説明

胃食道逆流制御システム及びポンプ

【課題】栄養投与中の胃−食道−咽頭の逆流の発生を減少させる経腸栄養ユニットを提供する。
【解決手段】本発明の経腸栄養ユニットは、患者の胃及び食道内の相対圧力を感知するためのフィードバックセンサを備えた自動化可能な栄養ポンプと、患者への栄養投与速度を相対的な胃−食道圧力の関数として制御しかつモニタするためのレギュレータシステムとを含む。このシステムには、食道の水密封鎖のための可撓性及び/または弾性材料で形成されたタンポン−ブラダーを含む胃プローブが含まれる。流体媒体の受容のためにブラダーの少なくとも1つの内腔が設けられる。タンポン−ブラダー内の媒体への所定の圧力は、胃プローブを形成する内側ルーメンによって維持され、そこからタンポン−ブラダーまで延在するホース様の外側ルーメンが、外側ルーメンに配置されたタンポン−ブラダーの内腔と接続されたチャネルが内外のルーメン間に形成されるように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の胃経腸栄養のエピソード中またはエピソードとのエピソードの間に生じる胃圧を調整するかまたは平衡させることによって胃食道逆流を防止するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
胃圧の自然放出は、胃内容物の咽頭への移送である逆流に関連付けられることが多い。本明細書中で用いられる胃食道「逆流流体」には、任意の気体、任意の液体、任意の部分的に固体及び液体の物質、または胃から患者の咽頭の中へ放出され得る任意の物質が含まれる。経管栄養患者の胃内に一般に蓄積する流体としては、経管栄養調整食、飲み込まれた唾液(約0.8L/日以上)、胃の分泌物(約1.5L/日)、胃に逆流した小腸分泌物(約2.7〜3.7L/日)が挙げられる。胃食道逆流(gastro-esophageal reflux:GER)は、胃腸管と咽頭管の間で、しばしば胃内容物の間欠的で程度の差こそあれ大きな食物塊のような逆流として現れるが、連続的な無症状の液状物質及び固形物の上昇及び下降としても現れる。挿管された患者、すなわち人工呼吸器をつけている患者及び自発呼吸している患者の両方において胃の栄養/減圧チューブに沿って発生するGERは、ICU治療においてよくある問題であり、高い感染関連性が認められる。
【0003】
特にいわゆる胃内または十二指腸内栄養投与下で、患者の咽頭内への胃内容物の逆流の発生率が増加している。胃栄養法、十二指腸栄養法、または経腸栄養法は、栄養調整食または薬剤が胃腸管(胃または十二指腸のいずれか)に直接送達される高カロリー栄養及び代謝補助の一形態である。大抵、栄養物の投与は、多くの場合にいわゆる経腸栄養法と呼ばれるような、患者の咽頭及び食道を通って直接胃、十二指腸または小腸(空腸)内に栄養物を送達するチューブベースの装置またはシステムを用いて達成される。或る経腸栄養装置は、栄養流体を患者に送達するポンプを含む。他の経腸栄養装置は、栄養流体を(患者の高さより上に吊り下げられている)容器から患者まで重力を頼りに移動させる。
【0004】
食物及び薬剤を患者に供給するための経腸チューブは、多年にわたって医療の場で用いられてきた。経腸栄養装置の例は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4に記載されており、これらは全文を引用することを以て本明細書の一部となす。救急救命治療では、通常、主として患者の胃内で高まる圧力を解放するために用いられるような、いわゆる経鼻胃減圧カテーテル(NGチューブ)による胃(経腸)栄養投与が行われる。液状腸分泌物の蓄積、胃または十二指腸内に投与される栄養溶液、腹部運動性、患者の身体的動作または姿勢から、あるいは正常なガス発生を通じて、過度の胃圧が生じ得る。胃圧の減圧及び胃内容物の排出のために、そのような患者はいわゆる経鼻胃または経口胃のチューブまたはプローブを挿管され得る。そのような胃プローブの1つの例が、特許文献5に記載されている。別の例が、特許文献6に記載されており、特許文献6は全文を引用することを以て本明細書の一部となす。
【0005】
固形物及び/または高粘度液体分泌物は胃プローブの排出ルーメンを頻繁に詰まらせるので、多くの場合に胃プローブは胃を不十分に減圧する。胃の不十分な減圧は、NGチューブ沿いに食道ルーメンを通って流体が逆流することを可能にする。さらに、GERを防止する代わりに、文献は、硬い減圧チューブシャフトの経食道通過について、括約筋を部分的に開放し、それゆえにチューブシャフト沿いに胃から咽頭内へ分泌物の上昇を促進することによって、それ自体が食道及びその括約筋のシール効果を弱めるものであると説明している。複数の研究が、NGチューブなしの背臥位の患者の約15%にGERが生じる一方で、NGチューブを挿管された背臥位の患者におけるGERの有病率は症例の約80%にまで増加し得ることを示している。
【0006】
さらに、GERは、経鼻胃(NG)チューブ及び栄養溶液の経腸デリバリーがなくても、重症患者に生じる。背臥位に維持されている患者の最大30%がGERの症状があると推定される。
【0007】
咽頭と胃の間での分泌物の自由な連通は、多量の定着した流体の連続上昇及び下降の状態をもたらすことが多く、それらは1日に数百ミリリットルのオーダーであり得るかまたは1日に数リットルのオーダーですらあり得る。典型的には、人工呼吸療法の約4〜6日後、混合された細菌叢は、定着し、上部消化管並びに咽頭要素すなわち頭蓋顔面腔に存在する。そのような定着した物質は、いわゆる人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:VAP)を含む細菌の最重要供給源並びに感染性の細菌病原体拡散の起源を表す、上顎洞またはちょう形骨洞などの感染しやすい空間にたまることがある。
【0008】
咽頭及び胃−腸の区画間での自由な連通もまた経腸栄養溶液の胃デリバリーを低下させるが、このことは、上部消化管経由で自然な形で十分なカロリーを投与する際にしばしば問題になり、費用が掛かりかつ合併症を伴う非経口栄養法を必要とし得る。多くの場合、栄養溶液が患者の口及び鼻の開口部から出ることが観察され得、それは逆流体積が大量であること及び全頭蓋顔面表面が細菌に餌を与える栄養物の層で覆われていることを示唆し、特にVAPの病因論において、病原性細菌の主要な供給源を支えている。
【0009】
胃−食道の内容物の逆流を防止する戦略は、例えば局所性の非吸収性抗生物質の投与による咽頭及び胃のいわゆる選択的消化管殺菌(selective digestive decontamination:SDD)などの本質的に医薬品/抗生物質ベースのものであった。さらに、綿球やブラシによって口腔咽頭腔を掃除し、口腔咽頭内に少量の水または清浄液を投与する口腔ケア処置が、大部分のICU病室で行われている。さらに、長期間人工呼吸器をつけている患者に薬剤が投与され、胃のpHを酸性、無菌範囲内に維持することによって胃の細菌の定着を予防している。
【0010】
おそらく胃食道内容物の逆流に対する最高頻度で実施されかつ恐らく最も効率的な防止策は、患者の上半身を半臥位まで持ち上げ、それによって定着した胃内容物の咽頭内への上昇を減少させることであった。少なくとも2つの研究が、重症患者が半臥位状態に置かれているときのGERの減少を示していた。それゆえ、人工呼吸器を付けている患者は、通常、背臥位または半臥位に置かれている。
【0011】
胃腸の運動性が正常であるとき、分泌物及び摂取された流体は上胃−腸管によってほとんど困難なしに前進させられる。やけど、敗血症、外傷、外科処置及びショックなどの様々な臨床状態の患者において、中程度の胃内容物排出の遅れから著しい胃不全麻痺に及ぶかなりの胃腸の運動障害が描写されている。GERは、投与されたアナログ−鎮痛目的の投薬の副作用及び長期間の患者の背臥位での授動停止などの括約筋機能及び胃運動性が損なわれ得る気管挿管及び機械的人工換気中に頻繁に観察されることができる。胃栄養投与下で逆流を防止するために、それぞれ胃及び十二指腸の運動性及び内容物排出を支援するために、ICU臨床医は例えばメトクロプラミドなどの特別な医薬品を投与する。
【0012】
胃−腸流体と混合された栄養溶液の組合せが、患者の咽頭につながる全ての頭蓋顔面空間からなる要素と上部消化管間で自由に連通できるとき、患者は幾つかの点で厄介な結果を被る場合がある。
【0013】
第一に、栄養溶液が失われ、必要なカロリーをうまく投与できないことによって、費用が掛かり長期に及ぶ患者への非経口栄養投与が必要になる。
【0014】
第二に、頭蓋顔面腔の粘膜面は、途切れ途切れに栄養溶液に含まれる栄養物によって覆われていくので、細菌に対して理想的な成長条件を提供し、人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発生に関連する細菌の定着のリスクを増大させる。気管チューブカフを経て遠位気道へ下降する咽頭分泌物は、挿管された患者及び人工呼吸器をつけている患者の肺感染の主な原因であることが知られている。
【0015】
