体力価と同様であった(データは示さない)。これより、GIP断片にて生じた抗体がGIPタンパク質を認識することができることが示唆された。
【0072】
表1 第0、14、28及び42日目にGIP 1-15-GC-Qβ、GIP 1-10-GC-Qβ又は Qβ-CG-GIP 31-42それぞれにて免疫化したマウスの平均的抗体GIP特異的IgG抗体力価(希釈で表す)

【0073】
実施例5 ELISAにおけるGIP特異的抗体及びグレリン特異的抗体の検出
まず、以下の段落に記載のように、マウスGIP 1-15-GC又はマウスGC-GIP 31-42をRNアーゼ(SIGMA)-SPDP (SIGMA)にカップリングさせた。5mg/mlのRNアーゼと0.2mM SPDP(終濃度)を室温で1時間インキュベートした。RNアーゼ-SPDP溶液をPD10カラム(Amersham)にて精製した。精製後、10mM EDTAと1mM ペプチドをRNアーゼ-SPDP溶液に添加した。カップリング効率を343nmのODを測定することによって決定した。
ELISAプレート(96ウェルMAXIsorp)を、10μg/mlの濃度のRNアーゼ-カップリングマウスGIP 1-15-GC又はマウスGC-GIP 31-42を含むコーティングバッファ(0.1M NaHCO3, pH9.6)にて4℃で終夜をかけてコートした。代わりに、ELISAプレートを、2.5μg/mlのブタGIPタンパク質(Bachem)にてコートした。洗浄バッファ(PBS-0.05% Tween)にてプレートを洗浄した後、ブロックバッファ(2%BSA-PBS-Tween20溶液)にて37℃で2時間ブロックして、次いで、再び洗浄して、段階的に希釈したマウス血清にてインキュベートした。コントロールとして、同じマウスの免疫化前の血清も試験した。プレートを室温で2時間インキュベートした。さらに洗浄した後、結合した抗体を、HRPO-標識、Fc特異的、ヤギ抗マウスIgG抗体(Jackson Immunoresearch)にて検出して、室温で1時間インキュベートした。さらに洗浄した後、プレートをOPD溶液(1OPD錠剤、25μl OPDバッファ及び8μl H)と6分間反応させ、反応を5% HSO溶液にて停止させた。プレートはELISA読み取り機(Biorad Benchmark)にて450nmを読み取った。ELISA力価をELISAアッセイにて最大半量ODとなる血清希釈液として表した。
Qβ VLPにカップリングしたグレリン24-31GCにて免疫化したマウスの血清からグレリン特異的抗体を測定するために、上記の方法に類似の方法を用いた。ELISAプレートを20μg/mlのグレリンタンパク質(Bachem)にてコートした点のみが異なる。
【0074】
実施例6 食餌誘導肥満動物モデルにおける従来のQβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GC-Qβ、GIP 1-10-GC-Qβ又はQβ-CG-GIP 31-42を用いた有効性実験
開始体重がほぼ同じ(22.7−23.1g)成体雄C57BL/6マウス(1グループ当たり5匹)に、実施例2で得た従来のQβ VLPにカップリングしたマウスGIP 1-15-GC、GIP 1-10-GC又はマウスCG-GIP 31-42の何れかをワクチン接種した。コントロールとして、Qβ VLPをマウスに注射した。初回投与後、すべてのマウスに高脂肪食(35重量%の脂肪、60%エネルギー)を与え、食餌誘発性の肥満を生じやすくした。食餌と水は適宜与えた。初回投与後およそ4か月間、一定の間隔で個々の体重をモニターした。
図2Aに示すように、Qβ VLPにカップリングしたマウスGIP 1-15-GC又はCG-GIP 31-42にて免疫化したマウスは、Qβ VLPを投与されたコントロール動物よりも実験の過程において体重が減少した。実際、初回免疫化の112日後、コントロール動物はおよそ110%まで体重が増加したのに対して、GIP 1-15-GC-Qβ及びGC-GIP 31-42-Qβ VLP免疫化マウスはそれぞれ80%及び82%までの体重増加にとどまった。ゆえに、両ワクチン化グループは、コントロールグループと比較して、顕著な体重増加の減少を示した。GIP 1-15-GC-Qβ VLPによって得られた結果と類似の結果が、GIP 1-10-GC-Qβによって得られた(データは示さない)。
【0075】
さらにGIPに対するワクチン接種の効果を評価するために、体脂肪量の変化を、二重エネルギーX線吸光光度スキャン(DEXA)で測定した。DEXA分析は、超高分解能PIXIMUSシリーズ濃度計(0.18×0.18mmのピクセル、GE Medical Systems)にて行った。初回投与から142日後、DEXA分析を行った。Qβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GC又はCG-GIP 31-42にて免疫化したマウスは、Qβ VLPコントロール動物と比較して、それぞれおよそ26%及び22%、の体脂肪量の減少を示した(図2B)。Qβ VLPにカップリングしたGIP 1-10-GCによっても同じような結果が得られた(データは示さない)。ワクチン接種グループとコントロールグループとの間で除脂肪体重の違いが見られなかったことから、体重の減少は体脂肪の減少によるものであることが明らかに示された。
まとめると、これらの結果から、GIP-VLPコンジュゲートが体重増加及び体脂肪蓄積を軽減することができることが明らかに示された。
【0076】
実施例7 食餌誘導肥満動物モデルにおける従来のQβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GC-Qβ、GIP 1-10-GC-Qβ又はQβ-CG-GIP 31-42を用いた安全性実験
GIPに対するワクチン接種の起こりうる副作用を評価するために、血中グルコース、フルクトサミン及びトリグリセリドレベルをワクチン接種した動物において測定した。簡単に言うと、成体雄C57BL/6マウス(1グループ当たり5匹)に、実施例2で得たQβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GC又はマウスCG-GIP 31-42を実施例4に記載のようにワクチン接種した。コントロールとして、PBS又はQβ VLPをマウスに注射した。
初回免疫化後91日と102日の間、2日に分けて4日間にわたって、午前に2回(9時)と午後に2回(15時)にマウスから採血して、Glucotrend血中グルコース計(Roche)を用いて、血中グルコースレベルを測定した。この期間、マウスに自由に食物と水を与えた。午後及び午前の測定値のそれぞれの平均を表4に示す。ワクチン接種した動物とPBS投与動物の血中グルコースレベルに有意差はなかった。GIP 1-10-GC-Qβをワクチン接種したマウスにも同様な結果が観察された(データは示さない)。
同じ動物において、初回投与の120日後に血漿トリグリセリドレベルを測定した。簡単に言うと、12時間の空腹時期間の後、Qβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GC又はマウスCG-GIP 31-42免疫化マウス及びPBS投与コントロールマウスから血液試料を採取した。次いで、オリンパスAU400自動laboratory work stationにて血漿試料からトリグリセリドレベルを測定した。各グループの平均値と標準偏差(n=5)を表4に示す。ワクチン接種した動物とコントロール動物との間に有意差は観察されなかった。
