説明

胴縁取付用ブラケットおよびその取付方法

【課題】 アンカー部2に連結されるアンカー固定部と、アンカー部2にアンカー固定部を連結したときに躯体壁に圧接される鍔部8とを杆状のブラケット本体1に設けた胴縁取付用ブラケットにおいて、細径のアンカー部2によっても十分な取り付け強度が確実に得られるようにする。
【解決手段】 ブラケット本体1の中間部に鍔部8を設け、ブラケット本体1の一端側を鍔部8より突出させて、躯体壁に形成された削孔に挿入可能とすると共に、このブラケット本体の一端側にアンカー固定部を設け、しかも鍔部8に、アンカー固定部側の内周部に形成された窪み部9と、該窪み部9に対応する位置で鍔部8を貫通する、接着剤充填確認用の貫通孔10とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に鉄筋コンクリート(RC)、プレキャストコンクリート(PC)、軽量気泡コンクリート(ALC)などのコンクリート製の建物の躯体壁に胴縁を取り付けるために用いる胴縁取付用ブラケットおよびその取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、胴縁取付用ブラケットとしては、一端側の末端周囲に張り出した鍔部および中心部を貫通して設けられたアンカー固定部である雌ネジ部を備えた杆状のブラケット本体と、ブラケット本体の他端側に取り付けられた胴縁受け板とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記胴縁取付用ブラケットは、建物の躯体壁に固定されたアンカーの雄ネジ部に、ブラケット本体の雌ネジ部を鍔部側から螺合させ、鍔部を建物の躯体壁に圧接させて躯体壁に取り付けられるものとなっている。また、この胴縁取付用ブラケットの躯体壁への取り付けを、躯体壁に形成した削孔内に樹脂モルタルなどの接着剤を充填してからアンカー部を押し込み、接着剤の硬化後、削孔から突出したアンカー部の雄ネジ部と、ブラケット本体の雌ネジ部とを螺合することで行うことが知られている(特に特許文献1の段落〔0098〕〜〔0100〕および図9参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−251031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の胴縁取付用ブラケットにおいては、ブラケット本体の躯体壁側の末端に鍔部が設けられていることから、躯体壁へ取り付けた状態において、ブラケット本体は全体が削孔外に位置し、アンカー部のみによって支えられた状態となる。従って、アンカー部を太径のものとしないと、十分な取り付け強度が得にくい問題がある。アンカー部を太径とした場合、このアンカー部と螺合されるブラケット本体も必然的に太径となり、例えば外断熱を施す場合の熱損失が大きくなる。また、削孔に充填される接着剤は、躯体壁へのアンカー部の固定のみを目的としたものであり、ブラケット本体の躯体壁への固定や、ブラケット本体とアンカー部の連結に寄与していない。このことも、十分な取り付け強度が得にくい原因となっている。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、アンカー部に連結されるアンカー固定部と、アンカー部にアンカー固定部を連結したときに躯体壁に圧接される鍔部とを杆状のブラケット本体に設けた胴縁取付用ブラケットにおいて、細径のアンカー部によって十分な取り付け強度が得られるようにすると共に、その確実な取り付けを容易に行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために本発明は、杆状のブラケット本体の中間部に、外方に張り出した鍔部が設けられており、該鍔部より突出したブラケット本体の一端側が建物の躯体壁に形成された削孔に挿入可能で、しかも当該一端側に、躯体壁に固定されるアンカー固定部が設けられている一方、前記鍔部が、アンカー固定部側の内周部に形成された窪み部と、該窪み部に対応する位置で鍔部を貫通する、接着剤充填確認用の貫通孔とを有することを特徴とする胴縁取付用ブラケットを提供するものである。
【0008】