第三に、栄養溶液は、鼻咽頭腔及び副鼻腔などの離れた頭蓋顔面腔にたまっているが、最先端の医療技術によって取り除くことが出来ず、化膿状態に変わって、炎症を起こした粘膜を介して化膿貯留部(プール)から血流内へのいわゆる細菌転移によって、感染性合併症を引き起こすVAP病原体または細菌の永久的な供給源となることがある。
【0016】
バルーンが先端に付いたカテーテルによる食道圧及び胃圧の測定は、過去半世紀にわたって呼吸器系の生理機能を描出するために成功裏に用いられてきた。いわゆる経横隔膜圧は、食道内に留置されたバルーン要素と胃または腸内に留置されたバルーン要素間の圧力勾配を感知することによって通常は検出されるが、経横隔膜圧の測定は、それに合うような、バルーンの寸法が小さく、食道シール機能をもたらすことができないような測定プローブ及び圧力感知ハードウェアの開発につながった。関連するハードウェアは、専ら圧力検出のために設定され、シール圧力勾配を能動的に調整することができない。
【0017】
細菌では、食道出血医療介入(ゼングスターケン・ブレークモアチューブ)のためにデザインされたプローブ材料を用いて、胃から咽頭内へ上昇する胃内容物に対する食道バルーンシールをもたらす臨床的試みがある。オロズコら(Orozco et al. (details))は、胃食道逆流の著しい減少を示すことができた。しかし、食道の構造壁は、持続的圧力または器官壁膨張に特に敏感に反応する。それゆえ、そのような従来の閉塞技術、すなわち封鎖ブラダー構造の本体(hull)が張力下に置かれるような技術は、食道の場合には望ましくないかあるいは制限付きで望ましい。潜在的な食道外傷リスクのせいで、静止状態の加圧されたバルーンの適用期間は8時間に制限されていた。
【0018】
特許文献5に記載されている胃プローブなどの胃プローブは、患者内で用いられるときに栄養チューブがブラダーの中心または中心付近に置かれるように結合されている食道ブラダー及び経腸栄養チューブを有する。栄養チューブは、栄養ルーメンに関連付けられた薄肉のブラダーを有する。栄養ルーメンの周りには、ブラダーの長さに沿って空気または他の気体を伝導するための1若しくは複数のフェルールがある。このタイプの胃プローブは、膨張式ブラダーの領域内のデリバリーカニューレ上に位置するルーメンを有し、その構成は膨張式ブラダーの部分同士または部分体積同士間の迅速な体積の均等化を保証する。ルーメンは、ルーメンとデリバリーカニューレ間にチャネルが形成されるように配置され、チャネルは複数の開口部を介して膨張式ブラダーの内部と接続されており、かつルーメン上に配置されている。膨張式ブラダーの内部は、デリバリーカニューレとルーメンの間に形成されたチャネルを介して膨張式ブラダー内に圧力を生じさせる手段に接続されている。ルーメンは、それによって、胃プローブの外内壁または胃プローブのデリバリーカニューレ間でステント様デバイスまたはスペーサによって開いたままにされる。しかし、このタイプの胃プローブは、従って、例えばルーメンなしの従来の胃プローブよりも製作するのがずっと複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第4,666,433号明細書
【特許文献2】米国特許第4,701,163号明細書
【特許文献3】米国特許第4,798,592号明細書
【特許文献4】米国特許第4,685,901号明細書
【特許文献5】独国実用新案出願公開第202006002832.3号明細書
【特許文献6】米国特許第6,551,272号明細書
【特許文献7】米国特許第7,040,321 B2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本願の開示に従って、連続的に変化するシール圧力要件並びに長期の器官適合性かつ非侵襲的な食道内ブラダーの留置に任意選択で自己適応するような圧力勾配に基づく食道シールが提供される。
【0021】
本発明は、従来の胃または十二指腸の減圧及び栄養カテーテルに関連する不利点を是正する。本発明は、患者を刺激することなく、かつ食道構造に悪影響を及ぼすことなく、連続8時間をかなり超えた長時間にわたって臨床医が患者の食道を遮断または封鎖することを可能にする減圧または栄養プローブを含む。胃−腸管と上気道間の自由な連通を妨げることによって、咽頭内への胃内容物の胃食道逆流を減少させることができる。それゆえ、胃−十二指腸に栄養溶液を投与する有効性を向上させることができ、咽頭腔及び付加的な頭蓋顔面腔の細菌定着の量を低下させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の一態様では、胃の内部に留置された圧力センサ素子が連続的に胃内圧を感知し、それに応じて食道に留置された器官封鎖ブラダーの充填圧力を調整する制御装置/ユニットに報告する。1つのモードでは、制御装置/ユニットは、所定の一定圧力に手作業で設定された圧力に従って、食道に留置された器官封鎖ブラダーの充填圧力を調整する。これは、マニュアル設定/操作定常モードである。別のモードでは、絶えず変化しかつ食道内に留置された第2の圧力センサによって測定される圧力である圧力に従って、制御装置/ユニットは、食道に留置された器官封鎖ブラダーの充填圧力を調整する。これは、自動制御または動的モードである。各モードは、食道シールブラダー内の圧力が胃内圧を超過する連続シール圧力勾配のユーザ決定値の設定を可能にし、それによって、食道シールブラダーを通過した胃から上昇している胃−腸内容物に対する逆流防止食道シール機能を果たす圧力勾配を達成する。
【0023】
制御装置/ユニットは、栄養溶液を患者に送達する栄養ポンプに接続されるかまたは組み込まれることができる。そのような組み込みは、上記した圧力勾配ベースの食道シール機能の調整を可能にし、特に咽頭栄養流体の咽頭内への上昇及び損失を防止し、かつ、胃と十二指腸間の圧力勾配を作り出し、胃内容物の自発的な排出及び栄養溶液の腸方向の流れを促進する。シール圧力制御装置と栄養ポンプの組合せは、経腸栄養法の有効性を向上させるためのみならず、胃への栄養投与が一時的に止まる期間にGERの量を減少させ、それによってVAPの進行に予防効果を及ぼすための、理想的なツールをユーザに提供する。さらに、栄養ポンプユニットは、栄養溶液の経腸方向の取り込みを向上させかつ圧力に敏感な食道構造に対して永久的に曝されるシール力による潜在的な外傷を減らす特別な制御アルゴリズムを組み込むことができる。
【0024】
さらに、上記した制御装置または制御装置/ポンプの組合せと併用するための特定の経口胃/経鼻胃/十二指腸カテーテル構造について述べる。カテーテルには、デリバリーカニューレと膨張式の食道栓ブラダー(tampooning esophageal bladder)間に位置しかつ膨張式ブラダーの内部と接続されたルーメンを設けることができる。カテーテルは、比較的簡単な技術によって製造されることができ、同時に、膨張式ブラダーの部分体積同士間の適切な体積の均等化を保証する。カテーテルは、胃圧センサ及び食道栓ブラダーを圧力感知/調整制御装置と接続する、少なくともダブルルーメン、胃圧センサ素子及び食道タンポン−ブラダーを有するチューブを含むのが望ましい。食道ブラダーは、患者の食道の粘膜の折りたたみ構造と互いにかみ合うことができる複数のひだを含む、残留して必要な寸法を形成する予め形成された径に予め形作られることができる。このようにして、膨張性食道ルーメンの十分なシールを達成するために、タンポン−ブラダーのひだのある壁は内圧を増加させることによって伸長される必要はないが、むしろ単に同じ圧力で展開し、従って、最も低い可能な充填圧力で食道粘膜の生理学的な軸線方向に方向付けられた折りたたみ構造(フォールディング)を覆うように十分に自身の大きさを変えることができる。この展開(アンフォールディング)機構は、従来の柔軟な膨張性ブラダー材料によってもたらされるような圧力集中的な器官閉塞を作り出す代わりに、食道内の残りの開いているルーメンのタンポナーデ(封鎖)を実質的に生じさせる。さらに、カテーテルシャフトのタンポン保有セグメントは、加えた充填媒体を蠕動収縮の遠位部から近位の既に蠕動収縮から解放された部分内へとタンポン内体積シフトを行うことによって、食道に留置されたタンポンが蠕動収縮に耐えることを可能にするような特別なシャフト形状を備え得る。
【0025】
別の態様では、本発明は、患者の食道内への胃の逆流を効果的に減少させる方法または工程に関する。当該方法は、少なくともダブルルーメン、食道シールブラダー及び胃圧センサ素子(例えば胃バルーン)を有する経腸栄養チューブを提供するステップと、経腸栄養チューブを患者の上部消化管内に挿入し、胃バルーンを患者の胃内に、食道ブラダーを患者の食道内に留置するステップと、フィルタアルゴリズムを用いて平均化されることができる胃内圧信号を胃圧センサ素子から受信するステップと、胃から十二指腸に向かって方向付けられた圧力勾配の蓄積を可能にする、感知された実際の胃圧に連続的に追加される勾配値のユーザによる決定値を設定し、それによって、遠位消化管への胃内容物の排出を促進する、胃−咽頭の逆流から食道を遮断するべく印加されるべき相対的な食道圧力レベルを規定するステップとを含む。
【0026】
