説明

胞子特異的抗体

本発明は、胞子特異的抗体に関する。該抗体に関連する組成物及び方法は、該抗体を産生するハイブリドーマと共に提供される。当該抗体は、炭疽菌細胞の栄養形態と比較して、炭疽菌の胞子に特異的である。該抗体はまた、他のバチルス胞子及び細胞と比較して、前記胞子に特異的である。抗体は、本明細書で提供される方法の使用によって炭疽菌胞子の存在を検出するために使用することができる。本発明はまた、本発明の検出方法に使用することができるこれらの抗体を含む製造品並びにキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2004年5月12日に出願された米国仮出願第60/570,798号に対する優先権の利益を請求し、十分に記載されるようにこれによって全体として参照により援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、胞子特異的抗体に関する。本発明は、該抗体に関する組成物及び方法、並びにそれらを産生するハイブリドーマを提供する。本発明の抗体は、炭疽菌の細胞の栄養(vegetative)形態と比較して炭疽菌の胞子に特異的である。抗体はまた、他のバチルス胞子及び細胞と比較して炭疽菌の胞子に特異的である。抗体は、本明細書に提供した方法の使用によって炭疽菌胞子の存在を検出するために使用することができる。本発明はまた、製造品及び本発明の検出方法に使用することができるこれらの抗体を含むキットに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
炭疽菌(Bacillus anthracis)は、炭疽病の病原体であり、胞子を形成し、グラム陽性であり、非溶血性の竿形状の細菌である。炭疽病は、主に草食動物の人畜伝染病であるが;しかしながら、ヒトは、感染した草食動物との接触から直接的に、又はそれらの生産物、例えば体毛、ウール、及び皮から間接的にこの病気を自然と獲得する可能性がある。胞子は、通常の感染形態である。炭疽病は、感染経路に依存して、3つの異なった症候群:皮膚、胃腸、及び吸入による疾患のように臨床的に存在する。皮膚の炭疽病は、ヒトにおいて最も一般的に自然と発生する形態である。しかしながら、吸入による炭疽病は、自然と獲得した感染においてごく稀に見られるものであるが、エアロゾル化した胞子の放出を伴う状態に主に関係するであろう。このようなことは、1979年のかつてのソヴィエト連邦のスヴェルドロフスクからのエアロゾル化した胞子の偶発的な放出(Meselsonら、1994年)、及び2001年10月の米国での炭疽病の手紙による発病におけるエアロゾル化した胞子の意図的な放出(Jerniganら、2001年)によって示される。吸入による炭疽病で見られる高いレベルの致死率は、曝露の24−48時間以内に適切な抗体の投与によって軽減することができる。しかしながら、曝露の24−48時間を越えてからの抗体を投与する遅延は、一般的に、致死量の胞子を受けている個体においては死に至る。
【0004】
炭疽菌の胞子殻(coat)及び外膜(exosporium)は、以前の研究の焦点であった。炭疽菌の栄養細胞が必須栄養素を奪われている(「飢餓している」)場合、内生胞子(endospore)(「胞子」)の合成を開始するきっかけとなる。下記に並べた事象は、栄養細胞が飢餓している場合に起こる:1)飢餓している栄養細胞の非相称の分離が起こり、母細胞及び前胞子(forespore)の形成を招く;2)母細胞は前胞子を飲み込み、つまり2つの向かい合う細胞膜で前胞子を取り囲む;3)修飾された厚い層のペプチドグリカン(「皮層(cortex)」)が2つの膜の間で合成される;そして、4)母細胞で合成されたタンパク質は皮層を覆う多層の胞子殻を形成する。
【0005】
胞子殻は、枯草菌のようないくつかのバチルス種の胞子のための最も外側の層を形成する。しかしながら、他の種、例えば炭疽菌においては、胞子は、外膜と呼ばれる追加の層であって、タンパク質、脂質、及び炭水化物を含有する無定形の風船のような層によって囲まれる。Charltonら(「バチルス・セレウス(Bacillus cereus)の外膜の特徴付け」J.App.Microbiol.87:241−245,1999)は、バチルス・セレウスの外膜に関する研究を記述する。密接に関連した種のバチルス・スリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)の胞子もまた外膜を有する。多くの研究者らは、炭疽菌の胞子殻及び外膜を以前に同定している。Laiら(「枯草菌及び炭疽菌の胞子殻のプロテオーム解析」J.Bact.,185(4):1443−1454,2003)は、SDS−PAGE分離及び2−D電気泳動分離、続くマトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間(MALDI−TOF)の組み合わせを利用するプロテオーム解析を用いて、枯草菌の38種の胞子タンパク質(そのうち12種は胞子殻タンパク質として知られる)、及び炭疽菌の11種の胞子タンパク質(彼らはそのうち6種を殻又は外膜タンパク質の候補として同定した)を同定した。枯草菌及び炭疽菌の胞子タンパク質を比較する研究から、Laiらは、「枯草菌及び炭疽菌の殻は、およそ類似した数のタンパク質を有し、殻タンパク質種の核となるグループはこれらの生物の間で共有され、主要な形態形成タンパク質を含む。それにもかかわらず、かなりの数のタンパク質が各々の種におそらくは独特である。」(下線を付した;Laiら、要旨を参照されたい)と結論付けた。
【0006】
