脂質付加したイミダゾキノリン誘導体
当該発明の化合物は、リン脂質またはホスホノ脂質基に共有結合で結合されているイミダゾキノリン分子を含む、アジュバント分子である。本発明の化合物は、インターフェロン-a、IL-12および他の免疫賦活サイトカインの誘導物質であること、また、ワクチン抗原用のアジュバントとして使用した場合に公知のサイトカイン誘導物質に比べ改良された活性プロファイルを有することが明らかになった。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規アジュバント化合物、それらの調製方法、それらを含有する組成物、およびワクチンアジュバントとしてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物ワクチンの精製および単純化を行い、また合成および組換えサブユニット抗原を使用してワクチンの製造可能性と安全性を改良してきたが、それはワクチン有効性の低下を招いた。これがきっかけとなり、ワクチン活性を強化する抗原とアジュバントの同時投与と、合成および組換えエピトープの弱免疫原性に関しての研究が行われた。アジュバントは、ワクチン抗原に対する体液性免疫応答および/または細胞介在性免疫応答を増強させる添加剤である。しかし、歴史的にみて、ワクチンアジュバントのデザインは、免疫系機能に関与する分子機序の性質が複雑であることから困難であった。微生物成分を添加した場合に獲得免疫応答が増強されることは長く知られてきたが、ごく最近になって、免疫学的監視に関与する細胞(例えば、上皮細胞および樹状細胞)上のtoll様受容体(TLRs)が、いわゆる「病原体関連分子パターン(pathogen-associated patterns)」またはPAMPsを介してこれらの微生物産物の多くに関係することが明らかになった。大部分のワクチンアジュバントおよびスタンドアロン型免疫調節剤がTLRファミリーメンバーと相互作用するようである。
【0003】
ヒトで同定された10種類の公知のTLRsのうち、5種類は微生物成分の認識に関係しており(TLRs 1、2、4、5、6)、他の4種類(TLRs 3、7、8、9)は細胞質画分に限定されているようであって、ウィルスRNA(TLRs 3、7、8)および非メチル化DNA(TLR 9)の検出に関与している(Iwasaki, A., Nat Immunol 2004, 5, 987)。また、TLRsの活性化によって細胞内シグナル伝達経路が制御され、細胞内アダプター分子(例えば、MyD88、TRIF、TIRAPおよびTRAM)との相互作用を介して遺伝子が発現される(Akira, S. Nat Rev Immunol 2004, 4, 499; Takeda, K. Semin Immunol 2004, 16, 3)。これらのアダプター分子は、炎症性サイトカイン/ケモカインおよびI型インターフェロン(IFNa/b)の発現を特異的に制御することが可能で、それにより抗原特異的な体液性免疫応答および細胞介在性免疫応答が優先的に増強される(Zughaier, S. Infect Immun 2005, 73, 2940)。体液性免疫は病原菌に対する主たる防衛線であるが、細胞傷害性Tリンパ球(CTLs)の誘導は、ウイルス性疾患および癌の症例の防御免疫において重要であると考えられる。
【0004】
現在、ミョウバンとして公知のアルミニウム塩の一群は、ヒトワクチン剤で用いられる主要アジュバントである。しかし、ミョウバンは、典型的には体液性(Th2)免疫を増強するだけであり、他の経路では局所毒性があるため一般には筋肉内投与で用いられる(例えば、皮下接種または皮内接種は肉芽腫の原因となる)(Aguilar, J. Vaccine 2007, 25, 3752)。ミョウバンに関する他の可能性のある副作用としては、IgE産生の上昇、アレルゲン性および神経毒性が挙げられる。このため、抗体とTh1型免疫応答の両方を刺激することができ、かつ、異なる投与経路および抗原製剤に適合可能である、安全で有効な新規ワクチンアジュバントが必要とされている。
【0005】
TLR7およびTLR8活性化の場合、天然の(Uおよび/またはGに富んだ)ウイルスssRNAリガンドの小分子擬似体の異なるいくつかの分類が同定されている。これらには、主としてTLR7と相互作用する(Heil, F. Eur J Immunol 2003, 33, 2987; Hemmi, 2002)、酸化型グアノシン代謝物質(オキソグアノシン(oxoguanosines))と関連する特定の抗ウイルス性化合物、ならびにTLR7および/またはTLR8に関係するアデニン誘導体が含まれる。これらの化合物の免疫刺激能力は、TLR/MyD88依存性シグナル経路およびサイトカイン(例えば、IL-6ならびにI型(特にインターフェロン-a)およびII型インターフェロン)の産生に起因していた。TLR7またはTLR8活性化は、樹状細胞(DC)上の共刺激分子(例えば、CD-40、CD-80、CD-86)ならびにMHCクラスIおよびII分子のアップレギュレーションを誘発する。DCは、Tリンパ球への抗原の取り込みおよび提示に関与する免疫系の主細胞である。TLR7を優先的に発現する形質細胞様樹状細胞(pDCs)は専門的インターフェロン-a産生細胞であるのに対し、mDCsはTLR8のみを発現する。mDCsにおけるTLR8活性化は、炎症性サイトカイン、例えば、IL-12、TNF-aおよびIFN-gならびに細胞媒介性免疫(CMI)などを優先的に産生させる。
【0006】
かなり注目を集めたアデニン誘導体のクラスの1つは、1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン(IQs)である。このクラスのイミキモド(R847、S-26398)の典型的メンバーは、クリーム剤形で局所的に塗布した場合、生殖器パピローマウイルス感染症、紫外線角化症および基底細胞癌に対して有効であることが分かった。しかし、イミキモドはインターフェロン誘導活性が比較的低く、また、経口および局所用剤に副作用がないわけではない。実際、イミキモドを使用したHCV臨床試験において、重篤な副作用が報告されている。一般に、TLR7アゴニストに関する多数の免疫学的「フットプリント」からは毒性に対する懸念が持たれている。別のTLR7アゴニストANA-975(オキソグアノシン誘導体)を使用した臨床試験は、最近、毒性問題が原因で中止となっている。
【0007】
IQクラスのTLR7/8リガンドの別のメンバーで、イミキモド代謝物質の誘導体は、レシキモドである。また、レシキモド(R-848、S-28609)はアクセサリー分子を介して直接的または間接的にマクロファージおよびDC中のTLR7をMyD88依存的に活性化し、DC中の共刺激分子およびMHCI/IIをアップレギュレートする。しかし、イミキモドとは対照的に、より有効で有毒性のレシキモドは、TLR8シグナル伝達用のリガンドでもあり、CD4+調節(Treg)細胞機能の転換をもたらす。最近、トランスフェクトしたHEK293細胞を使用した場合、TLR7アゴニストは、IFN-aおよびIFN-制御サイトカインの生成においてより有効性が高く、一方、TLR8アゴニストは炎症性サイトカイン(例えば、TNF-aおよびIL-12)の誘導においてより有効性が高いことが明らかになった。これは、TLR7活性化が抗体応答(Th2型応答)にとってより重要であり、TLR8活性化がCMIまたはTh1型免疫応答を作動しているに違いないことを示唆している。しかし、上述のように、多くのTLR7/8アゴニストは毒性を示すことが多く、不安定であり、かつ/または免疫刺激的効果が微弱である。このため、TLR7および/またはTLR8を活性化する、有効かつ安全なアジュバントを発見し開発することは、抗原に対する免疫応答の程度、方向および持続時間のコントロールを補助することにより既存および新規ワクチンの有効性および安全性を改良するのに不可欠である。。
【0008】
TLR7/8 PAMPsは、細胞表面上のPAMPsを認識するTLR2およびTLR4と異なり、エンドソーム/リソソーム区画で感知され、エンドソーム成熟が必要である。天然リガンドおよびゼノビオティック(zenobiotic)TLR7/8リガンド(例えば、イミキモドおよびレシキモド)の場合、細胞内取り込みは細胞活性化に必須である。したがって、DCsおよび他の免疫細胞へのTLR7/8リガンドの浸透を高める方法は、TLR活性化およびワクチン効果を増強し、さらに毒性作用を改善することができる。
【0009】
ヌクレオシド剤の脂質複合体が、一般に経口バイオアベイラビリティーを増強すること、また得られた「ヌクレオ脂質(nucleolipid)」のリポソーム脂質膜への取り込みを可能にすることは、当技術分野で公知である。リポソーム中に不安定かつ/または有毒性の薬剤を取り込まれると徐放性担体系または分子デポ(molecular depot)が構築され、薬剤が分解されるのを防止し、有毒副作用を低減する。こうした「脂質プロドラッグ」の有効性が非誘導体化薬剤の有効性に相当することが報告されている(米国特許第5,827,831号-NeXstar)。イミダゾキノリンおよび脂肪アシル化IQsのデポー剤は、局所組織領域内で長期間IQを維持して代謝および毒性を減少させることについて当技術分野で報告されている(WO 2005/001022−3M)。しかし、特定の方法でイミダゾキノリンをリン脂質またはホスホノ脂質へ結合させ、単独で、または抗原とのデポー剤で投与された場合に、免疫細胞への取り込みを促進させ、またエンドソームTLR7/8活性化および抗原提示を増強させることについては、当技術分野では公知ではない。当該発明の化合物による免疫応答の増強は、(I)で表される化合物とエンドソームTLR7および/またはTLR8との直接相互作用、ならびに/あるいは酵素作用後の活性代謝物の相互作用に基づくものと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の簡単な説明
本発明の化合物は、インターフェロン-a、IL-12および他の免疫刺激サイトカインの誘導剤であり、感染症および癌の治療または予防療法においてワクチン抗原用のアジュバントとして用いる場合、公知のサイトカイン誘導剤に比べて改善された活性・毒性プロファイルを有し得ることが明らかとなった。また、これらの化合物それ自体も新規である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】試験方法の概略を示す図である。
【図2】p27特異的CD8応答を示す図である。
【図3】in vivoにおいて検出されたp27特異的細胞毒性活性を示す図である。
【図4】抗原特異的CD4 T細胞応答を説明する図である。
