説明

脂環族系ポリマーの製造方法

【課題】 芳香族系ポリマーの芳香環から工業的に有利な製造条件下で高転化率・高選択率で脂環族系ポリマーを製造できる方法を提供すること。
【解決手段】 有機溶媒の存在下、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、ニッケル及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属からなる金属微粒子触媒を用いて、芳香族系ポリマーの芳香環を水素化して脂環族系ポリマーを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業的に有利な製造条件下で、芳香族系ポリマーから脂環族系ポリマーを高転化率で製造することができる脂環族系ポリマーの製造方法に関する。より詳細には、有機溶媒及び特定の触媒の存在下で、芳香族系ポリマーの芳香環を核水素化して脂環族系ポリマーを製造する方法に関する。脂環族系ポリマーは、透明性、低分散性、耐熱性、耐薬品性、低吸湿特性、精密成形性、防湿性などの特性を有することから、本発明は工業的に有用な材料を提供できる製造方法である。
【背景技術】
【0002】
近年、光学レンズ、プリズム、高密度光ディスク基板などに用いられるオプトエレクトロニクス材料は、その多様化・高性能化・高品質化に伴い、該材料の要求特性が一段と高まる傾向にある。例えば、従来から使用されているメタクリル樹脂は、吸湿性が高く耐熱性も不十分であり、ポリカーボネート樹脂では複屈折が大きく低吸湿特性も不十分であるなどの欠点がある。このような状況下、非晶質性炭化水素ポリマー(例えば、脂環族系ポリマーなど)が、新たなオプトエレクトロニクス材料として注目され、実用化が進められている。一般に、非晶質性炭化水素ポリマーは、無色透明性、耐熱性、低吸湿特性、精密成形性に優れ、特にメタクリル樹脂やポリカーボネート樹脂の比重約1.2に比べて約1.0と軽いことから、軽量化が求められている携帯電話、ノートパソコン等の液晶表示装置(LCD)用導光板材料、さらには自動車用部品などの用途開発が進められている。
【0003】
また、光学材料用途以外では非晶質性炭化水素ポリマーの高い耐薬品性や防湿性を活かした医療関連品にも広く用途開発が進められている。例えば、医薬錠剤のパッケージには、現在、高防湿性を有するポリ塩化ビニル等の含ハロゲンプラスチックの積層シートや脱ハロゲン化の要望からポリプロピレンシートが使用されている。しかし、含ハロゲンプラスチックは焼却処理の点で問題であり、ポリプロピレンシートは透湿度が比較的高いという問題点がある。これらの点で、非晶質性炭化水素ポリマーはハロゲンを含まず透湿度が極めて低いことから、今後の需要が見込まれる。
【0004】
さらに、製医薬用シリンジ、バイアル、血液検査用セルとして、高透明性(内容物の高い視認性)、高耐熱性(高温スチーム減菌可能)、耐酸・アルカリ性や薬成分の低吸着性(薬剤の高保存性)を有することから、今後の展開も期待されている。
【0005】
既に実用化されている非晶質性炭化水素ポリマーとしては、ノルボルネン系非晶質シクロオレフィンポリマーが挙げられ、光学用プラスチック基盤材料として高い信頼性を有する。しかしながら、このポリマーの製造には多工程が必要な上に、製造コストが比較的高くなる。その製造工程は、(i)ジシクロペンタジエンの熱分解によるシクロペンタジエンの製造工程、(ii)シクロペンタジエンとオレフィン類とのディールス−アルダー反応(Diels−Alder反応)によるノルボルネン類の製造工程、(iii)金属触媒を用いたノルボルネン類の開環メタセシス重合による開環重合体の製造工程、(iv)水素化触媒を用いた前記開環重合体中の二重結合の水素化反応工程の少なくとも4段階の工程からなる。
【0006】
他方、ポリスチレン、ポリアクリル酸芳香族エステルなどに代表される芳香族系ポリマーは、多種多様なものが安価に市販品として入手可能である。例えば、ポリスチレンの芳香環を80%以上核水素化してシクロヘキサン環に変換すると、上記ノルボルネン系非晶質シクロオレフィンポリマーと同等の、無色透明性で耐熱性、低吸湿特性、精密成形性に優れたポリマーが得られることが知られている(特許文献1)。
【0007】
このように芳香族系ポリマーを直接核水素化することにより脂環族系ポリマーを製造する方法は安価な製造方法として期待される。しかしながら、ポリマー中に含まれる芳香環の核水素化は、ポリマー構造に由来する立体障害が大きく、低分子化合物の反応に比べて、著しく反応が進行し難い。
【0008】
ポリスチレンの核水素化反応条件としては、例えば、(i)反応温度:165℃、水素分圧:20MPa、基質濃度:4%、触媒の種類:Ni/珪藻土、触媒量:等重量(対基質)、(ii)反応温度:150℃、水素分圧:7MPa、基質濃度:15%、触媒の種類:シリカ担持白金触媒、触媒量:7重量%(対基質)、(iii)反応温度:140℃、水素分圧:10MPa、基質濃度:10%、触媒の種類:活性炭担持ルテニウム、ロジウム又はパラジウム、触媒量:20重量%(対基質、金属換算で1重量%)が提案されている。何れの反応条件においても核水素反応はある程度進行するものの、反応温度が比較的高い為にポリスチレンのベンジル位の水素化分解によって分子量が低下しやすいことが報告されている(非特許文献1〜5、特許文献1)。
