説明

胴縁及び壁面への胴縁取付け方法

【課題】壁面への胴縁取付けが、壁面前方にネジ等が突設せず、面内方向の荷重負担が容易な構造とでき、かつ、外装材等を胴縁にビス止めする際にも、安定した取付け強度を発揮することが可能な胴縁を提供する。
【解決手段】建築物の外装材等を支持する胴縁1であって、ネジ型部材5もしくは釘型部材の貫通により、貫通孔周辺が変形可能な厚みとされた細長薄鋼基板2と、該細長薄鋼基板2に重ね設けられる幅方向の略中央に切欠き部3aを設けた添え鋼板3からなるとことを特徴とする胴縁とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外装材等を支持する胴縁と、壁面への胴縁取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第1の従来例として、建築物の外装材等を支持する鋼製の胴縁として軽量形鋼が広く用いられている。板厚は1.6mm以上であり、一般には、板厚2.3mm以上のものが使用される。これは、外装材等をビス等で胴縁に固定する際に、安定した取付け強度を確保するために、信頼性の観点より、下地鋼板の板厚として、ビスのネジ山を一定寸法以上程度貫入させておきたいとの考えがあるためで、使用環境や使用条件にもよるが、板厚は、1.6mm以上、一般には、板厚2.3mm以上必要との判断があるためである。例えば、ビスのネジ山ピッチが0.7mmの場合、3山のネジを胴縁に貫入させて安定的に固定するためには、板厚2.1mmが必要となる。
【0003】
しかも、第1の従来例は、壁面に胴縁を取付ける際に、接合部材であるネジのネジ頭などが、壁面前方に突設するため、壁厚を著しく厚くするという問題があった。また、胴縁が壁面に面一に設置され、ネジ等で留め付けられるだけであるため、胴縁に作用する面内力への抵抗は、ネジ等を介して壁面に伝達される力が主となり、胴縁とネジ等との面内方向のわずかな隙間を完全になくすのは難しく、外装材の重量が大きい場合には、長期の鉛直荷重や、地震時の面内荷重によって、胴縁が面内方向にずれやすく、かつ、強度設計上も接合部材であるネジ等に面内方向の耐力を持たせるための設計要求度が高くなるという問題があった。
【0004】
第2の従来例として、壁面への外装材等の取付け構造として、壁面前方にネジ等が突設せずに壁厚を著しく厚くしなくてよい技術として、特許第2875594号公報の技術がある。
特許第2875594号公報の発明技術による壁面への胴縁取付け構造としては胴縁の所用箇所に壁面側に向かって凸の部分を形成し、壁面に設けられた凹部に嵌め込む取付け構造が開示されている。このように構成されることにより、壁面の前方にネジ等が突設することがなく、壁厚が著しく厚くなることを回避できる。
しかし、第2の従来例は、胴縁に凸の部分を形成する必要があり、また、胴縁の凸の部分は、壁面の凹部に嵌り込むが、面内方向には、隙間無く嵌り込むわけではなく、実際は、多少の隙間が生じるため、外装材の重量が大きい場合には、長期の鉛直荷重や、地震時の面内荷重によって、胴縁が面内方向にずれやすく、かつ、強度設計上も接合部材であるネジ等に面内方向の耐力を持たせるための設計要求度が高くなるという問題があった。また、胴縁そのものに、凸の部分を設ける必要があるため、運搬時に、嵩張るという問題もあった。
【特許文献1】特許第2875594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、壁面への胴縁取付けが、壁面前方に接合部材であるネジ等が突設せずに壁厚を著しく厚くしなくてよいと共に、面内方向の荷重負担が容易な構造とでき、かつ、外装材等を胴縁にビス止めする際にも、安定した取付け強度を発揮することが可能な胴縁および壁面への胴縁の取付け方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による請求項1に記載の第1発明は、建築物の外装材等を支持する胴縁であって、ネジ型部材もしくは釘型部材の貫通により、貫通孔周辺が変形可能な厚みとされた薄鋼基板と、該薄鋼基板に重ね設けられる幅方向の略中央に切欠き部を設けた添え鋼板からなることを特徴とする胴縁である。