本発明のシステム及び個々の装置または構成部品の他の機能及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。上記の概要も以下の詳細な説明及び例も単に本発明の典型に過ぎず、請求項に記載の本発明を理解するための概略を与えることを意図したものであることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の或る実施形態に従って、患者の頭、胴及び横隔膜のある上腹部のシルエット外形に挿入された本発明の或る実施形態の概略をポンプシステムと共に示す図。
【図2】本発明の或る実施形態に従う、食道ブラダーデバイス及び栄養チューブの或る実施形態の部分切り取り図。
【図3】食道内に位置し得るような図2に示すデバイスの線II−IIに沿った断面図。
【図4】第1の実施形態に従う図2及び図3に示す成形体の斜視図。
【図5】デリバリーカニューレの斜視図。
【図6】第2の実施形態に従う開示されている成形体の斜視図。
【図7】第3の実施形態に従う開示されている成形体の斜視図。
【図8】フェルールの代替構造の概略図。
【図9】図8の構造の変形形態。
【図10】図8の構造の変形形態。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、静的または動的な、低刺激の、長期の器官適合性がありかつ食道内で安定しているシール機能をもたらし、上記した上気道と胃−腸管間での分泌物及び胃内容物の自由な連通を妨げることを意図するような装置及び方法について説明する。
【0029】
図1を参照すると、図1は患者の胴の断面を概略的に示しており、患者の胸腔壁11、肺12、横隔膜13、胸腔内空間14、食道15及び胃18の一部分が示されている。図1には、栄養ポンプ機能/ユニットと併用される患者の胸部内の原位置で作動し得る経腸栄養法中に用いられる本願の胃食道逆流防止装置の好適実施形態も示されている。図1に概略的に示すように、シールシステムの実施形態は、鼻腔または口腔に挿入され、食道15を通過し、胃18に終端を有する胃チューブ54の組合せを含む。経口胃/経鼻胃チューブ54は、胃18に留置されたチューブの先端の端部付近にある圧力感知バルーン21を有するが、代替的に電子的圧力感知素子21が提供される場合もある。この胃バルーン/センサ21は、それぞれの充填/通信ライン23に接続されている。胃センサバルーン21の近位部は、経鼻胃チューブ54のシャフトに沿って、または経鼻胃チューブ54のシャフトに組み込まれて、充填ライン22を有する食道封鎖ブラダー53に置かれる。
【0030】
図1に概略的に示されているように、本発明の好適実施形態に従って、減圧/栄養チューブ54は、感知及び調整装置20と併用されるように特別にデザインされることができ、装置20は、1若しくは複数の圧力センサから複数の信号を受信するように構成されており、感知された圧力に従って食道15内のシール力を調整するように構成されている。図1に概略的に示されているように、制御装置20には、ローラーポンプ24などの栄養ポンプ24または貯蔵部38からチューブセグメント19を介して患者の胃18へ栄養溶液を送達するための胃栄養ポンプにおいて用いられる類似の機構を組み込むことができる。上記の組合せは、特に重症患者の経腸栄養法の要求に適した、調整された逆流防止食道シール53の利益をもたらす。
【0031】
制御装置20は、圧力センサ21から信号を受信しかつ処理し、食道15の壁16にブラダー53によって及ぼされるシール力を調整するように構成されることが望ましく、制御装置20は、機械ポンプ、圧力トランスデューサ、アナログ−デジタル変換器、並びにプログラマブル論理制御装置及び/またはプログラマブルマイクロプロセッサなどの論理/制御ユニットを含むことができることが望ましい。
【0032】
制御装置20は、連続的にモニタしかつ任意選択でセンサ21によって感知される実際の胃内圧を表示するように、かつユーザが決定した食道封鎖ブラダー53と胃18内の圧力間の圧力勾配(ΔP)による封鎖を確実にするために食道シールブラダー53の膨張圧力を調整するように、構成できることが望ましい。図1に概略的に示されているように、制御装置20またはレギュレータ機構に、センサからのフィードバック及び他のパラメータのためのディスプレイ25を設けることができる。ディスプレイ25は、ユーザが決定した食道と胃圧間の圧力勾配(ΔP)、患者に補給される栄養物の実際及び所望の体積/単位時間(V/h)、シールブラダー53によって感知される食道圧力(P食道)及び胃センサ21によって感知される胃圧(P)を視覚的に表示するように構成されることができる。
【0033】
制御装置20またはレギュレータ機構には、栄養溶液を患者に供給する速度及び他のパラメータを調整するための手動制御部を設けることができる。図1に概略的に示されているように、制御装置20には、ユーザが所望の圧力勾配ΔPの大きさを設定できるようにする手動入力機構26のオプションを設けることができる。図1に概略的に示されているように、制御装置20には、患者に補給される栄養物の体積を制御するための手動入力機構27と、患者に栄養物が補給されるデリバリー時間を制御するための手動入力機構28と、栄養溶液を含む栄養容器38へのシステムの接続を制御するための手動入力機構39とを設けることができる。
【0034】
センサ21によって検出された実際の胃内圧に、ユーザが決定したシール圧力勾配(ΔP)を連続的に加えることによって、食道組織16に対して食道シール53が及ぼす力を必要最小限まで連続的に減らし、それゆえに、さもなければ連続的な不適切に高いシール圧力によって生じ得るような圧力誘発性外傷の可能性を、それ相応に小さくすることができる。胃内圧のレベルが相対的に低ければ、食道シール力及び経壁的にもたらされる力は相応に相対的に低い。胃圧レベルが増加すれば、食道シール圧力のみが或る勾配(ΔP)だけ増加する。勾配(ΔP)は、逆流防止に十分なものとしてユーザが決定できる。このようにして、実際に必要なシール力を超える変化しない高シール圧力勾配を防止することができる。
【0035】
実際の胃内圧に対する食道シール圧力の連続調節の代わりに、実際の胃内圧にユーザが決定したシール圧力勾配(ΔP)を或る時間間隔内で断続的に加えることができ、そのような時間間隔は、患者に栄養物を補給する時間間隔を制御するための手動入力機構28によって等、制御装置20においてユーザによって予め設定されるかまたは固定されることができるか、あるいは、ユーザが例えば手作業調整が繰り返されるまで効力を有するままである所望のシール勾配ΔPを手作業で入力することによって胃圧へのシール勾配(ΔP)の追加を決定するようなマニュアルモードによって決定されることができる。
【0036】
栄養ポンプ24に組み込まれるかまたは接続されている、食道食道シール力を調整するための制御装置20は、胃栄養投与の継続中及び終了後に到達する実際の胃内圧に従って食道ブラダー53のシール圧力を動的な状態に能動的に維持するように構成されることができるので、食道内圧と胃内圧の間のシールに十分な圧力勾配(ΔP)を連続的に維持することができる。制御装置20は、さらに患者への相対的な栄養投与速度を、胃圧センサ21により感知された胃圧の関数として制御するように栄養ポンプユニット24を制御するように構成され、それによって、臨界食道シール力への到達を防止し、最適圧力条件下でかつ/または最適栄養投与期間中に栄養を補給することができる。
【0037】
アルゴリズム制御
【0038】
特許文献7(全文を引用することを以て本明細書の一部となす)に記載のもの等の呼吸調節技法と同様に、本願の経腸栄養システムもまた栄養ポンプを制御するためのアルゴリズムを用いることができることが望ましい。そのようなアルゴリズム制御の可能な例には、以下のものを含むことができる。胃プローブ21の留置及びシステムの起動の後、制御装置20は、充填ライン23を介して胃バルーン21内に規定量の充填流体をポンプで送り込んでバルーンを充填するように構成されることができ、それは、自由に膨張した予め形作られた状態で胃バルーン21の体積よりも小さいことが好ましい。図1に概略的に示されているように、制御装置20は、充填ライン23を介して胃圧感知バルーン21に接続されているポンプ41を操作してバルーン21を充填するように構成されることができる。
【0039】
胃センサバルーン21は、部分的に膨らませることによって、胃内圧すなわち腹内圧の僅かな変化に反応することができる柔軟な非拡張状態にとどまる。ひとたびバルーン21内の圧力が胃内圧の安定した読み(すなわち平均化工程から得られた平均圧力レベル)に達すると、制御装置20は、充填ライン22に接続されているポンプ40を操作し、充填ライン23を介して食道シールタンポナーデ53に食道シール圧力を印加するように構成されることができる。食道シール圧力は、制御装置20のソフトウェアにプリセットすることができかつユーザが入力機構26を介して手作業で調整することができるような所定のΔP値に基づいて、制御装置20によって調整されることができることが望ましい。食道シール圧力は、胃圧(胃センサ21によって測定される)にΔP値を加えたものとして計算される。
【0040】
