説明

胚性幹細胞から分化誘導した腸管様細胞塊における壁内神経系の形成方法

【課題】 壁内神経系を備えた腸管様細胞塊を構築する方法および壁内神経系を備えた腸管細胞塊の提供を目的とする。
【解決手段】 本発明は、壁内神経系を備えた腸管様細胞塊の誘導を行うために、胚性幹細胞(ES細胞)のハンギングドロップ培養の時期に着目、この培養時期においてのみ、脳由来神経栄養因子(以下、BDNF)を適量、かつ適切な時期に添加することで、壁内神経節の形成の誘導を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸管様細胞塊の構築方法に関する。より詳細には、適切な時期に適切な物質(成長因子など)を適量添加することにより、未分化胚性幹細胞から壁内神経系を備え、腸蠕動様運動を行う腸管様細胞塊を構築する方法に関する。
また、上記方法により構築された腸管様細胞塊に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な組織細胞に分化する潜在的能力を保持した胚性幹細胞(ES細胞;embryonic stem cells)を用いて、人工的に各種組織細胞への分化誘導を行い、機能的人工器官を調製する研究がさかんに行われている。この点において、腸管などの消化器官も例外ではない。
腸管は、上皮細胞、平滑筋細胞、カハール介在細胞(ICC;interstitial cells of Cajal)、および壁内神経細胞などが各組織領域を構成し、それらがお互いに協同して機能を発揮していると考えられる。
【0003】
胃腸平滑筋に特徴的な機能は規則的な自発的収縮を生み出すことである。最近の研究において、胃腸管筋肉組織中のICCのネットワーク系により、電気的なペースメーカー活動が生み出され、胃腸運動に特徴的な頻度および伝達様式がコントロールされていることが報告されている。ICCは胃腸管に特有の細胞集団で、そのペースメーカー的活動により、「遅い波(slow wave)」と呼ばれている平滑筋膜電位の規則的な振動が誘導される。
一方、腸壁内神経は平滑筋を神経支配し、胃腸運動における蠕動運動に必須であることが示されている(非特許文献1)。従って、ICCおよび/または腸壁内神経が胃腸運動を協調的にコントロールしていることが予想される。
【0004】
腸管様細胞を人工的に調製する試みに関しては、近年、上皮細胞(内胚葉)、平滑筋細胞およびカハール介在細胞(ICC)(中胚葉)、および分散した微量の腸壁内神経(外胚葉)により構築される腸管様細胞塊が、胚性幹細胞(ES細胞)から誘導されることが示されている(非特許文献2)。約21日培養した腸管様細胞塊は、周期的に収縮−弛緩を繰り返す規則的な運動パターンを示す。さらに、この運動は胃腸蠕動と類似するものであったが完成度は高くなかった(非特許文献3)。
また、分化に影響を与え得る因子を添加することなしに、自発的に分化した腸管様細胞塊の生理学的および形態学的な解析に関する研究成果も報告されている(非特許文献4)。
【0005】
腸管様細胞塊は、再生医療または人工器官の調製を可能とする上でも非常に重要な材料となり得ることが予想されていることから、現在、多くの研究者により活発に研究が行われている。
しかし、胃腸蠕動運動に重要な役割を果たすと考えられる壁内神経系は未だ分散的に見出されているに止まり、その結果、該腸管様細胞塊は、実際の生体内における腸管機能の一部を保持しているにすぎず、再生医療の分野などにおいて実用化するには、まだまだ改良が必要とされている。
【0006】
【非特許文献1】Costaら, Ann NY Acad Sci 860:464−466, 1998
【非特許文献2】Yamadaら, Stem Cells 20:41−49, 2002
【非特許文献3】Nakagawaら, Neurogastroenterol Mot 15:224, 2003
【非特許文献4】Ishikawaら, Am J. Physiol. Cell Physiol. 286:C1344−C1352, 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上記事情に鑑み、生体内の腸管に、より近似した機能的特徴を有する腸管様器官を構築する方法について、鋭意研究を行った結果、壁内神経系を備えた腸管様細胞塊の構築することに成功した。
よって、本発明は、壁内神経系を備えた腸管様細胞塊を構築する方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、壁内神経系を備えた腸管細胞塊の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的の一部である壁内神経系を備えた腸管様細胞塊の構築は、ES細胞から壁内神経節を分化させ、腸管様細胞塊中において高度に調和のとれた蠕動運動を実現することにより達成され得ると考えられる。
しかしながら、壁内神経系を誘導するためには、適切なタイミングにおいて神経節分化を誘導する必要があり、いかなる因子を、いかなる量で、いかなる時期に添加するかを見出す必要があり、この点については、先行技術文献等にはなんらの示唆も示されていない。