第1発明の胴縁は、上述の如く構成したので、幅方向の略中央に設けられた切欠き部の重ね位置で、すなわち、薄鋼基板のみの部分で、ネジ型部材もしくは釘型部材によって壁面側に固定すれば、貫通孔周辺が変形可能な厚みとされた薄鋼基板であるため、壁面側に向かって嵌り込むように変形しやすく、壁面側に嵌り込むことが可能な凹部あるいは穴部を設けてあれば、嵌合構造となり、胴縁が面内力を受けた場合に、ネジ型部材もしくは釘型部材の面内抵抗力のみならず、嵌合構造により胴縁が壁面側と一体で面内力に抵抗するため、結果として、強度設計上もネジ型部材もしくは釘型部材に面内方向の耐力を持たせるための設計が容易になり、面内方向の荷重負担が容易な構造とできる。薄鋼基板は材質や透孔の長さにもよるが、建築物の外装材等を支持する胴縁に使用される亜鉛メッキ鋼板、ガルバリューム鋼板、ステンレス鋼板などの場合、板厚1.2mm以下であれば十分変形可能となる。板厚の範囲は、板厚1.2mm〜0.3mmで、好ましくは板厚1.0mm〜0.6mmである。
【0007】
また、第1発明の胴縁は、薄鋼基板が壁面側に向かって嵌り込むように変形するため、壁面前方にネジ型部材もしくは釘型部材の頭部が突設せずに、壁厚が著しく厚くなることを回避することが出来る。なお、ここでのネジ型部材もしくは釘型部材とは、軸部と頭部を有するもので、ネジ、ビス、ボルト、釘、ヒットネイル等のことである。
さらに、第1発明の胴縁は、添え鋼板は板厚0.8mm以上、薄鋼基板と添え鋼板の合計の板厚が1.4mm以上であれば、外装材等を胴縁にビス止めする際にも、安定した取付け強度を発揮することが可能である。耐久性等により安全性を重視する場合には、合計の板厚を1.6mm以上、さらに確実には、合計の板厚を2.3mm以上とするのが好ましい。合計の板厚の範囲は、1.4mm〜4.5mmである。
【0008】
なお、切欠き部は、添え鋼板の側片に開放された切欠きであってもよいが、薄鋼板の幅方向の略中央に設けた穴であることが、胴縁の製造時の運搬時に添え鋼板が曲げ破損しにくいので好ましい。また、1枚の薄鋼基板に、複数の添え鋼板を間隔をあけて、重ね設けるようにしてもよい。
さらには、1枚の鋼板(平鋼)を折り曲げて重ね合わせることによってもよい。この場合、切欠き部を設けられた側が、添え鋼板となる。また、同様に1枚の鋼板(平鋼)の両側辺を均等に折り曲げて、重ね合わせることによってもよい。この場合、幅方向の略中央部に連続的にスリット状の切欠き部が形成される。この切欠き部側が、添え鋼板となる。
【0009】
薄鋼基板に、添え鋼板を重ね設ける方法は、現場で組み合わせても良いが、スポット溶接で接合することが生産効率の点で好ましい。それ以外にも薄鋼基板と添え鋼板の幅寸法を違えて、その境目を溶接することや、片側の鋼板に孔を開けておき、その孔に他の鋼板をカシメることや嵌合によって重ね合わせて接合してもよい。
なお、第1発明の胴縁は、切欠き部の重ね位置で、薄鋼板の幅方向略中央に、施工現場で透孔を形成し、壁面に取り付けることにより、請求項2に記載の第2発明の胴縁と同様な発明の効果を発揮することが出来る。
次に、本発明による請求項2に記載の第2発明は、前記切欠き部の重ね位置であって、前記薄鋼基板の幅方向略中央に、透孔を設けたことを特徴とする請求項1に記載の胴縁である。
【0010】
第2発明の胴縁は、上述の如く構成したので、第1発明の胴縁の作用効果に加え、幅方向の略中央に設けられた切欠き部の重ね位置で、すなわち、薄鋼基板のみの部分で、ネジ型部材もしくは釘型部材によって壁面側に固定する場合、当該位置である薄鋼基板の幅方向略中央に透孔を設けてあるので、壁面側に薄鋼基板が嵌り込むことが可能な凹部あるいは穴部を設けてあれば、壁面前方から該透孔を通して目視にて、凹部あるいは穴部の位置を確認して、その位置に合わせて胴縁の位置決めをすることが出来る。
