説明

脂肪酸モノグリセリド組成物

本発明は、グリセロールの脂肪酸モノエステルを含む組成物を投与することによる、T.rubrumにより引き起こされる真菌性状態を治療する方法に関する。ある実施形態によると、グリセロールの脂肪酸モノエステルは、1−モノカプリンである。別の実施形態によると、真菌性状態は、爪真菌症である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真菌により引き起こされる感染症を治療または予防するための局所医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
爪の真菌感染症(爪真菌症として知られている)および周囲の皮膚の真菌感染症は見苦しく、特定の場合には、爪の喪失を招き得る。これらの感染症は、皮膚糸状菌、カンジダ、および皮膚糸状菌ではない糸状菌により引き起こされる。爪および周囲の皮膚に感染する一般的な皮膚糸状菌には、紅色菌(Trichophyton rubrum)および毛瘡菌(Trichophyton mentagrophytes)が含まれる。
【0003】
爪真菌症のための現在の治療選択肢には、テルビナフィン、イトラコナゾール、グリセオフルビン、またはフルコナゾールを使用した経口治療が含まれる。代替選択肢には、アモロルフィンまたはシクロピロックスを使用した局所治療が含まれる。このような局所組成物の1つは、水不溶性フィルム形成成分および1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体(シクロピロックスなど)を含むネイルエナメルを開示している米国特許第4957730号明細書に記載されている。
【0004】
Laugier等の米国特許第6455592号明細書は、薬理学的有効量のテルビナフィン塩酸塩、水および少なくとも1種の直鎖または分枝鎖C〜Cアルカノールを含む溶媒媒体、ならびに親水性浸透剤を含む組成物を教示している。
【0005】
Bohn等による米国特許出願公開第2003/0190340号明細書は、親水性ゲル形成剤、水および1−ヒドロキシ−4−メチル−6−シクロヘキシル−2(1H)ピリドンなどの化合物を含む製剤を開示している。
【0006】
Colombo等による米国特許出願公開第2004/0028721号明細書は、有効成分、フィルム形成剤および親水性粘着性ポリマーを含む有効成分の真皮または経皮投与のための単層フィルムを開示している。
【0007】
Thormar等による米国特許第6596763号明細書は、HSV−1感染症の治療のためのモノカプリンを含む脂質の使用を教示している。
【0008】
Wolf等によるドイツ特許DE 195 40 465 A1は、酵母菌感染症、特にピチロスポルム・オバーレ(Pityrosporum ovale)の治療のための抗真菌剤として、モノ−、ジ−、およびトリ−グリセロールモノカルボン酸エステルを開示している。
【0009】
当技術分野では、爪真菌症および他の真菌性状態を治療または予防するのに有効な局所組成物への必要性が残っている。本発明は、これらの必要性に対処する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様によると、本発明は、治療上有効量の、一般式IaまたはIb:
【化1】

(式中、Rは、4〜22個の炭素原子を有する分枝鎖または直鎖アシル基(すなわち、−C(O)−C4−22)である)によって表されるグリセロールの脂肪酸モノエステル、およびその薬学的に許容され得る担体または賦形剤、および任意で第2の医薬活性剤を含む、Trichophyton rubrumにより引き起こされる真菌性状態の治療または予防のための医薬組成物を提供する。
【0011】
別の態様によると、本発明は、治療上有効量の、一般式IaまたはIb:
【化2】

(式中、Rは、4〜22個の炭素原子を有する分枝鎖または直鎖アシル基(すなわち、−C(O)−C4−22)である)によって表されるグリセロールの脂肪酸モノエステル、およびその薬学的に許容され得る担体または賦形剤、および任意で第2の医薬活性剤を含む、薬学的に許容され得る組成物を患者に局所的に適用するステップを含む、患者のTrichophyton rubrumにより引き起こされる真菌性状態の治療または予防のための方法を提供する。
【0012】
さらなる態様によると、本発明は、Trichophyton rubrumにより引き起こされる真菌性状態の治療または予防のための薬剤を調製するための、本明細書に記載される組成物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1に記載されるTrichophyton rubrumおよびTrichophyton mentagrophytesの培養液(ブロス液)中の種々の抗真菌化合物の最小発育阻止濃度(MIC)を示す図である。「P」は、培養液が、真菌増殖に関して陽性であると分かった、すなわち1プレート当たり2個より多いコロニーが見つかったことを示し、「−」は増殖が観察されなかったことを示す。
【図2】プラセボおよび対照試料とともに、実施例3にしたがって調製した1−モノカプリンネイルラッカーおよびPENLAC(登録商標)ネイルラッカーを適用した後の、感染爪モデル(実施例2に記載)におけるTrichophyton rubrumの生存率を明らかにする図である。バーは、平均±SEM、n=6を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一態様によると、本発明は、治療上有効量の、一般式IaまたはIb:
【化3】

(式中、Rは、4〜22個の炭素原子を有する分枝鎖または直鎖アシル基(すなわち、−C(O)−C4−22)である)によって表されるグリセロールの脂肪酸モノエステル、およびその薬学的に許容され得る担体または賦形剤、および任意で第2の医薬活性剤を含む、Trichophyton rubrumにより引き起こされる真菌性状態の治療または予防のための医薬組成物を提供する。
【0015】
別の態様によると、本発明は、治療上有効量の、一般式IaまたはIb:
【化4】

(式中、Rは、4〜22個の炭素原子を有する分枝鎖または直鎖アシル基(すなわち、−C(O)−C4−22)である)によって表されるグリセロールの脂肪酸モノエステル、およびその薬学的に許容され得る担体または賦形剤、および任意で第2の医薬活性剤を含む、薬学的に許容される組成物を患者に局所的に適用するステップを含む、Trichophyton rubrumにより引き起こされる真菌性状態の治療または予防のための方法を提供する。
