説明

脂肪族ポリエステルの製造方法

【課題】本発明が解決しようとする課題は、従来の脂肪族ポリエステルの重合法に比べて収率が改善された脂肪族ポリエステル製造方法を提供することである。
【解決手段】課題解決の手段は、脂肪族環状エステル(a)を溶融状態にて開環重合する事により、重量平均分子量が100,000〜600,000、脂肪族環状エステルを20〜70重量%含む脂肪族ポリエステル(b)を得、これを造粒し、該脂肪族ポリエステルが溶解しない状態で有機溶媒と接触させる事により、脂肪族環状エステルを0〜2重量%含む重量平均分子量が100,000〜600,000の脂肪族ポリエステルを製造する方法において、脂肪族ポリエステルと接触させた後の有機溶媒に含まれる脂肪族環状エステルを精製処理して脂肪族環状エステルを得、これを再び重合原料として使用する事である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な脂肪族ポリエステルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微生物などの作用により生体内又は環境中で分解される脂肪族ポリエステルは生体吸収性又は生分解性プラスチックの一つとして近年注目を集めている。その中でも特に脚光を浴びているのがポリ(p−ジオキサノン)[式(2)において、R、R、及びRのいずれも−Hであり、Xが酸素原子である脂肪族ポリエステル]である。ポリ(p−ジオキサノン)は、p−ジオキサノンの開環重合により合成され、非常に優れた柔軟性と加水分解性を有するので、手術用モノフィラメント、また外科用のデバイスとして医療分野で好適に用いられているだけでなく、既存の生分解プラスチックと同様、汎用プラスチックの代替品としての用途も期待されている。
【0003】
ポリ(p-ジオキサノン)の製造方法に関しては特許文献1で開示されているような塊状重合法(固相重合法)や特許文献2で開示されているような溶融重合法が知られている。p−ジオキサノンを開環重合してポリ(p−ジオキサノン)を得る反応は平衡反応であるので、反応温度の低い塊状重合は転化率が高く、高収率でポリ(p−ジオキサノン)の得られる長所がある一方、重合開始時にモノマーが溶融状態でありながら重合途中に固化させて塊状重合を行う為、工業的製造法の観点から見ると反応機からポリマーを取り出す操作が非常に難しいという短所がある。また、反応温度の高い溶融重合は塊状重合法で見られるような重合中の相変化が無いので工業的製法に適している長所はあるが、転化率が低いので収率は低く、ポリマー中にモノマーが多く残留してしまう短所がある。
【0004】
既に述べた通り、ポリ(p−ジオキサノン)はその優れた特性から用途の拡大が見込まれている中、ポリ(p−ジオキサノン)の工業的製造方法を確立する事は非常に重要である。特許文献2にはモノマーリサイクルを含んだp−ジオキサノンの溶融重合用連続プロセスが開示されている。具体的には、(a)p−ジオキサノンと有効量の重合触媒からなる反応混合物を、溶融状態のポリ(p−ジオキサノン)と未反応のp−ジオキサノンの混合物からなる反応生成物を製造する為に有効な温圧条件下で加熱する、(b)反応生成物を固化させて、それを大多数の固体粒子に分ける、(c)固体粒子を分離機に装入し、減圧下、約20℃から約110℃の範囲で温度をかけ、不活性ガスで粒子を押し流す事により反応生成物を未反応のp−ジオキサノン分と3wt%以下のp−ジオキサノン含有量であるポリ(p−ジオキサノン)分に分離する、(d)未反応のp−ジオキサノン分を(a)に戻す、(e)分離機からポリ(p−ジオキサノン)分を取り出す事からなるプロセスである。クレイムには未反応のp−ジオキサノンを重合工程に戻す記載はあるものの、明細書及び実施例にはその具体的記載はなく、p−ジオキサノンをリサイクルした時にもリサイクルしない場合と同等の品質であるポリ(p−ジオキサノン)が得られるかは不明である。また、特許文献3にはヒドロキシカルボン酸のポリマー又はコポリマーを主成分とする熱可塑性ポリマー組成物を、pH10以上のアルカリ性溶液中で分解し、この溶液中からヒドロキシカルボン酸を回収する方法が開示されている。具体的には、アルカリ性溶液が水酸化ナトリウム溶液の場合は電気透析によりヒドロキシカルボン酸を回収する、また、熱可塑性ポリマーが乳酸のポリマーであり、アルカリ性溶液が水酸化カルシウム溶液の場合には、加水分解して得られた乳酸カルシウムを硫酸と反応させて乳酸を回収する方法が記載されている。しかし、特許文献3にはポリ(p−ジオキサノン)をアルカリ性溶液で分解し、ヒドロキシカルボン酸であるβ−ヒドロキシエトキシ酢酸を回収する旨は記載されていない。
【特許文献1】特開平8−52205号公報
【特許文献2】US−5717059号公報
【特許文献2】特開平6−49266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、従来公知のポリ(p−ジオキサノン)の溶融重合法に比べて、収率が改善され、且つ回収したモノマーから再生した原料を使用してポリマーを製造しても再生原料を使用しない場合と同様の物性を有するポリ(p−ジオキサノン)の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、一般式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
[式(1)において、R1、R2、及びR3は、−H、−CH、−CH−CH、−(CH−CH、−CH(CH)−CHを表し、それぞれ同一かまたは異なり、式中Xは、酸素原子または硫黄原子を表す]
で表わされる脂肪族環状エステル(a)を、
[工程1−1]脂肪族環状エステル(a)を重合開始剤及び触媒の存在下、溶融状態にて開環重合する事により、重量平均分子量が100,000〜600,000であり、脂肪族環状エステル(a)を20〜70重量%含む脂肪族ポリエステル(b)を得る工程。
[工程1−2]工程1−1にて得られた脂肪族ポリエステル(b)を造粒する工程
[工程1−3]工程1−2で得られた脂肪族ポリエステル(b)を、該脂肪族ポリエステルが溶解しない状態で有機溶媒と接触させる事により、重量平均分子量が100,000〜600,000であり、脂肪族環状エステル(a)を0〜2重量%含む脂肪族ポリエステル(b)を得る工程
を含む工程により、一般式(2)
【0009】
【化2】

【0010】
[式(2)において、R1、R2、及びR3は、−H、−CH、−CH−CH、−(CH−CH、−CH(CH)−CHを表し、それぞれ同一かまたは異なり、式中Xは、酸素原子または硫黄原子を、式中pは重合度を表す]
で表される脂肪族ポリエステル(b)を製造する方法において、工程1−3の脂肪族ポリエステルと接触させた後の有機溶媒中に含まれる脂肪族環状エステルを精製処理して純度99.0%〜100%、水分含有量が0〜100ppmの脂肪族環状エステルを得、これを工程1−1で使用する事を特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法を見出し、本発明を完成するに到った。
【0011】
即ち本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法は以下の[1]〜[6]に記載された事項により特定される。
【0012】
[1] 一般式(1)
【0013】
【化3】

【0014】
[式(1)において、R1、R2、及びR3は、−H、−CH、−CH−CH、−(CH−CH、−CH(CH)−CHを表し、それぞれ同一かまたは異なり、式中Xは、酸素原子または硫黄原子を表す]
で表わされる脂肪族環状エステル(a)を、
[工程1−1]脂肪族環状エステル(a)を重合開始剤及び触媒の存在下、溶融状態にて開環重合する事により、重量平均分子量が100,000〜600,000であり、脂肪族環状エステル(a)を20〜70重量%含む脂肪族ポリエステル(b)を得る工程。
[工程1−2]工程1−1にて得られた脂肪族ポリエステル(b)を造粒する工程
[工程1−3]工程1−2で得られた脂肪族ポリエステル(b)を、該脂肪族ポリエステルが溶解しない状態で有機溶媒と接触させる事により、重量平均分子量が100,000〜600,000であり、脂肪族環状エステル(a)を0〜2重量%含む脂肪族ポリエステル(b)を得る工程
を含む工程により、一般式(2)
【0015】
【化4】

【0016】
[式(2)において、R1、R2、及びR3は、−H、−CH、−CH−CH、−(CH−CH、−CH(CH)−CHを表し、それぞれ同一かまたは異なり、式中Xは、酸素原子または硫黄原子を、式中pは重合度を表す]
で表される脂肪族ポリエステル(b)を製造する方法において、工程1−3の脂肪族ポリエステルと接触させた後の有機溶媒中に含まれる脂肪族環状エステルを精製処理して純度99.0%〜100%、水分含有量が0〜100ppmの脂肪族環状エステルを得、これを工程1−1で使用する事を特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法。
【0017】
[2] 精製処理が、
(1)蒸留で精製する
(2)以下に示す[工程2−1]から[工程2−3]、
[工程2−1] 工程1−3の脂肪族ポリエステルと接触させた後の有機溶媒中に含まれる脂肪族環状エステルをアルカリ金属化合物の存在下で分解する事により、
一般式(3)
【0018】
【化5】

【0019】
[式(3)において、R1、R2、及びR3は、−H、−CH、−CH−CH、−(CH−CH、−CH(CH)−CHを表し、それぞれ同一かまたは異なり、式中Xは酸素原子または硫黄原子を、式中Zはアルカリ金属原子を表す]
で表される脂肪族ヒドロキシカルボン酸塩(c)を得る工程
[工程2−2]工程2−1で得られた脂肪族ヒドロキシカルボン酸塩(c)を酸と反応させる事により、一般式(4)
【0020】
【化6】

【0021】
[式(4)において、R1、R2、及びR3は、−H、−CH、−CH−CH、−(CH−CH、−CH(CH)−CHを表し、それぞれ同一かまたは異なり、式中Xは酸素原子または硫黄原子を表す]
で表される脂肪族ヒドロキシカルボン酸(d)を得る工程
[工程2−3] 工程2−2で得られた脂肪族ヒドロキシカルボン酸(d)を脱水重縮合反応して脂肪族ヒドロキシカルボン酸オリゴマーを製造した後、該オリゴマーを解重合・蒸留する事により脂肪族環状エステル(a)を製造する工程
を含む工程により精製する、
の何れかである事を特徴とする[1]記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
【0022】
[3] 脂肪族環状エステル(a)がp−ジオキサノンである事を特徴とする[1]記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る脂肪族ポリエステルの製造方法は、従来公知のポリ(p−ジオキサノン)の溶融重合法に比べて収率が改善され、且つ回収したモノマーから再生した原料を使用してポリマーを製造しても再生原料を使用しない場合と同様の物性を有するポリ(p−ジオキサノン)の製造方法を提供する事ができる。更にモノマー回収の際に化学的に安定な炭化水素系溶媒を使用すると、工程2−1から2−3に示したモノマー回収工程で副反応が起こりにくい事から長期運転に有利なポリ(p−ジオキサノン)の製造方法を、また含窒素系溶媒を使用すると、モノマーである脂肪族環状エステル(a)を含む脂肪族ポリエステル(b)から効率良くモノマーを抽出出来る事から、溶媒使用量が少なく、短時間でモノマー回収の可能なポリ(p−ジオキサノン)の製造方法を提供する事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明で示す脂肪族ポリエステルとは、脂肪族環状エステル(a)を含む環状化合物を開環重合して得られる高分子を意味する。環状化合物は脂肪族環状エステル(a)の他に前記脂肪族環状エステル(a)とは異なる脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状単量体(ラクトン)や環状二量体を含んでいても良い。脂肪族ポリエステルは特に断りのない限り、開環重合で使用した脂肪族環状エステル(a)や脂肪族環状エステル(a)とは異なる脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状単量体(ラクトン)や環状二量体、及びそれらが開環重合して得られたあらゆるオリゴマー成分を含んでいても良い。
【0025】
本発明で使用する脂肪族環状エステル(a)は、一般式(1)
【0026】
【化7】