【図5A】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するリポソームベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図5B】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するリポソームベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図5C】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するリポソームベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図5D】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するリポソームベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図5E】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するリポソームベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図5F】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するリポソームベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図5G】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するリポソームベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図6A】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するエマルションベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図6B】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するエマルションベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図6C】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するエマルションベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図6D】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するエマルションベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図6E】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するエマルションベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図6F】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するエマルションベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図6G】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するエマルションベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の要約
当該発明の化合物は、リン脂質またはホスホノ脂質基に共有結合され得るイミダゾキノリン分子を含むアジュバント分子である。当該発明は、広義には、式I:
【化1】
【0013】
(式中、
R1は、H、C1-6アルキル、C1-6アルキルアミノ、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルキルC1-6アルキル、C3-6シクロアルキルC1-6アルキルアミノ、C3-6シクロアルキルC1-6アルコキシ、C1-6アルコキシC1-6アルキル、C1-6アルコキシC1-6アルキルアミノ、C1-6アルコキシC1-6アルコキシであって;分岐鎖または非分岐鎖であり、場合により、ヒドロキシル、アミノ、チオ、ヒドラジノ、ヒドラジド、アジド、アセチレニル、カルボキシルまたはマレイミド基で末端が置換されていてもよく、
Zは、C2-C6アルキルまたはアルケニルであって、非置換であるか、または-(O-C2-C6アルキル)1-6-で末端が置換されており、
Yは、O、NHであり、
Xは、O、CH2、CF2であり、
Wは、OまたはSであり、
mは、1〜2であり、
Aは、
【化2】
【0014】
または
【化3】
【0015】
(式中、
R2は、H、または直鎖/分岐鎖/不飽和のC4-C24アルキルまたはアシルであり、
R3は、直鎖/分岐鎖/不飽和のC4-C24アルキルまたはアシルである)
であり、
R4、R5は、独立して、H、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、ハロゲン、またはトリフルオロメチルであるか;あるいは一緒になって6員アリール、1個の窒素原子を含有するヘテロアリール、シクロアルキル、または1個の窒素原子を含有するヘテロシクロアルキル環を形成し;非置換であるか、または1個または複数のC1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルで置換されている)
で表される化合物、あるいはその製薬上許容可能な塩である。
【0016】
一実施形態においては、当該発明の化合物は、より詳しくは、式II:
【化4】
【0017】
(式中、
R1は、H、C1-6アルキル、C1-6アルキルアミノ、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルキルC1-6アルキル、C3-6シクロアルキルC1-6アルキルアミノ、C3-6シクロアルキルC1-6アルコキシ、C1-6アルコキシC1-6アルキル、C1-6アルコキシC1-6アルキルアミノ、C1-6アルコキシC1-6アルコキシであって;分岐鎖または非分岐鎖であり、場合により、ヒドロキシル、アミノ、チオ、ヒドラジノ、ヒドラジド、アジド、アセチレニル、カルボキシルまたはマレイミド基で末端が置換されていてもよく、
nは、1〜6であり、
Yは、O、NHであり、
Xは、O、CH2、CF2であり、
Wは、OまたはSであり、
mは、1〜2であり、
R2は、H、または直鎖/分岐鎖/不飽和のC4-C24アルキルまたはアシルであり、
R3は、直鎖/分岐鎖/不飽和のC4-C24アルキルまたはアシルである(例えば、W=O、X=O、m=lの場合、ホスファチジル、リソホスファチジルエーテルまたはエステルである))
により表される。
【表1】
【0018】
(実施例)
【実施例1】
【0019】
4-アミノ-1-[2-(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ)アルキル]-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン(化合物(I)、Y=W=X=O、m=1)を調製するための一般的手順
【化5】
【0020】
以下のように、当技術分野で公知の方法(Crossmanら, J Chem Soc, Perkin Trans 1, 1997, 2769; Westerduinら, Tet Lett, 1986, 15, 6271; Nikolaevら, Carbohydr Res, 1990, 204, 65) に従い、4-アミノ-1-ヒドロキシアルキル-イミダゾキノリンIII(Gersterら, J Med Chem 2005, 48, 3481; Izumiら, Bioorg Med Chem 2003, 11, 2541)を1-H ホスホネートIVとカップリングさせることによりイミダゾキノリンモノホスフェートジグリセリドVを調製した:イミダゾキノリンIII(1 eq)およびH-ホスホネートIV(2 eq)をn-ヘプタン中に懸濁させ、溶媒を蒸発させた後、高真空下で一晩乾燥させた。得られた残渣をピリジン中に溶解させ(0.01M 化合物III)、ピバロイルクロリド(12.4 eq)で処理し、次いで、室温で6時間撹拌した。ヨウ素(4 eq)を含む19:1のピリジン・水(0.04M)の溶液を加え、得られた混合物を室温で1時間撹拌し、次いで、CHCl3および1M Na2S2O5水溶液の間に分配した。これらの層を分離し、水層をCHCl3で2回抽出した。合わせた有機抽出物を1Mのトリエチルアンモニウムボレートバッファー(pH 8)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製し(勾配溶離、0→25% MeOH-CHCl3)、次いで逆相クロマトグラフィーにより精製し(1%TEA含有CH3CN中のBakerbond C8、0→60%の1% Et3N含有MeOH-CH3CNで溶離)、無色固体として化合物Vを得た。
【実施例2】
【0021】
4-アミノ-1-(4-ヒドロキシブチル)-2-エトキシメチル-(1H-イミダゾ[4,5-c]キノリンハイドロクロリド(化合物(III)、R1=CH2OCH2CH3、n=4)の調製
【化6】
【0022】
(1) 4-ヒドロキシ-3-ニトロキノリン(Gersterら, J Med Chem 2005, 48, 3481)を含むDMF(0.7M)の懸濁液をPOCl3(1.2 eq)で滴下処理し、50℃で30分間撹拌した。反応混合物を氷水中へ注ぎ入れ、CH2Cl2で2回抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。得られた粗生成物を4-アミノ-ブタノール(1.3 eq)およびトリエチルアミン(1.9 eq)を含むEtOHの溶液に加え、15分間加熱還流した。濃縮後、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離、2→4% MeOH-CHCl3)により黄色固体として4-(4-ヒドロキシブチル)アミノ-3-ニトロキノリンを97%の収率で得た。
【0023】
(2) 上記(1)で調製した化合物を含むEtOAc(0.1M)の溶液を、5% Pt/C(5% w/w)およびMgSO4(1.5 eq)の存在下、50 psigで6時間水素化した。反応混合物をセライトにより濾過し、濃縮した。得られたオレンジ色の油をエトキシ酢酸(11 eq)で150℃にて1時間加熱した。反応混合物を0℃に冷却し、濃NH4OHでpH 10まで塩基性化し、CH2Cl2で2回抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(1:60 MeOH-CHCl2)によりエトキシアセテート誘導体が得られ、2.6M NaOH(5.0 eq)を含むEtOH(0.20M)で室温にて1時間処理した。エタノールを減圧下で除去し、水層をAcOEtおよびCH2Cl2で数回抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離、1:50→1:15 MeOH-CHCl3)により固体として1-(4-ヒドロキシブチル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリンを収率74%で得た。1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 9.29 (s, IH), 8.25 (dd, 2H), 7.67 (m, 2 H), 4.89 (s, 2H), 4.71 (t, 2H), 3.79 (m, 2H), 3.62 (dd, 2H), 2.12 (m, 2H), 1.82 (m, 2H), 1.25 (t, 3H)。
【0024】
(3) 上記(2)で調製した化合物および過酢酸(1.2 eq)を含むエタノール(0.4M)の溶液を60℃で2.5時間加熱した。濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し(勾配溶離、1:30→1:6 MeOH-CHCl3)、黄色固体として1-(4-ヒドロキシブチル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン5-N-オキシドを94%の収率で得た。
【0025】
(4) 上記(3)で調製した化合物を含むCH2Cl2(0.43M)の懸濁液をNH4OH(30% 水溶液、2.7mL)で処理し、続いてp-トルエンスルホニルクロリド(1.0 eq)で滴下処理した。得られた混合物を室温で1.5時間撹拌し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離、1:30→1:9 MeOH-CHCl3)によりオレンジ色固体として4-アミノ-1-(4-ヒドロキシブチル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリンが定量的収率で得られた。
