胸部診断支援情報生成システム
【課題】1回の動態撮影で呼吸及び血流のそれぞれに関する精度のよい診断支援情報を提供できるようにする。
【解決手段】本発明に係る胸部診断支援情報生成システム100によれば、診断用コンソール3の制御部31は、撮影装置1において動態撮影により取得された複数のフレーム画像について、放射線検出器13における同一位置の検出素子の出力する信号値を示す画素又は画素ブロックを前記複数のフレーム画像間で互いに対応付け、時間的に隣接するフレーム画像間の前記互いに対応する画素又は画素ブロックの信号値の差分値に基づいて前記被写体の呼吸に関する診断支援情報を生成する。また、前記互いに対応する画素又は画素ブロックの信号値の時間変化を示す出力信号波形を生成し、当該生成された出力信号波形に基づいて被写体Mの血流に関する診断支援情報を生成する。
【解決手段】本発明に係る胸部診断支援情報生成システム100によれば、診断用コンソール3の制御部31は、撮影装置1において動態撮影により取得された複数のフレーム画像について、放射線検出器13における同一位置の検出素子の出力する信号値を示す画素又は画素ブロックを前記複数のフレーム画像間で互いに対応付け、時間的に隣接するフレーム画像間の前記互いに対応する画素又は画素ブロックの信号値の差分値に基づいて前記被写体の呼吸に関する診断支援情報を生成する。また、前記互いに対応する画素又は画素ブロックの信号値の時間変化を示す出力信号波形を生成し、当該生成された出力信号波形に基づいて被写体Mの血流に関する診断支援情報を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胸部診断支援情報生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフィルム/スクリーンや輝尽性蛍光体プレートを用いた放射線(X線)の静止画撮影及び診断に対し、FPD(flat panel detector)等の半導体イメージセンサを利用して診断対象部位の動態画像を撮影し、診断に応用する試みがなされるようになってきている。具体的には、半導体イメージセンサの画像データの読取・消去の応答性の早さを利用し、半導体イメージセンサの読取・消去のタイミングと合わせて放射源からパルス状の放射線を連続照射し、1秒間に複数回の撮影を行って、診断対象部位の動態を撮影する。撮影により取得された一連の複数枚の画像を順次表示することにより、医師は検査対象部位の一連の動きを認識することが可能となる。
【0003】
また、動態撮影で得られた一連のフレーム画像を解析して診断支援情報を生成し、早期診断に向けて医師に提供することが提案されている。
例えば、特許文献1には、血流によって血液濃度が相違するという想定により、胸部の動態撮影で得られた一連のフレーム画像から心臓から押し出された血液の固まり部分を血管内の濃度変化に基づいて検出して血流速等を求める技術が記載されている。
また、特許文献2には、胸部の動態撮影で得られた一連のフレーム画像について、隣接するフレーム画像間でフレーム間差分値を算出し、この算出したフレーム間差分値に基づいて、呼吸(換気)及び血流が異常であるか否かを判定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−136573号公報
【特許文献2】国際公開第2009/090894号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1においては、精度の良い解析を行う為には、血管領域の位置移動を排除しておく必要があり、つまり呼吸を停止しておく必要があり、換気に関する特徴量の算出ができない。特許文献2においては、換気及び血流に関する両特徴量を一度の撮影データで算出可能であるが、精度の良い解析結果をえるには、精度の良い各小領域のワーピング処理が必須となるため処理時間を必要とし、また、両特徴量を同一の処理アルゴリズム(フレーム間差分信号値)で算出している為、血流に関する特徴量は換気に関する特徴量ほどの精度を得難い欠点を有していた。
【0006】
ところで、心拍数の測定を手首動脈の触診で脈動数をカウントすることからもわかるように、心臓から肺血管に血液が流れる際には、血管の部分的拡張(脈動)が肺血管領域にわたって伝搬する。この肺血管の拡張は、その拡張した部分に対応する放射線検出器の検出素子が出力する信号値に反映され、その信号値の変化量(非血管領域に対する血管領域の信号変化量)は比較的大きい。従い、被写体胸部の動態撮影を行って得られた一連のフレーム画像データを、換気の特徴量処理とは異なる当該信号値差に基づいた解析を行うことで、より精度良く血流に関する診断支援情報を抽出して医師に提供できることを本願発明者らは見出した。
【0007】
本発明の課題は、1回の動態撮影で呼吸及び血流のそれぞれに関する精度のよい診断支援情報を提供できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
放射線源と、2次元状に配置された複数の検出素子により前記放射線源により照射され被写体を透過した放射線を検出して前記被写体の画像データを生成する放射線検出器と、を用いて前記被写体の胸部の撮影を行う撮影手段と、
前記撮影手段により取得された画像データに基づいて前記被写体の胸部に関する診断支援情報を生成する画像解析手段と、
前記画像解析手段により生成された診断支援情報を表示する表示手段と、
を備える胸部診断支援情報生成システムであって、
前記撮影手段は、前記放射線源から連続的に放射線を照射して前記被写体の胸部の動態を示す複数のフレーム画像を取得可能に構成され、
前記画像解析手段は、
前記撮影手段により取得された複数のフレーム画像について、前記放射線検出器における同一位置の検出素子が出力する信号値を示す画素又は画素ブロックを前記複数のフレーム画像間で互いに対応付け、時間的に隣接するフレーム画像間の前記互いに対応する画素又は画素ブロックの信号値の差分値に基づいて前記被写体の呼吸に関する診断支援情報を生成する呼吸情報生成手段と、
前記撮影手段により取得された複数のフレーム画像について、前記放射線検出器における同一位置の検出素子が出力する信号値を示す画素又は画素ブロックを前記複数のフレーム画像間で互いに対応付け、前記互いに対応する画素又は画素ブロックの信号値の時間変化を示す出力信号波形を生成し、当該生成された出力信号波形に基づいて前記被写体の血流に関する診断支援情報を生成する血流情報生成手段と、
を有する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記呼吸情報生成手段は、前記複数の各フレーム画像から肺野領域を抽出し、前記抽出された肺野領域の前記各画素又は各画素ブロック毎に時間的に隣接するフレーム画像間で信号値の差分値を算出し、算出した差分値に基づいて当該画素又は画素ブロックにおける呼吸に関する特徴量を前記被写体の呼吸に関する診断支援情報として生成し、
前記血流情報生成手段は、前記複数の各フレーム画像から肺野領域を抽出し、前記抽出された肺野領域の前記各画素又は各画素ブロック毎に、前記生成された出力信号波形を解析して当該画素又は画素ブロックの肺血管が血流により拡張したタイミングのフレーム画像を特定し、この特定されたフレーム画像の当該画素又は画素ブロックに当該領域の肺血管が血流により拡張したタイミングであることを示す識別情報を付与することにより前記被写体の血流に関する診断支援情報を生成する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記表示手段は、前記被写体の呼吸に関する診断支援情報を表示する際には静止画表示を行い、前記被写体の血流に関する診断支援情報を表示する際には動画表示を行う。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明において、
前記複数のフレーム画像の撮影期間における前記被写体の心臓の拍動を示す拍動信号波形を取得する拍動信号波形取得手段を備え、
前記血流情報生成手段は、前記各画素又は各画素ブロック毎に、横軸をフレーム画像の撮影順を示すフレーム番号、縦軸を当該画素又は画素ブロックの信号値とした座標平面を作成し、前記各フレーム画像の当該画素又は画素ブロックの信号値に対応する点を前記座標平面上にプロットすることにより当該画素又は画素ブロックの出力信号波形を生成し、前記取得された拍動信号波形に対して前記出力信号波形をフレーム番号単位でずらしながら前記拍動信号波形と前記出力信号波形の相互相関係数を算出し、前記拍動信号波形において心臓が最も収縮したタイミングから前記相互相関係数が最大となったときのずらし量だけずれたタイミングのフレーム画像を当該画素又は画素ブロックにおいて肺血管が血流により拡張したタイミングのフレーム画像として特定する。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、
前記拍動信号波形取得手段は、心電波形を取得する心電検知センサ、前記複数のフレーム画像から心臓領域又は大動脈領域における信号値の時間変化を示す波形を拍動信号波形として取得する手段、若しくは前記複数のフレーム画像から心壁位置を抽出し、抽出された心壁位置の時間変化を示す波形を拍動信号として取得する手段、の何れかである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項記載の発明において、
前記血流情報生成手段は、複数周期の拍動信号波形及び出力信号波形を用いて前記血流に関する情報を取得する。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項記載の発明において、
前記撮影手段により取得された画像データにオフセット補正処理及びゲイン補正処理のうち少なくとも一つを実施する補正手段と、
前記撮影手段により取得された画像データに対して前記補正手段による補正を実施するか否かの制御を行う制御手段を備え、
前記制御手段は、前記画像解析手段により前記被写体の動態に係る診断支援情報を生成する場合には、前記補正手段による補正は実施しないように制御する。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の何れか一項記載の発明において、
前記放射線源からの散乱放射線を除去する散乱線除去グリッドと、
前記散乱線除去グリッドを用いて撮影を行うか否かの制御を行う撮影制御手段を備え、
前記撮影制御手段は、前記画像解析手段により前記被写体の動態に係る診断支援情報を生成する場合には、前記散乱線除去グリッド無しで撮影が行われるように制御する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1回の動態撮影で呼吸及び血流のそれぞれに関する精度のよい診断支援情報を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態における胸部診断支援情報生成影システムの全体構成を示す図である。
【図2】図1の保持部15近辺を拡大して示す図である。
【図3】図1の保持部15の正面を模式的に示す図である。
【図4】図1の撮影用コンソールの制御部により実行される撮影制御処理を示すフローチャートである。
【図5】図1の診断用コンソールの制御部により実行される画像解析処理を示すフローチャートである。
【図6】図1の診断用コンソールの制御部により実行される呼吸情報生成処理を示すフローチャートである。
【図7】1つの呼吸サイクル(深呼吸時)において撮影された複数の時間位相T(T=t0〜t6)のフレーム画像を示す図である。
【図8】安静呼気位と安静吸気位において肺野の同一部分を描画した領域の位置の変化を示す図である。
【図9】横隔膜の位置の算出方法を説明するための図である。
【図10】最大呼気位と最大吸気位において肺野の同一部分を描画した領域の位置の変化を示す図である。
【図11】或る正常の肺野をグリッド有りとグリッド無しで撮影した動態画像の動態解析結果の比較を示す図である。
【図12A】正常者の肺野の動態画像を解析した解析結果を表示した表示画面の一例を示す図である。
【図12B】COPD(閉塞性疾患)の肺野の動態画像を解析した解析結果を表示した表示画面の一例を示す図である。
【図12C】混合性疾患の肺野の動態画像を解析した解析結果を表示した表示画面の一例を示す図である。
【図13】「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値の表示例を示す図である。
【図14】「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値の他の表示例を示す図である。
【図15】「吸気の特徴量」又は「呼気の特徴量」の傾向を示す指標値の表示例を示す図である。
【図16】図1の診断用コンソールの制御部により実行される血流情報生成処理を示すフローチャートである。
【図17】血流による肺血管の広がりを模式的に示す図である。
【図18】(A)は、正常な出力信号波形を模式的に示す図、(B)は、異常個所のある出力信号波形を模式的に示す図である。
【図19】拍動信号波形の一例を示す図である。
【図20】反転させた拍動信号波形の一例を示す図である。
【図21】拍動信号波形を反転させる理由を説明するための図である。
【図22】相互相関係数の算出方法を説明するための図である。
【図23】血流に関する診断支援情報の表示例を示す図である。
【図24】第2の実施の形態における移動型胸部診断支援情報生成システムの全体構成例を示す図である。
【図25】図24のFPDの機能構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0019】
<第1の実施の形態>
〔胸部診断支援情報生成システム100の構成〕
まず、構成を説明する。
図1に、第1の実施の形態における胸部診断支援情報生成システム100の全体構成を示す。
図1に示すように、胸部診断支援情報生成システム100は、撮影装置1と、撮影用コンソール2とが通信ケーブル等により接続され、撮影用コンソール2と、診断用コンソール3とがLAN(Local Area Network)等の通信ネットワークNTを介して接続されて構成されている。胸部診断支援情報生成システム100を構成する各装置は、DICOM(Digital Image and Communications in Medicine)規格に準じており、各装置間の通信は、DICOMに則って行われる。
【0020】
〔撮影装置1の構成〕
撮影装置1は、被写体M(人体の胸部)に放射線を照射して被写体Mの動態撮影又は静止画撮影を行う装置である。
動態撮影とは、被写体Mに対し、X線等の放射線をパルス的に連続照射して複数の画像を取得(即ち、連続撮影)することをいう。動態撮影では、例えば、呼吸運動に伴う肺の膨張及び収縮の形態変化、心臓の拍動等の、周期性(サイクル)を持つ被写体Mの動態を撮影する。この連続撮影により得られた一連の画像を動態画像と呼ぶ。また、動態画像を構成する複数の画像のそれぞれをフレーム画像と呼ぶ。
静止画撮影とは、従来のフィルム方式やCR方式と同様に撮影部位の濃度分解能に基づく診断に使用されるもので、被写体Mに対し、X線等の放射線を1回照射して一枚の静止画像を取得することをいう。
【0021】
撮影装置1は、図1に示すように、放射線源11、放射線照射制御装置12、放射線検出部13、読取制御装置14、保持部15、グリッド16等を備えて構成されている。
【0022】
放射線源11は、単射及び連射(パルス照射)が可能な放射線発生装置である。即ち、静止画撮影と動態撮影の双方に対応した放射線発生装置である。放射線源11は、被写体Mを挟んで放射線検出部13と対向する位置に配置され、放射線照射制御装置12の制御に従って、被写体Mに対し放射線(X線)を照射する。
放射線照射制御装置12は、撮影用コンソール2に接続されており、撮影用コンソール2から入力された放射線照射条件に基づいて放射線源11を制御して放射線撮影を行う。撮影用コンソール2から入力される放射線照射条件は、例えば、連続照射時のパルスレート、パルス幅、パルス間隔、1撮影あたりの撮影フレーム数、X線管電流の値、X線管電圧の値、フィルタ種等である。パルスレートは、1秒あたりの放射線照射回数であり、後述するフレームレートと一致している。パルス幅は、放射線照射1回当たりの放射線照射時間である。パルス間隔は、連続撮影において、1回の放射線照射開始から次の放射線照射開始までの時間であり、後述するフレーム間隔と一致している。
【0023】
放射線検出部13は、動態撮影及び静止画撮影対応のFPD等により構成される。FPDは、例えば、ガラス基板等を有しており、基板上の所定位置に、放射線源11から照射されて少なくとも被写体Mを透過した放射線をその強度に応じて検出し、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する複数の画素がマトリックス状に配列されている。各画素は、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング部により構成されている。FPDにはX線をシンチレータを介して光電変換素子により電気信号に変換する間接変換型、X線を直接的に電気信号に変換する直接変換型があるが、何れを用いてもよい。
放射線検出部13は、図2に示すように、被写体Mを挟んで放射線源11と対向するように保持部15によって保持されている。
【0024】
読取制御装置14は、撮影用コンソール2に接続されている。読取制御装置14は、撮影用コンソール2から入力された画像読取条件に基づいて放射線検出部13の各画素のスイッチング部を制御して、当該各画素に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングしていき、放射線検出部13に蓄積された電気信号を読み取ることにより、画像データ(静止画像又はフレーム画像)を取得する。そして、読取制御装置14は、取得した画像データを撮影用コンソール2に出力する。画像読取条件は、例えば、フレームレート、フレーム間隔、画素サイズ(ビニングサイズ)、画像サイズ(マトリックスサイズ)等である。フレームレートは、1秒あたりに取得するフレーム画像数であり、パルスレートと一致している。フレーム間隔は、連続撮影において、1回のフレーム画像の取得動作開始から次のフレーム画像の取得動作開始までの時間であり、パルス間隔と一致している。
【0025】
ここで、放射線照射制御装置12と読取制御装置14は互いに接続され、互いに同期信号をやりとりして放射線照射動作と画像の読み取りの動作を同調させるようになっている。この他、後述するオフセット補正に用いるオフセット補正係数を算出するための少なくとも1つの暗画像を取得するダーク読取時は、放射線照射動作と同期せず、放射線が照射されない状態で、リセット〜蓄積〜データ読取〜リセットの一連の画像の読み取り動作を行うが、一連の動態撮影前、一連の動態撮影後のいずれかのタイミングで行うようにしてもよい。
なお、本実施の形態においては、いずれの動態解析においてもオフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理等の補正処理を行わずに解析を行う。これは、解析スピードを優先させるためである。解析スピードよりも精度を追及する場合は、オフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理等を行ってもよい。
【0026】
保持部15は、図2に示すように、検出器保持部151を有し、撮影時に放射線検出部13を放射線源11及び被写体Mに対向するように保持する。また、保持部15は、放射線検出部13よりも被写体側(放射線源11側)に散乱放射線を除去するためのグリッド16を装着するためのグリッド装着部152を有している。即ち、保持部15は、グリッド16が着脱可能に構成されている。グリッド装着部152には、図3に示すようにグリッド16が装着されているか否かを検知するためのグリッド装着検知MS(マイクロスイッチ)153が設けられており、保持部15は、グリッド装着検知MS153の検知信号を読取制御装置14に出力する。また、保持部15には、図2に示すように被写体Mが所定距離離間して存在するか否かを検知するための被写体検知センサ154が設けられており、保持部15は、被写体検知センサ154の検知信号を読取制御装置14を介して撮影用コンソール2に出力する。
【0027】
〔撮影用コンソール2の構成〕
撮影用コンソール2は、放射線照射条件や画像読取条件を撮影装置1に出力して撮影装置1による放射線撮影及び放射線画像の読み取り動作を制御するとともに、撮影装置1により取得された静止画像又は動態画像に基づく画像、例えば間引きビニング処理されたプレビュー画像や諧調処理等を施した処理済画像等を適宜作成し、撮影実施者によるポジショニングの確認や診断に適した画像であるか否かの確認用に表示する。動態画像の場合には、ポジショニング確認や解析対象部位の動態周期(サイクル)確認のために、解析に使用する隣接フレーム間の差分画像をプレビュー表示用として使用することも可能である。
撮影用コンソール2は、図1に示すように、制御部21、記憶部22、操作部23、表示部24、通信部25を備えて構成され、各部はバス26により接続されている。
【0028】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory
)等により構成される。制御部21のCPUは、操作部23の操作に応じて、記憶部22に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って後述する撮影制御処理を始めとする各種処理を実行し、撮影用コンソール2各部の動作や、撮影装置1の放射線照射動作及び読み取り動作を集中制御する。
【0029】
記憶部22は、不揮発性の半導体メモリやハードディスク等により構成される。記憶部22は、制御部21で実行される各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメータ、或いは処理結果等のデータを記憶する。例えば、記憶部22は、図4に示す撮影制御処理を実行するための撮影制御処理プログラムを記憶している。各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部21は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
また、記憶部22は、動態撮影用、静止画撮影用のそれぞれの放射線照射条件及び画像読取条件を記憶している。
【0030】
操作部23は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部21に出力する。また、操作部23は、表示部24の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部21に出力する。
【0031】
表示部24は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニタにより構成され、制御部21から入力される表示信号の指示に従って、操作部23からの入力指示やデータ等を表示する。
【0032】
通信部25は、LANアダプタやモデムやTA(Terminal Adapter)等を備え、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0033】
〔診断用コンソール3の構成〕
診断用コンソール3は、撮影用コンソール2から静止画像、又は動態画像の一連のフレーム画像を取得し、取得した画像や後述するヒストグラム等の診断支援情報を表示して医師が読影診断するためのコンピュータ装置である。
診断用コンソール3は、図1に示すように、制御部31、記憶部32、操作部33、表示部34、通信部35を備えて構成され、各部はバス36により接続されている。
【0034】
制御部31は、CPU、RAM等により構成される。制御部31のCPUは、操作部33の操作に応じて、記憶部32に記憶されているシステムプログラムや、各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って、後述する画像解析処理を始めとする各種処理を実行し、診断用コンソール3各部の動作を集中制御する。
【0035】
記憶部32は、不揮発性の半導体メモリやハードディスク等により構成される。記憶部32は、制御部31で画像解析処理を実行するための画像解析処理プログラムを始めとする各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメータ、或いは処理結果等のデータを記憶する。これらの各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部31は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0036】
操作部33は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部31に出力する。また、操作部33は、表示部34の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部31に出力する。
【0037】
表示部34は、LCDやCRT等のモニタにより構成され、制御部31から入力される表示信号の指示に従って、操作部33からの入力指示やデータ等を表示する。
【0038】
通信部35は、LANアダプタやモデムやTA等を備え、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0039】
〔胸部診断支援情報生成システム100の動作〕
次に、胸部診断支援情報生成システム100における動作について説明する。
【0040】