【0077】
さらに、免疫化後、様々な時間的間隔で同じ動物のフルクトサミンレベルを測定した。フルクトサミンレベルは循環中のグリコシル化タンパク質の総量を表し、フルクトサミンレベルが上昇する場合、増加した糖血を示す。循環フルクトサミンは3週間の寿命を有するので、フルクトサミン測定値により遡及的な血糖状態が示される。簡単に言うと、12時間の空腹期間の後、Qβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GC又はCG-GIP 31-42免疫化マウスと、PBS又はQβ VLP投与コントロールマウスから様々な時間的間隔で血液試料を採取した。次いで、血漿試料からフルクトサミンレベルを測定した。各グループの平均値と標準偏差(n=5)を表5に示す。概して、ワクチン接種動物とコントロール動物との間に有意な差異は観察されなかった。にもかかわらず、GIP 1-15-GC-Qβ又はCG-GIP 31-42-Qβワクチン接種グループに対する2つの明らかに異なる時点(それぞれ第55及び69日、第27及び69日)では、全体の値がおよそ200−400μmol/Lの正常なフルクトサミン範囲に下がった。400μmol/Lを超えるフルクトサミンレベルは、糖尿病発症のリスクが考えられる。したがって、GIPに対するワクチン接種により、Qβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GC又はCG-GIP 31-42による免疫化マウスでは高血糖状態が誘導されない。
結論として、ワクチン接種マウスにおいて抗GIP抗体が存在するにもかかわらず、ワクチン接種グループ(Qβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GC又はCG-GIP 31-42)と、コントロールグループ(PBS又はQβ VLP投与動物)との間で、血液グルコースレベル、空腹時トリグリセリド及びフルクトサミンレベルに有意差は観察されなかった(表2及び表3)。
【0078】
表2 GIP 1-15-GC-Qβ又はQβ-CG-GIP 31-42にて免疫化した5匹のグループにおける平均午前及び午後の血中グルコースレベルと空腹時トリグリセリドレベル

表3 GIP 1-15-GC-Qβ又はQβ-CG-GIP 31-42にて免疫化した5匹のグループにおける平均空腹時フルクトサミンレベル

【0079】
実施例8 従来のQβ VLPにカップリングしたGIP 16-30-GC、CG-GIP 28-42、GIP 1-14-KKC、GIP 1-14-DDC及びGIPタンパク質1-42-GCによるマウスの免疫化
成体雄又は雌のC57BL/6マウスに、実施例3で得たQβ VLPにカップリングしたGIP 16-30-GC、CG-GIP 28-42、GIP 1-14-KKC、GIP 1-14-DDC又はGIPタンパク質1-42-GCの何れかをワクチン接種した。簡単に言うと、各試料から透析した100μgのワクチンをPBSにて200μl容量に希釈し、第0、14、28及び42日目とその後は必要なときに皮下注射した(腹部の2箇所に100μlずつ)。ワクチンはアジュバントあり又はなしで投与した。コントロールとして、1グループのマウスに、アジュバントあり又はなしで、Qβ VLPによる免疫化をするか、PBSを投与した。第0、14、28、42日目と一定間隔でその後もマウスの後眼窩から採血した。次いで、実施例5に記載のようにELISAにてGIP特異的抗体を定量した。
【0080】
実施例9 食餌誘導肥満動物モデルにおけるQβ VLPにカップリングしたGIP 4-13-GC、GIP 16-30-GC、CG-GIP 28-42、GIP 1-14-KKC、GIP 1-14-DDC及びGIPタンパク質1-42-GCを用いた有効性実験
開始体重がほぼ同じ成体雄又は雌のC57BL/6マウスに、実施例3で得たQβ VLPにカップリングしたGIP 4-13-GC、GIP 16-30-GC、CG-GIP 28-42、GIP 1-14-KKC、GIP 1-14-DDC又はGIPタンパク質1-42-GCの何れかを、実施例8に記載のようにワクチン接種した。コントロールとして、Qβ VLP単独でマウスを免疫化するか、PBSをマウスに注射した。実験中、GIP特異的抗体力価が有意に減退したら、マウスを追加免疫した。すべてのマウスに高脂肪食(35重量%の脂肪、60%エネルギー)を与え、食餌誘発性の肥満を生じやすくした。食餌と水は適宜与えた。一定間隔で体重をモニターした。体脂肪量に加え、実施例7に記載のように、異なる間隔で、血中グルコースレベルと血漿トリグリセリドレベル及びフルクトサミンレベルを測定した。
【0081】
実施例10 遺伝的肥満動物モデルにおける従来のQβ VLPにカップリングしたマウスGIP 1-15-GC、GIP 1-10-GC、GIP 4-13-GC、GIP 16-30-GC、CG-GIP 28-42、GIP 1-14-KKC、GIP 1-14-DDC及びGIPタンパク質1-42-GCを用いた有効性実験
成体雄又は雌のC57BL/6 ob/obマウスに、実施例2又は3で得た従来のQβ VLPにカップリングしたマウスGIP 1-15-GC、GIP 1-10-GC、GIP 4-13-GC、GIP 16-30-GC、CG-GIP 28-42、GIP 1-14-KKC、GIP 1-14-DDC又はGIPタンパク質1-42-GCの何れかを、実施例8に記載のようにワクチン接種した。コントロールとして、Qβ VLPでマウスを免疫化するか、PBSをマウスに注射した。実験の期間中、GIP特異的抗体力価が有意に減退したら、マウスを追加免疫した。マウスには普通食(4−10重量%の脂肪を含む)を与え、水は適宜与えた。一定間隔で体重をモニターした。体脂肪量に加え、(実施例7に記載のように)異なる間隔で、血中グルコースレベルと血漿トリグリセリドレベル及びフルクトサミンレベルを測定した。
【0082】
実施例11 治療的食餌誘導性肥満動物モデルにおけるQβ VLPにカップリングしたマウスGIP 1-15-GC、GIP 1-10-GC及びCG-GIP 31-42を用いた有効性実験
成体雄C57BL/6マウス(1グループ当たり10匹)におよそ14週間、肥満になるまで(体重>42g)適宜高脂肪食餌を与えた。次いで、平均開始体重が2つのグループで同じになるように2つに分けた。2つのグループの平均の差は実験開始時には0.1gより小さかった。
グループに分けた後、実施例2で得た従来のQβ VLPにカップリングしたマウスGIP 1-15-GC、GIP 1-10-GC又はCG-GIP 31-42の何れかを用いて、実施例4に記載のようにマウスにワクチン接種した。コントロールとして、マウスにQβ VLPで免疫化した。さらに、実験中、GIP特異的抗体力価が減退したらマウスを追加免疫した。
第0、14、28、42、56日目及びその後は1か月間隔でマウスの後眼窩から血液を採取した。実施例5に記載のようにGIP特異的ELISAによって血清のGIP特異的抗体を定量した。従来のQβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GC、GIP 1-10-GC又はCG-GIP 31-42によるワクチン接種によって誘導されたGIP特異的抗体力価の比較を表1に示す。体重は一定間隔でモニターした。体脂肪量に加え、実施例7に記載のように、異なる間隔で、血中グルコースレベルと血漿トリグリセリドレベルを測定した。
【0083】
