説明

背面投影型スクリーン及び背面投影型ディスプレイ装置

【課題】パララックスバリア法等の立体画像表示手法を用いることなく、立体感のある画像を表示することを可能とする。
【解決手段】平面投影位置は、(A)に示すように、構造体27が弾性スクリーン16に接触していない所定の位置である。この平面投影位置の状態においては、弾性スクリーン16は平面状に維持されている。この状態でプロジェクタ7から投影することにより、平面画像が表示される。立体投影位置は、(B)に示すように、構造体27の膨出部28が弾性スクリーン16に圧接する位置である。したがって、この立体投影位置の状態においては、同図に示すように、弾性スクリーン16は膨出部28の圧接に伴って観察面18側に膨出変形した状態となっている。この状態でプロジェクタ7から投影することにより、立体画像が表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背面投影型スクリーン、及びこれを用いた背面投影型ディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、背面投影型スクリーンは、一面側に画像が投影される投影面を有し、他面側に前記投影面に投影された画像を観察する観察面を有する平面状であって、例えば投影面側にフレネルレンズシートが配置され、観察面側に光拡散シートが配置された構成からなる。そして、プロジェクタ等の投影装置により画像をフレネルレンズシート上に投影し、この投影された光拡散シートを透過した画像を観察面側から観賞する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−219058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記投影装置により投影する画像には文字等の平面表示が好ましい画像のみならず、臨場感をより高めるべく立体表示が好ましい画像が存在する。しかし、従来の背面投影型スクリーンは、単に一面側の投影された画像を他面側で観察するものであることから、立体表示が好ましい画像であっても、平面的に表示されるにすぎない。したがって、特定の画像を立体的に表示して臨場感を高めたり、ゲーム装置の画面として画像による遊戯性を高めることはできない。
【0005】
無論、立体表示装置を用いれば、画像の立体表示により臨場感等を高めることは可能である。立体表示装置には、一般的にパララックスバリア法が採用され、パララックスバリア法は表示モジュールの前面にバリアパターンを設置する。表示モジュールは、左右の画像を切り取って交互に配置し、それをバリアパターン越しに観察することで、立体表示を可能とする。
【0006】
したがって、立体表示装置は左右異なる画像を用いることから、通常プロジェクタ等に用いられる画像をそのまま表示することができない。また、輻輳(両眼の回転運動)と調節(ピント合わせ)の不一致から、観察者に疲労感を生じさせ易いという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、パララックスバリア法等の立体画像表示手法を用いることなく、立体感のある画像を表示することのできる背面投影型スクリーン及び背面投影型ディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために請求項1記載の発明に係る背面投影型スクリーンにあっては、一面側に画像が投影される投影面を有し、他面側に前記投影面に投影された画像を観察する観察面を有する平面状であって、弾性変形可能な透光性を有する弾性スクリーンと、この弾性スクリーンの前記投影面側に配置され、当該スクリーン方向に膨出した膨出部を有する透明の構造体と、この構造体を、前記投影面から離隔させて前記弾性スクリーンを平面状に維持させた平面投影位置と、前記投影面に圧接させて前記弾性スクリーンを観察面側に膨出変形させた立体投影位置とに駆動する駆動手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2記載の発明に係る背面投影型スクリーンにあっては、一側面に前記弾性スクリーンが設けられ、少なくとも他側面が透明の箱体を有し、この箱体内に前記構造体が配置されたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3記載の発明に係る背面投影型スクリーンにあっては、前記箱体内に透明の液体が充填されてなることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4記載の発明に係る背面投影型スクリーンにあっては、前記箱体に連通し、前記液体を貯留してなるリザーブタンクを有することを特徴とする。