【0027】
[式(1)において、R1、R2、及びR3は、−H、−CH、−CH−CH、−(CH−CH、−CH(CH)−CHを表し、それぞれ同一かまたは異なり、式中Xは、酸素原子または硫黄原子を表す]で示されるものであり、好ましくはXが酸素原子であるp−ジオキサノン誘導体である。さらに好ましくは、R、R、及びRのいずれも−Hであり、Xが酸素原子であるp−ジオキサノンである。
【0028】
本発明で使用する脂肪族環状エステル(a)は単独でも又は2種類以上でも良い。更に脂肪族環状エステル(a)と、脂肪族環状エステル(a)とは異なる脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状単量体(ラクトン)や環状二量体(これらを併せて成分(e)とする)を同時に使用しても良い。成分(e)の具体例としては、ラクタイド、グリコライド、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
脂肪族環状エステル(a)と成分(e)を同時に使用する場合、脂肪族環状エステル(a)と成分(e)の組成比は重量比で、脂肪族環状エステル(a):成分(e)=50:50〜99:1である事が好ましい。
【0029】
本発明で使用する重合開始剤は水、又は活性水素を有する有機化合物であって、重合開始剤と脂肪族環状エステル(a)が触媒の存在下で開環重合すれば特に問題なく、公知公用の重合開始剤を使用する事が出来る。重合開始剤の一般的な例はアミノ基、及び/又は水酸基を有する化合物であり、脂肪族アルコール、グリコール、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族アミン、芳香族アミンなどが挙げられるが、安全性を考慮すると脂肪族アルコール、グリコール、脂肪族ヒドロキシカルボン酸が好ましい。好適な具体例としては、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、乳酸、グリコール酸、β−ヒドロキシエトキシ酢酸等が挙げられる。
【0030】
本発明に係る重合開始剤の使用量は、所望する脂肪族ポリエステルの分子量に応じて適宜決定される。本発明で使用する開始剤の量は、開環重合に供するモノマー量の総重量に対して0.001(重量%)〜1(重量%)である事が好ましい。尚、開環重合に供するモノマー量の総重量は、脂肪族環状エステル(a)と成分(e)の合計量より算出される。
【0031】
本発明で使用する触媒は、脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状単量体(ラクトン)や環状二量体の開環重合で通常使用されている化合物であれば特に制限されない。具体的には、2−エチルヘキサン酸錫(II)、カプリル酸錫(II)等の有機カルボン酸の錫塩 、ジエチル錫ジラウレート等の有機錫化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリセカンダリーブトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド等の有機アルミニウム化合物、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛等の有機亜鉛化合物等が挙げられる。
【0032】
本発明に係る触媒の使用量は、重合速度、解重合速度、触媒除去処理の有無、脂肪族ポリエステル中に残留する触媒の許容量等を考慮して適宜決定される。本発明で使用する触媒の量は、開環重合に供するモノマー量の総重量に対して0.0001(重量%)〜5(重量%)であるが、触媒除去処理が無い場合は、0.002(重量%)〜0.2(重量%)である事が好ましく、触媒除去処理が有る場合は、0.002(重量%)〜2(重量%)である事が好ましい。尚、開環重合に供するモノマー量の総重量は脂肪族環状エステル(a)と成分(e)の合計量より算出される。
【0033】
本発明に係る脂肪族ポリエステルの製造方法は、一般式(1)
【0034】
【化8】

【0035】
[式(1)において、R1、R2、及びR3は、−H、−CH、−CH−CH、−(CH−CH、−CH(CH)−CHを表し、それぞれ同一かまたは異なり、式中Xは、酸素原子または硫黄原子を表す]
で表わされる脂肪族環状エステル(a)を、
[工程1−1]脂肪族環状エステル(a)を重合開始剤及び触媒の存在下、溶融状態にて開環重合する事により、重量平均分子量が100,000〜600,000であり、脂肪族環状エステル(a)を20〜70重量%含む脂肪族ポリエステル(b)を得る工程。
[工程1−2]工程1−1にて得られた脂肪族ポリエステル(b)を造粒する工程
[工程1−3]工程1−2で得られた脂肪族ポリエステル(b)を、該脂肪族ポリエステルが溶解しない状態で有機溶媒と接触させる事により、重量平均分子量が100,000〜600,000であり、脂肪族環状エステル(a)を0〜2重量%含む脂肪族ポリエステル(b)を得る工程
を含む工程により、一般式(2)
【0036】
【化9】

