説明

胞子を死滅させるための、及び機器を消毒又は滅菌するための方法

本発明は、胞子をハロペルオキシダーゼ、過酸化水素、塩化物イオン又は臭化物イオン、及びアンモニウムイオンと接触させることによって、当該胞子を死滅させ、又は不活性化するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、微生物の胞子を死滅させ又は不活性化するための酵素的方法、並びに機器及び装置を消毒又は滅菌するための酵素的方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
胞子は、サルシナ(sarcinae)及び幾つかの放射菌(actinomycetes)から選択される、好気性桿菌(Bacilli)、好気性クロストリジウム(Clostridia)から形成されることが知られている。胞子は、それらが代謝反応を全く行わないという点において、特定の植物の種子と類似する。この点に関して、それらは過酷な環境ストレスに耐えるために特に適合され、そして加熱、乾燥、放射線、及び毒性化合物に対する長期間の暴露において生存することが知られている。これらの特性は、厳しい条件においては副作用を生じるだろう生物組織、又は生物組織と接触する対象のような環境において、胞子を死滅させることを特に困難なものとする。
【0003】
真菌類、細菌類、及び病原性細菌の栄養細胞は、70℃において数分間で滅菌され;多くの胞子は、100℃で滅菌される。しかし、幾つかの腐生菌の胞子は、数時間の煮沸において生存し得る。加熱は現在、胞子の滅菌を確保するために使用される最も一般的な手段である。
【0004】
胞子の外皮は、当該胞子の全タンパク質の80%も含む、ケラチン様タンパク質から作られている。このタンパク質外被は、化学的滅菌剤に対する胞子の抵抗性に関与する。微生物の生活環における胞子の段階は、代謝性休眠、及びその成長段階において微生物を破壊するだろう環境要因に対する抵抗性によって特徴付けられる。
【0005】
微生物の内生胞子及び真菌胞子の発芽は、代謝の増大、並びに加熱及び化学反応剤に対する抵抗性の減少と関連付けられる。発芽が起こるために、胞子は、環境が植生及び繁殖を支持するために十分であることを感知しなければならない。単純アルファアミノ酸は、胞子の発芽を刺激し得る。
【0006】
欧州特許第500387号明細書において、ハロペルオキシダーゼ、例えばミエロペルオキシダーゼ、好酸球オキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、及びクロロペルオキシダーゼを含む酵素的抗菌性組成物が開示されており、そしてそれは過酸化物及びハロゲン化物の存在下、標的微生物に選択的に結合し、そしてその増殖を阻害する。
【0007】
国際公開第95/27046号は、バナジウムクロロペルオキシダーゼ、ハロゲン化物イオン、及び過酸化水素、又は過酸化水素生成剤を含む、抗微生物組成物を開示する。
【0008】
国際公開第96/38548号は、ハロペルオキシダーゼ、ハロゲン化物イオン、過酸化物生成剤、及びアミノ酸種を含む、抗微生物組成物を含む。
【0009】
本発明は、胞子を死滅させ、又は不活性化するための改善された酵素的方法を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
概要
本発明は、微生物の胞子を死滅させ、又は不活性化するための方法であって、前記胞子を、ハロペルオキシダーゼ、過酸化水素源、塩化物イオン及び/又は臭化物イオン源、並びにアンモニウムイオン源と接触させることを含む、前記方法を提供する。
【0011】
別の態様において、本発明は、機器、好ましくは医療機器を消毒、又は滅菌するための方法であって、前記機器を、ハロペルオキシダーゼ、過酸化水素、塩化物イオン及び/又は臭化物イオン、並びにアンモニウムイオンと接触させることを含む、前記方法を提供する。
【0012】
一つの実施形態において、ハロペルオキシダーゼは、クロロペルオキシダーゼ、又はブロモペルオキシダーゼである。別の実施形態において、ハロペルオキシダーゼは、バナジウム含有ハロペルオキシダーゼである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
ハロペルオキシダーゼ、及びハロペルオキシダーゼ活性を示す化合物
本発明の方法に組み込まれるために好適なハロペルオキシダーゼは、クロロペルオキシダーゼ、ブロモペルオキシダーゼ、及びクロロペルオキシダーゼ又はブロモペルオキシダーゼ活性を示す化合物を含む。ハロペルオキシダーゼは、酵素の分類を形成し、そしてそれは、過酸化水素の存在下、又は過酸化水素生成系中において、ハロゲン化物(Cl-、Br-、I-)を酸化して対応する次亜ハロゲン酸とすることができる。
【0014】
ハロペルオキシダーゼは、ハロゲン化物イオンに対するそれらの特異性に従って分類される。クロロペルオキシダーゼ(E.C.1.11.1.10)は、塩化物イオンからの次亜塩素酸塩の形成、臭化物イオンからの次亜臭素酸塩の形成、及びヨウ化物イオンからの次亜ヨウ素酸塩の形成を触媒し;そしてブロモペルオキシダーゼは、臭化物イオンからの次亜臭素酸塩の形成、及びヨウ化物イオンからの次亜ヨウ素酸塩の形成を触媒する。しかし、次亜ヨウ素酸塩は、自発的不均化が進行してヨウ素となり、したがってヨウ素が、観測される産生物である。これらの次亜ハロゲン酸塩(hypohalite)化合物は、その後他の化合物と反応してハロゲン化化合物を形成する。
【0015】
好ましい実施形態において、本発明のハロペルオキシダーゼは、クロロペルオキシダーゼである。ハロペルオキシダーゼは、種々の生命体;哺乳動物、海洋動物、植物、藻類、地衣類、真菌及び細菌から単離された。他の酵素が関与され得るが、ハロペルオキシダーゼは、自然界においてハロゲン化された化合物の形成に関与する酵素であるということが、一般的に認められている。
【0016】
ハロペルオキシダーゼは、多くの異なる真菌から、特に、真菌群である黒色線菌綱(dematiaceous hyphomycetes)、例えば、カルダリオミセス(Caldariomyces)、例えばC.フマゴ(fumago)、アルテルナリア(Alternaria)、カーブラリア(Curvularia)、例えばC.ベルクロサ(C.verruculosa)及びC.イナエキュアリス(C.inaequalis)、ドレクスレラ(Drechslera)、ウロクラジウム(Ulocladium)及びボツリチス(Botrytis)から単離された。
【0017】
ハロペルオキシダーゼはまた、細菌、例えばシュードモナス(Pseudomonas)、例えばP.ピロシニア(P.pyrrocinia)、及びストレプトミセス(Streptomyces)、例えばS.アウレオファシエンス(S.aureofaciens)から単離された。
【0018】
好ましい実施形態において、ハロペルオキシダーゼは、カーブラリア(Curvularia)属、特にカーブラリア・ベルクロサ(verruculosa)、又はカーブラリア・イナエキュアリスから得られるバナジウムハロペルオキシダーゼ(すなわち、バナジウム又はバナジン酸含有ハロペルオキシダーゼ)であり、例えば国際公開第95/27046号に記載されたC.イナエキュアリス CBS102.42から得られるもの、例えば参照により全てが援用される、国際公開第95/27046号、図2のDNA配列によってコードされるバナジウムハロペルオキシダーゼ;或いは国際公開第97/04102号に記載されたC.ベルクロサ CBS147.63、又はC.ベルクロサ CBS444.70から得られるものである。好ましくは、ハロペルオキシダーゼのアミノ酸配列は、カーブラリア・ベルクロサから得られるハロペルオキシダーゼのアミノ酸配列(例えば、国際公開第97/04102号の配列番号2を参照)、又はカーブラリア・イナエキュアリスから得られるハロペルオキシダーゼのアミノ酸配列(例えば、国際公開第95/27046号の図2に記載されている図2におけるDNA配列によってコードされる成熟アミノ酸配列)と、少なくとも90%の同一性、好ましくは95%の同一性を有する。
【0019】
別の好ましい実施形態において、ハロペルオキシダーゼは、バナジウム含有ハロペルオキシダーゼ;特にバナジウムクロロペルオキシダーゼである。当該バナジウムクロロペルオキシダーゼは、国際公開第01/79459号に記載されたドレクスレラ・ハートレビ(Drechslera hartlebii)、国際公開第01/79458号に記載されたデンドリフィエラ・サリナ(Dendryphiella salina)、国際公開第01/79461号に記載されたファエオトリチョコニス・クロタラリエ(Phaeotrichoconis crotalarie)、又は国際公開第01/79460号に記載されているゲニクロスポリウム(Geniculosporium)属から誘導され得る。バナジウムハロペルオキシダーゼは、より好ましくはドレクスレラ・ハートレビ(Drechslera hartlebii)(DSM13444)、デンドリフィエラ・サリナ(Dendryphiella salina)(DSM13443)、ファエオトリチョコニス・クロタラリエ(Phaeotrichoconis crotalarie)(DSM13441)又はゲニクロスポリウム(Geniculosporium)属(DSM13442)から誘導され得る。
【0020】
ハロペルオキシダーゼの濃度は通常、0.01〜100ppmの酵素タンパク質、好ましくは0.05〜50ppmの酵素タンパク質、より好ましくは1〜40ppmの酵素タンパク質、より好ましくは、0.1〜20ppmの酵素タンパク質、及び最も好ましくは0.5〜10ppmの酵素タンパク質の範囲内である。
【0021】
一つの実施形態において、ハロペルオキシダーゼの濃度は通常、5〜50ppmの酵素タンパク質、好ましくは5〜40ppmの酵素タンパク質、より好ましくは8〜32ppmの酵素タンパク質の範囲内である。
【0022】
ハロペルオキシダーゼ活性の決定
ハロペルオキシダーゼ活性を決定するためのアッセイを、100μlのハロペルオキシダーゼ試料(約0.2μg/ml)と、100μlの0.3Mリン酸ナトリウムpH7バッファー−0.5M臭化カリウム−0.008%フェノールレッドとを混合し、当該溶液を10μlの0.3%H22溶液に添加し、そして時間の関数として、595nmで吸光度を測定することによって実施した。
【0023】
モノクロロジメドン(Sigma M4632、290nmでε=20000M-1cm-1)を基質として使用する別のアッセイを、時間の関数として、290nmにおける吸光度の減少を測定することによって実施した。当該アッセイを、0.1Mリン酸ナトリウム又は0.1M酢酸ナトリウム、50μMモノクロロジメドン、10mM KBr/KCl、1mM H22、及び約1μg/mlハロペルオキシダーゼの水溶液中で行った。1ハロペルオキシダーゼ単位(HU)は、pH5及び30℃で、1分間あたり、塩素化又は臭素化された、1マイクロモルのモノクロロジメドンとして定義される。
【0024】
過酸化水素
ハロペルオキシダーゼによって必要とされる過酸化水素は、過酸化水素の水溶液として、又は過酸化水素のイン・サイチュ(in situ)製造のための、過酸化水素前駆体の水溶液として提供され得る。溶解時に遊離する任意の固体であって、ハロペルオキシダーゼによって使用可能である過酸化物が、過酸化水素源として有用であり得る。水、又は好適な水性溶媒中に溶解時に過酸化水素を生じる化合物は、限定されないが、金属過酸化物、過炭酸塩、過硫酸塩、過リン酸塩、過酸、アルキルペルオキシド、アシルペルオキシド、ペルオキシエステル、過酸化尿素、過ホウ酸塩、及びペルオキシカルボン酸、又はそれらの塩を含む。
【0025】
別の過酸化水素源は、過酸化水素生成酵素系、例えばオキシダーゼのための基質と一緒になったオキシダーゼである。オキシダーゼと基質との組み合わせの例は、限定されないが、アミノ酸オキシダーゼ(米国特許第6,248,575号明細書)及び好適なアミノ酸、グルコースオキシダーゼ(国際公開第95/29996号)及びグルコース、乳酸オキシダーゼ及び乳酸塩、ガラクトースオキシダーゼ(国際公開第00/50606号)及びガラクトース、並びにアルドースオキシダーゼ(国際公開第99/31990号)及び好適なアルドースを含む。EC1.1.3._、EC1.2.3._、EC1.4.3._、及びEC1.5.3._、又は(国際生化学連合に基づく)類似の分類を試験することによって、オキシダーゼと基質とのかかる組み合わせの他の例は、当業者によって容易に認識され得る。
【0026】
過酸化水素又は過酸化水素源は、当該工程の開始時又は最中に、例えば0.001mM〜25mMの過酸化水素レベルに相当する量、好ましくは0.005mM〜5mMの過酸化水素レベルに相当する量、及び特に、0.01〜1mMの過酸化水素レベルに相当する量で添加され得る。過酸化水素はまた、0.1mM〜25mMの過酸化水素レベルに相当する量、好ましくは1mM〜10mMの過酸化水素レベルに相当する量、そして最も好ましくは2〜8mMの過酸化水素レベルに相当する量で使用され得る。
【0027】
塩化物イオン又は臭化物イオン
本発明にしたがって、ハロペルオキシダーゼとの反応のために必要とされる塩化物イオン又は臭化物イオン(Cl-又はBr-)は、多くの異なる方法で、例えば塩化物塩又は臭化物塩を添加することによって提供され得る。好ましい実施形態において、塩化物塩又は臭化物塩は、塩化ナトリウム(NaCl)、臭化ナトリウム(NaBr)、塩化カリウム(KCl)、臭化カリウム(KBr)、塩化アンモニウム(NH4Cl)、又は臭化アンモニウム;或いはそれらの混合物である。
【0028】
一つの実施形態において、塩化物イオン又は臭化物イオンは、塩化物イオン(Cl-)のみに限定される。塩化物イオンは、塩化物塩を水溶液へと添加することによって提供され得る。塩化物塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、又は塩化アンモニウム;或いはそれらの混合物であり得る。
【0029】
別の実施形態において、塩化物イオン又は臭化物イオンは、臭化物イオン(Br-)のみに限定される。臭化物イオンは、臭化物塩を水溶液へと添加することによって提供され得る。臭化物塩は、臭化ナトリウム、臭化カリウム、又は臭化アンモニウム;或いはそれらの混合物であり得る。
【0030】
塩化物イオン又は臭化物イオンの濃度は通常、0.01mM〜1000mMの、好ましくは0.05mM〜500mMの、より好ましくは0.1mM〜100mMの、最も好ましくは0.1mM〜50mMの、そして特に、1mM〜25mMの範囲内である。塩化物イオン及び臭化物イオンの両方が使用されるとき、塩化物イオン濃度は、臭化物イオン濃度とは独立しており;そして逆も同様である。
【0031】
好ましい実施形態において、本発明の方法、組成物及び使用は、例えば塩化物塩(単数又は複数)及び臭化物塩(単数又は複数)の混合物を使用することによって提供される、塩化物イオン及び臭化物イオンを含む。
【0032】
一つの実施形態において、塩化物イオン又は臭化物イオンのモル濃度は、アンモニウムイオン濃度よりも、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも4倍、より好ましくは少なくとも6倍、最も好ましくは少なくとも8倍、そして特に少なくとも10倍高い。
【0033】
アンモニウムイオン
本発明の方法に従って微生物の胞子を死滅させ、又は不活性化するために必要とされるアンモニウムイオン(NH4+)は、多くの異なる方法で、例えばアンモニウム塩を添加することによって提供され得る。好ましい実施形態において、アンモニウム塩は、硫酸アンモニウム((NH42SO4)、炭酸アンモニウム((NH42CO3)、塩化アンモニウム(NH4Cl)、臭化アンモニウム(NH4Br)、又はヨウ化アンモニウム(NH4I);或いはそれらの混合物である。
【0034】
アンモニウムイオン濃度は通常、0.01mM〜1000mMの、好ましくは0.05mM〜500mMの、より好ましくは0.1mM〜100mMの、最も好ましくは0.1mM〜50mMの、そして特に、1mM〜25mMの範囲内である。
【0035】
微生物の胞子
本発明のハロペルオキシダーゼ、過酸化水素、塩化物イオン又は臭化物イオン、及びアンモニウムイオンを用いて死滅する、又は不活性化される微生物の胞子は、全ての種類の胞子を含む。
【0036】
