説明

脂環式構造含有重合体からなる熱収縮性フィルム

【課題】耐指脂白化性及び表面光沢性に優れた熱収縮性フィルムを提供すること。
【解決手段】脂環式構造含有重合体(A)と、芳香族ビニルブロックの割合が10〜30重量%である芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)を含有し、(A)/(B)が重量比で85/15〜70/30の範囲にある樹脂組成物(C)からなるフィルムを延伸してなる層を少なくとも1層有する熱収縮性フィルム。前記芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)が、スチレンとイソプレンのブロック共重合体であると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂環式構造含有重合体からなる熱収縮性フィルムに関し、詳しくは、耐指脂白化性及び表面光沢性に優れた、脂環式構造含有重合体と、芳香族ビニルブロックの割合が10〜30重量%である芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体を含有してなる樹脂組成物からなる熱収縮性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
脂環式構造含有重合体を含有する樹脂組成物からなる熱収縮性フィルムは、熱収縮性、透明性に優れており、PETボトルなどの包装材として用いられている。
また、熱収縮性フィルムの強度を改良するために、脂環式構造含有重合体に軟質重合体を配合することが検討されている。
特許文献1には、脂環式構造含有重合体100重量部に、軟質重合体としてエチレン・プロピレンランダム共重合体を18重量部配合した樹脂組成物からなるフィルムを延伸してなる熱収縮性フィルムが開示されている。
特許文献2には、脂環式構造含有重合体100重量部に、軟質重合体として芳香族ビニルブロックの割合が42重量%のスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素化物を20重量部配合した樹脂組成物からなるフィルムを延伸してなる熱収縮性フィルムが開示されている。
【特許文献1】特開平8−165357号公報
【特許文献2】特開2000−143829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、PETボトルなどの包装材の分野では、手で触った後に熱収縮した際に指脂が付着した部分が白化しないこと(耐指脂白化性)や、商品の意匠上の観点から表面光沢性が求められている。
しかしながら、特許文献1及び2に記載の熱収縮性フィルムは、耐指脂白化性と表面光沢性の両方を満足するものではなかった。
従って、本発明の課題は、耐指脂白化性及び表面光沢性に優れた熱収縮性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、脂環式構造含有重合体と、芳香族ビニルブロックの割合が10〜30重量%である芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体を特定の割合で配合した樹脂組成物からなるフィルムを延伸してなる層を少なくとも1層有する熱収縮性フィルムは、耐指脂白化性及び表面光沢性に優れている事を見出し本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、脂環式構造含有重合体(A)と、芳香族ビニルブロックの割合が10〜30重量%である芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)を含有し、(A)/(B)が重量比で85/15〜70/30の範囲にある樹脂組成物(C)からなるフィルムを延伸してなる層を少なくとも1層有する熱収縮性フィルムが提供される。
また、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)が、スチレンとイソプレンのブロック共重合体であると好ましく、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の共役ジエン化合物由来の単量体単位中の、1,2−及び3,4−付加重合由来の単量体単位の割合が60重量%以上であるとより好ましい。また、該熱収縮性フィルムの表面光沢度が120〜150%であると特に好ましい。
【発明の効果】
【0005】
本発明の熱収縮性フィルムは、耐指脂白化性及び表面光沢性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の熱収縮性フィルムは、脂環式構造含有重合体(A)と、芳香族ビニルブロックの割合が10〜30重量%である芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)を含有する樹脂組成物(C)からなるフィルムを延伸してなる層を少なくとも1層有する。
本発明においてフィルムとは、厚みが250μm以下である平らな形状の成形体(一般に「フィルム」と呼ばれる場合がある)の他に、厚みが3mm〜250μmである平らな形状の成形体(一般に「シート」と呼ばれる場合がある)を含む。
【0007】
(脂環式構造含有重合体(A))
本発明に用いられる脂環式構造含有重合体とは、重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を含有する重合体である。
脂環式構造は、主鎖及び側鎖のいずれに有していてもよいが、得られる熱収縮性フィルムの機械強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。
脂環式構造としては、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造などが挙げられるが、重合体の熱安定性等の観点からシクロアルカン構造が好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲にある。脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲にあると得られる熱収縮性フィルムの耐熱性が優れる。
脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は特に限定されないが、50重量%以上であると好ましく、70重量%以上であるとより好ましく、90重量%以上であると特に好ましい。脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると、得られる熱収縮性フィルムの耐熱性が優れる。
なお、脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位以外の残部は、使用目的に応じて適宜選択される。
【0008】
脂環式構造含有重合体の具体例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン重合体、(3)環状共役ジエン重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物などが挙げられる。
これらの中でも、得られる熱収縮性フィルムの耐熱性、機械的強度等の点から、ノルボルネン系重合体、環状共役ジエン重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体及びこれらの水素化物が好ましく、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体及びこれらの水素化物がより好ましく、ノルボルネン系重合体の水素化物が特に好ましい。
【0009】
(1)ノルボルネン系重合体
ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、これらの水素化物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーとこれと付加共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、得られる熱収縮性フィルムの耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素化物が最も好ましい。
