説明

脂肪族ポリイソシアネート組成物およびそれを用いたポリウレタン樹脂塗料組成物

【課題】樹脂分水酸基含有量が高いポリオール組成物と混ざり易く、塗膜特性が非常に良好な脂肪族ポリイソシアネート組成物、及びそれを用いた塗料組成物を提供する。
【解決手段】脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネートに短鎖のモノオールを反応させてウレタン結合を導入した脂肪族ポリイソシアネート組成物並びに樹脂分水酸基含有量が5.0%以上の水酸基含有ポリオール組成物からなるポリウレタン樹脂塗料組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂、特に塗料、インキ、接着剤等の硬化剤として有用な脂肪族ポリイソシアネート組成物、詳しくは、樹脂分水酸基含有量が5.0重量%以上の多価ヒドロキシ化合物を含有する水酸基含有ポリオール組成物との相溶性および硬化性が共に良好な脂肪族ポリイソシアネート組成物、及びそれを用いたポリウレタン樹脂塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、硬化剤としてのポリイソシアネート組成物および主剤としてのポリオール組成物からなる二液型のポリウレタン樹脂塗料は、非常に優れた耐摩耗性、耐薬品性、耐汚染性、柔軟性等を有している。
【0003】
従来、脂肪族ジイソシアネートから得られる脂肪族ポリイソシアネートを硬化剤のポリイソシアネート組成物とし、ポリオール組成物としてアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、フッ素ポリオール等も広く使用されている。
脂肪族ポリイソシアネートを硬化剤のポリイソシアネートとしたポリウレタン樹脂塗料は、特に耐候性が優れており、その需要は自動車、プラスチック、建築外装等の分野で増加する傾向にある。
【0004】
脂肪族ポリイソシアネートを硬化剤のポリイソシアネート組成物として用い、主剤に水酸基含有のポリオール組成物を用い二液型ポリウレタン樹脂塗料とすることによって、塗膜中に多くのウレタン結合を有することが可能になる。これによって、耐侯性や耐磨耗性また耐薬品性、耐溶剤性、耐汚染性、耐水性、熱安定性等などが増し、更に良好な塗膜特性が得られるようになる。このことにより優れた塗膜の特性が必要とされている分野、例えば自動車車体の塗装や補修用また各種プラスチック等への利用の増加が考えられる。
【0005】
脂肪族ジイソシアネートから得られる脂肪族ポリイソシアネートとしては、主に、脂肪族ビウレット型ポリイソシアネート、脂肪族アダクト型ポリイソシアネート、脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネート等が挙げられる。中でも、脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネートは耐侯性、耐摩耗性、耐薬品性、耐汚染性、柔軟性、熱安定性等の面で、他のものより優れている。
【0006】
しかし、脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネートは、水酸基含有ポリオール組成物と相溶性不良を起こしやすく、安定した良好な塗膜特性が得られにくいなどその使用に難しい面がある。このため、水酸基含有ポリオール組成物との相溶性を改良した脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネートから得られる脂肪族ポリイソシアネート組成物の開発が望まれている。
【特許文献1】特開2003−128989
【特許文献2】特開2005−171000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、主剤である水酸基含有ポリオール組成物と良好な相溶性を有する脂肪族ポリイソシアネート組成物、および該脂肪族ポリイソシアネート組成物を用いることで安定した良好な塗膜特性が得られるポリウレタン樹脂塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる問題を解決するために検討を重ねた結果、脂肪族ジイソシアネートから得られる脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネートに短鎖のモノオールを反応させて得られるウレタン結合含有ポリイソシアネートを含んでなる脂肪族ポリイソシアネート組成物であって、脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネートと短鎖のモノオールを反応させて得られるウレタン結合を脂肪族ポリイソシアネート組成物中に4.5重量%以上含有し、樹脂分イソシアネート基含有量(溶剤などで希釈する前)が16.5重量%以上の脂肪族ポリイソシアネート組成物が、上記課題を達成することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明は、脂肪族ジイソシアネート(特に、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)から得られる脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネートに短鎖のモノオールを反応させて得られるウレタン結合含有ポリイソシアネートを含んでなる脂肪族ポリイソシアネート組成物であって、脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネートと短鎖のモノオールを反応させて得られるウレタン結合の含有量が脂肪族ポリイソシアネート組成物中に4.5重量%以上であり、樹脂分イソシアネート基の含有量が16.5重量%以上である脂肪族ポリイソシアネート組成物を提供することにある。
