説明

脂肪低下のためのペオニフロリン製剤およびその使用

ヒトにおける標的領域での脂肪を低下させるために有用な方法および製剤が開示される。前記製剤は、活性成分としてペオニフロリンを含む。前記方法は、脂肪低下が望まれる身体の領域へのペオニフロリン製剤の適用を伴ってよい。前記方法および製剤は、胴体中央部(「腹部贅肉」)、顎部、腰部、腕部、大腿部、臀部の領域等、身体の各種解剖学的部位での標的とされた脂肪沈着物を低下させるために有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
脂肪の減少を促進する補助剤、医薬および他の製品は、多くの需要があり続けている。大腿部、胃部および胴体中央部(「腹部贅肉」)を含む標的領域内の脂肪を低下させるために適切な製品は特に興味深い。しかし、既存の脂肪減少製品は、この結果を達成することができず、所望の結果を達成するために日常的に奮精力的な食事制限および運動を必要とする。ほとんどの脂肪減少製品は、特定の標的とされた領域内ではなく、身体全体の一般的な脂肪の減少だけを促進する。適度であっても標的外の特定の体重減少を達成するために、典型的にはかなり多くの時間および努力が必要とされる。
【背景技術】
【0002】
人口集団の内の絶えず増大する割合が、ますます過体重になり続けている。有効で且つ安全な市販の体重減少製品が存在しないため、体重および/または脂肪の管理のための代替的でより有効な方法に対する必要性がこれまでに増大してきた。好ましくは、これらの必要性を満たす改良された体重減少製品は、天然の脂肪減少プロセスを厳密に模倣し、典型的な「脂肪帯域」の傾向がある領域を標的とする。典型的には、かかる製品はまた、皮膚の下の貯蔵脂肪沈着物を減少させるために標的とされた身体領域への製品の投与を更に増強するための使用者に優しい送達デバイスも含む。
【0003】
これらの要因は、脂肪および/または体重の減少、特に標的とされた脂肪および/または体重の減少を容易にするための、安全で有効な、処方箋のいらない製剤に対する持続的で増大する医学的必要性を証明する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Remington: The Science and Practice of Pharmacy、ALFONSO R. GENNARO、20th Edition. Baltimore、MD: Lippincott Williams & Wilkins、2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、本技術分野におけるこれらのおよび他の必要性を満足させるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、活性成分として、芍薬(Paeonial Radix)(PR)中の天然の精製生物活性グルコシドであるペオニフロリン(PF)を含む製剤および/または組成物を投与することにより動物、特にヒトにおける脂肪の減少を増強する方法が提供される。PFは、芍薬(PR)(パエオニア・パル(Paeonia Pall)の根)から単離される天然の精製生物活性グルコシドを含むことが更に記載され得る。幾つかの態様において、前記組成物は、脂肪分解促進量のペオニフロリン(PF)を含むことが更に記載され得る。
【0007】
ペオニフロリン(PF)を含む活性成分の脂肪分解促進量は、アディポース(脂肪)含有領域の質量または体積が、その領域の中または上に適用される際に、少なくとも多少低下することを証明するペオニフロリン配合物/製剤の量であると記載され得る。例えば、アディポース含有領域は、アディポース(脂肪貯蔵物)が明らかな身体の領域、例えば、臀部、胃部、腰部、大腿部、顎部、胴体中央部、これらの領域に密に近接するあらゆる領域であると記載され得る。
【0008】
トリグリセリド:
一般的および全体的な意味において、本製剤/組成物の脂肪燃焼または脂肪分解促進活性は、脂肪細胞上に存在するβ-アドレナリン作動性受容体の発現を誘導するためのPFの特定の製剤および/または配合物の中に存在することが判明した活性により提供される。このことは、他の脂肪分解促進事象の中で、天然の脂肪減少の間に起きることが知られている生理学的および生化学的事象に非常に類似している脂肪貯蔵の低下をもたらす。脂肪分解と関連する生理学的事象の臨床的指標の内の1つは、トリグリセリドの検出可能な血漿中濃度の減少である。トリグリセリドの分解は、グリセロールおよび脂肪酸の分解産物をもたらす。したがって、患者における脂肪分解の臨床的指標は、トリグリセリドの低下および/またはより低い血漿中濃度であってよい。したがって、患者の血漿中のトリグリセリドは、脂肪分解の指標および/または監視事象として患者からの血漿試料において監視され得る。
【0009】
幾つかの実施形態において、PFの脂肪分解促進量は、同じ量のPFを有さない培地中で3T3脂肪細胞により放出されるグリセロールの量と比較して、脂肪分解増強量のPFの存在下で3T3-L1脂肪細胞の培養物中で放出されるグリセロールの量の増加をもたらすのに十分なPFの量であると記載され得る。例えば、PFの脂肪分解増強量は、PF製剤および/または組成物の約1umol/L〜約5umol/Lの量であってよい。
【0010】
臨床試験において、PFで患者を治療する際に血漿中トリグリセリドの減少が検出可能であり、脂肪分解の証明であることが本明細書において示される。特定の一実施形態において、PFの総投与量約0.5mgで、各注射部位に約0.5mLの量の注射用グレードの水/ホスファチジルコリン中の約0.025mgのPFを投与する、患者の脂肪貯蔵の領域内に、複数回の比較的わずかなPFの注射による患者の治療の際、トリグリセリドの血漿中濃度の低下、従って脂肪分解が起きる。
【0011】
cAMP濃度:
本組成物/製剤により達成される天然の脂肪分解はまた、治療の結果として起きるcAMP濃度の増加をも特徴とし得る。したがって、幾つかの実施形態において、PFの脂肪分解促進量は、同じ量のPFを有さない3T3脂肪細胞の培養物中のcAMP濃度と比較して、3T3脂肪細胞の培養物中のcAMPの濃度を増加させるのに十分なPFの量であると記載され得る。例えば、cAMP濃度を増加させるPFの量は、約11モル/リットルである。
【0012】
ホルモン感受性リパーゼ(HSL):
本組成物/製剤により達成される天然の脂肪分解はまた、PFによる治療の結果として起きるホルモン感受性リパーゼ(HSL)濃度の増加をも特徴とし得る。したがって、幾つかの実施形態において、PFの脂肪分解促進量は、同じ量のPFを有さない3T3脂肪細胞の培養物中のホルモン感受性リパーゼ(HSL)濃度と比較して、3T3脂肪細胞の培養物中のホルモン感受性リパーゼ(HSL)の検出可能量を増加させるPFの量であると記載され得る。幾つかの実施形態において、これは、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)をコードする遺伝子の発現を増加させるPFの量であると記載され得る。例えば、PFを有さない3T3脂肪細胞の培養物中で検出可能なホルモン感受性リパーゼの量と比較して3T3脂肪細胞の培養物中のホルモン感受性リパーゼの検出可能量を増加させるPFの量は、約1mmol/リットルである。
【0013】
アドレナリン作動性受容体(AR)発現(脂質生成より大きな脂質分解)の脂肪分解促進比、β-アドレナリン作動性受容体/a2b-アドレナリン作動性受容体発現比。
【0014】
本組成物/製剤により達成される天然の脂肪分解はまた、治療の結果として起きるβ-アドレナリン作動性受容体の発現量の増加をも特徴とし得る。したがって、幾つかの実施形態において、PFの脂肪分解促進量は、同じ量のPFを有さないまたは欠く3T3脂肪細胞の培養物中における脂質生成を増強するアドレナリン作動性受容体の発現に対して脂質分解増強比のアドレナリン作動性受容体の発現をもたらすのに十分なPFの量であると記載され得る。例えば、脂質分解を増強するアドレナリン作動性受容体としては、Adrb1、Adrb2、Adrb3が挙げられるが、一方で脂質生成を増強するアドレナリン作動性受容体としては、a2B-ARが挙げられる。
【0015】
一般に、PFは、脂質分解を増強する比のアドレナリン作動性受容体発現を誘発する量で提供される。例えば、この量は、a2b-アドレナリン作動性受容体の発現に対するβ-アドレナリン作動性受容体の発現の比の増加を含むであろう。PFのこの量は、a2b-アドレナリン作動性受容体の発現量と比べて、脂質分解を増強するアドレナリン作動性受容体の3倍乃至約7または8倍の発現の増加をもたらす量であると更に記載され得る。
【0016】
アディポネクチン受容体(Adipor1):