表4に示すように、実験の期間中に、従来のQβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GC、GIP 1-10-GC又はCG-GIP 31-42によって免疫化したマウスは、Qβ VLPを投与したコントロール動物よりも体重が減少した。初回免疫の98日後、コントロール動物はおよそ8.6g(20%)分体重が増加していたのに対して、GIP 1-15-GC-Qβ、GIP 1-10-GC-Qβ及びGC-GIP 31-42-Qβ VLP免疫化マウスはそれぞれ0.5g(3.0%)、0.6g(−3.0%)及び0.2g(−0.5%)分体重が減少していた。ゆえに、すべてのワクチン接種グループは、治療的条件において、コントロールグループと比較して体重増加の減少を明らかに示した。
表4 GIP 1-15-GC-Qβ、GIP 1-10-GC-Qβ又はQβ-CG-GIP 31-42にて免疫化した10匹のグループの98日間にわたる平均体重変化(%で表す)

【0084】
実施例12 治療的食餌誘導性肥満動物モデルにおけるQβ VLPにカップリングしたマウスGIP 4-13-GC、GIP 16-30-GC、CG-GIP 28-42、GIP 1-14-KKC、GIP 1-14-DDC及びGIPタンパク質1-42-GCを用いた有効性実験
成体雄又は雌のC57BL/6マウスにおよそ17〜24週間、又は肥満になるまで(体重>45g)適宜高脂肪食餌を与えた。次いで、開始体重及び平均開始体重の分布がすべてのグループについて小さくなるようにグループ分けした。
実施例3で得たQβ VLPにカップリングしたマウスGIP 4-13-GC、GIP 16-30-GC、CG-GIP 28-42、GIP 1-14-KKC、GIP 1-14-DDC及びGIPタンパク質1-42-GCの何れかを用いて、実施例8に記載のようにマウスにワクチン接種した。コントロールとして、マウスにQβ VLPで免疫化するか、PBSをマウスに投与した。さらに、GIP特異的抗体力価が減退し始めたらマウスを追加免疫した。第0、14、28、42、56、70日目及びその後は1か月間隔でマウスの後眼窩から血液を採取した。実施例5に記載のようにELISAによって血清のGIP特異的抗体を定量した。体重は一定間隔でモニターした。体脂肪量に加え、実施例7に記載のように、異なる間隔で、血中グルコースレベルと血漿トリグリセリドレベル及びフルクトサミンレベルを測定した。
【0085】
実施例13 結果として再集合体化したQβ VLPが生じる、異なるポリ陰イオン性高分子の存在下における分解/再集合体化による本発明のQβ VLPの調整
(A) 従来のQβ VLPの分解
大腸菌溶解物から精製した45mgの従来のQβ VLP(2.5mg/ml、Bradford分析によって測定)を含むPBS(20mM リン酸塩、150mM NaCl、pH7.5)を10mM DTTにて還元して、撹拌しながら室温に15分間置いた。次いで、塩化マグネシウムを0.7Mの終濃度まで添加し、撹拌しながら室温で15分間インキュベートを続け、カプセル化された宿主細胞RNAを沈殿させた。溶液から沈殿されたRNAを取り除くために、溶液を4000rpm、4℃で10分間遠心した(Eppendorf 5810 R、以下のすべての工程で固定角ローターA-4-62を用いた)。放出された二量体Qβコートタンパク質を含有する上清をクロマトグラフィの精製工程に用いた。
【0086】
(B) 陽イオン交換クロマトグラフィ及びサイズ排除クロマトグラフィによるQβコートタンパク質の精製
二量体コートタンパク質、宿主細胞タンパク質および残渣の宿主細胞RNAを含有する分解反応の上清を水で1:15に希釈し、10mS/cm以下の伝導率を調整し、SP-セファロースFFカラム(xk16/20, 6 ml, Amersham Bioscience)に流した。カラムは、20mM リン酸ナトリウムバッファ pH7にて予め平衡化した。結合したコートタンパク質は、20mM リン酸ナトリウム/500mM 塩化ナトリウムの勾配法により溶出させ、タンパク質は約25mlの分画容量に回収した。室温で5ml/分の流速のクロマトグラフィを行い、260nmおよび280nmの吸光度をモニターした。
第二工程では、単離されたQβコートタンパク質(陽イオン交換カラムから溶出された分画)をセファクリルS-100HRカラム(xk26/60, 320 ml, Amersham Bioscience)に流し(2列)、20mm リン酸ナトリウム/250mm 塩化ナトリウム、pH6.5にて平衡化した。室温で2.5ml/分の流速のクロマトグラフィを行い、260nmおよび280nmの吸光度をモニターした。5mlの分画を回収した。
【0087】
(C1) 透析によるQβ VLPの再集合体化
精製したQβコートタンパク質(20mM リン酸ナトリウム pH6.5中に2.2mg/ml)、1のポリ陰イオン性高分子(HO中に2mg/ml)、尿素(HO中に7.2M)及びDTT(HO中に0.5M)を、それぞれ終濃度1.4mg/mlのコートタンパク質、0.14mg/mlのポリ陰イオン性高分子、1M 尿素及び2.5mM DTTに混合した。混合物(各々1ml)を、3.5kDaのカットオフのメンブランを用いて20mM トリスHCl、150mM NaCl pH8にて5℃で2日間透析した。ポリ陰イオン性高分子は以下の通りであった:ポリガラクツロン酸(25000-50000, Fluka)、硫酸デキストラン(MW 5000及び10000, Sigma)、ポリ-L-アスパラギン酸(MW 11000及び33400, Sigma)、ポリ-L-グルタミン酸(MW 3000、13600及び84600, Sigma)、及びパン酵母と小麦麦芽由来のtRNA。
(C2) 透析濾過(ダイアフィルトレーション)によるQβ VLPの再集合体化
33mlの精製したQβコートタンパク質(20mM リン酸ナトリウム pH6.5、250mM NaCl中に1.5mg/ml)を、HO及び尿素(HO中に7.2M)、NaCl(HO中に5M)及びポリ-L-グルタミン酸(HO中に2mg/ml、MW: 84600)と混合した。混合物の容量は50mlであり、成分の終濃度は1mg/mlのコートタンパク質、300mM NaCl、1.0M 尿素及び0.2mg/ml ポリ-L-グルタミン酸であった。次いで、混合物を室温で、500mlの20mM トリスHCl pH8、50mM NaClにて透析濾過した。この透析濾過は、10ml/分の交差流速と2.5ml/分の透過流速で、Pellicon XL薄膜カートリッジ(Biomax 5K, Millipore)を用いた正接流量濾過装置(tangential flow filtration apparatus)にて行った。
【0088】
実施例14 AP205 VLPのインビトロ集合体化(アセンブリ)
(A) AP205コートタンパク質の精製
分解:20mlのAP205 VLP溶液(PBS中に1.6mg/ml、大腸菌抽出物から精製)を、0.2mlの0.5M DTTと混合し、室温で30分間インキュベートした。5mlの5M NaClを添加して、次いで混合物を60℃で15分間インキュベートし、DTT還元コートタンパク質を沈殿させた。混濁した混合物を遠心分離し(ローターSorvall SS34、10000g、10分、20℃)、上清を廃棄し、ペレットを、20mlの1M 尿素/20mM クエン酸ナトリウム pH3.2に播種した。室温で30分間撹拌した後、1.5M NaHPOを加えることによって、pH6.5にばらつきを調整し、その後二量体コートタンパク質を含む上清を得るために遠心分離した(ローターSorvall SS34、10000g、10分、20℃)。
