説明

脂質:エモジン製剤に関する組成物および方法

本発明は、bcr-ablを発現する白血病およびチロシンキナーゼ活性の上昇を伴うその他の癌の治療のための改善された脂質:エモジン製剤を提供するための方法および組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 発明の分野
本発明は一般に、癌治療の分野に関する。特に、エモジンの脂質製剤に関する。なお、本出願は、2002年12月6日に出願された米国特許仮出願第60/431,422号に対する優先権を主張するものであり、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
2. 関連する技術分野の説明
エモジン(3-メチル-1,6,8,トリヒドロキシアントラン-キノン)は、伝統的な漢方薬においてしばしば用いられる天然の物質である。その作用機序は、例えばp56lckタンパク質チロシンキナーゼの活性を制限する、チロシンキナーゼ阻害剤と同様である。また、リンパ球性白血病細胞およびHL-60細胞の増殖を含めて、癌細胞の増殖を阻害することも示されている。さらに、エモジンはHer2-Neuチロシンキナーゼ活性を阻害することが示されており、かつHer2-Neuで形質転換したNIH3T3細胞に対するインビボ活性が実証されている。エモジンはまた、白血病発生および薬剤耐性において重要なbcr-ablのチロシンキナーゼ活性も阻害する。bcr-ablを発現している白血病の患者は一般に、予後不良である。bcr-abl白血病患者、およびチロシンキナーゼ活性が上昇したその他の癌患者の治療のための治療剤が必要である。
【0003】
しかし、現在のエモジン製剤はアルカリ性調製物であり、高pHの溶液が動物に注入されるという問題点を有する。エモジンの溶解度を越えて製剤のpHを下げると、溶液中に沈殿が生じる。このようにほぼ中性のpHでは溶解度が限られているため、現在のエモジン製剤は動物またはヒトにおける使用に最適とは言えない。
【発明の開示】
【0004】
発明の概要
エモジン投与に付随する問題点を軽減するための一つの可能な方法は、薬剤送達系の使用であろう。脂質を基剤とする剤形(lipid based format)は、インビボでの薬剤送達において有効な剤形である。これは、本質的に、有益な効果が生じ得る標的(例えば、腫瘍)部位における高濃度および/または長期持続性の薬剤作用の付与を伴うと共に、有害な副作用が生じる可能性のあるその他の部位では低濃度および/または短期間を維持する(Juliano, et al., 1980)。ある局面において、脂質結合エモジンは脂質から時間依存的様式で拡散することができる。脂質結合は薬剤の薬物動態、分布、および代謝を根本的に変化させることから、薬剤の脂質結合は薬剤送達の制御の問題に影響を及ぼすことが予想できる。
【0005】
様々な態様において、組成物は、脂質に結合したエモジン、またはその誘導体を含む。エモジン誘導体またはエモジン様分子は、チロシンキナーゼ阻害および細胞形質転換の阻害に関してエモジンと同様の特徴を示す化合物である。エモジンまたはエモジン誘導体は、例えば、エモジン、エモジン-8-O-D-グルコシド、クリソファン酸、グルコクリソファン酸、フィッション、またはフィッション-8-O-D-グルコシドでありうる。脂質は、当技術分野において既知の様々な脂質を含みうり、特に、ジミリストールホスファチジルコリンまたはジミリストールホスファチジルグリセロールを含むことができる。脂質対エモジンの重量/重量比は、約5:1ないし約30:1でありうる。一部の態様において、脂質対エモジンの比は約5:2である。重量/重量比は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10のエモジンまたはエモジン誘導体に対して、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30の脂質を含むことができる。
【0006】
いくつかの態様において、組成物は可溶化剤を含む。可溶化剤とは、凍結乾燥前の製剤の約0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15%重量/重量の非イオン性界面活性剤であることができる。一部の態様において、非イオン性界面活性剤の量は凍結乾燥前の製剤の約0.08%重量/重量である。非イオン性界面活性剤は、Tween、Tween 20または同等の界面活性剤であることができる。その他の態様において、可溶化剤は大豆油または落花生油である。いくつかの態様において、可溶化剤はβ-ヒドロキシル化化合物である。
【0007】
本発明の様々な態様には、エモジンまたはその誘導体を溶媒中で脂質と混合する工程を含む、組成物を調製する方法が含まれる。本方法はまた、可溶化剤を混合する工程を含んでもよい。一部の態様において、脂質はジミリストールホスファチジルコリン(DMPC)である。脂質対エモジンの割合、および可溶化剤の%は、参照として本明細書に組み入れられる上述のものと同様である。様々な態様において、溶媒は第三級ブタノールである。可溶化剤は、大豆油または落花生油、およびβ-ヒドロキシル化化合物を含む。一部の態様において、可溶化剤はTween 20である。
【0008】
本方法は、組成物を凍結乾燥する工程をさらに含むことができる。様々な態様において、本方法は凍結乾燥した組成物を溶媒中で再構成する工程をさらに含むことができる。溶媒は、例えば生理食塩液のような水性溶媒であることができる。一部の態様において、生理食塩液は0.9%食塩液である。
【0009】
様々な態様は、脂質と結合したエモジンを含む製剤を被験者に投与する工程を含む、被験者における癌を治療するための方法であって、該被験者における癌細胞のチロシンキナーゼ活性が阻害される方法を含む。いくつかの態様において、癌は、例えば白血病またはリンパ腫のような造血器癌である。エモジンは、約1mg/kg体重ないし約500mg/kg体重の用量で投与されうる。本発明の方法は、脂質:エモジン製剤の、例えば静脈内注射のような注射による投与を含むことができる。脂質:エモジン製剤が数時間、数日間、数週間、数カ月間、および数年間もの期間、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれよりも多い回数投与されうることも意図される。
【0010】
本明細書に記載の方法または組成物はいずれも、本明細書に述べられるその他の任意の方法または組成物に関して実行できることが意図される。
【0011】
添付の特許請求の範囲および/または明細書において「含む(comprising)」という用語と共に用いられる「一つの(a)」または「一つの(an)」という用語の使用は、「一つ(one)」を意味する可能性もあるが、「一つまたはそれ以上」、「少なくとも一つ」および「一つまたは複数」の意味にも一致する。
【0012】
本発明のその他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなろう。しかし、当業者にはこの詳細な説明から本発明の精神および範囲内の様々な変更および修正が明白となることから、詳細な説明および具体例は、本発明の具体的態様を示すものではあるが、例証としてのみ示されるものであることが理解されるべきである。
【0013】
例証的態様の説明
本発明の一部の局面は、3-メチル-1,6,8トリヒドロキシアントラ-キノン(エモジン)またはその誘導体である薬剤の改善された製剤を含む。特定の態様において、エモジンは脂質製剤として提供される。一般に、脂質製剤は、薬学的製剤においてエモジンの溶解度を改善する。脂質製剤は可溶化剤を含んでもよい。可溶化剤には、例えば大豆油または落花生油のようなβ-ヒドロキシル化化合物、および、例えばTween 20のような非イオン性界面活性剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明に基づく適切な治療用脂質:エモジン製剤は、エモジンおよび/またはその誘導体を含む。
【0014】