【0026】
(5) 50℃の上記(4)で調製した化合物を含むジオキサン(0.12M)の溶液を、4N HClを含むジオキサン(1.5 eq)で滴下処理し、次いで、室温まで冷却させた。固体沈殿物を回収し、ジオキサンで洗浄し、乾燥させ、4-アミノ-1-(4-ヒドロキシブチル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン塩酸塩を89%の収率で得た。1H NMR (CDCl3-CD3OD, 400 MHz) δ 8.13 (d, IH), 7.97 (d, 1H), 7.65 (t, 1H),7.55 (t, 1H), 4.89 (bs, 2H), 4.68 (m, 2H), 3.75 (m, 2H), 3.68 (dd, 2H), 2.10 (m, 2H), 1.80 (m, 2H), 1.29 (t, 3H)。13C NMR (CDCl3-CD3OD, 100 MHz) δ 151.9, 148.1, 135.8, 133.7, 130.2, 128.7, 125.8, 125.4, 122.5, 121.2, 118.8, 112.1, 66.8, 64.0, 60.8, 46.8, 28.6, 26.6, 14.5。[M+H]+のHRMS計算値 315.1821、実測値 315.1839。
【実施例3】
【0027】
(L1)
4-アミノ-1-[2-(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ)エチル]-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン(化合物(I)、R1=H、Y=W=X=O、n=2、m=1、R2=R3=n-C15H31CO)の調製
【化7】
【0028】
上記実施例1に記載した一般的手順に従い、化合物L1を80%の収率で調製した。1H NMR (CDCl3-CD3OD, 400 MHz): δ 8.22 (s, 1H), 8.16 (d, 1H), 7.41 (t, 1H); 7.21 (t, 1H), 6.92 (d, 1H), 5.26 (m, 1H), 4.82 (bs, 2H), 4.67(bs, 2H), 4.42 (dd, 1H), 4.20 (dd, 1H), 4.05 (t, 2H), 3.14 (q, 1H), 2.31 (m, 4H), 1.59 (m, 4H), 1.25 (m, 48H), 0.88(m, 6H);13C NMR (CDCl3-CD3OD, 100 MHz): δ 173.6, 173.2, 148.1, 145.8, 134.5, 133.9, 129.3, 125.5, 124.5, 118.4, 112.3, 100.3, 77.2, 70.1, 70.0, 63.5, 62.3, 45.9, 34.1, 33.9, 31.7, 29.5, 29.5, 29.3, 29.2, 29.1, 29.1, 28.9, 28.9, 24.7, 24.7, 22.5, 13.9, 8.3。[M+H]+のHRMS計算値 859.5714、実測値 859.5688。
【実施例4】
【0029】
(L2)
4-アミノ-1-[2-(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ)エチル]-2-ブチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン(化合物(I)、R1=n-C4H9、Y=W=X=O、n=2、m=1、R2=R3=n-C15H31CO)の調製
【化8】
【0030】
上記実施例1に記載した一般的手順に従い、化合物L2を78%の収率で調製した。1H NMR (CDCl3-CD3OD, 400 MHz): δ 8.23 (bs, 1H), 7.39 (t, 1H), 7.22 (bs, 1H), 6.93 (bs, 1H), 5.25 (m, 1H), 4.7 (bs, 2H), 4.6 (bs, 2H), 4.42 (dd, 1H), 4.19 (dd, 1H), 4.04 (t, 2H), 3.06 (bs, 2H) 2.32 (m, 4H), 1.96 (p, 2H) 1.59 (m, 6H) 1.26 (m, 48H), 1.07 (t, 3H), 0.88 (m, 6H);13C NMR (CDCl3-CD3OD, 100 MHz): δ 173.6, 173.2, 157.2, 147.4, 135.2, 133.6, 128.8, 124.2, 123.6, 120.9, 118.2, 112.2, 77.2, 70.0, 69.9, 63.2, 62.2, 46.3, 33.9, 33.7, 31.6, 29.3, 29.3, 29.3, 29.1, 29.0, 28.95, 28.9, 28.8, 28.7, 28.6, 27.0, 24.5, 24.5, 22.3, 22.1, 13.6, 13.4。[M+H]+のHRMS計算値 915.6340、実測値 915.6309。
【実施例5】
【0031】
(L3)
4-アミノ-1-[2-(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ)エチル]-2-エトキシメチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン(化合物(I)、R1=CH2OCH2CH3、Y=W=X=O、n=2、m=l、R2=R3=n-C15H31CO)の調製
【化9】
【0032】
上記実施例1に記載した一般的手順に従い、化合物L3を86%の収率で調製した。1H NMR (CDCl3-CD3OD, 400 MHz) δ 8.05 (bs, 1H), 7.29 (t, 1H), 7.09 (bs, 1H), 6.78 (bs, 1H), 5.11 (m, 1H), 4.80 (bs, 4H), 4.60 (bs, 2H), 4.28 (dd, 1H), 4.07 (dd, 1H), 3.90 (t, 2H), 3.54 (q, 2H), 2.18 (m, 4H), 1.59 (m, 4H), 1.16 (m, 51H), 0.76(m, 6H);13C NMR (CDCl3-CD3OD, 100 MHz): δ 173.4, 173.0, 153.3, 148.2, 135.7, 134.7, 129.1, 124.4, 124.2, 121.1, 119.1, 112.8, 77.2, 70.2, 70.2, 66.6, 65.4, 64.2, 63.5, 62.5, 57.7, 47.1, 45.7, 34.3, 34.1, 31.9, 29.7, 29.7, 29.6, 29.5, 29.3, 29.3, 29.1, 29.1, 24.9, 22.7, 15.0, 14.1, 8.6。[M+H]+のHRMS計算値 917.6132、実測値 917.6162。
【実施例6】
【0033】
(L4)
4-アミノ-1-[2-(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ)ブチル]-2-エトキシメチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン(化合物(I)、R1=H、Y=W=X=O、n=4、m=l、R2=R3=n-C15H31CO)の調製
【化10】
【0034】
上記実施例1に記載した一般的手順に従い、化合物L4を26%の収率で調製した。1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 11.2 (bs, 1H), 7.78 (d, 1H), 7.30 (t, 1H), 7.20 (d, 1H), 6.78 (t, 1H), 6.39 (bs, 1H), 5.28 (m, 1H), 4.79 (s, 2H), 4.43-4.50 (m, 3H), 4.11-4.27 (m, 5H), 3.67 (dd, 2H), 2.41 (bs, 2H), 2.30 (dd, 4H), 1.96 (bs, 1H), 1.60 (m, 4H), 1.25 (m, 54H), 0.88 (1, 6H);13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 173.4, 173.0, 150.9, 148.9, 134.7, 134.2, 128.0, 124.3 (2), 120.5, 118.4, 111.8, 70.3, 70.2, 66.8, 64.7, 64.4, 64.3, 63.4 (2), 62.4, 46.6, 34.2, 34.1, 31.9, 29.6 (3), 29.4, 29.3 (2), 29.2, 29.1, 28.2, 27.4, 24.8 (2), 22.6, 15.1, 14.1。[M+H]−のHRMS計算値 943.6289、実測値 943.6251。
【実施例7】
【0035】
4-アミノ-1-[2-(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ジホスホ)アルキル]-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン(化合物(I)、Y=W=X=O、m=2)を調製する一般的手順
【化11】
【0036】
以下のように、当技術分野で公知の方法(Biochim. Biophys. Acta 1980, 619, 604, J. Biol. Chem., 1990, 265(11), (6112-6117) J. Org. Chem. 1997, 62, 2144-2147) に従い、イミダゾキノリンIIIから粗製形態で調製したイミダゾキノリンモノホスホモルホリデート(monophosphomorpholidate)VIを1,2-ジアシル-sn-グリセロール-3-ホスフェートナトリウム塩VIIとカップリングさせることによりイミダゾキノリンジホスフェートジグリセリドVIIIを調製した:POCl3(2.0 eq)およびイミダゾキノリンIII(1.0 eq)を0℃でトリメチルホスフェート(0.38M)に加えた。0℃で15時間撹拌した後、反応混合物をH2OとEt2Oの間に分配し、それらの層を分離した。有機層をH2Oで3回抽出し、合わせた水層のpHをaq NH4OHでpH 9に調節した。水溶液を濃縮し、高真空下で乾燥させ、CHCl3-MeOH-H2O-Et3Nを用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより得られた残渣を精製した(勾配溶離、90:10:0.5:0.5→60:40:5:1)。得られた生成物を50℃でジオキサン(0.12M)中に溶解させ、4N HCl(1.5 eq)で処理した。沈殿したHCl塩を回収し、ジオキサンですすぎ、高真空下で乾燥させた。この塩を含む1:1のt-BuOH-H2O (0.5M)の懸濁液にモルホリン(5.0 eq)を加え、反応混合物を90℃に加熱し、1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、5.0 eq)を含むt-BuOH (0.33M)の溶液で処理した。90℃で1時間後、冷却した反応混合物をH2OとEt2Oの間に分配し、これらの層を分離した。有機層をH2Oで2回抽出し、合わせた水層を濃縮し、高真空下で乾燥させた。得られた粗製ホスホモルホリデートVI(1.5 eq)およびVII(1.0 eq)を少量のピリジンに溶解した懸濁液を真空下で濃縮し、その後、トルエンで2回同時蒸発させ、高真空下で乾燥させた。この手順を2回以上繰り返した。次いで、この乾燥固体を含むピリジン(0.10M)の懸濁液に4,5-ジシアノイミダゾール(DCI、3.0 eq)を加え、反応混合物を室温で10日間撹拌した。生じた混合物を濃縮し、得られた残渣をH2O-CH2Cl2の間に分配し、これらの層を分離した。水層をCH2Cl2で2回抽出し、合わせた有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。CHCl3-MeOH-H2O(勾配溶離、90:10:0.5→70:30:2)を使用するシリカゲルクロマトグラフィーにより無色固体として化合物VIIIを得た。