【0009】
核水素化反応に用いられる金属触媒として、上記のような担持金属触媒の他に、金属をナノオーダーまで微粒子化した微粒子金属触媒が知られている。例えば、ナノ金属微粒子/炭素ナノ繊維構造体の担持型微粒子金属触媒を用いて、トルエン、アニソール、安息香酸エチル、アニリン等の芳香環を核水素化する方法(特許文献2)、水系溶媒又はアルコール含有水系溶媒中で金属塩や有機金属錯体を水溶性高分子の安定化剤の存在下で分解して調製されるコロイド型微粒子金属触媒を用いて、該水系溶媒中でフェノール、アニソール、安息香酸エチル、アニリン等の芳香環を核水素化する方法(非特許文献6、7)が知られている。
【0010】
【特許文献1】特開平1-132603号公報
【特許文献2】特開2006-281201号公報
【非特許文献1】Elias, H. G.; Etter, O. J. Macromol. Sci. 1967, A1(5), 943.
【非特許文献2】Helbig, M.; Inoue, H.; Vogl, O. J. Polym. Sci., Polym. Symp. 1978, 63, 329.
【非特許文献3】Steinhofer, A.; Polster, R.; Fruederich, H. German Patent 1 131 885, 1961.
【非特許文献4】Gehlsen, M. D.; Weimann, P. A.; Bates, F. S.; Harville, S.; Mays, J.; Wignall, G. D. J. Polym. Sci., Part B: Polym. Phys. 1995, 33, 1527.
【非特許文献5】Hucul, D. A.; Hahn, S. F. Adv. Mater. 2000, 12, 1855.
【非特許文献6】Schulz, J.; Roucoux, A.; Patin, H. Chem. Eur. J. 2000, 6, 618.
【非特許文献7】Roucoux, A.; Schulz, J.; Patin, H. Adv. Synth. Catal. 2003, 345, 222.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目転化率で脂環族系ポリマーを製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記(1)〜(5)の知見を得た。
(1)市販の担持金属触媒を用いて、芳香族系ポリマーの芳香環を核水素化したところ、ある程度の転化率は得られるものの、ポリマーの分解現象が観測されたこと(本明細書比較例1〜5参照)。
(2)有機溶媒存在下、特定の金属微粒子触媒を用いることにより、比較的高い転化率で芳香族系ポリマーの芳香環を核水素化することが可能であったこと。また、その核水素化反応が比較的穏和な条件でも進行したこと。
(3)前記金属微粒子触媒は、有機溶媒に溶解した特定の有機金属錯体を水素雰囲気下で攪拌するという簡便な方法で調製が可能であり、工業的にも有利な調製方法であったこと。
(4)さらに活性炭の共存下で芳香族系ポリマーの芳香環を核水素化させることにより、転化率・選択率がより向上したこと。
(5)前記金属微粒子触媒は、反応系内で高分散状態にある為、目的の脂環族系ポリマーと該触媒とを分離することは容易ではなかった。ところが、前記(4)のように活性炭を共存させた場合には、水素化反応終了後に濾別操作をすることにより、前記金属微粒子触媒残渣と目的の脂環族系ポリマーとを容易に分離することが可能であったこと。目的の脂環族系ポリマーには、金属微粒触媒残渣に由来する金属含有量が少なかったこと。
【0013】
本発明は、係る知見に基づいて完成させたものであり、以下の項目を提供するものである。
【0014】
(項1)有機溶媒の存在下、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、ニッケル及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属からなる金属微粒子触媒を用いて、芳香族系ポリマーの芳香環を水素化することを特徴とする脂環族系ポリマーの製造方法。
【0015】
(項2)金属微粒子触媒が、有機溶媒に溶解した有機金属錯体を水素雰囲気下で攪拌することにより得られる触媒である上記項1に記載の製造方法。
【0016】
(項3)さらに多孔質体の共存下で芳香族系ポリマーの芳香環を水素化する上記項1又は項に記載の製造方法。
【0017】
(項4)有機金属錯体が、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、ニッケル及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属と、該金属と配位結合若しくは共有結合して炭素−金属結合を形成する有機配位子、ハロゲン及び有機基からなる群より選ばれる少なくとも一種とからなる錯体である上記項2又は項3に記載の製造方法。