図1に概略的に示されているように、感知バルーン21及び食道シールタンポナーデ53のための充填流体は流体貯蔵部35から供給されることができ、流体貯蔵部35は、事情次第で、液体または気体を室温条件または圧力下に保持することができる。
【0041】
食道封鎖ブラダー53のフォイルの特定の膜特性に起因して、胃内容物の受動的逆流に対する信頼できるシールを製造するために、実際の胃圧以上の水の約10cmないし約20cmの静水圧勾配が望ましいと考えられる。典型的には、最大約10cmの静水圧ΔPが用いられる。
【0042】
図1に概略的に示されているように、食道シールブラダー53内で維持される実際の食道シール圧力は、充填ライン22を介して接続されているポンプ40を操作する制御装置20によって絶えず決定されかつ調整されることができる。制御装置20は、胃バルーン/電子的センサ21によって検出される実際の胃内圧及びユーザが手動入力機構26を介して設定したシール圧力勾配ΔPからこのシール圧力を得るように構成されることが望ましい。組織に梗塞を起こしかねずかつ潰瘍を生じさせる恐れがあるような食道シール53内の圧力レベルを超えないように、制御装置20が使用する制御ソフトは、食道シールブラダー53が超えることのない最大シール圧力を規定するプリセット値P食道−maxを含むように構成されることができる。
【0043】
制御装置20は、望ましくは、一定期間に投与される所望の栄養溶液の体積をユーザが入力機構27により入力できるように構成されることができ、それによって、患者への栄養溶液の体積のデリバリー間隔の持続時間が、別の予め規定したパラメータセットとして別々に規定されるかまたはユーザが手動入力機構28により入力することができる。制御装置20は、所望の栄養溶液の体積を所望のデリバリー期間にわたって送達することができる一定流量を計算するように構成されることができる。制御装置20は、以下の例を含む幾つかのモードに従って患者の栄養ポンプを操作するように構成されることができることが望ましい。
【0044】
一定な流れの下での動作:
【0045】
この動作モードは、ユーザがデフォルトにしたシール圧力勾配に従った食道シール圧力の連続調節と、所望の栄養溶液の体積を所望の時間間隔にわたって送達することができるように計算された機械で計算した線形栄養投与速度に従った次の栄養溶液ポンプの操作と、P食道−maxに達したときの栄養ポンプ機能の自動停止と、P食道がP食道−max以下に低下するまで栄養ポンプ機能の一時停止と、所望の全栄養溶液流体量のデリバリーが達成されるまで最初に計算した栄養投与速度に従った栄養ポンプ機能の継続とを要求する。
【0046】
動的調整流れの下での動作−デリバリー体積指向:
【0047】
この動作モードは、ユーザが予め選択したデフォルト値のシール圧力勾配ΔPを維持しようと試みるための食道シール圧力の連続調節を要求する。制御装置20は、Δt(制御ソフトが規定した時間間隔、例えば実際の圧力値を決定する3分前及び3分後)に及ぶΔPの連続的または断続的な決定と、Δtに及ぶΔPの線形外挿とを行うように構成されており、Δt(または幾つかのΔt期間あるいはユーザが決定したデリバリー期間の合計)内に外挿された圧力曲線Pの傾きがP食道−maxに達する場合には、制御アルゴリズムによって栄養溶液流量の低下が数字で表されかつ達成され、制御アルゴリズムはΔt(または幾つかのΔt期間あるいはユーザが決定したデリバリー期間の合計)内にP食道−maxを超えないように十分に外挿法の傾きを小さくするように構成されており、所望の全栄養溶液量が送達されるまで栄養投与期間の動的一般化を行う。
【0048】
動的調整流れの下での動作−デリバリー時間最適化:
【0049】
この動作モードは、ユーザが予め選択したデフォルト値のシール圧力勾配に従った食道シール圧力の連続調節と、Δt(制御ソフトが規定した時間間隔、例えば実際の圧力値を決定する3分前及び3分後)に及ぶΔPの連続的または断続的な決定と、傾きの線形外挿(上述)と、Δt(または幾つかのΔt期間あるいはユーザが決定したデリバリー期間の合計)内にPの外挿された圧力曲線がP食道−maxに達しなければ、Δt(または幾つかのΔt期間あるいはユーザが決定したデリバリー期間の合計)内にP食道−maxに達するかまたはほぼ達するように流量の連続的な増加とを要求する。P食道−maxに達したときに栄養ポンプ機能の自動停止が達成され、P食道がP食道−max以下に低下するまでは栄養ポンプ機能は一時停止し、所望の全流体体積の栄養溶液のデリバリーが達成されるまでは前に計算した栄養溶液の補給速度に従って栄養ポンプ機能が再開する。
【0050】
動的調整流れの下での動作−デリバリー時間最適化及びデリバリー体積指向:
【0051】
この動作モードは、P食道−maxに達するまで上記したデリバリー時間最適化モードに従って動作し、その後、上記したデリバリー体積指向モードに変わることを要求する。
【0052】
重力式の栄養投与制御:
【0053】
栄養溶液は、機械的ポンプの代わりに重力を用いて供給されることができる。栄養投与作業が重力によって行われるとき、栄養投与作業は、送達される栄養溶液の流れ及び量を中断するかまたは徐々に制御する電子的閉塞要素(図示せず)によって制御されることができる。栄養溶液の流れ及び体積を検出し、それを用いて閉塞要素を制御することができるようにするために、栄養ライン19に点滴チャンバ(図示せず)を組み込むことができ、そのようなチャンバに入る栄養溶液の液滴の数を光学的検出装置(図示せず)を用いて検出しかつ計数することができる。それゆえ、上記したコンピュータプログラムを使った制御と同様のやり方で上記で提案した制御アルゴリズムを用いることができる。
【0054】
パラメータとしてのITP
【0055】
食道ブラダー53の膨張によって、食道15内に導入されることができる胃プローブ54は、食道15の壁16の表面に接するように留置され、食道15の壁16はその中間部分において、さらに良いのはその下部3分の1において、胸部内圧の進行を、食道15の壁16を通って(経壁的に)胃プローブ54の食道留置ブラダー53へ伝える。食道15の壁16を通って経壁的に伝えられる経壁内圧(inter-transmural pressure:ITP)は、このブラダー53によって検出され、食道15内の圧力を示す制御信号として用いられることができかつユーザが患者の胸部の活発な動作を検出しかつモニタできるようにするような測定値になる。
【0056】
プローブ設計要件:
【0057】
デリバリーカニューレ54の外径は、有利には、約3mmないし約6mm、特に約4mmないし約5mmである。デリバリーカニューレ54の内部には、患者に送達される液体栄養物を通す栄養チャネル61に加えて、デリバリーチャネル62があり、デリバリーチャネル62を経て気体であろうと液体であろうと流体によって膨張式ブラダー53を充填することができる。
【0058】
胃内容物が食道15を経由して患者の咽頭へ上昇しないようにするための装置及び方法の実行は、さらに、食道封鎖ブラダー53の特有の構造及び特定の性能によって決まる。圧力によって誘発される食道の損傷を防止するために、本発明は、食道器官ルーメンの低圧ブラダータンポナーデ/閉塞について説明する。圧力によって誘発される食道の損傷の防止の次に、食道封鎖ブラダー53は、常に動いておりかつ断面の粘膜の折りたたみ及び形状を変化させている食道の高度に動的構造内における永久的な留置の要求に合うように構成されなければならない。これらの問題のせいで、非侵襲的で、刺激することがなく、蠕動運動に耐え、気道及び消化管の十分な機械的分離をもたらすような単純な所望の食道内ブラダーシールを見付け出すことが、今に至るまで満足にできていない。本発明において説明した本発明のブラダーを備えた減圧プローブの機能的特色は、そのような要件に合っている。
【0059】
残留ブラダー
【0060】
自由に広がった状態での膨張式ブラダー53の直径は、約20mmないし約50mmである。自由に広がった状態での膨張式ブラダー53の直径には、約30mmないし約40mmの直径が特に望ましい。栓ブラダー53は、その完全な予め形作られた寸法まで自由に膨張されるとき、拡張した食道15の期待される直径よりも大きな直径を有する。それゆえ、図3に概略的に示されているように、封鎖ブラダー53は、食道壁16の予め形作られた拡張していない寸法との接触を切り離すことなく食道の突起部及びひだのある内層と係合することができる残留体積58を含む。図3に概略的に示されているように、タンポン−ブラダー53の残留径は、器官ルーメンの閉塞を達成するためにブラダー材料を拡張または伸張させる必要なしに食道のひだのあるルーメンがその全周囲にわたってブラダー本体によってしっかりと覆われることができるように、その表面に沿って複数の予備の中間ひだ43をさらに作り出す。ブラダー本体の伸張の防止のおかげで、所望の封鎖を達成するのに必要とされるブラダー53内の圧力はそのため低く保たれることができ、腔内器官圧力を僅かに数ミリバール(cmHO)超えるだけである理想的な場合には、かん流に関連する経壁力以下に維持されることができる充填圧力での流体シールを可能にし、ユーザはブラダー53内の気圧計で測定される圧力をそのような達成された経壁力に等しい値に設定することができる。