【0010】
本発明においてノルボルネン系モノマーとは、式(1)で表されるノルボルネン構造を有する化合物である。
【化1】

ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、テトラシクロ[7.4.0.02,7.110,13]トリデカ−2,4,6,11−テトラエン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体などが挙げられる。
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基などが例示でき、上記ノルボルネン系モノマーは、これらの置換基を2種以上有していてもよい。
具体的には、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどが挙げられる。これらのノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0011】
これらノルボルネン系モノマーの開環重合体、またはノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体は、モノマー成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。
開環重合触媒としては、ルテニウム及びオスミウムなどの金属のハロゲン化物、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物、並びに還元剤からなる触媒;チタン、ジルコニウム、タングステン及びモリブデンなどの金属の、ハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物、並びに有機アルミニウム化合物などの助触媒からなる触媒;などを挙げることができる。
【0012】
ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとしては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィンモノマーなどが挙げられる。
【0013】
ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素化物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0014】
ノルボルネン系モノマーの付加重合体、またはノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体は、これらのモノマーを、公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と、有機アルミニウム化合物からなる触媒を用いて(共)重合させて得ることができる。
【0015】
ノルボルネン系モノマーと付加共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが用いられる。これらの中でも、α−オレフィン、特にエチレンが好ましい。
【0016】
これらの、ノルボルネン系モノマーと付加共重合可能なその他のモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ノルボルネン系モノマーとこれと付加共重合可能なその他のモノマーとを付加共重合する場合は、付加共重合体中のノルボルネン系モノマー由来の構造単位と共重合可能なその他のモノマー由来の構造単位との割合が、重量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
【0017】
(2)単環の環状オレフィン重合体
単環の環状オレフィン重合体としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィンモノマーの付加重合体などが挙げられる。
【0018】
(3)環状共役ジエン重合体
環状共役ジエン重合体としては、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエンモノマーを1,2−または1,4−付加重合した重合体及びその水素化物などが挙げられる。
【0019】
ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン重合体又は環状共役ジエン重合体の重量平均分子量は、多層フィルムの使用目的に応じて適宜選択されるが、通常5,000〜500,000、好ましくは8,000〜200,000、より好ましくは10,000〜100,000、特に好ましくは20,000〜60,000の範囲である。重量平均分子量がこの範囲にあると、得られる樹脂組成物の成形加工性及び得られる熱収縮性フィルムの機械的強度が高度にバランスされて好適である。
ここで、重量平均分子量は、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の値である。
【0020】
(4)ビニル脂環式炭化水素重合体
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素モノマーの重合体及びその水素化物;スチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族モノマーの重合体の芳香環部分の水素化物;などが挙げられ、ビニル脂環式炭化水素モノマーやビニル芳香族モノマーと、これらのモノマーと共重合可能なブタジエンなどの他のモノマーとのランダム共重合体、ブロック共重合体などの共重合体及びその水素化物など、いずれでもよい。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロック、またはそれ以上のマルチブロックや傾斜ブロック共重合体などが挙げられ、特に制限はない。
【0021】
ビニル脂環式炭化水素重合体が、ビニル芳香族モノマーの重合体の芳香環部分の水素化物である場合、芳香環部分の水素化率は、通常50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上である。
【0022】
ビニル脂環式炭化水素重合体の重量平均分子量は、多層フィルムの使用目的に応じて適宜選択されるが、通常10,000〜300,000、好ましくは15,000〜250,000、より好ましくは20,000〜200,000の範囲にある。重量平均分子量がこの範囲にあると、得られる樹脂組成物の成形加工性及び得られる多層フィルムの機械的強度が高度にバランスされるので好ましい。
ここで、重量平均分子量は、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の値である。
【0023】
本発明に用いられる脂環式構造含有重合体のメルトマスフローレイト(MFR)は特に限定されないが、2〜30g/10分の範囲にあると好ましく、3〜20g/10分の範囲にあるとより好ましく、5〜10g/10分の範囲にあると特に好ましい。MFRがこの範囲にあると得られる樹脂組成物の成形加工性が優れる。
本発明においてメルトマスフローレイト(MFR)は、温度230℃、荷重21.18Nの条件でJIS K 7210に準じ測定した値である。
【0024】
本発明に用いられる脂環式構造含有重合体のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上が好ましく、60℃〜90℃の範囲であると特に好ましい。Tgがこの範囲であると、得られる熱収縮性フィルムの耐熱性・耐久性が優れる。
本発明においてTgは、JIS K 7121に基づいて示差走査熱量分析法(DSC)で測定した値である。
【0025】
(芳香族ビニルブロックの割合が10〜30重量%である芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B))