【0016】
さらなる態様によると、本発明は、Trichophyton rubrumにより引き起こされる真菌性状態の治療または予防のための薬剤を調製するための、本明細書に記載されている組成物の使用に関する。
【0017】
一実施形態によると、Rは、8〜14個の炭素原子を有する分枝鎖または直鎖アシル基(すなわち、−C(O)−C8−14)である。
【0018】
別の実施形態では、Rは、
−C(O)−C15(オクタン酸からのC
−C(O)−C17(ノナン酸からのC
−C(O)−C19(デカン酸からのC10
−C(O)−C1021(ウンデカン酸からのC11
−C(O)−C1123(ドデカン酸からのC12
−C(O)−C1225(トリデカン酸からのC13)、および
−C(O)−C1327(テトラデカン酸からのC14
からなる群から選択される、8〜14個の炭素原子を有する直鎖アシル基である。
【0019】
別の実施形態では、Rは、−C(O)−C19(C10)、−C(O)−C1021(C11)、および−C(O)−C1123(C12)からなる群から選択される直鎖アシル基である。
【0020】
一実施形態では、Rは、−C(O)−C19である。
【0021】
別の実施形態では、Rは−C(O)−C1021である。
【0022】
別の実施形態では、Rは−C(O)−C1123である。
【0023】
別の実施形態によると、組成物は、一般式(Ia)によって表されるグリセロールの脂肪酸モノエステルを含む。
【0024】
また別の実施形態によると、組成物は、一般式(Ia)によって表されるグリセロールの脂肪酸モノエステルを含み、Rは、
−C(O)−C15(オクタン酸からのC
−C(O)−C17(ノナン酸からのC
−C(O)−C19(デカン酸からのC10
−C(O)−C1021(ウンデカン酸からのC11
−C(O)−C1123(ドデカン酸からのC12
−C(O)−C1225(トリデカン酸からのC13)、および
−C(O)−C1327(テトラデカン酸からのC14
からなる群から選択される、8〜14個の炭素原子を有する直鎖アシル基である。
【0025】
また別の実施形態によると、組成物は、一般式(Ia)によって表されるグリセロールの脂肪酸モノエステルを含み、Rは、−C(O)−C19(C10)、−C(O)−C1021(C11)、および−C(O)−C1123(C12)からなる群から選択される直鎖アシル基である。すなわち、この実施形態によると、グリセロールの脂肪酸モノエステルは、1−デカノイル−rac−グリセロール(C10)、1−ウンデカノイル−rac−グリセロール(C11)、および1−ラウロイル−rac−グリセロール(C12)からなる群から選択される。
【0026】
一実施形態では、組成物は、一般式(Ia)によって表されるグリセロールの脂肪酸モノエステルを含み、Rは、−C(O)−C19である直鎖アシル基である。すなわち、この実施形態によると、グリセロールの脂肪酸モノエステルは、1−モノカプリンとしても知られている、1−デカノイル−rac−グリセロール(C10)である。別の実施形態では、脂肪酸モノエステルは、1−ウンデカノイル−rac−グリセロール(C11)である。また別の実施形態では、前記モノエステルは、1−モノラウリンとしても知られている、1−ラウロイル−rac−グリセロール(C12)である。
【0027】
一つの実施形態によると、グリセロールの脂肪酸モノエステルは、約0.1重量%〜約20重量%の量で存在する。一実施形態では、脂肪酸モノエステルは、約1重量%〜約10重量%の量で存在する。別の実施形態では、前記モノエステルは、約1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、または10重量%の量で存在する。
【0028】
一般式IaまたはIbによって表されるグリセロールの脂肪酸モノエステルの医薬組成物は、ネイルラッカー、エナメル、塗料、溶液、ローション、クリーム、ゲル、エアロゾル泡、エアロゾルスプレーとして、または任意の他の適当な薬学的に許容され得る局所投与剤形として製剤化することができる。一つの実施形態によると、医薬組成物は、ネイルラッカーである。一つの代替実施形態によると、医薬組成物は、エアロゾル泡である。
【0029】
一つの実施形態によると、医薬組成物は、水を含まない、または実質的に含まない。
【0030】
ネイルラッカー
一つの実施形態によると、医薬組成物は、少なくとも1つの揮発性溶媒およびフィルム形成成分をさらに含む。この実施形態によると、組成物は、ネイルラッカーである。ネイルラッカーの局所適用は、いったん揮発性溶媒が蒸発してしまうと、可撓性フィルムが患部に付着するのを可能にする。この可撓性フィルムは、患部を、環境ストレスおよび/または衣類から保護し、有効成分の貯蔵所として働く。
【0031】
(揮発性溶媒)
本発明のネイルラッカーは、1つまたは複数の揮発性溶媒を含む。したがって、ネイルラッカーを患者の爪および周囲の皮膚に適用すると、揮発性溶媒の蒸発により、有効成分の基質が、爪および周囲の皮膚の表面上のフィルム形成成分内に残る。これが、今度は、有効成分の爪および皮膚内への迅速な浸透を可能にする。
【0032】
適切には、揮発性溶媒は、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ブトキシエタノール、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、またはそれらの組み合わせもしくは混合物から選択される。一つの実施形態によると、揮発性溶媒は、エタノールおよび酢酸エチルの混合物である。一つの代替実施形態によると、揮発性溶媒は、イソプロピルアルコールおよびエタノールの混合物である。一つの実施形態によると、揮発性溶媒は、約40重量%〜約99.85重量%の量で存在する。別の実施形態によると、揮発性溶媒は、約60重量%〜約90重量%の量で存在する。また別の実施形態によると、揮発性溶媒は、約75重量%〜約85重量%の量で存在する。
【0033】
(フィルム形成成分)
本発明の実施形態によると、フィルム形成成分は、フィルム形成ポリマーである。適当なフィルム形成ポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボマー、PVM/MAデカジエンクロスポリマー、ヒドロキシプロピルグアー、オクチルアクリルアミドアクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アンモニオメタクリレートコポリマー、PVP/VAコポリマー、PVA、PVM/MAコポリマーのC−Cアルキルエステル、シェラック、またはそれらの組み合わせもしくは混合物が含まれる。