陽イオン交換クロマトグラフィ:上清(上記参照)を20mlの水で希釈して、約5mS/cmの伝導率を調整した。結果として生じた溶液を、20mM リン酸ナトリウム pH6.5バッファにて予め平衡化した6mlのSPセファロースFF (Amersham Bioscience)のカラムに流した。流した後、カラムを48mlの20mM リン酸ナトリウム pH6.5のバッファにて洗浄し、その後、20倍のカラム容量の1M NaClへの比例勾配により結合したコートタンパク質を溶出した。メインピークの分画をプールし、SDS-PAGEおよびUV分光法にて分析した。SDS-PAGEによると、単離されたコートタンパク質は本質的に他のタンパク質混入がなく純粋であった。UV分光法によると、タンパク質濃度は0.6mg/ml(総量12mg)であり、1A280単位はAP205コートタンパク質の1.01mg/mlを表す。さらに、A260(0.291)の値に対してA280(0.5999)の値は2であることから、調製物は本質的に核酸を欠いていることが示唆される。
【0089】
(B) AP205 VLPの集合体化
任意のポリ陰イオン性高分子のない条件下における集合体化:上記で溶出されたタンパク質分画を透析濾過し、20mM リン酸ナトリウム pH6.5にて1mg/mlのタンパク質濃度にまでTFFによって、濃縮した。その溶液の500μlを、50μlの5M NaCl溶液と混合し、室温で48時間インキュベートした。混合物中での再集合体化VLPの形成は、非還元SDS-PAGE及びサイズ排除HPLCにて示された。20mM リン酸ナトリウム、150mM NaCl pH7.2にて平衡化したTSKgel G5000 PWXLカラム(Tosoh Bioscience)をHPLC分析に用いた。
ポリグルタミン酸存在下における集合体化:375μlの精製したAP205コートタンパク質(20mM リン酸ナトリウム pH6.5中に1mg/ml)を、50μlのNaCl貯蔵溶液(HO中に5M)、50μlのポリグルタミン酸貯蔵溶液(HO中に2mg/ml、MW: 86400, Sigma)及び25μlのHOと混合した。混合物を室温にて48時間インキュベートした。混合物中における再集合体化VLPの形成は、非還元SDS-PAGE及びサイズ排除HPLCにて示された。混合物中のコートタンパク質がVLP内にほぼ完全に組み込まれたことから、任意のポリ陰イオン性高分子がない条件下で集合体化したAP205コートタンパク質より効率よく、多く集合体化されたことが示された。
【0090】
実施例15 再集合化Qβないしは再集合化AP205 VLPへのGIP断片1-10、4-13、1-15、31-42、16-30、28-42、1-14-KKC、GIP 1-14-DDC及びGIPタンパク質1-42のカップリング
20mM Hepes、150mM NaCl pH7.2に2.0mg/mlの再集合化Qβ VLP(実施例13で得たもの)を含有する2mlの溶液を、114.4μlのSMPH(Pierce)溶液(DMSOに溶解した50mMの貯蔵溶液)と25℃で30分間反応させた。その後、反応溶液を2Lの20mM Hepes、150mM NaCl pH7.2にて4℃で2時間、2回透析した。
その後、透析して誘導体化した再集合化Qβ VLPをマウスGIP 1-15-GC 、マウスCG-GIP 31-42ペプチド、マウスGIP 1-10-GC、マウスGIP 4-13 GC、マウスGIP 16-30-GC、マウスCG-GIP 28-42、マウスGIP 1-14-KKC、マウスGIP 1-14-DDC又はマウスGIPタンパク質1-42-GCの何れかにカップリングするために用いた。簡潔に言えば、1mlの誘導体化された再集合化Qβ VLP(2mg/mlの濃度)を、286μlの10mM ペプチド溶液と、20mM Hepes、150mM NaCl pH7.2中で、20℃で2時間反応させた。次いで、カップリング反応物を13000rpmで5分間遠心し、上清を回収して、2Lの20mM Hepes、150mM NaCl pH7.2にて4℃で2時間で1回透析した後、終夜透析した。
まず、20mM Hepes、150mM NaCl pH7.2に2.0mg/mlの再集合化AP205 VLP(実施例14で得たもの)を含有する2mlの溶液を、再集合化Qβ VLPと同一ないしは類似の条件下でSMPHにて誘導体化した。次いで、誘導体化した再集合化AP205 VLPを同一ないしは類似の条件下にて、前段落に記載のGIP断片と反応させた。
【0091】
実施例16 治療的食餌誘導性肥満動物モデルにおける再集合化Qβ VLPないしは再集合化AP205 VLPにカップリングしたマウスGIP 1-10-GC、GIP 1-15-GC、GIP 4-13-GC、GIP 16-30-GC、CG-GIP 28-42、GIP 1-14-KKC、GIP 1-14-DDC CG-GIP 31-42及びGIPタンパク質1-42-GCを用いた有効性実験と免疫化
成体雄又は雌のC57BL/6マウスにおよそ17〜24週間、又は肥満になるまで(体重>45g)適宜高脂肪食餌を与えた。次いで、開始体重及び平均開始体重の分布がすべてのグループについて小さくなるようにグループ分けした。
実施例15で得た再集合化Qβ VLPにカップリングしたマウスGIP 1-10-GC、GIP 4-13-GC、GIP 1-15-GC、GIP 16-30-GC、CG-GIP 28-42、GIP 1-14-KKC、GIP 1-14-DDC CG-GIP 31-42又はGIPタンパク質1-42-GCの何れかを用いて、実施例8に記載のようにマウスにワクチン接種した。コントロールマウスは再集合化Qβ VLP(実施例13で得たもの)で免疫化するか、PBSを投与した。100μgの透析したワクチンないしはコントロールタンパク質をPBSにて200μl容量に希釈し、アジュバントあり又はなしで、第0日目に皮下注射した(腹部の2箇所に100μlずつ)。第14、28及び42日目に同一の製剤にてマウスを追加免役した。さらに、GIP特異的抗体力価が減退し始めたらマウスを追加免疫した。
第0、14、28、42、56、70日目及びその後は一定間隔でマウスの後眼窩から血液を採取した。実施例5に記載のようにELISAによって血清のGIP特異的抗体を定量した。体重は一定間隔でモニターした。体脂肪量に加え、実施例7に記載のように、異なる間隔で、血中グルコースレベルと血漿トリグリセリドレベル及びフルクトサミンレベルを測定した。
マウスの治療的食餌誘導性肥満モデルにおいて、GIP断片ないしはGIPタンパク質にカップリングした再集合化AP205 VLPの有効性を試験するために、同様、類似又は同一の条件を適応した。
【0092】
実施例17 従来のQβ VLPへのグレリン24-31GCのカップリング
VLPにカップリングするための付加されたC末端システイン残基を含有する、グレリン-ペプチド Ghrel24-31GC (GSSFLSPEGC 配列番号39)を化学的に合成し、以下に記載のようにQβに化学的にカップリングするために用いた。
20mM Hepes、150mM NaCl pH7.4に140μMの従来のQβ VLPを含有する5mlの溶液を、108μlのHOに溶解した65mM SMPH(Pierce)溶液と25℃で30分間、振とう器上で反応させた。その後、反応溶液を5Lの20mM Hepes、150mM NaCl pH7.2にて4℃で2時間、2回透析した。その後、100μlの透析した反応混合液を、グレリン-ペプチド(1:10 ペプチド/Qβキャプシドタンパク質比)の28.6μlの10mM 貯蔵溶液(DMSO中)の何れかと反応させた。カップリング反応は15℃のウォーターバス中で2時間行った。次いで、反応物を13000rpmで5分間遠心し、上清を回収して、2×5Lの20mM Hepes、150mM NaCl pH7.2にて4℃で2時間で1回透析した後、終夜透析した。