Steichenら(「炭疽菌の外膜の免疫優勢(immunodominant)タンパク質及び他のタンパク質の同定」,J.Bact.,185(6):1903−1910,2003)は、精製した炭疽菌の外膜中に5つの主要なタンパク質を同定し、コラーゲン様の糖タンパク質BclAを含み、彼らは、外膜の毛様のけば(nap)の構造成分として記載した。これらの研究者らは、胞子又は精製した外膜のいずれかに対して生じた20種のモノクローナル抗体のうちの12種がBclAと反応したため、BclAが炭疽菌の胞子表面における免疫優勢抗原であると結論付けた。Steichenらによって同定された他の4種のタンパク質は、アラニン・ラセマーゼ、スーパーオキシド・ジスムターゼ、及び任意の他のタンパク質にほとんど類似性を有しない、彼らがBxpA及びBxpBと称する2種のタンパク質である。
【0007】
加えて、Toddら(「外膜のタンパク質をコードするバチルス・セレウス及び炭疽菌の遺伝子」,J.Bact.,185(11):3373−3378,2003)は、バチルス・セレウスの外膜タンパク質を評価した。バチルス・セレウスは、バチルス・セレウスファミリーの一員であり、バチルス・スリンギエンシス及び炭疽菌を含み、すべては外膜を有し、そしてすべては密接に関連するものである。他の関連したバチルス種は、枯草菌、バチルス・グロビギイ(globigii)、バチルス・プミリス(pumilis)、バチルス・ミコイデス(mycoides)、及びバチルス・メガテリウム(megaterium)を含む。Toddらは、バチルス・セレウスの10種の外膜を同定した。彼らは、バチルス・セレウスのタンパク質配列と炭疽菌のゲノム配列から予期されたタンパク質配列との比較解析に基づいて、「利用可能な未完のゲノム配列から、炭疽菌では発現することができないExsBの局所領域及び完全なExsCタンパク質の2つの例外はあるが、大部分の新規Exsタンパク質がバチルス・セレウスと炭疽菌との間で密接に保存されている。」(3378頁、第1段落全体を参照されたい)と結論付けた。さらに、彼らは、それらの「同定された遺伝子は、いかなる手段によっても、外膜のタンパク質成分の網羅的なリストを示さず;不溶性の分画に残った3分の1のタンパク質であり、17個のバンドのうち7個は、明確なN末端配列のデータが与えられていない」(3378頁、第4段落全体を参照されたい)ことに言及している。
【0008】
炭疽菌の胞子殻及び外膜に関連する文献において、開発された唯一のモノクローナル抗体は、免疫優勢な炭疽菌のコラーゲン様タンパク質、BclA(Sylvestreら、「コラーゲン様表面糖タンパク質は炭疽菌外膜の構造成分である」Molec.Microbiol.45(1):169−178、2002;及び、Steichenらを参照されたい)に対するものであった。本明細書に記載されるような本発明の胞子特異的モノクローナル抗体は、このタンパク質とは反応しない。Longchampら(「炭疽菌胞子抗体の分子認識特異性」J.App.Microbilol.87:246−249,1999)は、関連したバチルス種と交差反応する幅広い胞子表面エピトープを認識するポリクローナル血清の特徴付けを記述する。さらに彼らは、胞子表面エピトープとは反応しなかった2種のモノクローナル抗体を記述する。Leeら(WO01/49823)は、炭疽菌の表面整列タンパク質に対する抗体を記載するが、下記に記載するように本発明の23a−14G9モノクローナル抗体は該タンパク質に反応しない。
【0009】
本明細書における文献の引用は、いずれもが適切な先行技術文献であるという承認として意図するものではない。データに関する陳述又は文献の内容に関する描写の全ては、出願人に利用可能な情報に基づくものであり、データの正当性や文献の内容に関していかなる承認をも構成しない。
【発明の開示】
【0010】
発明の簡単な概要
本発明は、炭疽菌生物並びに関連したバチルス種の栄養形態又は活性に増殖している形態に比べて、炭疽菌の胞子に特異的であるモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体に関する。抗体は、正確かつ特異的なやり方で炭疽菌の胞子を迅速に検出し同定する方法、手段、アッセイ又は試験に好都合に使用することができる。
【0011】
第一の側面において、本発明は、炭疽菌の胞子特異的抗原に結合する23a−14G9として同定されたネズミのモノクローナル抗体を提供する。抗体は、細胞の栄養形態に比べて炭疽菌の胞子に特異的である。その抗体はまた、他のバチルス胞子及び細胞に比べて胞子に特異的である。
【0012】
本発明はまた、モノクローナル抗体の代替の形態を提供し、限定されないが、抗体の結合断片、並びに、炭疽菌の胞子に結合する抗体のハイブリッド、キメラ、改変、組換え、又はヒト化形態を含む。抗体断片の非限定的な例は、二価のF(ab’)2断片、例えばペプシンによる消化によって生じたもの、及び一価のFab断片、例えばパパインによる消化によって生じたものを含む。
【0013】
第二の側面において、本発明は、23a−14G9と同じ胞子特異的抗原に結合する追加のモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を提供する。これらの追加の抗体は、胞子特異的抗原の同定に関する知識を必要とせずに、当該分野において既知の日常的な方法によって生産することができる。1つの手段は、追加の抗体を生産する免疫原として胞子特異的抗原及び23a−14G9を含む複合体の使用によるものである。これらの初期の抗体は、モノクローナルとして各々の抗体を発現するハイブリドーマ細胞を発生させるために使用することができる。次に、ハイブリドーマは、23a−14G9抗体ではなく、胞子特異的抗原に結合し認識するモノクローナル抗体を発現するものを同定するためにスクリーニングされ、又はそうでなければ選択されることができる。同定した抗体は、胞子特異的抗原に特異的であり、本明細書に記載したように23a−14G9と同じやり方で使用し、又は応用することができる本発明の抗体である。同定された抗体はまた、胞子特異的抗原と追加的な複合体を形成するように個別的に使用することができ、次に、複合体に使用される抗体よりむしろ抗原特異的である抗体について再度スクリーニング又は選択される追加の抗体が生産される。
