説明

脂肪族ポリエステルの製造方法及び製造装置

【課題】所望の分子量に正確かつ容易に設定することができる脂肪族ポリエステルの製造技術を提供する。
【解決手段】脂肪族ポリエステルの製造方法において、環状エステルを融点以上の温度に設定する工程と、前記環状エステルに含まれる水分を遊離カルボン酸に変換する工程と、融解状態の前記環状エステル中の遊離カルボン酸を定量する工程と、前記遊離カルボン酸の定量結果に基づいて定められるプロトン源化合物量を前記融解状態の環状エステルに供給する工程と、前記環状エステルを開環重合させる工程と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状エステルを開環重合して脂肪族ポリエステルを製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリグリコール酸やポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルは、土壌や海中などの自然界に存在する水、微生物または酵素により分解されるため、環境に対する負荷が小さい生分解性高分子材料として注目されている。
【0003】
脂肪族ポリエステルの中でも、ポリグリコール酸は、酸素ガスバリア性、炭酸ガスバリア性、水蒸気バリア性などのバリア性に優れ、耐熱性や機械的強度にも優れているので、包装材料などの分野において、単独で、あるいは他の樹脂材料などと複合化して用途展開が図られている。
【0004】
高分子量の脂肪族ポリエステルを効率よく製造するために、α−ヒドロキシカルボン酸の二量体環状エステルを開環重合する方法が採用されている。
例えば、グリコール酸の二量体環状エステルであるグリコリドを開環重合すると、ポリグリコール酸が得られる。乳酸の二量体環状エステルであるラクチドを開環重合すると、ポリ乳酸が得られる。またラクトンの開環重合によっても対応する脂肪族ポリエステルが得られる。
【0005】
このような環状エステルの開環重合に際し、脂肪族ポリエステルの分子量を制御するために、分子量調節剤として水やアルコール類が使用されている。一方で、この環状エステル中に水分や遊離カルボン酸などの不純物が含まれていると、重合反応に悪影響を及ぼし、同一重合条件であっても、脂肪族ポリエステルの分子量を所望の値にするターゲッティングが困難になることが指摘されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
このために、乾燥により水を可能な限り除去した高純度の環状エステルを使用し、環状エステル中に含まれる遊離カルボン酸を定量し、その量に基づいて重合反応系に添加する水酸基化合物の量を定めて投入し開環重合を行うことで所望の分子量の脂肪族ポリエステルを得る方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0007】
しかし、水は自然界に存在する最も普遍的な化合物であり、これを不純物として排除することには限界がある。そこで、環状エステル中に水分が存在する状況における分子量制御の方法について詳細な検討が行われ、遊離カルボン酸だけではなく水を含めた重合反応系内の全プロトン源化合物が開始剤または/及び分子量調節剤として作用することから、環状エステル中の水および遊離カルボン酸を含めた反応系内の全プロトン濃度を制御することにより、生成する脂肪族ポリエステルの分子量制御が可能であることが見出されている(例えば、特許文献2)。
【0008】
そのため、環状エステルに含まれる遊離カルボン酸および水分を各々定量して環状エステル中のプロトン濃度を導き出し、その量に基づいて重合反応系に添加するプロトン源化合物量を定めて投入し、重合反応系内の全プロトン濃度を調節してから開環重合して所望の分子量のポリグリコール酸を得る方法が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−233246号公報
【特許文献2】国際公開第2004/033527号
【特許文献3】国際公開第2005/044894号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、実際の工業的な製造では、分析結果を迅速に出して速やかに生産条件にフィードバックすることが求められている。上述した提案方法では、環状エステル中のプロトン濃度を見積もるために水分および遊離カルボン酸をそれぞれ分析しているために、その工数が増えてしまう。そのため、分析に時間を要してしまい、結果を生産条件へフィードバックするのにタイムラグが生じていた。
【0011】
また、上述した特許文献2、3に提案された方法では遊離カルボン酸および水分の両者を精度よく定量することが重要である。これまでの技術の発達により、環状エステル中の遊離カルボン酸を高精度に定量することが可能になっているが、一方、水分は取扱中に揮散したり、環状エステルと反応したりすることがあるため、現状において環状エステル中の水分を高精度に定量することは困難である。このために、上述した提案方法によっては、重合反応の開始直前における分子量制御のための環状エステル中のプロトン濃度(水分、遊離カルボン酸)の総量を高精度に見積もることが困難となっているのが実情である。このために、従来方法では、同一重合条件であっても、分子量がばらつきターゲッティングの精度に課題が見られた。