【0012】
また、請求項5記載の発明に係る背面投影型スクリーンにあっては、前記液体と前記構造体とが略同一の屈折率であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6記載の発明に係る背面投影型スクリーンにあっては、前記弾性スクリーンは、光拡散性を有することを特徴とする。
【0014】
また、請求項7記載の発明に係る背面投影型スクリーンにあっては、前記構造体の膨出部は、球面形状であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項8記載の発明に係る背面投影型スクリーンにあっては、前記構造体の膨出部は、周縁部が正円形であって球面形状であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項9記載の発明に係る背面投影型スクリーンにあっては、前記構造体の膨出部は、前記弾性スクリーン側から見た正面視において矩形であって、頂面が平面状であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項10記載の発明に係る背面投影型スクリーンにあっては、前記構造体の膨出部は、周縁部が楕円形であって球面形状であることを特徴とする。
【0018】
また、請求項11記載の発明に係る背面投影型スクリーンにあっては、前記構造体の膨出部は、前記弾性スクリーン側から見た正面視において円形であって、頂面が平面状であることを特徴とする。
【0019】
また、請求項12記載の発明に係る背面投影型ディスプレイ装置にあっては、請求項1から11にいずれか記載の背面投影型スクリーンを備える背面投影型ディスプレイ装置であって、前記弾性スクリーンの投影面側に投影される画像が、平面投影すべき第1の画像種と立体投影すべき第2の画像種のいずれであるかを判断する判断手段と、この判断手段による判断結果に基づいて前記駆動手段を制御し、前記第1の画像種である場合には前記構造体を前記平面投影位置に駆動し、前記第2の画像種である場合には前記構造体を前記立体投影位置に駆動する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0020】
また、請求項13記載の発明に係る背面投影型ディスプレイ装置にあっては、前記制御手段は、前記画像が立体画像種である場合において、当該立体画像種に応じた駆動量で前記構造体を駆動するように前記駆動手段を制御することを特徴とする。
【0021】
また、請求項14記載の発明に係る背面投影型ディスプレイ装置にあっては、前記スクリーンの投影面側に画像を投影する投影手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、観察者に疲労感を生じさせ易いパララックスバリア法等の立体画像表示手法を用いることなく、立体感のある画像を表示することができる。したがって、ゲーム装置の画面として、プレーヤに疲労感を生じさせることなく、画像による遊戯性を高めることができる。また、立体画像表示するための専用の画像データを用いることなく、一般的な投影用の画像データを用いて立体感のある画像を表示することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施の形態における全体構成を示す斜視図である。
【図2】(A)は背面投影型スクリーンの水平断面図、(B)はリザーブタンクの垂直断面図である。
【図3】図2のα部拡大図である。
【図4】(A)は弾性スクリーンの正面図、(B)は(A)のb−b線矢示端面図、(C)は(A)のc−c線矢示端面図である。
【図5】プロジェクタの回路構成を示すブロック図である。
【図6】制御ユニットの回路構成を示すブロック図である。
【図7】(A)はプロジェクタの処理手順を示すフローチャートである。
【図8】(A)は平面投影時の状態を示す説明図、(B)は立体投影時の状態を示す説明図である。
【図9】(A)は平面投影時の表示例を示す斜視図、(B)は立体投影時の表示例を示す説明図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態における全体構成を示す斜視図である。
【図11】同実施の形態の回路構成を示すブロック図である。
【図12】同実施の形態における処理手順を示すフローチャートである。