カップリング反応物を還元条件下の16% SDS-PAGEゲルにて分析した。ゲルはクーマシーブリリアントブルーにて染色した。
【0093】
実施例18 Qβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GCとQβ VLPにカップリングしたGhrel24-31-GCを用いたマウスの同時免疫化
成体雄又は雌のC57BL/6マウスにQβ VLPにカップリングしたマウスGIP 1-15-GC(実施例2で得たもの)とQβ VLPにカップリングしたマウスGhrel24-31-GC(実施例17で得たもの)を同時にワクチン接種した。100μgの各々の透析したワクチンをPBSにて200μl容量に希釈し、第0、14、28及び42日目とその後は必要に応じて皮下注射した(腹部の2箇所に100μlずつ)。2つのワクチン混合物はアジュバントあり又はなしで投与した。コントロールとして、アジュバントあり又はなしで、1グループのマウスをQβ VLP単独で免疫化するか、PBSを投与した。第0、14、28、42日目及びその後は一定間隔でマウスの後眼窩から血液を採取した。実施例5に記載のようにELISAによって血清の抗GIP抗体及び抗グレリン抗体について分析した。
再集合化Qβ VLPにカップリングしたマウスGIP 1-15-GCと再集合化Qβ VLPにカップリングしたマウスGhrel24-31-GCにて同時に成体雄又は雌のC57BL/6マウスを免疫化するために、同様、類似又は同一の条件を適応した。第0、14、28、42日目及びその後は一定間隔でマウスの後眼窩から血液を採取し、実施例5に記載のように、それぞれGIP特異的又はグレリン特異的ELISAを用いて血清の抗GIP抗体及び抗グレリン抗体について分析した。
【0094】
実施例19 食餌誘発性肥満モデルにおけるQβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GCとQβ VLPにカップリングしたGhrel24-31-GCの同時免疫化による有効性試験
開始体重がほぼ同じ成体雄又は雌のC57BL/6マウスに、実施例18に記載の従来のQβ VLPにカップリングしたマウスGIP 1-15-GCと従来のQβ VLPにカップリングした再集合化マウスGhrel24-31-GCの両方を、ワクチン接種した。コントロールとして、従来のQβ VLP又は再集合化Qβ VLP単独でマウスを免疫化するか、PBSをマウスに注射した。実験中、GIP特異的ないしはグレリン特異的な抗体力価が有意に減退したら、マウスを追加免疫した。すべてのマウスに高脂肪食(35重量%の脂肪、60%エネルギー)を与え、食餌誘発性の肥満を生じやすくした。第0、14、28、42日目及びその後は一定間隔でマウスの後眼窩から血液を採取した。実施例5に記載のように、ELISAにより血清の抗GIP抗体及び抗グレリン抗体について分析した。
食餌と水は適宜与えた。一定間隔で体重をモニターした。体脂肪量に加え、実施例7に記載のように、異なる間隔で、血中グルコースレベルと血漿トリグリセリドレベルを測定した。
【0095】
実施例20 遺伝的肥満動物モデルにおけるQβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GCとQβ VLPにカップリングしたGhrel24-31-GCの同時免疫化による有効性試験
成体雄又は雌のC57BL/6 ob/obマウスに、実施例18に記載の従来のQβ VLPないしは再集合化Qβ VLPにカップリングしたマウスGIP 1-15-GCと、従来のQβ VLPないしは再集合化Qβ VLPにカップリングしたマウスGhrel24-31-GCを、同時にワクチン接種した。コントロールとして、従来のQβ VLP単独ないし再集合化Qβ VLP単独でマウスを免疫化するか、PBSをマウスに注射した。その後、実験期間中、GIP特異的ないしはグレリン特異的な抗体力価が有意に減退したら、マウスを追加免疫した。マウスには標準的な食餌を与えた。
第0、14、28、42日目及びその後は一定間隔でマウスの後眼窩から血液を採取した。実施例5に記載のように、ELISAにより血清の抗GIP抗体及び抗グレリン抗体について分析した。一定間隔で体重をモニターした。体脂肪量に加え、実施例7に記載のように、異なる間隔で、血中グルコースレベルと血漿トリグリセリドレベルを測定した。
【0096】
実施例21 治療的食餌誘導性肥満動物モデルにおけるQβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GCとQβ VLPにカップリングしたGhrel24-31-GCの同時免疫化による有効性実験
成体雄又は雌のC57BL/6マウスにおよそ17〜24週間、又は肥満になるまで(体重>45g)適宜高脂肪食餌を与えた。次いで、開始体重及び平均開始体重の分布がすべてのグループについて小さくなるようにグループ分けした。
実施例18に記載の従来のQβ VLPないしは再集合化Qβ VLPにカップリングしたマウスGIP 1-15-GCと、従来のQβ VLPないしは再集合化Qβ VLPにカップリングしたマウスグレリン24-31-GCの両方をマウスに同時にワクチン接種した。コントロールマウスは従来のQβ VLPないし再集合化Qβ VLPで免疫化するか、PBSを投与した。その後、実験中に、GIP特異的ないしグレリン特異的な抗体力価が減退したらマウスを追加免疫した。
第0、14、28、42日目及びその後は一定間隔でマウスの後眼窩から血液を採取した。実施例5に記載のようにELISAによって血清の抗GIP抗体及び抗グレリン抗体について分析した。免疫後、個々のマウスの体重と体脂肪成分をモニターした。さらに、実施例7に記載のように、異なる間隔で、血中グルコースレベルとトリグリセリドレベルを測定した。
【0097】
実施例22 Qβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GCとQβ VLPにカップリングしたCG-GIP 31-42によるマウスの同時免疫化
成体雄又は雌のC57BL/6マウスにQβ VLPにカップリングしたマウスGIP 1-15-GCとQβ VLPにカップリングしたマウスCG-GIP 31-42(両方とも実施例2で得たもの)を同時にワクチン接種した。100μgの各々の透析したワクチンをPBSにて200μl容量に希釈し、第0、14、28及び42日目とその後は必要に応じて皮下注射した(腹部の2箇所に100μlずつ)。2つのワクチン混合物はアジュバントなしで投与した。コントロールとして、マウスをQβ VLP単独で免疫化するか、マウスにPBSを投与した。第0、14、28、42日目及びその後は一定間隔でマウスの後眼窩から血液を採取した。実施例5に記載のように、完全長マウスGIPタンパク質をプレートにコートすることによるELISAによって血清の抗GIP特異的抗体について分析した。GIP特異的抗体力価の比較を表1に示す。
【0098】
実施例23 食餌誘発性肥満モデルにおけるQβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GCとQβ VLPにカップリングしたCG-GIP 31-42の同時免疫化による有効性試験