(撮影装置1、撮影用コンソール2の動作)
まず、撮影装置1、撮影用コンソール2による撮影動作について説明する。
図4に、撮影用コンソール2の制御部21において実行される撮影制御処理を示す。撮影制御処理は、制御部21と記憶部22に記憶されている撮影制御処理プログラムとの協働により実行される。
【0041】
まず、撮影実施者により撮影用コンソール2の操作部23が操作され、撮影対象(被写体M)の患者情報(患者の氏名、身長、体重、年齢、性別等)及び撮影種別(動態撮影、静止画撮影の区別)の入力が行われる(ステップS1)。この他、通信ネットワークNTに接続された図示しない他装置から送信され、通信部25を経由して受信したデータも、同様の入力情報とすることができる。
【0042】
次いで、入力された撮影種別が動態撮影であるか静止画撮影であるかが判断される(ステップS2)。入力された撮影種別が動態撮影であると判断されると(ステップS2;YES)、動態撮影用の放射線照射条件が記憶部22から読み出されて放射線照射制御装置12に設定されるとともに、動態撮影用の画像読取条件が記憶部22から読み出されて読取制御装置14に設定される(ステップS3)。入力された撮影種別が静止画撮影であると判断されると(ステップS2;NO)、静止画撮影用の放射線照射条件が記憶部22から読み出されて放射線照射制御装置12に設定されるとともに、静止画撮影用の画像読取条件が記憶部22から読み出されて読取制御装置14に設定される(ステップS7)。
【0043】
換気及び血流の両特徴量の解析を行う本実施の形態における好ましいフレームレートは7.5枚/秒以上、より好ましくは15フレーム/秒以上である。
なお、換気特徴量の解析のみを行う場合には、3.5枚/秒以上、より好ましくは7フレーム/秒以上である。
また、本実施の形態においては、動態撮影用としてグリッド16を装着しない状態で(グリッド無しで)の撮影を前提とした放射線照射条件が設定され、静止画撮影用としてグリッド16を装着した状態で(グリッド有りで)の撮影を前提とした放射線照射条件が設定される。具体的には、動態撮影用の放射線照射条件は、フレーム画像1枚ごとの撮影においてグリッド16を使用しないで放射線検出部13に到達する線量が静止画撮影においてグリッド16を使用して放射線検出部13に到達する線量と同じになるような放射線照射条件が設定される。即ち、動態撮影では、1枚あたりの照射線量が静止画撮影に比べて低くなるように放射線照射条件が設定される。
【0044】
ここで、人体等の被写体Mに対して放射線を照射して放射線撮影を行う場合、体内を透過する放射線が体内組織で散乱される。そして、このような散乱放射線が放射線検出部13に入射すると放射線画像にノイズが発生する。そこで、病変部分の検出や病変部分の観察等に用いられ個々の画素の絶対的出力値(信号値)が重要な静止画像の撮影においては、放射線検出部13の被写体側の面、すなわち被写体を透過した放射線が入射する側の面に、グリッド16を設けて撮影が行われることが好ましい。グリッド有りで撮影を行う場合、グリッド16により放射線検出部13に到達する線量が減弱される(例えば、露出倍数2のグリッドでは約1/2に減弱される)ため、この減弱分を加算した分の放射線を照射する必要がある。従来、動態撮影においても、静止画撮影と同様にグリッドを用いた撮影が行われていた。
【0045】
しかしながら、動態撮影の場合は、静止画撮影に比べて撮影するフレーム画像枚数が多いため、1枚当たりに放射線源11から照射する照射線量を静止画撮影と同等とした場合、被写体Mの被曝量が多くなってしまうという問題がある。被写体Mの被曝量低減のため1回の静止画撮影と、一連の動態撮影のトータルの照射線量を同じとする技術も開示されているが、この場合は個々のフレーム画像の線量が不足気味となり、S/N比が低下してしまう。
【0046】
そこで、本件発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、動態撮影により得られる胸部動態画像は主として呼吸機能や血流等の動態解析に使用されるものであり、これらの解析においては、グリッドを配置せずに撮影を行った動態画像を用いても、グリッド有りで撮影を行った動態画像を用いた場合と略同等の結果を得ることができることを見出した。言い換えると、グリッド有無に限らず、放射線検出器に到達する線量が同じであれば、略同等の解析結果を得ることができる(図11参照。詳細後述)。
【0047】
本実施の形態の胸部診断支援情報生成システム100においては、この知見に基づき、静止画撮影ではグリッド16を装着して(グリッド有りで)撮影を行い、動態撮影では(動態解析を行う場合には)グリッド16を装着せずに(グリッド無しで)撮影を行う。そして、グリッド16を使用した静止画撮影時と、グリッド16無しでの動態撮影の1フレーム当たりの撮影とで放射線検出部13に到達する線量が略同等となる放射線照射条件で撮影を行うことにより、放射線検出部13への到達線量は従来と略同等に維持しつつ被写体Mの被曝線量の低減する構成となっている。または、1回の静止画撮影と、一連の動態撮影のトータルの照射線量を同じとする放射線照射条件とし、静止画撮影ではグリッド有りで撮影を行い、動態撮影ではグリッド無しで撮影を行うことで、従来方式に比べて各フレーム画像のS/N比を向上させて解析精度の向上を図ることとしてもよい。
【0048】
動態撮影用の放射線照射条件及び画像読取条件が設定されると、グリッド装着検知MS153からの出力に基づいて、グリッド16がグリッド装着部152に装着されていない状態であるか否かが判断される(ステップS4)。
【0049】
グリッド16がグリッド装着部152に装着されていない状態であると判断されると(ステップS4;YES)、操作部23の操作による放射線照射の指示が待機される(ステップS5)。ここで、撮影実施者は、安静呼吸の動態を撮影するために被検者(被写体M)に楽にするように指示し、安静呼吸を促す。撮影準備が整った時点で、操作部23を操作して放射線照射指示を入力する。
【0050】
操作部23により放射線照射指示が入力されると(ステップS5;YES)、放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影開始指示が出力され、動態撮影が開始される(ステップS6)。即ち、放射線照射制御装置12に設定されたパルス間隔で放射線源11により放射線が照射され、放射線検出部13によりフレーム画像が取得される。予め定められたフレーム数の撮影が終了すると、制御部21により放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影終了の指示が出力され、撮影動作が停止される。撮影されるフレーム数は、少なくとも1呼吸サイクルが撮影できる枚数である。
【0051】
一方、静止画撮影用の放射線照射条件及び画像読取条件が設定されると、グリッド装着検知MS153と被写体検知センサ154からの出力に基づいて、グリッド16がグリッド装着部152に装着された状態であるか否かが判断される(ステップS8)。
制御部21は、このステップS8によって、グリッド16が装着されずに静止画撮影が行われることのないように制御している。
【0052】
グリッド16がグリッド装着部152に装着されていると判断されると(ステップS8;YES)、操作部23の操作による放射線照射の指示が待機される(ステップS9)。ここで、撮影実施者は、被験者に対し、息を吸った後に止めるように指示する。撮影準備が整った時点で、操作部23を操作して放射線照射指示を入力する。
【0053】
操作部23により放射線照射指示が入力されると(ステップS9;YES)、放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影開始指示が出力され、静止画撮影が行われる(ステップS10)。
【0054】
動態撮影又は静止画撮影が終了すると、撮影により取得された画像(各フレーム画像又は静止画像)は順次撮影用コンソール2に入力され、補正処理が行われる(ステップS11)。ステップS11の補正処理においては、オフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理の3つの補正処理が必要に応じて行われる。本実施の形態においては、静止画撮影の場合にこれらの補正が実施され、動態撮影で後述する画像解析処理を行う場合にはこれらの補正が実施されないように制御部21により制御される。
【0055】
ここで、静止画像を用いた画像診断では診断対象部位の構造物の濃度値の微妙な変化を観察する。そのため、FPDの個々の検出素子の出力バラツキを極力抑えるためのオフセット補正処理、ゲイン補正処理等が必須である。オフセット補正処理とは、各フレーム画像に重畳された暗電流に起因するオフセット値を除去する処理である。ゲイン補正処理とは、各フレーム画像の各画素に対応する各検出素子の個体差や読み出しアンプのゲインムラによって生じる画素毎のばらつきを除去する処理である。
【0056】
しかしながら、動態画像を用いて動態に関する特徴量を算出する場合、複数のフレーム画像が必要となる。例えば、肺の換気の特徴量を算出する場合、平均的な成人の呼吸周期は3.3秒前後であり、特徴量の算出には最低でも1周期分の画像が必要となるので撮影時間を4秒程度とする必要がある。この場合、フレームレートを5枚/秒とすると、20枚の画像データが必要となる。これらにオフセット処理及びゲイン補正処理を施すと、1フレーム画像当たり0.5秒〜1秒程度の時間を要するので、20枚の実施に10〜20秒の時間を要することとなる。
【0057】
また、より忠実なオフセット補正処理を実施しようとすると、各フレーム画像の撮影後に少なくとも1回のダーク読取(放射線非照射時のFPD読取)を実施することになるが、このときFPD側ではこのダーク読取のために少なくとも所望とするフレームレートの2倍以上のフレームレートでの画像取得が必要となり、高速化にともないハードウエア構成が増大するとともに、消費電力も増大することになり好ましくない。
【0058】
更に、一般的にはFPDから出力されたフレーム画像やダーク画像はコンソールに送信してオフセット補正処理を行うため、各フレーム画像の送信に加えてダーク画像の送信時間も必要となる。また、1回もしくは放射線を照射するフレーム画像より少ない回数のダーク読取を行って、これらのダーク画像を用いて全てのフレーム画像に対してオフセット補正処理を実施することも考えられるが、ダーク画像取得に必要となるフレームレートはフレーム画像毎にダーク読取を行った場合に比べて低減するものの、依然として取得したダーク画像を用いてオフセット補正処理する時間が必要である。また、動態に関する特徴量の算出処理は、オフセット補正処理した後でなければ開始できないという欠点もある。
そこで、本実施の形態においては、動態撮影で後述する画像解析処理を行う場合には、オフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理は行わない。
【0059】
なお、オフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理で使用されるオフセット補正係数及びゲイン補正係数、欠陥画素位置情報マップは、ビニングやダイナミックレンジ等の収集モードに応じて、予め、それぞれ最適な値が記憶されており、それぞれの収集モードにおいて対応する最適な値が読み出されるようになっている。また、必要に応じて、取得された画像に対し、例えば間引き処理や階調処理等を施すことが好ましい。
【0060】
次いで、補正処理後の画像が記憶部22に記憶されるとともに(ステップS12)、表示部24に表示される(ステップS13)。動態撮影を行った場合は、各フレーム画像が撮影順を示す番号と対応付け記憶部22に記憶される。ここで、取得された画像を記憶する直前に、各画素の信号値を真数から対数に変換する対数変換処理を行ってから記憶しても良い。撮影実施者は、表示された動態画像によりポジショニング等を確認し、撮影により診断に適した画像が取得された(撮影OK)か、再撮影が必要(撮影NG)か、を判断する。そして、操作部23を操作して、判断結果を入力する。尚、撮影により取得された各フレーム画像は、全撮影の終了後に纏めて入力するようにしても良い。
【0061】
操作部23の所定の操作により撮影OKを示す判断結果が入力されると(ステップS14;YES)、静止画撮影で取得された静止画像又は動態撮影で取得された一連のフレーム画像のそれぞれに、画像を識別するための識別IDや、患者情報、検査対象部位、放射線照射条件、画像読取条件、撮影順を示すフレーム番号、撮影日時、撮影時のグリッド有無を示す情報(グリッド有無情報)等の情報が付帯され(例えば、DICOM形式で画像データのヘッダ領域に書き込まれ)、通信部25を介して診断用コンソール3に送信される(ステップS15)。そして、本処理は終了する。一方、操作部23の所定の操作により撮影NGを示す判断結果が入力されると(ステップS14;NO)、記憶部22に記憶された一連のフレーム画像が削除され(ステップS16)、本処理は終了する。尚、このケースに於いては、再撮影が実行されることとなる。
フレーム番号と画像読取条件(フレーム間隔)によりそのフレーム画像が撮影されたときの撮影開始からの経過時間を取得することができる。
【0062】
(診断用コンソール3の動作)
次に、診断用コンソール3における動作について説明する。
診断用コンソール3においては、通信部35を介して撮影用コンソール2から静止画像が受信され、操作部33により当該画像の表示指示が入力されると、表示部34に受信された静止画像が表示され、医師の診断に供される。
一方、通信部35を介して撮影用コンソール2から動態画像の一連のフレーム画像が受信され、操作部33により動態解析が指示されると、制御部31と記憶部32に記憶されている画像解析処理プログラムとの協働により図5に示す画像解析処理が実行される。
【0063】
以下、図5を参照して画像解析処理の流れについて説明する。
まず、表示部34に画像解析により生成する診断支援情報の種類(呼吸、血流、呼吸及び血流)を選択するための選択画面が表示され、当該選択画面から操作部33により呼吸に関する診断支援情報の生成が選択されたと判断されると(ステップS21;YES)、呼吸情報生成処理が実行される(ステップS22)。血流に関する診断支援情報の生成が選択されたと判断されると(ステップS23;YES)、血流情報生成処理が実行される(ステップS24)。
【0064】
ここで、図5のステップS22において実行される呼吸情報生成処理について説明する。
図6に、呼吸情報生成処理のフローチャートを示す。
呼吸情報生成処理においては、まず、各フレーム画像から肺野領域が抽出される(ステップS101)。
肺野領域の抽出方法は何れの方法であってもよい。例えば、一連のフレーム画像中の任意のフレーム画像(ここでは、撮影順が一番(最初)のフレーム画像とする。)の各画素の信号値(濃度値)のヒストグラムから判別分析によって閾値を求め、この閾値より高信号の領域を肺野領域候補として1次抽出する。次いで、1次抽出された肺野領域候補の境界付近でエッジ検出を行い、境界付近の小領域でエッジが最大となる点を境界に沿って抽出すれば肺野領域の境界を抽出することができる。
【0065】
次いで、各フレーム画像の肺野領域が複数の画素ブロックからなる小領域に分割され、各フレーム画像の小領域が互いに対応付けられる(ステップS102)。各小領域の画素の位置は、制御部31のRAMに記憶される。
【0066】
ここで、呼吸サイクルは、呼気期と吸気期により構成される。図7は、1つの呼吸サイクル(深呼吸時)において撮影された複数の時間位相T(T=t0〜t6)のフレーム画像を示す図である。図7に示すように、呼気期は、横隔膜が上がることによって肺から空気が排出され、肺野の領域が小さくなる。最大呼気位では、横隔膜の位置が最も高い状態となる。吸気期は、横隔膜が下がることにより肺に空気が取り込まれ、図7に示すように胸郭中の肺野の領域が大きくなる。最大吸気位では、横隔膜の位置が最も下がった状態となる。即ち、肺野領域の同一部分の位置は呼吸運動に応じて時間とともに変化するため、各フレーム画像間で肺野の同一の部分(特に、下部領域(横隔膜付近))を示す画素位置がずれることになる。
しかし、安静呼吸時に撮影された画像においては、上記の位置ずれは小さく、後述する解析結果が狂ってしまうほどの位置ずれはおきない。図8の画像D1は、安静呼気位(安静呼吸時において横隔膜の位置が最も高くなったタイミング)のフレーム画像である。図8の画像D2は、安静吸気位(安静呼吸時において横隔膜の位置が最も低くなったタイミング)のフレーム画像である。即ち、図8の画像D1とD2とは、呼吸1サイクルにおいて最も形状の差の大きいタイミングで撮影された画像である。しかし、図8の画像D1、D2間においては、最も位置ずれの大きい肺野領域の下部領域においても位置ずれはわずかであることがわかる(画像D2のA11は画像D1のA1と同じ画素位置を示し、画像D2のA2は画像D1のA1と肺野における同一部分を描画した領域を示している)。
【0067】
そこで、ステップS102における具体的な処理としては、まず、一連のフレーム画像の中から一のフレーム画像を基準画像として設定する。次いで、基準画像の抽出された肺野領域を複数の小領域(例えば、2mm×2mmの矩形領域)に分割する(図8参照)。次いで、他のフレーム画像の肺野領域を基準画像の各小領域と同じ画素位置の小領域(放射線検出部13の同じ検出素子から出力される信号値を示す領域)に分割する。次いで、各フレーム画像間の同じ画素位置の各小領域を互いに対応付ける。この処理では、フレーム画像の小領域への分割及び対応付けを高速に行うことが可能となる。
基準画像としては、安静呼気位のフレーム画像とすることが好ましい。安静呼気位では、安静呼吸時において横隔膜の位置が最も高くなる、即ち、肺野領域の面積が最も小さくなるので、基準画像の小領域を他のフレーム画像に対応付けたときに、小領域が他のフレーム画像の肺野外の領域に対応付けられることがないからである。
安静呼気位の画像は、一連のフレーム画像の中から横隔膜の位置が最も高い位置にある画像を抽出することで取得することができる。横隔膜の位置は、例えば、図9に示す横隔膜の基準位置B1を横隔膜のカーブC(図9に点線で示す)の垂直方向の平均位置と予め定義しておき、肺野領域Rから横隔膜のカーブC(肺野領域の下端)を抽出し、その垂直方向の平均位置を求め、求めた位置を横隔膜の基準位置B1として特定する。
【0068】
次いで、各フレーム画像の各小領域内の画素の信号値(平均信号値)が算出され、小領域内の画素が平均信号値に置き換えられ、各フレーム画像間で対応づけられた各小領域に対して、時間軸方向のフィルタリング処理が施される(ステップS103)。このフィルタリング処理は、血流等の高周波数な信号変化を除去し、換気による信号値の時間変化を抽出するための処理であり、例えば、小領域毎の信号値の時間変化に対して、安静呼吸画像群ではカットオフ周波数0.7Hz、深呼吸画像群ではカットオフ周波数0.5Hzでローパスフィルタリングを行う。ここで、ローパスフィルタのカットオフ周波数は、固定値とするよりも、撮影された動態画像毎に最適化することが好ましい。例えば、前述のように一連のフレーム画像の横隔膜の位置を解析し、安静換気の場合は安静呼気位および安静吸気位となるフレームを検出し、安静呼気位のフレームとその次の安静吸気位のフレームの間のフレーム数から吸気期の時間を求め、その逆数に所定の係数を乗じた値をカットオフ周波数としたローパスフィルタを実施する。このとき安静換気の場合、自動的に設定されるカットオフ周波数は、0.2〜1.0Hzの間に制限することが好ましい。また、ステップS1において、別途測定された安静時における1分間の呼吸数、脈拍数等のバイタルサインを患者情報として入力しておき、これらの値からカットオフ周波数が算出されるようにしてもよい。例えば、患者情報として入力された1分間の呼吸数を1秒間の呼吸数に変換し、その呼吸数に所定の係数を乗じた値をカットオフ周波数としてローパスフィルタを実施してもよい。さらには、入力された1分間の脈拍数を1秒間の脈拍数に変換し、1秒間の呼吸数と1秒間の心拍数の平均値をカットオフ周波数としてローパスフィルタを実施するようにしてもよい。
【0069】
次いで、一連のフレーム画像のステップS102で対応付けられた各小領域毎に解析が行われ、吸気の特徴量及び呼気の特徴量がそれぞれ算出される(ステップS104)。ここでは、呼気の特徴量及び吸気の特徴量として、例えば、呼気期及び吸気期のそれぞれにおける各小領域毎のフレーム間差分値(微分値)の代表値(絶対値の最大値)を算出する。フレーム間差分値は、そのフレーム画像が撮影されたタイミングにおける信号変化量を示す値である。呼吸により息を吸ったり吐いたりすれば、その息の流れに応じて肺の密度が変化し、これによってX線透過量(つまり、画素の信号値)が変化する。よって、信号変化量は、そのタイミングにおける気流速度を示す値とみなすことができる。なお、代表値としては、絶対値の最大値に限らず、中央値、平均値、最頻値としてもよい。
具体的には、まず、撮影順が隣接するフレーム画像間で各小領域の信号値の差分を算出するフレーム間差分処理が行われる。ここでは、各小領域毎に、フレーム番号NとN+1(Nは1、2、3・・・)のフレーム画像について、N+1−Nの差分値が算出される。次いで、呼気期のフレーム間差分値の最大値(絶対値の最大値)が呼気の特徴量として取得され、吸気期のフレーム間差分値の最大値(絶対値の最大値)が吸気の特徴量として取得される。フレーム間差分値の最大値(絶対値の最大値)は、最大微分値に相当する。ここで、各小領域内のフレーム間差分値の符号が正の期間が吸気期、負の期間が呼気期である。
【0070】
次いで、各小領域毎の吸気の特徴量と呼気の特徴量の比の値(吸気の特徴量/呼気の特徴量)が算出される(ステップS105)。ここでは、「吸気期のフレーム間差分値の最大値/呼気期のフレーム間差分値の最大値」(最大流速比と呼ぶ)が算出される。
【0071】
次いで、算出された各小領域毎の「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値のヒストグラムが作成されるとともに、肺野全体における「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値(ここでは、平均値、標準偏差)が算出される(ステップS106)。ヒストグラムの縦軸のカウント数は、肺野内の全小領域の数で除算することにより正規化することが好ましい。
【0072】
次いで、各小領域について求められた「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値を、予め記憶部32に記憶されている、「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値と表示時のパラメータ値との変換テーブルに基づいて表示用パラメータ値に変換し、変換したパラメータ値にて、基準画像(例えば、安静呼気位のフレーム画像)の各小領域を表示した画像が作成される(ステップS107)。変換テーブルは、例えば、正常/異常(重症度1〜n)の各カテゴリに特徴量を分類するときの各カテゴリの特徴量の大きさの範囲を規定する閾値(各カテゴリの閾値)と色相、明度、輝度、透明度の何れかを一対一に対応付けたテーブルである。ここで、表示時のパラメータ値の変換テーブルとしては、特徴量の大きさに対する識別能を高めるために、各カテゴリの閾値と色相を対応付けることが好ましい。
このとき、例えば、数個(例えば、5〜6個)の色相を上記各カテゴリの閾値と対応させ、その間の特徴量の値に対しては中間の色相を割り当てる(グラデーションさせる)ことで識別能の高い表示とすることができる。
表示用パラメータ値に基づいて色付けされた画像は、基準画像のフレーム画像にオーバーレイ表示してもよい。
【0073】
なお、記憶部32には、グリッド有りで撮影された動態画像に対応した変換テーブルと、グリッド無しで撮影された動態画像に対応する変換テーブルが記憶されており、ステップS107及び次のステップS108においては、一連のフレーム画像に付帯されているグリッド有無情報に基づいて、グリッド有りで撮影されたかグリッド無しで撮影されたかが判断され、その判断結果に応じた変換テーブルを用いて色付けが行われる。
【0074】
そして、表示部34に、作成されたヒストグラム、及び作成された静止画像等が並列表示され(ステップS108)、呼吸情報生成処理は終了する。ヒストグラムの領域は、上述の「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値と表示時のパラメータ値との変換テーブルに基づいて、基準画像の肺野領域の各小領域と同様の基準により色付けして表示される。
【0075】
ここで、グリッド有りで撮影したときとグリッド無しで撮影したときの動態解析への影響について説明する。
図11は、或る正常の肺野をグリッド有りとグリッド無しで撮影した動態画像の動態解析結果の比較を示す図である。図11においては、グリッド有りとグリッド無しで撮影した動態画像の各小領域を「吸気期のフレーム間差分値の最大値」(最大吸気気流速度)に基づいて色付けした画像、「呼気期のフレーム間差分値の最大値」(最大呼気気流速度)に基づいて色付けした画像、最大流速比に基づいて色付けした画像、及び最大流速比のヒストグラム、を解析結果として示している。
【0076】
図11は、以下の撮影条件で撮影を行った動態画像の解析結果である。
検出器サイズ40×30cm、検出器画素サイズ194μm、グリッドピッチ80line/cm、グリッド比12:1、管球〜検出器間距離2m、フレーム数75フレーム(約10秒間撮影)、トータル被曝線量(検出器への到達線量を一定とした場合の被写体被曝線量)グリッド有り0.24mGy、グリッド無し0.14mGy