【0034】
一実施形態によると、フィルム形成ポリマーは、親水性ポリマーである。適切には、親水性ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボマー、PVM/MAデカジエンクロスポリマー、またはヒドロキシプロピルグアーから選択される。
【0035】
一つの代替実施形態によると、フィルム形成ポリマーは、疏水性ポリマーである。適切には、疏水性ポリマーは、オクチルアクリルアミドアクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アンモニオメタクリレートコポリマー、PVP/VAコポリマー、PVA、PVM/MAコポリマーのC−Cアルキルエステル、またはシェラックから選択される。
【0036】
一つの実態形態によると、PVM/MAコポリマーのC−Cアルキルエステルは、エチルエステル、イソプロピルエステルまたはブチルエステルである。一実施形態によると、フィルム形成成分は、PVM/MAコポリマーのブチルエステルである。
【0037】
一つの実態形態によると、フィルム形成成分は、約0.05重量%〜約40重量%の量で存在する。別の実施形態では、フィルム形成成分は、約0.1重量%〜約25重量%の量で存在する。また別の実施形態によると、フィルム形成成分は、約10重量%〜約20重量%の量で存在する。
【0038】
「1日1回の」治療のためには、親水性ポリマーをフィルム形成成分として使用するのが好ましい。「週1回の」治療のためには、疏水性ポリマーをフィルム形成成分として使用するのが好ましい。このような疎水性ポリマーの使用は、長期にわたる治療(すなわち、低頻度の適用)に適した耐水性および耐摩擦性フィルムを可能にする。
【0039】
エアロゾル泡組成物
一つの代替実施形態によると、医薬組成物は、水、界面活性剤成分および噴霧剤をさらに含む。この実施形態によると、組成物は、エアロゾル泡組成物である。
【0040】
一つの実施形態によると、水は、約80重量%〜約96重量%の量で組成物中に存在する。別の実施形態では、水は、約90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%または95重量%など、約90重量%〜約95重量%の量で存在する。
【0041】
本局所エアロゾル泡組成物は、界面活性剤成分を含む。界面活性剤は、グリセロールの脂肪酸モノエステルを水成分中で乳化する、すなわち水中油型エマルジョンを形成すると信じられている。
【0042】
適切には、界面活性剤は、約0.01重量%〜約10重量%の量で組成物中に存在する。別の実施形態では、界面活性剤は、約0.25重量%、0.5重量%、0.75重量%、1重量%、1.25重量%、1.5重量%、1.75重量%、または2重量%など、約0.25重量%〜約2重量%の量で存在する。
【0043】
界面活性剤の親水性/親油性バランス(HLB)は、界面活性剤の水または油に対する親和性を示す。HLB目盛は、1(完全に親油性)から20(完全に親水性)まであり、10は両特性が等しいことを表す。親油性界面活性剤は、油中水型(w/o)エマルジョンを形成する傾向があり、親水性界面活性剤は、水中油型(o/w)エマルジョンを形成する傾向がある。2種の界面活性剤混合のHLBは、界面活性剤Aの重量分率×界面活性剤AのHLB値+界面活性剤Bの重量分率×界面活性剤BのHLB値(加重平均)、に等しい。
【0044】
一実施形態では、界面活性剤成分は、親水性界面活性剤を含む。適当には、界面活性剤成分は、親油性界面活性剤を含まない、または実質的に含まない。
【0045】
別の実施形態では、親水性界面活性剤は、非イオン性親水性界面活性剤である。一実施形態では、非イオン性親水性界面活性剤は、親水性エトキシル化脂肪族アルコールエーテルまたは親水性ソルビタン誘導体である。
【0046】
一つの実施形態によると、非イオン性親水性界面活性剤は、親水性エトキシル化脂肪族アルコールエーテルである。適切には、親水性エトキシル化脂肪族アルコールエーテルは、ステアレス−10、ステアレス−20、セテアレス−6、セテアレス−10、セテアレス−12、セテアレス−15、セテアレス−20、セテアレス−21、セテアレス−22、セテアレス−25、セテアレス−30、セテアレス−31、セテアレス−32、セテアレス−33、ラウレス−5、ラウレス−9、ラウレス−10、ラウレス−12、ラウレス−15、ラウレス−20、ラウレス−21、ラウレス−22、ラウレス−23、ノノキシノール−9、オレス−10、オレス−20、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0047】
一つの実施形態によると、親水性エトキシル化脂肪族アルコールエーテルは、セテアレス−20である。
【0048】
別の実施形態では、非イオン性親水性界面活性剤は、親水性ソルビタン誘導体である。適切には、親水性ソルビタン誘導体は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、もしくはポリソルベート80、またはそれらの組み合わせもしくは混合物から選択される。
【0049】
本局所エアロゾル泡組成物は、作動時に泡を生じさせるように噴霧剤を含む。一つの実施形態によると、噴霧剤は、炭化水素、クロロフルオロカーボン、ジメチルエーテル、ハイドロフルオロカーボン、およびその混合物からなる群から選択される。
【0050】
一実施形態では、噴霧剤は、炭化水素の混合物である。さらなる実施形態では、炭化水素の混合物は、プロパン、n−ブタン、およびイソブタンの混合物である。
【0051】
噴霧剤は、典型的には、約3重量%〜約15重量%の量で存在する。一実施形態では、噴霧剤は、約5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、または10重量%など、約5重量%〜約10重量%の量で存在する。
【0052】
エアロゾル泡組成物は、標準的なエアロゾルディスペンサーなどの加圧容器内に詰められる。
【0053】
組成物を加圧容器から放出する際、組成物はエアロゾル泡(ムースとしても知られている)である。一つの実施形態では、エアロゾル泡は、穏やかな機械的作用、例えば、研磨または伸展などのせん断で容易に壊れる。
【0054】
本明細書で使用するための標準的なエアロゾルディスペンサーには、アルミニウム、ブリキ板、およびガラス容器が含まれる。
【0055】