本発明に用いられる、芳香族ビニルブロックの割合が10〜30重量%である芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)とは、芳香族ビニルブロック及び共役ジエンブロックを有するブロック共重合体であって、該重合体中の芳香族ビニルブロックの割合が10〜30重量%の範囲にあるブロック共重合体である。
本発明において、芳香族ビニルブロックとは、芳香族ビニル化合物を重合して得られる部分であり、共役ジエンブロックとは、共役ジエン化合物を重合して得られる部分である。
【0026】
ここで用いられる共役ジエン化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレンなどが挙げられる。中でも、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエン、イソプレンがより好ましく、イソプレンが特に好ましい。
【0027】
また、ここで用いられる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。中でも、スチレン、α−メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0028】
芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)中の芳香族ビニルブロックの割合は、10〜30重量%の範囲であれば特に限定されないが、12〜28重量%の範囲であると好ましく、15〜25重量%の範囲であるとより好ましい。
芳香族ビニルブロックの割合は、赤外分析法により679cm−1のフェニル基に基づく吸収について検量線を作成し求めることが出来る。
【0029】
ブロック共重合体の態様としては、ジブロック、トリブロック、またはそれ以上のマルチブロックが挙げられ、特に制限はない。
【0030】
本発明に用いられる芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の共役ジエン化合物由来の単量体単位中の、1,2−及び3,4−付加重合由来の単量体単位の割合は、特に限定されないが、60重量%以上であると好ましく、65重量%以上であるとより好ましく、69重量%以上であると特に好ましい。
芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の共役ジエン化合物由来の単量体単位中の、1,2−及び3,4−付加重合由来の単量体単位の割合がこの範囲にあると、得られる熱収縮性フィルムの透明性が優れる。
【0031】
芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の共役ジエン化合物由来の単量体単位は、1,2−付加重合由来の単量体単位、3,4−付加重合由来の単量体単位、1,4−付加重合由来の単量体単位に分類することが出来る。
【0032】
本発明において、共役ジエン化合物由来の単量体単位中の1,2−付加重合由来の単量体単位とは、例えば、共役ジエン化合物として2−メチル−1,3−ペンタジエンを用いた場合に、1,2−付加重合して得られる式(2)で表される単量体単位である。
【化2】

本発明において、共役ジエン化合物由来の単量体単位中の3,4−付加重合由来の単量体単位とは、例えば、共役ジエン化合物として2−メチル−1,3−ペンタジエンを用いた場合に、3,4−付加重合して得られる式(3)で表される単量体単位である。
【化3】

本発明において、共役ジエン化合物由来の単量体単位中の1,4−付加重合由来の単量体単位とは、例えば、共役ジエン化合物として2−メチル−1,3−ペンタジエンを用いた場合に、1,4−付加重合して得られる式(4)又は式(5)で表される単量体単位である。
【化4】

【化5】

共役ジエン化合物由来の単量体単位中の、1,2−、3,4−および1,4−付加重合由来の単量体単位の割合は、赤外分析法を用い、モレロ法により算出することが出来る。
【0033】
共役ジエン化合物由来の単量体単位中の二重結合は、水素化されていないことが最も好ましいが、二重結合の水素化率は、通常10%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.1%以下である。
【0034】
芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)は、カップリング剤の使用により重合体分子鎖がカップリング剤残基を介して延長または分岐された重合体であってもよい。この際用いられるカップリング剤としては、アジピン酸ジエチル、ジビニルベンゼン、メチルジクロロシラン、四塩化ケイ素、ブチルトリクロロケイ素、テトラクロロ錫、ブチルトリクロロ錫、ジメチルクロロケイ素、テトラクロロゲルマニウム、1,2−ジブロモエタン、1,4−クロロメチルベンゼン、ビス(トリクロロシリル)エタン、エポキシ化アマニ油、トリレンジイソシアネート、1,2,4−ベンゼントリイソシアネートなどが挙げられる。
【0035】
本発明に用いられる芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)は、その製造方法によっては限定されないが、例えば、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物を有機溶媒中で有機アルカリ金属化合物を開始剤として用いリビングアニオン重合する方法が挙げられる。
【0036】
また、本発明に用いられる芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の共役ジエン化合物由来の単量体単位中の、1,2−及び3,4−付加重合由来の単量体単位の割合は、重合反応に、ルイス塩基を併用することにより調製することが出来る。
ルイス塩基としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル;テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、トリブチルアミンなどのアミン;などが挙げられる。
【0037】
芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の数平均分子量は特に限定されないが、50,000〜700,000の範囲であると好ましく、50,000〜600,000の範囲であるとより好ましく、50,000〜400,000の範囲であると特に好ましい。
数平均分子量がこの範囲にあると、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の成形加工性に優れ、また、該水素化物をペレット化した場合ブロッキングしずらく、脂環式構造含有重合体とブレンドした場合に、機械的強度、成形外観、及び得られる熱収縮性フィルムの成形加工性が優れる。
【0038】
芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)のメルトマスフローレイト(MFR)は特に限定されないが、好ましくは0.1〜20g/10分、より好ましくは0.5〜20g/10分、特に好ましくは0.5〜10g/10分、最も好ましくは1〜5g/10分である。
MFRがこの範囲にあると、得られる芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の押出性、製層性が優れる。
本発明において、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)のMFRは、ASTM D1238(190℃、荷重21.18N)に準拠して測定した値である。
【0039】
(樹脂組成物(C))
本発明に用いられる樹脂組成物(C)は、脂環式構造含有重合体(A)と、芳香族ビニルブロックの割合が10〜30重量%である芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)を含有し、(A)/(B)が重量比で85/15〜70/30の範囲にある。