本発明は更に、
脂肪族ポリイソシアネート組成物と、樹脂分水酸基含有量が5.0重量%以上の水酸基含有ポリオール組成物からなるポリウレタン樹脂塗料組成物をも提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の脂肪族ポリイソシアネート組成物を二液型ポリウレタン樹脂塗料の硬化剤として用いると、主剤として使う水酸基含有ポリオール組成物と良好な相溶性を有することが可能になり、
これにより安定した良好な塗膜特性を形成することができるポリウレタン樹脂塗料組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を更に詳しく述べる。
本発明で用いる脂肪族ジイソシアネートは、炭素数4〜30のものが好ましい。例えば、テトラメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(以下「HDI」と略す)、2,2,4−(又は、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソイシアネート、リジンイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートシクロヘキサン、1,3−ビス(ジイソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。中でも、耐侯性、工業的入手の容易さからHDIが好ましい。また、脂肪族ジイソシアネートは、単独で使用しても併用しても構わないが、好ましくは、単独である。
【0012】
これらの脂肪族ジイソシアネートから得られる脂肪族ポリイソシアネートにおいて、脂肪族アロファネート型ポリイソシアネート、脂肪族ビウレット型ポリイソシアネート、アミド基含有ポリイソシアネート、脂肪族TMP(トリメチロールプロパン)アダクト型ポリイソシアネートは高水酸基含有ポリオールとの相溶性は脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネートに比べ悪くないものの、塗膜の特性は脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネートに劣る。
このため、脂肪族ジイソシアネートから得られる脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えばアロファネート結合やビューレット結合、アミド結合などを含まないことが好ましく、脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネート単独が好ましい。
また脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネートをウレタン変性した脂肪族ポリイソシアネート組成物においても、イソシアヌレート結合およびウレタン結合以外の変性基(窒素原子を含む結合)を一般に含まないので、水酸基含有ポリオールとのポリウレタン樹脂塗料組成物からは、耐侯性、耐熱性に優れた特性を有する塗膜が得られる。
【0013】
脂肪族ジイソシアネートを、三量化触媒を用いてイソシアヌレート化して得られる脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネートのウレタン化反応(ウレタン変性)には短鎖のモノオールを用いる。
モノオールは、直鎖、分岐鎖または環状である。モノオールは、炭素と水素と酸素のみからなる化合物であることが好ましい。
炭素数が1〜7(MW(分子量)が32〜116)のものが良く、好ましいのは炭素数が1〜4のモノオールである。特に好ましいのは炭素数2〜3(MWが49〜74)である。モノオールの溶解度パラメーター(SP)値は、10.9〜14.5であることが好ましい。
モノオールの例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、n−ヘキシルアルコール、2−エチル−1−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−ヘプタノール、4−ヘプタノール、4−ジメチル−3−ペンタノールが挙げられる。
これらは単独で使用しても、併用しても構わない。
【0014】
炭素数が8以上のモノオールでは、脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネートとモノオールのウレタン化反応(ウレタン変性)において、脂肪族ポリイソシアネート組成中に、ウレタン結合を4.5重量%以上有し樹脂分イソシアネート基含有量を16.5重量%以上有する脂肪族ポリイソシアネート組成物にすることが難しい。
【0015】
脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネートと短鎖のモノオールを反応させウレタン変性して、ウレタン結合含有ポリイソシアネートを製造する方法(順序)は、既に脂肪族ジイソシアネートから三量化触媒を用いてイソシアヌレート化されているものをモノオールと反応させるのが良く、ウレタン変性はイソシアヌレート化の前や同時には行わないのが良い。
【0016】