一実施形態では、加圧容器は、内部表面が化学的に不活性な内張りを並べた、ワンピースアルミニウム容器である。本明細書で使用するための1つの適当な内部表面内張りは、Youngstown、OhioのExal Corporationによって供給されるなどのポリアミド−イミド(PAM)である。容器に、直立使用または逆位使用バルブおよび従来の泡噴出作動装置を取り付けてもよい。
【0056】
追加の活性剤
本発明の実施形態によると、医薬組成物は、第2の医薬活性剤を含んでもよい。
【0057】
一つの実施形態では、第2の医薬活性剤は、抗菌剤、抗真菌剤、コルチコステロイド、およびビタミンD類似体からなる群から選択される。
【0058】
さらなる実施形態によると、第2の医薬活性剤は、抗菌剤である。適切には、抗菌剤は、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、セフポドキシムプロキセチル、クリンダマイシン、リンコマイシン、エリスロマイシン、バシトラシン、グラミシジン、バンコマイシン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、ホスホマイシン、フシジン酸、ムピロシン、スルファセタミド、メトロニダゾール、ダプソン、トリクロサン、四級アンモニウム塩、スルファジアジン銀、ならびにそれらの塩およびエステルからなる群から選択される。
【0059】
別の実施形態によると、第2の医薬活性剤は、抗真菌剤である。適切には、抗真菌剤は、アニデュラファンギン(anidulafungin)、カスポファンギンおよびミカファンギンなどのエキノキャンディン;アムホテリシンB、カンジシジン、フィリピン、ファンギクロミン、ハチマイシン、ハマイシン、ルセンソマイシン、メパルトリシン、ナタマイシン、ナイスタチン、ペチロシン、ペリマイシンなどのポリエン;ブテナフィン、ナフチフィンおよびテルビナフィンなどのアリルアミン;ビホナゾール、ブトコナゾール、クロルミダゾール、クロコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、エニルコナゾール、フェンチコナゾール、フルトリマゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ラノコナゾール、ミコナゾール、ネチコナゾール、オモコナゾール、硝酸オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾールおよびチオコナゾールなどのイミダゾール;リラナフタート、トルシクラート、トリンダートおよびトルナフタート(tolnaftate)などのチオカルバメート;アルバコナゾール、プラミコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ルリコナゾール、ポサコナゾール、ラブコナゾール、サペルコナゾール、テルコナゾールおよびボリコナゾールなどのトリアゾール;ならびにアクリソルシン、アモロルフィン、ビフェナミン、ブロモサリチルクロラニリド、ブクロサミド、プロピオン酸カルシウム、クロルフェネシン、シクロピロックス、クロキシキン、コパラフィネート、エキサラミド、フルシトシン、ハロプロジン、ヘキセチジン、ロフルカルバン、ニフラテル、ヨウ化カリウム、プロピオン酸、ピリチオン、サリチルアニリド、プロピオン酸ナトリウム、スルベンチン、テノニトロゾール、トリアセチン、ウンデシレン酸、プロピオン酸亜鉛、グリセオフルビン、オリゴマイシン、ピロールニトリン、シッカニン、ビリジアンなどの他の抗真菌剤、ならびにそれらの塩およびエステルからなる群から選択される。
【0060】
一つの実施形態によると、抗真菌剤は、アルバコナゾールである。
【0061】
一実施形態によると、グリセロールの脂肪酸モノエステルは、1−デカノイル−rac−グリセロール(すなわち、1−モノカプリン)であり、第2の医薬活性剤はアルバコナゾールである。
【0062】
別の実施形態によると、第2の医薬活性剤は、コルチコステロイドである。適切には、コルチコステロイドは、アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロベタゾール、クロベタゾン、コルチゾン、デソニド、デスオキシメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、フルクロロロン、フルメタゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルプレドニデン、フルランドレノリド、フルランドレノロン、フルチカゾン、ハルシノニド、ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、モメタゾン、プレドニゾン、トリアムシノロンアセトニド、プレドニカルベート、ならびにそれらの塩およびエステルからなる群から選択される。
【0063】
また別の実施形態によると、第2の医薬活性剤は、ビタミンD類似体である。適切には、ビタミンD類似体は、カルシジオール、カルシトリオール、カルシポトリエン、パリカルシトール、22−オキサカルシトリオール(22−oxacalcitriol)、ジヒドロタキステロール、カルシフェロール、ならびにそれらの塩およびエステルからなる群から選択される。
【0064】
第2の医薬活性剤は、治療上有効量で存在する。一つの実施形態によると、第2の医薬活性剤は、約0.005重量%〜約15重量%の量で存在する。
【0065】
他の成分
本医薬組成物は、当技術分野で既知の追加の添加剤を含んでもよい。適切には、添加剤は、pH調整剤、湿潤剤、フィルム増量剤、キレート剤、酸化防止剤、保存剤、可塑剤、浸透促進剤、芳香剤、着色剤、界面活性剤、皮膚軟化剤、ゲル化剤、ラジカル捕捉剤、またはそれらの組み合わせもしくは混合物から選択される。
【0066】
(pH調整剤)
本医薬組成物は、pH調整剤をさらに含んでもよい。一実施形態では、pH調整剤は、塩基である。適当なpH調整塩基には、アミン、重炭酸塩、炭酸塩、およびアルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物などの水酸化物、ならびに遷移金属水酸化物が含まれる。別の実施形態では、pH調整剤は、酸、酸性塩、またはそれらの混合物である。また別の実施形態によると、pH調整剤は、緩衝液である。適切には、緩衝液は、クエン酸塩/クエン酸、酢酸塩/酢酸、リン酸塩/リン酸、ギ酸塩/ギ酸、プロピオン酸塩/プロピオン酸、乳酸塩/乳酸、炭酸塩/炭酸、アンモニウム/アンモニア、エデト酸塩/エデト酸、またはそれらの組み合わせもしくは混合物から選択される。
