説明

脂環式構造要素を含有するポリイソシアネート混合物

本発明は、脂環式構造要素を含有し、直鎖脂肪族的結合遊離イソシアネート基をもっぱら含有する、新規なポリイソシアネート混合物、その製造方法、並びにポリウレタンプラスチックを製造するための出発成分として、特にポリウレタンラッカーおよびポリウレタン塗膜における架橋成分としてのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂環式構造要素を含有し、もっぱら直鎖脂肪族的に結合している遊離イソシアネート基を含有する、新規なポリイソシアネート混合物、その製造方法、並びにポリウレタンプラスチックの製造における出発成分として、特にポリウレタン塗料およびポリウレタン塗膜における架橋剤成分としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2成分ポリウレタン塗料(2K−PUR)の傑出した技術的性質は、多数の極めて様々な応用分野にとっての重要性を該塗料に与えてきた。光安定性の黄変しない2K−PURの塗料および塗膜のための架橋剤成分として、通常、直鎖脂肪族および/または脂環式ジイソシアネートに基づくポリイソシアネートを使用する。
【0003】
2K−PUR塗料の応用分野のほとんどにおいて、現在、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)に基づくポリイソシアネートが使用されている。該ポリイソシアネートは、低温でさえ、化学的暴露および機械的暴露に対する良好な耐性を有する塗膜をもたらすが、該塗膜は、多くの場合、不十分な乾燥速度および比較的低い最終硬度を示す。
【0004】
同じことが、特定の高官能性HDIポリイソシアネートを用いた場合にも言える。その例は、速乾性2K−PUR塗料の配合のための架橋剤成分としてしばしば推奨される、高官能性HDI三量体である(例えば、Rhodia PCS社製Tolonate(登録商標)XFD 90 Bについての製品情報を参照)。標準的架橋剤に対して乾燥速度を高めるためにそのような架橋剤を使用することは確かに可能であるが、塗膜の一部について、より高い最終硬度が得られない。
【0005】
達成できる塗膜硬度については、例えばイソホロンジイソシアネート(IPDI)のような脂環式ジイソシアネートに基づくポリイソシアネート架橋剤が、明らかな利点を有する。直鎖脂肪族ジイソシアネートに基づくポリイソシアネートが、特に低粘度を特徴とし、高弾性の塗膜をもたらす一方で、無溶媒状態の脂環式ポリイソシアネートは、高粘性または固体状の生成物であり、塗料調製物の迅速な物理的乾燥と、硬度の極めて高い塗膜をもたらす。
【0006】
従って、HDIポリイソシアネートが、対応する脂環式ポリイソシアネート、例えばIPDIに基づくものと組み合わせてしばしば使用される(例えば、U. Meier-Westhues, Polyurethane - Lacke, Kleb- und Dichtstoffe, Vincentz Network 2007, 第166頁参照)。このように、塗膜の乾燥および特に硬度の発展は、かなり促進させることができる。しかしながら完全な化学的架橋のためには、脂環式ポリイソシアネートは、そのイソシアネート基のより低い反応性の故に100℃以上の温度を必要とする。室温乾燥またはやや強制的な乾燥(約60℃)の場合、得られた塗膜は確かに迅速に指触乾燥され、硬くなるが、もっぱらHDIポリイソシアネートを用いて架橋された塗膜より低い耐溶剤性および耐薬品性を示す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】U. Meier-Westhues, Polyurethane - Lacke, Kleb- und Dichtstoffe, Vincentz Network 2007, 第166頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、脂肪族ポリイソシアネートの応用分野の全てに適している、特に2Kポリウレタン塗料用架橋剤成分としての、従来技術の欠点によって阻害されない、新規なポリイソシアネートを提供することである。この新規なポリイソシアネート架橋剤は、低温でさえ一度に硬化して耐溶剤性および耐薬品性の硬い塗膜をもたらす、速乾性塗料系の調製を可能にすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、以下に記載の本発明によって達成された。
本発明は、脂環式構造要素と直鎖脂肪族的結合遊離イソシアネート基とを含有するポリイソシアネート混合物の製造方法であって、
A)2.0〜5.0の平均官能価および8.0〜27.0重量%の(NCO分子量=42で計算された)直鎖脂肪族的結合イソシアネート基含量を有するポリイソシアネート成分を、
B)使用する成分A)およびB)の総量に基づいて2〜80重量%の、脂環式ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートに基づき、イソシアネート基を含有せず、場合によりウレア基を含有してよく、260〜8000g/molの数平均分子量および1.0〜6.0の平均OH官能価を有する、少なくとも1種のヒドロキシウレタン
と反応させる方法を提供する。
【0010】