上記本発明に係る胴縁取付用ブラケットは、アンカー固定部が、鍔部から突出したブラケット本体の一端側の範囲内で、該一端側の端面から軸方向に形成された雌ネジ部であることをその好ましい態様として含むものである。
【0009】
また、本発明は、上記本発明の胴縁取付用ブラケットを建物の躯体壁に取り付ける胴縁取付用ブラケットの取付方法において、躯体壁に形成した削孔内にアンカー部を取り付けると共に接着剤を充填し、ブラケット本体の一端側のアンカー固定部を該削孔内に挿入し、鍔部の接着剤充填確認用の貫通孔から接着剤が押し出されるのを確認しながら、削孔内のアンカー部にアンカー固定部を連結することを特徴とする胴縁取付用ブラケットの取付方法を提供するものでもある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る胴縁取付用ブラケットの取り付けは、アンカーの削孔への打ち込み前または打ち込み後に削孔内に接着剤を充填して行われる。削孔に打ち込まれているアンカー部にブラケット本体のアンカー固定部を連結して締め付けると、鍔部が躯体壁に密着すると共に、この鍔部から躯体壁側に突出しているブラケット本体の一端側のアンカー固定部が、接着剤が充填されている削孔に入り込む。そして、削孔に入り込んだブラケット本体の一端側のアンカー固定部が、接着剤によって削孔に固定されると共に、アンカー部とブラケット本体の連結箇所も接着剤で補強されることになる。このため、ブラケット本体とアンカー部の連結が強固になるだけではなく、ブラケット本体は、アンカー部と、削孔内に接着されたその一端部のアンカー固定部との両者によって躯体壁に固定されることになり、アンカー部が細径であっても、強固な取り付け状態が得られる。
【0011】
ところで、ブラケット本体の一端部が、接着剤が充填されている削孔に入り込むと、削孔から接着剤が押し出され、躯体壁と鍔部との間に挟み込まれて、鍔部の躯体壁への密着が妨げられやすくなる。鍔部と躯体壁の密着度が低下すると、十分な耐力が得にくくなり、ブラケット本体の躯体壁に対する垂直度を保ちにくくなる。
【0012】
本発明に係る胴縁取付用ブラケットの鍔部に設けられた窪み部は、削孔から押し出された接着剤を収容し、鍔部と躯体壁の密着が妨げられないようにするためのものである。また、窪み部の体積を超えて接着剤が押し出された場合、窪み部内の接着剤は貫通孔から外へ押し出されることになる。このため、本発明に係る胴縁取付用ブラケットによれば、確実に鍔部を躯体壁に密着させることができ、十分な耐力を得ることができる。特に窪み部内に収容された接着剤は、鍔部を躯体壁に接着して補強するものとなる。また、貫通孔からある程度の量の接着剤が押し出されることを目視して確認することで、削孔内に十分な量の接着剤が充填されていることを確認することができる。このため、接着剤の充填不足や充填忘れを防止することができ、作業の確実性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図4に基づいて、本発明の一例に係る胴縁取付用ブラケットとその取付方法について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一例に係る胴縁取付用ブラケットを示す側面図、図2は、図1に示される胴縁取付用ブラケットを建物の躯体壁へ取り付ける手順の一例を示す説明図、図3、4は、図1に示される胴縁取付用ブラケットを建物の躯体壁へ取り付ける手順の他の例を示す説明図である。なお、図1〜図4において、同じ符号は同じ部材又は部位を示す。
【0015】
図1において、1はブラケット本体、2はアンカー部、3は断熱材押え板、4は胴縁受け板である。
【0016】
ブラケット本体1は、断熱性を重視した場合はプラスチック製でもよいが、一般的にはステンレススチールなどの金属の杆状体で構成されており、一端側の中心部にアンカー固定部として雌ネジ部5が設けられ、他端側の外周面に雄ネジ部6が設けられている。また、雄ネジ部6が設けられた他端側の末端には、ボルトの頭部状の形状をなす工具受け部7が設けられている。この工具受け部7は、ネジの締め付けに用いるレンチなどの締め付け用工具を接続する箇所で、例えば雄型の六角レンチなどが嵌まり合う凹部として設けることもできる。この工具受け部7を設けておくことにより、後述するアンカー部2の雄ネジ部5とブラケット本体1の雌ネジ部5の螺合締め付け時に、締め付け用工具を接続するための冶具を介在させる手間を省くことができる。