【0037】
[式(2)において、R1、R2、及びR3は、−H、−CH、−CH−CH、−(CH−CH、−CH(CH)−CHを表し、それぞれ同一かまたは異なり、式中Xは、酸素原子または硫黄原子を、式中pは重合度を表す]
で表される脂肪族ポリエステル(b)を製造する方法において、工程1−3の脂肪族ポリエステルと接触させた後の有機溶媒中に含まれる脂肪族環状エステルを精製処理して純度99.0%〜100%、水分含有量が0〜100ppmの脂肪族環状エステルを得、これを工程1−1で使用する事が好ましい。
【0038】
本発明に係る脂肪族ポリエステルの製造方法における工程1−1は、脂肪族環状エステル(a)を重合開始剤及び触媒の存在下、溶融状態にて開環重合する事により、重量平均分子量が100,000〜600,000であり、脂肪族環状エステル(a)を20〜70重量%含む脂肪族ポリエステル(b)が得られれば特に制限されない。
【0039】
本発明に係る開環重合は系外から水分が入らないように、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行う事が好ましく、不活性ガスで置換しながら、又は不活性ガスでバブリングしながら行ってもよい。
【0040】
本発明に係る脂肪族ポリエステルの製造方法における全工程にて使用する不活性ガスの含水量は出来るだけ低く、実質的に無水状態の不活性ガスである事が好ましい。含水量が多いと脂肪族ポリエステルの分子量が低下する場合があり好ましくない。この場合、不活性ガスを脱水する為にモレキュラーシーブ類やイオン交換樹脂類が充填された層に不活性ガスを通過させてから使用する事が出来る。
不活性ガス中の含水量を露点で表すと、不活性ガスの露点が−20℃以下である事が好ましく、−50℃以下である事がより好ましい。
【0041】
また本発明に係る開環重合における全ての操作は、連続操作でも回分操作でも行うことができる。
【0042】
本発明における開環重合の重合温度は、反応混合物が溶融状態であれば得に制限されず、重合速度、解重合速度、得られる脂肪族ポリエステルの分子量、及び脂肪族ポリエステル中に含まれる脂肪族環状エステル(a)の量、脂肪族ポリエステルの着色の度合い、開環重合後に造粒する場合は、開環重合が終了した時点での反応混合物の溶融粘度等を勘案して適宜設定される。重合温度と得られる脂肪族ポリエステルの分子量、及び脂肪族ポリエステル中に含まれる脂肪族環状エステル(a)の量は一般的に相関があり、重合温度の低い程、得られる脂肪族ポリエステルの分子量は高く、脂肪族ポリエステル中に含まれる脂肪族環状エステル(a)の量は少なくなる。従って、重合温度は反応混合物が溶融状態を維持できていれば低い方が好ましい。一般的に重合温度は脂肪族ポリエステルの融点より高い温度〜200℃が好ましく、110℃〜150℃がより好ましい。
【0043】
本発明に係る開環重合の重合時間は、重合温度、触媒量、重合スケール、重合開始剤の量、反応混合物中に含まれる脂肪族環状エステル(a)の量等を考慮して決定される。反応混合物中に含まれる脂肪族環状エステル(a)の量が一定になった(=平衡に達した)後は分子量の低下する場合がある為、平衡に達する前に重合を終了しても良い。具体的には0.1時間〜20時間である事が好ましく、1時間〜10時間である事がより好ましい。
【0044】
本発明に係る工程1−1で得られる脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は100,000〜600,000である事が好ましく、150,000〜500,000である事がより好ましく、200,000〜400,000である事が更に好ましく、200,000〜350,000である事が最も好ましい。
【0045】
本発明に係る工程1−1で得られる脂肪族ポリエステルに含まれる脂肪族環状エステル(a)の量は20〜70重量%である事が好ましく、20〜40重量%である事がより好ましい。
【0046】
本発明に係る脂肪族ポリエステルの製造方法における工程1−2は、工程1−1にて得られた脂肪族ポリエステル(b)を造粒する工程である。
【0047】
尚、本発明で使用する用語において、粒状とは不定形な粒子状である事を、また、ペレット状とは定形な粒子状である事を意味する。
【0048】
本発明に係る工程1−2において、脂肪族ポリエステルを造粒する前に公知公用の乾燥処理や熱処理を行っても良い。これらの処理を行う事により、以降の工程において脂肪族ポリエステルの分子量低下を抑制できる事がある。
【0049】
本発明に係る工程1−2において、工程1−1で得られた溶融状態の脂肪族ポリエステルから粒状又はペレット状の脂肪族ポリエステルを得る為に適当な処理を行っても良い。
本発明において粒状、ペレット状の脂肪族ポリエステルを得る方法は特に制限されず、公知公用の方法を使用できる。具体的には、工程1−1で得られた溶融状態の脂肪族ポリエステルを単に冷却して得られた塊状の脂肪族ポリエステルを粉砕する方法や、溶融状態の脂肪族ポリエステルを脂肪族ポリエステルの貧溶媒と接触させる方法、更に工程1−1で得られた溶融状態の脂肪族ポリエステルをペレット製造装置にてペレット化する方法等により、粒状、ペレット状の脂肪族ポリエステルを得る事ができる。
【0050】
溶融状態の脂肪族ポリエステルを単に冷却して得られた塊状の脂肪族ポリエステルを粉砕する方法は特に制限されず、公知公用の粉砕機を使用できる。
【0051】
溶融状態の脂肪族ポリエステルを脂肪族ポリエステルの貧溶媒と接触させる事により、ペレット状の脂肪族ポリエステルを得る方法の具体例としては、溶融状態の脂肪族ポリエステルを脂肪族ポリエステルの貧溶媒に滴下して固化させる方法等が挙げられる。
【0052】
溶融状態の脂肪族ポリエステルをペレット製造装置にてペレット化する方法は公知公用の方法を適用する事が出来る。具体的には、押出機より得たストランド状の脂肪族ポリエステルをカットするストランドカット方式等が挙げられる。
【0053】
本発明に係る粒状又はペレット状の脂肪族ポリエステルの粒子径は特に制限はなく、工程1−3において有機溶媒と接触させて脂肪族ポリエステル中に残留する脂肪族環状エステルを除去する際の効率や成形時の取り扱い易さを考慮して適宜設定される。一般的には、粒状又はペレット状の脂肪族ポリエステルの粒子径は0.1mm〜10mmである事が好ましく、1mm〜5mmである事がより好ましい。
【0054】
また、工程1−1で得られた溶融状態の脂肪族ポリエステルに脂肪族ポリエステルを溶解する有機溶媒を装入して脂肪族ポリエステル溶液とした後、脂肪族ポリエステルを晶析又は再沈澱させる事により、粉末状の脂肪族ポリエステルを得ても良い。尚、本発明における粉末状とは、脂肪族ポリエステルの粒子径が0.1(mm)未満のものとする。
【0055】
本発明に係る脂肪族ポリエステルの製造方法における工程1−3は、工程1−2で得られた脂肪族ポリエステル(b)を、該脂肪族ポリエステルが溶解しない状態で有機溶媒と接触させる事により、重量平均分子量が100,000〜600,000であり、脂肪族環状エステル(a)を0〜2重量%含む脂肪族ポリエステル(b)が得られれば特に制限されない。
【0056】
本発明において、「脂肪族ポリエステルが溶解しない状態」とは、脂肪族ポリエステルと有機溶媒を接触させた時に脂肪族ポリエステルの溶解分が10重量%以下である状態を意味する。また、脂肪族ポリエステル(b)を接触させた後の有機溶媒には脂肪族環状エステルの他に10重量%以下で脂肪族ポリエステルや脂肪族ポリエステルオリゴマーを含んでいても良い。
【0057】
本発明に係る粉末状、粒状、ペレット状の中から選択される少なくとも1種類の形状を有する脂肪族ポリエステルを脂肪族ポリエステルが溶解しない状態で液体に接触させる方法は特に制限されず、連続操作でも回分操作でも行う事ができる。連続操作の具体例としては、粒状又はペレット状の脂肪族ポリエステルを液体が充填された塔型の装置へ連続的に装入し、粒状又はペレット状の脂肪族ポリエステルを連続的に排出する方法や、回分操作の具体例としては、粉末状、粒状、ペレット状の中から選択される少なくとも1種類の形状を有する脂肪族ポリエステルを液体が充填された槽型の装置へ充填し、所定時間滞留させた後、脂肪族ポリエステルを排出する方法等が挙げられる。
【0058】
本発明に係る粉末状、粒状、ペレット状の中から選択される少なくとも1種類の形状を有する脂肪族ポリエステルを脂肪族ポリエステルが溶解しない状態で液体に接触させる方法において、撹拌しても撹拌しなくても良い。
【0059】
本発明に係る工程1−3において使用する液体は脂肪族ポリエステルを溶解する有機溶媒でも、脂肪ポリエステルの貧溶媒であっても良い。但し、脂肪族ポリエステルを溶解する有機溶媒を使用する場合、粉末状、粒状、ペレット状の中から選択される少なくとも1種類の形状を有する脂肪族ポリエステルが実質的に形状を維持できる温度で有機溶媒と接触させる操作を行うものとする。
【0060】
本発明に係る脂肪族ポリエステルの製造方法において使用する脂肪族ポリエステルを溶解する有機溶媒の具体例としては、1,2,4−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素や、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の含窒素化合物、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物、1,4−ジオキサン等のエーテル等が挙げられる。これらの中でも安全考慮すると、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の含窒素化合物、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物が好ましい。これらは単独でも、必要に応じて二種類以上使用しても良い。
これらの中でも芳香族炭化水素よりも脂肪族環状エステル(a)の溶解性が高く、脂肪族ポリエステル(b)から効率良く脂肪族環状エステル(a)を抽出できる事から含窒素系化合物がより好ましい。
【0061】
尚、本発明にて使用する用語において、ハロゲン化炭化水素とはハロゲン原子を含む炭化水素を、含窒素化合物とは窒素原子を含む有機溶媒を、含硫黄化合物とは硫黄原子を含む有機溶媒をそれぞれ意味しており、「新版溶剤ポケットブック」(有機合成化学協会編、発行者:オーム社(株))に一例が記載されている。
【0062】
また、本発明にて使用する用語において、貧溶媒とは、「化学大辞典」(東京化学同人(株)発行)P1941に記載されている貧溶媒のみならず、P1916に記載されている非溶剤の意味をも含むものである。即ち本発明における脂肪族ポリエステルの貧溶媒とは、脂肪族ポリエステルの溶解度が極めて低い溶媒、もしくは脂肪族ポリエステルを全く溶解しない常温で液体、又は比較的融点の低い固体状の有機化合物を意味する。
【0063】
本発明に係る脂肪族ポリエステルの製造方法において使用する脂肪族ポリエステルの貧溶媒の具体例としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール、アセトン等のケトン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル等が挙げられる。これらは単独でも、必要に応じて二種類以上使用しても良い。
これらの中でも脂肪族環状エステル(a)の溶解性、及び化学的に安定である事から芳香族炭化水素がより好ましい。
【0064】
また、ポリ(p−ジオキサノン)に代表される本発明の脂肪族ポリエステル(b)は容易に加水分解される性質を有する為、本発明で使用する有機溶媒中の水分量は少ない方が好ましい。具体的には有機溶媒中の水分量は0〜1000ppmである事が好ましく、0〜500ppmである事がより好ましく、0〜300ppmである事が更に好ましく、0〜200ppmである事が最も好ましい。
【0065】
本発明に係る粉末状、粒状、ペレット状の中から選択される少なくとも1種類の形状を有する脂肪族ポリエステルを液体に接触させる際の液体の使用量は特に制限されず、脂肪族ポリエステルから脂肪族環状エステルを抽出する効率や経済性を考慮して適宜設定する事が出来る。一般的には、連続操作の場合、液体の使用量は脂肪族ポリエステル1gに対して0.002(g−液体/分)〜100(g−液体/分)である事が好ましく、0.005(g−液体/分)〜10(g−液体/分)である事がより好ましく、0.008(g−液体/分)〜1(g−液体/分)である事が更に好ましい。回分操作の場合、一般的には、脂肪族ポリエステルの重量に対して0.01倍〜100倍である事が好ましく、0.1倍〜10倍である事がより好ましく、1倍〜4倍である事が更に好ましい。
【0066】
本発明に係る粉末状、粒状、ペレット状の中から選択される少なくとも1種類の形状を有する脂肪族ポリエステルを液体に接触させる際の温度は、脂肪族ポリエステルが実質的に形状を維持できる温度であれば特に制限されないが、通常、接触温度が高い程脂肪族環状エステルが効率良く除去できるものの、脂肪族ポリエステルの分子量が低下し易くなる為、これらを考慮して処理温度は適宜決定される。具体的には0℃〜100℃である事が好ましく、20℃〜80℃である事がより好ましい。
【0067】
本発明に係る粉末状、粒状、ペレット状の中から選択される少なくとも1種類の形状を有する脂肪族ポリエステルを液体に接触させる際の接触時間は特に制限されないが、脂肪族ポリエステル中の脂肪族環状エステル(a)の減少挙動を考慮して適宜設定される。一般的に、接触時間は1分〜20時間である事が好ましく、操作性等を考慮すると0.5時間〜10時間である事がより好ましい。
【0068】
本発明に係る溶融状態の脂肪族ポリエステルに脂肪族ポリエステルを溶解する有機溶媒を装入して脂肪族ポリエステル溶液とした後、脂肪族ポリエステルを晶析又は再沈澱させる方法は特に制限されず、加熱した脂肪族ポリエステル溶液を冷却する事により脂肪族ポリエステルを晶析させる方法や脂肪族ポリエステル溶液を脂肪族ポリエステルの貧溶媒に排出して脂肪族ポリエステルを再沈澱させる方法等、公知公用の方法を適用する事が出来る。
【0069】
本発明に係る脂肪族ポリエステルの製造方法において、有機溶媒と接触させた後の脂肪族ポリエステルを乾燥させる方法は公知公用の方法を適用できるが、ガスを流通させる場合は窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、キセノンガス、クリプトンガス等の不活性ガスや乾燥空気等が挙げられ、中でも窒素ガス、乾燥空気が好ましい。また、使用するガスの含水量は出来るだけ低く、実質的に無水状態のガスである事が好ましい。含水量が多いと脂肪族ポリエステルの分子量が低下する場合があり好ましくない。この場合、ガスを脱水する為にモレキュラーシーブ類やイオン交換樹脂類が充填された層にガスを通過させてから使用する事が出来る。
【0070】
ガス中の含水量を露点で表すと、ガスの露点が−20℃以下である事が好ましく、−50℃以下である事がより好ましい。
【0071】
本発明に係る工程1−3により得られる脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は100,000〜600,000である事が好ましく、150,000〜500,000である事がより好ましく、200,000〜400,000である事が更に好ましく、200,000〜350,000である事が最も好ましい。
【0072】
本発明に係る工程1−3により得られる脂肪族ポリエステル中に含まれる脂肪族環状エステル(a)の濃度は0〜2重量%である事が好ましく、0〜1重量%である事がより好ましく、0〜0.5重量%である事が更に好ましく、0〜0.1重量%である事が最も好ましい。ここで言う0重量%とは、実施例の項、2)脂肪族ポリエステル中に含まれる脂肪族環状エステル(a)の濃度に記載されている方法で分析した時に検出限界以下である事を意味する。
【0073】
本発明に係る脂肪族ポリエステルの製造方法において、工程1−3の脂肪族ポリエステルと接触させた後の有機溶媒中に含まれる脂肪族環状エステルを精製処理して純度99.9%〜100%、水分含有量が0〜100ppmの脂肪族環状エステルを得、これを工程1−1で使用する方法は特に制限されないが、精製処理の具体例としては、
(1)蒸留で精製する
(2)以下に示す[工程2−1]から[工程2−3]、
[工程2−1] 工程1−3の脂肪族ポリエステルと接触させた後の有機溶媒中に含まれる脂肪族環状エステルをアルカリ金属化合物の存在下で分解する事により、
一般式(3)
【0074】
【化10】

【0075】
[式(3)において、R1、R2、及びR3は、−H、−CH、−CH−CH、−(CH−CH、−CH(CH)−CHを表し、それぞれ同一かまたは異なり、式中Xは酸素原子または硫黄原子を、式中Zはアルカリ金属原子を表す]
で表される脂肪族ヒドロキシカルボン酸塩(c)を得る工程
[工程2−2]工程2−1で得られた脂肪族ヒドロキシカルボン酸塩(c)を酸と反応させる事により、一般式(4)
【0076】
【化11】

【0077】
[式(4)において、R1、R2、及びR3は、−H、−CH、−CH−CH、−(CH−CH、−CH(CH)−CHを表し、それぞれ同一かまたは異なり、式中Xは酸素原子または硫黄原子を表す]
で表される脂肪族ヒドロキシカルボン酸(d)を得る工程
[工程2−3] 工程2−2で得られた脂肪族ヒドロキシカルボン酸(d)を脱水重縮合反応して脂肪族ヒドロキシカルボン酸オリゴマーを製造した後、該オリゴマーを解重合・蒸留する事により脂肪族環状エステル(a)を製造する工程
を含む工程により精製する等の方法が挙げられる。
【0078】
本発明に係る工程1−3にて脂肪族ポリエステルと接触させた後の有機溶媒中から、蒸留で精製する事により脂肪族環状エステルを回収する方法は特に制限されず、有機溶媒と脂肪族環状エステルを分離してから脂肪族環状エステルのみを蒸留精製しても、有機溶媒と脂肪族環状エステルの混合物をそのまま蒸留精製しても良い。
蒸留温度は50℃〜250℃が好ましく、80℃〜200℃がより好ましい。また、蒸留時の圧力は、設定した蒸留温度において有機溶媒や脂肪族環状エステルが留去する圧力であれば特に制限されず、13.3〜101308Paが好ましく、133.3〜101308Paがより好ましい。
【0079】
本発明に係る工程2−1において、工程1−1から工程1−3を含む製造工程にて発生する分子量又は粒子径の規格から外れた脂肪族ポリエステルや、製造工程以外より回収される重量平均分子量が10万未満や60万より大きい脂肪族ポリエステルをアルカリ金属化合物の存在下で有機溶媒に含まれる脂肪族環状エステルと同時に分解しても良い。ここで言う分子量の規格とは重量平均分子量が10万〜60万であり、粒子径の規格とは、工程1−3にて使用する脂肪族ポリエステルの粒子径の範囲を意味する。具体例として実施例1における粒子径の規格は1〜3.35(mm)である。
【0080】
本発明に係る工程2−1で使用するアルカリ金属化合物は、リチウム、ナトリウム、カリウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩が好ましく、特にリチウム、ナトリウム、カリウム等の水酸化物が好ましい。使用に際しては水に溶解して使用する事が好ましい。
また、アルカリ金属の使用量については、工程1−3において、有機溶媒との接触前後における脂肪族ポリエステルの重量減少分と、工程2−1で分解に供する工程1−2で得られた脂肪族ポリエステルの一部の合計量に相当したモル数のアルカリ金属を使用するものとする。
【0081】
本発明に係る工程2−1において、脂肪族環状エステルや脂肪族ポリエステルをアルカリ金属化合物の存在下で分解する際の温度については、脂肪族環状エステル、脂肪族ポリエステルが分解されれば特に制限されない。具体的には室温から100℃が好ましく、50℃〜100℃がより好ましい。
【0082】
本発明に係る工程2−2において使用する酸は、工程2−1で得られた脂肪族ヒドロキシカルボン酸塩(c)と反応して、一般式(4)
【0083】
【化12】