そこで、発明者ら、ES細胞のハンギングドロップ培養の時期に着目し、この培養時期においてのみ、脳由来神経栄養因子(BDNF)を添加することで、壁内神経節の形成が誘導されることを見出し、その結果本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(5)に関する。
(1)本発明の第1の態様は、
(a)未分化胚性幹細胞を回収し、回収された該未分化胚性幹細胞をBDNFを含む培地中でハンギングドロップ培養し、胚様体を誘導する工程、
(b)工程(a)で誘導された胚葉体を培養ディッシュ上に付着させ、さらに培養する工程、を含んでなる、壁内神経系を備えた腸管様細胞塊を構築する方法である。
(2)本発明の第2の態様は、前記BDNF濃度が1×10-9g/mlを超える濃度であることを特徴とする上記(1)に記載の方法である。
(3)本発明の第3の態様は、前記BDNF濃度が1×10-8g/mlであることを特徴とする上記(2)に記載の方法である。
(4)本発明の第4の態様は、前記培養ディッシュが、フィーダー細胞が存在せず、ゼラチンコートされたものである、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の方法である。
(5)本発明の第5の態様は、上記(1)ないし(4)のいずれかの方法により構築された腸管様細胞塊である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法を用いることにより、壁内神経系を備えた腸管様細胞塊の構築が可能となり、その結果、消化管の蠕動運動を含む自動運動の研究が飛躍的に進展し、消化器官の再生医学医療分野における産業の発展が期待できる。
【0011】
また、本発明に係る腸管様細胞塊を用いることにより、人工腸管の製造分野等において大いなる進展をもたらすことが期待できる。
【0012】
さらに、本発明に係る腸管様細胞塊を腸管のモデル系として使用することにより、腸関連疾患、例えば、過敏性腸炎などの治療方法、または治療薬の開発を促進することが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
1.未分化ES細胞の選択
本発明において使用する細胞は、胚性幹細胞(ES細胞)である。ES細胞は、分裂増殖によって異なる機能を持つ種々の細胞に分化することができる細胞である。本発明において使用可能なES細胞の由来は、ヒト、ウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、マウス、ラットなどの動物細胞由来のものであれば特に限定はしない。特に好ましくは、ヒトである。
本発明の腸管様細胞塊を調製するためには、未分化ES細胞を調製する必要がある。未分化ES細胞の調製方法は、当該技術分野において周知の方法を用いて達成することができる。例えば、未分化ES細胞のみを選択的に生育させることができるような培養条件下で細胞を培養し、その過程において分化したES細胞を除去し、最終的に未分化ES細胞のみからなる細胞集団を取得することができる。より具体的には、限定はしないが、例えば、未分化状態においてのみ動作するプロモーター(例えば、Oct−3/4など)の制御下に薬剤耐性遺伝子(例えば、ブラスチシジンS耐性遺伝子など)を配置させた状態で保持するES細胞を用いてブラスチシジンS存在下で培養を行うと、分化した細胞はブラストシジンS耐性遺伝子の発現が誘導されないため死滅してしまうため、未分化ES細胞のみを取得することができる。
【0014】
ES細胞を培養するための培地は、当業者が通常使用する培地であればいかなる培地も使用することができ、未分化ES細胞の培養に適するものが適当である。例えば、至適濃度の血清を含み、その他必要な添加物質(例えば、2−メルカプトエタノール、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム)を至適濃度で含んだ、基本培地(例えば、ダルベッコー改変イーグル培地;DMEMなど)などが使用可能である。さらに、培地には、未分化ES細胞の自己複製能を維持しつつ、種々の組織への分化を抑制させる因子(例えば、白血病抑制因子、LIF;leukemia inhibitory factorなど)が含まれていてもよい。
本発明において、ES細胞(以下に述べる胚様体を含む)等を培養するために適する培養ディッシュは、当該技術分野において通常使用されるディッシュを使用することができる。例えば、市販のプラスチック製培養ディッシュの細胞付着面をゼラチンでコートしたものなどが好適に利用可能である。この場合、フィーダー細胞は必要ではない。
【0015】
2.胚様体(EB;embryonic body)の形成