中でも、(A)/(B)が重量比で84/16〜75/25の範囲にあると好ましく、83/17〜80/20の範囲にあるとより好ましい。
【0040】
本発明に用いられる樹脂組成物(C)は、前記脂環式構造含有重合体(A)及び前記芳香族ビニルブロックの割合が10〜30重量%である芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)に、必要に応じて、配合剤を発明の効果が損なわれない範囲で添加して得られる。
【0041】
(配合剤)
配合剤としては、酸化防止剤、滑剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、離型剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、熱安定剤、造核剤、分散剤、塩素捕捉剤、結晶化核剤、防曇剤、顔料、染料、有機物充填材、無機物充填材、中和剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止材、抗菌剤、及び他の種類の重合体(ゴムや樹脂)などが挙げられる。
【0042】
本発明においては、成形時の酸化、保存、長期使用している間の酸化劣化、老化劣化を防ぐことを目的として酸化防止剤を用いることが好ましい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤がより好ましい。
【0043】
フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタンなどが挙げられる。
【0044】
リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。
【0045】
イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリル 3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル 3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0046】
これら酸化防止剤はそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができるが、2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。組み合わせて使用する場合にはフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤との併用使用が、成形体の透明性に優れ好ましい。酸化防止剤の配合量は、適宜選択されるが、脂環式構造含有重合体100重量部に対して、通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。
【0047】
離型性などの成形性を改良することを目的として滑剤を用いることができる。滑剤としては、無機微粒子、天然油、合成油、ワックス、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの高級脂肪酸アミドなどが挙げられる。ここで、無機微粒子とは、長周期律表の1族、2族、4族、6族、7族、8〜10族、11族、12族、13族、又は14族元素の酸化物、水酸化物、硫化物、窒素化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、燐酸塩、亜燐酸塩、有機カルボン酸塩、珪酸塩、チタン酸塩、又は硼酸塩などの粒子状のもの;これらの化合物や塩の含水化合物の粒子状のもの;これらの塩中心とする複合化合物の粒子状の単量体またはこれらの塩を主成分とする天然鉱物の粒子;などを示す。
【0048】
これらの滑剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。滑剤の配合量は、適宜選択されるが、脂環式構造含有重合体100重量部に対して、通常0.001〜5重量部、好ましくは0.005〜3重量部の範囲である。配合量がこの範囲であると、熱収縮性フィルムの透明性とその成形時の成形性が高度にバランスされる。
【0049】
難燃剤としては、リン酸系難燃剤、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、マグネシウムの炭酸塩、赤リン等が挙げられる。中でも、分散性の観点からリン酸系難燃剤が好ましい。
【0050】
ブロッキング防止剤としては、シリカ、シリカアルミナ、天然ゼオライト、合成ゼオライト、カオリン、タルク、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、溶融シリカ、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ハイドロタルサイト系等の微粒子が挙げられる。
【0051】
離型剤としては、多価アルコールのエーテル化物、又は多価アルコールのエステル化物などが挙げられる。
【0052】
多価アルコールのエーテル化物としては、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノベヘネート、ジグリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンジラウレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノラウレート、ペンタエリスリトールモノベヘレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールジラウレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ジペンタエリスリトールジステアレートなどが挙げられる。
【0053】
多価アルコールのエステル化物としては、3−(オクチルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(デシルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(ラウリルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(4−ノニイルフェニルオキシ)−1,2−プロパンジオール、1,6−ジヒドロキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−7−(4−ノニルフェニルオキシ)−4−オキソヘプタン、p−ノニルフェノールとホルムアルデヒドの縮合体とグリシドールの反応により得られるエーテル化合物、p−オクチルフェノールとホルムアルデヒドの縮合体とグリシドールの反応により得られるエーテル化合物、p−オクチルフェノールとジシクロペンタジエンの縮合体とグリシドールの反応により得られるエーテル化合物などが挙げられる。
【0054】
これらの多価アルコールのエーテル化物及びエステル化物の分子量は、特に限定されないが、500〜2,000の範囲であると好ましく、800〜1,500の範囲であるとより好ましい。分子量がこの範囲にあると、多価アルコールのエーテル化物及びエステル化物が溶出しにくく、かつ透明性の低下も少ないので好ましい。
これらの多価アルコールのエーテル化物及びエステル化物はそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。多価アルコールのエーテル化物及びエステル化物の配合量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、脂環式構造含有重合体100重量部に対して、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜2重量部、特に好ましく0.1〜1.0重量部である。添加量がこの範囲にあると、得られる樹脂組成物の成形性と得られる熱収縮性フィルムの低溶出性が高度にバランスされるので好ましい。
