説明

背中薬剤塗布器具

【課題】薬剤が不用意に多量に流れ出てしまうことを防止し、容器の塗布口がどの方向を向いているのかがわかりやすい背中薬剤塗布器具を提供することを目的とする。
【解決手段】湾曲した棒状の柄3の先端に、保持具5を介して薬剤容器7が着脱自在に保持され、この薬剤容器7に設けられた塗布口9に薬剤を導き塗布する。塗布口9の奥には逆止弁11がもうけられ、薬剤容器7が倒立した使用状態では導かれる薬剤の量を制限する。柄3の後端には、方向指示体13が設けられ、塗布口9の向く実際の軸線方向を向く。この方向指示体13は、塗布口9と類似した形状で前記塗布口9から外したキャップ15を取り付けることができる擬似塗布口である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、背中に薬剤を塗布する器具の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一人で自分の背中に薬剤を塗布するのは、なかなか困難である。
下記の特許文献1には、棒状の柄の先端に、薬剤の容器を取り付けることで、柄を持って使用し、容器の塗布口を自分の背中に当てて薬剤を塗布する器具が開示される。
【特許文献1】特開平9−225038
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の技術では、容器は使用時にはしばらくの間は倒立状態になり、薬剤が不用意に多量に流れ出てしまうことが少なくない。これを避けるには、倒立した状態の時間を短くするために、頻繁に器具を動かして、容器を正立状態に戻しながら、使用をしなければならず、面倒であった。
【0004】
また、使用時には容器の塗布口がどの方向を向いているのかわかりにくく、塗布口を背中の皮膚に平行にぴたりと合わせて使用することが困難であった。このため、薬剤がうまく塗布できなかった。
この発明は、以上の問題点を解決するために、薬剤が不用意に多量に流れ出てしまうことを防止し、容器の塗布口がどの方向を向いているのかがわかりやすい背中薬剤塗布器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、第一発明は、棒状の柄と、この柄の先端に保持された薬剤容器と、この薬剤容器に設けられ薬剤を導き塗布する塗布口と、前記薬剤容器が倒立した使用状態では前記導かれる薬剤の量を制限する逆止弁と、を有することを特徴とする背中薬剤塗布器具である。
【0006】
第二発明は、湾曲した棒状の柄と、この柄の先端に保持された薬剤容器と、この薬剤容器に設けられ薬剤を導き塗布する塗布口と、前記柄の後端に設けられ前記塗布口の向く方向と同じ方向を向く方向指示体と、を有することを特徴とする背中薬剤塗布器具である。 第三発明は、さらに、前記方向指示体は、前記塗布口と類似した形状で前記塗布口から外したキャップを取り付けることができる擬似塗布口であり、前記塗布口の向く方向と同じ方向のみならず、前記塗布口の向く実際の軸線方向を向くことを特徴とする背中薬剤塗布器具である。
【0007】
第四発明は、さらに、前記薬剤容器は、保持具を介して着脱自在に前記柄に保持されていることを特徴とする背中薬剤塗布器具である。
【発明の効果】
【0008】
第一、又は第四によれば、薬剤容器から塗布口へ導かれる薬剤の量が、逆止弁の働きで、使用時の倒立状態では制限されるので、薬剤が不用意に多量に流れ出てしまうことが防止できる。よって、従来のように頻繁に器具を動かして、容器を正立状態に戻しながら、使用をする必要がなく、使用が容易である。
【0009】
第二、第三、又は第四発明によれば、柄の後端に設けられた方向指示体が、塗布口の向く方向と同じ方向を向いているので、使用時にこの方向指示体を見れば、容器の塗布口がどの方向を向いているのかわかり、塗布口を背中の皮膚に平行にぴたりと合わせて使用することができ、薬剤の塗布が上手に容易に行える。
【0010】
第三、又は第四発明によれば、方向指示体は、塗布口の向く方向と同じ方向のみならず、塗布口の向く実際の軸線方向を向くので、使用時にこの方向指示体を見れば、容器の塗布口がどの方向を向いているのかわかるだけでなく、塗布口の位置もおおよその見当がつきやすく、薬剤の塗布がより上手に容易に行える。また、方向指示体が塗布口と類似した形状であって、塗布口から外したキャップを取り付けることができるので、外したキャップを無くしにくい。