【0067】
一つの実施形態によると、pH調整剤は、約0.01重量%〜約10重量%の量で存在する。別の実施形態によると、pH調整剤は、組成物のpHを約4〜約6.5の間に調整するのに十分な量で存在する。
【0068】
(湿潤剤)
本医薬組成物は、湿潤剤をさらに含んでもよい。この点について有用な湿潤剤の非限定的例としては、グリセロール、ソルビトール、マルチトール、ポリデキストロース、トリアセチン、プロピレングリコール、ステアリン酸PEG−20、ステアリン酸PEG−40、ステアリン酸PEG−150、ジステアリン酸PEG−150およびステアリン酸PEG−100を含むポリエチレングリコール(PEG)エステル、ラウレス−12、セテアレス−20、ラウレス−23、グリセレス−7、グリセレス−12、グリセレス−26、PEG−4、PEG−6、PEG−8、PEG−12、PEG−32、PEG−75、PEG−150を含むアルコキシル化アルコール、またはそれらの組み合わせもしくは混合物が挙げられる。好ましい実施形態では、湿潤剤は、グリセロールである。
【0069】
一つの実施形態では、本組成物は、約0.1重量%〜約10重量%の湿潤剤を含む。さらなる実施形態では、本組成物は、約0.5重量%〜約5重量%の湿潤剤を含む。
【0070】
(フィルム増量剤)
本医薬組成物、特にネイルラッカー組成物は、少なくとも1つのフィルム増量剤をさらに含んでもよい。この点について有用なフィルム増量剤の非限定的例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、硫酸カルシウム、コロイド状二酸化ケイ素、カオリン、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、二酸化チタン、酸化亜鉛、またはそれらの組み合わせもしくは混合物が挙げられる。一つの実施形態では、フィルム増量剤は、約0.1重量%〜約2重量%の量で存在する。
【0071】
(キレート剤)
本医薬組成物は、キレート剤をさらに含んでもよい。この点について有用なキレート剤の非限定的例としては、クエン酸、(モノ)クエン酸イソプロピル、クエン酸ステアリル、クエン酸レシチン、グルコン酸、酒石酸、シュウ酸、リン酸、ピロリン酸四ナトリウム、モノリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸カルシウム、ソルビトール、グリシン(アミノ酢酸)、メチルグルカミン、トリエタノールアミン(トロラミン)、EDTA、DEG(ジヒドロキシエチルグリシン)、DPTA(ジエチレントリアミン五酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、HEDTA(N−(ヒドロキシエチル)−エチレントリアミン三酢酸)、アミノカルボキシラート、ジメルカプロール(dimercaprol)(BAL)、ラリキシン酸(マルトール)、単座配位子(フッ化物イオンおよびシアン化物イオン)、ジフェニルチオカルバゾン、o−フェナントロリン、ジフェニルアミンスルホン酸バリウム、グルコヘプトン酸ナトリウム、8−ヒドロキシキノリン、オレフィン錯体(ジシクロペンタジエニル鉄など)、ポルフィリン、ホスホナート、またはそれらの組み合わせもしくは混合物が挙げられる。一つの実施形態では、キレート剤は、約0.1重量%〜約1重量%の量で存在する。
【0072】
(酸化防止剤)
本医薬組成物は、酸化防止剤をさらに含んでもよい。本明細書で酸化防止剤として機能し得る物質の非限定的例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、トコフェロール、没食子酸プロピル、ビタミンE、TPGS、またはその組み合わせもしくは混合物が挙げられる。一つの実施形態では、本組成物は、約0.001重量%〜約1重量%の量の酸化防止剤を含む。
【0073】
(保存剤)
本医薬組成物は、保存剤をさらに含んでもよい。本明細書で保存剤として機能し得る物質の非限定的例としては、ベンジルアルコール、ジアゾリジニル尿素、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、フェノキシエタノール、ソルビン酸、安息香酸、それらの塩、またはそれらの組み合わせもしくは混合物が挙げられる。一つの実施形態では、本組成物は、約0.01重量%〜約2重量%の量の保存剤を含む。
治療の方法
【0074】
治療方法
本組成物は、特定の皮膚糸状菌Trichophyton rubrumの治療に特に有効である。一つの実施形態によると、本発明は、Trichophyton rubrum感染症により引き起こされる真菌性疾患を治療する方法に関する。一実施形態では、真菌性疾患は、爪真菌症、足白癬(水虫)、股部(鼠径部)白癬、および皮膚糸状菌症(輪癬)からなる群から選択される。一実施形態によると、真菌性状態は、爪真菌症である。本組成物はまた、Trichophyton mentagrophytesおよびEpidermophyton floccosumにより引き起こされる真菌性状態の治療にも有効である。
【0075】
併用療法
別の実施形態では、本組成物を、真菌性状態の治療を促進するために追加の(別の)剤形と組み合わせて使用してもよい。この追加の剤形は、本組成物と同時に適用または使用(すなわち同時適用または使用)してもよい。あるいは、本組成物および追加の剤形の一方を朝に投与し、他方を夕方に投与してもよい(またはその逆でもよい)。
【0076】
一つの実施形態では、本組成物を、抗真菌剤、好ましくは、本発明の脂肪酸モノエステルとは異なる抗真菌剤を含む別の経口組成物と組み合わせて投与する。経口組成物への使用に適した代表的な抗真菌剤には、限定されないが、テルビナフィン、アルバコナゾール、プラミコナゾール、イトラコナゾール、グリセオフルビン、またはフルコナゾールが含まれる。
【0077】
一つの代替実施形態によると、本医薬組成物は維持療法として使用される。維持療法は、一次治療後、真菌性状態の症状の実質的または完全な緩和後に開始される。特定の実施形態によると、維持療法のための組成物は、1−デカノイル−rac−グリセロール(C10)、すなわち、1−モノカプリンを含むエアロゾル泡である。
【0078】
定義
本明細書で使用する場合、「投与(administered、administeringおよびadministration)」という用語は、健全な医療行為において、治療効果をもたらす方法で患者に組成物を送達する任意の方法をいう。
【0079】