【0014】
別の側面において、本発明はまた、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体、並びにその代替の形態を含む組成物を提供する。組成物は、1又はそれ以上の抗体及びその代替の形態を含む製造品、並びにキットを含む。さらに、組成物は、炭疽菌又は他のバチルス種を検出するための1又はそれ以上の試薬を含む。製造品の非限定的な例には、炭疽菌を検出するためのプレート、ディッシュ、及びウェルのような試験器具が含まれる。本発明のキットには、炭疽菌の検出に使用される他の試薬を含むキットが含まれる。非限定的な例には、本明細書で記載される検出方法を用いた使用に適したものが含まれる。
【0015】
さらに別の側面において、本発明は、本明細書に開示されるような抗体及びその代替の形態の使用によって炭疽菌胞子の存在を検出するための方法を提供する。本発明の方法は、形式又は構成に限定されない。該方法は、炭疽菌を検出するために定性的又は定量的に実行することができる。1つの典型的な態様として、本発明は、患者の皮膚又は衣服を含む、患者から得られた材料の医学的試料のような試料中の炭疽菌胞子の有無を検出する方法を提供する。その代わりに、試料は、土壌若しくは空気試料のような環境試料、又は疑いのある粉末のような胞子を含有すると疑われる材料の試料であってもよい。該方法は、結合複合体を形成する本発明の抗体、又はその代替の形態による試料の成分への結合を検出することを含む。その結合は、抗体、又はその代替の形態と、該抗体が結合した炭疽菌抗原である成分との接触から生ずる。
【0016】
さらに、本発明は、23a−14G9抗体を産生するハイブリドーマ細胞を提供する。その細胞は、2004年5月19日にATCCに寄託され、ATCC受託番号PTA−6004によって同定された。ハイブリドーマは、インビトロで培養され、場合によっては精製又は単離工程の後に、本明細書に開示したような使用のための抗体を産生する。その代わりに、ハイブリドーマを動物に導入し、体液を含有する抗体を得ることができる腹水を形成することができる。得られる抗体は、場合によっては精製又は単離工程の後に、本明細書に開示したように使用することができる。
【0017】
本発明を実施するための態様の詳細な説明
本発明は、炭疽菌胞子の特異的抗原に結合し及び認識する抗体に関する。本発明の抗体は、炭疽菌胞子に存在する他の炭疽菌の抗原を除外して、胞子特異的抗原を認識するポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方を含む。該抗体はまた、その抗原に結合する他の抗体を除外して、該抗原を認識することができる。胞子特異的抗原に結合した抗体を含む複合体はまた、本発明によって提供される。その複合体は、本明細書で記載されるように単離され、又は固定化されるものであってもよい。
【0018】
本発明はまた、炭疽菌細胞の栄養形態と比較して炭疽菌の胞子に特異的である23a−14G9として同定されたネズミのモノクローナル抗体を提供する。つまり、該抗体は、その炭疽菌抗原に結合する形態と同様に、栄養細胞とは区別して炭疽菌胞子を検出するために使用することができる。該抗体はまた、バチルス・スリンギエンシス、バチルス・セレウス、バチルス・プミリス、枯草菌、及びバチルス・メガテリウムの胞子と比較して、炭疽菌の胞子に特異的である。つまり、本発明はまた、他のバチルスの胞子とは区別して炭疽菌胞子を検出するための抗体、並びに、その代替の形態の使用を提供する。
【0019】
23a−14G9抗体はまた、世界(米国、カナダ、中国、ドイツ、南アフリカ、英国、ブラジル、トルコ、オーストラリア、及びナミビア)の地理的に異なった領域由来の12種の有毒な炭疽菌の分離菌の胞子に対して試験した。分離菌は、ヒト及び動物の両方から供給され、下記の表1に列挙される。試験した全ての有毒な胞子調製物は、検出抗体としての23a−14G9、及び捕捉抗体としてのウサギのポリクローナル抗炭疽菌IgGと非常に陽性である。
【0020】
【表1】

【0021】
本発明のモノクローナル抗体は、炭疽菌胞子「に特異的である」又は「特異的に免疫反応する」というように言及することができる。これらの用語は、炭疽菌胞子、又はこれらの胞子に見出された同起源の抗原に結合反応で反応する抗体の能力を意味する。その反応は、他のタンパク質、胞子、又は細胞の存在下で、炭疽菌胞子の存在又は量を決定することができる。本明細書に開示した非限定的な条件を含む、当業者によって所望されるようなアッセイ条件下で、該抗体は、好ましくは炭疽菌胞子、又はその中に見られる同起源の抗原に結合し、試料中の他の因子には有意又は検出可能なやり方では結合しない。本発明の好ましい態様は、抗体、又はその代替の形態が選択的に結合し、バックグラウンドシグナル又はノイズの少なくとも2倍、好ましくは少なくとも10倍〜100倍であるシグナルを生ずる条件を利用する。バックグラウンドシグナル又はノイズは、バチルス・スリンギエンシスの亜種であるクルスタキ(Kurstaki)の胞子のような他の胞子との低レベルの交差反応性を含むことができる。
【0022】
追加の態様では、本発明は、23a−14G9抗体によって結合した炭疽菌の胞子特異的抗原を認識し又は結合する抗体を提供する。いくつかの抗体については、結合は抗原に特異的であってもよい。他の抗体については、結合は、23a−14G9抗体に結合した胞子特異的抗原の複合体に存在するエピトープに対するものであってもよい。その代わりに、抗体は、23a−14G9抗体に結合するだけでもよいが、しかし、当然に、抗体は、胞子特異的抗原へのそれらの結合に基づいて使用されるものではなく、むしろ23a−14G9抗体に結合し、つまり検出するそれらの能力に基づいて使用されるべきであろう。つまり、このような23a−14G9に結合する抗体は、同期限の炭疽菌の胞子特異的抗原との複合体のように、23a−14G9の存在を検出するために23a−14G9に結合する二次抗体として使用することができる。