本発明は更に、本発明の方法により得られるポリイソシアネート混合物、および本発明の方法により得られる該生成物の、ポリウレタンプラスチックの製造における出発成分としての、特にポリウレタン塗料およびポリウレタン塗膜における架橋剤成分としての使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明では、「直鎖脂肪族的」結合イソシアネート基と「脂環式的」結合イソシアネート基とを区別する。これらの用語は、本発明に従って使用されるジイソシアネートおよび該ジイソシアネートから調製されたポリイソシアネートの化学構造に関する。「直鎖脂肪族」ジイソシアネートとは、環式構造要素を全く含まないジイソシアネート化合物を意味する。一方、「脂環式」ジイソシアネートには、脂環式環に結合するイソシアネート基が少なくとも1個存在しなければならない。
【0012】
本発明の方法で使用するためのポリイソシアネート成分A)は、一般に、2.0〜5.0、好ましくは2.3〜4.5の(平均)NCO官能価、8.0〜27.0重量%、好ましくは14.0〜24.0重量%のイソシアネート基含量、および1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満の単量体ジイソシアネート含量を有する。該ポリイソシアネート成分A)は、もっぱら直鎖脂肪族的に結合しているイソシアネート基を含有する、少なくとも1種の有機ポリイソシアネートを含む。
【0013】
成分A)のポリイソシアネートは、単純直鎖脂肪族ジイソシアネートの変性によって調製され、少なくとも2種のジイソシアネートからなる、ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造を有する所望のポリイソシアネートである。この種のポリイソシアネートは、例えば、J. Prakt. Chem. 336 (1994) 185-200、DE−A 1 670 666およびEP−A 0 798 299に例として記載されている。
【0014】
そのようなポリイソシアネートの調製に適したジイソシアネートは、ホスゲン化またはホスゲンフリー法(例えば熱的ウレタン分解)によって得られる所望の直鎖脂肪族ジイソシアネート、即ち、脂環式構造を含まないジイソシアネートである。好ましい直鎖脂肪族ジイソシアネートは、140〜336g/molの分子量範囲を有するもの、例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2−メチル−1,5−ジイソシアナトペンタン、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサンおよび2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−ジイソシアナトデカン、またはそのようなジイソシアネートの所望の混合物である。
【0015】
成分A)に、直鎖脂肪族的結合イソシアネート基含有ポリイソシアネートをもっぱら使用することが好ましい。従って、本発明の方法により得られるポリイソシアネート混合物は、もっぱら直鎖脂肪族的に結合しているイソシアネート基を含有する。
【0016】
成分A)に使用するポリイソシアネートは、好ましくは、HDIに基づく、ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレットおよび/またはイミノオキサジアジンジオン構造を有する上記した種のポリイソシアネートである。
【0017】
成分A)という出発成分として、イソシアヌレート構造および/またはイミノオキサジアジンジオン構造を有するHDIポリイソシアネートを使用することが特に好ましい。
【0018】
本発明の方法において使用する成分B)は、脂環式ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートに基づき、イソシアネート基を含有せず、場合によりウレア基を含有してよく、260〜8000g/mol、好ましくは275〜6000g/mol、より好ましくは290〜5000g/molの数平均分子量を有し、および1.0〜6.0、好ましくは1.5〜4.0、より好ましくは2.0〜3.2の平均OH官能価を有する、少なくとも1種のヒドロキシウレタンを含む。
【0019】
ヒドロキシウレタンB)の調製に適した脂環式ジイソシアネートは、166〜318g/molの分子量範囲を有するもの、例えば、1,3−ジイソシアナトシクロヘキサンおよび/または1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナト−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナト−2(4)−メチルシクロヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1−イソシアナト−1−メチル−4(3)イソシアナトメチルシクロヘキサン、1,8−ジイソシアナト−p−メンタン、4,4’−ジイソシアナト−1,1’−ビ(シクロヘキシル)、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチル−1,1’−ビ(シクロヘキシル)、4,4’−ジイソシアナト−2,2’,5,5’−テトラメチル−1,1’−ビ(シクロヘキシル)、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンおよび/または2,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’,5,5’−テトラメチルジシクロヘキシルメタン、1,3−ジイソシアナトアダマンタン、および1,3−ジメチル−5,7−ジイソシアナトアダマンタン、並びにそのようなジイソシアネートの所望の混合物である。
【0020】
これら脂環式ジイソシアネートから得られるポリイソシアネート、特に、例えばJ. Prakt. Chem. 336 (1994) 185-200およびEP−A 0 649 866に例として記載されている種の、イソシアヌレート、ビウレット、ウレトジオンおよび/またはアロファネート構造を有するポリイソシアネートも同様に適当である。