本明細書の上述箇所および他の箇所で使用される「a」および「an」という用語は、列挙された成分の「1つまたは複数」を意味することが理解されるべきである。特に指示しない限り、単数形の使用は複数形を含むことは当業者には明白であろう。そのため、「a」、「an」および「少なくとも1つ」という用語は、本出願において互換的に使用される。
【0080】
本出願中、種々の実施形態の記載は、「含む」という言葉を使用するが、いくつかの特定の例では、「から本質的に成る」または「から成る」という言葉を代わりに使用して実施形態を記載することができるということは、当業者には理解されるであろう。
【0081】
本明細書で使用する場合、活性剤もしくは成分または医薬活性剤もしくは成分の「有効量」または「治療上有効量」という言葉は、本明細書では同義であるが、投与の際、治療効果を発揮するのに十分な量の医薬活性剤をいう。治療上有効量の医薬活性剤は、真菌性状態を治療し得る、治療する、または治療するはずである。有効量の医薬活性剤は、治療される特定の状態、状態の重症度、治療の持続期間、および使用される組成物の特定の成分によって変化するであろう。
【0082】
本明細書で使用する場合、「基質」という用語は、架橋ポリマー構造内の空間を意味する。この空間はまた、投与前の活性成分または成分が存在する「貯蔵所」としても働く。
【0083】
本明細書で使用する場合、「それらの塩」という用語は、薬学的に許容され、親化合物の所望の薬理活性を有する塩をいう。このような塩には、(1)酢酸、安息香酸、クエン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリコール酸、塩酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、リン酸、プロピオン酸、ソルビン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、天然および合成由来のアミノ酸、ならびにそれらの混合物などの酸により形成される酸付加塩、あるいは(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが、(i)金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンもしくはアルミニウムイオンにより置換される際、または(ii)エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、およびN−メチルグルカミンなどの有機塩基をプロトン化する際に形成される塩が含まれる。
【0084】
本明細書で使用する場合、特定の成分を「実質的に含まない」という用語は、特定の成分を約1%未満しか含まない組成物をいう。
【0085】
本明細書で使用する場合、状態の「治療(treatmentまたはtreating)」は、その少なくとも1つの症状の緩和、その重症度の減少、またはその進行の遅延、予防もしくは抑制を包含する。治療は、状態が完全に治癒されることを意味する必要はない。本明細書で有用な組成物は、状態の重症度の減少、それと関連する症状の重症度の減少、患者の生活の質の改善、または状態の発症を遅延、予防もしくは抑制するだけでよい。
【0086】
本教示がより良く理解され、決してその範囲を限定しないために、特に指示しない限り、明細書および特許請求の範囲で使用する量、パーセントまたは比率を表す全ての数、および他の数値は、「約」という用語により全ての例で変更されるものと、理解されるべきである。
【0087】
本明細書で使用する他の用語は、当該技術分野で周知の意味により定義されることが意図されている。特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術的および科学的用語は、現在記載の発明が関係する当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0088】
以下の実施例は、本発明を説明するものであり、その限定を意図するものではない。
【実施例】
【0089】
生物学的実施例
(実施例1−ブロス液分析)
種々の試験剤の最小発育阻止濃度(MIC)を、2種の皮膚糸状菌、Trichophyton rubrumおよびTrichophyton mentagrophytesに対して標準的プロトコルで試験した。
1.シクロピロックス
2.テルビナフィンHCl
3.硝酸エコナゾール
4.チオコナゾール
5.ケトコナゾール
6.フザリン酸
7.1−モノカプリン(1−デカノイル−rac−グリセロール)
【0090】
Trichophyton rubrumおよびTrichophyton mentagrophytesを、1〜5週間、30℃で、バレイショブドウ糖寒天培地(PDA)で培養した。1クローンを無作為に選び取り、サブローデキストロースブロス(SDB)で、1ml当たり1×10コロニー形成単位(cfu)の密度まで、培養した。種々の濃度の試験剤を皮膚糸状菌培養液に添加し、4週間までインキュベートした。各々の週で、培養液の一定分量を取り、PDAプレートに播種し、3週間までインキュベートして増殖を評価した。各々の週で、プレートを検査し、撮影した。1プレート当たり2個より多いコロニーが見つかった場合に、培養液を陽性とみなした。
【0091】
Trichophyton rubrumおよびTrichophyton mentagrophytesの培養液(ブロス液)中の種々の薬剤の抗真菌活性評価の結果を図1に示す。
【0092】
ブロス液分析結果は、両皮膚糸状菌に対する抗真菌活性を以下の順位で示している。1)テルビナフィンおよびエコナゾール、2)チオコナゾール、3)ケトコナゾール、4)シクロピロックス、5)1−モノカプリン、および6)フザリン酸。
【0093】
テルビナフィンおよびエコナゾールは、この分析において最も活性であり、試験した最低濃度よりも低い(<3.9μg/ml)最小発育阻止濃度(MICs)を有していた。
【0094】
フザリン酸は、500μg/mlのMICを有し、最も活性が低かった。
【0095】
1−モノカプリンは、250μg/mlのMICを有し、シクロピロックスは、31.3μg/mlのMICを有していた。
【0096】
(実施例2−感染爪モデル)
以下の実施例は、市販のコンパレーター、すなわちPENLAC(登録商標)ネイルラッカーと、表1a)による組成物の有効性の比較を提供する。
【0097】