本発明の方法において、未分化ES細胞から胚様体を形成させる必要がある。分離した未分化ES細胞をハンギングドロップ中で培養する(例えば、Kellerら, J. Physiol.(Lond) 168:131-139, 1998;Robertsonら, Embyo-derived stem cell lines. In:Robertson EJ, ed. Teratocarcinomas and embryonic stem cells:a practical approach. 1st ed. Washington, DC;IRL Press, p71-p112, 1987を参照のこと)。ハンギングドロップ培養における1ドロップあたりの細胞密度は、胚様体分化に適した密度であれば特に限定はしないが、例えば、100〜1000細胞/15μl、特に好ましくは500細胞/15μlである。ハンギングドロップ培養における培地としては、例えば、上述のES細胞培養用の培地を用いることができるが、この培地にはLIFは含まれず、脳由来神経栄養因子(BDNF;brain-derived neurotrophic factor)が含まれる。
【0016】
ここで、BDNFとは、脳から見出された神経栄養因子のことである。BDNFは、中枢および末梢神経の発生、成熟、生存、維持、再生等(特に、成熟過程)に重要な役割を果たしていることが知られており、特異的なレセプター(TrkBなど)に結合することで、生物学的活性を発揮する。本発明において使用されるBDNFは、BDNF本来の活性を有しているものであればいかなるものも使用可能であり、種々の動物から精製された天然由来のものであっても、組換体であってもよい。また、所望の活性(腸壁内神経節の構築を誘導するような活性、例えば、レセプター活性化能など)を有しているものであれば、必ずしも完全長ポリペプチドからなるものでなくてもよく、その活性部分からなる部分ペプチドであってもよい。使用するBDNFの濃度は、好ましくは、10ー9〜5×10ー8g/mlであり、最も好ましくは、10ー8g/mlである。
【0017】
ハンギングドロップ培養は、胚様体の形成が十分であると判断される期間培養を行うが、その期間は例えば、限定はしないが、1週間程度、好ましくは5〜6日程度である。その後、誘導された胚様体をゼラチンコートした培養ディッシュ上に移し、胚様体をディッシュ上に播き、付着培養を行う。付着培養を行うには、上述のハンギングドロップ培養に用いた培地を使用することができる。
さらに数日培養を行うことにより、壁内神経節を有し、規則的かつ律動的な蠕動様運動を行う嚢胞様構造を持つ腸管様細胞塊を形成させることができる。
【0018】
3.腸管様細胞塊の医学的応用
本発明の腸管様細胞塊は生体内における腸管様機能を備えていることが示唆されることから、腸管に関連する疾患の治療薬などのスクリーニングに使用することも可能である。
例えば、本発明の腸管様細胞塊は、腸管関連疾患、特に腸の蠕動運動の異常などに起因して発症する疾患、例えば、ヒルシュスプルング病(無神経節症)や過敏性腸症候群 (Irritable bouwel syndrome)などの予防および/または治療剤のスクリーニングなどに使用することも可能と思われる。また、病態解明につながるモデル研究としての可能性も含んでいる。
【0019】
具体的には、本発明の腸管様細胞塊に薬剤候補化合物を接触させ、該腸管様細胞塊の蠕動様運動の変化をモニターすることで、薬剤候補化合物の効果を判断することができる。例えば、候補化合物との接触により腸管様細胞塊の蠕動様運動が抑制された場合には、過敏性腸症候群の治療剤候補として、蠕動様運動が促進された場合には、炎症性腸疾患(Inflammatory bowel syndrome)の治療剤候補として判断することが可能である。また、GIST(Gastrointestinal stromal tumor)の治療剤候補の効果もICCが分化しうる腸管様細胞塊でその分化誘導の抑制効果を検討することにより検定可能である。
【0020】
4.治療剤等の投与等
本発明の腸管様細胞塊を用いて同定された蠕動様運動に影響(抑制的効果、または促進的効果)を与える活性化合物は、腸管関連疾患の治療剤または予防剤などの医薬組成物としての使用が期待できる。通常、このような医薬組成物には、薬剤的に受容可能な担体が含まれる。
「薬剤的に受容可能な担体」は、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌及び抗真菌剤、アイソトニックに作用して吸着を遅らせる薬剤及びその類似物を含み、薬剤的投与に適するもののことである(Gennaroら: The science and practice of pharmacy. Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, PA. 2000)。該担体及び該担体を希釈するために好ましいものの例には、限定はしないが、水、生理食塩水、フィンガー溶液、デキストロース溶液、及びヒト血清アルブミンなどが含まれる。また、リポソーム及び不揮発性油などの非水溶性媒体も用いられる。さらに、活性化合物の活性を保護又は促進するような特定の化合物が、該組成物中に包含されていてもよい。
【0021】
上述の医薬組成物は、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入なども含む)、経皮及び経粘膜への投与を含み、治療上適切な投与経路に適合するように製剤化される。非経口、皮内、又は皮下への適用に使用される溶液又は懸濁液には、限定はしないが、注射用の水などの滅菌的希釈液、生理食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒、ベンジルアルコール又は他のメチルパラベンなどの保存剤、アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなどの無痛化剤、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩などの緩衝剤、塩化ナトリウム又はデキストロースなど浸透圧調製のための薬剤を含んでもよい。