【0055】
光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系安定剤が挙げられる。
紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられる。
帯電防止剤としては、ノニオン系帯電防止剤、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、両性イオン系帯電防止剤、無機フィラー、カーボンナノチューブ等があげられる。中でも、透明性及び分散性の観点から、ノニオン系帯電防止剤、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、カーボンナノチューブが好ましい。
分散剤としてはビスアミド系分散剤、ワックス系分散剤、有機金属塩系分散剤が挙げられる。
【0056】
他の種類の重合体(ゴムや樹脂)としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴムなどのイソブチレン系重合体;ポリブチルアクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレートなどのアクリル系重合体;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などのビニル化合物の重合体;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴムなどのエポキシ系重合体;フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴムなどのフッ素系重合体;などが挙げられる。これらの重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、また、変性反応により官能基を導入したものでもよい。
【0057】
これらの他の種類の重合体(ゴムや樹脂)は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。他の種類の重合体(ゴムや樹脂)の配合量は、適宜選択されるが、脂環式構造含有重合体100重量部に対して、通常5重量部未満、好ましくは2重量部未満、より好ましくは1重量部未満、特に好ましくは0.3重量部未満の範囲である。他の種類の重合体(ゴムや樹脂)の配合量がこの範囲であると、熱収縮性フィルムの透明性とその成形時の成形性が高度にバランスされる。
【0058】
本発明に用いられる樹脂組成物(C)の調製法は特に限定されない。
例えば、前記前記脂環式構造含有重合体(A)及び前記芳香族ビニルブロックの割合が10〜30重量%である芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)と、必要に応じて用いる配合剤とをヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー、コニカルブレンダーなどの混合器を用いて混合する方法;または更にこの混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダーなどにより溶融混練する方法;前記脂環式構造含有重合体(A)の溶液に、必要に応じて用いる配合剤を溶解した溶液を添加して分散させた後、凝固法、キャスト法、又は直接乾燥法により溶剤を除去したのち、前記芳香族ビニルブロックの割合が10〜30重量%である芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)を混合する方法;重合反応又は水素添加反応の段階に必要に応じて用いる配合剤を混合したのち、前記芳香族ビニルブロックの割合が10〜30重量%である芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)を混合する方法;などが挙げられる。
【0059】
(熱収縮性フィルム)
本発明の熱収縮性フィルムは、前記樹脂組成物(C)からなるフィルムを延伸してなる層を少なくとも1層有してなる。
【0060】
本発明の熱収縮性フィルムの成形方法は特に限定されないが、例えばTダイ法、インフレーション法、プレス成形法など公知の方法によって前記樹脂組成物(C)からなる(未延伸の)フィルムを得た後、この(未延伸)フィルムを延伸することにより得ることができる。
【0061】
未延伸フィルムの厚さは、通常50〜500μmの範囲であり、50〜300μmの範囲であると好ましい。
【0062】
未延伸フィルムを延伸する方法は、特に限定されず、例えばロール方式、テンター方式、及びチューブ方式のいずれの方式で行うこともできる。延伸温度は、未延伸フィルムを構成している脂環式構造含有重合体のガラス転移温度(Tg)よりも0〜60℃、好ましくは10〜40℃高い温度であることが好ましい。本発明においては、一軸又は二軸延伸のどちらでも良いが、一軸延伸(横方向;TD方向)に延伸するのが好ましい。延伸倍率は特に限定されないが、TD方向に1.2〜10.0倍の範囲であると好ましく、2.0〜6.0倍の範囲であると特に好ましい。一軸延伸においても必要に応じて、例えば長さ方向(縦方向;MD方向)にも、低い延伸倍率(例えば1.5倍以下)で延伸処理を施すことができる。本発明においては、このように、一方向のみ延伸された一軸延伸フィルム、及び主に一方向に延伸され、且つ該方向と直交する方向に若干延伸された二軸延伸フィルムが含まれる。
【0063】
本発明の熱収縮性フィルムは、前記樹脂組成物(C)の延伸層(I)だけからなる単層フィルムであることが好ましいが、必要に応じて他の樹脂からなる層(II)を積層した積層フィルムでもよい。積層フィルムの積層態様は特に限定されないが、例えば層(I)/層(II)、層(I)/層(II)/層(I)、層(II)/層(I)/層(II)のように積層することもできる。中でも、皮脂と接触するフィルム表面に層(I)を積層することが好ましい。更に、前記積層フィルムは層(I)と層(II)の間に接着層を含んでも良い。
【0064】
ここで用いる他の樹脂としては、低密度又は高密度ポリエチレン系結晶性樹脂、ポリプロピレン系結晶性樹脂、ポリエステル系結晶性樹脂、ポリアミド系結晶性樹脂、フッ素系結晶性樹脂及び、その他の結晶性樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン系結晶性樹脂およびポリプロピレン系結晶性樹脂が、熱収縮性フィルムの防湿性、機械強度等のバランスの点で良好である。
接着層を構成する接着剤としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂接着剤、ポリビニルエーテル、アクリル樹脂、酢酸ビニルーエチレン共重合体などの熱可塑性樹脂接着剤、ポリアミド樹脂系ホットメルト接着剤、ニトリルゴムなどのゴム系接着剤などが挙げられる。
【0065】
本発明の熱収縮性フィルムが積層フィルムである場合、製法は特に限定されないが、例えば、
(I)樹脂組成物(C)の単層未延伸フィルムに、他の樹脂からなるフィルムを貼合した後延伸することによって、
(II)樹脂組成物(C)の単層フィルムを延伸し、それに他の樹脂からなる延伸又は未延伸のフィルムを貼合することによって、
(III)樹脂組成物(C)の単層未延伸フィルムに他の樹脂の溶液を塗布して、乾燥し、延伸することによって、
(IV)樹脂組成物(C)の延伸フィルムにコーティングすることによって、又は、
(V)樹脂組成物(C)と他の樹脂とを共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出することによって得ることができる。
【0066】
樹脂組成物(C)の延伸層(I)と他の樹脂からなる層(II)の厚さの比は特に限定されないが、例えば、層(I)/層(II)で、1/8〜8/1であることが好ましい。
【0067】
本発明の熱収縮性フィルムの厚さは、特に限定されないが、5〜400μmの範囲であると好ましく、25〜250μmであるとより好ましく、8〜150μmの範囲であると特に好ましい。厚さがこの範囲にあると、熱収縮性フィルムの耐裂性、透明性が優れる。