本組成物/製剤により達成される天然の脂肪分解はまた、治療の結果として起きるアディポネクチン受容体(Adipor1)の発現量の減少をも特徴とし得る。したがって、幾つかの実施形態において、PFの脂肪分解促進量は、同じ量のPFを有さない3T3脂肪細胞の培養物中におけるAdipor1発現の量に対して3T3脂肪細胞の培養物中のAdipor1の発現の減少または低下をもたらすのに十分なPFの量であると記載され得る。
【0017】
肥満関連遺伝子パネル:
カルボキシペプチダーゼE遺伝子(Cpe遺伝子)、ペルオキシゾーム増殖因子活性化受容体ガンマ遺伝子(Pparg、脂肪細胞分化の調節因子)、アドレナリン作動性受容体遺伝子(例えば、Adrb2、Adrb3)およびアディポネクチン受容体1遺伝子(Adipor1)は、本明細書に記載される通りの肥満関連遺伝子パネルを含む肥満関連遺伝子の内の一部の中のものである。
【0018】
これらの実施形態において、PFの脂肪分解促進量は、同じ量のPFの非存在下で肥満関連遺伝子の同じパネルの発現量に対して肥満関連遺伝子のパネルの発現量を増加させるPFの量であると記載され得る。幾つかの実施形態において、肥満関連遺伝子パネルの発現量は、この量のPFを有さない3T3脂肪細胞の培養物中のこの肥満関連遺伝子パネルの発現量と比較して約1.5倍増加する。
【0019】
例えば、本発明の方法および組成物において記載される通りの肥満関連遺伝子である遺伝子の内の一種は、カルボキシペプチダーゼE(Cpe)をコードする遺伝子である。特に、PFの脂肪分解促進量は、同じ量のPFを有さない3T3脂肪細胞の培養物中のCpe遺伝子の発現量と比較して、3T3脂肪細胞によりCpe遺伝子の発現量を増加させるPFの量であると記載され得る。例えば、3T3脂肪細胞によりCpe遺伝子の発現量を増加させるPFの量は、この量のPFを有さない3T3脂肪細胞の培養物中でCpe遺伝子の発現量と比較してCpe遺伝子の発現量を2〜3倍増加させる量である。幾つかの実施形態において、PFのこの量は、約1umol/リットルである。
【0020】
送達/適用配合物の種類:
前記方法の各種態様において、活性成分PFを含む製剤は、皮膚におよび脂肪細胞内に、例えば脂肪細胞の皮下(即ち皮膚直下)の沈着物に浸透するために有効な濃度でPFを含んでよい。したがって、PFは、標的脂肪領域に有効脂肪細胞浸透濃度のPFを提供するためのあらゆる種類の適用様式で提供される。活性成分(PF)のこの脂肪細胞浸透濃度は、PFの脂肪分解促進量であると更に記載される。製剤および/または組成物の成分としてのPFの脂肪分解促進量は、少なくとも部分的に、標的脂肪沈着物領域に提供される通りの特定の配合物の形態(即ち、局所用、注射用等)により決定される。
【0021】
製剤および/または組成物が局所的に、例えばクリーム剤および/またはローション剤において投与される場合、PFの脂肪分解促進量は、1mLのクリーム剤および/またはローション剤当たり約0.2mg乃至約0.3mgを含む濃度である。クリーム剤および/またはローション剤を適用した後、例えば、次いで弱い電流を領域に印加することができる。
【0022】
それらの実施形態において、製剤がクリーム剤および/またはローション剤の形態である場合、製剤は、例えば浸透剤を更に含むことができる。事実上、種々の浸透剤の内のいずれかが、本発明の局所製剤と共に使用され得る。例えば、かかる浸透剤は、アゾンを含む浸透剤を含むことができる。浸透剤は、活性成分PFが、治療される患者の脂肪領域の脂肪細胞を超えてその中に入る能力を促進する成分であると記載される。
【0023】
あるいは、クリーム剤および/またはローション剤としての配合物は、幾つかの実施形態において、アルブミンナノ粒子を含んでよい。この形態において、前記製剤を所望の領域に適用した後、その領域を超音波にさらす。このようにして、組成物クリーム剤および/またはローション剤中のアルブミンナノ粒子は、超音波の作用により皮膚を通って脂肪細胞に運ばれる。
【0024】
製剤が注射に適切な製剤であるそれらの実施形態において、製剤は、生理学的に相溶性のある担体溶液、例えば生理食塩水および/または注射用グレードの水を含むことが記載され得る。他の実施形態において、注射用製剤は、ホスファチジルコリンあるいは他の同様のリン脂質またはリン脂質の組合せを更に含む。
【0025】
更に、例えば、製剤および/または組成物が注射用製剤として投与される場合、PFの脂肪分解促進量は、注射流体0.5mL当たり約0.02mgのPFを送達する量であると記載され得る。
【0026】
別の一態様において、脂肪領域を低下させるために、および/または脂肪分解を増加および/または増強させるために動物を治療する方法が提供される。前記方法の一実施形態の一部として、PFを含有する組成物および/または製剤の注射用溶液は、1つの注射部位、または治療される患者の標的領域上の注射部位の間で少なくとも約1cm程度の間隔を置いて配置される複数の部位で患者の標的領域に皮下および/または真皮下に送達される。製剤および/または配合物が注射される場合、前記方法は、1回以上の注射を受ける領域に麻酔をかけるための、注射前に約5分間、領域への局所麻酔剤、例えば麻酔ゲル剤(リグノカイン軟膏またはリドカインゲル)の適用を最初に提供することができる。最初に皮膚をアルコール綿棒で拭き、2分間程の後に、次いで被注射表面領域にゲル麻酔剤等の局所麻酔軟膏剤を塗り込む。次いで、5分後、PF注射用溶液を含有する10mL注射器の内容物を、治療される患者の脂肪領域上の約20の注射部位に注射し、0.5mLの注射用PF溶液が各注射部位で皮下注射される。
【0027】
配合物および/または製剤は、所望の結果を達成するために適切なこれらの治療形態のいずれか1つまたは組合せにおいて脂肪沈着物領域に提供され得ると更に考えられる。胃部領域や胴体中央部(「腹部贅肉」)等、大きい脂肪沈着物を有する領域において、PFの濃度を注射用溶液製剤において増加させる必要があり得る。例えば、注射用の水5mL当たり1mgのPFが調製されると考えられる。
【0028】
別の一態様において、製剤および/または組成物は、活性成分として、以下の式I:
【0029】
【化1】

【0030】
を有する成分PFを含む。
【0031】
式中、Rは単糖である。幾つかの実施形態において、単糖は、グルコース(Glc)、ガラクトース(Gal)または他の単糖である。特定の実施形態において、単糖はグルコース(Glc)である。幾つかの実施形態において、グルコースは、グルコースのD-グルコース立体異性体であると記載され得る。
【0032】
前記製剤および/または組成物は、送達性、配合物の安定性(貯蔵寿命)、粘稠度、皮膚表面上での分散性、香り、色等を改善するための製薬技術分野の当業者により認識される他の成分を更に含むこともできる。かかる調合技術および添加剤は、参考文献としてRemington: The Science and Practice of Pharmacy、ALFONSO R. GENNARO、20th Edition. Baltimore、MD: Lippincott Williams & Wilkins、2000に記載されている。この参考文献は、これらの教示が関係する限り、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
【0033】
PFは、商業的に精製された乾燥形態(粉末)で、商業的販売業者から購入された。
【0034】
他の態様において、標的とされるアディポース(即ち脂肪)貯蔵物および/またはアディポース組織沈着物の大きさおよび/または寸法を低下させる方法が提供される。幾つかの実施形態において、本方法は、患者の標的脂肪沈着物領域に脂肪分解増強量の活性成分(PF)を含む脂肪分解促進量の製剤および/または組成物を投与する段階を含む。製剤は、標的脂肪沈着物の所望の低下が認められるまで、1回または2回以上、例えば注射プロトコルの部分において投与され得る。
【0035】
注射プロトコルは、1セッション当たり10、20、30または31回以上の個々の注射を含んでよく、所望の結果が達成されるまで、かかる用法の1、2、3回以上のセッションを含んでよい。幾つかの実施形態において、1セッションの治療は、20回の注射を提供する。平均して、各々20回の注射の4回のセッション(20回の注射が1回のセッションを構成する)乃至20回の注射の5回のセッションの後、測定可能な脂肪寸法の顕著な低下を認めることができることが示される。幾つかの実施形態において、単回治療セッションの一部として患者の異なる20の注射部位の各々に約0.025mgのPFが約0.5mLの量の担体(例えば無菌水等)において提供される。
【0036】
概して、PF注射用製剤による注射系列の5回のセッションの後、約3cmの脂肪の減少が達成され得る。ヒトにおいて、PFの本製剤は、1〜1.5回のセッション当たり胃部および大腿部の領域における約1cmの脂肪の、および1回のセッション当たり上腕部領域における約1cmの脂肪の低下または融解をもたらす。前記方法はまた、血中総コレステロール濃度の低下をもたらす。特に、本明細書に記載されるヒトにおけるPF治療方法による治療の際、血清コレステロール、LDLコレステロールおよび血清トリグリセリドの有意な低下が認められた。