【0017】
上記工具受け部7は、平面面積(図1における上方から見た面積)が雄ネジ部6の平面面積より小さくなるように形成することが好ましい。工具受け部7の面積を小さくしておくことで、後述する断熱材押え板3、胴縁受け板4の雄ネジ部6への取付けが容易になり、断熱材20(図6参照)を押し付けて貫通させやすくなる。
【0018】
上記ブラケット本体1の中間部に、外方に張り出した鍔部8が設けられており、この鍔部8から突出したブラケット本体1の一端側の端面に開口して前記雌ネジ部5が形成されており、この一端側とは逆方向に突出したブラケット本体1の他端側に前記雄ネジ部6が形成されている。雌ネジ部5はその深さは深くても鍔部8の位置を越えず、その手前とすると、ブラケットの耐力が向上し好ましい。
【0019】
鍔部8は、本例の胴縁取付用ブラケットを図2、図3、図4に示されるようにして建物の躯体壁17に取り付けたときに、躯体壁17に圧接されるもので、躯体壁17への圧接側(雌ネジ部5側)の内周部には、ブラケット本体1を囲む位置に窪み部9が形成されている。また、この窪み部9に対応する位置に、1または複数の接着材充填確認用の貫通孔10が形成されている。窪み部9と貫通孔10の役割については後述する。
【0020】
また、鍔部8は、これを躯体壁17の外面に当接させた状態でブラケット本体1をアンカー部2に固定すると、ブラケット本体1に外装材の重量などの軸直交方向に外力を受けた際の固定度を向上させ、ブラケット本体1の回転をしにくくする効果を有する。また、鍔部8を設けることにより、ブラケット本体1の一定長さを躯体壁17から突出させて取り付けることが容易に可能となる。アンカーは打ち込みに伴って先端が開いてアンカー効果を発揮するタイプのものを使うと、容易に施工が可能となる。
【0021】
アンカーは、先端側(ブラケット本体1との接続側)に、ブラケット本体1の雌ネジ部5と螺合する雄ネジ部11が形成され、後端側(図2、図3、図4に示される削孔18への打ち込み側)に、後端に向かって徐々に拡径した拡径頭部12と、該拡径頭部12より内側に位置するストッパー13とが設けられた杆状のアンカーピン14を備えている。また、このアンカーピン14のストッパー13と拡径頭部12の小径側との間には、後端縁から軸方向にスリット15が切り込まれたアンカー環16が、先端がストッパー13に係止され、アンカーピン14の軸方向にスライド可能に嵌め込まれている。アンカー環16の表面には凸状片16aが形成されている。
【0022】
断熱材押え板3は、中央部に雌ネジ部19が貫通した板状材で、雌ネジ部19をブラケット本体1の雄ネジ部6に螺合させることで、ブラケット本体1の周囲に張り出した状態で取り付けられるものとなっている。この断熱材押え板3は、図6に示されるように、アンカー部2で躯体壁17に固定したブラケット本体1を貫通させて躯体壁17外面に押し付けた断熱材20を、躯体壁17との間に挟持するものとなっている。この断熱材押え板3は、金属製とすることもできるが、熱損失を抑えるために合成樹脂製とすることが好ましい。合成樹脂製とする場合は、雌ネジ部19を設けずに以下の方法とすることも好ましい。ブラケット本体1と接触する部分の断熱材押え板3の肉厚をブラケット本体1の雄ネジ部6に設けられたネジ山間の間隔と略同一とし、中央部のブラケット本体1が貫通する孔の径を雄ネジ部6のネジ部の谷径よりわずかに大きく、雄ネジ部6のネジ部の山径より小さくする。このように構成すると、断熱材押え板3はブラケット本体1に差し込む作業により装着でき、ネジを締める作業より容易であるし、断熱材押え板3が断熱材20を押し付ける程度も容易に調整できる。また、断熱材押え板3は、断熱材20を設けない場合は勿論のこと、断熱材20の取り付け形態によっては省略することができる。
【0023】
胴縁受け板4は、中央部に雌ネジ部21が貫通した板状材で、上記断熱材押え板3の後から雌ネジ部20をブラケット本体1の雄ネジ部6に螺合させることで、ブラケット本体1の周囲に張り出した状態で取り付けられるものとなっている。この胴縁受け板4は、図6に示されるように、胴縁22の取り付け部となるもので、通常、金属で構成されている。また、胴縁受け板4の取り付け位置の調整は、ブラケット本体1の雄ネジ部6への螺合位置の調整によって行うことができる。