脂質製剤は、当技術分野において周知である方法によって形成されうる、リポソームのような脂質担体粒子を含むことができる。適切なリン脂質化合物には、ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、スフィンゴリピド、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、糖脂質、ガングリオシド、セレブロシド、ホスファチド、ステロールなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。より具体的には、使用できるリン脂質には、ジミリストイルホスファチジルコリン、卵ホスファチジルコリン、ジラウリロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジン酸、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、脳ホスファチジルセリン、脳スフィンゴミエリン、ジパルミトイルスフィンゴミエリン、およびジステアロイルスフィンゴミエリンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
さらに、その他の脂質、ステロイド、コレステロールなどは、形成されるリポソームに既知の望ましい特定の特性を付与するために、リン脂質成分と混合することができる。さらに、ヒドロキシル基、分枝炭素鎖、環状誘導体、芳香族誘導体、エーテル、アミド、ポリ不飽和誘導体、ハロゲン化誘導体のように脂肪族部分が変化した合成リン脂質、または、炭水化物、グリコール、リン酸塩、ホスホン酸塩、四級アミン、硫酸塩、スルホン酸塩、カルボキシ、アミン、スルフヒドリル基、イミダゾール基、およびこのような基の組み合わせを含む親水性部分が変化した合成リン脂質のいずれかを、リン脂質および当業者に既知のその他の物質と置換または混合することができる。
【0016】
適切な安定化剤が脂質:エモジン製剤に含まれてもよい。非イオン性界面活性剤またはβ-ヒドロキシル化産物/化合物は好ましい可溶化剤であり、具体例としてはTween 20および大豆油が挙げられる。その他の適切な可溶化剤には、落花生油、コレステロールのようなステロール、脂肪族アルコール、脂肪酸、ポリソルベート、プロピレングリコール、モノグリセリドおよびジグリセリドのようにいくつかの分子にエステル化した脂肪酸、ならびにポリビニルアルコールのようなポリマーが含まれる。
【0017】
凍結乾燥前に、エモジン、脂質、および/または可溶化剤を、第三級ブタノール(t-ブタノール)などの有機溶媒に溶解することができる。プレリポソーム粉末を形成するための凍結乾燥は、当業者に既知の市販の装置を用いて実施することができる。凍結乾燥後、滅菌水、生理食塩液(例えば、0.9%生理食塩液)、またはデキストロース溶液のような薬学的に許容される担体を攪拌ながらかつ任意で加熱しながら加えて、例えばリポソームまたは脂質製剤として粉末を再構成することができる。
【0018】
t-ブタノールに溶解できる例示的製剤は、5:2の脂質:エモジン比であり、最終濃度はTween 20の0.08% w/wである。
【0019】
好ましくは本発明の組成物は、例えば静脈内注射、動脈内注射、筋肉内注射、リンパ内注射、腹腔内注射、皮下注射、胸膜内注射、または髄腔内注射によって、非経口的に患者に投与される。投与は局所適用または経口投与によっても行うことができる。好ましい用量は40mg/m2〜200mg/m2である。用量は、20、25、30、25、40、45、50、55、60、65から、70、75、80、85、90、100、125、150、200、250、300mg/m2までの範囲であり、その間のすべての範囲を含むことができる。投与は、好ましくは腫瘍または疾患の退縮、静止、もしくは消失が得られるまで時間的スケジュールにて反復されて、外科手術、放射線療法、または、その他の物質を用いた化学療法などの、その他の形式の癌療法と併用して用いることができる。
【0020】
本発明は、癌の治療に有用であり、特に、例えば白血病およびリンパ腫のような血液学的悪性腫瘍、乳癌、肺癌および結腸癌等の癌を含む、チロシンキナーゼ活性の上昇を伴う癌の治療に有用である。
【0021】
I. エモジンおよびアントラキノンを基剤とするエモジン様化合物の構造的特性
エモジン(3-メチル-1,6,8トリヒドロキシアントラ-キノン)は、構造的には表1に示すアントラキノンの構造に基づく化合物群に属するが、これには様々なR基が付加することができる。天然には、様々なアントラキノンが存在する(Yeh et al., 1988; Kupchan and Karim, 1976 ; Jayasuriya et al., 1992)。表1の構造Bはエモジン自体であり、Cはエモジン-8-O-D-グルコシド、Dはクリソファン酸、Eはグルコクリソファン酸、Fはフィッション(physcion)、Gはフィッション-8-O-D-グルコシドである。構造A、C、およびD〜Gのエモジン様化合物は、本発明において用いることのできる例示的な形式のエモジン様化合物(エモジン誘導体)に過ぎない。表1に示すように、また例えばYeh et al., 1988; Kupchan and Karim, 1976; Jayasuriya et al., 1992が述べるように、その他の多くのエモジン類似体が利用可能である。
【0022】
第1の群(A群:表1)は構造的にエモジンに関連する化合物に含まれ、エモジンのC3位のCH3基が別の異なる基で置換されたのみである。これは、CH3>C=NOCH3>CHNOH>CH2OH>CONH2>COOHの順でp185neuのチロシンリン酸化の阻害活性を有し、かつCH3> CHNOH>CONH2>C=NOCH3>CH2OH>CH2OH>COOHの順で細胞増殖阻害活性を有する。これらの結果は、一般にエモジンのC3位のCH3基がチロシンリン酸化および増殖に対するエモジンの阻害活性の保持に重要であることを示している。
【0023】
第2の群(B群:表1)も構造的にエモジンに関連しており、エモジンのC6位のOH基がH基またはOCH3基で置換されているのみである。しかし、エモジンと比較すると、p185neuのチロシンリン酸化および細胞増殖両方に対するそれらの阻害活性はエモジンの五分の一である。
【0024】
第3の群(C群)は、エモジンのC1位、C6位およびC8位のOH基ならびにC3位のCH3基の除去、ならびにエモジンのC1位およびC2位のNH2基の付加の後に、エモジン活性の低下を示す。第5の群(E群)では、C10位からケトン基が除去されており、同じくエモジンの活性が低下したものである。
【0025】
第4の群(D群)は、C9のケトンがp-アセチルアミデベンゾメチル基(DK-V-47)またはp-アミノベンゾメチル基(DK-V-48)のいずれかと置換された点以外は、構造的に第3の群に類似する。DK-V-47はp185neuのチロシンリン酸化および癌細胞の増殖の阻害に関してエモジンよりも高い活性を有する。しかし、DK-V-47のCOCH3をH基と置換する(DK-V-48)と、DK-V-48は、DK-V-47の活性の低下がもたらされるする。これらの結果は、DK-V-47のCOCH3基がDK-V-47の活性の維持に関与することを示唆している。
【0026】
(表1)エモジン様化合物の構造



【0027】
II. エモジンおよびエモジン様化合物の機能的特徴
エモジンは、最初はイタドリ(polygonum cuspidatum)から分離されたが、例えばタンパク質であるチロシンキナーゼp56lckなどの各種タンパク質チロシンキナーゼの阻害剤であることが示されている(Jayasuriya et al. ; 1992)。エモジンは、インビトロにおいてATPの結合を阻止することによってp56lckキナーゼの活性を制限するチロシンキナーゼ阻害剤であることが報告されている(Jayasuriya et al., 1992)。また、エモジンは、未知のメカニズムによって、リンパ球性白血病(Kupchan et al., 1976)、HL-60ヒト白血病細胞(Yeh et al., 1988)、およびras-形質転換ヒト気管支上皮細胞(Chan et al., 1993)を含む癌細胞の増殖も阻害することができる。
【0028】