【0037】
提供される方法の一部として、治療される罹患動物は、歩行および/または運動するよう促され、および/または要求されよう。例えば、そのようなものとしては、7日間以上の期間、1日当たり25〜30分間の早足の歩行を挙げることができる。更に、罹患動物は、治療の減量効果を最大にするため、および分解した脂肪産物を身体から洗い流すことを容易にするため、歩行および/または運動療法と同じ期間、2リットル以上の水を更に飲むべきである。
【0038】
例えば、前記方法の一部として標的とされる患者の領域は、任意の所望の順序で同時または逐次的に大腿部、腰部、頤部、顎部、胃部、胴体中央部(「腹部贅肉」)またはこれらの領域の任意の組合せを含むことが想定される。
【0039】
更なる他の態様において、脂肪の減少を達成するための罹患動物の治療に適切なデバイスが提供される。例えば、かかるデバイスは、それに対して組織内への注射に適切な針を取り付けた注射器様デバイスを含んでよい(図11参照)。
【0040】
したがって、幾つかの実施形態におけるデバイスは、ある量のPFを含む溶液を保持することができる目盛り付きバレル注射器シリンダ等の注射器、および目盛り付き注射器シリンダの一端を収容するために適切な針という形態をとる。特定の実施形態において、針は、注射器シリンダに対して90°の角度で構成される。幾つかの実施形態において、目盛り付きバレルシリンダは、50mL以上の容積容量を有する。幾つかの実施形態において、23×11/4"0.65×32mm針が、本方法およびキットのPF注射用製剤を投与するための25mLの「スリップチップ」非ロック注射器と共に使用され得る。
【0041】
更なる別の一態様において、本発明は、本明細書に記載される通りの脂肪融解脂肪低下製剤を含むキットを提供するものである。幾つかの実施形態において、キットは、0.2mg/mLの濃度のPFおよびアゾンの1mLのアンプル1個または複数個と、患者の局所的な脂肪沈着物の脂肪細胞内への溶液におけるPFの侵入を刺激するために適切なデバイスとを含むことができる。例えば、かかるデバイスはアルファ波ヘルストロニック筋肉刺激装置である。この小さいデバイスは、筋収縮を生じさせる低密度電流を流すことによりスポーツ傷害後に筋肉を刺激するために理学療法士により典型的に且つ日常的に使用される。約2.5アンペアの低電圧電流のため、アゾンが組織化脂質層を破壊した後、皮膚を通過してアディポース組織内にPFを運ぶ電流が伝送される。
【発明の効果】
【0042】
例えば、限定されないが、以下のものは、本製剤および方法の多くの効果および特性の内の一部の中のものである。
1. 直接脂肪細胞に作用して、生理学的な脂肪の減少を反映する方法で脂肪を溶解する。
2. 細胞内cAMP経路、PKCおよびHSLを誘発して脂肪を天然に溶解する原因となる標的領域内の脂肪細胞上に存在する受容体を活性化させることによって脂肪を燃焼する。
3. 脂肪に燃焼する原因となる細胞受容体の数を増加させる。
4. 脂肪をその天然副産物に分解する。
5. 非侵襲性、無痛および領域特異的。
【0043】
脂肪の低下のための本配合物および方法と本技術分野において記載される他の方法との間に、多くの異なる点が存在する。例えば、以前の方法が、何らかのレベルの食欲抑制または腸管からの脂肪吸収の阻害の達成に部分的または全体的に依存するのに対して、本配合物および方法はそうではない。
【0044】
更に、脂肪減少のための本方法/配合物は特異的であり、メソセラピーよりも多くの点で優れている。メソセラピーは、局所的な医学的および美容的症状を治療するための化合物の混合物を含有する皮内注射または皮下注射の使用であり、何らかの特定の症状の治療を提供するものではない。それは、デオキシコール酸塩(胆汁酸塩)と混合され、アミノフィリンと更に混合され得るホスファチジルコリン(大豆から誘導される化合物、およびヒト/他の生物における細胞膜の成分)を含むメソセラピーにおいて使用される化合物を伴う薬物送達の方法(RotundaおよびKolodney 2006)を主に含む。メソセラピーによる治療後1および2週の時点で行われるパンチ生検を用いることにより、皮下脂肪の減少が報告された。皮下脂肪の減少は、炎症性壊死および再吸収を介して脂肪沈着物を乳化することにより達成されたと主張された(RoseおよびMorgan、2005)。対照的に、他の差異の中で、本方法は、生理学的二次メッセンジャー分子(サイクリックAMP)の増加を介して、脂肪の天然副産物、例えばグリセロールへの分解による等、生理学的な脂肪分解を模倣する方法での脂肪の減少を提供する。
【0045】
更なる特徴および効果は、本明細書において記載され、以下の発明を実施するための形態および図から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】PFが、曝露後7日目まで有意に3T3-L1脂肪細胞によりグリセロールの放出を増加させたことを示す。
【図2】3T3-L1脂肪細胞内におけるPFによるインキュベーション後のELISAにより試験された細胞内cAMPを示す。
【図3A】PFとのインキュベーション後の3T3-L1脂肪細胞内におけるHSLの発現を示す。
【図3B】PFとのインキュベーション後の3T3-L1脂肪細胞内におけるHSLの発現を示す。PFは、曝露の3日目から3T3-L1におけるHSLの発現を増加させることが示されるが、その曝露の後でサイクリックAMPが増加し、その曝露により脂肪代謝の副産物としてグリセロールの放出が生じる。
【図4】脂肪分解の経路を示す。
【図5】PFに曝露させた3T3-L1脂肪細胞内におけるARの発現を示す。
【図6A】β-ARsによる脂質分解刺激の機序を示す。基礎状態。
【図6B】β-ARsによる脂質分解刺激の機序を示す。活性化状態。
【図7】PFに曝露させた3T3-L1脂肪細胞内におけるCpeの発現を示す。
【図8】PFに曝露させた3T3-L1脂肪細胞内におけるAdipor1の発現を示す。
【図9】PFに曝露させた3T3-L1脂肪細胞内におけるPpargの発現を示す。
【図10】臨床効果: PFの比較を示す。8人の患者の血液中の血清コレステロール、LDL、コレステロール、血清トリグリセリドは、PF治療の後に低下した。
【図11】注射器の長軸に対して90°の角度の針を示す。
【図12】メソセラピー(M)およびPFとの3日間のインキュベーション後のグリセロール放出を示す。
【図13】メソセラピー(M)およびPFによる7日間のインキュベーション後のグリセロール放出を示す。PFは、刺激後7日目までに有意にグリセロールの放出を増加させた(p<0.01)。
【図14】72時間のメソセラピー(M)およびPFとのインキュベーション後のELISAにより測定された細胞内cAMP濃度を示す。PF群において、細胞内サイクリックAMPは、1日目の刺激においてPFにより有意に増加した(p<0.01)。M群において、cAMPの濃度は、対照群と比較して大きな差を示さなかった。
【図15】24時間のメソセラピー(M)およびPFとの脂肪細胞(fat cell)(脂肪細胞(adipocyte))のインキュベーションの後の細胞内cAMPを示すELISAの結果を示す。PF群において、細胞内サイクリックAMPは、1日目の刺激においてPFにより有意に増加した(p<0.01)。メソセラピー群(M)において、cAMPの濃度は、対照群と比較して大きな差を示さなかった。
【図16】メソセラピー(M)およびPFとのインキュベーション後の3T3-L1脂肪細胞内におけるHSLの発現を示す。PFは、刺激後3日目から3T3-L1脂肪細胞内におけるHSLの発現を増加させた。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、一般的且つ全体的な意味において、罹患動物におけるインビボでの脂質分解ならびに脂肪の低下および/または減少を増強するための種々の製剤および方法を提供するものである。製剤および/または組成物は、活性成分としてPFを含む。PFは、芍薬(PR)(パエオニア・パルの根)における天然の精製生物活性グルコシドである。PF(99%超に精製された天然植物抽出物)は、強力な天然有機脂質分解薬として本明細書において提供される。その作用様式は、幾つかの肥満関連遺伝子、例えばAdrb2、Adrb3、Cpe、Adipor1、Ppargの発現を著しく増強することによるものである。
【0048】
PFは、β-アドレナリン作動性受容体2および3の発現を増強する。β-アドレナリン作動性受容体2は、ヒト脂肪細胞内における主要な生物分解性受容体である。β-アドレナリン作動性受容体3は、自律神経系(ANS)活性による褐色アディポース組織内における熱産性および脂質分解の調節に重要である。その生物学的な細胞内経路は、β-アドレナリン作動性受容体の活性化がcAMP経路を経過し、次にホルモン感受性リパーゼ(HSL)の発現の量を著しく増強してトリグリセリドをグリセロールおよび脂肪酸に分解させることを示した。