【0018】
(項5)上記有機配位子、ハロゲン及び有機基からなる群が、アルケン誘導体、アルキン誘導体、アリール誘導体、ケトン誘導体、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基からなる群である上記項4に記載の製造方法。
【0019】
(項6)有機金属錯体が、Ru(cod)(cot)、Ru(C)(1,3−C)、Ru(C)(nbd)、Co(C13)(cod)、Ni(cod)、Ni(C、Pd(C、Pd(dba)・CHCl、Pd(dba)、Pt(C、Pt(dba)、Pt(cod)、PtMe(cod)、[(p−CHCH(CH)RuCl、[RhCl(C、[RhCl(C14及び[RhCl(cod)]
[但し、「cod」は1,5−シクロオクタジエン、「cot」は1,3,5−シクロオクタトリエン、「nbd」は2,5−ノルボルナジエン、「dba」はジベンジリデンアセトン、「Me」はメチル基を表す。]
からなる群より選ばれる少なくとも一種である上記項2〜5のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、工業的に有利な製造条件下で、高転化率で脂環族系ポリマーを得ることができる。さらに、多孔質体の共存下で当該核水素化反応させることにより、転化率・選択率をより向上させることができる。また、多孔質体が共存した反応系では濾別という極めて簡便な操作により触媒残渣及び多孔質体を分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の製造方法は、有機溶媒存在下、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、ニッケル及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属からなる金属微粒子触媒を用いて、芳香族系ポリマーの芳香環を核水素化反応することを特徴とする方法である。
【0022】
[芳香族系ポリマー]
本発明に係る芳香族系ポリマーとは、該ポリマー中に芳香環を有するものを指す。例えば、ビニル芳香族炭化水素化合物等の芳香環を有する単量体から重合して得られるポリマー及びその芳香環を有する単量体と共重合可能な単量体との共重体などが例示される。
【0023】
具体的には、芳香環を有する単量体として、スチレン、α−メチルスチレン、α−ビニルナフタレン、β−ビニルナフタレン、α−イソプロペニルナフタレン、β−イソプロペニルナフタレン、アクリル酸フェニル、アクリル酸ナフチル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ナフチル、メタクリル酸ベンジルなどのビニル芳香族炭化水素化合物、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−シクロヘキシルスチレン、p−t−ブチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、p−シクロヘキシルスチレン等のアルキルスチレン、p−メトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、p−(1−エトキシエトキシ)スチレン、3,4−ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン、2−ヒドロキシスチレン、3−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシスチレン、3−カルボメトキシスチレン、4−カルボメトキシスチレン等のカルボメトキシスチレン、3−アセトキシスチレン、4−アセトキシスチレン等のアセトキシスチレンなどの置換ビニル芳香族炭化水素化合物、N−ベンジルマレイン酸イミド、N−フェニルマレイン酸イミド、N−(アルキル置換フェニル)マレイン酸イミド等の芳香族マレイン酸イミドなどが挙げられる。
【0024】
また、前記芳香環を有する単量体と共重合可能な単量体としては、不飽和脂肪酸及びその誘導体が例示される。具体的には、不飽和脂肪酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などが例示される。不飽和脂肪酸の誘導体としては、不飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸イミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸アダマンチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸アダマンチル等のメタクリル酸エステル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル等のマレイン酸ジエステル、マレイン酸ジメチルアミド、マレイン酸ジエチルアミド等のマレイン酸ジアミド、N−メチルマレイン酸イミド、N−t−ブチルマレイン酸イミド、N−t−ブトキシカルボニルマレイン酸イミド、N−シクロヘキシルマレイン酸イミド等のマレイン酸イミド等のマレイン酸誘導体、アクリロニトリル誘導体などが挙げられる。