【実施例8】
【0037】
(L5)
4-アミノ-1-[2-(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ジホスホ)エチル]-2-エトキシメチル-lH-イミダゾ[4,5-c]キノリン(化合物(I)、R1=CH2OCH2CH3、Y=W=X=O、n=2、m=2、R2=R3=n-C15H31CO)の調製
【化12】
【0038】
上記実施例6に記載した一般的手順に従い、化合物L5を22%の収率で調製した。1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 8.17 (bs, 1H), 7.10-7.40 (2-3 m, 2-3H), 5.25 (bs, 1H), 4.60-5.00 (bm, 3H), 4.38 (m, 1H), 4.05-4.22 (m, 3H), 3.60-3.82 (m, 4H), 3.41 (bs, 1H), 3.10 (dd, 2H of Et3N), 2.28 (m, 4H), 1.84 (dd, 1H), 1.56 (m, 5H), 1.25 (m, 54H), 0.88 (t, 7H);13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 173.5, 173.1, 152.4, 147.7, 135.8, 134.2, 128.8, 124.5, 123.6, 122.0, 118.8, 112.2, 77.2, 70.0, 68.1, 66.5, 63.8, 62.4, 54.6, 46.5, 45.5, 38.5, 33.9, 33.0, 29.5, 29.4, 29.1, 28.9, 28.7, 25.0, 24.6, 23.5, 22.7, 22.5, 14.6, 13.8, 13.7, 13.2, 10.7, 8.1。[M+H]+のHRMS計算値997.5796、実測値997.5776。
【実施例9】
【0039】
脂質付加したTLR7/8のin vivo試験
TLR7/8リガンドは、マウスでの様々な面における免疫応答を(注目に値するものとしてはCD8応答を)促進し得る。TLR7/8リガンド(「コア(core)」化合物)と対応するその脂質付加した誘導体との間の応答における差は、下記のような技術を用いて調査する。
【0040】
比較試験用の化合物製剤は、本試験での対応群の対照比較を勘案すると、異なる分子量のコア分子と脂質付加した分子を検討する必要がある(例えば、45および4.5μgの脂質付加した化合物L3は、ほぼ15および1.5μgの対応するコア化合物「L3コア」に対応する)。また、高用量のL3(200μg)およびL3コア(150μg)も試験する。こうした試験の1つにおいて、以下に要約し記載した製剤(表1)を使用し、6〜8週齢のC57BL/6(H2Kb)メスマウス(10匹/群)にワクチン接種する。これらのマウスには、14日間あけて2回接種し、1週、3週および4週に採血する(正確な採血日数は図1を参照)。マウスの筋肉内にワクチン接種する。SIV-p27タンパク質をコードする組換えアデノウイルスおよびアジュバントp27を使用する異種プライム・ブースト法を対照群として使用し、アデノウイルスを5×108 VPの用量で接種する。この試験方法を図1に示す。
【表2】
【0041】
この試験方法において、QS21およびMPL免疫賦活剤を含有する、リポソームベースまたは水中油型ベースのいずれかのアジュバント組成物中で分子を製剤化する。TLR7/8Lの付加値を評価するには、TLR7/8L、QS21およびMPLを含有する製剤により誘導される自然免疫応答および獲得免疫応答を、対応するQS21およびMPL含有製剤により誘導されたものと比較する。
【0042】
抗原特異的CD8およびCD4応答の誘導は、第2回接種の7日後、細胞内サイトカインを測定することにより評価する。末梢血リンパ球(PBLs)は、全p27抗原を網羅するペプチドプールの存在下で刺激される(15mersペプチド、11ずつオーバーラップ)。サイトカインの分泌はブレフェルジンAにより遮断され、3種のサイトカイン(IFNγ、TNFαおよびIL2)の存在は、適切な抗体で細胞内染色した後、流動細胞計測法により評価する。
【0043】
上記で述べたものと類似する試験を、CRX-642およびその脂質付加した対応物L3を使用して実施した。図2および図3は、第2回免疫処置の7日後に認められたp27特異的T細胞頻度を示す。用量応答方法において、L3含有リポソームをMPLおよびQS-21製剤と同時投与した場合、TLR7/8L非含有の対照製剤と比較すると、p27特異的CD8頻度が明らかに上昇した(図2)。注目すべきは、リポソームベース製剤および水中油滴型ベース製剤のいずれもが、TLR7/8L非含有の対応の対照製剤と比較して、脂質付加したTLR7/8Lの存在下でCD8応答に上昇が認められたことである。さらに、サイトカイン産生CD8 T細胞を生成する能力は、TLR7/8リガンドの脂質付加特性に依存的であったが、コア分子L3コアではL3と対照的に応答の増加はなかった。
【0044】
誘導されたCD 8応答の評価を補足する場合、抗原特異的細胞毒性活性をin vivoで評価することができる。簡潔に説明すると、全タンパク質を網羅するp27ペプチド群でパルスした標的と、対照の未パルス標的とを免疫化マウスに注射し、注射した24時間後に、p27特異的細胞毒性をパルスした標的の消失により評価する。
【0045】
補足的な細胞毒性活性試験は、上記で説明したL3コアおよびL3の誘導CD8応答を評価することにより実施した。脂質付加したTLR7/8リガンドがベースの製剤で免疫したマウスでは、コアTLR7/8リガンドがベースの製剤を接種したマウスと比べて、より高い細胞毒性活性が検出された(図3)。この活性は、特に脂質付加したTLR7/8Lが高用量で使用された場合に、QS21およびMPLのみをベースとした対照製剤により誘導されたものよりも高かった。
【0046】
CD8応答について示したように、L3含有リポソームがリポソームベースのMPLおよびQS-21含有製剤と同時投与された場合、対照製剤と比較すると、p27特異的CD4頻度は増加し、その応答は注射されたTLR7/8L用量に依存していた(図4)。CD8応答の場合のように、コア分子L3コアは、対照製剤により誘導されるものを上回るCD4応答を誘導することはできなかった。
【0047】
また、脂質付加したTLR7/8Lは、エマルションベースの製剤で投与した場合、対照製剤により達成されたレベル以上にCD4 T細胞応答を増加させることもできた。
【0048】
脂質付加した場合、種々の製剤中のTLR7/8リガンドの付加値は、サイトカイン産生T細胞頻度において(CD8およびCD4の両T細胞)5倍まで増加することが示されている。興味深いことに、T細胞応答のサイトカインプロファイルは、高頻度のダブルポジティブT細胞を特徴としていた(IFNγ+ TNFα+)。
【0049】
さらなる研究からは、脂質付加したTLR7/8化合物に自然ケモカインおよび炎症誘発性サイトカインを誘導する能力が示唆されており、これらのうち、I型IFNがナイーブCD8 T細胞のプログラミング(生存、分化、メモリー進化)に欠かせないことがわかっている。これらのサイトカインは、第1回注射の3時間後および24時間後に、マウスの血清で測定する(図5および図6)。
【0050】
L3コアおよびL3に関するサイトカインプロファイルの結果からは、同様のサイトカインプロファイルがリポソームベースの製剤およびエマルションベースの製剤の間で認められることが明らかである。TLR7/8リガンドは、それらの形質細胞性樹状細胞を刺激する能力によってIFNαを誘導することが知られており、実際、L3で免疫したマウスの血清中に、IFNαが用量依存的に、またそのコア相当物のL3コアに関するレベルよりも高いレベルで検出された。バックグラウンドレベルに近い、低IL-12p70産生も検出された。INFγレベルは低用量のL3で増加したが、他の炎症性サイトカイン(例えば、TNFαまたはIL-6)は、L3コアおよびL3の両方がQS21およびMPLに加えられた場合に増強された。ケモカインMCP-1およびMIGは、両方とも、両化合物で10倍まで増加した。概して、これらのデータからは、試験した脂質付加分子が、in vivoにおいてサイトカイン産生を誘導するのに、対応のコア分子よりも強力でないとしても、同程度の有効性をもつことが示唆される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規アジュバント化合物、それらの調製方法、それらを含有する組成物、およびワクチンアジュバントとしてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物ワクチンの精製および単純化を行い、また合成および組換えサブユニット抗原を使用してワクチンの製造可能性と安全性を改良してきたが、それはワクチン有効性の低下を招いた。これがきっかけとなり、ワクチン活性を強化する抗原とアジュバントの同時投与と、合成および組換えエピトープの弱免疫原性に関しての研究が行われた。アジュバントは、ワクチン抗原に対する体液性免疫応答および/または細胞介在性免疫応答を増強させる添加剤である。しかし、歴史的にみて、ワクチンアジュバントのデザインは、免疫系機能に関与する分子機序の性質が複雑であることから困難であった。微生物成分を添加した場合に獲得免疫応答が増強されることは長く知られてきたが、ごく最近になって、免疫学的監視に関与する細胞(例えば、上皮細胞および樹状細胞)上のtoll様受容体(TLRs)が、いわゆる「病原体関連分子パターン(pathogen-associated patterns)」またはPAMPsを介してこれらの微生物産物の多くに関係することが明らかになった。大部分のワクチンアジュバントおよびスタンドアロン型免疫調節剤がTLRファミリーメンバーと相互作用するようである。
【0003】
ヒトで同定された10種類の公知のTLRsのうち、5種類は微生物成分の認識に関係しており(TLRs 1、2、4、5、6)、他の4種類(TLRs 3、7、8、9)は細胞質画分に限定されているようであって、ウィルスRNA(TLRs 3、7、8)および非メチル化DNA(TLR 9)の検出に関与している(Iwasaki, A., Nat Immunol 2004, 5, 987)。また、TLRsの活性化によって細胞内シグナル伝達経路が制御され、細胞内アダプター分子(例えば、MyD88、TRIF、TIRAPおよびTRAM)との相互作用を介して遺伝子が発現される(Akira, S. Nat Rev Immunol 2004, 4, 499; Takeda, K. Semin Immunol 2004, 16, 3)。これらのアダプター分子は、炎症性サイトカイン/ケモカインおよびI型インターフェロン(IFNa/b)の発現を特異的に制御することが可能で、それにより抗原特異的な体液性免疫応答および細胞介在性免疫応答が優先的に増強される(Zughaier, S. Infect Immun 2005, 73, 2940)。体液性免疫は病原菌に対する主たる防衛線であるが、細胞傷害性Tリンパ球(CTLs)の誘導は、ウイルス性疾患および癌の症例の防御免疫において重要であると考えられる。
【0004】
現在、ミョウバンとして公知のアルミニウム塩の一群は、ヒトワクチン剤で用いられる主要アジュバントである。しかし、ミョウバンは、典型的には体液性(Th2)免疫を増強するだけであり、他の経路では局所毒性があるため一般には筋肉内投与で用いられる(例えば、皮下接種または皮内接種は肉芽腫の原因となる)(Aguilar, J. Vaccine 2007, 25, 3752)。ミョウバンに関する他の可能性のある副作用としては、IgE産生の上昇、アレルゲン性および神経毒性が挙げられる。このため、抗体とTh1型免疫応答の両方を刺激することができ、かつ、異なる投与経路および抗原製剤に適合可能である、安全で有効な新規ワクチンアジュバントが必要とされている。