【0021】
ヒドロキシウレタンB)の調製に好ましい脂環式イソシアネート成分は、IPDI、1,3−ジイソシアナト−2(4)−メチルシクロヘキサン、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンおよび/または2,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、並びにこれらジイソシアネートに基づくポリイソシアネートである。
【0022】
IPDI、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンおよび/または4,2’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、これらジイソシアネートに基づくポリイソシアヌレートポリイソシアネート、またはそのようなジイソシアネートおよびポリイソシアネートの所望の混合物を用いることが特に好ましい。
【0023】
ヒドロキシウレタンB)の調製には、記載した脂環式ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートを、モル過剰の適当なヒドロキシ官能性化合物、好ましくは32〜300g/molの分子量範囲を有するヒドロキシ官能性化合物と反応させる。
【0024】
適当なヒドロキシ官能性化合物の例は、低分子量の脂肪族および脂環式の多価アルコール、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオール、ブタンジオール(各種異性体)、ペンタンジオール(各種異性体)、ヘキサンジオール(各種異性体)、ヘプタンジオール(各種異性体)およびオクタンジオール(各種異性体)、1,2−シクロヘキサンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビスシクロヘキサノール、1,2,3−プロパントリオール、1,1,1−トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,1,1−トリメチロールプロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオールおよび1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、エーテルアルコール、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびジプロピレングリコール(各種異性体)、またはエステルアルコール、例えばネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートである。
【0025】
しかしながら、適当なヒドロキシ官能性化合物はまた、単純アミノアルコール、例えば、2−アミノエタノール、2−(メチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ビス(2−ヒドロキシプロピル)メチルアミン、2−(ヒドロキシエチル)ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミン、トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン、4−アミノ−2−ブタノール、2−アミノ−2−メチルプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールおよび2−アミノ−2−ヒドロキシプロピル−1,3−プロパンジオールである。
【0026】
しかしながら、適切な場合には、ヒドロキシウレタンB)の調製時、例えば所定のOH官能価を設定するためまたは特定の性質を達成するために、単官能性合成成分を使用することもでき、その例は、以下である:単純アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、ペンタノール(各種異性体)、ヘキサノール(各種異性体)、オクタノール(各種異性体)およびノナノール(各種異性体)、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール(各種異性体)、ヒドロキシメチルシクロヘキサン、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、n−ヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノールまたは1−メトキシ−2−プロパノールおよびテトラヒドロフルフリルアルコール、単官能性エーテルアルコール、例えば、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノールおよびグリセロール−1,3−ジエチルエーテル、単官能性エステルアルコール、例えばブチルグリコレートおよびエチルラクテート、単官能性ジアルキルアミノアルコール、例えば、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−(ジエチルアミノ)エタノール、2−(ジブチルアミノ)エタノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、1−ジエチルアミノ−2−プロパノールおよび2−(2−ジメチルアミノエトキシ)エタノール、単官能性メルカプタン、例えばブチルメルカプタンおよびドデシルメルカプタン、またはモノアミン、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン(各種異性体)、ペンチルアミン(各種異性体)、ヘキシルアミン(各種異性体)およびオクチルアミン(各種異性体)、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミン、シクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミン(各種異性体)、アミノメチルシクロヘキサン、2−メトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチル−シクロヘキシルアミンおよびN−エチル−シクロヘキシルアミンまたはN−メチル−ジシクロヘキシルアミンおよびN−エチル−ジシクロヘキシルアミン。