【0068】
本発明の熱収縮性フィルムは、脂環式構造重合体(A)のガラス転移温度(Tg)よりも20℃低い温度から80℃高い温度の範囲内、例えば60〜120℃の範囲の温度雰囲気下に保持した場合に熱収縮が起こり、その際の延伸方向の熱収縮率は通常30〜90%の範囲にあり、50〜80%の範囲であると好ましい。熱収縮率がこの範囲にあると、該熱収縮性フィルムの被包装体への密着性および熱収縮後のフィルムの諸物性が高度にバランスされる。
【0069】
本発明の熱収縮性フィルムは、耐指脂白化性及び表面光沢性に優れている。
本発明の熱収縮性フィルムの表面光沢度が特に限定されないが、表面光沢度が120〜150%であると好ましく、130〜150%であるとより好ましく、140〜150%であると特に好ましい。
表面光沢度がこの範囲にあると、意匠の観点で優れる。
本発明において、表面光沢度は、JIS K 7105に基づいて60度鏡面光沢度を測定した値である。
【0070】
本発明の熱収縮性フィルムの、塗布・収縮後のヘーズ値から塗布前のヘーズを引いた値(d(ヘーズ)(%))は特に限定されないが、1%以下であると好ましく、0.6%以下であるとより好ましく、0.5%以下であると特に好ましい。d(ヘーズ)(%)がこの範囲にあると、熱収縮性フィルムの取り扱いやすさ、熱収縮性フィルムを熱収縮した後のフィルムの意匠の観点で優れる。
本発明において、塗布・収縮後のヘーズ値から塗布前のヘーズを引いた値(d(ヘーズ)(%))は、以下の方法により求めた値である。
(方法)熱収縮性フィルムを、縦100mm×横100mmの大きさに切り取りJIS K 7105に準じヘーズメーターでヘーズを測定する。次いで指脂相当物(オレイン酸50%、パルチミン酸ステアリル40%、スクアレン10%からなる混合試薬)を前記熱収縮性フィルム上に塗布する。次いで、90℃の湯浴に熱収縮性フィルムを10秒間浸漬し、熱収縮させる。次いで、該フィルムを取り出してJIS K 7105に準じヘーズメーターでヘーズを測定する。塗布・収縮後のヘーズ値から塗布前のヘーズを引いたものを、d(ヘーズ)(%)とした。d(ヘーズ)(%)が小さいほど耐指脂白化性に優れる。
【0071】
本発明の熱収縮性フィルムは、耐指脂白化性及び表面光沢性に優れており、防湿性、機械強度、透明性、及び熱収縮特性にも優れている。このような特性から本発明の熱収縮性フィルムは、食品、薬品、及び器具、文具、ノートなど雑貨類の保存・運搬用の熱収縮性包装材料;キャップ、栓等の開封防止用シール包装材料;ボトル、容器等の熱収縮性ラベル材料に適している。
また、本発明の熱収縮性フィルムは、耐指脂白化性及び表面光沢性に優れ、耐熱温度が高く、透明性且つ収縮性も良好なため耐熱のポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルなどのラベルにも好適である。
【0072】
本発明の熱収縮性フィルムによって、被包装体を収縮包装する方法は特に限定はない。一般的な方法としては、当該フィルムによって被包装体を大まかに包み、次に熱風トンネル(以下、シュリンクトンネルという)を通して加熱するとフィルム自体に収縮力があらわれて収縮し、シートやフィルムが被包装体に密着して包装されるような方法が用いられる。
【0073】
本発明の熱収縮性フィルムには、印刷加工を施してもよい。印刷加工の方法は特に限定されず公知の方法を使用すればよく、例えば、凸版印刷、凹版印刷、平板印刷が挙げられる。印刷に適用される印刷インキの種類は、前記印刷の方法により適宜最適なものを選択して使用すればよいが、例えば、凸版インキ、フレキソインキ、ドライオフセットインキ、グラビアインキ、グラビアオフセットインキ、オフセットインキ、スクリーンインキ等が挙げられる。
【0074】
印刷インキは少なくとも、色料(顔料、染料等が挙げられる)、ビヒクル(油脂、樹脂、及び溶剤との混合物で、油脂としては乾性油、半乾性油、不乾性油、加工油等;樹脂としては一般的な天然樹脂、合成樹脂;溶剤としては炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、水系溶剤が挙げられる)及び補助剤(コンパウンド類、ドライヤー類、その他分散剤、反応剤、消泡剤等の添加剤)から構成され、印刷される本発明の熱収縮性フィルム中の脂環式構造含有重合体樹脂の種類、使用目的に応じて、印刷インキの種類及び組成は適宜選択される。また、印刷インキを使用する前に本発明の熱収縮性フィルムに対しインクの密着性を高める目的で表面処理を施しておいてもよく、表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、火炎処理、エンボス加工処理、サンドマット加工処理、梨地加工処理等が挙げられる。
【実施例】
【0075】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、部及び%は重量基準、圧力はゲージ圧である。実施例及び比較例における物性の測定方法は、以下のとおりである。
(1)重量平均分子量(Mw)
テトラヒドロフラン(THF)を溶剤として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレン換算にて求める。
(2)ガラス転移温度(Tg)
JIS K 7121に基づき、示差走査熱量分析法(DSC法)により測定する。
(3)脂環式構造含有重合体の水素化率
重合体の主鎖及び芳香環の水素化率は、H−NMRを測定し算出する。
(4)フィルムの厚み
マイクロゲージを用いて測定する。
(5)透明性(ヘーズ(%))
熱収縮性フィルム又は未延伸フィルムをJIS K 7105に準じヘーズメーターで測定する。ヘーズ値が小さい方が透明性良好であることを示す。
(6)表面光沢度(%)
熱収縮性フィルム又は未延伸フィルムをJIS K 7105に基づいて、60度鏡面光沢度を測定する。光沢度が高い方が良好であることを示す。
(7)耐指脂白化性(d(ヘーズ)(%))
熱収縮性フィルムを、縦100mm×横100mmの大きさに切り取りJIS K 7105に準じヘーズメーターでヘーズを測定する。次いで指脂相当物(オレイン酸50%、パルチミン酸ステアリル40%、スクアレン10%からなる混合試薬)を前記熱収縮性フィルム上に塗布する。次いで、90℃の湯浴に熱収縮性フィルムを10秒間浸漬し、熱収縮させる。次いで、該フィルムを取り出してJIS K 7105に準じヘーズメーターでヘーズを測定する。塗布・収縮後のヘーズ値から塗布前のヘーズを引いたものを、d(ヘーズ)(%)とした。d(ヘーズ)(%)が小さいほど耐指脂白化性に優れる。
(8)収縮率(%)
熱収縮性フィルムを、縦100mm×横100mmの大きさに切り取り、90℃の湯浴に10秒間浸漬する。収縮率は、TD方向について、浸漬前後の長さの変化割合(%)(=(浸漬前のTD方向のフィルム長さ−浸漬後のTD方向のフィルム長さ)/(浸漬前のTD方向のフィルム長さ)×100)を算出する。収縮率が50%〜80%の範囲であると良好である。
(9)芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)中の芳香族ビニルブロックの割合
赤外分析法により679cm−1のフェニル基に基づく吸収について検量線を作成し求める。
(10)共役ジエン化合物由来の単量体単位中の、1,2−及び3,4−付加重合由来の単量体単位の割合
赤外分析法を用い、モレロ法により算出する。
【0076】
(参考例1)
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1−ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部、及びトリイソブチルアルミニウム0.30部を室温で反応器に入れ混合した後、45℃に保ちながら、トリシクロ〔4.3.01,6.12,5〕デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン、以下、「DCP」と略記する。)160部と、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン(ノルボルネン、以下、「NB」と略す。)40部と、六塩化タングステン(0.7%トルエン溶液)80部とを、2時間かけて連続的に添加し重合した。重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部とイソプロピルアルコール0.52部を加えて重合触媒を不活性化し重合反応を停止させた。