【0005】
TLR7およびTLR8活性化の場合、天然の(Uおよび/またはGに富んだ)ウイルスssRNAリガンドの小分子擬似体の異なるいくつかの分類が同定されている。これらには、主としてTLR7と相互作用する(Heil, F. Eur J Immunol 2003, 33, 2987; Hemmi, 2002)、酸化型グアノシン代謝物質(オキソグアノシン(oxoguanosines))と関連する特定の抗ウイルス性化合物、ならびにTLR7および/またはTLR8に関係するアデニン誘導体が含まれる。これらの化合物の免疫刺激能力は、TLR/MyD88依存性シグナル経路およびサイトカイン(例えば、IL-6ならびにI型(特にインターフェロン-a)およびII型インターフェロン)の産生に起因していた。TLR7またはTLR8活性化は、樹状細胞(DC)上の共刺激分子(例えば、CD-40、CD-80、CD-86)ならびにMHCクラスIおよびII分子のアップレギュレーションを誘発する。DCは、Tリンパ球への抗原の取り込みおよび提示に関与する免疫系の主細胞である。TLR7を優先的に発現する形質細胞様樹状細胞(pDCs)は専門的インターフェロン-a産生細胞であるのに対し、mDCsはTLR8のみを発現する。mDCsにおけるTLR8活性化は、炎症性サイトカイン、例えば、IL-12、TNF-aおよびIFN-gならびに細胞媒介性免疫(CMI)などを優先的に産生させる。
【0006】
かなり注目を集めたアデニン誘導体のクラスの1つは、1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン(IQs)である。このクラスのイミキモド(R847、S-26398)の典型的メンバーは、クリーム剤形で局所的に塗布した場合、生殖器パピローマウイルス感染症、紫外線角化症および基底細胞癌に対して有効であることが分かった。しかし、イミキモドはインターフェロン誘導活性が比較的低く、また、経口および局所用剤に副作用がないわけではない。実際、イミキモドを使用したHCV臨床試験において、重篤な副作用が報告されている。一般に、TLR7アゴニストに関する多数の免疫学的「フットプリント」からは毒性に対する懸念が持たれている。別のTLR7アゴニストANA-975(オキソグアノシン誘導体)を使用した臨床試験は、最近、毒性問題が原因で中止となっている。
【0007】
IQクラスのTLR7/8リガンドの別のメンバーで、イミキモド代謝物質の誘導体は、レシキモドである。また、レシキモド(R-848、S-28609)はアクセサリー分子を介して直接的または間接的にマクロファージおよびDC中のTLR7をMyD88依存的に活性化し、DC中の共刺激分子およびMHCI/IIをアップレギュレートする。しかし、イミキモドとは対照的に、より有効で有毒性のレシキモドは、TLR8シグナル伝達用のリガンドでもあり、CD4+調節(Treg)細胞機能の転換をもたらす。最近、トランスフェクトしたHEK293細胞を使用した場合、TLR7アゴニストは、IFN-aおよびIFN-制御サイトカインの生成においてより有効性が高く、一方、TLR8アゴニストは炎症性サイトカイン(例えば、TNF-aおよびIL-12)の誘導においてより有効性が高いことが明らかになった。これは、TLR7活性化が抗体応答(Th2型応答)にとってより重要であり、TLR8活性化がCMIまたはTh1型免疫応答を作動しているに違いないことを示唆している。しかし、上述のように、多くのTLR7/8アゴニストは毒性を示すことが多く、不安定であり、かつ/または免疫刺激的効果が微弱である。このため、TLR7および/またはTLR8を活性化する、有効かつ安全なアジュバントを発見し開発することは、抗原に対する免疫応答の程度、方向および持続時間のコントロールを補助することにより既存および新規ワクチンの有効性および安全性を改良するのに不可欠である。。
【0008】
TLR7/8 PAMPsは、細胞表面上のPAMPsを認識するTLR2およびTLR4と異なり、エンドソーム/リソソーム区画で感知され、エンドソーム成熟が必要である。天然リガンドおよびゼノビオティック(zenobiotic)TLR7/8リガンド(例えば、イミキモドおよびレシキモド)の場合、細胞内取り込みは細胞活性化に必須である。したがって、DCsおよび他の免疫細胞へのTLR7/8リガンドの浸透を高める方法は、TLR活性化およびワクチン効果を増強し、さらに毒性作用を改善することができる。
【0009】
ヌクレオシド剤の脂質複合体が、一般に経口バイオアベイラビリティーを増強すること、また得られた「ヌクレオ脂質(nucleolipid)」のリポソーム脂質膜への取り込みを可能にすることは、当技術分野で公知である。リポソーム中に不安定かつ/または有毒性の薬剤を取り込まれると徐放性担体系または分子デポ(molecular depot)が構築され、薬剤が分解されるのを防止し、有毒副作用を低減する。こうした「脂質プロドラッグ」の有効性が非誘導体化薬剤の有効性に相当することが報告されている(米国特許第5,827,831号-NeXstar)。イミダゾキノリンおよび脂肪アシル化IQsのデポー剤は、局所組織領域内で長期間IQを維持して代謝および毒性を減少させることについて当技術分野で報告されている(WO 2005/001022−3M)。しかし、特定の方法でイミダゾキノリンをリン脂質またはホスホノ脂質へ結合させ、単独で、または抗原とのデポー剤で投与された場合に、免疫細胞への取り込みを促進させ、またエンドソームTLR7/8活性化および抗原提示を増強させることについては、当技術分野では公知ではない。当該発明の化合物による免疫応答の増強は、(I)で表される化合物とエンドソームTLR7および/またはTLR8との直接相互作用、ならびに/あるいは酵素作用後の活性代謝物の相互作用に基づくものと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の簡単な説明
本発明の化合物は、インターフェロン-a、IL-12および他の免疫刺激サイトカインの誘導剤であり、感染症および癌の治療または予防療法においてワクチン抗原用のアジュバントとして用いる場合、公知のサイトカイン誘導剤に比べて改善された活性・毒性プロファイルを有し得ることが明らかとなった。また、これらの化合物それ自体も新規である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】試験方法の概略を示す図である。
【図2】p27特異的CD8応答を示す図である。
【図3】in vivoにおいて検出されたp27特異的細胞毒性活性を示す図である。
【図4】抗原特異的CD4 T細胞応答を説明する図である。
【図5A】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するリポソームベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図5B】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するリポソームベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図5C】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するリポソームベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図5D】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するリポソームベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図5E】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するリポソームベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図5F】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するリポソームベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図5G】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するリポソームベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図6A】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するエマルションベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図6B】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するエマルションベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図6C】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するエマルションベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図6D】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するエマルションベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図6E】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するエマルションベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図6F】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するエマルションベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【図6G】QS21およびMPLと一緒に各種量のTLR7/8リガンドを含有または非含有(-)するエマルションベースの製剤で免疫した群における血清サイトカイン応答を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の要約
当該発明の化合物は、リン脂質またはホスホノ脂質基に共有結合され得るイミダゾキノリン分子を含むアジュバント分子である。当該発明は、広義には、式I:
【化1】
【0013】
(式中、
R1は、H、C1-6アルキル、C1-6アルキルアミノ、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルキルC1-6アルキル、C3-6シクロアルキルC1-6アルキルアミノ、C3-6シクロアルキルC1-6アルコキシ、C1-6アルコキシC1-6アルキル、C1-6アルコキシC1-6アルキルアミノ、C1-6アルコキシC1-6アルコキシであって;分岐鎖または非分岐鎖であり、場合により、ヒドロキシル、アミノ、チオ、ヒドラジノ、ヒドラジド、アジド、アセチレニル、カルボキシルまたはマレイミド基で末端が置換されていてもよく、
Zは、C2-C6アルキルまたはアルケニルであって、非置換であるか、または-(O-C2-C6アルキル)1-6-で末端が置換されており、
Yは、O、NHであり、
Xは、O、CH2、CF2であり、
Wは、OまたはSであり、
mは、1〜2であり、
Aは、
【化2】
【0014】
または
【化3】
【0015】
(式中、
R2は、H、または直鎖/分岐鎖/不飽和のC4-C24アルキルまたはアシルであり、