また、透孔が、胴縁の長さ方向に、所定の長さを有していることにより、前述したような、凹部あるいは穴部の位置を確認して、その位置に合わせて胴縁の位置決めをする作業がより効率的になり、好ましい。なお、最も効果的なのは、胴縁の長さ方向に平行な方向に長い透孔を設けた場合である。
【0011】
さらに、ネジ型部材もしくは釘型部材によって壁面側に固定する際に、当該位置である薄鋼基板の幅方向略中央に透孔を設けてあるので、ネジ型部材もしくは釘型部材の軸部を該透孔に容易に貫通させ、設置出来るので、施工効率を上げることが出来る。また、薄鋼基板に設けた透孔の径は、ネジ型部材もしくは釘型部材の軸部径と略同寸法あるいは大きな寸法に、かつ、ネジ型部材もしくは釘型部材の頭部径より小さな寸法に設定する。ネジ型部材もしくは釘型部材の頭部が、薄鋼基板に十分に押し付けられて効果を発揮するために、薄鋼基板に設けた透孔の径は、ネジ型部材もしくは釘型部材の頭部径よりも3mm以上小さくすることが好ましい。透孔は、予め、胴縁生産工場などで形成されていても、施工現場で、孔開けしてもよい。透孔の短径は、想定しているネジ型部材もしくは釘型部材の軸部径と略同寸法以上とするのがよいが透孔の短径を、ネジ型部材もしくは釘型部材の軸部径より1mm程度小さくしてあっても、薄鋼板であり、特に、前述のように、透孔が胴縁の長さ方向に、所定の長さを有している場合など、透孔のまわりの薄鋼基板を変形させながら、ネジ型部材もしくは釘型部材を該透孔に貫通させるのは十分可能である。
【0012】
次に、本発明による請求項3に記載の第3発明は、請求項1又は請求項2記載の胴縁を壁表面に沿って配すると共に、壁表面に複数個設けられた凹部あるいは穴部に、切欠き部のある位置を合わせて薄鋼基板を当設あるいは近設させ、ネジ型部材もしくは釘型部材の軸部を貫通させると共に、ネジ型部材もしくは釘型部材の頭部を前記薄鋼基板に押し付けて該薄鋼基板を前記凹部あるいは穴部に嵌り込ませ、周辺を、前記凹部あるいは穴部の内周の極近傍まで変形させて、壁面に前記胴縁を留め付けることを特徴とする壁面への胴縁取付け方法である。
【0013】
第3発明の壁面への胴縁取付け方法は、上述の如く構成したので、ネジ型部材もしくは釘型部材の軸部を、貫通させると共に、ネジ型部材もしくは釘型部材の頭部を前記薄鋼基板に押し付けて該薄鋼基板を前記凹部あるいは穴部に嵌り込ませた際に、当該部分の薄鋼基板が、ネジ型部材もしくは釘型部材の頭部を中心に略円錐形状に変形し、該変形部周辺が、前記凹部あるいは穴部の内周の極近傍まで形成されることにより、建築物の外装材等から胴縁に作用する面内力を、ネジ型部材もしくは釘型部材を介してのみではなく、同時に、前記凹部あるいは穴部を介して壁面に荷重負担させるようにすることが可能である。
なお、薄鋼基板と該薄鋼基板に重ね設けられる添え鋼板とからなる本発明の胴縁は、壁面側を薄鋼基板として配置する方が、前記変形部周辺が、前記凹部あるいは穴部の内周の極近傍までより近接しやすく、好ましい。壁面側を添え鋼板として配置しても、添え鋼板の板厚は薄く、添え鋼板の切欠き部寸法が、壁面凹部あるいは穴部の内周寸法より大きくしておけば問題はなく、面内力を、ネジ型部材もしくは釘型部材を介してのみではなく、同時に、前記凹部あるいは穴部を介して壁面に荷重負担させるようにすることができる。
【0014】
次に、本発明による請求項4に記載の第4発明は、壁表面に板状断熱材を設け、該板状断熱材厚と略等しい高さを有し且つ中央に穴部を有するスペーサーを該板状断熱材を貫通させて複数個設置し、請求項1又は請求項2記載の胴縁を板状断熱材表面に沿って配すると共に、前記スペーサーの穴部に、切欠き部のある位置を合わせて薄鋼基板を当設あるいは近設させ、ネジ型部材もしくは釘型部材の軸部を貫通させると共に、ネジ型部材もしくは釘型部材の頭部を前記薄鋼基板に押し付けて該薄鋼基板を前記スペーサーの穴部に嵌り込ませ、周辺を、前記スペーサーの穴部の内周の極近傍まで変形させて、壁面に前記胴縁を留め付けることを特徴とする壁面への胴縁取付け方法である。
【0015】