【0025】
上記芳香環を有する単量体及び共重合可能な単量体は、1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。また、これらの単量体は、一般に入手可能な市販品を使用することもできる。
【0026】
本発明に係る芳香族系ポリマーは、上記単量体を用いて公知の製造方法で得ることができ(例えば、第4版実験化学講座28、高分子合成、丸善株式会社)、また、一般に入手可能な市販品を使用することもできる(例えば、ポリスチレンでは和光純薬社などから市販されている)。
芳香族系ポリマーの分子量としては、重量平均分子量で、好ましくは10,000〜800,000、より好ましくは30,000〜500,000が推奨される。
【0027】
[金属微粒子触媒]
本発明に係る金属微粒子触媒は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、ニッケル及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属、好ましくはルテニウム、ロジウム、パラジウム及び白金からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属、特に好ましくは白金、からなる金属触媒である。
該触媒は、公知の金属微粒子触媒も使用できるが、次の調製方法にて得られる触媒が触媒活性や触媒調製の容易さの点から特に好ましい。
【0028】
その調製方法としては、水素雰囲気下で特定の有機金属錯体を触媒調製用有機溶媒に所定量溶解させた後、好ましくは200℃以下、より好ましくは10〜180℃の温度で、0.1〜10時間程度攪拌する方法などが例示される。この調製方法で重要なことは、水素雰囲気下で触媒を調製することにある。その水素分圧としては、好ましくは20MPa以下、より好ましくは10MPa以下、特に0.1〜5MPaの範囲が推奨される。
【0029】
前記触媒調製用有機溶媒は、有機金属錯体を溶解できるものであれば特にその種類に限定はないが、好ましくは本発明に係る核水素化反応で使用される有機溶媒と同一の種類であることが、触媒単離や溶媒置換等の作業工程を簡素化できる点で好ましい。具体的には、後述の有機溶媒の項目に記載のものが例示される。
【0030】
前記有機金属錯体とは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、ニッケル及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属と、該金属と配位結合若しくは共有結合(σ結合)して炭素−金属結合を形成する有機配位子、ハロゲン及び有機基からなる群より選ばれる少なくとも一種と、から本質的に構成される錯体である。
金属微粒子触媒は、該錯体が有機溶媒中で水素を介して分解して生成するものと推測される。
【0031】
前記有機配位子、ハロゲン及び有機基からなる群としては、例えば、エチレン、プロピレン、1,5−シクロオクタジエン、1,3,5−シクロオクタトリエン、1,3,5,7−シクロオクタテトラエン、2,5−ノルボルナジエン等のアルケン誘導体、アセチレン、フェニルアセチレン、ジフェニルアセチレン等のアルキン誘導体、ベンゼン、トルエン、o−シメン、p−シメン、m−シメン等のアリール誘導体、ジベンジリデンアセトン、アセチルアセトン等のケトン誘導体、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基、アリル基、メタリル基、シクロオクテニル基等のアルケニル基、エチニル基、プロパルギル基等のアルキニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などが挙げられる。前記有機配位子及び有機基は、本発明の効果を損なわない範囲でハロゲン等の他の官能基を有していても良い。これらは、1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0032】
前記有機金属錯体としては、上記の構成・特性を満たすものであれば特に限定されるものではないが、例えば、Ru(cod)(cot);(1,5−シクロオクタジエン)(1,3,5−シクロオクタトリエン)ルテニウム、Ru(C)(1,3−C);(ベンゼン)(1,3−シクロヘキサジエン)ルテニウム、Ru(C)(nbd);(アリル)(2,5−ノルボルナジエン)ルテニウム、Co(C13)(cod);(シクロオクテニル)(1,5−シクロオクタジエン)コバルト、Ni(cod);ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、Ni(C;ビス(アリル)ニッケル、Pd(C;ビス(アリル)パラジウム、Pd(dba)・CHCl;トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム・クロロホルム、Pd