また、最大吸気気流速度、最大呼気気流速度、最大流速比の大きさと色(図11においては濃度で示す)との変換テーブルは、両者を比較するために同一(ここでは、グリッド有り用の変換テーブル)を用いている。
【0077】
同一被写体を撮影した場合のグリッド有りの動態画像とグリッド無しの動態画像とでは、最大吸気気流速度、最大呼気気流速度、最大流速比はほぼ同等であるが、図11に示すように、撮影系の特性等により若干相違が生じることがある。例えば図11においてはグリッド無しで撮影された動態画像のヒストグラムの形状はグリッド有りのものと比較して幅広な形状となっている。そのため、例えば最大流速比によって肺野内の領域やヒストグラムの領域を正常、異常1〜nのカテゴリに分類して色付けする場合、グリッド有りとグリッド無しで同じ閾値(変換テーブル)を用いると、同じ最大流速比であっても異なる色表示、即ち異なる重症度への分類がなされる場合があり、好ましくない。そこで、図11に示すように、グリッド有りと無しとで診断に影響する差異が生じる場合においては、グリッド有無に応じて特徴量の分類に用いる閾値(変換テーブル)を変更する必要がある。
【0078】
グリッド有りで撮影した動態画像を解析した結果とグリッド無しで撮影した動態画像を解析した結果とでどの程度の差異が生じるかは、撮影系の特性や解析内容等によって異なる。よって、撮影系によって、同じ被写体をグリッド有り無しで撮影した複数の画像を解析し、その結果を用いて帰納法的にグリッド有りの動態画像に使用する閾値とグリッド無しの動態画像に使用する閾値を算出しておくことが好ましい。
【0079】
なお、本実施の形態においては、撮影装置1は動態画像をグリッド無しで撮影するよう制御しているため、グリッド無しで撮影された動態画像用の閾値が記憶されていれば十分とも考えられる。しかし、グリッド有りで動態画像を撮影可能な撮影系に診断用コンソール3が接続される場合も想定される。この場合、グリッド有無の撮影条件が異なっていると、判断を誤ることになる。そこで、本実施の形態においては、動態画像を構成する各フレーム画像の付帯情報にグリッド有無情報を付帯させておき、制御部31は、このグリッド有無情報に基づいて、撮影時のグリッド有無に応じた閾値を用いた解析アルゴリズムで解析を行っている。
【0080】
図12A〜図12Cに、ステップS108において表示部34に表示される表示画面の例を示す。
図12Aは、グリッド有りで撮影された正常者の肺野の動態画像を解析した解析結果(呼吸に関する診断支援情報)を表示した表示画面である。図12Bは、COPD(閉塞性疾患)の肺野の動態画像を解析した解析結果を表示した表示画面である。図12Cは、混合性疾患の肺野の動態画像を解析した解析結果を表示した表示画面である。
【0081】
図12A〜図12Cに示すように、ステップS108においては、半切サイズのフレーム画像から抽出された肺野領域内における各小領域(2mm角の矩形サイズ)の「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値のヒストグラム34aと、各小領域の「吸気の特徴量/呼気の特徴量」を一覧表示した静止画像34bと、ヒストグラム34a及び静止画像34bで表示されている色相と「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値との関係を示す表示34cと、肺野全体での「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値34dが表示されている。また、図12A〜図12Cに示すように、ヒストグラム34aは、「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値の大きさに応じて、横軸の領域が6つの色相で色分けして表示される。これにより、医師は、ヒストグラムを一瞥するだけで容易に肺野内における「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の分布を把握することができる。また、各小領域の「吸気の特徴量/呼気の特徴量」を示す静止画像34bにおいて、各小領域が「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値に応じてヒストグラムの色分けと同じ基準で色分けされて表示されるので、医師が肺野内の局所的な異常箇所(閉塞性部分、拘束性部分)を容易に把握することが可能となる。更に、肺野全体での「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値34dとして、その平均値及び標準偏差を算出して画面上に併せて表示することで、肺野全体での「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を数値として医師に提供することができる。
【0082】
ここで、呼気期のフレーム間差分値の最大値(絶対値)を呼気の特徴量、吸気期のフレーム間差分値の最大値(絶対値)を吸気の特徴量とした場合、正常者の肺野では、グリッド有りで動態撮影した動態画像で解析を行った場合、肺野全体の「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の平均値は0.9〜1.2、標準偏差は0.10〜0.22程度であることが知られている。よって、ステップS108で図12Aに示す表示画面が表示された場合、医師は、撮影した肺野が正常であることを容易に把握することができる。
一方、COPD(閉塞性疾患)の肺野では、グリッド有りで動態撮影した動態画像で解析を行った場合、肺野全体の「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の平均値は0.9〜1.2に収まらず(正常者に比べて大きく)、標準偏差も、0.10〜0.22に収まらない(正常者に比べて大きい)ことが知られている。よって、ステップS108で図12Bに示す表示画面が表示された場合、医師は、撮影した肺野がCOPDであることを容易に把握することができる。
一方、混合性肺疾患の肺野では、グリッド有りで動態撮影した動態画像で解析を行った場合、肺野全体の「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値が0.66以下のデータ数、及び1.5以上のデータ数がともに増加することが知られている。よって、ステップS108で図12Cに示す表示画面が表示された場合、医師は、撮影した肺野が混合性疾患であることを容易に把握することができる。
このように、胸部診断支援情報生成システム100においては、「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値から、COPD(閉塞性肺疾患)、混合性肺疾患等の換気不均等の病態もしくはその重症度を特定できるような、有用な診断支援情報を医師に提供することが可能となる。
【0083】
なお、「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値等を利用して被写体Mの正常/異常を判断することとしてもよい。この場合においても、グリッド有無情報に基づいて正常/異常を判断するための閾値を変更することが好ましい。例えば、上述の肺野全体の「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の平均値に基づいて正常/異常と判断する場合、グリッド有りでは平均値0.9〜1.2を正常とし、グリッド無しでは平均値0.8〜1.3を正常として判断することが好ましい。
【0084】
呼気の特徴量及び吸気の特徴量としては、上記の例以外の他の特徴量を用いても良い。
例えば、呼気の特徴量を呼吸1サイクルにおける呼気期に相当するフレーム画像数(呼気時間)、吸気の特徴量を呼吸1サイクルにおける吸気期に相当するフレーム画像数(吸気期間)としてもよい。ここで、肺の換気機能が正常である場合、吸気時間と呼気時間はほぼ同じ長さ、もしくは若干呼気時間が長くなる筈である。よって、「呼気期に相当するフレーム画像数/吸気期に相当するフレーム画像数」の値を見れば、医師は肺疾患の疑いがあるか否かを把握することができる。特に、「呼気期のフレーム画像数/吸気期のフレーム画像数」>1.5の領域は、呼気で換気がしにくく、取り込んだ空気を排出するのが遅れてしまう閉塞性部分であることがわかる。なお、「吸気期のフレーム間差分値の最大値/呼気期のフレーム間差分値の最大値≒呼気時間(呼気のフレーム画像数)/吸気時間(
吸気のフレーム画像数)」の関係が成り立つため、医師は、呼気の特徴量を呼気期のフレ
ーム間差分値の最大値、吸気の特徴量を吸気期のフレーム間差分値の最大値とした場合と同様の判断基準により、正常、COPD(閉塞性肺疾患)、混合性肺疾患の識別を行うことが可能である。
【0085】
また、1呼吸サイクル分の各フレーム画像において、各小領域の画素の信号値(平均信号値)を算出し、各小領域毎に呼吸1サイクルにおける信号値の最小値及び最大値を求め、求めた最小値をその領域の呼気の特徴量、最大値を吸気の特徴量としてもよい。信号値の最大値と最小値は正常な箇所では両者の値の差が大きくなり、異常のある箇所では両者の差が非常に小さくなると考えられる。異常のある箇所では肺胞の動きが悪くなるため、肺胞の密度変化が小さくなるからである。よって、医師は、「信号値の最大値/信号値の最小値」のヒストグラムを参照し、平均値及び標準偏差を確認することで、肺野が正常であるか疾患であるかの判断材料とすることができる。例えば、肺野全体の「信号値の最大値/信号値の最小値」の平均値が1より大きく、標準偏差が小さい場合、肺の機能は正常であると判断することができる。一方、肺野全体の「信号値の最大値/信号値の最小値」の平均値が1に近い値であり、標準偏差が大きい場合、肺の機能に疾患があると判断することができる。
【0086】
その他、「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値として、平均値、標準偏差の他に、カウント数(ブロック(小領域)数)がヒストグラムのピークとなる「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値、もしくは、ピークのカウント数(ブロック数)、もしくは、「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値が所定以上所定以下となるカウント数の割合を指標値として用いても良い。もしくは、これらの複数の指標値を組み合わせて新たな指標値を作成しても良い。
【0087】
例えば、図13に示すように、「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値の一つをX軸、もう一つをY軸としたグラフに、各々の指標値に対する正常、異常の閾値TH1を示し、そのグラフ上に、動態画像から算出した肺野全体での「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値をプロットした図を解析結果としてもよい。図13は、X軸を「吸気期のフレーム間差分値の最大値/呼気期のフレーム間差分値の最大値」の平均値、Y軸をその標準偏差とし、動態画像から算出した肺野全体における「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の平均値、標準偏差の指標値をプロットしたグラフである。このようなグラフを用いて「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値を表示することにより、プロットされた点から閾値TH1までの距離によって異常の程度が視覚的に容易に把握することが可能となる。
【0088】
また、例えば、2つの指標値(例えば、「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の平均値、標準偏差)を線形結合した値を新たな指標値とし、図14に示すように2つの指標値の一方をX軸、他方をY軸としたグラフに、新たな指標値(2つの指標値を線形結合した指標値)を重症度により分類するための閾値th1〜th4を示し、このグラフ上に動態画像から算出した新たな指標値をプロットしてもよい。線形結合の例としては、平均値及び標準偏差に対する多数の測定値データから主成分分析により算出された第1主成分を指標値とすることができる。このようなグラフを用いることにより、異常の程度が視覚的により容易に把握することが可能となる。また、例えば、複数(M個)の指標値に対する多数(N個)の測定値データより、N×M個のデータに対する共分散行列の最大固有値を算出することで第一主成分を算出し、算出された主成分を指標値として用いてもよい。
【0089】
また、「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値の他に、吸気の特徴量、もしくは呼気の特徴量のそれぞれに対して傾向を示す指標値を算出してもよい。例えば、図15に示すように、小領域毎に算出した吸気もしくは呼気の特徴量に対して、左右肺野内をそれぞれ上中下の3つに分割した計6つの領域の各々において変動係数(=標準偏差/平均値)を算出し、変動係数の大きさに応じた色相(又は輝度又は彩度)によって、6つの領域を色付けし表示した静止画像を作成してもよい。このような表示をすることで、不均等換気の分布を把握することが容易となり、不均等換気が行われている部分が区域的であるかもしくはびまん性であるかが容易に判定可能となる。
【0090】
次に、図5のステップS24において実行される血流情報生成処理について説明する。
図16に、血流情報生成処理のフローチャートを示す。
【0091】
ここで、本実施の形態における血流解析は、心臓の収縮によって右心室から大動脈を介して血液が急激に吐出されることにより肺野血管が拡がるので、この拡がりを動態画像を解析することにより抽出して血流に関する診断支援情報として出力するものである。即ち、図17に示すように肺野において血管が拡張すると、肺血管が拡がった領域の放射線透過量が、肺野(肺胞)領域を透過する放射線透過量よりも比較的大きく減少するので、この領域に対応する放射線検出部13の出力信号値が低下する。このような心臓の拍動に呼応した肺血管の拡がりは、心臓近傍の動脈から末梢へ伝播する。そこで、動態画像を構成する一連のフレーム画像間の放射線検出部13の画素(ピクセル)単位、または、複数画素からなる小領域単位(画素ブロック単位)を互いに対応付け、画素単位又は小領域単位毎に、信号値が最も低くなったフレーム画像を求め、そのフレーム画像の該当する領域を肺血管が血流により拡張したタイミングを示す信号として色付けする。そして、色付け後の一連のフレーム画像を表示部34に順次表示することで、血流の状態を医師が視認できるようにする。
【0092】
各画素(小領域)において、血流により肺血管が拡張したタイミングを示す信号(血流信号という)は、図18の(A)に示すように、その画素(小領域)の信号値の時間変化を示す波形(出力信号波形という)の極小値を求めることにより取得することができる。この血流信号は心臓の拍動周期と同じ間隔で表れるが、不整脈等の異常個所があると、図18の(B)に示すように、心臓の拍動周期と異なる間隔で血流に伴う血管の拡張と関係なく極小値が表れる場合がある。そこで、本実施の形態においては、心臓の拍動を示す拍動信号波形と各小領域の出力信号波形との相関係数を求めることにより、精度良く血流信号を抽出できるようにしている。
【0093】
血流情報生成処理においては、まず、各フレーム画像から肺野領域が抽出される(ステップS201)。肺野領域の抽出については、図6のステップS101で説明したものと同様であるので説明を援用する。
【0094】
次いで、各フレーム画像の肺野領域が複数の画素ブロックからなる小領域に分割され、各フレーム画像の小領域が互いに対応付けられる(ステップS202)。肺野領域の小領域の分割及びフレーム画像間での小領域の対応付けについては、図6のステップS102で説明したものと同様であるので説明を援用する。また、各小領域を構成する各画素の信号値は、それらの代表値(平均値、中央値、最頻値等)に置き換えられる。
【0095】
なお、ステップS202の処理を行わずに、以下、各小領域単位でなく、各ピクセル単位で処理を行っていくこととしてもよい。
小領域のサイズを大きくすると、各小領域の出力信号値(代表値)には何らかの周期的な変化が表れるが、これは、上記の呼吸周期によるノイズを含んだものとなる。また、小領域のサイズが大きくなると、個々の小領域の積算値に占める血管の拡張の影響の割合が低下し、肺血管の拡張の周期検出精度が徐々に低下し、困難になる。また、後述するステップS210で血流信号が識別可能に表示された動態画像(パラパラめくり表示画像)を観察するユーザ(医師)の残像効果も加味した視認性を考慮すると、本発明における好ましい小領域のサイズは0.2〜5mm、より好ましくは0.4〜2mmである。
【0096】
次いで、血流信号を抽出する際の基準となる拍動信号波形が取得される(ステップS203)。
拍動信号波形としては、以下の何れかを用いることができる。
(1)心臓領域(又は大動脈領域)にROI(関心領域)を定め、そのROIにおける信号値の時間変化を示す波形
(2)(1)の波形を反転させた信号波形
(3)心電検知センサより得られた心電信号波形
(4)心壁の動き(位置の変化)を示す信号波形
即ち、胸部診断支援情報生成システム100においては、上記(1)〜(4)の何れかにより拍動信号波形を取得する手段を備える。なお、心電検知センサによる心電信号波形を拍動信号波形として使用する構成の場合は、動態撮影によりフレーム画像が取得されている間に心電検知センサによる心電信号波形の取得が同時に行われてRAMに記憶される。ステップS203においては、RAMに記憶されている心電信号波形が読み出される。
なお心臓領域のROIは右心室領域に定めることが理想であるが、左心室領域に定めることとしても良い。これは、動態画像では右心室領域と比べて左心室領域で信号波形の抽出が容易であること、右心室と左心室での心拍周期がほぼ同じであることによる。ただし、左心室を拍動信号波形として用いる場合、後述する方法にて算出した血管拡張タイミングに、右心室と左心室の心拍周期のタイミング差をオフセット量として加算する等の方法によって、血管拡張タイミングを補正しても良い。
【0097】
上記(1)の信号波形は、図19に示すように、操作部33により指定されたROI領域に対し、横軸を動態画像の撮影開始からの経過時間(フレーム番号)、縦軸をROIにおける信号値(代表値)とした座標空間上に各フレーム画像のROI領域の信号値(代表値)をプロットすることにより作成することができる。
(2)は、図20に示すように、(1)の信号波形を反転させたものである。この波形は、各小領域(又は各ピクセル)の信号波形に近い形状としておくことにより、後段の処理工程で相互相関係数を求めやすくしたものである。
【0098】
図21の(A)は、心臓領域に設定したROIの1心拍分の出力信号波形を模式的に示す図、図21の(B)は、肺血管領域の1心拍分の出力信号波形を模式的に示す図である。図21の(A)に示すように、1心拍におけるROIの出力信号波形は、心臓(心室)の収縮期には、心臓の収縮によって心室から大動脈に急激に血液が吐出するのでROIの信号値は急激に増加するが、心臓(心室)の拡張期には静脈からのなだらかな血液の吐入により心臓が拡張するので、信号値はなだらかに減少する。一方、肺野血管においては、心臓の収縮によって心臓から急激に吐出された血液の吐入によって血管壁が拡張されるので、図21の(B)に示すように、心臓の収縮期に対応して信号値が急激に減少する。肺野血管の収縮期には心臓への血液のなだらかな吐出によって血管壁が収縮するので信号値は増加する。このように、肺野血管領域の出力信号波形は心臓領域の出力信号波形を反転させたものになる。そこで、両者の信号波形を揃えるために、心臓領域の出力信号波形を反転させることで、図21の(C)と(D)に示すように、両者の信号波形の形状の特徴を揃える。
【0099】
(4)の信号波形は、各フレーム画像においてテンプレートマッチング等により心臓領域を認識し、心壁位置の基準位置(例えば、心臓領域においてx座標(水平方向座標)が最も大きい(外側の)エッジ点)を特定し、横軸を動態画像の撮影開始からの経過時間(フレーム番号)、縦軸を心壁位置の基準位置(x座標)とした座標空間上に各フレーム画像の心壁位置の基準位置をプロットすることにより作成することができる。
【0100】
次いで、小領域毎に、その小領域の信号値の時間変化を示す波形(出力信号波形)が生成される(ステップS204)。小領域毎の出力信号波形は、横軸を動態画像の撮影開始からの経過時間(フレーム番号)、縦軸を信号値(放射線検出部13の出力信号値の代表値。例えば、平均値、中央値、最頻値等)とした座標空間上に各フレーム画像のその小領域の代表値をプロットすることにより作成することができる。
【0101】
次いで、拍動信号波形及び各小領域の出力信号波形に時間軸方向のフィルタリング処理が施される(ステップS205)。
このフィルタリング処理は、呼吸等による低周波数な信号変化を除去し、血流による信号値の時間変化を抽出するための処理である。例えば、小領域毎の信号値の時間変化に対して、安静呼吸画像群では低域カットオフ周波数0.7Hz、深呼吸画像群では低域カットオフ周波数0.5Hzでハイパスフィルタリングを行う。若しくは、さらに高周波数のノイズ成分を除去するために2.5Hzの高域カットオフ周波数で高周波数も遮断するバンドパスフィルタによってフィルタリングを行っても良い。
ここで、前記カットオフ周波数は、固定値とするよりも、撮影された動態画像毎に最適化することが好ましい。例えば、前述のように一連のフレーム画像の心臓領域の信号変化から、心臓の収縮期の時間と拡張期(弛緩期)の時間を算出する。そして、拡張期の時間の逆数に所定の係数を乗じた値をハイパスフィルタもしくはバンドパスフィルタで低周波数を遮断するカットオフ周波数として設定し、また、バンドパスフィルタの場合は、収縮期の時間の逆数に所定の係数を乗じた値を高周波数を遮断する高域カットオフ周波数として設定する。更に、低域カットオフ周波数は、呼吸による周波数成分を考慮し、一連のフレーム画像から横隔膜の値を解析し、安静換気の場合は安静呼気位及び安静吸気位となるフレーム画像を検出し、安静呼気位のフレームとその次の安静吸気位のフレームの間のフレーム数から吸気期の時間を求め、その逆数と、前記拡張期の時間の平均値に所定の係数を乗じた値を低域のカットオフ周波数として設定してもよい。このとき安静換気の場合、自動的に設定されるカットオフ周波数は、低域カットオフ周波数は0.2〜1.0Hzの間に、高域カットオフ周波数は、2.0Hz以上に制限することが好ましい。また、図4のステップS1において、別途測定された安静時における1分間の呼吸数、脈拍数等のバイタルサインを患者情報として入力しておき、これらの値からカットオフ周波数が算出されるようにしてもよい。例えば、患者情報として入力された1分間の呼吸数を1秒間の呼吸数に変換し、その呼吸数に所定の係数を乗じた値を低域カットオフ周波数としてもよい。そして、入力された1分間の脈拍数を1秒間の脈拍数に変換し、1秒間の呼吸数に所定の係数を乗じた値を高域カットオフ周波数としてもよい。更に、1秒間の呼吸数と1秒間の心拍数の平均値に所定の係数を乗じた値を低域カットオフ周波数として設定するようにしてもよい。
【0102】
なお、ステップS205におけるフィルタリング処理は、精度良く血流信号を抽出するために行うものであり、要求される精度や処理速度によっては省略しても構わない。個々の小領域(ピクセル)に対する肺血管位置はずっと一定ではなく、呼吸に伴い移動するが、肺血管が当該小領域からはずれたらその小領域の信号値としては大きくなる。肺野の呼吸周期は2〜10秒程度なので、各小領域への肺血管の写りこみの周期も呼吸周期に追従することになる。また、呼吸周期に伴い肋骨位置も移動し、個々の小領域の信号値に影響を与える。しかしながら、心臓の拍動周期は呼吸周期に比べてかなり短いので、上記の各成分が重畳したRAWデータ(フィルタ処理を施してない画像)でもこの周期差を利用することで血流信号を取得することが可能となる。
【0103】
次いで、フィルタリング処理後の拍動信号波形から心臓が最も収縮したタイミングのフレーム画像の番号が取得される(ステップS206)。例えば、拍動信号波形として上述の(2)で説明したROIにおける反転した信号波形を用いる場合、図22の(A)に示す波形の極小値(信号値が最低となるフレーム画像。図22の(A)においてフレーム番号8、16)が心臓が最も収縮したタイミングのフレーム画像である。
【0104】
次いで、各小領域毎に、出力信号波形を1フレーム間隔ずつずらしながら(時間方向にシフトさせながら)拍動信号波形との相互相関係数が算出される(ステップS207)。
例えば、最初に、撮影開始からのフレーム番号が互いに一致した同一時間軸の拍動信号波形と出力信号波形の2つの信号波形の相互相関係数を算出する(時間シフトなしの相互相関係数を算出する)。次いで、拍動信号波形に対して、出力信号波形を1フレーム分左へシフト、すなわち、1フレーム間隔進めて、2つの信号波形の相互相関係数を算出する。以下、出力信号波形の左シフトを繰り返し、各小領域に対してそれぞれ出力信号波形を、シフトなしから1心拍周期以上左シフトした相互相関係数を算出する。次いで、同様に、出力信号波形を1フレーム分ずつ右へシフトさせながら、シフトなしから1心拍周期以上右シフトした相互相関係数を算出してもよい。ただし、通常は、心臓から抽出した拍動信号波形に対して、出力信号波形は位相が時間的に遅延しているため、遅延度合いを特定する左シフトのみを計算すれば十分である。ただし、相互相関係数算出時には、シフトしたフレーム数分だけデータ数が少なくなるため、シフト量に応じてデータ数が減少することで相互相関係数の計算精度が下がってしまう。そこで、拍動信号波形、出力信号波形は完全な周期関数であるとみなして、相互相関係数を、シフトなしから1/2心拍周期以上左シフトした場合と、同様に、シフトなしから1/2心拍周期以上右シフトした場合に対して算出し、右シフトに対する相互相関係数は(1心拍周期−右シフト量)だけ左シフトした場合の相互相関係数とみなしてもよい。このようにすることで、相互相関係数算出時のシフト量に応じたデータ数減少を抑えることができる。相互相関係数は、以下の〔数1〕により求めることができる。