【図13】弾性スクリーンの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態を図にしたがって説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態の全体構成を示す斜視図である。本実施の形態は、相互に接続された背面投影型スクリーン1と制御ユニット4とで構成される背面投影型ディスプレイ装置5、及び制御ユニット4に接続されたプロジェクタ7で構成されている。背面投影型スクリーン1は、直方体からなる箱状のケース11を有し、ケース11の一方の側面部には、リザーブタンク14が連通接続されている。ケース11には図2(A)にも示すように、前面15に矩形の開口部12が設けられ、少なくとも背面13が透明とされている。また、背面13は、後述する構造体27と同様に屈折率が“1.49”のアクリル樹脂により成形されている。
【0025】
前記開口部12には、透光性及び光拡散性を備えた弾性スクリーン16が張設されている。この弾性スクリーン16は、ケース11の内面側に画像が投影される投影面17を有し、外面側にこの投影面17に投影された画像を観察する観察面18を有する。また、弾性スクリーン16は、シリコーンゴムやラテックス等の弾性を有する素材が用いられている。
【0026】
ケース11の内部であって弾性スクリーン16を回避した両側部にはギヤシャフト19、20が各々回転自在に架装されている。これらギヤシャフト19、20のケース11内に延在する部分には略全長に亘って、周面に雄ネジが刻設されている。ギヤシャフト19、20の先端部は、前面15に設けられてケース11内部に突出する突部11a、11bの先端面に回転自在に支持されている。また、ギヤシャフト20の雄ネジが形成されていない基端部は、図2のα部拡大図である図3に示すように、ケース11の背面13に設けられた貫通孔21を介して、ケース11の外部に突出している。
【0027】
貫通孔21には、ギヤシャフト20の基端部に摺接する一対の防水シール22が嵌着されている。この防水シール22と背面13の内面及び外面間には、パッキン23が圧入されており、パッキン23とギヤシャフト20との間には、Oリング24が介挿されている。これにより、ケース11の水密性が確保されつつ、ギヤシャフト20の回転自在性が確保されている。また、ギヤシャフト20の基端部は、モータ26の回転軸に結合されており、モータ26は図示しない固定手段によりケース11に固定されている。
【0028】
なお、図3には、一方のギヤシャフト20側の構成のみを示したが、他方のギヤシャフト19側の構成もこれと同様であり、また、基端部は図2に示すように、モータ25の回転軸に結合され、モータ25も図示しない固定手段によりケース11に固定されている。
【0029】
ケース11の内部には、構造体27が配置されている。この構造体27は、透明であって本実施の形態においては、屈折率が“1.49”のアクリル樹脂によりに成形されている。この構造体27は弾性スクリーン16よりもやや大きな面積を有し、弾性スクリーン16平行に配置され、両端部を前記一対のギヤシャフト19、20に螺合されている。したがって、ギヤシャフト19、20が同期回転することにより、構造体27は弾性スクリーン16から離隔する方向と、弾性スクリーン16に近接する方向とに平行移動可能である。
【0030】
この構造体27の中央部には、弾性スクリーン16方向に膨出した膨出部28が形成されている。膨出部28は、本実施の形態においては図4に示すように、半径Rからなる正球体の球面からなる。したがって、膨出部28は、周縁部が正円形であって球面形状である。
【0031】
他方、前記リザーブタンク14は、図2(B)に示すように、上部のみに開口部29が設けられた箱体であって、開口部29には弾性を有するシート30が張設されている。そして、ケース11とリザーブタンク14とからなる連通された密閉空間内には、透明の液体31が充填されている。この透明の液体31は、本実施の形態においては屈折率が“1.48”のパラフィン油である。したがって、この液体31と、当該液体31中に浸漬されている前記構造体27(屈折率=1.49)とは、略同一の屈折率を有している。
【0032】
なお、ケース11は背面13のみならず、全体が透明であってもよく、この場合ケース11全体をアクリル樹脂で成形すればよい。また、弾性スクリーン16は液体31による水圧に抗して平板状を維持し得る剛性を有し、かつ構造体27の膨出部28が圧接した場合には弾性変形し得る柔軟性を有している。また、プロジェクタ7は、背面13の後方に配置されて、レンズ71の光軸が背面13の中心部に直交するように位置調整されている。
【0033】