エモジンおよびエモジン様化合物は、neuを過剰発現している癌細胞を化学療法剤に感作させることによって、これらの細胞の化学療法耐性の克服の助けとなる。チロシンリン酸化(例えば、neuタンパク質のリン酸化)、細胞増殖、および癌細胞の細胞形態学に対するエモジンの影響、ならびに化学療法剤と併用したエモジンの効果について検討した。エモジンは、neuタンパク質のチロシンリン酸化を抑制し、neu発現肺癌細胞の増殖を驚くべきレベルまで優先的に阻害して、これらの細胞を化学療法剤に対して感作させることが見出されている。このチロシンリン酸化の抑制は、エモジン様化合物の機能的特徴である。
【0029】
エモジンおよびエモジン様化合物は、neuを過剰発現しているヒト乳癌細胞のチロシンキナーゼ活性を抑制し、それらの形質転換能を抑制して、それらの分化を誘導することが示されている。さらに、エモジンはまた、肺癌細胞におけるneuタンパク質のチロシンリン酸化を抑制して、これらの細胞の増殖を優先的に阻害する。エモジンは、neuを過剰発現する肺癌細胞を、化学療法剤であるシスプラチン、ドキソルビシンおよびVP16に感作させることもできる。これにより、p185neuのチロシンキナーゼ活性がneu過剰発現癌細胞の化学療法耐性の表現型に必要であることが示唆される。
【0030】
III. エモジンおよびエモジン様化合物の治療的有効量
脂質担体を用いて製剤化されたエモジンおよび/またはエモジン様チロシンキナーゼ阻害剤の治療的有効量は、治療を受ける宿主および特定の投与様式に応じて異なる。本発明の一つの態様において、用いられるエモジン様チロシンキナーゼ阻害剤の用量範囲は、約0.5mg/kg体重〜約500mg/kg体重である。「体重」という用語は、動物が治療される場合に適用可能である。単離された細胞が投与を受ける場合は、本明細書で用いられる「体重」とは「総細胞重量」を意味すると理解すべきである。「総重量」という用語を用いて、単離された細胞および動物の処理の両方に適用することが可能である。すべての濃度および処理レベルは、この適用における「体重」または単に「kg」として表現され、類似の「総細胞重量」および「総重量」濃度を含むと考えられる。しかし、当業者は、例えば、1mg/kg体重〜450mg/kg体重、2mg/kg体重〜400mg/kg体重、3mg/kg体重〜350mg/kg体重、4mg/kg体重〜300mg/kg体重、5mg/kg体重〜250mg/kg体重、6mg/kg体重〜200mg/kg体重、7mg/kg体重〜150mg/kg体重、8mg/kg体重〜100mg/kg体重または9mg/kg体重〜50mg/kg体重などの様々な用量範囲が利用できることを認識するであろう。さらに、当業者は、例えば、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg、12.5mg/kg、15mg/kg、17.5mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45 mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、120mg/kg、140mg/kg、150mg/kg、160mg/kg、180mg/kg、200mg/kg、225 mg/kg、250mg/kg、275mg/kg、300mg/kg、325mg/kg、350mg/kg、375mg/kg、400mg/kg、450mg/kg、500mg/kg、550mg/kg、600mg/kg、700mg/kg、750mg/kg、800mg/kg、900mg/kg、1000mg/kg、1250mg/kg、1500mg/kg、1750mg/kg、2000mg/kg、2500mg/kg、および/または3000mg/kgなどの様々な異なる用量レベルが利用できることを認識するであろう。当然ながら、これらの用量はすべて例示であり、これらの数値の任意の2つによって定められる任意の用量範囲と同様に、これらの数値間の任意の用量も本発明において有用であることが期待される。エモジン単独、またはもう一つの抗癌剤または抗癌療法と併用されるエモジンに関して、上記の任意の用量範囲または用量レベルを用いることができる。
【0031】
「治療的有効量」とは、レシピエントの動物または患者において有益な結果を生じる有効な量である。このような量は、先ず、既報文献の閲覧、インビトロ試験の実施、または健常実験動物を用いた代謝試験の実施によって求めることができる。臨床現場での使用前に、動物モデル、好ましくは治療すべき特定の疾患用の広く受け入れられた動物モデルを用いた確認試験を実施することが有益である可能性がある。一部の態様において使用するための好ましい動物モデルは齧歯類モデルであり、使用が経済的であるため、かつ特に、得られる結果が臨床値の予測として広く受け入れられているため、好ましいモデルである。
【0032】
当技術分野において周知であるように、任意の特定の患者に対するエモジンまたはエモジン様化合物のような活性化合物の具体的用量は、用いられる具体的化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康状態、性別、食事、投与時期、投与経路、排出速度、薬剤併用、および治療を受ける特定の疾患の重篤度などの様々な要因に依存する。投与に対して責任を負う人物が、個々の被験者において適切な用量を決定する。さらに、ヒトへの投与では、製剤は、FDA Office of Biologicsの基準に要求される無菌性、発熱原性、一般的安全性および純度に関する基準を満たさなければならない。
【0033】
本発明の組成物は、典型的には、生理学的に許容可能な、標準的な周知の無毒担体、アジュバント、および所望のビヒクルを含む単位用量製剤として非経口的に投与される。本明細書で用いられる非経口という用語は、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、動脈内注射、または注入技術を含む。
【0034】
いくつかの態様において、エモジンまたはエモジン様化合物は第二の物質と併用して投与される。毒性レベルを越えない第二の物質の用量が要求されない限り、エモジン様物質と併用して動物に投与された際に、この第二の物質の有効量は単純に癌増殖の減少に有効な量として定義されうる。この用量は、動物または患者をモニタリングして、所与の治療の成功の指標となる健康および疾患に関する物理的および生化学的パラメータを測定することによって、容易に求められる。このような方法は、動物試験および臨床現場では日常的である。
【0035】
エモジンまたはエモジン様チロシンキナーゼ阻害剤と共に用いられうる二番目の物質の例は、抗腫瘍剤である。これらの例は、シスプラチン、ドキソルビシン(Mechetner and Roninson, 1992)、および、ドキソルビシンの14-O-ヘミエステルのような類似体;エトポシド;ビンクリスチン(Shirai et al., 1994; Friche et al., 1993);ビンブラスチン(Bear, 1994; McKinney and Hosford, 1993);アクチノマイシンD(McKinney and Hosford, 1993);ダウノマイシン(Bear, 1994);ダウノルビシン(Muller et al., 1994);タキソテール(Hunter et al., 1993);タキソール(Mechetner and Roninson, 1992);およびタモキシフェン(Trump et al., 1992)である。当業者は、当技術分野において実践される化学療法剤の用量範囲に関して「Physicians Desk Reference」第15版に従う。当然ながら、治療を受ける被験者の状況に応じて、用量の変更が行われることもある。
【0036】
治療方法は一般に、ヒト患者を含む、癌を有する動物に、治療的に有効な組合せのエモジンおよび/またはエモジン様チロシンキナーゼ阻害剤を脂質製剤中で単独で、または癌増殖の治療に有効な一つもしくは複数の第二の物質と併用して、投与する工程を含む。第二の物質は、上述のいずれかおよびそれらの機能的同等物でありうる。
【0037】
IV. 脂質:エモジン製剤