【0049】
本組成物/方法によれば、PFは、脂肪をその天然副産物に燃焼する脂肪細胞の能力を増強することにより脂肪の減少を著しく増強する。PFは、脂肪細胞または少なくとも多少の脂肪細胞を含む組織との製剤の接触を達成する種々の方法のいずれかで投与され得る。例えば、限定されないが、組成物は、皮下注射により、またはクリーム剤および/またはローション剤として製剤を適用することにより、ヒト等の動物に提供され得る。クリーム剤および/またはローション剤として、PFは、皮膚を通して脂肪細胞に運ばれ得る。これは、例えば、理学療法士により使用されるものと同様の弱い電流を使用することにより、またはPFとアルブミンナノ粒子とを混合し、超音波を使用して皮膚を通して脂肪細胞にその混合物を運ぶことにより達成され得る。
【0050】
標的とする脂肪の減少に対するPFの有効性を試験するため、3T3-L1細胞系を使用した。3T3-L1細胞系は、脂肪の減少のための技術的に認められたモデルを提供する。脂肪の減少は、Swiss 3T3マウス細胞系におけるインビトロでの脂肪分解(脂肪の消化)の測定値を利用して同定される。標準的条件の下で増殖させた3T3-L1細胞は、線維芽細胞の表現型を有する。しかし、デキサメタゾン、イソブチルメチルキサンチン(IBMX)およびインスリンの組合せで治療する際、3T3-L1細胞は、丸い表現型をとり、脂質滴の形態で細胞内に脂質を蓄積する。
【0051】
以下で詳述されるように、PFは、脂肪をその天然副産物に分解させる原因となるβ-アドレナリン作動性受容体(β1、2および3亜型)の数を有意に増加させることが分かった。PFへの3T3-L1脂肪細胞の曝露は、1日目および3日目において細胞内サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)の発現の量の有意な増加を引き起こす(P<0.01)。この後、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)の発現の量が有意に増加する。HSLは、脂肪代謝において重大な役割を果たす多因子性組織リパーゼである。HSL発現のかかる有意な増加の後、インビトロでのPFへの曝露7日目においてグリセロール放出が有意に増加する。インビボにおいて、血漿トリグリセリドの低下した濃度は、患者における脂肪分解の臨床的指標を提供する。
【0052】
本製剤は、患者における臨床的有効性を有し、且つ胴体中央部領域(「腹部贅肉」)、胃部、顎部、腰部および大腿部内に貯蔵されるもの等の有効な部位特異的脂質分解(脂肪分解)を提供することが示される。PFによる治療の前後の血液分析および比較は、治療前の血糖値測定値およびLDL濃度と比較して、血糖値が治療の際に減少し、低密度リポタンパク質(LDL)濃度が低下に向かう傾向を示したことを明らかにした。
【0053】
したがって、本製剤、配合物、方法および技術は、とりわけ以下の効果、特徴および特性を提供する。
1. 直接の接触の際にアディポース組織内に皮下に貯蔵される脂肪を溶解する、精製された、天然で且つ有効な製品(PF)。
2. PFの作用の予測可能な様式。PFは、β-アドレナリン作動性受容体ならびに他の脂肪代謝遺伝子の発現を活性化する。
3. 脂肪層に皮膚を超えてPFを送達するために適切な担体において提供される脂肪低下製品。
4. 標的領域内の脂肪細胞におよび脂肪層内に、活性薬剤(PF)を有する製剤を有効に送達するために電流および荷電担体を用いる方法。
5. 超音波により皮膚を通って運ばれるアルブミンナノ粒子を使用することにより脂肪細胞にPFを送達する方法。
【0054】
製剤が注射に適切な製剤であるそれらの実施形態において、製剤は、生理学的に相溶性のある担体溶液、例えば生理食塩水および/または無菌水を含むと記載され得る。他の実施形態において、注射用製剤は、ホスファチジルコリンあるいは種々の同様のリン脂質およびリン脂質の組合せの内のいずれか他のものを更に含む。
【実施例1】
【0055】
PFは脂肪分解を促進する
本実施例は、脂肪分解または脂肪の分解を促進するための本配合物および/または製剤の有用性を示す。
【0056】
3T3-L1細胞系は、天然の脂肪の減少のための当業者による認められたモデルである。この細胞系は、Swiss 3T3マウス細胞系3T3-L1の亜株である。標準的条件の下で増殖させたこの細胞系は、線維芽細胞の表現型を有する。しかし、デキサメタゾン、イソブチルメチルキサンチン(ホスホジエステラーゼの非特異的阻害剤)(IBMX)およびインスリンの組合せで処理する際、3T3細胞は、丸い表現型をとり、脂肪滴の形態で細胞内に脂質を蓄積する。
【0057】
分化させた3T3-L1脂肪細胞を、試験群として1umol/LのPFを含有する培地、および対照としてPFを有さない培地の中で培養した。脂質分解活性の結果として、グリセロールがトリグリセリドの分解の結果として生成され、細胞外空間内に放出される。したがって、3T3-L1脂肪細胞細胞培地からのグリセロール含有率は、脂肪分解の指標を提供することができる。PFが、同じ量のPFの非存在下での3T3-L1脂肪細胞からのグリセロール放出と比較して曝露後7日目までに有意にグリセロールの放出を増加させた(p>0.01)(図1)ことが分かった。
【0058】
刺激を開始した後1週間以内にPFが脂肪分解を増加させたことが分かった。したがって、PF製剤は、トリグリセリドの分解につながる遺伝子発現の変化を引き起こすことにより間接的に脂肪分解を誘発することが示される。PFの作用機序を定義するために更なる試験を行った。
【実施例2】
【0059】
PFはcAMPを増加させた
本実施例は、とりわけ、サイクリックAMP濃度に対するPF作用による有効な脂肪減少を提供する本発明の能力を示す。3T3-L1脂肪細胞を、試験群として11mol/LのPFを含有する培地、および対照として培地のみの中で培養した。0.1N HCLを添加することにより細胞を溶解し、ELISAにより細胞内サイクリックAMPを測定した。細胞内サイクリックAMPは、曝露の1日目においてPFにより有意に増加し(P<0.001)、3日目も有意に増加する(P<0.01)ことが分かった(図2)。
【0060】
脂質分解につながる主要な経路は、cAMP依存性プロテインキナーゼA(PKA)の活性化を含み、これは次に他の基質、例えばHSLやペリリピンを活性化する。β-アドレナリン作動性受容体の作動薬は、F3-アドレナリン作動性受容体と結合し、これはG-タンパク質(Gs)を活性化する。Gsの活性化は、アデニル酸シクラーゼ(AC)を刺激してサイクリックAMPを産生させる。プロテインキナーゼA(PKA)は、cAMPにより活性化され、脂質滴表面タンパク質(ペリリピン(PL))をリン酸化する。ホルモン感受性リパーゼ(HSL)は、リン酸化されたPL上にドッキングして、トリグリセリドをグリセロールおよび遊離脂肪酸に分解する。グリセロールは、アクアポリンアディポース(AQPad)を介して細胞外空間内に放出される。グリセロールの放出は、PF刺激後7日目までに有意に増加し(P<0.001)、細胞内サイクリックAMPは、刺激の1日目においてPFにより有意に増加し(P<0.001)、3日目も有意に増加した(P<0.01)ことが分かった。サイクリックAMPおよびグリセロール放出の変化および時間の関係は、PFが、「二次メッセンジャー」(サイクリックAMP)の経路を介して脂肪分解機能を誘導したことを示す。
【実施例3】
【0061】
ホルモン感受性リパーゼ(HSL)
本実施例は、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)の検出可能濃度の増加によって示される通りのインビボでの脂肪分解の増加を示す。
【0062】
3T3-L1脂肪細胞を、試験群として1mol/LのPFを含有する培地、および対照群として培地のみの中で培養した。当業者に公知の従来方法を用いて、トータルRNAを抽出し、cDNAに逆転写した。
【0063】
マウスのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のために使用されたプライマー
【0064】
HSLプライマーを、公開された配列(NM_010719)(予想PCR断片:409bp):
【0065】
前方プライマー、5'-GCTGGTGCAGAGAGACAC-3';
【0066】
後方プライマー、5'-GAAAGCAGCGCGCACGCG-3'に基づいて選択した。
【0067】
半定量分析のために、増幅サイクルを、線形範囲内で選択した(HSL:58℃で変性を伴う24サイクル、GAPDH: 58℃で変性を伴う21サイクル)。PFは、曝露後3日目から3T3-L1細胞内におけるHSLの発現を増加させたことが分かった(図3)。
【0068】