【数1】
【0105】
次いで、各小領域毎に、相互相関係数が最大となったときのずらし量(シフト量)に基づいて、肺血管が血流により拡張したタイミングのフレーム画像の番号が特定される(ステップS208)。例えば、図22の(A)に示す1心拍周期が約8フレームである拍動信号波形に対して、ある小領域の出力信号波形が図22の(B)に点線で示す出力信号波形である場合は、図22の(B)に示す出力信号波形を左に5シフトさせたときに相互相関係数は最大となる。そこで、ステップS206で取得された、拍動信号波形において心臓が最も収縮したタイミングのフレーム画像の番号8および16から右に5シフトした13および21をその小領域において肺血管が血流により拡張したタイミングのフレーム画像の番号として特定する。
【0106】
そして、各小領域毎に、ステップS208で特定したフレーム番号のフレーム画像のその小領域には、肺血管が血流により拡張したタイミングであることを示す識別情報として、例えば赤色が割付られ、それ以外のフレーム画像のその小領域には黒色が割り付けられ(ステップS209)、各小領域に赤、黒が割り付けられた動態画像のフレーム画像が表示部34に動画表示(順次表示)される(ステップS210)。
【0107】
図23に、ステップS210において表示部34に動画表示されるフレーム画像群の一例を示す。ステップS210では、図23の左上のフレーム画像から表示部34に順次表示される。
図23に示すように、ステップS210においては、時系列で各小領域の肺血管が血流により拡張するタイミングが赤色(図23においてはグレー)で動画表示されるので、従来のように造影剤を使用しなくても医師等の観察者は血流のイメージを視認可能となる。そして、血流が正常であるか、血流が滞っている箇所があるか等を診断することが可能となる。呼吸に関する解析のようにフレーム間差分に基づく特徴量を算出するものではないので、従来のように呼吸の解析結果に比べてS/N比が劣ることもなく、呼吸、血流のそれぞれに応じた精度良い診断支援情報を提供することができる。
また色付け表示方法として、各小領域において、肺血管が血流により最大に拡張したタイミングのフレームのみに色付けを施すだけでなく、各フレームの相互相関係数の値に応じて、色付けした画像を表示しても良い。例えば、正の相互相関係数値が高いフレーム(肺血管が血流により最大に拡張した付近のフレーム)では強い赤(彩度大の赤)、正の相互相関係数が低いフレーム(肺血管が血流により多少拡張したフレーム)では弱い赤(彩度小の赤)、負の相互相関係数(肺血管に血流が存在しないフレーム)では黒が割り付けられた動態画像のフレーム画像を表示部34に動画表示(順次表示)する。このような表示を行うことで、医師は肺血管が血流により最大に拡張するタイミングだけでなく、血流が肺血管をより滑らかに流れるイメージを視認することが可能となる。
【0108】
上記画像解析処理においては、心臓の拍動を示す拍動信号波形と各小領域の出力信号波形との相互相関係数を用いることにより、精度良く血流信号を抽出できるようにしたが、要求される精度や処理速度に応じて、相互相関係数を用いずに、出力信号波形の極小値となったタイミングの信号を血流を示す信号として抽出しても構わない。例えば、拍動信号波形から心拍周期を求め、出力信号波形において心拍周期間隔で表れる極小値のみを血流を示す信号として抽出することとしてもよい。また、血管拡張タイミングにて色付けしたフレーム画像は、動画表示だけでなく、並列表示に切り替えられることとしてもよい。また、上記では複数周期の拍動信号波形と出力信号波形を用いて相互相関係数を算出することとしたが、拍動信号波形の各1心拍周期に対して、極小値のタイミングを中心とした1〜1.5心拍分の拍動信号波形を抽出し、これらの抽出したそれぞれの拍動信号波形に対して、複数周期の場合と同様に、出力信号波形を1フレームずつ左、さらに必要であれば右にシフトして、相互相関係数を算出するモードを設けても良い。このように、拍動信号波形を各1心拍毎に分割することで、ある1周期中に不整脈等のノイズがあった場合はその影響は受けやすくなるが、各1心拍に対しては肺野内各小領域の血管拡張のタイミングをより正確に算出できるようになる。また、この他に、心臓の拍動に対する肺野内各小領域の出力信号波形の相対的な遅延度合いを表現する画像として、単純に複数周期の拍動信号波形と出力信号波形の相互相関係数を色(輝度、彩度、明度、色相など)に対応づけて色付け表示した画像を生成し、1フレームずつ出力信号波形をシフトしながら生成した画像も動画表示もしくは並列表示できるようにしても良い。これにより、単に、拍動信号波形との類似性が高いタイミングにおいて色付けが強調された画像を、動画もしくは並列表示することができる。この表示画像においても、拍動信号波形を基準とした相対的な遅延として、血流による肺血管の拡張が時系列的に肺野内に広がる様子を観察することができる。またこのとき、各小領域において、1フレームずつ出力信号波形をシフトして計算した複数のシフト量に対する相互相関係数から、最大値、平均値等の1つの代表値を算出し、算出した代表値に対して色を対応付けて色付け表示した画像を生成し、表示しても良い。これにより、肺野内の血流情報として、各小領域における出力信号波形の拍動信号波形に対する類似度合いを、医師が一目で把握しやすいよう、1画像に集約した形で表示することが可能となる。さらに、この相互相関係数に色を対応づけて表示する場合において、相互相関係数を数1の式に対してσBで正規化せずに(徐さずに)算出することで、相互相関係数は、単に拍動信号波形との類似性だけでなく、出力信号波形の大きさにも応じて値が大きくなる値となる。このように、σBでの正規化を行わないことで、拍動信号波形との類似性が高いタイミング、かつ、出力信号波形の振幅が大きい小領域において、色付けが強調された画像を、動画もしくは並列表示することができる。このような表示も可能にすることで、医師は、単に心臓の拍動に対する肺野内各小領域の血管拡張タイミングだけでなく、各小領域における血管の拡張の度合も含めて、患者の正常/異常を判断できるようになり、診断精度を向上させることができる。
なお、精度良く解析を行うために、グリッド有りで撮影を行ったり、オフセット補正処理やゲイン補正処理を行ったりする構成としてもよい。
【0109】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態においては、移動が困難な患者用の移動型胸部診断支援情報生成システム70に本発明を適用した場合について説明する。移動型胸部診断支援情報生成システム70は、図24に示すように、回診車71ごと病室Rc等に持ち込まれ、FPDカセッテ72を、例えばベッドBに寝ている被写体Hの身体とベッドBとの間に差し込む等した状態で、ポータブルの放射線源52Pから放射線を照射して撮影を行い、診断支援情報を生成するためのシステムである。
【0110】
図24に示すように、移動型胸部診断支援情報生成システム70は、ポータブルの放射線源52Pと、放射線発生装置57とが回診車71に搭載されており、また、回診車71に設けられたアクセスポイント53により、持ち運び可能なコンソールCとFPDカセッテ72が無線接続することができるようになっている。
【0111】
コンソールCの基本的な構成は撮影用コンソール2や診断用コンソール3と同様に、制御部、記憶部、操作部、表示部、通信部を備えた構成である。コンソールCの記憶部には、可搬型の放射線検出器であるFPD(Flat Panel Detector)72から送信された画像データをポジショニングの確認用に表示(静止画表示又は動態表示)するためのプログラム、図5で説明した画像解析処理を実行するためのプログラムが記憶されている。また、コンソールCには、通信ケーブル等によりFPDカセッテ72と接続してデータ通信を行うためのコネクターが備えられている。
【0112】
FPDカセッテ72は、放射線技師等の撮影者が持参してもよいが、FPDカセッテ72は比較的重く、落下すると壊れたり故障したりする可能性があるため、回診車71に設けられたカセッテ用のポケット71aに挿入されて回診車71とともに搬送できるようになっている。
【0113】
FPDカセッテ72は、動態撮影及び静止画撮影対応のFPDである。このFPDカセッテ72は、図25に示すように、制御部721、検出部722、記憶部723、コネクター724、バッテリー725、無線通信部726等を備えて構成され、各部はバス727により接続されている。
【0114】
制御部721は、CPU、RAM等により構成される。制御部721のCPUは、記憶部723に記憶されているシステムプログラムや処理プログラム等の各種プログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行する。
例えば、制御部721は、コネクター724を介してコンソールCと接続されると、動態撮影モードに移行し、コネクター724を介した外部電力供給及び有線通信する構成に変更する。これは、動態撮影では、静止画撮影に比べ、データ転送容量や転送時間が圧倒的に増えるので、一のフレーム画像の転送中に他のフレーム画像の撮影(読取り)に対しノイズを与えないため、且つ、転送時間自体を短くするためであり、さらに、一連の撮影途中のバッテリー切れを防止するためである。そして、制御部721は、動態撮影モード処理を実行する。即ち、制御部721は、記憶部723に記憶されている動態撮影用の画像読取条件に基づいて検出部722のスイッチング部を制御して、各検出素子に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングしていき、検出部92に蓄積された電気信号を読み取ることにより画像データ(フレーム画像)を生成する。次いで、生成されたフレーム画像の肺野領域を複数の小領域に分割し、各フレーム各小領域の出力信号値をその小領域の代表値(平均値、中央値、最頻値等)に置き換えるビニング処理を行う。そして、ビニング処理されたフレーム画像の画像データを順次コネクター724を介してコンソールCに送信する。
一方、コネクター724を介してコンソールCと接続されていないと判断した場合、制御部721は、静止画撮影モード処理を実行する。即ち、検出部722による放射線自動検知機能を有効にし、記憶部723に記憶されている静止画撮影用の画像読取条件に基づいて検出部722のスイッチング部を制御して、各検出素子に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングしていき、検出部92に蓄積された電気信号を読み取ることにより画像データ(静止画像)を生成する。そして、生成されたフレーム画像の画像データを無線通信部726を介してコンソールCに送信する。
【0115】
検出部722は、例えば、ガラス基板等を有しており、基板上の所定位置に、放射線源52Pから照射されて少なくとも被写体を透過した放射線をその強度に応じて検出し、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する複数の検出素子が二次元状に配列されている。検出素子は、フォトダイオード等の半導体イメージセンサにより構成される。各検出素子は、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング部に接続され、スイッチング部により電気信号の蓄積及び読み出しが制御される。
なお、生成された静止画像又はフレーム画像を構成する各画素は、検出部722の各検出素子のそれぞれから出力された信号値(ここでは、濃度値)を示す。
【0116】
記憶部723は、例えば半導体の不揮発性メモリ等で構成されている。記憶部723には、検出部722を制御するための各種プログラムや、動態撮影用及び静止画撮影用の画像読取条件等が記憶されている。また、記憶部723には、検出部722から出力された画像データが一時的に記憶される。
【0117】
コネクター724は、コンソールC側のコネクターと接続し、コンソールCとのデータ送受信を行う。また、コネクター724は、コンソールCから供給される電力を各機能部へ供給する。なお、バッテリー725を充電する構成としても良い。
【0118】
バッテリー725は、制御部721の制御に基づいて、FPDカセッテ72の各部に電力を供給する。バッテリー725としては、例えばニッカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の充電自在な電池等を適用することができる。
【0119】
無線通信部726は、アクセスポイント53を介してコンソールCと無線によるデータ通信を行う。
本実施形態では、移動型胸部診断支援情報生成システム70でのアクセスポイント53には、他のアクセスポイントに割り当てられた何れの識別情報(すなわちSSID)とも異なる識別情報(SSID)が割り当てられている。そのため、移動型胸部診断支援情報生成システム70のアクセスポイント53は、当該アクセスポイント53のSSIDが設定されたFPDカセッテ72から送信される画像データ等のみをコンソールCに送信し、他のSSIDが設定されたFPDカセッテからは画像データ等を受け付けない。そのため、移動型胸部診断支援情報生成システム70と他のシステムとの間で信号の混信が生じることを確実に防止することが可能となる。
【0120】
以下、移動型胸部診断支援情報生成システム70における動態撮影時の動作について説明する。
FPDカセッテ72において、コネクター724にコンソールC側のコネクターが接続されると、動態撮影モードに切替が行われ、動態撮影が行われる。このとき、患者の被曝量低減及びポジショニングの邪魔になることを防止するために、グリッド無しで撮影を行うことが好ましい。
撮影により生成されたフレーム画像の画像データにはビニング処理が施され、各フレーム画像の肺野領域が所定画素ブロックサイズの小領域に分割され、コネクター724を介してコンソールCに送信される。ここで、回診による撮影は、重篤な患者を被写体Hとして撮影することが多いため、リアルタイムでポジショニングの確認を行えるようにすることが好ましい。そのため、例えば、4×4程度の、撮影室での撮影時のビニングサイズ(例えば、2×2)に比べて大きいサイズとすることが好ましい。
【0121】
コンソールCでは、FPDカセッテ72からフレーム画像の画像データ群が受信されると、受信された各画像データが記憶部に記憶されるとともに、各画像データの画素が間引きされ、ポジショニングや動態周期の確認用(プレビュー用)に順次表示部に表示される。なお、コンソールCでは連続して受信された画像データを一つのシリーズ画像(1回の動態撮影セットの画像)として扱う。予め定められた時間に画像データの受信がない場合、1セットの撮影が終了したと判断し、予め記憶されている撮影オーダ情報との対応付けが行われる。
なお、プレビュー用に順次フレーム画像を表示する代わりに、各フレーム画像を呼気期又は吸気期に基づいて分類し、呼気系フレーム画像群と吸気系フレーム画像群に分けて表示部に表示することとしてもよい。例えば、肺野の基準位置の信号値がその前に撮影されたフレーム画像の同位置の信号値より大きい場合は吸気、小さい場合は呼気に分類することができる。このようにすれば、呼吸1サイクル未満の撮影であった場合に再撮影が必要であることを撮影者が容易に認識することができる。また、2枚目のフレーム画像が到着したらすぐに演算が開始できるので、処理時間がそれほどかかることがない。
【0122】
コンソールCにおいて、操作部から再撮影不要の指示が入力されると、操作部から指定された種類(呼吸及び/又は血流)の画像解析処理が実行され、解析結果が表示部に表示される。画像解析処理の具体的な処理の流れについては、上記第1の実施の形態において説明したものと同様であるので説明を援用する。なお、回診場所における即時の解析結果を必要としない場合は、撮影室のコンソール(第1の実施の形態の診断用コンソール3)に画像データを転送して画像解析処理を行うこととしてもよい。
【0123】
第2の実施の形態における移動型胸部診断支援情報生成システム70によれば、回診時においても、1回の動態撮影で、被曝線量を減らしつつ呼吸と血流の解析を効率よく行うことが可能となる。
【0124】
以上説明したように、胸部診断支援情報生成システム100によれば、診断用コンソール3の制御部31は、撮影装置1において動態撮影により取得された複数のフレーム画像について、放射線検出器13における同一位置の検出素子の出力する信号値を示す画素又は画素ブロックを前記複数のフレーム画像間で互いに対応付け、時間的に隣接するフレーム画像間の前記互いに対応する画素又は画素ブロックの信号値の差分値に基づいて前記被写体の呼吸に関する診断支援情報を生成する。また、前記互いに対応する画素又は画素ブロックの信号値の時間変化を示す出力信号波形を生成し、当該生成された出力信号波形に基づいて被写体Mの血流に関する診断支援情報を生成する。
即ち、1回の動態撮影で取得された一連の複数のフレーム画像を用いて、呼吸についてはフレーム間差分値に基づく特徴量の算出、血流については出力信号波形に基づく血流信号の抽出という異なる解析方法により診断支援情報を生成する。
従って、呼吸解析用と血流解析のそれぞれに対して撮影を行う必要がなくなり、患者の被曝線量を増やすことなく、呼吸と血流のそれぞれについて精度の良い診断支援情報を提供することが可能となる。
【0125】
また、被写体Mの呼吸に関する診断支援情報、即ち、呼吸機能の特徴量を表示する際には静止画表示を行い、被写体Mの血流に関する診断支援情報、即ち、各小領域の血流信号を表示する際には動画表示を行うので、診断支援情報の内容に応じて、診断に必要な情報を医師が認識しやすい態様で出力することができる。
【0126】
また、血流に関する診断支援情報を生成するに際し、動態撮影を行ったときの心臓の拍動信号波形に対し、各小領域毎に、出力信号波形をフレーム単位でずらしながら相互相関係数を算出し、心臓の拍動信号波形から取得した心臓が収縮したタイミングから、相互相関係数が最大となったときのずらし量だけずらしたタイミングをその小領域の肺血管が血流により拡張したタイミングとして特定し、特定したタイミングのフレーム画像の当該小領域に肺血管が血流により拡張したタイミングであることを示す識別情報(ここでは赤色)を付与する。従って、不整脈等の異常が存在するような場合であっても、各小領域の肺血管が血流により拡張したタイミングを精度良く特定することができる。
【0127】
また、相互相関係数の算出は、複数周期の拍動信号波形及び出力信号波形を用いて行うので、ある1周期中に不整脈等の異常が存在するような場合であっても安定した相互相関係数を算出結果を取得することが可能となる。
【0128】
また、被写体の動態に係る診断支援情報を生成する場合には、オフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理は行わないので、動態に係る診断支援情報の作成にかかる処理時間を大幅に低減することができる。
また、被写体の動態に係る診断支援情報を生成する場合には、グリッド無しで撮影を行うので、放射線検出部13への到達線量は従来と略同等に維持しつつ被写体Mの被曝線量の低減することが可能となる。
【0129】
移動型胸部診断支援情報生成システム70においても、上記の胸部診断支援情報生成システムと同様の効果を奏することができる。
【0130】
なお、上記第1及び第2の実施の形態の記述内容は、本発明の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
また、胸部診断支援情報生成システム100、移動型胸部診断支援情報生成システム70を構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0131】
100 胸部診断支援情報生成システム
1 撮影装置
11 放射線源
12 放射線照射制御装置
13 放射線検出部
14 読取制御装置
2 撮影用コンソール
21 制御部
22 記憶部
23 操作部
24 表示部
25 通信部
26 バス
3 診断用コンソール
31 制御部
32 記憶部
33 操作部
34 表示部
35 通信部
36 バス
【技術分野】
【0001】
本発明は、胸部診断支援情報生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフィルム/スクリーンや輝尽性蛍光体プレートを用いた放射線(X線)の静止画撮影及び診断に対し、FPD(flat panel detector)等の半導体イメージセンサを利用して診断対象部位の動態画像を撮影し、診断に応用する試みがなされるようになってきている。具体的には、半導体イメージセンサの画像データの読取・消去の応答性の早さを利用し、半導体イメージセンサの読取・消去のタイミングと合わせて放射源からパルス状の放射線を連続照射し、1秒間に複数回の撮影を行って、診断対象部位の動態を撮影する。撮影により取得された一連の複数枚の画像を順次表示することにより、医師は検査対象部位の一連の動きを認識することが可能となる。
【0003】
また、動態撮影で得られた一連のフレーム画像を解析して診断支援情報を生成し、早期診断に向けて医師に提供することが提案されている。
例えば、特許文献1には、血流によって血液濃度が相違するという想定により、胸部の動態撮影で得られた一連のフレーム画像から心臓から押し出された血液の固まり部分を血管内の濃度変化に基づいて検出して血流速等を求める技術が記載されている。
また、特許文献2には、胸部の動態撮影で得られた一連のフレーム画像について、隣接するフレーム画像間でフレーム間差分値を算出し、この算出したフレーム間差分値に基づいて、呼吸(換気)及び血流が異常であるか否かを判定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−136573号公報
【特許文献2】国際公開第2009/090894号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1においては、精度の良い解析を行う為には、血管領域の位置移動を排除しておく必要があり、つまり呼吸を停止しておく必要があり、換気に関する特徴量の算出ができない。特許文献2においては、換気及び血流に関する両特徴量を一度の撮影データで算出可能であるが、精度の良い解析結果をえるには、精度の良い各小領域のワーピング処理が必須となるため処理時間を必要とし、また、両特徴量を同一の処理アルゴリズム(フレーム間差分信号値)で算出している為、血流に関する特徴量は換気に関する特徴量ほどの精度を得難い欠点を有していた。
【0006】
ところで、心拍数の測定を手首動脈の触診で脈動数をカウントすることからもわかるように、心臓から肺血管に血液が流れる際には、血管の部分的拡張(脈動)が肺血管領域にわたって伝搬する。この肺血管の拡張は、その拡張した部分に対応する放射線検出器の検出素子が出力する信号値に反映され、その信号値の変化量(非血管領域に対する血管領域の信号変化量)は比較的大きい。従い、被写体胸部の動態撮影を行って得られた一連のフレーム画像データを、換気の特徴量処理とは異なる当該信号値差に基づいた解析を行うことで、より精度良く血流に関する診断支援情報を抽出して医師に提供できることを本願発明者らは見出した。
【0007】
本発明の課題は、1回の動態撮影で呼吸及び血流のそれぞれに関する精度のよい診断支援情報を提供できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
放射線源と、2次元状に配置された複数の検出素子により前記放射線源により照射され被写体を透過した放射線を検出して前記被写体の画像データを生成する放射線検出器と、を用いて前記被写体の胸部の撮影を行う撮影手段と、
前記撮影手段により取得された画像データに基づいて前記被写体の胸部に関する診断支援情報を生成する画像解析手段と、
前記画像解析手段により生成された診断支援情報を表示する表示手段と、
を備える胸部診断支援情報生成システムであって、
前記撮影手段は、前記放射線源から連続的に放射線を照射して前記被写体の胸部の動態を示す複数のフレーム画像を取得可能に構成され、
前記画像解析手段は、
前記撮影手段により取得された複数のフレーム画像について、前記放射線検出器における同一位置の検出素子が出力する信号値を示す画素又は画素ブロックを前記複数のフレーム画像間で互いに対応付け、時間的に隣接するフレーム画像間の前記互いに対応する画素又は画素ブロックの信号値の差分値に基づいて前記被写体の呼吸に関する診断支援情報を生成する呼吸情報生成手段と、
前記撮影手段により取得された複数のフレーム画像について、前記放射線検出器における同一位置の検出素子が出力する信号値を示す画素又は画素ブロックを前記複数のフレーム画像間で互いに対応付け、前記互いに対応する画素又は画素ブロックの信号値の時間変化を示す出力信号波形を生成し、当該生成された出力信号波形に基づいて前記被写体の血流に関する診断支援情報を生成する血流情報生成手段と、
を有する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記呼吸情報生成手段は、前記複数の各フレーム画像から肺野領域を抽出し、前記抽出された肺野領域の前記各画素又は各画素ブロック毎に時間的に隣接するフレーム画像間で信号値の差分値を算出し、算出した差分値に基づいて当該画素又は画素ブロックにおける呼吸に関する特徴量を前記被写体の呼吸に関する診断支援情報として生成し、