比較で使用した分析は、インビトロ感染爪モデルであった。試験製剤の有効性を評価するために、分析にはTrichophyton rubrum感染死体爪試料を使用した。研究は、臨床的状況により近く、したがって上記のブロス液分析よりも実際的関連性を有する条件下で行った。分析には、真菌細胞の生存率を減少させる異なる製剤の有効性を示すために、生物学的マーカーとして生存生物から回収されるATPのレベルを使用する。
【0098】
図2は、表1a)の組成物、市販のコンパレーター(PENLAC(登録商標)ネイルラッカー)、プラセボおよび対照(全実験のセットはn=6で試験した)を適用した際のTrichophyton rubrum感染爪試料からのATP放出の変動を示す。本発明の組成物を適用した際に感染爪試料から回収されたATPは、PENLAC(登録商標)ネイルラッカーで処理したTrichophyton rubrum感染爪試料から回収されたATPの量よりも有意に低いことが観察された。これは、本発明の組成物が、市販のコンパレーターと比較して、爪試料の存在下でTrichophyton rubrum細胞の生存率を減少させるのに有意により有効であることを示している。
【0099】
製剤実施例
(実施例3−1−モノカプリンネイルラッカー)
以下の実施例は、本発明のネイルラッカー組成物を説明し、w/w%で与えられる。
【0100】
【表1】

(注:Gantrex ES−425は、エタノール中の50%溶液として供給される。すなわち、29%のGantrez ES−425は、14.5%のポリマー樹脂に相当する。したがって、表1aは、1−モノカプリン6%、酢酸エチル34%、エタノール45.5%およびフィルム形成成分14.5%を含む組成物を記載している。同様に、表1bは、1−モノカプリン6%、アルバコナゾール3%、酢酸エチル31%、エタノール45.5%およびフィルム形成成分14.5%を含む組成物を記載している。)
【0101】
ネイルラッカーは、以下のように調製した。
1.撹拌しながらエタノール溶媒に1−モノカプリンを溶解させる(次いで、該当する場合には、第2の活性成分をエタノール溶媒に溶解させる)。
2.活性成分が完全に溶解したら、撹拌しながら酢酸エチル溶媒を添加する。
3.撹拌しながらGantrez ES−425を添加し、透明な溶液が得られるまで撹拌する。
【0102】
(実施例4−1−モノカプリンエアロゾル泡組成物)
以下の実施例は、本発明によるエアロゾルエマルジョン泡組成物を説明する。この泡は、爪真菌症の一次治療に、または維持療法として適している。
【0103】
【表2】

【0104】
エアロゾル泡ベースは、以下のように調製した。
1.透明な溶液が得られるまで、1−モノカプリン(2%)をセトマクロゴール1000(0.5%)とともに加温する。
2.熱水(47.5w/w)をステップ1からの透明な溶液に添加し、半透明のかすかにオパール色の溶液を得る。
3.冷水(50%w/w)を添加し、泡ベースを示すよりオパール色の溶液を得る。
【0105】
エアロゾル泡の調製:
泡ベースをエアロゾル容器へ移し、バルブを挿入し、エアロゾル容器を真空圧着し、適当な炭化水素噴霧剤を添加してエアロゾル泡組成物を得る。
【0106】
本発明の特定の実施形態を上記しているが、本発明はこれらの特定の実施形態に制限されるものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく本発明の変形がなされ得ることは当業者に明白であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療上有効量の、一般式IaまたはIb:
【化1】

(式中、Rは、4〜22個の炭素原子を有する分枝鎖または直鎖アシル基である)によって表されるグリセロールの脂肪酸モノエステル、およびその薬学的に許容され得る担体または賦形剤、および任意で第2の医薬活性剤を含む、薬学的に許容され得る組成物を患者に局所的に適用するステップを含む、患者のTrichophyton rubrumにより引き起こされる真菌性状態の治療または予防のための方法。
【請求項2】
Rが、8〜14個の炭素原子を有する分枝鎖または直鎖アシル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Rが、−C(O)−C15、−C(O)−C17、−C(O)−C19、−C(O)−C1021、−C(O)−C1123、−C(O)−C1225、および−C(O)−C1327からなる群から選択される、8〜14個の炭素原子を有する直鎖アシル基である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
Rが、−C(O)−C19、−C(O)−C1021、および−C(O)−C1123からなる群から選択される直鎖アシル基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、一般式(Ia)によって表されるグリセロールの脂肪酸モノエステルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
Rが、−C(O)−C15、−C(O)−C17、−C(O)−C19、−C(O)−C1021、−C(O)−C1123、−C(O)−C1225、および−C(O)−C1327からなる群から選択される、8〜14個の炭素原子を有する直鎖アシル基である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
Rが、−C(O)−C19、−C(O)−C1021、および−C(O)−C1123からなる群から選択される直鎖アシル基である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