本発明の様々な態様において、エモジンおよび/またはエモジン誘導体は脂質と会合することができる。脂質と会合したエモジンおよび/またはエモジン誘導体は、リポソームの水性内部に密閉されてもよく、リポソームの脂質二重層内で散在してもよく、リポソーム内に封入されてもよく、リポソームと複合体形成してもよく、脂質を含む溶液中に分散されてもよく、脂質と混合されてもよく、脂質に結合してもよく、脂質中に懸濁液として含まれてもよく、ミセルと共に含まれるかミセルと複合体形成してもよく、またはさもなくば、脂質と会合してもよい。脂質または脂質/エモジンおよび/もしくはエモジン誘導体と会合した本発明の組成物は、溶液中で何らかの特定の構造に限定されない。例えば、それらはミセルとして二重層構造で存在してもよく、または「崩壊した」構造を有してもよい。また、それらは溶液中に単に分散されうるが、サイズまたは形状とも一様でない凝集物を形成する可能性がある。
【0038】
脂質は、天然脂質または合成脂質でありうる脂肪性物質である。例えば、脂質には、細胞質内に天然に生じる脂肪滴、ならびに、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコールおよびアルデヒドのような長鎖脂肪族炭化水素およびそれらの誘導体など、当業者に周知である一連の化合物が含まれる。一例としては、脂質ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)があげられる。
【0039】
本発明に基づいて、脂質製剤(例えば、リポソーム)の調製にリン脂質を使用することができる。リン脂質は正味の正の電荷、正味の負の電荷を帯びていてもよく、または中性である。ジアセチルホスフェートを用いて本発明の組成物に負の電荷を付与することができ、ステアリルアミンを用いて組成物に正の電荷を付与することができる。例えばリポソームなどの組成物を、一つまたは複数のリン脂質から作製することができる。
【0040】
特定の態様において、脂質材料は中性に荷電した脂質に含まれる。中性に荷電した脂質には、電荷を持たない脂質、実質的に非荷電の脂質、または正および負の電荷を同数持つ脂質混合物が含まれうる。
【0041】
一つの局面において、組成物の脂質成分は中性脂質を含む。もう一つの局面において、脂質材料は本質的に、電荷を持たない脂質を少なくとも70%含む脂質組成物としてさらに定義される中性脂質からなる。その他の局面において、脂質材料は電荷を持たない脂質を少なくとも80%〜90%含むことができる。さらにその他の局面において、脂質材料は電荷を持たない脂質を約90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%含むことができる。
【0042】
一部の局面において、中性脂質はホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、またはホスファチジルエタノールアミンを含む。特定の局面において、ホスファチジルコリンはDOPCを含む。
【0043】
その他の局面において、脂質成分は、実質的に非荷電の脂質を含む。本明細書では、実質的に非荷電の脂質とは、陰イオン性および陽イオン性のリン脂質およびコレステロールを実質的に含まない脂質組成物として記載される。さらにその他の局面において、脂質成分は、実質的に非荷電の組成物を提供するための脂質混合物を含む。したがって、脂質混合物は正および負に荷電した脂質を含みうる。
【0044】
本発明による使用に適した脂質は、商業的供給源から入手することができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)はSigma Chemical Co.(St. Louis, MO)から入手することができ、リン酸ジセチル(「DCP」)はK and K Laboratories(Plainview, NY)から入手される;コレステロール(「Chol」)はCalbiochem-Behringから入手され、ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)およびその他の脂質はAvanti Polar Lipids, Inc.(Birmingham, Ala.)から入手することができる。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質保存液は、約-20℃で保存することができる。クロロホルムはメタノールよりも容易に蒸散するので、クロロホルムが唯一の溶媒として用いられることが好ましい。
【0045】
卵または大豆のホスファチジルコリン、脳ホスファチジン酸、脳または植物性のホスファチジルイノシトール、心カルジオリピン、および植物性または細菌性のホスファチジルエタノールアミンのような天然供給源由来のリン脂質は、得られるリポソームが不安定および漏出性であるため、主要な、即ち、総ホスファチド組成物の50%以上を構成するホスファチドとして用いられないことが好ましい。
【0046】
「リポソーム」とは、閉鎖した(enclosed)脂質二重層または凝集物の生成によって形成される様々な単層性および多層性の脂質ビヒクルを含む一般用語である。リポソームは、リン脂質二重層膜および内部の水性媒質を持つ小胞状構造を持つことに特徴づけられうる。多重膜リポソームは、水性媒質によって隔てられる多くの脂質層を持つ。それらは、リン脂質を過剰の水溶液に懸濁した際に自然に形成される。閉鎖構造の形成前に脂質成分は自己再配列を受けて、脂質二重層の間に水および溶存溶質を封入する(GhoshおよびBachhawat、1991)。しかし本発明には、通常の小胞構造以外の異なる構造を溶液中に有する組成物も含まれる。例えば、脂質はミセル構造と考えることができるが、脂質分子の不均一な凝集物として存在することはほとんどない。
【0047】
本発明に従って用いられるリポソームは、様々な方法によって作製することができる。リポソームのサイズは合成方法によって異なる。水溶液中に懸濁されたリポソームは一般に、脂質二重層分子の同心円層の一つまたは複数を有する球状小胞の形状である。各層は式XYで示される分子の平行配列からなるが、ここでXは親水性分子、Yは疎水性分子である。水性懸濁液の場合、親水性分子が水相との接触を維持しやすく、疎水性領域が自己結合しやすいように、同心円層が配置される。例えば、リポソームの内部および外部の双方に水相が存在する場合、脂質分子は、配列XY-YXの、ラメラとして知られる二重層を形成することができる。複数の脂質分子の親水性および疎水性の部分が互いに結合すると、脂質の凝集物が形成されうる。これらの凝集物のサイズおよび形状は、溶媒の性質、および溶液中のその他の化合物の存在などの多くの異なる変数に左右される。
【0048】
本発明の範囲内のリポソームは、既知の実験技術に従って作製されうる。本発明の特定の方法はリポソームの調製を説明するものであり、以下に記載される。簡潔に言うと、エモジンまたはエモジン誘導体はt-ブタノールまたはDMSOに溶解され、例えばリン脂質であるジミリストホスファチジルコリン(DMPC)などのリン脂質(Avanti Polar Lipids, Alabaster, AL)はtert-ブタノールに溶解される。次に、脂質をエモジンまたはエモジン誘導体と混合する。DMPCの場合、エモジンまたはエモジン誘導体に対する脂質の重量/重量比は約5:1〜30:1である。Tween 20が脂質、エモジンおよびTween 20の総重量の0.05%〜15%となるように、脂質:エモジン混合物にTween 20を加えることができる。tert-ブタノールの液量が少なくとも95%となるように、この混合物に過剰のtert-ブタノールを加える。混合物を撹拌し、ドライアイス/アセトン浴で凍結し、一晩凍結乾燥する。凍結乾燥調製物は-20℃で保存するが、これは3カ月まで使用することができる。必要ならば、凍結乾燥した脂質製剤を0.9%生理食塩液中で再構成することができる。オリゴと共に脂質を密閉するためにTween 20を用いて得られた粒子の平均径は直径0.7〜1.0μmである。
【0049】