【0012】
この課題に対し鋭意検討を行った結果、発明者らは、環状エステル中の水分を環状エステルと反応させて遊離カルボン酸とし、従来環状エステル中に含有されていた遊離カルボン酸と、水分を反応させて生成された遊離カルボン酸を一括して定量することで、分析の迅速化と環状エステル中のプロトン濃度定量の高精度化の課題を一挙に解決できることを見出し、発明の完成に至った。本発明を実施することで水分測定の必要がなくなり、評価項目が遊離カルボン酸に一本化されて分析の迅速化が図られる。そのため、生産条件へのフィードバックが短時間に行なわれ、効率的な製造を行うことが可能になる。また、遊離カルボン酸は環状エステル中で安定に存在しているので前述の通り高精度に定量することが可能である。
【0013】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、分析の迅速化を図り、分子量制御のための環状エステル中のプロトン濃度を高精度に見積もることで、容易かつ正確に所望の分子量にすることができる脂肪族ポリエステルの製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法は、環状エステルを融点以上の温度に設定する工程と、前記環状エステルに含まれる水分を遊離カルボン酸に変換する工程と、融解状態の前記環状エステル中の遊離カルボン酸を定量する工程と、前記遊離カルボン酸の定量結果に基づいて定められるプロトン源化合物量を前記融解状態の環状エステルに供給する工程と、前記環状エステルを開環重合させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
環状エステルを融点以上に設定して水分を環状エステルと化学反応させて遊離カルボン酸に変化させ、環状エステルの製造過程で不可避的に含まれる遊離カルボン酸と併せて定量することにより、重合直前における融解状態の環状エステル中のプロトン濃度を正確に見積もることが出来る。そして、その環状エステル中のプロトン濃度に基づいてプロトン源化合物を供給し、重合反応系内の全プロトン濃度を調節してから開環重合することで、所望の分子量の脂肪族ポリエステルを得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、所望する分子量に容易かつ正確に設定することができる脂肪族ポリエステルの製造方法及び製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る脂肪族ポリエステルの製造方法に適用される製造装置の一例を示すブロック図。
【図2】グリコリドを開環重合してポリグリコール酸樹脂を得る反応において、本発明の製造方法により重合されるポリグリコール酸の温度240℃、剪断速度122sec−1における溶融粘度と重合反応系内の全プロトン濃度との相関を示すグラフ。
【図3】グリコリドに水分を混入し所定温度(100℃,120℃,140℃)で保持した場合の系内の遊離カルボン酸濃度の変化を示すグラフ。
【図4】各環境下において融解状態のグリコリドの保持温度に対する遊離カルボン酸の当量数の変化を示すグラフ。
【図5】遊離カルボン酸を定量する分析法の一つであるUV−VIS法の検量線を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明の実施形態を説明する。
(環状エステルを融点以上の温度に設定する工程)
環状エステルを計量して融解槽に仕込んだ後に、融解槽を融点以上の温度に設定する。前述した融解槽は、85℃〜160℃の範囲に設定することが好ましく、90℃〜120℃の範囲で温度設定することがより好ましい。85℃よりも低温であると環状エステルの融解が進行せず、160℃よりも高温では環状エステルが分解してしまう可能性がある(後述する「融解グリコリドの維持時間の検討」の項参照)。融解槽の加熱手段は特に限定されないが、温度制御可能なオイルバスに融解槽を浸漬させる方法、融解槽の外部にジャケットを設けて温水、スチーム、熱媒油などの熱交換媒体を循環させる方法、融解槽外部から電気ヒーターで加熱する方法、融解槽を熱風循環炉に入れる方法などが挙げられる。
【0019】
(環状エステルに含まれる水分を遊離カルボン酸に変換する工程)
融解槽の温度設定後、環状エステルに含まれる水分を遊離カルボン酸に変換するために環状エステルを融点以上の温度で一定時間以上維持することで、水分が環状エステルと等モルで加水分解反応し、水分と等モルの遊離カルボン酸に変換する。維持時間は1時間以上であることが好ましく、2時間以上であることがより好ましく、3時間以上維持されることが特に好ましい。環状エステルを融点以上の温度で維持する時間が1時間未満であると、水分が環状エステルと反応して遊離カルボン酸に変換する割合が低下してしまい、遊離カルボン酸の定量結果から見積もられる環状エステル中のプロトン濃度が不正確となる。
【0020】
その結果、後工程で適正量のプロトン源化合物を供給することができず、所望する分子量の脂肪族ポリエステルを得ることができない(後述する「融解グリコリドの維持時間の検討」の項参照)。また、本工程の目的は、環状エステル中のプロトン濃度を正確に見積もるために環状エステル中の水分を遊離カルボン酸に変換することであり、その変換場所は融解槽内に限定する必要は無く、融点以上の温度に設定した直後の環状エステルを分取し、分取したサンプルを別個に融点以上の温度に維持して遊離カルボン酸に変換し、その遊離カルボン酸濃度を定量する方法も適用することが出来る。