一つの実施形態において、微生物の胞子は、内生胞子、例えば全てのクロストリジウム(Clostridium)属の胞子、ブレビバチルス(Brevibacillus)属の胞子、及びバチルス(Bacillus)属の胞子、例えば、バチルス・アンスラシス(Bacillus anthracis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・プチダ(Bacillus putida)、及びバチルス・プミラ(Bacillus pumila)から得られる胞子である。
【0037】
別の実施形態において、微生物の胞子は、外生胞子、例えば、放線菌目の胞子、例えばアクチノミセス(Actinomyces)属、ストレプトミセス(Streptomyces)属、サーモアクチノミセス(Thermoactinomyces)属、サッカロモノスポラ(Saccharomonospora)属、及びサッカロポリスポラ(Saccharopolyspora)属である。
【0038】
別の実施形態において、微生物の胞子は、細菌の胞子である。細菌の胞子の例は、限定されないが、例えば上で言及されたようなクロストリジウム(Clostridium)属の胞子、及びバチルス(Bacillus)属の胞子を含む。
【0039】
さらに別の実施形態において、微生物の胞子は真菌の胞子を含む。真菌の胞子の例は、限定されないが、分生胞子、例えばアスペルギルス(Aspergillus)属、及びペニシリウム(Penicillium)属から得られる胞子を含む。
【0040】
界面活性剤
本発明の方法は、(洗浄剤組成物の一部として、又は湿潤剤として)界面活性剤の適用を含み得る。適用されるために好適である界面活性剤は、(半極性を含む)非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、及び/又は両性イオン性であり得;好ましくは、当該界面活性剤は、陰イオン性(例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルファ−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩(脂肪族アルコールサルフェート)、アルコールエトキシサルフェート、二級アルカン硫酸塩、アルファ−スルホ脂肪酸メチルエステル、アルキル若しくはアルケニルコハク酸、又は石鹸)又は非イオン性(例えば、アルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、アルキルジメチルアミンオキシド、エトキシ化脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、ポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミド、又はグルコサミンのN−アシル N−アルキル誘導体(「グルカミド(glucamide)」))或いはそれらの混合物である。
【0041】
本発明の方法に含まれる時、界面活性剤の濃度は通常、約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは約0.05重量%〜約5重量%、そしてより好ましくは約0.1重量%〜約1重量%である。
【0042】
方法及び使用
第一の態様において、本発明は、胞子を死滅させ又は不活性化するための酵素的方法であって、前記胞子を、ハロペルオキシダーゼ、過酸化水素、塩化物イオン及び/又は臭化物イオン、及びアンモニウムイオンを含む組成物と接触させることを含む、前記方法を提供する。好ましい実施形態において、当該組成物は、ハロペルオキシダーゼ、過酸化水素、塩化物イオン、及びアンモニウムイオンを含む。別の態様において、本発明は、機器、好ましくは医療機器を消毒、又は滅菌するための方法であって、前記(医療)機器を前記組成物と接触させることを含む、前記方法を提供する。
【0043】
当該組成物は、液体(例えば水性)又は乾燥製剤として製剤化され得る。乾燥製剤は、その後再度水を含ませて、本発明の方法において使用可能な、活性な液体製剤又は準液体製剤を形成し得る。
【0044】
当該製剤が乾燥製剤として製剤化されるとき、当該成分は混合され、個別の層に配置され、又は別々に詰められる。
【0045】
第二の態様において、本発明はまた、本発明の方法を適用することでもたらされる組成物を含む。この場合において、当該組成物は、ハロペルオキシダーゼ、過酸化水素、塩化物イオン又は臭化物イオン、及び微生物の胞子を含むか;或いはハロペルオキシダーゼ、過酸化水素、塩化物イオン又は臭化物イオン、アンモニウムイオン、及び医療機器を含む。
【0046】
本発明の方法は、細菌兵器剤のような胞子、例えば、炭疽病を引き起こし得るバチルス・アンスラシス(Bacillus anthracis)の胞子に曝露された場所の汚染除去のために有用である。
【0047】
本発明において、用語「胞子を死滅させ又は不活性化すること」は、少なくとも99%の胞子が栄養細胞へと変形(発芽)できないことを意味する。好ましくは99.9%、より好ましくは99.99%、最も好ましくは99.999%、そして特に99.9999%の胞子は、栄養細胞へと変形することができない。
【0048】
一つの実施形態において、用語「消毒する」又は「消毒」は、「Content and Format of Premarket Notification[510(k)]Submissions for Liquid Chemical Sterilants/High Level Disinfectants」、U.S.Food and Drug Administration,Jan.2000に従う、高レベルの消毒を意味する。
【0049】
本発明の方法は、0〜90℃で、好ましくは5〜80℃で、より好ましくは10〜70℃で、さらにより好ましくは15〜60℃で、最も好ましくは18〜50℃で、そして特に20〜40℃で行われ得る。
【0050】
別の実施形態において、本発明の方法は、30〜70℃で、好ましくは40〜60℃で行われ得る。
【0051】
本発明の方法は、10分〜(少なくとも)4時間、好ましくは15分から(少なくとも)3時間、より好ましくは20分〜(少なくとも)2時間、最も好ましくは20分〜(少なくとも)1時間、そして特に30分〜(少なくとも)1時間の処理時間で実施され得る。
【0052】
本発明の方法は、種々の環境下において、胞子を死滅させ、又は不活性化するために好適である。本発明の方法は、胞子の混入を減らすために、所望であれば任意の環境下で、例えばヘルスケア産業において(例えば、動物病院、ヒトの病院、動物の診療所、ヒトの診療所、養護ホーム、小児又は高齢者のためのデイケア施設などにおいて)、食品産業において(たとえば、レストラン、食品加工工場、食品貯蔵工場、食料品店などにおいて)、サービス業において(例えば、ホテル、モーテル、リゾート、クルーズ船などにおいて)、教育産業において(例えば学校及び大学において)などで使用され得る。
【0053】
本発明の方法によって利用される比較的低い温度のために、それらは、ヘルスケア産業において使用される機器、例えば医療機器(例えば、乾燥した手術器具、麻酔機器、深みのある容器(hollowware)など)を消毒又は滅菌するために非常に有用である。消毒又は滅菌された機器は、変形及び損耗の減少が見られ、そして当該機器は、消毒又は滅菌後に速やかに、使用のための準備がなされている。これは、複雑な又は加熱に敏感な医療機器、例えば異なる材料を含む、超音波トランスデューサー及び内視鏡を、消毒又は滅菌するときに特に有利であり、なぜならばこれらの機器の損耗が著しく減少し、それにより、これらの通常非常に高額な機器のより長い耐久性がもたらされ、そしてそれらの運転費用を効果的に減らすからである。実際、他の非医療タイプの機器、例えば再利用な衛生用品でさえ、本発明の使用によって効果的に消毒又は滅菌され得る。
【0054】
好ましい実施形態において、医療機器及び/又は非医療用機器の消毒又は滅菌は、本発明を使用して、EN ISO15883−1に従って、(又は「Class Il Special Controls Guidance Document: Medical Washers and Medical Washer−Disinfectors;Guidance for the Medical Device Industry and FDA Review Staff」,U.S.Food and Drug Administration,Feb.2002に記載された通りに、)(医療用)洗浄消毒装置((Medical)Washer−Disinfector)において行われる。
【0055】
本発明の方法は、胞子の混入を減少させるために、好ましくは任意の環境下で、例えば一般的な施設の表面(例えば、床、壁、天井、家具の外装など)、特定の機器の表面(硬表面、製造機器、処理機器など)、布地(例えば、綿、羊毛、生糸、合成繊維、例えばポリエステル、ポリオレフィン、及びアクリル、繊維混合、例えば綿ポリエステルなど)、木質系及びセルロース系のもの(例えば紙)、土、動物の残骸(例えば皮、肉、髪、羽など)、食料品(例えば、果実、野菜、殻果、肉など)及び水に使用され得る。
【0056】
一つの実施形態において、本発明の方法は、布地の殺胞子処理を指向する。バチルス・セレウス群の胞子は、洗濯後における布地中への主な混入物として同定された。したがって、本発明の組成物を用いた布地の処理は、布地への混入物に対する殺胞子活性に関して特に有用である。
【0057】
本発明の組成物で処理され得るべき布地は、限定されないが、私物品(例えば、シャツ、パンツ、ストッキング、アンダーシャツなど)、施設用の用品(例えば、タオル、実験用上着、ガウン、エプロンなど)、衛生用品(例えば、タオル、ナプキン、テーブルクロスなど)を含む。
【0058】
本発明の組成物を用いた布地への殺胞子処理は、布地へ本発明の組成物を接触させることを含み得る。この接触は、当該布地の洗濯前に行われ得る。代わりにこの接触は、当該布地の洗濯中において行われ得、その結果殺胞子活性を提供し、そして場合により、土、染みなどを当該布地から除去又は減らすための洗浄活性を提供する。
【0059】
本発明の組成物によって接触される胞子は、限定されないが、例えば酪農的、化学的、又は薬学的プロセスプラントにおいて使用されるプロセス機器;医療機器、例えば内視鏡又は他の医療用品;実験機器;洗浄機;水衛生系;油処理施設;紙パルプ処理施設;水処理施設;又は冷却塔の表面を含む、任意の表面に存在し得る。本発明の組成物は、問題になっている表面上の胞子を死滅させ、又は不活性化するために効果的である量で使用されるべきである。
【0060】
(例えば洗濯工程において)本発明の方法において使用される組成物の水性製剤中に当該胞子を浸すことによって、当該胞子上に当該組成物を噴霧することによって、布地を用いて当該胞子へ当該組成物を適用することによって、又は当業者によって認識される任意の他の方法によって、当該胞子は、当該組成物によって接触され得る。胞子の死滅又は不活性化をもたらす、当該胞子へ本発明の組成物を適用するための任意の方法は、許容可能な適用方法である。
【0061】
本発明の方法はまた、細菌兵器剤のような胞子(例えば病原性胞子)、例えば、炭疽病を引き起こし得るバチルス・アンスラシス(Bacillus anthracis)の胞子に曝露された場所の汚染除去のために有用である。かかる場所は、限定されないが、衣服(例えば軍服)、乗物の内部及び外部、建物の内部及び外部、任意の種類の軍用施設、並びに上で言及された任意の種類の環境を含む。
【0062】
本発明の方法は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない以下の例によってさらに説明される。
【実施例】
【0063】
実施例
バッファー及び基質として使用される化学薬品は、少なくとも試薬グレードの市販品であった。以下の実施例において、”−”は、”未決定”を意味する。
【0064】
実施例1
胞子の産生
バチルス・グロビジイ(Bacillus globigii)、又はB.チューリンゲンシス(thuringiensis)(バチルス・チューリンゲンシス基準株ATCC10792)の新鮮培養から得られる、トリプトース血液寒天基礎培地(Tryptose Blood Agar Base)(TBAB)プレートに筋をつけた。当該培養を30℃で一晩インキュベートした。
【0065】
TBABプレートからの純粋なバチルスを懸濁し、そして2mLの滅菌水中で懸濁した。2×SGプレートへ、各々100μLの細胞懸濁液を用いて植菌した。2×SGの組成は以下の通りである:16g/L Difco Bacto Nutrient Broth、0.5g/L MgSO4×7H2O、2.0g/L KCl、1.0mL/100mLの10%グルコース、0.1mL/100mLの1M Ca(NO32、0.1mL/100mLの0.1M MnSO4、10μL/100mLの0.01M FeSO4、及び1% Difco Bacto Agar。当該プレートを48〜72時間、30℃インキュベートした。胞子形成を位相差顕微鏡で確認した。胞子は、光沢(phase−bright)を有した。
【0066】
胞子形成の効率が100%に近いとき、細胞菌叢を、水を用いて採取し、そして当該細胞を激しくボルテックスにかけることによって懸濁した。5〜10分間、6000G、4℃での遠心分離によって細胞を回収した。細胞を氷冷水にて3回洗浄した。ペレットは、栄養細胞及び胞子を含んだ。
【0067】
胞子を栄養細胞から分離するために、ステップ密度勾配を適用した。各々洗浄したペレットを、30mLの43%Urographin(登録商標)を含有する遠心分離チューブへと調製した。最終的なUrographin濃度が20%となるように、細胞胞子混合物の3mL Urographin液を調製した。20%Urographin細胞/胞子混合物を、43%Urographinの上部層へと静かにロードした。
【0068】
10000Gで、室温にて30分間遠心分離した。静かに上清を除去した。
【0069】
純粋な胞子のペレットを、1mLの氷冷水中で懸濁し、そして微量遠心チューブへと移した。最大速度で、1〜2分間、4℃にて遠心分離し、ペレットを2回以上氷冷水にて洗浄した。
【0070】
純度及び1mLあたりの胞子数を、位相差顕微鏡及び血球計算器によって確認した。水中で懸濁された胞子を、−20℃にて貯蔵した。
【0071】
実施例2
液体調製物中におけるバチルスの胞子の死滅
以下の試薬を調製した:
−NaOHを用いてpH6.0へと調整されたDMGバッファー(ジメチルグルタミン酸、Sigma D4379)、100mM、;
−1mLあたり1×108個のバチルス・アトロファエウス(Bacillus atrophaeus)胞子(バチルス・アトロファエウス胞子:SUS−1−8Log。Raven Labs,www.Ravenlabs.com)、MilliQ水中にて懸濁;
−1mLあたり1×108個のバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)胞子(実施例1に従って製造)、MilliQ水中にて懸濁;
−カーブラリア・ベルクロサ(Curvularia verrucolosa)(国際公開第97/04102号を参照)から得られる、MilliQ水中、50mg/L ハロペルオキシダーゼ;
−MilliQ水中、800mM 塩化ナトリウム(NaCl);
−MilliQ水中、100mM 硫酸アンモニウム((NH42SO4
−MilliQ水中、10mM 過酸化水素(H22);及び
−LBプレートが、1000mL水中に溶解された37gLBアガー(Agar)(Merck0283)から製造された。
【0072】
バイアル中で以下のものが混合された:
10μL胞子懸濁液、
250μL DMGバッファー、
40μL NaCl溶液、
40μL (NH42SO4溶液、及び
20μL ハロペルオキシダーゼ溶液。
40μLの過酸化水素を添加して、反応を開始した。
【0073】
10μLの胞子懸濁液及び490μL MilliQ水を含むバイアルを対照として使用した。
【0074】
バイアルを室温(約23℃)で110分間インキュベートした。その後、希釈系列をMilliQ水で作製し、そして100〜10-5希釈液から100μLを、LBアガープレート上へと(2組)蒔いた。当該プレートを48時間、33℃でインキュベートし、そして2組のプレートの個々の対における、コロニー形成単位(CFU)の平均数を記録した(表1を参照)。
【0075】
【表1】

