説明

脂肪代謝抑制剤

【課題】安全性が高く、かつ、優れた脂肪代謝抑制作用を有する脂肪代謝抑制剤の提供。
【解決手段】セサミン類と、ビタミンEとを含有脂肪代謝抑制剤。セサミン類と、コエンザイムQ10とを含有する脂肪代謝抑制剤。セサミン類と、ビタミンEと、コエンザイムQ10とを含有する脂肪代謝抑制剤。該脂肪代謝抑制剤は、セサミン類単独使用時に比べ、血中の中性脂肪値を正常に維持する作用に優れ、肥満、脂肪肝、動脈硬化等の予防および治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪代謝抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
中性脂肪は、リポたんぱくの一種カイロミクロンとして、また、肝臓で合成されるリポたんぱくの一種(VLDL)として血液中に運ばれ、脂肪酸とグリセリンに分解される。余剰の脂肪酸は、細胞に蓄えられる。 中性脂肪は、健康な成人の場合、空腹時、血液中に50〜150 mg/dL存在し、食後3−5時間後に最高値となるが、中性脂肪がこの正常値を超えると、脂肪が皮膚の下や内臓の周りにたまり肥満となったり、肝臓にたまり脂肪肝となる。VLDLは、動脈硬化を起こす要因である。
【0003】
一方、セサミンはゴマに含まれる主要なリグナン化合物の一種であり、ゴマ中には0.5−1%程度含まれている。セサミンには多くの生理活性があることが知られ、例えば、抗酸化作用、抗高血圧作用、抗炎症作用等が公知である。
また、セサミンには体脂肪低減作用があることも知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特許第3205315号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、セサミンを含有するとともに、安全性が高く、かつ、優れた脂肪代謝抑制作用を有する脂肪代謝抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、セサミン類に、ビタミンEおよび/またはコエンザイムQ10を加えた組成物が、セサミン類のみを用いる場合よりも、顕著に優れた脂肪代謝抑制作用を提供することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
請求項1に記載の発明は、セサミン類と、ビタミンEとを含有することを特徴とする脂肪代謝抑制剤である。
請求項2に記載の発明は、セサミン類と、コエンザイムQ10とを含有することを特徴とする脂肪代謝抑制剤である。
請求項3に記載の発明は、セサミン類と、ビタミンEと、コエンザイムQ10とを含有することを特徴とする脂肪代謝抑制剤である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、セサミン類に、ビタミンEおよび/またはコエンザイムQ10を配合したので、セサミン類がそもそも有する脂肪代謝抑制作用を飛躍的に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(セサミン類)
本発明に用いることができるセサミン類としては、セサミン及びその類縁体を含むものであり、セサミン類縁体としては、エピセサミンの他、例えば特開平4−9331号公報に記載されたジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体がある。セサミン類の具体例としては、セサミン、セサミノール、エピセサミノール、セサモリン等を例示できる。なかでも、セサミン及びエピセサミンが好ましい。
【0009】
なお、セサミン類の代謝体も、本発明の効果を示す限り、本発明のセサミン類に含まれるセサミン類縁体であり、本発明に使用することができる。
本発明に用いるセサミン類は、その形態や製造方法等によって、何ら制限されるものではない。例えば、セサミン類としてセサミンを選択した場合には、通常、ごま油から公知の方法(例えば、特開平4−9331号公報に記載された方法)によって抽出したセサミン(セサミン抽出物または精製物という)を用いることができる。
【0010】
(コエンザイムQ10)
コエンザイムQ10は、別名、補酵素Q10、ビタミンQ、ユビキノン及びユビデカレノンとして知られ、商業的に入手可能な化合物である。なお、コエンザイムQ10は、還元型のものが脂肪代謝抑制作用に優れるために好ましい。還元型のコエンザイムQ10を得る方法としては特に限定されず、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法によりコエンザイムQ10を得た後、クロマトグラフィーにより流出液中の還元型コエンザイムQ10区分を濃縮する方法などを採用することが出来る。この場合には、必要に応じて上記コエンザイムQ10に対し、水素化ほう素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム(ハイドロサルファイトナトリウム)等の一般的な還元剤を添加し、常法により上記コエンザイムQ10中に含まれる酸化型コエンザイムQ10を還元して還元型コエンザイムQ10とした後にクロマトグラフィーによる濃縮を行っても良い。また、既存の高純度コエンザイムQ10に上記還元剤を作用させる方法によっても得ることが出来る。
【0011】
(ビタミンE)
本発明でいうビタミンEとは、誘導体類も含むものであり、その例としては、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール等が挙げられる。
【0012】
本発明の脂肪代謝抑制剤において、セサミン類を1としたとき(質量基準)、ビタミンEを0.1〜10、コエンザイムQ10を0.1〜10の割合で配合するのが好ましい。
【0013】
なお、セサミン類の1日あたりの摂取量は、通常1〜60mg、好ましくは5〜60mg、コエンザイムQ10の1日あたりの摂取量は、通常1〜300mgの範囲、好ましくは10〜100mg、ビタミンEの1日あたりの摂取量は、通常10mg〜800mgであるので、本発明の脂肪代謝抑制剤のヒト摂取量は、この範囲内におさまるようにするのが望ましい。
【0014】
また本発明の脂肪代謝抑制剤には、その効果を損なわない限り、任意の所望成分を配合することができる。例えば、ビタミンC等のビタミン類やソフトカプセルを調製する時に通常配合される乳化剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤等を適宜配合することができる。
【0015】
本発明の脂肪代謝抑制剤は、その形態を特に制限するものではないが、公知の方法によりマイクロカプセル、ソフトカプセル又はハードカプセルに封入してカプセル化することが好ましい。
【実施例】
【0016】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。なお、実施例1〜3で使用したコエンザイムQ10は、日清ファルマ株式会社製のコエンザイムQ10であり、ビタミンEは、α−トコフェロールである。
【0017】
実施例1
セサミン類としては、セサミン(竹本油脂製、セサミン:エピセサミン=56:44)を用いた。
セサミンおよびビタミンEをオリーブ油に溶解させ、本実施例の試験試料とした。
【0018】
20時間絶食した7週齢の雄性ddY系マウス(一群9匹)から眼窩採血を行い、10mL/kgのサラダ油を経口投与した後、直ちに10mL/kgの水、もしくは前記セサミンおよびビタミンEを含むオリーブ油を経口投与した。セサミンおよびビタミンEの投与量はそれぞれ5mg/kgである。60分、120分、180分後に再度眼窩採血を行い、血漿を分離して中性脂肪濃度を測定した。セサミンおよびビタミンEの投与により、サラダ油負荷後の血漿中性脂肪値上昇が顕著に抑制され、セサミンおよびビタミンEの混合物に中性脂肪分吸収抑制作用が認められた(表1)。
【0019】
【表1】