脂肪族ジイソシアネートから得られる脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネートにモノオールを反応させウレタン変性する脂肪族ポリイソシアネート組成物の製造方法は、溶剤の存在の有無に関係なく行う事ができる。
溶剤を用いる場合、イソシアネート基に対して不活性な溶剤を用いる必要がある。
ウレタン化反応に際して、錫、亜鉛、鉛、燐等の有機金属塩、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、ナトリウムフェノラート、カリウムメチラート等の金属アルコラート、及び三級アミン等を触媒として用いてもよい。ウレタン化反応は、一般に、−20〜150℃で行う事ができるが、好ましくは0〜100℃である。150℃以上では副反応を起こす可能性があり、−20℃以下では反応速度が著しく小さくなり不利である。イソシアネート基と水酸基が副反応なくウレタン結合が生成されることが好ましい。
【0017】
脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネートに短鎖のモノオールを反応させて得られるウレタン結合の含有量を、脂肪族ポリイソシアネート組成物中に4.5重量%以上が良く、4.8重量%以上にするのが好ましい。また、樹脂分イソシアネート基含有量10重量%以上が良く、特に16.5重量%以上にするのが好ましい。樹脂分イソシアネート基含有量の上限は、一般に25重量%である。
ウレタン結合の含有量が4.5重量%未満では、水酸基含有ポリオール組成物との相溶性が十分に得られない。また、樹脂分イソシアネート基含有量が16.5重量%未満では、水酸基含有ポリオール組成物との二液型ポリウレタン樹脂塗料において、水酸基含有ポリオール組成物中の水酸基と反応しうる脂肪族ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基が十分な量でないため、良好な塗膜特性を実現することが難しい。
「樹脂分イソシアネート基含有量」とは、脂肪族ポリイソシアネート組成物における樹脂分であるウレタン基含有ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基の重量割合(%)を意味する。
【0018】
脂肪族ポリイソシアネート組成物の溶剤成分には、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのケトン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類等の群から目的、及び用途に応じて適宜選択して使用することができる。これらの溶剤は単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。溶剤成分としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類を使用するのが好ましい。溶剤としてトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類の使用は、シックハウス等の環境面から使用しないのが好ましい。脂肪族ポリイソシアネート組成物において、溶剤の量は、脂肪族ポリイソシアネート組成物に対して40〜99.5重量%、例えば60〜95重量%であってよい。
【0019】
本発明で示す、脂肪族ポリイソシアネート組成物ウレタン結合含有量は、下記の計算式で算出できる。
ウレタン結合含有量(%)=(X)×59/(変性前の脂肪族ポリイソシアネートの重量(g)とモノオールの重量(g)の合計)×100
(X):脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネート組成物に対して反応させたモノオールの水酸基モル数
【0020】
本発明に用いる水酸基含有ポリオール組成物は、一分子中に少なくとも二個の水酸基を有し、且つ、樹脂分水酸基含有量が5.0重量%以上である多価ヒドロキシ化合物を含有する。多価ヒドロキシ化合物の樹脂分水酸基含有量は、好ましくは、7.0重量%以上、更に好ましくは、7.5重量%以上である。樹脂分水酸基含有量の上限は、好ましくは、10重量%である。
多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、脂肪族炭化水素ポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、アクリルポリオール類、エポキシポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ウレタンポリオール類等が挙げられる。
上記の多価ヒドロキシ化合物は、単独で用いても良く、二種以上を併用して樹脂分水酸基含有量5.0重量%以上にしても良い。中でも好ましいものは、耐侯性に優れるポリエステルポリオール類、アクリルポリオール類である。
樹脂分水酸基含有量が5.0重量%未満の多価ヒドロキシ化合物では、二液型ポリウレタン樹脂塗料において、二液混合後、塗膜に十分なウレタン結合を導入することができず、良好な塗膜特性が得られない。
「樹脂分水酸基含有量」とは、樹脂分である多価ヒドロキシ化合物における水酸基の重量割合(%)を意味する。
【0021】
脂肪族炭化水素ポリオール類としては、例えば、末端水酸基化ポリブタジエンやその水素添加物が挙げられる。
【0022】