【0076】
表1に示される結果は、本発明のハロペルオキシダーゼが、明確かつ著しい殺胞子効果を有することを示した。処理後に発芽することのできる胞子数は、少なくとも5 log単位減少した。
【0077】
実施例3
ステンレス鋼表面上におけるバチルス胞子の死滅
以下の試薬を調製した:
−NaOHを用いてpH7.0へと調節されたDMGバッファー(ジメチルグルタミン酸、Sigma D4379)、50mM、;
−カーブラリア・ベルクロサ(Curvularia verrucolosa)(国際公開第97/04102号を参照)から得られる、50mM DMGバッファー中、200mg/L ハロペルオキシダーゼ;
−MilliQ水中、400mM 塩化ナトリウム(NaCl);
−MilliQ水中、100mM 硫酸アンモニウム((NH42SO4);
−MilliQ水中、10mM 酸化水素(H22);
−5%チオ硫酸ナトリウム(Na223
−5mLの1%Tween80水溶液、及び約1mLのガラスビーズ(3mm)を含有するチューブ;並びに
−LBプレートは、1000mL水中に溶解された、37gのLBアガー(Merck0283)から製造された。
【0078】
各々106個のバチルス・アトロファエウス胞子(Raven Labs cat.#1−6100ST)を含有するステンレス鋼ディスクを実験に使用した(一つのディスクを一つの処理のために使用した)。
【0079】
バイアル中に以下の成分を混合した:
373.75μL DMGバッファー、
31.25μL NaCl溶液、
25μL(NH42SO4溶液、及び
20μLハロペルオキシダーゼ溶液、
1個のバチルス・アトロファエウス胞子ディスク(106個の胞子)。
【0080】
当該反応を、50μLの過酸化水素を添加して開始した。胞子ディスク及び500μL DMGバッファーを有するバイアルを対照として使用した。
【0081】
当該バイアルを、40℃で45分間インキュベートした。反応を停止するために、500μLのチオ硫酸ナトリウムを添加し、そして15分間、室温(約23℃)でインキュベートした。個々のディスクを、Tween80及びガラスビーズを含有するチューブへと移し、そして当該チューブを15分間、300rpmで振盪した。
【0082】
その後、希釈系列をMilliQ水で作製し、10-1〜10-3希釈液から500μLを、LBアガープレート(14cmプレート)上へと蒔いた。100溶液からの残余の液体(約4.9mL)を大きなLBプレート(正方形、20×20cmプレート)上へと蒔いた。
【0083】
当該プレートを48時間、37℃でインキュベートし、そして個々のプレート上におけるコロニー形成単位(CFU)の平均数を記録した(表2を参照)。
【0084】
【表2】