開始体重がほぼ同じ成体雄又は雌のC57BL/6マウスに、実施例22に記載のQβ VLPにカップリングしたマウスGIP 1-15-GCとQβ VLPにカップリングしたCG-GIP 31-42の両方を、ワクチン接種した。コントロールとして、従来のQβ VLPでマウスを免疫化するか、PBSをマウスに注射した。その後、実験中、GIP特異的抗体力価が有意に減退したら、マウスを追加免疫した。すべてのマウスに高脂肪食(35重量%の脂肪、60%エネルギー)を与え、食餌誘発性の肥満を生じやすくした。第0、14、28、42日目及びその後は一定間隔でマウスの後眼窩から血液を採取した。実施例5に記載のように、ELISAにより血清の抗GIP抗体について分析した。GIP特異的抗体力価の比較を表1に示す。
食餌と水は適宜与えた。一定間隔で体重をモニターした。体脂肪量に加え、実施例7に記載のように、異なる間隔で、血中グルコースレベルと血漿トリグリセリドレベル及びフルクトサミンレベルを測定した。表2に示すように、同時免疫化マウスにおける平均体重増加を単剤免疫化で観察されるものと比較した。
【0099】
実施例24 GIP 1-15ペプチドとC末端で融合したAP205によるマウスの免疫化
GIPペプチド(YAEGTFISDYSIAMD、配列番号27)をコードするDNA断片を、3つの連続したPCR反応において作製した。第一の反応では、プラスミドpAP405を鋳型として用いて、XbaI部位を含有するオリゴp1.45 (5’- AATCTAGAATTTTCTGCGCACCCATCCCGG -3’、配列番号73)とオリゴp4.175 (5’- AATGAACGTGCCCTCTGCGTATCCGGAACCGCCTCCTGC -3’、配列番号74)を用いてAP205コートタンパク質の遺伝子を増幅し、プラスミドpAP405内のAP205コートタンパク質の遺伝子の3'領域内のGTAGGGSGをコードするヌクレオチド配列の3'にアミノ酸配列YAEGTFIをコードするヌクレオチド配列を付加した。次に、オリゴp1.45及びp4.176 (5’- CATCGCGATCGAGTAATCGGAAATGAACGTGCCCTCTGCGTA -3’、配列番号75)を用いて、第一反応のPCR生成物を増幅し、第一反応の生成物の3'末端にアミノ酸配列SDYSIAMをコードするヌクレオチド配列を付加した。第三の反応では、オリゴp1.45及びp4.177 (5’- ACATGCATTAATCCATCGCGATCGAGTAATC-3’、配列番号76)を用いて、第二反応の生成物を増幅して、第二PCR生成物の3'末端に停止コドンとMph1103I制限酵素部位を含有する残存するAspをコードするヌクレオチド配列を付加した。得られた断片をXbaIとMph1103Iで消化して、ベクターpAP283(AP205パテント)内の大腸菌トリプトファンオペロンプロモータの制御下の同じ制限酵素部位内にクローニングした。結果として生じたコンストラクトは以下の通りである:
515 AP205コートタンパク質- GTAGGGSG - YAEGTFISDYSIAMD
発現した融合タンパク質の精製方法はPCT/EP2005/054721の実施例2に記載のものと実質的に同じである。PAP405及びpAP283の配列と構築はそれぞれPCT/EP2005/054721及びWO2004/007538A2に記載される。
【0100】
成体雌C57BL/6マウス(1グループにつき5匹)を、GIP 1-15ペプチドとC末端で融合したAP205にてワクチン接種した。50μgの透析したワクチンをPBSにて200μl容量まで希釈し、第0、14、28及び42日目に皮下注射した(腹部の2箇所に100μlずつ)。ワクチンはアジュバントなしで投与した。コントロールとして、1グループのマウスに、PBSないしAP205 VLP単独を投与した。第0、14、28、42、56および70日目にマウスの後眼窩から採血し、実施例5に記載のようにELISAにてその血清を分析した。表5は、GIP-特異的抗体の平均力価を示す。示された結果はグループ当たりの5匹のマウスの平均である。ELISA力価は、ELISAアッセイにおいて、最大半量のODを引き起こす血清希釈物として表される。GIP 1-15ペプチドとC末端で融合したAP205で免疫化したマウスでは、第42日目までに平均力価がおよそ1:184000に達した(表5)。免疫前の血清又はPBSないし Qβ VLPを投与したマウスの血清はGIPペプチドに対するいかなる反応も示さなかった。最大半量OD力価は100より小さく、アッセイのカットオフ以下であると考えられる。これより、GIP-VLP融合は、自己タンパク質ではあるが、GIP断片に対して高い抗体力価を誘導することができることが明らかに示された。
表5 第0、14、28及び42日目にGIP 1-15ペプチドとC末端で融合したAP205で免疫化したマウスにおける平均抗GIP特異的IgG抗体力価(希釈として表す)

【0101】
実施例25 食餌誘導性肥満動物モデルにおける従来のQβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GC-Qβによるグルコース耐性に対する効果
グルコース耐性に対して起こりうる効果を評価するために、ワクチン接種した動物において経口グルコース耐性試験(OGTT)を行った。簡単に言うと、成体雌C57BL/6マウス(1グループ当たり5匹)に、実施例2で得たQβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GCを実施例4に記載のようにワクチン接種した。コントロールとして、Qβ VLPをマウスに注射した。さらに、OGTTの20日前である、第122日目に追加免疫した。試験期間中、すべてのマウスに高脂肪食を与えた。
第142日目と16時間空腹時の後に、経口経管栄養法により2g/kgのD-グルコース溶液をマウスに投与した。経口グルコース投与の0、15、30、45、60、120及び180分後に、マウスの尾静脈より採血した。Accu-checkグルコース計測器(Roche)を用いて血中グルコースレベルを測定した。この期間の間、マウスは空腹時のままとした。血中グルコース応答の動態を表6に示す。ワクチン接種した動物とコントロール動物の間で、グルコース応答の動態において有意な差異は観察されなかった。
ゆえに、GIPに対するワクチン接種により、Qβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GCにて免疫化されたマウスのグルコース耐性は障害されなかった。
表6 GIP 1-15-GC-Qβで免疫化した5匹のマウスグループにおける血中グルコースレベル

【0102】
実施例26 食餌誘導性肥満動物モデルにおける従来のQβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GC-Qβによるインスリン応答性に対する効果
インスリン応答性に対して起こりうる効果を評価するために、ワクチン接種した動物においてインスリン感受性試験(IST)を行った。簡単に言うと、成体雌C57BL/6マウス(1グループ当たり4−5匹)に、実施例2で得たQβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GCを実施例4に記載のようにワクチン接種した。コントロールとして、Qβ VLPをマウスに注射した。さらに、ISTの21日前である、第122日目に追加免疫した。試験期間中、すべてのマウスに高脂肪食を与えた。