ポリエーテルポリオール類としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールやエチレンジアミン、エタノールアミン類等の多官能化合物の単独或いは混合物に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの単独或いは混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類、ポリテトラメチレングリコール類、及びこれらのポリエーテルポリオールを媒体として得られるアクリルアミド等を重合して得られるポリマーポリオール類等が挙げられる。
【0023】
ポリエステルポリオール類としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのカルボン酸から選ばれた二塩基酸の単独或いは混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの多価アルコールの単独或いは混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール樹脂類、ε−カプロラクトンと多価アルコールを使用して開環重合して得られるようなポリカプロラクトン、更には、ひまし油等の水酸基を有する脂肪族と多価アルコールとのエステル類等が挙げられる。
【0024】
アクリルポリオール類としては、一分子中に一個以上の活性水素を持つ重合性モノマーと、これに共重合可能なモノマーを共重合させることによって得られるものが挙げられる。例えば、(i)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシルブチルなどの活性水素を持つアクリル酸エステル類:メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸2−ヒドロキシルブチルなどの活性水素を持つメタアクリル酸エステル類:グリセリンのアクリル酸モノエステル或いはメタアクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステル或いはメタアクリル酸モノエステル当の多価活性水素を有するメタアクリル酸やアクリル酸から選ばれた単独或いは混合物と、(ii)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステル類:メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸n−ヘキシルなどのメタアクリル酸エステル類から選ばれた単独または混合物を、(iii)アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどの不飽和アミド:およびスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリルニトリルなどの重合性モノマーから選ばれた単独或いは混合物の存在下、或いは非存在下において重合させて得られるアクリルポリオール樹脂類が挙げられる。
【0025】
エポキシポリオール類としては、ノボラック型、β−メチルエピクロルヒドリン型、環状オキシラン型、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリコールエーテル型、脂肪族不飽和化合物のエポキシ化型、エポキシ化脂肪族エステル型、多価カルボン酸エステル型、アミノグリシジル型、レゾルシン型などのエポキシ樹脂が挙げられる。
【0026】
ポリカーボネートポリオール類としては、ビスフェノールA等の芳香族多価アルコールや1,6ヘキサンジオール等の脂肪族・脂環族多価アルコール類を原料として得られるポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0027】
ウレタンポリオール類としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートと活性水素化合物との重付加反応によって生成するポリマー中にウレタン結合を持ち、ポリマー側鎖や末端に水酸基を持つものをあげることができる。
【0028】
塗料組成物のその他の成分として、以下に示すような当該技術分野で常用される顔料、添加剤、溶剤等が使用できる。例えば、キナクリドン系、アゾ系、フタロシアニン系等の有機顔料:酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ等の無機顔料、炭素系顔料、金属箔状顔料、防錆顔料等の顔料:ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤:ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系、ヒドラジド系等の酸化防止剤:錫系、亜鉛系、アミン系等のウレタン化触媒:レベリング剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤等の添加剤等である。
【0029】
また、これらの成分を混合する際に、必要に応じて、適当な溶剤、例えば、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのケトン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類等の群から目的、及び用途に応じて適宜選択して使用することができる。これらの溶剤は単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。溶剤成分としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類を使用するのが好ましい。溶剤としてトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類の使用は、シックハウス等の観点から使用しないのが好ましい。