図5は、プロジェクタ7の電気的構成を示すブロック図である。このプロジェクタ7は、制御部72、入出力インターフェイス73、画像変換部74、表示エンコーダ75、表示駆動部76等を有するものであって、入出力インターフェイス73には、入出力コネクタ部77が接続されている。そして、この入出力コネクタ部77に図1に示した背面投影型ディスプレイ装置5の制御ユニット4が接続されている。
【0034】
画像圧縮/伸張部78は、画像信号における輝度信号及び色差信号をADTC及びハフマン符号化等の処理により、データ圧縮して着脱自在な記録媒体であるメモリカード79に書き込む記録処理や、メモリカード79に記録された画像データを読み出す読出処理を実行する。このメモリカード79から読み出された画像データは、システムバス81を介して、画像変換部74で表示に適した所定フォーマットの画像信号に統一するように変換された後、表示エンコーダ75に送られる。
【0035】
なお、このメモリカード79から読み出された画像データは、入出力インターフェイス73及び入出力コネクタ部77を介して制御ユニット4にも送られる。
【0036】
表示エンコーダ75は、送られてきた画像信号をビデオRAM80に展開記憶させた上で、このビデオRAM80の記憶内容からビデオ信号を生成して表示駆動部76に出力するものである。表示エンコーダ75からビデオ信号が入力される表示駆動部76は、送られてきた画像信号に対応して適宜フレームレートで空間的光変調素子(SOM)である表示素子82を駆動する。そして、光源装置83から射出された光線束を、光源側光学系を介して表示素子82に入射することにより、表示素子82の反射光で光像を形成し、前記レンズ71を介して画像を投影する。このレンズ71は、レンズモータ84によりズーム調整やフォーカス調整のための駆動が行われる。
【0037】
制御部72は、プロジェクタ7内における各回路の動作を制御するものであって、CPU及びその周辺回路、ROM721、RAM722等で構成されている。ROM721には、各種セッティング等のプログラムや、後述するフローチャートに示すプログラム、データ等が予め記憶されており、RAM722は、ワークメモリ等として使用される。
【0038】
キー/インジケータ部85は、本体ケース等に設けられているメインキー及びインジケータ等により構成され、その操作信号は制御部72に送出される。また、リモートコントローラからのキー操作信号は、Ir受信部86で受信され、Ir処理部87で復調されてコード信号が制御部72に送られる。
【0039】
また、制御部72は、光源制御回路88を制御することにより、画像信号に応じて赤色光源、緑色光源、青色光源を時分割制御している。冷却ファン駆動制御回路89は、光源装置83等に設けられた複数のセンサによる温度検出を行わせて、冷却ファンの回転速度を制御させ、タイマー等によりプロジェクタ本体の電源オフ後も冷却ファンの回転を持続させ、温度センサによる温度検出の結果によっては、プロジェクタ本体の電源をオフにする制御も行う。
【0040】
図6は、制御ユニット4の電気的構成を示すブロック図である。この制御ユニット4は、入出力コネクタ部41、入出力インターフェイス42、制御部43、及びモータドライバ44等を有する。プロジェクタ7より送られた画像データは、入出力コネクタ部41及び入出力インターフェイス42を介して制御部43に入力される。
【0041】
制御部43は、制御ユニット4の動作を制御するものであって、CPU及びその周辺回路、ROM431、RAM432等で構成されている。ROM431には、後述するフローチャートにより示すプログラムが予め記憶されており、RAM432は、ワークメモリ等として使用される。モータドライバ44には、前記モータ25、26が接続されており、モータドライバ44は制御部43からの指示に従って、モータ25、26を同期制御する。
【0042】
なお、メモリカード79から読み出されてプロジェクタ7から制御ユニット4に送られる画像データにおいて、立体投影すべき画像には「flg=1」が記録され、平面投影すべき画像には「flg=0」が記録されている。また、「flg=1」が記録され立体投影すべき画像には、更に当該画像を投影する際の立体度に応じて、構造体27の弾性スクリーン16方向への移動量も記録されている。
【0043】
以上の構成に係る第1の実施の形態において、プロジェクタ7の制御部72は、ROM721に記憶されているプログラムに基づき、図7(A)のフローチャートに示すように処理を実行する。まず、メモリカード79から画像データを当該画像データの規格に従ったフレームレートで読み出す(ステップSA1)。そして、この読み出した画像データを入出力インターフェイス73及び入出力コネクタ部77を介して、制御ユニット4に出力する(ステップSA2)。