ホルモン感受性リパーゼ(HSL)は、脂肪代謝のプロセスに重大な役割を果たす多機能性組織リパーゼである。酵素は、広い特異性を有し、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびモノアシルグリセロールならびにコレステロールエステルの加水分解を触媒する。HSLは、脂質分解における主要な律速段階を触媒すると考えられる。前記リパーゼは、細胞質から脂質滴までのその再分布にもつながるcAMP依存性リン酸化により急激に活性化される。脂肪細胞のHSLの調節は、カテコールアミン等の脂肪分解剤が遊離脂肪酸の放出を刺激し、従って循環濃度を制御する主要な手段である。この試験において、PFは曝露の3日目から3T3-L1におけるHSLの発現を増加させ、その後、サイクリックAMPが増加し、インビトロで脂肪代謝の副産物(図4)としてのグリセロールの放出を生じさせることが分かった。
【実施例4】
【0069】
PFによるナノ粒子配合物
本実施例は、例示目的のみでPFの皮膚製剤の内の一種を示すために提供される。特に、PFを有するナノ粒子配合物が示される。
【0070】
皮膚への局所適用のための固体脂質ナノ粒子(SLN)およびナノ構造脂質担体(NLC)を、ベヘン酸グリセリル(Compritol(登録商標)888 ATO)、パルミトステアリン酸グリセロール(Precirol(登録商標)ATO 5)、ロウ(パルミチン酸セチル)等の脂質から作製する。NLCについては、室温で、中鎖脂肪酸トリグリセリド(Miglylol(登録商標)812)等の液体脂質を添加する。あるいは、皮膚に適用される、頻繁に使用される半固体ビヒクルにおける透過増強剤に属するオレイン酸を、薬剤取り込みを更に増強するために添加してもよい(Lombard Borgia、Regehlyら2005)。ナノ粒子の平均粒径範囲は50〜1000nmであった。ナノ分散物は5〜40%の脂質を含有した。より高濃縮の製剤は、半固体の外観であり、そのままで美容的に許容し得る。脂質の様式および濃度に応じて、粒子の物理的安定化のために0.5〜5%の界面活性剤を添加してもよい。皮膚の使用のため、これらは、ポロキサマー188、ポリソルベート80、レシチン、チロキサポール(登録商標)、TegoCare(登録商標)450(ポリグリセリンメチルグルコースジステアレート)、Miranaol(登録商標)Ultra C32(ココアンホ酢酸ナトリウム)または蔗糖脂肪酸エステルである。
【0071】
皮膚適用を容易にするため、脂質含有量が低い(<10%)場合に得られる流体分散物を、SLN粒子の溶解や凝集を誘導しないクリームまたはゲル基剤に組みむことができる。光子相関スペクトロスコピーおよび示差走査熱量測定の結果は、6カ月の貯蔵期間に亘って変化しなかった(Scafer-Korting、Mehnertら(2007)から転記されたJenning、Thunemannら(2000)ならびにWissingおよびMuller (2001))。
【実施例5】
【0072】
111肥満関連遺伝子のマイクロアレイ分析
本実施例は、本配合物および/または製剤の脂肪燃焼および肥満治療活性の臨床的指標の内の1つが肥満関連遺伝子の発現量の増加を含むことを示す。
【0073】
脂肪分解に対するPFのより詳細な作用様式を探索するため、肥満関連遺伝子のパネルにおいてマイクロアレイ分析を行った。この遺伝子パネルからの発現量は、PFの非存在下でのこれらの遺伝子の発現量と比較してPFにより増加することが示される。
【0074】
試験群として1umol/LのPFを含有する培地、および対照群として培地のみの中で3T3-L1脂肪細胞を培養した。全RNAを抽出し、Superarray OMM-17を使用してOligo GEArrayを試験した。GEArrayは、エネルギーの摂取および消費の調節に直接関与する111種の肥満関連遺伝子を含む。これらの遺伝子は、摂食亢進性のペプチド、ホルモンおよび受容体、摂食抑制性のペプチド、ホルモン、受容体、ならびにエネルギー消費に関与する中枢性および末梢性シグナル伝達分子を含む。Superarray Bioscience Corporation(Frederick、Maryland)から購入した代謝性疾患/肥満遺伝子パネル産物の添付文書に記載されているように、1.5倍超の増加の変化または減少の変化は、診断規律に従って意味があるとみなされる。
【0075】
以下のマイクロアレイ分析において、赤色は1.5倍超増加した肥満関連遺伝子の発現を示し、青色は1.5分の1未満に減少した肥満関連遺伝子の発現を示し、即ち0.66未満の数は1.5分の1未満への低下を示す。グラフにおいて、上の線より上のデータおよび下の線より下のデータは、遺伝子発現の有意な変化を示す。
【0076】
アドレナリン作動性受容体(AR)
アドレナリン作動系は、エネルギー貯蔵の主要部位である白色アディポース組織内の脂質分解の調節に主要な役割を果たす。カテコールアミンは、脂肪細胞8-アドレナリン作動性受容体(131-、B2-、B3-AR)の活性化により脂質分解を刺激することが可能である。同時に、カテコールアミンはまた、a2b-ARを介して脂質貯蔵を増加させることもできる。βおよびa2b-ARが同じ脂肪細胞上に共存することから、アディポース組織内に存在する機能性alb-およびB-ARの比は、カテコールアミンにより脂肪の貯蔵または放出が活性化されるかどうかを決定することができる(Solovevaら、1997)。PFへの曝露後のマイクロアレイ分析の本データは、Adrb1、Adrb2およびAdrb3の発現の有意な増加と、Adra2bに対して効果がなかったこととを示した(Table 1(表1)、図5)。Adrb1が先に活性化され、その後Adbr3、次いでAdbr2であった。Adrb2およびAdrb3は、PFへの曝露後7日目にそれぞれ7.4倍および5.65倍増加した。Adra2bの発現が全試験の間にほとんど変化しなかったことから、β受容体濃度は有意に増加したが、a2b-アドレナリン作動性受容体に対するβ-アドレナリン作動性受容体の比はPFにより増加することが示される。換言すれば、脂質分解は、PFに曝露させた際に脂質生成を上回る。
【0077】
Table 1(表1)。対照と比較した、PFに曝露させた3T3-L1脂肪細胞内のARの発現シグナルの比
【0078】
【表1】

【0079】
3種のβ-アドレナリン受容体亜型(β1-、β2-、β-AR)は、cAMPの産生とHSLの活性化とを介して機能するGタンパク質共役型受容体の大きなファミリーのメンバーである(Solovevaら、1997)。基礎状態(図6A)において、非リン酸化HSLは、リポトランシン等の幾つかのサイトゾル受容体に結合する可能性があるサイトゾル中にあるが、非リン酸化ペリリピン(PL)は、脂質滴に強固に結合する。HSLは、前記滴に自由に近づかない。カテコールアミンがβ-AR(図6B)と相互作用する際、β-ARは、代わりにGタンパク質(Gs)に共役する。Gsの活性化は、アデニル酸シクラーゼ(AC)を刺激してサイクリックAMPを産生させる。プロテインキナーゼA(PKA)は、cAMPにより活性化され、脂質滴表面タンパク質(ペリリピン(PL))をリン酸化する。ホルモン感受性リパーゼ(HSL)は、リン酸化されたPL上にドッキングして、トリグリセリドをグリセロールおよび遊離脂肪酸に分解する。グリセロールは、アクアポリンアディポース(AQPad)を介して細胞外空間内に放出される(図4)。
【0080】
β-AR遺伝子発現の結果ならびにcAMPおよびHSLの変化の結果(パートIVに示される)は、上の経路を反映する。
【0081】
カルボキシペプチダーゼE(Cpe)
カルボキシペプチダーゼE(Cpe)は、インスリンを含むペプチドホルモンおよび神経伝達物質の生合成に関与する鍵酵素である。Cpeは、脂肪代謝において不可欠な役割を果たす。Cpeの遺伝子における突然変異は、「脂肪の突然変異」をもたらす(Naggertら、1995)。「脂肪の突然変異」は、プロホルモンプロセシング経路における遺伝子欠損により誘発される肥満-糖尿病症候群の第1の実証を示す(Naggertら、1995)。脂肪突然変異マウスは、Cpeを発現せず、肥満および高血糖として現れる。PFについてのマイクロアレイ分析の本データは、PFへの3T3-L1脂肪細胞の曝露7日目におけるCpeの発現の量の有意な増加を示した。Cpeの発現は、対照と比較して2.67倍増加した(Table 2(表2)、図7)。
【0082】
【表2】

【0083】
アディポネクチン受容体1(Adipor1)
