説明

脆弱領域を含む起爆装置

本発明は、点火補助部(10)と、前記点火補助部(10)を電力源に接続する電気起爆システム(11)と、少なくとも一つの爆発性組成物を収容するキャップ(2)であって、前記点火補助部(10)に接続された開口した第一端部(20)と、端部壁(21)によって閉鎖された反対側に位置する第二端部と、少なくとも一つの脆弱領域(3、3’、3’’)を有する周囲の側壁(22)とを有するほぼ円筒形の形状を有するキャップ(2)とを具備する電気火花式起爆装置に関する。この起爆装置は、脆弱領域の中の少なくとも一つが、閉じていないトレースに沿って、側壁(22)の一部分上のみにおいて、すなわちその反対側に位置する各端部に到達することなく延在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気火花式起爆装置に関するものである。
従って、本発明は、自動車の安全装置の分野に属している。
【背景技術】
【0002】
ガス生成器内に内蔵される電気火花式起爆装置は、従来、点火補助部と、この点火補助部を電力原に接続している電気起爆システムと、少なくとも一つの電気火花組成物を収容している断片化可能なキャップと、を有している。
通常、金属から製造される上記ケースを形成するキャップは、機械的な固定及び接続手段によって生成器内に保持される。このキャップは、密封され、外部から隔離される。
【0003】
動作の際には、キャップ内において圧力が上昇し、その最も脆弱なゾーン内においてキャップが裂けることにより、炎と熱いガスが放出され、次いで、この炎とガスが生成器内に存在する電気火花材料、例えばガスを生成するのに適する推進剤等を起爆する。
【0004】
一般に、脆弱領域は破裂開始部によって生成されており、これら破裂開始部は、特にケースをスタンピング加工によって製造する際には、窪んだパターンをスタンピングすることによって得られる。
一般に、上記キャップの形状は円筒形であり、点火補助部に接続された開放された第一端部と、端部壁によって閉鎖された反対側に位置する第二端部と、円筒形の側壁とを有する。
【0005】
従来、多くの起爆装置は、端部壁内に破裂開始部を有しており、このため炎が軸線方向に放出されるようになっている。
しかしながら、或る生成器、特に、起爆装置を取り囲むリング状の推進剤の塊を有する生成器や、軸線方向の端部壁を破裂させると電気火花装填物が損傷してしまう危険性を有するほどに装填物が小さい生成器は、非動作時にはプラスチック材料の内壁によって閉鎖される孔を介して炎が半径方向に、すなわちキャップの側壁を通じて放出される場合に、より良好な状態で動作する。
【0006】
その他の構造おいては、炎を半径方向に放出することができる。
すなわち、特許文献1には起爆装置を有するガス生成器について記載されており、この起爆装置の側壁は、内部に起爆装置のキャップが画成される円筒の生成器のラインに対して平行に配設された脆弱領域を有する。これら領域は、キャップの一端から他端まで延びる。
実際に、これら脆弱領域が破裂すると、この起爆装置は、その構造の完全性が影響を受けるほどに完全に開放されてしまう。
【0007】
別の構造が特許文献2に記述されている。
この場合には、脆弱領域は、起爆装置のキャップの側壁周りに延びる円周状のラインを形成している。
この場合にも、脆弱領域が破裂した後に、起爆装置の一部が残りの部分から切り離されてしまうため、起爆装置の完全性が影響を受けることになる。
起爆装置が完全に破裂すると、粒子(特に、金属粒子)が漏洩し、これらが外部に放出される危険性がある。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,005,486号明細書(Lenzen)
【特許文献2】米国特許第5,601,308号明細書(Cuevas)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、キャップの(円筒形の)周囲の側壁が脆弱領域を有してはいるが、この領域が破裂した後にも、その完全性を保持している起爆装置を具体的に提案することにより、これらの問題点を解決することにある。