【0044】
一方、制御ユニット4の制御部43は、ROM431に記憶されているプログラムに基づき、図7(B)のフローチャートに示すように処理を実行する。すなわち、前記ステップSA2でプロジェクタ7から出力された画像データを入出力コネクタ部41及び入出力インターフェイス42を介して入力させる(ステップSB1)。次に、この入力させた画像データのflgが“1”であるか否かを判断する(ステップSB2)。flgが“0”であって、当該画像データが平面投影すべき画像であるならば、構造体27が平面投影位置にあるか否かを判断する(ステップSB3)。
【0045】
なお、この構造体27の位置判断に際しては、モータドライバ44によるモータ25、26の駆動履歴をRAM432に記憶しておき、この履歴から構造体27の位置判断を行うものとする。また、ここで構造体27の平面投影位置とは、図8(A)に示すように、構造体27が弾性スクリーン16に接触していない所定の位置である。また、この平面投影位置の状態においては、同図に示すように、弾性スクリーン16は平面状に維持され、リザーブタンク14は満水状態に維持されて、シート30も平面状態に維持されている。
【0046】
そして、構造体27が既に平面投影位置にある場合には、ステップSB4の処理を行うことなくステップSB7に進み、移動済通知をプロジェクタ7に出力する(ステップSB7)。また、構造体27が前記平面投影位置にない場合には、モータドライバ44を制御してモータ25、26を駆動させ、ギヤシャフト19、20を逆回転させることにより、構造体27を平面投影位置に移動させた後(ステップSB4)、移動済通知をプロジェクタ7に出力する(ステップSB7)。すると、プロジェクタ7の制御部72は、この移動量済通知を入力させて(ステップSA3)、前記ステップSA1で読み出した画像データに基づく投影処理を開始する(ステップSA4)。
【0047】
すなわち、画像データを画像変換部74で変換し、表示エンコーダ75により画像信号をビデオRAM80に展開記憶させた上で、このビデオRAM80の記憶内容からビデオ信号を生成して表示駆動部76に出力する。表示駆動部76が、送られてきた画像信号に対応して表示素子82を駆動し、光源装置83から射出された光線束を光源側光学系を介して表示素子82に入射することにより、表示素子82の反射光で光像を形成し、レンズ71を介して画像を投影する。
【0048】
すると、投影された画像は透明の背面13、液体31、構造体27を介して弾性スクリーン16の投影面17に投影される。このとき、ケース11内に液体31が充填されており、しかも背面13、液体31、構造体27は、略同一の屈折率であることから、レンズ71から投影された画像を屈折させることなく、投影面17に投影することができる。
【0049】
このように、投影面17に画像が投影されると、弾性スクリーン16は光拡散性を有することから、図9(A)に示すように、弾性スクリーン16の観察面18側から平面状の弾性スクリーン16に表示された画像である平面画像FPを観察することができる。
【0050】
また、前記ステップSB2での判断の結果、flgが“1”であって、当該画像データが立体投影すべき画像であるならば、前述のように画像データに“flg=1”とともに記録されている構造体27の移動量を読み取って取得する(ステップSB5)。しかる後に、この読み取った移動量に従って、モータドライバ44を制御してモータ25、26を駆動させ、ギヤシャフト19、20を正回転させることにより、構造体27を立体投影位置に移動させる(ステップSB6)。
【0051】
ここで構造体27の立体投影位置とは、図8(B)に示すように、構造体27の膨出部28が弾性スクリーン16に圧接する位置である。したがって、この立体投影位置の状態においては、同図に示すように、弾性スクリーン16は膨出部28の圧接に伴って観察面18側に膨出変形し、リザーブタンク14は内の液体31は減少し、シート30はリザーブタンク14内に生じた負圧により内部方向に弾性変形した状態となっている。
【0052】
したがって、本実施の形態においては、液体31を貯留したリザーブタンク14を有することから、弾性スクリーン16は膨出部28の圧接に伴って観察面18側に膨出変形しても、ケース11内に空隙が生ずる不都合を未然に防止することができる。
【0053】
そして、構造体27が立体投影位置に到達したならば、移動済通知をプロジェクタ7に出力する(ステップSB7)。すると、プロジェクタ7の制御部72は、前述のように、この移動量済通知を入力させて(ステップSA3)、前記ステップSA1で読み出した画像データに基づく投影処理を開始する(ステップSA4)。