【0085】
表2に示された結果は、本発明のハロペルオキシダーゼ溶液が、明確かつ著しい殺胞子効果を有することを示す。処理後に発芽することができる胞子数は、6 log単位減少した。
【0086】
実施例4
市販の洗浄剤の使用を含む、表面上における、バチルス胞子の死滅
以下の試薬を調製した:
−水を用いて特定の作用溶液へと希釈された、市販の洗浄剤(pH7.0);
−NaOHを用いてpH7.0へと調節されたDMGバッファー(ジメチルグルタミン酸、Sigma D4379)、50mM;
−カーブラリア・ベルクロサ(Curvularia verrucolosa)(国際公開第97/04102号を参照)から得られる、50mM DMGバッファー中、200mg/Lハロペルオキシダーゼ;
−MilliQ水中、400mM 塩化ナトリウム(NaCl);
−MilliQ水中、100mM 硫酸アンモニウム((NH42SO4);
−MilliQ水中、10mM 過酸化水素(H22);
−5%チオ硫酸ナトリウム(Na223);
−5mLの1%Tween80水溶液、及び約1mLのガラスビーズ(3mm)を含有するチューブ;並びに
−LBプレートは、1000mL水中に溶解された、37gのLBアガー(Merck0283)から製造された。
【0087】
各々106個のバチルス・アトロファエウス胞子(Raven Labs cat.#1−6100ST)を含有するステンレス鋼ディスクを実験に使用した(一つのディスクを一つの処理のために使用した)。
【0088】
3つのバイアルを、表3に示されるように調製した。バイアル1及びバイアル2中の反応は、50μLの過酸化水素を添加することによって開始された。
【0089】
【表3】