【0030】
二液型ポリウレタン樹脂塗料の硬化剤(すなわち、脂肪族ポリイソシアネート組成物)中のイソシアネート基と主剤のポリオール組成物の水酸基との当量比は、必要とする塗膜物性により決定されるが、0.8〜1.8範囲から選択されるのが通常である。
【0031】
以上述べた様に、本発明の脂肪族ポリイソシアネート組成物は、脂肪族ジイソシアネート(特に、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)から得られる脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネートに短鎖のモノオールを反応させて得られるものが良い。
短鎖のモノオールとしては、炭素数が1〜7の(MWが32〜116)のものが良く、好ましいのは炭素数が1〜4のモノオールである。特に好ましいのは2〜3(MWが49〜74)である。
脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネートと短鎖のモノオールを反応させて得られるウレタン結合が、脂肪族ポリイソシアネート組成物中に4.5重量%以上含有され、樹脂分イソシアネート基含有量が16.5重量%以上であることが好ましい。
また、本発明の脂肪族ポリイソシアネート組成物を硬化剤とし、樹脂分水酸基含有量が5.0重量%以上、好ましくは7.0重量%以上、特に好ましくは7.5重量%以上の水酸基含有ポリオール組成物を主剤とする二液型ポリウレタン樹脂塗料組成物とすることが良い。
【0032】
本発明の脂肪族ポリイソシアネート組成物は、水酸基含有ポリオール組成物と良好な相溶性を有しているので、即ち、ポリウレタン樹脂塗料として用いた場合、安定した良好な塗膜特性を形成することができる。
また、加えて、脂肪族ポリイソシアネート組成物の溶剤成分として、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類を用いないので、作業時の安全性やVOC、シックハウスなど環境面などにも優れたものとなる。
【発明の好ましい態様】
【0033】
以下に、本発明における実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例において、特記しない限り、部および%は重量部および重量%を表す。
評価方法等は下記の通りである。
【0034】
脂肪族ポリイソシアネート組成物と水酸基含有アクリルポリオール組成物の相溶性評価
脂肪族ポリイソシアネート組成物と水酸基含有アクリルポリオール組成物(バイエルマテリアルサイエンス株式会社製、試験研究用アクリルポリール、樹脂分水酸基含有量8.1%、粘度1800mPa・s/23℃、不揮発分70%、溶剤種:酢酸ブチル)をイソシアネート基/水酸基との当量比が1.0になるように配合した。
(1)の配合中の固形分(脂肪族ポリイソシアネート組成物と水酸基含有アクリルポリオール組成物)重量が48%になるように、シンナーとしてn−酢酸ブチル/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(重量比50/50)の混合液を加えて塗料を得た。
(3)(2)の塗料を撹拌した後、2分以内に、 黒の2液型ウレタン塗料を塗装・焼付けた鋼板にスプレー塗装し、140℃に保持されている乾燥オーブン中にて30分間焼き付けて取り出した後、室温で塗膜の状態を目視にて相溶性確認した。
(4)判定基準を次の様にした。
○(良好):塗膜が透明な状態であれば相溶性良
×(不良):塗膜にクモリが生じた状態であれば相溶性不良
【0035】
脂肪族ポリイソシアネート組成物の熱安定性評価(耐熱性)
(1)相溶性評価と同様に作製した塗料を、 白の2液型ウレタン塗料を塗装・焼付けた鋼板にスプレー塗装し、140℃に保持されている乾燥オーブン中で30分間焼き付けて取り出した後、室温で分光色彩計(ビックケミージャパン株式会社製、商品名:カラーガイドTM45/0、製品No.6800)でb*値を測定した。
(2)その後、再び160℃に保持されている乾燥オーブン中にて60分間焼き付けて取り出した後、室温でb*値を測定し、(1)とのΔb*値を確認した。
(3)判定基準を次の様にした。
○(良好):Δb*値が1.0未満
×(不良):Δb*値が1.0以上
【0036】
脂肪族ポリイソシアネート組成物の硬化性評価−1(耐化学薬品性)
相溶性評価と同様に作製した塗料を、 黒の2液型ウレタン塗料を塗装・焼付けた鋼板にスプレー塗装し、140℃に保持されている乾燥オーブン中に30分間焼き付けた後、23℃、55%下で1週間放置した。
耐化学薬品性の評価は、1%硫酸を50マイクロリットルずつ硬化塗膜にスポット(滴下)したものを、35℃〜80℃に保持されているグラジオエントオーブン(ビックケミージャパン株式会社製、製品No.2611)に、それぞれ35℃〜80℃の各温度下で30分間焼き付けた後、塗膜状態を目視で観察する方法をとった。
判定基準を次の様にした。
○(良好):45℃では塗膜表面に変化なし
△(やや不良):40〜44℃で塗膜表面に滴下跡が認められる
×(不良):40℃未満で塗膜表面に滴下跡が認められる
【0037】
脂肪族ポリイソシアネート組成物の硬化性評価−2(耐汚染性)
相溶性評価と同様に作製した塗料を白の2液型ウレタン塗料を塗装・焼付けた鋼板にスプレー塗装し、140℃に保持されている乾燥オーブン中に30分間焼き付けた後、23℃、55%下で1週間放置した。