【0027】
ヒドロキシウレタンB)の調製において、上記したヒドロキシ官能性化合物、メルカプト官能性化合物および/またはアミノ官能性化合物を、所望の混合物として使用することもできる。
【0028】
記載した脂環式ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートに対して使用される好ましい反応体は、適切な場合には上記したタイプのモノアルコールまたはモノアミンと組み合わせてよい、62〜150g/molの分子量を有する上記したタイプの単純ジオールまたはアミノアルコールである。
【0029】
1,3−ブタンジオールおよび1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−(メチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、n−プロパノール、イソプロパノールおよび/またはジブチルアミンを使用することが、特に好ましい。
【0030】
ヒドロキシウレタンB)の調製において、得られる生成物が上記した特性、即ち、260〜8000g/mol、好ましくは275〜6000g/mol、より好ましくは290〜5000g/molの数平均分子量、および1.0〜6.0、好ましくは1.5〜4.0、より好ましくは2.0〜3.2の平均OH官能価を有するような割合で、上記した出発成分を互いに反応させる。
【0031】
調製に使用する原料の性質と量に依存して、ヒドロキシウレタンB)は一般に、高粘性または固体の物質である。本発明の方法では、ヒドロキシウレタンB)は、基本的に無溶媒状態で使用され得るが、好ましくは、適当な溶媒に溶解した状態で使用される。
【0032】
この目的に適した溶媒の例は、塗料化学から知られている典型的な塗料溶媒であり、イソシアネート基に対して不活性であるもの、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートまたはエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1−メトキシプロプ−2−イルアセテート、3−メトキシ−n−ブチルアセテート、アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、シクロベンゼン、ホワイトスピリット、高度に置換された芳香族化合物、例えば以下の名称で市販されているもの、ソルベントナフサ、Solvesso(登録商標)、Isopar(登録商標)、Nappar(登録商標)(Deutsche EXXON CHEMICAL GmbH(ドイツ国ケルン在))およびShellsol(登録商標)(Deutsche Shell Chemie GmbH(ドイツ国エッシュボルン在))、或いはプロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテートおよびジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドンおよびN−メチルカプロラクタムのような溶媒、或いはそのような溶媒の所望の混合物である。
【0033】
本発明の方法の実施は一般に、20〜150℃、好ましくは30〜120℃の温度で、好適には不活性ガスの存在下、ポリイソシアネート成分A)を初期導入物として導入し、次いで、撹拌しながら、適当な場合には上記した種の溶媒中の溶液として存在する、ヒドロキシウレタン成分B)を、無溶媒状態に基づいて計算された、成分A)およびB)の総量に基づいて2〜80重量%、好ましくは4〜60重量%、より好ましくは6〜50重量%の量で添加する。
【0034】
ヒドロキシウレタンB)の調製および本発明のプロセス生成物を与える反応は、触媒を用いずに実施され得る。しかしながら、反応を促進するため、ポリウレタン化学から知られている典型的なウレタン化触媒を使用することもでき、その例は、第三級アミン、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N−エンドエチレンピペラジン、N−メチルピペリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノシクロヘキサン、N,N’−ジメチルピペラジン、または金属塩、例えば、塩化鉄(III)、塩化亜鉛、オクタン酸亜鉛、2−エチルカプロン酸亜鉛、アセチルアセトン酸亜鉛、オクタン酸錫(II)、エチルカプロン酸錫(II)、パルミチン酸錫(II)、ジラウリン酸ジブチル錫(IV)、2−エチル−1−ヘキサン酸ジルコニウム(IV)、ネオデカン酸ジルコニウム(IV)、ナフテン酸ジルコニウム(IV)、アセチルアセトン酸ジルコニウム(IV)、アルミニウムトリ(エチルアセトアセテート)、2−エチルヘキサン酸ビスマス(III)、オクタン酸ビスマス(III)、ネオデカン酸ビスマス(III)およびグリコール酸モリブデンである。