【0021】
(融解状態の環状エステル中の遊離カルボン酸を定量する工程)
環状エステルに含まれる水分を遊離カルボン酸に変換した後に環状エステルを分取し、環状エステル中の遊離カルボン酸濃度を定量する。定量方法としては、中和液滴定法、ガスクロマトグラフィー法(GC法)、UV−VIS分光測定法が好ましく用いられる。しかし、これらに限定されるものでは無く、分取した環状エステルに含まれる微量な遊離カルボン酸を高精度で定量することができるものであれば適宜採用される。
【0022】
中和滴定法は、環状エステルを溶解させた試験液の酸性度を確認しながら、塩基性の中和液を滴下し中和点を求める方法である。試験液の溶媒には、アセトン、メタノール、ベンジルアルコール、DMSO、DMF、DMAc、中和液には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムイソプロポキシド、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジアザビシクロウンデセンを、アセトン、メタノール、エタノール、HFIP、DMSOおよびその混合溶液で溶解した液を用いることが出来る。中和点の検出方法にはフェノールフタレイン、フェノールレッド、ブチルチモールブルー(BTB)、ブチルチモールブルーナトリウム(BTBNa)、メチルレッド、メチルオレンジ等の呈色試薬を用いて変色を検出する方法やpHメーターを用いてpHの変化を検出する方法を用いることが出来る。
【0023】
GC法は、ジアゾメタン等のメチル化剤を用いて環状エステル中の遊離カルボン酸をメチルエステル化させ、そのメチルエステル化物をGCで定量する方法であり、適宜メチル化剤、GC測定条件を選定することが出来る。
【0024】
UV−VIS分光測定法は、環状エステルを前述の中和滴定法にて例示した溶媒に溶解させ、前述の中和滴定法にて例示した呈色試薬を添加して試験液を作成し、試験液のUV−VISスペクトルを測定してそのピーク波形に基づいて事前に作成した検量線から遊離カルボン酸濃度を求める方法である。例えば呈色試薬としBTBを使用した場合にUV−VISスペクトル測定を行なうと412nmおよび636nmにピークが見られるが、サンプル中の遊離カルボン酸濃度によってこの比率が変化するので、UV−VIS測定で得られた量ピークの比率からサンプル中の遊離カルボン酸濃度を求めることが出来る。この手法は前述の2方法と異なり、瞬時に測定を行うことが出来るため、分析の迅速性を高める観点から好ましく用いられる。
【0025】
環状エステル中に含まれるプロトン濃度は、環状エステルの分子量、遊離カルボン酸の分子量及び含有量、遊離カルボン酸の水酸基数(通常1個)に基づいて算出され、環状エステルと不純物との合計量を基準とするモル%として算出される。環状エステル中に含まれるプロトン濃度は、好ましくは0.5モル%以下、より好ましくは0.4モル%以下、特に好ましくは0.35モル%以下である。遊離カルボン酸に基づくプロトン濃度が高すぎると、次工程のプロトン源化合物添加による溶融粘度や分子量などの正確な制御が困難になる。
【0026】
(遊離カルボン酸の定量結果に基づいて定められるプロトン源化合物量を融解状態の環状エステルに供給する工程)
重合反応系内の全プロトン濃度と、重合される脂肪族ポリエステルの分子量との関係を説明する。図2のグラフは、本発明者らが本発明に基づいて重合を実施し、グリコリド(環状エステル)重合反応系内の全プロトン濃度(x)に対し重合されるポリグリコール酸(脂肪族ポリエステル)の温度240℃、剪断速度122sec−1における溶融粘度(y)を測定した結果を示している。
【0027】
ここで、縦軸の脂肪族ポリエステルの溶融粘度は、この脂肪族ポリエステルの分子量に対応した値をとる。従って、脂肪族ポリエステルの溶融粘度を制御することは分子量を制御することに相当する。このグラフに示すように環状エステルの開環重合工程において、重合反応系内の全プロトン濃度と生成する脂肪族ポリエステルの溶融粘度との間には相関因果関係が得られている。この回帰分析の結果からは、線形モデル、両対数モデル、半対数モデルの関係式が成立し、これらの中でも、y=a×bで表される半対数モデルの関係式が、重相関R及び重決定Rが高い。
【0028】
この関係式に目標とする溶融粘度(y)を代入すると、それに対応する重合反応系内の全プロトン濃度(x)が算出される。ここで、重合反応系内の全プロトン濃度は環状エステル中のプロトン濃度と重合反応系内に供給したプロトン源化合物に基づくプロトン濃度を合算した値であるので、重合反応系内の全プロトン濃度と環状エステル中のプロトン濃度との差を算出し、その差の量に相当するプロトン源化合物を供給すると、目標とする溶融粘度を有する脂肪族ポリエステルを得ることが出来る。
【0029】
プロトン源化合物の例としては、水および水酸基化合物が挙げられる。水酸基化合物としては、炭素数が1〜5の鎖式アルコールである低級及び中級アルコール類、又は炭素数6以上の鎖式アルコールである高級アルコール類が挙げられる。またこれらの脂肪族アルコール類は、分岐構造を有していてもよい。また脂環式アルコール類、不飽和アルコール類、芳香族アルコール類、ポリオール類等が挙げられる。また、水酸基を有するヒドロキシカルボン酸類、糖類等も用いられる。