第4発明の壁面への胴縁取付け方法は、上述の如く構成したので、ネジ型部材もしくは釘型部材の軸部を、壁表面に設けた板状断熱材の位置に面内力を伝達できるように壁面に複数個固定された該板状断熱材厚と略等しい高さを有し且つ中央に穴部を有するスペーサーの穴部に貫通させると共に、ネジ型部材もしくは釘型部材の頭部を前記薄鋼基板に押し付けて該薄鋼基板を前記穴部に嵌り込ませた際に、当該部分の薄鋼基板が、ネジ型部材もしくは釘型部材の頭部を中心に略円錐形状に変形し、該変形部周辺が、前記穴部の内周の極近傍まで形成されることにより、建築物の外装材等から胴縁に作用する面内力を、ネジ型部材もしくは釘型部材を介してのみではなく、同時に、前記穴部を介してスペーサーから壁面に荷重負担させるようにすることが可能である。
【0016】
板状断熱材としては通常の発泡プラスチック系断熱材でも、無機系断熱材であってもよく、発泡プラスチック系断熱材の場合、ポリスチレン系、ポリエチレン系、ポリウレタン系、フェノール系の発泡プラスチック系断熱材が、無機系断熱材の場合、グラスウール、ロックウールで板状に成形されたものが、挙げられる。発泡プラスチック系断熱材であれば前期中央に穴部を有するスペーサーを打ち込むことで簡単に該板状断熱材を貫通させて設置することが可能であり、好ましい。
また、スペーサーの形状として、外周形状、穴部形状は、いかなるものであってもよいが、断熱材の欠損を少なくし、熱損失を少なくする観点より、外周径は小さくすることが好ましい。しかも、鉛直・水平など、多様な方向の面内力への抵抗を発揮するために、穴部形状は円形であることが好ましい。よって、スペーサー形状としては、円筒形状が好ましい。
なお、胴縁の両側縁を曲げてリブとし、リブを板状断熱材に貫入させてスペーサーの穴部に、胴縁の添え鋼板の切欠き部を当設させるようにすると、当接し易く、しかも胴縁の剛性を確保するのに、好ましく、かつ、壁面前方に壁厚を厚くしない方法として、好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、幅方向の略中央に設けられた切欠き部の重ね位置で、ネジ型部材もしくは釘型部材によって壁面側に固定すれば、薄鋼板であるため、、壁面側に凹部あるいは穴部を設けておけば、壁面側に向かって嵌り込むように変形し、嵌合構造となり、外装材等より、胴縁が面内力を受けた場合に、ネジ型部材もしくは釘型部材の面内抵抗力のみならず、嵌合構造により胴縁が壁面側と一体で面内力に抵抗するため、結果として、強度設計上も接合部材に面内方向の耐力を持たせるための設計が容易になり、面内方向の荷重負担が容易な構造とできる。
また、薄鋼基板が壁面側に向かって嵌り込むように変形するため、壁面前方にネジ型部材もしくは釘型部材の頭部が突設せずに、壁厚が厚くなることを回避することが出来る。
【0018】
さらに、外装材等を胴縁にビス止めする際にも、安定した取付け強度を発揮することが可能である。
薄鋼基板の幅方向略中央に透孔を設けてあれば、壁面前方から該透孔を通して目視にて、凹部あるいは穴部の位置を確認して、その位置に合わせて胴縁の位置決めをすることが出来る。
さらに、薄鋼基板の幅方向略中央に透孔を設けてあるので、ネジ型部材もしくは釘型部材の軸部を該透孔に容易に貫通させ、設置出来るので、施工効率を上げることが出来る。
また、壁表面に設けた板状断熱材の位置に面内力を伝達できるように壁面に複数個固定された該板状断熱材厚と略等しい高さを有し且つ中央に穴部を有するスペーサーの穴部に当設させて、ネジ型部材もしくは釘型部材の頭部を前記薄鋼基板に押し付けて該薄鋼基板を前記穴部に嵌り込ませた際に、当該部分の薄鋼板が、接合部材の頭部を中心に略円錐形状に変形でき、該変形部周辺が、前記穴部の内周の極近傍まで形成されることにより、建築物の外装材等から胴縁に作用する面内力を、ネジ型部材もしくは釘型部材を介してのみではなく、同時に、前記穴部を介してスペーサーから壁面に荷重負担させるようにすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図により本発明に係る胴縁および壁面への胴縁取付け方法について説明する。