【0020】
比較例1
実施例1において、ビタミンEを使用しないこと以外は実施例1を繰り返した。結果を表2に示す。
【0021】
【表2】

【0022】
実施例2
実施例1において、ビタミンEの替わりにコエンザイムQ10を使用したこと以外は実施例1を繰り返した。コエンザイムQ10の投与量も実施例1と同じである(5mg/kg)。結果を表3に示す。
【0023】
【表3】

【0024】
実施例3
実施例1において、セサミンおよびビタミンEにさらに加えてコエンザイムQ10を使用したこと以外は実施例1を繰り返した。コエンザイムQ10の投与量も実施例1と同じである(5mg/kg)。結果を表4に示す。
【0025】
【表4】

【0026】
実施例4
次に、臨床試験により、セサミンおよびビタミンEの血清中性脂肪の代謝制御作用を検討した。
【0027】
血清総中性脂肪が150 mg/dL以下である健康な試験対象者12名(20〜65歳の男)を2群に分け、第1群には試験食である錠剤10個(対照群:錠剤10個あたりセサミンを50mg)を、第2群には試験食である錠剤10個(錠剤10個あたりセサミンおよびビタミンEをそれぞれ50mg)を市販のコーンクリームポタージュスープ(「スジャータたっぷりコーンクリームポタージュ生」(商品名、名古屋製酪(株)製、)200gに雪印無塩バター(雪印乳業(株)製)17gと雪印ラード(雪印乳業(株)製)14gを添加し、加温溶解した)とともに摂取させた。試験対象者の血清総中性脂肪値(TG)を測定した。その結果、3時間後の第2群の血清総中性脂肪値(TG)は、第1群の約60%にまで低下した。また、各種血液検査から異常は認められなかった。
【0028】
実施例5
実施例4において、第2群における試験食である錠剤10個を、錠剤10個あたりセサミンおよびコエンザイムQ10をそれぞれ50mg含むものに変更したこと以外は、実施例4を繰り返した。実施例4とほぼ同様の結果を得た。
【0029】
実施例6
実施例4において、第2群における試験食である錠剤10個を、錠剤10個あたりセサミン、ビタミンEおよびコエンザイムQ10をそれぞれ50mg含むものに変更したこと以外は、実施例4を繰り返した。その結果、3時間後の第2群の血清総中性脂肪値(TG)は、第1群の約50%にまで低下した。また、各種血液検査から異常は認められなかった。
【0030】
実施例7
セサミン 0.25g
酢酸トコフェロール 0.25g
コエンザイムQ10 0.1g
無水ケイ酸 20.5g
トウモロコシデンプン 79g
を均一に混合した。この化合物に10%ハイドロキシプロピルセルロース・エタノール溶液100mlを加え、常法通りねつ和し、押し出し、乾燥して顆粒剤を得た。
【0031】
実施例8
セサミン 3.5g
酢酸トコフェロール 0.5g
コエンザイムQ10 0.5g
無水ケイ酸 20g
微結晶セルロース 10g
ステアリン酸マグネシウム 3g
乳糖 60g
を混合し、単発式打錠機にて打錠して経7mm、重量100mgの錠剤を製造した。
【0032】
実施例9
ゼラチン 70.0%
グリセリン 22.9%
パラオキシ安息香酸メチル 0.15%
パラオキシ安息香酸プロピル 0.51%
水 適量
計 100%
上記成分からなるソフトカプセル剤皮の中に、以下に示す組成物を常法により充填し、1粒200mgのソフトカプセルを得た。
セサミン/エピセサミン(1:1)混合物 10.8%
α−トコフェロール 20%
コエンザイムQ10 5%
小麦ビーズワックス 30%
パーム油 10%
小麦胚芽油 適宜
計 100%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セサミン類と、ビタミンEとを含有することを特徴とする脂肪代謝抑制剤。
【請求項2】
セサミン類と、コエンザイムQ10とを含有することを特徴とする脂肪代謝抑制剤。
【請求項3】
セサミン類と、ビタミンEと、コエンザイムQ10とを含有することを特徴とする脂肪代謝抑制剤。

【公開番号】特開2009−96757(P2009−96757A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270148(P2007−270148)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(707000691)辻堂化学株式会社 (104)
【Fターム(参考)】