前記血流情報生成手段は、前記複数の各フレーム画像から肺野領域を抽出し、前記抽出された肺野領域の前記各画素又は各画素ブロック毎に、前記生成された出力信号波形を解析して当該画素又は画素ブロックの肺血管が血流により拡張したタイミングのフレーム画像を特定し、この特定されたフレーム画像の当該画素又は画素ブロックに当該領域の肺血管が血流により拡張したタイミングであることを示す識別情報を付与することにより前記被写体の血流に関する診断支援情報を生成する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記表示手段は、前記被写体の呼吸に関する診断支援情報を表示する際には静止画表示を行い、前記被写体の血流に関する診断支援情報を表示する際には動画表示を行う。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明において、
前記複数のフレーム画像の撮影期間における前記被写体の心臓の拍動を示す拍動信号波形を取得する拍動信号波形取得手段を備え、
前記血流情報生成手段は、前記各画素又は各画素ブロック毎に、横軸をフレーム画像の撮影順を示すフレーム番号、縦軸を当該画素又は画素ブロックの信号値とした座標平面を作成し、前記各フレーム画像の当該画素又は画素ブロックの信号値に対応する点を前記座標平面上にプロットすることにより当該画素又は画素ブロックの出力信号波形を生成し、前記取得された拍動信号波形に対して前記出力信号波形をフレーム番号単位でずらしながら前記拍動信号波形と前記出力信号波形の相互相関係数を算出し、前記拍動信号波形において心臓が最も収縮したタイミングから前記相互相関係数が最大となったときのずらし量だけずれたタイミングのフレーム画像を当該画素又は画素ブロックにおいて肺血管が血流により拡張したタイミングのフレーム画像として特定する。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、
前記拍動信号波形取得手段は、心電波形を取得する心電検知センサ、前記複数のフレーム画像から心臓領域又は大動脈領域における信号値の時間変化を示す波形を拍動信号波形として取得する手段、若しくは前記複数のフレーム画像から心壁位置を抽出し、抽出された心壁位置の時間変化を示す波形を拍動信号として取得する手段、の何れかである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項記載の発明において、
前記血流情報生成手段は、複数周期の拍動信号波形及び出力信号波形を用いて前記血流に関する情報を取得する。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項記載の発明において、
前記撮影手段により取得された画像データにオフセット補正処理及びゲイン補正処理のうち少なくとも一つを実施する補正手段と、
前記撮影手段により取得された画像データに対して前記補正手段による補正を実施するか否かの制御を行う制御手段を備え、
前記制御手段は、前記画像解析手段により前記被写体の動態に係る診断支援情報を生成する場合には、前記補正手段による補正は実施しないように制御する。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の何れか一項記載の発明において、
前記放射線源からの散乱放射線を除去する散乱線除去グリッドと、
前記散乱線除去グリッドを用いて撮影を行うか否かの制御を行う撮影制御手段を備え、
前記撮影制御手段は、前記画像解析手段により前記被写体の動態に係る診断支援情報を生成する場合には、前記散乱線除去グリッド無しで撮影が行われるように制御する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1回の動態撮影で呼吸及び血流のそれぞれに関する精度のよい診断支援情報を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態における胸部診断支援情報生成影システムの全体構成を示す図である。
【図2】図1の保持部15近辺を拡大して示す図である。
【図3】図1の保持部15の正面を模式的に示す図である。
【図4】図1の撮影用コンソールの制御部により実行される撮影制御処理を示すフローチャートである。
【図5】図1の診断用コンソールの制御部により実行される画像解析処理を示すフローチャートである。
【図6】図1の診断用コンソールの制御部により実行される呼吸情報生成処理を示すフローチャートである。
【図7】1つの呼吸サイクル(深呼吸時)において撮影された複数の時間位相T(T=t0〜t6)のフレーム画像を示す図である。
【図8】安静呼気位と安静吸気位において肺野の同一部分を描画した領域の位置の変化を示す図である。
【図9】横隔膜の位置の算出方法を説明するための図である。
【図10】最大呼気位と最大吸気位において肺野の同一部分を描画した領域の位置の変化を示す図である。
【図11】或る正常の肺野をグリッド有りとグリッド無しで撮影した動態画像の動態解析結果の比較を示す図である。
【図12A】正常者の肺野の動態画像を解析した解析結果を表示した表示画面の一例を示す図である。
【図12B】COPD(閉塞性疾患)の肺野の動態画像を解析した解析結果を表示した表示画面の一例を示す図である。
【図12C】混合性疾患の肺野の動態画像を解析した解析結果を表示した表示画面の一例を示す図である。
【図13】「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値の表示例を示す図である。
【図14】「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値の他の表示例を示す図である。
【図15】「吸気の特徴量」又は「呼気の特徴量」の傾向を示す指標値の表示例を示す図である。
【図16】図1の診断用コンソールの制御部により実行される血流情報生成処理を示すフローチャートである。
【図17】血流による肺血管の広がりを模式的に示す図である。
【図18】(A)は、正常な出力信号波形を模式的に示す図、(B)は、異常個所のある出力信号波形を模式的に示す図である。
【図19】拍動信号波形の一例を示す図である。
【図20】反転させた拍動信号波形の一例を示す図である。
【図21】拍動信号波形を反転させる理由を説明するための図である。
【図22】相互相関係数の算出方法を説明するための図である。
【図23】血流に関する診断支援情報の表示例を示す図である。
【図24】第2の実施の形態における移動型胸部診断支援情報生成システムの全体構成例を示す図である。
【図25】図24のFPDの機能構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0019】
<第1の実施の形態>
〔胸部診断支援情報生成システム100の構成〕
まず、構成を説明する。
図1に、第1の実施の形態における胸部診断支援情報生成システム100の全体構成を示す。
図1に示すように、胸部診断支援情報生成システム100は、撮影装置1と、撮影用コンソール2とが通信ケーブル等により接続され、撮影用コンソール2と、診断用コンソール3とがLAN(Local Area Network)等の通信ネットワークNTを介して接続されて構成されている。胸部診断支援情報生成システム100を構成する各装置は、DICOM(Digital Image and Communications in Medicine)規格に準じており、各装置間の通信は、DICOMに則って行われる。
【0020】
〔撮影装置1の構成〕
撮影装置1は、被写体M(人体の胸部)に放射線を照射して被写体Mの動態撮影又は静止画撮影を行う装置である。
動態撮影とは、被写体Mに対し、X線等の放射線をパルス的に連続照射して複数の画像を取得(即ち、連続撮影)することをいう。動態撮影では、例えば、呼吸運動に伴う肺の膨張及び収縮の形態変化、心臓の拍動等の、周期性(サイクル)を持つ被写体Mの動態を撮影する。この連続撮影により得られた一連の画像を動態画像と呼ぶ。また、動態画像を構成する複数の画像のそれぞれをフレーム画像と呼ぶ。
静止画撮影とは、従来のフィルム方式やCR方式と同様に撮影部位の濃度分解能に基づく診断に使用されるもので、被写体Mに対し、X線等の放射線を1回照射して一枚の静止画像を取得することをいう。
【0021】
撮影装置1は、図1に示すように、放射線源11、放射線照射制御装置12、放射線検出部13、読取制御装置14、保持部15、グリッド16等を備えて構成されている。
【0022】
放射線源11は、単射及び連射(パルス照射)が可能な放射線発生装置である。即ち、静止画撮影と動態撮影の双方に対応した放射線発生装置である。放射線源11は、被写体Mを挟んで放射線検出部13と対向する位置に配置され、放射線照射制御装置12の制御に従って、被写体Mに対し放射線(X線)を照射する。
放射線照射制御装置12は、撮影用コンソール2に接続されており、撮影用コンソール2から入力された放射線照射条件に基づいて放射線源11を制御して放射線撮影を行う。撮影用コンソール2から入力される放射線照射条件は、例えば、連続照射時のパルスレート、パルス幅、パルス間隔、1撮影あたりの撮影フレーム数、X線管電流の値、X線管電圧の値、フィルタ種等である。パルスレートは、1秒あたりの放射線照射回数であり、後述するフレームレートと一致している。パルス幅は、放射線照射1回当たりの放射線照射時間である。パルス間隔は、連続撮影において、1回の放射線照射開始から次の放射線照射開始までの時間であり、後述するフレーム間隔と一致している。
【0023】
放射線検出部13は、動態撮影及び静止画撮影対応のFPD等により構成される。FPDは、例えば、ガラス基板等を有しており、基板上の所定位置に、放射線源11から照射されて少なくとも被写体Mを透過した放射線をその強度に応じて検出し、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する複数の画素がマトリックス状に配列されている。各画素は、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング部により構成されている。FPDにはX線をシンチレータを介して光電変換素子により電気信号に変換する間接変換型、X線を直接的に電気信号に変換する直接変換型があるが、何れを用いてもよい。
放射線検出部13は、図2に示すように、被写体Mを挟んで放射線源11と対向するように保持部15によって保持されている。
【0024】
読取制御装置14は、撮影用コンソール2に接続されている。読取制御装置14は、撮影用コンソール2から入力された画像読取条件に基づいて放射線検出部13の各画素のスイッチング部を制御して、当該各画素に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングしていき、放射線検出部13に蓄積された電気信号を読み取ることにより、画像データ(静止画像又はフレーム画像)を取得する。そして、読取制御装置14は、取得した画像データを撮影用コンソール2に出力する。画像読取条件は、例えば、フレームレート、フレーム間隔、画素サイズ(ビニングサイズ)、画像サイズ(マトリックスサイズ)等である。フレームレートは、1秒あたりに取得するフレーム画像数であり、パルスレートと一致している。フレーム間隔は、連続撮影において、1回のフレーム画像の取得動作開始から次のフレーム画像の取得動作開始までの時間であり、パルス間隔と一致している。
【0025】
ここで、放射線照射制御装置12と読取制御装置14は互いに接続され、互いに同期信号をやりとりして放射線照射動作と画像の読み取りの動作を同調させるようになっている。この他、後述するオフセット補正に用いるオフセット補正係数を算出するための少なくとも1つの暗画像を取得するダーク読取時は、放射線照射動作と同期せず、放射線が照射されない状態で、リセット〜蓄積〜データ読取〜リセットの一連の画像の読み取り動作を行うが、一連の動態撮影前、一連の動態撮影後のいずれかのタイミングで行うようにしてもよい。
なお、本実施の形態においては、いずれの動態解析においてもオフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理等の補正処理を行わずに解析を行う。これは、解析スピードを優先させるためである。解析スピードよりも精度を追及する場合は、オフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理等を行ってもよい。
【0026】
保持部15は、図2に示すように、検出器保持部151を有し、撮影時に放射線検出部13を放射線源11及び被写体Mに対向するように保持する。また、保持部15は、放射線検出部13よりも被写体側(放射線源11側)に散乱放射線を除去するためのグリッド16を装着するためのグリッド装着部152を有している。即ち、保持部15は、グリッド16が着脱可能に構成されている。グリッド装着部152には、図3に示すようにグリッド16が装着されているか否かを検知するためのグリッド装着検知MS(マイクロスイッチ)153が設けられており、保持部15は、グリッド装着検知MS153の検知信号を読取制御装置14に出力する。また、保持部15には、図2に示すように被写体Mが所定距離離間して存在するか否かを検知するための被写体検知センサ154が設けられており、保持部15は、被写体検知センサ154の検知信号を読取制御装置14を介して撮影用コンソール2に出力する。
【0027】
〔撮影用コンソール2の構成〕
撮影用コンソール2は、放射線照射条件や画像読取条件を撮影装置1に出力して撮影装置1による放射線撮影及び放射線画像の読み取り動作を制御するとともに、撮影装置1により取得された静止画像又は動態画像に基づく画像、例えば間引きビニング処理されたプレビュー画像や諧調処理等を施した処理済画像等を適宜作成し、撮影実施者によるポジショニングの確認や診断に適した画像であるか否かの確認用に表示する。動態画像の場合には、ポジショニング確認や解析対象部位の動態周期(サイクル)確認のために、解析に使用する隣接フレーム間の差分画像をプレビュー表示用として使用することも可能である。
撮影用コンソール2は、図1に示すように、制御部21、記憶部22、操作部23、表示部24、通信部25を備えて構成され、各部はバス26により接続されている。
【0028】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory
)等により構成される。制御部21のCPUは、操作部23の操作に応じて、記憶部22に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って後述する撮影制御処理を始めとする各種処理を実行し、撮影用コンソール2各部の動作や、撮影装置1の放射線照射動作及び読み取り動作を集中制御する。
【0029】
記憶部22は、不揮発性の半導体メモリやハードディスク等により構成される。記憶部22は、制御部21で実行される各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメータ、或いは処理結果等のデータを記憶する。例えば、記憶部22は、図4に示す撮影制御処理を実行するための撮影制御処理プログラムを記憶している。各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部21は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
また、記憶部22は、動態撮影用、静止画撮影用のそれぞれの放射線照射条件及び画像読取条件を記憶している。
【0030】
操作部23は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部21に出力する。また、操作部23は、表示部24の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部21に出力する。
【0031】
表示部24は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニタにより構成され、制御部21から入力される表示信号の指示に従って、操作部23からの入力指示やデータ等を表示する。
【0032】
通信部25は、LANアダプタやモデムやTA(Terminal Adapter)等を備え、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0033】
〔診断用コンソール3の構成〕
診断用コンソール3は、撮影用コンソール2から静止画像、又は動態画像の一連のフレーム画像を取得し、取得した画像や後述するヒストグラム等の診断支援情報を表示して医師が読影診断するためのコンピュータ装置である。
診断用コンソール3は、図1に示すように、制御部31、記憶部32、操作部33、表示部34、通信部35を備えて構成され、各部はバス36により接続されている。
【0034】
制御部31は、CPU、RAM等により構成される。制御部31のCPUは、操作部33の操作に応じて、記憶部32に記憶されているシステムプログラムや、各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って、後述する画像解析処理を始めとする各種処理を実行し、診断用コンソール3各部の動作を集中制御する。
【0035】
記憶部32は、不揮発性の半導体メモリやハードディスク等により構成される。記憶部32は、制御部31で画像解析処理を実行するための画像解析処理プログラムを始めとする各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメータ、或いは処理結果等のデータを記憶する。これらの各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部31は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0036】
操作部33は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部31に出力する。また、操作部33は、表示部34の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部31に出力する。
【0037】
表示部34は、LCDやCRT等のモニタにより構成され、制御部31から入力される表示信号の指示に従って、操作部33からの入力指示やデータ等を表示する。
【0038】
通信部35は、LANアダプタやモデムやTA等を備え、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0039】
〔胸部診断支援情報生成システム100の動作〕
次に、胸部診断支援情報生成システム100における動作について説明する。
【0040】
(撮影装置1、撮影用コンソール2の動作)
まず、撮影装置1、撮影用コンソール2による撮影動作について説明する。
図4に、撮影用コンソール2の制御部21において実行される撮影制御処理を示す。撮影制御処理は、制御部21と記憶部22に記憶されている撮影制御処理プログラムとの協働により実行される。
【0041】
まず、撮影実施者により撮影用コンソール2の操作部23が操作され、撮影対象(被写体M)の患者情報(患者の氏名、身長、体重、年齢、性別等)及び撮影種別(動態撮影、静止画撮影の区別)の入力が行われる(ステップS1)。この他、通信ネットワークNTに接続された図示しない他装置から送信され、通信部25を経由して受信したデータも、同様の入力情報とすることができる。
【0042】
次いで、入力された撮影種別が動態撮影であるか静止画撮影であるかが判断される(ステップS2)。入力された撮影種別が動態撮影であると判断されると(ステップS2;YES)、動態撮影用の放射線照射条件が記憶部22から読み出されて放射線照射制御装置12に設定されるとともに、動態撮影用の画像読取条件が記憶部22から読み出されて読取制御装置14に設定される(ステップS3)。入力された撮影種別が静止画撮影であると判断されると(ステップS2;NO)、静止画撮影用の放射線照射条件が記憶部22から読み出されて放射線照射制御装置12に設定されるとともに、静止画撮影用の画像読取条件が記憶部22から読み出されて読取制御装置14に設定される(ステップS7)。
【0043】
換気及び血流の両特徴量の解析を行う本実施の形態における好ましいフレームレートは7.5枚/秒以上、より好ましくは15フレーム/秒以上である。
なお、換気特徴量の解析のみを行う場合には、3.5枚/秒以上、より好ましくは7フレーム/秒以上である。
また、本実施の形態においては、動態撮影用としてグリッド16を装着しない状態で(グリッド無しで)の撮影を前提とした放射線照射条件が設定され、静止画撮影用としてグリッド16を装着した状態で(グリッド有りで)の撮影を前提とした放射線照射条件が設定される。具体的には、動態撮影用の放射線照射条件は、フレーム画像1枚ごとの撮影においてグリッド16を使用しないで放射線検出部13に到達する線量が静止画撮影においてグリッド16を使用して放射線検出部13に到達する線量と同じになるような放射線照射条件が設定される。即ち、動態撮影では、1枚あたりの照射線量が静止画撮影に比べて低くなるように放射線照射条件が設定される。
【0044】
ここで、人体等の被写体Mに対して放射線を照射して放射線撮影を行う場合、体内を透過する放射線が体内組織で散乱される。そして、このような散乱放射線が放射線検出部13に入射すると放射線画像にノイズが発生する。そこで、病変部分の検出や病変部分の観察等に用いられ個々の画素の絶対的出力値(信号値)が重要な静止画像の撮影においては、放射線検出部13の被写体側の面、すなわち被写体を透過した放射線が入射する側の面に、グリッド16を設けて撮影が行われることが好ましい。グリッド有りで撮影を行う場合、グリッド16により放射線検出部13に到達する線量が減弱される(例えば、露出倍数2のグリッドでは約1/2に減弱される)ため、この減弱分を加算した分の放射線を照射する必要がある。従来、動態撮影においても、静止画撮影と同様にグリッドを用いた撮影が行われていた。
【0045】
しかしながら、動態撮影の場合は、静止画撮影に比べて撮影するフレーム画像枚数が多いため、1枚当たりに放射線源11から照射する照射線量を静止画撮影と同等とした場合、被写体Mの被曝量が多くなってしまうという問題がある。被写体Mの被曝量低減のため1回の静止画撮影と、一連の動態撮影のトータルの照射線量を同じとする技術も開示されているが、この場合は個々のフレーム画像の線量が不足気味となり、S/N比が低下してしまう。
【0046】
そこで、本件発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、動態撮影により得られる胸部動態画像は主として呼吸機能や血流等の動態解析に使用されるものであり、これらの解析においては、グリッドを配置せずに撮影を行った動態画像を用いても、グリッド有りで撮影を行った動態画像を用いた場合と略同等の結果を得ることができることを見出した。言い換えると、グリッド有無に限らず、放射線検出器に到達する線量が同じであれば、略同等の解析結果を得ることができる(図11参照。詳細後述)。
【0047】
本実施の形態の胸部診断支援情報生成システム100においては、この知見に基づき、静止画撮影ではグリッド16を装着して(グリッド有りで)撮影を行い、動態撮影では(動態解析を行う場合には)グリッド16を装着せずに(グリッド無しで)撮影を行う。そして、グリッド16を使用した静止画撮影時と、グリッド16無しでの動態撮影の1フレーム当たりの撮影とで放射線検出部13に到達する線量が略同等となる放射線照射条件で撮影を行うことにより、放射線検出部13への到達線量は従来と略同等に維持しつつ被写体Mの被曝線量の低減する構成となっている。または、1回の静止画撮影と、一連の動態撮影のトータルの照射線量を同じとする放射線照射条件とし、静止画撮影ではグリッド有りで撮影を行い、動態撮影ではグリッド無しで撮影を行うことで、従来方式に比べて各フレーム画像のS/N比を向上させて解析精度の向上を図ることとしてもよい。
【0048】
動態撮影用の放射線照射条件及び画像読取条件が設定されると、グリッド装着検知MS153からの出力に基づいて、グリッド16がグリッド装着部152に装着されていない状態であるか否かが判断される(ステップS4)。
【0049】
グリッド16がグリッド装着部152に装着されていない状態であると判断されると(ステップS4;YES)、操作部23の操作による放射線照射の指示が待機される(ステップS5)。ここで、撮影実施者は、安静呼吸の動態を撮影するために被検者(被写体M)に楽にするように指示し、安静呼吸を促す。撮影準備が整った時点で、操作部23を操作して放射線照射指示を入力する。
【0050】
操作部23により放射線照射指示が入力されると(ステップS5;YES)、放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影開始指示が出力され、動態撮影が開始される(ステップS6)。即ち、放射線照射制御装置12に設定されたパルス間隔で放射線源11により放射線が照射され、放射線検出部13によりフレーム画像が取得される。予め定められたフレーム数の撮影が終了すると、制御部21により放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影終了の指示が出力され、撮影動作が停止される。撮影されるフレーム数は、少なくとも1呼吸サイクルが撮影できる枚数である。