第143日目と16時間空腹時の後に、0.5U/kgのブタインスリンをマウスに腹腔内投与(IP)した。インスリン投与の0、15、30、45、60及び90分後に、マウスの尾静脈より採血した。Accu-checkグルコース計測器(Roche)を用いて血中グルコースレベルを測定した。この期間の間、マウスは空腹時のままとした。IPIST後の血中グルコース応答の動態を表9に示す。GIP 1-15-GC-Qβワクチン接種したマウスは、Qβ VLPワクチン接種コントロール動物と比較してインスリン感受性の改善を示した。インスリン投与の0、30、45及び60分後では有意な差異はなかった。
ゆえに、GIPに対するワクチン接種により、Qβ VLPにカップリングしたGIP 1-15-GCにて免疫化されたマウスのインスリン応答性が改善された。
表7 GIP 1-15-GC-Qβで免疫化した4−5匹のマウスグループにおけるIPISTの血中グルコースレベル

【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】GIP断片のQβ VLPへのカップリングを示す還元型SDS-PAGEゲル。レーンM:分子マーカー;レーン1:誘導体化Qβ単量体;レーン2:Qβ単量体にカップリングしたGIP断片1-15GC;レーン3:Qβ単量体にカップリングしたGIP断片31-42GC。サブユニット当たりのカップリングした1、2、3又は4のペプチドに対応するカップリングバンドを矢印で示す。
【図2】GIP 1-15-GC-Qβワクチン又はQβ-CG-GIP 31-42ワクチンの有効性を示す。実施例6に詳述されるように、C57BL/6マウスにマウスGIP 1-15-GC、Qβ VLPにカップリングしたマウスCG-GIP 31-42、又はQβ VLPのみの何れかをワクチン接種した。図2Aはx軸に示すように時間に対するマウスの体重増加を示し、図2Bは初回免疫化から142日後のマウスの脂肪組成を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するウイルス様粒子(VLP);と
(b) 少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の抗原;
を含んでなる組成物であって、該少なくとも一の抗原がGIPタンパク質ないしはGIP断片であり、(a)と(b)が該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して結合している、組成物。
【請求項2】
前記GIPタンパク質が、
(a) 配列番号22;
(b) 配列番号23;
(c) 配列番号24;
(d) 配列番号25;
(e) 配列番号26;
(f) 配列番号63;
(g) 任意の他の動物からのGIP相当オルソログ;及び
(h) (a)から(f)の何れかに少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、又はより好ましくは少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列、
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記GIP断片が、配列番号22のアミノ酸残基7−10(配列番号64)に相同なアミノ酸配列を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記GIP断片が、
(a) 配列番号27;
(b) 配列番号29;
(c) 配列番号32;
(d) 配列番号45;及び
(e) 配列番号27、29、32及び45の何れかに少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、又はより好ましくは少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列、
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含有する、請求項1又は3に記載の組成物。
【請求項5】
前記GIP断片が、
(a) 配列番号28;
(b) 配列番号31;
(c) 配列番号43;
(d) 配列番号44;
(e) 配列番号68;及び
(f) 配列番号28、31、43、44及び68の何れかに少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、又はより好ましくは少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列、
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記VLPがRNAファージの組み換えコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含有してなる、請求項1ないし5の何れか一に記載の組成物。
【請求項7】
前記RNAファージがRNAファージ Qβ、fr、GA又はAP205である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記第一付着部位が、少なくとも一の共有結合を介して前記第二付着部位に結合しており、好ましくは該共有結合が非ペプチド結合である、請求項1ないし7の何れか一に記載の組成物。
【請求項9】
前記第一付着部位が、アミノ基、好ましくはリジンのアミノ基を含有する、請求項1ないし8の何れか一に記載の組成物。
【請求項10】
前記第二付着部位がスルフヒドリル基、好ましくはシステインのスルフヒドリル基を含有する、請求項1ないし9の何れか一に記載の組成物。
【請求項11】
前記GIPタンパク質ないしはGIP断片が、RNAファージAP205のコートタンパク質、その変異体ないしはその断片のN末端又はC末端に融合する、請求項1ないし8の何れか一に記載の組成物。
【請求項12】
さらにリンカーを含有する、請求項1ないし11の何れか一に記載の組成物。
【請求項13】
(a) それぞれ少なくとも一の第一付着部位を有する少なくとも一の第一ウイルス様粒子(VLP)及び少なくとも一の第二ウイルス様粒子(VLP);と
(b) それぞれ少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の第一抗原及び少なくとも一の第二抗原、
を含んでなる組成物であって、該少なくとも一の抗原がGIPタンパク質ないしはGIP断片であり、該少なくとも一の第二抗原が、(i) グレリンないしはグレリンペプチド;(ii) ニコチン、コチニンないしはノルニコチン;及び(iii) 第二GIPタンパク質ないしは第二GIP断片からなる群から選択される分子であるかその分子を含み、該第二GIPタンパク質ないしは第二GIP断片が第一GIPタンパク質ないしはGIP断片と異なるものであって;
該少なくとも一の第一ウイルス様粒子(VLP)と該少なくとも一の第一抗原が該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して結合しており、該少なくとも一の第二ウイルス様粒子(VLP)と該少なくとも一の第二抗原が該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して結合している、組成物。
【請求項14】
前記第一ウイルス様粒子及び/又は前記第二ウイルス様粒子が、RNAファージの組み換えタンパク質、その変異体ないしはその断片を含有してなり、好ましくは該RNAファージがQβ、fr、GA又はAP205である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記第二のGIP断片が、
(a) 配列番号27;
(b) 配列番号29;