【0030】
これらの中で、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、2−ブタンオール、t−ブチルアルコール、オクチルアルコール、ドデシルアルコール(ラウリルアルコール)、ミリスチルアルコールなど炭素数3以上の中級及び高級アルコール類、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコール類、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなどのジオール類、グリセリンなどのトリオール類がモノマーへの溶解性、反応性(開始剤効率)、沸点の観点及び工業的入手性の観点から好ましい。これらの水酸基化合物は、二種以上併用してもよい。
【0031】
プロトン源化合物は、上記化合物に限定されるものではなく、図2に示されるような脂肪族ポリエステルのプロトン源化合物として機能するものであれば、適宜利用することができる。プロトン源化合物の使用量は前述の通り、図2から導かれる所望の溶融粘度(分子量)に対応するプロトン濃度から、遊離カルボン酸の定量結果に対応するプロトン濃度を差し引いた値を与える量となる。
【0032】
(環状エステルを開環重合させる工程)
環状エステルを用いて脂肪族ポリエステルを製造するには、環状エステルを触媒の存在下に加熱して溶融状態の環状エステルを開環重合する方法を採用することが好ましい。この重合法は、実質的に塊状での開環重合法であり、反応缶や管型あるいは塔型、押出機型反応装置を用い、バッチ式あるいは連続式で行うことが出来る。開環重合は通常100〜270℃、好ましくは120℃〜260℃の範囲内の温度で行われる。
【0033】
さらに、前述の溶融状態の環状エステルを複数の管(両端が開閉可能な管も好ましく用いられる)を備えた重合装置に移送し、各管内で気密状態で開環重合して生成ポリマーを析出させる方法が好ましく用いられる。また溶融状態の環状エステルを撹拌機付き反応缶中で開環重合を進行させた後、生成したポリマーを取り出し、一度ポリマーを冷却固化させた後、ポリマーの融点以下で固相重合反応を継続する方法も好ましい。大量生産を行なう時には後者の方法が好ましく選択される(後述する「製造装置例」の項参照)。尚、これらの方法はバッチ式または連続式のいずれの方法によっても行うことができる。
【0034】
本発明で用いる環状エステルとしては、α−ヒドロキシカルボン酸の二量体環状エステル及びラクトンが好ましい。二量体環状エステルを形成するα−ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、L−及び/またはD−乳酸、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸、α−ヒドロキシカプロン酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸、α−ヒドロキシヘプタン酸、α−ヒドロキシオクタン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシミリスチン酸、α−ヒドロキシステアリン酸、及びこれらのアルキル置換体などを挙げることができる。
【0035】
ラクトンとしては、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。また環状エーテルエステルとしては、例えばジオキサノンなどが挙げられる。
【0036】
環状エステルは、不斉炭素を有する物は、D体、L体、及びラセミ体のいずれでもよい。これらの環状エステルは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上の環状エステルを使用すると、任意の脂肪族コポリエステルを得ることができる。環状エステルは、共重合可能なその他のコモノマーと共重合させることができる。他のコモノマーとしては、例えば、トリメチレンカーボネート、ジオキサノンなどの環状モノマーなどが挙げられる。
【0037】
環状エステルの中でも、グリコール酸の二量体環状エステルであるグリコリド、L−及び/またはD−乳酸の二量体環状エステルであるL−及び/またはD−ラクチド、及びこれらの混合物が好ましく、グリコリドがより好ましい。グリコリドは、単独で使用することができるが、他の環状モノマーと併用してポリグリコール酸共重合体(コポリエステル)を製造することもできる。ポリグリコール酸共重合体を製造する場合、生成コポリエステルの結晶性、ガスバリア性などの物性上の観点から、共重合体中のグリコリドの割合は、好ましくは60重量%、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上とすることが望ましい。また、グリコリドと共重合させる環状モノマーとしては、ラクチド、ε−カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、ジオキサノンが好ましい。
【0038】