【0061】
ブラダーの厚さ
【0062】
可能な限り最善の方法で非侵襲的食道内封鎖ブラダー53に関する様々な設計要件に合うようにするために、ブラダー53は理想的には約0.03mmに等しいかまたはそれ以下の壁厚を有する超薄壁の容易に曲げ易いしなやかなプラスチックフィルムから作られるのが好ましい。シールブラダー53は、30mbarに等しいかまたはそれ以下の充填圧力にされされ、充填圧力は理想的には約10mbarないし約20mbarの範囲内の圧力に設定されており、これらの圧力は組織かん流を大きく左右しないことが知られておりかつ食道15の運動性との十分な度合いの適合性を与える。ブラダー53は、ブロー形成、フォイル溶接または浸漬された材料で製造することができる。ブラダー53は、ポリウレタン、ポリエチレン、シリコーン、天然または合成ゴム、ポリ塩化ビニル、または所要フォイル厚さ範囲内で適切な柔軟性及び安定性を示す他の材料から製造することができる。
【0063】
ブラダーの長さ
【0064】
食道ブラダー53を形成する膜は、食道の全長を覆うように大きさを決められるのが理想的である。ブラダー本体は、食道の上部括約筋と下部括約筋の間に延在し得るように大きさを決められるのが好ましい。ほとんどの実施形態では、タンポン−ブラダー53は、通常約6cmないし約15cmの長さ、望ましくは約6cmないし約9cmの長さを有する。
【0065】
隣接器官
【0066】
さらに、本発明は、大血管、付随する神経、気管及び主気管支、2つの肺12自体及び、特に、心臓、特に左心房などの直に隣接する構造を考える。従来の閉塞技術とは異なり、本発明の逆流封鎖食道プローブは、永久加圧ブラダーシール要素53によってもたらされるかん流または組織臨界圧力のせいでそのような構造を危険にさらさない。
【0067】
充填媒体
【0068】
用途に応じて、食道シールブラダー53を充填するための媒体として異なる流体が用いられ得る。本願の好適なブラダー充填媒体は、圧縮性及び後述する変動への自身のある程度の適応性によって識別される媒体であり、例えば気体媒体である。空気は、食道封鎖ブラダー53を充填するための流体媒体を提供する好適な気体であり、気体混合物が用いられる場合がある。しかし、食道シールブラダー53の充填のための液体媒体が可能であり、粘性液体、水、または空気と水などの気液混合物が用いられる場合がある。
【0069】
食道の蠕動性長手方向収縮(嚥下)中のブラダー充填媒体のシフト:
【0070】
食道封鎖ブラダー53内でのブラダー充填媒体のブラダー内シフトを許容し、配置された位置に静止しているために必要な能力をデバイスに与え、ブラダーを備えたプローブ50が胃に向かって移動することを防止しかつ/または蠕動収縮波より下でシールブラダー53の下部に貯留する充填媒体によって食道内に生じている患者を刺激する圧力ピーク(急速静注感覚)を防止するような特別な機構を、本発明のプローブ50に装備することができることが望ましい。図3に概略的に示されているように、ブラダー53を持つプローブ50のセグメント内に、デバイスは、ドレナージまたは減圧ルーメン61に隣接して留置される第2のルーメン62を含む場合がある。図2に概略的に示されているように、ドレナージルーメン61は、第2のルーメン62に対して、ブラダー53の内部58と第2のルーメン62間にチャネル55が形成されるようにして留置されることができる。第2のルーメン62は、チャネル55を画定する通路を橋渡しする分割固定具またはバッフル様構造を用いて、ブラダー53の内部58に対して相対的に配置されることができる。
【0071】
図2に概略的に示されているように、栄養チューブ54の周りに配置されている導管52は、蠕動波より下に配置されるブラダー部分60から、蠕動波より上で既に蠕動波から解放されたブラダー部分59内へ、各蠕動収縮波により再分配されるように、食道ブラダー53を充填する空気または他の気体媒体を通すように構成されることができる。このようにして、食道に付与された蠕動波を調整するための充填媒体のブラダー内シフトがもたらされる。例えば、添付の図4ないし図7に示すように、チューブセグメントを持つブラダー内の前述の特定のチューブシャフト形状は、さもなければ患者の痛みを伴う刺激をもたらし得るであろう圧力増加であるタンポナーデ53内の望ましくない圧力増加を防止する体積シフトを促進する。
【0072】
タンポン−ブラダー53の内腔58は、デリバリールーメン62を介してチャネル55に接続されている充填ライン22から、デリバリールーメン62とタンポン−ブラダー53の内腔58の間にあるデリバリーチャネル55を介して、媒体で充填され得る。図1に概略的に示されているように、簡単に使われるそのような充填装置の例は貯蔵部または均等容器35であり、特に患者の外側に位置しかつ充填ライン22を介して接続されているものである。タンポン−ブラダー53が膨らんだり潰れたりすることによる媒体のさらなる流出または吸入を通じて上記したルーメンの機能的変動及び食道壁16の緊張を可能にするのに加えて、タンポン−ブラダー53の内腔を充填するのに十分な充填媒体の供給は、貯蔵部または均等容器35に保持される。
【0073】
これに関連して、ブラダー充填媒体がタンポン−ブラダー53の内腔58内に能動的に導かれるかあるいは内腔からチャネル55を経て吸引されることは、追加的な利点として捉えられることができる。そのような能動的な供給及び吸引は、制御装置によって作動されかつ好適にはタンポン−ブラダー53における任意の広範な圧力受動変動を補償するように調整されるようなポンプ40によって行われることができることが望ましい。
【0074】
胃プローブ、体積シフト機構、改良形状部:
【0075】
図2は、本発明に従って胃逆流防止の食道−胃プローブ50の或る実施形態の基本構成を示している。膨張式ブラダー53の領域において、デリバリーカニューレ54の周り及び一面に成形された導管体52が重ね合わされている。導管体52は、その内部にルーメン55を含んでいる。ルーメン55は、図2に示す胃プローブのII−II断面を表す図3の図にも示されている。この実施形態の例では、ルーメン55は、デリバリーカニューレ54と導管本体52の表面56間に位置する。
【0076】
図2に示すように、幾つかの開口部57は、成形体52の表面56を通って画定され、望ましくは成形体52の表面56全体に及んで分布する。ルーメン55は、開口部57を介して膨張式ブラダー53の内部58に接続されている。このことは、開口部57が、ルーメン55と膨張式ブラダー53の内部58同士間の体積交換または流体交換を可能にするように構成されかつ配置されていることを意味する。
【0077】
図4は、図2に示す本発明の第1の実施形態に示すような開示されている成形体52の拡大画像を示し、ここでは、成形体52はほぼ円筒形の外部形状を有する。成形体52の表面56を通って画定される開口部57の数及び形状は、最終用途によって異なり得る。図2及び図4に示す概ね円形または楕円形の開口部57に加えて、例えば、開口部57は例えば細長くてもよい。開口部57の形状または輪郭は、おおむね円形または楕円形の断面形状から三角形、四角形または多角形形状の開口部57まで多様であり得る。開口部57は、図2及び図4に示す実施形態のように導管本体52の表面56上におおよそ均等に分布していなければならない訳でもない。あるいは、開口部57は偏って分布していてもよい。この場合、開口部57の形状及び配置が膨張式ブラダー53の2つの部分59と60間の適切な体積交換を可能にすることが重要である。開口部57の数は、1から任意の数の個々の開口部、例えば100または1000個の開口部まで異なり得る。開口部57の数は、導管本体52の表面56の面積及び開口部57の形状によってのみ制限される。
【0078】
本発明の一実施形態では、成形体52の断面は幾つかの壁部分64を有し得る。例えば図4に示すように、幾つかの壁部分64は、成形体52の円筒形表面56から成形体52の内部内へ放射状に延在する。壁部分64の自由前端部65は或る直径を画定し、それはデリバリーカニューレ54の外径に概ね相当し、かつプローブ50のデリバリーカニューレ54で支持され、それと共に、ルーメン55の少なくとも1つの部分66を画定する。例えば図3に示すように、成形体52がデリバリーカニューレ54上に位置するとき、壁部分64の前端部65はデリバリーカニューレ54のところで止まっている。壁部分64は、概ね星形構造で成形体52の内部へ延出し得る。この配置は、壁部分64の概ね均一な分布を保証し、ひいては成形体52のしっかりした支持及び保持を保証する。
【0079】
図3に示すように、デリバリーカニューレ54とともに、成形体52内のルーメン55は別体をなすルーメン部分66に分割されることができる。1つのルーメン部分66は、2つの壁部分64、2つの壁部分13間にある成形体56の表面の一部分、及び壁部分64の前端部65の接触面間に位置するデリバリーカニューレ54の表面の一部分によって境界を定められる。図2、図3及び図4に示す実施形態のこの例では、成形体52は8つの壁部分64を有し、これらは全て成形体52内に概ね同量だけ指状に延出している。これらの壁部分64は、前端部65を有する通路を形成することができ、それらの寸法はデリバリーカニューレ54の寸法に概ね相当する。成形体52は、従って、デリバリーカニューレ54に容易に載せられることができる。