【0084】
[式(4)において、R1、R2、及びR3は、−H、−CH、−CH−CH、−(CH−CH、−CH(CH)−CHを表し、それぞれ同一かまたは異なり、式中Xは酸素原子または硫黄原子を表す]
で表される脂肪族ヒドロキシカルボン酸(d)が得られれば特に制限されないが、脂肪族ヒドロキシカルボン酸塩がβ−ヒドロキシエトキシ酢酸塩の場合は塩酸が好ましい。硫酸を使用すると工程2−2若しくは工程2−3にてエチレングリコールが生成し、得られるp−ジオキサノン中にエチレングリコールが含まれるので好ましくない。エチレングリコールはp−ジオキサノンを重合する際の重合開始剤となる為、水と同様、工程2−3で得られるp−ジオキサノン中に含まれていては好ましくない物質である。エチレングリコールが生成するとp−ジオキサノン中のエチレングリコール量が50ppm以下、より好ましくは25ppm以下となるまで精製しなくてはならず、精製負荷が非常に大きくなってしまう。
【0085】
また、酸の使用量についても特に制限されないが、脂肪族ヒドロキシカルボン酸塩がβ―ヒドロキシエトキシ酢酸塩で、酸が塩酸の場合、脂肪族ヒドロキシカルボン酸塩(c)のモル数を100とした時、90〜99である事が好ましく、94〜98である事がより好ましい。酸の使用量が100だと解重合、蒸留して得られたp−ジオキサノンが白濁し、収率も低いので好ましくない。また、90未満でも収率が低く好ましくない。
【0086】
本発明に係る工程2−2の反応温度は通常室温で行われるが、反応が十分進行しない場合は加熱して反応しても良い。
【0087】
本発明に係る工程2−3において、工程2−2で得られた脂肪族ヒドロキシカルボン酸(d)を脱水重縮合反応して脂肪族ヒドロキシカルボン酸オリゴマーを製造した後、該オリゴマーを解重合・蒸留する事により脂肪族環状エステル(a)を製造する方法は特に制限されないが、例えば、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を脱水重縮合反応して脂肪族ヒドロキシカルボン酸オリゴマーを製造する際、分子量調節剤として脂肪族環状エステルよりも沸点の高いアルキレングリコールを加えて実施すると液状の脂肪族ヒドロキシカルボン酸オリゴマーが得られるので操作性に優れ、更に解重合、蒸留して脂肪族環状エステルを製造する際には、高純度の脂肪族環状エステルが高収率で得られるので好ましい。
【0088】
本発明に係る工程2−3で使用するアルキレングリコールは、通常、融点が100℃以下、さらに好ましくは融点が70℃以下の液体であり、本発明によって得られる脂肪族環状エステルより沸点の高いアルキレングリコールであれば特に制限されない。
【0089】
本発明における沸点とは、JIS K0066―1992「化学製品の蒸留試験方法」に基づいて常圧(101308Pa)下で測定した沸点である。減圧下において測定した場合には、常圧に換算した沸点をいう。減圧下で測定された沸点は、「基礎有機化学実験P155、丸善(1966);畑一夫著」の沸点換算図表に基づいて常圧の沸点へ換算した。
【0090】
アルキレングリコールの沸点は、生成する脂肪族環状エステルの沸点よりも30℃(常圧(101308Pa)換算)以上高いことが好ましく、50℃(常圧(101308Pa)換算)以上高いことがより好ましく、70℃(常圧(101308Pa)換算)以上高いことが特に好ましく、100℃(常圧(101308Pa)換算)以上高いことが最も好ましい。
アルキレングリコールの沸点が上記範囲にあることで、解重合、蒸留工程にて、アルキレングリコールと生成物である脂肪族環状エステルとを容易に分離できる。
【0091】
脂肪族環状エステルがp−ジオキサノン(沸点:212℃)である場合には、例えば、ジエチレングリコール(沸点:244℃)、トリエチレングリコール(沸点:287℃)、テトラエチレングリコール(沸点:327℃)、ペンタエチレングリコール(沸点:430℃)、ヘキサメチレングリコール(沸点:440℃)、ジプロピレングリコール(沸点:232℃)、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0092】
これらのアルキレングリコールは、単独または2種以上混合して使用しても良い。なお、本発明で用いるアルキレングリコールが2種以上の混合物である場合は、その混合物に含まれる最も沸点の低いアルキレングリコールの沸点を、その混合物の沸点とする。
また、本発明で用いるアルキレングリコールがポリアルキレングリコールである場合は、収率が低下する傾向がある為に生成する脂肪族環状エステルよりも沸点が低い成分を実質的に含まない事が好ましい。例えば、p−ジオキサノンを製造する際にポリエチレングリコールを用いる場合には、ポリエチレングリコール中に、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の低沸点成分が実質的に含まないことが好ましく、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の低沸点成分が全く含まれていないことが最も好ましい。
【0093】
本発明においてアルキレングリコールとして上記ポリアルキレングリコールを用いる場合、THFを分解生成物として生じさせない観点からは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールが好ましい。また、入手の容易さからポリエチレングリコールがより好ましい。
【0094】
本発明におけるアルキレングリコールの使用量は、脂肪族ヒドロキシカルボン酸1モルに対し、通常0.01〜10モル、好ましくは0.1〜5モル、さらに好ましくは0.1〜1モルである。アルキレングリコールの使用量が上記範囲にある場合には、反応液の流動性、解重合、蒸留時における目的物の生成速度、留出速度の点で優れる。
【0095】
上記モル数は、使用するアルキレングリコールの質量を、アルキレングリコールの分子量で除した値である。アルキレングリコールとしてアルキレングリコールの重合体を用いる場合の平均分子量は、その水酸基価を求め、その水酸基価から換算式により求めた値であり、その方法はJIS K0070−1992に準じている。
【0096】
アルキレングリコールの添加時期は、脂肪族ヒドロキシカルボン酸と脱水重縮合反応する前に添加されていれば特に制限されない。
【0097】
本発明に係る脂肪族ポリエステルの製造方法において、工程2−2で得られた脂肪族ヒドロキシカルボン酸(d)は水溶液であり、通常塩を含んでいる。その為、この水溶液中に含まれる塩を除去する目的で、水溶液を常圧又は減圧下で加熱して大部分の水を留去した後で、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N―ジメチルアセトアミド、N,N―ジメチルホルムアミド等のアミド類等であり、且つ、好ましくは既に添加されている、又はこれから添加されるアルキレングリコールよりも沸点の低い有機溶媒を装入して塩を析出させ、ろ過等の分離操作により塩を除去しても良い。その後、得られた脂肪族ヒドロキシカルボン酸溶液を加熱して、溶液に含まれている有機溶媒や水を系外に留去しても良い。
【0098】
塩を除去する目的で装入する有機溶媒の量は特に制限されないが、実質的には工程2−1で得られる脂肪族ヒドロキシカルボン酸塩(c)の重量を基準として、0.5〜10倍である事が好ましい。
【0099】
また、塩を除去した後の脂肪族ヒドロキシカルボン酸溶液から有機溶媒や水を留去させる方法は、室温から200℃、好ましくは50℃〜180℃の範囲で温度を設定し、設定した温度にて有機溶媒や水が留出する圧力で実施する。
【0100】
本発明に係る工程2−3において、脂肪族ヒドロキシカルボン酸とアルキレングリコールを脱水重縮合反応して脂肪族ヒドロキシカルボン酸オリゴマーを製造する際の反応温度は、脱水重縮合反応が進行すれば特に制限されない。具体的には50〜200℃である事が好ましく、80〜160℃である事がより好ましい。
【0101】
脂肪族ヒドロキシカルボン酸とアルキレングリコールを脱水重縮合反応する際、生成した縮合水を加熱により留去させる事で反応は進行するが、留去を促進する観点からは、トルエンやキシレン等の水と共沸する溶媒を添加して、上述の縮合水等の留去を行ってもよい。なお、共沸する溶媒を添加して縮合水の留去を行う場合には、生成する水を共沸溶媒と共に反応系から留出させ、得られた留出液を分離器にて溶媒と生成水とに分離し、分離した溶媒は反応系に戻しながら重合してもよい。
【0102】
脂肪族ヒドロキシカルボン酸とアルキレングリコールを脱水重縮合反応する際の圧力は、反応温度において、反応系内に存在する水が留出する圧力であれば、常圧でも減圧下でも良い。
【0103】
本発明に係る工程2−3において、脂肪族ヒドロキシカルボン酸オリゴマーを解重合・蒸留する際、脂肪族ヒドロキシカルボン酸とアルキレングリコールを脱水重縮合して得られた脂肪族ヒドロキシカルボン酸オリゴマーは両末端が水酸基である為に更なる重合反応は進行しない。従って、解重合反応は効率的に進行し、且つ反応液の流動性や均一性は維持されるので、目的物の脂肪族環状エステルの収率が高くなる。一方、アルキレングリコールを添加しない場合、脂肪族ヒドロキシカルボン酸オリゴマーは末端のそれぞれに水酸基とカルボキシル基を有しているので、解重合反応のみならず重合反応も進行してしまう。その結果、解重合は効率的に起こらず、また、反応液の流動性が低下し、均一性も損なわれてしまう場合があり、脂肪族環状エステルが高収率では得られない傾向にある。
【0104】
本発明に係る工程2−3での解重合、蒸留する際の温度は、脂肪族ヒドロキシカルボン酸オリゴマーが解重合し、且つ生成した脂肪族環状エステルが留出する温度であれば特に制限はないが、好ましくは、50℃〜300℃、より好ましくは、80℃〜200℃である。
【0105】
また、本発明に係る工程2−3での解重合、蒸留するの際の圧力は、解重合、蒸留時の温度で生成した脂肪族環状エステルが留出する圧力であれば特に制限されず、通常13.3〜101308Paである。
【0106】
本発明に係る脂肪族ポリエステルの製造方法において、脂肪族環状エステルの純度は99.0%〜100%である事が好ましく、99.5%〜100%である事がより好ましく、99.7%〜100%である事が更に好ましい。
【0107】
本発明に係る脂肪族ポリエステルの製造方法において、脂肪族環状エステルに含まれる水分は、工程1−1における開環重合速度、得られる脂肪族ポリエステルの分子量に悪影響を及ぼすので、脂肪族環状エステルに含まれる水分量は出来るだけ少ない事が好ましい。具体的には脂肪族環状エステルに含まれる水分量が0〜100ppmである事が好ましく、0〜80ppmである事がより好ましく、0〜60ppmである事が更に好ましく、0〜40ppmである事が最も好ましい。
【0108】
尚、ここで言う0ppmとは、実施例の項、4)脂肪族環状エステル中の水分分析(カールフィッシャー法)に従って分析した時、検出限界以下である事を意味する。
【0109】
本発明に係る脂肪族ポリエステルの製造方法において、脂肪族環状エステルに含まれる遊離酸は、工程1−1で得られる脂肪族ポリエステルの分子量分布に悪影響を及ぼすので、脂肪族環状エステルに含まれる遊離酸量は出来るだけ少ない事が好ましい。具体的には脂肪族環状エステルに含まれる遊離酸量が0〜100ppmである事が好ましく、0〜60ppmである事がより好ましく、0〜40ppmである事が更に好ましく、0〜30ppmである事が最も好ましい。
【0110】
尚、本発明における遊離酸とは、脂肪族環状エステルに含まれる酸成分を総称したものであり、遊離酸量は脂肪族環状エステル中に含まれる酸成分が全て脂肪族環状エステルと水が反応して生成する脂肪族ヒドロキシカルボン酸であると見なした時の量である。測定は、0.001Nのカリウムメトキシド(CHOK)の無水メタノール溶液を滴定液として電位差滴定装置により行う。
また、ここで言う0ppmとは実施例の項、5)脂肪族環状エステル中の遊離酸量に従って分析した時、検出限界以下である事を意味する。
【0111】
本発明の製造方法により得られた脂肪族ポリエステルの成形加工法は特に制限されず、射出成形、押出成形、インフレーション成形、押出中空成形、発泡成形、カレンダー成形、ブロー成形、バルーン成形、真空成形、紡糸等の各種成型加工法により様々な用途に対応した製品を製造する事ができる。
【0112】
本発明に係る脂肪族ポリエステルの用途は、その高い安全性と生分解性、生体吸収性を活かし、手術用モノフィラメントや外科用のデバイス、経口医薬品用カプセル、肛門・膣用座薬用担体、皮膚・粘膜用張付剤用担体、注射筒の部材、等といった医療用用途はもちろん、農薬用カプセル、肥料用カプセル、種苗用カプセル、植木鉢等と言った農業、園芸用用途、釣り糸、釣り用浮き、漁業用擬餌、ルアー等の漁業用用途、弁当箱、食器、コンビニエンスストアで販売されるような弁当や惣菜の容器、鮮魚、精肉、青果、豆腐、惣菜等の食料品用の容器やトレイ、鮮魚市場で使用されるようなトロバコ、牛乳・ヨーグルト・乳酸菌飲料等の乳製品用のボトル、炭酸飲料・清涼飲料等のソフトドリンク用のボトル、ビール・ウイスキー等の酒類ドリンク用のボトル、歯磨き粉用チューブ、化粧品容器、保冷箱等の容器、ラップフィルム、コンポストバック等のフィルム、シート及びそれらから製造される製品などが挙げられる。