触媒としては、例えば、スズ(Sn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge),ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)など金属化合物の酸化物、ハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコキシドなどが挙げられる。より具体的には、二塩化スズ、四塩化スズなどのハロゲン化スズ、2−エチルヘキサン酸スズなどのオクタン酸スズ、アルコキシチタネートなどのチタン系化合物、アルコキシアルミニウムなどのアルミニウム系化合物、ジルコニウムアセチルアセトンなどのジルコニウム系化合物、ハロゲン化アンチモンなどのアンチモン系化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく環状エステルを開環重合させるものであれば適宜利用することができる。触媒の使用量は、一般に、環状エステルに対して少量でよく、環状エステルを基準として、重量基準で通常0.1ppm〜300ppm、好ましくは1ppm〜100ppm、より好ましくは10ppm〜60ppmである。
【0039】
(融解状態の環状エステルの保持)
脂肪族ポリエステルの製造形態によっては、環状エステルが前述の「融解状態の環状エステル中の遊離カルボン酸を定量する工程」を経た後に「環状エステルを開環重合させる工程」に供されるまでの間に、環状エステルを融解状態で長時間保持する場合がある。環状エステルの融解状態の保持中にはプロトン濃度は一定の値を保っていることが好ましく、カルボン酸濃度が変化することの少ない条件で保持することが好ましい。具体的には、融解状態の環状エステルを85℃以上110℃未満の範囲、好ましくは90℃〜105℃の範囲で保持することが好ましい。保持温度が85℃よりも低温であると融解状態の環状エステルが再結晶化する可能性があり、110℃以上の高温では気相中の酸素との相互作用により遊離カルボン酸の濃度が上昇する場合がある(後述する「融解グコリドの保持温度の影響」の項参照)。
【0040】
(製造装置例)
以下、製造装置の一例を添付図面に基づいて説明する。図1に示すように脂肪族ポリエステルの製造装置10(以下、装置10という)は、環状エステルを融点以上の温度に設定し前記環状エステルに含まれる水分を遊離カルボン酸に変換する融解槽21と、遊離カルボン酸を定量するために前記融解状態の環状エステルを分取する分取部32と、前記定量結果に基づいてプロトン源化合物を前記融解状態の環状エステルに供給する供給部33と、前記環状エステルを開環重合させる重合部40と、を備えている。
【0041】
融解槽21は、前述の「環状エステルを融点以上の温度に設定する工程」で説明した温度に設定され、その温度条件で前述の「環状エステルに含まれる水分を遊離カルボン酸に変換する工程」で説明した時間維持される。
【0042】
貯留槽23は、融解槽21の下流側に備えられ、前述の「融解状態の環状エステルの保持」で説明した条件で保持され、弁22の間欠的な開閉動作により、液面レベルが所定範囲に入るように融解状態の環状エステルの供給を融解槽21から受ける。そして、貯留槽23に収容された融解状態の環状エステルは、多段パドル翼で攪拌される。
【0043】
配管30は、弁31を開弁した状態で、溶融状態の環状エステルを一定速度で重合部40に搬送するポンプ(図示略)が設けられている。さらに配管30には、融解状態の環状エステルの分取部32、プロトン源化合物の供給部33、及び環状エステルの開環重合の開始剤である触媒の投入部34が設けられている。
【0044】
そして、分取部32の先には、融解状態の環状エステルに含まれる遊離カルボン酸を定量する定量手段35が設けられている。遊離酸の定量手段35としては、前述の「融解状態の環状エステル中の遊離カルボン酸を定量する工程」で挙げられている方法が採用される。融解状態の環状エステルの一部が分取部32で分取され、定量手段35において遊離カルボン酸の総量が定量されることになる。
【0045】
そして、供給部33は、図2から導かれる所望の溶融粘度(分子量)に対応するプロトン濃度から定量手段35で計測された遊離カルボン酸の当量数を差し引いた値に相当するプロトン源化合物を供給する。このようにして、融解状態の環状エステルのプロトン濃度を所定値に調節した後に、触媒を投入部33から投入し重合部40で開環重合して所望の分子量の脂肪族ポリエステルを得る。
【0046】
重合部40は、溶融状態を維持しつつ環状エステルを重合率が5%〜50%より好ましくは10%〜40%となるように開環重合させる予備重合器41と、さらに重合率が50〜90%より好ましくは60%〜87%となるように開環重合させる本重合器42と、この本重合器42から排出される高粘性の溶融体を脂肪族ポリエステルの融点以下に冷却して固化・粉砕する固化粉砕器43と、この固化粉砕器43から排出される固体粉砕物を脂肪族ポリエステルの融点以下に長時間保持して重合率が98%以上好ましくは99%〜100%となるようにして残留モノマー量を2%以下より好ましくは1%以下とする固相重合器44と、から構成される。なお、図示される重合部40は、例示であって、このような形態に限定されるものではない。
【0047】