【0054】
すると、投影された画像は透明の背面13、液体31、構造体27を介して弾性スクリーン16の投影面17に投影される。このとき、弾性スクリーン16は観察面18側が膨出していることから、図9(B)に示すように、弾性スクリーン16の観察面18側から膨出した弾性スクリーン16に表示された画像である立体画像SPを観察することができる。
【0055】
よって、本実施の形態によれば、観察者に疲労感を生じさせ易いパララックスバリア法等の立体画像表示手法を用いることなく、立体感のある画像である立体画像SPを表示することができる。したがって、ゲーム装置の画面として、プレーヤに疲労感を生じさせることなく、画像による遊戯性を高めることができる。また、立体画像表示するための専用の画像データを用いることなく、一般的な投影用の画像データを用いて立体感のある画像を表示することも可能となる。
【0056】
しかも、本実施の形態において、膨出部28は図4にて説明したように、周縁部が正円形であって球面形状であることから、弾性スクリーン16の特定部位が突出することなく、なだらかな曲面を形成する。よって、投影される画像をなだらかな曲面からなる弾性スクリーン16により、違和感なく立体表示させることができる。
【0057】
また、本実施の形態においては、画像データに記録されている移動量に応じて異なる立体投影位置に構造体27を移動させるようにしたことから、投影される画像に応じた適切な膨出量で弾性スクリーン16を膨出させて、適切な立体表示を行うことができる。
【0058】
なお、本実施の形態においては、ケース11内に透明の液体31を充填するようにしたが、液体31を用いない構成であってもよい。この場合であっても、構造体24の膨出部28での屈折による投影画像への影響は多少あるにしても、画像を背面13及び構造体24を介して弾性スクリーン16に投影することができる。
さらに、液体31を用いることなく、かつケース11を箱体とすることなく背面13を開口状としてもよい。この場合であっても、構造体24の膨出部28での屈折による投影画像への影響は多少あるにしても、画像を構造体24のみを介して弾性スクリーン16に投影することができる。
【0059】
(第2の実施の形態)
図10は、本発明の第2の実施の形態を示す全体斜視図である。本実施の形態においては、前述の第1の実施の形態で用いた制御ユニット4を用いることなく、相互に接続された背面投影型スクリーン1とプロジェクタ7とにより、背面投影型ディスプレイ装置5が構成されている。背面投影型スクリーン1の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0060】
図11は、本実施の形態に係る背面投影型ディスプレイ装置5の電気的構成を示す回路図である。この背面投影型ディスプレイ装置5の回路図において、図5にて前述したプロジェクタ7と同一部分については、同一符号を付して説明を省略する。すなわち、背面投影型ディスプレイ装置5は、プロジェクタ7とほぼ同一の構成部分を備えた上で、図5に示した入出力インターフェイス73及び入出力コネクタ部77に代わって、モータドライバ44がシステムバス81に接続されている。そして、このモータドライバ44に背面投影型スクリーン1の各モータ25、26が接続されることにより、全体の回路が構成されている。
【0061】
以上の構成に係る第2の実施の形態において、背面投影型ディスプレイ装置5の制御部72は、ROM721に記憶されているプログラムに基づき、図12のフローチャートに示すように処理を実行する。まず、メモリカード79から画像データを当該画像データの規格に従ったフレームレートで読み出す(ステップSC1)。次に、この読み出した画像データのflgが“1”であるか否かを判断する(ステップSC2)。flgが“0”であって、当該画像データが平面投影すべき画像であるならば、構造体27が平面投影位置にあるか否かを判断する(ステップSC3)。
【0062】
そして、構造体27が既に平面投影位置にある場合には、ステップSC4の処理を行うことなくステップSC7に進む。また、構造体27が前記平面投影位置にない場合には、モータドライバ44を制御してモータ25、26を駆動させ、ギヤシャフト19、20を逆回転させることにより、構造体27を平面投影位置に移動させた後(ステップSC4)、ステップSC7に進む。これにより、制御部72は、前記ステップSC1で読み出した画像データに基づく投影処理を開始する(ステップSC7)。
【0063】