【0023】
本発明の胞子特異的抗原に結合する抗体、及びIgGクラスである23a−14G9モノクローナル抗体の代替の形態は、当該技術分野において既知の方法によって容易に生産することができる。抗体の抗原結合断片を生産する能力は周知であり、本明細書に開示した使用のための二価のF(ab’)2断片及び一価のFab断片を製造するために利用することができる。本明細書で使用されるように、「Fab」は、少なくとも機能的に完全な軽鎖及び重鎖の可変領域を含む抗体の二本鎖結合断片を意味する。その代わりに、抗体のハイブリッド、キメラ、改変、組換え(一本鎖を含有する)、又はヒト化形態を製造する方法はまた、当該技術分野において既知である。これらの抗体の形態は、本明細書で開示されるモノクローナル抗体の考慮された誘導体であり得る。
【0024】
追加の誘導的形態は、他の化学的部分に結合した本発明の抗体、及びその代替の形態を含む。非限定的な例には、標識した抗体、又はその代替の形態が含まれる。用語「標識」、「検出可能に標識された」又は「検出可能なマーカーで標識した」は、標識した分子の存在を示す検出可能なシグナルを生ずることが可能な抗体組成物を意味する。適した標識は、放射性同位元素、色素、コロイド状の金又は同様に検出可能なマーカー、ヌクレオチド発色団、酵素、基質、蛍光性分子、化学発光性分子、磁性粒子、生物発光性分子等を含み、ビオチンのような間接的検出に適した標識を含む。例えば、標識は、分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的又は化学的手法によって検出可能な任意の組成物である。標識は、化学的リンカーを使用して結合することができる。典型的な標識は、視覚的検査によって検出することができる可視的シグナルを生ずるものである。
【0025】
本発明の抗体、及びその代替の形態はまた、既知の方法及び手法によって、限定されないが、ガラス、プラスチック、合成メンブレンのような固相支持体に結合することができる。他の非限定的な例には、ビーズ、粒子、計量棒、ファイバー、フィルター、ペトリ皿、ELISA(酵素連結免疫吸着アッセイ)プレート、マイクロタイタープレート、ガラススライドのようなシラン又はケイ酸塩支持体、及びディッシュ、ウェル、又は容器、並びにその側面が含まれる。このような抗体を固定した形態は、本明細書に開示される検出方法に使用することができる。それはまた、炭疽菌のタンパク質又は胞子のイムノアフィニティー・クロマトグラフィーに使用することができる。
【0026】
本発明の抗体及びその代替の形態はまた、組成物に製剤化することができる。さらに、組成物は、炭疽菌又は他のバチルス種の検出のための1又はそれ以上の他の試薬を含むことができる。非限定的な例には、その同起源の炭疽菌の胞子特異的抗原に結合した抗体の複合体、及び該抗体と抗体に基づく検出方法に使用するための他の試薬との複合体が含まれる。他の例には、他の炭疽菌に結合する抗体又は検出抗原との混合物が含まれる。抗体、及びその代替の形態と他の検出試薬との組み合わせはまた、炭疽菌を検出するための試験装置のような製造品の部分であってもよい。
【0027】
炭疽菌胞子の存在を検出するために使用される方法は、構成によって限定されない。非限定的な例には、本明細書に記載される本発明の抗体、及びその代替の形態を利用する方法、及びウェスタン・ブロッティング又は他のイムノブロッティンブ、ELISA、側方流動装置、サンドイッチアッセイ、顕微鏡による視覚観察、競合的及び非競合的イムノアッセイ、免疫酵素アッセイ、免疫蛍光法、免疫磁性選別、及びフローサイトメトリー(多染色性フローサイトメトリーによる検出を含む)の原理に基づく方法が含まれる。追加のイムノアッセイ形式は、Harlow及びLane(1998)Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New Yorkに記載される。本発明の方法は、試料又は「試験試料」中の炭疽菌胞子の有無を定性的又は定量的に検出するために使用される。
【0028】
本明細書で使用されるように、「試料」又は「試験試料」は、炭疽菌胞子に感染した又は感染したものと疑われる個体から単離した試料、並びに炭疽菌胞子を含有するものと疑われる環境試料を意味する。その代わりに、該用語は、本発明の検出方法における対照としての使用、又は炭疽菌胞子の存在を確認し若しくはその量を定量するための開示した検出方法における使用のための炭疽菌胞子を含有することが知られている試料を意味する。試料はいずれかの適した手段によって回収することができ、動物若しくはヒト患者の場合においては、外側の皮膚若しくは毛髪、並びに衣類をサンプリングすること、及び炭疽菌胞子を含有すると疑われる部位からの試料のような環境試料の場合には、空気、ペーパー、土壌、若しくは他の固形物をサンプリングすることを含む。医学的試料もまた、限定されないが、鼻腔及び口腔を含む患者の体表面からのサンプリング又は採取を含む。他の試料形態は、水又は食物の試料を含む。試料はまた、炭疽菌胞子を含有すると疑われる粉末又は粒状の物質であってもよい。本発明の試料はまた、炭疽菌胞子の抽出物、又は胞子を含有する物質若しくは炭疽菌胞子を含有すると疑われる物質からの抽出物であってもよい。本発明のいくつかの態様において、試料は、アッセイする前に試料希釈剤で希釈してもよい。希釈剤は、当業者によって所望される適した任意の溶媒であることができる。
【0029】