【0024】
図6において、ブラケット本体1の躯体壁17と当接する面と胴縁受け板4までの距離は、一般的には10〜150mm、躯体壁17表面に断熱材20を装着する場合は30〜150mmとなり、さらに一般的には各々10〜100、30〜100mmが用いられる。またブラケット本体1の外径は、躯体壁17と当接する面と胴縁受け板4までの距離や想定する外装材24の重量、地震力および振動荷重等によって決定されるが、一般的には8〜24mm、さらに一般的には10〜20mmが用いられる。
【0025】
次に、本例の胴縁取付用ブラケットの躯体壁17への取り付け方法の一例を図2に基づいて説明する。
【0026】
まず、図2(a)に示されるように、躯体壁17の外面側に、開口部から内部へと大径部18aと小径部18bが連なった形状の削孔18を形成し、削孔18内にアンカー部2を差し込み、アンカー部2の後端側が削孔18の小径部18bに嵌まり合うまで打ち込み削孔18内に樹脂モルタルなどの接着剤23を充填する。
【0027】
次に、図2(b)に示されるように、ブラケット本体1の雌ネジ部5にアンカー部2の雄ネジ部11を途中までねじ込んで胴縁取付用ブラケットを連結し、鍔部8を躯体壁17の外面に当接させるまで、当該ブラケット本体1を打ち込む。
【0028】
次に、図2(c)に示されるように、工具受け部7に接続した締め付け用工具で締め付ける。鍔部8が躯体壁17の外面に当接した後にさらにブラケット本体1を締め付けると、アンカーピン11がブラケット本体1に徐々に引き寄せられ、その拡径頭部12がアンカー環16内に入り込んで拡径させ、アンカー環16が削孔18の内壁に強く係合する。
【0029】
アンカー環16の径は削孔18の小径部18bの径よりもわずかに小さく、該アンカー環16の表面に備えられた凸状片16aだけが小径部18bの内壁面に接触するように構成され、さらに凸状片16aは打ち込む方向には抵抗が小さいが、抜け出し方向には抵抗が大きい構造となっている。従って、アンカーピン11がブラケット本体1に引き寄せられる時に、アンカー環16だけは移動せず、拡径頭部12がアンカー環16内に入り込んで拡径させることが可能となる。
【0030】
なお、ブラケット本体1の鍔部8が躯体壁17の外面に当接した後もさらにブラケット本体1を締め付けることにより、拡径頭部12がアンカー環16内に入り込んで、アンカー部2の固定が完了する。即ち、アンカー部2の角度は、削孔18に打ち込んだ角度にかかわらず、締付け完了までの間に躯体壁17に対して垂直の状態に矯正される。
【0031】
上記胴縁取付用ブラケットの削孔18への差し込み時ないし雌ネジ部5の雄ネジ部11へのねじ込み時に、削孔18内の接着剤23の一部が押し出されてくるが、押し出された接着剤23は鍔部8の窪み部9に収容され、さらに余剰の接着剤23は、接着材充填確認用の貫通孔10から外部へ押し出されることになる。従って、この貫通孔10から接着剤23が押し出されてくることを確認することで、十分な接着剤23の充填が行われているかどうかを知ることができる。
【0032】
本例の胴縁取付用ブラケットは、図3に示される方法で躯体壁17へ取り付けることもできる。
【0033】
まず、図3(a)に示されるように、躯体壁17の外面側に、開口部から内部へと大径部18aと小径部18bが連なった形状の削孔18を形成し、削孔18内に樹脂モルタルなどの接着剤23を充填する。そして、ブラケット本体1の雌ネジ部5にアンカー部2の雄ネジ部11を途中までねじ込んで連結した胴縁取付用ブラケットを、接着剤23を充填した削孔18内にアンカー部2側から差し込む。
【0034】
次に、図3(b)に示されるように、アンカー部2の後端側が削孔18の小径部18bに嵌まり合うまで打ち込む。
【0035】
上記図3の状態で、工具受け部7にレンチなどの締め付け用工具を接続し、図3(c)に示されるように、ブラケット本体1の雌ネジ部5をアンカー部2の雄ネジ部11にねじ込み、鍔部8を躯体壁17の外面に当接させ、さらに締め付け用工具で締め付け、図2での説明と同様にアンカー環16を拡径させて小径部18bに強く係合させ、アンカーピン11を定着させる。
【0036】