【0090】
表3からのバイアルを、40℃で30分間インキュベートした。反応を停止するために、500μLのチオ硫酸ナトリウムを添加し、そして15分間、室温(約23℃)でインキュベートした。個々のディスクを、Tween80及びガラスビーズを含有するチューブへと移し、そして当該チューブを15分間、300rpmで振盪した。
【0091】
その後、希釈系列をMilliQ水で作製し、そして100〜10-3希釈液から500μLを、LBアガープレート(14cmプレート)上へと蒔いた。当該プレートを48時間、37℃でインキュベートし、そして個々のプレート上におけるコロニー形成単位(CFU)の平均数を記録した(表4を参照)。
【0092】
【表4】

【0093】
表4に示される結果は、本発明の過酸化水素溶液が、明確かつ著しい殺胞子効果を有することを示し、そしてそれは、当該溶液が市販の洗浄剤と共に使用されるときに増強された。
【0094】
ハロペルオキシダーゼ溶液単独で処理された後に発芽することのできる胞子数は、4 log単位減少した。当該溶液が、市販の洗浄剤と共に使用される場合、発芽することができる胞子数は、4〜5 log単位減少した。
【0095】
実施例5
塩化物イオン、臭化物イオン、及びアンモニウムイオンの組み合わせを用いた胞子の死滅
以下の試薬を調製した:
−NaOHを用いてpH7.0へと調整されたDMGバッファー(ジメチルグルタミン酸、Sigma D4379)、100mM、;
−1mLあたり1×109個のバチルス・アトロファエウス胞子(バチルス・アトロファエウス胞子:SUS−1−8Log。Raven Labs,www.Ravenlabs.com);
−カーブラリア・ベルクロサ(国際公開第97/04102号を参照)から得られる、MilliQ水中、40mg/L ハロペルオキシダーゼ;
−MilliQ水中、500mM 臭化ナトリウム(NaBr);
−MilliQ水中、1000mM 塩化ナトリウム(NaCl);
−MilliQ水中、500mM 塩化アンモニウム(NH4Cl);
−MilliQ水中、10mM 過酸化水素(H22);
−MilliQ水中、5%(w/v)チオ硫酸ナトリウム(Na223);及び
−LBプレートが、1000mL水中に溶解された37gLBアガー(Merck0283)から製造された。
バイアル中に、試薬を表5に従って混合した。
【0096】
【表5】

【0097】
過酸化水素を添加することによって反応を開始した。10μL胞子懸濁液及び490μL MilliQ水を有するバイアルを対照として使用した。
【0098】
当該バイアルを、40℃で30分間インキュベートした。反応をその後、500μLのチオ硫酸ナトリウムを添加し、15分間反応させてクエンチした。
【0099】
その後、希釈系列をMilliQ水で作製し、そして100〜10-5希釈液から100μLを、LBアガープレート上へと(2組)蒔いた。当該プレートを48時間、33℃でインキュベートし、そしてプレートの個々の組における、1プレートあたりのコロニー形成単位(CFU/プレート)の平均数を記録した(表6を参照)。
【0100】
【表6】

【0101】
表6に示された結果は、ハロペルオキシダーゼ/塩化物/アンモニウム溶液への臭化物の添加は、少なくとも1 log単位、殺胞子効果を上昇させることを示す。
【0102】
当該処理後に発芽することのできる胞子数は、塩化物/アンモニウム/ハロペルオキシダーゼ溶液で単独で処理された場合よりも、少なくとも1 log単位減少した。
【0103】
実施例6
塩化物イオン/臭化物イオンの比を変化させての、バチルス胞子の死滅
以下の試薬を調製した:
−NaOHを用いてpH7.0へと調整されたDMGバッファー(ジメチルグルタミン酸、Sigma D4379)、100mM;
−1mLあたり1×109個のバチルス・アトロファエウス胞子(バチルス・アトロファエウス胞子:SUS−1−8Log。Raven Labs,www.Ravenlabs.com);
−カーブラリア・ベルクロサ(国際公開第97/04102号を参照)から得られる、MilliQ水中、250mg/L ハロペルオキシダーゼ;
−MilliQ水中、50mM 臭化ナトリウム(NaBr);
−MilliQ水中、200mM 塩化ナトリウム(NaCl);
−MilliQ水中、200mM 塩化アンモニウム(NH4Cl);
−MilliQ水中、10mM 過酸化水素(H22);
−MilliQ水中、5%(w/v)チオ硫酸ナトリウム(Na223);及び
−LBプレートが、1000mL水中に溶解された37gLBアガー(Merck 0283)から製造された。
バイアル中に、表7に従って試薬を混合した。
【0104】
【表7】

【0105】
過酸化水素を添加することによって当該反応を開始した。10μL胞子懸濁液及び490μL MilliQ水を有するバイアルを対照として使用した。
【0106】
当該バイアルを、22℃で30分間インキュベートした。反応をその後、500μLのチオ硫酸ナトリウムを添加し、15分間反応させてクエンチした。
【0107】
その後、希釈系列をMilliQ水で作製し、そして100〜10-5希釈液から100μLを、LBアガープレート上へと(2組)蒔いた。当該プレートを48時間、33℃でインキュベートし、そしてプレートの個々の組における、1プレートあたりのコロニー形成単位(CFU/プレート)の平均数を記録した(表8を参照)。
【0108】
【表8】

【0109】
当該結果は、殺生物効果が、臭化物の濃度から大体独立していることを示すが、低い臭化物/塩化物比率で、微かに優れた死滅の傾向を示した。
【0110】
実施例7
種々のpHでの液体調製物中におけるバチルス胞子の死滅
以下の試薬を調製した:
−以下のpH値であるリン酸バッファー、100mM:pH6.0、pH6.5、pH7.0、pH7.4、及びpH8.0;
−ブリトン−ロビンソン(Britton Robinson)バッファー、100mM、pH8.5;
−1mLあたり1×109個のバチルス・アトロファエウス胞子(バチルス・アトロファエウス胞子:SUS−1−8Log。Raven Labs,www.Ravenlabs.com);
−カーブラリア・ベルクロサ(国際公開第97/04102号を参照)から得られる、MilliQ水中、250mg/L ハロペルオキシダーゼ;
−MilliQ水中、200mM 塩化ナトリウム(NaCl);
−MilliQ水中、50mM 臭化ナトリウム(NaBr);
−MilliQ水中、200mM 塩化アンモニウム(NH4Cl);
−MilliQ水中、10mM 過酸化水素(H22);及び
−LBプレートが、1000mL水中に溶解された37gLBアガー(Merck 0283)から製造された。
バイアル中に、表9に従って試薬を混合した。
【0111】
【表9】

【0112】
過酸化水素を添加することによって当該反応を開始した。10μL胞子懸濁液及び490μL MilliQ水を有するバイアルを対照として使用した。
【0113】
当該バイアルを、室温(約22℃)、40℃、又は50℃のいずれかで、30分間インキュベートした。
【0114】
500μLのチオ硫酸ナトリウムを添加し、10分間反応させて、反応をクエンチした。
【0115】
その後、希釈系列をMilliQ水で作製し、そして100〜10-5希釈液から100μLを、LBアガープレート上へと(2組)蒔いた。当該プレートを48時間、33℃でインキュベートし、そして2組のプレートの個々の対におけるコロニー形成単位(CFU)の平均数を記録した(以下の表10〜12を参照)。
【0116】
表10 インキュベーション温度=22℃。ハロペルオキシダーゼ/塩化物/アンモニウム溶液を用いて処理された、各々の胞子希釈液における平均CFU。
【0117】
【表10】