アディポネクチンは、組織の脂肪酸化を増加させることにより、インスリン感受性を増加させ、血漿グルコースを減少させることが示された。AdipoR1は、球状アディポネクチンのための受容体として働き、アディポネクチンによるAMP活性化プロテインキナーゼ、グルコース取り込みおよび脂肪酸酸化の増加を媒介する(Yamauchi et al, 2003)。マイクロアレイ分析の本データは、Adipor1の発現が、PFへの3T3-L1脂肪細胞の曝露7日目に1.86倍増加したことを明らかにした(Table 3(表3)、図8)。アディポネクチンの肥満関連下方調節は、肥満がインスリン抵抗性および糖尿病を引き起こし得る機序であることが立証されることから、アディポネクチン受容体作動薬およびアディポネクチン感受性増強薬は、糖尿病や代謝症候群等の肥満関連疾患のための汎用的な治療戦略として働くことが示唆される(KadowakiおよびYamauchi、2005)。
【0084】
【表3】

【0085】
ペルオキシゾーム増殖因子活性化受容体ガンマ(Pparg)
PpargでコードされるPPAR-ガンマは、脂肪細胞分化の調節因子である。PPAR-ガンマは、肥満、糖尿病、アテローム性動脈硬化症および癌を含む数多くの疾患の病理に関係してきた。換言すれば、その低下は新しい脂肪細胞の分化を阻害する。Ppargの発現の量は、PFへの3T3-L1脂肪細胞の曝露7日目に1.54分の1に低下したことがマイクロアレイにより示された(Table 4(表4)、図9)。マイクロアレイ分析において、青色は1.5分の1未満に超減少する遺伝子発現を示し、即ち0.66未満の数は1.5分の1未満への低下を示す。グラフにおいて、下の線より下のデータは、遺伝子発現の有意な低下を示す。
【0086】
【表4】

【実施例6】
【0087】
脂肪細胞に対するPFおよびメソセラピー(M)の効果の比較
本実施例は、脂肪細胞に対するPFおよびメソセラピー(M)の効果が互いに異なることを示す。本実施例は、特に、脂質分解に対するPFの作用様式がメソセラピーの作用とは異なることを示す。PFは、脂肪細胞を活性化させることにより脂肪を分解して、脂肪代謝の原因となるより多くのβ-アドレナリン作動性受容体を発現する。PFによる脂肪の分解は、cAMPの増加を伴う。cAMPの増加は、次にHSLの発現の量を増加させ、それは脂肪を分解し、グリセロールおよび脂肪酸へのトリグリセリドの分解の結果として放出されたグリセロールの有意な増加を引き起こす(図12-メソセラピー(M)およびPFとの3日間のインキュベーション後のグリセロール放出を参照すること)。一方でメソセラピーは、β-アドレナリン作動性受容体に作用することが知られているアミノフィリンの存在の結果としてHSLをわずかに増強することを除き、測定されたパラメータのほとんどに対して効果を示さなかった。
【0088】
脂肪細胞をPFに曝露する際のホルモン感受性リパーゼ(HSL)の有意な放出が証明される。メソセラピーの際には、HSLの有意な放出はない。本出願は、PFの使用が脂肪細胞からのグリセロールの放出をもたらし、結果としてcAMPの増加が生じ、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)の増加が生じることを確証する添付図面におけるデータを含む。これらの事象は、メソセラピーによっては生じず、および/または対照培養物(薬剤を添加せず)またはメソセラピーによる場合と比較してPFにより証明される程度には生じなかった。
【0089】
PFへの曝露により、Adrb1、Adrb2およびAdrb3の発現の有意な増加が証明されるが、Adra2bに対する影響はない。Adrb1が先に活性化され、その後Adbr3、次いでAdbr2であった。Adrb2およびAdrb3は、PFへの曝露後7日目にそれぞれ7.4倍および5.65倍増加した。Adra2bの発現がほとんど変化しなかったことから、β受容体濃度は有意に増加したが、a2b-アドレナリン作動性受容体に対するβ-アドレナリン作動性受容体の比はPFにより増加する。したがって、脂質分解は、PFに曝露させた際に脂質生成を上回る。本明細書において示されるデータは、3T3細胞の培養物に対するメソセラピーおよび対照治療の効果と対比してPFの効果を比較する。このデータは、細胞内経路の活性化がベータアドレナリン作動性受容体の活性化により誘発または誘導され得るのみであり、ベータアドレナリン作動性受容体の活性化がPF曝露で達成されるのみであり、他の治療によるベータアドレナリン作動性受容体の活性化はなかったことを示す。
【実施例7】
【0090】
インビボ臨床データ
本実施例は、注射用製剤の一部としてのPFの本配合物が、ヒトにおいて標的とされた脂肪の低下を有効にもたらすことを示す。
【0091】
8人の患者をPFで治療した。血液中の血清コレステロール、LDLコレステロール、血清トリグリセリド等の3指標の濃度を、治療の前後で試験した。8人の患者についての血液中の血清コレステロール、LDLコレステロール、血清トリグリセリドは、PF治療の後で低下した(Table 5(表5)、図10)。血清コレステロールについて、これらの症例についての平均濃度は正常範囲の上限より高く、平均濃度は治療後に正常範囲内に減少したが、それは統計学的に有意な変化を示した(P<0.01)。LDLコレステロール、血清トリグリセリドについて、治療前および治療後の変化は統計学的変化を示さないが、減少の程度は臨床面で有意味である。
【0092】
ヒトにおいて、PFは、胃部および大腿部の領域において1〜1.5回のセッション当たり1cmの脂肪を溶解することが分かったが、一方で上腕部領域においては、1回のセッション当たり約1cmが認められた。ほとんど全ての患者において、血中総コレステロール濃度は、PF治療により有意に低下した。
【0093】
これらの症例におけるコレステロールの平均濃度は、正常範囲の上限より高く、平均濃度は治療後に正常範囲内に減少したが、それは統計学的に有意な変化を示した(P<0.01)。
【0094】
【表5】

【実施例8】
【0095】
インビボでの脂肪の低下
実際の治療の結果の例および治療の期間を以下に示す。これらの患者は、身体(胃部、腕部および大腿部)内の異なる領域の治療の結果を示したので選択された。
1)患者1:治療の期間=6週間/11セッション
胃部領域の測定値:開始前の大きさ:90cm
治療の終了時の大きさ:83cm
2)患者2:治療の期間=5週間/9セッション
測定値(胃部領域の)開始前の大きさ:96cm
治療の終了時の大きさ:90cm
3)患者3:治療の期間=両腕部において1カ月間/8セッション:全体で8セッション、(即ち一方当たり4セッション)
治療領域:両上腕部
開始前の大きさ:40cm
終了時の大きさ:36.5cm
【0096】
手順のための完全なプロトコル
注射用製剤
溶液の調製
1molの濃度の1mLのPF(1)に、4mLの注射用水と大豆抽出物および5mLの2%リドカインから調製した5mL(ホスファチジルコリン(PPC))とを混合する。合計15mLの溶液。この溶液を20mLの注射器内で共に混合し、針を、実際の注射を行う前に図示する通りの小さいインスリン針(ゲージ30×1/2)に取り替える。
【0097】
混合物の作用様式
PFは、混合物における活性成分である。それは、アディポース組織内の脂肪細胞と接触する際に作用する。ホスファチジルコリンは、弱い洗剤であり、脂肪に結合し、それによりPFを長期間(8〜12時間の間)脂肪細胞と接触させる。混合物中のリドカインは、注射部位内への血管新生を増加させ、しかるにより多くの血管を導入して溶解された脂肪副産物を取り除く。
【0098】
通常、局所麻酔剤を、5〜10分間、注射前に部位に適用する。
【0099】
次いで、溶液を、合計20回の注射で1部位当たり0.5mLの投与量で脂肪領域内に直接皮下投与する。これらの注射を、大きな表面領域を包摂するために広げ、例えば、より大きな患者の場合には胴体中央部(「腹部贅肉」)全体に亘って広げることができ、あるいは患者が平均的な大きさである場合、1回のセッションで左右の腹部贅肉を包摂するために広げることができる。参考として、説明のため、大腿部および臀部の領域内に注射した患者を参照すること。この患者に1部位当たり0.2mLの30回のより少量の注射を注射し、それらを右側の大腿部および臀部の外側および内側の領域全体に亘って広げた。
【0100】
より少量のこれらの20回の注射の各々は、1回のセッションを含む。平均して、4〜5回のセッション以内で顕著な差が認められた。最初の算出により、5回のセッションで3cmの脂肪の減少を測定した。前記患者は、10回のセッションによって5ポンドを超える脂肪が減少した。
【0101】
患者により必要とされたセッションの数
各患者は、その大きさおよび減少させるべき脂肪の所望の量によって異なる。各10回のセッションは、約7cmの脂肪の減少をもたらした。活動的な患者および説明書に従った患者は、平均を超える脂肪減少を示した。幾人かの患者は、小さな領域を脂肪吸引する必要があったので、所望の結果が達成された際に治療を中止した。エアロビクスのインストラクタと共に2回のセッションを加えたことにより、2週間で3ポンドを超える体重減少が生じたことも認められた。
【0102】
注射の頻度