(c) 配列番号32;
(d) 配列番号45;
(e) 配列番号28;
(f) 配列番号31;
(g) 配列番号44;
(h) 配列番号68;及び
(i) 配列番号27−29、31、32、44、68及び45の何れかに少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、又はより好ましくは少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列、
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含有する、請求項13又は14に記載の組成物。
【請求項16】
前記グレリンないしはグレリンペプチドが、
(a) 配列番号33;
(b) 配列番号35;
(c) 配列番号40;
(d) 配列番号36;
(e) 配列番号37;
(f) 配列番号38;
(g) 配列番号46 (GSSFLSPEHQKLQ);及び
(h) 配列番号47 (GSSFLSPEHQKVQ)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含有する、請求項13又は14に記載の組成物。
【請求項17】
前記第二抗原がO-スクシニル-3'-ヒドロキシメチル-ニコチンを含有する、請求項13又は14に記載の組成物。
【請求項18】
少なくとも一の第一組成物と少なくとも一の第二組成物を具備してなるキットであって、
該第一組成物が、
(a) 少なくとも一の第一付着部位を有する第一ウイルス様粒子(VLP);
(b) 少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の第一抗原;
を含んでなり、該少なくとも一の第一抗原がGIPタンパク質ないしはGIP断片であり、(a)と(b)が該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して結合しているものであり;
該第二組成物が、
(c) 少なくとも一の第一付着部位を有する第二ウイルス様粒子(VLP);
(d) 少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の第二抗原;
を含んでなり、該少なくとも一の第二抗原が、(i) グレリンないしはグレリンペプチド;(ii) ニコチン、コチニンないしはノルニコチン;及び(iii) 第二GIPタンパク質ないしは第二GIP断片からなる群から選択される分子であるかその分子を含み、該第二GIPタンパク質ないしは第二GIP断片が第一組成物に含有される第一GIPタンパク質ないしはGIP断片と異なり;(c)と(d)が該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して結合しているものである、キット。
【請求項19】
前記第一ウイルス様粒子及び/又は前記第二ウイルス様粒子が、RNAファージの組み換えタンパク質、その変異体ないしはその断片を含有してなり、好ましくは該RNAファージがQβ、fr、GA又はAP205である、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記第二のGIP断片が、
(a) 配列番号27;
(b) 配列番号29;
(c) 配列番号32;
(d) 配列番号45;
(e) 配列番号28;
(f) 配列番号31;
(g) 配列番号44;
(h) 配列番号68;及び
(i) 配列番号27−29、31、32、44、68及び45の何れかに少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、又はより好ましくは少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列、
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含有する、請求項18又は19に記載のキット。
【請求項21】
前記グレリンないしはグレリンペプチドが、
(i) 配列番号33;
(j) 配列番号35;
(k) 配列番号40;
(l) 配列番号36
(m) 配列番号37;
(n) 配列番号38;
(o) 配列番号46 (GSSFLSPEHQKLQ);
(p) 配列番号47 (GSSFLSPEHQKVQ);及び
(q) 配列番号33、35−38、40、46又は47に少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、又はより好ましくは少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列、
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含有する、請求項18又は19に記載のキット。
【請求項22】
前記第二抗原がO-スクシニル-3'-ヒドロキシメチル-ニコチンを含有する、請求項18又は19に記載のキット。
【請求項23】
請求項1ないし12の何れか一に記載の組成物又は請求項13ないし17の何れか一に記載の組成物を含有してなるワクチン組成物。
【請求項24】
動物、好ましくはイヌ、又はネコ、好ましくは愛玩用ネコ、又はヒトに請求項23に記載のワクチン組成物が投与されることを含む、免疫化方法。
【請求項25】
(a) 請求項1ないし12の何れか一に記載の組成物又は請求項13ないし17の何れか一に記載の組成物、と
(b) 受容可能な薬剤的担体
を含んでなる薬剤組成物。
【請求項26】
(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するVLPを供給し
(b) 少なくとも一の第二付着部位を有するGIPタンパク質ないしはGIP断片である、少なくとも一の抗原を供給し、
(c) 該VLPを該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して少なくとも一の抗原に結合して該組成物を産生させる
ことを含む、請求項1ないし12の何れか一に記載の組成物の産生方法。
【請求項27】
肥満の治療及び/又は予防のための医薬の製造方法における、請求項1ないし12の何れか一に記載の組成物又は請求項13ないし17の何れか一に記載の組成物の使用。
【請求項28】
動物、好ましくは愛玩用ネコないしはイヌ、又はヒトに請求項23に記載のワクチン組成物が投与されることを含む、肥満の治療又は予防の方法。
【請求項29】
請求項18ないし22の何れか一に記載のキットの少なくとも一の第一組成物と少なくとも一の第二組成物が動物、好ましくは愛玩用ネコないしはイヌ、又はヒトに投与されることを含む、動物の肥満の治療及び/又は予防の方法。
【請求項30】
前記少なくとも一の第一組成物と前記少なくとも一の第二組成物が同時に投与される、請求項29に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−517975(P2008−517975A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538403(P2007−538403)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055529
【国際公開番号】WO2006/045796
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(304042375)サイトス バイオテクノロジー アーゲー (26)
【Fターム(参考)】