【0035】
これらの触媒は、必要に応じて、使用する出発成分A)およびB)の総量に基づいて0.001〜2.0重量%、好ましくは0.01〜0.2重量%の量で使用される。
【0036】
本発明の方法における反応の過程は、例えばNCO含量の滴定によって、モニターされ得る。完全なウレタン化の後、本発明のプロセス生成物は、実質的には無色透明の物質となり、必要に応じて、上記した塗料溶媒を用いて所望の粘度に調節され得る。
【0037】
脂環式構造要素を含有する本発明の新規なポリイソシアネート混合物は、一般に、無溶媒状態に基づいて、4.0〜26.0重量%、好ましくは6.0〜23.0重量%、より好ましくは8.0〜22.0重量%の直鎖脂肪族的結合イソシアネート基含量、および1.9〜8.0、好ましくは2.0〜6.0、より好ましくは2.5〜4.5の平均NCO官能価を有する。
【0038】
脂環式構造要素を含有し、好ましくはもっぱら直鎖脂肪族的に結合しているイソシアネート基を含有する本発明のポリイソシアネート混合物は、重付加法によるポリウレタンプラスチックの製造のための有用な出発材料を表す。
【0039】
本発明のポリイソシアネート混合物は、ポリイソシアネート混合物のための反応体として存在するポリヒドロキシル化合物が典型的なポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよび/またはポリアクリレートポリオールである2成分ポリウレタン塗料のための、硬化剤として著しく適している。本発明のプロセス生成物のための特に好ましい反応体は、適切な場合にはスチレンまたは他の共重合性オレフィン性不飽和モノマーを含有する、ヒドロキシル基を含有するポリアクリレート、即ち(メタ)アクリル酸アルキルエステルのポリマーおよびコポリマーである。
【0040】
一般的に言えば、適切な場合には塗膜分野で典型的である助剤および添加剤(例えば、流れ制御助剤、着色顔料、充填剤または艶消し剤)を添加してもよい、本発明に従ったポリイソシアネート混合物を用いて調製される塗料は、室温乾燥の場合でさえ良好な塗膜特性を有する。
【0041】
完全直鎖脂肪族ポリイソシアネート(例えば高官能性HDI三量体)を用いて製造された塗膜と比べると、本発明に従って調製されたポリイソシアネート混合物により架橋された塗膜は、有意により迅速な乾燥およびより高い最終硬度を特徴とする。従来技術に従って架橋剤成分としてHDI三量体およびIPDI三量体のポリイソシアネート混合物を含んでなる同様に速乾性の塗膜と比べて、本発明に従って得られた塗膜は、付加的に、明らかに改良された耐溶剤性および耐薬品性を示す。従って、脂環式構造要素を含有する本発明のポリイソシアネート混合物は、脂環式ポリイソシアネート架橋剤の速乾性および高い最終硬度と、直鎖脂肪族ポリイソシアネートの迅速な化学硬化および結果として得られる良好な耐性とを併せ持つ。
【0042】
しかしながら、理解されるように、本発明に従った塗膜は、高温での強制条件下で、または260℃までの温度での焼付けによって乾燥させることもできる。
【0043】
硬化速度を制御するため、塗料を調製する際に、適当な触媒を含ませることができ、その例は、ポリウレタン化学で典型的である上記したウレタン化触媒である。
【0044】
もちろん、本発明の脂環式構造要素含有ポリイソシアネート混合物は、1成分PUR焼付系として、上記した塗膜形成バインダーまたは塗膜形成バインダー成分と組み合わせて、ポリウレタン化学からそれ自体知られているブロッキング剤でブロックされた状態で使用することもできる。適当なブロッキング剤の例は、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、活性化環状ケトン、例えば、シクロペンタノン−2−カルボキシメチルエステルおよびシクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル、アセトンオキシム、ブタノンオキシム、ε−カプロラクタム、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾール、ジメチル−1,2,4−トリアゾール、イミダゾール、ベンジル−tert−ブチルアミンまたはこれらブロッキング剤の所望の混合物である。
【0045】
従って、本発明は、ポリウレタン化学から知られているブロッキング剤でブロックされたポリイソシアネートを調製するための、本発明のポリイソシアネート混合物の使用、および得られるブロックトポリイソシアネート自体も提供する。
【0046】
本発明のプロセス生成物は、EP−B 0 403 921から知られているポリアスパラギン酸誘導体のようなポリアミン、またはアミノ基がブロックされた状態で存在する種のポリアミン(例えば、ポリケチミン、ポリアルジミンまたはオキサゾラン)を用いて配合することもできる。湿気の影響下、これらのブロックトアミノ基は、遊離アミノ基を生じ、オキサゾランの場合は遊離ヒドロキシル基も生じる。これらの遊離基は、本発明のポリイソシアネート混合物のイソシアネート基の架橋反応によって消費される。
【0047】
本発明のポリイソシアネート混合物はまた、水中分散体または水溶液として存在し、イソシアネート反応性基を含有するバインダーまたはバインダー成分のための、架橋剤成分として適している。2成分ポリウレタン水性系の調製において、該イソシアネート反応性基は特にアルコール性ヒドロキシル基である。これに関して、本発明のポリイソシアネート混合物を、そのまま、即ち疎水性状態で使用してもよいし、または(例えば、EP−B 0 540 985、EP−B 0 959 087またはEP−B 1 287 052に従った)既知の方法により親水的に変性された状態で使用してもよい。