R3は、直鎖/分岐鎖/不飽和のC4-C24アルキルまたはアシルである)
であり、
R4、R5は、独立して、H、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、ハロゲン、またはトリフルオロメチルであるか;あるいは一緒になって6員アリール、1個の窒素原子を含有するヘテロアリール、シクロアルキル、または1個の窒素原子を含有するヘテロシクロアルキル環を形成し;非置換であるか、または1個または複数のC1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルで置換されている)
で表される化合物、あるいはその製薬上許容可能な塩である。
【0016】
一実施形態においては、当該発明の化合物は、より詳しくは、式II:
【化4】
【0017】
(式中、
R1は、H、C1-6アルキル、C1-6アルキルアミノ、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルキルC1-6アルキル、C3-6シクロアルキルC1-6アルキルアミノ、C3-6シクロアルキルC1-6アルコキシ、C1-6アルコキシC1-6アルキル、C1-6アルコキシC1-6アルキルアミノ、C1-6アルコキシC1-6アルコキシであって;分岐鎖または非分岐鎖であり、場合により、ヒドロキシル、アミノ、チオ、ヒドラジノ、ヒドラジド、アジド、アセチレニル、カルボキシルまたはマレイミド基で末端が置換されていてもよく、
nは、1〜6であり、
Yは、O、NHであり、
Xは、O、CH2、CF2であり、
Wは、OまたはSであり、
mは、1〜2であり、
R2は、H、または直鎖/分岐鎖/不飽和のC4-C24アルキルまたはアシルであり、
R3は、直鎖/分岐鎖/不飽和のC4-C24アルキルまたはアシルである(例えば、W=O、X=O、m=lの場合、ホスファチジル、リソホスファチジルエーテルまたはエステルである))
により表される。
【表1】
【0018】
(実施例)
【実施例1】
【0019】
4-アミノ-1-[2-(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ)アルキル]-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン(化合物(I)、Y=W=X=O、m=1)を調製するための一般的手順
【化5】
【0020】
以下のように、当技術分野で公知の方法(Crossmanら, J Chem Soc, Perkin Trans 1, 1997, 2769; Westerduinら, Tet Lett, 1986, 15, 6271; Nikolaevら, Carbohydr Res, 1990, 204, 65) に従い、4-アミノ-1-ヒドロキシアルキル-イミダゾキノリンIII(Gersterら, J Med Chem 2005, 48, 3481; Izumiら, Bioorg Med Chem 2003, 11, 2541)を1-H ホスホネートIVとカップリングさせることによりイミダゾキノリンモノホスフェートジグリセリドVを調製した:イミダゾキノリンIII(1 eq)およびH-ホスホネートIV(2 eq)をn-ヘプタン中に懸濁させ、溶媒を蒸発させた後、高真空下で一晩乾燥させた。得られた残渣をピリジン中に溶解させ(0.01M 化合物III)、ピバロイルクロリド(12.4 eq)で処理し、次いで、室温で6時間撹拌した。ヨウ素(4 eq)を含む19:1のピリジン・水(0.04M)の溶液を加え、得られた混合物を室温で1時間撹拌し、次いで、CHCl3および1M Na2S2O5水溶液の間に分配した。これらの層を分離し、水層をCHCl3で2回抽出した。合わせた有機抽出物を1Mのトリエチルアンモニウムボレートバッファー(pH 8)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製し(勾配溶離、0→25% MeOH-CHCl3)、次いで逆相クロマトグラフィーにより精製し(1%TEA含有CH3CN中のBakerbond C8、0→60%の1% Et3N含有MeOH-CH3CNで溶離)、無色固体として化合物Vを得た。
【実施例2】
【0021】
4-アミノ-1-(4-ヒドロキシブチル)-2-エトキシメチル-(1H-イミダゾ[4,5-c]キノリンハイドロクロリド(化合物(III)、R1=CH2OCH2CH3、n=4)の調製
【化6】
【0022】
(1) 4-ヒドロキシ-3-ニトロキノリン(Gersterら, J Med Chem 2005, 48, 3481)を含むDMF(0.7M)の懸濁液をPOCl3(1.2 eq)で滴下処理し、50℃で30分間撹拌した。反応混合物を氷水中へ注ぎ入れ、CH2Cl2で2回抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。得られた粗生成物を4-アミノ-ブタノール(1.3 eq)およびトリエチルアミン(1.9 eq)を含むEtOHの溶液に加え、15分間加熱還流した。濃縮後、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離、2→4% MeOH-CHCl3)により黄色固体として4-(4-ヒドロキシブチル)アミノ-3-ニトロキノリンを97%の収率で得た。
【0023】
(2) 上記(1)で調製した化合物を含むEtOAc(0.1M)の溶液を、5% Pt/C(5% w/w)およびMgSO4(1.5 eq)の存在下、50 psigで6時間水素化した。反応混合物をセライトにより濾過し、濃縮した。得られたオレンジ色の油をエトキシ酢酸(11 eq)で150℃にて1時間加熱した。反応混合物を0℃に冷却し、濃NH4OHでpH 10まで塩基性化し、CH2Cl2で2回抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(1:60 MeOH-CHCl2)によりエトキシアセテート誘導体が得られ、2.6M NaOH(5.0 eq)を含むEtOH(0.20M)で室温にて1時間処理した。エタノールを減圧下で除去し、水層をAcOEtおよびCH2Cl2で数回抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離、1:50→1:15 MeOH-CHCl3)により固体として1-(4-ヒドロキシブチル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリンを収率74%で得た。1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 9.29 (s, IH), 8.25 (dd, 2H), 7.67 (m, 2 H), 4.89 (s, 2H), 4.71 (t, 2H), 3.79 (m, 2H), 3.62 (dd, 2H), 2.12 (m, 2H), 1.82 (m, 2H), 1.25 (t, 3H)。
【0024】
(3) 上記(2)で調製した化合物および過酢酸(1.2 eq)を含むエタノール(0.4M)の溶液を60℃で2.5時間加熱した。濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し(勾配溶離、1:30→1:6 MeOH-CHCl3)、黄色固体として1-(4-ヒドロキシブチル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン5-N-オキシドを94%の収率で得た。
【0025】
(4) 上記(3)で調製した化合物を含むCH2Cl2(0.43M)の懸濁液をNH4OH(30% 水溶液、2.7mL)で処理し、続いてp-トルエンスルホニルクロリド(1.0 eq)で滴下処理した。得られた混合物を室温で1.5時間撹拌し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離、1:30→1:9 MeOH-CHCl3)によりオレンジ色固体として4-アミノ-1-(4-ヒドロキシブチル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリンが定量的収率で得られた。
【0026】
(5) 50℃の上記(4)で調製した化合物を含むジオキサン(0.12M)の溶液を、4N HClを含むジオキサン(1.5 eq)で滴下処理し、次いで、室温まで冷却させた。固体沈殿物を回収し、ジオキサンで洗浄し、乾燥させ、4-アミノ-1-(4-ヒドロキシブチル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン塩酸塩を89%の収率で得た。1H NMR (CDCl3-CD3OD, 400 MHz) δ 8.13 (d, IH), 7.97 (d, 1H), 7.65 (t, 1H),7.55 (t, 1H), 4.89 (bs, 2H), 4.68 (m, 2H), 3.75 (m, 2H), 3.68 (dd, 2H), 2.10 (m, 2H), 1.80 (m, 2H), 1.29 (t, 3H)。13C NMR (CDCl3-CD3OD, 100 MHz) δ 151.9, 148.1, 135.8, 133.7, 130.2, 128.7, 125.8, 125.4, 122.5, 121.2, 118.8, 112.1, 66.8, 64.0, 60.8, 46.8, 28.6, 26.6, 14.5。[M+H]+のHRMS計算値 315.1821、実測値 315.1839。
【実施例3】
【0027】
(L1)
4-アミノ-1-[2-(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ)エチル]-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン(化合物(I)、R1=H、Y=W=X=O、n=2、m=1、R2=R3=n-C15H31CO)の調製
【化7】
【0028】
上記実施例1に記載した一般的手順に従い、化合物L1を80%の収率で調製した。1H NMR (CDCl3-CD3OD, 400 MHz): δ 8.22 (s, 1H), 8.16 (d, 1H), 7.41 (t, 1H); 7.21 (t, 1H), 6.92 (d, 1H), 5.26 (m, 1H), 4.82 (bs, 2H), 4.67(bs, 2H), 4.42 (dd, 1H), 4.20 (dd, 1H), 4.05 (t, 2H), 3.14 (q, 1H), 2.31 (m, 4H), 1.59 (m, 4H), 1.25 (m, 48H), 0.88(m, 6H);13C NMR (CDCl3-CD3OD, 100 MHz): δ 173.6, 173.2, 148.1, 145.8, 134.5, 133.9, 129.3, 125.5, 124.5, 118.4, 112.3, 100.3, 77.2, 70.1, 70.0, 63.5, 62.3, 45.9, 34.1, 33.9, 31.7, 29.5, 29.5, 29.3, 29.2, 29.1, 29.1, 28.9, 28.9, 24.7, 24.7, 22.5, 13.9, 8.3。[M+H]+のHRMS計算値 859.5714、実測値 859.5688。
【実施例4】
【0029】
(L2)
4-アミノ-1-[2-(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ)エチル]-2-ブチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン(化合物(I)、R1=n-C4H9、Y=W=X=O、n=2、m=1、R2=R3=n-C15H31CO)の調製
【化8】
【0030】