本発明の更なる目的は、起爆装置の通常の「構造」を大幅に変更することなく上述した目的を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本発明は、点火補助部と、この点火補助部を電力源に接続する電気起爆システムと、少なくとも一つの爆発性組成物を収容しているキャップであって、点火補助部に接続された開口した第一端部と、端部壁によって閉鎖された反対側に位置する第二端部と、少なくとも一つの脆弱領域を有する周囲の側壁とを有するほぼ円筒形のキャップと、を有する電気火花起爆装置を提供する。
本発明によれば、脆弱領域の中の少なくとも一つは、閉じていないトレースに沿って、側壁の一部分上のみにおいて、すなわち、その両端部に到達することなく延在する。
【0011】
「閉じていないトレース」という用語は、そのトレースが、一致していない少なくとも二つの個別の端部を有することを意味するものとして使用される。
このような特定のトレースの構成により、本起爆装置は、別個の複数の断片に破裂することがない。この結果、その直接的な周囲環境に対して影響を及ぼすことなく、その完全性が保持される。
【0012】
本発明の別の実施形態においては、閉じていないトレースは、各脆弱領域が裂けた後に、トレースの二つの隣接する端部の間に位置する壁の断片が、壁に取付けられた状態に留まるような形状である。
この壁の断片又は「花弁」は、周囲の構成要素を損傷させるリスクを伴うことなく、起爆装置の壁に付着した状態に留まり、且つ、炎とガスを搬送するための偏向器として機能可能である。
【0013】
限定的するものではない他の特性によれば、トレースは十字形状であり、トレースは聖アンデレ十字架形状であり、トレースは湾曲した形状であり、・トレースは円弧形状であり、トレースは馬蹄形状であり、各脆弱領域は、材料のニシング加工によって形成されており、且つ、各脆弱領域はスタンピング加工によって得ることができる。
本発明のその他の特徴及び利点については、添付の図面を参照して提示されている以下の詳細な説明を参照することにより、明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1〜図3に示されている形態の起爆装置の構造自体については既知である。
このような起爆装置は、点火補助部10を具備する(図示してはいないが、突出したモールディングに内蔵されている)。
【0015】
また、この起爆装置は、電力源(図示せず)に対する起爆装置の接続を実現する起爆システムを具備し、このシステムは、点火補助部10内に埋め込まれ且つ突出するモールディングから延びる底部端を具備する一対の金属ピン11を備える。
最後に、点火補助部は、開口した第一端部20を介して、本質的に円筒状であるキャップ2と連通する。
【0016】
キャップ2の第二端部(第一端部の反対側)は、閉鎖されており、端部壁21を構成する。
最後に、キャップは、円筒を画成する周囲の側壁22を有する。
このキャップは、好ましくは、スタンピング法によって金属から製造される。
【0017】
このキャップ内には、点火補助部10によって起爆されると共に、キャップを介して外部に放出される炎とガスを生成するのに適する少なくとも一つの爆発性組成物が収容される。
【0018】
本発明によれば、この放出は上記周囲の側壁22を通じて行われる。このため、この側壁は少なくとも一つの脆弱領域3、又は3’、又は3’’を有する。
この脆弱領域は、閉じていないトレースに沿って且つ上記側壁の一部分上においてのみ(すなわち、その反対側に位置する各端部に到達することなしに)延びる。
【0019】
従って、図1を参照すると、領域3は、十字形のトレースを具備しており、より詳細にはこのトレースは聖アンデレ十字架状である。
このトレースは、側壁22を構成している材料をシニング加工(thinning)することによって形成されており、これは、例えば、クランピング加工により行われる。
【0020】
このトレースは、実質的に起爆装置の長手方向の中央平面上において交差している二つのライン30から構成され、各ラインは、反対側に位置する端部31を有する。
図2及び図3の起爆装置の領域3’及び3’’には湾曲した形状のトレースが設けられる。
【0021】
トレース3’は、反対側に位置する二つの端部30’を有する円弧から構成される。
トレース3’’は、馬蹄状であり、このことは反対側に位置する各端部30’がその最大幅を下回る距離だけ離間されていることを意味する。
【0022】
一つの起爆装置当たりに一つの脆弱領域しか示されていない。しかしながら、脆弱領域の数は更に多くてもよく、例えば、2つ又は3つであってもよい。このような場合には、脆弱領域を壁22周りにおいて規則的な角度で拡散させるべきである。