【実施例】
【0113】
実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例で用いた評価方法は以下の通りである。
【0114】
1)重量平均分子量(Mw)
得られた脂肪族ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は、島津製作所製 CLASS−VPシステムのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(カラム温度40℃、ヘキサフルオロイソプロパノール(以下、HFIPAと記す)溶媒)で測定し、分子量既知のPMMA(ポリメタクリル酸メチル)を基準としてサンプルとの比較により重量平均分子量を求めた。
【0115】
2)脂肪族ポリエステル中に含まれる脂肪族環状エステルの濃度
あらかじめ濃度既知の脂肪族環状エステルにて検量線を作成した後、得られた脂肪族ポリエステル50〜100mgをHFIPA10mlに溶解し、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC−14型ガスクロ装置、キャピラリーカラム:ZB−624、50m×0.32mm、カラム温度120℃)にて測定した。
【0116】
3)脂肪族環状エステルの純度
ガスクロマトグラフィーにより測定した。装置は島津製作所製GC−14A、検出器は水素炎イオン化検出器(FID)、カラムは化学物質評価研究機構製カラム(G300、φ:1.2mm×40m、膜厚:2μm)を用いた。カラム温度を160℃、インジェクション温度を230℃、検出器温度を230℃とし、キャリアガスとして窒素を流量10ml/分とした。脂肪族環状エステル約50mgをアセトン10mlに溶解させ、1μl注入して測定した。あらかじめ、標準試料を用いて検量線を作製しておき、その検量線を用いて脂肪族環状エステルの純度を測定した。
【0117】
4)脂肪族環状エステル中の水分分析(カールフィッシャー法)
脂肪族環状エステルを1〜10g秤量し、京都電子工業社製 カールフィッシャー水分計MKC-510Nにおいて、発生液にリーデルデハーン製ハイドラナールクローマットAK、対極液にリーデルデハーン製ハイドラナールクローマットCG-Kを用いて分析を行った。
【0118】
5)脂肪族環状エステル中の遊離酸量
脂肪族環状エステルを1〜10g秤量した後、窒素雰囲気下で無水メタノールに溶解し、測定機器:京都電子工業社製、電位差滴定装置AT−410、電極:京都電子工業社製、非水滴定用複合ガラス電極電極C173を用いて、0.001Nカリウムメトキシド(CHOK)の無水メタノール溶液により滴定した。脂肪族環状エステル中に含まれる遊離酸量は、脂肪族環状エステルに含まれる酸成分が、全て脂肪族環状エステルが加水分解して生成する脂肪族ヒドロキシカルボン酸であると見なして算出した。
【0119】
6)脂肪族ヒドロキシカルボン酸塩(β−ヒドロキシエトキシ酢酸塩)の定量分析
β−ヒドロキシエトキシ酢酸塩水溶液を1g、内標としてプロピオン酸0.1gを秤量後、移動層5mlに溶解してサンプル調製し、日本分光製 高速液体クロマトグラフ装置(PU-1575、UV-980、CO-965)にYMC製ODSカラム312Aを接続し、0.28%リン酸水溶液を移動層とし、カラム温度40℃、移動層液の流速を1ml/分、215nmの波長で内部標準法により分析した。
【0120】
7)脂肪族環状エステル中のエチレングリコール量
比較例2における脂肪族環状エステル中のエチレングリコール量はガスクロマトグラフィーにより測定した。装置は島津製作所製GC−14A、検出器は水素炎イオン化検出器(FID)、カラムは化学物質評価研究機構製カラム(G300、φ:1.2mm×40m、膜厚:2μm)を用いた。カラム温度を160℃、インジェクション温度を230℃、検出器温度を230℃とし、キャリアガスとして窒素を流量10ml/分とした。脂肪族環状エステル約500mgをアセトン10mlに溶解させ、3μlを注入し測定した。あらかじめ、標準試料を用いて検量線を作製しておき、その検量線を用いてエチレングリコールの濃度分析を行った。
【0121】
8)脂肪族ポリエステルの収率
実施例、及び比較例において脂肪族ポリエステルの収率は以下の式に従って算出した。
収率(%)=A*100/(B−C)
A:最終的に得られた脂肪族ポリエステルの重量(g)
B:工程1−1にて溶融重合に使用した脂肪族環状エステルの重量(g)
C:工程2−3にて最終的に得られた脂肪族環状エステルの重量(g)
【0122】
[実施例・比較例中のp−ジオキサノン]
実施例及び比較例で用いたp−ジオキサノンは、大和化成工業株式会社製のものであり、水分40ppm、純度99.9%以上のものを用いた。
【0123】
[実施例1]
[工程1−1]
あらかじめ50℃に保温しておいた200mlのセパラブルフラスコへ、脂肪族環状エステルとして大和化成工業株式会社製p−ジオキサノン200g、触媒としてアルドリッチ社製試薬2−エチルヘキサン酸錫(II)0.0341g(=錫換算でp−ジオキサノンに対し50ppm)、開始剤として東京化成社製試薬ラウリルアルコール0.36g(=p−ジオキサノンに対し1800ppm)をそれぞれ装入し、常圧、窒素気流下で120℃に昇温した。120℃で5時間開環重合を行った後、溶融したポリマーを窒素雰囲気下で琺瑯バットに排出した。得られた脂肪族ポリエステル(=ポリ(p−ジオキサノン))は193.8g(収率=96.9%)であり、重量平均分子量は33.3万、脂肪族ポリエステルは脂肪族環状エステル(=p−ジオキサノン)を30.7(重量%)含んでいた。
【0124】
[工程1−2]
工程1−1で得られた脂肪族ポリエステルを室温/2000Paで3時間乾燥した後、60℃/常圧で16時間熱処理を行った。ポリマーを室温まで冷却した後、森田精機工業(株)のプラスチッククラッシャー JC30型粉砕機にてポリマーを粉砕した。粉砕したポリマーを分級して粒子径が1〜3.35(mm)の脂肪族ポリエステル172.8gを得た。また、粒子径が1(mm)未満、及び3.35(mm)より大きい脂肪族ポリエステルは15.4gであった。粉砕・分級後の脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は34.4万、脂肪族ポリエステル中の脂肪族環状エステルの濃度は27.6(重量%)であった。
【0125】
[工程1−3]
工程1−2で得られた粒子径が1〜3.35(mm)の脂肪族ポリエステル172.8gとモレキュラーシーブ3Aで脱水処理したキシレン400gを1Lのセパラブルフラスコに装入し、室温/窒素雰囲気下で1時間撹拌した後ろ過する操作を、脂肪族ポリエステル中に含まれる脂肪族環状エステルの濃度が5重量%になるまで繰り返し、その後室温から50℃に温度を上げて同様の操作をする事により、脂肪族ポリエステル中に含まれる脂肪族環状エステルの濃度を1.3%まで減少させた。この脂肪族ポリエステルを2000Pa、室温から最終的に60℃まで昇温して9時間乾燥し、重量平均分子量=34.2万、脂肪族ポリエステル中に含まれる脂肪族環状エステルの濃度が0.7%の脂肪族ポリエステル125.6gを得た。尚、工程1−3で使用したキシレンの総量は4400g、脂肪族環状エステルを含むキシレン溶液の回収量は4350gであった。
【0126】
[工程2−1]
まず、工程1−3より回収した脂肪族環状エステルを含むキシレン溶液4350gを3Lの4口フラスコに随時装入しながら、140℃/常圧にてキシレンを系外へ留出させる事により脂肪族環状エステルを含むキシレンを400gまで濃縮した。この濃縮した脂肪族環状エステルを含むキシレン400gと工程1−2で得られた粒子径が1mm未満、及び3.35(mm)より大きい脂肪族ポリエステル15.4gと10%水酸化ナトリウム水溶液232gを2Lのセパラブルフラスコに装入して、100℃/窒素雰囲気下で4時間加熱することにより、脂肪族環状エステルと脂肪族ポリエステルを加水分解した。室温まで冷却後、2Lの分液漏斗で有機層と水層を分離し、脂肪族ヒドロキシカルボン酸塩(=β−ヒドロキシエトキシ酢酸ナトリウム)を含む水層290.2gを回収した。尚、水層中に含まれるβ−ヒドロキシエトキシ酢酸ナトリウムは82.4gであった。
【0127】
[工程2−2]
工程2−1より回収した脂肪族ヒドロキシカルボン酸塩水溶液290.2gを1Lの4口フラスコに装入し、次いで36%塩酸水溶液55.8gを装入して室温で反応させ、脂肪族ヒドロキシカルボン酸水溶液346.0gを得た。
【0128】
[工程2−3]
工程2−2で得られた脂肪族ヒドロキシカルボン酸水溶液346.0gに分子量400のポリエチレングリコール23.2gを装入した後、65℃/9330Paにて4時間加熱する事により系外に水226.5gを留出させた。その後、アセトン160gを装入して析出した塩をろ過により分離し、更にろ塊をアセトン60gで洗浄した。ろ液は500ml4口フラスコに装入し、60〜115℃/常圧で4時間加熱する事によりアセトン213gを系外へ留出させた。その後、トルエンが充填されたディーンスタークトラップを4口フラスコに装着し、更にトルエン10gを装入し、150℃/常圧で8時間脱水重縮合反応し、続いてトルエン9.2gを系外に留去させて、脂肪族ポリエステルオリゴマー87.6gを得た。該オリゴマーを200mlの蒸留装置へ移し、120℃/1333Paで2時間加熱した後、120〜150℃/1333Paで3時間にて解重合・蒸留を行った。5%初留カットした後に本留に切り替え、水分量=200ppm、遊離酸=未検出の脂肪族環状エステル50.0gを得た。更にこの脂肪族環状エステルを100mlの蒸留装置へ移し、110℃/1333Paで1時間加熱した後、110〜130℃/1333Paで3時間にて蒸留を行った。5%初留カットした後に本留に切り替え、純度=99.9%以上、水分量=35ppm、遊離酸=未検出の脂肪族環状エステル40.0gを得た。
これより、実施例1における脂肪族ポリエステルの収率は78.0%であった。
【0129】
工程2−3で得られたp−ジオキサノン30gと大和化成工業株式会社製p−ジオキサノン170gを、あらかじめ50℃に保温しておいた200mlのセパラブルフラスコへ装入し、続いて触媒としてアルドリッチ社製試薬2−エチルヘキサン酸錫(II)0.0341g(=錫換算でp−ジオキサノンに対し50ppm)、開始剤として東京化成社製試薬ラウリルアルコール0.36g(=p−ジオキサノンに対し1800ppm)をそれぞれ装入し、常圧、窒素気流下で120℃に昇温し、120℃で5時間開環重合を行った。得られた脂肪族ポリエステル(=ポリ(p−ジオキサノン))の重量平均分子量は33.8万、脂肪族ポリエステル中の脂肪族環状エステル(=p−ジオキサノン)濃度は30.5(重量%)であった。
【0130】
[実施例2]
[工程1−1]
あらかじめ50℃に保温しておいた200mlのセパラブルフラスコへ、脂肪族環状エステルとして大和化成工業株式会社製p−ジオキサノン200g、触媒としてアルドリッチ社製試薬2−エチルヘキサン酸錫(II)0.0341g(=錫換算でp−ジオキサノンに対し50ppm)、開始剤として東京化成社製試薬ラウリルアルコール0.36g(=p−ジオキサノンに対し1800ppm)をそれぞれ装入し、常圧、窒素気流下で120℃に昇温した。120℃で5時間開環重合を行った後、溶融したポリマーを窒素雰囲気下で琺瑯バットに排出した。得られた脂肪族ポリエステル(=ポリ(p−ジオキサノン))は193.0g(収率=96.5%)であり、重量平均分子量は34.5万、脂肪族ポリエステルは脂肪族環状エステル(=p−ジオキサノン)を30.1(重量%)含んでいた。
【0131】
[工程1−2]
工程1−1で得られた脂肪族ポリエステルを室温/2000Paで3時間乾燥した後、60℃/常圧で16時間熱処理を行った。ポリマーを室温まで冷却した後、森田精機工業(株)のプラスチッククラッシャー JC30型粉砕機にてポリマーを粉砕した。粉砕したポリマーを分級して粒子径が1〜3.35(mm)の脂肪族ポリエステル172.2gを得た。また、粒子径が1(mm)未満、及び3.35(mm)より大きい脂肪族ポリエステルは15.2gであった。粉砕・分級後の脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は35.4万、脂肪族ポリエステル中の脂肪族環状エステルの濃度は27.6(重量%)であった。
【0132】
[工程1−3]
工程1−2で得られた粒子径が1〜3.35(mm)の脂肪族ポリエステル172.2gとモレキュラーシーブ3Aで脱水処理したN,N−ジメチルアセトアミド1550gを2Lのセパラブルフラスコに装入し、室温/窒素雰囲気下で1時間撹拌した後ろ過した。続いて、ろ物である脂肪族ポリエステルとモレキュラーシーブ3Aで脱水処理したN,N−ジメチルアセトアミド465gを1Lのセパラブルフラスコに装入し、室温/窒素雰囲気下で1時間撹拌した後ろ過した。この時点での脂肪族ポリエステル中に含まれる脂肪族環状エステルの量は0.4(wt%)であった。この後、この脂肪族ポリエステルを4000Pa、室温から最終的に60℃まで昇温して6時間、更に80℃/窒素流通下で14時間乾燥し、重量平均分子量=36.4万、脂肪族ポリエステル中に含まれる脂肪族環状エステルの濃度が0.2%の脂肪族ポリエステル124.5gを得た。尚、工程1−3で回収した、脂肪族環状エステルを含むN,N−ジメチルアセトアミド溶液は2030gであった。