【0011】
第四発明によれば、薬剤容器が保持具を介して着脱自在に柄に保持されているので、種類の異なる薬剤も容易に塗布できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の実施形態に係る背中薬剤塗布器具を、図1から図3に示す。
(概略)
図1に示すように、この背中薬剤塗布器具1は、湾曲した棒状の柄3の先端に、保持具5を介して薬剤容器7が着脱自在に保持される。この薬剤容器7に設けられた塗布口9に薬剤を導き塗布する。塗布口9の奥には逆止弁11がもうけられ、薬剤容器7が倒立した使用状態では導かれる薬剤の量を制限し、よって薬剤が不用意に多量に流れ出てしまうことを防止する。
【0013】
柄3の後端には、方向指示体13が設けられ、塗布口9の向く実際の軸線方向を向くので、背中のほうにある薬剤容器7の塗布口9がどの方向を向いているのかが分かる。この方向指示体13は、塗布口9と類似した形状の擬似塗布口であり、塗布口9から外したキャップ15を取り付けることができ、キャップ15を無くしにくい。
【0014】
(柄3)
柄3は、湾曲した棒状をなし、両端は概略同じ方向を向く、逆「し」の字形状を有する。図3に示すように、先端は、保持具5へ取り付けるためのくびれ部17を有する。
(保持具5)
保持具5は、図3に示すように、台座19に柄3の先端が挿入され嵌合する穴21が形成され、穴21の内部には柄3のくびれ部17に対応するリング状の凸部23を有する。嵌合が適度の力で外れるように、穴21の内部には適度の弾性を有する。台座19には、薬剤容器7の本体を保持するための略C字状のクランパ25が設けられる。クランパ25は弾性によってクランプを行う。
【0015】
(薬剤容器7)
薬剤容器7は、クランパ25で保持される円筒状の本体27に、図2に示すように、ネジで螺合される蓋部29が設けられ、この蓋部29の外側の中央に開口部31が形成される。蓋部29の外側には、この開口部31を覆って、突出し、先端がくの字に屈曲した塗布端部33が形成される。開口部31には弁座35と逆止弁11が設けられる。弁座35は、中央の小さな面積の円形開口37と、周囲の大きな面積のリング状のスリット開口39とを有する。この弁座35の上に逆止弁11が設けられ、容器の本体27側にのみ回動し開くことができる。逆止弁11の中央にも中央孔41が形成されている。
【0016】
逆止弁11が閉じた状態では、中央孔41と円形開口37が重なり、少ない量の薬液Lが通過できる。逆止弁11が開いた状態では、円形開口37のみならず大きな面積のスリット開口39も開くので多い量の薬液Lが通過できる。
塗布端部33の内部には、円形開口37からの薬剤を導いて一時溜めるチャンバー43が形成される。チャンバー43の先端は小さく開口45し、内部の薬液を徐々に外部へ放出する。
【0017】
塗布端部33の先端には、薬液を滲み出させて塗布するための塗布面46を備えた塗布口9が設けられる。塗布口9は、塗布端部33の先端周囲に設けられた雄ネジ47に螺合する雌ネジを有するキャップ15により、覆われて保護される。
【0018】
「実施形態の作用・効果」
(1)この実施形態によれば、薬剤容器7から塗布口9へ導かれる薬剤の量が、逆止弁11の働きで、使用時の倒立状態では制限される。すなわち、図2(A)に示すように、倒立状態で逆止弁11が閉じた状態では、中央孔41と円形開口37が重なり、少ない量の薬液が通過できるが、図2(B)に示すように、正立状態で逆止弁11が開いた状態では、円形開口37のみならず大きな面積のスリット開口39も開くので多い量の薬液が通過できる。
【0019】
よって、使用時に、薬剤が不用意に多量に流れ出てしまうことが防止できる。このため、特許文献1の技術のように頻繁に器具を動かして、容器を正立状態に戻しながら、使用をする必要がなく、倒立状態での長時間の使用ができ、使用が容易である。
【0020】
(2)また、柄3の後端に設けられた方向指示体13が、塗布口9の向く方向と同じ方向を向いているので、使用時にこの方向指示体13を見れば、容器の塗布口9がどの方向を向いているのかわかり、塗布口9を背中の皮膚に平行にぴたりと合わせて使用でき、薬剤の塗布が上手に容易に行える。
【0021】
のみならず、方向指示体13は、塗布口9の向く実際の軸線M方向を向くので、使用時にこの方向指示体13を見れば、容器の塗布口9がどの方向を向いているのかわかるだけでなく、塗布口9の位置もおおよその見当がつきやすく、薬剤の塗布がより上手に容易に行える。