脆弱領域は、軸線方向において端部壁21から遠くない位置に配置される。当然のことながら、点火補助部に近接するように脆弱領域をずらすことも可能であろう。
【0023】
また、脆弱領域は、壁22の面積と比較して小さい。この比率は、必要に応じて、特に、起爆装置が作動した後の炎とガスの流れを増大させるべく、増大させることも可能である。
上述したように、起爆装置内で爆発性組成物を起爆することにより、その内部圧力が上昇し、この結果、脆弱領域がそのトレースに沿って裂けて炎とガスが放出されることになる。
【0024】
トレースが、閉じてはおらず、側壁22の一部分上においてのみ(即ち、キャップの反対側に位置する各端部に到達することなしに、換言すれば、開口部20を端部壁に接続することなしに)延びているため、開口部は局所に留まり、且つキャップ2は破壊されない。すなわち、開口部は脆弱領域に限定される。
キャップの形状には変化が生じず、そのいずれの部分も装置の残りの部分から切り離された状態にはならない。換言すれば、その完全性が影響を受けない。
【0025】
図1〜図3に示されている三つの実施形態では、いずれも、脆弱領域3、3’、3’’が裂けた後に、トレースの隣接する二つの端部間に位置する壁22の断片Fが壁に付着した状態に留まるような形状をトレースが有している。
【0026】
従って、図4に示したように、脆弱領域3は4つの断片又は「花弁」Fが起爆装置の壁22に付着した状態に留まるように図1の十字形のトレースに沿って裂ける。
図5及び図6の実施形態においては、脆弱領域3’及び3’’が、反対側に位置する二つの端部30’又は30’’しか有していないため、一つの断片Fのみが壁に付着した状態に留まる。
【0027】
すなわち、断片Fは、引き剥がされる危険性(これは、周囲の構成要素に対する損傷又は外向きの爆発に結びつく可能性があろう)を伴うことなしに、壁22に固定された状態に留まる。
また、図7に示したように、脆弱領域が裂けた後の断片Fの向きに応じて、断片Fは偏向板として機能して、矢印gで示したように炎とガスの流れを制御可能である。
【0028】
これは、流れが推進剤の塊に真正面から衝突するのではなく、推進剤を「なめる(lick)」と共に、推進剤に間接的に到達することが望ましい場合に有用であろう。
添付の図8は、自動車に取り付けられる安全装置に実装するためのガス生成器内に包含されている本発明の起爆装置を示す。
【0029】
この安全装置は保護用のエアーバッグ又はシートベルトプリテンショナであるのが好ましい。
ガス生成器は、軸X−X’を中心とした中空の円筒形ボディ4から形成された包囲部材(enclosure)を具備し、この包囲部材は半径方向に向かうガス排気用オリフィス40を有する。
【0030】
包囲部材の両端部は、両端に押し込まれたシャッタ41及び42によって閉鎖される。
第三の横方向隔壁5により、包囲部材が燃焼チャンバCと安定剤チャンバFとに分離される。
【0031】
隔壁5には、これら二つのチャンバC及びT間で互いに連通するように開口部50が設けられる。
起爆装置1は、壁41が設けられた軸X−X’上に形成された開口部410内に取り付けられ、適切な手段によって固定及び保持される。
【0032】
キャップ2は、完全に燃焼チャンバC内で延びる。
(例えば、推進剤から構成される)電気火花装填物6が起爆装置を包囲する。電気火花装填物の形状は環状であり、その回転軸線が起爆装置の軸X−X’と一致している。
【0033】
このブロックは、グリッド7によって所定の位置に保持されており、このグリッドは隔壁5にも当接している。
最後に、環状の流出用凝縮器(outflow condenser)8が安定剤チャンバ(tranquilizer chamber)T内に保持される。
【0034】
動作の際には、発火電流がピン11を介して起爆装置1に印加される。その後、この点火により、キャップ内に収容されている装填物が起爆される。
内部圧力の増大により、領域3、3’、又は3’’が破裂し、これにより、図8に矢印gで示したように、ガスと炎の放出が実現される。
【0035】
脆弱領域が裂けた結果として生じる断片Fは、これが燃焼チャンバC内に突出したり、或いは、場合によっては外部に放出されたりする危険性を伴うことなしに、起爆装置に付着した状態に留まる。
この断片は、偏向板として機能することにより、炎とガスの道筋をつける。この結果、電気火花装填物6が起爆される。