pHは塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で調製することができる。非経口的標品はアンプル、ガラスもしくはプラスチック製の使い捨てシリンジ又は複数回投与用バイアル中に収納される。
【0022】
4−1.注射可能な製剤
注射に適する医薬組成物には、滅菌された注射可能な溶液又は分散媒を、使用時に調製するための滅菌水溶液(水溶性の)又は分散媒及び滅菌されたパウダーが含まれる。静脈内の投与に関し、適切な担体には生理食塩水、静菌水、CREMOPHOR ELTM(BASF, Parsippany, N.J.)、又はリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が含まれる。注射剤として使用する場合、組成物は滅菌的でなくてはならず、また、シリンジを用いて投与されるために十分な流動性を保持していなくてはならない。該組成物は、調剤及び保存の間、化学変化及び腐食等に対して安定でなくてはならず、細菌及び真菌などの微生物由来のコンタミネーションを防止する必要がある。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及び適切な混合物を含む溶媒又は分散媒培地を使用することができる。例えば、レクチンなどのコーティング剤を用い、分散媒においては必要とされる粒子サイズを維持し、界面活性剤を用いることにより適度な流動性が維持される。種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、及びチメロサールなどは、微生物のコンタミネーションの防止に対して使用可能である。また、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール及び塩化ナトリウムのような等張性を保つ薬剤が組成物中に含まれてもよい。吸着を遅らせることができる組成物には、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの薬剤が含まれる。
【0023】
滅菌的な注射可能溶液は、必要な成分を単独で、又は他の成分と組み合わせた後に、適切な溶媒中に必要量の活性化合物を加え、滅菌することで調製される。一般に、分散媒は、基本的な分散培地及び上述したその他の必要成分を含む滅菌的媒体中に活性化合物を取り込むことにより調製される。滅菌的な注射可能な溶液の調製のための滅菌的なパウダーの調製方法には、活性な成分及び滅菌溶液に由来する何れかの所望な成分を含むパウダーを調製する真空乾燥及び凍結乾燥が含まれる。
【0024】
4−2.経口組成物
通常、経口組成物には、不活性な希釈剤又は体内に取り込んでも害を及ぼさない担体が含まれる。経口組成物には、例えば、ゼラチンのカプセル剤に包含されるか、加圧されて錠剤化される。経口的治療のためには、活性化合物は賦形剤と共に取り込まれ、錠剤、トローチ又はカプセル剤の形態で使用される。また、経口組成物は、流動性担体を用いて調製することも可能であり、流動性担体中の該組成物は経口的に適用される。さらに、薬剤的に適合する結合剤、及び/又はアジュバント物質などが包含されてもよい。
錠剤、丸薬、カプセル剤、トローチ及びその類似物は以下の成分又は類似の性質を持つ化合物の何れかを含み得る:微結晶性セルロースのような賦形剤、アラビアゴム、トラガント又はゼラチンなどの結合剤;スターチ又はラクトースなどの、アルギン酸、PRIMOGEL、又はコーンスターチなどの膨化剤;ステアリン酸マグネシウム又はSTRROTESなどの潤滑剤;コロイド性シリコン二酸化物などの滑剤;スクロース又はサッカリンなどの甘味剤;又はペパーミント、メチルサリチル酸又はオレンジフレイバーなどの香料添加剤。
【0025】
4−3.担体
活性化合物は、植込錠及びマイクロカプセルに封入された送達システムなどの徐放性製剤として、体内から即時に除去されることを防ぎ得る担体を用いて調製することができる。エチレンビニル酢酸塩、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの、生物分解性、生物適合性ポリマーを用いることができる。このような材料は、ALZA Corporation(Mountain View, CA)及びNOVA Pharmaceuticals,Inc.(Lake Elsinore,CA)などから入手することが可能で、また、当業者によって容易に調製することもできる。また、リポソームの懸濁液も薬剤的に受容可能な坦体として使用することができる。有用なリポソームは、限定はしないが、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG誘導ホスファチジルエタノール(PEG−PE)を含む脂質組成物として、使用に適するサイズになるように、適当なポアサイズのフィルターを通して調製され、逆相蒸発法によって精製される。例えば、抗体のFab’断片などは、ジスルフィド交換反応を介して、リポソームに結合させてもよい(Martin及びPapahadjopoulos,J Biol Chem.257:286-288,1982)。