【0022】
(3)また、方向指示体13が塗布口9と類似した形状であって、雄ネジ47を有するので、塗布口9から外したキャップ15を取り付けることができ、よって外したキャップ15を無くしにくい。
(4)また、薬剤容器7が保持具5を介して着脱自在に柄3に保持されているので、種類の異なる薬剤も、薬剤容器7を、クランパ25から着脱し交換して、容易に塗布できる。
【0023】
また、複数の保持具5を用意すれば、柄3と保持具5の嵌合を外して、薬剤容器7を交換することもできる。
【0024】
「他の実施形態」
以上の実施形態では、柄3が湾曲するのみならず、塗布端部33も屈曲していたが、他の実施形態では、柄3が十分に湾曲した形状であれば、塗布端部33は屈曲せず直線的な形状であってもよい。
【0025】
以上の実施形態では、方向指示体13は塗布口9の向く方向と同じ方向のみならず、塗布口9の向く実際の軸線方向を向くものであったが、他の実施形態ではで、塗布口9の向く方向と同じ方向のみを向くものであってもよい。
【0026】
以上の実施形態では、柄3は湾曲するものであったが、他の実施形態では、湾曲しなくても、逆止弁11の働きで、薬剤が不用意に多量に流れ出てしまうことを防止できる効果は有する。
【0027】
以上の実施形態では、薬剤容器7は、保持具5を介して着脱自在に前記柄3に保持されているものであったが、他の実施形態では、柄3の先端に直接にクランパなどを設けて、保持具5を介さずに直接に薬剤容器7を保持してもよい。
【0028】
以上の実施形態では、薬剤は液状の薬液であったが、他の実施形態では、軟膏タイプの薬剤を使用することもできる。この場合には、薬液を滲み出させて塗布するための塗布面の材質を変え、例えばメッシュ度の粗い材質とする。塗布面は周囲にゴムが設けられ、塗布口9に着脱自在とする。
以上の実施形態では、保持具5の保持はクランパ25の弾性によって行うものであったが、他の実施形態では、マジックテープ(登録商標)を備えたベルトなどにより行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の一実施形態を示す全体図である。
【図2】図1の薬剤容器の作用の説明図で、(A)は使用時の倒立状態の縦断面図、(B)は不使用時の正立状態の縦断面図である。
【図3】図1の柄と薬剤容器の着脱を説明するため一部を断面にして示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1…背中薬剤塗布器具、3…柄、5…保持具、7…薬剤容器、9…塗布口、11…逆止弁、13…方向指示体、15…キャップ、17…くびれ部、19…台座、21…穴、23…凸部、25…クランパ、27…本体、29…蓋部、31…開口部、33…塗布端部、35…弁座、37…円形開口、39…スリット開口、41…中央孔、43…チャンバー、45…開口、47…雄ネジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の柄と、この柄の先端に保持された薬剤容器と、この薬剤容器に設けられ薬剤を導き塗布する塗布口と、前記薬剤容器が倒立した使用状態では前記導かれる薬剤の量を制限する逆止弁と、を有することを特徴とする背中薬剤塗布器具。
【請求項2】
湾曲した棒状の柄と、この柄の先端に保持された薬剤容器と、この薬剤容器に設けられ薬剤を導き塗布する塗布口と、前記柄の後端に設けられ前記塗布口の向く方向と同じ方向を向く方向指示体と、を有することを特徴とする背中薬剤塗布器具。
【請求項3】
前記方向指示体は、前記塗布口と類似した形状で前記塗布口から外したキャップを取り付けることができる擬似塗布口であり、前記塗布口の向く方向と同じ方向のみならず、前記塗布口の向く実際の軸線方向を向くことを特徴とする請求項2に記載の背中薬剤塗布器具。
【請求項4】
前記薬剤容器は、保持具を介して着脱自在に前記柄に保持されていることを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の背中薬剤塗布器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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