(dba);ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、Pt(C;ビス(アリル)白金、Pt(dba);ビス(ジベンジリデンアセトン)白金、Pt(cod);ビス(1,5−シクロオクタジエン)白金、PtMe(cod);ジメチル(1,5−シクロオクタジエン)白金、[(p−CHCH(CH)RuCl;ジクロロビス(p−シメン)ルテニウム、[RhCl(C;クロロビス(エチレン)ロジウム、[RhCl(C14;クロロビス(シクロオクテン)ロジウム、[RhCl(cod)];クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムなどが例示され、好ましくはPd(dba)・CHCl、Pd(dba)、Pt(dba)、Pt(cod)、より好ましくはPt(dba)、Pt(cod)が推奨される。これらは、1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
なお、本特許請求の範囲及び明細書において、前記有機配位子及び有機基の略語は、「cod」は1,5−シクロオクタジエン、「cot」は1,3,5−シクロオクタトリエン、「nbd」は2,5−ノルボルナジエン、「dba」はジベンジリデンアセトン、「Me」はメチル基を表す。上記CHClは、有機配位子及び有機基ではなく、錯体の結晶に含まれる溶媒を表す。
構成成分にハロゲンを有する有機金属錯体は、通常ハロゲンが配位しているが、そのハロゲンが金属間に架橋して錯体を形成している場合もある。
【0033】
上記金属微粒子触媒の使用量は、その金属微粒子触媒の種類にもよるが、金属重量を基準として、芳香族系ポリマーに対して、好ましくは0.005〜5重量%、より好ましくは0.05〜4重量%、特に0.1〜3.5重量%が推奨される。多孔質体を共存させる場合には、その多孔質体の種類や性状及び金属微粒子触媒の種類にもよるが、金属重量を基準として、芳香族系ポリマーに対して、好ましくは0.005〜4重量%、より好ましくは0.05〜3.5重量%、特に0.1〜3重量%が推奨される。多孔質体を共存させることにより、その金属微粒子触媒の使用量を低減させることが可能である。これにより、生産コストの低減に寄与する。
【0034】
また、上記有機金属錯体の使用量は、その錯体の種類によって適宜選択されるが、通常前記金属微粒子触媒の目的の使用量に応じて選択される。即ち、その使用量、芳香族系ポリマーに対して、該錯体中の金属含有量を基準として、好ましくは0.005〜5重量%、より好ましくは0.05〜4重量%、特に0.1〜3.5重量%が推奨される。多孔質体を共存させる場合には、該錯体中の金属含有量を基準として、芳香族系ポリマーに対して、好ましくは0.005〜4重量%、より好ましくは0.05〜3.5重量%、特に0.1〜3重量%が推奨される。
【0035】
有機金属錯体の調製方法は、本発明の効果を損なわない限り特に限定はなく、公知の調製方法を用いることができる(例えば、Cherwinski, W. J.; Johnson, B. F. G.; Lewis, J. J. Chem. Soc., Dalton Trans. 1974, 1405.、Ukai, T.; Kawazura, H.; Ishii, Y. J. Organomet. Chem. 1974, 65, 253.、Itoh, K.; Nagashima, H.; Oshima, T.; Oshima, N.; Nishiyama, H. J. Organomet. Chem. 1984, 272, 179.、Green, M.; howard, J. A.; Spencer, J. L.; Stone, F. G. A. J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1975, 3.)。また、該錯体には、一般に入手可能な市販品を使用することもできる(例えば、Pd(dba)やPd(dba)・CHClは関東化学社などから市販されている。)。
【0036】
[多孔質体]
本発明に係る多孔質体は、外部(表面)ないし内部に大小の様々な孔を有する固体であり、通常次の性状を有する。
(i)多孔質体の比表面積は、好ましくは1〜5,000m/g、より好ましくは200〜2,500m/g、特に500〜2,000m/gが推奨される。
(ii)多孔質体の充填密度は、好ましくは100〜800g/L、より好ましくは250〜750g/L、特に200〜400g/Lが推奨される。
【0037】
具体的には、活性炭、アルミナ(γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ等)、シリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム、ゼオライト、酸化ジルコニウム、グラファイト、珪藻土などが例示され、好ましくは活性炭、アルミナ、特に活性炭が推奨される。これらは、通常前記性状を有していれば特に制限はないが、商業的な入手の容易さ及び活性の観点から、一般的に水素化触媒で使用される担体を使用することが推奨される。