【0080】
しかし、本発明の他の実施形態では、壁部分64の数は任意に異なり、ひいてはルーメン55または個々のルーメン部分66の形状に影響を与え得る。壁部分64が成形体52の内部に浸透する深さも異なり得、この深さはデリバリーカニューレ54に対する成形体52の一姿勢を決定する。特定の用途によって、成形体52の長手方向軸線36はまた、デリバリーカニューレ54の長手方向軸線37との関連で配置され得る。このことは、成形体52は、成形体52の長手方向軸線36がデリバリーカニューレ54の長手方向軸線37と重なる図2、図3及び図4に示す実施形態のようにデリバリーカニューレ54上におおよそ同心円状に乗ることを必ずしも要しないことを意味する。
【0081】
成形体52の軸線方向の前側の領域では、ルーメン55は好都合なようにデリバリーチャネル62に接続され得、デリバリーチャネル62を介して膨張式ブラダー53に流体を充填することができる。図2及び図3に示すこの実施形態では、流体を充填するためのデリバリーチャネル62は、少なくとも部分的に導管本体52内へ延在し、かつ少なくとも1つのアクセス開口部51を有し、アクセス開口部51は、デリバリーチャネル62をルーメン55に接続し、ルーメン55を膨張式ブラダー53の内部58と接合する。アクセス開口部51は、膨張式ブラダー53の部分s間の良好な体積の均等化を保証し、簡単な技術を用いて製造されることもできる。アクセス開口部51は、概ね成形体52の全長にわたって延在し得る。図2及び図3に概略的に示されているように、例えば、成形体52は、成形体の全長の少なくとも50ないし60%、好適には最大70%、とりわけ最大80%にわたって概ね成形体52の長手方向に延在する少なくとも1つのアクセス開口部51を有し得る。この配置は、簡単な技術を用いて作られることができ、膨張式ブラダー53はそれが接続されているルーメン55を介して直接充填されることができるので、この配置によって胃プローブ50の製作が簡易になる。
【0082】
図2及び図3に示す実施形態では、アクセス開口部51は成形体52に対して半径方向に走っている。デリバリーチャネル62のアクセス開口部51は、必ずしも半径方向に走っている必要はないが、成形体52に対して軸線方向にではなく成形体52の軸線方向前面付近の領域を通るものでもよい。開示されている胃プローブ50の他の実施形態では、デリバリーチャネル62は、デリバリーカニューレ54の外面に沿って走っていることもある。図5に示すように、デリバリーチャネル62は、例えば、デリバリーカニューレ54に沿って走る凹部63内に少なくとも部分的に配置され得る。
【0083】
図6ないし図10は、開示されている成形体52のさらなる実施形態の斜視図を示す。図6及び図7は、開示されている成形体52の第2及び第3の実施形態を示す。図2ないし図5で用いられている符号は、図6及び図7中のものと同じ構成部品を指す。
【0084】
図6及び図7に示すように、各成形体52は、概ね円形の横断面を有する中心の概ね管状構造68を有することができる。成形体52の内径、及び成形体52とデリバリーカニューレ54間の接触面は、管状構造68によって形成される。図7に示すように、内部カバー表面69の形状は、デリバリーカニューレ54の表面の形状に概ね相当する。図6及び図7に示すように、幾つかの壁部分70は中心管状構造68から放射状に外向きに延在している。中心管状構造68と反対にある各壁部分70の最外端71には表面72があり、表面72は壁部分70を概ね横方向に走っている。
【0085】
図6の実施形態では、成形体52は、概ね円をなして配置された4つの壁部分70を有する。壁部分70は、結合されている表面72と共に、断面が概ねT字形形状の形状部を形成する。このT字形形状部は、容易に製造されることができ、十分な大きさのルーメン55並びに膨張式ブラダー53に対する良好な接触面を提供する。図7の実施形態では、成形体52は、管状構造68の周りに概ね星形構造で配置された5つの壁部分70を有する。図7の実施形態では、壁部分70は、そのそれぞれの横表面72と共に、断面が概ねL字形形状の形状部を形成する。このL字形形状部も、簡単な技術を用いて製造されることができ、膨張式ブラダー53の部分同士間の迅速な体積交換を可能にするルーメン及び接触面を提供する。
【0086】
図6及び図7に示す成形体52のT字形形状部及びL字形形状部は、互いからそのような距離で配置されるか、あるいは2つの隣接するT字形またはL字形形状部の横表面72が互いから離れるように寸法を決められる。このことは、成形体52の表面56を画定する2つの横表面72毎にが、成形体52の長さ方向に沿って走っている開口部73またはスリットを画定することを意味する。図6及び図7に示す実施形態の例では、ルーメン55が、ここでは横表面72と管状構造68間に位置するが、T字形形状部またはL字形形状部によって別々のルーメン部分66に分けられる。個々のルーメン部分66の形状は、従って、いずれの場合にも、2つの隣接するT字形形状部またはL字形形状部及びそれらによって取り囲まれる管状構造68の表面56の部分によって決定される。壁部分70の数は、最終用途によって異なり得る。この最終用途が変われば、成形体52の表面56における開口部73及びルーメン部分66の形状及び数も変わるのが望ましい。
【0087】
本発明のさらなる実施形態では、壁部分70はまた、本明細書中の例とは異なり、管状構造68の周りに不規則に配置され得る。一部の実施形態では、壁部分70の端部71における横表面72をなしで済ますこともできる。この場合、成形体52の表面56は壁部分70の端部71によって決まる。壁部分70の数はそれに応じて増加し得、例えば壁部分70は約5ないし約15個あり得る。
【0088】
図2ないし図7に開示されている成形体52の上記第1から第4の実施形態は、どちらかと言えばねじのようにねじられることもできるので、コイル様に形作られることができる。
【0089】
図8は、コイル74として形成されたらせんの形態で開示されている成形体52のさらなる実施形態を示す。コイル74の内径は、デリバリーカニューレ54の外径に概ね相当する。この実施形態では、ルーメン55もらせん形状を有する。使用中、すなわち成形体52がデリバリーカニューレ54上にあるとき、図8に示すように、コイル74は複数の連続巻線77によって画定される。コイル74の各巻線77は、デリバリーカニューレ54の周りをらせん状に完全に1回包む。図8に示すように、デリバリーカニューレ54の周りをらせん状に走っている開口部33が、コイル74の個々の巻線77間で画定され、ルーメン55を取り囲む。コイル74の厚さは、ルーメン55の高さを決定する。コイル74は、概ね円形断面を有し得る。しかし、代替的に、コイル74の断面は楕円形状または角張った形状を有し得る。
【0090】
図8に示す成形体52のコイル74のために、成形体52の内径はコイル74の内径によって決まる。成形体52とデリバリーカニューレ54間の接触面は、この場合、コイル74の個々の巻線77のらせん状の取り付け線または表面に相当する。それが直線構成をなすか平面構成をなすかは、コイル74の断面によって決定されることになる。
【0091】
1つまたは相互接続された複数のコイルに加えて、パイプ状すなわち管状構造も適用可能である。図8に点鎖線で示すように、パイプ状すなわち管状構造は、開口部を有することができる。このタイプの成形体52の外部形状は、その結果、図2に示す成形体の外部形状と類似したものになるであろう。
【0092】
さらなる実施形態では、ルーメン55は、例えば一方が他方の上にあるように即ち他方を囲むように概ね同心円状に配置された2つのコイルなどの、幾つかのコイルによって画定されることもある。この場合、2つのコイルは同じ勾配または異なる勾配を有し得る。コイルは、各々が他方に対して逆向きに延在するように重ね合わされることもできる。この場合、ルーメン55は、関連するコイルの個々の巻線間の中間領域によって、すなわち、これらの中間領域の重なり合った部分によって画定される。
【0093】
図9は、形状がパイプ状すなわち管状でありかつ網状構造物25を有するような、開示されている成形体52の別の実施形態を示す。成形体52の内径は、デリバリーカニューレ54の外径に概ね相当する。図9に示すように、網状構造物75、成形体52の内径及び成形体52とデリバリーカニューレ54間の接触面は、網状構造物75の個々の接続部片78によって決まる。図9に示すこの実施形態では、ルーメン55は、少なくとも部分的に互いに接続されている網状構造物75のメッシュまたは開口部76内に位置しているので、網状構造物75の個々の開口部76間の体積交換を可能にする。
【0094】