本例の胴縁取付用ブラケットは、図4に示される方法で躯体壁17への取り付けることもできる。
【0037】
まず、図4(a)に示されるように、躯体壁17の外面側に、開口部から内部へと大部18aと小径部18bが連なった形状の削孔18を形成し、ブラケット本体1の雌ネジ部5にアンカー部2の雄ネジ部11を途中までねじ込んで連結した胴縁取付用ブラケットを削孔18内にアンカー部2側から差し込み、アンカー部2の後端側が削孔18の小径部18bに嵌まり合うまで打ち込む。
【0038】
上記アンカー部2の打ち込み後、図4(b)に示されるように、アンカー部2の雄ネジ部11からブラケット本体1の雌ネジ部5を外し、アンカー部2が打ち込まれた削孔18内に接着剤23を充填する。
【0039】
接着剤23の充填後、図4(c)に示されるように、ブラケット本体1の雌ネジ部5をアンカー部2の雄ネジ部11にねじ込み、鍔部8を躯体壁17の外面に当接させ、さらに工具受け部7に接続した締め付け用工具で締め付け、図2での説明と同様にアンカー環16を拡径させて小径部18bに強く係合させ、アンカーピン11を定着させる。
【0040】
ブラケット本体1の雌ネジ部5をアンカー部2の雄ネジ部11にねじ込むことにより、ブラケット本体1の一端部(雌ネジ部5側)が削孔18の大径部18aに入り込み、削孔18内の接着剤23を押し出すが、一部は鍔部8の窪み部9に収容され、さらに余剰の接着剤23は、貫通孔10から外部へ押し出されることになる。
【0041】
本例の胴縁取付用ブラケットのアンカー部2は、上記のように、ブラケット本体1の雌ネジ部5をアンカー部2の雄ネジ部11に強くねじ込むことで拡径するアンカー環16を備えたねじ込み拡径型のものとなっているが、ピンの先端に食い込んだ楔型部材を備え、18の底部までこのピンを打ち込むことで楔型部材がさらにピンの先端に食い込んで、ピンの先端を拡径する打ち込み拡径型のものとすることもできる。また、スクリュー型のアンカー部2としたり、返しの付いた打ち込み固定型のアンカー部2を用いる場合、削孔18は、大径部18aに相当する部分のみのものとし、その底部にアンカー部2をねじ込んだり打ち込むことで固定することもできる。
【0042】
次に、本発明の胴縁取付用ブラケットを用いた建物の外壁構造について説明する。
【0043】
図5は、本発明の胴縁取付用ブラケットを用いた建物の外壁構造の一部を示す施工途中段階の斜視図、図6は、本発明の胴縁取付用ブラケットを用いた建物の外壁構造の一部を示す断面図である。なお、図5および図6において、図1〜図3と同じ符号は同じ部材または部位を示す。
【0044】
特に図6に示されるように、建物の躯体壁17の外面側には、大径部18aと小径部18bが連なった削孔18が形成されており、図2、図3、図4で説明したようにして、接着剤23を併用して、本発明の胴縁取付用ブラケットが多数取り付けられている。
【0045】
本発明の胴縁取付用ブラケットが固定された躯体壁17の外面には、ブラケット本体1を貫通させて断熱材20が押し付けられている。この断熱材20は、各ブラケット本体1の雄ネジ部6に螺合された断熱材押え板3によって、躯体壁17との間に挟持されている
【0046】
断熱材20としては、フェノールフォーム・ポリスチレンフォーム・硬質ウレタンフォームなどの合成樹脂系断熱材やグラスウール・ロックウールなどの繊維系断熱材を用いることができる。中でも5%歪時の圧縮強度が10〜20N/cm2程度のフェノールフォーム系断熱材で、表面材にポリエステル不織布が用いられたものが最も適する。この断熱材20はブラケット本体1を貫通させる場合、断熱材20に下孔加工をしなくても突き刺すことができるし、直径3〜10cm程度の大きさの断熱材押え板3で容易に安定的に固定することができる。断熱材20もしくは表面材がより硬いと、下孔加工が必要となるし、より柔らかい場合は突き刺した時に周辺部分も大きく崩れ補修が必要になったり、断熱材押え板3と断熱材20との間に適切な反発力が発生しにくいので、断熱材20の保持が不安定で位置ズレが生じやすくなる。断熱材押え板3の位置ズレを防止するために、断熱材押え板3とブラケット本体1の接合をネジ止めとしてさらにダブルナットなどの緩み止め処置をするなど特別の手段が必要になる。
【0047】