【0118】
表11 インキュベーション温度=40℃。ハロペルオキシダーゼ/塩化物/アンモニウム溶液を用いて処理された、各々の胞子希釈液における平均CFU。
【0119】
【表11】

【0120】
表12 インキュベーション温度=50℃。ハロペルオキシダーゼ/塩化物/アンモニウム溶液を用いて処理された、各々の胞子希釈液における平均CFU。
【0121】
【表12】

【0122】
結果を、以下の表13に要約した。
【0123】
【表13】

【0124】
表13に示された結果は、ハロペルオキシダーゼ/塩化物/臭化物/アンモニウム溶液が、明確かつ著しい殺胞子効果を有することを示す。当該効果は、試験した3つの温度の全てにおいて、pH6.5〜7.4の範囲内でその最大値であった。
【0125】
実施例8
22濃度を変化させての、胞子の死滅
以下の試薬を調製した:
−NaOHを用いてpH7.0へと調整されたDMGバッファー(ジメチルグルタミン酸、Sigma D4379)、100mM;
−1mLあたり1×109個のバチルス・アトロファエウス胞子(バチルス・アトロファエウス胞子:SUS−1−8Log。Raven Labs,www.Ravenlabs.com);
−カーブラリア・ベルクロサ(国際公開第97/04102号を参照)から得られる、MilliQ水中、250mg/L ハロペルオキシダーゼ;
−MilliQ水中、50mM 臭化ナトリウム(NaBr);
−MilliQ水中、200mM 塩化ナトリウム(NaCl);
−MilliQ水中、200mM塩化アンモニウム(NH4Cl);
−MilliQ水中、25mM 過酸化水素(H22);
−MilliQ水中、1%(w/v)チオ硫酸ナトリウム(Na223);及び
−LBプレートが、1000mL水中に溶解された37gLBアガー(Merck 0283)から製造された。
バイアル中に、表14に従って試薬を混合した。
【0126】
【表14】

【0127】
過酸化水素を添加することによって当該反応を開始した。10μL胞子懸濁液及び490μL MilliQ水を有するバイアルを対照として使用した。
【0128】
当該バイアルを、室温(約22℃)で30分間インキュベートした。反応をその後、500μLのチオ硫酸ナトリウムを添加し、10分間室温で反応させてクエンチした。
【0129】
その後、希釈系列をMilliQ水で作製し、そして100〜10-5希釈液から100μLを、LBアガープレート上へと(2組)蒔いた。当該プレートを48時間、33℃でインキュベートし、そして2組のプレートの個々の対における、1プレートあたりのコロニー形成単位(CFU/プレート)の平均数を記録した(表15を参照)。
【0130】
【表15】

【0131】
表15の結果は、最も高い死滅が、2〜5mM H22で達成され、そしてこのことは、これが、これらの実験条件下における最適過酸化水素濃度であることを示す。1mM〜10mMの範囲における全ての濃度は、許容される除染作用を与える。
【0132】
実施例9
一定のハロペルオキシダーゼ濃度における、塩化物/臭化物/アンモニウムの比を変化させながらの胞子の死滅;
以下の試薬を調製した:
−NaOHを用いてpH7.0へと調整されたDMGバッファー(ジメチルグルタミン酸、Sigma D4379)、100mM;
−1mLあたり1×109個のバチルス・アトロファエウス胞子(バチルス・アトロファエウス胞子:SUS−1−8Log。Raven Labs,www.Ravenlabs.com);
−カーブラリア・ベルクロサ(国際公開第97/04102号を参照)から得られる、MilliQ水中、250mg/L ハロペルオキシダーゼ;
−MilliQ水中、50mM 臭化ナトリウム(NaBr);
−MilliQ水中、200mM 塩化ナトリウム(NaCl);
−MilliQ水中、500mM 塩化ナトリウム(NaCl);
−MilliQ水中、200mM 塩化アンモニウム(NH4Cl);
−MilliQ水中、20mM 硫酸アンモニウム((NH42SO4);
−MilliQ水中、100mM 硫酸アンモニウム((NH42SO4);
−MilliQ水中、25mM 過酸化水素(H22);
−MilliQ水中、1%(w/v)チオ硫酸ナトリウム(Na223);及び
−LBプレートが、1000mL水中に溶解された37gLBアガー(Merck 0283)から製造された。
【0133】
先の実施例の方法及び原理に従って、500μLの反応混合物を、上記の溶液を使用して作製した。胞子の処理を、以下のものを含有するバイアル中で行った:
種々の組み合わせにおける、
−0mM/0.5mM/1mM/5mM臭化物(Br-);
−0mM/25mM/50mM/66.7mM/100mM/150mM塩化物(Cl-);及び
−0mM/0.1mM/1mM/5mM/10mM/16.7mM/25mM/50mM/100mMアンモニウム(NH4+);並びに
−8ppmハロペルオキシダーゼ;
−2mM H22
−2x107個の胞子;
−10mM DMGバッファー;及び
−MilliQ水、さらに500μL。
【0134】
過酸化水素を添加することによって当該反応を開始した。10μL胞子懸濁液及び490μL MilliQ水を有するバイアルを対照として使用した。
【0135】
当該バイアルを、室温(約22℃)で30分間インキュベートした。500μLのチオ硫酸ナトリウムを添加し、10分間室温で反応させて、反応をクエンチした。
【0136】
その後、希釈系列をMilliQ水で作製し、そして100〜105希釈液から100μLを、LBアガープレート上へと(2組)蒔いた。当該プレートを48時間、33℃でインキュベートし、そしてプレートの個々の組における、1プレートあたりのコロニー形成単位(CFU/プレート)の平均数を記録した。
【0137】
CFU/mL値を使用して、胞子の死滅をlog単位で算出し、その結果を表16に示す。
【0138】
【表16】

【0139】
【表17】

【0140】
塩化物/臭化物/アンモニウムの比率は性能に影響した;一般的に、1/10の臭化物/アンモニウムのモル比率が最も高い死滅をもたらした。
【0141】
塩化物濃度が低いほど、より低い臭化物又はアンモニウム濃度が、十分な胞子死滅のために必要とされる。
【0142】
最も優れた胞子死滅性能は、以下を用いて得られた:
[塩化物]≦25mM;
0.1mM≦[臭化物]≦1mM;及び
5mM≦[アンモニウム]≦25mM。
【0143】
実施例10
塩化物/臭化物/アンモニウムの比を変化させながらの;及びハロペルオキシダーゼ濃度/過酸化水素濃度を変化させながらの、胞子の死滅
以下の試薬を調製した:
−NaOHを用いてpH7.0へと調整されたDMGバッファー(ジメチルグルタミン酸、Sigma D4379)、100mM;
−1mLあたり1×109個のバチルス・アトロファエウス胞子(バチルス・アトロファエウス胞子:SUS−1−8Log。Raven Labs,www.Ravenlabs.com);
−カーブラリア・ベルクロサ(国際公開第97/04102号を参照)から得られる、MilliQ水中、250mg/L ハロペルオキシダーゼ;
−MilliQ水中、50mM 臭化ナトリウム(NaBr);
−MilliQ水中、500mM 塩化ナトリウム(NaCl);
−MilliQ水中、200mM 塩化アンモニウム(NH4Cl);
−MilliQ水中、25mM 過酸化水素(H22);
−MilliQ水中、1%(w/v)チオ硫酸ナトリウム(Na223);及び
−LBプレートが、1000mL水中に溶解された37gLBアガー(Merck 0283)から製造された。
【0144】
先の実施例の方法及び原理に従って、500μLの反応混合物を、上記の溶液を使用して作製した。反応をバイアル中で行った。構成成分の最終濃度を、表17中で示す。
【0145】
【表18】

【0146】
ハロペルオキシダーゼ/過酸化水素の比率は、実施例6で最適であることが判明したものと同一であった。過酸化水素を添加することによって当該反応を開始した。10μL胞子懸濁液及び490μL MilliQ水を有するバイアルを対照として使用した。
【0147】
当該バイアルを、60℃で30分間インキュベートした。500μLのチオ硫酸ナトリウムを添加し、10分間室温で反応させて、反応をクエンチした。
【0148】
その後、希釈系列をMilliQ水で作製し、そして100〜105希釈液から100μLを、LBアガープレート上へと(2組)蒔いた。当該プレートを48時間、33℃でインキュベートし、そしてプレートの個々の組における、1プレートあたりのコロニー形成単位(CFU/プレート)の平均数を記録した。
【0149】
CFU/mL値を使用して、胞子の死滅をlog単位で算出し、その結果を表18に示す。
【0150】
【表19】