空気又は気体試料の場合において、低気圧回収装置は、非限定的な例として試料を回収するために使用することができる。このような装置は、たくさんの空気又は気体を回収し、そして、その中に含有される粒子を湿った表面又は液体媒体に沈積させる。
【0030】
一態様において、本発明は、炭疽菌胞子に結合し、それと複合体を形成する捕捉試薬の使用に基づく検出方法を提供する。捕捉試薬は、本明細書に記載されるように、モノクローナル抗体、又はその代替の形態であってもよい。その代わりに、その試薬は、炭疽菌胞子に結合する別の抗体であってもよいが、限定されないが、複数のバチルス胞子及び細胞に結合するポリクローナル抗体又は組換え抗体を含む。別の態様において、捕捉試薬は、炭疽菌に加えて、少なくともバチルス・スリンギエンシス、バチルス・セレウス、枯草菌、及びバチルス・メガテリウムの胞子に結合する。その捕捉試薬は、本発明の抗体について本明細書で記載されるように、場合によっては炭疽菌胞子と接触させる前に、固相支持体に固定してもよい。その試薬は、本発明の23a−14G9抗体によって結合するのと同じエピトープに結合する必要はない。当然、抗体単独というよりはむしろ、胞子(又は胞子特異的抗原)と胞子特異的抗体との複合体に結合する捕捉試薬はまた、本発明の実施に使用することができる。
【0031】
捕捉試薬の使用の有無にかかわらず、本発明はまた、炭疽菌の有無を直接的に又は間接的に示す炭疽菌胞子に結合する検出試薬を提供する。検出試薬は、好ましくは、23a−14G9によって結合した胞子特異的抗原に結合する本発明の抗体、又はその代替の形態である。結合に基づいて、検出試薬は、その結合パートナーとの結合複合体を形成する。検出試薬は、同起源の結合パートナー、つまり炭疽菌胞子の存在又は量が、検出試薬の結合後に標識によってシグナル化されるように、検出可能に標識することができる。その代わりに、検出試薬はそれ自身、直接的に標識した二次試薬によって結合される。検出試薬が23a−14G9である場合の非限定的な例として、検出可能に標識した抗ネズミIgG抗体は、23a−14G9、つまり炭疽菌胞子を検出するために使用することができる。
【0032】
捕捉試薬と組み合わせて使用した場合、試薬、炭疽菌胞子又は胞子抽出成分、及び検出試薬を含むサンドイッチ複合体が形成される。このサンドイッチ複合体は、捕捉試薬及び炭疽菌胞子又は胞子抽出成分を含む複合体の形成によって先行されてもよく、複合体はサンドイッチ複合体を形成するための検出試薬に曝露される。その代わりに、サンドイッチ複合体は、検出試薬及び炭疽菌胞子又は胞子抽出成分を含む複合体の掲載によって先行されてもよく、複合体は、その後に、サンドイッチ複合体を形成する捕捉試薬に曝露される。サンドイッチ複合体、並びに他の形態の特異性は、捕捉試薬、検出試薬、又はその両方のいずれかによって誘導することができる。つまり、本発明の態様は、下記の組み合わせ:
【0033】
【表2】

【0034】
の使用を含む。
【0035】
本発明の方法は、サンドイッチ形式を伴って又は伴わないで、少なくとも約0.02μg/ml以上の濃度で、炭疽菌胞子の存在、又は23a−14G9抗体の同起源の結合パートナーを好都合に検出する。他の態様において、その方法は、0.08以上、0.30以上、0.5以上、1以上、又は1.25μg/ml以上の濃度を検出する。その代わりに、本発明の方法は、少なくとも1010、少なくとも109、少なくとも108、少なくとも107、少なくとも106、又は少なくとも105cfu/mlの濃度で、このような濃度で胞子を含有する試料のアリコート、又はその希釈物の解析によって、炭疽菌胞子の存在を検出ために使用することができる。アリコートの体積の非限定的な例には、500μl、450μl、400μl、350μl、300μl、250μl、200μl、又は150μlの試料サイズが含まれる。
【0036】
本発明の検出方法はまた、態様のような競合的結合アッセイを含んでもよい。これらは、本明細書に記載されるような、及び当該技術分野において既知の競合アッセイ法に類似した検出試薬及び/又は捕捉試薬に結合することで競合する炭疽菌胞子又は胞子抽出成分の標識形態の使用を含む。本発明によって提供される方法はまた、全体又は部分的に自動化していてもよい。
【0037】
本発明の方法に使用するための材料は、周知の手法に従って製造されるキットの調製に理論的には適している。つまり、本発明は、本明細書に記載されるような試料中の炭疽菌胞子又はその抽出物若しくは崩壊した形態の検出及び/又は定量のための試薬を含むキットを提供する。場合により、識別記載若しくはラベルを付した薬剤及び/又は試薬、又は本発明の方法におけるキットの使用若しくはキットの安定性に関する取扱説明書を含むこのようなキットが提供される。このようなキットは容器を含み、各々は、該方法に利用される1又はそれ以上の種々の薬剤及び/又は試薬(場合によっては濃縮形態)を有し、例えば、検出試薬及び/又は捕捉試薬を予め固定した形態を含む。一連の取扱説明書又は試薬の確認書はまた、典型的には含まれるであろう。他の典型的なキットは、本発明の実施のための装置又は固相支持体、例えば、限定されないが、側方流動装置、試験ストリップ、ビーズ、メンブレン、又は容器、ディッシュ若しくはウェルの被服した表面を含有する。
【0038】
キットはまた、場合により、対照試料、例えば、免疫反応的な炭疽菌胞子の既知の試料、又は検出試薬及び/若しくは捕捉試薬によって結合した同起源の抗原を含む。対照は、試料を希釈するために使用して、外部対照として使用され、又は実際の試料に添加して、内部対照として使用される試料希釈物を用いた希釈、場合によっては、試験されるべき試料型の関連でアッセイの感度を決定するための使用に関して、既知量で存在することができる。キットは、1回のアッセイ、又は複数回のアッセイのための材料を含むことができる。
【0039】