【0048】
塗料配合物の全てにおいて、本発明のプロセス生成物および反応体は、場合によりブロックされていてよい各イソシアネート基について、0.5〜3個、好ましくは0.6〜2.0個、より好ましくは0.8〜1.6個の場合によりブロックされていてよいイソシアネート反応性基が存在するような量で存在する。
【0049】
しかしながら、適切な場合には、本発明のポリイソシアネート混合物を、極めて特定の性質を得る目的で、例えば接着促進添加剤として、非官能性塗膜形成バインダーに少量混合することもできる。
【0050】
本発明の脂環式構造要素含有ポリイソシアネート混合物を用いて製造された塗膜に適した基材は、所望の基材である。その例は、金属、木材、ガラス、石材、セラミック材料、コンクリート、硬質プラスチックおよび軟質プラスチック、布地、皮革および紙であり、適切な場合には、被覆前に、それらに典型的な下塗りを施してもよい。
【0051】
従って、本発明は更に、本発明のポリイソシアネート混合物を含んでなる塗料、該塗料で被覆された基材を提供する。
【実施例】
【0052】
全てのパーセントは、そうではないといった記載のない限り、重量に基づく。
NCO含量は、DIN EN ISO 11909に従って測定した。
粘度測定は全て、DIN EN ISO 3219に従って、Anton Paar Germany GmbH(オストフィルデルン在)製Physica MCR 51レオメーターを用いて、23℃で実施した。
【0053】
出発ポリイソシアネートA1)
EP−A 0 330 966の方法により調製された、イソシアヌレート基含有HDIポリイソシアネート。
固形分:100%
NCO含量:21.6%
単量体HDI:0.1%
平均NCO官能価:3.4
粘度:2500mPas(23℃)
【0054】
出発ポリイソシアネートA2)
EP−A 0 330 966の方法により調製された、イソシアヌレート基含有HDIポリイソシアネート。
固形分:100%
NCO含量:23.0%
単量体HDI:0.1%
平均NCO官能価:3.1
粘度:1200mPas(23℃)
【0055】
出発ポリイソシアネートA3)
EP−A 0 798 299の方法により調製された、イミノオキサジアジンジオン基含有HDIポリイソシアネート。
固形分:100%
NCO含量:23.5%
単量体HDI:0.3%
平均NCO官能価:3.1
粘度:700mPas(23℃)
【0056】
出発ポリイソシアネートA4)
EP−A 1 422 223の方法により調製された、ウレトジオン基含有HDIポリイソシアネート。
固形分:100%
NCO含量:22.9%
単量体HDI:0.1%
平均NCO官能価:2.2
粘度:100mPas(23℃)
【0057】
出発ポリイソシアネートA5)
EP−A 0 003 765の方法により調製された、イソシアヌレート基含有IPDIポリイソシアネート。
固形分:酢酸ブチル中70%
NCO含量:11.8%
単量体IPDI:0.3%
平均NCO官能価:3.2
粘度:600mPas(23℃)
【0058】
出発ポリイソシアネートA6)
EP−A 0 330 966の方法により調製された、イソシアヌレート基含有HDIポリイソシアネート。
固形分:酢酸ブチル中90%
NCO含量:17.8%
単量体HDI:0.1%
平均NCO官能価:4.1
粘度:1800mPas(23℃)
【0059】
ヒドロキシウレタンB1)
撹拌機、温度計および還流冷却器を備えた反応容器に、135g(3.0当量)の1,3−ブタンジオールおよび60g(1.0当量)の1−プロパノールからなるアルコール混合物を、DBTL0.05gの酢酸ブチル622g溶液と一緒に導入し、この初期導入物を80℃まで加熱した。この温度で1時間にわたって、1068g(3.0当量)の出発ポリイソシアネートA5)を計量添加した。次いで、混合物を110℃まで加熱し、反応が完了する(IRスペクトルにおける2270cm−1でのNCOバンドの消失)までこの温度で撹拌した。これにより、以下の(溶液に基づく)特性を有する無色透明のヒドロキシウレタン溶液を得た。
固形分:50%
OH含量:0.90%
当量:1885g/eqOH
平均OH官能価:2.3
【0060】
ヒドロキシウレタンB2)
ヒドロキシウレタンB1)のために記載した方法を用いて、1077g(3.0当量)の出発ポリイソシアネートA5)を、219g(3.0当量)の2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、60g(1.0当量)の2−プロパノール、0.08gのDBTLおよび710gの酢酸ブチルの混合物と反応させた。これにより、以下の(溶液に基づく)特性を有する無色透明のヒドロキシウレタン溶液を得た。
固形分:50%
OH含量:0.82%
当量:2069g/eqOH
平均OH官能価:2.3
【0061】
ヒドロキシウレタンB3)
ヒドロキシウレタンB1)のために記載した方法を用いて、111g(1.0当量)のIPDIを、220.5gの酢酸ブチル中で、109.5gの2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールと反応させた。これにより、以下の(溶液に基づく)特性を有する無色透明のヒドロキシウレタン溶液を得た。
固形分:50%
OH含量:1.93%
当量:879g/eqOH
平均OH官能価:2.0
【0062】
ヒドロキシウレタンB4)
ヒドロキシウレタンB1)のために記載した方法を用いて、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン524g(4.0当量)の酢酸ブチル962g溶液を、触媒としてのDBTL0.044gの存在下、438g(6.0当量)の2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールと反応させた。これにより、以下の(溶液に基づく)特性を有する無色透明のヒドロキシウレタン溶液を得た。