【0151】
最も優れた胞子死滅性能は、以下を用いて得られた:
[ハロペルオキシダーゼ]=32ppm;
5mM≦[塩化物]≦20mM;
0mM≦[臭化物]≦2mM;及び
2.5mM≦[アンモニウム]≦5mM。
【0152】
実施例11
真菌胞子の産生
トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)ATCC9233を、MEAプレート上で培養し、そしてアスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)ATCC9642をMEAスラント上で増殖させた。
【0153】
MEA培養培地を、脱イオン水を用いて以下の通りに製造した:30g/L麦芽抽出物、3g/Lソジャ・ペプトン(Soja peptone)(パパイン消化物(papaic digest)又は大豆粉末)、寒天15g/L、pH未調整。
【0154】
トリコフィトン・メンタグロフィテスを、MEAペトリ皿の中心に植菌し、そして30℃で10〜12日間インキュベートした。
【0155】
プレートをその後、0.02%Tween80含有M9バッファーを用いて浸し、そしてドリガルスキー(Drigalski)スパチュラを用いて、無光沢の菌糸を静かに動かすことによって、当該胞子を懸濁液とした。当該細胞懸濁液をその後、Miraclothを通じて濾過して菌糸を除去し、そしてその後胞子数を、血球計算器で数えることによって決定した。この胞子懸濁液を実験で使用した。
【0156】
活発に胞子形成しているA.ニゲルのスラントを、0.02%Tween80含有M9バッファーと共に採取し、そして滅菌性Miraclothを通じて胞子含有液体を濾過し、菌糸を除去した。
【0157】
M9の組成は、以下の通りである:MilliQ水中に、8.77g/L リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO,2H2O)、3g/Lリン酸二水素カリウム(KH2PO4)、4g/L塩化ナトリウム(NaCl)、0.2g/L硫酸マグネシウム(MgSO4,7H2O)を溶解した。
【0158】
胞子数をその後、血球計算器で数えることによって決定し、そして当該胞子懸濁液を約1×107個胞子/mLへと調整した。この胞子懸濁液を実施例において使用した。当該胞子懸濁液を、4℃にて最大4日間貯蔵した。
【0159】
実施例12
新たに調製された真菌胞子の系を用いた、真菌胞子の死滅
以下の試薬を調製した:
−アスペルギルス・ニゲルATCC9642の胞子懸濁液、1×107個胞子/mL;
−トリコフィトン・メンタグロフィテスATCC9233の胞子懸濁液、1×107個胞子/mL;
−NaOHを用いてpH7.0へと調整されたDMGバッファー(ジメチルグルタミン酸、Sigma D4379)、100mM;
−カーブラリア・ベルクロサ(国際公開第97/04102号を参照)から得られる、MilliQ水中、100mg/L ハロペルオキシダーゼ;
−MilliQ水中、50mM 臭化ナトリウム(NaBr);
−MilliQ水中、200mM 塩化ナトリウム(NaCl);
−MilliQ水中、200mM 塩化アンモニウム(NH4Cl);
−MilliQ水中、10mM 過炭酸ナトリウム(2Na2CO3・3(H22));及び
−YPDプレートが:1000mL水中に溶解された、pH未調整の、10g酵母抽出物、20gペプトン、20gデキストロース、20g寒天から製造された。
【0160】
表19に従って、バイアル中に試薬を混合した。使用される胞子は、全て新たに製造された(4℃にて少しの時間も貯蔵されなかった)。
【0161】
【表20】

【0162】
過炭酸塩以外の全ての試薬を、1.8mL NUNCクライオチューブ中に混合し;胞子を添加し、そして過炭酸塩溶液を添加することによって実験を開始した。
【0163】
(サーモブロック中)40℃で30分間、当該チューブをインキュベートした。30分のインキュベーション後、500μL滅菌水を各々のチューブへと添加し、そして10倍希釈系列を作製した。
【0164】
未希釈試料からの200μL、及び個々の希釈液からの100μLを、YPDプレート上に配置した。当該プレートを、30℃にて2〜4日間インキュベートし、そしてCFU/mLを算出した。
【0165】
50μLの胞子懸濁液を、希釈系列を含有する450μLの滅菌水へと添加し、100μL/プレートで配置し、そしてCFU/mLを算出し、増殖の対照として使用した。
【0166】
アスペルギルス胞子は疎水性であり、そして均一の懸濁液で当該胞子を得ることは困難であった。
【0167】
表20は、記録されたCFU/プレート、及び算出されたCFU/mL、並びに胞子死滅(Log単位)を示す。
【0168】
【表21】

【0169】
トリコフィトンの胞子は、完全に不活性化されたが、一方でアスペルギルスの胞子の処理は、生存胞子数において3 log単位の減少をもたらした。
【0170】
実施例13
貯蔵された真菌胞子における、真菌胞子の死滅
以下の試薬を調製した:
−アスペルギルス・ニゲルATCC9642の胞子懸濁液、1×107個胞子/mL、4℃にて2日間貯蔵;
−トリコフィトン・メンタグロフィテスATCC9233の胞子懸濁液、1×107個胞子/mL、4℃にて2日間貯蔵;
−NaOHを用いてpH7.0へと調整されたDMGバッファー(ジメチルグルタミン酸、Sigma D4379)、100mM;
−カーブラリア・ベルクロサ(国際公開第97/04102号を参照)から得られる、MilliQ水中、100mg/L ハロペルオキシダーゼ;
−MilliQ水中、50mM 臭化ナトリウム(NaBr);
−MilliQ水中、200mM 塩化ナトリウム(NaCl);
−MilliQ水中、200mM 塩化アンモニウム(NH4Cl);
−MilliQ水中、10mM 過炭酸ナトリウム(2Na2CO3・3(H22));及び
−YPDプレートが:1000mL水中に溶解された、pH未調整の、10g酵母抽出物、20gペプトン、20gデキストロース、20g寒天から製造された。
表21に従って、バイアル中に試薬を混合した。
【0171】
【表22】

【0172】
過炭酸塩以外の全ての試薬を、1.8mL NUNCクライオチューブ中に混合し;胞子を添加し、そして過炭酸塩溶液を添加することによって実験を開始した。
【0173】
(サーモブロック中)40℃で30分間、当該チューブをインキュベートした。30分のインキュベーション後、10倍希釈系列を作製した。
【0174】
個々の希釈液からの333μLを、YPDプレート上に配置した。当該プレートを、30℃にて2〜4日間インキュベートし、そしてCFU/mLを算出した。
【0175】
50μLの胞子懸濁液を、希釈系列を含有する450μLの滅菌水へと添加し、100μL/プレートで配置し、そしてCFU/mLを算出し、増殖の対照として使用した。
【0176】
表22は、記録されたCFU/プレート、及び算出されたCFU/ml、並びに胞子死滅(Log単位)を示す。
【0177】
【表23】

【0178】
トリコフィトン胞子及びアスペルギルス胞子の両方の処理は、生存胞子数において少なくとも5 log単位の減少をもたらした。
【0179】
実施例14
ポリエステル縫合糸(sature)上における、バチルス・サブチリスの死滅
以下の試薬を調製した:
−NaOHを用いてpH7.0へと調整されたDMGバッファー(ジメチルグルタミン酸、Sigma D4379)、50mM;
−NaOHを用いてpH7.0へと調整されたリン酸バッファー、100mM;
−カーブラリア・ベルクロサ(国際公開第97/04102号を参照)から得られる、50mM DMGバッファー中、200mg/L ハロペルオキシダーゼ;
−MilliQ水中、400mM 塩化ナトリウム(NaCl);
−MilliQ水中、200mM 塩化アンモニウム(NH4Cl);
−MilliQ水中、40mM 過酸化水素(H22);
10%チオ硫酸ナトリウム(Na223);
−40°dHである合成硬水;及び
−市販の非イオン性界面活性剤の、200×希釈液。
【0180】
他の材料:
−5mLの1%Tween80水溶液、及び約1mLのガラスビーズ(直径3mm)を含有するチューブ;
−LBプレートが、1000mL水中に溶解された37gLBアガー(Merck 0283)から製造された;
−Nuncクライオチューブ;
−調節可能なヒーティングブロック;及び
−106個のバチルス・サブチリス ATCC19659胞子でコーティングされたポリエステル縫合糸(Presque Isle Cultures,catalog #SP−BS)が、実験のために使用された(一つの縫合糸が、一つの処理のために使用された)。
【0181】
Nuncクライオチューブ中に、以下の成分が混合された:
50μLリン酸バッファー、
12.5μL NaCl溶液、
25μL NH4Cl溶液、
160μLハロペルオキシダーゼ溶液、
500μL合成硬水40°dH、
15.4μL 200×希釈された非イオン性界面活性剤、
37.1μL MilliQ水、及び
バチルス・サブチリス胞子でコーティングされた、一つのポリエステル縫合糸(106個の胞子)。
【0182】
陰性対照を上記の通り調製したが、ハロペルオキシダーゼ溶液をMilliQ水に置き換えた。
【0183】
当該反応をその後、200μLの過酸化水素を添加することにより開始した。当該バイアルを40℃で20分間インキュベートした。反応を停止するために、500μLのチオ硫酸ナトリウムを添加し、そして室温(約23℃)で10分間インキュベートした。各々の縫合糸をその後、1%Tween80水溶液及びガラスビーズを含有するチューブへと移し、そして当該チューブを15分間300rpmで振盪し、残余の胞子を回収した。
【0184】
その後、希釈系列をMilliQ水で作製し、そして100〜10-3希釈液から100μLを、LBアガープレート(14cmプレート)上に蒔いた。当該プレートを48時間、37℃でインキュベートし、そして個々のプレート上におけるコロニー形成単位(CFU)の平均数を記録した。そしてそれは表23において示される。回収された細菌中におけるlog減少(死滅)を算出するために、コロニー数が使用され、そしてそれを表23に示す。
【0185】
【表24】