【0051】
一方、静止画撮影用の放射線照射条件及び画像読取条件が設定されると、グリッド装着検知MS153と被写体検知センサ154からの出力に基づいて、グリッド16がグリッド装着部152に装着された状態であるか否かが判断される(ステップS8)。
制御部21は、このステップS8によって、グリッド16が装着されずに静止画撮影が行われることのないように制御している。
【0052】
グリッド16がグリッド装着部152に装着されていると判断されると(ステップS8;YES)、操作部23の操作による放射線照射の指示が待機される(ステップS9)。ここで、撮影実施者は、被験者に対し、息を吸った後に止めるように指示する。撮影準備が整った時点で、操作部23を操作して放射線照射指示を入力する。
【0053】
操作部23により放射線照射指示が入力されると(ステップS9;YES)、放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影開始指示が出力され、静止画撮影が行われる(ステップS10)。
【0054】
動態撮影又は静止画撮影が終了すると、撮影により取得された画像(各フレーム画像又は静止画像)は順次撮影用コンソール2に入力され、補正処理が行われる(ステップS11)。ステップS11の補正処理においては、オフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理の3つの補正処理が必要に応じて行われる。本実施の形態においては、静止画撮影の場合にこれらの補正が実施され、動態撮影で後述する画像解析処理を行う場合にはこれらの補正が実施されないように制御部21により制御される。
【0055】
ここで、静止画像を用いた画像診断では診断対象部位の構造物の濃度値の微妙な変化を観察する。そのため、FPDの個々の検出素子の出力バラツキを極力抑えるためのオフセット補正処理、ゲイン補正処理等が必須である。オフセット補正処理とは、各フレーム画像に重畳された暗電流に起因するオフセット値を除去する処理である。ゲイン補正処理とは、各フレーム画像の各画素に対応する各検出素子の個体差や読み出しアンプのゲインムラによって生じる画素毎のばらつきを除去する処理である。
【0056】
しかしながら、動態画像を用いて動態に関する特徴量を算出する場合、複数のフレーム画像が必要となる。例えば、肺の換気の特徴量を算出する場合、平均的な成人の呼吸周期は3.3秒前後であり、特徴量の算出には最低でも1周期分の画像が必要となるので撮影時間を4秒程度とする必要がある。この場合、フレームレートを5枚/秒とすると、20枚の画像データが必要となる。これらにオフセット処理及びゲイン補正処理を施すと、1フレーム画像当たり0.5秒〜1秒程度の時間を要するので、20枚の実施に10〜20秒の時間を要することとなる。
【0057】
また、より忠実なオフセット補正処理を実施しようとすると、各フレーム画像の撮影後に少なくとも1回のダーク読取(放射線非照射時のFPD読取)を実施することになるが、このときFPD側ではこのダーク読取のために少なくとも所望とするフレームレートの2倍以上のフレームレートでの画像取得が必要となり、高速化にともないハードウエア構成が増大するとともに、消費電力も増大することになり好ましくない。
【0058】
更に、一般的にはFPDから出力されたフレーム画像やダーク画像はコンソールに送信してオフセット補正処理を行うため、各フレーム画像の送信に加えてダーク画像の送信時間も必要となる。また、1回もしくは放射線を照射するフレーム画像より少ない回数のダーク読取を行って、これらのダーク画像を用いて全てのフレーム画像に対してオフセット補正処理を実施することも考えられるが、ダーク画像取得に必要となるフレームレートはフレーム画像毎にダーク読取を行った場合に比べて低減するものの、依然として取得したダーク画像を用いてオフセット補正処理する時間が必要である。また、動態に関する特徴量の算出処理は、オフセット補正処理した後でなければ開始できないという欠点もある。
そこで、本実施の形態においては、動態撮影で後述する画像解析処理を行う場合には、オフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理は行わない。
【0059】
なお、オフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理で使用されるオフセット補正係数及びゲイン補正係数、欠陥画素位置情報マップは、ビニングやダイナミックレンジ等の収集モードに応じて、予め、それぞれ最適な値が記憶されており、それぞれの収集モードにおいて対応する最適な値が読み出されるようになっている。また、必要に応じて、取得された画像に対し、例えば間引き処理や階調処理等を施すことが好ましい。
【0060】
次いで、補正処理後の画像が記憶部22に記憶されるとともに(ステップS12)、表示部24に表示される(ステップS13)。動態撮影を行った場合は、各フレーム画像が撮影順を示す番号と対応付け記憶部22に記憶される。ここで、取得された画像を記憶する直前に、各画素の信号値を真数から対数に変換する対数変換処理を行ってから記憶しても良い。撮影実施者は、表示された動態画像によりポジショニング等を確認し、撮影により診断に適した画像が取得された(撮影OK)か、再撮影が必要(撮影NG)か、を判断する。そして、操作部23を操作して、判断結果を入力する。尚、撮影により取得された各フレーム画像は、全撮影の終了後に纏めて入力するようにしても良い。
【0061】
操作部23の所定の操作により撮影OKを示す判断結果が入力されると(ステップS14;YES)、静止画撮影で取得された静止画像又は動態撮影で取得された一連のフレーム画像のそれぞれに、画像を識別するための識別IDや、患者情報、検査対象部位、放射線照射条件、画像読取条件、撮影順を示すフレーム番号、撮影日時、撮影時のグリッド有無を示す情報(グリッド有無情報)等の情報が付帯され(例えば、DICOM形式で画像データのヘッダ領域に書き込まれ)、通信部25を介して診断用コンソール3に送信される(ステップS15)。そして、本処理は終了する。一方、操作部23の所定の操作により撮影NGを示す判断結果が入力されると(ステップS14;NO)、記憶部22に記憶された一連のフレーム画像が削除され(ステップS16)、本処理は終了する。尚、このケースに於いては、再撮影が実行されることとなる。
フレーム番号と画像読取条件(フレーム間隔)によりそのフレーム画像が撮影されたときの撮影開始からの経過時間を取得することができる。
【0062】
(診断用コンソール3の動作)
次に、診断用コンソール3における動作について説明する。
診断用コンソール3においては、通信部35を介して撮影用コンソール2から静止画像が受信され、操作部33により当該画像の表示指示が入力されると、表示部34に受信された静止画像が表示され、医師の診断に供される。
一方、通信部35を介して撮影用コンソール2から動態画像の一連のフレーム画像が受信され、操作部33により動態解析が指示されると、制御部31と記憶部32に記憶されている画像解析処理プログラムとの協働により図5に示す画像解析処理が実行される。
【0063】
以下、図5を参照して画像解析処理の流れについて説明する。
まず、表示部34に画像解析により生成する診断支援情報の種類(呼吸、血流、呼吸及び血流)を選択するための選択画面が表示され、当該選択画面から操作部33により呼吸に関する診断支援情報の生成が選択されたと判断されると(ステップS21;YES)、呼吸情報生成処理が実行される(ステップS22)。血流に関する診断支援情報の生成が選択されたと判断されると(ステップS23;YES)、血流情報生成処理が実行される(ステップS24)。
【0064】
ここで、図5のステップS22において実行される呼吸情報生成処理について説明する。
図6に、呼吸情報生成処理のフローチャートを示す。
呼吸情報生成処理においては、まず、各フレーム画像から肺野領域が抽出される(ステップS101)。
肺野領域の抽出方法は何れの方法であってもよい。例えば、一連のフレーム画像中の任意のフレーム画像(ここでは、撮影順が一番(最初)のフレーム画像とする。)の各画素の信号値(濃度値)のヒストグラムから判別分析によって閾値を求め、この閾値より高信号の領域を肺野領域候補として1次抽出する。次いで、1次抽出された肺野領域候補の境界付近でエッジ検出を行い、境界付近の小領域でエッジが最大となる点を境界に沿って抽出すれば肺野領域の境界を抽出することができる。
【0065】
次いで、各フレーム画像の肺野領域が複数の画素ブロックからなる小領域に分割され、各フレーム画像の小領域が互いに対応付けられる(ステップS102)。各小領域の画素の位置は、制御部31のRAMに記憶される。
【0066】
ここで、呼吸サイクルは、呼気期と吸気期により構成される。図7は、1つの呼吸サイクル(深呼吸時)において撮影された複数の時間位相T(T=t0〜t6)のフレーム画像を示す図である。図7に示すように、呼気期は、横隔膜が上がることによって肺から空気が排出され、肺野の領域が小さくなる。最大呼気位では、横隔膜の位置が最も高い状態となる。吸気期は、横隔膜が下がることにより肺に空気が取り込まれ、図7に示すように胸郭中の肺野の領域が大きくなる。最大吸気位では、横隔膜の位置が最も下がった状態となる。即ち、肺野領域の同一部分の位置は呼吸運動に応じて時間とともに変化するため、各フレーム画像間で肺野の同一の部分(特に、下部領域(横隔膜付近))を示す画素位置がずれることになる。
しかし、安静呼吸時に撮影された画像においては、上記の位置ずれは小さく、後述する解析結果が狂ってしまうほどの位置ずれはおきない。図8の画像D1は、安静呼気位(安静呼吸時において横隔膜の位置が最も高くなったタイミング)のフレーム画像である。図8の画像D2は、安静吸気位(安静呼吸時において横隔膜の位置が最も低くなったタイミング)のフレーム画像である。即ち、図8の画像D1とD2とは、呼吸1サイクルにおいて最も形状の差の大きいタイミングで撮影された画像である。しかし、図8の画像D1、D2間においては、最も位置ずれの大きい肺野領域の下部領域においても位置ずれはわずかであることがわかる(画像D2のA11は画像D1のA1と同じ画素位置を示し、画像D2のA2は画像D1のA1と肺野における同一部分を描画した領域を示している)。
【0067】
そこで、ステップS102における具体的な処理としては、まず、一連のフレーム画像の中から一のフレーム画像を基準画像として設定する。次いで、基準画像の抽出された肺野領域を複数の小領域(例えば、2mm×2mmの矩形領域)に分割する(図8参照)。次いで、他のフレーム画像の肺野領域を基準画像の各小領域と同じ画素位置の小領域(放射線検出部13の同じ検出素子から出力される信号値を示す領域)に分割する。次いで、各フレーム画像間の同じ画素位置の各小領域を互いに対応付ける。この処理では、フレーム画像の小領域への分割及び対応付けを高速に行うことが可能となる。
基準画像としては、安静呼気位のフレーム画像とすることが好ましい。安静呼気位では、安静呼吸時において横隔膜の位置が最も高くなる、即ち、肺野領域の面積が最も小さくなるので、基準画像の小領域を他のフレーム画像に対応付けたときに、小領域が他のフレーム画像の肺野外の領域に対応付けられることがないからである。
安静呼気位の画像は、一連のフレーム画像の中から横隔膜の位置が最も高い位置にある画像を抽出することで取得することができる。横隔膜の位置は、例えば、図9に示す横隔膜の基準位置B1を横隔膜のカーブC(図9に点線で示す)の垂直方向の平均位置と予め定義しておき、肺野領域Rから横隔膜のカーブC(肺野領域の下端)を抽出し、その垂直方向の平均位置を求め、求めた位置を横隔膜の基準位置B1として特定する。
【0068】
次いで、各フレーム画像の各小領域内の画素の信号値(平均信号値)が算出され、小領域内の画素が平均信号値に置き換えられ、各フレーム画像間で対応づけられた各小領域に対して、時間軸方向のフィルタリング処理が施される(ステップS103)。このフィルタリング処理は、血流等の高周波数な信号変化を除去し、換気による信号値の時間変化を抽出するための処理であり、例えば、小領域毎の信号値の時間変化に対して、安静呼吸画像群ではカットオフ周波数0.7Hz、深呼吸画像群ではカットオフ周波数0.5Hzでローパスフィルタリングを行う。ここで、ローパスフィルタのカットオフ周波数は、固定値とするよりも、撮影された動態画像毎に最適化することが好ましい。例えば、前述のように一連のフレーム画像の横隔膜の位置を解析し、安静換気の場合は安静呼気位および安静吸気位となるフレームを検出し、安静呼気位のフレームとその次の安静吸気位のフレームの間のフレーム数から吸気期の時間を求め、その逆数に所定の係数を乗じた値をカットオフ周波数としたローパスフィルタを実施する。このとき安静換気の場合、自動的に設定されるカットオフ周波数は、0.2〜1.0Hzの間に制限することが好ましい。また、ステップS1において、別途測定された安静時における1分間の呼吸数、脈拍数等のバイタルサインを患者情報として入力しておき、これらの値からカットオフ周波数が算出されるようにしてもよい。例えば、患者情報として入力された1分間の呼吸数を1秒間の呼吸数に変換し、その呼吸数に所定の係数を乗じた値をカットオフ周波数としてローパスフィルタを実施してもよい。さらには、入力された1分間の脈拍数を1秒間の脈拍数に変換し、1秒間の呼吸数と1秒間の心拍数の平均値をカットオフ周波数としてローパスフィルタを実施するようにしてもよい。
【0069】
次いで、一連のフレーム画像のステップS102で対応付けられた各小領域毎に解析が行われ、吸気の特徴量及び呼気の特徴量がそれぞれ算出される(ステップS104)。ここでは、呼気の特徴量及び吸気の特徴量として、例えば、呼気期及び吸気期のそれぞれにおける各小領域毎のフレーム間差分値(微分値)の代表値(絶対値の最大値)を算出する。フレーム間差分値は、そのフレーム画像が撮影されたタイミングにおける信号変化量を示す値である。呼吸により息を吸ったり吐いたりすれば、その息の流れに応じて肺の密度が変化し、これによってX線透過量(つまり、画素の信号値)が変化する。よって、信号変化量は、そのタイミングにおける気流速度を示す値とみなすことができる。なお、代表値としては、絶対値の最大値に限らず、中央値、平均値、最頻値としてもよい。
具体的には、まず、撮影順が隣接するフレーム画像間で各小領域の信号値の差分を算出するフレーム間差分処理が行われる。ここでは、各小領域毎に、フレーム番号NとN+1(Nは1、2、3・・・)のフレーム画像について、N+1−Nの差分値が算出される。次いで、呼気期のフレーム間差分値の最大値(絶対値の最大値)が呼気の特徴量として取得され、吸気期のフレーム間差分値の最大値(絶対値の最大値)が吸気の特徴量として取得される。フレーム間差分値の最大値(絶対値の最大値)は、最大微分値に相当する。ここで、各小領域内のフレーム間差分値の符号が正の期間が吸気期、負の期間が呼気期である。
【0070】
次いで、各小領域毎の吸気の特徴量と呼気の特徴量の比の値(吸気の特徴量/呼気の特徴量)が算出される(ステップS105)。ここでは、「吸気期のフレーム間差分値の最大値/呼気期のフレーム間差分値の最大値」(最大流速比と呼ぶ)が算出される。
【0071】
次いで、算出された各小領域毎の「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値のヒストグラムが作成されるとともに、肺野全体における「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値(ここでは、平均値、標準偏差)が算出される(ステップS106)。ヒストグラムの縦軸のカウント数は、肺野内の全小領域の数で除算することにより正規化することが好ましい。
【0072】
次いで、各小領域について求められた「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値を、予め記憶部32に記憶されている、「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値と表示時のパラメータ値との変換テーブルに基づいて表示用パラメータ値に変換し、変換したパラメータ値にて、基準画像(例えば、安静呼気位のフレーム画像)の各小領域を表示した画像が作成される(ステップS107)。変換テーブルは、例えば、正常/異常(重症度1〜n)の各カテゴリに特徴量を分類するときの各カテゴリの特徴量の大きさの範囲を規定する閾値(各カテゴリの閾値)と色相、明度、輝度、透明度の何れかを一対一に対応付けたテーブルである。ここで、表示時のパラメータ値の変換テーブルとしては、特徴量の大きさに対する識別能を高めるために、各カテゴリの閾値と色相を対応付けることが好ましい。
このとき、例えば、数個(例えば、5〜6個)の色相を上記各カテゴリの閾値と対応させ、その間の特徴量の値に対しては中間の色相を割り当てる(グラデーションさせる)ことで識別能の高い表示とすることができる。
表示用パラメータ値に基づいて色付けされた画像は、基準画像のフレーム画像にオーバーレイ表示してもよい。
【0073】
なお、記憶部32には、グリッド有りで撮影された動態画像に対応した変換テーブルと、グリッド無しで撮影された動態画像に対応する変換テーブルが記憶されており、ステップS107及び次のステップS108においては、一連のフレーム画像に付帯されているグリッド有無情報に基づいて、グリッド有りで撮影されたかグリッド無しで撮影されたかが判断され、その判断結果に応じた変換テーブルを用いて色付けが行われる。
【0074】
そして、表示部34に、作成されたヒストグラム、及び作成された静止画像等が並列表示され(ステップS108)、呼吸情報生成処理は終了する。ヒストグラムの領域は、上述の「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値と表示時のパラメータ値との変換テーブルに基づいて、基準画像の肺野領域の各小領域と同様の基準により色付けして表示される。
【0075】
ここで、グリッド有りで撮影したときとグリッド無しで撮影したときの動態解析への影響について説明する。
図11は、或る正常の肺野をグリッド有りとグリッド無しで撮影した動態画像の動態解析結果の比較を示す図である。図11においては、グリッド有りとグリッド無しで撮影した動態画像の各小領域を「吸気期のフレーム間差分値の最大値」(最大吸気気流速度)に基づいて色付けした画像、「呼気期のフレーム間差分値の最大値」(最大呼気気流速度)に基づいて色付けした画像、最大流速比に基づいて色付けした画像、及び最大流速比のヒストグラム、を解析結果として示している。
【0076】
図11は、以下の撮影条件で撮影を行った動態画像の解析結果である。
検出器サイズ40×30cm、検出器画素サイズ194μm、グリッドピッチ80line/cm、グリッド比12:1、管球〜検出器間距離2m、フレーム数75フレーム(約10秒間撮影)、トータル被曝線量(検出器への到達線量を一定とした場合の被写体被曝線量)グリッド有り0.24mGy、グリッド無し0.14mGy
また、最大吸気気流速度、最大呼気気流速度、最大流速比の大きさと色(図11においては濃度で示す)との変換テーブルは、両者を比較するために同一(ここでは、グリッド有り用の変換テーブル)を用いている。
【0077】
同一被写体を撮影した場合のグリッド有りの動態画像とグリッド無しの動態画像とでは、最大吸気気流速度、最大呼気気流速度、最大流速比はほぼ同等であるが、図11に示すように、撮影系の特性等により若干相違が生じることがある。例えば図11においてはグリッド無しで撮影された動態画像のヒストグラムの形状はグリッド有りのものと比較して幅広な形状となっている。そのため、例えば最大流速比によって肺野内の領域やヒストグラムの領域を正常、異常1〜nのカテゴリに分類して色付けする場合、グリッド有りとグリッド無しで同じ閾値(変換テーブル)を用いると、同じ最大流速比であっても異なる色表示、即ち異なる重症度への分類がなされる場合があり、好ましくない。そこで、図11に示すように、グリッド有りと無しとで診断に影響する差異が生じる場合においては、グリッド有無に応じて特徴量の分類に用いる閾値(変換テーブル)を変更する必要がある。
【0078】
グリッド有りで撮影した動態画像を解析した結果とグリッド無しで撮影した動態画像を解析した結果とでどの程度の差異が生じるかは、撮影系の特性や解析内容等によって異なる。よって、撮影系によって、同じ被写体をグリッド有り無しで撮影した複数の画像を解析し、その結果を用いて帰納法的にグリッド有りの動態画像に使用する閾値とグリッド無しの動態画像に使用する閾値を算出しておくことが好ましい。
【0079】
なお、本実施の形態においては、撮影装置1は動態画像をグリッド無しで撮影するよう制御しているため、グリッド無しで撮影された動態画像用の閾値が記憶されていれば十分とも考えられる。しかし、グリッド有りで動態画像を撮影可能な撮影系に診断用コンソール3が接続される場合も想定される。この場合、グリッド有無の撮影条件が異なっていると、判断を誤ることになる。そこで、本実施の形態においては、動態画像を構成する各フレーム画像の付帯情報にグリッド有無情報を付帯させておき、制御部31は、このグリッド有無情報に基づいて、撮影時のグリッド有無に応じた閾値を用いた解析アルゴリズムで解析を行っている。
【0080】
図12A〜図12Cに、ステップS108において表示部34に表示される表示画面の例を示す。
図12Aは、グリッド有りで撮影された正常者の肺野の動態画像を解析した解析結果(呼吸に関する診断支援情報)を表示した表示画面である。図12Bは、COPD(閉塞性疾患)の肺野の動態画像を解析した解析結果を表示した表示画面である。図12Cは、混合性疾患の肺野の動態画像を解析した解析結果を表示した表示画面である。
【0081】
図12A〜図12Cに示すように、ステップS108においては、半切サイズのフレーム画像から抽出された肺野領域内における各小領域(2mm角の矩形サイズ)の「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値のヒストグラム34aと、各小領域の「吸気の特徴量/呼気の特徴量」を一覧表示した静止画像34bと、ヒストグラム34a及び静止画像34bで表示されている色相と「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値との関係を示す表示34cと、肺野全体での「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値34dが表示されている。また、図12A〜図12Cに示すように、ヒストグラム34aは、「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値の大きさに応じて、横軸の領域が6つの色相で色分けして表示される。これにより、医師は、ヒストグラムを一瞥するだけで容易に肺野内における「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の分布を把握することができる。また、各小領域の「吸気の特徴量/呼気の特徴量」を示す静止画像34bにおいて、各小領域が「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値に応じてヒストグラムの色分けと同じ基準で色分けされて表示されるので、医師が肺野内の局所的な異常箇所(閉塞性部分、拘束性部分)を容易に把握することが可能となる。更に、肺野全体での「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値34dとして、その平均値及び標準偏差を算出して画面上に併せて表示することで、肺野全体での「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を数値として医師に提供することができる。
【0082】
ここで、呼気期のフレーム間差分値の最大値(絶対値)を呼気の特徴量、吸気期のフレーム間差分値の最大値(絶対値)を吸気の特徴量とした場合、正常者の肺野では、グリッド有りで動態撮影した動態画像で解析を行った場合、肺野全体の「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の平均値は0.9〜1.2、標準偏差は0.10〜0.22程度であることが知られている。よって、ステップS108で図12Aに示す表示画面が表示された場合、医師は、撮影した肺野が正常であることを容易に把握することができる。
一方、COPD(閉塞性疾患)の肺野では、グリッド有りで動態撮影した動態画像で解析を行った場合、肺野全体の「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の平均値は0.9〜1.2に収まらず(正常者に比べて大きく)、標準偏差も、0.10〜0.22に収まらない(正常者に比べて大きい)ことが知られている。よって、ステップS108で図12Bに示す表示画面が表示された場合、医師は、撮影した肺野がCOPDであることを容易に把握することができる。
一方、混合性肺疾患の肺野では、グリッド有りで動態撮影した動態画像で解析を行った場合、肺野全体の「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値が0.66以下のデータ数、及び1.5以上のデータ数がともに増加することが知られている。よって、ステップS108で図12Cに示す表示画面が表示された場合、医師は、撮影した肺野が混合性疾患であることを容易に把握することができる。