【0026】
4−4.投与量
活性化合物を含有する医薬組成物又は製剤による特定の疾患の治療又は予防において、適切な投与量レベルは、投与される患者の状態、投与方法等に依存するが、当業者であれば、容易に最適化することが可能である。
注射投与の場合は、例えば、一日に患者の体重あたり約0.1μg/kgから約500mg/kgを投与するのが好ましく、一般に一回又は複数回に分けて投与され得るであろう。好ましくは、投与量レベルは、一日に約0.1μg/kgから約250mg/kgであり、より好ましくは一日に約0.5〜約100mg/kgである。
経口投与の場合は、組成物は、好ましくは1.0から1000mgの活性成分を含む錠剤の形態で提供され、好ましくは活性成分が1.0,5.0,10.0,15.0,20.0,25.0,50.0,75.0,100.0,150.0,200.0,250.0,300.0,400.0,500.0,600.0,750.0,800.0,900.0及び1000.0mgである。化合物は一日に1〜4回の投与計画で、好ましくは一日に一回又は二回投与される。
【0027】
4−5.単位投与量
医薬組成物又は製剤は、一定の投与量を保障すべく、均一単位投与量により構成されなくてはならない。単位投与量は、患者の治療に有効な一回の投与量を含み、薬剤的に受容可能な担体と共に製剤化された一単位のことである。本発明の単位投与量を決定する場合には、製剤化される化合物の物理的、化学的特徴、期待される治療上の効果、及び該化合物に特有な製剤化における留意事項等により影響を受ける。

【0028】
5.医薬組成物に関するキット
医薬組成物はキット、容器、パック中に投与の説明書と共に含めることができる。本発明に係る医薬組成物がキットとして供給される場合、該医薬組成物のうち異なる構成成分が別々の容器中に包装され、使用直前に混合される。このように構成成分を別々に包装するのは、活性構成成分の機能を失うことなく長期間の貯蔵を可能にするためである。
5−1.容器
キット中に含まれる試薬は、構成成分が活性を長期間有効に持続し、容器の材質によって吸着されず、変質を受けないような何れかの容器中に供給される。例えば、封着されたガラスアンプルは、窒素ガスのような中性で不反応性ガスの下において包装されたバッファーを含む。アンプルは、ガラス、ポリカーボネート、ポリスチレンなどの有機ポリマー、セラミック、金属、又は試薬を保持するために通常用いられる他の何れかの適切な材料などから構成される。他の適切な容器の例には、アンプルなどの類似物質から作られる簡単なボトル、及び内部がアルミニウム又は合金などのホイルで裏打ちされた包装材が含まれる。他の容器には、試験管、バイアル、フラスコ、ボトル、シリンジ、又はその類似物が含まれる。容器は、皮下用注射針で貫通可能なストッパーを有するボトルなどの無菌のアクセスポートを有する。
5−2.使用説明書
また、キットには使用説明書も添付される。当該医薬組成物からな成るキットの使用説明は、紙又は他の材質上に印刷され、及び/又はフロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、Zipディスク、ビデオテープ、オーディオテープなどの電気的又は電磁的に読み取り可能な媒体として供給されてもよい。詳細な使用説明は、キット内に実際に添付されていてもよく、あるいは、キットの製造者又は分配者によって指定され又は電子メール等で通知されるウェブサイトに掲載されていてもよい。
【0029】
以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
1.腸管様細胞塊の構築
未分化ES細胞(EB3細胞を使用)は、10%胎児ウシ血清(GIBCO/BRL, Grand Island,NY)、0.1mM 2−メルカプトエタノール(Wako, Tokyo,Japan)、0.1mM 非必須アミノ酸(GIBCO/BRL)、1mM ピルビン酸ナトリウム(Bio-WHITTAKER)、1000U/ml 白血病抑制因子(LIF;CHEMICON,Temecula,CA)を添加したダルベッコー改変イーグル培地(DMEM;Sigma,St.Louis,MO)中、フィーダー細胞非存在下、ゼラチンコートしたディッシュ上で培養した。EB3細胞(神戸市中央区理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター チームリーダー 丹羽仁史博士より譲渡)は、Oct−3/4プロモーターで発現制御されるブラスチシジンS耐性選択マーカー遺伝子を保有しており、分化した細胞を除去するために10μg/ml ブラスチシジンSを含む培地中で維持した。
【0031】