塗膜に水性赤インキを50マイクロリットルスポット(滴下)した後、60℃に保持されている乾燥オーブン中で15分間焼き付けた後、水性赤インキをウエス または脱脂綿で拭き取り、塗膜表面の水性赤インキの残存状態を目視で観察した。
判定基準を次の様にした。
○(良好):塗膜表面に水性赤インキが残存しない。
×(不良):塗膜表面に水性赤インキが残存する。
【実施例1】
【0038】
温度計、攪拌羽根、還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、HDIイソシアヌレート型ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン株式会社製、スミジュールN3300、イソシアネート基含有量21.8%、粘度3000mPa・s/25℃、不揮発分100%)100重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート11.1重量部、メタノール3.2重量部を室温で添加し撹拌後、80℃まで昇温し4時間反応を続けた。
得られたHDIポリイソシアネート組成物は、透明の液体であり、不揮発分90%で、イソシアネート基含有量15.3%(樹脂分イソシアネート基含有量として17.0%)、HDIポリイソシアネート組成物中のウレタン結合含有量は5.8%(計算値)であった。
【0039】
このHDIポリイソシアネート組成物と樹脂分水酸基含有量が8.1%のアクリルポリオール組成物を主剤とし、イソシアネート基/水酸基との当量比が1.0になるように配合し、これにシンナーとして、n−酢酸ブチル/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(重量比50/50)の混合液を加え、全樹脂分48%の塗料を得た。
その塗料を撹拌し2分以内に乾燥膜厚30〜40マイクロメーターになるように、黒の2液型ウレタン塗料を塗装・焼付けた鋼板および白の2液型ウレタン塗料を塗装・焼付けた鋼板にスプレー塗装し、140℃に保持されている乾燥オーブン中に30分間焼き付けた後取出し、それぞれ室温で塗膜の外観(相容性)の目視評価並びにその他の性能評価を行った。
この塗膜は透明であり、このHDIポリイソシアネート組成物と水酸基含有アクリルポリオール組成物の相溶性は良好であった。また、この塗膜の一部で耐化学薬品性、耐熱性、及び耐汚染性の評価をした。これらの結果は表1に示す通りいずれも良好であった。
【実施例2】
【0040】
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの量を11.6重量部にし、メタノール(モノオール)をエタノール4.4重量部に変化させた以外は実施例1と同様にしてHDIポリイソシアネート組成物を得た。
得られた脂肪族ポリイソシアネート組成物は、透明の液体であり、不揮発分90%、イソシアネート基含有量15.3%(樹脂分イソシアネート基含有量として17.0%)で、HDIポリイソシアネート組成物中のウレタン結合含有量5.4%(計算値)であった。
【0041】
このHDIポリイソシアネート組成物を用いて実施例1と同様にして塗料を作製し、塗膜の評価を行った。140℃に保持されている乾燥オーブン中で30分間焼き付けた後も、この塗膜は透明であり、このHDIポリイソシアネート組成物と水酸基含有アクリルポリオール組成物の相溶性は良好であった。また耐化学薬品性、耐熱性、及び耐汚染性の評価結果も表1に示す通り良好であった。
【実施例3】
【0042】
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの量を11.7重量部にし、メタノール(モノオール)を1−プロパノール5.3重量部に変化させた以外は実施例1と同様にしてHDIポリイソシアネート組成物を得た。
得られた脂肪族ポリイソシアネート組成物は、透明の液体であり、不揮発分90%、イソシアネート基含有量15.5%(樹脂分イソシアネート基含有量として17.2%)で、HDIポリイソシアネート組成物中のウレタン結合含有量4.9%(計算値)であった。
【0043】
このHDIポリイソシアネート組成物を用いて実施例1と同様にして塗料を作製し、塗膜の評価を行った。140℃に保持されている乾燥オーブン中で30分間焼き付けた後も、この塗膜は透明であり、このHDIポリイソシアネート組成物と水酸基含有アクリルポリオール組成物の相溶性は良好であった。また耐化学薬品性、耐熱性、及び耐汚染性の評価結果も表1に示す通り良好であった。
【実施例4】
【0044】
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの量を11.8重量部にし、メタノール(モノオール)をn−ブチルアルコール6.5重量部に変化させた以外は実施例1と同様にしてHDIポリイソシアネート組成物を得た。
得られた脂肪族ポリイソシアネート組成物は、透明の液体であり、不揮発分90%、イソシアネート基含有量15.3%(樹脂分イソシアネート基含有量として17.0%)で、HDIポリイソシアネート組成物中のウレタン結合含有量4.9%(計算値)であった。
【0045】
このHDIポリイソシアネート組成物を用いて実施例1と同様にして塗料を作製し、塗膜の評価を行った。140℃に保持されている乾燥オーブン中で30分間焼き付けた後も、この塗膜は透明であり、このHDIポリイソシアネート組成物と水酸基含有アクリルポリオール組成物の相溶性は良好であった。また耐化学薬品性、耐熱性、及び耐汚染性の評価結果も表1に示す通り良好であった。
【実施例5】