すると、前述と同様に、投影された画像は透明の背面13、液体31、構造体27を介して弾性スクリーン16の投影面17に投影される。このとき、ケース11内に液体31が充填されており、しかも背面13、液体31、構造体27は、略同一の屈折率であることから、レンズ71から投影された画像を屈折させることなく、投影面17に投影することができる。
【0064】
このように、投影面17に画像が投影されると、弾性スクリーン16は光拡散性を有することから、図9(A)に示すように、弾性スクリーン16の観察面18側から平面状の弾性スクリーン16に表示された画像である平面画像FPを観察することができる。
【0065】
また、前記ステップSC2での判断の結果、flgが“1”であって、当該画像データが立体投影すべき画像であるならば、前述のように画像データに“flg=1”とともに記録されている構造体27の移動量を読み取って取得する(ステップSC5)。しかる後に、この読み取った移動量に従って、モータドライバ44を制御してモータ25、26を駆動させ、ギヤシャフト19、20を正回転させることにより、構造体27を立体投影位置に移動させる(ステップSC6)。
【0066】
次に、前記ステップSC1で読み出した画像データに基づく投影処理を開始する(ステップSC4)。すると、投影された画像は透明の背面13、液体31、構造体27を介して弾性スクリーン16の投影面17に投影される。このとき、弾性スクリーン16は観察面18側が膨出していることから、図9(B)に示すように、弾性スクリーン16の観察面18側から膨出した弾性スクリーン16に表示された画像である立体画像SPを観察することができる。
【0067】
よって、本実施の形態によっても、観察者に疲労感を生じさせ易いパララックスバリア法等の立体画像表示手法を用いることなく、立体感のある画像である立体画像SPを表示することができる。したがって、ゲーム装置の画面として、プレーヤに疲労感を生じさせることなく、画像による遊戯性を高めることができる。また、立体画像表示するための専用の画像データを用いることなく、一般的な投影用の画像データを用いて立体感のある画像を表示することも可能となる。
【0068】
しかも、本実施の形態においては、前述した第1の実施の形態とは異なり、制御ユニット4を用いないことにより、構成の簡単化を図ることができる。
【0069】
図13は、構造体27の他の変形例を示す図である。同図(A)に示す構造体271は、膨出部281が前記弾性スクリーン16側から見た正面視において矩形であり、頂面が平面状である。したがって、この変形例によれば、膨出部281により弾性スクリーン16の中央部を矩形であって頂面が平面状に膨出変形させることができる。よって、投影する画像の立体感を生じさせようとする画像部分が矩形である場合において、効果的に立体感のある画像の表示が可能となる。
【0070】
同図(B)に示す構造体272は、膨出部282の周縁部が楕円形であって球面形状である。したがって、この変形例によれば、膨出部281により弾性スクリーン16の中央部を楕円形であって球面状に膨出変形させることができる。よって、投影する画像の立体感を生じさせようとする画像部分が周縁部が楕円形であって球面形状である場合において、効果的に立体感のある画像の表示が可能となる。
【0071】
同図(C)に示す構造体273は、膨出部283が前記弾性スクリーン16側から見た正面視において円形であり、頂面が平面状である。したがって、この変形例によれば、膨出部281により弾性スクリーン16の中央部を円形であって頂面が平面状に膨出変形させることができる。よって、投影する画像の立体感を生じさせようとする画像部分が円形である場合において、効果的に立体感のある画像の表示が可能となる。
【0072】
なお、膨出部の形状に関しては、以上に図示したものに限らず、他の形状を適宜用いることができる。
【0073】
また、実施の形態においては、弾性スクリーン16を形成する素材の性質により光拡散性を得るようにしたが、表面に凹凸を形成する、弾性スクリーン16の表面に透明ビーズ等をコーティングする、弾性スクリーン16内に屈折率の異なるフィラーを分散させ、あるいは酸化チタン粒子、アルミナ粒子等を分散させることにより拡散性を高めるようにしてもよい。
【0074】
さらに、実施の形態においては、画像データに予め記録された移動量に従ってモータ25、26を駆動し、構造体27を移動させるようにしたが、画像の形状を判断して、その判断結果に基づき、構造体27の移動量を決定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 背面投影型スクリーン
4 制御ユニット
5 背面投影型ディスプレイ装置