胚様体(EB)形成を誘導するために、分離した未分化ES細胞をハンギングドロップ(Kellerら,J.Physiol.(Lond)168:131-139,1998;Robertsonら,Embyo-derived stem cell lines.In:Robertson EJ,ed.Teratocarcinomas and embryonic stem cells:a practical approach.1st ed.Washington,DC;IRL Press,p71-p112,1987)中で培養した。1ドロップの細胞密度は、LIF非存在下、BDNF存在下(大腸菌にて発現させた組換体)(Upstate,Lake Placid, NY)(10-9〜10-8g/ml)で、ES細胞培地15μlあたり500細胞であった。ハンギングドロップ培養6日後、調製したEBを100−mmのゼラチンコートしたプラスチック製ディッシュ上に播き、付着培養を行った。
【0032】
形成された収縮塊は、液体と固体を含んだ空洞を有する嚢胞様構造へと劇的な形質転換を行った。付着培養開始約14日後、これらの塊は成長し、管腔を有した、より顕著な三次元構造を形成し、律動的な収縮を始めた。付着培養開始約21日後、収縮塊は、一部に不完全な嚢胞様構造を呈するものの、蠕動様運動に類似の規則的で律動的収縮運動を行った。
【0033】
BDNFを至適濃度含んだハンギングドロップ中における培養は、腸管様細胞塊を分化させるにあたり最も重要な過程であった。BDNF濃度が10-9g/ml程度である場合には、腸壁内神経は効果的に分化しなかった。また、5x10-8g/ml濃度にまでBDNFの量を増大させた場合の効果と、1×10-8g/ml濃度の場合とでは、腸管様細胞塊の形成の程度に差異は認められなかった。従って、10-8g/ml濃度のBDNFが、腸壁内神経設を分化させるのに最も至適な濃度であった。
また、付着培養の培地にBDNFを添加しても腸壁内神経節の形成を促進しないことから、付着培養には必ずしもBDNFを含む必要はないと考えられる。
さらに、BDNFの代わりにIRL−1620(10-9〜2x10-9M)をハンギングドロップ中、または付着培養中、あるいは、その両方に添加しても、腸管様細胞塊の分化は認められなかった。
【0034】
2.免疫組織化学
c−Kit抗体による免疫染色を行うにあたり、腸管様細胞塊のホールマウント標品をアセトン中で固定した(4℃、5分間)。また、PGP9.5およびニューロフィラメントの免疫染色のためには、染色のための組織標品を4%パラホルムアルデヒド中で固定した(4℃、10分間)。固定後、標品をPBS(0.01M、pH7.4)中で30分間洗浄した。非特異的な抗体の結合を0.3%(v/v)Triton-X 100(PBS-TX)、10%正常ヤギ血清を含むPBS中、室温にて3時間インキュベートすることにより除去した。組織は、c−Kitタンパク質に対するラットモノクローナル抗体(ACK2、PBS中5μg/ml、eBioscience,San Diego, CA)と共に2晩4℃でインキュベートし、ヒトPGP9.5に対するウサギポリクローナル抗体(PBS中1:3000、CHEMICON international, Temecula,CA)、または、ニューロフィラメントの68−70kDa、150kDa、200−210kDaの各サブユニットと反応する霊長類およびウシニューロフィラメントタンパク質に対するウサギポリクローナル血清カクテル(PBS中1:500、AFFINITI Research Products Ltd, Devon, UK)と共に1晩4℃でインキュベートした。この血清カクテルは神経細胞体、樹状突起、軸索(thickおよびthinの双方を含む)に反応する。Kitに対する抗体反応は、Alex Flour(登録商標)594?結合二次抗体(Alex Flour(登録商標)ヤギ抗ラット;Molecular Probes Inc.,Eugene, OR;PBS中1:200、室温にて遮光状態で2時間)、PGP9.5およびニューロフィラメントに対しては、Texas Red結合二次抗体(Texas Redヤギ抗ウサギ;Pharmaceuticals,Inc.,Aurora,OH;PBS中1:100、室温にて遮光状態で1時間)を用いて検出を行った。組織はBio-Rad MRC 600(Hercules,CA)共焦点顕微鏡を用いて観察した。共焦点顕微鏡写真は、10−20μmの深さで10−15の光学セクションのZ軸方向のデジタルコンポジットである。最終的なイメージはComosソフトウェアー(Bio-Rad)で構築した。
【0035】
c−Kit+(抗c−Kit抗体により染色される)細胞はBDNFで処理した腸管様細胞塊中で同定された。c−Kit+細胞は単層を形成せず、筋肉組織中に分散して存在した(図8)。一般に、多くのc−Kit+細胞は多極性であり、明確な高密度なネットワークを形成した(図8下)。筋肉層は成体マウス腸管で報告されているような縦走筋層と輪走筋層に明確には分離されていなかったが、c−Kit+細胞のネットワークは、以前報告されたマウス小腸の腸筋層間神経叢に位置するICCのネットワーク(Torihashiら,Gastroenterology 112:144-155,1997)に類似していた。同じ腸管様細胞塊において、マウス小腸中の深い筋肉神経叢に位置するICCに類似するいくつかのc−Kit+細胞も見出された(図8A)。