本発明のさらなる実施形態では、成形体52は、図10が示すように幾つかの層の網状構造物75を含むこともある。網状構造物75のこれらの層は、最内層の内径がデリバリーカニューレ54の外径に概ね相当するように互いに対して概ね同心円状に配置されている。この実施形態では、ルーメン55は網状構造物75内の複数の孔76によって画定され、孔76は少なくとも部分的に重なり合う。これは、網状構造物75の個々の層の重なり合う孔76がチャネルまたは個々のルーメン部分66を形成することを意味する。成形体52が使用中の状態であるとき、すなわち成形体52がデリバリーカニューレ54上にあるとき、ルーメン部分66の少なくとも一部は、少なくとも部分的にデリバリーカニューレ54に沿って延在しているので、膨張式ブラダー53の個々の部分同士間の体積交換を可能にする。この網状構造物は、効率的に製造されることができ、コイル上に予め載置されることができるので、組立てを簡易化することができる。
【0095】
本明細書中に記載の成形体52の異なる実施形態の寸法は、最終用途に応じて異なり得る。しかし、実際には、概ね約6cmないし約12cmの長さ、特に約6cmないし約9cmの長さが成形体52に特に有利であることが分かっている。これらは、膨張式ブラダー53に対して十分に大きな接触面を提供する。同時に、膨張式ブラダー53の全部分s間で適切な体積交換が保証される。成形体52の外径は、最終用途並びにデリバリーカニューレ54及び膨張式ブラダー53の寸法によっても決まり、約7mmないし約12mm、特に約6mmないし約8mmの範囲が有利である。これらの寸法は、膨張式ブラダー53の部分s間の良好な体積交換を保証する。しかし、特別な最終用途に対して、成形体52の寸法は上記の寸法から外れることがある。
【0096】
膨張式ブラダー53は、デリバリーチャネル62を介して流体、例えば水で充填され、それによって、流体はデリバリーチャネル62のをアクセス開口部51通って成形体52のルーメン55に流れ込む。流体は、成形体52の開口部57、73、76及び33を通って膨張式ブラダー53の内部58に流れ込む。膨張式ブラダー53が流体で満たされるにつれて、膨張式ブラダー53は、図3に示すようにその外面の少なくとも一部がほぼ完全に食道15の壁16の途切れのない環状部分に接触した状態になるまで膨張する。これにより、食道は、胃18の領域から咽頭腔に向かって上方へ移動する傾向がある液状物質または固形物質から概ね切り離されるので、気管に有害物質がない状態を保つことができる。
【0097】
開示されている胃プローブ50が装着された患者によってなされる嚥下動作は、食道15の壁16に沿って筋肉を収縮させる。これらの筋肉は、食道15内に1若しくは通常幾つかの環状収縮を作り出し、環状収縮は喉頭領域から胃18に向かって食道15に沿って伝えられる。
【0098】
成形体52の機能を説明するために、ここで、1つの環状収縮の動きを検証する。膨張式ブラダー53の周辺領域では、食道内の環状収縮は、図2に点線で示すような、膨張式ブラダー53の外径の部分的な減少を生じさせ、すなわち膨張式ブラダー53の部分的な狭窄31が生じる。この狭窄31は、膨張式ブラダー53を2つの部分59及び60に分ける。嚥下が生じるときなど、食道収縮が膨張式ブラダー53に沿って移動する波として付与されるとき、個々の部分59及び60の寸法が変化する。しかし、本発明のプローブ50を用いるこの事例では、膨張式ブラダー53の関連する部分59及び60に含まれ得る流体の体積も変化する。開示されている成形体52はルーメン55を提供し、ルーメン55は膨張式ブラダー53の個々の部分59及び60間での迅速な体積交換を可能にする。開示されている成形体52の表面56は、必要ならば、膨張式ブラダー53のくびれた壁部分31のための比較的硬い接触面を提供する。ルーメン55は、従って、これらの外的影響がない状態に維持され、全面的に体積交換のために利用可能である。図2に概略的に示されているように、収縮31は矢印30の方向に膨張式ブラダー53に沿って移動し、流体は、膨張式ブラダー53の第2の部分60の下の開口部57を通って膨張式ブラダー53の第2の部分60の内部58から押し出され、流体は、膨張式ブラダー53の第1の部分59の下の開口部57を通って膨張式ブラダー53の第1の部分59の内部58に送り込まれる。
【0099】
特許文献5に開示されているタイプの胃プローブは、本開示において改良されている。本発明に従って、デリバリーカニューレ54と膨張式食道シール53の間に位置しかつ膨張式食道シール53の内部58に接続されているルーメン55は、比較的簡単な技術によって製造されることができ、同時に、膨張式食道シール53の部分体積同士間の適切な体積の均等化を保証する。
【0100】
胃プローブ50の別体をなす成形体52は、別体をなす構成部品として予め作製されることができるので、簡単な技術によって製造されることができる。上記した成形体52は、塑性加工によって作られることが好ましく、押出加工によって製造されることが望ましい。この製造工程は、成形体52を比較的簡単かつ迅速な技法によって製造し得ることを可能にする。あるいは、成形体52は一体成形または射出成形によって製造され得る。
【0101】
原則として、成形体52に用いられる材料は、人体に適合するように容易に変形することができる材料であり、すなわち、挿入される間またはプローブの長期使用中に患者を傷つけないが、成形体52全域で蠕動が起きるときには押しつぶせない形状を提供できるほど十分に硬い。有利な材料は、例えば、PVC、PUR、PVCとPURのブレンド、PURとポリアミドのブレンド、及び/またはシリコーンである。これらの材料は、患者の組織との良好な適合性を保証する。これらの材料は、容易に形作られることができるので、患者内への胃プローブ50の導入中の傷害のリスクを減らし、さらにこれらの材料は蠕動中にルーメン55を維持するのに十分に安定している。
【0102】
胃プローブ50の組み立て中、別体をなす成形体52は、完成した構成部品としてデリバリーカニューレ54に載せられ、デリバリーカニューレ54に取り付けられることができることが望ましい。デリバリーカニューレ54に成形体52を付けることにより、同時にルーメン55の形状が決定され、それによって膨張式食道シール53の部分同士間に十分に迅速な体積交換が存在することが保証される。この構成は、ルーメン55を製造するのに必要な個々の加工段階の数を減らすことができるので、胃プローブ50の組立てを簡易化する。そのような簡易化された組立ては、結果的に胃プローブ50を製造するときの時間及び費用の両方を削減する可能性をもたらす。
【0103】
成形体52は管状構造を有し得、その内部形状はデリバリーカニューレ54の外部形状に概ね相当する。管状構造によって、成形体52はデリバリーカニューレ54に概ね同心円状に取り付けられることができる。成形体52は摺動工程を用いてデリバリーカニューレ54に付けられることができることが望ましいので、これらの相補的な形状は、開示されている胃プローブ50のための組立工程を簡易化する。関連する成形体52の内径は、デリバリーカニューレ54の外径に概ね相当するか、または少なくともデリバリーカニューレ54の外径より僅かに小さいので、成形体52をデリバリーカニューレ54に取り付ける間に僅かな圧入効果が生じる。結果的に得られる静止摩擦は、成形体52をデリバリーカニューレ54に半径方向及び軸線方向に固定し、胃プローブ50のデリバリーカニューレ54への成形体52の軸線方向及び/または半径方向の固定を保証する。
【0104】
あるいは、成形体52は、接着を用いて、例えば、少なくとも成形体52とデリバリーカニューレ54間の接触面の一部に接着剤を塗布することによって、デリバリーカニューレ54上に取り付けられることもある。あるいは、成形体52は、例えば成形体52とデリバリーカニューレ54間の接触面の少なくとも一部が溶剤で処理される材料接合によって取り付けられることもある。少なくとも部分的な成形体52及び/またはデリバリーカニューレ54の溶剤エッチングは、2つの構成部品の良好な結合形成を保証する。原則として、上記した取付技術の任意の可能な組合せは、デリバリーカニューレ54に成形体52を取り付ける手段として実行可能である。
【0105】
最終的な組み立てられた胃プローブ50は、昏睡状態の患者、例えば自分で食事を取れない患者を治療するために用いられることができることが望ましい。この用途では、開示されている胃プローブ50、すなわち胃プローブ50のデリバリーカニューレ54は、膨張式ブラダー53が装着された胃プローブ50の部分が食道15内で胃18への入り口よりも上に位置するように、患者の食道内に挿入される。概ね約6cmないし約9cmである成形体52の好適な長さは、成形体52が食道の上部括約筋と下部括約筋の間の部分と適合することを保証する。
【0106】
方向付けを向上させるために、胃プローブ50に金属リング67などの少なくとも1つのX線不透過性マーカを取り付けることができる。X線不透過性マーカ67によって、X線画像によってプローブ50が正しい位置にあることを調べることができる。マーカ67は、患者内でのプローブ50の位置決定を容易にし、胸部のX線画像において横隔膜及び/または甲状腺などの方向合わせ器官に対する基準点の役割を果たす。図2に示すように、2つ以上のマーカ67が用いられ得る。これらのX線不透過性マーカ67は、成形体52、デリバリーカニューレ54及び/または膨張式ブラダー53に設けられ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経腸栄養装置であって、