7 プロジェクタ
11 ケース
12 開口部
13 背面
14 リザーブタンク
15 前面
16 弾性スクリーン
17 投影面
18 観察面
19 ギヤシャフト
20 ギヤシャフト
21 貫通孔
22 防水シール
23 パッキン
24 Oリング
25 モータ
26 モータ
27 構造体
28 膨出部
29 開口部
30 シート
31 液体
41 入出力コネクタ部
42 入出力インターフェイス
43 制御部
44 モータドライバ
71 レンズ
72 制御部
73 入出力インターフェイス
74 画像変換部
75 表示エンコーダ
76 表示駆動部
77 入出力コネクタ部
78 画像圧縮/伸張部
79 メモリカード
80 ビデオRAM
271 構造体
272 構造体
273 構造体
FP 平面画像
SP 立体画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側に画像が投影される投影面を有し、他面側に前記投影面に投影された画像を観察する観察面を有する平面状であって、弾性変形可能な透光性を有する弾性スクリーンと、
この弾性スクリーンの前記投影面側に配置され、当該スクリーン方向に膨出した膨出部を有する透明の構造体と、
この構造体を、前記投影面から離隔させて前記弾性スクリーンを平面状に維持させた平面投影位置と、前記投影面に圧接させて前記弾性スクリーンを観察面側に膨出変形させた立体投影位置とに駆動する駆動手段と
を備えることを特徴とする背面投影型スクリーン。
【請求項2】
一側面に前記弾性スクリーンが設けられ、少なくとも他側面が透明の箱体を有し、
この箱体内に前記構造体が配置されたことを特徴とする請求項1記載の背面投影型スクリーン。
【請求項3】
前記箱体内に透明の液体が充填されてなることを特徴とする請求項2記載の背面投影型スクリーン。
【請求項4】
前記箱体に連通し、前記液体を貯留してなるリザーブタンクを有することを特徴とする請求項3記載の背面投影型スクリーン。
【請求項5】
前記液体と前記構造体とが略同一の屈折率であることを特徴とする請求項3又は4記載の背面投影型スクリーン。
【請求項6】
前記弾性スクリーンは、光拡散性を有することを特徴とする請求項1から5にいずれか記載の背面投影型スクリーン。
【請求項7】
前記構造体の膨出部は、球面形状であることを特徴とする請求項1から6にいずれか記載の背面投影型スクリーン。
【請求項8】
前記構造体の膨出部は、周縁部が正円形であって球面形状であることを特徴とする請求項1から6にいずれか記載の背面投影型スクリーン。
【請求項9】
前記構造体の膨出部は、前記弾性スクリーン側から見た正面視において矩形であって、頂面が平面状であることを特徴とする請求項1から6にいずれか記載の背面投影型スクリーン。
【請求項10】
前記構造体の膨出部は、周縁部が楕円形であって球面形状であることを特徴とする請求項1から6にいずれか記載の背面投影型スクリーン。
【請求項11】
前記構造体の膨出部は、前記弾性スクリーン側から見た正面視において円形であって、頂面が平面状であることを特徴とする請求項1から6にいずれか記載の背面投影型スクリーン。
【請求項12】
請求項1から11にいずれか記載の背面投影型スクリーンを備える背面投影型ディスプレイ装置であって、
前記弾性スクリーンの投影面側に投影される画像が、平面投影すべき第1の画像種と立体投影すべき第2の画像種のいずれであるかを判断する判断手段と、
この判断手段による判断結果に基づいて前記駆動手段を制御し、前記第1の画像種である場合には前記構造体を前記平面投影位置に駆動し、前記第2の画像種である場合には前記構造体を前記立体投影位置に駆動する制御手段と
を備えることを特徴とする背面投影型ディスプレイ装置。
【請求項13】
前記制御手段は、前記画像が立体画像種である場合において、当該立体画像種に応じた駆動量で前記構造体を駆動するように前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項12記載の背面投影型ディスプレイ装置。
【請求項14】
前記スクリーンの投影面側に画像を投影する投影手段を備えることを特徴とする請求項12又は13記載の背面投影型ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−75737(P2011−75737A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225678(P2009−225678)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】