上記実施例1に記載した一般的手順に従い、化合物L2を78%の収率で調製した。1H NMR (CDCl3-CD3OD, 400 MHz): δ 8.23 (bs, 1H), 7.39 (t, 1H), 7.22 (bs, 1H), 6.93 (bs, 1H), 5.25 (m, 1H), 4.7 (bs, 2H), 4.6 (bs, 2H), 4.42 (dd, 1H), 4.19 (dd, 1H), 4.04 (t, 2H), 3.06 (bs, 2H) 2.32 (m, 4H), 1.96 (p, 2H) 1.59 (m, 6H) 1.26 (m, 48H), 1.07 (t, 3H), 0.88 (m, 6H);13C NMR (CDCl3-CD3OD, 100 MHz): δ 173.6, 173.2, 157.2, 147.4, 135.2, 133.6, 128.8, 124.2, 123.6, 120.9, 118.2, 112.2, 77.2, 70.0, 69.9, 63.2, 62.2, 46.3, 33.9, 33.7, 31.6, 29.3, 29.3, 29.3, 29.1, 29.0, 28.95, 28.9, 28.8, 28.7, 28.6, 27.0, 24.5, 24.5, 22.3, 22.1, 13.6, 13.4。[M+H]+のHRMS計算値 915.6340、実測値 915.6309。
【実施例5】
【0031】
(L3)
4-アミノ-1-[2-(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ)エチル]-2-エトキシメチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン(化合物(I)、R1=CH2OCH2CH3、Y=W=X=O、n=2、m=l、R2=R3=n-C15H31CO)の調製
【化9】
【0032】
上記実施例1に記載した一般的手順に従い、化合物L3を86%の収率で調製した。1H NMR (CDCl3-CD3OD, 400 MHz) δ 8.05 (bs, 1H), 7.29 (t, 1H), 7.09 (bs, 1H), 6.78 (bs, 1H), 5.11 (m, 1H), 4.80 (bs, 4H), 4.60 (bs, 2H), 4.28 (dd, 1H), 4.07 (dd, 1H), 3.90 (t, 2H), 3.54 (q, 2H), 2.18 (m, 4H), 1.59 (m, 4H), 1.16 (m, 51H), 0.76(m, 6H);13C NMR (CDCl3-CD3OD, 100 MHz): δ 173.4, 173.0, 153.3, 148.2, 135.7, 134.7, 129.1, 124.4, 124.2, 121.1, 119.1, 112.8, 77.2, 70.2, 70.2, 66.6, 65.4, 64.2, 63.5, 62.5, 57.7, 47.1, 45.7, 34.3, 34.1, 31.9, 29.7, 29.7, 29.6, 29.5, 29.3, 29.3, 29.1, 29.1, 24.9, 22.7, 15.0, 14.1, 8.6。[M+H]+のHRMS計算値 917.6132、実測値 917.6162。
【実施例6】
【0033】
(L4)
4-アミノ-1-[2-(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ)ブチル]-2-エトキシメチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン(化合物(I)、R1=H、Y=W=X=O、n=4、m=l、R2=R3=n-C15H31CO)の調製
【化10】
【0034】
上記実施例1に記載した一般的手順に従い、化合物L4を26%の収率で調製した。1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 11.2 (bs, 1H), 7.78 (d, 1H), 7.30 (t, 1H), 7.20 (d, 1H), 6.78 (t, 1H), 6.39 (bs, 1H), 5.28 (m, 1H), 4.79 (s, 2H), 4.43-4.50 (m, 3H), 4.11-4.27 (m, 5H), 3.67 (dd, 2H), 2.41 (bs, 2H), 2.30 (dd, 4H), 1.96 (bs, 1H), 1.60 (m, 4H), 1.25 (m, 54H), 0.88 (1, 6H);13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 173.4, 173.0, 150.9, 148.9, 134.7, 134.2, 128.0, 124.3 (2), 120.5, 118.4, 111.8, 70.3, 70.2, 66.8, 64.7, 64.4, 64.3, 63.4 (2), 62.4, 46.6, 34.2, 34.1, 31.9, 29.6 (3), 29.4, 29.3 (2), 29.2, 29.1, 28.2, 27.4, 24.8 (2), 22.6, 15.1, 14.1。[M+H]−のHRMS計算値 943.6289、実測値 943.6251。
【実施例7】
【0035】
4-アミノ-1-[2-(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ジホスホ)アルキル]-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン(化合物(I)、Y=W=X=O、m=2)を調製する一般的手順
【化11】
【0036】
以下のように、当技術分野で公知の方法(Biochim. Biophys. Acta 1980, 619, 604, J. Biol. Chem., 1990, 265(11), (6112-6117) J. Org. Chem. 1997, 62, 2144-2147) に従い、イミダゾキノリンIIIから粗製形態で調製したイミダゾキノリンモノホスホモルホリデート(monophosphomorpholidate)VIを1,2-ジアシル-sn-グリセロール-3-ホスフェートナトリウム塩VIIとカップリングさせることによりイミダゾキノリンジホスフェートジグリセリドVIIIを調製した:POCl3(2.0 eq)およびイミダゾキノリンIII(1.0 eq)を0℃でトリメチルホスフェート(0.38M)に加えた。0℃で15時間撹拌した後、反応混合物をH2OとEt2Oの間に分配し、それらの層を分離した。有機層をH2Oで3回抽出し、合わせた水層のpHをaq NH4OHでpH 9に調節した。水溶液を濃縮し、高真空下で乾燥させ、CHCl3-MeOH-H2O-Et3Nを用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより得られた残渣を精製した(勾配溶離、90:10:0.5:0.5→60:40:5:1)。得られた生成物を50℃でジオキサン(0.12M)中に溶解させ、4N HCl(1.5 eq)で処理した。沈殿したHCl塩を回収し、ジオキサンですすぎ、高真空下で乾燥させた。この塩を含む1:1のt-BuOH-H2O (0.5M)の懸濁液にモルホリン(5.0 eq)を加え、反応混合物を90℃に加熱し、1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、5.0 eq)を含むt-BuOH (0.33M)の溶液で処理した。90℃で1時間後、冷却した反応混合物をH2OとEt2Oの間に分配し、これらの層を分離した。有機層をH2Oで2回抽出し、合わせた水層を濃縮し、高真空下で乾燥させた。得られた粗製ホスホモルホリデートVI(1.5 eq)およびVII(1.0 eq)を少量のピリジンに溶解した懸濁液を真空下で濃縮し、その後、トルエンで2回同時蒸発させ、高真空下で乾燥させた。この手順を2回以上繰り返した。次いで、この乾燥固体を含むピリジン(0.10M)の懸濁液に4,5-ジシアノイミダゾール(DCI、3.0 eq)を加え、反応混合物を室温で10日間撹拌した。生じた混合物を濃縮し、得られた残渣をH2O-CH2Cl2の間に分配し、これらの層を分離した。水層をCH2Cl2で2回抽出し、合わせた有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。CHCl3-MeOH-H2O(勾配溶離、90:10:0.5→70:30:2)を使用するシリカゲルクロマトグラフィーにより無色固体として化合物VIIIを得た。
【実施例8】
【0037】
(L5)
4-アミノ-1-[2-(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ジホスホ)エチル]-2-エトキシメチル-lH-イミダゾ[4,5-c]キノリン(化合物(I)、R1=CH2OCH2CH3、Y=W=X=O、n=2、m=2、R2=R3=n-C15H31CO)の調製
【化12】
【0038】
上記実施例6に記載した一般的手順に従い、化合物L5を22%の収率で調製した。1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 8.17 (bs, 1H), 7.10-7.40 (2-3 m, 2-3H), 5.25 (bs, 1H), 4.60-5.00 (bm, 3H), 4.38 (m, 1H), 4.05-4.22 (m, 3H), 3.60-3.82 (m, 4H), 3.41 (bs, 1H), 3.10 (dd, 2H of Et3N), 2.28 (m, 4H), 1.84 (dd, 1H), 1.56 (m, 5H), 1.25 (m, 54H), 0.88 (t, 7H);13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 173.5, 173.1, 152.4, 147.7, 135.8, 134.2, 128.8, 124.5, 123.6, 122.0, 118.8, 112.2, 77.2, 70.0, 68.1, 66.5, 63.8, 62.4, 54.6, 46.5, 45.5, 38.5, 33.9, 33.0, 29.5, 29.4, 29.1, 28.9, 28.7, 25.0, 24.6, 23.5, 22.7, 22.5, 14.6, 13.8, 13.7, 13.2, 10.7, 8.1。[M+H]+のHRMS計算値997.5796、実測値997.5776。
【実施例9】
【0039】
脂質付加したTLR7/8のin vivo試験
TLR7/8リガンドは、マウスでの様々な面における免疫応答を(注目に値するものとしてはCD8応答を)促進し得る。TLR7/8リガンド(「コア(core)」化合物)と対応するその脂質付加した誘導体との間の応答における差は、下記のような技術を用いて調査する。
【0040】
比較試験用の化合物製剤は、本試験での対応群の対照比較を勘案すると、異なる分子量のコア分子と脂質付加した分子を検討する必要がある(例えば、45および4.5μgの脂質付加した化合物L3は、ほぼ15および1.5μgの対応するコア化合物「L3コア」に対応する)。また、高用量のL3(200μg)およびL3コア(150μg)も試験する。こうした試験の1つにおいて、以下に要約し記載した製剤(表1)を使用し、6〜8週齢のC57BL/6(H2Kb)メスマウス(10匹/群)にワクチン接種する。これらのマウスには、14日間あけて2回接種し、1週、3週および4週に採血する(正確な採血日数は図1を参照)。マウスの筋肉内にワクチン接種する。SIV-p27タンパク質をコードする組換えアデノウイルスおよびアジュバントp27を使用する異種プライム・ブースト法を対照群として使用し、アデノウイルスを5×108 VPの用量で接種する。この試験方法を図1に示す。
【表2】
【0041】