【0038】
前記多孔質体を使用する場合、その使用量は、上記金属微粒子触媒の種類及び多孔質体の種類にもよるが、通常金属微粒子触媒1重量部に対して、好ましくは0.5〜1000重量部、より好ましくは5〜300重量部、特に10〜200重量部が推奨される。なお、有機金属錯体に対する使用量は、金属微粒子触媒1重量部に対する使用量に相当する量となる。
【0039】
[水素化反応]
本発明に係る核水素化反応は、芳香族系ポリマーが有する芳香環を核水素化して、その芳香環構造を脂環構造とする反応である。該反応は、市販の担持金属触媒と比較して、比較的穏和な反応条件でも行うことが可能である。
【0040】
核水素化反応の操作方法としては、例えば、
(i)所定の有機溶媒、有機金属錯体及び芳香族系ポリマーを一括して反応缶に仕込み、水素雰囲気下、所定の反応温度と水素分圧にて、0.1〜24時間攪拌して、芳香族系ポリマーの芳香環を核水素化する方法、
(ii)前記(i)において、多孔質体(特に活性炭)の共存下で核水素化する方法、
(iii)予め所定の有機溶媒に有機金属錯体を溶解させ、水素雰囲気下、攪拌して金属微粒子触媒を調製した後、その触媒と芳香族系ポリマーとを所定の反応温度と水素分圧にて、0.1〜24時間攪拌して、芳香族系ポリマーの芳香環を核水素化する方法、
(iv)前記(iii)の金属微粒子触媒の調製工程において、活性炭を共存下で金属微粒子触媒を調製した後、核水素化する方法、
(v)所定の有機溶媒、炭素ナノ繊維担持金属微粒子触媒等の担持型金属微粒子触媒、及び芳香族系ポリマーを一括して反応缶に仕込み、所定の反応温度と水素分圧にて、0.1〜24時間攪拌して、芳香族系ポリマーの芳香環を核水素化する方法、などが挙げられる。
なお、上記攪拌の方法は、攪拌律速とならないように水素と反応溶液が十分に混合できれば、特にその方法に制限はなく、従来から水素化反応に使用されている攪拌方法(反応装置)が使用できる。
【0041】
前記(i)〜(iv)の方法は、金属微粒子を“in situ”で生成させて核水素化する方法であり、前記(v)の方法は、担体に担持した金属微粒子からなる金属微粒子触媒を用いて核水素化する方法である。前記(i)〜(iv)の方法は、有機金属錯体の入手の容易さ、金属微粒子の調製の簡便さ及び核水素化反応の転化率に優れる点から、工業的に有利である。また、前記(ii)及び(iv)の方法は、前記(i)及び(iii)の方法よりも核水素化反応の転化率が向上する点で好ましく、さらに(ii)の方法は操作の簡便さの点からもっとも好ましい。
【0042】
前記反応温度としては、芳香族ポリマーの種類及び金属微粒子触媒の種類にもよるが、好ましくは30〜200℃、より好ましくは50〜170℃、特に80〜150℃が推奨される。
前記反応圧力(水素分圧)は、芳香族ポリマーの種類及び金属微粒子触媒の種類にもよるが、好ましくは0.1〜20MPa、より好ましくは0.5〜10MPa、特に1〜6MPaが推奨される。
【0043】
上記有機溶媒(反応溶媒)は、芳香族系ポリマーを溶解することができれば特に限定はないが、可能であれば水素化反応の影響を受けない或いは受け難い有機溶媒が好ましい。具体的には、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、γ−ブチロラクトン等の環状エステルなどが例示される。これらの有機溶媒は、1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0044】
有機溶媒(反応溶媒)の使用量は、芳香族系ポリマーの種類にもよるが、芳香族系ポリマー(基質)1重量部に対して、好ましくは2〜100重量部、より好ましくは4〜20重量部である。換言すると、該反応の基質濃度は、好ましくは約1〜33重量%、より好ましくは約5〜20重量%である。
【0045】
[後処理工程]
目的の脂環族系ポリマーは、核水素化反応後に一般的に溶液法で製造されるポリマーに適用される後処理工程を経て得ることができる。後処理工程としては、次の工程が例示される。
【0046】
(i)濾別工程;多孔質体の共存下で水素化反応する場合、反応溶液を吸引濾過、プレス濾過等の方法により、目的の脂環族系ポリマーと触媒残渣及び多孔質体とを分離することができる。濾別温度としては、基質濃度、有機溶媒の種類、溶液粘度にもよるが、約100℃以下が推奨される。金属含有量を高度に低減させたい場合は、化学処理や吸着処理などを行うことが推奨される。
他方、多孔質体を供せずに核水素化反応する場合には、反応溶液に吸着剤を添加して攪拌・吸着させた後に目的の脂環族系ポリマーと触媒残渣とを分別したり、吸着剤を充填したカラムに反応溶液を通液したりして吸着処理して目的の脂環族系ポリマーと触媒残渣とを分別したりすることができる。
【0047】
(ii)ポリマー分離工程(精製工程);目的の脂環族系ポリマーは、前記(i)で得られたポリマー溶液を再沈殿法、ドライスプレー法、溶媒留去法等の方法により、有機溶媒と分離して得ることができる。
前記ポリマー溶液をワニスとして使用する場合、ポリマー分離工程を経ずに製品化することもできる。例えば、塗膜、シート、フィルム等の用途ではワニス形態で製品化する方が、取扱い性の容易さ・生産コストの面から有用である。