固形分:50%
OH含量:1.77%
当量:959g/eqOH
平均OH官能価:2.0
【0063】
ヒドロキシウレタンB5)
ヒドロキシウレタンB1)のために記載した方法を用いて、1068g(3.0当量)の出発ポリイソシアネートA5)を、216g(3.0当量)のシクロヘキサンジメタノール、60g(1.0当量)の1−プロパノール、0.06gのDBTLおよび703gの酢酸ブチルの混合物と反応させた。これにより、以下の(溶液に基づく)特性を有する無色透明のヒドロキシウレタン溶液を得た。
固形分:50%
OH含量:0.83%
当量:2045g/eqOH
平均OH官能価:2.3
【0064】
ヒドロキシウレタンB6)
ヒドロキシウレタンB1)のために記載した方法を用いて、1068g(3.0当量)の出発ポリイソシアネートA5)を、112.5g(1.5mol)の2−(メチルアミノ)エタノール、129g(1.0mol)のジブチルアミンおよび668gの酢酸ブチルの混合物と反応させた。これにより、以下の(溶液に基づく)特性を有する無色透明のヒドロキシウレタン溶液を得た。
固形分:50%
OH含量:0.86%
当量:1973g/eqOH
平均OH官能価:2.3
【0065】
ヒドロキシウレタンB7)
ヒドロキシウレタンB1)のために記載した方法を用いて、350g(1.0当量)の出発ポリイソシアネートA5)を、146g(2.0当量)の2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、0.03gのDBTLおよび156gの酢酸ブチルの混合物と反応させた。これにより、以下の(溶液に基づく)特性を有する無色透明のヒドロキシウレタン溶液を得た。
固形分:60%
OH含量:2.61%
当量:650g/eqOH
平均OH官能価:3.2
【0066】
実施例1(本発明)
内部温度計および還流冷却器を備えた撹拌容器に、80℃で、715gの酢酸ブチルと一緒に2925gのポリイソシアネートA1)を導入した。2時間にわたって、1885g(15:1のNCO/OH当量比に相当する)のヒドロキシウレタンB1)を計量添加し、この混合物をこの温度で更に2時間撹拌した。その後、反応混合物を110℃まで加熱し、更に3時間撹拌した。室温まで冷却し、以下の特性を有する本発明のポリイソシアネート混合物の実質的に無色透明な溶液を得た。
固形分:70%
NCO含量:10.3%
粘度:800mPas
平均NCO官能価:3.6
【0067】
実施例2〜9(本発明)
実施例1に記載の方法に従って、様々なポリイソシアネート成分A)およびヒドロキシウレタンB)を用いて、脂環式構造要素含有ポリイソシアネート混合物を調製した。以下の表は、本発明の生成物の組成(各々の場合において重量部で)および特性を示す。
【0068】
【表1】

【0069】
実施例10(使用、本発明および比較)
酢酸ブチル中72%濃度溶液であり、3.4%のOH含量を有し、本質的に、38.9%のヒドロキシエチルメタクリレート、23.3%のイソボルニルアクリレート、18.6%のスチレン、9.4%のメチルメタクリレート、8.4%のエチルアクリレートおよび1.4%のアクリル酸からなる、ヒドロキシ官能性ポリアクリレート100重量部を、商業的に通例の脱気剤(Tego社製Tego(登録商標)Airex 945)0.5重量部、および触媒としてのDBTLの1%濃度キシレン溶液3.8重量部と混合し、次いで、等重量部の酢酸ブチル、キシレンおよび1−メトキシプロプ−2−イルアセテートからなる溶媒混合物20.7重量部の添加によって、固形分を58%に調整した。このバッチに、実施例1からの本発明の溶媒含有ポリイソシアネート混合物80.0重量部(1:1のNCO/OH当量比に相当する)を添加し、勢いある撹拌(200rpm)によって混合物を均一にした。続いて、酢酸ブチル、キシレンおよび1−メトキシプロプ−2−イルアセテートからなる上記溶媒混合物52.0重量部を添加することによって、固形分を50%に調整した。
【0070】
比較するため、各々の場合に100重量部の上記ヒドロキシ官能性ポリアクリレート、0.5重量部のTego(登録商標)Airex 945および3.8重量部の上記DBTL溶液から、ポリイソシアネートA6)の47.2重量部を用いるか(=比較例10b)または70%のポリイソシアネートA1)と30%のポリイソシアネートA5)とからなるポリイソシアネート混合物の45.0重量部を用いて(=比較例10c)(各々の場合について1:1のNCO/OH当量比に相当する)、同じ方法によって透明な塗料を調製した。同様に、均等な割合の酢酸ブチル、キシレンおよび1−メトキシプロプ−2−イルアセテートからなる上記溶媒混合物を合計で83.2重量部(10b)または77.6重量部添加することによって、固形分を50%に調整した。
【0071】
塗料を、100μmの湿潤塗膜厚さ(乾燥塗膜厚さ約50μm)でガラス板に適用し、蒸発分離の15分後、室温および強制条件(60℃×30分)下で乾燥させた。全ての場合において、非常に光沢のある透明な塗膜が得られた。以下の表は、塗料バッチおよび得られた塗膜の特性の比較を示す。
【0072】
【表2】

【0073】
比較により、本発明に従って調製されたポリイソシアネート混合物を用いて調製された塗料バッチ(実施例10a)は、高官能性HDI三量体A6)を用いて調製された塗料(比較例10b)よりも長いポットライフ(フロー時間を参照)を示すが、有意により迅速な乾燥性およびより高い最終硬度も示すことが分かる。同様に、HDI三量体とIPDI三量体のポリイソシアネート混合物を用いて架橋された速乾性塗膜(比較例10c)と比べると、本発明に従って得られた塗膜は、特に、非常に改善された耐薬品性を特徴とする(耐石油性を参照)。