図1は本発明の実施例の胴縁を示す説明図、図2は図1の胴縁における要部拡大図、図3は図2要部拡大図中に表記したA−A位置における断面図である。
図4は、本発明の請求項3に係る実施例の壁面への胴縁取付け方法における留め付け前の状態を示す要部断面図、図5は図4の構造において留め付け後の状態を示す要部断面図、図6は図5の要部断面図中に示した薄鋼基板の変形状態をさらに拡大した断面図である。
図7は、本発明の請求項4に係る実施例の壁面への胴縁取付け方法における留め付け前の状態を示す要部断面図、図8は図7の構造に使用されるスペーサーの2例を示す斜視図、図9は図7の構造において留め付け後の状態を示す要部断面図である。
【0020】
図1、図2および図3に於いて、本発明に係る胴縁について説明すると、1は胴縁であり、薄鋼基板2の前方に、薄鋼基板2より幅狭の添え鋼板3が、重ねられ接合されている。薄鋼基板2の幅は90mm、添え鋼板3の幅は80mmとして、幅の中心で位置合わせされている。薄鋼基板2と添え鋼板3は、図示しないが、スポット溶接で接合した。薄鋼基板2の板厚は0.8mm、添え鋼板3の板厚は1.6mmとし、合計の板厚を2.4mmとした。薄鋼基板2には、幅方向の略中央に複数個の透孔2aが設けられ、透孔2aは、短径7mmとし、胴縁1の長さ方向には67mmの長さを有するものとした。添え鋼板3で、薄鋼基板2の透孔2aの位置に重ね接合される位置に、切欠き部3aを設けた。
【0021】
このような構造の胴縁1であるため、切欠き部3aの重ね位置では、板厚0.8mmの薄鋼基板2のみとなっており、ネジ型部材もしくは釘型部材を透孔2aに貫通させて胴縁1を壁面側に固定すれば、切欠き部3aの重ね位置(薄鋼基板2のみ部分)は壁面側に向かって嵌り込むように変形しやすく、壁面側に嵌り込むことが可能な凹部あるいは穴部を設けてあれば、嵌合構造となり、外装材等より、胴縁1が面内力を受けた場合に、接合部材の面内抵抗力のみならず、嵌合構造より胴縁1が壁面側と一体で面内力に抵抗するため、面内方向の荷重負担が容易な構造と出来る。 また、胴縁1は、切欠き部3aの重ね位置(薄鋼基板2のみの部分)が壁面側に向かって嵌り込むように変形するため、壁面前方にネジ型部材もしくは釘型部材の頭部が突出せずに、壁厚が著しく厚くなることを回避することが出来る。
【0022】
さらに、胴縁1は、切欠き部3aの重ね位置(薄鋼基板2のみの部分)を除けば、合計の板厚が2.4mmあり、外装材等を胴縁1にビス止めする際にも、安定した取付け強度を発揮することが可能である。例えば、ビスのネジ山ピッチが0.7mmの場合、3山以上のネジを胴縁1に貫入させられるため、安定的な固定と出来る。
なお、胴縁1の切欠き部3aは、添え鋼板3の幅方向の中央に穴として設けたが、ネジ型部材もしくは釘型部材で壁面側に固定する薄鋼基板2のみの部分が形成できればよく、穴に限るものではない。しかし、添え鋼板3の中央に穴として設け、添え鋼板3の両側に切欠き残存部を寸法として多く残すことで、胴縁1の製造時のハンドリング時に添え鋼板3が曲げ破損しにくく扱いやすくなるので、好ましい。
【0023】
さらに、胴縁1は、幅方向の中央に長さ67mm(幅7mm)の透孔2aを設けているため、ネジ型部材もしくは釘型部材によって壁面側に固定する場合、壁面側に薄鋼基板2が嵌り込むことが可能な凹部あるいは穴部を設けてあれば、壁面前方から透孔2aを通して目視にて、凹部あるいは穴部の位置を確認して、その位置に合わせて胴縁1の位置決めをすることが出来る。
また、胴縁1をネジ型部材もしくは釘型部材によって壁面側に固定する際に、ネジ型部材もしくは釘型部材の軸部を透孔2aに容易に貫通させ設置できるので、施工効率を上げることが出来る。
【0024】