さらに、本発明は、23a−14G9抗体を産生するハイブリドーマ細胞を提供する。この細胞は、2004年5月19日にATCCに寄託され、ATCC受託番号PTA−6004によって同定された。ハイブリドーマをインビトロで培養して、任意の単離工程の後、本明細書で開示した使用のための抗体を産生することができる。その代わりに、ハイブリドーマは、動物に導入され、抗体を含有する体液が得られる腹水を形成することができる。得られる抗体は、任意の単離工程の後に、本明細書で開示したように使用することができる。「単離」は、抗体がモル濃度を基準にして、組成物中の他の溶媒でない構成要素よりも多量に存在するような抗体を主に含有する組成物の調製を意味する。好ましくは、「単離された抗体」は、溶媒でない構成要素と比較して、モル濃度を基準として、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、又は少なくとも90パーセントを含有する。単離は、汚染している分子の構成要素の除去によって均一に近づける、又は本質的に近づけるために、抗体の精製によって行うことができる。
【0040】
追加のモノクローナル抗体は、23a−14G9を製造するために使用されるやり方で製造することができる。簡単には、マウスを炭疽菌胞子に曝露し、免疫応答及び抗体の産生を生じさせた。抗体を発現する細胞を単離し、選択可能な不死化した細胞と融合し、炭疽菌胞子に特異的な抗体を発現する細胞についてスクリーニングした。陽性細胞群は、制限的な希釈によってクローニングし、さらに、23a−14G9を産生するハイブリドーマ細胞株を得るために選択した。
【0041】
追加の抗体は、23a−14G9抗体によって認識される炭疽菌の胞子特異的な抗原に結合する抗体の複合体の使用によって生産することができる。非限定的な例として、及び図3のパートAを参照して、その同起源の胞子特異的抗原に結合した23a−14G9抗体の複合体は、例えば当該分野に既知の適したアジュバントと組み合わせて、動物を免疫するために使用し、その複合体に対する抗体を産生する。動物は、抗体の産生のために当該分野において既知のいずれであってもよく、マウス、ラット、ウサギ、及びヤギを含む。いくつかの態様において、23a−14G9を含有する複合体を用いたBALB/Cマウスの使用は、23a−14G9にのみ結合する抗体の産生を減らし、又は除去するという利点を提供する。これは、それがBALB/Cマウスに産生されたためである。つまり、23a−14G9は、BALB/Cマウスにおいて「自己」として認識されたのであろう。これは、23a−14G9抗体よりむしろ胞子特異的抗原に対する抗体の産生を増加するという利点を提供する。
【0042】
得られる抗体は、複合体に結合するポリクローナル抗体として使用することができる。つまり、いくつかの態様において、ポリクローナル抗体は、複合体に対して「捕捉抗体」として使用することができる。このようなポリクローナル抗体は、少なくとも1)23a−14G9抗体のエピトープに結合する抗体、2)複合体に曝露された胞子特異的抗原のエピトープに結合する抗体、及び、3)23a−14G9抗体又はその抗原のいずれにも見られない複合体のエピトープに結合する抗体を含む不均一な集団である。その不均一な集団は、不均一性に基づいて分画することができる。非限定的な例として、抗体は、23a−14G9抗体そのものでない抗原又は複合体のエピトープに結合するポリクローナル抗体を生産するために23a−14G9抗体に対してアフィニティー精製することができる。
【0043】
不均一な集団を生産する細胞はまた、上述した3つの分画の1つに結合する抗体を選択するためにスクリーニングすることができる。非限定的な例として、その細胞を使用して、当該分野に既知の方法によってハイブリドーマを形成し、次に、胞子特異的抗原に結合し又は複合体に結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択するために、23a−14G9抗体に対してスクリーニングされる。同様に、不均一な集団を生産するために使用される23a−14G9抗体又は複合体のいずれかよりもむしろ炭疽菌胞子に結合する抗体を発現するハイブリドーマを同定するためにハイブリドーマをスクリーニングすることができる。これは、23a−14G9によって結合した胞子特異的抗原に特異的である抗体を発現するハイブリドーマを得るために使用することができる。当然に、このような抗体は、本明細書に記載したような23a−14G9と同様のやり方で使用することができ、追加の抗原結合抗体を生じるための使用を含む。図4、パートBを参照されたい。
【0044】
追加として、抗体及び/又はハイブリドーマは、任意のバチルス菌若しくは胞子又は交差反応性が検出される他の分子に対してスクリーニングすることができる。これは、炭疽菌に特異的であるか、又は交差反応する胞子又は他の分子に対する抗体と比較してより特異的であろう抗体の選択を可能にする。本発明のいくつかの態様において、抗体又はハイブリドーマは、23a−14G9抗体と低レベルの交差反応性を有するATCC33679のようなバチルス・スリンギエンシスの亜種であるクルスタキの胞子と比べて選択される。ATCC35866と対比した選択はまた実行することができる。
【0045】
複合体に結合する抗体はまた、23a−14G9及び炭疽菌胞子への結合を除外して、複合体の結合に基づいて選択することができる。このような抗体は、例えば、複合体を固定するために捕捉試薬として用いた場合、複合体に結合し又は検出するために好都合に使用することができる。
【0046】
現時点で、本発明を一般的に記載しているが、同様のことが、特別の場合を除いて、説明の目的で、及び本発明を限定することを意図しない下記の実施例を参照してより容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0047】