【0186】
表23において示される結果は、本発明のハロペルオキシダーゼ溶液は、陰性対照と比較して、明確かつ著しい殺胞子効果を有することを示す。ハロペルオキシダーゼを用いた処理後において発芽可能な胞子数は、90分で6 log単位減少した。
【0187】
実施例15
ステンレス鋼担体上におけるバチルス・アトロファエウス胞子の消毒
以下の試薬を調製した:
−NaOHを用いてpH7.0へと調節されたDMGバッファー(ジメチルグルタミン酸、Sigma D4379)、50mM;
−カーブラリア・ベルクロサ(国際公開第97/04102号を参照)から得られる、50mM DMGバッファー中、200mg/L ハロペルオキシダーゼ;
−MilliQ水中、400mM塩化ナトリウム(NaCl);
−MilliQ水中、100mM硫酸アンモニウム((NH42SO4);
−MilliQ水中、10mM過酸化水素(H22);
−MilliQ水中、50mM臭化ナトリウム(NaBr);
−5%チオ硫酸ナトリウム(Na223)。
【0188】
他の材料:
−5mLの1%Tween80水溶液、及び約1mLのガラスビーズ(直径3mm)を含有するチューブ;
−LBプレートは、1000mL水中に溶解された、37gのLBアガー(Merck 0283)から製造された;
−Nuncクライオチューブ;
−調節可能なヒーティングブロック;及び
−各々106個のバチルス・アトロファエウス胞子(Raven Labs cat.#1−6100ST、ATCC9372)を含有するステンレス鋼ディスクを実験に使用した(一つのディスクを一つの処理のために使用した)。
【0189】
Nuncクライオチューブ中に、以下の成分が混合された:
478μL DMGバッファー、
7.5μL NaBr(NaBrを用いない実験においては、DMGと置き換えた)、
47μL NaCl溶液、
38μL (NH42SO4溶液
30μLハロペルオキシダーゼ溶液、及び
一つのバチルス・アトロファエウス胞子ディスク(106個の胞子)。
【0190】
死滅効率に対する臭化ナトリウムの効果を試験するために、NaBrを用いた場合、及び用いない場合の両方で実験を行った。後者の実験においては、NaBrをDMGバッファーに置き換えた。
【0191】
陰性対照を上記の通り調製したが、ハロペルオキシダーゼ溶液をDMGバッファーに置き換えた。
【0192】
当該反応をその後、150μLの過酸化水素を添加することにより開始した。当該バイアルを40℃で20分間インキュベートした。反応を停止するために、750μLのチオ硫酸ナトリウムを添加し、そして室温(約23℃)で10分間インキュベートした。各々のディスクをその後、1%Tween80水溶液及びガラスビーズを含有するチューブへと移し、そして当該チューブを15分間300rpmで振盪し、残余の胞子を回収した。
【0193】
その後、希釈系列をMilliQ水で作製し、そして100〜10-3希釈液から100μLを、LBアガープレート(14cmプレート)上に蒔いた。当該プレートを48時間、37℃でインキュベートし、そして個々のプレート上におけるコロニー形成単位(CFU)の平均数を記録した。
【0194】
回収された細菌数中におけるlog減少(死滅)を算出するために、コロニー数が使用され、そしてそれを表24に示す。
【0195】
【表25】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物の胞子を死滅させ、又は不活性化するための酵素的方法であって、前記胞子を、ハロペルオキシダーゼ、過酸化水素、塩化物イオン又は臭化物イオン、及びアンモニウムイオンと接触させることを含む、前記方法。
【請求項2】
前記ハロペルオキシダーゼが、酵素分類EC1.11.1.10由来のクロロペルオキシダーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハロペルオキシダーゼが、バナジウム含有ハロペルオキシダーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ハロペルオキシダーゼのアミノ酸配列が、カーブラリア・ベルクロサ(Curvularia verruculosa)、又はカーブラリア・イナエキュアリス(Curvularia inaequalis)から得られるハロペルオキシダーゼのアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性、好ましくは95%の同一性を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記塩化物イオン又は臭化物イオンが、塩化物塩又は臭化物塩から得られる;好ましくは前記塩化物塩又は臭化物塩が、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、塩化アンモニウム、又は臭化アンモニウム;或いはそれらの混合物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アンモニウムイオンが、アンモニウム塩から得られる;好ましくは前記アンモニウム塩が、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、又はヨウ化アンモニウム;或いはそれらの混合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
塩化物イオン濃度が、アンモニウムイオン濃度よりも少なくとも2倍高い;好ましくは少なくとも4倍高い、より好ましくは少なくとも6倍高い、最も好ましくは少なくとも8倍高い、そして特に少なくとも10倍高い、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記胞子を界面活性剤と接触させることをさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記微生物の胞子が、真菌又は細菌の胞子である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
過酸化水素が過炭酸塩から得られる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記胞子が、表面上、例えば布地の表面上、又は実験機器若しくはプロセス機器の表面上、又は医療機器の表面上に存在する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記胞子が、塩化物イオン又は臭化物イオンと接触する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ハロペルオキシダーゼ、過酸化水素、塩化物イオン又は臭化物イオン、アンモニウムイオン、及び医療機器を含む組成物。
【請求項14】
機器を消毒、又は滅菌するための方法であって、前記機器をハロペルオキシダーゼ、過酸化水素、塩化物イオン又は臭化物イオン、及びアンモニウムイオンと接触させることを含む、前記方法。
【請求項15】
前記ハロペルオキシダーゼが、酵素分類EC.1.11.1.10由来のクロロペルオキシダーゼである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ハロペルオキシダーゼがバナジウム含有ハロペルオキシダーゼである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ハロペルオキシダーゼのアミノ酸配列が、カーブラリア・ベルクロサ、又はカーブラリア・イナエキュアリスから得られるハロペルオキシダーゼのアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性、好ましくは95%の同一性を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記塩化物イオン又は臭化物イオンが、塩化物塩又は臭化物塩から得られる;好ましくは前記塩化物塩又は臭化物塩が、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、塩化アンモニウム、又は臭化アンモニウム;或いはそれらの混合物である、請求項14〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記アンモニウムイオンが、アンモニウム塩から得られる;好ましくは前記アンモニウム塩が、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、又はヨウ化アンモニウム;或いはそれらの混合物である、請求項14〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
塩化物イオン濃度が、アンモニウムイオン濃度よりも少なくとも2倍高い;好ましくは少なくとも4倍高い、より好ましくは少なくとも6倍高い、最も好ましくは少なくとも8倍高い、そして特に少なくとも10倍高い、請求項14〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記機器を界面活性剤と接触させることをさらに含む、請求項14〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
過酸化水素が過炭酸塩から得られる、請求項14〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記機器が医療機器である、請求項14〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記機器又は医療機器が、塩化物イオン及び臭化物イオンと接触する、請求項14〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
胞子を死滅させ、又は不活性化するための、ハロペルオキシダーゼ、過酸化水素、塩化物塩及び/又は臭化物塩、並びにアンモニウム塩の使用。
【請求項26】
医療機器を消毒するための、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記医療機器が滅菌される、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記ハロペルオキシダーゼが、バナジウム含有クロロペルオキシダーゼである、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
洗浄消毒装置(Washer−Disinfector)における、請求項25〜28のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2011−500761(P2011−500761A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530460(P2010−530460)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064383
【国際公開番号】WO2009/053438
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】