抗ニューロフィラメント抗体による、腸管様細胞塊の染色像を図1に示す。図1を参照すると、腸管様細胞塊中の空洞(lumen)を取巻くドーム様構造の壁内にいくつかの神経節を形成した一群のニューロフィラメント免疫反応性細胞の存在が確認できる。これらの神経節は神経節間伝導路によって接続され、腸壁内神経のネットワークを構築していた。
【0036】
3.腸管様細胞塊を構築する細胞内カルシウム濃度変化
腸管様細胞塊を構築する細胞内のカルシウム濃度変化をモニターした。
腸管様細胞塊は、10μM fluo−3アセトキシメチルエステル(Dojindo, Kumamoto,Japan)および面活性剤(0.02% Pluronic F−127, Dojindo, 0.02% Cremophor EL,Sigma)を含む改変クレブス溶液中で、室温にて3−4時間インキュベートした。倒立顕微鏡に接続されたデジタルイメージシステム(Argus HiSCA,Hamamatsu Photonics,Shizuoka,Japan)を、細胞内カルシウム濃度([Ca2+])の変動をモニターするために用いた。腸管様細胞塊は、488nmで照射し得られた、fluo−3の515−565nmの蛍光を記録した。デジタル化したCaイメージ(328x247ピクセル)は、通常、300msecのインターバルで回収した。ある時間 (t) における蛍光強度(Ft)は、計測開始時点(F0)における蛍光強度によって標準化した。これらの相対値は、積算された細胞内カルシウム濃度[Ca2+]を表す。いくつかの腸管様細胞塊においては、蛍光強度を記録した後、ICCまたは腸壁内神経の分布を抗c−Kit抗体または抗PGP9.5抗体または抗ニューロフィラメント抗体を用いて染色して検討した(上述)。Caイメージを計測している間、温度は30℃に保った。30℃において、腸管様細胞塊の運動はある程度抑制されたが、局所刺激により誘発される[Ca2+]応答が観察された。細胞塊の運動が顕著に活発になると、実質的な[Ca2+]シグナルの変動が検出しにくくなるため、運動がある程度抑制されることはCaイメージの取得にとっては有利である。局所的な刺激(5−10Hz,100μsec,10pulses,可変電圧)は、微小ガラス電極に接続された銀線と銀板の不関電極を通じて行われた。
また、[Ca2+]応答の阻害剤として、以下の薬物を使用した:テトロドトキシン(TTX)、アトロピンおよびヘキサメソニウムはSigma Chem.(MO,USA)から購入した。全ての試薬類は、ストック溶液として蒸留水中に溶解させ、所望の濃度になるようにタイロード液またはクレブス液でさらに希釈した(希釈率は1:1000以上であった)。
【0037】
カルシウム濃度変化の画像解析実験において、局所刺激(5Hz,100μsec, 10 pulses)に対し、腸管壁上の刺激部位より発生する[Ca2+]変化の伝搬の様子が腸管様細胞塊中で観察された。
図2は、局所刺激後の連続した3つの[Ca2+]変化のイメージを示す。腸管様細胞塊の管壁上で発生する[Ca2+]変化は、腸管様細胞塊の縁に沿って(図2A、B、C中のポイント1、2、3)広く伝搬した。ポイント1、2、3におけるFt/F0として示される蛍光強度の経時変化は、図2下のトレースにより示した。伝搬イメージは腸管様細胞塊の蛍光イメージにより表される。図2A、B、C中の点線による表示は、局所刺激電極を示す。
【0038】
さらに、他の腸管様細胞塊において、局所刺激(10Hz,100μsec,10pulses)に対し、腸管壁上の刺激部位より発生する伝搬した[Ca2+]変化が、腸管様細胞塊で観察された。腸管様細胞塊の管壁上で発生する[Ca2+]変化は、腸管様細胞塊の縁に沿って(図3A、B、C中のポイント1、2、3)広く伝搬した。ポイント1、2、3におけるFt/F0として示される蛍光強度の経時変化は、図3下のトレースにより示される。蛍光強度は刺激前の200%以上に増大し、少なくとも20sec持続した。このカルシウム応答は、そのほとんどがTTXにより消失した(図4)
【0039】
単一の腸管様細胞塊の単一の部位において局所刺激によって得られた [Ca2+]応答が腸壁内神経によって媒介され、腸壁内神経ネットワークが形成されていることを共焦点顕微鏡で観察した(図5)。図5Aに示されるように、NF+(抗ニューロフィラメント抗体により染色される)神経突起を同定した。また、およそ直径80μmの大きな腸壁内神経節も観察された。この神経節中の全ての腸壁内神経節はNF+である(図5B)。
さらに、単一の腸管様細胞塊の複数の部位において[Ca2+]応答を記録した(図6)。蛍光強度は刺激前の130%以上に増大し、少なくとも30sec持続した。また、複数神経節の存在がPGP9.5免疫反応により同定された。アトロピン10μMにより[Ca2+]応答のほとんどが消失した(図7)。
【0040】
4.ビデオイメージによる蠕動様運動の解析
顕微鏡−ビデオ録画システム(OLYNPUS IX70,Victor CASSETTE RECORDER BR-S605B,Tokyo,Japan)を用いて、様々な分化段階における腸管様細胞塊の一連のビデオ−イメージを録画した。蠕動様運動の解析中、ディッシュの温度はマイクロウォームプレートシステム(Kitazato Suppl,Tokyo,Japan)を使用して35℃に維持した。