各ブラケット本体1の雄ネジ部6には、さらに胴縁受け板4が螺合されており、複数の胴縁受け板4間に跨って掛け渡された胴縁22が、胴縁受け板4にビスなどによって取り付けられている。胴縁22としては、下向きコ字形断面の金属長尺材の両端を外方に屈曲させて鍔状突出部としたハット型材料を用いることができる。本例における胴縁22は、このハット型材料で、鍔状突出部をビスなどで胴縁受け板4に固定することで取り付けられている。また、ハット型材料の胴縁22には、外装材24が、その頂部にビスなどで取り付けられている。
【0048】
胴縁受け板4は、断熱材20と外装材22との間に十分な通気用空間を確保するために、断熱材20から離れた位置に取り付けておくことが好ましい。また、胴縁22は、通常縦方向に取り付けられるが、横方向に取り付けることもできる。また、胴縁22に外装材22を取り付けるのではなく、胴縁22に交差する方向に二次胴縁(図示されていない)を取り付けて、この二次胴縁に外装材22を取り付けることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は建物の躯体壁に胴縁を取り付けるために用いる胴縁取付用ブラケットおよびその取付方法として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一例に係る胴縁取付用ブラケットを示す側面図である。
【図2】図1に示される胴縁取付用ブラケットを建物の躯体壁へ取り付ける手順の一例を示す説明図である。
【図3】図1に示される胴縁取付用ブラケットを建物の躯体壁へ取り付ける手順の他の例を示す説明図である。
【図4】図1に示される胴縁取付用ブラケットを建物の躯体壁へ取り付ける手順の他の例を示す説明図である。
【図5】本発明の胴縁取付用ブラケットを用いた建物の外壁構造の一部を示す施工途中段階の斜視図である。
【図6】本発明の胴縁取付用ブラケットを用いた建物の外壁構造の一部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 ブラケット本体
2 アンカー部
3 断熱材押え板
4 胴縁受け板
4a 断熱材押え板本体
4b 円筒状片
5 雌ネジ部
6 雄ネジ部
7 工具受け部
8 鍔部
9 窪み部
10 貫通孔
11 雄ネジ部
12 拡径頭部
13 ストッパー
14 アンカーピン
15 スリット
16 アンカー環
16a 凸状片
17 躯体壁
18 削孔
18a 大径部
18b 小径部
19 雌ネジ部
20 断熱材
21 雌ネジ部
22 胴縁
23 接着剤
24 外装材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杆状のブラケット本体の中間部に、外方に張り出した鍔部が設けられており、該鍔部より突出したブラケット本体の一端側が建物の躯体壁に形成された削孔に挿入可能で、しかも当該一端側に、躯体壁に固定されるアンカー固定部が設けられている一方、前記鍔部が、アンカー固定部側の内周部に形成された窪み部と、該窪み部に対応する位置で鍔部を貫通する、接着剤充填確認用の貫通孔とを有することを特徴とする胴縁取付用ブラケット。
【請求項2】
アンカー固定部が、鍔部から突出したブラケット本体の一端側の範囲内で、該一端側の端面から軸方向に形成された雌ネジ部であることを特徴とする請求項1に記載の胴縁取付用ブラケット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の胴縁取付用ブラケットを建物の躯体壁に取り付ける胴縁取付用ブラケットの取付方法において、躯体壁に形成した削孔内にアンカー部を取り付けると共に接着剤を充填し、ブラケット本体の一端側のアンカー固定部を該削孔内に挿入し、鍔部の接着剤充填確認用の貫通孔から接着剤が押し出されるのを確認しながら、削孔内のアンカー部にアンカー固定部を連結することを特徴とする胴縁取付用ブラケットの取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−307421(P2006−307421A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127272(P2005−127272)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】