次に、図4、図5および図6に於いて、本発明の請求項3に係る実施例の壁面への胴縁取付け方法について説明すると、壁面4に、胴縁1が、ネジ型部材5によって留め付けられる。壁面4の前方には、複数個の凹部4aが設けられており、胴縁1では、薄鋼基板3の切欠き部3aが薄鋼基板2の透孔2aの位置で重ね接合されており、ネジ型部材5の軸部5aを透孔2aを貫通させることにより、胴縁1を凹部4aの位置で壁面4に留め付ける。図6に示すように、ネジ型部材5の頭部5bは、薄鋼基板2に押し付けて凹部4aに嵌り込み、薄鋼基板2もネジ型部材5の頭部5bを中心に略円錐状に変形し、この変形部2bの周辺が、凹部の内周4b近傍まで形成されることにより、この部分で面内方向の確実な荷重伝達が可能となり、建築物の外装材等から胴縁1に作用する面内力を、ネジ型部材5を介してのみでなく、同時に、変形部2bの周辺から、凹部の内周4bを介して壁面4に荷重負担させることが可能である。
【0025】
最後に、図7、図8および図9に於いて、本発明の請求項4に係る実施例の壁面への胴縁取付け方法について説明すると、壁面4の前方に板状断熱材7を設け、更にその前方に胴縁1が、ネジ型部材5によって留め付けられる。板状断熱材7の位置には、面内力を伝達できるように釘9によって壁面に円筒形で板状断熱材7厚と略等しい高さを有し且つ中央に穴部8aを有するスペーサー8が複数個固定されている。胴縁1では、薄鋼基板3の切欠き部3aが薄鋼基板2の透孔2aの位置で重ね接合されており、ネジ型部材5の軸部5aを透孔2aを貫通させることにより、胴縁1を穴部8aの位置でスペーサー8を介して壁面4に留め付ける。
【0026】
なお、ネジ型部材5の頭部5bは、薄鋼基板2に押し付けて穴部8aに嵌り込み、薄鋼基板2もネジ型部材5の頭部5bを中心に略円錐状に変形し、この変形部2bの周辺が、穴部の内周近傍まで形成されることにより、この部分で面内方向の確実な荷重伝達が可能となり、建築物の外装材等から胴縁1に作用する面内力を、ネジ型部材5を介してのみでなく、同時に、変形部2bの周辺から、穴部の内周かつをスペーサー8を介して壁面4に荷重負担させる機構は、請求項3に係る実施例で図6で説明したのと同様である。
【0027】
さらに、図8では、本実施例で使用したスペーサー8(上図)と、他の構造のスペーサー8の例(下図)の2例を示している。スペーサー8(上図)は、プラスチックを円筒形に形成したもので、釘穴8aを円周方向に複数個形成してある。この釘穴8aを通して釘9を壁面まで打ち込むことにより、外装材等より胴縁1を介してスペーサー8から壁面4へ、面内力を有効に伝達することが出来る。壁面4に作用する面内力は、円周方向の1カ所あるいは2ヶ所に釘9をうつだけでも伝達することは可能であるが、長期の鉛直荷重と、地震時の面内荷重では、方向も違うため、円周方向の1カ所あるいは2ヶ所だけでなく、少なくとも3カ所、出来れば、4カ所以上打ち込むのがよい。そうすることにより、複数方向の面内力に対してスペーサー8が面外に回転することもなく、面内力をより有効に伝達することが出来る。そのための複数の釘穴8aである。また、スペーサー8が薄ければ、板状断熱材を貫通し、打ち込むようにして設置できる。他の構造のスペーサー8の例(下図)のように、パイプ状の先端に歯形をつけたものとすると、壁面4が、比較的、軟質な材料である軽量気泡コンクリートパネルである場合に、板状断熱材を貫通し、壁面4に打ち込むようにして容易に設置できる。 なお、図4〜図9でのネジ型部材5は、軸部5aと頭部5bを有するネジ型部材であるが、軸部先端に、プラスチックアンカー6を設けた。ネジ型部材5の軸部5aの径は6mmとし、プラスチックアンカー6の径は8mmとした。透孔2aの短径は7mmであるが、長さ67mmの長孔であり、厚さ0.8mmの薄鋼板であることもあり、少々であれば変形も可能で、径8mmのプラスチックアンカー6も、先端にプラスチックアンカー6を付けた状態で、貫通させることができる。
【0028】
また、ネジ型部材5の頭部5bの径は12mmとし、透孔2aの短径7mmより、5mm程大きくした。これにより、ネジ型部材5の頭部5bを薄鋼板2に十分に押し付けて変形部2bを形成させることが可能である。
なお、ネジ型部材で説明したが、釘型部材であれば、釘頭の径を透孔の短径より大きくし、釘頭のみを打撃して打ち込むことにより、同様の効果が期待できる。釘型部材の中でも、面内強度のあるヒットネイルのようなものを使用すれば、強度確保も容易であり、好ましい。