なお、重合部40から排出された脂肪族ポリエステルの固形物は、熱安定性を向上させる熱安定剤、耐水性(耐加水分解性)を向上させるカルボキシル基封止剤、機械的強度を向上させる充填材、及びその他の特性を付与する添加剤ともに、図示略の混練装置に投入して溶融混練してペレット化することが好ましい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、本明細書に記載の特性値は、既に測定方法を記載したもの以外については、以下の方法による測定値に基づくものである。
【0049】
<溶融粘度>
キャピラリー(1mmf×10mmL)を装着した安田精機製作所半自動キャピラリーレオメータ(140SAS2002)を用いて測定した。設定温度240℃に加熱保持した装置に、サンプルを導入し、240秒保持した後に、剪断速度121sec-1での溶融粘度(単位:Pa・s)を測定した。
【0050】
<グリコリド中の遊離カルボン酸の定量方法>
(1)中和滴定法
グリコリド約5gを精秤し、25mLのアセトンおよび25mLのメタノールに溶解させる。ナトリウムメトキシドを含むメタノール溶液を中和液として滴定を行い中和点を検出する。検出した中和点から遊離カルボン酸濃度のグリコリド1t当りに存在する当量数(単位eq/t)として算出する。
【0051】
(2)GC法
グリコリド中のグリコール酸単量体及びグリコール酸2量体の含有量を測定し、OH量を算出する。サンプル約1gを精秤し、内部標準物質の4−クロロベンゾフェノン(関東化学(株)製)を加え、5mLのアセトンに溶解させる。この試料液を1mL分取した後、ジアゾメタンを加えてグリコール酸の単量体及び2量体をメチル化する。試験液をろ過した後、1μLを採取してガスクロマトグラフィーに注入してメチルエステル化したグリコール酸及びグリコール酸2量体量を測定。測定結果から遊離カルボン酸濃度の当量数(単位eq/t)として算出する。
【0052】
・GC条件
装置:(株)島津製作所製「GC−2010」
カラム:キャピラリーカラムTC−17、30m×0.25mm
カラム温度:50℃で5分間保持、20℃/minで270℃まで昇温、270℃3分間保持
インジェクション温度:280℃
検出器:FID(水素炎イオン化検出器)、温度:300℃
【0053】
(3)UV−VIS法
グリコリド約3.8gを精秤し、ジメチルスルホキシド(DMSO)を25mL加えて溶解させた後、0.1wt%のブロモチモールブルーナトリウム液を添加した後、光路長10mmの石英セルに入れて800nm〜300nmの範囲で分光測定を行う。分光測定値から412nm及び636nmの吸光度を読み取り、その吸光度の比率(Abs412/Abs636)を算出する。あらかじめ作製しておいた検量線(図5)の結果から遊離カルボン酸濃度をグリコリド1t当りに存在する当量数(単位eq/t)として算出する。
【0054】
図5のグラフは、UV−VIS法の検量線を示している。
・検量線の作成(図5)
グリコール酸を標準物質として、0.1eq/t,1eq/t,3eq/t,5eq/tのDMSO溶液を作製して標準液とする。これを約3800mg精秤し、上記UV−VIS法手順に従った分光測定値から412nm及び636nmの吸光度を読み取り、Abs412/Abs633の比率を算出し、検量線を作製する。
【0055】
<融解グリコリドの維持時間の検討>
グリコリドに含まれる水分を遊離カルボン酸に変換させるのに必要な加熱状態の維持時間について検討した。
窒素置換したグローブボックスの中で粉状グリコリド100gに水100mgを添加した検体を三つ作製する。それぞれの検体を100℃,120℃,140℃の温度で加熱し、遊離カルボン酸の経時測定を行なった。
表1は、経過時間におけるグリコリド1t当りに存在する遊離カルボン酸の当量数(単位eq/t)と、その増加量(Δeq/t)を示したものである。
図3は、この増加量(Δeq/t)について経時プロットしたものである。
【0056】
【表1】

【0057】
表1,図3の結果より、100℃,120℃,140℃のいずれの温度においても120minまでは遊離カルボン酸が大きく増加するのに対し、120min以降の変化は殆どみられない(1eq/t未満)。このために、加熱状態を2時間以上維持することでグリコリド内の水分の殆どが遊離カルボン酸に変換されたといえる。
【0058】
ところで、投入した水分100mg(100mg/18=5.556mmol)の全てが、グリコリド100g中で遊離カルボン酸に変換されたとすれば、当量数に換算すると55.56eq/tになる。しかし、表1の結果は、その10%程度の値となっている。これは、粉状グリコリドに混入した水分の多くは、加熱融解の過程において系外に揮発したと考えられる。
このように加熱融解の過程において粉状グリコリドから水分が揮発することで、生成する遊離カルボン酸が少なくなる。その結果、重合して得られるポリグリコール酸中のカルボン酸量が減少し、その加水分解速度が遅くなる特徴を示す。
【0059】
また、設定温度が高くなるにしたがい、融解グリコリドに含まれる遊離カルボン酸が増えることについては、高温では水分の揮発速度よりも、水分の遊離カルボン酸への変換速度が大きいことによると考えられる。
これより融解槽21の設定温度は、揮発する水分量を増やし遊離カルボン酸に変換するのを抑制しながらグリコリドを融解するために、85℃〜160℃の範囲、好ましくは90℃から120℃の範囲で設定する。