ワニスの溶液粘度としては、通常0.5〜20Pa・s(測定条件;樹脂濃度20重量%,25℃)であることが推奨される。
【0048】
(iii)乾燥工程;前記で分離されたポリマーは、実質的に有機溶媒を完全に除去するために、乾燥工程に供する。乾燥方法としては、一般にポリマーの乾燥に使用される乾燥方法を用いることができる。乾燥機としては、例えば、減圧加熱乾燥機、常圧赤外線乾燥機、常圧温風乾燥機などが用いられる。
【0049】
(iv)有機溶媒(反応溶媒)の回収工程;有機溶剤は、通常、上記分離工程及び乾燥工程で回収される。回収された有機溶媒は、そのまま次製造に供することもできるが、微量の不純物や再沈殿用溶剤を含有するなどに起因して当該水素化反応を阻害する虞が場合には、常圧若しくは減圧蒸留等により精製して次製造に供することが好ましい。
【実施例】
【0050】
以下に、本発明の特徴をさらに具体的に説明するため、実施例を示すが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。尚、各実施例及び比較例における分析・評価は以下の方法で行った。
【0051】
[ポリマーの分析]
(i)転化率
H−NMRスペクトル法及び紫外分光分析法を用いて、芳香環の含有量の検量線を作成し、その検量線から核水素化反応の転化率(%)を求めた。
【0052】
(ii)ポリマーの分解の確認
下記のGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)分析時に、原料ポリマーのGPC分析データと比較して、その分析データの低分子側にショルダーないしピークの有無を確認した。
【0053】
(iii)分子量分布測定
ポリマーの分子量分布は、次の分析条件にて測定した。なお、分子量分布はポリスチレン換算で表記した。
分析機器;日本分光社製 PU−2080
検出器;UV/Vis検出器(UV−2075)及びRI検出器(RI−2031)
カラム;Shodex GPC-KF-804LとGPC-KF-805Lの直列結合
標準物質(ポリスチレン);Shodex Standard SM−105
【0054】
(実施例1)
100mLオートクレーブ用ガラス内管に、芳香族系ポリマーとしてポリスチレン100mg(和光純薬社製:重合度約2,000、数平均分子量80,000、分散度2.20)、有機金属錯体としてPd(dba)・CHCl 9mg、及び有機溶媒としてテトラヒドロフラン1mLを入れた。次に、オートクレーブに該内管を設置し、水素置換した後、初期の水素圧力4MPa(ゲージ圧)で充填した。オートクレーブを140℃の油浴に浸け(反応時の水素圧力は4.9MPaであった。)、4時間加熱撹拌した。反応容器を室温まで冷却した後、オートクレーブのコックを徐々に開放して常圧に戻して、本発明に係る脂環族系ポリマーの溶液を得た。得られたポリマーを分析し、その分析結果を表1に示した。また、得られた脂環族系ポリマーの数平均分子量は77,000、分散度は2.21であり、核水素化反応前と比較して変化は観測されなかった。
【0055】
(実施例2)
さらに活性炭50mg(商品名「活性炭素(粉末)」、関東化学社製、平均粒子径;約20μm)をオートクレーブ用ガラス内管に加えて核水素化反応した他は実施例1と同様に行って、本発明に係る脂環族系ポリマーの溶液を得た。実施例1と同様に分析し、その分析結果を表1に示した。
【0056】
(実施例3)
芳香族系ポリマーをポリスチレン100mg(和光純薬社製:重合度約2,000、数平均分子量62,000、分散度2.40)に代え、かつ有機金属錯体をPt(dba)10mgに代えて用いた他は実施例1と同様に行って、本発明に係る脂環族系ポリマーの溶液を得た。実施例1と同様に分析し、その分析結果を表1に示した。また、得られた脂環族系ポリマーの数平均分子量は67,000、分散度は2.23であり、核水素化反応前と比較して変化は観測されなかった。
【0057】
(実施例4及び実施例5)
表1に記載の反応温度及び初期水素圧に代えた他は実施例3と同様に行って、本発明の脂環族系ポリマーの溶液を得た。実施例1と同様に分析し、その分析結果を表1に示した。
【0058】
(実施例6)
さらに活性炭51mg(商品名「活性炭素(粉末)」、関東化学社製、平均粒子径;約20μm)をオートクレーブ用ガラス内管に加えて核水素化反応した他は実施例4と同様に行って、本発明に係る脂環族系ポリマーの溶液を得た。実施例1と同様に分析し、その分析結果を表1に示した。
【0059】
(実施例7)
さらに活性炭51mg(商品名「活性炭素(粉末)」、関東化学社製、平均粒子径;約20μm)をオートクレーブ用ガラス内管に加えて核水素化反応した他は実施例5と同様に行って、本発明に係る脂環族系ポリマーの溶液を得た。実施例1と同様に分析し、その分析結果を表1に示した。このときのポリマー中のPt含有量をICP−MSで測定したところ、3ppmであった。
【0060】
(実施例8)