【0077】
次いで、得られた開環重合体を含有する反応溶液100部に対して、シクロヘキサン270部を加え、さらに水素添加触媒としてニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5部を加え、水素により5MPaに加圧して撹拌しながら温度200℃まで加温した後、4時間反応させ、DCP/NB開環共重合体水素添加物を20%含有する反応溶液を得た。濾過により水素化触媒を除去し、次いで前記水素添加物100部あたり0.1部のヒンダードフェノール系酸化防止剤(吉富製薬社製;トミノックスTT)を、得られた溶液に添加して溶解させた。次いで、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、次いで水素化物を溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後ペレット化してペレットを得た。このペレット化された開環共重合体水素添加物の、重量平均分子量(Mw)は35,000、水素添加率は99.8%、Tgは70℃、比重は1.01であった。
【0078】
(実施例1)
参考例1で得られた脂環式構造含有重合体82.5部と芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体B1(クラレ社製、ハイブラー5125:スチレン・イソプレンブロック共重合体、芳香族ビニルブロックの割合20重量%、1,2−及び3,4−付加重合由来の単量体単位の割合70重量%)17.5部とを、ブレンダーで混合し、次いで55℃で4時間乾燥した。次いで、スクリュー径50mmφ、圧縮比2.5、L/D=30のスクリューを備え、Tダイの手前にそれぞれ40、80、120メッシュのフィルター3枚を設け、溶融樹脂を通すようにした樹脂溶融混練機を有するハンガーマニホールドタイプのTダイ式フィルム溶融押出し成形機を使用し、ダイリップを0.5mm、溶融樹脂温度を200℃、Tダイの温度220℃、Tダイの幅300mm、キャストロール温度60℃、冷却ロール温度50℃の条件で、厚さ100μmの未延伸フィルム(C1)を得た。得られた未延伸フィルム(C1)の測定結果及び評価結果を表1に示す。
なお、成形時には窒素をホッパー下部よりホッパー内部へ導入した。未延伸フィルム(C1)をキャストロールに密着させる際には、エアーナイフを用いた。
得られた未延伸フィルム(C1)を雰囲気温度Tg+20℃(90℃)の条件で、テンダー延伸機を用いて、TD方向に5倍延伸して厚さ20μmの熱収縮性フィルム(D1)を得た。得られた熱収縮性フィルム(D1)の測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0079】
(実施例2)
脂環式構造含有重合体の量を80部に、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体B1に代えて、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体B2(スチレン・イソプレンブロック共重合体、芳香族ビニルブロックの割合13重量%、1,2−及び3,4−付加重合由来の単量体単位の割合70重量%)20部を用いる他は、実施例1と同様にして未延伸フィルム(C2)を得、これを延伸して熱収縮性フィルム(D2)を得た。得られた未延伸フィルム(C2)及び熱収縮性フィルム(D2)の測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0080】
(実施例3)
脂環式構造含有重合体の量を80部に、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体B1に代えて、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体B3(スチレン・イソプレンブロック共重合体、芳香族ビニルブロックの割合26重量%、1,2−及び3,4−付加重合由来の単量体単位の割合70重量%)20部を用いる他は、実施例1と同様にして未延伸フィルム(C3)を得、これを延伸して熱収縮性フィルム(D3)を得た。得られた未延伸フィルム(C3)及び熱収縮性フィルム(D3)の測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0081】
(実施例4)
脂環式構造含有重合体の量を80部に、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体B1に代えて、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体B4(日本ゼオン社製、クインタック3450:スチレン・イソプレンブロック共重合体、芳香族ビニルブロックの割合19重量%、1,2−及び3,4−付加重合由来の単量体単位の割合8重量%)20部を用いる他は、実施例1と同様にして未延伸フィルム(C4)を得、これを延伸して熱収縮性フィルム(D4)を得た。得られた未延伸フィルム(C4)及び熱収縮性フィルム(D4)の測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0082】
(実施例5)
脂環式構造含有重合体の量を80部に、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体B1に代えて、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体B5(スチレン・イソプレンブロック共重合体、芳香族ビニルブロックの割合19重量%、1,2−及び3,4−付加重合由来の単量体単位の割合50重量%)20部を用いる他は、実施例1と同様にして未延伸フィルム(C5)を得、これを延伸して熱収縮性フィルム(D5)を得た。得られた未延伸フィルム(C5)及び熱収縮性フィルム(D5)の測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0083】
(比較例1)
脂環式構造含有重合体の量を80部に、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体B1に代えて、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体B6(スチレン・イソプレンブロック共重合体、芳香族ビニルブロックの割合7重量%、1,2−及び3,4−付加重合由来の単量体単位の割合70重量%)20部を用いる他は、実施例1と同様にして未延伸フィルム(C6)を得、これを延伸して熱収縮性フィルム(D6)を得た。得られた未延伸フィルム(C5)及び熱収縮性フィルム(D6)の測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0084】
(比較例2)
脂環式構造含有重合体の量を80部に、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体B1に代えて、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体B7(スチレン・イソプレンブロック共重合体、芳香族ビニルブロックの割合33重量%、1,2−及び3,4−付加重合由来の単量体単位の割合70重量%)20部を用いる他は、実施例1と同様にして未延伸フィルム(C7)を得、これを延伸して熱収縮性フィルム(D7)を得た。得られた未延伸フィルム(C7)及び熱収縮性フィルム(D7)の測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0085】