さらに、図4〜図9では、壁面4側に、胴縁1の薄鋼基板2を、壁面前方側に、胴縁1の添え鋼板3を配置した。このように配置することにより、変形部2bの周辺が、凹部の内周4b(あるいは、穴部の内周)の極近傍まで近接しやすく、好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、建築物の外装材等を支持する胴縁の取付け方法として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例の胴縁を示す説明図
【図2】本発明の実施例の胴縁における要部拡大図
【図3】本発明の実施例の胴縁におけるA−A断面図
【図4】本発明の請求項3に係る実施例の壁面への胴縁取付け方法における留め付け前の状態を示す要部断面図。
【図5】本発明の請求項3に係る実施例の壁面への胴縁取付け方法における留め付け後の状態を示す要部断面図。
【図6】本発明の請求項3に係る実施例の壁面への胴縁取付け方法における薄鋼板の変形状態を示す拡大断面図。
【図7】本発明の請求項4に係る実施例の壁面への胴縁取付け方法における留め付け前の状態を示す要部断面図。
【図8】本発明の請求項4に係る実施例の壁面への胴縁取付け方法に使用されるスペーサーの2例を示す斜視図。
【図9】本発明の請求項4に係る実施例の壁面への胴縁取付け方法における留め付け後の状態を示す要部断面図。
【符号の説明】
【0031】
1 胴縁
2 薄鋼基板
2a 透孔
2b 変形部
3 添え鋼板
3a 切欠き部
4 壁
4a 凹部
4b 凹部の内周
5 ネジ型部材
5a 軸部
5b 頭部
6 プラスチックアンカー
7 板状断熱材
8 スペーサー
8a スペーサーの穴部
8b 釘穴
9 釘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の外装材等を支持する胴縁であって、ネジ型部材もしくは釘型部材の貫通により、貫通孔周辺が変形可能な厚みとされた薄鋼基板と、該薄鋼基板に重ね設けられる幅方向の略中央に切欠き部を設けた添え鋼板からなることを特徴とする胴縁。
【請求項2】
前記切欠き部の重ね位置であって、前記薄鋼基板の幅方向略中央に、透孔を設けたことを特徴とする請求項1に記載の胴縁。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の胴縁を壁表面に沿って配すると共に、壁表面に複数個設けられた凹部あるいは穴部に、切欠き部のある位置を合わせて薄鋼基板を当設あるいは近設させ、ネジ型部材もしくは釘型部材の軸部を貫通させると共に、ネジ型部材もしくは釘型部材の頭部を前記薄鋼基板に押し付けて該薄鋼基板を前記凹部あるいは穴部に嵌り込ませ、周辺を、前記凹部あるいは穴部の内周の極近傍まで変形させて、壁面に前記胴縁を留め付けることを特徴とする壁面への胴縁取付け方法。
【請求項4】
壁表面に板状断熱材を設け、該板状断熱材厚と略等しい高さを有し且つ中央に穴部を有するスペーサーを該板状断熱材を貫通させて複数個設置し、請求項1又は請求項2記載の胴縁を板状断熱材表面に沿って配すると共に、前記スペーサーの穴部に、切欠き部のある位置を合わせて薄鋼基板を当設あるいは近設させ、ネジ型部材もしくは釘型部材の軸部を貫通させると共に、ネジ型部材もしくは釘型部材の頭部を前記薄鋼基板に押し付けて該薄鋼基板を前記スペーサーの穴部に嵌り込ませ、周辺を、前記スペーサーの穴部の内周の極近傍まで変形させて、壁面に前記胴縁を留め付けることを特徴とする壁面への胴縁取付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−144444(P2006−144444A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−337826(P2004−337826)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】