【0046】
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの量を12.1重量部にし、メタノール(モノオール)をn−ヘキシルアルコール9.2重量部に変化させた以外は実施例1と同様にしてHDIポリイソシアネート組成物を得た。
得られた脂肪族ポリイソシアネート組成物は、透明の液体であり、不揮発分90%、イソシアネート基含有量15.3%(樹脂分イソシアネート基含有量として17.0%)で、HDIポリイソシアネート組成物中のウレタン結合含有量4.9%(計算値)であった。
【0047】
このHDIポリイソシアネート組成物を用いて実施例1と同様にして塗料を作製し、塗膜の評価を行った。140℃に保持されている乾燥オーブン中で30分間焼き付けた後も、この塗膜は透明であり、このHDIポリイソシアネート組成物と水酸基含有アクリルポリオール組成物の相溶性は良好であった。また耐化学薬品性、耐熱性、及び耐汚染性の評価結果も表1に示す通り良好であった。
【比較例1】
【0048】
HDIイソシアヌレート型ポリイソシアネート組成物(住化バイエルウレタン株式会社製、スミジュールN3300、イソシアネート基含有量21.8%、粘度3000mPa・s/25℃、不揮発分100%)を用いて、実施例1と同様にして塗料を作製し、塗膜の評価を行った。140℃に保持されている乾燥オーブン中で30分間焼き付けた後の塗膜は曇りを有しており、HDIイソシアヌレート型ポリイソシアネートと水酸基含有アクリルポリオール組成物の相溶性は不良であった。また、この塗膜は外観不良を起こしているため、耐化学薬品性、耐熱性、及び耐汚染性の評価をするに至らなかった。
【比較例2】
【0049】
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの量を12.2重量部、メタノール(モノオール)をn−ヘキシルアルコール10.2重量部に変化させた以外は実施例1と同様にしてHDIポリイソシアネート組成物を得た。
得られた脂肪族ポリイソシアネート組成物は、透明の液体であり、不揮発分90%、イソシアネート基含有量14.2%(樹脂分イソシアネート基含有量として15.8%)、HDIポリイソシアネート組成物ウレタン結合含有量は5.3%(計算値)であった。
【0050】
このHDIポリイソシアネート組成物を用いて、この実施例1と同様にして、塗料を作製し塗膜の評価を行った。140℃に保持されている乾燥オーブン中で30分間焼き付けた後の塗膜は透明であり、このHDIプレポリマー組成物と水酸基含有アクリルポリオール組成物の相溶性は良好であった。耐化学薬品性、耐熱性、及び耐汚染性の評価を行ったが、耐熱性は良好であったものの、耐化学薬品性は42℃で1%硫酸の滴下跡が塗膜表面に残りやや不良であり、耐汚染性も塗膜表面にインキが残存し不良であった。
【比較例3】
【0051】
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの量を12.0重量部、メタノール(モノオール)をn−ヘキシルアルコール8.3重量部に変化させた以外は実施例1と同様にしてHDIポリイソシアネート組成物を得た。
得られた脂肪族ポリイソシアネート組成物は、透明の液体であり、不揮発分90%、イソシアネート基含有量15.3%(樹脂分イソシアネート基含有量として17.0%)、HDIポリイソシアネート組成物中のウレタン結合含量は4.4%(計算値)であった。
【0052】
このHDIポリイソシアネート組成物を用いて、この実施例1と同様にして、塗料を作製し塗膜の評価を行った。140℃に保持されている乾燥オーブン中で30分間焼き付けた後の塗膜は曇りを有するため、HDIイソシアヌレート型ポリイソシアネート組成物と水酸基含有アクリルポリオール組成物の相溶性が不良であった。また、この塗膜は外観不良を起こしているため、耐化学薬品性、耐熱性、及び耐汚染性の評価するに至らなかった。
【比較例4】
【0053】
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの量を12.3重量部、メタノール(モノオール)を2−エチルヘキサノール11.1重量部に変化させた以外は実施例1と同様にしてHDIポリイソシアネート組成物を得た。
得られた脂肪族ポリイソシアネート組成物は、透明の液体であり、不揮発分90%、イソシアネート基含有量14.8%(樹脂分イソシアネート基含有量として16.4%)、HDIポリイソシアネート組成物中のウレタン結合含量は4.5%(計算値)であった。
【0054】
このHDIポリイソシアネート組成物を用いて、この実施例1と同様にして、塗料を作製し塗膜の評価を行った。140℃に保持されている乾燥オーブン中で30分間焼き付けた後の塗膜は透明であり、このHDIプレポリマー組成物と水酸基含有アクリルポリオール組成物の相溶性は良好であった。耐化学薬品性、耐熱性、及び耐汚染性の評価を行ったが、耐熱性は良好であったものの、耐化学薬品性は40℃未満で滴下跡が塗膜表面に残り不良であり、耐汚染性も塗膜表面にインキが残存し不良であった。
【比較例5】
【0055】
HDI−TMPアダクト型ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン株式会社製、スミジュールHT、イソシアネート基含有量13.0%、粘度260mPa・s/25℃、不揮発分75%(樹脂分イソシアネート基含有量として17.3%)を用いて、実施例1と同様にして塗料を作製し塗膜の評価を行った。