実施例1:23a−14G9は胞子特異的抗原を認識する
材料及び方法
(1)抗原の調製
胞子:
炭疽菌を3日間、TSAプレート上でコンフルエント培養して増殖させ、栄養細胞が培地の必須栄養素を消耗させ、結果として胞子形成をもたらすのに十分な時間であった。細菌/胞子を無菌のリン酸緩衝液(PBS)でプレートから洗い流し、胞子は影響されない状態で、残った栄養細胞を死滅させるために1時間水浴中で60℃でインキュベートした。次に、4℃で10分間、3400rpmで遠心することによって、胞子を洗浄した。調製物のアリコートをマラカイトグリーンで染色し、胞子を視覚化し、調製物が圧倒的多数の胞子を含み、栄養細胞はほんの僅かしか存在しないことを確かめた。
栄養細胞抗原:
炭疽菌の栄養細胞を通気した液体培地中で一晩培養した。栄養細胞を遠心によってペレットにし、洗浄し、その後、高塩及び界面活性剤を含有するTRIS−EDTA緩衝溶液中に溶解した。その上清をPBSに対して透析した。
【0048】
(2)捕捉ELISA
捕捉ELISAについて、炭疽菌胞子及び栄養細胞で免疫したウサギ由来のプロテインGで精製したウサギ・ポリクローナルIgGを捕捉抗体として使用し、10μg/mlの濃度でELISAプレートに被覆した。ELISAプレートを標準的な手法に従って5%のスキムミルクを含有するブロッキング溶液でブロックした。2倍の連続希釈した胞子又は栄養細胞抗原のいずれかをELISAプレートで1時間インキュベートした。プレートを徹底的に洗浄し、モノクローナル抗体(mAb)23a−14G9を10μg/mlで添加し、1時間インキュベートした。プレートを徹底的に洗浄した。ELISA反応の発色は、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼを結合したヤギ抗マウスIgG抗体で開始し、基質ABTSを添加した。プレートを405nmのODでELISAプレートリーダーでプレートを読んだ。
【0049】
結果
結果を図1に提示するが、23a−14G9は炭疽菌の胞子抗原に非常に反応するが、炭疽菌の栄養細胞に存在する抗原とは全く反応しないことを明確に示す。つまり、23a−14G9は、炭疽菌の胞子特異的抗原を認識するモノクローナル抗体である。
【0050】
実施例2:23a−14G9の特異性
炭疽菌胞子に特異的なモノクローナル抗体23a−14G9の特異性は、下記のように明らかにされる。捕捉ELISAは、捕捉抗体としてウサギ・ポリクローナルIgG、及び検出抗体として炭疽菌胞子に特異的なモノクローナル抗体23a−14G9を利用して実行した。下記のバチルス生物由来の胞子は、抗原として使用した:炭疽菌ステルネ(Sterne);バチルス・スリンギエンシスATCC35646;バチルス・セレウスATCC33018;バチルス・プミリスATCC72;枯草菌ATCC6051;及び、バチルス・メガテリウムATCC25833。
【0051】
図2に示されるように、モノクローナル抗体23a−14G9は、炭疽菌の胞子とだけ反応した。その抗体は、バチルス・スリンギエンシス、バチルス・セレウス、バチルス・メガテリウム、バチルス・プミリス、又は枯草菌の胞子とは反応しなかった。つまり、モノクローナル抗体23a−14G9は、炭疽菌に特異的であり、炭疽菌胞子を検出し、他のバチルス胞子とは区別するために使用することができる。
【0052】
同一の条件を用いて、23a−14G9抗体は、下記のバチルス分離菌の胞子に対して試験した:バチルス・セレウスATCC9620、バチルス・セレウスATCC14579(標準菌)、バチルス・セレウスATCC49064、バチルス・セレウスATCC10702、バチルス・セレウスATCC7004、バチルス・セレウスATCC33019、及びバチルス・スリンギエンシスATCC19267、バチルス・スリンギエンシスATCC10792、バチルス・スリンギエンシスの亜種イスラエルエンシスATCC39152、バチルス・スリンギエンシスの亜種クルスタキATCC33679、及びバチルス・スリンギエンシスの亜種クルスタキATCC35866。該抗体は、部分的に交差反応したATCC33679を除いて、これらのバチルス・セレウス分離菌及びバチルス・スリンギエンシス分離菌の全てに対して陰性であった(図3を参照されたい)。炭疽菌については0.04μg/mlであるのに対して、ATCC33679は2.5μg/ml以上の抗原濃度で陽性であった。
【0053】
特許、特許出願、及び刊行物を含む、本明細書で引用した全ての参考文献は、以前に具体的に援用されたかどうかにかかわらずに、参照により全体として本明細書に援用される。
【0054】
現時点で、本発明を十分に記載しているが、同様のことが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、及び過度の実験をすることなしに、広範な均等なパラメータ、濃度、及び条件の中で実行することができることを当業者は承認するであろう。
【0055】
本発明がその具体的な態様と関連して記載されているが、さらに修飾可能であることを理解するであろう。本出願は、本発明の任意の改変、使用、又は適合、続く一般的な本発明の原理を覆うものであることが意図され、本発明が関連する技術の中で既知又は慣習的な実施に近づくように、及び前述した本質的な特徴に適用できるように本開示からのこのような離脱を含む。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、捕捉ELISAアッセイにおける栄養細胞と比較した炭疽菌胞子に対する23a−14G9の特異性を示す。
【図2】図2は、他のバチルス胞子と比較した炭疽菌胞子に対する23a−14G9の特異性を示す。