または、リポソームのような脂質製剤は、例えばガラス製の洋ナシ型フラスコなどの容器内の溶媒中で脂質を混合することによって調製することができる。容器は、予想される脂質製剤懸濁液の液量の10倍の容量でなければならない。ロータリーエバポレーターを用いて、陰圧下において約40℃で溶媒を除去する。溶媒は通常、リポソームの所望の容量に応じて、約5分〜2時間以内に除去される。組成物は、デシケーター内で真空下でさらに乾燥することができる。乾燥した脂質は、時間に伴って劣化する傾向があるので、一般に約1週間後に廃棄される。
【0050】
乾燥した脂質を、すべての脂質フィルムが再懸濁されるまで振盪することによって、発熱物質を含まない無菌水中で約25mM〜50mMリン脂質で水和することができる。続いて、この水性脂質製剤を分注して、それぞれをバイアルに移し、真空下で凍結乾燥して密封することができる。
【0051】
その他の代替法において、脂質製剤をその他の既知の実験手順に従って調製することができる:その内容が参照として本明細書に組み入れられる、Bangham et al.(1965)の方法;DRUG CARRIERS IN BIOLOGY AND MEDICINE, G. Gregoriadis編、(1979) pp. 287-341に記載されていた、その内容が参照として本明細書に組み入れられる、Gregoriadisの方法;その内容が参照として本明細書に組み入れられる、Deamer and Uster(1983)の方法;および、Szoka and Papahadjopoulos(1978)の逆相エバポレート法。上記の方法は、それぞれの水性材料封入能力、およびそれぞれの水間隙対脂質の割合が異なっている。
【0052】
リポソームを含む薬学的組成物には、水または生理食塩液などの、薬学的に許容される無菌の担体または希釈剤が、通常含まれると考えられる。
【0053】
V. 薬物
脂質:エモジン製剤の臨床適用が行われる場合、脂質:エモジンまたはエモジン誘導体の製剤を、意図される用途に適した薬学的組成物として調製することが必要でありうる。一般に、これは本質的に、発熱物質を含まない、およびヒトまたは動物に対して有害となり得るその他の不純物を全く含まない、薬学的組成物の調製を伴う。また一般に、複合体を安定化して標的細胞による取り込みを可能にする適切な緩衝液を用いることが望ましい。
【0054】
本発明の治療用組成物の水性組成物は、上述のように脂質と会合し、さらに、薬学的に許容される担体または水性媒質中に分散されたエモジンの有効量を含む。「薬学的」または「薬学的に許容される」という語句は、動物またはヒトに適宜投与された場合に副作用、アレルギー反応、またはその他の望ましくない反応を惹起しない組成物を指す。
【0055】
本明細書で用いられる「薬学的に許容される担体」には、任意のすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。このような媒質および物質を薬学的に活性な物質として用いることは当技術分野では周知である。活性成分と配合禁忌である場合を除いて、任意の通常の媒質または物質が治療用組成物に使用されることが意図される。組成物に追加の活性成分を加えることもできる。
【0056】
治療用組成物の溶液を、ヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤と適切に混合した水中で調製することができる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、それらの混合液中で、および油中で分散液を作製することもできる。通常の保存および使用の条件下において、これらの調製物は微生物の増殖を防ぐための保存剤を含む。
【0057】
ヒトへの投与のためには、調製物は、FDA Office of Biologicsの基準により要求される無菌性、発熱原性、一般的安全性および純度に関する基準を満たさなければならない。生物学的材料を、望ましくない低分子を除去するために徹底的に透析することができ、かつ/または、適切な場合には所望のビヒクルへとより簡単に製剤化するために凍結乾燥することができる。その後、活性化合物は一般に、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、病変内または腹腔内経路での注射用に製剤化されるなど、非経口投与用に製剤化されうる。治療用組成物を活性構成要素または活性成分として含む水性組成物の調製は、当業者には本開示に照らして理解されるであろう。典型的には、このような組成物を、注射剤として溶液または懸濁液のいずれかとして調製することが可能であり、注射前に液体を加えて溶液または懸濁液を調製するための使用に適した固体の剤形として調製することも可能であり、かつ調製物を乳化させることも可能である。
【0058】
注射の用途に適した薬学的剤形には、無菌の水溶液または分散液;ごま油、落花生油または水性プロピレングリコールを含む製剤;および、注射可能な無菌の溶液または分散液の即時調製用の無菌粉末が含まれる。いずれの場合も、その剤形は無菌でなければならず、かつ、シリンジ操作が可能であるという点で液体でなければならない。組成物は、製造および貯蔵の条件下において安定でなければならず、かつ、細菌および真菌のような微生物の汚染作用から保護されなければならない。
【0059】
組成物の薬学的に許容される塩には、例えば塩酸もしくはリン酸のような無機酸または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸と共に形成される、酸付加塩が含まれる。また、遊離カルボキシル基と共に形成される塩は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化鉄のような無機塩基;およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導されることもできる。
【0060】
また、担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および植物油を含む、溶媒または分散媒であることもできる。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用によって、分散剤の場合においては必要な粒子径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの各種の抗細菌剤および抗真菌剤によって防止することができる。多くの場合、例えば、糖または塩化ナトリウムのような等張物質を含むことが好ましい。注射可能組成物の長期間吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅延させる物質の組成物での使用によって、達成することができる。
【0061】
無菌注射液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて上記で列挙された様々なその他の成分と共に適切な溶媒に組み入れ、その後ろ過滅菌することにより、調製される。一般に、分散剤は、滅菌された様々な活性成分を、基礎となる分散媒および、上記で列挙されたその他の必要成分を含む無菌溶媒に組み入れることにより調製される。無菌注射液調製用の無菌粉剤の場合、好ましい調製方法は真空乾燥技術および凍結乾燥技術であり、これにより予め滅菌ろ過した各溶液から、活性成分に加えて任意の望ましい追加成分の粉末が得られる。
【0062】
本発明の治療用組成物は、液体の溶液または懸濁液いずれかの注射用組成物の形状で投与されるのが有利であるが、注射前に液体中の溶液または懸濁液として適した固形剤として調製することもできる。これらの調製物は乳化してもよい。このような目的のための典型的組成物には薬学的に許容される担体が含まれる。例えば、組成物は、リン酸緩衝生理食塩液1ミリリットル当たり10mg、25mg、50mgまたは最大約100mgのヒト血清アルブミンを含むことができる。その他の薬学的に許容される担体には、水溶液、塩、保存剤、緩衝液などを含む無毒の賦形剤が含まれる。
【0063】