【0036】
この結果発生したガスが、隔壁内の開口部50を介してチャンバT内に進入し、流出用凝縮器8を通過して、例えばエアーバッグを膨張させるべくオリフィス40から放出される。
以上、本出願においては、脆弱領域の3つの実施形態について説明したが、当然のことながら、脆弱領域をS字形やZ字形などのその他の形状にすることも可能である。
【0037】
また、脆弱領域が破裂した際に、ゾーンの各端部の間の材料部分が壁から切り離された状態にならないようにするべく、ゾーンの各端部を十分に離隔させることも必要である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】起爆装置の一つの可能な実施形態の側面図である。
【図2】起爆装置の一つの可能な実施形態の側面図である。
【図3】起爆装置の一つの可能な実施形態の側面図である。
【図4】脆弱領域が裂けた後に起爆装置の壁に生成される開口部の概略正面図である。
【図5】脆弱領域が裂けた後に起爆装置の壁に生成される開口部の概略正面図である。
【図6】脆弱領域が裂けた後に起爆装置の壁に生成される開口部の概略正面図である。
【図7】上記壁の部分側面図であり、起爆装置に取付けられた状態で留まっている壁の断片によって実現される偏向機能を示す図である。
【図8】本発明の起爆装置が使用される生成器を示す長手方向における部分断面側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火補助部(10)と、
前記点火補助部(10)を電力源に接続する電気起爆システム(11)と、
少なくとも一つの爆発性組成物を収容するキャップ(2)であって、前記点火補助部(10)に接続された開口した第一端部(20)と、端部壁(21)によって閉鎖された反対側に位置する第二端部と、少なくとも一つの脆弱領域(3、3’、3’’)を有する周囲の側壁(22)とを有するほぼ円筒形のキャップ(2)とを具備する電気火花式起爆装置において、
前記脆弱領域(3、3’、3’’)の中の少なくとも一つは、閉じていないトレースに沿って、前記側壁(22)の一部分上のみにおいて、その両端部に到達することなく延在することを特徴とする、起爆装置。
【請求項2】
前記閉じていないトレースは、各脆弱領域が裂けた後に該トレースの二つの隣接する端部(30、30’、30’’)の間に位置する前記壁(22)の断片(F)が、前記壁(22)に取付けられた状態に留まるような形状であることを特徴とする、請求項1に記載の起爆装置。
【請求項3】
前記トレースは十字形状であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の起爆装置。
【請求項4】
前記トレースは、聖アンデレ十字架形状であることを特徴とする、請求項3に記載の起爆装置。
【請求項5】
前記トレースは、湾曲した形状であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の起爆装置。
【請求項6】
前記トレースは、円弧形状であることを特徴とする、請求項5に記載の起爆装置。
【請求項7】
前記トレースは馬蹄形状であることを特徴とする、請求項5に記載の起爆装置。
【請求項8】
各脆弱領域(3、3’、3’’)は、材料のシニング加工によって形成されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の起爆装置。
【請求項9】
各脆弱領域(3、3’、3’’)は、スタンピング加工によって得られることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の起爆装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−517245(P2008−517245A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537268(P2007−537268)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055371
【国際公開番号】WO2006/045726
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(500404203)オートリブ ディベロップメント アクティエボラーグ (54)
【Fターム(参考)】