このように、胸部診断支援情報生成システム100においては、「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値から、COPD(閉塞性肺疾患)、混合性肺疾患等の換気不均等の病態もしくはその重症度を特定できるような、有用な診断支援情報を医師に提供することが可能となる。
【0083】
なお、「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値等を利用して被写体Mの正常/異常を判断することとしてもよい。この場合においても、グリッド有無情報に基づいて正常/異常を判断するための閾値を変更することが好ましい。例えば、上述の肺野全体の「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の平均値に基づいて正常/異常と判断する場合、グリッド有りでは平均値0.9〜1.2を正常とし、グリッド無しでは平均値0.8〜1.3を正常として判断することが好ましい。
【0084】
呼気の特徴量及び吸気の特徴量としては、上記の例以外の他の特徴量を用いても良い。
例えば、呼気の特徴量を呼吸1サイクルにおける呼気期に相当するフレーム画像数(呼気時間)、吸気の特徴量を呼吸1サイクルにおける吸気期に相当するフレーム画像数(吸気期間)としてもよい。ここで、肺の換気機能が正常である場合、吸気時間と呼気時間はほぼ同じ長さ、もしくは若干呼気時間が長くなる筈である。よって、「呼気期に相当するフレーム画像数/吸気期に相当するフレーム画像数」の値を見れば、医師は肺疾患の疑いがあるか否かを把握することができる。特に、「呼気期のフレーム画像数/吸気期のフレーム画像数」>1.5の領域は、呼気で換気がしにくく、取り込んだ空気を排出するのが遅れてしまう閉塞性部分であることがわかる。なお、「吸気期のフレーム間差分値の最大値/呼気期のフレーム間差分値の最大値≒呼気時間(呼気のフレーム画像数)/吸気時間(
吸気のフレーム画像数)」の関係が成り立つため、医師は、呼気の特徴量を呼気期のフレ
ーム間差分値の最大値、吸気の特徴量を吸気期のフレーム間差分値の最大値とした場合と同様の判断基準により、正常、COPD(閉塞性肺疾患)、混合性肺疾患の識別を行うことが可能である。
【0085】
また、1呼吸サイクル分の各フレーム画像において、各小領域の画素の信号値(平均信号値)を算出し、各小領域毎に呼吸1サイクルにおける信号値の最小値及び最大値を求め、求めた最小値をその領域の呼気の特徴量、最大値を吸気の特徴量としてもよい。信号値の最大値と最小値は正常な箇所では両者の値の差が大きくなり、異常のある箇所では両者の差が非常に小さくなると考えられる。異常のある箇所では肺胞の動きが悪くなるため、肺胞の密度変化が小さくなるからである。よって、医師は、「信号値の最大値/信号値の最小値」のヒストグラムを参照し、平均値及び標準偏差を確認することで、肺野が正常であるか疾患であるかの判断材料とすることができる。例えば、肺野全体の「信号値の最大値/信号値の最小値」の平均値が1より大きく、標準偏差が小さい場合、肺の機能は正常であると判断することができる。一方、肺野全体の「信号値の最大値/信号値の最小値」の平均値が1に近い値であり、標準偏差が大きい場合、肺の機能に疾患があると判断することができる。
【0086】
その他、「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値として、平均値、標準偏差の他に、カウント数(ブロック(小領域)数)がヒストグラムのピークとなる「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値、もしくは、ピークのカウント数(ブロック数)、もしくは、「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の値が所定以上所定以下となるカウント数の割合を指標値として用いても良い。もしくは、これらの複数の指標値を組み合わせて新たな指標値を作成しても良い。
【0087】
例えば、図13に示すように、「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値の一つをX軸、もう一つをY軸としたグラフに、各々の指標値に対する正常、異常の閾値TH1を示し、そのグラフ上に、動態画像から算出した肺野全体での「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値をプロットした図を解析結果としてもよい。図13は、X軸を「吸気期のフレーム間差分値の最大値/呼気期のフレーム間差分値の最大値」の平均値、Y軸をその標準偏差とし、動態画像から算出した肺野全体における「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の平均値、標準偏差の指標値をプロットしたグラフである。このようなグラフを用いて「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値を表示することにより、プロットされた点から閾値TH1までの距離によって異常の程度が視覚的に容易に把握することが可能となる。
【0088】
また、例えば、2つの指標値(例えば、「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の平均値、標準偏差)を線形結合した値を新たな指標値とし、図14に示すように2つの指標値の一方をX軸、他方をY軸としたグラフに、新たな指標値(2つの指標値を線形結合した指標値)を重症度により分類するための閾値th1〜th4を示し、このグラフ上に動態画像から算出した新たな指標値をプロットしてもよい。線形結合の例としては、平均値及び標準偏差に対する多数の測定値データから主成分分析により算出された第1主成分を指標値とすることができる。このようなグラフを用いることにより、異常の程度が視覚的により容易に把握することが可能となる。また、例えば、複数(M個)の指標値に対する多数(N個)の測定値データより、N×M個のデータに対する共分散行列の最大固有値を算出することで第一主成分を算出し、算出された主成分を指標値として用いてもよい。
【0089】
また、「吸気の特徴量/呼気の特徴量」の傾向を示す指標値の他に、吸気の特徴量、もしくは呼気の特徴量のそれぞれに対して傾向を示す指標値を算出してもよい。例えば、図15に示すように、小領域毎に算出した吸気もしくは呼気の特徴量に対して、左右肺野内をそれぞれ上中下の3つに分割した計6つの領域の各々において変動係数(=標準偏差/平均値)を算出し、変動係数の大きさに応じた色相(又は輝度又は彩度)によって、6つの領域を色付けし表示した静止画像を作成してもよい。このような表示をすることで、不均等換気の分布を把握することが容易となり、不均等換気が行われている部分が区域的であるかもしくはびまん性であるかが容易に判定可能となる。
【0090】
次に、図5のステップS24において実行される血流情報生成処理について説明する。
図16に、血流情報生成処理のフローチャートを示す。
【0091】
ここで、本実施の形態における血流解析は、心臓の収縮によって右心室から大動脈を介して血液が急激に吐出されることにより肺野血管が拡がるので、この拡がりを動態画像を解析することにより抽出して血流に関する診断支援情報として出力するものである。即ち、図17に示すように肺野において血管が拡張すると、肺血管が拡がった領域の放射線透過量が、肺野(肺胞)領域を透過する放射線透過量よりも比較的大きく減少するので、この領域に対応する放射線検出部13の出力信号値が低下する。このような心臓の拍動に呼応した肺血管の拡がりは、心臓近傍の動脈から末梢へ伝播する。そこで、動態画像を構成する一連のフレーム画像間の放射線検出部13の画素(ピクセル)単位、または、複数画素からなる小領域単位(画素ブロック単位)を互いに対応付け、画素単位又は小領域単位毎に、信号値が最も低くなったフレーム画像を求め、そのフレーム画像の該当する領域を肺血管が血流により拡張したタイミングを示す信号として色付けする。そして、色付け後の一連のフレーム画像を表示部34に順次表示することで、血流の状態を医師が視認できるようにする。
【0092】
各画素(小領域)において、血流により肺血管が拡張したタイミングを示す信号(血流信号という)は、図18の(A)に示すように、その画素(小領域)の信号値の時間変化を示す波形(出力信号波形という)の極小値を求めることにより取得することができる。この血流信号は心臓の拍動周期と同じ間隔で表れるが、不整脈等の異常個所があると、図18の(B)に示すように、心臓の拍動周期と異なる間隔で血流に伴う血管の拡張と関係なく極小値が表れる場合がある。そこで、本実施の形態においては、心臓の拍動を示す拍動信号波形と各小領域の出力信号波形との相関係数を求めることにより、精度良く血流信号を抽出できるようにしている。
【0093】
血流情報生成処理においては、まず、各フレーム画像から肺野領域が抽出される(ステップS201)。肺野領域の抽出については、図6のステップS101で説明したものと同様であるので説明を援用する。
【0094】
次いで、各フレーム画像の肺野領域が複数の画素ブロックからなる小領域に分割され、各フレーム画像の小領域が互いに対応付けられる(ステップS202)。肺野領域の小領域の分割及びフレーム画像間での小領域の対応付けについては、図6のステップS102で説明したものと同様であるので説明を援用する。また、各小領域を構成する各画素の信号値は、それらの代表値(平均値、中央値、最頻値等)に置き換えられる。
【0095】
なお、ステップS202の処理を行わずに、以下、各小領域単位でなく、各ピクセル単位で処理を行っていくこととしてもよい。
小領域のサイズを大きくすると、各小領域の出力信号値(代表値)には何らかの周期的な変化が表れるが、これは、上記の呼吸周期によるノイズを含んだものとなる。また、小領域のサイズが大きくなると、個々の小領域の積算値に占める血管の拡張の影響の割合が低下し、肺血管の拡張の周期検出精度が徐々に低下し、困難になる。また、後述するステップS210で血流信号が識別可能に表示された動態画像(パラパラめくり表示画像)を観察するユーザ(医師)の残像効果も加味した視認性を考慮すると、本発明における好ましい小領域のサイズは0.2〜5mm、より好ましくは0.4〜2mmである。
【0096】
次いで、血流信号を抽出する際の基準となる拍動信号波形が取得される(ステップS203)。
拍動信号波形としては、以下の何れかを用いることができる。
(1)心臓領域(又は大動脈領域)にROI(関心領域)を定め、そのROIにおける信号値の時間変化を示す波形
(2)(1)の波形を反転させた信号波形
(3)心電検知センサより得られた心電信号波形
(4)心壁の動き(位置の変化)を示す信号波形
即ち、胸部診断支援情報生成システム100においては、上記(1)〜(4)の何れかにより拍動信号波形を取得する手段を備える。なお、心電検知センサによる心電信号波形を拍動信号波形として使用する構成の場合は、動態撮影によりフレーム画像が取得されている間に心電検知センサによる心電信号波形の取得が同時に行われてRAMに記憶される。ステップS203においては、RAMに記憶されている心電信号波形が読み出される。
なお心臓領域のROIは右心室領域に定めることが理想であるが、左心室領域に定めることとしても良い。これは、動態画像では右心室領域と比べて左心室領域で信号波形の抽出が容易であること、右心室と左心室での心拍周期がほぼ同じであることによる。ただし、左心室を拍動信号波形として用いる場合、後述する方法にて算出した血管拡張タイミングに、右心室と左心室の心拍周期のタイミング差をオフセット量として加算する等の方法によって、血管拡張タイミングを補正しても良い。
【0097】
上記(1)の信号波形は、図19に示すように、操作部33により指定されたROI領域に対し、横軸を動態画像の撮影開始からの経過時間(フレーム番号)、縦軸をROIにおける信号値(代表値)とした座標空間上に各フレーム画像のROI領域の信号値(代表値)をプロットすることにより作成することができる。
(2)は、図20に示すように、(1)の信号波形を反転させたものである。この波形は、各小領域(又は各ピクセル)の信号波形に近い形状としておくことにより、後段の処理工程で相互相関係数を求めやすくしたものである。
【0098】
図21の(A)は、心臓領域に設定したROIの1心拍分の出力信号波形を模式的に示す図、図21の(B)は、肺血管領域の1心拍分の出力信号波形を模式的に示す図である。図21の(A)に示すように、1心拍におけるROIの出力信号波形は、心臓(心室)の収縮期には、心臓の収縮によって心室から大動脈に急激に血液が吐出するのでROIの信号値は急激に増加するが、心臓(心室)の拡張期には静脈からのなだらかな血液の吐入により心臓が拡張するので、信号値はなだらかに減少する。一方、肺野血管においては、心臓の収縮によって心臓から急激に吐出された血液の吐入によって血管壁が拡張されるので、図21の(B)に示すように、心臓の収縮期に対応して信号値が急激に減少する。肺野血管の収縮期には心臓への血液のなだらかな吐出によって血管壁が収縮するので信号値は増加する。このように、肺野血管領域の出力信号波形は心臓領域の出力信号波形を反転させたものになる。そこで、両者の信号波形を揃えるために、心臓領域の出力信号波形を反転させることで、図21の(C)と(D)に示すように、両者の信号波形の形状の特徴を揃える。
【0099】
(4)の信号波形は、各フレーム画像においてテンプレートマッチング等により心臓領域を認識し、心壁位置の基準位置(例えば、心臓領域においてx座標(水平方向座標)が最も大きい(外側の)エッジ点)を特定し、横軸を動態画像の撮影開始からの経過時間(フレーム番号)、縦軸を心壁位置の基準位置(x座標)とした座標空間上に各フレーム画像の心壁位置の基準位置をプロットすることにより作成することができる。
【0100】
次いで、小領域毎に、その小領域の信号値の時間変化を示す波形(出力信号波形)が生成される(ステップS204)。小領域毎の出力信号波形は、横軸を動態画像の撮影開始からの経過時間(フレーム番号)、縦軸を信号値(放射線検出部13の出力信号値の代表値。例えば、平均値、中央値、最頻値等)とした座標空間上に各フレーム画像のその小領域の代表値をプロットすることにより作成することができる。
【0101】
次いで、拍動信号波形及び各小領域の出力信号波形に時間軸方向のフィルタリング処理が施される(ステップS205)。
このフィルタリング処理は、呼吸等による低周波数な信号変化を除去し、血流による信号値の時間変化を抽出するための処理である。例えば、小領域毎の信号値の時間変化に対して、安静呼吸画像群では低域カットオフ周波数0.7Hz、深呼吸画像群では低域カットオフ周波数0.5Hzでハイパスフィルタリングを行う。若しくは、さらに高周波数のノイズ成分を除去するために2.5Hzの高域カットオフ周波数で高周波数も遮断するバンドパスフィルタによってフィルタリングを行っても良い。
ここで、前記カットオフ周波数は、固定値とするよりも、撮影された動態画像毎に最適化することが好ましい。例えば、前述のように一連のフレーム画像の心臓領域の信号変化から、心臓の収縮期の時間と拡張期(弛緩期)の時間を算出する。そして、拡張期の時間の逆数に所定の係数を乗じた値をハイパスフィルタもしくはバンドパスフィルタで低周波数を遮断するカットオフ周波数として設定し、また、バンドパスフィルタの場合は、収縮期の時間の逆数に所定の係数を乗じた値を高周波数を遮断する高域カットオフ周波数として設定する。更に、低域カットオフ周波数は、呼吸による周波数成分を考慮し、一連のフレーム画像から横隔膜の値を解析し、安静換気の場合は安静呼気位及び安静吸気位となるフレーム画像を検出し、安静呼気位のフレームとその次の安静吸気位のフレームの間のフレーム数から吸気期の時間を求め、その逆数と、前記拡張期の時間の平均値に所定の係数を乗じた値を低域のカットオフ周波数として設定してもよい。このとき安静換気の場合、自動的に設定されるカットオフ周波数は、低域カットオフ周波数は0.2〜1.0Hzの間に、高域カットオフ周波数は、2.0Hz以上に制限することが好ましい。また、図4のステップS1において、別途測定された安静時における1分間の呼吸数、脈拍数等のバイタルサインを患者情報として入力しておき、これらの値からカットオフ周波数が算出されるようにしてもよい。例えば、患者情報として入力された1分間の呼吸数を1秒間の呼吸数に変換し、その呼吸数に所定の係数を乗じた値を低域カットオフ周波数としてもよい。そして、入力された1分間の脈拍数を1秒間の脈拍数に変換し、1秒間の呼吸数に所定の係数を乗じた値を高域カットオフ周波数としてもよい。更に、1秒間の呼吸数と1秒間の心拍数の平均値に所定の係数を乗じた値を低域カットオフ周波数として設定するようにしてもよい。
【0102】
なお、ステップS205におけるフィルタリング処理は、精度良く血流信号を抽出するために行うものであり、要求される精度や処理速度によっては省略しても構わない。個々の小領域(ピクセル)に対する肺血管位置はずっと一定ではなく、呼吸に伴い移動するが、肺血管が当該小領域からはずれたらその小領域の信号値としては大きくなる。肺野の呼吸周期は2〜10秒程度なので、各小領域への肺血管の写りこみの周期も呼吸周期に追従することになる。また、呼吸周期に伴い肋骨位置も移動し、個々の小領域の信号値に影響を与える。しかしながら、心臓の拍動周期は呼吸周期に比べてかなり短いので、上記の各成分が重畳したRAWデータ(フィルタ処理を施してない画像)でもこの周期差を利用することで血流信号を取得することが可能となる。
【0103】
次いで、フィルタリング処理後の拍動信号波形から心臓が最も収縮したタイミングのフレーム画像の番号が取得される(ステップS206)。例えば、拍動信号波形として上述の(2)で説明したROIにおける反転した信号波形を用いる場合、図22の(A)に示す波形の極小値(信号値が最低となるフレーム画像。図22の(A)においてフレーム番号8、16)が心臓が最も収縮したタイミングのフレーム画像である。
【0104】
次いで、各小領域毎に、出力信号波形を1フレーム間隔ずつずらしながら(時間方向にシフトさせながら)拍動信号波形との相互相関係数が算出される(ステップS207)。
例えば、最初に、撮影開始からのフレーム番号が互いに一致した同一時間軸の拍動信号波形と出力信号波形の2つの信号波形の相互相関係数を算出する(時間シフトなしの相互相関係数を算出する)。次いで、拍動信号波形に対して、出力信号波形を1フレーム分左へシフト、すなわち、1フレーム間隔進めて、2つの信号波形の相互相関係数を算出する。以下、出力信号波形の左シフトを繰り返し、各小領域に対してそれぞれ出力信号波形を、シフトなしから1心拍周期以上左シフトした相互相関係数を算出する。次いで、同様に、出力信号波形を1フレーム分ずつ右へシフトさせながら、シフトなしから1心拍周期以上右シフトした相互相関係数を算出してもよい。ただし、通常は、心臓から抽出した拍動信号波形に対して、出力信号波形は位相が時間的に遅延しているため、遅延度合いを特定する左シフトのみを計算すれば十分である。ただし、相互相関係数算出時には、シフトしたフレーム数分だけデータ数が少なくなるため、シフト量に応じてデータ数が減少することで相互相関係数の計算精度が下がってしまう。そこで、拍動信号波形、出力信号波形は完全な周期関数であるとみなして、相互相関係数を、シフトなしから1/2心拍周期以上左シフトした場合と、同様に、シフトなしから1/2心拍周期以上右シフトした場合に対して算出し、右シフトに対する相互相関係数は(1心拍周期−右シフト量)だけ左シフトした場合の相互相関係数とみなしてもよい。このようにすることで、相互相関係数算出時のシフト量に応じたデータ数減少を抑えることができる。相互相関係数は、以下の〔数1〕により求めることができる。
【数1】
【0105】
次いで、各小領域毎に、相互相関係数が最大となったときのずらし量(シフト量)に基づいて、肺血管が血流により拡張したタイミングのフレーム画像の番号が特定される(ステップS208)。例えば、図22の(A)に示す1心拍周期が約8フレームである拍動信号波形に対して、ある小領域の出力信号波形が図22の(B)に点線で示す出力信号波形である場合は、図22の(B)に示す出力信号波形を左に5シフトさせたときに相互相関係数は最大となる。そこで、ステップS206で取得された、拍動信号波形において心臓が最も収縮したタイミングのフレーム画像の番号8および16から右に5シフトした13および21をその小領域において肺血管が血流により拡張したタイミングのフレーム画像の番号として特定する。
【0106】
そして、各小領域毎に、ステップS208で特定したフレーム番号のフレーム画像のその小領域には、肺血管が血流により拡張したタイミングであることを示す識別情報として、例えば赤色が割付られ、それ以外のフレーム画像のその小領域には黒色が割り付けられ(ステップS209)、各小領域に赤、黒が割り付けられた動態画像のフレーム画像が表示部34に動画表示(順次表示)される(ステップS210)。
【0107】
図23に、ステップS210において表示部34に動画表示されるフレーム画像群の一例を示す。ステップS210では、図23の左上のフレーム画像から表示部34に順次表示される。
図23に示すように、ステップS210においては、時系列で各小領域の肺血管が血流により拡張するタイミングが赤色(図23においてはグレー)で動画表示されるので、従来のように造影剤を使用しなくても医師等の観察者は血流のイメージを視認可能となる。そして、血流が正常であるか、血流が滞っている箇所があるか等を診断することが可能となる。呼吸に関する解析のようにフレーム間差分に基づく特徴量を算出するものではないので、従来のように呼吸の解析結果に比べてS/N比が劣ることもなく、呼吸、血流のそれぞれに応じた精度良い診断支援情報を提供することができる。
また色付け表示方法として、各小領域において、肺血管が血流により最大に拡張したタイミングのフレームのみに色付けを施すだけでなく、各フレームの相互相関係数の値に応じて、色付けした画像を表示しても良い。例えば、正の相互相関係数値が高いフレーム(肺血管が血流により最大に拡張した付近のフレーム)では強い赤(彩度大の赤)、正の相互相関係数が低いフレーム(肺血管が血流により多少拡張したフレーム)では弱い赤(彩度小の赤)、負の相互相関係数(肺血管に血流が存在しないフレーム)では黒が割り付けられた動態画像のフレーム画像を表示部34に動画表示(順次表示)する。このような表示を行うことで、医師は肺血管が血流により最大に拡張するタイミングだけでなく、血流が肺血管をより滑らかに流れるイメージを視認することが可能となる。
【0108】
上記画像解析処理においては、心臓の拍動を示す拍動信号波形と各小領域の出力信号波形との相互相関係数を用いることにより、精度良く血流信号を抽出できるようにしたが、要求される精度や処理速度に応じて、相互相関係数を用いずに、出力信号波形の極小値となったタイミングの信号を血流を示す信号として抽出しても構わない。例えば、拍動信号波形から心拍周期を求め、出力信号波形において心拍周期間隔で表れる極小値のみを血流を示す信号として抽出することとしてもよい。また、血管拡張タイミングにて色付けしたフレーム画像は、動画表示だけでなく、並列表示に切り替えられることとしてもよい。また、上記では複数周期の拍動信号波形と出力信号波形を用いて相互相関係数を算出することとしたが、拍動信号波形の各1心拍周期に対して、極小値のタイミングを中心とした1〜1.5心拍分の拍動信号波形を抽出し、これらの抽出したそれぞれの拍動信号波形に対して、複数周期の場合と同様に、出力信号波形を1フレームずつ左、さらに必要であれば右にシフトして、相互相関係数を算出するモードを設けても良い。このように、拍動信号波形を各1心拍毎に分割することで、ある1周期中に不整脈等のノイズがあった場合はその影響は受けやすくなるが、各1心拍に対しては肺野内各小領域の血管拡張のタイミングをより正確に算出できるようになる。また、この他に、心臓の拍動に対する肺野内各小領域の出力信号波形の相対的な遅延度合いを表現する画像として、単純に複数周期の拍動信号波形と出力信号波形の相互相関係数を色(輝度、彩度、明度、色相など)に対応づけて色付け表示した画像を生成し、1フレームずつ出力信号波形をシフトしながら生成した画像も動画表示もしくは並列表示できるようにしても良い。これにより、単に、拍動信号波形との類似性が高いタイミングにおいて色付けが強調された画像を、動画もしくは並列表示することができる。この表示画像においても、拍動信号波形を基準とした相対的な遅延として、血流による肺血管の拡張が時系列的に肺野内に広がる様子を観察することができる。またこのとき、各小領域において、1フレームずつ出力信号波形をシフトして計算した複数のシフト量に対する相互相関係数から、最大値、平均値等の1つの代表値を算出し、算出した代表値に対して色を対応付けて色付け表示した画像を生成し、表示しても良い。これにより、肺野内の血流情報として、各小領域における出力信号波形の拍動信号波形に対する類似度合いを、医師が一目で把握しやすいよう、1画像に集約した形で表示することが可能となる。さらに、この相互相関係数に色を対応づけて表示する場合において、相互相関係数を数1の式に対してσBで正規化せずに(徐さずに)算出することで、相互相関係数は、単に拍動信号波形との類似性だけでなく、出力信号波形の大きさにも応じて値が大きくなる値となる。このように、σBでの正規化を行わないことで、拍動信号波形との類似性が高いタイミング、かつ、出力信号波形の振幅が大きい小領域において、色付けが強調された画像を、動画もしくは並列表示することができる。このような表示も可能にすることで、医師は、単に心臓の拍動に対する肺野内各小領域の血管拡張タイミングだけでなく、各小領域における血管の拡張の度合も含めて、患者の正常/異常を判断できるようになり、診断精度を向上させることができる。