1人の患者は、約6週間に亘る10回のセッションを受けたが、5インチ超の脂肪減少を証明した。所望の結果が達成された後、その患者は、維持のため1〜2カ月に1回のセッションを受けることが可能である。
【0103】
代替の適用様式
上で報告された患者の結果等の病的肥満患者では、活性成分の投与量を、3mLの注射用水中1mmolの2mLに2倍にし、上記のように残りの溶液と混合した。より少量の注射が適切でない場合、ブースター注射を使用し、1個の注射器の内容物を脂肪の1または2つの領域内に濃縮し、注射の逆方向方法で大きな針を使用した。例えば、針を引き抜くにつれて、注射用溶液を放出する。大きな表面領域を包摂するために、円を描く方法で針を回転させる。図11に示すように注射器の長軸に対して90°の角度に針を曲げるという点に留意することが重要である。
【0104】
このようにして約3mLを注射し、次いで、最初の注射部位の全体ではないが針を引き出し、反時計回りに約30°の別の面の中に再挿入する。内容物を全て注射するまで、このプロセスを約5回繰り返す。例えば、針の挿入の最初の部位をその中心とする、標的とされた脂肪領域として治療するべき円形注射領域を用いて、次いで上記の方法でこの円の周囲で針を回転させる。
【0105】
注射用製剤中に含まれるPFの濃度範囲; 各治療(注射)エピソードで患者に提供されたPFの投与量;注射用製剤を調製する際に使用された特定のステップ。
【0106】
5mLの注射用水に0.5mgのPFを溶解して0.1mg/mLの濃度とした。次いでこれを20mLの注射器の中で5mLのホスファチジルコリンと混合した。次いで大きなゲージの針をより小さいゲージ(幾つかの実施形態において、ゲージ27〜30、30ゲージ×1/2)のインスリン針と交換し、所定の領域の異なる20の部位に10mLを注射した。各注射部位を約1cm隔てて0.5mLの溶液を胃部に注射した。
【0107】
局所製剤中に含まれるPFの濃度:0.2mg〜0.3mgのPFを1mLのアゾン液に溶解した。
【0108】
次いで、この混合物を標的領域内にすり込んだ。一連の浸透剤を使用してアゾンを広く試験した。アゾンの組成は、C18H35NOである。アゾンは、無色で、わずかに帯黄色または透明であり、油性である。この化合物中の重金属含有率は0.001%未満である。本試験において使用したアゾンを、Nan Jing Long Tan chemical company、Chinaから購入した。アゾンは、角質層の細胞間領域内の組織化脂質構造を破壊することにより皮膚を通る浸透性を増強させることが示された。このプロセスは、脂質流動性の増加および薬剤拡散性の増強につながる。これが、PFと混合するためにアゾンを選択した理由である。
【0109】
次いで、所望の治療領域の皮膚上に配置したパッドを介して2.5アンペアの低電流を流し、それにより次いで皮膚を介してアディポース組織内にPFを通し、しかるにPFを脂肪細胞に接触させる。
【0110】
アルブミンナノ粒子を作製する際に使用するプロトコル
ナノ粒子の多くの異なる製剤が、本クリーム剤および局所製剤の調製に使用される。当業者に公知の多くの異なるナノ粒子配合物が、本発明の実施において使用され得る。例えば、かかるものは、ナノ粒子の領域におけるあらゆる公知の送達量を含む。
【0111】
患者の準備
通常の注射について:74%のエタノールによる表面領域の消毒後、リグノカイン軟膏またはリドカインゲルの局所適用を5分間適用して、注射を行う皮膚に麻酔をかける。
【0112】
ブースター注射について:大きな針の侵入部位に麻酔をかけるために1mLの2%リドカインを使用して患者を準備する。このように、前記手順は、ほとんど無痛である。3〜5分後、ブースター注射を、3分間に亘ってゆっくりと投与する。
【0113】
患者は、セッション前に食事を摂取するべきであり、あるいはセッション前にチョコレートバーまたはクッキーを患者に提供する。
【0114】
患者には、注射により挫傷が生じる可能性があることを予め警告する。したがって、患者で多少の挫傷が予想され得る。例えば、挫傷は、大腿部内に注射された患者において認められた。挫傷は、通常、1週間以内に消失する。更に、ブースターの注射部位の発赤および圧痛は、非常によく起こる。発赤は数時間持続し、圧痛は数日間持続する。挫傷は、規則的な注射よりもブースターによって多く発症するが、1週間程度以内で消失する。別の所見は、幾人かの患者における治療の結果としての疲労である。2人の患者は、ブースターセッションにより疲労を患ったが、規則的セッションでは患わなかった。更に、非常にわずかな体温上昇(約37.1または37.2に数時間)を示した。数人の患者に数分間の浮動性めまいも認められたが、調節可能な患者椅子をリクライニングさせ、前記手順を問題なく継続した。下痢は認められなかったが、より軟らかい便が報告された。
【0115】
セッション後のプロトコル
患者には、1日を通して1日当たり2リットルの水を飲むよう求める。
【0116】
患者には、各セッションの後、その週に亘って25分/日の歩行または運動を求めた。これは、溶解した脂肪副産物を洗い流すことを意図するものである。
【0117】
注射後の最初の48時間、脂肪性の食事、ワイン、アルコールを避け、排泄すべき脂肪副産物のより多くを血液に運ばせる。
【0118】
適用の第二様式-クリーム製剤
本製剤を、1mLのアゾンと混合した1mmolの濃度の1mLのPFを含有するクリームの形態で提供することが可能であり、次いで標的領域内にすり込む。浸透剤の範囲を使用してアゾンを大規模に試験した。アゾンは、角質層の細胞間領域内の組織化脂質構造を破壊することにより皮膚を通る浸透性を増強させることが示された。このプロセスは、脂質流動性の増加および薬剤拡散性の増強につながる。これが、PFをアゾンと混合した理由である。更に、次いで、組織領域を介して低電流を流し、それにより次いで皮膚を介してアディポース組織内にPFを運ぶ。この方法でPFを脂肪細胞に接触させることができる。臨床結果を以下に示し、各患者の詳細を示す。
【0119】
【表6】

【0120】
代替の注射プロトコル
本実施例は、PFの注射用製剤および/または組成物を使用する、標的とされる脂肪の低下のための治療セッションを含む治療の一連の代替を示す。本実施例において、一連の20回の少量の(0.1〜0.2mL)注射は、治療のセッションを含む。平均して、4〜5回以内のセッションで、大きさの低下により証明されるように、顕著な差を患者において認めることができる。測定可能な脂肪の減少は、5回のセッションにおいて3cmの脂肪の減少であった。
【0121】
本明細書において記載されるように、PFで治療した8人の患者において、血液中の血清コレステロール、LDLコレステロール、血清トリグリセリド等の3種の指標の濃度を治療の前後で検討した。これらのコレステロールパラメータの全ては、これらの8人の患者において低下した。
【0122】
メソセラピーによる従来の研究において、血液中のこれらのコレステロール濃度は低下しなかった(Hexsel、Serraら 2003)。
【0123】
血清コレステロールについて、これらの症例についての平均濃度は正常範囲の上限より高く、平均は治療後に正常範囲内に減少したが、それは統計学的に有意な変化を示した(P<0.01)。LDLコレステロール、血清トリグリセリドについて、治療前および治療後の変化は統計学的変化を示さなかったが、減少の程度は、患者の管理において臨床的に意味があった。
【実施例9】
【0124】
送達デバイス
本実施例は、本発明の各種のPFの局所製剤および注射用製剤の送達および適用に使用され得る特定のデバイスおよび装置を記載したものである。
サウナベルト: Uzap腹、臀部、大腿(osim)
入力100〜240V、約56Hz
1.5A、200VA
出力+24V、-2.5A
それは、以下の詳細を有する遠隔制御装置を有する。
消費電力60W
動作電圧24V、d.c.2.5A
【0125】
アルファ波ヘルストロニック筋肉刺激装置およびエクササイズ(パッドに電流を伝送し、PF含有クリームの適用の後/前に使用されるデバイス)
Model BM-303
電源DC6V(電池UM-1×4)
ワット0.6
注射デバイス:90°の角度の針を有するシリンジバレル。
【0126】
注射用製剤を調製する際に使用した特定のステップ:5mLの注射用水に0.5mgのPFを溶解して0.1mg/mLの濃度とした。次いでこれを20mLの注射器の中で5mLのホスファチジルコリンと混合した。次いで大きな針をより小さいゲージのインスリン針と交換し、所定の領域の異なる20の部位に10mLを注射した。各注射部位を約1cm隔てて0.5mLの溶液を胃部に注射した。
【0127】