録画されたビデオイメージから、少なくとも3回、5分周期の自発収縮をモニターした。その結果、付着培養約21日後、腸管様細胞塊が規則的な律動的収縮を行っていることが分かった。図9に示すように、BDNF処理した管状(嚢胞様構造)腸管様細胞塊は、高度に同調した明確な蠕動様収縮パターンを示した;収縮環は嚢胞の基底部から上端部にかけて伝搬した(図9、BおよびC)。腸壁内神経系が存在しない場合には、自発収縮は高度に同調したものにはならず、局所的な収縮がしばしば観察されるのみであった。
【0041】
(参考文献)
Costaら,Ann NY Acad Sci 860:464-466,1998
Gennaro等:The science and practice of pharmacy.Lippincott,Williams & Wilkins,Philadelphia,PA.2000.
Ishikawaら,Am J.Physiol.Cell Physiol.286:C1344-C1352,2004
Kellerら,J.Physiol.(Lond)168:131-139,1998
Martin及びPapahadjopoulos,J Biol Chem.257:286-288,1982
Nakagawaら,Neurogastroenterol Mot 15:224, 2003
Robertsonら,Embyo-derived stem cell lines.In:Robertson EJ,ed.Teratocarcinomas and embryonic stem cells:a practical approach.1st ed.Washington,DC;IRL Press,p71-p112,1987
Yamadaら,Stem Cells 20:41-49,2002
Torihashiら,Gastroenterology 112:144-155, 1997
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】胚様体付着培養21日目の蠕動様運動を行う腸管様細胞塊の抗ニューロフィラメント抗体を用いた免疫化学染色像を示す。(B)は(A)の拡大図である。
【図2】ドーム状構造を呈する付着培養21日目の腸管様細胞塊に対する局所刺激による、カルシウム濃度変化の伝搬の様子を示す。Control Responseとは、薬剤非添加の対照の応答を意味する。
【図3】ドーム状構造を呈する付着培養21日目の腸管様細胞塊に対する局所刺激による、カルシウム濃度変化の伝搬の様子を示す。Control Responseとは、薬剤非添加の対照の応答を意味する。
【図4】図3に示すカルシウム濃度変化の伝搬が、TTX(テトロドトキシン)によりほぼ完全に消失することを示す。
【図5】抗ニューロフィラメント抗体を用いた免疫組織化学的解析により、腸管様細胞塊中に観察される神経細胞突起(A)および大きな腸管神経節(B)を示す。
【図6】単一の腸管様細胞塊に対する局所刺激による、複数部位におけるカルシウム応答を示す。Control Responseとは、薬剤非添加の対照の応答を意味する。
【図7】図6に示すカルシウム応答が、アトロピンによりほぼ完全に消失することを示す。
【図8】BDNFで処理した腸管様細胞塊中に広く分布するc−Kit(+)細胞の染色像を示す。
【図9】胚様体付着培養21日目において、周期的に収縮運動を行う腸管様細胞塊の一連のビデオイメージを示す。(A)は、弛緩した腸管様細胞塊、(B)−(C)は細胞塊基底部から上端部に向かって高度に調和した蠕動様運動が伝播して行く様子を、Dは、再び弛緩した腸管様細胞塊のイメージを各々示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)未分化胚性幹細胞を回収し、回収された該未分化胚性幹細胞をBDNFを含む培地中でハンギングドロップ培養し、胚様体を誘導する工程、
(b)工程(a)で誘導された胚様体を培養ディッシュ上に付着させ、さらに培養する工程、を含んでなる、壁内神経系を備えた腸管様細胞塊を構築する方法。
【請求項2】
前記BDNF濃度が1×10-9g/mlを超える濃度であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記BDNF濃度が1×10-8g/mlであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記培養ディッシュが、フィーダー細胞が存在せず、ゼラチンコートされたものである、請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかの方法により構築された腸管様細胞塊。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−239169(P2006−239169A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59547(P2005−59547)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(505079671)
【Fターム(参考)】