【0133】
[工程2−1]
まず、工程1−3より回収した脂肪族環状エステルを含むN,N−ジメチルアセトアミド溶液は2030gを3Lの4口フラスコに装入し、70℃/4000PaにてN,N−ジメチルアセトアミドを系外へ留出させる事により脂肪族環状エステル44.5gを得た。この脂肪族環状エステルと工程1−2で得られた粒子径が1mm未満、及び3.35(mm)より大きい脂肪族ポリエステル15.2gと10%水酸化ナトリウム水溶液234gを500mlのセパラブルフラスコに装入して、100℃/窒素雰囲気下で4時間加熱することにより、脂肪族環状エステルと脂肪族ポリエステルを加水分解した。得られた水溶液に含まれる脂肪族ヒドロキシカルボン酸塩(=β−ヒドロキシエトキシ酢酸ナトリウム)は82.3gであった。
【0134】
[工程2−2]
工程2−1より回収した脂肪族ヒドロキシカルボン酸塩水溶液292.7gを1Lの4口フラスコに装入し、次いで36%塩酸水溶液55.5gを装入して室温で反応させ、脂肪族ヒドロキシカルボン酸水溶液348.2gを得た。
【0135】
[工程2−3]
工程2−2で得られた脂肪族ヒドロキシカルボン酸水溶液348.2gに分子量400のポリエチレングリコール23.2gを装入した後、65℃/9330Paにて4時間加熱する事により系外に水228.7gを留出させた。その後、アセトン160gを装入して析出した塩をろ過により分離し、更にろ塊をアセトン60gで洗浄した。ろ液は500ml4口フラスコに装入し、60〜115℃/常圧で4時間加熱する事によりアセトン212gを系外へ留出させた。その後、トルエンが充填されたディーンスタークトラップを4口フラスコに装着し、更にトルエン10gを装入し、150℃/常圧で8時間脱水重縮合反応し、続いてトルエン9.3gを系外に留去させて、脂肪族ポリエステルオリゴマー87.2gを得た。該オリゴマーを200mlの蒸留装置へ移し、120℃/1333Paで2時間加熱した後、120〜150℃/1333Paで3時間にて解重合・蒸留を行った。5%初留カットした後に本留に切り替え、水分量=200ppm、遊離酸=未検出の脂肪族環状エステル50.0gを得た。更にこの脂肪族環状エステルを100mlの蒸留装置へ移し、110℃/1333Paで1時間加熱した後、110〜130℃/1333Paで3時間にて蒸留を行った。5%初留カットした後に本留に切り替え、純度=99.9%以上、水分量=35ppm、遊離酸=未検出の脂肪族環状エステル40.0gを得た。
これより、実施例2における脂肪族ポリエステルの収率は77.7%であった。
【0136】
工程2−3で得られたp−ジオキサノン30gと大和化成工業株式会社製p−ジオキサノン170gを、あらかじめ50℃に保温しておいた200mlのセパラブルフラスコへ装入し、続いて触媒としてアルドリッチ社製試薬2−エチルヘキサン酸錫(II)0.0341g(=錫換算でp−ジオキサノンに対し50ppm)、開始剤として東京化成社製試薬ラウリルアルコール0.36g(=p−ジオキサノンに対し1800ppm)をそれぞれ装入し、常圧、窒素気流下で120℃に昇温し、120℃で5時間開環重合を行った。得られた脂肪族ポリエステル(=ポリ(p−ジオキサノン))の重量平均分子量は34.8万、脂肪族ポリエステル中の脂肪族環状エステル(=p−ジオキサノン)濃度は30.5(重量%)であった。
【0137】
[製造例1]
[工程1−1]
あらかじめ50℃に保温しておいた1Lのセパラブルフラスコへ、脂肪族環状エステルとして大和化成工業株式会社製p−ジオキサノン1000g、触媒としてアルドリッチ社製試薬2−エチルヘキサン酸錫(II)0.17g(=錫換算でp−ジオキサノンに対し50ppm)、開始剤として東京化成社製試薬ラウリルアルコール1.80g(=p−ジオキサノンに対し1800ppm)をそれぞれ装入し、常圧、窒素気流下で120℃に昇温した。120℃で5時間開環重合を行った後、溶融したポリマーを窒素雰囲気下で琺瑯バットに排出した。得られた脂肪族ポリエステル(=ポリ(p−ジオキサノン))は972g(収率=97.2%)であり、重量平均分子量は33.8万、脂肪族ポリエステルは脂肪族環状エステル(=p−ジオキサノン)を30.2(重量%)含んでいた。
【0138】
[工程1−2]
工程1−1で得られた脂肪族ポリエステルを室温/2000Paで3時間乾燥した後、60℃/常圧で16時間熱処理を行った。ポリマーを室温まで冷却した後、森田精機工業(株)のプラスチッククラッシャー JC30型粉砕機にてポリマーを粉砕した。粉砕したポリマーを分級して粒子径が1〜3.35(mm)の脂肪族ポリエステル866.7gを得た。また、粒子径が1(mm)未満、及び3.35(mm)より大きい脂肪族ポリエステルは77.2gであった。粉砕・分級後の脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は34.8万、脂肪族ポリエステル中の脂肪族環状エステルの濃度は27.4(重量%)であった。
【0139】
[工程1−3]
工程1−2で得られた粒子径が1〜3.35(mm)の脂肪族ポリエステル866.7gとモレキュラーシーブ3Aで脱水処理したキシレン2000gを5Lのセパラブルフラスコに装入し、室温/窒素雰囲気下で1時間撹拌した後ろ過する操作を脂肪族ポリエステル中に含まれる脂肪族環状エステルの濃度が5%になるまで繰り返し、更に室温から50℃に温度を上げて同様の操作をする事により、脂肪族ポリエステル中に含まれる脂肪族環状エステルの濃度を1.3%まで減少させた。この脂肪族ポリエステルを減圧下、室温から最終的に60℃まで昇温して乾燥し、重量平均分子量=34.7万、脂肪族ポリエステル中に含まれる脂肪族環状エステルの濃度が0.7%脂肪族ポリエステル630.0gを得た。尚、工程1−3で使用したキシレンの総量は22kg、脂肪族環状エステルを含むキシレン溶液の回収量は21.7kgであった。
【0140】
[実施例3]
製造例1の工程1−3で回収した脂肪族環状エステルを含むキシレン溶液4350gを使用し、10%水酸化ナトリウム水溶液232gを10%水酸化カリウム水溶液325gに変えた他は、実施例1の[工程2−1]〜[工程2−3]と同様の操作を行い、脂肪族環状エステル39.5gを得た。得られた脂肪族環状エステルは、純度=99.9%以上、水分量38ppm、遊離酸=3ppmであった。
【0141】
得られたp−ジオキサノン30gと大和化成工業株式会社製p−ジオキサノン170gを、あらかじめ50℃に保温しておいた200mlのセパラブルフラスコへ装入し、続いて触媒としてアルドリッチ社製試薬2−エチルヘキサン酸錫(II)0.0341g(=錫換算でp−ジオキサノンに対し50ppm)、開始剤として東京化成社製試薬ラウリルアルコール0.36g(=p−ジオキサノンに対し1800ppm)をそれぞれ装入し、常圧、窒素気流下で120℃に昇温し、120℃で5時間開環重合を行った。得られた脂肪族ポリエステル(=ポリ(p−ジオキサノン))の重量平均分子量は34.3万、脂肪族ポリエステル中の脂肪族環状エステル(=p−ジオキサノン)濃度は30.8(重量%)であった。
【0142】
[実施例4]
製造例1の工程1−3で回収した脂肪族環状エステルを含むキシレン溶液4350gを使用し、10%水酸化ナトリウム水溶液232gを10%水酸化リチウム水溶液139gに変えた他は、実施例1の[工程2−1]〜[工程2−3]と同様の操作を行い、脂肪族環状エステル39.0gを得た。得られた脂肪族環状エステルは、純度=99.9%以上、水分量=40ppm、遊離酸=3ppmであった。
【0143】
得られたp−ジオキサノン30gと大和化成工業株式会社製p−ジオキサノン170gを、あらかじめ50℃に保温しておいた200mlのセパラブルフラスコへ装入し、続いて触媒としてアルドリッチ社製試薬2−エチルヘキサン酸錫(II)0.0341g(=錫換算でp−ジオキサノンに対し50ppm)、開始剤として東京化成社製試薬ラウリルアルコール0.36g(=p−ジオキサノンに対し1800ppm)をそれぞれ装入し、常圧、窒素気流下で120℃に昇温し、120℃で5時間開環重合を行った。得られた脂肪族ポリエステル(=ポリ(p−ジオキサノン))の重量平均分子量は33.9万、脂肪族ポリエステル中の脂肪族環状エステル(=p−ジオキサノン)濃度は30.7(重量%)であった。
【0144】
[実施例5]
[工程1−1]
あらかじめ50℃に保温しておいた1Lのセパラブルフラスコへ、脂肪族環状エステルとして大和化成工業株式会社製p−ジオキサノン1000g、触媒としてアルドリッチ社製試薬2−エチルヘキサン酸錫(II)0.17g(=錫換算でp−ジオキサノンに対し50ppm)、開始剤として東京化成社製試薬ラウリルアルコール1.80g(=p−ジオキサノンに対し1800ppm)をそれぞれ装入し、常圧、窒素気流下で120℃に昇温した。120℃で5時間開環重合を行った後、溶融したポリマーを窒素雰囲気下で琺瑯バットに排出した。得られた脂肪族ポリエステル(=ポリ(p−ジオキサノン))は972g(収率=97.2%)であり、重量平均分子量は33.0万、脂肪族ポリエステルは脂肪族環状エステル(=p−ジオキサノン)を30.7(重量%)含んでいた。
【0145】
[工程1−2]
工程1−1で得られた脂肪族ポリエステルを室温/2000Paで3時間乾燥した後、60℃/常圧で16時間熱処理を行った。ポリマーを室温まで冷却した後、森田精機工業(株)のプラスチッククラッシャー JC30型粉砕機にてポリマーを粉砕した。粉砕したポリマーを分級して粒子径が1〜3.35(mm)の脂肪族ポリエステル865.2gを得た。また、粒子径が1(mm)未満、及び3.35(mm)より大きい脂肪族ポリエステルは77.7gであった。粉砕・分級後の脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は34.2万、脂肪族ポリエステル中の脂肪族環状エステルの濃度は27.6(重量%)であった。
【0146】
[工程1−3]
工程1−2で得られた粒子径が1〜3.35(mm)の脂肪族ポリエステル866.7gとモレキュラーシーブ3Aで脱水処理したキシレン2000gを5Lのセパラブルフラスコに装入し、室温/窒素雰囲気下で1時間撹拌した後ろ過する操作を脂肪族ポリエステル中に含まれる脂肪族環状エステルの濃度が5%になるまで繰り返し、更に室温から50℃に温度を上げて同様の操作をする事により、脂肪族ポリエステル中に含まれる脂肪族環状エステルの濃度を1.3%まで減少させた。この脂肪族ポリエステルを減圧下、室温から最終的に60℃まで昇温して乾燥し、重量平均分子量=34.2万、脂肪族ポリエステル中に含まれる脂肪族環状エステルの濃度が0.7%脂肪族ポリエステル629.0gを得た。尚、工程1−3で使用したキシレンの総量は22kg、脂肪族環状エステルを含むキシレン溶液の回収量は21.7kgであった。
【0147】
工程1−3より回収した脂肪族環状エステルを含むキシレン溶液21.7kgを3Lの4口フラスコに随時装入しながら、140℃/常圧にてキシレンを系外へ留出させる事により脂肪族環状エステル220.8gを得た。
得られた脂肪族環状エステルを300mlの蒸留装置へ移し、110℃/1333Paで2時間加熱した後、110〜130℃/1333Paで5時間にて蒸留を行った。5%初留カットした後に本留に切り替え、純度=99.9%以上、水分量=40ppm、遊離酸=未検出の脂肪族環状エステル200.9gを得た。
これより、実施例5における脂肪族ポリエステルの収率は78.2%であった。
【0148】
上で得られたp−ジオキサノン100gと大和化成工業株式会社製p−ジオキサノン100gを、あらかじめ50℃に保温しておいた200mlのセパラブルフラスコへ装入し、続いて触媒としてアルドリッチ社製試薬2−エチルヘキサン酸錫(II)0.0341g(=錫換算でp−ジオキサノンに対し50ppm)、開始剤として東京化成社製試薬ラウリルアルコール0.36g(=p−ジオキサノンに対し1800ppm)をそれぞれ装入し、常圧、窒素気流下で120℃に昇温し、120℃で5時間開環重合を行った。得られた脂肪族ポリエステル(=ポリ(p−ジオキサノン))の重量平均分子量は33.6万、脂肪族ポリエステル中の脂肪族環状エステル(=p−ジオキサノン)濃度は30.7(重量%)であった。
【0149】
[実施例6]
[工程1−1]
あらかじめ50℃に保温しておいた200mlのセパラブルフラスコへ、脂肪族環状エステルとして大和化成工業株式会社製p−ジオキサノン200g、触媒としてアルドリッチ社製試薬2−エチルヘキサン酸錫(II)0.0341g(=錫換算でp−ジオキサノンに対し50ppm)、開始剤として東京化成社製試薬ラウリルアルコール0.36g(=p−ジオキサノンに対し1800ppm)をそれぞれ装入し、常圧、窒素気流下で120℃に昇温した。120℃で5時間開環重合を行った後、溶融したポリマーを窒素雰囲気下で琺瑯バットに排出した。得られた脂肪族ポリエステル(=ポリ(p−ジオキサノン))は193.8g(収率=96.9%)であり、重量平均分子量は33.5万、脂肪族ポリエステルは脂肪族環状エステル(=p−ジオキサノン)を30.3(重量%)含んでいた。
【0150】
[工程1−2]