非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油およびオレイン酸エチルのような注射可能有機エステルである。水性担体には、水、アルコール溶液/水溶液、生理食塩液、塩化ナトリウム、リンガーデキストロースなどの非経口ビヒクルが含まれる。静脈内ビヒクルには、液体および栄養補液が含まれる。保存剤には、抗細菌剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスが含まれる。薬学的組成物の各成分のpHおよび正確な濃度は、周知のパラメータに従って調節される。
【0064】
経口投与には追加の製剤が適している。経口製剤には、例えば、薬品級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの典型的賦形剤が含まれる。組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤または粉末の形状である。経路が局所適用である場合、剤形はクリーム剤、軟膏、軟膏剤、またはスプレー剤であることができる。
【0065】
本発明の治療用組成物には、典型的な薬学的調製物が含まれうる。本発明に基づく治療用組成物の投与は、標的組織がその経路によって到達可能である限り、任意の一般的経路を介して行われる。これには、経口投与、経鼻投与、舌下投与、直腸投与、腟内投与または局所投与が含まれる。または、投与は、同所注射、皮内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射または静脈内注射によって行うことができる。このような組成物は通常、生理学的に許容される担体、緩衝液またはその他の賦形剤を含む薬学的に許容される組成物として投与される。肺の状態の治療の場合、好ましい経路はエアロゾルによる肺への送達である。エアロゾルの液量は約0.01mlから0.5mlである。同様に、結腸関連疾患の治療における好ましい方法は浣腸投与である。浣腸剤の液量は約1mlから100mlである。
【0066】
治療用組成物の有効量は、意図する目標に基づいて決定される。「単位用量」または「投与量」という用語は、被験者での使用に適した物理的に異なる単位を指すが、各単位はその投与、即ち、適切な経路および投与計画に関連する上記の所望の反応を生じるように算出された所定の量の治療用組成物を含有する。処理回数および単位用量の双方に基づいて、投与されるべき量は所望の保護作用に依存する。
【0067】
治療用組成物の正確な量はまた、医師の判断に依存し、個人によって異なる。用量に影響を及ぼす要因には、患者の身体的および臨床的状態、投与経路、意図される治療目標(治癒に対する症状緩和)、および特定の治療物質の効力、安定性および毒性が含まれる。
【0068】
本発明の治療用構築物の患者への投与は、化学療法剤の投与に関する一般的プロトコルに従う。必要に応じて治療サイクルを反復することが期待される。記載された治療と併用して、様々な標準的治療法および外科的介入が適用可能であることも意図される。
【0069】
本発明に従って、本発明の治療用組成物を腫瘍に直接注射することによって癌を治療することができる。または、腫瘍または被験者に、任意の適切な送達ビヒクルを用いて脂質:エモジン製剤を注入または灌流することができる。腫瘍に関しては、局所性または限局性の投与も意図される。最後に、全身投与を実施することができる。例えば、腫瘍を摘出して、残りの極めて小さな疾患を除くために腫瘍床の治療が行われる場合のように、適切であるならば、連続投与を行うこともできる。シリンジまたはカテーテルを介した送達が好ましい。このような連続灌流は、投与開始後約1時間〜2時間から約2時間〜6時間まで、約6時間〜12時間まで、約12時間〜24時間まで、約1日〜2日まで、約1週間〜2週間またはそれ以上まで実施することができる。一般に、連続灌流を介する治療用組成物の用量は、その灌流が実施される期間を通して調整された単回注射または反復注射によって投与される量と同等と考えられる。
【0070】
一部の態様において、治療される腫瘍は、少なくとも最初は切除可能でなくてもよい。治療用組成物を用いた治療は、辺縁部が収縮するために、または一部の特定の侵襲性部分が排除されることによって、腫瘍の切除可能性を高める可能性がある。治療後に切除可能になりうる。切除後の追加的投与は、腫瘍部位におけるまたは被験者内の、極めて小さな残存疾患を除くために役立つ可能性がある。
【0071】
水溶液としての非経口投与の場合、例えば、溶液は必要であれば適切に緩衝されるべきであり、液体希釈剤は先ず第一に十分な生理食塩液またはグルコースによって等張にされなければならない。これらの特定の水溶液は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与および腹腔内投与に特に適している。これに関して、使用可能な無菌の水性媒質は、本開示に照らして、当業者に周知である。例えば、一回投与量をNaCl等張液1mlに溶解して、皮下注射液(hypodermoclysis)1000mlに加える、または所定の注入部位に注射することができる(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」第15版、p.1035-1038および1570-1580を参照されたい)。当然ながら、治療を受ける被験者の状態に応じて投与量の変更が行われることがある。投与に対して責任を負う人物は、いかなる場合も、個々の被験者において適切な用量を決定するであろう。
【0072】
VI. キット
腫瘍または癌細胞増殖の阻害に必要な本質的材料および試薬のすべてまたは一部を、キット中に集合させることができる。キットの成分が一つまたは複数の液体溶液として提供される場合、液体溶液は好ましくは水溶液であり、特に無菌の水溶液が好ましい。
【0073】
インビボでの使用のために、単独または化学療法剤と併用されるエモジンまたはエモジン様化合物を、薬学的に許容される単一または別々のシリンジ操作可能な組成物に製剤化することができる。この場合、容器手段自体は吸入器、シリンジ、ピペット、点眼器、またはその他の同様の装置であってよく、その容器から製剤を肺などの身体の感染領域に適用することができ、動物内に注射することができ、または、キットのその他の成分にさらに添加して混合することも可能である。
【0074】
キットの成分を、乾燥状態または凍結乾燥状態で提供することもできる。試薬または成分が乾燥状態で提供される場合は、適切な溶媒を加えることにより再構成が一般に行われる。溶媒がまた、もう一つの容器手段中に提供される可能性も想定される。また、本発明のキットは、エモジンの投与を定義する説明書を含んでもよい。
【0075】
また、本発明のキットは、例えば、注射用容器または所望のバイアルが保持された吹き込み成形式プラスチック容器のように、市販するために厳重に閉じこめた状態でバイアルを含めるための手段を典型的に含みうる。容器の数または種類に関わらず、本発明のキットは、注射/投与または動物の体内での最終的な合成組成物の配置を補助する器具を含んでもよく、または共に包装されてもよい。このような器具は、吸入器、シリンジ、ピペット、鉗子、計量スプーン、点眼器、またはその他の医学的に承認された送達媒体とすることができる。
【0076】
実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を示すために含まれるものである。当業者は、後述の実施例に開示される技術が本発明の実践において十分に機能するように本発明者らによって発見された技術を示すものであり、従ってその実践における好ましい様式を構成するとみなされることができることを認識すべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、開示される具体的態様に多くの変更を加えることが可能でありかつ、本発明の精神および範囲から逸脱することなく類似または同様の結果が得られることを認識すべきである。
【0077】
実施例1:材料および方法