Rが、−C(O)−C19である直鎖アシル基である、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記グリセロールの脂肪酸モノエステルが、約0.1重量%〜20重量%の量で存在する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記グリセロールの脂肪酸モノエステルが、約1重量%〜約10重量%の量で存在する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、ネイルラッカー、エナメル、塗料、溶液、ローション、クリーム、ゲル、エアロゾル泡、およびエアロゾルスプレーからなる群から選択される局所投与剤形である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が、ネイルラッカーである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、ネイルラッカーであり、少なくとも1つの揮発性溶媒およびフィルム形成成分をさらに含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの揮発性溶媒が、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ブトキシエタノール、アセトン、酢酸エチル、および酢酸ブチルからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの揮発性溶媒が、イソプロピルアルコールおよびエタノールの混合物である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの揮発性溶媒が、酢酸エチルおよびエタノールの混合物である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項17】
前記フィルム形成成分が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボマー、PVM/MAデカジエンクロスポリマー、ヒドロキシプロピルグアー、オクチルアクリルアミドアクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アンモニオメタクリレートコポリマー、PVP/VAコポリマー、PVA、PVM/MAコポリマーのC-Cアルキルエステル、シェラック、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項13〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記フィルム形成成分が、PVM/MAコポリマーのブチルエステルである、請求項13〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、エアロゾル泡である、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が、エアロゾル泡であり、水、界面活性剤成分、および噴霧剤をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記水が、約80重量%〜約96重量%の量で存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記水が、約90重量%〜約95重量%の量で存在する、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記界面活性剤成分が、親水性界面活性剤を含み、親油性界面活性剤を含まないまたは実質的に含まない、請求項20〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記親水性界面活性剤が、非イオン性親水性界面活性剤である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記界面活性剤成分が、約0.1重量%〜約10重量%の量で存在する、請求項20〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記界面活性剤成分が、約0.25重量%〜約2重量%の量で存在する、請求項20〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記噴霧剤が、炭化水素、クロロフルオロカーボン、ジメチルエーテル、ハイドロフルオロカーボン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項20〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記噴霧剤が、炭化水素の混合物である、請求項20〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記噴霧剤が、約5重量%〜約10重量%の量で存在する、請求項20〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が、pH調整剤、湿潤剤、フィルム増量剤、キレート剤、酸化防止剤、保存剤、可塑剤、浸透促進剤、芳香剤、着色剤、界面活性剤、皮膚軟化剤、ゲル化剤、およびラジカル捕捉剤からなる群から選択される1つまたは複数の添加剤をさらに含む、請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物が、第2の医薬活性剤を含む、請求項1〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の医薬活性剤が、抗菌剤、抗真菌剤、コルチコステロイド、およびビタミンD類似体からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記第2の医薬活性剤が、抗真菌剤である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記抗真菌剤が、アルバコナゾールである、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記真菌性状態が、足白癬、股部白癬、皮膚糸状菌症、および爪真菌症からなる群から選択される、請求項1〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記真菌性状態が、爪真菌症である、請求項35に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−521351(P2012−521351A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500982(P2012−500982)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/027905
【国際公開番号】WO2010/108060
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(505437103)スティーフェル ラボラトリーズ インコーポレイテッド (9)
【出願人】(507397146)スティーフェル リサーチ オーストラリア ピーティーワイ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】