工程1−1で得られた脂肪族ポリエステルを室温/2000Paで3時間乾燥した後、60℃/常圧で16時間熱処理を行った。ポリマーを室温まで冷却した後、森田精機工業(株)のプラスチッククラッシャー JC30型粉砕機にてポリマーを粉砕した。粉砕したポリマーを分級して粒子径が1〜3.35(mm)の脂肪族ポリエステル172.8gを得た。また、粒子径が1(mm)未満、及び3.35(mm)より大きい脂肪族ポリエステルは14.8gであった。粉砕・分級後の脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は34.7万、脂肪族ポリエステル中の脂肪族環状エステルの濃度は27.6(重量%)であった。
【0151】
[工程1−3]
工程1−2で得られた粒子径が1〜3.35(mm)の脂肪族ポリエステル172.8gとモレキュラーシーブ3Aで脱水処理したキシレン400gを1Lのセパラブルフラスコに装入し、室温/窒素雰囲気下で1時間撹拌した後ろ過する操作を、脂肪族ポリエステル中に含まれる脂肪族環状エステルの濃度が5重量%になるまで繰り返し、その後室温から50℃に温度を上げて同様の操作をする事により、脂肪族ポリエステル中に含まれる脂肪族環状エステルの濃度を1.3%まで減少させた。この脂肪族ポリエステルを2000Pa、室温から最終的に60℃まで昇温して9時間乾燥し、重量平均分子量=34.4万、脂肪族ポリエステル中に含まれる脂肪族環状エステルの濃度が0.7%の脂肪族ポリエステル125.6gを得た。尚、工程1−3で使用したキシレンの総量は4400g、脂肪族環状エステルを含むキシレン溶液の回収量は4350gであった。
【0152】
[工程2−1]
まず、工程1−3より回収した脂肪族環状エステルを含むキシレン溶液4350gを3Lの4口フラスコに随時装入しながら、140℃/常圧にてキシレンを系外へ留出させる事により脂肪族環状エステルを含むキシレンを400gまで濃縮した。この濃縮した脂肪族環状エステルを含むキシレン400gと10%水酸化ナトリウム水溶液172gを2Lのセパラブルフラスコに装入して、100℃/窒素雰囲気下で4時間加熱することにより、脂肪族環状エステルと脂肪族ポリエステルを加水分解した。室温まで冷却後、2Lの分液漏斗で有機層と水層を分離し、脂肪族ヒドロキシカルボン酸塩(=β−ヒドロキシエトキシ酢酸ナトリウム)を含む水層213.7gを回収した。尚、水層中に含まれるβ−ヒドロキシエトキシ酢酸ナトリウムは60.5gであった。
【0153】
[工程2−2]
工程2−1より回収した脂肪族ヒドロキシカルボン酸塩水溶液213.7gを1Lの4口フラスコに装入し、次いで36%塩酸水溶液41.0gを装入して室温で反応させ、脂肪族ヒドロキシカルボン酸水溶液254.7gを得た。
【0154】
[工程2−3]
工程2−2で得られた脂肪族ヒドロキシカルボン酸水溶液254.7gに分子量400のポリエチレングリコール17.0gを装入した後、65℃/9330Paにて4時間加熱する事により系外に水166.8gを留出させた。その後、アセトン120gを装入して析出した塩をろ過により分離し、更にろ塊をアセトン60gで洗浄した。ろ液は500ml4口フラスコに装入し、60〜115℃/常圧で4時間加熱する事によりアセトン171gを系外へ留出させた。その後、トルエンが充填されたディーンスタークトラップを4口フラスコに装着し、更にトルエン10gを装入し、150℃/常圧で8時間脱水重縮合反応し、続いてトルエン9.0gを系外に留去させて、脂肪族ポリエステルオリゴマー62.8gを得た。該オリゴマーを100mlの蒸留装置へ移し、120℃/1333Paで2時間加熱した後、120〜150℃/1333Paで3時間にて解重合・蒸留を行った。5%初留カットした後に本留に切り替え、水分量=180ppm、遊離酸=未検出の脂肪族環状エステル35.2gを得た。更にこの脂肪族環状エステルを50mlの蒸留装置へ移し、110℃/1333Paで1時間加熱した後、110〜130℃/1333Paで3時間にて蒸留を行った。5%初留カットした後に本留に切り替え、純度=99.9%以上、水分量=30ppm、遊離酸=未検出の脂肪族環状エステル26.8gを得た。
これより、実施例6における脂肪族ポリエステルの収率は72.0%であった。
【0155】
工程2−3で得られたp−ジオキサノン15gと大和化成工業株式会社製p−ジオキサノン85gを、あらかじめ50℃に保温しておいた100mlのセパラブルフラスコへ装入し、続いて触媒としてアルドリッチ社製試薬2−エチルヘキサン酸錫(II)0.017g(=錫換算でp−ジオキサノンに対し50ppm)、開始剤として東京化成社製試薬ラウリルアルコール0.18g(=p−ジオキサノンに対し1800ppm)をそれぞれ装入し、常圧、窒素気流下で120℃に昇温し、120℃で5時間開環重合を行った。得られた脂肪族ポリエステル(=ポリ(p−ジオキサノン))の重量平均分子量は33.6万、脂肪族ポリエステル中の脂肪族環状エステル(=p−ジオキサノン)濃度は30.6(重量%)であった。
【0156】
[比較例1]
ピューラック社製の光学純度=99.9%であるL−ラクタイド200gと試薬2−エチルヘキサン酸錫(II)0.0341g(=錫換算でL−ラクタイドに対し50ppm)、開始剤として東京化成社製試薬ラウリルアルコール0.36g(=L−ラクタイドに対し1800ppm)をそれぞれ装入し、常温/1333Paで3時間真空乾燥した。その後窒素で系内を常圧に戻した後、窒素気流下で180℃に昇温し、180℃で2時間開環重合を行った。得られたポリ(L−乳酸)は重量平均分子量=20.3万、ポリ乳酸中に残存するL−ラクタイドは4%であった。
得られたポリ(L−乳酸)を室温/2000Paで3時間乾燥した後、森田精機工業(株)のプラスチッククラッシャー JC30型粉砕機にて粒子径が1(mm)未満になるまで粉砕した。粒子径が1(mm)未満のポリ(L−乳酸)100gを以下に記す加水分解に使用する事にした。
【0157】
脂肪族環状エステルとしてp−ジオキサノンの代わりにL−ラクタイドを使用し、実施例1の[工程2−1]〜[工程2−3]に準拠した方法によりラクタイドが再生するかを検証した。尚、解重合、蒸留温度は、特開2002−300898、実施例1の[5]ラクチド生成工程に記載のある200℃で行った。
【0158】
[工程2−1]
ピューラック社製の光学純度=99.9%であるL−ラクタイド100gを溶解したキシレン溶液3400gをフラスコ底に液抜き用のコックが装着された5Lの丸底フラスコに装入した後、粒子径が1mm未満のポリ(L−乳酸)100gと10%水酸化ナトリウム水溶液1110gを装入し、100℃/窒素雰囲気下で4時間加熱することにより、L−ラクタイドとポリ(L−乳酸)を加水分解した。室温まで冷却後、分離した有機層と水層から、乳酸ナトリウムを含む水層1309gを回収した。
【0159】
[工程2−2]
工程2−1より得られた乳酸ナトリウム水溶液1309gを2Lの4口フラスコに装入し、次いで36%塩酸水溶液266.8gを装入して室温で反応させ、L−乳酸水溶液1575.8gを得た。
【0160】
[工程2−3]
工程2−2で得られた脂肪族ヒドロキシカルボン酸水溶液1575.8gに分子量400のポリエチレングリコール110.9gを装入した後、65℃/9330Paにて4時間加熱する事により系外に水1087.1gを留出させた。その後、アセトン610gを装入して析出した塩をろ過により分離し、更にろ塊をアセトン300gで洗浄した。ろ液は2Lの4口フラスコに装入し、60〜115℃/常圧で4時間加熱する事によりアセトン880gを系外へ留出させた。その後、トルエンが充填されたディーンスタークトラップを4口フラスコに装着し、更にトルエン32gを装入し、150℃/常圧で8時間脱水重縮合反応し、続いてトルエン30.8gを系外に留去させて、脂肪族ポリエステルオリゴマー325.6gを得た。該オリゴマーを500mlの蒸留装置へ移し、200℃/1333Paで2時間加熱した後、200℃/1333Paで1時間初留カットしてから本留に切り替えた。本留に切り替えてから徐々に温度が上がり出したので、200〜230℃/1333Paで1.5時間、解重合、蒸留を行った。得られたラクタイドは75gであり、蒸留装置にはタール状物が生成していた。
蒸留により得られたラクタイドを加水分解した後に光学純度を分析した所、L体純度は50.1%であった。
【0161】
以上の結果より、p−ジオキサノンをL−ラクタイドに代えて実施例1の[工程2−1]〜[工程2−3]に準拠した方法によりラクタイドが再生できるかを確認したが、光学純度が低下してしまい再生できなかった。
【0162】
[比較例2]
実施例1に従って工程1−1から工程2−1までを行い、β−ヒドロキシエトキシ酢酸ナトリウム81.8gを含む脂肪族ヒドロキシカルボン酸塩水溶液290.0gを得た。
【0163】
[工程2−2]
この脂肪族ヒドロキシカルボン酸塩水溶液290.0gを1Lの4口フラスコに装入し、次いで53%硫酸水溶液50.6gを装入して室温で反応させ、脂肪族ヒドロキシカルボン酸水溶液340.6gを得た。
【0164】
[工程2−3]
工程2−2で得られた脂肪族ヒドロキシカルボン酸水溶液340.6gにエチレングリコールが未検出であるテトラエチレングリコール11.2gを装入した後、65℃/9330Paにて4時間加熱する事により系外に水215.8gを留出させた。その後、アセトン160gを装入して析出した塩をろ過により分離し、更にろ塊をアセトン60gで洗浄した。ろ液は500ml4口フラスコに装入し、60〜115℃/常圧で4時間加熱する事によりアセトン213gを系外へ留出させた。その後、トルエンが充填されたディーンスタークトラップを4口フラスコに装着し、更にトルエン10gを装入し、150℃/常圧で8時間脱水重縮合反応し、続いてトルエン9.0gを系外に留去させて、脂肪族ポリエステルオリゴマー73.3gを得た。該オリゴマーを100mlの蒸留装置へ移し、120℃/1333Paで2時間加熱した後、120〜150℃/1333Paで3時間にて解重合・蒸留を行った。5%初留カットした後に本留に切り替えて、脂肪族環状エステル44.8gを得た。この脂肪族環状エステルに含まれるエチレングリコール量は770ppmであった。
【0165】
[比較例3]
[工程1−1]
あらかじめ50℃に保温しておいた200mlのセパラブルフラスコへ、脂肪族環状エステルとして大和化成工業株式会社製p−ジオキサノン200g、触媒としてアルドリッチ社製試薬2−エチルヘキサン酸錫(II)0.0341g(=錫換算でp−ジオキサノンに対し50ppm)、開始剤として東京化成社製試薬ラウリルアルコール0.36g(=p−ジオキサノンに対し1800ppm)をそれぞれ装入し、常圧、窒素気流下で120℃に昇温した。120℃で5時間開環重合を行った後、溶融したポリマーを窒素雰囲気下で琺瑯バットに排出した。得られた脂肪族ポリエステル(=ポリ(p−ジオキサノン))は193.8g(収率=96.9%)であり、重量平均分子量は33.6万、脂肪族ポリエステルは脂肪族環状エステル(=p−ジオキサノン)を30.7(重量%)含んでいた。
【0166】
[工程1−2]
得られた脂肪族ポリエステルを室温/2000Paで3時間乾燥した後、60℃/常圧で16時間熱処理を行った。ポリマーを室温まで冷却した後、森田精機工業(株)のプラスチッククラッシャー JC30型粉砕機にてポリマーを粉砕した。粉砕したポリマーを分級して粒子径が1〜3.35(mm)の脂肪族ポリエステル172.8gを得た。また、粒子径が1(mm)未満、及び3.35(mm)より大きい脂肪族ポリエステルは15.2gであった。粉砕・分級後の脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は34.6万、脂肪族ポリエステル中の脂肪族環状エステルの濃度は27.6(重量%)であった。
【0167】
この粒子径が1〜3.35(mm)の脂肪族ポリエステル172.8gを減圧乾燥器に入れ、窒素を吹き込みながら70℃/1333Paにて24時間加熱処理し、脂肪族ポリエステルに含まれる脂肪族環状エステルを除去した。加熱処理後に得られた脂肪族ポリエステルは126.1gであり、重量平均分子量は34.6万、脂肪族ポリエステル中の脂肪族環状エステルの濃度は0.9(重量%)であった。これより、比較例3における脂肪族ポリエステルの収率は62.5%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式(1)において、R1、R2、及びR3は、−H、−CH、−CH−CH、−(CH−CH、−CH(CH)−CHを表し、それぞれ同一かまたは異なり、式中Xは、酸素原子または硫黄原子を表す]
で表わされる脂肪族環状エステル(a)を、
[工程1−1]脂肪族環状エステル(a)を重合開始剤及び触媒の存在下、溶融状態にて開環重合する事により、重量平均分子量が100,000〜600,000であり、脂肪族環状エステル(a)を20〜70重量%含む脂肪族ポリエステル(b)を得る工程
[工程1−2]工程1−1にて得られた脂肪族ポリエステル(b)を造粒する工程
[工程1−3]工程1−2で得られた脂肪族ポリエステル(b)を、該脂肪族ポリエステルが溶解しない状態で有機溶媒と接触させる事により、重量平均分子量が100,000〜600,000であり、脂肪族環状エステル(a)を0〜2重量%含む脂肪族ポリエステル(b)を得る工程
を含む工程により、一般式(2)
【化2】