140℃に保持されている乾燥オーブン中で30分間焼き付けた後の塗膜は透明であり、このHDI−TMPアダクト型ポリイソシアネートと水酸基含有アクリルポリオール組成物の相溶性は良好であった。また、耐化学薬品性、耐熱性、及び耐汚染性の評価を行ったが、耐熱性は良好であったものの、耐化学薬品性は40℃未満でスポット跡が認められ不良であった。耐汚染性も塗膜表面にインキが残存し不良であった。
【比較例6】
【0056】
HDIビウレット型ポリイソシアネート組成物(バイエルマテリアルサイエンス株式会社製、デスモジュールN3200、イソシアネート基含有量23.0%、粘度1800mPa・s/23℃、不揮発分100%)を用いて、実施例1と同様にして塗料を作製し塗膜の評価を行った。
140℃に保持されている乾燥オーブン中で30分間焼き付けた後の塗膜は透明であり、このHDIビウレット型ポリイソシアネートと水酸基含有アクリルポリオール組成物の相溶性は良好であった。また、耐化学薬品性、耐熱性、及び耐汚染性の評価をした。これらの結果は、表1に示す通り、耐化学薬品性は40〜44℃で滴下跡が認められやや不良であった。耐熱性はΔb*値が1.3で不良であり、耐汚染性も塗膜表面にインキが残存し不良であった。
【比較例7】
【0057】
HDIビウレット型ポリイソシアネート(バイエルマテリアルサイエンス株式会社製、デスモジュールN3200:イソシアネート基含有量23.0%、粘度1800mPa・s/23℃、不揮発分100%)100重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート12.3重量部、n−ヘキシルアルコール10.3重量部に変化させた以外は実施例1と同様にしてHDIポリイソシアネート組成物を得た。
得られたHDIビウレット型ポリイソシアネートとn−ヘキシルアルコールから成る脂肪族ポリイソシアネート組成物は透明の液体であり、不揮発分90%、イソシアネート基含有量15.3%(樹脂分イソシアネート基含有量として17.0%)で、HDIポリイソシアネート組成物中のウレタン結合含有量は5.4%(計算値)であった。
【0058】
このHDIポリイソシアネート組成物を用いて、実施例1と同様にして塗料を作製し塗膜の評価を行った。140℃に保持されている乾燥オーブン中で30分間焼き付けた後の塗膜は透明であり、このHDIポリイソシアネート組成物と水酸基含有アクリルポリオール組成物の相溶性は良好であった。また耐化学薬品性は40〜44℃で滴下跡が認められやや不良であった。耐熱性はΔb*値が1.1で不良であり、耐汚染性も塗膜表面にインキが残存し不良であった。
【比較例8】
【0059】
樹脂分水酸基含有量が4.3%のアクリルポリオール組成物(バイエルマテリアルサイエンス株式会社製、デスモフェン A 870 BA、水酸基含有量3.0%、粘度3500mPa・s/23℃、不揮発分70%、溶剤種:酢酸ブチル)を用いた以外は 実施例1と同様にして評価を行った。
140℃に保持されている乾燥オーブン中で30分間焼き付けた後の塗膜はクモリを有しており、HDIイソシアヌレート型ポリイソシアネート組成物とこの樹脂分水酸基含有量が4.3%のアクリルポリオール組成物の相溶性は不良であった。この塗膜は外観不良を起こしているため、耐化学薬品性、耐熱性、及び耐汚染性の評価をするに至らなかった。
【0060】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の脂肪族ポリイソシアネート組成物は水酸基含有ポリオール組成物との相溶性が良好であるので、水酸基含有ポリオール組成物を組み合わせ、優れた塗膜特性を有する二液型ポリウレタン樹脂塗料としての使用が可能になる。これによって、優れた塗膜特性が要求される自動車補修用塗料、自動車上塗り塗料、自動車用プラスチック部品、家電用プラスチック等の各分野の塗料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ジイソシアネートから得られる脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネートに短鎖のモノオールを反応させて得られるウレタン結合含有ポリイソシアネートを含んでなる脂肪族ポリイソシアネート組成物であって、脂肪族イソシアヌレート型ポリイソシアネートと短鎖のモノオールを反応させて得られるウレタン結合の含有量が脂肪族ポリイソシアネート組成物中に4.5重量%以上であり、樹脂分イソシアネート基の含有量が16.5重量%以上である脂肪族ポリイソシアネート組成物。
【請求項2】
脂肪族ジイソシアネートが1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートである請求項1に記載の脂肪族ポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
短鎖のモノオールが炭素数1〜7のモノオールである請求項1に記載の脂肪族ポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の脂肪族ポリイソシアネート組成物と樹脂分水酸基含有量が5.0重量%以上の水酸基含有ポリオール組成物からなるポリウレタン樹脂塗料組成物。

【公開番号】特開2008−101087(P2008−101087A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283975(P2006−283975)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000183299)住化バイエルウレタン株式会社 (33)
【Fターム(参考)】