(比較例3)
脂環式構造含有重合体の量を90部に、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体B1の配合量を10部に代えた他は、実施例1と同様にして未延伸フィルム(C8)を得、これを延伸して熱収縮性フィルム(D8)を得た。得られた未延伸フィルム(C8)及び熱収縮性フィルム(D8)の測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0086】
(比較例4)
脂環式構造含有重合体の量を80部に、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体B1の配合量を35部に代えた他は、実施例1と同様にして未延伸フィルム(C9)を得、これを延伸して熱収縮性フィルム(D9)を得た。得られた未延伸フィルム(C9)及び熱収縮性フィルム(D9)の測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0087】
(比較例5)
脂環式構造含有重合体の量を80部に、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体B1に代えて、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体の水素化物(クラレ社製、ハイブラー7125:スチレン・イソプレンブロック共重合体の水素化物、イソプレン由来の単量体単位中の二重結合の水素化率63%)20部を用いる他は、実施例1と同様にして未延伸フィルム(C10)を得、これを延伸して熱収縮性フィルム(D10)を得た。得られた未延伸フィルム(C10)及び熱収縮性フィルム(D10)の測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0088】
(比較例6)
脂環式構造含有重合体の量を80部に、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体B1に代えて、特開2000−143829号公報の実施例2に用いられている芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体の水素化物(旭化成社製、タフテックH1051G:スチレン・エチレン・ブチレン・ブロック共重合体)20部を用いる他は、実施例1と同様にして未延伸フィルム(C11)を得、これを延伸して熱収縮性フィルム(D11)を得た。得られた未延伸フィルム(C11)及び熱収縮性フィルム(D11)の測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0089】
(比較例7)
脂環式構造含有重合体の量を80部に、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体B1に代えて、芳香族ビニル・共役ジエンランダム共重合体の水素化物(スチレン・ブタジエン・ランダム共重合体の水素化物)20部を用いる他は、実施例1と同様にして未延伸フィルム(C12)を得、これを延伸して熱収縮性フィルム(D12)を得た。得られた未延伸フィルム(C12)及び熱収縮性フィルム(D12)の測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0090】
(比較例8)
脂環式構造含有重合体の量を82部に、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体B1に代えて、特開平8−165357号公報の実施例2に用いられているエチレン・プロピレンランダム共重合体(エチレン含有量80モル%、ガラス転移温度−45℃、極限粘度2.2dl/g)20部を用いる他は、実施例1と同様にして未延伸フィルム(C13)を得、これを延伸して熱収縮性フィルム(D13)を得た。得られた未延伸フィルム(C13)及び熱収縮性フィルム(D13)の測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
表1の結果から以下のことがわかる。本発明の、脂環式構造含有重合体(A)と、芳香族ビニルブロックの割合が10〜30重量%である芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)を含有し、(A)/(B)が重量比で85/15〜70/30の範囲にある樹脂組成物(C)からなるフィルムを延伸してなる層を少なくとも1層有する熱収縮性フィルムは、耐指脂白化性及び表面光沢性に優れている(実施例1〜5)。それに対して、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の芳香族ビニルブロックの割合が10〜30重量%の範囲にない芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体を用いた場合には、表面光沢性が劣る(比較例1及び2)。また、(A)/(B)が重量比で85/15より大きい熱収縮性フィルムは耐指脂白化性が劣り(比較例3)、70/30より小さい熱収縮性フィルムは表面光沢性が劣る(比較例4)。芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の代わりにスチレン・イソプレンブロック共重合体の水素化物を用いた熱収縮性フィルムは表面光沢性が劣る(比較例5)。芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の代わりにスチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素化物を用いた熱収縮性フィルムは耐指脂白化性及び表面光沢性が劣る(比較例6)。芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の代わりにスチレン・ブタジエンランダム共重合体の水素化物を用いた熱収縮性フィルムは表面光沢性が劣る(比較例7)。芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の代わりにエチレン・プロピレンランダム共重合体を用いた熱収縮性フィルムは耐指脂白化性及び表面光沢性が劣る(比較例8)。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の熱収縮性フィルムは、耐指脂白化性及び表面光沢性に優れているので、各種の包装体または包装体の材料として用いることが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式構造含有重合体(A)と、芳香族ビニルブロックの割合が10〜30重量%である芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)を含有し、(A)/(B)が重量比で85/15〜70/30の範囲にある樹脂組成物(C)からなるフィルムを延伸してなる層を少なくとも1層有する熱収縮性フィルム。
【請求項2】
芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)が、スチレンとイソプレンのブロック共重合体である請求項1記載の熱収縮性フィルム。
【請求項3】
芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の共役ジエン化合物由来の単量体単位中の、1,2−及び3,4−付加重合由来の単量体単位の割合が60重量%以上である請求項1又は2記載の熱収縮性フィルム。
【請求項4】
表面光沢度が120〜150%である請求項1、2、3、又は4記載の熱収縮性フィルム。

【公開番号】特開2006−104237(P2006−104237A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289444(P2004−289444)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】