【0060】
<融解グコリドの保持温度の影響>
グリコリドを融解状態で保持した際に、グリコリド中の遊離カルボン酸濃度が変動することのない、適切な保持条件について検討した。
窒素もしくは乾燥空気(露点−40℃以下)で置換したグローブボックスの中で粉状グリコリド100gを設置し、それぞれの検体を83℃、97℃、100℃,110℃,140℃の温度で加熱し、初期値(0min経過時)と240分経過した時点でサンプリングを行い遊離カルボン酸の定量を行なった。表2は、初期値(0min経過時)、240min経過時におけるグリコリド1t当りに存在する遊離カルボン酸の当量数(単位eq/t)と、その増加量(Δeq/t)を示したものである。図4のグラフは、この増加量(Δeq/t)について温度および雰囲気条件毎にプロットしたものである。
【0061】
【表2】

【0062】
この結果より、グリコリドは、窒素環境では設定温度により遊離カルボン酸が増加しないが、乾燥空気雰囲気下で110℃以上において遊離カルボン酸の増加が見られた。これに対し、乾燥空気雰囲気下で、100℃以下にした場合の遊離カルボン酸の増加は、最大で1.0eq/tに抑制される。これより、貯留槽23で融解グコリドを空気雰囲気下で貯留する時は、85℃(GLの融点)以上、110℃未満に温度設定することが好ましい。
【0063】
<製造条件>
図1に示す製造装置を用いた。製造条件としては、融解槽21に収容した粉状グリコリドを95〜105℃に温度設定し融解後3時間貯留した。その後、弁22を開いて、融解グリコリドを95〜105℃に温度設定した貯留槽23に投入した。この貯留槽23から予備重合器41への融解グリコリドの供給量を30kg/hrとなるようにした。
【0064】
重合反応系の全プロトン濃度合計値が目標値として0.28mol%(目標とする溶融粘度850Pa・s(240℃),図2参照)となるように、供給部33からラウリルアルコールを連続的に供給する。このラウリルアルコールの供給量は、この目標値(0.28mol%)から遊離カルボン酸の定量結果(環状エステル中のプロトン濃度)を差し引いた値に相当する量となる。
そして、二塩化スズ(触媒)の酢酸エチル溶液(濃度0.015g/mol)をグリコリドに対して30ppm(二酸化スズ重量基準)となるように設定して、投入部34から連続的に投入した。
【0065】
予備重合器41は、底部から供給される融解グリコリドを、二軸の多段パドル翼で攪拌する内容積1.8Lの縦型円筒状満液型であり、180℃に設定した。本重合器42は、同方向・回転二軸横型で200℃〜210℃に温度設定した。
【0066】
固化粉砕器43は、同方向二軸横型で80℃に温度設定した。固相重合器44は、内容量1m3の逆円錐状であり、遊星型スクリュー攪拌機を備え、温度制御が可能である。この固相重合器44で、固化粉砕器43からの粒状反応物を約480kgまで蓄積し、170℃で2時間固相重合を行った。さらに、得られたポリグリコール酸樹脂を粉砕して粒径6mm以下の大きさにし、約470kgを得た。
【0067】
<プロトン濃度の算出方法>
グリコリド中のプロトン濃度は遊離カルボン酸濃度または、グリコール酸単量体およびグリコール酸二量体の定量結果から以下のように算出される。
[遊離カルボン酸濃度から算出]
(遊離カルボン酸濃度)×116.072÷10000=(グリコリド中のプロトン濃度)
[グリコール酸単量体およびグリコール酸二量体量から算出]
((グリコール酸量)÷76.051+(グリコール酸二量体量)÷134.09)×116.072÷10000=(グリコリド中のプロトン濃度)
【0068】
<ラウリルアルコール供給量の算出方法>
グリコリド中のプロトン濃度から算出されたラウリルアルコールプロトン濃度を算出し重合系内にラウリルアルコール量を供給することになる。その供給量は以下のように算出される。
(グリコリド供給量)÷116.072×(ラウリルアルコールプロトン濃度)×186.34÷100=(ラウリルアルコール供給量)
【0069】
<実生産の実施>
前述の製造条件に基づいて、グリコリドを原料として用いたポリグリコール酸の試作生産を行なった。
表3の実施例1から実施例5に、分取部32から融解グリコリドをサンプリングして遊離カルボン酸を定量分析した結果、分析結果から算出されるグリコリド中のプロトン濃度、定量結果に基づいて設定した供給部33から供給されるアルコール濃度、重合系内の全プロトン濃度を示す。ここで、各実施例における遊離カルボン酸の定量方法として中和滴定法(※1)、GC法(※2)、UV−VIS法(※3)のうちいずれかを採用している。なお、GC法において、グリコール酸の単量体と2量体とをそれぞれ別々に定量したが、単量体は検出されなかった。更に実施例1〜実施例5について、得られたポリグリコール酸樹脂の溶融粘度の測定値を示す。
【0070】
また比較例1,比較例2として、融解槽21に収容される前の粉状グリコリドをサンプリングして、同様の遊離カルボン酸の定量分析を行った。そして、分析結果に基づいてグリコリド中のプロトン濃度を算出し、その結果に基づいてアルコール供給濃度を設定して試作生産を行なった。各条件および得られたポリグリコール酸樹脂の溶融粘度も表3に併せて示す。
【0071】