なお、精度良く解析を行うために、グリッド有りで撮影を行ったり、オフセット補正処理やゲイン補正処理を行ったりする構成としてもよい。
【0109】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態においては、移動が困難な患者用の移動型胸部診断支援情報生成システム70に本発明を適用した場合について説明する。移動型胸部診断支援情報生成システム70は、図24に示すように、回診車71ごと病室Rc等に持ち込まれ、FPDカセッテ72を、例えばベッドBに寝ている被写体Hの身体とベッドBとの間に差し込む等した状態で、ポータブルの放射線源52Pから放射線を照射して撮影を行い、診断支援情報を生成するためのシステムである。
【0110】
図24に示すように、移動型胸部診断支援情報生成システム70は、ポータブルの放射線源52Pと、放射線発生装置57とが回診車71に搭載されており、また、回診車71に設けられたアクセスポイント53により、持ち運び可能なコンソールCとFPDカセッテ72が無線接続することができるようになっている。
【0111】
コンソールCの基本的な構成は撮影用コンソール2や診断用コンソール3と同様に、制御部、記憶部、操作部、表示部、通信部を備えた構成である。コンソールCの記憶部には、可搬型の放射線検出器であるFPD(Flat Panel Detector)72から送信された画像データをポジショニングの確認用に表示(静止画表示又は動態表示)するためのプログラム、図5で説明した画像解析処理を実行するためのプログラムが記憶されている。また、コンソールCには、通信ケーブル等によりFPDカセッテ72と接続してデータ通信を行うためのコネクターが備えられている。
【0112】
FPDカセッテ72は、放射線技師等の撮影者が持参してもよいが、FPDカセッテ72は比較的重く、落下すると壊れたり故障したりする可能性があるため、回診車71に設けられたカセッテ用のポケット71aに挿入されて回診車71とともに搬送できるようになっている。
【0113】
FPDカセッテ72は、動態撮影及び静止画撮影対応のFPDである。このFPDカセッテ72は、図25に示すように、制御部721、検出部722、記憶部723、コネクター724、バッテリー725、無線通信部726等を備えて構成され、各部はバス727により接続されている。
【0114】
制御部721は、CPU、RAM等により構成される。制御部721のCPUは、記憶部723に記憶されているシステムプログラムや処理プログラム等の各種プログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行する。
例えば、制御部721は、コネクター724を介してコンソールCと接続されると、動態撮影モードに移行し、コネクター724を介した外部電力供給及び有線通信する構成に変更する。これは、動態撮影では、静止画撮影に比べ、データ転送容量や転送時間が圧倒的に増えるので、一のフレーム画像の転送中に他のフレーム画像の撮影(読取り)に対しノイズを与えないため、且つ、転送時間自体を短くするためであり、さらに、一連の撮影途中のバッテリー切れを防止するためである。そして、制御部721は、動態撮影モード処理を実行する。即ち、制御部721は、記憶部723に記憶されている動態撮影用の画像読取条件に基づいて検出部722のスイッチング部を制御して、各検出素子に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングしていき、検出部92に蓄積された電気信号を読み取ることにより画像データ(フレーム画像)を生成する。次いで、生成されたフレーム画像の肺野領域を複数の小領域に分割し、各フレーム各小領域の出力信号値をその小領域の代表値(平均値、中央値、最頻値等)に置き換えるビニング処理を行う。そして、ビニング処理されたフレーム画像の画像データを順次コネクター724を介してコンソールCに送信する。
一方、コネクター724を介してコンソールCと接続されていないと判断した場合、制御部721は、静止画撮影モード処理を実行する。即ち、検出部722による放射線自動検知機能を有効にし、記憶部723に記憶されている静止画撮影用の画像読取条件に基づいて検出部722のスイッチング部を制御して、各検出素子に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングしていき、検出部92に蓄積された電気信号を読み取ることにより画像データ(静止画像)を生成する。そして、生成されたフレーム画像の画像データを無線通信部726を介してコンソールCに送信する。
【0115】
検出部722は、例えば、ガラス基板等を有しており、基板上の所定位置に、放射線源52Pから照射されて少なくとも被写体を透過した放射線をその強度に応じて検出し、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する複数の検出素子が二次元状に配列されている。検出素子は、フォトダイオード等の半導体イメージセンサにより構成される。各検出素子は、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング部に接続され、スイッチング部により電気信号の蓄積及び読み出しが制御される。
なお、生成された静止画像又はフレーム画像を構成する各画素は、検出部722の各検出素子のそれぞれから出力された信号値(ここでは、濃度値)を示す。
【0116】
記憶部723は、例えば半導体の不揮発性メモリ等で構成されている。記憶部723には、検出部722を制御するための各種プログラムや、動態撮影用及び静止画撮影用の画像読取条件等が記憶されている。また、記憶部723には、検出部722から出力された画像データが一時的に記憶される。
【0117】
コネクター724は、コンソールC側のコネクターと接続し、コンソールCとのデータ送受信を行う。また、コネクター724は、コンソールCから供給される電力を各機能部へ供給する。なお、バッテリー725を充電する構成としても良い。
【0118】
バッテリー725は、制御部721の制御に基づいて、FPDカセッテ72の各部に電力を供給する。バッテリー725としては、例えばニッカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の充電自在な電池等を適用することができる。
【0119】
無線通信部726は、アクセスポイント53を介してコンソールCと無線によるデータ通信を行う。
本実施形態では、移動型胸部診断支援情報生成システム70でのアクセスポイント53には、他のアクセスポイントに割り当てられた何れの識別情報(すなわちSSID)とも異なる識別情報(SSID)が割り当てられている。そのため、移動型胸部診断支援情報生成システム70のアクセスポイント53は、当該アクセスポイント53のSSIDが設定されたFPDカセッテ72から送信される画像データ等のみをコンソールCに送信し、他のSSIDが設定されたFPDカセッテからは画像データ等を受け付けない。そのため、移動型胸部診断支援情報生成システム70と他のシステムとの間で信号の混信が生じることを確実に防止することが可能となる。
【0120】
以下、移動型胸部診断支援情報生成システム70における動態撮影時の動作について説明する。
FPDカセッテ72において、コネクター724にコンソールC側のコネクターが接続されると、動態撮影モードに切替が行われ、動態撮影が行われる。このとき、患者の被曝量低減及びポジショニングの邪魔になることを防止するために、グリッド無しで撮影を行うことが好ましい。
撮影により生成されたフレーム画像の画像データにはビニング処理が施され、各フレーム画像の肺野領域が所定画素ブロックサイズの小領域に分割され、コネクター724を介してコンソールCに送信される。ここで、回診による撮影は、重篤な患者を被写体Hとして撮影することが多いため、リアルタイムでポジショニングの確認を行えるようにすることが好ましい。そのため、例えば、4×4程度の、撮影室での撮影時のビニングサイズ(例えば、2×2)に比べて大きいサイズとすることが好ましい。
【0121】
コンソールCでは、FPDカセッテ72からフレーム画像の画像データ群が受信されると、受信された各画像データが記憶部に記憶されるとともに、各画像データの画素が間引きされ、ポジショニングや動態周期の確認用(プレビュー用)に順次表示部に表示される。なお、コンソールCでは連続して受信された画像データを一つのシリーズ画像(1回の動態撮影セットの画像)として扱う。予め定められた時間に画像データの受信がない場合、1セットの撮影が終了したと判断し、予め記憶されている撮影オーダ情報との対応付けが行われる。
なお、プレビュー用に順次フレーム画像を表示する代わりに、各フレーム画像を呼気期又は吸気期に基づいて分類し、呼気系フレーム画像群と吸気系フレーム画像群に分けて表示部に表示することとしてもよい。例えば、肺野の基準位置の信号値がその前に撮影されたフレーム画像の同位置の信号値より大きい場合は吸気、小さい場合は呼気に分類することができる。このようにすれば、呼吸1サイクル未満の撮影であった場合に再撮影が必要であることを撮影者が容易に認識することができる。また、2枚目のフレーム画像が到着したらすぐに演算が開始できるので、処理時間がそれほどかかることがない。
【0122】
コンソールCにおいて、操作部から再撮影不要の指示が入力されると、操作部から指定された種類(呼吸及び/又は血流)の画像解析処理が実行され、解析結果が表示部に表示される。画像解析処理の具体的な処理の流れについては、上記第1の実施の形態において説明したものと同様であるので説明を援用する。なお、回診場所における即時の解析結果を必要としない場合は、撮影室のコンソール(第1の実施の形態の診断用コンソール3)に画像データを転送して画像解析処理を行うこととしてもよい。
【0123】
第2の実施の形態における移動型胸部診断支援情報生成システム70によれば、回診時においても、1回の動態撮影で、被曝線量を減らしつつ呼吸と血流の解析を効率よく行うことが可能となる。
【0124】
以上説明したように、胸部診断支援情報生成システム100によれば、診断用コンソール3の制御部31は、撮影装置1において動態撮影により取得された複数のフレーム画像について、放射線検出器13における同一位置の検出素子の出力する信号値を示す画素又は画素ブロックを前記複数のフレーム画像間で互いに対応付け、時間的に隣接するフレーム画像間の前記互いに対応する画素又は画素ブロックの信号値の差分値に基づいて前記被写体の呼吸に関する診断支援情報を生成する。また、前記互いに対応する画素又は画素ブロックの信号値の時間変化を示す出力信号波形を生成し、当該生成された出力信号波形に基づいて被写体Mの血流に関する診断支援情報を生成する。
即ち、1回の動態撮影で取得された一連の複数のフレーム画像を用いて、呼吸についてはフレーム間差分値に基づく特徴量の算出、血流については出力信号波形に基づく血流信号の抽出という異なる解析方法により診断支援情報を生成する。
従って、呼吸解析用と血流解析のそれぞれに対して撮影を行う必要がなくなり、患者の被曝線量を増やすことなく、呼吸と血流のそれぞれについて精度の良い診断支援情報を提供することが可能となる。
【0125】
また、被写体Mの呼吸に関する診断支援情報、即ち、呼吸機能の特徴量を表示する際には静止画表示を行い、被写体Mの血流に関する診断支援情報、即ち、各小領域の血流信号を表示する際には動画表示を行うので、診断支援情報の内容に応じて、診断に必要な情報を医師が認識しやすい態様で出力することができる。
【0126】
また、血流に関する診断支援情報を生成するに際し、動態撮影を行ったときの心臓の拍動信号波形に対し、各小領域毎に、出力信号波形をフレーム単位でずらしながら相互相関係数を算出し、心臓の拍動信号波形から取得した心臓が収縮したタイミングから、相互相関係数が最大となったときのずらし量だけずらしたタイミングをその小領域の肺血管が血流により拡張したタイミングとして特定し、特定したタイミングのフレーム画像の当該小領域に肺血管が血流により拡張したタイミングであることを示す識別情報(ここでは赤色)を付与する。従って、不整脈等の異常が存在するような場合であっても、各小領域の肺血管が血流により拡張したタイミングを精度良く特定することができる。
【0127】
また、相互相関係数の算出は、複数周期の拍動信号波形及び出力信号波形を用いて行うので、ある1周期中に不整脈等の異常が存在するような場合であっても安定した相互相関係数を算出結果を取得することが可能となる。
【0128】
また、被写体の動態に係る診断支援情報を生成する場合には、オフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理は行わないので、動態に係る診断支援情報の作成にかかる処理時間を大幅に低減することができる。
また、被写体の動態に係る診断支援情報を生成する場合には、グリッド無しで撮影を行うので、放射線検出部13への到達線量は従来と略同等に維持しつつ被写体Mの被曝線量の低減することが可能となる。
【0129】
移動型胸部診断支援情報生成システム70においても、上記の胸部診断支援情報生成システムと同様の効果を奏することができる。
【0130】
なお、上記第1及び第2の実施の形態の記述内容は、本発明の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
また、胸部診断支援情報生成システム100、移動型胸部診断支援情報生成システム70を構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0131】
100 胸部診断支援情報生成システム
1 撮影装置
11 放射線源
12 放射線照射制御装置
13 放射線検出部
14 読取制御装置
2 撮影用コンソール
21 制御部
22 記憶部
23 操作部
24 表示部
25 通信部
26 バス
3 診断用コンソール
31 制御部
32 記憶部
33 操作部
34 表示部
35 通信部
36 バス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源と、2次元状に配置された複数の検出素子により前記放射線源により照射され被写体を透過した放射線を検出して前記被写体の画像データを生成する放射線検出器と、を用いて前記被写体の胸部の撮影を行う撮影手段と、
前記撮影手段により取得された画像データに基づいて前記被写体の胸部に関する診断支援情報を生成する画像解析手段と、
前記画像解析手段により生成された診断支援情報を表示する表示手段と、
を備える胸部診断支援情報生成システムであって、
前記撮影手段は、前記放射線源から連続的に放射線を照射して前記被写体の胸部の動態を示す複数のフレーム画像を取得可能に構成され、
前記画像解析手段は、
前記撮影手段により取得された複数のフレーム画像について、前記放射線検出器における同一位置の検出素子が出力する信号値を示す画素又は画素ブロックを前記複数のフレーム画像間で互いに対応付け、時間的に隣接するフレーム画像間の前記互いに対応する画素又は画素ブロックの信号値の差分値に基づいて前記被写体の呼吸に関する診断支援情報を生成する呼吸情報生成手段と、
前記撮影手段により取得された複数のフレーム画像について、前記放射線検出器における同一位置の検出素子が出力する信号値を示す画素又は画素ブロックを前記複数のフレーム画像間で互いに対応付け、前記互いに対応する画素又は画素ブロックの信号値の時間変化を示す出力信号波形を生成し、当該生成された出力信号波形に基づいて前記被写体の血流に関する診断支援情報を生成する血流情報生成手段と、
を有する胸部診断支援情報生成システム。
【請求項2】
前記呼吸情報生成手段は、前記複数の各フレーム画像から肺野領域を抽出し、前記抽出された肺野領域の前記各画素又は各画素ブロック毎に時間的に隣接するフレーム画像間で信号値の差分値を算出し、算出した差分値に基づいて当該画素又は画素ブロックにおける呼吸に関する特徴量を前記被写体の呼吸に関する診断支援情報として生成し、
前記血流情報生成手段は、前記複数の各フレーム画像から肺野領域を抽出し、前記抽出された肺野領域の前記各画素又は各画素ブロック毎に、前記生成された出力信号波形を解析して当該画素又は画素ブロックの肺血管が血流により拡張したタイミングのフレーム画像を特定し、この特定されたフレーム画像の当該画素又は画素ブロックに当該領域の肺血管が血流により拡張したタイミングであることを示す識別情報を付与することにより前記被写体の血流に関する診断支援情報を生成する請求項1に記載の胸部診断支援情報生成システム。
【請求項3】
前記表示手段は、前記被写体の呼吸に関する診断支援情報を表示する際には静止画表示を行い、前記被写体の血流に関する診断支援情報を表示する際には動画表示を行う請求項2に記載の胸部診断支援情報生成システム。
【請求項4】
前記複数のフレーム画像の撮影期間における前記被写体の心臓の拍動を示す拍動信号波形を取得する拍動信号波形取得手段を備え、
前記血流情報生成手段は、前記各画素又は各画素ブロック毎に、横軸をフレーム画像の撮影順を示すフレーム番号、縦軸を当該画素又は画素ブロックの信号値とした座標平面を作成し、前記各フレーム画像の当該画素又は画素ブロックの信号値に対応する点を前記座標平面上にプロットすることにより当該画素又は画素ブロックの出力信号波形を生成し、前記取得された拍動信号波形に対して前記出力信号波形をフレーム番号単位でずらしながら前記拍動信号波形と前記出力信号波形の相互相関係数を算出し、前記拍動信号波形において心臓が最も収縮したタイミングから前記相互相関係数が最大となったときのずらし量だけずれたタイミングのフレーム画像を当該画素又は画素ブロックにおいて肺血管が血流により拡張したタイミングのフレーム画像として特定する請求項1〜3の何れか一項に記載の胸部診断支援情報生成システム。
【請求項5】
前記拍動信号波形取得手段は、心電波形を取得する心電検知センサ、前記複数のフレーム画像から心臓領域又は大動脈領域における信号値の時間変化を示す波形を拍動信号波形として取得する手段、若しくは前記複数のフレーム画像から心壁位置を抽出し、抽出された心壁位置の時間変化を示す波形を拍動信号として取得する手段、の何れかである請求項4に記載の胸部診断支援情報生成システム。
【請求項6】
前記血流情報生成手段は、複数周期の拍動信号波形及び出力信号波形を用いて前記血流に関する情報を取得する請求項1〜5の何れか一項に記載の胸部診断支援情報生成システム。
【請求項7】
前記撮影手段により取得された画像データにオフセット補正処理及びゲイン補正処理のうち少なくとも一つを実施する補正手段と、
前記撮影手段により取得された画像データに対して前記補正手段による補正を実施するか否かの制御を行う制御手段を備え、
前記制御手段は、前記画像解析手段により前記被写体の動態に係る診断支援情報を生成する場合には、前記補正手段による補正は実施しないように制御する請求項1〜6の何れか一項に記載の胸部診断支援情報生成システム。
【請求項8】
前記放射線源からの散乱放射線を除去する散乱線除去グリッドと、
前記散乱線除去グリッドを用いて撮影を行うか否かの制御を行う撮影制御手段を備え、
前記撮影制御手段は、前記画像解析手段により前記被写体の動態に係る診断支援情報を生成する場合には、前記散乱線除去グリッド無しで撮影が行われるように制御する請求項1〜7の何れか一項に記載の胸部診断支援情報生成システム。
【請求項1】
放射線源と、2次元状に配置された複数の検出素子により前記放射線源により照射され被写体を透過した放射線を検出して前記被写体の画像データを生成する放射線検出器と、を用いて前記被写体の胸部の撮影を行う撮影手段と、
前記撮影手段により取得された画像データに基づいて前記被写体の胸部に関する診断支援情報を生成する画像解析手段と、
前記画像解析手段により生成された診断支援情報を表示する表示手段と、
を備える胸部診断支援情報生成システムであって、
前記撮影手段は、前記放射線源から連続的に放射線を照射して前記被写体の胸部の動態を示す複数のフレーム画像を取得可能に構成され、
前記画像解析手段は、
前記撮影手段により取得された複数のフレーム画像について、前記放射線検出器における同一位置の検出素子が出力する信号値を示す画素又は画素ブロックを前記複数のフレーム画像間で互いに対応付け、時間的に隣接するフレーム画像間の前記互いに対応する画素又は画素ブロックの信号値の差分値に基づいて前記被写体の呼吸に関する診断支援情報を生成する呼吸情報生成手段と、
前記撮影手段により取得された複数のフレーム画像について、前記放射線検出器における同一位置の検出素子が出力する信号値を示す画素又は画素ブロックを前記複数のフレーム画像間で互いに対応付け、前記互いに対応する画素又は画素ブロックの信号値の時間変化を示す出力信号波形を生成し、当該生成された出力信号波形に基づいて前記被写体の血流に関する診断支援情報を生成する血流情報生成手段と、
を有する胸部診断支援情報生成システム。
【請求項2】
前記呼吸情報生成手段は、前記複数の各フレーム画像から肺野領域を抽出し、前記抽出された肺野領域の前記各画素又は各画素ブロック毎に時間的に隣接するフレーム画像間で信号値の差分値を算出し、算出した差分値に基づいて当該画素又は画素ブロックにおける呼吸に関する特徴量を前記被写体の呼吸に関する診断支援情報として生成し、
前記血流情報生成手段は、前記複数の各フレーム画像から肺野領域を抽出し、前記抽出された肺野領域の前記各画素又は各画素ブロック毎に、前記生成された出力信号波形を解析して当該画素又は画素ブロックの肺血管が血流により拡張したタイミングのフレーム画像を特定し、この特定されたフレーム画像の当該画素又は画素ブロックに当該領域の肺血管が血流により拡張したタイミングであることを示す識別情報を付与することにより前記被写体の血流に関する診断支援情報を生成する請求項1に記載の胸部診断支援情報生成システム。
【請求項3】
前記表示手段は、前記被写体の呼吸に関する診断支援情報を表示する際には静止画表示を行い、前記被写体の血流に関する診断支援情報を表示する際には動画表示を行う請求項2に記載の胸部診断支援情報生成システム。
【請求項4】
前記複数のフレーム画像の撮影期間における前記被写体の心臓の拍動を示す拍動信号波形を取得する拍動信号波形取得手段を備え、
前記血流情報生成手段は、前記各画素又は各画素ブロック毎に、横軸をフレーム画像の撮影順を示すフレーム番号、縦軸を当該画素又は画素ブロックの信号値とした座標平面を作成し、前記各フレーム画像の当該画素又は画素ブロックの信号値に対応する点を前記座標平面上にプロットすることにより当該画素又は画素ブロックの出力信号波形を生成し、前記取得された拍動信号波形に対して前記出力信号波形をフレーム番号単位でずらしながら前記拍動信号波形と前記出力信号波形の相互相関係数を算出し、前記拍動信号波形において心臓が最も収縮したタイミングから前記相互相関係数が最大となったときのずらし量だけずれたタイミングのフレーム画像を当該画素又は画素ブロックにおいて肺血管が血流により拡張したタイミングのフレーム画像として特定する請求項1〜3の何れか一項に記載の胸部診断支援情報生成システム。
【請求項5】
前記拍動信号波形取得手段は、心電波形を取得する心電検知センサ、前記複数のフレーム画像から心臓領域又は大動脈領域における信号値の時間変化を示す波形を拍動信号波形として取得する手段、若しくは前記複数のフレーム画像から心壁位置を抽出し、抽出された心壁位置の時間変化を示す波形を拍動信号として取得する手段、の何れかである請求項4に記載の胸部診断支援情報生成システム。
【請求項6】
前記血流情報生成手段は、複数周期の拍動信号波形及び出力信号波形を用いて前記血流に関する情報を取得する請求項1〜5の何れか一項に記載の胸部診断支援情報生成システム。
【請求項7】
前記撮影手段により取得された画像データにオフセット補正処理及びゲイン補正処理のうち少なくとも一つを実施する補正手段と、
前記撮影手段により取得された画像データに対して前記補正手段による補正を実施するか否かの制御を行う制御手段を備え、
前記制御手段は、前記画像解析手段により前記被写体の動態に係る診断支援情報を生成する場合には、前記補正手段による補正は実施しないように制御する請求項1〜6の何れか一項に記載の胸部診断支援情報生成システム。
【請求項8】
前記放射線源からの散乱放射線を除去する散乱線除去グリッドと、
前記散乱線除去グリッドを用いて撮影を行うか否かの制御を行う撮影制御手段を備え、
前記撮影制御手段は、前記画像解析手段により前記被写体の動態に係る診断支援情報を生成する場合には、前記散乱線除去グリッド無しで撮影が行われるように制御する請求項1〜7の何れか一項に記載の胸部診断支援情報生成システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図24】
【図25】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図14】
【図15】
【図19】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
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【図24】
【図25】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図14】
【図15】
【図19】
【図23】
【公開番号】特開2012−239796(P2012−239796A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115601(P2011−115601)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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