有機金属錯体Pt(dba)10mgを炭素ナノ繊維担持ルテニウム触媒20mgに代えて用いた他は実施例3と同様に行って、本発明に係る脂環族系ポリマーの溶液を得た。実施例1と同様に分析し、その分析結果を表1に示した。該ルテニウム触媒は、上記特許文献2に記載の実施例に従って調製した。なお、該ルテニウム触媒は、触媒の欄に記載した。
【0061】
(比較例1〜4)
本発明に係る金属微粒子触媒を、表2に記載した5%活性炭担持ルテニウム触媒(N.E.CHEMCAT社製)10mg(比較例1)、5%活性炭担持ロジウム触媒(和光純薬社製)10mg(比較例2)、5%活性炭担持パラジウム触媒(和光純薬社製)40mg(比較例3)、5%活性炭担持白金触媒(和光純薬社製)20mg(比較例4)に代えてそれぞれ用いた他は実施例3と同様に行って、脂環族系ポリマーの溶液を得た。実施例1と同様に分析し、その分析結果を表2に示した。
GPC分析から低分子量側にピークが検出された。ポリマーの一部が分解しているものと推定された。
【0062】
(比較例5)
本発明に係る金属微粒子触媒を、表2に記載した5%活性炭担持白金触媒(和光純薬社製)60mgに代えて用い、反応温度100℃及び初期水素圧4MPaとした他は実施例3と同様に行って、脂環族系ポリマーの溶液を得た。実施例1と同様に分析し、その分析結果を表2に示した。
GPC分析から低分子量側にピークが検出された。ポリマーの一部が分解しているものと推定された。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、工業的に有利な製造条件下で、芳香族系ポリマーから脂環族系ポリマーを高転化率・高選択率で製造することができる。該脂環族系ポリマーは、透明性、低分散性、耐熱性、耐薬品性、低吸湿特性、精密成形性、防湿性などの特性を有することから、オプトエレクトロニクス材料、携帯電話、ノートパソコン等の液晶表示装置(LCD)用導光板材料、自動車用部品等の工業的に有用な材料として使用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒の存在下、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、ニッケル及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属からなる金属微粒子触媒を用いて、芳香族系ポリマーの芳香環を水素化することを特徴とする脂環族系ポリマーの製造方法。
【請求項2】
金属微粒子触媒が、有機溶媒に溶解した有機金属錯体を水素雰囲気下で攪拌することにより得られる触媒である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
さらに多孔質体の共存下で芳香族系ポリマーの芳香環を水素化する請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
有機金属錯体が、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、ニッケル及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属と、該金属と配位結合若しくは共有結合して炭素−金属結合を形成する有機配位子、ハロゲン及び有機基からなる群より選ばれる少なくとも一種とからなる錯体である請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
上記有機配位子、ハロゲン及び有機基からなる群が、アルケン誘導体、アルキン誘導体、アリール誘導体、ケトン誘導体、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基からなる群である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
有機金属錯体が、Ru(cod)(cot)、Ru(C)(1,3−C)、Ru(C)(nbd)、Co(C13)(cod)、Ni(cod)、Ni(C、Pd(C、Pd(dba)・CHCl、Pd(dba)、Pt(C、Pt(dba)、Pt(cod)、PtMe(cod)、[(p−CHCH(CH)RuCl、[RhCl(C、[RhCl(C14及び[RhCl(cod)]
[但し、「cod」は1,5−シクロオクタジエン、「cot」は1,3,5−シクロオクタトリエン、「nbd」は2,5−ノルボルナジエン、「dba」はジベンジリデンアセトン、「Me」はメチル基を表す。]
からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項5に記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−13235(P2009−13235A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174580(P2007−174580)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000191250)新日本理化株式会社 (90)
【Fターム(参考)】