栄養溶液を送達するように構成された自動化可能な栄養ポンプと、
患者の胃内圧と患者の食道内圧間の圧力勾配を感知するためのフィードバックセンサを有する制御装置とを含み、
前記制御装置が、前記患者への前記ポンプの栄養投与速度を前記圧力勾配の関数として制御しかつモニタするように構成されていることを特徴とする経腸栄養装置。
【請求項2】
前記フィードバックセンサが、胃バルーン及び食道ブラダーを含むことを特徴とする請求項1の経腸栄養装置。
【請求項3】
前記制御装置は、ひとたび前記胃バルーン内の圧力が胃内充填圧力の安定した読みに達したら、コンピュータソフトによって計算されるかまたはユーザによって規定される所定値で、前記食道ブラダー内の圧力を調整するように構成されていることを特徴とする請求項2の経腸栄養装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記ブラダーを自由に膨張した予め形作られた状態での前記食道ブラダー自体よりも小さい体積まで充填するために、規定量の流体を前記食道ブラダー内へ送達するように構成されていることを特徴とする請求項2または3のいずれかの経腸栄養装置。
【請求項5】
前記食道ブラダーが、本体の拡張なしで自由膨張時の体積の最大約75〜80%膨張することを特徴とする請求項2ないし4のいずれかの経腸栄養装置。
【請求項6】
前記制御装置が、前記栄養投与速度を制御するように構成されたタイマー装置を含み、
前記タイマー装置が、前記圧力勾配及び前記患者に補給される栄養溶液の量の関数として、手作業で、あるいは電子的に、調整されることができることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの経腸栄養装置。
【請求項7】
食道圧力パラメータに影響を及ぼす前記圧力勾配(ΔP)の範囲または限界の所望の値が、
前記患者の胃内圧+ΔP値
の如く計算されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかの経腸栄養装置。
【請求項8】
前記フィードバックセンサが胃バルーンを含み、
前記制御装置が、経腸栄養法の過程を通して継続的に前記患者の腹腔及び胸腔内の圧力及び状態の変化を補償するように前記胃バルーン内の圧力を調整するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかの経腸栄養装置。
【請求項9】
前記制御装置が、所定の期間にわたって投与される所望の栄養投与量をユーザが入力することができるように構成されており、それによって、前記所望の栄養投与療法を達成するために体積及び時間値を別々に規定しかつプログラミングすることができるようにしたことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかの経腸栄養装置。
【請求項10】
前記制御装置が、初期栄養投与時間間隔にわたって送達される栄養投与量の実際の栄養投与速度を決定するコンピュータソフトウェアを含むことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかの経腸栄養装置。
【請求項11】
前記制御装置が、体積/時間計算の視覚表示を有し、かつ、所望の栄養投与時間間隔を入力し、プリセット単位時間内または選択された連続的な栄養投与期間全体にわたって送達される栄養溶液の体積を計算するようにユーザによってプログラミングされることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかの経腸栄養装置。
【請求項12】
前記制御装置が記憶システムを有し、該記憶システムは、前記制御装置がソフトウェアによるプリセット栄養投与速度値またはユーザ定義栄養投与速度値を適用して前記栄養投与量に対する患者の胃の相対的コンプライアンスを決定できるようにするものであることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかの経腸栄養装置。
【請求項13】
前記制御装置が、投与された体積に対する相対圧力増加に基づいて所望の体積(V/ttotal)に到達するように、或る決定されたグラフの傾き(V/P)を自動的に増加させることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかの経腸栄養装置。
【請求項14】
ひとたび前記フィードバックセンサが所与のパラメータ設定下で最大胃圧を検出したら、前記制御装置が、前記患者への栄養投与を再開するべく前記ポンプを制御する前に、胃内圧が所定の栄養投与レベル内まで十分に減少するまで前記栄養ポンプを一時停止することになることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかの経腸栄養装置。
【請求項15】
前記制御装置が、選択された時間間隔で、1時間当たりの栄養投与量及び期待される栄養投与量を連続的に計算しかつ決定するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし14のいずれかの経腸栄養装置。
【請求項16】
ダブルルーメン、胃バルーン及び食道ブラダーを有するチューブをさらに含み、
前記胃バルーンが、第1の導管によって前記制御装置に接続され、前記患者の胃内に留置されて胃内の胃圧を感知するように構成されており、
前記食道ブラダーが、第2の導管によって前記制御装置に接続され、前記食道ブラダーが、圧縮可能な体積を有しかつ患者の食道壁構造と互いにかみ合うように構成された複数のひだのある外面を有し、
前記制御装置が、経腸栄養装置が使用中であるときに、前記食道ブラダー内の圧力を、前記胃バルーンに及ぼされる胃圧より大きなレベル内に維持するように構成されていることを特徴とする請求項1及び3ないし15のいずれかの経腸栄養装置。
【請求項17】
ダブルルーメンを有するチューブと、
前記患者の胃内に留置されて胃内の胃圧を感知するように構成され、経腸栄養法が進行中のときに胃圧をモニタするように構成された胃圧センサと、
圧縮可能な体積を有しかつ患者の食道壁構造と互いにかみ合うように構成された複数のひだのある外面を有する食道ブラダーとをさらに含み、
前記制御装置が、第1の導管を介して前記食道ブラダーに接続されかつ前記食道ブラダー内の流体圧力を調整するように構成されており、
前記胃圧センサが、前記制御装置と連通して接続されており、
前記制御装置が、前記胃圧センサから受信した複数の信号から平均化された信号を供給するように構成されたフィルタアルゴリズムを含み、
前記制御装置が、相対的な食道シール圧力レベルを規定するために前記平均化された信号にプリセット勾配値を加えるように構成されており、前記制御装置が、前記胃食道逆流防止装置が使用中であるときに前記食道ブラダー内の前記相対的な食道シール圧力レベルを維持するように構成されていることを特徴とする請求項1及び3ないし15のいずれかの経腸栄養装置。
【請求項18】
前記栄養ポンプが、或る栄養投与速度で或る時間間隔にわたって栄養溶液を送達するように構成されており、前記栄養ポンプが、患者の胃内圧の相対量及び患者の食道内圧の相対量を感知し、前記経腸栄養装置が使用中であるときに、前記患者の胃内圧の相対量及び前記患者の食道内圧の相対量に従って前記栄養投与速度を調整するように構成されていることを特徴とする請求項1、3ないし15及び17のいずれかの経腸栄養装置。
【請求項19】
患者の胃から患者の食道内への胃食道逆流を減少させる方法であって、
ダブルルーメン、胃圧センサ及び食道ブラダーを有する経腸栄養チューブを提供するステップと、
前記経腸栄養チューブを前記患者の上部消化管内に挿入し、前記胃圧センサを前記患者の胃内に、前記食道ブラダーを前記患者の食道内に配置するステップと、
フィルタアルゴリズムを用いて平均化された信号を前記胃圧センサから受信するステップと、
相対的な食道シール圧力レベルを規定するために前記平均化された胃圧信号に加える圧力勾配値を設定するステップと、
胃−咽頭の逆流に対して食道を封鎖するように前記相対的な食道シール圧力レベルで前記食道ブラダーを加圧するステップとを含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−537693(P2010−537693A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522479(P2010−522479)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【国際出願番号】PCT/IB2008/052510
【国際公開番号】WO2009/027864
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(309038085)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (51)
【Fターム(参考)】