局所製剤中に含まれるPFの濃度:0.2mg〜0.3mgのPFを1mLの「アゾン液」に溶解した。次いで、この混合物を標的領域内にすり込んだ。浸透剤の範囲を使用してアゾンを大規模に試験した。アゾンの化学式は、C18H35NOである。アゾンは、無色、わずかに帯黄色または透明であり、油性である。この化合物中の重金属含有率は0.001%未満である。本試験のためのアゾンを、Nan Jing Long Tan chemical company、Chinaから購入した。アゾンは、角質層の細胞間領域内の組織化脂質構造を破壊することにより皮膚を通る浸透性を増強させることが示された。このプロセスは、脂質流動性の増加および薬剤拡散率の増強につながる。これが、アゾンと混合するためにPFを選択した理由である。次いで、所望の治療領域の皮膚上に配置したパッドを介して2.5アンペアの低電流を流し、それにより次いで皮膚を介してアディポース組織内にクリーム/ローション剤のPFを運ぶ。この方法で、PFを脂肪細胞に接触させる。
【実施例10】
【0128】
ナノ粒子配合物
ナノ粒子の多くの異なる製剤が、本製剤および組成物の実施において使用され得る。次いで、最も有効な配合物が同定される。
【0129】
皮膚への局所適用のための固体脂質ナノ粒子(SLN)およびナノ構造脂質担体(NLC)を、ベヘン酸グリセリル(Compritol888 ATO)、パルミトステアリン酸グリセロール(Precirol ATO 5)、ロウ(パルミチン酸セチル)等の脂質から作製する。NLCについては、室温で、中鎖脂肪酸トリグリセリド(Miglylol 812)等の液体脂質を添加する。あるいは、皮膚に適用される、頻繁に使用される半固体ビヒクルにおける透過増強剤に属するオレイン酸は、薬剤取り込みを更に増強することができる。平均粒径は50〜1000nmの範囲である。ナノ分散物は5〜40%の脂質を含有する。より高濃縮の製剤は、半固体の外観であり、そのままで美容的に許容し得る。脂質の様式および濃度に応じて、粒子の物理的安定化のために0.5〜5%の界面活性剤を添加しなければならない。皮膚の使用のため、製剤はまた、例えば以下の:ポロキサマー188、ポリソルベート80、レシチン、チロキサポール、TegoCare 450(ポリグリセリンメチルグルコースジステアレート)、Miranol Ultra C32(ココアンホ酢酸ナトリウム)または蔗糖脂肪酸エステルを含んでよい。
【0130】
皮膚適用を容易にするため、脂質含有量が低い(<10%)場合に得られる分散液が、SLN粒子の溶解や凝集を含まないクリームまたはゲル基剤に組み込まれ得る。光子相関スペクトロスコピーおよび示差走査熱量測定の結果は、6カ月の貯蔵期間に亘って変化しなかった。
【実施例11】
【0131】
脂肪低下キット
本実施例によるキットの一部である部品部分は、以下のものを含む。
1. 0.2mg/mLの濃度のPFおよびアゾンの1mLアンプル
2. アルファ波ヘルストロニック筋肉刺激装置およびエクササイズ等のデバイス。これは、筋収縮を生じさせる低密度電流を流すことによりスポーツ傷害の後で筋肉を刺激するために理学療法士により使用される小さいデバイスである。約2.5アンペアの低電圧電流のため、組織化脂質層をアゾンが破壊した後で皮膚を通してアディポース組織内にPFを運ぶ電流が伝送される。
【0132】
本明細書に記載される目下のところ好ましい実施形態に対する各種の変更および修正は、当業者に明らかであることを理解するべきである。かかる変更および修正は、本主題の精神および範囲から逸脱することなく、且つその意図された効果を減じることなく為すことが可能である。したがって、かかる変更および修正が、添付の特許請求の範囲により包摂されることが意図される。
【0133】
(参考文献)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分として脂肪分解増強量のペオニフロリンを含む脂肪分解増強製剤の1回または複数の治療セッションを投与する段階と、
脂肪分解を増加する段階とを含む、脂肪分解を増加するための方法であって、脂肪分解増強量の前記製剤の非存在下よりも脂肪分解増強量の前記製剤の存在下で脂肪分解が大きい、方法。
【請求項2】
脂肪分解増強量の前記製剤が約0.25mg/0.5mLのペオニフロリンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脂肪分解増強量の前記製剤が、同じ量のペオニフロリンの非存在下での肥満関連遺伝子パネルの発現量と比較して、Swiss 3T3細胞の培養物中における肥満関連遺伝子パネルの発現量を増加させる量のペオニフロリンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記脂肪分解増強製剤が、流体担体溶液におけるペオニフロリンを含む注射用製剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記脂肪分解増強製剤がクリーム剤またはローション剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記脂肪分解増強製剤が浸透剤を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記浸透剤がアゾンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
活性成分として脂肪分解増強量のペオニフロリンを含む脂肪分解増強製剤であって、脂肪分解増強量のペオニフロリンの存在下でのSwiss 3T3細胞の培養物中におけるグリセロール放出が、脂肪分解増強量のペオニフロリンの非存在下でのグリセロール放出より大きい、脂肪分解増強製剤。
【請求項9】
前記製剤がクリーム剤またはローション剤を含む、請求項8に記載の脂肪分解増強製剤。
【請求項10】
浸透剤を更に含む、請求項9に記載の脂肪分解増強製剤。
【請求項11】
ペオニフロリン含有アルブミンナノ粒子を含む、請求項8に記載の脂肪分解増強製剤。
【請求項12】
前記製剤が注射用製剤を含む、請求項8に記載の脂肪分解増強製剤。
【請求項13】
前記浸透剤がアゾンである、請求項10に記載の脂肪分解増強製剤。
【請求項14】
約0.25mg/0.5mL(0.50mg/mL)の濃度のペオニフロリンを含む、請求項12に記載の脂肪分解増強製剤。
【請求項15】
ヒトにおける特異的標的身体領域の脂肪減少を達成するための方法であって、
活性成分として脂肪分解増強量のペオニフロリンを含む脂肪分解増強製剤の1回または複数の治療セッションを身体の標的領域に投与する段階と、
前記標的領域内において脂肪分解が達成されるまで1回または複数の治療セッションを前記標的身体領域に提供する段階とを含む、方法。
【請求項16】
前記脂肪分解増強製剤が注射用製剤である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記標的身体領域が、複数回の個別の注射の最高30回の治療セッションを受け、各治療セッションが、約0.5mLから約1.0mLまでの量の脂肪分解増強製剤の注射を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記脂肪分解増強製剤がクリーム剤またはローション剤を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
標的身体領域の皮膚表面への脂肪分解増強製剤の適用の前、間または後で、あるいは前、間または後の組合せにおいて、治療すべき標的身体領域の皮膚表面で、低電流超音波を提供する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
標的身体領域に注射用ペオニフロリン製剤を投与するために適切なデバイスであって、
a)ある量の活性成分としてペオニフロリンを含む脂肪分解増強製剤の滅菌溶液を保持することができる目盛り付きバレル注射器シリンダと、
b)前記目盛り付き注射器シリンダの一端を収容するために適切な針と、
を含み、前記針が、前記注射器シリンダに対して90°の角度にあるように構成される、デバイス。
【請求項21】
前記目盛り付きバレルシリンダが、20mLまたは50mLの容積容量を有する、請求項20に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図3A】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−523950(P2011−523950A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511955(P2011−511955)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【国際出願番号】PCT/CN2009/000569
【国際公開番号】WO2010/127470
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(510310417)プロファウンド・エイジア・テクノロジー・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】