【0074】
実施例11〜13(使用)
実施例10に記載の方法に従って、そこに記載されているポリアクリレートポリオールから出発し、1:1のNCO/OH当量比に保って本発明の様々なポリイソシアネート混合物を用い、透明な塗料を調製した。これらの透明な塗料をガラス板に適用し、硬化させた。以下の表は、調製した塗料の組成(各々の場合において重量部で)および得られた塗膜の塗膜特性を示す。
【0075】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式構造要素と直鎖脂肪族的結合遊離イソシアネート基とを含有するポリイソシアネート混合物の製造方法であって、
A)2.0〜5.0の平均官能価および8.0〜27.0重量%の(NCO分子量=42で計算された)直鎖脂肪族的結合イソシアネート基含量を有するポリイソシアネート成分を、
B)使用する成分A)およびB)の総量に基づいて2〜80重量%の、脂環式ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートに基づき、イソシアネート基を含有せず、場合によりウレア基を含有してよく、260〜8000g/molの数平均分子量および1.0〜6.0の平均OH官能価を有する、少なくとも1種のヒドロキシウレタン
と反応させる方法。
【請求項2】
ポリイソシアネート混合物に含有されるイソシアネート基がもっぱら直鎖脂肪族的に結合していることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成分A)に、ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく、ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレットおよび/またはイミノオキサジアジンジオン構造を有するポリイソシアネートを使用することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
成分B)に、290〜5000g/molの平均分子量を有するヒドロキシウレタンを使用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
成分B)に、2.0〜3.2の平均OH官能価を有するヒドロキシウレタンを使用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
成分B)に使用するヒドロキシウレタンを、イソホロンジイソシアネート、1,3−ジイソシアナト−2(4)−メチルシクロヘキサン、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンおよび/または2,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン並びにこれらジイソシアネートに基づくポリイソシアネートからなる群から選択される脂環式イソシアネートを用いて調製することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
成分B)に使用するヒドロキシウレタンを、1,3−ブタンジオールおよび1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−(メチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、n−プロパノール、イソプロパノールおよびジブチルアミンからなる群から選択されるイソシアネート反応性化合物を用いて調製することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
本発明の方法において、成分A)およびB)の総量に基づいて6〜50重量%の量で成分B)を使用し、このパーセントの数が固形分に基づくことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
得られるポリイソシアネート混合物の直鎖脂肪族的結合イソシアネート基含量が4.0〜26.0重量%となり、平均NCO官能価が1.9〜8.0となるように、成分A)およびB)並びにそれらの互いの反応を構成することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法により得られるポリイソシアネート混合物。
【請求項11】
含有されるイソシアネート基が部分的にまたは完全にブロックされていることを特徴とする、請求項10に記載のポリイソシアネート混合物。
【請求項12】
ポリウレタンプラスチック、塗膜または接着層の製造における、請求項10または11に記載のポリイソシアネート混合物の使用。
【請求項13】
請求項10または11に記載のポリイソシアネート混合物を用いて得られる塗料。
【請求項14】
請求項13に記載の塗料を用いて得られる塗膜で被覆された基材。

【公表番号】特表2011−506651(P2011−506651A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537319(P2010−537319)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010561
【国際公開番号】WO2009/074332
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】