【図3】図3は、23a−14G9がバチルス・スリンギエンシスの1つの分離菌(亜種クルスタキATCC33679)の胞子との部分的な交差反応性を有することを示す。一般的に、炭疽菌を検出するための23a−14G9の使用は、クルスタキの分離菌の少なくとも約2倍のシグナルを生ずる。
【図4】図4は、本発明の抗体を製造するための方法論を説明する。パートAは、動物を免疫するための23a−14G9と胞子特異的抗原(SSA)との複合体の使用を示す。次に、動物は、本明細書で記載されるように本発明の抗体を産生する。代表的な抗体は、Ab1(23a−14G9及びSSAの両方によって定義された領域に結合する)、Ab2(SSAの第一部分に結合するが、23a−14G9によっては結合しない)、及びA3(SSAの第二部分に結合するが、23a−14G9によっては結合しない)を含む。パートBは、本発明の追加の抗体を発生するための動物に導入した免疫原としてのAb3及びSSAを含有する複合体の使用を示す。代表的な抗体は、Ab4(23a−14G9抗体がない場合に利用可能なSSAの領域に結合する)、及びAb5(Ab1と共通して、SSAの部分に結合する)を含む。パートBに示したものと同じような方法は、23a−14G9抗体を再生し、又は23a−14G9と同じエピトープに結合する別の抗体を産生するであろうことは当然に可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
23a−14G9と称するモノクローナル抗体。
【請求項2】
2004年5月19日にATCCに寄託され、ATCC受託番号PTA−6004により同定されるハイブリドーマ細胞株によって産生される、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項3】
請求項1に記載のモノクローナル抗体を含む組成物。
【請求項4】
炭疽菌(Bacillus anthracis)の胞子に結合する、請求項1に記載の抗体の断片。
【請求項5】
2価のF(ab’)2断片、又は1価のFab断片である、請求項4に記載の断片。
【請求項6】
請求項1に記載の抗体が結合する炭疽菌の胞子特異的抗原に結合する抗体。
【請求項7】
モノクローナルである、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
請求項7に記載のモノクローナル抗体のハイブリッド、キメラ、改変、組換え、又は、ヒト化形態。
【請求項9】
請求項1に記載のモノクローナル抗体のハイブリッド、キメラ、改変、組換え、又は、ヒト化形態。
【請求項10】
試料中の炭疽菌胞子の有無を検出する方法であって、下記:
結合複合体を形成するために、前記試料を請求項1、2、及び6−9のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体と接触させた後に、前記抗体の前記試料の成分への結合を検出すること
を含む、前記方法。
【請求項11】
前記抗体が、炭疽菌胞子に結合することができる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記試料が、炭疽菌胞子を含有すると疑われる、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記成分が、固相支持体に場合により固定化されている捕捉試薬に結合し、及び前記モノクローナル抗体が検出可能に標識されている、請求項10、11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記捕捉試薬が抗体である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体が、炭疽菌胞子に結合するポリクローナル抗体である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体がまた、バチルス・スリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・プミリス(Bacillus pumilis)、枯草菌(Bacillus subtilis)、及びバチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)の胞子に結合する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも0.02μg/ml以上の濃度で前記成分を検出する、請求項10〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記検出が、さらに、結合複合体と、前記成分又は前記複合体に結合する検出可能な試薬とを接触することを含む、請求項10〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1、2、及び6〜9のいずれか1項に記載の抗体を含む、試料中の炭疽菌胞子の有無を検出するためのキット。
【請求項20】
炭疽菌の胞子特異的抗原に結合した請求項1、2、及び6〜9のいずれか1項に記載の抗体を含む複合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−537277(P2007−537277A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513336(P2007−513336)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/016567
【国際公開番号】WO2006/033675
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(506377857)テトラコア,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】