本情報は、非限定的かつ例示的な脂質:エモジン製剤または調製物に関する。エモジンは、t-ブタノール(Sigma St. Louis, Mo)中で1mg/mlの濃度で調製した。t-ブタノールを37℃に加温して、エモジンを添加した後、撹拌した。次に、エモジン/t-ブタノール混合物を脂質混合物に加えた。例示的脂質混合物とは、t-ブタノール中、5mg/mlの濃度のDMPCである。その他の調製物は、7:3、5:2および1:1の割合の脂質(DMPCおよびDMPG)の配合物を用いて作製したが、これらの調製は、DMPC単独と同様には実施しなかった。脂質混合物に、Tween 20を10%溶液(Tween 20 1ml+t-ブタノール9ml)として加えた。この特定の例では、10% Tween溶液の300μlを脂質混合物に加えた。従って、調製物のTween 20濃度は0.08%である(0.3ml×10% / 35.3ml(総液量)=0.08%)。用いた乾燥方法は、凍結乾燥および急速真空乾燥であった。いずれの方法も加熱せずに行われて、同等の生成物が得られた。再構成に使用した溶媒は生理食塩液(0.9%)であった。PBS(リン酸緩衝生理食塩液)も使用したが、生理食塩液の方がより有効な溶媒であることが示された。
【0078】
調製物の安定性について検討した。室温で保存した調製物を、一定期間(8時間〜48時間)溶液中で維持し、僅かでも濁ってきた場合は、撹拌および/または約37℃への加熱により、透明に戻した。大半の調製物を冷蔵保存し、長期にわたる場合は冷凍保存した。動物試験に使用した生成物は、一連の各注射前に用時調製した。(DMPC=ジミリストイルホスファチジルコリン、DMPG=ジミリストイルホスファチジルグリセロール)
【0079】
実施例2:C3H-HEJマウスモデルを用いたエモジン治療
白血病系統である32D-bcr-ablを使用して、CEH/HEJマウス1匹当たり1×106個の細胞を投与した。細胞株は32D-P210株である。動物モデルに1匹当たり0.2mgのエモジンを注射して、脂質:エモジン調製を2回行った。この調製によって、本発明者らが以前別の実験機関から入手した試料とは一致しない生成物が得られた。この先行製剤は、この特定の試験を行うまで、すべての細胞培養作業において使用されていた。一連の本試験のために作製された生成物は、生理食塩液添加時に溶解しなかった微粒子物質を含んでいるため、果肉入りオレンジジュースのようであった。マウスへの注射は比較的容易であったが、インビボでの微粒子の反応は明白でなかった。
【0080】
上記試験の結果は、エモジン0.2mgを注射されたマウス53匹の結果であり、8匹は注射後2週間以内に死亡した。エモジン0.2mgの2回注射を受けた51匹の内、2週間以内に9匹が死亡した。図1は、試験の例示的結果を示す。
【0081】
白血病性32D-bcr-abl細胞を0日目にCEH/HEJコンジェニックマウスに移植した。治療を受けていない動物は18日から22日の間に死亡した。治療群には、1日目より、リポソームエモジン(8mg/kg体重)を1回または2回注射した。リポソームエモジン投与動物は、1回注射群よりも2回注射群において、著しく高い生存率を示す。
【0082】
実施例3:DMSO可溶化エモジン試験
インビトロ: テトラサイクリン調節可能32D-P210細胞株を、10%FCSおよび10%Wehi上清を加えたRPMI 1640において37℃で培養した。インビトロアッセイでは、エモジンをDMSOに0.4Mの濃度で可溶化した。3×104個/mlの細胞濃度を用いて、24穴プレートで3日間、エモジンに曝露した。エモジンは、60μM、30μM、および10μMの濃度でアッセイした。72時間の時点で、細胞増殖に関する比色分析を行うためにMTTアッセイを実施した。
【0083】
インビボ:インビボ試験には、C3H-HEJ系統のマウス(8週齢〜10週齢)を使用した。エモジンは10mg/mlでアルカリ性調製物として調製して、尾静脈注射によりマウスに投与した。1つの同齢集団(cohort)の動物には、1匹あたり43mg/kgに相当するエモジンを単回投与した。別の2つの同齢集団には、薬剤を2回、連日で投与するか、または薬剤を3回、連日で投与した。薬剤の総投与濃度は、それぞれ、86mg/kgおよび129mg/kgであった。動物は死亡までフォローアップするか、疾病検出後直ちに安楽死させるか、あるいは白血病注射後100日に安楽死させた。
【0084】
インビトロアッセイにより、エモジンは細胞増殖の有効な阻害剤であることが示され、IC50は約10μMであった。図2、図3および図4を参照されたい。
【0085】
インビボアッセイは、白血病を注射された動物の寿命が、エモジンにより、非処理動物の25日から動物が屠殺される100日まで著しく延長されうることを示している。図5を参照されたい。これらの試験で用いられたアルカリ性調製物により、動物に注射するには溶液のpHが高いという問題が示された。調製時の溶液のpHは約11であったが、尾静脈注射のために約pH10に低下させることができた。pHの低下がエモジンの溶解度を越えると、溶液中に沈殿が生じる。動物はpH 10の調製物に対して中程度に十分な耐容性を示したが、尾にはいくつかの挫傷が散見された。このため、上記のような脂質:エモジン製剤が開発された。
【0086】
実施例4:エモジンの経時的拡散
エモジンがリポソーム性担体から放出される程度および速度を求めるために、インビトロにおける実験を実施した。図6のデータにより、乾燥リポソーム性エモジン調製物への生理食塩液の添加から約24時間以内に、リポソーム内の薬剤の約60%が放出されたことが示される。この値は144時間後までには70%強に増加した。これらのデータにより、エモジンのリポソーム製剤がリポソーム内での薬剤の捕捉または保持ではなくエモジンの放出を生じることが示され、第二に、放出速度は比較的緩慢であることが示されている。後者は、LPE系により、例えばエモジン自体の単純な静脈内投与後における急激な上昇および下降に比べて薬剤レベルの持続性が高い薬剤の緩慢な注入を模倣する装置が提供されるという点でも、重要である。
【0087】
エモジンを2.8mg/mlの濃度としてエモジン:脂質組成物を先ず、負荷した。エモジンの経時的拡散を決定し、時間(時間)に対する溶液中の濃度(mg/ml)としてプロットした。拡散データは、長期間、物質(エモジン)の放出が約70%〜75%であることを示している。
【0088】
実施例5:エモジン:脂質組成物の薬物動態試験
インビトロにおける放出速度データにより、マウスにおけるエモジン対リポソーム性エモジンの詳細な薬物動態の比較において発生が予測されるものに関しての十分な根拠が提供される。つまり、LPE(またはELP)調製物は、エモジン注射からよりも緩慢な薬剤放出を提供することができ、これにより(遊離エモジンの静脈内注射に対して)LPE調製物由来の薬剤に関して極めて大きな濃度-時間曲線下面積(AUC)が得られる。
【0089】
これは、マウスを用いた薬物動態試験により試験することができる。放射線標識(3H-エモジン)を用いて、マウスに直接注射するか、あるいはリポソーム3H-エモジン調製物を作製することができる。次に、これらの放射標識薬剤調製物をマウスに注射して、48時間にわたって血液試料を採取することができる。血漿は全血から調整可能である。このようなプロトコルの下では、3H-エモジン投与マウスの血漿中放射活性は遊離3H-エモジンしか示さないと考えられる。リポソーム3H-エモジンを注射したマウスの放射活性は、放出された3H-エモジンおよび、残りのリポソームに封入された3H-エモジンに由来しうる。遊離型3H-エモジンおよびリポソーム性3H-エモジンはいずれも、HPLCシステムに接続した放射測定検出器を用いて分離されうる。得られるデータにより、双方の調製物由来の遊離型3H-エモジンの曲線下面積(AUC)、およびリポソーム性エモジン調製物からの3H-エモジンの総放出量の比較が可能になる。
【0090】
本明細書に開示されて請求されるすべての組成物および/または方法は、本開示に照らして必要以上の実験を行うことなく、作製および実施することができる。本発明の組成物および方法は好ましい態様の観点から説明されているが、当業者には、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法の工程または一連の工程における組成物および/または方法に対して変更を加えることができることが明らかである。より具体的には、同一または同等の結果を達成する一方で、化学的および生理学的に関連する特定の物質が、本明細書に記載の物質に置換可能であることが明らかである。当業者に明白なこのような同等の置換および修正はすべて、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の精神、範囲および概念の範囲内であると考えられる。