また比較例3として、融解槽21におけるグリコリドの融解温度を120℃として、貯留槽23の保持温度も120℃に設定した場合の、同様の結果も表3に示す。なお、参考例における遊離カルボン酸の定量は、弁22から分取した融解グリコリドに対して行っている(本発明が実施されるより前の実験データを採用している)。
【0072】
【表3】

【0073】
実施例と比較例1,2の結果を検討する。
実施例1〜実施例5の溶融粘度については、目標値が約850Pa・sであるのに対し、最大で5%程度の誤差範囲に留まっている。
比較例1では、目標値が約850Pa・sであるのに対し、702Pa・s(18%誤差)となった。
比較例2では、プロトン濃度合計値が0.25mol%であることから目標値が1130Pa・s(図2参照)であるのに対し、660Pa・s(−40%誤差)となった。
この結果より、融解グリコリドを一定時間維持して、含まれる水分を遊離カルボン酸に変換した後に、系全体の遊離カルボン酸の定量を行うことにより、系内のプロトン濃度を正確に見積もり、ポリグリコールの分子量を高精度で設定することができることが確認される。
【0074】
実施例と比較例3の結果を検討する。
比較例3では、溶融粘度の目標値が約850Pa・sであるのに対し、640Pa・s(26%誤差)となった。
これは、比較例3では、乾燥空気雰囲気で貯留した溶融グリコリドの保持温度が高かったために、貯留槽23において遊離カルボン酸が表2で示す値よりもさらに増加したためと考えられる。
【0075】
実施例1と同じ製造条件及び定量条件により、連続的に5バッチ生産を行い、生産安定性を確認した結果を表4に示す。その結果、240℃の溶融粘度は、平均値834Pa・s、標準偏差22Pa・sという結果が得られた。
【0076】
【表4】

【符号の説明】
【0077】
10…製造装置、21…融解槽、22…弁、23…貯留槽、30…配管、31…弁、32…分取部、33…供給部、34…投入部、35…定量手段、40…重合部、41…予備重合器、42…本重合器、43…固化粉砕器、44…固相重合器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状エステルを融点以上の温度に設定する工程と、前記環状エステルに含まれる水分を遊離カルボン酸に変換する工程と、融解状態の前記環状エステル中の遊離カルボン酸を定量する工程と、前記遊離カルボン酸の定量結果に基づいて定められるプロトン源化合物量を前記融解状態の環状エステルに供給する工程と、前記環状エステルを開環重合させる工程と、を含むことを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法。
【請求項2】
前記環状エステルを融点以上の温度に設定した状態を1時間以上維持することにより前記水分を遊離カルボン酸に変換することを特徴とする請求項1に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
【請求項3】
前記環状エステルを融点以上の温度に設定した状態を2時間以上維持することにより前記水分を遊離カルボン酸に変換することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
【請求項4】
前記環状エステルを85℃〜160℃の範囲に温度設定して前記水分を遊離カルボン酸に変換することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
【請求項5】
前記水分を遊離カルボン酸に変換させた後の前記融解状態の環状エステルを85℃以上110℃未満の範囲で保持する工程を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
【請求項6】
融解状態の環状エステル中の遊離カルボン酸を定量する方法として中和滴定法、GC法、UV−VIS法のいずれか一つを用いることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
【請求項7】
前記環状エステルは、グリコリド又はラクチド又はそれらの混合物であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
【請求項8】
前記プロトン源化合物が、炭素数3以上の中級及び高級アルコール、脂環式アルコール類、ジオール類、トリオール類の中から選択されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
【請求項9】
環状エステルを融点以上の温度に設定し融解状態の前記環状エステルに含まれる水分を遊離カルボン酸に変換する融解槽と、遊離カルボン酸を定量するために前記融解状態の環状エステルを分取する分取部と、前記定量結果に基づいて定められるプロトン源化合物量を前記融解状態の環状エステルに供給する供給部と、前記環状エステルを開環重合させる重合部と、を備えることを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−251112(P2012−251112A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126634(P2011−126634)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】