この試験方法において、QS21およびMPL免疫賦活剤を含有する、リポソームベースまたは水中油型ベースのいずれかのアジュバント組成物中で分子を製剤化する。TLR7/8Lの付加値を評価するには、TLR7/8L、QS21およびMPLを含有する製剤により誘導される自然免疫応答および獲得免疫応答を、対応するQS21およびMPL含有製剤により誘導されたものと比較する。
【0042】
抗原特異的CD8およびCD4応答の誘導は、第2回接種の7日後、細胞内サイトカインを測定することにより評価する。末梢血リンパ球(PBLs)は、全p27抗原を網羅するペプチドプールの存在下で刺激される(15mersペプチド、11ずつオーバーラップ)。サイトカインの分泌はブレフェルジンAにより遮断され、3種のサイトカイン(IFNγ、TNFαおよびIL2)の存在は、適切な抗体で細胞内染色した後、流動細胞計測法により評価する。
【0043】
上記で述べたものと類似する試験を、CRX-642およびその脂質付加した対応物L3を使用して実施した。図2および図3は、第2回免疫処置の7日後に認められたp27特異的T細胞頻度を示す。用量応答方法において、L3含有リポソームをMPLおよびQS-21製剤と同時投与した場合、TLR7/8L非含有の対照製剤と比較すると、p27特異的CD8頻度が明らかに上昇した(図2)。注目すべきは、リポソームベース製剤および水中油滴型ベース製剤のいずれもが、TLR7/8L非含有の対応の対照製剤と比較して、脂質付加したTLR7/8Lの存在下でCD8応答に上昇が認められたことである。さらに、サイトカイン産生CD8 T細胞を生成する能力は、TLR7/8リガンドの脂質付加特性に依存的であったが、コア分子L3コアではL3と対照的に応答の増加はなかった。
【0044】
誘導されたCD 8応答の評価を補足する場合、抗原特異的細胞毒性活性をin vivoで評価することができる。簡潔に説明すると、全タンパク質を網羅するp27ペプチド群でパルスした標的と、対照の未パルス標的とを免疫化マウスに注射し、注射した24時間後に、p27特異的細胞毒性をパルスした標的の消失により評価する。
【0045】
補足的な細胞毒性活性試験は、上記で説明したL3コアおよびL3の誘導CD8応答を評価することにより実施した。脂質付加したTLR7/8リガンドがベースの製剤で免疫したマウスでは、コアTLR7/8リガンドがベースの製剤を接種したマウスと比べて、より高い細胞毒性活性が検出された(図3)。この活性は、特に脂質付加したTLR7/8Lが高用量で使用された場合に、QS21およびMPLのみをベースとした対照製剤により誘導されたものよりも高かった。
【0046】
CD8応答について示したように、L3含有リポソームがリポソームベースのMPLおよびQS-21含有製剤と同時投与された場合、対照製剤と比較すると、p27特異的CD4頻度は増加し、その応答は注射されたTLR7/8L用量に依存していた(図4)。CD8応答の場合のように、コア分子L3コアは、対照製剤により誘導されるものを上回るCD4応答を誘導することはできなかった。
【0047】
また、脂質付加したTLR7/8Lは、エマルションベースの製剤で投与した場合、対照製剤により達成されたレベル以上にCD4 T細胞応答を増加させることもできた。
【0048】
脂質付加した場合、種々の製剤中のTLR7/8リガンドの付加値は、サイトカイン産生T細胞頻度において(CD8およびCD4の両T細胞)5倍まで増加することが示されている。興味深いことに、T細胞応答のサイトカインプロファイルは、高頻度のダブルポジティブT細胞を特徴としていた(IFNγ+ TNFα+)。
【0049】
さらなる研究からは、脂質付加したTLR7/8化合物に自然ケモカインおよび炎症誘発性サイトカインを誘導する能力が示唆されており、これらのうち、I型IFNがナイーブCD8 T細胞のプログラミング(生存、分化、メモリー進化)に欠かせないことがわかっている。これらのサイトカインは、第1回注射の3時間後および24時間後に、マウスの血清で測定する(図5および図6)。
【0050】
L3コアおよびL3に関するサイトカインプロファイルの結果からは、同様のサイトカインプロファイルがリポソームベースの製剤およびエマルションベースの製剤の間で認められることが明らかである。TLR7/8リガンドは、それらの形質細胞性樹状細胞を刺激する能力によってIFNαを誘導することが知られており、実際、L3で免疫したマウスの血清中に、IFNαが用量依存的に、またそのコア相当物のL3コアに関するレベルよりも高いレベルで検出された。バックグラウンドレベルに近い、低IL-12p70産生も検出された。INFγレベルは低用量のL3で増加したが、他の炎症性サイトカイン(例えば、TNFαまたはIL-6)は、L3コアおよびL3の両方がQS21およびMPLに加えられた場合に増強された。ケモカインMCP-1およびMIGは、両方とも、両化合物で10倍まで増加した。概して、これらのデータからは、試験した脂質付加分子が、in vivoにおいてサイトカイン産生を誘導するのに、対応のコア分子よりも強力でないとしても、同程度の有効性をもつことが示唆される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
(式中、
R1は、H、C1-6アルキル、C1-6アルキルアミノ、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルキルC1-6アルキル、C3-6シクロアルキルC1-6アルキルアミノ、C3-6シクロアルキルC1-6アルコキシ、C1-6アルコキシC1-6アルキル、C1-6アルコキシC1-6アルキルアミノ、C1-6アルコキシC1-6アルコキシであって;分岐鎖または非分岐鎖であり、場合により、ヒドロキシル、アミノ、チオ、ヒドラジノ、ヒドラジド、アジド、アセチレニル、カルボキシルまたはマレイミド基で末端が置換されていてもよく、
Zは、C2-C6アルキルまたはアルケニルであって、非置換であるか、または-(O-C2-C6アルキル)1-6-で末端が置換されており、
Yは、O、NHであり、
Xは、O、CH2、CF2であり、
Wは、OまたはSであり、
mは、1〜2であり、
Aは、
【化2】
または
【化3】
(式中、
R2は、H、または直鎖/分岐鎖/不飽和のC4-C24アルキルまたはアシルであり、
R3は、直鎖/分岐鎖/不飽和のC4-C24アルキルまたはアシルである)
であり、
R4、R5は、独立して、H、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、ハロゲン、またはトリフルオロメチルであるか;あるいは一緒になって6員アリール、1個の窒素原子を含有するヘテロアリール、シクロアルキル、または1個の窒素原子を含有するヘテロシクロアルキル環を形成し;非置換であるか、または1個または複数のC1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルで置換されている)
を含む化合物、またはその製薬上許容可能な塩。
【請求項2】
式II:
【化4】
(式中、
R1は、H、C1-6アルキル、C1-6アルキルアミノ、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルキルC1-6アルキル、C3-6シクロアルキルC1-6アルキルアミノ、C3-6シクロアルキルC1-6アルコキシ、C1-6アルコキシC1-6アルキル、C1-6アルコキシC1-6アルキルアミノ、C1-6アルコキシC1-6アルコキシであって;分岐鎖または非分岐鎖であり、場合により、ヒドロキシル、アミノ、チオ、ヒドラジノ、ヒドラジド、アジド、アセチレニル、カルボキシルまたはマレイミド基で末端が置換されていてもよく、
nは、1〜6であり、
Xは、O、CH2、CF2であり、
Wは、OまたはSであり、
mは、1〜2であり、
R2は、H、または直鎖/分岐鎖/不飽和のC4-C24アルキルまたはアシルであり、
R3は、直鎖/分岐鎖/不飽和のC4-C24アルキルまたはアシルである)
を有する化合物。
【請求項3】
イミダゾキノリンをリン脂質またはホスホノ脂質に結合させることを含む、イミダゾキノリンのアジュバント活性を向上させる方法。
【請求項1】
式I:
【化1】
(式中、
R1は、H、C1-6アルキル、C1-6アルキルアミノ、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルキルC1-6アルキル、C3-6シクロアルキルC1-6アルキルアミノ、C3-6シクロアルキルC1-6アルコキシ、C1-6アルコキシC1-6アルキル、C1-6アルコキシC1-6アルキルアミノ、C1-6アルコキシC1-6アルコキシであって;分岐鎖または非分岐鎖であり、場合により、ヒドロキシル、アミノ、チオ、ヒドラジノ、ヒドラジド、アジド、アセチレニル、カルボキシルまたはマレイミド基で末端が置換されていてもよく、
Zは、C2-C6アルキルまたはアルケニルであって、非置換であるか、または-(O-C2-C6アルキル)1-6-で末端が置換されており、
Yは、O、NHであり、
Xは、O、CH2、CF2であり、
Wは、OまたはSであり、
mは、1〜2であり、
Aは、
【化2】
または
【化3】
(式中、
R2は、H、または直鎖/分岐鎖/不飽和のC4-C24アルキルまたはアシルであり、
R3は、直鎖/分岐鎖/不飽和のC4-C24アルキルまたはアシルである)
であり、
R4、R5は、独立して、H、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、ハロゲン、またはトリフルオロメチルであるか;あるいは一緒になって6員アリール、1個の窒素原子を含有するヘテロアリール、シクロアルキル、または1個の窒素原子を含有するヘテロシクロアルキル環を形成し;非置換であるか、または1個または複数のC1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルで置換されている)
を含む化合物、またはその製薬上許容可能な塩。
【請求項2】
式II:
【化4】
(式中、
R1は、H、C1-6アルキル、C1-6アルキルアミノ、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルキルC1-6アルキル、C3-6シクロアルキルC1-6アルキルアミノ、C3-6シクロアルキルC1-6アルコキシ、C1-6アルコキシC1-6アルキル、C1-6アルコキシC1-6アルキルアミノ、C1-6アルコキシC1-6アルコキシであって;分岐鎖または非分岐鎖であり、場合により、ヒドロキシル、アミノ、チオ、ヒドラジノ、ヒドラジド、アジド、アセチレニル、カルボキシルまたはマレイミド基で末端が置換されていてもよく、
nは、1〜6であり、
Xは、O、CH2、CF2であり、
Wは、OまたはSであり、
mは、1〜2であり、
R2は、H、または直鎖/分岐鎖/不飽和のC4-C24アルキルまたはアシルであり、
R3は、直鎖/分岐鎖/不飽和のC4-C24アルキルまたはアシルである)
を有する化合物。
【請求項3】
イミダゾキノリンをリン脂質またはホスホノ脂質に結合させることを含む、イミダゾキノリンのアジュバント活性を向上させる方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【公表番号】特表2012−506865(P2012−506865A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533375(P2011−533375)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/061867
【国際公開番号】WO2010/048520
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/061867
【国際公開番号】WO2010/048520
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】
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