[式(2)において、R1、R2、及びR3は、−H、−CH、−CH−CH、−(CH−CH、−CH(CH)−CHを表し、それぞれ同一かまたは異なり、式中Xは、酸素原子または硫黄原子を、式中pは重合度を表す]
で表される脂肪族ポリエステル(b)を製造する方法において、工程1−3の脂肪族ポリエステルと接触させた後の有機溶媒中に含まれる脂肪族環状エステルを精製処理して純度99.0%〜100%、水分含有量が0〜100ppmの脂肪族環状エステルを得、これを工程1−1で使用する事を特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法。
【請求項2】
精製処理が、
(1)蒸留で精製する
(2)以下に示す[工程2−1]から[工程2−3]、
[工程2−1] 工程1−3において脂肪族ポリエステルと接触させた後の有機溶媒中に含まれる脂肪族環状エステルをアルカリ金属化合物の存在下で分解する事により、
一般式(3)
【化3】

[式(3)において、R1、R2、及びR3は、−H、−CH、−CH−CH、−(CH−CH、−CH(CH)−CHを表し、それぞれ同一かまたは異なり、式中Xは酸素原子または硫黄原子を、式中Zはアルカリ金属原子を表す]
で表される脂肪族ヒドロキシカルボン酸塩(c)を得る工程
[工程2−2]工程2−1で得られた脂肪族ヒドロキシカルボン酸塩(c)を酸と反応させる事により、一般式(4)
【化4】

[式(4)において、R1、R2、及びR3は、−H、−CH、−CH−CH、−(CH−CH、−CH(CH)−CHを表し、それぞれ同一かまたは異なり、式中Xは酸素原子または硫黄原子を表す]
で表される脂肪族ヒドロキシカルボン酸(d)を得る工程
[工程2−3] 工程2−2で得られた脂肪族ヒドロキシカルボン酸(d)を脱水重縮合反応して脂肪族ヒドロキシカルボン酸オリゴマーを製造した後、該オリゴマーを解重合・蒸留する事により脂肪族環状エステル(a)を製造する工程
を含む工程により精製する、
の何れかである事を特徴とする請求項1記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
【請求項3】
脂肪族環状エステル(a)がp−ジオキサノンである事を特徴とする請求項1記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。

【公開番号】特開2008−156525(P2008−156525A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348181(P2006−348181)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】