【0091】
参照文献
以下の参照文献は、それらが例示的手順または本明細書の記載を補足するその他の詳細を示す限り、参照として本明細書に具体的に組み入れられるものである。

【図面の簡単な説明】
【0092】
添付の図面は本明細書の一部であり、本発明の一部の局面をさらに示すために含められる。本発明は、これらの図面の一つまたは複数を、本明細書に示される具体的態様の詳細な説明と併せて参照することによって、より適切に理解することができる。
【図1】白血病マウスモデルの脂質:エモジン治療の具体例を示す。0日目に、白血病誘発性32D-bcr-abl細胞を、CEH/HEJコンジェニックマウスに移植した。白血病治療としての有効性について調べるために、例示的な脂質:エモジン製剤をマウスに投与した。治療を受けていない動物は18日から22日の間に死亡した。治療群のマウスには、1日目から、脂質:エモジンを8mg/kg体重の用量で1回または2回注射した。脂質:エモジン処理マウスは顕著な生存率を示したが、これは、1回注射群よりも2回注射群において高い。
【図2】Tet調節可能P210細胞の3日間アッセイにおけるDMSO:エモジンの例示的試験を示す。
【図3】bcr-ablのチロシンリン酸化に対してエモジンが与える影響に関する例示的試験を示す。
【図4】K562細胞におけるbcr-ablのチロシンリン酸化に対してエモジンが与える影響に関する例示的試験を示す。
【図5】C3HマウスにおけるDMSO:エモジン投与の例示的動物試験を示す。
【図6】リポソームからのエモジン(ELP)の経時的な拡散を示す。リポソーム中のエモジンの初期負荷濃度は2.8mg/mlであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質に結合したエモジンまたはその誘導体を含む組成物。
【請求項2】
脂質がジミリストールホスファチジルコリンを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
脂質がジミリストールホスファチジルグリセロールを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
脂質対エモジンの重量/重量比が約5:1〜約30:1である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
脂質対エモジンの比が約5:2である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
可溶化剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
可溶化剤が非イオン性界面活性剤である、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
約0.05%〜15%重量/重量の非イオン性界面活性剤を含む、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
非イオン性界面活性剤の量が約0.08%重量/重量である、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
非イオン性界面活性剤がTweenである、請求項7記載の組成物。
【請求項11】
TweenがTween 20である、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
可溶化剤が大豆油または落花生油である、請求項6記載の組成物。
【請求項13】
可溶化剤がβ-ヒドロキシル化化合物である、請求項6記載の組成物。
【請求項14】
エモジンまたはその誘導体を溶媒中で脂質と混合する工程を含む、組成物を調製する方法。
【請求項15】
脂質がジミリストールホスファチジルコリンである、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
脂質対エモジンの重量/重量比が約5:1〜約30:1である、請求項14記載の方法。
【請求項17】
脂質対エモジンの比が約15:1である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
溶媒が第三級ブタノールである、請求項14記載の方法。
【請求項19】
可溶化剤を混合する工程をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項20】
可溶化剤が組成物の約0.05%〜15%である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
可溶化剤が組成物の約0.08%である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
可溶化剤がTween 20である、請求項19記載の方法。
【請求項23】
可溶化剤が大豆油または落花生油である、請求項19記載の方法。
【請求項24】
可溶化剤がβ-ヒドロキシル化化合物である、請求項19記載の方法。
【請求項25】
組成物を凍結乾燥する工程をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項26】
凍結乾燥した組成物を溶媒中で再構成する工程をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
溶媒が生理食塩液である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
生理食塩液が0.9%生理食塩液である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
脂質と結合したエモジンを含む製剤(脂質:エモジン製剤)を被験者に投与する工程を含む、被験者における癌を治療するための方法であって、該被験者の癌細胞におけるチロシンキナーゼ活性が阻害される方法。
【請求項30】
エモジンが約1mg/kg体重〜約50mg/kg体重の用量で供給される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
癌が造血器癌である、請求項29記載の方法。
【請求項32】
造血器癌が白血病である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
脂質:エモジン製剤が注射によって投与される、請求項29記載の方法。
【請求項34】
脂質:エモジン製剤が静脈内注射によって投与される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
脂質:エモジン製剤が少なくとも1回投与される、請求項29記載の方法。
【請求項36】
脂質:エモジン製剤が少なくとも2回投与される、請求項29記載の方法。
【請求項37】
脂質:エモジン製剤が少なくとも3回投与される、請求項29記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2006−510674(P2006−510674A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−559431(P2004−559431)
【出願日】平成15年12月8日(2003.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2003/038963
【国際公開番号】WO2004/052294
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(505212027)ボード オブ リージェンツ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム (1)
【出願人】(599034952)ペン.ステート.リサーチ.ファウンデーション (3)
【Fターム(参考)】